(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177086
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】タービン発電機の過渡応答を改善するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20241212BHJP
H02P 101/25 20150101ALN20241212BHJP
【FI】
H02P9/04 F
H02P101:25
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024082244
(22)【出願日】2024-05-20
(31)【優先権主張番号】P.445126
(32)【優先日】2023-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(31)【優先権主張番号】18/216,942
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラヒム、ムハンマド ブクシュ ヌルール
(72)【発明者】
【氏名】バビウシュ、ミロスロー パウェル
(72)【発明者】
【氏名】スヴァロフス、アンドレイス
(57)【要約】
【課題】タービン発電機の過渡応答を改善するためのシステム及び方法
【解決手段】システムは、制御システムを含む。制御システムは、ガスタービンシステムを調整することによって発電機システムの運転を動的に安定化するように構成された機械的電力系統安定化装置(MPSS)システムを記憶するメモリを含んでおり、発電機システムは、ガスタービンシステムに機械的に結合している。制御システムは、メモリに接続されたプロセッサであって、MPSSが実行されるように構成されたプロセッサを含んでおり、MPSSは、発電機システムに電気的に結合した電力系統に起因する過渡事象を検出する。また、MPSSは、ガスタービンシステムを機械的に除負荷し、解消時間が経過するまで待機し、ガスタービンシステムに機械的に負荷を加える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御システムを備えるシステムであって、前記制御システムが、
ガスタービンシステムを調整することによって発電機システムの運転を動的に安定化するように構成された機械的電力系統安定化装置(MPSS)システムを記憶するメモリであって、前記発電機システムが前記ガスタービンシステムに機械的に結合している、メモリと、
前記メモリに通信可能に結合したプロセッサであって、前記MPSSが、
前記発電機システムに電気的に結合した電力系統に起因する過渡事象を検出するステップと、
前記ガスタービンシステムを機械的に除負荷するステップと、
解消時間が経過するまで待機するステップと、
前記ガスタービンシステムに機械的に負荷を加えるステップと
を実行するように構成されたプロセッサと
を備える、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、ガスタービンシステムの機械的除負荷によって、発電機システムの出力角度の振動を減衰させるMPSSを実行するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、発電機システムに電気的に結合した励磁システムを用いて過渡事象を検出するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記励磁システムが、負荷及び運転温度の変動下で、前記発電機システムの出力端子電圧を設定値に自動的に維持する自動電圧調整器(AVR)、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記過渡事象が、前記発電システムの負荷角度の最初の変化を表す最初の動揺過渡事象を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、ブローアウト弁を変調することによって前記ガスタービンシステムを除負荷するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記ガスタービンシステムの発電量を急速に低下させるためのトリップロジックを用いて前記ガスタービンシステムを除負荷するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記ガスタービンシステムの失火を防止しながら前記ガスタービンシステムを除負荷するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記解消時間が、規制当局によって設定された時間を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記ガスタービンシステムが航空機転用型ガスタービンを備える、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
システムであって、当該システムが、
燃料を回転動力に変換するように構成されたガスタービンシステムと、
前記ガスタービンシステムに機械的に結合し、かつ前記回転動力に基づいて電力を生成するように構成された発電機システムと、
ガスタービンコントローラであって、
前記発電機システムに電気的に結合した電力系統に起因する過渡事象を検出し、
前記ガスタービンシステムを機械的に除負荷し、
解消時間が経過するまで待機し、かつ
前記ガスタービンシステムに機械的に負荷を加える
ように構成されたカスタビンコントローラと
を備えるシステム。
【請求項12】
前記コントローラが、前記ガスタービンシステムの機械的除負荷によって前記発電システムの負荷角振動を減衰させるように構成されている、請求項11に記載のシステム。。
【請求項13】
前記コントローラが、前記発電機システムに電気的に結合した励磁システムを用いて過渡事象を検出するように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記過渡事象が、前記発電システムの負荷角の最初の変化を表す最初の動揺過渡事象を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラが、ブローアウト弁を変調すること、前記ガスタービンシステムの発電量を急速に低下させるためのトリップロジックを用いること、又はそれらの組合せによって、前記ガスタービンシステムを除負荷するように構成されている請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願で開示する技術は、タービンシステムに関するものであり、さらに具体的には、タービン発電機の過渡応答の改善に関するものである。
【0002】
ある種の発電システムは、ガスタービンシステムのようなタービンシステムで駆動し得る発電機及び分散型発電機を含むものがある。ガスタービンシステムは、例えば、発電機を回転させて電力を生成するのに適した動力を供給し得る。タービンシステム及び発電機システムは、ガスタービン速度、負荷、発電機電圧、無効電力潮流及び発電システム全体の安定性の制御のような、様々な制御機能をもたらすのに適した1以上のコントローラを含む。運転中、発電システムは、都市又は地域の電力系統のような電力系統に電気的に結合される。しかし、電力系統の特定の動作条件下では、過渡状態が起こることがある。過渡状態の取扱いを改善できれば有益である。
【発明の概要】
【0003】
以下、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明の幾つかの実施形態について要約する。これらの実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の可能な形態を簡単にまとめたものである。実際、本発明は、以下に記載する実施形態と同様のものだけでなく、異なる様々な実施形態を包含する。
【0004】
システムは、制御システムを含む。制御システムは、ガスタービンシステムを調整することによって発電機システムの運転を動的に安定化するように構成された機械的電力系統安定化装置(MPSS)システムを記憶するメモリを含んでおり、発電機システムは、ガスタービンシステムに機械的に結合している。本制御システムは、メモリに接続されたプロセッサであって、発電機システムに電気的に結合した電力系統に起因する過渡事象をMPSSシステムが検出するようにMPSSシステムを実行するように構成されたプロセッサを含む。MPSSシステムは、さらに、ガスタービンシステムを機械的に除負荷(デロード)し、解消時間が経過するまで待機し、ガスタービンシステムに機械的に負荷を加える。
【0005】
非一時的コンピュータ可読媒体はコンピュータ実行可能コードを格納しており、前記コードは、ガスタービンシステムを調整することによって発電機システムの運転を動的に安定化するように構成された機械式電力系統安定化装置(MPSS)システムを実行する命令を含んでおり、発電機システムは、ガスタービンシステムに機械的に結合している。MPSSシステムは、発電機システムに電気的に結合した電力系統に起因する過渡事象を検出する。MPSSシステムは、さらに、ガスタービンシステムを機械的に除負荷し、解消時間が経過するまで待機し、ガスタービンシステムに機械的に負荷を加える。
【0006】
システムは、燃料を回転動力に変換するように構成されたガスタービンシステムと、ガスタービンシステムに機械的に結合し、かつ回転動力に基づいて電力を生成するように構成された発電機システムとを含む。本システムは、ガスタービンコントローラをさらに含む。ガスタービンコントローラは、発電機システムに電気的に結合した電力系統に起因する過渡事象を検出し、ガスタービンシステムを機械的に除負荷するように構成されている。ガスタービンコントローラは、さらに、解消時間が経過するまで待機し、ガスタービンシステムに機械的に負荷を加えるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。
【
図1】発電機システムに機械的に結合したガスタービンシステムを有する発電システムの実施形態のブロック図。
【
図2】一実施形態に係る機械式電力系統安定化装置(MPSS)を含む
図1のシステムに含まれる制御システムの実施形態の概略図。
【
図3】一実施形態に係る
図2の発電システムの負荷角振動を示すグラフ。
【
図4】一実施形態に従って
図2のMPSSシステムの適用に適したプロセスの実施形態を示すフローチャート。
【
図5】一実施形態に従って
図2のMPSSシステムの適用に適したプロセスのさらなる詳細を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の1以上の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態を簡潔に説明するため、現実の実施に際してのあらゆる特徴について本明細書に記載しないこともある。実施化に向けての開発に際して、あらゆるエンジニアリング又は設計プロジェクトの場合と同様に、実施毎に異なる開発者の特定の目標(システム及び業務に関連した制約に従うことなど)を達成すべく、実施に特有の多くの決定を行う必要があることは明らかであろう。さらに、かかる開発努力は複雑で時間を要することもあるが、本明細書の開示内容に接した当業者にとっては日常的な設計、組立及び製造にすぎないことも明らかである。
【0009】
本発明の様々な実施形態の構成要素について紹介する際、単数形で記載したものは、その構成要素が1以上存在することを意味する。「備える」、「含む」及び「有する」という用語は、内包的なものであり、記載した構成要素以外の追加の要素が存在していてもよいことを意味する。
【0010】
本実施形態は、例えば、電力系統の過渡状態の際に起こり得る発電機の負荷角振動の減衰の動的機械的制御のためのシステム及び方法に関する。特に、機械式電力系統安定化装置(MPSS)システムは、電力系統が経験し得る過渡状態の際に、ガスタービンシステムに特定の機械的制御を適用するか否かを連続的かつ適応的に決定するために提供される。例えば、電力系統で三相短絡が起こりし、過渡状態をもたらすことがある。同様に、再生可能エネルギー源(風力、太陽光など)による発電は、電力系統の周波数変化(過渡事象など)に影響を与えて、発電システムの慣性喪失をもたらすおそれがある。こうして、過渡状態の発生源が特定の過渡変化(例えば閾値超又は閾値未満)を生じると、同期慣性が低下して、周波数条件の変化速度の増大を招くことがある。
【0011】
場合によっては、1以上のパラメータ(閾値、例えば特定の量の周波数変化及び/又は所定期間での特定の量の周波数変化)を超える過渡事象(過渡状態)は、MPSSシステムを作動させて、ガスタービンシステムの機械的制御(例えばガスタービンの回転を制御してガスタービンに機械的に結合した発電機の回転を制御すること)による特定のタイプの過渡事象(例えば最初の動揺過渡事象)を能動的に減衰させる。MPSSシステムは、発電システムを機械的に制御することによって、発電機端子での電圧不安定性/オーバーシュート/アンダーシュートを低減し、電力システム及び/又はグリッド電圧に不都合な問題を招いたおそれのあるトリップレベルを防止し得る。
【0012】
したがって、MPSSシステムを含む発電システムは、過渡事象を迅速に(例えば50ms未満で)動的に検出し、過渡事象が1以上の閾値を超えているか否かを判断し、過渡状態を解消するのに適した過渡応答(例えば過渡事象が経過するまで1、5、10、15秒間又はそれ以上応答)を機械的に提供するように動作し得る。これによって、電力系統が接続された電力システムの電圧安定性を高める。こうして、検出された過渡事象に基づいてガスタービン(及び接続された発電機)を機械的に調整する特定の制御動作を実行する動的能力をもって動作するMPSSシステムは、例えば発電機の端子電圧をその公称動作値に近づけることによって、接続される電力システムの電圧安定性を高める。こうして、電力システムの発電機端子での電圧不安定性/オーバーシュート又はアンダーシュートを回避し、例えば突然の過渡状態に起因するガスタービンのトリップ(及び付随する問題)を回避できる。
【0013】
本明細書で用いる「機械的発電システム安定性」という用語は、少なくとも、例えば定常状態動作点(例えば公称動作点)から、摂動、障害その他の電力系統への望ましくない影響の後の例えば1以上の他の機械的動作点(例えば弁設定、スロットル設定、案内翼設定、ポンプ設定)へと移行できる本願に記載の電力システム及び関連部品(例えば電力系統、発電機、タービンなど)の能力をいう。
【0014】
以上の事項を念頭において、
図1に示す例示的な発電システム10のような発電システムの実施形態を説明すると有用であろう。発電システム10は、タービン12、発電機14、励磁機16などの各種サブシステムを含む。タービン12(例えばガスタービン、蒸気タービン、水力タービン等)は、シャフト13を介して発電機14と連結し得る。幾つかの実施形態では、ガスタービン12は、非航空機転用型ガスタービンと比較して、軽量で慣性質量の小さい航空機転用型ガスタービンである。発電機14は、発電機励磁機16に通信可能に結合し得る。励磁機16は、発電機14の界磁巻線22に直流電流(DC)を供給し得る。特に、励磁機16は、発電機14の磁場を励起するために、直流界磁電流(例えば発電機14及び/又は他の同期機の界磁巻線22によって動作用の磁場を確立するために利用される電流)を供給し得る。例えば、励磁機16は、静止型(例えばパワーエレクトロニクス)又は回転型(例えばブラシ及び/又はブラシレス)励磁機であってもよい。他の実施形態では、励磁機16はバイパスしてもよく、電力出力を、発電機14の界磁巻線22に直接通電してもよい。同じく図示の通り、発電機14の出力端子は、交流(AC)ライン28を介して大規模なユーティリティ電力系統26に結合し得る。或いは発電機14の出力端子は、小型の産業用発電プラントに結合してもよい。
【0015】
発電システム10は、励磁システム24を含んでいてもよく、励磁システム24は、例えば、励磁システム24への1以上の入力で受信される測定パラメータ及び/又は測定パラメータの指標に基づいて、発電機14及び/又は励磁機16の各々に様々な制御パラメータを提供し得る。ある実施形態では、励磁システム24は、発電機14及び励磁機16の励磁制御として機能し得る。励磁システム24は、負荷及び運転温度が変動する状況下で、発電機14の出力端子電圧を設定値に自動的に維持するための自動電圧レギュレータ(AVR)としても機能し得る。励磁システム24は、1以上のコントローラ32及び1以上の電力変換器34を含んでいてもよい。電力変換器34は、例えば電力系統26などのソースから交流(AC)電力、直流電力又はそれらの組合せを受け取る、シリコン制御整流器(SCR)、サイリスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のような集積パワーエレクトロニクススイッチングデバイスのサブシステムを含んでいてもよい。励磁システム24は、母線29を介してこの電力を受け取ってもよく、それに基づいて励磁機16の界磁巻線30に電力、制御及び監視を提供し得る。したがって、励磁システム24及び励磁機16は、所望の出力(例えばグリッド電圧、力率、負荷周波数、トルク、速度、加速度など)に従って発電機14を駆動するために集合的に動作し得る。一例として、一実施形態では、励磁システム24は、General Electric社(米国ニューヨーク州スケネクタディ)から入手可能なEX2100e(登録商標)レギュレータなどの励磁制御システムであってもよい。
【0016】
ある実施形態では、電力系統26、タービン12及び発電機14は、例えば、発電機14による発電の過渡損失、電力ライン28の切替え、電力系統26の負荷変化、電力系統26の電気的故障などによる特定の障害の影響を受け易い。かかる障害は、タービン12及び/又は発電機14の動作周波数(例えばヨーロッパ及びアジアの大半の国では約50Hz、北米の国々では約60Hz)が、システム10の過渡及び/又は動的不安定性をもたらすおそれのある不都合な振動を起こしかねない。かかる過渡及び/又は動的不安定性は、発電機14並びにタービン12及び励磁機16を、定常状態動作点から過渡及び/又は動的動作点に移行させることがある。具体的には、電力系統26上の周波数偏差は、電力系統10全体で発電機14の回転子角動揺(例えば負荷角振動)を引き起こしかねない。さらに、従来の電力系統安定化器(CPSS)システム(例えば発電機14の回転子角振動を減衰させるために使用されるシステム)は、一般に線形の一定パラメータに従って構成し得るため、CPSSシステムは、本明細書に記載の機械式電力系統安定化装置MPSS技術とは異なり、過渡事象に対処し、トリップなしで発電システム10の連続運転を防止するために、タービンシステム12の挙動を機械的に変化させる。
【0017】
以下でさらに詳しく説明する通り、ある実施形態では、コントローラ32は、ガスタービンシステム12を動的かつ適応的に調整し、例えば発電機14の回転子の電力周波数振動を動的かつ適応的に調整するために実装し得る機械式電力系統安定器(MPSS)システム40(
図2に示す)を含んでいてもよい。MPSSは、トリップすることなく過渡状態を通して運転を継続するシステム10の能力を高め得る。
【0018】
次に
図2に移ると、
図2は、発電システム10(
図1に示す)に含まれるコントローラ32の実施形態の詳細なブロック図を示す。図に概略を示す通り、コントローラ32は、1以上のプロセッサ36及びメモリ38を含んでいてもよく、これらは、本明細書に記載の技術を実施するのに有用なオペレーティングシステム、ソフトウェアアプリケーション及びシステムなどをサポートするために集合的に使用し得る。特に、コントローラ32は、非一時的な機械可読媒体(例えばメモリ38及び/又は他のストレージ)に格納され、例えばコントローラ32に含まれる1以上のプロセッサ36によって実行されるコード又は命令を含んでいてもよい。プロセッサ36は、様々な発電機14運転状態パラメータ(例えば端子電圧、有効電力(P)、無効電力(Q)、力率、周波数など)及び/又はタービンシステム12運転パラメータ(例えばタービン速度、負荷(例えばメガワット単位)、燃焼温度、圧力、クリアランス(例えば回転部品と静止部品の間)、燃料流量(例えば燃料及び/又は空気などの酸化剤の流れ)、弁位置など)を受信し、MPSSシステム40による運転パラメータの制御(例えば1以上のプロセッサ36を介して)、例えばタービンシステム12のスロットル弁42、入口案内翼44、ブローアウト弁46及び他のアクチュエータ48の制御に使用し得る。
【0019】
例えば、
図1に関して上述したように、特定の負荷条件(例えば電力系統26の負荷需要の変化による)下では、タービン12、発電機14並びに発電システム10に含まれる他の部品は、過渡及び動的不安定性の影響を受け易い。特に、電力系統26の過渡状態は、発電機14の回転子角動揺(例えば振動)その他の過渡関連の問題を生じるおそれがある。そのため、MPSSシステム40(例えば1以上のプロセッサ36を介して実行される)は、タービンシステム12の運転の制御による機械的調整をもたらすのに使用し得る。
【0020】
ある実施形態では、MPSSシステム40は、ソフトウェアシステムであってもよいし、或いは他の実施形態では、例えば有効電力(P)(例えばMW)、無効電力(Q)(例えばkVar)、力率、周波数、端子電圧、タービン速度、タービン負荷、タービン圧力(圧縮機圧力、排気圧力など)、液体の流れ(酸化剤としての空気、ディーゼル、合成ガス、ガソリン、メタンガス、炭化水素燃料などの流れ)に基づいて、タービンシステム12の適切な運転パラメータを生じさせるのに使用し得るソフトウェアとハードウェアの組合せであってもよい。MPSSシステム40は、したがって、過渡運転に適した機械的調整を電力システム10が行えるようにする。
【0021】
図3は、時間経過を示すX軸102と発電機14の回転子角を度単位で表すY軸104のグラフ100を示す。過渡事象の際、発電機14は、同期性の喪失を経験しかねない。例えば、回転子角が変化すると、出力周波数が変化する。図示した実施形態は、回転子角が位置106にピークを有することを示す。この最初のピークは、最初の過渡動揺(例えばスイングアップ)の例に含まれる。
【0022】
場合によっては、最初の過渡動揺はトリップを招きかねない。すなわち、回転子角の変化及び/又は付随する問題は、励磁システム24及び/又はコントローラ32のようなシステムに、電力システム10及びそれに含まれるシステムのシャットダウンを開始させることがある。本明細書に記載の技術は、最初の過渡動揺126を速やかに検出し得る。例えば、励磁システム24は、General Electric社(米国ニューヨーク州スケネクタディ)から入手可能なEX2100e(登録商標)レギュレータのような励磁制御システムであってもよく、50ミリ秒(ms)以下で最初の過渡振幅を検出することができる過渡検出ロジックを含んでいる。本明細書に記載の技術は、同期性の損失を最小化又は防止するための発電システム10又は発電システム10の特定のシステム(例えばガスタービンシステム12)の機械的に調整に高速過渡検出を使用し得る。
【0023】
図4は、例えば、電力系統26の過渡状態の際に、ガスタービンシステム12の機械的調整に適したプロセス150の実施形態のフローチャートである。プロセス150は、メモリ38にコンピュータ命令として記憶され、プロセッサ36によって実行し得る。図示した実施形態では、プロセス150は、過渡事象を検出し得る(ブロック152)。例えば、励磁システム34は、
図3に示す最初の過渡振幅を検出する1以上のセンサ、例えば電圧センサ、電流センサ、インダクタンスセンサ、静電容量センサなどを含んでいてもよい。場合によっては、検出に要する時間は50ミリ秒未満、例えば平均30~40ミリ秒である。
【0024】
プロセス150は、次いで、ガスタービンシステム12を機械的に除負荷(ブロック154)し得る。例えば、プロセス150は、スロットル弁42を調整してガスタービン12への燃料吸入量を下げてもよい。他の調整としては、ガスタービン12による発電量を急速に下げるための、入口案内翼44又は同様の圧縮機セクション翼、ブローアウト弁46及び/又は他のアクチュエータ48(例えばポンプ、ソレノイド、スイッチ)の調整が挙げられる。場合によっては、発電量は毎秒150MW~毎秒250MWに低下する。
【0025】
幾つかの実施形態では、コントローラ32がGeneral Electric社(米国ニューヨーク州スケネクタディ)から入手可能なMarkシリーズのコントローラである場合、ガスタービンシステム12の除負荷の一貫として「Zonker」ロジックを使用し得る。他のコントローラでも同様のトリップロジックを使用し得る。例えば、Zonkerロジックは、ガスタービン運転中にガスタービンシステム12をトリップさせるのに使用し得る。しかし、プロセス150では、ガスタービンシステム12をトリップ又はシャットダウンさせずに、Zonkerロジック(又は他のトリップロジック)を使用し得る。例えば、燃料スロットル弁42は、(製造業者の推奨に従って)最小作動値に設定してもよく、高速ベントは、アクチュエータ48を介してマニホールド内の燃料を空にし、高圧ブリード及び/又は圧縮機案内翼の凍結は、ガスタービンシステム12の圧縮機セクション内の圧縮機負荷を増加させて、「失火(フレームアウト)」その他のガスタービンシステム12での燃料の燃焼の停止を起こさずに、シャフト出力を減少させることができる。したがって、ガスタービンシステム12は、失火を起こさずに、迅速に除負荷(ブロック154)(例えば毎秒150MW~250MW又はそれ以上)し得る。
【0026】
除負荷したガスタービンシステム12は、過渡事象の間運転を継続してもよく、そうして過渡事象が解消される(ブロック156)。幾つかの実施形態では、過渡事象は、規制に従って解消し得る。すなわち、ある規制規則では、例えば電力系統26における三相短絡に起因する過渡事象の際、発電システム10は、所定時間(例えば1~30秒間)、運転を継続する旨規定する。なお、発電システム10は、発電プラントにおける多数の発電システムの1であってもよい。例えば、1、2、3、4、5又はそれ以上の発電システム10を電力系統26に電気的に結合して、電力系統26への電力供給に使用してもよい。
【0027】
過渡事象が解消されると、プロセス150は、次いで、ガスタービンシステム12に機械的に負荷を加えてもよい(ブロック158)。例えば、プロセス150は、1以上のスロットル弁42を開き、翼44を介して酸化剤を追加し、1以上のブローアウト弁46を閉じ、及び/又はアクチュエータ48を操作して、ガスタービンシステム12への動力を増大させて、発電システム10の発電を増加させることによって、除負荷(ブロック154)を逆転し得る。こうして、本明細書に記載の技術は、特定の過渡状態を解消するのに適した機械的調整を提供し得る。
【0028】
図5は、ガスタービンシステム10の除負荷及び再負荷に用いることができるプロセス200を示すプロセス150のさらなる詳細のフローチャートである。プロセス200は、メモリ38にコンピュータ命令として記憶され、プロセッサ36によって実行し得る。図示した実施形態では、プロセス200は、機械的動力基準値(P_ref)を設定することによって開始し得る(ブロック202)。例えば、P_refを単位当たり1.0に設定できる。過渡事象(例えば最初の過渡動揺)が検出されると、検出待ち時間T
D(ブロック204)が発生し得る。検出待ち時間T
Dは、20~50ms、又は平均約30~40msとし得る。次に、プロセス200は、ガスタービンシステム12の発電量をランプダウンし得る(ブロック206)。
【0029】
幾つかの実施形態では、ユニット当たり-5.0のランプダウン率など、ランプダウン率を使用し得る。上述の通り、ランプダウンブロック(206)は、燃料スロットル弁42を(メーカーの推奨による)最小作動値に設定すること、アクチュエータ48を使用して高速ベントを介してマニホールド内の燃料を空にすること、高圧ブリード及び/又は圧縮機案内翼の凍結を使用して、ガスタービンシステム12の圧縮機セクション内の圧縮機負荷を増加させ、「失火」その他のガスタービンシステム12での燃料の燃焼の停止を起こさずに、シャフト出力を減少させることを含んでいてもよい。こうして、ガスタービンシステム12をランプダウンし得る(ブロック206)。
【0030】
したがって、過渡状態の際のガスタービンシステム12の除負荷運転に適した機械的動力(Pmech)208を達成し得る。故障状態が解消されると、最終的な機械的動力(Pfinal)210に到達し得る。Pfinalは、ガスタービンシステムが負荷又はランプアップする準備ができているときの電力を表し得る。プロセス200は、次いで、ガスタービンシステムをランプアップし得る(ブロック212)。例えば、ユニット当たり5.0のランプアップ率を使用して、ガスタービンシステム12をランプアップしてもよい。しかる後、プロセスは、ブロック202に戻ることができる。過渡(例えば最初の動揺過渡)の際にガスタービンシステム12を迅速に除負荷することによって、本明細書に記載の技術は、特定の電力系統の望ましくない事象(例えば三相短絡)の間、規制に従って発電システム10の運転を容易に継続できるようにする。
【0031】
本開示技術の実施形態の技術的効果は、発電機に接続されたガスタービンシステムを有する発電システムを含む。発電機は、電力系統に電力を供給する。特定のグリッド条件のため過渡事象が発生した場合、コントローラは過渡事象に対処すべくガスタービンを除負荷し、過渡事象の終了後にガスタービンを再負荷し得る。したがって、機械的調整は、同期性の維持を向上させつつ機械的出力低下をもたらすことができる。
【0032】
本開示技術の追加の態様を、以下の実施態様項に示す。
[実施態様1]
システムは、制御システムを含む。制御システムは、ガスタービンシステムを調整することによって発電機システムの運転を動的に安定化するように構成された機械的電力系統安定化装置(MPSS)システムを記憶するメモリを含んでおり、発電機システムは、ガスタービンシステムに機械的に結合している。本制御システムは、メモリに接続されたプロセッサであって、発電機システムに電気的に結合した電力系統に起因する過渡事象をMPSSシステムが検出するようにMPSSシステムを実行するように構成されたプロセッサを含む。MPSSシステムは、さらに、ガスタービンシステムを機械的に除負荷し、解消時間が経過するまで待機し、ガスタービンシステムに機械的に負荷を加える。
[実施態様2]
プロセッサは、ガスタービンシステムの機械的除負荷によって発電システムの負荷角振動を減衰させるようにMPSSを実行するように構成されている、実施態様項1に記載のシステム。
[実施態様3]
プロセッサは、発電機システムに電気的に結合した励磁システムを用いて過渡事象を検出するように構成されている、実施態様項1又は施態様項2に記載のシステム。
[実施態様4]
励磁システムは、負荷及び運転温度の変動下で、発電機システムの出力端子電圧を設定値に自動的に維持する自動電圧調整器(AVR)を備える、実施態様項1乃至実施態様項3のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様5]
過渡事象が、発電システムの負荷角の最初の変化を表す最初の動揺過渡事象を含む、実施態様項1乃至実施態様項4のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様6]
プロセッサは、ブローアウト弁を変調することによってガスタービンシステムを除負荷するように構成されている、実施態様項1乃至実施態様項5のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様7]
プロセッサは、ガスタービンシステムの発電量を急速に低下させるためのトリップロジックを用いてガスタービンシステムを除負荷するように構成されている、実施態様項1乃至実施態様項6のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様8]
プロセッサは、ガスタービンシステムの失火を防止しながらガスタービンシステムを除負荷するように構成されている、実施態様項1乃至実施態様項7のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様9]
解消時間が、規制当局の設定した時間を含む、実施態様項1乃至実施態様項8のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様10]
ガスタービンシステムが航空機転用型ガスタービンを含む、実施態様項1乃至実施態様項9のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様11]
非一時的コンピュータ可読媒体はコンピュータ実行可能コードを格納しており、前記コードは、ガスタービンシステムを調整することによって発電機システムの運転を動的に安定化するように構成された機械式電力系統安定化装置(MPSS)システムを実行する命令を含んでおり、発電機システムは、ガスタービンシステムに機械的に結合している。MPSSシステムは、発電機システムに電気的に結合した電力系統に起因する過渡事象を検出する。MPSSシステムは、さらに、ガスタービンシステムを機械的に除負荷し、解消時間が経過するまで待機し、ガスタービンシステムに機械的に負荷を加える。
[実施態様12]
MPSSシステムは、ガスタービンシステムの機械的除負荷によって発電機システムの負荷角振動を減衰させるように構成されている、実施態様項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[実施態様13]
MPSSシステムは、発電機システムに電気的に結合した励磁システムを用いて過渡事象を検出するように構成されている、実施態様項11又は実施態様項12に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[実施態様14]
過渡事象は、発電システムの負荷角の最初の変化を表す最初の動揺過渡事象を含む、実施態様項1乃至実施態様項13のいずれか1項に記載の非一過性のコンピュータ可読媒体。
[実施態様15]
MPSSシステムは、ブローアウト弁を変調すること、ガスタービンシステムの発電量を急速に低下させるためのトリップロジックを用いること、又はそれらの組合せによって、ガスタービンシステムを除負荷するように構成されている、実施態様項11乃至実施態様項14のいずれか1項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[実施態様16]
システムは、燃料を回転動力に変換するように構成されたガスタービンシステムと、ガスタービンシステムに機械的に結合し、かつ回転動力に基づいて電力を生成するように構成された発電機システムとを含む。本システムは、ガスタービンコントローラをさらに含む。ガスタービンコントローラは、発電機システムに電気的に結合した電力系統に起因する過渡事象を検出し、ガスタービンシステムを機械的に除負荷するように構成されている。ガスタービンコントローラは、さらに、解消時間が経過するまで待機し、ガスタービンシステムに機械的に負荷を加えるように構成される
[実施態様17]
コントローラは、ガスタービンシステムの機械的除負荷によって発電機システムの負荷角振動を減衰させるように構成されている、実施態様項16に記載のシステム。
[実施態様18]
コントローラは、発電機システムに電気的に結合した励磁システムを用いて過渡事象を検出するように構成されている、実施態様項16又は実施態様項17に記載のシステム。
[実施態様19]
過渡事象が、発電システムの負荷角の最初の変化を表す最初の動揺過渡事象を含む、実施態様項16乃至実施態様項18のいずれか1項に記載のシステム。
[実施態様20]
コントローラは、ブローアウト弁を変調すること、ガスタービンシステムの発電量を急速に低下させるためのトリップロジックを用いること、又はそれらの組合せによって、ガスタービンシステムを除負荷するように構成されている、実施態様項16乃至実施態様項19のいずれか1項に記載のシステム。
【0033】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、当業者が本発明を実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲と文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と非本質的な差しかない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【0034】
本明細書及び特許請求の範囲に記載された技術は、現在の技術分野を実証可能に改善する物的対象及び実用的な具体例に参照かつ適用され、それ自体、抽象的なものでも、無体的なものでも、純粋理論的なものでもない。ただし、それ以外の形式で記載された構成要素を含む請求項については、その構成要素の解釈は米国特許法112(f)条に拠らない。さらに、いずれかの請求項に「[機能]を[実行]するための手段」又は「[機能]を[実行]するためのステップ」と記載された1以上の構成要素が含まれている場合、かかる構成要素は米国特許法112(f)条に基づいて解釈される。
【符号の説明】
【0035】
10 発電視して無
12 タービン
13 シャフト
14 発電機
16 励磁機
22 界磁巻線
24 励磁システム
32 コントローラ
34 電力変換器
36 プロセッサ
38 メモリ
40 MPSSシステム
42 スロットル弁
44 入口案内翼
46 ブローアウト弁
48 アクチュエータ
【外国語明細書】