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特開2024-177090車両用無段変速トランスミッション装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177090
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両用無段変速トランスミッション装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 9/18 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
F16H9/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085465
(22)【出願日】2024-05-27
(31)【優先権主張番号】112121668
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】597127029
【氏名又は名称】光陽工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】王俊凱
【テーマコード(参考)】
3J050
【Fターム(参考)】
3J050AA02
3J050BA03
3J050BB07
3J050BB08
3J050CC04
3J050CC06
3J050CC07
3J050DA01
(57)【要約】
【課題】車両の一時停止からの再発進がスムーズになる車両用無段変速トランスミッション装置の提供。
【解決手段】車両のメインシャフト及びサブシャフトに配置される車両用無段変速トランスミッション装置であって、カム手段を構成する案内溝32は、伝達するトルクが最も強い時に係合ピン33に接する低速端32Aと、伝達するトルクが最も弱い時に係合ピン33に接する高速端32Bと、車両が加速する際、係合ピン33に接するように低速端32Aから高速端32Bに延伸する加速周縁部321と、加速周縁部321の反対側において低速端32Aから高速端32Bに延伸し、車両が減速する際に係合ピン33に接する減速周縁部322と、を有し、車両が加速する際と減速する際とにおける係合ピン33の案内溝32内における伝動軌跡が異なる。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のメインシャフト及びサブシャフトに配置される車両用無段変速トランスミッション装置であって、
前記メインシャフトに配置されるメインベルトホイール手段と、前記サブシャフトに配置されるサブベルトホイール手段と、
前記メインベルトホイール手段と前記サブベルトホイール手段とを連動させるように取り付けられるベルトと、を備え、
前記サブベルトホイール手段は、
前記サブシャフトの延伸方向に沿う軸方向に沿って前記サブシャフトに対して回転可能且つ相対移動ができないように前記サブシャフトに取り付けられると共に、内側スリーブを有するサブ固定ホイールと、
前記内側スリーブとの相対位置の変更で前記メインベルトホイール手段から前記サブベルトホイール手段に伝達するトルクを変換する外側スリーブを有するよう、前記軸方向に沿って移動可能且つ回転可能に前記内側スリーブに取り付けられるサブ可動ホイールと、
前記内側スリーブと前記外側スリーブとのいずれか1つに形成される少なくとも1つの案内溝及び前記内側スリーブと前記外側スリーブとにおける前記案内溝が形成されていない1つに配置されていると共に、前記案内溝内に嵌め込まれて前記案内溝に対応して作動することにより、前記内側スリーブと前記外側スリーブの相対位置を調整して前記メインベルトホイール手段から前記サブベルトホイール手段に伝達するトルクを制御する少なくとも1つの係合ピンを有するカム手段と、を有し、
前記案内溝は、
前記メインベルトホイール手段から前記サブベルトホイール手段に伝達するトルクが最も強い時に、前記係合ピンに接する低速端と、
前記メインベルトホイール手段から前記サブベルトホイール手段に伝達するトルクが最も弱い時に、前記係合ピンに接する高速端と、
前記低速端から前記高速端に延伸すると共に、前記車両が加速する際に、前記係合ピンに接する加速周縁部と、
前記加速周縁部の反対側において前記低速端から前記高速端に延伸すると共に、前記車両が減速する際に、前記係合ピンに接する減速周縁部と、を有し、
前記車両が加速する際に、前記係合ピンは前記加速周縁部に接しながら、加速伝動軌跡に沿って前記案内溝内で移動し、
前記車両が減速する際に、前記係合ピンは前記減速周縁部に接しながら、前記加速伝動軌跡と異なる減速伝動軌跡に沿って前記案内溝内で移動するように構成される、車両用無段変速トランスミッション装置。
【請求項2】
前記減速周縁部は、前記高速端側にある第1の減速周縁と、前記低速端側にある第2の減速周縁とを有し、
前記第1の減速周縁と前記第2の減速周縁との形状は、前記車両が減速する際に、前記係合ピンが前記高速端側から前記減速周縁部に接しながら前記低速端へ移動する途中において、前記第1の減速周縁に接する時の前記減速伝動軌跡の前記軸方向と成す第1の減速角度が、前記第2の減速周縁に接する時の前記減速伝動軌跡の前記軸方向と成す第2の減速角度より大きくなるように形成されている、請求項1に記載の車両用無段変速トランスミッション装置。
【請求項3】
前記案内溝における前記加速周縁部及び前記第1の減速周縁の形状は、前記車両が加速する際に、前記係合ピンが前記加速周縁部に接しながら移動する前記加速伝動軌跡が真っすぐに延伸すると共に、前記係合ピンの前記軸方向と成す加速角度が、前記第1の減速角度と同じまたは大なりであるように形成されている、請求項2に記載の車両用無段変速トランスミッション装置。
【請求項4】
前記案内溝における前記加速周縁部と前記第1の減速周縁と前記第2の減速周縁との形状は、
前記加速角度及び前記第1の減速角度がいずれも45~70度の範囲内にあり、そして前記第2の減速角度が0~45度の範囲内にあるように形成される、請求項3に記載の車両用無段変速トランスミッション装置。
【請求項5】
前記加速周縁部は、前記低速端側にある第1の加速周縁と、前記高速端側にある第2の加速周縁と、を有し、
前記第1の加速周縁と前記第2の加速周縁との形状は、
前記車両が発進する時に、前記係合ピンが前記低速端から前記加速周縁部に接しながら前記高速端へ移動する途中において、前記第1の加速周縁に接する時の前記加速伝動軌跡の前記軸方向と成す第1の加速角度が、前記係合ピンが前記第2の加速周縁に接する時の前記加速伝動軌跡の前記軸方向と成す第2の加速角度より大きくなるように形成され、
前記減速周縁部は、前記第1の減速周縁と前記第2の減速周縁との間にある中間減速周縁を更に有し、
前記中間減速周縁の形状は、
前記車両が減速して前記係合ピンが前記高速端側から前記減速周縁部に接しながら前記低速端へ移動する途中において、前記中間減速周縁に接する時の前記減速伝動軌跡の前記軸方向と成す中間の減速角度が前記第1の減速角度より大きくなるように形成されている、請求項2に記載の車両用無段変速トランスミッション装置。
【請求項6】
前記減速周縁部が有する前記第1の減速周縁と前記第2の減速周縁と前記中間減速周縁の形状は、前記第2の減速角度が前記中間の減速角度及び前記第1の減速角度より小さくなるように形成されている、請求項5に記載の車両用無段変速トランスミッション装置。
【請求項7】
前記加速周縁部と前記減速周縁部は、前記第2の加速角度と前記第1の減速角度とが同じに成るように形成されており、且つ、前記第1の加速角度が45~70度の範囲内にあり、そして前記第2の減速角度が0~45度の範囲内にあるように形成される、請求項5に記載の車両用無段変速トランスミッション装置。
【請求項8】
前記案内溝の前記低速端は、
前記加速周縁部に隣接すると共に、前記車両が発進する直前に前記係合ピンに接触する第1の低速接触部と、
前記減速周縁部に隣接すると共に、前記車両が減速しきった時に前記係合ピンに接触する第2の低速接触部と、
前記第1の低速接触部と前記第2の低速接触部との間に介在する中間部と、を有するように形成されている、請求項1に記載の車両用無段変速トランスミッション装置。
【請求項9】
前記中間部は、前記軸方向に略直交するように形成されている、請求項8に記載の車両用無段変速トランスミッション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のトランスミッション装置に関し、特に車両用無段変速トランスミッション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1図2に示されるように、特許文献1に示される従来の車両用無段変速トランスミッション装置(CVT)の一例においては、トルクカム11とクラッチ手段12と平面回転手段13とを有するサブシャフト機構1が構成される。この平面回転手段13に複数の係合ピン131が配置され、また、トルクカム11には各係合ピン131にそれぞれ対応して受け入れる案内溝111が配置されている。この構成により、ベルト(図示せず)がメインシャフト(図示せず)の回転に従いサブシャフトを駆動する際に、サブシャフトに取り付けられるベルトの巻きかけ半径を変えることで、伝達できるトルクを変える無段階変速を可能にする。
【0003】
図2図3に示されるように、トルクカム11に形成される案内溝111は高速エリア113と低速エリア114とに分けられると共に、係合ピン131は車両の加速もしくは減速に従って高速エリア113と低速エリア114とを行き来するように案内溝111内で相対移動を行う。このとき車両が加速及び減速する際の係合ピン131の案内溝111に対する相対移動の軌跡の曲線は一致している。
【0004】
また、燃費の節約が重視される車両では、トルクカム11に形成される案内溝111の形状は係合ピン131の案内溝111に対する相対移動の軌跡の曲がり具合がきつくなるように設定される。しかしこれはエネルギーの節約につながる一方、係合ピン131が案内溝111に対して素早く相対移動することができなくなる。そのため車両の一時停止から再発進する際に係合ピン131の戻りが遅れて中速エリアに留まっている状態で発進することになり、車両の発進に時間がかかることがある。
【0005】
従って、改善の余地が残されていると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】台湾特許出願公開第201118276A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、本発明は上記問題点を改善する車両用無段変速トランスミッション装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明は車両のメインシャフト及びサブシャフトに配置される車両用無段変速トランスミッション装置であって、
前記メインシャフトに配置されるメインベルトホイール手段と、前記サブシャフトに配置されるサブベルトホイール手段と、
前記メインベルトホイール手段と前記サブベルトホイール手段とを連動させるように取り付けられるベルトと、を備え、
前記サブベルトホイール手段は、
前記サブシャフトの延伸方向に沿う軸方向に沿って前記サブシャフトに対して回転可能且つ相対移動ができないように前記サブシャフトに取り付けられると共に、内側スリーブを有するサブ固定ホイールと、
前記内側スリーブとの相対位置の変更で前記メインベルトホイール手段から前記サブベルトホイール手段に伝達するトルクを変換する外側スリーブを有するよう、前記軸方向に沿って移動可能且つ回転可能に前記内側スリーブに取り付けられるサブ可動ホイールと、
前記内側スリーブと前記外側スリーブとのいずれか1つに形成される少なくとも1つの案内溝及び前記内側スリーブと前記外側スリーブとにおける前記案内溝が形成されていない1つに配置されていると共に、前記案内溝内に嵌め込まれて前記案内溝に対応して作動することにより、前記内側スリーブと前記外側スリーブの相対位置を調整して前記メインベルトホイール手段から前記サブベルトホイール手段に伝達するトルクを制御する少なくとも1つの係合ピンを有するカム手段と、を有し、
前記案内溝は、前記メインベルトホイール手段から前記サブベルトホイール手段に伝達するトルクが最も強い時に、前記係合ピンに接する低速端と、前記メインベルトホイール手段から前記サブベルトホイール手段に伝達するトルクが最も弱い時に、前記係合ピンに接する高速端と、前記低速端から前記高速端に延伸すると共に、前記車両が加速する際に、前記係合ピンに接する加速周縁部と、前記加速周縁部の反対側において前記低速端から前記高速端に延伸すると共に、前記車両が減速する際に、前記係合ピンに接する減速周縁部と、を有し、前記車両が加速する際に、前記係合ピンは前記加速周縁部に接しながら、加速伝動軌跡に沿って前記案内溝内で移動し、前記車両が減速する際に、前記係合ピンは前記減速周縁部に接しながら、前記加速伝動軌跡と異なる減速伝動軌跡に沿って前記案内溝内で移動するように構成される、車両用無段変速トランスミッション装置を提供する。
【0009】
本発明の一部の実施例では、前記減速周縁部は、前記高速端側にある第1の減速周縁と、前記低速端側にある第2の減速周縁とを有し、前記第1の減速周縁と前記第2の減速周縁との形状は、
前記車両が減速する際に、前記係合ピンが前記高速端側から前記減速周縁部に接しながら前記低速端へ移動する途中において、前記第1の減速周縁に接する時の前記減速伝動軌跡の前記軸方向と成す第1の減速角度が、前記第2の減速周縁に接する時の前記減速伝動軌跡の前記軸方向と成す第2の減速角度より大きくなるように形成されている。
【0010】
本発明の一部の実施例では、前記案内溝における前記加速周縁部及び前記第1の減速周縁の形状は、前記車両が加速する際に、前記係合ピンが前記加速周縁部に接しながら移動する前記加速伝動軌跡が真っすぐに延伸すると共に、前記係合ピンの前記軸方向と成す加速角度が、前記第1の減速角度と同じまたは大なりであるように形成されている。
【0011】
本発明の一部の実施例では、前記案内溝における前記加速周縁部と前記第1の減速周縁と前記第2の減速周縁との形状は、前記加速角度及び前記第1の減速角度がいずれも45~70度の範囲内にあり、そして前記第2の減速角度が0~45度の範囲内にあるように形成される。
【0012】
本発明の一部の実施例では、前記加速周縁部は、前記低速端側にある第1の加速周縁と、前記高速端側にある第2の加速周縁と、を有し、
前記第1の加速周縁と前記第2の加速周縁との形状は、前記車両が発進する時に、前記係合ピンが前記低速端から前記加速周縁部に接しながら前記高速端へ移動する途中において、前記第1の加速周縁に接する時の前記加速伝動軌跡の前記軸方向と成す第1の加速角度が、前記係合ピンが前記第2の加速周縁に接する時の前記加速伝動軌跡の前記軸方向と成す第2の加速角度より大きくなるように形成され、前記減速周縁部は、前記第1の減速周縁と前記第2の減速周縁との間にある中間減速周縁を更に有し、前記中間減速周縁の形状は、前記車両が減速して前記係合ピンが前記高速端側から前記減速周縁部に接しながら前記低速端へ移動する途中において、前記中間減速周縁に接する時の前記減速伝動軌跡の前記軸方向と成す中間の減速角度が前記第1の減速角度より大きくなるように形成されている。
【0013】
本発明の一部の実施例では、前記減速周縁部が有する前記第1の減速周縁と前記第2の減速周縁と前記中間減速周縁の形状は、前記第2の減速角度が前記中間の減速角度及び前記第1の減速角度より小さくなるように形成されている。
【0014】
本発明の一部の実施例では、前記加速周縁部と前記減速周縁部は、前記第2の加速角度と前記第1の減速角度とが同じに成るように形成されており、且つ、前記第1の加速角度が45~70度の範囲内にあり、そして前記第2の減速角度が0~45度の範囲内にあるように形成される。
【0015】
本発明の一部の実施例では、前記案内溝の前記低速端は、前記加速周縁部に隣接すると共に、前記車両が発進する直前に前記係合ピンに接触する第1の低速接触部と、
前記減速周縁部に隣接すると共に、前記車両が減速しきった時に前記係合ピンに接触する第2の低速接触部と、
前記第1の低速接触部と前記第2の低速接触部との間に介在する中間部と、を有するように形成されている。
【0016】
本発明の一部の実施例では、前記中間部は、前記軸方向に略直交するように形成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0018】
(1) 車両が停止する直前に、係合ピンが第2の減速周縁により決められた軌跡に沿って移動し、これによりベルトのスピードの復帰に有利な効果が得られる。
(2) また、ベルトがクランクケースに当たる可能性を下げることができる。
(3) 更に、低張力の圧縮ばねを使用して、伝動の効率及び耐久性を高めることが可能である。
(4) 更にまた、燃費節約の観点に基づき、スロットル開度が低い場合では、車両を駆動する回転数を抑えることができる。
(5) この他、加速伝動軌跡と減速伝動軌跡が異なるので、車両の一時停止からの再発進がスムーズになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来の車両用無段変速機構におけるサブシャフト機構の構成例が示される分解斜視図である。
図2】同従来の車両用無段変速機構におけるサブシャフト機構が有するトルクカムの構成が示される斜視図である。
図3図2に示されるトルクカムに形成される案内溝の形状が示される説明図である。
図4】本発明の車両用無段変速トランスミッション装置の第1の実施例がアイドル時のエンジンに対応する状態が示される説明図である。
図5】本発明の車両用無段変速トランスミッション装置の第1の実施例が最高速走行中のエンジンに対応する状態が示される断面図である。
図6】同第1の実施例が有するサブベルトホイール手段の構成が示される説明図である。
図7】同サブベルトホイール手段が有するサブ可動ホイール及び複数の案内溝が示される一部拡大説明図である。
図8】同第1の実施例が有するカム手段の構成が示される展開説明図である。
図9】同第1の実施例中における案内溝の構成が示される説明図である。
図10】同第1の実施例中における案内溝の変化例が示される説明図である。
図11】本発明の車両用無段変速トランスミッション装置の第2の実施例が有する案内溝の構成が示される説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下は図面を参照して本発明の各実施例について詳しく説明するが、異なる実施例において、同等する役割を発揮する構成要素に関しては、その構造が全く一致ではない場合においても、同じ符号が付けられる場合があることを理解すべきである。また、以下の説明では図面を基準として「上」「下」などの用語が用いられるが、これらは理解しやすいように説明する都合上に用いられるものであり、本発明の実施方法や権利の範囲を制限するものではないことも理解すべきである。
【0021】
図4図8に本発明の車両用無段変速トランスミッション装置の第1の実施例が示されている。図示するように、第1の実施例では車両のメインシャフト8及びサブシャフト9に配置され、且つ、メインシャフト8に配置されるメインベルトホイール手段2と、サブシャフト9に配置されるサブベルトホイール手段3と、メインベルトホイール手段2とサブベルトホイール手段3とを連動させるように掛け渡されるベルト4とを備える。
【0022】
サブベルトホイール手段3は、図6に示すように、サブ固定ホイール30と、サブ可動ホイール31と、圧縮ばね34と、カム手段とを有する。この第1の実施例において、サブ固定ホイール30は、サブシャフト9の延伸方向に沿う軸方向A(図8)に沿ってサブシャフト9に対して回転可能、且つ、相対移動ができないようにサブシャフト9に取り付けられると共に、内側スリーブ301(図6)を有する。サブ可動ホイール31は、内側スリーブ301との相対位置の軸方向Aに沿った変更でメインベルトホイール手段2からサブベルトホイール手段3に伝達するトルクを変換する外側スリーブ311を有するよう、軸方向Aに沿って移動可能、且つ、回転可能に内側スリーブ301に取り付けられる。
【0023】
図6図7に示されるように、この第1の実施例におけるカム手段は、サブ可動ホイール31を所定の経路に沿って移動させるために用いられるものであり、外側スリーブ311に形成される複数の案内溝32と、内側スリーブ301に形成されると共に、案内溝32内に嵌め込まれて案内溝32に対応して作動することで内側スリーブ301と外側スリーブ311の相対位置を調整してメインベルトホイール手段2からサブベルトホイール手段3に伝達するトルクを制御する複数の係合ピン33と、を有する。また、本発明としては、内側スリーブ301に案内溝32を形成し、そして外側スリーブ311に係合ピン33を形成する構成を採用することもできる。
【0024】
図4図5図6図8に示されるように、この第1の実施例における各案内溝32はいずれも以下のように形成されている。すなわち、案内溝32は、メインベルトホイール手段2からサブベルトホイール手段3に伝達するトルクが最も強い時に係合ピン33に接する低速端32Aと、メインベルトホイール手段2からサブベルトホイール手段3に伝達するトルクが最も弱い時に係合ピン33に接する高速端32Bと、低速端32Aから高速端32Bに延伸すると共に、車両が加速する際に係合ピン33に接する加速周縁部321と、加速周縁部321の反対側において低速端32Aから高速端32Bに延伸すると共に、車両が減速する際に係合ピン33に接する減速周縁部322と、を有する。そして車両が加速する際に係合ピン33は加速周縁部321に接しながら加速伝動軌跡に沿って案内溝32内で移動し、車両が減速する際に係合ピン33は減速周縁部322に接しながら加速伝動軌跡と異なる減速伝動軌跡に沿って案内溝32内で移動するように構成されている。
【0025】
特に、この実施例において、図8及び図9に示されるように、減速周縁部322は、高速端32B側にある第1の減速周縁3222と、低速端32A側にある第2の減速周縁3221とを有する。第1の減速周縁3222と第2の減速周縁3221との形状は、車両が減速する際に、係合ピン33が高速端32B側から減速周縁部322に接しながら低速端32Aへ移動する途中において、第1の減速周縁3222に接する時の減速伝動軌跡の軸方向Aと成す第1の減速角度α1(図8)が、第2の減速周縁3221に接する時の減速伝動軌跡の軸方向Aと成す第2の減速角度α2(図9)より大きくなるように形成されている。
【0026】
また、案内溝32における加速周縁部321及び第1の減速周縁3222の形状は、車両が加速する際に、係合ピン33が加速周縁部321に接しながら移動する加速伝動軌跡が真っすぐに延伸すると共に、係合ピン33の軸方向Aと成す加速角度θが第1の減速角度α1と同じまたは大なりであるように形成されている。
案内溝32における加速周縁部321と第1の減速周縁3222と第2の減速周縁3221との形状は、加速角度θ及び第1の減速角度α1がいずれも45~70度(例えば60度など)の範囲内にあり、そして第2の減速角度α2が0~45(例えば20度など)の範囲内にあるように形成される。
【0027】
図6図9に示されるように、この第1の実施例における案内溝32は、減速周縁部322に形成される第1の減速周縁3222と第2の減速周縁3221の他、低速端32Aには加速周縁部321に隣接すると共に車両が発進する直前に係合ピン33に接触する第1の低速接触部32A1と、減速周縁部322に隣接すると共に車両が減速しきった時に係合ピン33に接触する第2の低速接触部32A2と、第1の低速接触部32A1と第2の低速接触部32A2との間に介在する中間部32A3と、が形成される。中間部32A3は、軸方向Aに略直交するように形成されているため、係合ピン33が第1の低速接触部32A1に接触する時のサブシャフト9の軸方向Aにおける位置と、第2の低速接触部32A2に接触する時のサブシャフト9の軸方向Aにおける位置とはほぼ一致している。
【0028】
図6図10に示されるように、この第1の実施例の変化例において、案内溝32は、係合ピン33が第1の低速接触部32A1に接触する時のサブシャフト9の径方向Rにおける位置と、第2の低速接触部32A2に接触する時のサブシャフト9の径方向Rにおける位置とがほぼ一致するように形成されている。
【0029】
図11に示されるように、本発明の車両用無段変速トランスミッション装置の第2の実施例において、加速周縁部321は、低速端32A側にある第1の加速周縁3211と、高速端32B側にある第2の加速周縁3212と、を有する。第1の加速周縁3211と第2の加速周縁3212との形状は、車両が発進する時に係合ピン33が低速端32Aから加速周縁部321に接しながら高速端32Bへ移動する途中において、第1の加速周縁3211に接する時の加速伝動軌跡の軸方向Aと成す第1の加速角度β1が、第2の加速周縁3212に接する時の加速伝動軌跡の軸方向Aと成す第2の加速角度β2より大きくなるように形成されている。減速周縁部322は、第1の減速周縁3222と第2の減速周縁3221との間にある中間減速周縁3223を更に有している。中間減速周縁3223の形状は、車両が減速して係合ピン33が高速端32B側から減速周縁部322に接しながら低速端32Aへ移動する途中において、中間減速周縁3223に接する時の減速伝動軌跡の軸方向Aと成す中間の減速角度α3が第1の減速角度α1より大きくなるように形成されている。
【0030】
この第2の実施例において、加速周縁部321と減速周縁部322は、第2の加速角度β2と第1の減速角度α1とが同じに成るように形成されており、且つ、第1の加速角度β1は45~70度(例えば60度など)の範囲内にあり、そして第2の減速角度α2が0~45度(例えば20度など)の範囲内にあるように形成される。
【0031】
また、中間減速周縁3223は中間の減速角度α3が60度などになるように形成され、そして減速周縁部322の第1の減速周縁3222は、第1の減速角度α1が例えば50度などになるように形成されることもできる。
【0032】
また、第2の実施形態における減速周縁部322の第1の減速周縁3222と中間減速周縁3223とは、中間の減速角度α3と第1の減速角度α1とが同じであるように、すなわち第1の減速周縁3222と中間減速周縁3223とが真っすぐに連続するように形成されることも可能である。この場合、中間の減速角度α3と第1の減速角度α1は50度などに設定されることができる。
【0033】
以上をまとめると、本発明の車両用無段変速トランスミッション装置は、実施例により少なくとも以下の利点を有する。
【0034】
(1) まず、車両が停止する直前に、係合ピン33が第2の減速周縁3221により決められた軌跡に沿って移動し、これによりベルト4のスピードの復帰に有利な効果が得られる。
(2) また、ベルト4がクランクケースに当たる可能性を下げることができる。
更に、低張力の圧縮ばね34を使用して、伝動の効率及び耐久性を高めることが可能である。
(3) 更にまた、燃費節約の観点に基づき、スロットル開度が低い場合では、車両を駆動する回転数を抑えることができる。
(4) この他、加速伝動軌跡と減速伝動軌跡が異なるので、車両の一時停止からの再発進がスムーズになる。
【0035】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
2 メインベルトホイール手段
3 サブベルトホイール手段
30 サブ固定ホイール
301 内側スリーブ
31 サブ可動ホイール
311 外側スリーブ
32 案内溝
32A 低速端
32B 高速端
321 加速周縁部
3211 第1の加速周縁
3212 第2の加速周縁
322 減速周縁部
3221 第2の減速周縁
3222 第1の減速周縁
3223 中間減速周縁
32A1 第1の低速接触部
32A2 第2の低速接触部
32A3 中間部
33 係合ピン
34 圧縮ばね
4 ベルト
8 メインシャフト
9 サブシャフト
A 軸方向
R 径方向
θ 加速角度
α1 第1の減速角度
α2 第2の減速角度
α3 中間の減速角度
β1 第1の加速角度
β2 第2の加速角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11