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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177066
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20241212BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20241212BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H04N1/00 002A
B41J29/393 105
G03G21/00 510
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060127
(22)【出願日】2024-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2023094015
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】横山 正志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 翔太
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AR03
2C061AS02
2C061KK03
2C061KK25
2C061KK28
2C061KK32
2C061KK35
2H270KA04
2H270KA59
2H270LD03
2H270LD08
2H270MB11
2H270MB15
2H270MB25
2H270MB27
2H270MF14
2H270MF15
2H270MH09
2H270QA35
2H270QB01
2H270RA18
2H270RA19
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】異常と判定されるシートの枚数が増大することを抑制することができる画像形成システムを提供する。
【解決手段】画像形成システムは、シートに画像を印刷する印刷装置100と、印刷装置100により画像が印刷されたシートの検品を検査精度が異なる複数の検査レベルで行うことができる検品装置150と、CPU131と、を備える。CPU131は、印刷装置100による画像品質の調整を行う。CPU131は、検査レベルに応じて調整を行う調整頻度を決定する。CPU131は、調整頻度に基づいて調整を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を印刷する印刷手段と、
複数の検査レベルのうちから設定された検査レベルに基づき、シートに形成された画像の検査を行う検品手段と、
前記印刷手段の画像形成条件を調整する調整手段と、
第1検査レベルが設定された場合、前記調整手段に、前記印刷手段により第1枚数のシートに画像が形成されると前記画像形成条件の調整を行わせ、第2検査レベルが設定された場合、前記調整手段に、前記印刷手段により第2枚数のシートに画像が形成されると前記画像形成条件の調整を行わせる制御手段と、を備え、
前記第2検査レベルは、前記第1検査レベルより検査レベルが高く、前記第2枚数は、前記第1枚数より少ないことを特徴とする、
画像形成システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1検査レベルが設定された場合に、前記調整を行う間隔として前記第1枚数を決定し、前記第2検査レベルが設定された場合に、前記調整を行う間隔として前記第2枚数を決定することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記検査レベルを設定するための入力手段をさらに備えており、
前記検品手段は、前記入力手段により前記検査レベルが設定され、設定された該検査レベルを前記制御手段に通知し、
前記制御手段は、前記検品手段から通知された前記検査レベルに応じて前記調整を行う間隔を示す枚数を決定することを特徴とする、
請求項2記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記検査レベルを設定するための検査設定画面が表示される表示手段をさらに備えており、
前記入力手段は、前記検査設定画面により設定する前記検査レベルの情報が入力されることを特徴とする、
請求項3記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記表示手段は、前記検査設定画面による検査レベルの設定の際に、検査レベルと前記調整を行う間隔を示す枚数との関係を表す情報を表示し、
前記入力手段は、ユーザにより、前記表示に応じて設定する検査レベルの指示が入力されることを特徴とする、
請求項4記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記制御手段が前記調整を行う間隔を示す枚数を決定している場合に前記入力手段で設定される検査レベルが当該間隔に対応していなければ、当該間隔の変更を促す通知を出力する出力手段をさらに備えることを特徴とする、
請求項3記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1検査レベルで前記第1枚数のシートに画像が形成される前に検査レベルが前記第2検査レベルに変更されると、前記第1検査レベルで画像が形成されたシートの枚数が前記第2枚数以上であれば、前記調整手段に前記調整を行わせることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記印刷手段が画像形成したシートの枚数をカウントするカウンタをさらに備えており、
前記制御手段は、前記第1検査レベルで前記第1枚数のシートに画像が形成される前に前記調整手段が前記調整を行うと、前記カウンタがカウントした枚数をクリアし、前記第2検査レベルで前記第2枚数のシートに画像が形成される前に前記調整手段が前記調整を行うと、前記カウンタがカウントした枚数をクリアすることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記入力手段は、前記検査設定画面によりエリア毎に検査レベルを設定することができ、
前記制御手段は、エリア毎の検査レベルで最も検査レベルが高い検査レベルに基づいて、前記調整を行う間隔を示す枚数を決定することを特徴とする、
請求項4記載の画像形成システム。
【請求項10】
シートに画像を印刷する印刷手段と、
前記印刷手段により画像が印刷されたシートの検品を検査精度が異なる複数の検査レベルで行うことができる検品手段と、
前記印刷手段による画像品質の調整を行う調整手段と、
前記検査レベルに応じて前記調整を行う調整頻度を決定し、決定した前記調整頻度に基づいて前記調整手段に前記調整を行わせる制御手段と、を備えることを特徴とする、
画像形成システム。
【請求項11】
検査レベルを設定するための入力手段と、
前記検査レベルに応じた調整頻度を表すテーブルを保持する保持手段と、をさらに備えており、
前記制御手段は、前記保持手段に保持された前記テーブルを参照し、前記入力手段により設定された前記検査レベルに応じた調整頻度を決定することを特徴とする、
請求項10記載の画像形成システム。
【請求項12】
前記検品手段は、前記入力手段により前記検査レベルが設定され、設定された該検査レベルを前記制御手段に通知し、
前記制御手段は、前記検品手段から通知された前記検査レベルに応じて前記調整頻度を決定することを特徴とする、
請求項11記載の画像形成システム。
【請求項13】
前記検査レベルを設定するための検査設定画面が表示される表示手段をさらに備えており、
前記入力手段は、前記検査設定画面により設定する前記検査レベルの情報が入力され、
前記制御手段は、入力された前記情報に基づいて、前記調整頻度を決定することを特徴とする、
請求項11記載の画像形成システム。
【請求項14】
前記表示手段は、前記検査設定画面による検査レベルの設定の際に、検査レベルと調整頻度との関係を表す情報を表示し、
前記入力手段は、ユーザにより、前記表示に応じて設定する検査レベルの指示が入力されることを特徴とする、
請求項13記載の画像形成システム。
【請求項15】
前記制御手段が前記調整頻度を決定している場合に前記入力手段で設定される検査レベルが当該調整頻度に対応していなければ、当該調整頻度の変更を促す通知を出力する出力手段をさらに備えることを特徴とする、
請求項11記載の画像形成システム。
【請求項16】
前記印刷手段により前記シートに形成された画像を読み取る読取手段をさらに備えており、
前記検品手段は、前記読取手段により読み取られた画像と、比較元画像とを比較することで検品を行うことを特徴とする、
請求項10記載の画像形成システム。
【請求項17】
前記検品手段は、前記比較の結果、前記シートに形成された画像が異常であると判定すると、前記制御手段に異常の発生を通知し、
前記制御手段は、前記異常の発生の通知を取得すると、前記調整手段に前記調整を行わせることを特徴とする、
請求項16記載の画像形成システム。
【請求項18】
前記制御手段は、前記印刷手段によりシートに画像形成した印字枚数をカウントし、カウントした印字枚数が前記調整頻度に到達すると、前記調整手段に前記調整を行わせることを特徴とする、
請求項10記載の画像形成システム。
【請求項19】
前記制御手段は、前記印刷手段と前記検品手段とのいずれかに含まれることを特徴とする、
請求項18記載の画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が印刷されたシート(成果物)の検査(検品)を行う検品装置を備えた画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置は、調整用チャートの読取結果に基づいて画像形成条件を変更する調整動作を、所定の時間間隔で行うことが知られている。調整用チャートは、画像形成条件の調整用画像が形成されたシートである。画像形成装置は、調整動作を行うことにより、構成部品やトナー等の使用材料の経時変化に起因した印字位置の変動、色味変動等を抑制することができる。また、従来、シートに形成された画像を、検品装置により読み取って当該画像を検査(検品)する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-90999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検品装置は、ユーザにより検品を行う際の検査レベルが設定可能である。しかし上述の経時変化により印字位置の変動、色味変動等の変動量が大きくなると、画像形成装置により形成される画像が、ユーザにより設定された検査レベルを満たさなくなる可能性がある。即ち、上述の調整動作が行われてから所定時間が経過すると、異常と判定されるシートの枚数が増大してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑み、異常と判定されるシートの枚数が増大することを抑制することができる画像形成システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成システムは、シートに画像を印刷する印刷手段と、複数の検査レベルのうちから設定された検査レベルに基づき、シートに形成された画像の検査を行う検品手段と、前記印刷手段の画像形成条件を調整する調整手段と、第1検査レベルが設定された場合、前記調整手段に、前記印刷手段により第1枚数のシートに画像が形成されると前記画像形成条件の調整を行わせ、第2検査レベルが設定された場合、前記調整手段に、前記印刷手段により第2枚数のシートに画像が形成されると前記画像形成条件の調整を行わせる制御手段と、を備え、前記第2検査レベルは、前記第1検査レベルより検査レベルが高く、前記第2枚数は、前記第1枚数より少ないことを特徴とする。
本発明の他の態様の画像形成システムは、シートに画像を印刷する印刷手段と、前記印刷手段により画像が印刷されたシートの検品を検査精度が異なる複数の検査レベルで行うことができる検品手段と、前記印刷手段による画像品質の調整を行う調整手段と、前記検査レベルに応じて前記調整を行う調整頻度を決定し、決定した前記調整頻度に基づいて前記調整手段に前記調整を行わせる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異常と判定されるシートの枚数が増大することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像形成システムの説明図。
図2】検品装置の説明図。
図3】プリンタエンジンの構成図。
図4】CISユニットの構成図。
図5】検品の説明図。
図6】検査設定画面の例示図。
図7】色ずれ補正用の調整用画像の説明図。
図8】階調濃度補正用の調整用画像の説明図。
図9】印字位置調整用チャートの例示図。
図10】(a)~(g)は、印字位置ずれ量の算出法の説明図。
図11】印刷処理及び検品処理時の情報の受け渡しを示すシーケンス図。
図12】画像品質の特徴の説明図。
図13】印字枚数と担保される画像の色味品質の説明図。
図14】検査レベルに応じたトナー階調濃度補正頻度の説明図。
図15】検査レベルに応じた調整頻度の閾値決定処理を表すフローチャート。
図16】調整動作実行判定処理を含む画像形成処理を表すフローチャート。
図17】印刷処理及び検品処理時の情報の受け渡しを示すシーケンス図。
図18】調整動作実行判定処理を表すフローチャート。
図19】メッセージの例示図。
図20】メッセージの例示図。
図21】メッセージの例示図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0010】
(画像形成システム)
図1は、本実施形態の画像形成システムの説明図である。特に断らない限り、本発明の機能が実現されるのであれば、ネットワークを介して構成されて処理が行われるシステムであっても本発明を適用できることは言うまでもない。
【0011】
本実施形態の画像形成システム1は、画像形成装置である印刷装置100、検品装置150、及び外部装置であるホストコンピュータ101を含んで構成される。印刷装置100及び検品装置150は、通信回線105を介してホストコンピュータ101との間で通信可能である。通信回線105は、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、公衆通信回線等である。また、通信回線105は、USB(Universal Serial Bus)等のシリアルインタフェースや、パラレルインタフェースを用いて構成されてもよい。なお、ホストコンピュータ101と、印刷装置100及び検品装置150の組と、の少なくとも一方は、通信回線105上に複数設けられていてもよい。
【0012】
ホストコンピュータ101は、不図示のユーザインタフェースを備えており、ユーザインタフェースから取得する入力情報に基づいて印刷ジョブを生成する。ホストコンピュータ101は、生成した印刷ジョブを、通信回線105を介して印刷装置100へ送信する。印刷ジョブは、印刷装置100に印刷処理を行わせるための指示、設定、画像データ等を含む。
【0013】
印刷装置100は、コントローラ110及びプリンタエンジン130を備える。コントローラ110は、各種の処理を行い、印刷装置100の動作を制御する。ここでは、コントローラ110が印刷装置100に内蔵される構成を説明するが、コントローラ110は、印刷装置100から独立し、印刷装置100と通信可能な装置として構成されていてもよい。
【0014】
コントローラ110は、CPU(Central Processing unit)111、ROM(Read Only Memory)112、RAM(Random Access Memory)113、及びストレージ114を備える。また、コントローラ110は、通信インタフェースとして、ネットワークインタフェース(I/F)115、通信ポート116、及びプリンタ通信I/F117を備える。コントローラ110は、ユーザインタフェースである操作パネル120を備える。これらの構成要素は、システムバスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0015】
操作パネル120は、入力インタフェースと出力インタフェースとを有する。入力インタフェースは、例えば各種キーボタン、及びタッチパネル等である。出力インタフェースは、例えばディスプレイ120a、及びスピーカ等である。コントローラ110は、ユーザの操作により、操作パネル120から各種操作の指示や設定を受け付ける。また、コントローラ110は、操作パネル120のディスプレイ120aにより、画像形成システム1の情報や印刷状態、設定画面等の表示を行う。
【0016】
ROM112は、不揮発性の記憶装置であり、起動プログラム等を記憶する。ストレージ114は、制御プログラム、画像データ、各種設定データ等の大容量データを一時的或いは長期的に保存する大容量記憶装置である。ストレージ114には、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等が用いられる。CPU111は、起動時にROM112に記憶された起動プログラムを実行することで、印刷装置100の起動処理を行う。CPU111は、印刷装置100の起動後に、ストレージ114に保存される制御プログラムを実行することで、印刷装置100による印刷処理等の動作を制御する。RAM113は、CPU111が各種処理を行う際の作業領域を提供する。
【0017】
通信ポート116は、検品装置150との間の通信を制御する。CPU111は、通信ポート116を介して検品装置150の動作制御のための信号等を送信する。CPU111は、通信ポート116を介して検品装置150から検品結果を取得する。プリンタ通信I/F117は、プリンタエンジン130との間の通信を制御する。CPU111は、プリンタ通信I/F117を介してプリンタエンジン130の動作を制御するための各種信号を送信する。ネットワークI/F115は、通信回線105を介したホストコンピュータ101及び検品装置150との間の通信を制御する。ネットワークI/F115は、通信回線105を介して取得したデータをCPU111へ送信し、且つCPU111の指示により通信回線105を介してデータを送信する。
【0018】
このような構成によりCPU111は、ネットワークI/F115によりホストコンピュータ101から取得した印刷ジョブをデコードし、ページ単位の画像データを生成する。CPU111は、生成した画像データを1ライン単位のラスタ画像データに展開する。CPU111は、プリンタ通信I/F117を介してラスタ画像データをプリンタエンジン130へ送信し、プリンタエンジン130に画像を形成させる。
【0019】
プリンタエンジン130は、コントローラ110の制御により、印刷ジョブから生成されたラスタ画像データを、印刷用紙(シート)上に可視画像として印刷する。プリンタエンジン130は、CPU131、ROM132、RAM133、コントローラ通信I/F134、カメラユニット135、タイマ136、I/Oポート137、及びAD変換器138を備える。
【0020】
CPU131は、ROM132に格納されたコンピュータプログラムを実行することで、プリンタエンジン130の制御を行う。RAM133は、CPU131が処理を実行する際の作業領域を提供する。コントローラ通信I/F134は、コントローラ110のプリンタ通信I/F117との間の通信を制御する。カメラユニット135は、画像が印刷されたシート(成果物)を読み取る。
【0021】
タイマ136は、入力信号の時間を高精度で測定し、高精度の周期信号の出力が可能である。I/Oポート137は、プリンタエンジン130の信号論理を検出する入力ポート、及び出力信号の論理を二値で出力可能な出力ポートを備える。AD変換器138は、プリンタエンジン130内のセンサの電圧値(検出値)、後述の一次転写電圧、一次転写電流、濃度検知センサの電流値、後述のCISユニットの検出信号等をデジタル値に変換してCPU131に入力する。通信I/F139は、シリアル通信による検品装置150と通信を制御する。通信I/F139は、後述のCISの検出情報等を検品装置150へ送信する。
【0022】
検品装置150は、コントローラ110との間で、通信回線105を介した通信が可能であり、且つ通信ポート116を介した通信が可能である。検品装置150は、プリンタエンジン130との間で、カメラユニット135と通信可能であり、且つ通信I/F139を介した通信が可能である。
【0023】
図2は、検品装置150の説明図である。検品装置150は、CPU151、ROM152、RAM153、ストレージ154、ネットワークI/F155、コントローラ通信I/F156、カメラI/F157、及びプリンタエンジンI/F158を備える。
【0024】
CPU151は、ROM152に格納される起動プログラムやストレージ154に格納される制御プログラム等のコンピュータプログラムを実行することで、検品装置150の制御を行う。ストレージ154は、画像処理用プログラム、画像データ等の大容量データを一時的に保存する大容量記憶装置である。ストレージ154には、例えばHDDやSSD等が用いられる。RAM153は、CPU151が処理を実行する際の作業領域を提供する。RAM153には、ストレージ154の画像処理用プログラム、ホストコンピュータ101から取得するプリント対象データの画像、カメラユニット135で撮像したシートの画像、画像演算のための作業データ等が展開される。
【0025】
ネットワークI/F155は、通信回線105を介したホストコンピュータ101及びコントローラ110との通信を制御する。コントローラ通信I/F156は、シリアル通信によるコントローラ110との間の通信を制御する。カメラI/F157は、高速シリアル通信によるプリンタエンジン130との間の通信を制御し、カメラユニット135から撮像された画像を表す画像情報を受信することが可能である。プリンタエンジンI/F158は、シリアル通信によるプリンタエンジン130との間の通信を制御し、プリンタエンジン130からセンサ情報を受信することが可能である。
【0026】
検品装置150は、通信回線105を介してホストコンピュータ101から検査項目設定、及び比較元画像等を取得する。検品装置150は、コントローラ110から印刷ジョブのページ情報等の制御情報を取得する。検品装置150は、プリンタエンジン130の制御によって、画像形成後のシートからカメラユニット135が読み取って生成した画像情報を取得する。検品装置150は、検査項目設定及びページ情報に基づいて、比較元画像とカメラユニット135から取得した画像情報とを比較することで検査(検品)を行う。
【0027】
印刷装置100のコントローラ110とカメラユニット135は、検品装置150に接続される。検品装置150は、カメラユニット135よって読み取られた画像に基づいて、シートに印刷された画像を検品する。検品装置150は、通信回線105を介してホストコンピュータ101等から、検査レベルが設定可能となっている。
【0028】
図3は、プリンタエンジン130の構成図である。プリンタエンジン130は、シートに画像を形成する画像形成ユニット200、画像定着ユニット220、紙上読取ユニット240、カメラユニット135、スタッカ260、及びフィニッシャ280を含んで構成される。シートは、画像形成ユニット200を最上流として、画像定着ユニット220、紙上読取ユニット240、カメラユニット135、スタッカ260、フィニッシャ280の順に搬送される。画像形成ユニット200及び画像定着ユニット220が画像形成部を構成する。
【0029】
画像形成ユニット200は、第1給紙デッキ201、第2給紙デッキ202、作像部204Y、204M、204C、204K、中間転写ベルト211、二次転写内ローラ212、及び二次転写外ローラ213を備える。二次転写内ローラ212と二次転写外ローラ213とにより、二次転写部214が構成される。作像部204Y、204M、204C、204Kは、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの可視トナー像を現像する。作像部204Y、204M、204C、204Kは、それぞれ感光ドラム205、帯電ローラ206、レーザスキャナ207、現像器208、及びトナーホッパ209を備える。
【0030】
第1給紙デッキ201及び第2給紙デッキ202には、それぞれ画像が印刷されるシートを収容することができる。第1給紙デッキ201と第2給紙デッキ202とに収容されるシートは、紙種やサイズが必ずしも同じである必要は無い。印刷ジョブが実行されると、第1給紙デッキ201あるいは第2給紙デッキ202に収容されたシートは、最上位の一枚のみが分離して搬送パス203に給紙される。給紙されたシートは、搬送パス203を二次転写部214まで搬送される。
【0031】
作像部204Y、204M、204C、204Kの構成について説明する。作像部204Y、204M、204C、204Kは同じ構成であるため、ここでは作像部204Yについて説明する。感光ドラム205は、表面に感光層を有する感光体である。感光ドラム205は、ドラム軸を中心に回転駆動される。帯電ローラ206は、回転する感光ドラム205の表面を一様に帯電させる。レーザスキャナ207は、感光ドラム205の帯電した表面に、ラスタ画像データに応じてレーザ光を露光することで、感光ドラム205の表面に静電潜像を形成する。現像器208は、静電潜像を可視トナー像に現像する。
【0032】
このようにして作像部204Yの感光ドラム205の表面にはイエローのトナー像が形成される。作像部204Mの感光ドラム205の表面にはマゼンタのトナー像が形成される。作像部204Cの感光ドラム205の表面にはシアンのトナー像が形成される。作像部204Kの感光ドラム205の表面にはブラックのトナー像が形成される。トナーホッパ209は、対応する色のトナーを不図示のトナーボトルから搬送し、対応する現像器208に安定した所定量のトナーを補給する。
【0033】
中間転写ベルト211を挟んで各作像部204Y、204M、204C、204Kの感光ドラム205に対向する位置には、一次転写ローラ210が配置される。一次転写ローラ210に一次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルト211上に、各感光ドラム205から各色のトナー像が重畳して転写される。
【0034】
中間転写ベルト211は、図中時計回り方向に回転しており、各作像部204Y、204M、204C、204Kの感光ドラム205から各色のトナー像が重畳して転写されることで、4色のフルカラー画像が形成される。また、中間転写ベルト211は、回転することで、形成されたフルカラー画像を二次転写部214へ搬送する。二次転写部214は、二次転写内ローラ212と二次転写外ローラ213との間に印加される二次転写バイアスにより、中間転写ベルト211が担持する各色のトナー像をシートに一括して転写する。シートの所定の位置にトナー像を転写するために、シートが二次転写部214に搬送されるタイミングと、トナー像が二次転写部214に搬送されるタイミングと、が調整される。トナー像が転写されたシートは、画像定着ユニット220へ搬送される。
【0035】
中間転写ベルト211の回転方向で作像部204Kの下流側、且つ二次転写部214の上流側には、第1光学センサ215及び第2光学センサ216が配置される。第1光学センサ215は、作像部204Y、204M、204C、204Kにより中間転写ベルト211上に形成されたトナー像であるパッチパターンに対して、光を照射し、その反射光量を検出することで、トナー像の画像濃度を検出することができる。第2光学センサ216は、作像部204Y、204M、204C、204Kにより中間転写ベルト211上に形成された各色のトナー像である色ずれ検知パターンに対して、光を照射し、その反射光量の変化タイミングを検出する。第2光学センサ216により、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色のトナー像の色ずれ量を検出することができる。
【0036】
画像定着ユニット220は、定着器221、排紙パス227、反転パス228、反転待機パス229、再給紙パス231、排紙フラッパ226、及び反転フラッパ230を備える。定着器221は、トナー像をシートへ熱定着することで永久固着させる。定着器221は、定着ベルトユニット222、加圧ローラ223、ヒータ224、及びリフレッシュローラ225を有する。
【0037】
定着ベルトユニット222は、金属ベルトの表面にシリコンゴムによる弾性部材が積層された定着ベルトを、金属ローラで張架することで構成される。定着ベルトユニット222は、ヒータ224によって加熱される。加圧ローラ223は、定着ベルトユニット222との間でシートを挟持搬送して加圧する機能を有する。定着ベルトユニット222と加圧ローラ223とにより挟持搬送されるシートは、トナーが溶融、圧着されることで、トナー像が定着される。これによりシートにフルカラーの画像が形成される。
【0038】
リフレッシュローラ225は、通常は、定着ベルトユニット222から離間しており、所定の時間間隔で不図示の駆動部によって定着ベルトユニット222に当接され、回転駆動される。リフレッシュローラ225が当接して回転することで、定着ベルトユニット222の表層が研磨されて均される。これにより、定着ベルトユニット222による良好な定着特性が維持される。
【0039】
定着器221を通過したシートは、片面印刷或いは両面印刷で両面への画像形成が完了している場合には、排紙フラッパ226によって排紙パス227へ搬送される。排紙パス227に搬送されたシートは、紙上読取ユニット240へ搬送される。
【0040】
両面印刷で片面へのみ画像形成が完了している場合には、定着器221を通過したシートは、排紙フラッパ226によって反転パス228へ搬送される。反転パス228に搬送されたシートは、反転待機パス229まで搬送された後に逆転搬送され、反転フラッパ230によって再給紙パス231へと搬送される。これによりシートの画像形成面が反転される。シートは、再度、シート搬送パス203を介して二次転写部214へ搬送される。二次転写部214では、シートは、反転された画像形成面にトナー像が転写される。これよりシートの両面への画像形成が行われる。
【0041】
紙上読取ユニット240は、CIS(Contact Image Sensor)ユニット321、322及び搬送パス243を備える。CISユニット321とCISユニット322とは、搬送パス243を挟んで対向して配置される。図4は、CISユニット321、322の構成図である。CISユニット321は、搬送パス243を搬送されるシートSの一方の面(上面、或いは第1面という)の画像の読み取りに用いられる。CISユニット322は、搬送パス243を搬送されるシートSの他方の面(下面、或いは第2面という)の画像の読み取りに用いられる。本実施形態では、CISユニット321、322は、例えば600[dpi]の解像度で、シートSに形成された画像を読み取る。
【0042】
CISユニット321は、光源となる白色LED(Light Emitting Diode)350、読取センサ351、及びシェーディング用の基準部材となる白色板352を有する。CISユニット322は、光源となる白色LED353、読取センサ354、及びシェーディング用の基準部材となる白色板355を有する。シートに画像形成条件等の調整用画像が形成された調整用チャートが搬送パス243に搬送される場合、CISユニット321、322は、それぞれ、調整用チャートが所定の読取位置を通過するタイミングで調整用画像の読取処理を行う。
【0043】
調整用画像の読み取りは、CPU131が白色LED350、353を発光させることで行われる。白色LED350、353からの光の調整用画像による反射光は、読取センサ351、354に受光される。読取センサ351、354は、受光した反射光を光電変換して生成した電気信号を、シート画像情報としてRAM133に保存する。このように調整用画像が読み取られる。なお、読取センサはCCDイメージセンサ等の光学系センサでもよい。
【0044】
CPU131は、RAM133に保存されたシート画像情報に基づいて、調整用画像の画像濃度及び各色の色ずれ量を画像形成条件にフィードバックし、画像形成条件を調整することで、印字濃度や印字位置精度の安定化を図る。また、紙上読取ユニット240により取得されたシート画像情報は、検品装置150へも送信される。
【0045】
紙上読取ユニット240を通過したシートは、カメラユニット135へ搬送される。カメラユニット135は、搬送パス253を挟んで対向する位置に、カメラ251とカメラ252とが配置される。カメラ251は、シートの上面の画像を読み取る。カメラ252は、シートの下面の画像を読み取る。カメラユニット135は、搬送パス253を搬送されるシートがカメラ251、252の撮影位置に到達したタイミングで、カメラ251、252を用いてシートの両面の画像を読み取る。カメラユニット135は、読取結果であるシート画像情報を検品装置150へ送信する。カメラユニット135を通過したシートは、スタッカ260へ搬送される。
【0046】
カメラ251、252は、光学的に画像を読み取ることができればよい。カメラ251、252は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)、ラインスキャンカメラ等を用いて実現される。ラインスキャンカメラには、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等がある。
【0047】
スタッカ260は、大容量のシートを積載可能な大容量スタッカである。スタッカ260は、シートを積載するトレイとして、リフトテーブル270及びイジェクトテーブル269から構成されるスタックトレイを備える。また、スタッカ260は、検品により異常と判定されたシート(異常シート)の排出先となるエスケープトレイ266と、フィニッシャ280へシートを搬送するための搬送パス268と、を備える。スタックトレイへシートを搬送するために、スタッカ260は、搬送パス261、263、267、フラッパ264、265、及びベルト搬送部267を備える。搬送パス261の途中には反転部262が設けられる。カメラユニット135から搬送されたシートは、印刷ジョブの指定情報或いは検品装置150による判定結果に基づいて、いずれかの排出先に搬送される。
【0048】
検品装置150によって異常と判定されたシートは、搬送パス261及び263を搬送され、フラッパ264及びフラッパ265によりエスケープトレイ266へ排出される。紙上読取ユニット240で調整用画像が読み取られた調整用チャートも、同様にエスケープトレイ266へ排出される。
【0049】
検品装置150によって正常と判定されたシートや、印刷ジョブの指定により検査対象外とされたシートは、印刷ジョブの指定により排出先が決定する。印刷ジョブの指定により排出先がスタックトレイに決定された場合、シートは、搬送パス261、263、フラッパ264、及びベルト搬送部267を介してリフトテーブル270に積載される。印刷ジョブの指定により後処理が必要な場合、シートは、フィニッシャ280へ搬送される。
【0050】
リフトテーブル270は、上下動が可能であり、シートが積載されていない状態では上側に位置する。リフトテーブル270は、シートの積載が進むと、積載した複数枚のシート(シート束)の高さ(厚さ)分だけ下降する。これによりリフトテーブル270に積載されたシート束の最上面は、常に一定の高さに制御される。
【0051】
リフトテーブル270へのシートの積載が完了するか満積載になった場合、リフトテーブル270は、イジェクトテーブル269の位置まで下降する。リフトテーブル270とイジェクトテーブル269とは、シート束を支持するバーが咬み合うように構成されている。そのためリフトテーブル270が下降してイジェクトテーブル269より低い位置に到達した時点で、リフトテーブル270上のシート束は、イジェクトテーブル269に積み替えられた状態となる。イジェクトテーブル269は、積み替えられたシート束を積載した状態で図中手前側に引き出される。ユーザは、引き出したイジェクトテーブル269上のシート束を容易に取り出すことができる。
【0052】
なお、スタックトレイに積載されるシートは、一旦反転部262へ送られる。シートは、スタックトレイに積載される場合に、リフトテーブル270上にフリップして積載されるために、積載時に上下の向きが反転する。これを防止ししてシートの向きを合わせるために、シートは、反転部262へ送られて向きが反転される。エスケープトレイ266やフィニッシャ280へ搬送されるシートは、反転部262による反転動作が行われない。
【0053】
フィニッシャ280は、スタッカ260から取得したシートに対して、ユーザが印刷ジョブにより設定した所定の後処理を行う。フィニッシャ280は、例えば、ステイプル処理(1個所・2箇所綴じ)、パンチ処理(2穴・3穴)、中綴じ製本処理等の後処理が可能である。フィニッシャ280は、2つの排紙トレイ284、286及び中綴じ製本トレイ288の3つの排紙部を備える。フィニッシャ280は、フラッパ281、282、中綴じ部283、針綴じ部285、及び搬送部287を備える。
【0054】
ステイプル処理等の後処理を行わない場合、シートは、フラッパ281及びフラッパ282により排紙トレイ284へ排紙される。ステイプル処理を行う場合、シートは、フラッパ281及びフラッパ282により針綴じ部285へ搬送される。針綴じ部285は、搬送されてきたシートに対してステイプル処理を実行する。ステイプル処理が行われたシートは、排紙トレイ286へ排紙される。
【0055】
後処理として中綴じ製本処理が設定された場合、シートは、中綴じ部283へ搬送される。中綴じ部283は、シート中央にステイプル処理を行った後にシートを二つ折りにして中綴じを行う。中綴じ製本処理が終了すると、製本されたシート束(中綴じ製本束)は、搬送部287を介して中綴じ製本トレイ288へ排出される。中綴じ製本トレイ288は、ベルトコンベア構成である。中綴じ製本トレイ288上に積載された中綴じ製本束は、ベルトコンベアにより図中左側へ搬送される。
【0056】
(検品方法)
検品装置150は、予め設定された検査項目に従って、カメラユニット135から取得したシート画像情報を検査(検品)する。検査項目は様々あるが、ここでは一例として、バーコード可読検査と表裏照合検査を行う例について説明する。
【0057】
図5は、シート画像情報の検品の説明図である。上面読取画像401は、シートの上面の画像を読み取ったシート画像であり、カメラ251による読取画像である。下面読取画像402は、シートの下面の画像を読み取ったシート画像であり、カメラ252による読取画像である。上面読取画像401には検査対象となる検査エリア410、421が設けられ、下面読取画像402には検査対象となる検査エリア422が設けられる。
【0058】
検品装置150は、まず、検査エリア410内に存在するバーコードが可読か否かを判定する。可読である場合はバーコードが正常に印刷され、不可読である場合はバーコードの印刷に異常があると判定される。次に検品装置150は、OCR(Optical Character Recognition)等の文字認識によって、検査エリア421、422内の数値を文字データとして抽出する。ここでは、印刷が正常に行われている場合には、シートの表裏面(上面と下面)で同じ数値が印字されるように印刷ジョブが構成されているものとする。これによりシートの表裏面に意図通りの印刷が行われているか否かが判定される。検査エリア421と検査エリア422から抽出した数値が同じである場合には印刷が正常であると判定され、異なる場合には印刷が異常であると判定される。検品装置150は、これらの検査を行い、いずれかの検査で印刷に異常があると判定した場合には当該シートを「異常シート」と判定し、いずれの検査においても異常が検出されなかった場合には当該シートを「正常シート」と判定する。
【0059】
検品装置150は、他にも、印字位置検査、シート重複検査、シート抜け検査、色ずれ検査、色味検査、スジ検出、ポチ検出、読取画像とオリジナルデータのフル画像比較検査等の様々な検査が可能である。
【0060】
なお本実施形態では、検品装置150に対する上記の検査エリアや検査内容の設定は、通信回線105を通じてホストコンピュータ101や印刷装置100の操作パネル120等から行うことができる。フル画像比較検査が行われる場合には、検品装置150は比較元画像をホストコンピュータ101等から取得する。また別の構成として、検品装置150に操作部を設け、この操作部から検査エリアや検査内容を設定可能としてもよい。
【0061】
図6は、検品装置150に検査エリアや検査内容を設定するための検査設定画面の例示図である。検査設定画面は、検品装置150による検品が実行される検査エリア及び検査精度を示す検査レベルを含む検査設定をユーザが指示するための画面である。ここでは、検査設定画面が、ホストコンピュータ101に設けられるディスプレイに表示される例を説明する。そのために検査設定は、ホストコンピュータ101により行われる。なお、検査設定が印刷装置100により行われる場合には、検査設定画面は、操作パネル120のディスプレイ120aに表示されることになる。
【0062】
検査設定画面は、表示領域700に、印刷対象の画像704、検査エリア705a、705b、及び検査除外エリア711等を表示する。検査設定画面には、ボタン701a、701b、701c、及びプルダウンメニュー702a、702bも表示される。ホストコンピュータ101には、キーボード、タッチパネル、ポインティングデバイス等の各種入力装置が設けられる。このような入力装置によりボタン701a、701b、701c、及びプルダウンメニュー702a、702bが操作されることで、検査エリア705a、705b及び検査除外エリア711が設定される。
【0063】
検査エリア705aは、ボタン701aを操作することで設定される標準検査エリアである。例えばユーザは、ボタン701aを操作し、ポインティングデバイス等で画像704内の範囲を決定することで検査エリア705aを設定することができる。標準検査エリアでは、例えば、標準的内容の検査が実行される。標準的内容は、例えば検査内容として位置ずれ検知、色味検知、スジ検知を含む。標準的内容は、印刷物に印刷されている画像によって変更されてもよい。例えば画像がテキストの場合には、色味検知は標準的内容から除外されてもよい。
【0064】
プルダウンメニュー702aは、検査エリア705aに適用される検査レベル(検査精度)を設定するために操作される。この例では、「検査レベル1」が最も検査精度が低く、検査レベルの数字が大きくなるにつれて検査精度が高くなる。検査レベルの最大値は、例えば「10」(検査レベル10)である。プリダウンメニューは、ドロップダウンリストと呼ばれてもよい。
【0065】
検査エリア705bは、ボタン701bを操作することで設定される重点検査エリアである。例えばユーザは、ボタン701bを操作し、ポインティングデバイス等で画像704内の範囲を決定することで検査エリア705bを設定することができる。重点検査エリアは、例えば、高精度の検査が実行され、標準検査エリアよりも検査内容が多い。図6の例では、検査エリア705b内の丸や十字型等の図形について、標準検査エリアよりも検査内容を増やした高精度な検査が実行される。プルダウンメニュー702bは、検査エリア705bに適用される検査レベル(検査精度)を設定するために操作される。
【0066】
検査除外エリア711は、ボタン701cを操作することで設定される検査が実行されないエリアである。例えばユーザは、ボタン701cを操作し、ポインティングデバイス等で画像704内の範囲を決定することで検査除外エリア711を設定することができる。ここでは検査除外エリア711内の円筒形や三角形については、検査を行う必要がない。そのため、これらの図形を含む領域が検査除外エリア711に設定されている。
【0067】
このように印刷される画像704の領域毎に、検査内容や検査レベルの設定が可能である。そのためにユーザは、領域毎に適切な検査基準を設定することができる。その結果、許容可能な品質である印刷物は正常と判定されるため、無駄な印刷のやり直しが減少し、生産性が向上する。また、シートの無駄な廃棄も減少する。
【0068】
(自動調整)
本実施形態の印刷装置100による自動調整動作について説明する。印刷装置100(プリンタエンジン130)は、画像形成を続けるうちに、構成部品の経時変化、温度、湿度等の変動要因、部材の変形、カメラ251、252、CISユニット321、322の異物付着等、が発生する可能性がある。印刷装置100は、これらの影響を受けても、一定の画像品質を維持し続けるために、自動調整動作を実行している。自動調整動作には、例えば、色ずれ補正、トナー階調濃度補正、定着ローラ表面リフレッシュ制御、CISユニット321、322のシェーディング補正、CISユニット321、322のゴミ補正等があげられる。これらの動作について説明する。
【0069】
色ずれ補正について説明する。色ずれ補正は、上記の作像部204Y、204M、204C、204K及びレーザスキャナ207が各色のトナー像を形成する際に、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色のトナー像に色ずれが生じないように補正する制御である。色ずれ量は、作像部204Y、204M、204C、204Kの各感光ドラム205やレーザスキャナ207の温度変化等の要因で変動する。そのために、印刷ジョブの実行中に現在の色ずれ量を検出し、適切な色ずれ補正量を算出して、レーザスキャナ207によるレーザ光の照射開始位置(画像の書出タイミング)等の画像形成条件の補正を行う必要がある。
【0070】
図7は、色ずれ補正用の調整用画像の説明図である。調整用画像1011は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色のトナー像で形成されたパターン像であり、中間転写ベルト211上に形成されている。第2光学センサ216は、反射光量センサ1001、1002、1003を、中間転写ベルト211の回転方向に交差する方向に並べて備えている。調整用画像1011は、反射光量センサ1001、1002、1003のそれぞれの読取位置に応じて、中間転写ベルト211の回転方向に交差する方向に3列構成される。反射光量センサ1001、1002、1003による各色のパターン画像の検出タイミングのずれに基づいて、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの色ずれ量が検出される。
【0071】
色ずれ量は、レーザスキャナ207が感光ドラム205を走査する際の主走査方向の位置ずれ及び主走査方向の倍率ずれ、感光ドラム205及び中間転写ベルト211の回転方向である副走査方向の位置ずれ、等がある。色ずれ補正用の調整用画像から検出されたイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの色ずれ量に基づいて、レーザスキャナ207の書出タイミングを調整することで、色ずれを抑制することが可能である。
【0072】
色ずれ補正動作は、通常の各ページの画像形成の間で行ってもよいが、より高精度の補正を行うために、各ページの作像間隔を意図的に延ばし、感光ドラム205の2周分以上の調整用画像を形成して色ずれ量を検出する動作を行ってもよい。本実施形態では、初期状態では画像形成を100枚のシートに行う間に一度、各ページの作像間隔を意図的に延ばして色ずれ補正を行う。
【0073】
トナー階調濃度補正について説明する。トナー階調濃度補正は、作像部204Y、204M、204C、204Kにより可視トナー像を生成するときに、ディザパターンによって再現される中間調濃度の安定性を得るための制御である。印刷ジョブに含まれる中間調の画像情報は、コントローラ110によってディザパターンに置換され、レーザスキャナ207の露光に用いられる。このとき、現像器208内のトナーの状態等により、ディザパターンを形成するドットの安定度が変化するため、中間調の画像濃度が経時的に変化することがある。
【0074】
図8は、階調濃度補正用の調整用画像の説明図である。調整用画像1111は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色のトナー像で形成された中間調パッチパターン像であり、中間転写ベルト211上に形成されている。第1光学センサ215は、反射光量センサ1101、1102、1103を、中間転写ベルト211の回転方向に交差する方向に並べて備えている。調整用画像1111は、反射光量センサ1101、1102、1103のそれぞれの読取位置に応じて、中間転写ベルト211の回転方向に交差する方向に3列構成される。
【0075】
反射光量センサ1101、1102、1103は、中間調パッチパターン像の反射光を受光し、その反射光量を読み取る。反射光量センサ1101、1102、1103は、中間転写ベルト211上に形成されたトナー像(調整用画像1111)に対して光を照射し、その正反射光と乱反射光とを受光する。反射光量センサ1101、1102、1103は、正反射光と乱反射光のそれぞれの光量に応じた電気信号をAD変換する。AD変換により得られる各AD変換値に対して、色毎に適した計算式を適用することで、各色の中間調濃度を得ることができる。
【0076】
このように検出されたイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの中間調濃度を、予め意図した中間調濃度となるように逆補正するためのルックアップテーブルが生成される。このルックアップテーブルにより、中間調濃度が意図した特性で維持される。
【0077】
トナー階調濃度補正動作は、通常の各ページの画像形成の間で行われてもよい。より高精度の補正を行うためには、各ページの作像間隔を意図的に延ばし、多数の中間調の中間調パッチパターン像を形成して、低濃度域から高濃度域まで精度の高いトナー階調濃度補正動作が行われてもよい。本実施形態では、初期状態では画像形成を200枚のシートに行う間に一度、各ページの作像間隔を意図的に延ばしてトナー階調濃度補正を行う。
【0078】
定着ローラ表面リフレッシュ制御について説明する。定着ベルトユニット222の表層は、トナー像の良好な定着性を実現するために、上記の通り弾性部材で形成されている。そのため、連続して同じ紙幅のシートを搬送することで、定着ベルトユニット222の表層は、シートの断面部、つまり紙コバ部に段差が生じてしまうことある。この状態で段差の幅より紙幅の広いシートが到来した場合、この段差部分により熱定着性に差が発生する。この段差は、光沢スジとなって表れることがある。特に、定着ベルトユニット222の表層に段差が生じた部分が、紙幅の広いシートにおいてベタ部に重なった場合には、顕著な光沢スジとなり、画像品質の低下につながる。
【0079】
リフレッシュローラ225は、通常は定着ベルトユニット222から離間しているが、所定の時間間隔で不付図示の駆動部によって定着ベルトユニット222に当接されて、回転駆動される。リフレッシュローラ225を当接して回転駆動することで、定着ベルトユニット222上に発生する段差が均される。
【0080】
リフレッシュローラ225により定着ベルトユニット222に発生する段差を均す動作は、いつ紙幅が広いシートを含むページが到来しても良いように一定の時間間隔で行う必要がある。しかしこの動作中は定着ベルトの回転にジッタが生じるため、シートに対する通常の定着動作を行う事ができない。そのため、各ページの作像間隔を意図的に開けて通常のシートの到達を一時停止した上で、定着ベルト表層の均しが行われる。本実施形態では、初期状態では300枚のシートに定着処理を行う度に、定着ローラ表面リフレッシュ制御が行われるように設定されている。
【0081】
CISユニット321、322のシェーディング補正について説明する。図4に示したように、CISユニット321は、不図示のCPUにより制御された白色LED350を点灯させて、シートSの表面側に光を照射する。シートSによる反射光は、読取センサ351で受光される。読取センサ351による反射光の受光結果に基づいて、シートSの表面の画像濃度が検出される。
【0082】
この際、シートSの搬送方向に交差する方向に、直線状に光が照射される。読取センサ351は、光電変換素子が、シートSの搬送方向に交差する方向(直線状の光の方向)と同方向に複数配列されている。そのために、CISユニット321の主走査方向は、シートSの搬送方向に交差する方向となる。副走査方向は、シートSの搬送方向となる。CISユニット322についても同様である。
【0083】
白色LED350から照射される光は主走査方向に光量ムラがあり、読取センサ351にも主走査方向に感度がムラある。このような光量ムラや感度ムラは、CISユニット321の主走査方向の画像濃度の検出特性に影響する。安定した画像濃度の検出を行うためには、この検出特性に応じた補正が必要である。
【0084】
光量ムラや感度ムラは、白色LED350の点灯時間や温度変化、読取センサ351の駆動時間や温度変化によって変動する。そのために、不図示の白色板駆動モータによって白色板352を白色LED350の読取位置に移動させ、これを読取センサ351で読み取ることにより、基準状態の検出特性を取得してシェーディング補正を行う必要がある。
【0085】
シェーディング補正中は、白色板352が移動することにより白色LED350及び読取センサ351がシートS側から遮られるため、シートSの画像濃度を検出することができない。そのためにシェーディング補正は、各ページの作像間隔を意図的に延ばして通常のシートSの到達を一時停止した上で行われる必要がある。
【0086】
CISユニット322も同様にシェーディング補正を行う必要がある。本実施形態では、初期状態では、500枚のシートSへの印字が行われる度に、CISユニット321、322のシェーディング補正を行うように設定されている。
【0087】
印字位置調整制御について説明する。図9は、印字位置調整に使用される印字位置調整用チャートの例示図である。シートの上面には、上面用の印字位置調整用画像800が形成される。シートの下面には、下面用の印字位置調整用画像801が形成される。印字位置調整用画像800と印字位置調整用画像801とは同様の画像となる。印字位置調整用画像800、801は、それぞれの特定の位置に印刷されたマーク820を含む。
【0088】
上面用の印字位置調整用画像800のマーク820は、カメラ251に読み取られる。下面用の印字位置調整用画像801のマーク820は、カメラ252で読み取られる。マーク820は、通常、シートに対する反射率の差が大きい色のトナーで形成される。本実施形態では、マーク820は黒色のトナーで形成される。
【0089】
マーク820は、印字位置調整用画像800、801の上面、下面のそれぞれの4隅の計8箇所に印字される。各マーク820は、印字位置が理想通りであれば、シート端から一定距離離れた位置に印字されるように配置される。印字位置調整用画像800、801上の各マーク820の相対位置を測定することで、印字位置のずれ量が取得できる。
【0090】
本実施形態では、図9中(A)~(R)で表された部分が印字位置調整のための測定値となる。(A)は、印字位置調整用チャートの主走査方向長さとなる。(B)は、印字位置調整用チャートの副走査方向長さとなる。(C)~(R)は、マーク820から直近のシート端までの距離となる。理想的には、各マーク820は、それぞれ対応するシート端から所定距離、ここでは例えば1[cm]離れた位置に印字される。
【0091】
印字位置ずれ量の算出法について説明する。図10は、印字位置ずれ量の算出法の説明図である。
【0092】
図10(a)は、図9の上面用の印字位置調整用画像800のカメラ251による読取結果の例示図である。ここでは、マーク820とシート端との距離(C)~(J)を、所定の位置を基準位置とした座標系で、(x11,y11)、(x12,y12)、(x13,y13)、(x14,y14)と表す。また、それぞれの座標が直線で結ばれる。
【0093】
まず、画像先端側の(x11,y11)と(x12,y12)とを結ぶ直線を、(x11,y11)と(x13,y13)とを結ぶ直線に対して直角にするための直角補正が行われる。図10(b)に示すように、(x11,y11)と(x12,y12)とを結ぶ直線の長さの半分の長さの位置(x101,y101)を基準にして、主走査方向における各位置の画像の副走査書き出し位置を求めて補正することで直角補正が行われる。これにより、(x11,y11)が(x21,y21)、(x12,y12)が(x22,y22)、(x13,y13)が(x23,y23)、(x14,y14)が(x24,y24)となる。
【0094】
次に画像後端側の(x23,y23)と(x24,y24)とを結ぶ直線を、(x21,y21)と(x23,y23)とを結ぶ直線に対して直角にするための台形補正が行われる。図10(c)に示すように、(x23,y23)と(x24,y24)とを結ぶ直線の長さの半分の位置(x102,y102)を基準にして、台形補正が行われる。台形補正は、(x23,y23)が(x33,y33)、(x24,y24)が(x34,y34)となるように主走査方向における各位置での副走査方向の倍率を求めて補正することで行われる。
【0095】
次に、図10(d)に示すように、主走査方向と副走査方向の画像の長さを理想の長さ(主走査方向、副走査方向それぞれ用紙長さ-2[cm])にする。そのために、主走査方向と副走査方向の倍率を求め、画像の中心を基準にして、倍率補正が行われる。倍率補正は、(x21,y21)が(x41,y41)、(x22,y22)が(x42,y42)、(x33,y33)が(x43,y43)、(x34,y34)が(x44,y44)となるように補正することで行われる。
【0096】
次に、図10(e)に示すように、シートの(x103,y103)と(x104,y104)とを結ぶ直線と、画像の(x41,y41)と(x43,y43)とを結ぶ直線とを平行にする。そのために、(x41,y41)を基準として、画像をθ2回転させ、(x42,y42)が(x52,y52)、(x43,y43)が(x53,y53)、(x44,y44)が(x54,y54)となるように斜行が補正される。
【0097】
次に、図10(f)に示すように、シートの中心と画像の中心を合わせるように、主走査方向と副走査方向の書き出し位置を求めて補正する。このように演算して補正を行うことで、図10(g)に示すように画像が補正される。下面も同様に補正が行われる。本実施形態では、初期状態では、400枚のシートSへの印字が行われる度に、印字位置調整を行うように設定されている。
【0098】
(印刷処理及び検品処理)
図11は、本実施形態の印刷処理及び検品処理時の情報の受け渡しを示すシーケンス図である。
【0099】
検査レベルの設定時には、ホストコンピュータ101は、検査レベル値や検査で使用する比較元画像を検品装置150へ通知する(S301)。検品装置150は、ホストコンピュータ101から取得した検査レベル値や比較元画像を保存し、検査レベル値をプリンタエンジン130へ通知する(S302)。プリンタエンジン130は取得した検査レベル値に基づいて、調整頻度を設定する(S303)。
【0100】
印刷時には、コントローラ110は、プリンタエンジン130へ印刷指示と印刷データ(画像データ)を送信する。プリンタエンジン130は、印刷指示と印刷データに基づいて印刷処理を実行する(S304)。プリンタエンジン130は、印刷中に、印刷完了したシートの枚数をカウントし、カウント結果とプリンタエンジン130に予め設定された調整頻度とに基づいて調整動作を行うか否かを判定する(S306)。プリンタエンジン130は、調整動作を行うと判定した場合に調整動作を行う(S307)。
【0101】
印刷装置100が印刷処理を行う間、検品装置150は、シートが搬送される度にプリンタエンジン130から送信された画像の検査を行う(S305)。ここで送信される画像は、カメラユニット135及び紙上読取ユニット240で読み取られた画像を表す画像情報である。
【0102】
印刷中に検品装置150が成果物の異常発生を検出した場合(S308)、検品装置150は、異常発生時の検査結果をプリンタエンジン130に通知する。プリンタエンジン130は、異常発生に対応する調整を実行する(S309)。印刷装置100は、以上のS304~S309の処理を印刷終了まで実行する。
【0103】
(プリンタエンジンと画像品質)
プリンタエンジン130と画像品質について説明する。図12は、2つのプリンタエンジンで形成された出力画像の画像品質の特徴の説明図である。例えば、プリンタエンジンAは、色味の品質は「中」である。プリンタエンジンBは、色味の品質は「高」である。画像位置ずれに関する品質は、プリンタエンジンAが、プリンタエンジンBの品質より優れており、「高」である。
【0104】
即ち、プリンタエンジンAと検品装置150とが接続された構成では、色味に関して厳しい検査レベルが設定された場合には、色味の検査レベルを満足した画像を出力し続けることができる可能性が低い。しかしこの構成では、画像位置ずれ項目に関して厳しい検査レベルが設定された場合には、画像位置ずれの検査レベルを満足した画像を出力し続けることができる可能性が高い。プリンタエンジンBと検品装置150とが接続された構成では、この逆のことがいえる。
【0105】
このように、同じ検査項目に対して同じ検査レベルが設定されていても、プリンタエンジンが異なれば、その性能差により検査結果に差異が生じる。それため、ユーザが高精度の検査を行うために高い検査レベルを設定した場合に、プリンタエンジンによっては、検査レベルに対応した画像品質で画像出力できずに異常があると判定される成果物が増える。そこで、本実施形態では、検査レベルに応じた頻度で調整を行うことで、異常と判定されてプリンタエンジンが停止した後の調整動作によって生じるダウンタイムを未然に防止する。
【0106】
(画像品質と調整頻度)
検査レベルを満たせる画像品質と調整頻度の関係について、検査レベルを満たせる印字枚数(成果物の枚数)と画像の色味の品質との関係図を用いて説明する。
【0107】
図13は、プリンタエンジン130によるトナー階調濃度補正実行後の印字枚数と画像の色味品質の説明図である。図13によれば、色味の品質が「中」のプリンタエンジンであっても、色味の補正を行うトナー階調濃度補正を実行してからしばらくは(印字枚数で70枚程度)、成果物が、最も高い検査レベルである「10」の品質を満たすことができる。しかし、印字枚数が増えると、現像器内のトナー等の状態によりディザパターンを形成するドットの安定度が変化することで、中間調の画像濃度が経時的に変化する。そのため、次のトナー階調濃度補正タイミングを迎える前に色味品質が満たせず、異常画像と判定される可能性が高くなる。
【0108】
そのため、ユーザが色味に関してより高い品質を期待して検査レベルをより厳しく設定、例えば最大の「10」に設定した検品装置150により検査を行うと、調整直後は色味品質を満たせるが、印字枚数が増えると異常画像の判定の可能性が高くなる。そこで、本実施形態では、検査レベルに応じた頻度でトナー階調濃度補正を行うようにする。
【0109】
検査レベルに応じたトナー階調濃度補正の頻度について説明する。図14は、検査レベルに応じたトナー階調濃度補正頻度の説明図である。ここでは、色味の検査レベルの基準設定値は「6」であり、対応するトナー階調濃度補正の頻度は、印字枚数が200枚毎に一回である。ユーザが色味の検査レベルを「10」に設定した場合、印字枚数が40枚毎にトナー階調濃度補正が実行されるようになる。つまり、検査レベルが高くなるにつれて、補正動作(調整動作)の実行頻度が高くなる。ここではトナー階調濃度補正の頻度を一例として説明したが、他の補正動作(調整動作)でも同様である。検査レベルに対応した調整頻度は、一意の値に限定されるものではなく、プリンタエンジンの性能や、調整の種類に応じて異なってもよい。
【0110】
プリンタエンジン130は、図14に例示するような検査レベルとトナー階調濃度補正頻度との関係を表す情報であるテーブルを、例えばRAM133に保持する。このテーブルは、後述の調整頻度閾値の設定の際にCPU131に参照される。また、このテーブルは、ユーザが検査レベルを設定する際に表示されてもよい。例えば、図6の検査設定画面の表示タイミングで表示することで、ユーザに検査レベルと調整頻度との関係を通知する。これによりユーザは、最適な検査レベルの設定を容易に行うことができる。また、検査設定画面からプルダウンメニュー702a、702bが操作されるタイミングで、このテーブルが表示されてもよい。
【0111】
なお、ホストコンピュータ101で検査レベルを設定する際には、このテーブルはホストコンピュータ101に設けられるディスプレイに表示される。操作パネル120で検査レベルを設定する際には、このテーブルは操作パネル120のディスプレイ120aに表示される。検品装置150に検査レベルを設定するためのユーザインタフェースが設けられる場合には、このテーブルは、該ユーザインタフェースに表示される。
【0112】
図15は、検査レベルに応じた調整頻度の閾値決定処理を表すフローチャートである。この処理は、図11のS303の処理の詳細な説明となる。ここでは、検査レベルに対応する調整頻度が図14の場合について説明する。
【0113】
プリンタエンジン130のCPU131は、検品装置150から検査レベルを表す検査レベル値を取得する(S501)。CPU131は、取得した検査レベル値に応じて、調整頻度閾値を設定する。印字枚数が調整頻度閾値に到達すると、調整が行われる。CPU131は、上記したように、RAM133に保持されたトナー階調濃度補正頻度を表すテーブルを参照して調整頻度閾値を決定する。
【0114】
検査レベルが「10」の場合(S502:Y)、CPU131は、調整頻度閾値として40枚を選択する(S503)。検査レベルが「9」の場合(S502:N、S504:Y)、CPU131は、調整頻度閾値として80枚を選択する(S505)。検査レベルが「8」の場合(S502:N、S504:N、S506:Y)、CPU131は、調整頻度閾値として120枚を選択する(S507)。検査レベルが「7」の場合(S502:N、S504:N、S506:N、S508:Y)、CPU131は、調整頻度閾値として160枚を選択する(S509)。検査レベルが「10~7」に該当しない場合(S502:N、S504:N、S506:N、S508:N)、CPU131は、調整頻度閾値として200枚を選択する(S510)。
【0115】
図16は、調整動作実行判定処理を含む画像形成処理を表すフローチャートである。この処理は、図11のS304、S306、及びS307の詳細な説明となる。
【0116】
プリンタエンジン130のCPU131は、コントローラ110からの印刷ジョブの取得を待機する(S601:N)。印刷ジョブを取得した場合(S601:Y)、CPU131は、1枚のシートに対する画像形成動作を実行する(S602)。CPU131は、通紙枚数カウンタをインクリメントする(S603)。通紙枚数カウンタは、前回の調整実行からの印字枚数をカウントする。
【0117】
CPU131は、通紙枚数カウンタの値と図10のS303の処理(図15の処理)で設定された調整頻度閾値を比較する(S604)。通紙枚数カウンタの値が調整頻度閾値を超えた場合(S604:Y)、CPU131は、画像形成動作を停止して、調整動作を実行する(S605、S606)。CPU131は、通紙枚数カウンタをクリアする(S607)。
【0118】
通紙枚数カウンタのクリア後、或いは通紙枚数カウンタの値が調整頻度閾値を超えていない場合(S604:N)、CPU131は、印刷ジョブが終了したか否かを判定する(S608)。印刷ジョブが終了していない場合(S608:N)、CPU131は、S602以降の処理を繰り返し行う。印刷ジョブが終了した場合(S608:Y)、CPU313は、画像形成処理を終了する。
【0119】
このように本実施形態の画像形成システム1は、検査レベルに応じた時間間隔で画像品質の調整処理が行われる。つまり調整処理の頻度(調整頻度)が、検査レベルに基づいて決定される。そのために、高検査レベルが設定されている場合であっても、適切な頻度で調整処理が行われ、検査レベルを満たす画像品質の成果物を得ることができる。これにより、調整動作が繰り返し行われることによるダウンタイムの発生を抑制することができる。また、異常と判定されるシートの枚数が増大することを抑制することができる。つまり、画像形成システム1で出力可能な画像品質よりも厳しい検査レベルが設定された場合であっても、調整動作の実行頻度を適切に設定して、検査レベルを満たす画像品質で成果物を生成することが可能となる。
【0120】
(変形例1)
以上の実施形態では、印刷装置100は、プリンタエンジン130により印刷完了したシートの枚数をカウントし、検査レベルに応じた調整頻度となるように、カウントしたシートの枚数に応じて調整動作の実行有無の判定を行っている。しかし、シートの枚数カウントや調整動作実行有無の判定は、必ずしもプリンタエンジン130が行う必要はない。ここでは、シートの枚数カウントや調整動作実行有無の判定を検品装置150側で行う構成について説明する。
【0121】
図17は、この場合の印刷処理及び検品処理時の情報の受け渡しを示すシーケンス図である。
【0122】
検査レベルの設定時には、ホストコンピュータ101は、検査レベル値や検査で使用する比較元画像を検品装置150へ通知する(S401)。検品装置150は、ホストコンピュータ101から取得した検査レベル値や比較元画像を保存し、検査レベル値をプリンタエンジン130へ通知する(S402)。プリンタエンジン130は取得した検査レベル値に基づいて、検品装置150に調整頻度を示す調整頻度情報を通知する(S403)。調整頻度の設定は、図15に示した通りである。
【0123】
印刷時には、コントローラ110は、プリンタエンジン130へ印刷指示と印刷データ(画像データ)を送信する。プリンタエンジン130は、印刷指示と印刷データに基づいて印刷処理を実行する(S404)。
【0124】
検品装置150は、プリンタエンジン130から送信される画像、即ちカメラユニット135及び紙上読取ユニット240で読み取られた画像の画像情報に基づいて、印刷枚数をカウントする。検品装置150は、カウントした印刷枚数とS403の処理で取得した調整頻度情報と比較する(S405)。検品装置150は、印刷枚数が調整頻度に達した場合に、プリンタエンジン130に調整動作を指示する(S406)。S405及びS406の処理により、調整動作の実行判定が行われる。調整動作の実行判定処理の詳細は後述する。
【0125】
プリンタエンジン130は、調整動作指示が通知された場合、印刷動作を中断して調整動作を行う(S407)。プリンタエンジン130は、調整動作が完了すると印刷動作を再開する。検品装置150は、成果物に異常を検出した場合、異常発生時の検査結果をプリンタエンジン130に通知する(S408)。プリンタエンジン130では、異常に対応する調整処理を実行する(S409)。
【0126】
図18は、検品装置150による調整動作実行判定処理を表すフローチャートである。この処理は、図17のS405及びS406の詳細な説明となる。
【0127】
検品装置150のCPU151は、印刷ジョブが検査ありに設定されているか否かにより、検査を実行するか否かを判定する(S701)。検査を実行しない場合(S701:N)、CPU151は、印刷ジョブが検査ありとなるまでS701の処理を繰り返す。検査を実行する場合(S701:Y)、CPU151は、図17のS403でコントローラ110から通知される調整頻度情報を取得する(S702)。
【0128】
CPU151は、通紙の有無を判定する(S703)。通紙の有無は、例えばプリンタエンジン130から取得するカメラユニット135及び紙上読取ユニット240で読み取られた画像の画像情報を取得するか否かで判定される。通紙が無い場合(S703:N)、CPU151は、通紙が有るまで待機する。通紙が有る場合(S703:Y)、CPU151は、対象シートの検査を行う(S704)。CPU151は、検査結果により、異常の有無を判定する(S705)。異常が有る場合(S705:Y)、CPU151は、異常発生の検査結果をプリンタエンジン130へ通知する(S706)。
【0129】
異常が無い場合(S705:N)、CPU151は、通紙枚数カウンタをインクリメントする(S707)。通紙枚数カウンタの値は、前回の調整実行からの通紙枚数を表す。CPU151は、通紙枚数カウンタの値と図17のS403の処理で設定された調整頻度閾値とを比較する(S708)。通紙枚数カウンタの値が調整頻度閾値よりも大きい場合(S708:Y)、CPU151は、プリンタエンジン130へ調整実行要求を通知する(S709)。CPU151は、通紙枚数カウンタをクリアする(S710)。
【0130】
通紙枚数カウンタの値が調整頻度閾値以下の場合(S708:N)、或いはS706、S710の処理の後に、CPU151は、検査を終了するか否かを判定する(S711)。終了しない場合(S711:N)、CPU151は、S703以降の処理を繰り返し行う。終了する場合(S711:Y)、CPU151は、検品装置150の調整動作実行判定処理を終了する。
【0131】
以上のように、枚数カウントや調整動作実行有無の判定を検品装置150が行うことも可能である。
【0132】
(変形例2)
検査レベルの設定は、上記の通り、図6に例示する検査設定画面により行われる。検査レベルの設定の際には、ユーザは、検査レベル毎の調整頻度を知ることで、適切な検査レベルを設定することが可能となる。図19は、このような場合に表示されるメッセージの例示図である。この例では、検査レベルが7~10の場合に調整頻度が50枚以下となり、検査レベルが5~7の場合に調整頻度が100枚以下となる。ユーザは、このメッセージを参考にして検査レベルを設定することができる。また、メッセージ中に推奨する検査レベルを明示してもよい。
【0133】
図19のメッセージは、例えば、ユーザが検査レベルを設定する際に表示される。例えば、図6の検査設定画面の表示タイミングで表示することで、ユーザに検査レベルと調整頻度との関係を通知することができる。これによりユーザは、検査レベルと調整頻度との関係を確認することができる。また、検査設定画面からプルダウンメニュー702a、702bが操作されるタイミングで、このメッセージが表示されてもよい。なお、ホストコンピュータ101で検査レベルを設定する際には、このメッセージはホストコンピュータ101に設けられるディスプレイに表示される。操作パネル120で検査レベルを設定する際には、このメッセージは操作パネル120のディスプレイ120aに表示される。検品装置150に検査レベルを設定するためのユーザインタフェースが設けられる場合には、このメッセージは、該ユーザインタフェースに表示される。このようなメッセージの表示により、ユーザは、調整頻度に応じて検査レベルを設定することが可能となる。
【0134】
(変形例3)
調整頻度が予め設定されている場合には、検査レベルの設定に制限が生じる。この場合、図14の条件を満たすように検査レベルを設定する必要がある。ユーザが設定したい検査レベルに対応した調整頻度を設定するために、例えば図20図21に例示するメッセージが表示される。
【0135】
図20のメッセージは、例えば調整頻度が200枚毎に設定され、検査レベル5~7のいずれかが選択された場合に表示される。検査レベル5~7のいずれかが選択された場合には、図14の条件を満たすように、調整頻度を100枚以下に変更するように促す通知が出力される。
【0136】
図21のメッセージは、例えば調整頻度が200枚毎に設定され、検査レベル7~10のいずれかが選択された場合に表示される。検査レベル7~10いずれかが選択された場合には、図14の条件を満たすように、調整頻度を50枚以下に変更するように促す通知が出力される。
【0137】
このように図20図21のメッセージは、ユーザが検査設定画面から検査レベルを設定し、その設定レベルが予め設定された調整頻度に対応していない場合に表示される。ホストコンピュータ101で検査レベルを設定する際には、このメッセージはホストコンピュータ101に設けられるディスプレイに表示される。操作パネル120で検査レベルを設定する際には、このメッセージは操作パネル120のディスプレイ120aに表示される。検品装置150に検査レベルを設定するためのユーザインタフェースが設けられる場合には、このメッセージは、該ユーザインタフェースに表示される。このようなメッセージの表示により、ユーザは、検査レベルに応じた調整頻度を設定することが可能になる。
【0138】
(変形例4)
低レベルの検査レベルが設定されて調整頻度の枚数未満の画像形成が行われた後に、次の印刷ジョブによる印刷の開始前に高レベルの検査レベルが設定される可能性がある。この場合、高レベルの検査レベルに変更されることで、調整頻度の条件が満たされることがある。
【0139】
例えば、検査レベルが「3」で100枚のシートへ画像形成が行われた後に、次の印刷ジョブによる印刷の前に検査レベルが「10」に設定される。検査レベルが「10」の場合、図14によると調整頻度は40枚となる。これは、現在の印字枚数以下である。この場合、印字枚数が調整頻度閾値を超えていると判断されるために、調整動作が行われ、通紙枚数カウンタがクリアされる。
【0140】
また、画像形成システム1は、電源操作による再起動等に起因して調整動作を行うことがある。この場合、再起動前の印字枚数に基づいて調整動作を行うか否かを判断すると、本来、行う必要がない調整動作が行われる可能性がある。そのために画像形成システム1が再起動の際に調整動作を行う場合には、通紙枚数カウンタはクリアされる。
【0141】
(変形例5)
検査レベルは、上記の通り図6の検査設定画面により設定される。検査設定画面では、エリア毎に検査レベルの設定が可能になっている。そのために例えば検査エリア705aと検査エリア705bで異なる検査レベルが設定されることがある。この場合、最も高い検査レベルに応じた調整頻度で調整動作が行われる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21