(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177076
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】二酸化炭素の回収装置、および、二酸化炭素の回収方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/20 20230101AFI20241212BHJP
C02F 1/34 20230101ALI20241212BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C02F1/20 A
C02F1/34
B01D19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075197
(22)【出願日】2024-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2023094138
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 紀博
(72)【発明者】
【氏名】青谷 貴治
(72)【発明者】
【氏名】榊原 悌互
【テーマコード(参考)】
4D011
4D037
【Fターム(参考)】
4D011AA18
4D011AB10
4D011AC10
4D011BA20
4D037AA02
4D037AA05
4D037AA06
4D037AB11
4D037BA23
4D037BA26
4D037BB06
4D037BB07
4D037BB08
4D037BB09
(57)【要約】
【課題】 本発明は低コストに液体中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素の回収装置、及び二酸化炭素の回収方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の一態様における二酸化炭素の回収装置は、大気と内部空間とを隔てる隔壁から構成され、前記内部空間に二酸化炭素が溶解した液体を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留された前記液体に対して、前記貯留部あるいは前記貯留部に近接して配置された振動源の振動を伝達する振動伝達部と、前記振動伝達部を介して伝達された前記振動により前記液体から放出された前記二酸化炭素を回収して蓄積する蓄積部と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気と内部空間とを隔てる隔壁から構成され、前記内部空間に二酸化炭素が溶解した液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留された前記液体に対して、前記貯留部あるいは前記貯留部に近接して配置された振動源の振動を伝達する振動伝達部と、
前記振動伝達部を介して伝達された前記振動により前記液体から放出された前記二酸化炭素を回収して蓄積する蓄積部と、
を有することを特徴とする二酸化炭素の回収装置。
【請求項2】
前記振動源は、真空ポンプ、揚水ポンプ、排水ポンプ、水力発電機、風力発電機、船舶の推進エンジン、発電用エンジン、波力、風力であることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項3】
前記貯留部は弾性部を介して載置部に支持されることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項4】
前記貯留部における内部空間は、大気圧に対して減圧されていることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項5】
前記貯留部に貯留された液体を加熱する加熱機構をさらに有することを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項6】
前記貯留部に貯留された液体は、液体の自重によって排水されることを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項7】
前記貯留部が給水口と排水口とを有し、該給水口が該排水口よりも、液面に対して鉛直方向上側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項8】
前記二酸化炭素が溶解した液体は、サイフォンの原理によって循環することを特徴とする請求項7記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項9】
前記貯留部は、前記内部空間にトリチェリの真空空間が形成されていることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項10】
前記貯留部へ液体を給水する給水路に流量を抑制する構造を備え、前記貯留部から液体を排水する排水機構を備え、前記貯留部の内部の液体の液面高さが、前記貯留部におけるトリチェリの真空高さよりも低いことを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項11】
前記振動伝達部は、金属部材であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項12】
前記振動は、液体の流動による液体内部の局所的な水圧の変化によって生じる、キャビテーションとウオーターハンマー現象とのうち、少なくとも一方によって発生することを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項13】
前記振動は、前記貯留部に貯留された液体に対して、貯留部へ駐留された液体に対して、注水した液体が衝突することによって発生することを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項14】
大気と内部空間とを隔てる隔壁から構成され、前記内部空間に二酸化炭素が溶解した液体を貯留する貯留部に貯留された前記液体に対して、前記貯留部あるいは前記貯留部に近接して配置された振動源の振動を伝達する振動伝達工程と、
伝達された前記振動により前記液体から放出された前記二酸化炭素を回収して蓄積する蓄積工程と、
を有することを特徴とする二酸化炭素の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低コストに液体から二酸化炭素を回収する、二酸化炭素の回収装置、および、二酸化炭素の回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策として大気中の二酸化炭素量を減らすことによる地球環境負荷低減が世界的に求められている。このためには二酸化炭素の排出量削減と、併せて大気中に存在する二酸化炭素を回収することによる大気中の二酸化炭素濃度の低減、との2つが必要である。大気中の二酸化濃度は400ppm程度と希薄であり、大気中の二酸化炭素濃度を低減させるためには、回収のためのエネルギーとして新たな二酸化炭素の放出を極力少なくする方法でなければ二酸化炭素濃度の低減はできない。
【0003】
新たな二酸化炭素を放出することなく二酸化炭素を回収する手段の一つとして、海水や淡水を介して二酸化炭素を回収する方法がある。海水や淡水には大気中に含まれる二酸化炭素が溶け込んでおり、前述の海水や淡水から減圧によって二酸化炭素を取り出す方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、魚類飼育水槽内の海水中に溶解している二酸化炭素を、海水を減圧することによって除去する、魚類飼育水槽の二酸化炭素除去装置が記載されている。具体的には、海水の二酸化炭素を取り除くために、減圧空間で気泡化した二酸化炭素を外部に排出し、二酸化炭素を取り除いた海水を水槽内に供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、ノズルを設けるとともに、タンク内の減圧状態を維持するための制御部が必要であり、装置構成が複雑でコストが高かった。
【0007】
本発明は低コストに液体中の二酸化炭素を回収する、二酸化炭素の回収装置、および、二酸化炭素の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様における二酸化炭素の回収装置は、大気と内部空間とを隔てる隔壁から構成され、前記内部空間に二酸化炭素が溶解した液体を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留された前記液体に対して、前記貯留部あるいは前記貯留部に近接して配置された振動源の振動を伝達する振動伝達部と、
前記振動伝達部を介して伝達された前記振動により前記液体から放出された前記二酸化炭素を回収して蓄積する蓄積部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本発明では低コストに液体中の二酸化炭素を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置の概要図。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置の概要図。
【
図3】本発明の第3の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置の概要図。
【
図4】本発明の第4の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置の概要図。
【
図5】本発明の第5の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置の概要図。
【
図6】本発明の第6の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置の概要図。
【
図7】本発明の第7の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置の概要図。
【
図8】本発明の第8の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置の概要図。
【
図9】本発明の第9の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様に係る二酸化炭素の回収装置は、低コストに大気中の二酸化炭素を回収するために、二酸化炭素が溶解した液体を加熱もしくは減圧によって回収する。二酸化炭素が溶解した液体とは例えば、雨水や河川水、湖の水、海水等である。ここで雨水や河川水等の淡水は大気中の二酸化炭素が平衡圧力状態にて溶解している。比較して海水は二酸化炭素の溶解度がさらに高い。また、水に対する二酸化炭素の溶解度は低温で高く、高温で低くなる特性がある。併せて、気圧が高いほど二酸化炭素の溶解度は高く、気圧が低いほど溶解度は低い。
【0012】
地球温暖化対策として大気中の二酸化炭素量を減らすためには、大量の海水や淡水を装置内へ給排水しつつ二酸化炭素を取り出す必要がある。低エネルギーにて海水や淡水から二酸化炭素を回収するためには、海水や淡水を減圧することによって二酸化炭素を取り出すことが望ましい。
【0013】
本発明に係る二酸化炭素の回収装置は、シンプルな装置構成によって低コストに二酸化炭素を回収することができる。具体的には、海水や淡水を揚水し、貯留部から放出された二酸化炭素を回収し、海水や淡水の装置内循環をサイフォンの原理を利用して行う。ここで、例えば、貯留部はトリチェリの真空(揚水に伴って上部にできる真空空間)であり、トリチェリの真空は、減圧によって揚水できる位置的な限界となる高さを超えた空間に生じた真空空間を指す。大気圧と溶液の比重、及び溶液の蒸気圧との関係によって形成されることが一般的に知られており、水は海抜0メートルにおいては凡そ10mを超えるとトリチェリの真空が生じる。一方で、貯留部において減圧は必須ではなく、加熱機構による加熱により、二酸化炭素が放出されるように構成されていてもよい。
【0014】
本発明の二酸化炭素の回収装置の一態様として、トリチェリの真空に対して、海水や淡水に溶解していた二酸化炭素が気体として放出されるよう構成されるため、真空ポンプによって二酸化炭素を排出して回収タンクへ回収することができる。また本発明の二酸化炭素の回収装置は、揚水した海水や淡水を減圧状態で装置内循環するために、例えばサイフォンの原理を利用する。なお、装置内循環の方法は、サイフォンの原理だけに限定されるものではなく、液体を循環させる機構であれば、他の公知技術から構成されてもよい。
【0015】
本発明の二酸化炭素の回収装置において、給水路における液体の自重による圧力密度と、排水路における液体の圧力密度は、給水路と排水路とのそれぞれの位置的な高さが同じであれば同じ圧力密度となる。すなわち、給水面の水位が排水面の水位よりも高ければ、液体は水流ポンプ等の動力補助が無くとも位置エネルギーによって給水側から排水側へ流動させることが可能となる。また、給水面と排水面とが同じ高さ関係である場合においても、水流ポンプによってわずかに動力補助を行うことによって液体の装置内循環が可能となる。
【0016】
本発明における二酸化炭素の回収装置は、前述の構成および方法を採用することによって、二酸化炭素を回収する装置において低エネルギーによる二酸化炭素の回収が可能となる。また本発明はさらに、液体に溶解している二酸化炭素を気体として取り出す反応時間を短縮するための手段として、液体に振動を伝達する、すなわち、加振することによって、低コストに液体から二酸化炭素を回収することできる。また該振動は、振動発生を目的としない振動源である機器が生じる振動を液体に伝達して加振する方法を採用することが好ましい。
【0017】
すなわち、本発明の二酸化炭素の回収装置は、大気と内部空間とを隔てる隔壁から構成され、前記内部空間に二酸化炭素が溶解した液体を貯留する貯留部を有する。また、貯留部に貯留された液体に対して、貯留部あるいは前記貯留部に近接して配置された振動源の振動を伝達する振動伝達部をさらに有する。さらに振動伝達部を介して伝達された振動により液体から放出された前記二酸化炭素を回収して蓄積する蓄積部とを有することによって、低コストに二酸化炭素を回収することを特徴とする。
【0018】
以下、好適な実施形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれる。
【0019】
[第1の実施形態]
下記、
図1を用いて、本発明の二酸化炭素の回収装置の機能構成の一例を説明する。
【0020】
大気中の二酸化炭素が溶解した液体100を、注入ポンプ104によって注入バルブ105を介してCO2放出タンク(貯留部)101へ注入する。排水バルブ107は閉じており、CO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100は液体の注入量の調整により、空間111が生じている。そして注入完了後に注入バルブ105を閉じる。
【0021】
次に、バルブ106を開き、真空ポンプ102によってCO2放出タンク(貯留部)101内部を減圧する。本実施例においてはCO2放出タンク(貯留部)101内部の真空度は2kPaとなるようにしたが、大気圧以下であればこれよりも高い圧力であっても良く、真空度を限定するものではない。
【0022】
ここで真空ポンプ102は振動伝達部103を介して物理的にCO2放出タンク(貯留部)101に接続されている。そして、振動源である真空ポンプ102が排気動作する振動は、振動伝達部103によって貯留部内部の液体に伝達される。具体的にはCO2放出タンク(貯留部)101を介してCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100に伝えられる。すなわち、貯留部101に貯留された液体に対して、貯留部101に近接して配置された振動源の振動を、振動伝達部103を介して、伝達される。
【0023】
ここで液体100は、減圧によって圧力平衡よりも過剰に二酸化炭素が溶けた状態となっており、液体100から貯留部101に二酸化炭素が放出される。更に、真空ポンプ102が生じる振動に起因して二酸化炭素が液体100から気泡110となって空間111へ放出される。空間111へ放出された二酸化炭素は真空ポンプ102によって放出タンク101から回収し、CO2貯蔵部(蓄積部)(蓄積部)108に貯蔵する。
【0024】
本実施形態においては液体100の減圧時間は3分としたが、減圧時間を限定するものではなく、減圧時間を長くすることによって、二酸化炭素の回収装置による液体100からの二酸化炭素の回収率は向上する。しかしながら減圧時間を長くすることによって液体100に残存する二酸化炭素の量が減少するため、二酸化炭素を回収できる時間あたりの量は減少する。
【0025】
本実施形態において、液体100は所望の減圧時間の減圧を行った後、バルブ106を閉じて真空ポンプ102を停止する。大気リークバルブ122を開いて空間111を大気圧とし、排水バルブ107を開いてCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100を排水する。CO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100を排水したのちに排水バルブ107を閉じて、一連の二酸化炭素回収動作とする。前述の一連の動作を繰り返すことによって大気中の二酸化炭素を回収する。
【0026】
本実施例において二酸化炭素が溶解した液体100として海水を用いたが、大気中の二酸化炭素が溶解した液体であればこれに限定するものではなく、雨水、河川水、湖の水、水道水、であっても良い。
【0027】
また液体100は塩基性水溶液やフッ素系活性液体としても良く、これらの液体を大気に暴露することによって大気中の二酸化炭素を回収してもよい。また回収した液体中のCO2を本実施例における回収装置によって回収し、二酸化炭素の回収を終えた液体100を再度大気中の二酸化炭素を回収に利用する循環系装置とすることも考えられる。
【0028】
液体100は、CO2を回収するために塩基性溶液としてもよく、塩基性物質としては水酸化ナトリウムやアンモニア、アミン(一級アミン、二級アミン、三級アミン)がありそのまま若しくは溶液にしてもいいてもよい。また溶解し塩基性を示す炭酸水素ナトリウムのような塩を溶液にしたものでもよい。またCO2を回収に伴いpHの急激な変化を抑制するために、ホウ酸塩やリン酸緩衝液、トリス(Tris)を緩衝液として用いてもよい。CO2溶解性の高いフッ素系活性液体を用いて回収すること効率が上がり使用できる。またCO2溶解性の高いフッ素系活性液体としては、粘性の観点より置換基を有してもよく、また分岐構造および/または環状構造を有してもよいフルオロカーボン類から選ばれることを特徴とする。例えば、パーフルブロン、パーフルオロデカリン、フロリナート FC-3283、パーフルオロブチルパーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロ‐1-イソプロポキシヘキサン、パーフルオロ‐1,4-ジイソプロポキシブタン、ハイドロフルオロエーテル(ノベック7100、ノベック7300)などが挙げられるが、本発明の範囲を限定するものではない。また液体の物性調整のためにその他の液体を混ぜることも有用である。
【0029】
本実施形態において使用した真空ポンプ102は単相100V、50Hzの商用電源で動作する誘導モーターによって駆動する真空ポンプである。振動源である真空ポンプの振動を測定したところ数Hz以上において大きな振動が得られ、25Hz近辺、及び50Hz近辺に振動振幅のピークが見受けられた。
【0030】
使用するモーターは省電力であるブラシレスモーターを用いることが好ましく、一般的な制御周波数は数kHz~10kHz程度の範囲である。ブラシレスモーターの駆動電流生成は前述の駆動周波数によって生成するPWM信号に起因したデジタル波形をパワートランジスタやFETを用いて電力増幅し、ローパスフィルタによってアナログの電流波形に変換して生成する。駆動回路構成によっては駆動電流波形に前述のローパスフィルタにて除去しきれない高周波が残るため、モーターが生じる振動に影響を及ぼす。このためポンプの振動周波数範囲は、前述の回転速度や構造に制御周波数を加味した数Hz~10kHz程度の範囲で大きな振動が得られる。
【0031】
一般的なブラシレスモーターは最大回転数が6000rpmであることが多く、この回転数の場合はモーター単体の回転周波数は100Hz以下となる。また、モーターの回転速度にムラを生じさせる制御を行うことによって振動を生成しても良く、例えばブラシレスモーターのコギングに起因する振動が大きくなるようにモーター駆動電流を制御しても良い。コギングに起因する振動は、例えば3相の電流で駆動するモーターの場合は3相のコイルを5組程度の構成とした製品であることが多く、モーター1回転当たり15回程度のコギングによる振動が生じる。ブラシレスモーターの構成は多岐にわたるため前述のコイル構成は一例である。
【0032】
また、ポンプを構成するギアやスクリューの構造によって生成する振動周波数は異なる。例えばポンプ構造の一部が高速回転するギア構成として高い周波数の振動を生成する構成としても良い。振動エネルギーは、同じ振幅であれば周波数が高い方が大きくなることが一般的に知られており、液体100からの気泡110の発生を促進できれば振動周波数を限定するものではない。
【0033】
本実施形態における振動伝達部103は鉄製の金属部材を用いた。振動源である真空ポンプ102とCO2放出タンク(貯留部)101とを前述の金属部材によって固定した。振動伝達部103は振動源である真空ポンプ102の振動が液体100に伝わればよく、前述の鉄製の金属部材に限定するものではなく、例えばSUS、アルミや銅の合金、樹脂材料でも良い。また振動伝達部103はCO2放出タンク(貯留部)101内部を減圧するための排気管であっても良く、真空ポンプ102を装置架台124に設置することによって装置架台124を振動伝達部103としても良い。
【0034】
CO2放出タンク(貯留部)101は弾性部123を介して装置架台124等の載置部へ支持され、CO2放出タンク(貯留部)101が振動しやすい構造とした。本実施例において弾性部123はゴム製の部材を用いたが、ばね性を有する金属、樹脂、木材による構造体や、ダンパー構造であっても良い。また載置部は、架台に限定されず、地面等であってもよい。
【0035】
また二酸化炭素の回収装置において、加熱機構から構成される加熱部109によって貯留部101内の液体100を加熱しても良い。加熱部109は加熱のために大気へ新たな二酸化炭素を放出しない熱源が好ましく、例えば工場廃熱利用、太陽光を基にしたエネルギー利用、地熱利用、グリーン電力利用が好ましい。二酸化炭素が大気圧力平衡状態の溶液100は、減圧のみならず、溶液温度を上昇させることによって二酸化炭素を放出すため、減圧と共に加熱することが望ましい。
【0036】
[第2の実施形態]
下記、
図2を用いて、本発明の二酸化炭素の回収装置の機能構成の一例を説明する。
【0037】
第1の実施形態との差異を中心に説明する。本実施形態において、二酸化炭素が溶解した液体100は海水とし、海水面H2からCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100の揚水高さH2を約10mの高さとなるようにCO2放出タンク(貯留部)101を設置した。液体100を揚水ポンプ104によって給水管113を介してCO2放出タンク(貯留部)101内部へ矢印で図示する流れで揚水する。
【0038】
併せて真空ポンプ102によってCO2放出タンク(貯留部)101内部を減圧する。給水口より揚水した液体100はCO2放出タンク(貯留部)101の形状と揚水高さH2に基づく液量がCO2放出タンク(貯留部)101内部に貯留されている。
【0039】
本実施形態における二酸化炭素の回収装置において、揚水した液体100は排水管114と排水ポンプ106によって矢印で図示する流れとして排水口118より排水される。本実施例においては空間111が2kPaとなるように減圧した。また、CO2放出タンク(貯留部)101内部における給水管113と排水管114の高さ関係は、残留する二酸化炭素濃度が低下した液体100から排水される高さ関係が望ましく、溶媒である液体100によって異なるため高さ関係を限定するものではない。
【0040】
本実施例においては排水ポンプ106によって液体100を排水する構成としたが、揚水高さH2は、『トリチェリの真空高さ』と呼ばれる原理によって揚水高さ上限が決まり、海抜0mにおける海水を揚水する場合は揚水高さH2が約10mとなる。トリチェリの真空高さは、液体100の蒸気圧と、液体100の重量密度、海水面H1における大気圧との関係によって決定される。言い換えると、本実施形態における二酸化炭素の回収装置は、貯留部101へ液体を給水する給水路に流量を抑制する構造である給水管113を備え、貯留部から液体を排水する排水機構である排水管114を備える。また、貯留部101の内部の液体の液面高さが、貯留部におけるトリチェリの真空高さよりも低いことを特徴とする。なお、前述の液体100の液面の高さは気圧や液体100の温度、CO2放出タンク(貯留部)101内部の真空度、液体100の構成元素によって変化する。
【0041】
また揚水高さH2がトリチェリの真空高さの場合は排水ポンプ106が無くても液体100は液体100の自重によって排水するので、排水ポンプ106が無い構成であっても良い。さらに、揚水ポンプ104と排水ポンプ106との両方を用いて液体100を給排水する場合は、揚水高さH2をトリチェリの真空高さ以下の任意の高さとすることが出来る。もしくは液体100の給水流量を流量抑制機構によって少なくし、且つ排水ポンプ106によって排水することで、揚水高さが調整されてもよい。
【0042】
前述の流量抑制機構は、給水する水の流動抵抗を高く出来れば良く、例えば給水管113に流量調整バルブを設けた構成や、給水管113の直径を細くした構成であっても良い。
【0043】
揚水高さH2をトリチェリの真空高さとする場合、排水ポンプ106を用いて液体100を排水すればよい。具体的には揚水ポンプ104が無い構成であっても、CO2放出タンク(貯留部)101内部の圧力と液体100が受ける大気圧との関係によって液体100は揚水される。したがって省電力の観点から揚水ポンプ104、もしくは排水ポンプ106のどちらか一方とする構成が望ましい。
【0044】
本実施例における液体100の装置内循環はサイフォンの原理によって循環するため、例えば揚水ポンプ104の揚水によって液体100を循環する場合は、わずかに揚水すれば良いため少ないポンプ駆動電力で循環できる。
【0045】
減圧した空間111へ放出する二酸化炭素は水蒸気フィルタ115を介して真空ポンプ102によって回収され、二酸化炭素バッファタンク116に一時的に溜めたのちに加圧ポンプ117によってCO2貯蔵部(蓄積部)108へ貯蔵される。本実施例においては回収した二酸化炭素はCO2貯蔵部(蓄積部)108へ大気圧以上の圧力にて貯蔵した。
【0046】
本実施例において給水管113は振動源である揚水ポンプ104の振動をCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100へ伝達する振動伝達部とした。併せて排水管114を排水ポンプ106の振動を伝達する振動伝達部とした。給水管113、及び排水管114はステンレス鋼管を用いたが材質を限定するものではない。該構成によって揚水ポンプ104の振動が、振動伝達部である給水管113へ伝達され給水管が振動し、給水管113の振動が、貯留部111へ伝達されることによって、貯留部101内の液体から二酸化炭素が放出される。また排水ポンプ106の振動が、振動伝達部である排水管114が振動することで、貯留部111へ伝達されることにより、貯留部101内の液体からさらに二酸化炭素が放出される。なお、第1の実施形態のように、真空ポンプの振動を振動伝達部を介して機能させても、上述の振動伝達部のいずれかと適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0047】
揚水ポンプや排水ポンプの振動周波数はモーターの回転速度や水流を生じさせる羽の枚数などの構造によって異なる。振動エネルギーは、同じ振幅であれば周波数が高い方が大きくなることが一般的に知られており、液体100からの気泡110の発生を促進できれば振動周波数を限定するものではない。
【0048】
本実施例において液体100は海水としたが、二酸化炭素が溶解した液体であればよく、雨水、河川水、湖の水、水道水、塩基性水溶液やフッ素系活性液体としても良く、海水に限定されるものではない。また、第1の実施形態にて述べた、液体100を大気に暴露することによって大気中の二酸化炭素を回収する構成と組み合わせて循環系二酸化炭素の回収装置としても良い。
【0049】
[第3の実施形態]
下記、
図3を用いて、本発明の二酸化炭素の回収装置の機能構成の一例を説明する。
【0050】
特に、上述の実施形態との差異を中心に説明する。本実施形態において、二酸化炭素が溶解した液体300は河川水であり、給水口が配された給水面となる液体300表面の高さより排水面である排水口118の高さが低い関係とする。また給水口が排水口よりも鉛直方向上側に設けられている。本実施形態において、二酸化炭素の回収装置はこのように構成されることで、給水した液体300をサイフォンの原理によって、液体を流動する動力源を要することなく二酸化炭素の回収装置内部を循環して排水させることができる。本実施形態において排水口118と排水した液体301は接触しない構成としたが、サイフォンの原理による排水を可能とする構成であれば、接触の有無は問わない。
【0051】
排水管114の流路には水力発電機である発電機302を取り付け、液体300の排水に伴う位置エネルギーに基づいて水力発電を行う。発電機302によって発電した電力は、真空ポンプ102と加圧ポンプ117、及び装置制御系の電源電力とした。発電機302によって生じる振動は振動伝達部である排水管114によって、貯留部101内の液体300へ伝達する。発電機302が発電動作することによる振動周波数は水流を回転運動に変換する羽の枚数と発電機の回転数によって異なるが、振動振幅と振動周波数は液体300に溶解した二酸化炭素からの気泡110生成を促進できれば良く、限定するものではない。排水管114の材質はステンレス管としたが、塩化ビニール管や鉄管であっても良く、材質を限定するものではない。
【0052】
液体300の液面の高さは気圧や液体300の温度、CO2放出タンク(貯留部)101内部の真空度、液体300の構成元素によって変化する。本実施例において、CO2放出タンク(貯留部)101内部の真空度は2kPa程度とし、液体300の大気接触面からCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体300の液面までの高さを約10mとなるようにした。排水管114の長さを10m以上として発電機302が発電を行うために十分な液体300の位置エネルギーを得られる構成とした。
【0053】
[第4の実施形態]
下記、
図4を用いて、本発明の二酸化炭素の回収装置の機能構成の一例を説明する。
【0054】
本実施形態は第2の実施例形態における二酸化炭素の装置構成に対して水面上に浮遊する機構を設けた構成である。二酸化炭素が溶解した液体400は海水としたが、河川水や湖の水のような淡水であっても良い。浮遊体401は、例えば船舶の船体であり、船舶の航行を目的とした内燃機関である発動機402を有する。すなわち、本実施形態における振動源は、例えば船舶の推進エンジンである。なお発動機402は発電を目的とする発動機であっても良く、発動機の用途を限定するものではなく、例えば、振動源が発電用エンジンであってもよい。また本実施例において浮遊体401は船舶としたが水面に浮遊する構造物であれば良く、例えば洋上に浮遊する風力発電機であっても良い。
【0055】
発動機402が発生する振動周波数は、内燃機関としての回転数によって変化する。発動機402によって発生した振動は、浮遊体401を介して給水管113と、排水管114とに伝わり、CO2放出タンク(貯留部)101内部の液体400に伝わる。すなわち、発動機402が発生する振動によってCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体400から二酸化炭素が放出することを促進する。本実施例においては給水管113と排水管114とを振動伝達部としたが、別途振動伝達部となる構造物を設けても良い。
【0056】
また、液体400は海水であり、浮遊体401は海水上に浮遊しているため、天候に起因して生じる波力によって揺れる。浮遊体401が揺れることによって、CO2放出タンク(貯留部)101内部の液体400が揺れる。波力の影響による船体の振動周波数は船体の大きさや構造によって差異はあるが凡そ0.1Hz~1Hz程度である。CO2放出タンク(貯留部)101は海面上10m程度の高さに設置するため、波力の影響による振動振幅は大きく、CO2放出タンク(貯留部)101内部の液体400から二酸化炭素が放出することを促進する。前述の液体400の液面の高さは気圧や液体400の温度、CO2放出タンク(貯留部)101内部の真空度、液体100の構成元素によって変化する。
【0057】
バッファタンク404は、浮遊体401が波の影響によって大きく揺れた際にCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体400を真空ポンプ102が吸い込まないようにする目的であり、少量の液体400であれば真空ポンプ102への流入を防止する。本実施例においてはCO2放出タンク(貯留部)101とバッファタンク404は別のタンクとして構成したが、CO2放出タンク(貯留部)101内部に仕切り板を付けて別室を設ける構成であっても良い。
【0058】
波力の影響で浮遊体401が大きく傾いた場合はバルブ403を閉じて液体400が真空ポンプ102へ流入することを防止する。本実施例においては船体の傾きを検知するセンサーを設けて、一定以上の傾きによってバルブ403を自動的に閉じる制御を行った。
【0059】
本実施例においては発動機402が発生する熱は給水管113を介して液体400へ伝達する構成としたが、別途発動機402が発生する熱を液体400へ伝達する熱伝達機構を設けても良い。液体400を加熱することによって、液体400からの二酸化炭素の放出を促進する。
【0060】
[第5の実施形態]
下記、
図5を用いて、本発明の二酸化炭素の回収装置の機能構成の一例を説明する。
【0061】
本実施例は第2の実施形態における構成に対して風力によって発電する機構を設けた構成である。風車501、風車が回ることによって発電する発電機502、発電機の振動をCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体400へ伝達する振動伝達部503を有する。本実施例における振動伝達部503の材質は鉄部材としたが、材質を限定するものではない。
【0062】
発電機502の振動周波数は風車の回転速度や羽の枚数などの構造によって異なる。風力発電機は数十Hz以下の低周波領域の振動を多く生じる。振動エネルギーは、同じ振幅であれば周波数が高い方が大きくなることが一般的に知られているが、振幅が大きければ液体100からの二酸化炭素の放出を促進する。液体100からの気泡110の発生を促進できれば振動周波数を限定するものではない。
【0063】
風力発電機は風車501が地面などと接触しないための構造物としての高さが必要である。このため本実施例においてはCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100の液面の高さを、取水面の高さから10m程度とした。前述の液体100の液面の高さは気圧や液体100の温度、CO2放出タンク(貯留部)101内部の真空度、液体100の構成元素によって変化する。
【0064】
本実施例においてCO2放出タンク(貯留部)101は地面に建てた構造物(図示無し)よって所定の高さへ設置した。風力に起因して前述の構造物の弾性によってCO2放出タンク(貯留部)101が左右、及び前後に揺れる構造とした。CO2放出タンク(貯留部)101が揺れることによってCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100が加振されて液体100からの二酸化炭素の放出が促進される。風車501と発電機502はCO2放出タンク(貯留部)101付近に設置したが、振動伝達部503によって振動をCO2放出タンク(貯留部)101に伝達できればよい。例えば風車501と発電機502は高さ40m付近に設置しても良く、位置関係を限定するものではない。前述の構造物は鉄部材としたが、ステンレスやアルミなどの金属及び合金、コンクリート、木材であっても良く、材質を限定するものではない。
【0065】
液体100は海水としたが淡水であっても良い。また、本実施例における構成は、実施例4に述べた浮遊体401と組み合わせた構成であっても良い。本実施例においては揚水ポンプ104と排水ポンプ106との2つのポンプを備えた構成としたが、どちらか一方のポンプを備えていれば液体100の循環は可能であり、ポンプ構成を限定するものではない。
【0066】
[第6の実施形態]
下記、
図6を用いて、本発明の二酸化炭素の回収装置の機能構成の一例を説明する。
【0067】
本実施例は第1の実施形態における構成に対して、振動伝達部103上にCO2放出タンク(貯留部)101と真空ポンプ102とを設置した形態とした。真空ポンプ102はULVAC社の型番:DA-20Dとし、振動周波数を測定したところ、主要な振動周波数ピークは50Hzであった。振動伝達部103はステンレス製の一般的な実験機器用ラックの天板とし、弾性部123はラック用の樹脂製キャスターとした。
【0068】
真空ポンプ102と水蒸気フィルタ115とを繋ぐ配管、及び真空ポンプ102と二酸化炭素バッファタンク116とを繋ぐ配管は樹脂製の柔軟性のある配管とし、真空ポンプ102の設置位置を容易に変更できるようにした。
【0069】
図6(B)は真空ポンプ102の設置位置を、振動伝達部103の上に設置した場合と、装置架台124の上に設置した場合との、2つのCO2回収量の時間変化を測定した結果である。本実施例においては液体100は海水とし、注入バルブ105と、排水バルブ107とを閉じ、液体100が循環しない状態で測定を行った。振動伝達部103の上に真空ポンプ102を設置した場合は、装置架台124の上に設置した場合と比較して短時間で多くのCO2が回収できる結果となった。
【0070】
また、真空ポンプ102を装置架台124の上に設置した場合の測定では、測定途中において真空ポンプ102を振動伝達部103の上に設置場所を変更してみたところ、CO2回収レートが速くなる結果が得られた。
【0071】
本測定は、液体100が循環しない状態としたが計測のためであり、注入バルブ105と、排水バルブ107とを開いて、排水ポンプ601によって液体を循環させて連続的に二酸化炭素を回収しても良い。真空ポンプ102の型番は計測実験用として用いたものであり、真空ポンプの型番や種類を限定するものではない。
【0072】
また、液体100を循環させる方法は、CO2放出タンク(貯留部)101の液体100を排水してから新たに注水する方法でも良い。または、排水を行う場合はCO2放出タンク(貯留部)101の内部の圧力を大気圧に戻す方法であっても良く、液体の循環方法を限定するものではない。
【0073】
[第7の実施形態]
下記、
図7を用いて、本発明の二酸化炭素の回収装置の機能構成の一例を説明する。
【0074】
本実施例は第3の実施形態における構成に対して、給水管113の内部に流路の幅が狭くなる構造を設け、水流の変化によって振動を生成する振動生成部701を設けた構成とした。液体100は、振動生成部701によって局所的に水圧に変化が生じてキャビテーションや、ウオーターハンマー現象が発生して振動を生じる。即ち、振動生成部701は、液体の流動による液体内部の局所的な水圧の変化によって生じる、キャビテーションとウオーターハンマー現象とのうち、少なくとも一方によって発生した振動を伝達することを特徴とする。
【0075】
振動生成部701によって生じた振動を振動伝達部である給水管113によってCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100へ振動を伝達する。振動生成部701は、水流が変化して振動を生じれば良く、振動生成部701の構造は、例えばスクリューや、金属球体や石粒や木片等が浮動する構造、甲殻類や貝等の海洋生物、海藻等の海洋植物であっても良い。
【0076】
振動生成部701は、本実施例においてはステンレス部材を用いたが材質を限定するものではない。本実施例において、液体100は河川水とし、液体100の液面高さは、給水側液面300が排水側液面301よりも高い位置関係として、サイフォンの原理によって液体100が循環する構成として説明をした。しかしながら給水側液面300と排水側液面301との液面高さが同じである海水を循環ポンプによって循環する構成であっても良い。
【0077】
[第8の実施形態]
下記、
図8を用いて、本発明の二酸化炭素の回収装置の機能構成の一例を説明する。
【0078】
本実施例は第7の実施形態における構成に対して、液体100の液面高さは給水側液面300の方が排水側液面301よりも高い位置関係とし、液体100は大気圧とCO2放出タンク(貯留部)101内部の圧力との差に起因して流動する。
【0079】
液体100がCO2放出タンク(貯留部)101内部へ注水される流量を、注入バルブ105によって調節する構成とした。液体100が注入バルブ105を通過することに起因して生じる振動を振動伝達部である給水管113によってCO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100へ伝達する。
【0080】
CO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100は、自重によって排水口118から排水される構成としたが、別途排水を目的とした循環補助ポンプを設けて排水しても良い。
【0081】
[第9の実施形態]
下記、
図9を用いて、本発明の二酸化炭素の回収装置の機能構成の一例を説明する。
【0082】
本実施例は第8の実施形態における構成に対して、CO2放出タンク(貯留部)101内部へ注水する液体100を、振動伝達部901へ衝突させて振動を発生させて、液体100へ振動を伝達する構成である。前述の衝突によって発生した振動は、CO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100によって、CO2放出タンク内の液体100全体へ振動伝達する。
【0083】
本実施例において注水する液体100は、振動伝達部901へ衝突させて振動を発生させる構成とした。しかしながら、CO2放出タンク(貯留部)101内部の液体100に衝突させて、発生した衝突エネルギーを液体100を介して振動伝達部901へ伝達する構成としても良い。即ち、振動伝達部901は、貯留部へ駐留された液体に対して、注水した液体が衝突することによって生じる振動を伝達してもよい。
【符号の説明】
【0084】
100 液体
101 CO2放出タンク(貯留部)
102 真空ポンプ
103 振動伝達部
104 注入ポンプ
105 注入バルブ
106 バルブ
107 排水バルブ
108 CO2貯蔵部(蓄積部)
109 加熱部
110 気泡
111 空間
122 大気リークバルブ
123 弾性部
124 装置架台