IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特開2024-177082加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法
<>
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図1
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図2
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図3
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図4
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図5
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図6
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図7
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図8
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図9
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図10
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図11
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図12
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図13
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図14
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図15
  • 特開-加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177082
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにこれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241212BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079507
(22)【出願日】2024-05-15
(31)【優先権主張番号】18/332,010
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ブライアン スタコウィアック
(72)【発明者】
【氏名】フェン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイジュン リウ
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AR06
4F209AR12
4F209PA02
4F209PB01
4F209PC16
4F209PN09
5F146AA31
5F146AA33
5F146KA01
(57)【要約】
【課題】表面の両端間で高度差を有しない、または少なくとも高度差の少ない平坦化層を提供すること。
【解決手段】システムは、基材上の光硬化性組成物を加熱するための加熱手段;700nm未満の波長で化学線を放出するように構成された化学線源;および光硬化性組成物が化学線源に曝露されるとき、光硬化性組成物の光硬化温度を達成するように、第1の加熱手段によって生じる標的温度を決定するように構成された制御装置であって、光硬化温度が周囲温度よりも高い、制御装置を含んでもよい。方法は、光硬化性組成物を基材上に供給すること;周囲温度よりも高い光硬化温度において、光硬化性組成物の層を光硬化させて、硬化層を形成すること;および硬化層を焼成して焼成層を形成することを含んでもよい。システムおよび方法は、層の厚さ変化を0%または0%近くにすることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の光硬化性組成物を加熱するための第1の加熱手段;
700nm未満の波長で化学線を放出するように構成された化学線源;および
光硬化性組成物が化学線源に曝露されるとき、光硬化性組成物の光硬化温度を達成するように、第1の加熱手段によって生じる標的温度を決定するように構成された制御装置であって、光硬化温度が周囲温度よりも高い、制御装置
を含む、システム。
【請求項2】
システムが機械を含み、第1の加熱手段と化学線源とが、機械内の同じステーション内にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
光硬化性組成物が光硬化温度にあり、化学線に曝露されているとき、基材を保持するように構成された第1の基材チャック
をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
光硬化性組成物が第1の加熱手段に曝露されているとき、基材を保持するように構成された第2の基材チャック;および
光硬化性組成物を有する基材を、第1の基材チャックと第2の基材チャックとの間で搬送するように構成された基材搬送ツール
をさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
光硬化性組成物を基材上に供給するように構成された供給ヘッド
をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
上材を、基材に重なった光硬化性組成物と接触させて載置するように構成されたステーション
をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
光硬化性組成物に対応する硬化層を加熱して、焼成層を形成するように構成された第2の加熱手段であって、基材と硬化層とを、光硬化温度よりも高い焼成温度に加熱するように構成されている、第2の加熱手段
をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
光硬化性組成物の温度に対応する第1の信号を発生させるように構成された温度センサ
をさらに含み、
制御装置が、第1の信号を受信し、前記温度が光硬化温度±5℃である場合に、化学線源を活性化するための第2の信号を伝送するようにさらに構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
光硬化性組成物を基材上に供給することであって、光硬化性組成物が多官能性モノマーを含む、供給すること;
光硬化性組成物が、周囲温度よりも高い光硬化温度にある間に、光硬化性組成物を光硬化することであって、基材上に硬化層を形成する、光硬化すること;および
硬化層を焼成して焼成層を形成することであって、光硬化温度よりも高い焼成温度で行われる、焼成すること
を含む方法。
【請求項10】
光硬化温度が25℃よりも高い、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
焼成温度が最高500℃である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
光硬化性組成物が基材および上材と接触している間、光硬化性組成物が光硬化温度にある、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
硬化厚さが、焼成前の光硬化性組成物の硬化層の厚さであり、
焼成厚さが焼成層の厚さであり、
厚さ変化が、
((T-T)/T)×100%
(式中、Tが硬化厚さであり、
が焼成厚さであり、
厚さ変化が、-2.0%~2.0%の範囲内である)である、
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
多官能性モノマーが、二官能性モノマー、三官能性モノマーまたは四官能性モノマーを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
多官能性モノマーが2つ以上のビニル基を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
多官能性モノマーが少なくとも1つの芳香環構造を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
多官能性モノマーがアクリレート基を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
光硬化性組成物において、多官能性モノマーの含有量は、少なくとも光硬化性組成物の90重量%である、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
硬化層を焼成すべき焼成温度を受信すること;および
焼成温度に基づいて光硬化温度を決定すること
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
光硬化温度において、基材上に硬化層を形成するように構成された光硬化ステーションであって、光硬化温度が周囲温度よりも高い、光硬化ステーション;
焼成温度において、硬化層を焼成して焼成層を形成するように構成された焼成ステーション;および
少なくとも部分的に焼成温度に基づいて、光硬化温度を決定するように構成された制御装置
を含む、システム。
【請求項21】
光硬化ステーションが、
基材上の光硬化性組成物を、光硬化温度である、または周囲温度よりも光硬化温度に近い温度に加熱するように構成された加熱手段;および
700nm未満の波長の放射を放出するように構成された化学線源
を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
硬化層を有する基材を、光硬化ステーションから焼成ステーションに移動するように構成されたロボットアーム
をさらに含む、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱手段および化学線源を含むシステム、ならびにシステムを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット適応平坦化(IAP)は、超小型電子製造に使用される。超小型電子部品の寸法は小さくなり続けているため、IAPを含むプロセスはより困難になっている。IAPプロセスは、光硬化性組成物を基材上に供給すること、および基材を光硬化性組成物と接触させて載置することを含むこともある。IAPプロセスは、光硬化性組成物を化学線に曝露することによって、光硬化性組成物の層を光硬化させて、硬化層を形成することをさらに含んでもよい。光硬化は、室温、例えば20℃で行われる。次いで、硬化層を焼成して、焼成層を形成する。焼成層の厚さは、光硬化性組成物の厚さよりも薄い。厚さ変化は、上に記載したIAPプロセスによって形成された焼成層の平坦化性能を低減する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
得られた焼成層の表面は、局所的に低い高度の領域もあれば局所的に高い高度の領域もある、一様でない地形を有することがある。このような表面の両端間で高度差を有しない、または少なくとも高度差の少ない平坦化層が所望される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
態様では、システムは、基材上の光硬化性組成物を加熱するための第1の加熱手段;700nm未満の波長で化学線を放出するように構成された化学線源;および光硬化性組成物が化学線源に曝露されるとき、光硬化性組成物の光硬化温度を達成するように、第1の加熱手段によって生じる標的温度を決定するように構成された制御装置であって、光硬化温度が周囲温度よりも高い、制御装置を含む。
【0005】
実施形態では、システムは機械を含み、第1の加熱手段と化学線源とは、機械内の同じステーション内にある。
【0006】
別の実施形態では、システムは、光硬化性組成物が光硬化温度にあり、化学線に曝露されているとき、基材を保持するように構成された第1の基材チャックをさらに含む。
【0007】
特定の実施形態では、システムは、光硬化性組成物が第1の加熱手段に曝露されているとき、基材を保持するように構成された第2の基材チャック;および光硬化性組成物を有する基材を、第1の基材チャックと第2の基材チャックとの間で搬送するように構成された基材搬送ツールをさらに含む。
【0008】
なおも別の実施形態では、システムは、光硬化性組成物を基材上に供給するように構成された供給ヘッドをさらに含む。
【0009】
またなお別の実施形態では、システムは、上材を、基材に重なった光硬化性組成物と接触させて載置するように構成されたステーションをさらに含む。
【0010】
さらなる実施形態では、システムは、光硬化性組成物に対応する硬化層を加熱して、焼成層を形成するように構成された第2の加熱手段であって、基材と硬化層とを、光硬化温度よりも高い焼成温度に加熱するように構成されている、第2の加熱手段をさらに含む。
【0011】
別の実施形態では、システムは、光硬化性組成物の温度に対応する第1の信号を発生させるように構成された温度センサをさらに含み、制御装置は、第1の信号を受信し、温度が光硬化温度±5℃である場合に、化学線源を活性化するための第2の信号を伝送するようにさらに構成されている。
【0012】
別の態様では、方法は、光硬化性組成物を基材上に供給することであって、光硬化性組成物が多官能性モノマーを含む、供給すること;光硬化性組成物が、周囲温度よりも高い光硬化温度にある間に、光硬化性組成物を光硬化することであって、基材上に硬化層を形成する、光硬化すること;および硬化層を焼成して焼成層を形成することであって、光硬化温度よりも高い焼成温度で行われる、焼成することを含む。
【0013】
実施形態では、光硬化温度は25℃よりも高い。
【0014】
特定の実施形態では、焼成温度は最高500℃である。
【0015】
別の実施形態では、光硬化性組成物が基材および上材と接触している間、光硬化性組成物は光硬化温度にある。
【0016】
なおも別の実施形態では、硬化厚さは、焼成前の光硬化性組成物の硬化層の厚さであり、焼成厚さは焼成層の厚さであり、厚さ変化は、
【0017】
((T-T)/T)×100%
【0018】
(式中、Tは硬化厚さであり、
【0019】
は焼成厚さであり、
【0020】
厚さ変化は、-2.0%~2.0%の範囲内である)である。
【0021】
さらなる実施形態では、多官能性モノマーは、二官能性モノマー、三官能性モノマーまたは四官能性モノマーを含む。
【0022】
別の実施形態では、多官能性モノマーは2つ以上のビニル基を含む。
【0023】
特定の実施形態では、多官能性モノマーは少なくとも1つの芳香環構造を含む。
【0024】
なおも別の実施形態では、多官能性モノマーはアクリレート基を含む。
【0025】
またなお別の実施形態では、光硬化性組成物は、多官能性モノマーの含有量は、少なくとも光硬化性組成物の90重量%である。
【0026】
さらなる実施形態では、方法は、硬化層を焼成すべき焼成温度を受信すること;および焼成温度に基づいて光硬化温度を決定することをさらに含む。
【0027】
さらなる態様では、システムは、光硬化温度において、基材上に硬化層を形成するように構成された光硬化ステーションであって、光硬化温度が周囲温度よりも高い、光硬化ステーション;焼成温度において、硬化層を焼成して焼成層を形成するように構成された焼成ステーション;および少なくとも部分的に焼成温度に基づいて、光硬化温度を決定するように構成された制御装置を含む。
【0028】
実施形態では、光硬化ステーションは、基材上の光硬化性組成物を、光硬化温度である、または周囲温度よりも光硬化温度に近い温度に加熱するように構成された加熱手段;および700nm未満の波長の放射を放出するように構成された化学線源を含む。
【0029】
別の実施形態では、システムは、硬化層を有する基材を、光硬化ステーションから焼成ステーションに移動するように構成されたロボットアームをさらに含む。
【0030】
実施例によって実施態様を図示するが、実施態様は添付図面に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】光硬化性組成物を光硬化する前の、基材、光硬化性組成物の層および上材の一部の断面図の図示である。
図2】光硬化および焼成後の、図1の基材および層の断面図の図示である。
図3】光硬化性組成物からの層の形成に使用できる機械の概念図である。
図4】光硬化性組成物からの層の形成に使用できる別の機械の概念図である。
図5】光硬化性組成物からの層の形成に使用できる機械を含む、システムの概念図である。
図6】光硬化性組成物から層を形成するためのプロセスフロー図である。
図7】基材上に光硬化性組成物の液滴を供給する際の、基材チャックおよび基材の一部の断面図の図示である。
図8】上材、および基材と液滴との組み合わせが互いに接近するように移動する際の、図7の基材チャックおよび基材の断面図の図示である。
図9】光硬化性組成物の層を形成する際の、図8の基材チャック、基材および上材の断面図の図示である。
図10】曝露前加熱操作中の図9の基材チャック、基材、上材および光硬化性組成物の層の断面図の図示である。
図11】光硬化性組成物の層を光硬化させて硬化層を形成中の、図10の基材チャック、基材、上材および光硬化性組成物の層の断面図の図示である。
図12】上材を取り外し、硬化層を焼成して焼成層を形成した後の、図11の基材チャック、基材、上材および硬化層の断面図の図示である。
図13】光硬化操作によって起こる厚さ変化を、異なるサイズの基材特徴部について、光硬化温度の関数として示したグラフである。
図14】焼成操作によって起こる厚さ変化を、異なる焼成温度について、光硬化温度の関数として示したグラフである。
図15】焼成操作によって起こる厚さ変化を、異なる光硬化性組成物について、光硬化温度の関数として示したグラフである。
図16】焼成操作によって起こる厚さ変化を、異なる光硬化温度について、化学線の線量の関数として示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図中の要素は、単純かつ明瞭にするために図示されており、必ずしも縮尺通りに描かれていないことを、当業者は理解する。例えば、本発明の実施態様のよりよい理解に資するように、図中の要素の一部の寸法を、他の要素に対して誇張することがある。
【0033】
以下の記載は、図面と組み合わせて、ここに開示する教示を理解することを支援するために提供される。以下の議論では、教示の特定の実施態様に焦点を合わせる。この焦点は、教示を記載することを支援するために提供され、教示の範囲または適用可能性に対する限定として解釈されるべきではない。
【0034】
別段定義されない限り、ここで使用するすべての技術用語および科学用語は、この発明が属する分野における当業者に通例理解されるものと同じ意味を有する。材料、方法および例は説明のためのものに過ぎず、限定的であることを意図するものではない。ここに記載しない限り、特定の材料および加工の作用に関する多くの詳細は従来通りであり、当技術分野における教科書および他の情報源に見出すことができる。
【0035】
ここに記載する利益を達成するために使用することができるシステムおよび方法の詳細を述べる前に、加工および平坦化性能に起因する厚さ変化を述べ、光硬化性組成物の層の形状が、加工中にどのように変化しうるかを図示した図1および2について記載する。特定の例を説明するために、特定の厚さおよび深さを提供するが、添付の特許請求の範囲において規定される本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
図1は、基材10、光硬化前の光硬化性組成物の層20(以後、「硬化前層」)、および平らな底面を有する上材30の一部の断面図を含む。基材10は、特徴部12と、特徴部12同士の間の溝14とを含む。寸法16は溝14の深さに相当し、この特定の例については、200nmである。
【0037】
光硬化性組成物が流体であり、上材30の平らな底面と接触するため、光硬化性組成物の硬化前層20の上面は平らである。寸法22は、特徴部12と上材30の底面との間の、硬化前層20の厚さに相当する。この特定の例では、寸法22は40nmである。寸法24は、溝14の底部と上材30の底面との間の、硬化前層20の厚さに相当する。寸法24は、寸法16(溝14の深さ)と、寸法22(特徴部12よりも上の硬化前層の厚さ)との和である。寸法24は、下の等式1を使用して決定することができる。
【0038】
24=D16+D22 (等式1)
【0039】
式中、
【0040】
24は寸法24であり、
【0041】
16は寸法16であり、
【0042】
22は寸法22である。
【0043】
以前に説明した深さを寸法16に、以前に説明した厚さを寸法22に使用する場合、
【0044】
24=200nm+40nm=240nmである。
【0045】
硬化前層20を光硬化させると、光硬化性組成物中のモノマーが重合し、硬化層を形成する。重合中、光硬化性組成物中のモノマー同士の間に共有結合が形成され、原子同士が互いに近くに引きつけ合い、光硬化性組成物が収縮する。光硬化後、硬化層を焼成して、図2における焼成層40を形成する。焼成中に追加の架橋が生じ、重合材料がさらに収縮する。加えて、焼成中に、いくらかのポリマーの再配置および緩和が起こることもある。高温では、材料の酸化、分解、劣化などの反応、またはこれらの組み合わせが起こることもある。
【0046】
重合および以前に記載したあらゆる反応が、熱収縮に寄与しうる。図2は、上材30を取り外した後の基材10および焼成層40を含む。特定の例では、焼成層40は、硬化前層20と比較して5%収縮している(-5%の厚さ変化)。寸法42は、特徴部12よりも上の焼成層40の厚さに相当し、寸法44は、溝14内およびそれよりも上の焼成層40の厚さに相当する。-5%の厚さ変化であるため、寸法42は寸法22の95%であり、寸法44は寸法24の95%である。したがって、寸法42は38nmであり、寸法44は228nmである。
【0047】
硬化前層の上面は同じ高度であったが、焼成層40は、異なる領域が異なる高さにある上面を有する。寸法48は、焼成層40の上面に沿った、(1)基材10の特徴部12に重なった、焼成層40の部分と、(2)溝14よりも上の焼成層40の部分との間の高度差に相当する。寸法48は、下の等式2を使用して決定することができる。
【0048】
48=D42-(D44-D16) (等式2)
【0049】
式中、
【0050】
48は寸法48であり、
【0051】
42は寸法42であり、
【0052】
44は寸法44である。
【0053】
これらの寸法の値を使用する場合、
【0054】
48=38nm-(228nm-200nm)=10nmである。
【0055】
光硬化および焼成に起因する厚さ変化を低減することによって、寸法48を低減することができ、平坦化性能に資することができる。厚さ変化が-1%である場合、寸法48を1.6nmに低減することができ、厚さ変化が0%である場合、寸法48を0nmにすることができる。
【0056】
ここに記載されるように、周囲温度よりも高い温度で光硬化性組成物を光硬化することによって、厚さ変化の量を低減することができる。周囲温度とは、機械の中で光硬化を行うステーションが位置する部屋の温度である。例えば、周囲温度は20℃~25℃の範囲内でありうる。光硬化温度における光硬化は、光硬化に関係する厚さ変化の低減に資することができ、焼成によって、硬化前層を周囲温度で光硬化させ、続いて焼成した、同じ光硬化性組成物から作製された異なる焼成層と比較して、上面に沿った高度差が少ない上面を有する焼成層を生成することができる。厚さ変化の量が低減したことで、より良好な平坦化性能が得られる。
【0057】
この明細書において、厚さ変化は、(1)光硬化性組成物の硬化前層、(2)硬化前層に対応する硬化層、または(3)硬化前層に対応する焼成層のいずれか2つの間であってもよい。明示的な反対の記述がない限り、厚さ変化は百分率として表現する。
【0058】
厚さ変化は、下の等式3:
【0059】
((T-T)/T)×100% (等式3)
【0060】
(式中、
【0061】
は、プロセスの相対的に早期時点における層の厚さであり、
【0062】
は、プロセスの相対的に後期時点における層の厚さである)を使用して決定することができる。
【0063】
例えば、Tは、硬化前層の厚さとすることができ、Tは、硬化層の厚さまたは焼成層の厚さであってもよい。代替的には、Tは、硬化層の厚さとすることができ、Tは、焼成層の厚さであってもよい。負の値は収縮に相当し、正の値は膨張に相当する。厚さ変化は、厚さ変化が0%からどれくらい遠いかの観点で記載される。したがって、文字通りには-4.0%は-1.0%よりも小さいが、-4.0%の厚さ変化は-1.0%に減少することがある。
【0064】
厚さ変化を決定するための厚さ測定は、実質的に同じ位置および表面特徴部、例えば、突起の上、窪み内、ダイの間のけがきレーン内等とするべきである。厚さ測定は、外縁端部から基材の中央に向かって1mm~9mm、例えば3mmの範囲内の距離に広がる、除外ゾーンによって囲まれた基材の領域内とするべきである。厚さ測定は、原子間力顕微鏡(AFM);干渉計;楕円偏光計;プロフィルメータ;または層の厚さもしくは層の表面プロファイルを測定するための任意の好適な機器を使用して行うことができる。厚さ測定の代替選択肢として、平坦化層の平坦性の標本となりうるため、2つの位置における相対的な高さの差を測定してもよい。実施態様では、層の上面から等高線マップを作成して、このような表面に沿った高度変化を図示してもよい。
【0065】
厚さ変化は、単一の厚さ変化、または厚さ測定値の対の間の複数の厚さ変化の平均、または硬化前層、硬化層もしくは焼成層の上面に対応する等高線マップからの平均であってもよい。
【0066】
システムは、光硬化性組成物についての供給操作、曝露前加熱操作、光硬化操作および焼成操作を行うように構成することができる。システムについて以前に列挙した操作は、単一の機械内、例えば図3における機械300内もしくは図4における機械400内で行ってもよく、または2つ以上の機械、例えば図5における機械501および503の間に分配してもよい。システムは、IAPプロセスに相当に好適である。システムは、光硬化性組成物からのパターン化層の形成にも使用することができる。
【0067】
この明細書を読んだ後、当業者は、システムを設計する場合に、機械および対応する操作の数を決定することができる。下の記載では、図4および5のシステムを述べる前に、図3のシステムを述べる。
【0068】
図3は、基材に重なった層を光硬化性組成物から形成するために使用できる、機械300の形態のシステムの平面図の概念図を含む。
【0069】
機械300は、基材搬送ツール310、基材ポッド321、供給ステーション323、曝露前加熱および光硬化ステーション326、曝露後焼成ステーション329、制御装置350ならびにメモリ352を含む。供給ステーション323は、基材チャック333を含むことができ、曝露後焼成ステーション329は、基材チャック339および供給ヘッド346を含んでもよい。基材チャック333が、ステーション323と326との間で移動することができるように、基材チャック333をステージ(図示せず)と連結することができる。曝露前加熱および光硬化ステーション326は、曝露前加熱操作および光硬化操作を行うように構成することができる。図4について後に記載する通り、曝露前加熱操作をあるステーションで行い、光硬化操作を異なるステーションで行ってもよい。
【0070】
以前に言及した部品の多くを、各々が果たす機能について下に記載する。部品、ならびに特にステーション323、326および329の動作に関するさらなる詳細は、この明細書において、機械300を使用する方法について後により詳細に記載する。
【0071】
基材搬送ツール310は、1つまたは複数の基材を、基材ポッド321、供給ステーション323、曝露前加熱および光硬化ステーション326ならびに曝露後焼成ステーション329のいずれかへ、またはいずれかから搬送するように構成することができる。基材搬送ツール310は、機器フロントエンドモジュール(EFEM)の1つまたは複数の部品であってもよく、この部品を含んでもよい。EFEMの部品は、以下の各々の1つまたは複数:ロボットアーム、ウエハを保持するために適応したロボットハンド、センサ、ロボットアームを動かすためのモータ、このロボットアームを動かすための別のモータ等を含んでもよい。ロボットアームは、硬化層を有する基材をステーション間で、例えば、曝露前加熱および光硬化ステーション326から曝露後焼成ステーション329へ移動させるように構成することができる。実施態様では、特定の基材と上材とが、同様の形状およびサイズを有してもよい。
【0072】
基材ポッド321は、複数の基材を保持することができる。基材は、基材ポッド321から取り外し、機械300のステーション、例えば、ステーション323、326、329またはこれらの組み合わせにおいて加工し、機械300内での加工が部分的にまたは完全に行われたら、基材ポッド321に戻すことができる。
【0073】
供給ステーション323は、基材を受け入れ、光硬化性組成物を基材上に供給できるように、構成することができる。基材が基材チャック333の上にある場合、供給ヘッド346を使用して、基材上に光硬化性組成物を供給することができる。供給ヘッド346は、光硬化性組成物を供給する1つまたは複数のノズルを含んでもよい。供給ヘッド346内の点線は、光硬化性組成物が、供給ヘッド346の底部側に沿って供給されることを示すために使用している。供給ヘッド346は、光硬化性組成物を供給する際に、静止または移動しているように構成することができる。光硬化性組成物、ならびに光硬化性組成物を供給および加工する方法に関するさらなる詳細は、この明細書において後に記載する。基材チャック333と連結したステージは、基材と基材に重なった光硬化性組成物とを、供給ステーション323から曝露前加熱および光硬化ステーション326へ搬送することができる。
【0074】
曝露前加熱および光硬化ステーション326は、2つの操作を行うように構成することができる。曝露前加熱および光硬化ステーション326は、化学線に曝露する前に、光硬化性組成物を加熱するように構成することができる。曝露前加熱および光硬化ステーション326は、光硬化性組成物を化学線に曝露することによって、光硬化性組成物を光硬化するように構成することができる。別の実施態様では、曝露前加熱および光硬化ステーション326によって行われる操作を、2つの異なるステーションに分けることができる。図4は、機械400を有するシステムを含む。曝露前加熱および光硬化ステーション326は、曝露前加熱ステーション425と光硬化ステーション427とによって置き換えられる。
【0075】
図3に図示した曝露前加熱および光硬化ステーション326に関係する加熱手段を作動させて、光硬化性組成物を加熱することができる。曝露前加熱および光硬化ステーション326のための加熱手段に関するさらなる詳細は、この明細書において後に記載する。光硬化性組成物の温度測定値を直接得るのは、困難でありうる。したがって、光硬化性組成物の温度は、曝露前加熱および光硬化ステーション326内の異なる温度に対応しうる。光硬化性組成物の温度は、液滴の形態であっても、その後に形成される硬化前層であっても、基材チャック333、基材チャック333に重なった基材、または上材が存在する場合、光硬化性組成物と接触した上材の温度に相関がありうる。光硬化性組成物の温度は、基材チャック333、基材チャック333に重なった基材、または存在する場合、上材の温度を使用して決定することができる。光硬化性組成物の直接温度測定は実際的ではないことがあるため、システムの使用者は、基材チャック333、基材、または存在する場合、上材の温度を使用して、操作を制御してもよい。
【0076】
基材チャック333、基材または上材の温度が、標的温度である、またはこのような温度の許容範囲内にある場合、加熱手段の作動を停止する、または基材チャック333もしくは基材を標的光硬化温度に、もしくはこのような温度の許容範囲内に保つための保持状態にすることができる。このような温度の許容範囲は、標的温度±5℃、2℃、1℃または0.5℃でありうる。光硬化性組成物を光硬化する場合、標的温度は所望される光硬化温度と同じであっても、異なってもよい。標的温度は、所望される光硬化温度がわかった後に決定することができる。標的温度に関するさらなる詳細は、機械300を使用する方法について記載する。
【0077】
曝露前加熱および光硬化ステーション326を使用して、基材に重なった光硬化性組成物から硬化層を形成することができる。上材が光硬化性組成物とまだ接触していない場合、上材を光硬化性組成物の液滴と接触させて載置して、光硬化性組成物の液滴を合体させ、光硬化性組成物の硬化前層を形成することができる。硬化前層が光硬化温度である場合、光硬化性組成物の硬化前層を化学線に曝露することによって、硬化前層を光硬化させることができる。化学線は、光硬化性組成物内の重合性材料に重合をもたらす。硬化層は、化学線を使用して光硬化性組成物の硬化前層が光硬化した後、かつ曝露後焼成操作の間に重合した光硬化性組成物の層がさらに加工される前の、重合した光硬化性組成物の層を指す。光硬化操作が完了したら、上材を取り外すことができる。基材搬送ツール310は、基材および硬化層を、曝露前加熱および光硬化ステーション326から曝露後焼成ステーション329へ搬送することができる。
【0078】
曝露後焼成ステーション329は、硬化層内の光硬化性組成物をさらに重合または架橋させること、光硬化性組成物内の成分の異なる反応を生じること、光硬化性組成物内の揮発性成分を追い出すこと等ができる。曝露後焼成ステーション329は、加熱手段を含む、曝露前加熱および光硬化ステーション326について記載した設計のいずれかを有することができる。曝露後焼成ステーション329のための加熱手段は、曝露前加熱および光硬化ステーション326のための加熱手段と同じであっても、異なってもよい。実施態様では、曝露後焼成ステーション329は、曝露前加熱および光硬化ステーション326と比較して、より高い温度で動作するように構成された加熱手段を含んでもよい。曝露後焼成に使用する温度は、少なくとも150℃でありうる。曝露後焼成ステーション329に関係する最高加工温度は、500℃もの高温でありうる。曝露後焼成ステーション329からの熱が、機械300の別の部分の動作に悪影響を及ぼさないことに資するように、十分な加熱遮蔽を使用してもよい。
【0079】
基材チャック333および339の各々は、真空チャック、ピン型チャック、グルーブ型チャック、静電チャック、電磁チャック等であってもよい。基材チャック333および339は、同じタイプ、例えば真空チャックであってもよく、異なるタイプであってもよい。例えば、基材チャックの一方を真空チャックとすることができ、基材チャックの他方を静電チャックまたは電磁チャックであってもよい。基材チャック333および339の各々は、基材および層、ならびに存在する場合、基材に重なった上材を加熱または冷却するために使用できる、加熱要素、冷却要素、または両方を有することも、有しないこともある。
【0080】
ステージは、基材チャックの1つまたは複数と連結することができ、機械300内で基材チャックを移動させるために使用することができる。異なるステージを異なる基材チャックと連結することができ、またはこのような基材チャックの組み合わせを同じステージと連結することができる。ステージによって、より少数の基材チャックの使用も可能となりうる。基材チャックを、異なるステーションの少なくとも2つの間で移動させることができるステージと連結してもよい。したがって、各ステーションは、専用の基材チャックを有することを要しない。非限定例では、基材は、供給ステーション323内に配置されたステージと連結している基材チャック333に載せることができ、光硬化性組成物を供給した後、ステージは、基材チャック333、基材および光硬化性組成物を、曝露前加熱および光硬化ステーション326へ移動させることができる。曝露前加熱および光硬化ステーション326における操作が完了し、基材および硬化層を取り外した後、別の後続の基材を受け入れるために、ステージは、基材チャック333を供給ステーション323へ戻すことができる。図4について後に記載する別の実施態様では、各ステーションが専用の基材チャックを有してもよい。
【0081】
制御装置350は、図3における機械300、図4における機械400または図5における機械501を制御することができる。下の制御装置350の記載は、図3における機械300に焦点を合わせている。制御装置350の記載は、機械400および501の特異的な詳細を述べる場合を除いて、図4における機械400および図5における機械501にも当てはまる。
【0082】
制御装置350は、以前に記載した機械300のあらゆる部品、および機械300内または機械300外の潜在的な他の部品と通信状態にあってもよい。制御装置350は、任意選択でメモリ352に格納された、コンピュータ可読プログラムを使用して動作することができる。制御装置350としては、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラの中央処理装置)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)等を挙げることができる。制御装置350は機械300内にあってもよい。システムの別の実施態様(図示せず)では、制御装置350は、機械300外のコンピュータの少なくとも一部とすることができ、このようなコンピュータは、機械300と双方向的に連結している。メモリ352としては、搬送操作に関係する、または搬送操作の間の行為を行うための指示を含む、非一時的コンピュータ可読媒体を挙げることができる。メモリ352は、制御装置350がアクセスして、操作パラメータ、例えば、光硬化性組成物を供給する局所面密度、標的温度、光硬化温度、化学線の線量、曝露後焼成温度または下記の方法に使用される別のパラメータの決定を支援することができる、データテーブルをさらに含んでもよい。制御装置350と同様に、メモリ352をシステムの一部とすることができ、機械300内にあっても機械300外にあってもよい。別の実施態様では、あらゆる部品は、そうでなければ制御装置350によって提供される機能のいくつかを提供する、局所制御装置を含んでもよい。
【0083】
任意の特定のステーションによって行われる以前に記載した操作は、別のステーションに移動させても、または別のステーションと組み合わせてもよい。例えば、供給と曝露前加熱と光硬化とを同じステーション内で行うことができ、曝露前加熱と光硬化とを同じステーション内で行うことができる等である。別の構成では、1つステーションによって行われる複数の操作を、別個のステーションで行ってもよい。図4は、焼成層を基材上に形成するために使用できる、機械400の形態の別のシステムの平面図の概念図を含む。機械400は、下記を除いて、機械300と同じである。
【0084】
図3における曝露前加熱および光硬化ステーション326は、図4では、曝露前加熱ステーション425と光硬化ステーション427とによって置き換えられている。ステーション425および427の各々についての設計は、曝露前加熱操作と光硬化操作との両方を行う曝露前加熱および光硬化ステーション326と比較して、より容易に最適化されうる。別個のステーション425および427は、部品がより多いことに起因して、機械300と比較して、機械400へのコストを上乗せすることがあり、機械400の設置面積は、機械300の設置面積よりも大きいことがある。
【0085】
図3における供給ヘッド346は、図4では供給モジュール440によって置き換えられている。供給モジュール440は、基材が供給ステーション423にあるとき、光硬化性組成物を基材上に供給するように構成される。供給ステーション423は、供給ステーション323について以前に記載した機能を提供する。供給モジュール440は、レール(図示せず)と連結した末端442を含み、供給モジュール440が、図4の上下に対応する方向に移動することができる、ガントリーベースのシステムであってもよい。供給モジュール440は、末端442と連結したブリッジ444を含み、基材チャック433の上を通過することができる。供給ヘッド446はブリッジ444と連結しており、ブリッジ444に沿って、図4の左手側と右手側との間を移動するように構成される。供給ヘッド446は、光硬化性組成物を供給する1つまたは複数のノズルを含んでもよい。供給ヘッド446内の点線は、光硬化性組成物が、供給ヘッド446の底部側に沿って供給されることを示すために使用している。供給モジュール440は、供給ヘッド346について下に記載する異なる面密度で、光硬化性組成物を供給するように構成される。
【0086】
基材チャック433、435および437は、基材チャック333および339について以前に記載した構成のいずれかを有する。図4において、各ステーションは専用の基材チャックを有する。基材チャック433、435および437のいずれか1つは、基材チャックの移動に資することができるステージと連結していてもよい。基材チャック433は、光硬化性組成物の供給中、促進するように移動してもよい。基材チャック433と比較して、基材チャック435および437は、移動する必要がない場合があり、ステージと連結している必要がない。別の実施態様では、図4における基材チャックのいずれか1つまたは複数を、図4に図示されるステーション423、425および427のいずれか2つ以上の間の移動を可能にするステージと連結した、基材チャック333と同様の基材チャックで置き換えることができる。
【0087】
制御装置350は、図4におけるステーション423、425および427、ならびにこれらの部品と連結しており、図3について以前に記載した供給、曝露前加熱および光硬化操作を補助する。
【0088】
機械300または機械400におけるステーションのすべてが、単一の機械内に存在しなくてもよい。ステーション323、326、329、423、425および427のいずれか1つまたは複数は、異なる機械内に位置してもよい。非限定例として、曝露後焼成ステーション329が動作する温度は、機械の1つまたは複数の他のステーションには高すぎることがある。図3におけるステーション326または図4におけるステーション427内での光硬化の間、曝露後焼成ステーション329が、光硬化性組成物の硬化前層の適切な温度制御に干渉することがある。
【0089】
図5は、機械501および503を含むシステム500を含む。機械501は、曝露後焼成ステーション329および基材チャック339を機械503に移動させたことを除いて、図3における機械300と同じである。機械503は、基材搬送ツール510、基材ポッド521、制御装置550およびメモリ552をさらに含んでもよい。基材搬送ツール510は、基材搬送ツール310について記載したものと同じ機能を提供し、基材ポッド521は、基材ポッド321について記載したものと同じ機能を提供する。
【0090】
制御装置550およびメモリ552は、基材搬送ツール510、基材ポッド521、曝露後焼成ステーション329および基材チャック339を補助する機能を提供するために使用することができる。制御装置550は、制御装置350について記載した構成および部品のいずれかを有することができ、メモリ552は、メモリ352について記載した構成および部品のいずれかを有することができる。
【0091】
制御装置350と550とは、互いに通信することができる。例えば、制御装置350と550との一方または両方を使用して、機械503内の曝露後焼成ステーション329において基材と硬化層とを焼成する前に、基材ポッド521における、硬化層を有する特定のロットの基材が、機械501内での加工を完了していることを確認することができる。別の実施形態では、機械501および503は、機械501および503内に別々の制御装置または別々のメモリを有するのではなく、共通の制御装置、共通のメモリ、または共通の制御装置と共通のメモリとの両方を共有することができる。
【0092】
機械300を使用して基材上に焼成層を形成する方法に注意を向ける。図6は、図3および7~12について記載した方法のプロセスフロー図を含む。特定のプロセスフローを図とともに下に記載するが、この図はIAPプロセスを対象とする。多くの異なるプロセスフローを使用することができ、やはりここに記載する概念を使用した利益を達成することができる。例えば、プロセスは、パターン化レジスト層が、パターン化上材を使用して作製された光硬化性組成物である、インプリントリソグラフィに使用してもよい。以降に使用する場合、非パターン化上材をブランクと称し、パターン化上材をテンプレートと称する。プロセスフローからの他の変形形態は、後にこの明細書に記載する。機械300についての方法を記載した後、他の代替選択肢、例えば、図4における機械400または図5におけるシステム500を使用する場合、加工がどのように変化しうるかを記載する。図7~9、11、12における基材チャック333は、例えば図10に図示される、加熱手段、温度センサまたは両方を含んでもよい。図7~9、11および12とともに行われる操作の理解を単純化するため、図10における基材チャック333内の加熱手段および温度センサは、図7~9、11および12には図示していない。
【0093】
図3を参照すると、この方法は、基材ポッド321から供給ステーション323へ基材を搬送することを含んでもよい。制御装置350または局所制御装置は、基材搬送ツール310が基材ポッド321から基材を取り外し、基材を供給ステーション323へ移動するための信号を伝送することができる。基材搬送ツール310は、供給ステーション323内の基材チャック333に、基材を載置することができる。
【0094】
この方法は、図6のブロック222における、基材上に光硬化性組成物を供給することを含んでもよい。光硬化性組成物は、重合性材料および光開始剤を含んでもよい。光硬化性組成物は、溶媒を含むことも含まないこともある。さらなる実施態様では、光硬化性組成物は、別の添加剤を含有することができる。他の添加剤の非限定例は、界面活性剤、分散剤、安定剤、阻害剤、染料またはこれらの組み合わせでありうる。
【0095】
重合性材料は、単一のモノマー化合物、またはモノマー化合物の混合物を含んでもよい。実施形態では、重合性材料は、多官能性モノマーを含んでもよい。光硬化性組成物中の多官能性モノマーは、重量パーセント基準で、光硬化性組成物の大部分を占めることができる。一実施形態では、光硬化性組成物中の多官能性モノマーの含有量は、光硬化性組成物の総重量を基準として少なくとも60重量%、または光硬化性組成物の総重量を基準として、少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも92重量%、または少なくとも95重量%であってもよい。別の実施態様では、多官能性モノマーの含有量は、光硬化性組成物の総重量を基準として最大99.5重量%、光硬化性組成物の総重量を基準として、例えば最大99重量%、または最大98重量%、または最大97重量%、または最大95重量%、または最大93重量%、または最大90重量%でありうる。さらに、多官能性モノマーの含有量は、上に述べた最小値および最大値のいずれかを含有する範囲内、例えば、光硬化性組成物の総重量を基準として、60重量%~99.5重量%、70重量%~99重量%、80重量%~98重量%、または90重量%~97重量%の範囲内であってもよい。
【0096】
一実施態様では、多官能性モノマーは、二官能性モノマー、三官能性モノマーまたは四官能性モノマーであってもよい。官能基は、数ある中でも特に、ビニル基、アクリレート基、アクリルアミド基、メタクリレート基、マレイミド基、エポキシ基、ラクトン基、アセタール基、環状エーテル基、ラクタム基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルフィド基またはアミン基であってもよい。多官能性モノマー化合物は、同じタイプの官能基を含むこともでき(例えば、多官能性モノマー化合物内のすべての官能基がビニル基である)、異なるタイプの官能基を含むこともできる。実施態様では、多官能性モノマーは、多官能性アクリレートモノマー、多官能性ビニルモノマーまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0097】
特定の実施態様では、多官能性モノマーは、少なくとも2つのアクリレート基、または少なくとも3つもしくは少なくとも4つのアクリレート基を含んでもよい。ここで使用する場合、アクリレートモノマーという用語は、置換または非置換アクリレートモノマーを指す。置換アクリレートモノマーの非限定例は、C~Cアルキルアクリレート、例えば、メタクリレートまたはエチルアクリレートでありうる。
【0098】
別の実施態様では、多官能性モノマーは、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つのビニル基を含んでもよい。
【0099】
実施態様では、多官能性モノマーは、アクリレート基とビニル基との両方を含んでもよい。別の実施態様では、多官能性モノマーは、1つまたは複数の芳香環構造をさらに含んでもよい。
【0100】
別の多官能性モノマーは、2つ以上のビニル基と、少なくとも1つの芳香環構造、例えば1つまたは複数のベンゼン環とを含んでもよい。実施態様では、多官能性モノマーは、ビニルベンゼンまたはジビニルベンゼン化合物を含んでもよい。特定の実施態様では、多官能性モノマーは、2つ、3つまたは4つのビニル基を含む、ビフェニルまたはジフェニルメタン化合物であってもよい。
【0101】
下の表1は、光硬化性組成物中の重合性材料として使用できる、例示的な多官能性モノマー化合物の一覧を含む。一覧は、包括的ではなく、説明のためのものであることが意図され、使用できる重合性材料化合物を限定することを意図するものではない。
【0102】
【表1-1】
【表1-2】
【0103】
光開始剤は、単一の光開始剤化合物、または光開始剤化合物の混合物を含んでもよい。同じまたは別の実施態様において、光開始剤化合物は、オキシムエステル化合物であってもよい。オキシムエステル化合物は、式(1)の構造:
【0104】
【化1】
【0105】
[式中、
【0106】
は、芳香環系または複素環系であり、
【0107】
は、HまたはC~Cアルキルであり、
【0108】
は、HまたはC~Cアルキルである]
を有することができる。
【0109】
特定の実施態様では、光硬化性組成物の光開始剤は、オキシムエステル化合物ではない光開始剤化合物をさらに含んでもよい。
【0110】
下の表2は、光硬化性組成物中に使用できる、例示的な光開始剤化合物の一覧を含む。一覧は、包括的ではなく、説明のためのものであることが意図され、使用できる光開始剤化合物を限定することを意図するものではない。
【0111】
【表2】
【0112】
Irgacure化合物は、独国、Ludwigshafen am RheinのBASF SEから入手可能である。Omniradは、オランダ、WaalwijkのIGMグループから入手可能である。
【0113】
光硬化性組成物中の光開始剤の量は、光硬化性組成物の総重量を基準として少なくとも1.0重量%、光硬化性組成物の総重量を基準として、少なくとも1.5重量%、少なくとも2.0重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも3.0重量%、少なくとも3.5重量%、または少なくとも4.0重量%であってもよい。別の態様では、光硬化性組成物中の光開始剤の量は、光硬化性組成物の総重量を基準として最大10.0重量%、光硬化性組成物の総重量を基準として、最大8.0重量%、最大7.0重量%、最大6.0重量%、最大5.0重量%、または最大4.0重量%でありうる。光硬化性組成物中の光開始剤の量は、上に述べた最小数および最大数のいずれかの間の値、例えば、光硬化性組成物の総重量を基準として、1.0重量%~10.0重量%、1.5重量%~8.0重量%、または2.0重量%~7.0重量%の範囲内であってもよい。
【0114】
実施態様では、光硬化性組成物は、本質的に溶媒不含であってもよい。ここで使用する場合、別段の指示がない限り、溶媒という用語は、重合性材料を溶解または分散させることができるが、それ自体は光硬化性組成物の光硬化中に重合しない化合物に関する。「本質的に溶媒不含」という用語は、ここでは、光硬化性組成物の総重量を基準として、溶媒の量が最大5重量%であることを意味する。特定の実施態様では、溶媒の量は、光硬化性組成物の総重量を基準として、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%とすることができ、または光硬化性組成物は、避けられない不純物を除いて溶媒不含であってもよい。
【0115】
別の態様では、光硬化性組成物は、光硬化性組成物の総重量を基準として5重量%超の量で、溶媒を含んでもよい。特定の態様では、溶媒の量は、光硬化性組成物の総重量を基準として少なくとも10重量%、または光硬化性組成物の総重量を基準として、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%であってもよい。別の態様では、溶媒の量は、光硬化性組成物の総重量を基準として、最大40重量%、最大30重量%、最大20重量%、または最大10重量%でありうる。特定の実施態様では、光硬化性組成物中の溶媒の量は、上に述べた最小数および最大数のいずれかの間の値、例えば、光硬化性組成物の総重量を基準として、5重量%~40重量%、10重量%~30重量%、または15重量%~20重量%の範囲内であってもよい。
【0116】
界面活性剤は、単一の界面活性剤化合物、または界面活性剤の混合物を含んでもよい。界面活性剤化合物はフッ素含有化合物とすることもでき、実施態様では、界面活性剤はフルオロ有機化合物とすることもできる。下の表3は、光硬化性組成物中に使用できる、例示的な界面活性剤化合物の一覧を含む。一覧は、包括的ではなく、説明のためのものであることが意図され、使用できる界面活性剤化合物を限定することを意図するものではない。
【0117】
【表3】
【0118】
Capstone(商標) FS-3100は、Wilmington、DE、USAのThe Chemours Companyから入手可能である。
【0119】
界面活性剤は、光硬化性組成物の総重量を基準として、最大5.0重量%であってもよい。特定の実施態様では、界面活性剤の量は、光硬化性組成物の総重量を基準として、最大3.0重量%、最大2.0重量%、または最大0.9重量%であってもよい。
【0120】
図3および7の方法に戻ると、図7に図示されるように、供給ヘッド346は、光硬化性組成物の液滴322を、基材302の露出した表面上に供給する。供給操作の間、基材チャック333を、基材チャック333を移動させる(図7において、基材302に隣接する矢印によって図示される)ように構成されたステージと連結させることができる。別の実施態様では、供給ヘッド346が移動し、基材チャック333は静止している。したがって、基材302が移動することができ、供給ヘッド346は静止していても、やはり移動してもよい。
【0121】
基材302は、隣接する窪みと比較して、相対的に高い高度にある隆起を有する、露出した表面を有することができる。図7において、基材302の露出した表面は、突起3022および窪み3024を有する。基材302は、窪み3024と比較して相対的に高い面密度で突起3022を有する局所領域、および突起3022と比較して相対的に高い面密度で窪み3024を有する別の局所領域を有する。突起3022が局所領域の相対的に大きな割合を占めるところには、低い面密度で光硬化性組成物が供給され、窪み3024が異なる局所領域の相対的に大きな割合を占めるところには、高い面密度で光硬化性組成物が供給される。実際には、基材302の露出した表面は、図7に図示されるよりも大幅に複雑であり、2種の高度のみに限定されない。図7における基材302の露出した表面は、ここに記載する概念の理解を支援するために、単純化している。
【0122】
基材302の露出した表面に沿って、光硬化性組成物の適切な局所面密度を達成するために、制御装置350または局所制御装置は、供給ヘッド346、基材チャック333と連結したステージ(基材チャック333をステージと連結させる場合)または両方が、所望の方向に所望の速度で移動し、供給ヘッド346が、光硬化性組成物の液滴322を所望の速度で供給するように、信号を伝送することができる。
【0123】
図3、7および8を参照すると、基材チャック333と連結したステージは、基材302と光硬化性組成物の液滴322とを、供給ステーション323から曝露前加熱および光硬化ステーション326へ搬送することができる。制御装置350または局所制御装置は、ステージが基材チャック333、基材302および光硬化性組成物の液滴322を、供給ステーション323から曝露前加熱および光硬化ステーション326へ移動させるための信号を伝送することができる。
【0124】
このプロセスは、図6のブロック224における、光硬化性組成物を上材と接触させることをさらに含む。上材422を使用して、光硬化性組成物の液滴322から硬化層を形成することを支援することができる。実施態様では、上材422は、平坦な底面が基材302および液滴322と面する、ブランクであってもよい。機械300、400および501の各々は、上材422を移動させ、配置するために使用することができる、上材ハンドラーを含んでもよい。同じまたは異なる実施態様では、上材422は、曝露前加熱および光硬化ステーション326内の平坦化ヘッドによって保持することができる。
【0125】
上材422は、光硬化性組成物を光硬化するのに使用する化学線について、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の透過率を有する。上材422は、ガラス系材料、ケイ素、有機ポリマー、シロキサンポリマー、フルオロカーボンポリマー、サファイア、スピネル、別の同様の材料またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。ガラス系材料としては、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリ-ケイ酸バリウムガラス、アルミノケイ酸ガラス、石英、ヒューズドシリカ等を挙げることができる。実施態様では、化学線は紫外線とすることができ、ガラス系材料を上材422に使用することができる。上材422は、30ミクロン~2000ミクロンの範囲内の厚さを有することができる。上材422の接触表面は、基材302の面積の少なくとも90%の表面積を有することがあり、基材302と同じまたはより大きな表面積を有してもよい。
【0126】
上材422の接触表面は、円形、楕円形、長方形(正方形を含む)、六角形等を含む2次元形状を有する。図8に図示される実施態様では、接触表面は、一切の窪みおよび突起を有せず、ブランクと称することができる。代替的な実施態様では、上材が窪みおよび突起を有し、このとき、光硬化性組成物に転写される。
【0127】
図3、8および9を参照すると、制御装置350または局所制御装置は、上材422と液滴322とを互いに近づけ、接触させるための信号を伝送することができる。上材422を移動させてもよく、基材チャック333を移動させてもよく、上材422と基材チャック333との両方を移動させることもできる。上材422が光硬化性組成物の液滴322と接触しているため、液滴322が合体して、光硬化性組成物の硬化前層502を形成することができる。硬化前層502の上面512は、上材422の底部の接触面に合致する。
【0128】
このプロセスは、図6のブロック226における、光硬化性組成物の硬化前層を加熱することをさらに含む。ブロック226は、光硬化性組成物が、基材302と上材422との間にあるときに行ってもよく、および/またはブロック224の前、もしくはブロック224中に開始してもよい。光硬化操作または後続の焼成操作の間に、硬化前層502、または硬化前層502から形成された硬化層は、光硬化後、後続の焼成操作後、または両方で厚さ変化を有することがある。硬化前層502を化学線に曝露する場合、曝露前加熱についての標的温度は、所望される光硬化温度に依存しうる。所望される光硬化温度は、硬化前層502と光硬化および焼成後の対応する焼成層との間の厚さ変化、または硬化層と対応する焼成層との間の厚さ変化に依存しうる。
【0129】
高い光硬化温度では、硬化前層502と対応する焼成層との間、または硬化層と対応する焼成層との間で、0%の、または0%に近い厚さ変化が可能となりうる。所望される光硬化温度は、光硬化性組成物中の材料に依存しうる。光硬化性組成物中の材料のうち、重合性材料が、選択される温度に対して最も大きな影響を有する。光開始剤としては、単一の光開始剤化合物、または光開始剤化合物の混合物を挙げることができるが、選択される温度に対してより小さな影響を有することがある。光硬化性組成物中の他の材料は、曝露前加熱のために選択される温度に対して、影響を有しない、または有意な影響を有しないことがある。
【0130】
所望される光硬化温度を決定するための、経験的データを生成することができる。光硬化および焼成の後、焼成層の厚さは、硬化前層502または硬化層の厚さよりも厚いことも、薄いことも、ほぼ同じであることもある。経験的データからグラフを生成して、厚さ変化を決定することができる。グラフについての重要な変数としては、(1)特定の光硬化性組成物、(2)曝露後焼成温度、(3)光硬化温度、および(4)光硬化中の化学線の線量を挙げることができる。厚さ変化および4つの変数についてのデータは、メモリ352内の表に格納してもよい。グラフ中の各線のために、4つの変数のうちの3つを一定に保つことができ、3つまたは4つの変数のうちの最後のものを変化させて、厚さ変化に対する影響を決定する。例えば、特定の光硬化性組成物について、焼成温度および線量を一定に保ち、光硬化温度を変動させる。経験的データに関するさらなる詳細は、この明細書の実施例セクションで後に見出すことができる。
【0131】
硬化前層502と対応する焼成層との間の厚さ変化は、標的厚さ変化の許容範囲内であってもよい。標的厚さ変化は0%とすることができ、許容範囲は、良好な平坦化性能を提供する値の範囲内でありうる。許容範囲は、±2.0%(-2.0%~2.0%)、±1.0%-1.0%~1.0%または±0.5%-0.5%~0.5%でありうる。例えば、製品仕様は0%±1.0%の厚さ変化を有することがあり、したがって、厚さ変化は-1.0%~1.0%の範囲内であってもよい。特定の光硬化性組成物と特定の焼成温度との特定の組み合わせについて、0%の厚さ変化は達成可能ではないこともある。例えば、このような組み合わせでは、最良でも-1%の厚さ変化が達成されるにすぎないこともある。-1%またはその付近の厚さ変化に対応する、所望される光硬化温度が選択されうる。
【0132】
経験的データは、メモリ352内の表に、または機械300外のデータベースに格納することができる。制御装置350は、焼成層を形成するのに使用される、光硬化性組成物、化学線の線量、焼成温度またはこれらの組み合わせに関する情報を受信し、使用される所望の光硬化温度を決定することができる。
【0133】
所望される光硬化温度が決定した後、制御装置350または局所制御装置によって、曝露前加熱中の標的温度を決定することができる。標的温度は、所望される光硬化温度と同じであってもよく、異なってもよい。例えば、硬化前層502の曝露前加熱と光硬化との間に、基材302、硬化前層502および上材422を、冷却することもしないこともある。硬化前層の曝露前加熱および光硬化は、曝露前加熱および光硬化ステーション326において行うことができ、標的温度と所望される光硬化温度とは、同じであってもよい。図4を簡潔に参照すると、基材302、硬化前層502および上材422を、曝露前加熱ステーション425から光硬化ステーション427へ移動させるとき、硬化前層502が冷却されうる。硬化前層502が光硬化ステーション427にあると、所望される光硬化温度まで冷却されるため、標的温度は、所望される光硬化温度よりも高くてもよい。この明細書を読んだ後、当業者は、特定の機器設定、および硬化前層502の曝露前加熱と光硬化との間の潜在的な温度変化について、標的温度を決定することができる。
【0134】
加熱手段は、基材302、硬化前層502および上材422を標的温度まで加熱するために使用される。図10を参照すると、加熱手段は、基材チャック333内の抵抗加熱要素622、または基材チャック333上に配置された放射加熱要素624を含んでもよい。放射加熱要素624としては、加熱ランプ、赤外ランプ等を挙げることができる。図示していないが、加熱手段としては、電磁誘導を使用した加熱を支援するための電磁石、マイクロ波を発生させるためのマイクロ波発生装置、加熱流体が基材チャック333内のチャネルを通って流れることを支援するためのポンプ、または基材302、および硬化前層502、および上材422の上を加熱ガスが通過することによる対流を支援するためのファンを挙げることができる。加熱手段は、1つのタイプの加熱手段(例えば、抵抗加熱要素、電磁誘導加熱のための電磁石、放射加熱要素、マイクロ波発生装置、基材チャック333内に加熱流体を流動させるためのポンプ、または対流加熱を支援するためのファン)のみを有してもよく、異なるタイプの加熱手段の組み合わせ(前述のいずれか2つ以上の組み合わせ)を有してもよい。
【0135】
加熱手段は、基材302、硬化前層502および上材422が、周囲温度よりも高い標的温度に達するように、熱を提供する。機械300が位置する部屋は、20℃の周囲温度であってもよい。このような部屋では、加熱することによって硬化前層502の温度を上昇させ、化学線に曝露される時点で、硬化前層502を21℃以上であってもよい。部屋は、機械300を操作する間に24℃の周囲温度に達することがあり、加熱することによって硬化前層502の温度を上昇させ、化学線に曝露される時点で、硬化前層502を25℃以上であってもよい。周囲温度に応じて、標的温度は、少なくとも21℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、または少なくとも40℃であってもよい。
【0136】
硬化前層502内の光硬化性組成物が、十分に高い温度に曝露されると、光硬化性組成物が化学線に曝露されることなく、実質的に重合することがある。したがって、標的温度は、曝露前加熱の間に光硬化性組成物が実質的に重合するほど高くするべきではない。実施態様では、標的温度は最高150℃でありうる。この事例では、150℃において、実質的ではない量の重合が生じることもある。別の実施態様では、曝露前加熱の標的温度は、最高100℃、最高80℃、または最高70℃であってもよい。曝露前加熱の標的温度は、上に述べた最小数および最大数のいずれかの間の値、例えば、21℃~150℃、25℃~100℃、30℃~80℃、または35℃~70℃の範囲内であってもよい。
【0137】
曝露前加熱の間、制御装置350または局所制御装置は、温度センサ632または634から温度データを受信し、加熱手段、例えば抵抗加熱要素622または放射加熱要素624が、基材302、硬化前層502および上材422を標的温度まで加熱するように、信号を伝送することができる。
【0138】
この方法は、図6のブロック228における、光硬化性組成物を光硬化して、硬化層を形成することを含んでもよい。図3を参照すると、特定の光硬化性組成物について、メモリ352は、化学線についての標的波長もしくは波長の標的範囲、光硬化性組成物のために使用する標的線量もしくは線量の標的範囲、または光硬化性組成物の光硬化に関する他のデータに関する情報を含んでもよい。このような情報を使用して、制御装置350または局所制御装置は、光硬化性組成物を化学線に曝露するためのパラメータを決定することができる。制御装置350は、特定の光硬化性組成物について所望される光硬化温度、曝露後焼成中に使用される焼成温度、硬化前層502を光硬化させるために使用される化学線の線量、またはこれらの組み合わせを提供することができる、以前に記載された経験的データにアクセスすることができる。光硬化の時点における温度を、ここでは、実際の光硬化温度と称する。実際の光硬化温度は、所望される光硬化温度またはその付近であってもよい。実際の光硬化温度は、以前に記載した標的温度および許容範囲のいずれかであってもよい。
【0139】
図3、10および11を参照すると、制御装置350および局所制御装置は、温度センサからの信号またはこのような信号からの派生物を受信し、温度が、所望される光硬化温度であるか、またはその許容範囲内(例えば、±5℃、±2℃、±1℃もしくは±0.5℃)であるかを決定することができる。温度が、所望される光硬化温度である、またはその許容範囲内である場合、図11に図示されるように、制御装置350または局所制御装置は、化学線源732を活性化させるための信号を伝送することができる。
【0140】
化学線は、化学線源732から放出される。上材422に到達する化学線の少なくとも70%は、上材422を通って透過する。上材422を通って透過した化学線は、硬化前層502中の光硬化性組成物内の光開始剤を活性化させて、光硬化性組成物内の重合性材料の重合を支援する。化学線は、少なくとも10nmかつ700nm未満の波長を有することができる。化学線は、10nm~400nmの範囲内、より特定的には100nm~360nmの範囲内の波長を有する紫外線であってもよい。光硬化性組成物の供給業者が、光硬化性組成物を光硬化するのに使用する標的波長または波長の標的範囲を提供してもよい。
【0141】
化学線への曝露からのエネルギーによって、硬化前層502(図10)から硬化層702(図11)を形成する。硬化層702は上面712を有する。エネルギーによって重合性材料が実質的に重合して、ポリマー材料を形成する。ポリマー材料は、単一のポリマー化合物とすることもでき、コポリマーであってもよい。化学線への曝露によって実質的に重合するが、硬化前層502内の重合性材料が十分に重合しないこともある。硬化層702の曝露後焼成の間に、さらなる重合が起こりうる。光硬化性組成物の供給業者が、光硬化性組成物のために使用する標的線量または線量の標的範囲を提供してもよい。代替的には、当業者が、経験的データを生成して、特定の光硬化性組成物のために使用してもよい線量または線量の範囲を決定してもよい。
【0142】
この方法は、上材422を硬化層702から取り外すことをさらに含んでもよい。光硬化性組成物は、重合後の硬化層702に残存する内部離型剤を含んでもよい。内部離型剤は、上材422を取り外す際に、硬化層702を損傷する可能性、または硬化層702の一部もしくはすべてを取り外す可能性の低減に資することができる。
【0143】
この方法は、図6のブロック229における、硬化層を焼成して焼成層を形成することを含んでもよい。焼成操作の間、硬化層702内の材料を、さらに重合させる、架橋させる、または両方を行うことができる。図12における焼成層802を形成する場合、焼成操作は、存在する場合、相対的に揮発性の成分を、硬化層702から除去するのにも資することができる。焼成層802は上面812を有する。焼成操作は、硬化層702と焼成層802との間にさらなる厚さ変化を生じることも、生じないこともある。
【0144】
図3、11および12を参照すると、制御装置350または局所制御装置は、基材搬送ツール310が、基材302および硬化層702を、曝露前加熱および光硬化ステーション326から取り外し、基材302および硬化層702を、曝露後焼成ステーション329へ移動させるための信号を伝送することができる。基材搬送ツール310は、曝露後焼成ステーション329内の基材チャック339に、基材302を載置することができる。
【0145】
曝露後焼成ステーション329内の加熱手段を使用して、硬化層702(図11)を加熱して焼成層802(図12)を形成する。曝露前加熱操作について以前に記載した加熱手段のいずれかを、焼成操作のために使用することができる。加熱手段は、曝露前加熱操作のために使用する温度よりも高い温度で、熱を提供する。焼成温度は、光硬化温度よりも少なくとも100℃高くてもよい。焼成温度は、少なくとも100℃、少なくとも150℃、または少なくとも200℃であってもよい。焼成温度は、焼成層802に対する有意な分解または別の有害な効果が生じるほど高くするべきではない。焼成温度は、最高500℃、最高450℃、または最高400℃であってもよい。焼成温度は、上に述べた最小数および最大数のいずれかの間の値、例えば、100℃~500℃、150℃~450℃、または200℃~400℃の範囲内であってもよい。特定の実施態様では、焼成温度は350℃~400℃の範囲内であってもよい。
【0146】
均熱時間とは、基材302および重なったポリマー層が焼成温度にある時間である。均熱時間は、必要なまたは所望される量のさらなる重合を達成するのに、もしくはポリマー層内の揮発性成分の量を所望される量まで低減するのに、または両方に十分である必要がある。均熱時間は、少なくとも0.25分、少なくとも1分、または少なくとも3分であってもよい。十分に長い時間の後は、焼成温度へさらに曝露しても、ポリマー層を十分に改善しないことがあり(十分な量の重合が起こっており、揮発性成分の残存量は十分に少なく、後続の加工中に問題を生じない等)、または例えば、焼成層802の上面812が荒れる、基材302から焼成層802が場合により層間剥離する等、有害な効果の発生が開始することがある。均熱時間は、最大60分、最大30分、または最大15分であってもよい。均熱時間は、上に述べた最小数および最大数のいずれかの間の値、例えば、0.25分~60分、1分~30分、または3分~15分の範囲内であってもよい。
【0147】
焼成操作は、ガスを使用して行うことができる。ガスは、硬化層702および焼成層802に対して比較的不活性な材料を含んでもよい。材料としては、N、CO、貴ガス(Ar、He等)またはこれらの混合物を挙げることができる。ガスは、酸化性材料、例えばO、O、NO等を含まないこともあり、10mol%以下、または0.5mol%以下の酸化性材料を含むこともある。
【0148】
図示される通り、曝露後焼成ステーション329は、一度に単一の基材を加工するように構成される。別の実施態様では、曝露後焼成ステーション329は、同じ焼成操作の間に、複数の基材を加工するように構成することができる。曝露後焼成ステーション329は、カセットもしくは別の好適な基材容器を含んでもよく、またはカセットもしくは他の好適な基材容器を受け入れ、カセットもしくは他の好適な基材容器が複数の基材を保持することができてもよい。曝露後焼成ステーション329は、機械300内にあってもよく、機械300外にあってもよい。
【0149】
図3を参照すると、制御装置350または局所制御装置は、曝露後焼成ステーション329が、不活性ガスを曝露後焼成ステーション329内に流すための信号を伝送し、加熱手段が、基材302および硬化層702を、均熱時間の間、所望される温度に維持するように制御することができる。均熱時間の後、制御装置350または局所制御装置は、基材搬送ツール310が基材302および焼成層802を、曝露後焼成ステーション329から取り外すための信号を伝送することができる。基材302および焼成層802を基材ポッド321へ戻す前に、基材302および焼成層802を基材搬送ツール310によって低温プレートへ移動させて、基材302および焼成層802の温度を低下させることができる。低温化が完了した後、制御装置350または局所制御装置は、基材302および焼成層802を、基材ポッド321へ移動させるための信号を伝送することができる。
【0150】
この方法は、主として、図3における機械300について記載している。図4における機械400、および図5における機械501と503とを含むシステム500についての方法は、以下に記載することを除いて実質的に同じであってもよい。
【0151】
図5を参照すると、曝露後焼成は、供給、曝露前加熱および光硬化を行う機械501とは異なる、機械503において行うことができる。ヒト、ロボット、トラム等が、機械501から機械503へ、基材と硬化層とを有する基材ポッドを搬送することもでき、硬化層を焼成して焼成層を形成することができる。
【0152】
図4における機械400では、専用のステーションによって、この方法における重要な操作を行う。曝露前加熱を曝露前加熱ステーション425において行い、光硬化を光硬化ステーション427において行うが、これを曝露前加熱と光硬化との両方を行う曝露前加熱および光硬化ステーション326と比較する。ステーション425と427との各々は、それぞれの操作に最適化することができるが、加工はより複雑となりうる。加熱された光硬化性組成物の硬化前層を有する基材が曝露前加熱ステーション425から光硬化ステーション427へ搬送されるとき、光硬化が行われる前に、加熱された硬化前層のいくらかの冷却が起こりうる。曝露前加熱の間の標的温度は、ステーション425と427との間の搬送の間の冷却を補償するために、所望される光硬化温度よりも高くてもよい。非限定例として、所望される光硬化温度は60℃であってもよい。標的温度は、曝露前加熱の終点と加熱された硬化前層の光硬化との間で3℃の温度低下を可能にするために、63℃であってもよい。プロセス制御は、より困難なこともある。
【0153】
機械400は、ガントリーベースの供給モジュール440を有する。ガントリーベースの設計は、供給モジュール440を共有する複数の供給ステーションを機械が有する場合に、有用でありうる。別の代替選択肢として、供給モジュール440は、供給ステーション423内に適合するように再設計することもできる。別の代替選択肢として、図3における供給ステーション323で、図4における供給ステーション423および供給モジュール440を置き換えることもできる。
【0154】
機械400は、ステージが必要でないため機械400の設計を単純化することができる、静止型基材チャックを有することもできる。機械300(図3)および機械501(図5)は、各ステーションが静止型基材チャックを有するように改変してもよい。
【0155】
しかしながら、静止型基材チャックを用いる場合、基材搬送ツール310は、基材、硬化前層および上材を、異なる基材チャック同士の間で搬送することがあり、基材に対する上材の配置を、搬送中にシフトさせることがある。静止型基材チャックを用いる場合、基材搬送ツール310を使用したステーション間の搬送操作を遅くして、基材に対して上材をシフトさせる可能性を低減させてもよい。別の実施態様では、図4における基材チャック433、435および437のいずれか2つ以上を、図3における、ステージと連結した基材チャック333によって置き換えて、図4における基材チャック433、435および437の間で基材を移動させるのではなく、基材チャック333を移動させることができる。
【0156】
図3~5に図示されるシステムのいずれか1つまたは複数の場合、さらなる加工選択肢が利用可能である。図10において、基材302、硬化前層502および上材422は、曝露前加熱の間に一緒に加熱される。基材302、光硬化性組成物(液滴322として)または上材422は、曝露前加熱操作の一部として、別々に加熱してもよい。光硬化性組成物の液滴322を供給する前または供給中に、基材302を加熱してもよく、光硬化性組成物を基材302上に供給する前に、光硬化性組成物を加熱してもよく、上材422を、光硬化性組成物の液滴322と接触する前に、加熱してもよい。別々に加熱することは、曝露前加熱操作を複雑化しうる。例えば、液滴322を有するまたは有しない基材302と、上材422とは、上材422が液滴322と接触する前に、別々に加熱することができる。基材302と上材422との温度は、温度が同じであることが意図される場合であってさえ、異なってもよい。液滴322を有するもしくは有しない基材302と、上材422との一方または両方が、所望される光硬化温度よりも高い標的温度まで加熱されうる。上材422との接触によって硬化前層502が形成された後、硬化前層502を光硬化させる時点で、基材302、硬化前層502および上材422の組み合わせを、所望される光硬化温度またはその付近の温度まで冷却することができる。
【0157】
基材302および液滴322が供給ステーション323、曝露前加熱および光硬化ステーション326(図3および5)、または曝露前加熱ステーション425、または光硬化ステーション427(図4)にある場合、上材422は、液滴322と接触させて載置することができる。上材422は、基材302と同様のサイズおよび形状を有することができる。基材搬送ツール310を使用して、上材422を液滴322と接触させて載置することができる。
【0158】
この明細書を読んだ後、当業者は、ここに記載する概念から逸脱することなく、多くのシステム構成および加工選択肢が利用可能であることを理解する。当業者は、特定の用途のための必要性または要求を満足するために使用する、特定のシステム構成および特定の方法を決定することができる。
【0159】
上に記載したプロセスは、光硬化性組成物から平坦化層またはパターン化レジスト層を形成するのに使用することができる。上に記載したプロセスは、物品を作製する製造方法の一部として組み込むことができる。物品は、電気回路素子、光学素子、微小電子機械システム(MEMS)、記録要素、センサ、型枠、集積回路等でありうる。集積回路は、ソリッドステートメモリ(例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、フラッシュメモリおよび磁気抵抗メモリ(MRAM))、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、グラフィックスプロセシングユニット、デジタル信号プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または半導体素子、パワートランジスタ、電荷結合素子(CCD)、画像センサ等でありうる。
【0160】
この方法は、焼成層または焼成層の下にあるパターン化層の一方または両方におけるパターンに対応する、画像を基材に転写するエッチングプロセスをさらに含んでもよい。基材は、例えば、硬化、酸化、層形成、堆積、ドーピング、平坦化、リソグラフィ、エッチング、形成性材料の除去、ダイシング、結合および包装等を含む、装置(物品)製造のための他のプロセスにさらに供することができる。基材を加工して複数の物品(装置)を生成してもよく、例えば、基材は半導体ウエハであってもよい。
【0161】
実施例
下に記載する実施例は、光硬化性組成物から形成される層の厚さ変化が、光硬化の間の光硬化性組成物の温度によって影響を受けうることを実証するために提供する。実施例は、ここに記載する概念の理解を支援するためのものであり、添付の特許請求の範囲において規定される、本発明の範囲を限定するためのものではない。実施例において、厚さ変化についての値は、パーセントの小数第2位で四捨五入する。
【0162】
下の表4は、実施例に使用する光硬化性組成物A、B、CおよびDを含む。表中の値は、光硬化性組成物内の成分の各々についての重量部である。
【0163】
【表4】
【0164】
1.基材内の特徴部の外形による影響を受けない、光硬化によって生じる厚さ変化
【0165】
実施例1は、光硬化によって生じる厚さ変化が、異なるライン/空白の寸法によって有意には影響を受けないことを実証する。実施例1におけるすべての試料について、光硬化性組成物Dを基材上に堆積させた。基材のいくつかについて、200nmのラインおよび200nmの空白のパターンを有する領域と、2μmのラインおよび2μmの空白のパターンを有する別の領域とを有するテンプレートを使用して、光硬化性組成物Dをパターン化した。これら2種の領域におけるテンプレートのエッチング深さ(50nm)を測定し、そのため、光硬化前の光硬化性組成物Dから作製した特徴部の初期高さは既知である。実施例1におけるすべての試料について、光硬化の間、光硬化性組成物Dを15J/cmの線量で化学線に曝露した。22℃~70℃の光硬化温度について、データを収集した。上の等式3によって厚さ変化を決定するが、ここで、Tはテンプレートのエッチング深さであり、Tは対応する硬化層の厚さである。図13は、異なるパターンについてのデータを含み、厚さ変化を比較している。Y軸は、硬化層(化学線への曝露後かつ曝露後焼成前)と、光硬化性組成物の当初パターン化した層との間の厚さ変化である。
【0166】
200nmのラインと200nmの空白とを有するパターンに対応するライン(「中央200nm」)について、曝露時の光硬化性組成物の温度が22℃~40℃の範囲内である場合、層についての厚さ変化はおよそ-0.1%である。光硬化の間の光硬化性組成物Dの温度を40℃から70℃に上昇させると、層についての厚さ変化は-0.1%から-0.6%に増加する。
【0167】
2μmのラインと2μmの空白とを有するパターンに対応するライン(「中央2μm」)について、曝露時の光硬化性組成物の温度が22℃~30℃の範囲内である場合、層についての厚さ変化はおよそ-0.1%である。光硬化の間の光硬化性組成物Dの温度を30℃から70℃に上昇させると、層についての厚さ変化は-0.1%から-0.8%に増加する。
【0168】
図13は、両方のパターンについて、同じ全体的傾向を示している。同じ光硬化温度の場合、厚さ変化は、光硬化性組成物からラインおよび空白を形成するために使用した、異なるパターンによる有意な影響を受けなかった。したがって、厚さ変化は、百分率として表す場合、下にある基材の外形に有意には依存しない。
【0169】
2.曝露後焼成によって生じる厚さ変化
【0170】
実施例2は、硬化層と対応する焼成層との間の厚さ変化を実証しており、したがって、この厚さ変化は焼成操作に対応し、光硬化操作には対応しない。上の等式3によって厚さ変化を決定するが、ここで、Tは硬化層の厚さであり、Tは対応する焼成層の厚さである。実施例2におけるすべての試料について、光硬化の間、光硬化性組成物Dを15J/cmの線量で化学線に曝露した。22℃~70℃の光硬化温度について、データを収集した。データのあるサブセットは、350℃の焼成温度および2分間の均熱時間で生成し、データの別のサブセットは、400℃の焼成温度および2分間の均熱時間で生成した。焼成は、N周囲温度で行った。各基材について、基材の両端間の位置のアレイにおける、硬化層および焼成層の厚さを測定した。
【0171】
図14はデータを含み、異なる焼成温度を比較している。両方の焼成温度についてのデータは、光硬化温度が22℃から50℃に上昇するにつれて、厚さ変化が直線的に増加している。350℃焼成の場合、22℃の光硬化温度における厚さ変化は-0.7%であり、50℃の光硬化温度における厚さ変化は0.9%である。400℃焼成の場合、22℃の光硬化温度における厚さ変化は-1.4%であり、50℃の光硬化温度における厚さ変化は1.1%である。両方の焼成温度について、50℃~70℃の範囲内の光硬化温度について、厚さ変化はおよそ1.0%で実質的に一定である。350℃焼成の場合、およそ33℃の光硬化温度における厚さ変化がおよそ0.0%である。400℃焼成の場合、およそ38℃の光硬化温度における厚さ変化がおよそ0.0%である。
【0172】
図14におけるY軸は3.0%の範囲(-1.5%~1.5%)を有し、0.9%の範囲(99.1%~100.0%)を有する図13におけるY軸の範囲よりも、およそ3.3倍大きい。したがって、光硬化性組成物Dの場合、焼成の間に起こる厚さ変化は、光硬化の間に起こる厚さ変化よりも有意に大きい。
【0173】
3.異なる光硬化性組成物についての、硬化層と対応する焼成層との間の厚さ変化
【0174】
実施例3は、光硬化性組成物A、B、CおよびDについて、硬化層と対応する焼成層との間の厚さ変化を実証する。上の等式3によって厚さ変化を決定するが、ここで、Tは硬化層の層の厚さであり、Tは対応する焼成層の厚さである。
【0175】
光硬化性組成物Aを基材上に供給し、平らなブランクである上材を使用して平坦化した。光硬化性組成物Aを1.2J/cmの線量で化学線に曝露することによって、光硬化性組成物Aを光硬化させて、硬化層を形成した。光硬化性組成物Bを基材上に供給し、平らなブランク使用して平坦化した。光硬化性組成物Bを20J/cmの線量で化学線に曝露することによって、光硬化性組成物Bを光硬化させて、硬化層を形成した。光硬化性組成物Cを基材上に供給し、平らなブランクを使用して平坦化した。光硬化性組成物Cを5J/cmの線量で化学線に曝露することによって、光硬化性組成物Cを光硬化させて、硬化層を形成した。光硬化性組成物Dを基材上に供給し、平らなブランク使用して平坦化した。光硬化性組成物Dを15J/cmの線量で化学線に曝露することによって、光硬化性組成物Dを光硬化させて、硬化層を形成した。光硬化後、基材および硬化層を、N環境において350℃の温度で、2分間の均熱時間にわたって焼成して、基材上に焼成層を形成した。厚さ変化測定は、焼成の前後に測定した膜厚に基づくものであった。
【0176】
図15は、4種の光硬化性組成物について、光硬化温度の関数としての厚さ変化のグラフを含む。線の傾きの各々は、正の傾きを有する一次部分と、光硬化温度がさらに上昇しても厚さ変化が実質的に一定である(厚さ変化は0.2%の絶対値以下である)横這いの部分とを含む。転移温度とは、線の一次部分と、線の横這い部分とが合流する光硬化温度である。したがって、転移温度は、光硬化温度のさらなる上昇が厚さ変化に有意には影響を及ぼさない点を示す。
【0177】
光硬化性組成物Aの場合、一次部分は、-4.8%の厚さ変化を有する22℃から、-1.5%の厚さ変化を有する70℃の転移温度までに及ぶ。線の横這い部分は、70℃の転移温度で開始する。80℃の光硬化温度における厚さ変化は、-1.6%である。
【0178】
光硬化性組成物Bの場合、一次部分は、-3.9%の厚さ変化を有する22℃から、-0.6%の厚さ変化を有する80℃の転移温度までに及ぶ。線の横這い部分は、80℃の転移温度で開始する。90℃の光硬化温度における厚さ変化は、-0.8%であり、100℃の光硬化温度における厚さ変化は、-0.6%である。
【0179】
光硬化性組成物Cの場合、一次部分は、-0.4%の厚さ変化を有する22℃から、0.4%の厚さ変化を有する40℃の転移温度までに及ぶ。線の横這い部分は、40℃の転移温度で開始する。50℃の光硬化温度における厚さ変化は、0.4%であり、60℃の光硬化温度における厚さ変化は、0.4%である。
【0180】
光硬化性組成物Dの場合、一次部分は、-0.7%の厚さ変化を有する22℃から、0.9%の厚さ変化を有する50℃の転移温度までに及ぶ。線の横這い部分は、50℃の転移温度で開始する。60℃の光硬化温度における厚さ変化は、1.0%であり、70℃の光硬化温度における厚さ変化は、0.9%である。
【0181】
光硬化性組成物CおよびDを加工し、焼成層および硬化層の厚さの間で、0%の厚さ変化を生じることができる。光硬化性組成物Cの場合、0%の厚さ変化は31℃の光硬化温度で得ることができ、光硬化性組成物Dの場合、0%の厚さ変化は35℃の光硬化温度で得ることができる。
【0182】
4.化学線の線量の関数としての、異なる光硬化温度についての厚さ変化
【0183】
実施例4は、光硬化性組成物を異なる光硬化温度で光硬化させた場合の、硬化層と対応する焼成層との間の厚さ変化を実証する。上の等式3によって厚さ変化を決定するが、ここで、Tは硬化層の厚さであり、Tは対応する焼成層の厚さである。
【0184】
実施例4において、光硬化性組成物Bを22℃、60℃および80℃の光硬化温度で光硬化させ、対応する硬化層を、N環境において350℃で、2分間の均熱時間にわたって焼成した。
【0185】
図16は、試料についてのデータを含む。同じ光硬化温度の場合、線の各々は、線量の関数として、厚さ変化が漸近的に上昇する。線量が1J/cmから20J/cmに増加するにつれて、厚さ変化が0%厚さ変化に近づく。著しく低い線量は、比較的高温で光硬化させる場合に使用することができる。2.5J/cmの線量かつ60℃の光硬化温度における厚さ変化は-3.8%であり、20J/cmの線量かつ22℃の光硬化温度における厚さ変化は-3.9%である。2.5J/cmの線量かつ80℃の光硬化温度における厚さ変化は-1.6%であり、15J/cmの線量かつ60℃の光硬化温度における厚さ変化は-1.9%である。したがって、比較的低い線量を比較的高い光硬化温度において使用して、同じまたはより良好な厚さ変化(0%に近い)を達成することができる。実施例4におけるデータは、低い線量を使用できるように、比較的高い温度を使用することを示唆している。
【0186】
いくつかの光硬化性組成物は、中程度の光硬化温度(例えば30℃~50℃の範囲内)を使用することができ、0%の厚さ変化を達成することができる。実施例3および図15を参照すると、光硬化性組成物CおよびDは、それぞれ31℃および35℃の光硬化温度において、0%の厚さ変化を達成することができる。したがって、光硬化性組成物CまたはDについて高すぎる光硬化温度は、転移温度と比較して、0%から離れた厚さ変化をもたらしうる。
【0187】
代替的には、化学線の線量を低減してもよく、これによって、図15における光硬化性組成物CおよびDについての線を含めて、線が下向きにシフトする。光硬化温度が転移温度(線の一次部分と横這い部分との間の転移)である場合、光硬化性組成物Cについては40℃、光硬化性組成物Dについては50℃である場合に、経験的データを生成して、0%の厚さ変化を生じる線量を決定することができる。光硬化性組成物CおよびDについて、線量をさらに低下させると0%をさらに離れた厚さ変化を生じるため、転移温度よりも高い温度は、スループットを有意には改善しない。したがって、50℃以上の光硬化温度はエネルギーの浪費であり、0%の厚さ変化を達成する可能性を有意には改善しない。
【0188】
ここに記載する実施形態を使用して、光硬化性組成物の焼成層と硬化前層との間、または焼成層と硬化層との間の厚さ変化を、周囲温度よりも高い光硬化温度を比較する場合、周囲温度における光硬化と比較して、より0%に近く保つことができる。中程度の光硬化温度では、低すぎるまたは高すぎる光硬化温度と比較して、0%の厚さ変化が達成されうる。より良好な寸法安定性は、プロセスをより堅牢にし、基材毎および生産ロット毎の再現性をもたらすのに資する。本発明者らは、各材料について、光硬化温度に依存する光硬化厚さ変化があり、焼成温度に依存する焼成厚さ変化があることを見出した。本発明者らは、光硬化厚さ変化と焼成厚さ変化との一方が正、他方が負となるように選択し、できるだけゼロに近い最適な厚さ変化を与えられることを見出した。
【0189】
全体的な記載または実施例において上に記載した行為のすべてを要する訳ではないこと、特定の行為の一部を要しないこともあること、1つまたは複数のさらなる行為を、記載したものに加えて行うことができることに留意されたい。またさらに、行為を列挙した順序は、必ずしもこれらが行われる順序ではない。
【0190】
利益、他の利点および問題への解決を、特定の実施態様について上に記載してきた。しかしながら、利益、利点、問題への解決、および任意の利益、利点または解決を生じさせるまたはより顕著にすることができる任意の特徴部は、あらゆる特許請求の範囲の不可欠な、必須のまたは本質的な特徴部として解釈されるべきではない。
【0191】
本明細書およびここに記載する実施態様の説明は、様々な実施態様の構造の全体的な理解を提供することを意図している。本明細書および説明は、ここに記載する構造または方法を使用した機械およびシステムの要素および特徴部のすべてを、網羅的かつ包括的に記載する役割を果たすことを意図していない。別々の実施態様を、単一の実施態様に組み合わせて提供することもでき、反対に、簡潔にするために単一の実施態様の文脈で記載された様々な特徴部を、別々にまたは任意の部分的組み合わせ(subcombination)で提供することもできる。さらに、範囲において述べられた値への言及は、その範囲内のあらゆる値を含む。この明細書を読んだ後にのみ、多くの他の実施態様が当業者に明らかとなりうる。他の実施態様を使用すること、および本開示から誘導することができ、本開示の範囲を逸脱することなく、構造置換、論理置換または別の変更を行うことができる。したがって、本開示は、制限ではなく説明と考えるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16