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特開2024-177080バリスタ装置及びバリスタ装置の操作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177080
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】バリスタ装置及びバリスタ装置の操作方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/00 20230101AFI20241212BHJP
   H01C 7/105 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H10N60/00 A ZAA
H01C7/105
H10N60/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024077675
(22)【出願日】2024-05-13
(31)【優先権主張番号】23178508
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521124319
【氏名又は名称】テラ クアンタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】TERRA QUANTUM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ヴィノコール・ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ・アレクセイ
【テーマコード(参考)】
4M113
5E034
【Fターム(参考)】
4M113AB00
4M113AC06
4M113AC45
4M113AC50
4M113CA12
4M113CA13
5E034CA10
5E034CB08
5E034CC20
5E034DA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】極低温で動作可能な改良されたバリスタ装置を提供する。
【解決手段】極低温で電子回路を電圧サージから保護するためのバリスタ装置10は、超絶縁体材料で構成された電気リード線2と、電気的接触素子4と、を備える。電気的接触素子は、電気リード線に沿った互いに異なる位置6、8で電子回路に接続するためのものであり、電気リード線に沿った互いに異なる位置で電気リード線と電気的に接触している。電気リード線は、極低温で超絶縁状態又はクーパー対絶縁状態を提供し、極低温で互いに異なる位置の間に非線形抵抗を提供するように適合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温で電子回路(12)を電圧サージ保護するためのバリスタ装置(10)であって、
前記バリスタ装置(10)は、
超絶縁体材料で構成された電気リード線(2)と、
前記電気リード線(2)に沿った互いに異なる位置(6、8)を電子回路(12)に接続するための電気的接触素子(4)と、を備え、
前記電気的接触素子(4)は、前記電気リード線(2)に沿った前記互いに異なる位置(6、8)で前記電気リード線(2)と電気的に接触し、
前記電気リード線(2)は、前記極低温で超絶縁状態又はクーパー対絶縁状態を提供し、前記極低温で前記互いに異なる位置(6、8)の間に非線形抵抗を提供するように適合されている、
バリスタ装置(10)。
【請求項2】
前記電子回路(12)は、超伝導コイル、超伝導量子ビット、SQUID又は超伝導単電子トランジスタ等の極低温で超伝導を示すように適合された超伝導コンポーネントを備える、
請求項1に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項3】
前記電気リード線(2)は、前記電気的接触素子(4)を介して及び/又は電気的に並列に、前記電子回路(12)に接続される、
請求項1又は2に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項4】
前記超絶縁体材料は、窒化チタン、窒化ニオブチタン、及び酸化インジウムを含むグループからの材料を含む、又は、窒化チタン、窒化ニオブチタン、及び酸化インジウムを含むグループからの材料である、
請求項1又は2に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項5】
前記電気リード線(2)の厚さ(T)が10nmを超えない、
請求項1又は2に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項6】
前記超絶縁体材料は窒化チタンであり、前記電気リード線(2)の厚さ(T)は5nmを超えない、
請求項1又は2に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項7】
前記極低温は、1.5K以下、0.5K以下、0.15K以下、又は、0.05K以下の温度を指す、
請求項1又は2に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項8】
前記電子回路(12)及び前記電気リード線(2)は、同一の冷却素子(14)と熱的に接触するように配置され、前記冷却素子(14)は、前記極低温を提供するように適合されている、
請求項1又は2に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項9】
前記互いに異なる位置(6、8)の1つにある前記電気リード線(2)は、基準電位(16、18)に電気的に接続され、又は、互いに異なる位置(6、8)にある前記電気リード線(2)は、互いに異なる基準電位(16、18)に電気的に接続される、
請求項1又は2に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項10】
前記互いに異なる位置(6、8)の間の前記電気リード線の長さ(L)は、少なくとも1mmである、
請求項1又は2に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項11】
前記超絶縁体材料は、窒化チタン又は窒化ニオブチタンの層(2´)に、プラズマエッチング(26)等のエッチング(26)を使用することによって得られる、
請求項1又は2に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項12】
前記電気リード線(2)の前記超絶縁体材料は、前記超絶縁体材料の高結晶成長を促進するように適合された成長促進層(20)、具体的には、誘電体成長促進層(20)と物理的に接触している、
請求項1又は2に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項13】
前記成長促進層(20)は、窒化アルミニウム等の窒化物、若しくは、二酸化ケイ素等の酸化物を含む、又は、窒化アルミニウム等の窒化物、若しくは、二酸化ケイ素等の酸化物である、
請求項12に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項14】
前記成長促進層(20)は、シリコン基板(22)等の基板(22)の上に設けられる、
請求項12に記載のバリスタ装置(10)。
【請求項15】
バリスタ装置(10)を動作させて、極低温で電子回路(12)を電圧サージから保護する方法(40)であって、
前記バリスタ装置(10)は、
超絶縁体材料で構成された電気リード線(2)と、前記電気リード線(2)に沿った互いに異なる位置(6、8)で前記電子回路(12)に接続する電気的接触素子(4)とを備え、前記電気的接触素子(4)は、前記電気リード線(2)に沿った前記互いに異なる位置(6、8)で前記電気リード線(2)と電気的に接触しており、
前記方法(40)は、
前記電気リード線(2)が、超絶縁状態又はクーパー対絶縁状態にあり、前記極低温において前記互いに異なる位置(6、8)の間に非線形抵抗を提供するように前記電気リード線(2)を前記極低温まで冷却すること(42)を含む、
方法(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極低温で電気伝導性が本質的にゼロになる超絶縁体を採用する、超伝導コイル又は量子ビット等の、極低温で動作可能なバリスタに関する。
【背景技術】
【0002】
バリスタの重要な用途は、例えば、電力の供給やデータの入力による電圧変動及びその結果生じる望ましくない高い電力の消費から電子機器を保護することである。この目的のために、バリスタは、保護しようとするデバイスに並列に接続される。バリスタは非線形の電気抵抗を有する。理想的には、トランジスタの電圧が所定の閾値電圧を下回っている限り、本質的に非電導性である。電圧が閾値電圧を越えると、理想的なバリスタの電気抵抗は、大幅に(つまり、非線形に)減少し、バリスタを流れる電流は、電圧に応じて増加する。この理想的な状況では、バリスタによって提供される並列電流経路により、電子デバイスの電圧及びそれを流れる電流が減少する。したがって、バリスタの非線形電圧依存抵抗により、電圧変動から効果的に保護することができる。
【0003】
既存のバリスタ、例えば、半導体(例えば、ダイオードを形成する)又は内部ダイオードを形成する金属酸化物をベースとするバリスタ、は、比較的高い温度でのみ動作可能である。最新のバリスタは、超伝導コイル又は量子ビット等の装置が動作する極低温での使用には適さない。これは、閾値電圧を超える電圧でバリスタを流れる電流によって高熱が発生するためである。従来のバリスタの別の欠点は、オン状態の電気抵抗の値の制御が不十分であることである。このオン状態の電気抵抗は、閾値電圧を超える電圧でバリスタを流れる電流、つまり、バリスタが加熱される量を直接決定する。したがって、オン状態の電気抵抗の制御が不十分であることは、バリスタ装置の加熱の制御が不十分になることにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開2021/068320号明細書
【発明の概要】
【0005】
上記の技術的な問題を考慮すると、極低温で動作可能な改良されたバリスタが必要とされている。この問題は、請求項1に記載のバリスタ装置によって解決される。請求項15は、バリスタ装置の動作方法を提供する。
【0006】
バリスタ装置には、超絶縁体材料が採用されている。超絶縁体材料は超伝導体と表裏になるものであり、つまり、低温ではあるが有限の温度で本質的に無限の抵抗を持つ超絶縁状態を示し、電流が通過できない材料である。超絶縁状態からより大きな抵抗を有する状態への遷移は、十分な温度上昇又は十分に高い電圧の印加によって引き起こされうる。超絶縁状態は、窒化チタン膜、窒化ニオブタチン膜及び酸化インジウム膜で見られる。
【0007】
第1の態様によれば、極低温で電子回路を電圧サージ保護するためのバリスタ装置は、超絶縁体材料で構成された電気リード線と、電気的接触素子を備える。電気的接触素子は、電気リード線に沿った互いに異なる位置を電子回路に接続するためのものである。電気的接触素子は、電気リード線に沿った互いに異なる位置で電気リード線と電気的に接触している。電気リード線は、極低温で超絶縁状態又はクーパー対絶縁状態を提供し、極低温で互いに異なる位置の間に非線形抵抗を提供するように適合されている。
【0008】
超絶縁体材料を使用したバリスタ装置は、極低温で強い非線形抵抗を提供し、その絶対値は、実質的にゼロである。したがって、超絶縁体材料をベースにしたバリスタ装置は、極低温で作動する電圧サージ保護の電子装置に理想的である。極低温でのバリスタ装置自体は、消費電力と電圧ノイズレベルが低く、電流のリークは実質的にゼロである。これらは、最新式のバリスタよりもこのバリスタ装置が優れている主な利点である。
【0009】
さらに、超絶縁体材料を使用したバリスタ装置は、閾値電圧で急減期な増加(言い換えれば、ステップ又はジャンプ、又は大きな非線形性のそれぞれ)を伴う電圧電流特性を提供する。閾値電圧における増加の急峻さ、又は、非線形性の大きさによって、保護対象のデバイスから過剰な電圧(及び結果として生じる電流、したがって、結果として生じる加熱)がどの程度除去されるかが決まる。本発明のバリスタ装置は、従来のバリスタ装置よりも過剰電圧をより多く除去し、電圧サージ保護を向上させる。
【0010】
バリスタ装置に印加される電圧が閾値電圧を超えると、バリスタ装置の電気抵抗はオーム挙動を示しうる。この状態での抵抗は、オン状態の電気抵抗とも呼ばれる。これは、オン状態の電気抵抗が非オーム挙動を示し、バリスタに印加される電圧に応じてより強く(例えば、ダイオードのように指数関数的に)増加するため、オン状態の電気抵抗の制御が不十分になってしまう従来技術と比べて利点である。本発明によるバリスタ装置のオン状態の電気抵抗は、所望のオン状態の電気的項に応じてあらかじめ選択された寸法で電気リード線を形成することによって、容易に制御することができる。
【0011】
バリスタ装置は、予め選択された閾値電圧に応じた寸法(つまり、電気リード線の幅及び厚さ)で形成することにより、予め選択された閾値電圧で製造することができる。
【0012】
さらに、バリスタ装置は、予め選択された応答時間を示すように寸法(つまり、電気リード線の幅及び厚さ)を決めることができる。
【0013】
電気的接触素子は、超伝導材料を含むか、又は超伝導材料から構成されていてもよい。超伝導材料は、極低温で超伝導状態を提供するように適合されていてもよい。
【0014】
対応する電気的接触素子は、電子回路を、例えば、バリスタ装置及び/又は電圧供給装置等の他の電気部品若しくは電子部品に接続するために、極低温で最小の抵抗を提供することができる。
【0015】
電子回路は、超伝導コイル、超伝導量子ビット、SQUID、又は、超伝導単一電子トランジスタ等、極低温で超伝導性を示すように適合された超伝導コンポーネントを含みうる。
【0016】
対応する電子回路は、通常、極低温で動作する。このような装置には、電子回路とともに極低温まで冷却されても機能/動作可能な電圧サージ保護が特に求められる。従来の電圧サージ保護装置は、通常、室温等のはるかに高い温度で動作する。このような従来の電圧サージ保護装置を使用するには、装置と保護対象の電子回路との接続、つまり、極低温で動作する電子回路と高温(例えば、室温)の装置との接続が必要である。このような接続は、例えば、熱伝導を引き起こすため望ましくなく、これは、本明細書によるバリスタ装置で回避することができる。
【0017】
電気リード線は、電気的接触素子を介して電子回路に接続されてもよい。
【0018】
電気リード線は、電子回路に電気的に並列に接続されてもよい。
【0019】
超絶縁体材料は、窒化チタン、窒化ニオブチタン、及び、酸化インジウムを含むグループからの材料から構成されてもよいし、又は、これらの材料であってもよい。
【0020】
超絶縁体材料は、窒化チタン及び窒化ニオブチタンを含むグループからの材料から構成されてもよいし、又は、これらの材料であってもよい。
【0021】
実施形態によれば、電気リード線の厚さは10nmを超えない。このような実施形態では、超絶縁体材料は、窒化チタン又は窒化ニオブチタン又はこれらの組み合わせを含むか、又は、それらであってもよい。
【0022】
超絶縁体材料は、窒化チタンであってもよいし、電気リード線の厚さは5nmを超えなくてもよい。
【0023】
厚さが薄いことは、極低温で電気リード線が超絶縁状態を示すことを確実にすることに寄与しうる。
【0024】
極低温とは、1.5K以下、又は0.5K以下、又は0.15K以下、又は0.05K以下の温度を指してもよい。
【0025】
電子回路及び電気リード線は、同一の冷却素子と熱的に接触するように配置されてもよい。冷却素子は、極低温を提供するように適合されてもよい。
【0026】
電気リード線は、互いに異なる位置の1つで基準電位に電気的に接続されてもよい。
【0027】
あるいは、電気リード線は、互いに異なる位置で異なる基準電位に電気的に接続されてもよい。
【0028】
互いに異なる位置の間の電気リード線の長さは少なくとも1mmであってもよい。
【0029】
バリスタ装置の対応する実施形態は、最大の電気抵抗を提供し、エネルギー損失及びエネルギー散逸を最小限に抑えることができる。メタリックブラックを介したリーク電流は1pAよりも大幅に小さくなりうる。
【0030】
いくつかの実施形態では、互いに異なる位置の間の電気リード線の長さは、少なくとも0.01mmであってもよいし、0.1mmであってもよい。
【0031】
互いに異なる位置の間の電気リード線の長さは1mm未満であってもよい。
【0032】
バリスタ装置の対応する実施形態は、電圧サージに対する応答時間を最小限に抑え、高速のバリスタを提供することができる。ただし、メタリックブラックを介して約1pAのリーク電流が発生しうる。
【0033】
超絶縁体材料は、窒化チタン層又は窒化ニオブチタン層に、プラズマエッチング等のエッチングを使用することによって得られることができてもよい。
【0034】
電気リード線の超絶縁体材料は、誘電体層と物理的に接触していてもよい。
【0035】
誘電体層は、例えば、近くの半導体又は導電性材料から、超絶縁体材料を電気的に絶縁する役割を果たしうる。
【0036】
電気リード線の超絶縁体材料は、清涼促進層と物理的に接触していてもよい。成長促進層は、超絶縁体材料の高結晶成長を促進するように適合されていてもよい。より具体的には、成長促進層は、上述の誘電体層等の誘電体層であってもよい。
【0037】
誘電体層は、成長促進層を提供するように適合されてもよい。
【0038】
成長促進層は、窒化アルミニウム等の窒化物を含むか、又は窒化物であってもよい。
【0039】
より具体的には、発明者らは、窒化アルミニウムの成長促進層を使用することにより、金属リード線の臨界温度が上昇し、バリスタ装置が動作できる最高温度が約10%上昇する可能性があることを実験的に検証した。
【0040】
あるいは、成長促進層又は誘電体層は、二酸化ケイ素等の酸化物を含むか、又は酸化物であってもよい。
【0041】
誘電体層及び/又は成長促進層は、シリコン基板等の基板上に配置されてもよい。
【0042】
誘電体層及び/又は成長促進層は、基板と超絶縁体材料との間に配置されてもよい。
【0043】
一の実施形態によれば、超絶縁体材料は窒化チタンであり、基板はシリコン基板であり、バリスタ装置は二酸化ケイ素で構成される誘電体層を備える。この実施形態では、電気リード線の長さは、1ミリメートルを超えてもよい。
【0044】
別の実施形態によれば、超絶縁体材料は、窒化チタンであり、基板はシリコン基板であり、バリスタ装置は窒化アルミニウムで構成される成長促進層を備える。この実施形態では、電気リード線の長さは、1ミリメートルを超えてもよい。
【0045】
別の実施形態によれば、超絶縁体材料は、窒化ニオブチタンから構成され、基板はシリコン基板であり、バリスタ装置は、二酸化ケイ素で構成される誘電体層を備える。この実施形態では、電気リード線の長さは、1ミリメートルを超えてもよい。
【0046】
別の実施形態によれば、超絶縁体材料は、窒化ニオブチタンから構成され、基板はシリコン基板であり、バリスタ装置は窒化アルミニウムで構成される成長促進層を備える。この実施形態では、電気リード線の長さは、1ミリメートルを超えてもよい。
【0047】
別の実施形態によれば、超絶縁体材料は窒化チタンから構成され、バリスタ装置は二酸化ケイ素で構成される誘電体層を備える。この実施形態では、電気リード線の長さは、1ミリメートル未満であってもよい。
【0048】
別の実施形態によれば、超絶縁体材料は窒化チタンから構成され、バリスタ装置は窒化アルミニウムで構成される成長促進層を備える。この実施形態では、電気リード線の長さは、1ミリメートル未満であってもよい。
【0049】
別の実施形態によれば、超絶縁体材料は窒化ニオブチタンから構成され、バリスタ装置は二酸化ケイ素で構成される誘電体層を備える。この実施形態では、電気リード線の長さは、1ミリメートル未満であってもよい。
【0050】
別の実施形態によれば、超絶縁体材料は窒化ニオブチタンから構成され、バリスタ装置は窒化アルミニウムで構成される成長促進層を備える。この実施形態では、電気リード線の長さは、1ミリメートル未満であってもよい。
【0051】
窒化ニオブチタンは、化学組成NbTiNを持つ材料を指す。ここで、xは0.3から0.33の範囲内、yは0.7~0.67の範囲内である。
【0052】
第2の態様は、極低温で電子回路を電圧サージから保護するためにバリスタ装置を動作させる方法に関する。バリスタ装置は、超絶縁体材料でこうせいされた電気リード線と、電気リード線に沿った互いに異なる位置を電子回路に接続する電気的接触素子とを含む。電気的接触素子は、電気リード線に沿った互いに異なる位置で電気リード線と電気的に接触する。この方法は、電気リード線を、電気リード線が超絶縁状態又はクーパー対絶縁状態になるような極低温まで冷却し、極低温において互いに異なる位置の間に非線形抵抗を提供することを含む。
【0053】
第3の態様は、極低温で電子回路を電圧サージから保護するためのバリスタ装置を形成する方法に関する。この方法は、超絶縁体材料からなる電気リード線を形成することを含んでもよい。この方法は、さらに、電気リード線に沿った互いに異なる位置を電子回路に接続するために、電気リード線に沿った互いに異なる位置で電気リード線と電気的に接触する電気的接触素子を形成することを含んでもよい。電気リード線は、極低温で超絶縁状態又はクーパー対絶縁状態を提供するように形成され、極低温で互いに異なる位置の間に非線形抵抗を提供するように形成されてもよい。
【0054】
さらに、この方法は、誘電体層及び/又は成長促進層を設けることを含んでもよい。電気リード線は、誘電体層上及び/又は成長促進層上に形成されてもよい。
【0055】
さらに、この方法は、基板を設けることを含んでもよい。誘電体層及び/又は成長促進層は、基板上に設けられてもよい。
【0056】
電気リード線は、より具体的には、原子層堆積法によって窒化チタン又は窒化ニオブチタンの層を設けることを含んでもよい。
【0057】
窒化チタン又は窒化ニオブチタンの層を設けることは、誘電体層及び/又は成長促進層を300Kを超える、又は310Kを超える、又は320Kを超える、又は330Kを超える、又は340Kを超える温度に維持しながら、誘電体層及び/又は成長促進層上に窒化チタン又は窒化ニオブチタンを堆積することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、温度は、400Kを超えず、又は390Kを超えず、又は380Kを超えず、又は360Kを超えない。
【0058】
この方法は、窒化チタン又は窒化ニオブチタンの層に対してエッチングプロセスを実行することを含んでもよい。
【0059】
エッチングプロセスは、プラズマエッチングによって実行されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、エッチングプロセスは、1秒以上、又は3秒以上実行される。
【0061】
いくつかの実施形態では、この方法は、金属リード線をリソグラフィでパターン化してその幅及び/又は長さを決定することを含む。
【0062】
電気的接触素子の形成は、例えば、パターン化された堆積を使用することで、超伝導材料を堆積することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
本開示の技術及びそれに関連する利点は、添付の図面による例示的な実施形態の説明から最もよく明らかになるだろう。
図1図1は、第1実施形態に係るバリスタ装置の斜視図である。
図2図2は、バリスタ装置の3つの異なる温度におけるバリスタ装置の電流-電圧特性を示す図である。
図3a図3aは、バリスタ装置の磁場がゼロ又は1Tの場合のバリスタ装置の電流-電圧特性を対数-対数スケールで示す図である。
図3b図3bは、図3aの測定に対応する微分コンダクタンスを示す図である。
図4a図4aは、異なる長さのバリスタ装置の電流-電圧特性を示す図である。
図4b図4bは、異なる長さのバリスタ装置について、図4aの電流-電圧特性から決定された閾値電圧を示す図である。
図5図5は、異なる電圧(参照符号でmVの単位で示される)がt≧0でバリスタ装置に印加される、ここで、t<0では印加電圧はゼロ、場合のバリスタ装置を流れる電流の時間的変化を示す図である。
図6図6は、別の実施形態に係るバリスタ装置の上面図である。
図7図7は、別の実施形態に係るバリスタ装置の斜視図である。
図8a図8aは、バリスタ装置を製造するための処理ステップを示す図である。
図8b図8bは、バリスタ装置を製造するための別の処理ステップを示す図である。
図9図9は、バリスタ装置の動作方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、実施形態に係るバリスタ装置10の概略図である。
【0065】
バリスタ装置10は、超絶縁体材料で構成される電気リード線2を備える。
【0066】
超絶縁体は、超伝導体の表裏になる物資、つまり、低温だが有限の温度で超絶縁状態を提供する物質である。この超絶縁状態では、超絶縁体は本質的に無限の抵抗を持つため、電流が通過することはできない。超絶縁状態は、窒化チタン膜、窒化ニオブチタン膜及び酸化インジウム膜で見られる。
【0067】
図1のバリスタ装置10の電気リード線2は窒化チタンで構成されているが、窒化ニオブチタン、酸化インジウム等の他の既知の超絶縁体、又は、特許文献1に記載のアルミニウム層が代わりに使用されてもよい。
【0068】
バリスタ装置10は、さらに、電気リード線に沿った互いに異なる位置6、8で電気リード線と電気的に接触する電気的接触素子4を備える。
【0069】
電気的接触素子4により、電気リード線2を互いに異なる位置6、8で電子回路に接続することができるようになる。
【0070】
電気的接触素子4は、それぞれ導電性又は金属製である。いくつかの実施形態によれば、アルミニウム又はニオブ等の超伝導材料で構成されている。
【0071】
バリスタ装置10は、電気的接触素子4を使用して、一般に、極低温で動作するための電子回路に並列に接続される。これは一般に、超伝導コイル、超伝導量子ビット、SQUID、又は、超伝導単一電子トランジスタ等の超伝導コンポーネントを含む電子回路である。
【0072】
図2は、図1と同様のバリスタ装置10の電流電圧特性を示す。より具体的には、図2の測定が行われたバリスタ装置10は、厚さTが5nm、幅が50μm、互いに異なる位置6、8巻の距離Lが2.3mmの窒化チタンで構成された電気リード線2を備える。図2の測定の間、電気リード線には磁場B=0.2Tが印加されている。
【0073】
図2は、金属リード線2の温度が20mK、40mK、120mKの場合の電気的接触素子4間の電流電圧特性を示す。横軸Vは電圧(mV)を示す。縦軸Iは、電流(A)を示す。
【0074】
上述の超絶縁状態、及び、室温等のはるかに高い温度での古典的な状態、例えば、オーム状態、に加えて、ほとんどの超絶縁体材料は、中間温度でクーパー対絶縁状態を示す。言い換えれば、超絶縁体材料が超絶縁状態を示す低温から加熱されると、第1臨界温度でこの超絶縁状態からクーパー対絶縁状態への第1相転移が生じる。超絶縁体材料がさらに加熱されると、第2臨界温度で、このクーパー対絶縁状態から古典的な状態、例えば、オーム状態、への第2相転移が生じる。
【0075】
金属リード線2の温度が50mK未満であり、バリスタ装置10の閾値電圧よりも小さい電圧が電気的接触素子4間に印加されると、超絶縁体材料は超絶縁状態になる。これは、図2で、温度が20mK、電圧が≒0.02mV未満の場合に見られる。超絶縁状態では、電流Iの印加電圧Vへの依存性I(V)は、べき乗測、I∝Vαで表され、ここで、指数αは、温度の低下とともに増加する。超絶縁状態からの第1相転移では、α=1からα=3へのジャンプが見られる。
【0076】
原理的には、印加電圧Vに対する電流Iの非線形依存性I(V)をバリスタ装置10に適用して、バリスタ装置10の非線形抵抗を実現することができる。
【0077】
印加電圧が閾値電圧≒0,02mVまで増加すると電流Iが急激に増加する。この急激な増加、又はジャンプ、又はステップ、又は非線形増加は、それぞれ、超絶縁状態からの第1相転移を反映している。この急激な増加は、バリスタ装置10の非線形抵抗を提供するために好ましく使用される。これは、極低温での電子回路の電圧サージ保護に特に適している。このような急激なジャンプは、本発明のバリスタ装置のユニークな特徴であり、従来技術のバリスタでは実現不可能であり。これは、以下で説明する前例のない高速な動作時間の基礎となる。
【0078】
50mKよりも高く0.5Kよりも低い温度では、超絶縁体材料は、低温での超絶縁状態及び高温での古典的な(例えば、オーム)状態とは異なるクーパー対絶縁状態を示す。これは、図2で、120mKの温度で見られる。電流Iの印加電圧Vへの依存性I(V)は、クーパー対絶縁状態では線形である。しかし、バリスタ装置10の電流電圧特性は、非線形性を示し、印加電圧が上昇して金属リード線2をクーパー対絶縁状態から第2相転移を経て古典的な状態、例えば、オーム状態へと相転移すると、大幅に増加する。この非線形性も、第1相転移の非線形性ほど顕著ではないが、バリスタ装置10の非線形抵抗を提供するために使用できる。言い換えれば、バリスタ領域を構成することができる。
【0079】
ゼロ磁場で、窒化チタンで構成される金属リード線2の場合、超絶縁状態への又は超絶縁状態からの相転移(つまり、第1相転移)は、金属リード線2の厚さに応じて10mK~50mKの範囲にある第1臨界温度で生じる。膜厚が薄いほど、第1臨界温度は高くなる。超絶縁状態を確実に発生させるためには、窒化チタンで構成される金属リード線2の厚さTは5nm以下でなければならない。超絶縁状態を示す窒化チタンで構成される電気リード線2は、第1臨界温度を超える温度でクーパー対絶縁状態を示す。言い換えれば、第1臨界温度は、超絶縁状態とクーパー対絶縁状態との間の相転移に対応する。0.5K(第2臨界温度)までのより高い温度では、金属リード線2は、クーパー対絶縁状態と、オーム状態等の古典的な状態との間の第2相転移を起こす。
【0080】
ニオブチタン窒化物で構成される金属リード線2は、0.05Kから0.15Kの範囲にある第1臨界温度、及び、最大1.5Kである第2臨界温度において、対応する相転移を起こす。超絶縁状態を確実に発生させるためには、窒化ニオブチタンで構成される金属リード線2の厚さTは、10nm以下でなければならない。超絶縁状態の発生は、化学組成NbTiN(ここで、xは0.3から0.33の範囲内、yは0.7~0.67の範囲内である。)について、実験的に確認されている。ただし、超絶縁状態は、x及びyのより広い範囲で発生する可能性がある。
【0081】
図3a及び図3bは、図1のバリスタ装置10と同様のバリスタ装置10の電流電圧特性及び微分コンダクタンスを示す。より具体的には、図3a及び図3bの測定が行われたバリスタ装置10は、厚さTが10nm、幅が50μm、互いに異なる位置6、8間の距離Lが2.3mmである窒化ニオブチタンで構成される電気リード線2を備える。図3a、図3bでは、0T及び1Tの印加磁場での測定データが示される。実験は、金属リード線2の温度を0.1Kにして行われた。図3aでは、横軸Vは、電圧(V)、縦軸Iは、電流(A)を示す。図3bでは、横軸Vは電圧(V)、縦軸は微分コンダクタンス(Ω-1)を示す。
【0082】
図3aでは、電流の急激な増加、又はジャンプ、又はステップ、又は非線形増加は、それぞれ、B=0の場合は、0.006Vの電圧で発生し、B=1Tの場合は、0.2Vの電圧で発生する。対応する電圧を閾値電圧と呼ぶ。
【0083】
同様に、金属リード線2が窒化チタンから構成される場合(図示せず)にも、印加磁場に応じて閾値電圧が増加する。
【0084】
図3a、図3bの測定中に電気的接触素子の間を流れる電流は、超絶縁状態で約1fA、クーパー対絶縁状態で約100nAである。これらの非常に低い電流は、従来技術のバリスタでは実現不可能であり、結果として、これまでバリスタでは実現できなかった低リークと低ノイズとが実現される。
【0085】
図3bは、図3aのバリスタ装置20の微分抵抗を示す。閾値電圧での階段状の特性は、バリスタ装置10の品質が高いことを示す。
【0086】
図4aは、図1のバリスタ装置10と同様のバリスタ装置10の電流電圧特性を示す。より具体的には、図4aの測定が行われたバリスタ装置10は、厚さTが10nm、幅が50μm、互いに異なる位置6、8間の距離Lが異なる電気リード線2を備える。図4aの測定中、電気リード線2には、磁場は印加されていない。金属リード線2の温度は、20mKであった。横軸Vは電圧(V)を示す。縦軸Iは、電流(nA)を示す。
【0087】
互いに異なる位置6、8間の距離Lに関わらず、電流電圧特性は、前述の実施形態によるバリスタ装置10について上述したのと同様に、印加電圧の関数として、電流の急激な増加、又は、ジャンプ、又はステップ、又は非線形増加のそれぞれを示す。ただし、急激な増加が始まる閾値電圧は、金属リード線2に沿った互いに異なる位置6、8間の距離Lに依存する。
【0088】
図4bは、図4aの電流電圧特性から得られた閾値電圧をまとめたものである。各電流電圧特性について、閾値電圧は、電流Iが1nAを超える電圧Vとして決定された。図4bでは、横軸は電気リード線2の互いに異なる位置6、8間の距離Lをmm単位で示す。縦軸Vthは、閾値電圧をV単位で示す。
【0089】
図4a、4bが示すように、電気リード線2の互いに異なる位置6、8間の距離Lを変更することによって、閾値電圧を容易に調整することができる。
【0090】
図5は、図1のバリスタ装置と同様のバリスタ装置10を流れる電流の時間的変化を示す。より具体的には、図5の測定が行われたバリスタ装置10は、厚さTが9nm、幅が50μm、互いに異なる位置6、8間の距離が2.3mmの窒化ニオブチタンからなる電気リード線2を備える。図5の測定中、電気リード線2には、磁場は印加されていない。金属リード線2の温度は、20mKであった。この装置の閾値電圧は、0.058Vである。横軸tは、時間(μs)を示す。縦軸Iは電流(nA)を示す。t<0の場合、電気的接触素子4にゼロの電圧が印加される。t≧0では、参照符号で示される電圧(mV)(つまり、175mV、185mV、又は200mV)が電気的接触素子4に印加される。
【0091】
印加電圧に関わらず、電流はt=0の初期力十分に長い時間(例えば、図5では、6~10μs)で飽和値まで増加する。初期値は本質的にゼロ、つまり、測定の精度の範囲内でゼロである。
【0092】
時間的変化の詳細、具体的には、飽和値は印加電圧と閾値電圧との差に依存する。応答時間は、電流Iが飽和値の20%に達する時間tと、電流Iが飽和値の80%に達する時間tとの間の時間の差として定義されうる。応答時間は、電流Iが増加する期間における電流Iの時間的変化の急峻さに対応する。バリスタ装置10の応答時間は前例のないほど短く、つまり、2μs未満であり、発明者が知る限り、従来技術の装置では達成されていない。
【0093】
約2μsの応答時間は、印加電圧が閾値電圧に近い場合に発生する。電圧が増加すると、バリスタ装置10の反応時間は数nsまで短縮することができる。1μs未満、0.1μs未満、又は0,01μs未満の応答時間を実現する別の方法は、バリスタの長さを例えば、1mm未満に短縮することである。ただし、この長さの短縮には、閾値の動作が曖昧になるという副作用がある。
【0094】
図6は、別の実施形態によるバリスタ装置10を示す。バリスタ装置10は、図1のバリスタ装置と類似している。類似の構成要素は、同一の参照符号が付されており、簡潔にするために再度の説明はしない。
【0095】
図6の実施形態では、バリスタ装置10は、冷却素子14の上に、熱的に接触して配置される。バリスタ装置10によって電圧サージ保護される電子回路12も冷却素子14の上に、熱的に接触して配置される。バリスタ装置10は、電気的接触素子4を介して電子回路12に電気的に並列に接続される。図6の実施形態では、電子回路12とバリスタ装置10とは、集積回路、言い換えれば、単一のチップを形成する。
【0096】
基準電位16、18は、外部電源に接続された電極16,18を介して、電子回路12及びバリスタ装置10に提供される。
【0097】
電子回路12は、極低温で超伝導性を示すように適合された少なくとも1つの超伝導コンポーネントを含む。例えば、電子回路12は、超伝導コイル、超伝導量子ビット、SQUID、又は、超伝導単一電子トランジスタを含むことができる。
【0098】
図7は、別の実施形態によるバリスタ装置10を示す。バリスタ装置10は、図1のバリスタ装置と類似している。類似の構成要素は、同一の参照符号が付されており、簡潔にするために再度の説明はしない。
【0099】
図7の電気リード線2は、基板22上に形成される。いくつかの実施形態では、基板22は、図6の冷却素子14の一部として形成される。
【0100】
図示の実施形態では、基板22は、シリコンウェーハである。
【0101】
基板22は、電気リード線2の機械的サポートとして機能する。
【0102】
層20は、電気リード線2と基板22との間に形成される。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、層20は、電気リード線2と基板22との間の電気絶縁体として機能する。対応する実施形態では、層20は、誘電体材料で構成される。
【0104】
代替的に又は追加的に、層20は、電気リード線2の超絶縁体材料の成長促進層として機能する。成長促進層に適した材料には、窒化アルミニウム及び二酸化ケイ素が含まれる。
【0105】
図8a、図8bは、バリスタ装置10を製造する方法30を示す。
【0106】
ステップ32では、層20が提供される。図示される実施形態では、層20は、機械的サポートを提供する基板22上に設けられる。
【0107】
図示される実施形態では、層20は、窒化アルミニウム又は酸化ケイ素、より具体的には二酸化ケイ素から構成される。基板22は、シリコン基板22である。
【0108】
ステップ34では、窒化チタン又は窒化ニオブチタンの層2´が設けられる。
【0109】
34の窒化チタン又は窒化ニオブチタンの層2´は、原子層堆積法を使用し、段階的な膜成長がもたらされて実現される。この高度に制御可能なプロセスは、TiN又はNbTiNフィルムの成長に使用される通常の技術である化学蒸着法と比較して、優れた厚さと化学量論的均一性、及び、原子レベルで滑らかな表面を提供する。ただし、原理的には、化学蒸着法が採用されてもよい。
【0110】
ALDによるTiNフィルムの堆積には、TiCl及びNHがガス反応物として使用される。堆積している期間の層20の温度は350℃である。窒化チタン膜は、5nmの厚さで堆積される。
【0111】
ALDによるNbTiNフィルムの堆積には、NbCl、TiCl及びNHがガス反応物として使用される。化学量論は、成長サイクルで使用されるガスのTiCl4/NbClの比率を変更することによって調整される。堆積している期間の層20の温度は350℃である。窒化ニオブチタン膜は、10nmの厚さで堆積される。堆積された窒化ニオブチタン膜の化学組成は、NbTiNであり、ここで、xは0.3及びyは0.7であり、xは0.33及びyは0.67である。
【0112】
ステップ36では、窒化チタン又は窒化ニオブチタンの層2´に対してエッチングプロセス26が実行される。
【0113】
エッチングプロセス26により、窒化チタン又は窒化ニオブチタンの層2´から、超絶縁体材料を含む金属リード線2が確実に生成される。
【0114】
窒化チタンの層2´の場合には、エッチングプロセス26は、プラズマエッチングにより1秒間実行される。
【0115】
窒化ニオブチタンの層2´の場合には、エッチングプロセス26は、プラズマエッチングにより3秒間実行される。
【0116】
後続の追加のステップ(図示せず)では、金属リード線2をリソグラフィでパターン化することにより、その幅と長さを決定する。例えば、金属リード線2は、幅50μmのストライプにリソグラフィでパターン化される。
【0117】
図8bに示す方法30のステップ38では、電気リード線2に沿った互いに異なる位置6、8を電子回路12に接続するために、電気リード線2に沿った異なる位置6、8で電気リード線2と電気的に接触する電気的接触素子4が形成される。
【0118】
図示される実施形態では、アルミニウム又はニオブのパターン化された堆積28が実行され、電気的接触素子4として電極4が堆積される。電極4は、2.5mmの間隔(互いに異なる位置6、8の間の距離と等しい)で堆積される。電気リード線2を流れる電流を測定する実験では、電流の測定のために電極4の間に追加の電極を追加した。追加された電極の間の距離は、0.45mmであった。
【0119】
図9は、極低温で電子回路を電圧サージから保護するためにバリスタ装置を動作させる方法40を示す。
【0120】
上述のバリスタ装置10のいずれも、方法40のバリスタ装置として使用することができる。
【0121】
方法40は、ステップ42を含む。冷却ステップ42は、電気リード線2が超絶縁状態又はクーパー対絶縁状態になり、極低温で互いに異なる位置6、8の間に非線形抵抗が生じるような極低温まで電気リード線2を冷却することである。
【符号の説明】
【0122】
2 電気リード線
4 電気的接触素子
6、8 電気リード線に沿った互いに異なる位置
10 バリスタ装置
12 電子回路
T 電気リード線の太さ
L 電気リード線の長さ
14 冷却素子
16、18 基準電位
20 成長促進層
22 基板
24 超伝導材料の堆積
26 超伝導材料のエッチング/プラズマエッチング
28 導電性材料の堆積
30 バリスタ装置を形成する方法
32 基板の上に成長促進層を設ける
34、36 電気リード線を形成する
38 電気的接触素子を形成する
40 バリスタ装置の操作方法
42 電気リード線を極低温まで冷却する
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
【外国語明細書】
図1
図2
図3a】
図3b】
図4a】
図4b】
図5
図6
図7
図8a】
図8b】
図9