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特開2024-177075バックライト装置および液晶表示装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177075
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】バックライト装置および液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20241212BHJP
【FI】
F21S2/00 481
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073687
(22)【出願日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】63/471,947
(32)【優先日】2023-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】萩原 沙月
(72)【発明者】
【氏名】根来 和彦
(72)【発明者】
【氏名】堀 真由美
(72)【発明者】
【氏名】岩本 健一
【テーマコード(参考)】
3K244
【Fターム(参考)】
3K244AA01
3K244BA18
3K244CA02
3K244DA01
3K244GA01
3K244GA02
3K244GA03
3K244GA04
3K244GA05
3K244GA08
3K244GA10
(57)【要約】
【課題】液晶表示装置の表示品位の低下を抑制することができるバックライト装置およびそのようなバックライト装置を備える液晶表示装置を提供する。
【解決手段】バックライト装置は、励起光を出射する複数の発光素子が主面上に配列されたLED基板と、励起光を受けて、蛍光を発する蛍光体を含む蛍光体層と、蛍光体層とLED基板との間に配置された波長選択反射層と、波長選択反射層とLED基板との間に配置され、複数のルーバーを有するルーバーフィルムとを有する。波長選択反射層は、入射する光の波長および/または入射角に応じて異なる透過率を有する。ルーバーフィルムは、ルーバーフィルムのフィルム面の法線方向に対する角度が第1角度以上90°未満で入射する蛍光および励起光を遮光する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有し、励起光を出射する複数の発光素子が前記主面上に配列されたLED基板と、
前記励起光を受けて、蛍光を発する蛍光体を含む蛍光体層と、
前記蛍光体層と前記LED基板との間に配置された波長選択反射層であって、入射する光の波長および/または入射角に応じて異なる透過率を有する波長選択反射層と、
前記波長選択反射層と前記LED基板との間に配置され、複数のルーバーを有するルーバーフィルムであって、前記ルーバーフィルムのフィルム面の法線方向に対する角度が第1角度以上90°未満で入射する前記蛍光および前記励起光を遮光するルーバーフィルムと
を有する、バックライト装置。
【請求項2】
前記ルーバーフィルムは、前記LED基板に支持されている、請求項1に記載のバックライト装置。
【請求項3】
前記ルーバーフィルムは、前記LED基板の前記主面上に設けられている、請求項2に記載のバックライト装置。
【請求項4】
前記ルーバーフィルムは、前記LED基板の前記主面の法線方向から見たとき、前記複数の発光素子と重なる複数の開口部を有する、請求項2に記載のバックライト装置。
【請求項5】
前記LED基板の前記主面の法線方向から見たとき、前記複数のルーバーのそれぞれは、前記複数の発光素子のそれぞれに重ならない位置に配置されている、請求項2から4のいずれか1項に記載のバックライト装置。
【請求項6】
前記ルーバーフィルムと前記波長選択反射層との間に配置された拡散板をさらに有する、請求項2から4のいずれか1項に記載のバックライト装置。
【請求項7】
前記ルーバーフィルムは、前記波長選択反射層の前記LED基板側の主面上に設けられている、請求項1に記載のバックライト装置。
【請求項8】
前記ルーバーフィルムと前記LED基板との間に配置された拡散板をさらに有する、請求項7に記載のバックライト装置。
【請求項9】
前記波長選択反射層は、
第2角度の入射角で入射する前記励起光に対する透過率が、前記第2角度の入射角で入射する前記蛍光に対する透過率よりも高く、
前記第2角度よりも大きい第3角度の入射角で入射する前記励起光に対する透過率が、前記第3角度の入射角で入射する前記蛍光に対する透過率よりも低い、請求項1から4、7および8のいずれか1項に記載のバックライト装置。
【請求項10】
前記第2角度は、0°以上40°未満の角度を含み、
前記第3角度は、70°以上90°未満の角度を含む、請求項9に記載のバックライト装置。
【請求項11】
前記第1角度は、15°以上である、請求項1から4、7および8のいずれか1項に記載のバックライト装置。
【請求項12】
前記蛍光体層の前記波長選択反射層と反対側に配置された光学層積層体をさらに有する、請求項1から4、7および8のいずれか1項に記載のバックライト装置。
【請求項13】
前記光学層積層体は、それぞれのプリズムの稜線が互いに略直交する様に配置された2枚のプリズムシートと、前記2枚のプリズムシートの上に配置された偏光選択反射層とを有する、請求項12に記載のバックライト装置。
【請求項14】
前記蛍光体は、量子ドット蛍光体を含む、請求項1から4、7および8のいずれか1項に記載のバックライト装置。
【請求項15】
液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルの背面に向けて光を出射する、請求項1から4、7および8のいずれか1項に記載のバックライト装置と
を備える液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックライト装置および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の多くは、複数のLEDを備えたバックライト装置を備えている。複数のLEDは、例えば、複数の領域に分割され、照明光が必要な領域のLEDだけ点灯される、あるいは、領域ごとに必要とされる輝度に調整される。バックライトのこのような駆動方法は、分割駆動、部分駆動、エリア駆動またはローカルディミングと呼ばれる。分割駆動法を採用すると、液晶表示装置の明部と暗部との輝度のコントラスト比を向上させることができる。
【0003】
近年、表示装置の表示品位を向上させるために、ハイダイナミックレンジ(High Dynamic Range、以下「HDR」という。)に対応した液晶表示装置が市販されるに至っている。
【0004】
さらに、UHD Premium規格(色再現性BT2020規格90%以上、HDR10規格)に対応可能な液晶表示装置として、例えば特許文献1に記載されているように、リモートフォスファー方式を採用し、かつ、ダイクロイック・フィルタを用いて色むらを抑制することができるバックライト装置を備えた液晶表示装置が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/244351号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討によると、特許文献1の液晶表示装置においては、色むらが生じることによる表示品位の低下を十分に抑制することができないという問題が生じることがある。詳細は後述する。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、液晶表示装置の表示品位の低下を抑制することができるバックライト装置およびそのようなバックライト装置を備える液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によると、以下の項目に記載の解決手段が提供される。
【0009】
[項目1]
主面を有し、励起光を出射する複数の発光素子が前記主面上に配列されたLED基板と、
前記励起光を受けて、蛍光を発する蛍光体を含む蛍光体層と、
前記蛍光体層と前記LED基板との間に配置された波長選択反射層であって、入射する光の波長および/または入射角に応じて異なる透過率を有する波長選択反射層と、
前記波長選択反射層と前記LED基板との間に配置され、複数のルーバーを有するルーバーフィルムであって、前記ルーバーフィルムのフィルム面の法線方向に対する角度が第1角度以上90°未満で入射する前記蛍光および前記励起光を遮光するルーバーフィルムと
を有する、バックライト装置。
[項目2]
前記ルーバーフィルムは、前記LED基板に支持されている、項目1に記載のバックライト装置。
[項目3]
前記ルーバーフィルムは、前記LED基板の前記主面上に設けられている、項目2に記載のバックライト装置。
[項目4]
前記ルーバーフィルムは、前記LED基板の前記主面の法線方向から見たとき、前記複数の発光素子と重なる複数の開口部を有する、項目2または3に記載のバックライト装置。
[項目5]
前記LED基板の前記主面の法線方向から見たとき、前記複数のルーバーのそれぞれは、前記複数の発光素子のそれぞれに重ならない位置に配置されている、項目2から4のいずれか1項に記載のバックライト装置。
[項目6]
前記ルーバーフィルムと前記波長選択反射層との間に配置された拡散板をさらに有する、項目2から5のいずれか1項に記載のバックライト装置。
[項目7]
前記ルーバーフィルムは、前記波長選択反射層の前記LED基板側の主面上に設けられている、項目1に記載のバックライト装置。
[項目8]
前記ルーバーフィルムと前記LED基板との間に配置された拡散板をさらに有する、項目7に記載のバックライト装置。
[項目9]
前記波長選択反射層は、
第2角度の入射角で入射する前記励起光に対する透過率が、前記第2角度の入射角で入射する前記蛍光に対する透過率よりも高く、
前記第2角度よりも大きい第3角度の入射角で入射する前記励起光に対する透過率が、前記第3角度の入射角で入射する前記蛍光に対する透過率よりも低い、項目1から8のいずれか1項に記載のバックライト装置。
[項目10]
前記第2角度は、0°以上40°未満の角度を含み、
前記第3角度は、70°以上90°未満の角度を含む、項目9に記載のバックライト装置。
[項目11]
前記第1角度は、15°以上である、項目1から10のいずれか1項に記載のバックライト装置。
[項目12]
前記蛍光体層の前記波長選択反射層と反対側に配置された光学層積層体をさらに有する、項目1から11のいずれか1項に記載のバックライト装置。
[項目13]
前記光学層積層体は、それぞれのプリズムの稜線が互いに略直交する様に配置された2枚のプリズムシートと、前記2枚のプリズムシートの上に配置された偏光選択反射層とを有する、項目12に記載のバックライト装置。
[項目14]
前記蛍光体は、量子ドット蛍光体を含む、項目1から13のいずれか1項に記載のバックライト装置。
[項目15]
液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルの背面に向けて光を出射する、項目1から14のいずれか1項に記載のバックライト装置と
を備える液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によると、液晶表示装置の表示品位の低下を抑制することができるバックライト装置および液晶表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の実施形態1によるバックライト装置50Aを模式的に示す断面図である。
図1B】バックライト装置50Aを備える液晶表示装置100Aを模式的に示す断面図である。
図1C】バックライト装置50Aを用いて部分駆動を行うときの模式的な断面図である。
図1D】バックライト装置50Aの平面図であり、ルーバー42lと発光素子22との配置関係の例を模式的に示す図である。
図1E】実施形態1の他のバックライト装置が有するルーバーフィルム43の模式的な平面図の他の例である。
図1F】実施形態1の他のバックライト装置がさらに有する他のルーバーフィルム44の模式的な平面図の例である。
図1G】バックライト装置50Aが有する光学層積層体30の模式的な断面図の例である。
図1H】実施形態1の変形例によるバックライト装置50A1を模式的に示す断面図である。
図2A】実施形態2によるバックライト装置50Bを模式的に示す断面図である。
図2B】バックライト装置50Bを用いて部分駆動を行うときの模式的な断面図である。
図2C】バックライト装置50Bの平面図であり、ルーバー45lと発光素子22との配置関係の例を模式的に示す図である。
図3A】比較例1のバックライト装置950を模式的に示す断面図である。
図3B】比較例1のバックライト装置950を用いて部分駆動を行うときの模式的な断面図である。
図4A】比較例2のバックライト装置950Rを用いて部分駆動を行うときの模式的な断面図である。
図4B】比較例2のバックライト装置950Rを有する液晶表示装置900Rに表示される画像パターンを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の図面において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、その説明を省略することがある。
【0013】
(実施形態1)
図1A図1B図1Cおよび図1Dを参照しながら、本実施形態によるバックライト装置50Aおよびバックライト装置50Aを備える液晶表示装置100Aを説明する。図1Aは、実施形態1によるバックライト装置50Aを模式的に示す断面図であり、図1Bは、バックライト装置50Aを備える液晶表示装置100Aを模式的に示す断面図である。図1Cは、バックライト装置50Aを用いて部分駆動を行うときの模式的な断面図である。図1Dは、バックライト装置50Aの模式的な平面図であり、複数のルーバー42lと発光素子22との配置関係の例を模式的に示す図である。
【0014】
バックライト装置50Aは、励起光を出射する複数の発光素子22が主面21s上に配列されたLED基板21と、励起光を受けて、蛍光を発する蛍光体を含む蛍光体層24と、蛍光体層24とLED基板21との間に配置された波長選択反射層28と、波長選択反射層28とLED基板21との間に配置された、複数のルーバー42lを有するルーバーフィルム42とを有する。波長選択反射層28は、波長選択反射層28に入射する光の波長および/または入射角に応じて異なる透過率を有する。ルーバーフィルム42は、ルーバーフィルム42のフィルム面の法線方向に対する角度が第1角度以上90°未満で入射する蛍光および励起光を遮光する。ルーバーフィルム42は、図示する例では、対向する2枚のベースフィルム42b1および42b2と、2枚のベースフィルム42b1および42b2の間に配置され、それぞれが、ベースフィルム42b1および42b2の主面と交わる主面を有する複数のルーバー42lとを有する。ルーバーフィルム42のフィルム面は、ベースフィルム42b1または42b2の主面と平行な平面である。ルーバーフィルム42のフィルム面(すなわち、ベースフィルム42b1または42b2の主面と平行な平面)は、図示する例ではxy平面に平行な平面であり、ルーバーフィルム42のフィルム面の法線方向は、図示する例ではz方向に平行な方向である。複数のルーバー42lのそれぞれは、図示する例ではyz平面に平行な主面を有する板状であり、互いに略平行に配置されている。「ルーバーフィルム42が、ルーバーフィルム42のフィルム面の法線方向に対する角度が第1角度以上90°未満で入射する蛍光および励起光を遮光する」とは、ルーバーフィルム42のフィルム面の法線方向に対する角度が第1角度以上90°未満でルーバーフィルム42に入射する蛍光および励起光に対するルーバーフィルム42の透過率が50%以下であることを含む。第1角度は、例えば30°以上であり、15°以上であってもよい。例えば、ルーバーフィルム42が有する複数のルーバー42lが、蛍光体層24から発せられる蛍光および発光素子22から出射される励起光の少なくとも一部を遮光する機能を有する。
【0015】
バックライト装置50Aにおいては、ルーバーフィルム42は、LED基板21に支持されている。すなわち、ルーバーフィルム42は、LED基板21に固定されている。ルーバーフィルム42は、LED基板21の主面21s上に設けられている。ルーバーフィルム42は、LED基板21の主面21sに接していてもよい。ルーバーフィルム42は、LED基板21の主面21s上に載置されていてもよいし、接着剤層を介してLED基板21の主面21sに貼り付けられていてもよい。図示される例では、ルーバーフィルム42は、複数の開口部42hを有する。この例では、各開口部42hは、ベースフィルム42b1に設けられた開口部42h1と、ベースフィルム42b2に設けられた開口部42h2とを有する。複数の開口部42hのそれぞれは、LED基板21の主面21sの法線方向から見たとき、複数の発光素子22のいずれかと重なる。複数の発光素子22は、複数の開口部42hにおいて露出されている。
【0016】
図1Aおよび図1Dに示されるように、LED基板21の主面21sの法線方向から見たとき、複数のルーバー42lのそれぞれは、複数の発光素子22のうちの隣接する発光素子22の間に配置されている。LED基板21の主面21sの法線方向から見たとき、複数のルーバー42lのそれぞれは、複数の発光素子22のそれぞれに重ならない位置に配置されている。複数のルーバー42lは、LED基板21の主面21sの法線方向から見たとき、発光素子22と重ならないようにy方向に複数の部分に分割されているルーバー42lと、y方向の長さが、LED基板21のy方向の長さL2とほぼ等しいルーバー42lとを含み得る。隣接するルーバー42l間の距離が一定でなくてもよい。バックライト装置50Aにおいては、複数の発光素子22のうちの隣接する発光素子22の間に2以上のルーバー42lが配置されている。本実施形態のバックライト装置が有するルーバーフィルムとしては、例えば、3M社製のセキュリティ/プライバシーフィルター(製品名:PF430W9B)を用いることができる。このようなフィルターに複数の開口部を設けることによって、図示されるルーバーフィルム42を得てもよい。
【0017】
バックライト装置50Aは、ルーバーフィルム42と波長選択反射層28の間に配置された拡散板48をさらに有する。なお、図1Cでは、簡単のために、拡散板48を省略している。波長選択反射層28および蛍光体層24は、拡散板48に支持されていてもよい。例えば、拡散板48の上に、波長選択反射層28および蛍光体層24がこの順で積み重ねられて載せられていてもよいし、これらの層が接着剤層を介して互いに接着された状態で、拡散板48に固定されていてもよい。なお、拡散板48は、省略され得る。
【0018】
図1Bに示されるように、液晶表示装置100Aは、液晶表示パネル10と、バックライト装置50Aとを有する。液晶表示装置100Aにおいて、バックライト装置50Aは、液晶表示パネル10の背面10rに向けて光を出射する。
【0019】
バックライト装置50Aは、リモートフォスファー方式の直下型バックライトである。リモートフォスファー方式では、蛍光体層24が発光素子22から離れて配置されるので、発光素子22が発する熱に起因する蛍光体の劣化を抑制することができる。
【0020】
蛍光体層24は、発光素子22から出射された励起光によって励起され、蛍光を発する蛍光体を含む。例えば、発光素子22が青色の光を出射する青色LEDである場合、蛍光体層24は、緑色蛍光を発する緑色蛍光体および/または赤色蛍光を発する赤色蛍光体を含んでもよいし、黄色蛍光を発する黄色蛍光体を含んでもよい。高い演色性を得る観点からは、蛍光体層24は、緑色蛍光を発する緑色蛍光体および赤色蛍光を発する赤色蛍光体を含むことが好ましい。蛍光体層24は、例えば、緑色蛍光を発する量子ドット緑色蛍光体および/または赤色蛍光を発する量子ドット赤色蛍光体を含んでもよい。量子ドット蛍光体は、一般的に、発光スペクトルのピーク波長の半値幅が狭く、色純度が高いという利点を有するので、例えばUHD Premium規格(色再現性BT2020規格90%以上、HDR10規格)を満たすために有望であるとされている。あるいは、赤色硫化物蛍光体(例えば硫化カルシウム蛍光体)、緑色硫化物蛍光体(例えばチオガレート蛍光体)など、公知の蛍光体を用いてもよい。蛍光体層24の両側またはいずれか片側に保護層が設けられていてもよい。
【0021】
波長選択反射層28(例えばダイクロイック・フィルタ)に入射する光の入射角(波長選択反射層28のフィルム面の法線方向に対する角度)が、所定の角度より小さい(例えば、40°未満)の場合は、複数の発光素子22から出射された励起光に対する波長選択反射層28の透過率は、蛍光体層24から発せられた蛍光に対する波長選択反射層28の透過率よりも高い。すなわち、波長選択反射層28に、0°以上40°未満の第2角度の入射角で入射する励起光に対する波長選択反射層28の透過率は、波長選択反射層28に第2角度の入射角で入射する蛍光に対する波長選択反射層28の透過率よりも高い。一方で、波長選択反射層28は、第2角度よりも大きい第3角度の入射角で波長選択反射層28に入射する励起光に対する透過率が、第3角度の入射角で波長選択反射層28に入射する蛍光に対する透過率よりも低い。第3角度は、例えば70°以上90°未満の角度である。第2角度の入射角で波長選択反射層28に入射する光に対しては、複数の発光素子22から出射された励起光の波長領域の少なくとも一部を透過し、蛍光体層24から発せられた蛍光の少なくとも一部を反射する。第2角度の入射角で波長選択反射層28に入射する光に対しては、複数の発光素子22から出射された励起光の全てを透過し、蛍光体層24から発せられた光の全てを反射することが好ましい。例えば発光素子22が青色LEDである場合、波長選択反射層28は、第2角度の入射角で波長選択反射層28に入射する光に対しては、青色LEDの発光波長領域の光(すなわち青色の光)を透過し、緑色から赤色にかけての波長領域の光を反射する。波長選択反射層28は、第3角度の入射角で波長選択反射層28に入射する光に対しては、蛍光体層24から発せられた蛍光の少なくとも一部を透過し、複数の発光素子22から出射された励起光の波長領域の少なくとも一部を反射する。例えば、波長選択反射層28は、第3角度の入射角で波長選択反射層28に入射する光に対しては、青色の光を反射し、赤色の光を透過する。なお、本明細書において、蛍光体が発する光を「蛍光」ということがある。特に断らない限り、「蛍光」は、狭義の蛍光およびりん光を含む。波長選択反射層28は、例えば、屈折率の異なる膜を積層した積層構造を有する光学多層膜である。
【0022】
以下で説明するように、バックライト装置50Aは、波長選択反射層28を有することによって、部分駆動を行うときの色むらを抑制することができる。
【0023】
本実施形態によるバックライト装置50Aの効果を、比較例のバックライト装置と比較しながら説明する。図3Aは、比較例1のバックライト装置950を備える液晶表示装置900を模式的に示す断面図である。図3Bは、比較例1のバックライト装置950を用いて部分駆動を行うときの模式的な断面図である。図4Aは、比較例2のバックライト装置950Rを用いて部分駆動を行うときの模式的な断面図である。図4Bは、比較例2のバックライト装置950Rを有する液晶表示装置900Rが有する液晶表示パネルの法線方向から見たときの模式的な図である。比較例1のバックライト装置950は、ルーバーフィルムを有しない点において、本発明の実施形態によるバックライト装置50Aと異なる。比較例1のバックライト装置950および液晶表示装置900は、特許文献1に記載のバックライト装置およびそれを備える液晶表示装置に相当する。比較例2のバックライト装置950Rは、波長選択反射層28を有しない点において、比較例1のバックライト装置950と異なる。
【0024】
まず、図4Aおよび図4Bを参照しながら、波長選択反射層28の作用および効果を説明する。
【0025】
図4Aおよび図4Bに示すように、比較例2のバックライト装置950Rは、部分駆動を行っているとき、発光素子22が点灯している点灯領域Ronと、発光素子22が点灯していない消灯領域Roffとを有する。図4Bに、比較例2のバックライト装置950Rを有する液晶表示装置900Rに表示される画像パターンを模式的に示す。点灯領域Ronの端部の領域(言い換えると、点灯領域Ronのうち、消灯領域Roffとの境界に近い領域)を領域R1とし、消灯領域Roffのうち、点灯領域Ronの周辺の領域を領域R2として示している。図4Aには、比較例2のバックライト装置950Rの模式的な断面図(下段)とともに、それぞれの領域で表示される色(上段)と、それぞれの領域における青色光L、緑色光Lおよび赤色光Lの輝度(中段)とを模式的に示している。図4Aの上段は、それぞれの領域で表示される色について、点灯領域Ronの領域R1以外の領域(領域R0)を基準として、青色または黄色に色付く程度を模式的に示している。図4Aの中段は、それぞれの領域における青色光L、緑色光Lおよび赤色光Lの輝度を、領域R0の青色光Lの輝度を基準(100%)として、矢印の大きさで模式的に示している。以降、図4Aと同様の図(部分駆動を行うときの模式的な断面図)において同じように示す。
【0026】
比較例2のバックライト装置950Rを用いて部分駆動を行うと、色むら(カラーハローと呼ばれることもある。)が生じることがある。具体的には、図4Bに示すように、暗部となるべき消灯領域Roffのうち、点灯領域Ronの周辺の領域R2において、黄色味が強くなってしまうことがある。さらに、点灯領域Ronの端部の領域R1において、青暗く見えることがある。前者の現象の原因の1つとして、点灯領域Ronの蛍光体層24から発せられた光のうち後方(LED基板21側)に出射された光L2が、LED基板21の主面21sで反射されることによって消灯領域Roffに入射することが考えられる。光L2は、青色光よりも赤色から緑色にかけての波長領域の光を多く含む。したがって、領域R2が、点灯領域Ronの領域R1以外の領域R0よりも黄色く色付いて見える。後者の色むらは、以下の原因によって生じる。領域R1は、消灯領域Roffと隣接しているので、蛍光体層24に、蛍光体層24の主面の法線方向から傾斜した角度で(斜め方向から)入射する励起光L1(ここでは青色光)が、点灯領域Ronの領域R1以外の領域R0よりも少ない。したがって、領域R1は、青色光を受けて緑色蛍光体が発する緑色光および赤色蛍光体が発する赤色光の輝度が、領域R0よりも低いので、領域R0よりも青く色付きかつ暗く見えるという色むらが生じる。
【0027】
これに対して、図3Aに示した比較例1のバックライト装置950は、蛍光体層24とLED基板21との間に波長選択反射層28を有する。波長選択反射層28は、波長選択反射層28に第2角度の入射角で入射する、蛍光体層24から発せられた蛍光に対する波長選択反射層28の透過率が、波長選択反射層28に第2角度の入射角で入射する、複数の発光素子22から出射された励起光に対する波長選択反射層28の透過率よりも低いので、蛍光体層24から後方(LED基板21側)に発せられた蛍光がLED基板21の主面21sに達するのが抑制される。したがって、蛍光体層24から後方(LED基板21側)に発せられた蛍光が、LED基板21の主面21sで反射された光が、消灯領域Roffの蛍光体層24に入射することを抑制することができる。比較例1のバックライト装置950は、波長選択反射層28を有することによって、部分駆動を行うときの色むら(特に、領域R2が黄色く色付いて見えるという色むら)が抑制される。
【0028】
しかしながら、本発明者の検討によると、比較例1のバックライト装置950においても、部分駆動を行うときの色むらの抑制が十分でないことがある。波長選択反射層28は、第3角度の入射角で波長選択反射層28に入射する励起光に対する透過率が、第3角度の入射角で波長選択反射層28に入射する蛍光に対する透過率よりも低い。例えば、赤色の波長領域の光は、波長選択反射層28に入射する入射角が大きくなると透過率が上がる場合がある。したがって、点灯領域Ronの蛍光体層24から発せられた蛍光のうち、後方(LED基板21側)に出射され、所定の角度以上の入射角で波長選択反射層28に入射した光L3は、波長選択反射層28を透過し、LED基板21の主面21sで反射されることによって消灯領域Roffに入射する。光L3は、赤色の波長領域の光を多く含む。したがって、図4Bを参照して説明したように、消灯領域Roffのうちの、点灯領域Ronの周辺の領域R2が黄色く色付いて見えるという色むらが十分に抑制されない。
【0029】
これに対して、本実施形態によるバックライト装置50Aは、ルーバーフィルム42を有することによって、比較例1のバックライト装置950において生じる部分駆動を行うときの色むら(特に、領域R2が黄色く色付いて見えるという色むら)を抑制することができる。バックライト装置50Aにおいて、点灯領域Ronの蛍光体層24から発せられた蛍光のうち、所定の角度以上の入射角で波長選択反射層28に入射し、波長選択反射層28を透過し、LED基板21の主面21sで反射された光L3は、複数のルーバー42lによって遮光されるので、消灯領域Roffに入射することが抑制される。バックライト装置50Aは、液晶表示装置の表示品位の低下を抑制することができる。
【0030】
本実施形態によるバックライト装置が有し得るルーバーフィルムの他の例を説明する。図1Eに示すルーバーフィルム43のように、例えばLED基板21の主面21sの法線方向から見たとき、第1の方向(図中y方向)に延びるルーバー43lが互いに平行に配置されていてもよい。すなわち、LED基板21の主面21sの法線方向から見たとき、複数のルーバー43lがストライプ状に形成されている。図1Eに示す例では、複数のルーバー43lは、規則的に配列されている(隣接するルーバー43l間のピッチP2)。ルーバーフィルム43は、上述したルーバーフィルム42と同様に、蛍光体層24から発せられる蛍光および発光素子22から出射される励起光の少なくとも一部を遮光する。ルーバーフィルム43は、対向する2枚のベースフィルムをさらに有し、複数のルーバー43lは2枚のベースフィルムの間に配置されている。
【0031】
本実施形態によるバックライト装置は、図1Eに示すルーバーフィルム43に加えて、第1の方向と異なる第2の方向(例えば図中x方向)に延びる複数のルーバー44lを有する他のルーバーフィルム44(図1F)をさらに有してもよい。ルーバーフィルム44も、ルーバーフィルム43と同様に、蛍光体層24から発せられる蛍光および発光素子22から出射される励起光の少なくとも一部を遮光する。ルーバーフィルム44は、対向する2枚のベースフィルムをさらに有し、複数のルーバー44lは2枚のベースフィルムの間に配置されている。ルーバーフィルム44は、例えばLED基板21の主面21sの法線方向から見たとき、ルーバーフィルム43の複数のルーバー43lと、ルーバーフィルム44の複数のルーバー44lとが略直交するように配置されていてもよい。例えば、隣接するルーバー43l間のピッチP2と隣接するルーバー44l間のピッチP3とは等しくてもよい。あるいは、ルーバーフィルム43およびルーバーフィルム44を用いる代わりに、互いに直交するように格子状に形成された複数のルーバーを有する1枚のルーバーフィルムを用いてもよい。ただし、本実施形態によるバックライト装置においては、LED基板21の主面21sの法線方向から見たとき、複数のルーバーのそれぞれは、複数の発光素子22のそれぞれに重ならないように配置されていることが好ましい。
【0032】
バックライト装置50Aは、蛍光体層24の波長選択反射層28と反対側に配置された光学層積層体30をさらに有してもよい。光学層積層体30は、例えば、図1Gに示すように、それぞれのプリズムの稜線が互いに略直交する様に配置された2枚のプリズムシート34aおよび34bと、2枚のプリズムシート34aおよび34bの上に配置された偏光選択反射層32とを有する。プリズムシート34aは、例えば、ベースフィルム34baと、ベースフィルム34ba上に形成されたプリズム層34paとを有し、プリズムシート34bは、例えば、ベースフィルム34bbと、ベースフィルム34bb上に形成されたプリズム層34pbとを有する。プリズムシート34a、34bとしては、例えば3M社製のBEFを用いることができる。偏光選択反射層32は、例えば、屈折率の異なる膜を積層した積層構造を有する光学多層膜である。偏光選択反射層32としては、例えば、3M社製のDBEF(登録商標)を用いることができる。光学層積層体30の積層構造は図示される例に限定されず、適宜変更され得る。
【0033】
図1Hに、本実施形態の変形例によるバックライト装置を示す。図1Hに示すバックライト装置50A1は、拡散板48を有しない点において、バックライト装置50Aと異なる。バックライト装置50A1においても、バックライト装置50Aと同様に、液晶表示装置の表示品位の低下を抑制することができる。
【0034】
(実施形態2)
図2A図2Bおよび図2Cを参照しながら、本実施形態によるバックライト装置を説明する。図2Aは、実施形態2によるバックライト装置50Bを模式的に示す断面図であり、図2Bは、バックライト装置50Bを用いて部分駆動を行うときの模式的な断面図である。図2Cは、バックライト装置50Bの模式的な平面図であり、複数のルーバー45lと発光素子22との配置関係の例を模式的に示す図である。
【0035】
バックライト装置50Bにおいては、ルーバーフィルム45が、LED基板21よりも波長選択反射層28に近い位置に配置(拡散板48が設けられる場合は、波長選択反射層28と拡散板48との間に配置)されている点において、バックライト装置50Aと異なる。ルーバーフィルム45は、例えば拡散板48に支持されている。ルーバーフィルム45は、例えば、波長選択反射層28のLED基板21側の主面上に設けられている。ルーバーフィルム45は、対向する2枚のベースフィルム45b1および45b2と、2枚のベースフィルム45b1および45b2の間に配置された複数のルーバー45lとを有する。波長選択反射層28に近い方のベースフィルム45b2が、波長選択反射層28のLED基板21側の主面と例えば接着剤層を介して貼り合わせられていてもよい。バックライト装置50Bは、LED基板21とルーバーフィルム45との間に配置された拡散板48をさらに有する。なお、拡散板48は省略され得る。図2Bでは、簡単のために、拡散板48を省略している。
【0036】
バックライト装置50Bを用いることによっても、バックライト装置50Aと同様に、液晶表示装置の表示品位の低下を抑制することができる。バックライト装置50Bを用いることによっても、バックライト装置50Aと同様に、部分駆動を行うときに点灯領域Ronの周辺の領域R2が黄色く色付いて見えるという色むらを抑制することができる。バックライト装置50Bにおいて、点灯領域Ronの蛍光体層24から発せられた蛍光のうち、所定の角度以上の入射角で波長選択反射層28に入射し、波長選択反射層28を透過した光L3は、複数のルーバー45lによって遮光されるので、消灯領域Roffに入射することが抑制される。
【0037】
さらに、バックライト装置50Bは、バックライト装置50Aよりも効果的に、部分駆動を行うときの色むらの発生を抑制することができる。バックライト装置50Bは、図4Aおよび図4Bを参照して説明した、点灯領域Ronの端部の領域R1において、青暗く見えるという色むらも抑制することができる。バックライト装置50Bにおいては、ルーバーフィルム45がLED基板21よりも波長選択反射層28に近い位置に配置されている(例えば、波長選択反射層28のLED基板21側の主面上にルーバーフィルム45が設けられている)ので、蛍光体層24に、蛍光体層24の主面の法線方向から傾斜した角度で(斜め方向から)入射しようとする励起光L1がルーバーフィルム45によって遮光される。したがって、領域R1と点灯領域Ronの領域R1以外の領域R0との間で、蛍光体層24に入射する励起光の差が小さい。したがって、領域R1において、青暗く見えるという色むらも抑制することができる。
【0038】
図2Cに示されるように、ルーバーフィルム45は、LED基板21の主面21sの法線方向から見たとき、図中y方向に延びるルーバー45lが互いに平行に配置されている。すなわち、LED基板21の主面21sの法線方向から見たとき、複数のルーバー45lがストライプ状に形成されている。複数のルーバー45lは規則的に配列されており、複数のルーバー45lのピッチは、複数の発光素子22のピッチP1よりも小さい。LED基板21の主面21sの法線方向から見たとき、複数のルーバー45lは、複数の発光素子22のいずれかに重なるように配置されているルーバー45lを含む。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の実施形態のバックライト装置を用いると、液晶表示装置の表示品位の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0040】
10:液晶表示パネル、21:LED基板、21s:主面、22:発光素子、24:蛍光体層、28:波長選択反射層、30:光学層積層体、32:偏光選択反射層、34a、34b:プリズムシート、34ba、34bb:ベースフィルム、34pa、34pb:プリズム層、42、43、44、45:ルーバーフィルム、42b1、42b2、45b1、45b2:ベースフィルム、42h、42h1、42h2:開口部、42l、43l、44l、45l:ルーバー、48:拡散板、50A、50A1、50B:バックライト装置、100A:液晶表示装置
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B