(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177091
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】血管セグメンテーション装置、血管セグメンテーション方法、医用画像処理装置、及び、深層学習モデル生成装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20241212BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20241212BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241212BHJP
G06T 7/11 20170101ALI20241212BHJP
【FI】
G06T7/00 612
A61B6/03 560T
A61B6/03 560J
A61B5/00 G
G06T7/00 350C
G06T7/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086158
(22)【出願日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】202310670979.2
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5, Yiheyuan Road, Haidian District, Beijing 100871, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ ビン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン リ
(72)【発明者】
【氏名】ザォウ ヂィエ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヅゥファン
【テーマコード(参考)】
4C093
4C117
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA23
4C093DA02
4C093FD05
4C093FF07
4C093FF16
4C093FF20
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4C093FF28
4C093FG13
4C117XB09
4C117XE44
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4C117XK04
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4C117XK09
4C117XR07
4C117XR08
4C117XR09
5L096BA06
5L096BA13
5L096EA02
5L096FA02
5L096HA11
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】医用画像において血管と組織のコントラストが高くない場合においても、血管セグメンテーションを高精度に行い、セグメンテーション結果における血管の接続性を改善すること。
【解決手段】本実施形態に係る血管セグメンテーション装置は、画像取得部と、深層学習モデル取得部と、セグメンテーション部と、を備える。前記画像取得部は、複数枚の医用画像を取得する。前記深層学習モデル取得部は、前記医用画像に基づいて、中心線強調損失関数、統計的形状制約損失関数を用いた深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを取得する。前記セグメンテーション部は、前記訓練済み深層学習モデルに基づいて、取得された対象医用画像をセグメンテーションすることにより、血管に関するセグメンテーション結果を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の医用画像を取得する画像取得部と、
前記医用画像に基づいて、中心線強調損失関数、統計的形状制約損失関数を用いた深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを取得する深層学習モデル取得部と、
前記訓練済み深層学習モデルに基づいて、取得された対象医用画像をセグメンテーションすることにより、血管に関するセグメンテーション結果を得るセグメンテーション部と、
を備える血管セグメンテーション装置。
【請求項2】
前記セグメンテーション結果に対して、管状物フィルタリングを用いて管状物特徴を抽出し、強調された管状物特徴の特徴領域を取得し、領域拡張法を用いて管状物特徴を接続させて、特徴領域強調後のセグメンテーション結果を得る特徴領域強調部
をさらに備える請求項1に記載の血管セグメンテーション装置。
【請求項3】
前記セグメンテーション結果に対して、画像領域で前記セグメンテーション結果における遊離血管セグメントについて接続性修復処理を行って、画像領域強調後のセグメンテーション結果を得る画像領域強調部
をさらに備える請求項1に記載の血管セグメンテーション装置。
【請求項4】
前記セグメンテーション結果に対して、画像領域で前記セグメンテーション結果における遊離血管セグメントについて接続性修復処理を行って、画像領域強調後のセグメンテーション結果を得る画像領域強調部
をさらに備える請求項2に記載の血管セグメンテーション装置。
【請求項5】
前記セグメンテーション結果に対して、形態学的画像処理を行い、最終的なセグメンテーション結果を得る形態学的処理部
をさらに備える請求項1に記載の血管セグメンテーション装置。
【請求項6】
前記特徴領域強調後のセグメンテーション結果に対して、形態学的画像処理を行い、最終的なセグメンテーション結果を得る形態学的処理部
をさらに備える請求項2に記載の血管セグメンテーション装置。
【請求項7】
前記画像領域強調後のセグメンテーション結果に対して、形態学的画像処理を行い、最終的なセグメンテーション結果を得る形態学的処理部
をさらに備える請求項3に記載の血管セグメンテーション装置。
【請求項8】
前記画像領域強調後のセグメンテーション結果に対して、形態学的画像処理を行い、最終的なセグメンテーション結果を得る形態学的処理部
をさらに備える請求項4に記載の血管セグメンテーション装置。
【請求項9】
取得された複数枚の前記医用画像に対して前処理を行い、標準化医用画像を得る前処理部
をさらに備え、
前記深層学習モデル取得部は、前記標準化医用画像に基づいて、前記中心線強調損失関数、前記統計的形状制約損失関数を用いた深層学習モデル訓練を行って得られた前記訓練済み深層学習モデルを取得する、
請求項1に記載の血管セグメンテーション装置。
【請求項10】
前記深層学習モデル取得部は、Dice係数損失関数、クロスエントロピー損失関数、前記中心線強調損失関数及び前記統計的形状制約損失関数を加重和した統合損失関数を用いて深層学習モデル訓練を行って得られた前記訓練済み深層学習モデルを取得する、
請求項1に記載の血管セグメンテーション装置。
【請求項11】
前記特徴領域強調部は、前記セグメンテーション結果に対して、ヘッセ行列を適用して前記管状物特徴を抽出する、
請求項2に記載の血管セグメンテーション装置。
【請求項12】
複数枚の医用画像を取得する画像取得ステップと、
前記医用画像に基づいて、中心線強調損失関数、統計的形状制約損失関数を用いた深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを取得する深層学習モデル取得ステップと、
前記訓練済み深層学習モデルに基づいて、取得された対象医用画像をセグメンテーションすることにより、血管に関するセグメンテーション結果を得るセグメンテーションステップと、
を含む血管セグメンテーション方法。
【請求項13】
対象医用画像を取得する対象画像取得部と、
請求項1~11のいずれか一項に記載の血管セグメンテーション装置と、
前記セグメンテーション結果を出力する出力部と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項14】
複数枚の医用画像を取得する画像取得部と、
前記医用画像に基づいて、中心線強調損失関数、統計的形状制約損失関数を用いた深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルであり、対象医用画像を入力することで、当該対象医用画像の血管に関するセグメンテーション結果を出力する訓練済み深層学習モデルを取得する深層学習モデル取得部と、
を備える深層学習モデル生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、血管セグメンテーション装置、血管セグメンテーション方法、医用画像処理装置、及び、深層学習モデル生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医学の臨床研究及び応用において、医用画像診断装置によって取得された医用画像に基づいて行われる血管の三次元再構築は、医師が器官、組織、腫瘍などの位置を迅速に位置決めするのを補助することができる。例えば、正確な肝臓血管の三次元再構築は、医師が迅速に肝臓腫瘍を特定することに役立つ。そのため、血管に対する迅速かつ正確なセグメンテーションは、医用画像処理において重要である。
【0003】
コンピュータ技術の発展により、血管セグメンテーションに用いられるアルゴリズムには、血管強調フィルタリング、変形可能モデル、追跡、および深層学習に基づくものが含まれる。
【0004】
血管強調フィルタリングによるアルゴリズムでは、元の画像における血管部分が強調されるが、ノイズが含まれる。
【0005】
また、変形可能モデルによるアルゴリズムでは、シードポイント初期化を行う必要がある。例えば、変形可能モデルによるアルゴリズムでは、血管強調後の階調値が高い点を初期シードポイントとし、その後、分水嶺(Watershed)アルゴリズム、領域拡張法等のアルゴリズムを組み合わせて血管セグメンテーションを行う。しかし、シードポイントの初期化は、血管セグメンテーションの精度に影響を与え、演算が複雑である。
【0006】
また、追跡によるアルゴリズムでは、複数の予め設定されたテンプレートを用い、初期位置と追跡方向を組み合わせて血管セグメンテーションを実現する必要がある。複数の予め設定されたテンプレートに係るプロセスは、複雑なものである。
【0007】
また、深層学習によるアルゴリズムでは、元の画像を画素ごとに分類する方式で血管セグメンテーションを実現している。しかし、深層学習に基づくアルゴリズムは、画像上でセグメンテーション対象を描画するアノテーションを行うことで、教師データ(例えば、Ground Truth;GT)を作成するため、アノテーションのデータ量及び品質に依存している。また、例えば、医師が着目する腫瘍が肝臓である場合、医用画像において肝臓血管と肝臓組織とのコントラストが低いため、血管アノテーションを行うことで高精度の教師データを取得することが難しい。そのため、深層学習に基づくアルゴリズムでは、高精度な血管セグメンテーションを実現しにくく、しかもセグメンテーション結果における血管の接続性が悪い。
【0008】
このように、血管セグメンテーションに用いられるアルゴリズムには、血管セグメンテーション精度のさらなる向上が必要である。並びに、血管と組織のコントラストによる血管の接続性不良(例えば、実際に血管が接続しているが、セグメンテーション結果において血管が接続していない状況)の低減が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ruochen Gao, Zhihui Hou, Jun Li, Hu Han, Bin Lu, S. Kevin Zhou 著、「Joint Coronary Centerline Extraction And Lumen Segmentation From Ccta Using Cnntracker And Vascular Graph Convolutional Network」Published in: 2021 IEEE 18th International Symposium on Biomedical Imaging (ISBI)、Page:1897-1901、13 April 2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、医用画像において血管と組織のコントラストが高くない場合においても、血管セグメンテーションを高精度に行い、セグメンテーション結果における血管の接続性を改善することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態に係る血管セグメンテーション装置は、画像取得部と、深層学習モデル取得部と、セグメンテーション部と、を備える。前記画像取得部は、複数枚の医用画像を取得する。前記深層学習モデル取得部は、前記医用画像に基づいて、中心線強調損失関数、統計的形状制約損失関数を用いた深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを取得する。前記セグメンテーション部は、前記訓練済み深層学習モデルに基づいて、取得された対象医用画像をセグメンテーションすることにより、血管に関するセグメンテーション結果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る血管セグメンテーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、深層学習モデル訓練の概略図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る血管セグメンテーション装置による処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態に係る血管セグメンテーション装置に用いられる画像の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、第1実施形態に係る血管セグメンテーション装置に用いられる画像の一例を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、第1実施形態に係る血管セグメンテーション装置に用いられる画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る血管セグメンテーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る血管セグメンテーション装置による処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る血管セグメンテーション装置の領域拡張法を行う過程の概略図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る血管セグメンテーション装置に用いられる画像の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る血管セグメンテーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、画像領域強調部がセグメンテーション結果の接続性を修復する過程(接続性修復処理)を説明するための概略図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る血管セグメンテーション装置による処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係る血管セグメンテーション装置に用いられる画像の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態に係る血管セグメンテーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態に係る血管セグメンテーション装置による処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、第4実施形態に係る血管セグメンテーション装置に用いられる画像の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第5実施形態に係る血管セグメンテーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図17】
図17は、第5実施形態に係る血管セグメンテーション装置による処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、第6実施形態に係る血管セグメンテーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図19】
図19は、第6実施形態に係る血管セグメンテーション装置による処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本実施形態に係る血管セグメンテーション装置、血管セグメンテーション方法、医用画像処理装置、及び、深層学習モデル生成装置について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
<血管セグメンテーション装置100の構成>
まず、
図1を参照して、第1実施形態に係る血管セグメンテーション装置100の構成について説明する。なお、
図1において、血管セグメンテーション装置は、各処理機能を含むが、
図1には本実施形態に関する処理機能のみが示されており、その他の処理機能が省略されている。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の血管セグメンテーション装置100は、画像取得部101と、深層学習モデル取得部102と、セグメンテーション部103とを備える。例えば、血管セグメンテーション装置100は、コンピュータであり、各処理機能を実行する処理回路と、当該各処理機能をコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶する記憶回路とを備える。例えば、血管セグメンテーション装置100の処理回路は、画像取得部101、深層学習モデル取得部102、セグメンテーション部103を備える。処理回路の構成要素が実行する各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路に記録されている。処理回路は、各プログラムを記憶回路から読み出し、実行することで各プログラムに対応する処理機能を実現するプロセッサである。
【0016】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0017】
画像取得部101は、複数枚の医用画像を取得する。画像取得部101は、例えば、通信インターフェースにより医用画像診断装置から複数枚の医用画像を取得する。または、複数枚の医用画像が予め記憶装置に記憶され、画像取得機能101は、記憶装置から複数枚の医用画像を読み取って取得してもよい。記憶装置の一例として、例えば、医用画像管理システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)や画像保管装置に当該医用画像が管理されてもよい。さらに、画像取得機能101は、他の装置により処理された複数枚の医用画像を読み取ってもよい。
【0018】
ここで、医用画像は、医用画像診断装置により生成される。医用画像診断装置としては、超音波システムである超音波診断装置や、超音波システム以外の他のモダリティーであるX線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などが挙げられる。即ち、医用画像は、三次元画像であってもよいし、2次元画像であってもよい。
【0019】
深層学習モデル取得部102は、複数枚の医用画像に基づいて深層学習モデルの訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを取得する。深層学習モデル取得部102は、少なくとも中心線強調損失関数、統計的形状制約損失関数を用いて深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを取得する。具体的には、深層学習モデル取得部102は、例えば、Dice係数損失関数、クロスエントロピー損失関数、中心線強調損失関数、統計的形状制約損失関数を加重和した統合損失関数を用いて深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを取得する。
【0020】
図2は、深層学習モデル訓練の概略図である。
図2に示すように、画像取得部101により取得された教師データ及び複数枚の医用画像に基づいて、深層学習モデル訓練が行われる。教師データは、事前にアノテーションされたものであり、画像取得機能101により取得される。以降、本実施形態では、教師データを、GT(Ground Truth)、アノテーションGT等と記載する。深層学習モデル訓練では、医用画像を入力画像(input volume)として深層学習ネットワークに入力し、予測結果(Predication)を取得する。損失関数(LOSS)の値L
totalは、予測結果(Predication)とGT(Ground Truth)とのずれの程度を測定するために用いられる。
【0021】
本実施形態では、中心線強調損失関数と統計的形状制約損失関数とを導入して深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを用いる。
【0022】
中心線強調損失関数は、トポロジ性を考慮し、2つの要素(予測結果における血管の中心線構造とアノテーションGTにおける血管の中心線構造)の類似度を評価するための関数である。本実施形態では、トポロジ構造を維持しながら管状物(血管)をセグメンテーションすることにより、分岐による細い血管のセグメンテーション結果を向上させることができる。
【0023】
統計的形状制約損失関数は、血管の形状として、血管の輪郭線の長さと体積とを制約する関数である。本実施形態では、幾何学的な情報を考慮しながら管状物(血管)をセグメンテーションすることにより、幾何学的トポロジ構造を強調することができる。
【0024】
このように、本実施形態では、中心線強調損失関数と統計的形状制約損失関数とを導入して深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを用いることで、セグメンテーション結果における血管の接続性と幾何学的トポロジ構造を強調することができる。
【0025】
本実施形態では、例えば、Dice係数損失関数、クロスエントロピー損失関数、中心線強調損失関数、統計的形状制約損失関数を加重和して得られる統合損失関数を用いて深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを用いる。統合損失関数Ltotalは、以下の式1により得られる。
【0026】
【0027】
式1において、Ltotalは、損失関数(LOSS)を表し、LDICEは、Dice係数損失関数を表し、LCEは、クロスエントロピー損失関数を表し、LCLは、中心線強調損失関数を表し、LACは、統計的形状制約損失関数を表す。
【0028】
ここで、本実施形態では、Dice係数損失関数LDICE、クロスエントロピー損失関数LCE、中心線強調損失関数LCL、統計的形状制約損失関数LACの重みを、それぞれ、0.3:0.3:0.3:1に設定する。
【0029】
式1における中心線強調損失関数LCLは、以下の式2により得られる。
【0030】
【0031】
式2において、VLは、アノテーションGT(教師データ)における肝臓血管を表し、Vpは、予測結果における肝臓血管を表し、SLは、アノテーションGT(教師データ)における血管の中心線構造を表し、SPは、予測結果における血管の中心線構造を表す。また、Tprec(SP,VL)は、予測結果における血管の中心線構造SPが、アノテーションGTにおける肝臓血管VLに含まれている割合を表す。また、Tsens(SL,VP)は、アノテーションGTにおける血管の中心線構造SLが、予測結果における肝臓血管Vpに含まれている割合を表す。
【0032】
式2では、予測結果における血管の中心線構造SPと、アノテーションGTにおける血管の中心線構造SLとが、どのくらいずれているかが算出される。上述したように、式2により得られる中心線強調損失関数LCLは、トポロジ性を考慮し、血管セグメンテーションの教師データ(血管のアノテーションGT)における血管の中心線構造を用いている。このため、本実施形態では、トポロジ構造を維持しながら管状物(血管)をセグメンテーションすることにより、分岐による細い血管のセグメンテーション結果を向上させることができる。
【0033】
式1における統計的形状制約損失関数LACは、以下の式4により得られる。
【0034】
【0035】
式4において、c1とc2は、それぞれ、セグメンテーション対象の輪郭Cの内部と外部の平均値を表す。ここで、f(x)は、位置xにおける画像の画素強度を表し、Length(C)は、セグメンテーション輪郭Cの長さを表し、λは、各重みをバランスさせるためのパラメータを表す。
【0036】
式4では、血管の形状として、血管の輪郭線の長さと体積とが算出される。式4により得られる統計的形状制約損失関数LACは、セグメンテーションをエネルギー最小化問題と見なし、エネルギーは輪郭線に関する関数である。ここで、統計的形状制約損失関数では、偏微分に基づく方法を用いることによってエネルギー関数を最小化して、輪郭線を目標の境界の方向に向かって絶えず更新する。この場合、エネルギーが最小になる時の曲線位置が、目標の輪郭であり、セグメンテーションの輪郭と体積の関係が考慮される。このように、本実施形態では、統計的形状制約損失関数を導入することにより、正規化部分に形状についての先験知識を加えて、それをセグメンテーション目標の形状特徴によりフィットさせ、画像のセグメンテーション結果を改善することができる。即ち、本実施形態では、血管の形状として、幾何学的な情報を考慮しながら管状物(血管)をセグメンテーションすることにより、幾何学的トポロジ構造を強調することができる。
【0037】
式1におけるDice係数損失関数LDICEは、2つの要素の類似度を評価するためのDice係数を用いた関数であり、例えば、血管セグメンテーションの教師データ(血管のアノテーションGT)に対して予測結果がどのくらい検出できているかが算出される。
【0038】
式1におけるクロスエントロピー損失関数LCEは、2つの確率分布がどれくらい離れているかを表す指標であり、例えば、血管セグメンテーションの教師データ(血管のアノテーションGT)に対して予測結果がどのくらい離れているかが算出される。
【0039】
なお、式1におけるDice係数損失関数LDICE及びクロスエントロピー損失関数LCEについては、既存技術であるため、本実施形態では詳細な説明を省略する。
【0040】
本実施形態では、上述のように、式1により得られる統合損失関数Ltotalを用いて深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルに基づいて、取得された対象医用画像をセグメンテーションする。例えば、深層学習モデル訓練にDice係数損失関数LDICEとクロスエントロピー損失関数LCEのみを用いた場合では、階調又はテクスチャに関する情報しか考慮していないため、幾何学的な情報が考慮されず、セグメンテーション結果における血管の接続性と幾何学的トポロジ構造が強調されない。一方、本実施形態では、深層学習モデル訓練に更に中心線強調損失関数LCLと統計的形状制約損失関数LACを用いることで、幾何学的な情報を考慮しているため、既存技術における不足を補うことができ、セグメンテーション結果における血管の接続性と幾何学的トポロジ構造を強調することができる。
【0041】
図1に戻る。セグメンテーション部103は、深層学習モデル取得部102により得られた訓練済み深層学習モデルに基づいて、取得された対象医用画像をセグメンテーションすることにより、血管に関するセグメンテーション結果を得る。
【0042】
ここで、対象医用画像については、例えば、画像取得部101によって取得されてもよいし、他の装置により取得されてもよい。
【0043】
<血管セグメンテーション装置100の動作>
次に、第1実施形態に係る血管セグメンテーション装置100による処理(血管セグメンテーション方法)について説明する。
図3は、第1実施形態に係る血管セグメンテーション装置100による処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【0044】
図3のステップS100において、画像取得部101は、複数枚の医用画像を取得する。複数枚の医用画像は、例えば、肝部画像である。
【0045】
次に、アノテーションGT(教師データ)が取得される。
図3のステップS200において、深層学習モデル取得部102は、ステップS100において画像取得部101により取得された複数枚の医用画像、及び、教師データに基づいて、深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを取得する。ここで、深層学習モデル訓練において、中心線強調損失関数及び統計的形状制約損失関数を導入した。
【0046】
次に、
図4Aに示すような対象医用画像が取得される。
図3のステップS300において、セグメンテーション部103は、深層学習モデル取得部102により得られた訓練済み深層学習モデルに基づいて、取得された対象医用画像をセグメンテーションすることにより、血管に関するデータとして、
図4Cに示すセグメンテーション結果を得る。ここで、取得された対象医用画像は、画像取得部101により取得された複数枚の医用画像の一部に類似しているものとする。例えば、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果において、網目や斜線でハッチングした部分は、血管領域を示している。ここで、
図4Cに示すセグメンテーション結果において、網目や斜線でハッチングした部分は、セグメンテーション部103によりセグメンテーションされた血管であり、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果に対して、さらにセグメンテーションされた部分を実線枠で示している。
【0047】
図4Aに示す対象医用画像、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果、及び、
図4Cに示すセグメンテーション結果を比較する。ここで、
図4Cに示すセグメンテーション結果は、
図4Aに示す対象医用画像の血管がセグメンテーションされており、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果より多くの血管がセグメンテーションされている。
【0048】
以上の説明により、本実施形態に係る血管セグメンテーション装置100では、中心線強調損失関数及び統計的形状制約損失関数を導入して深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを用いる。これにより、本実施形態に係る血管セグメンテーション装置100では、医用画像において血管と組織のコントラストが高くない場合においても、より多くの血管をセグメンテーションし、血管セグメンテーションを高精度に行い、セグメンテーション結果における血管の接続性を改善することができる。
【0049】
(第2実施形態)
<血管セグメンテーション装置100Aの構成>
まず、
図5を参照して、第2実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Aの構成について説明する。
図5は、第2実施形態に係る血管セグメンテーション装置の構成を示すブロック図である。
【0050】
図5に示すように、本実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Aは、画像取得部101と、深層学習モデル取得部102と、セグメンテーション部103とを備えるのに加えて、特徴領域強調部104をさらに備える。
【0051】
ここで、第2実施形態における画像取得部101、深層学習モデル取得部102及びセグメンテーション部103は、それぞれ第1実施形態における画像取得部101、深層学習モデル取得部102及びセグメンテーション部103と同一である。このため、本実施形態では重複する説明を省略する。
【0052】
第2実施形態では、特徴領域強調部104は、セグメンテーション部103によるセグメンテーション結果に対して、管状物フィルタリング(vesselness filtering)を用いて管状物特徴を抽出し、強調された管状物特徴の特徴領域を取得し、領域拡張法を用いて管状物特徴を接続させて、特徴領域強調後のセグメンテーション結果を得る。
【0053】
具体的には、まず、特徴領域強調部104は、上記セグメンテーション結果に対して、管状物フィルタリングとして、例えば、ヘッセ行列(Hessian Matrix)を用いて管状物特徴を抽出する。これは、ヘッセ行列の特徴値が管状構造の情報を測ることができるからである。ただし、管状物特徴を抽出する方法は、ヘッセ行列を適用した方法に限らず、公知技術における様々な方法を適用することが可能であり、本実施形態では詳細な説明を省略する。
【0054】
次に、特徴領域強調部104は、実際に接続しているが、セグメンテーション部103によるセグメンテーション結果において切断していると判断された血管切断箇所を領域拡張法(region growing)により接続させる。
【0055】
例えば、特徴領域強調部104において、画像に属するボクセルが管状であるか否かについての確率を記述するための管状物メトリックが用いられる。特徴領域強調部104は、管状物メトリックを用いることにより、例えば、画像において組織(例えば器官における血管以外の実質部分)とのコントラストが比較的低いことによる、当該組織と区別しにくい血管を識別することができる。特徴領域強調部104は、例えば、目標血管としての管径が略0.5mmから6mmであるとし、ステップサイズとして0.5mmを選択し、ヘッセ行列を用いて、セグメンテーション部103のセグメンテーション結果となる画像の2階勾配情報を分析して抽出する。つまり、ボクセル毎にヘッセ行列に基づく演算を行い、ヘッセ行列に基づく演算結果において比較的に大きな特徴値が2つしかない場合、該ボクセルは管状構造におけるものに属すると考えられる。ここで、比較的に大きな特徴値は、例えば器官、画像等に応じて適宜設定され得る。なお、上述した目標血管の管径、ステップサイズとしての計測値の設定は一例にすぎず、これに限らず、必要に応じて任意に設定することができる。
【0056】
また、領域拡張法においては、特徴領域強調部104は、セグメンテーション部103のセグメンテーション結果に含まれる確率図(mask)のうち確率値が大きい点をシードポイントとし、例えば下限閾値として60を用いて、管状物特徴領域にて領域拡張法を行い、切断血管(血管切断箇所)を補修し、微細血管を補充する。
【0057】
<血管セグメンテーション装置100Aの動作>
以下では、第2実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Aによる処理(血管セグメンテーション方法)について説明する。
図6は、第2実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Aによる処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【0058】
まず、
図6のステップS100~S300の処理が実行される。
図6のステップS100~S300の処理は、
図3のステップS100~S300の処理と同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、本実施形態において、セグメンテーション結果には、血管に関するデータに加えて、さらに確率図が含まれる。
【0059】
次に、
図6のステップS301において、特徴領域強調部104は、ステップS300におけるセグメンテーション部103のセグメンテーション結果に対して、管状物フィルタリングを用いて管状物特徴を抽出し、強調された管状物特徴の特徴領域を取得し、領域拡張法を用いて管状物特徴を接続させて、特徴領域強調後のセグメンテーション結果を得る。
【0060】
具体的には、ステップS301において、
図7に示すように、特徴領域強調部104は、ステップS100における画像取得部101によって取得された医用画像、及び、ステップS300におけるセグメンテーション部103のセグメンテーション結果に含まれる確率図を基に、ヘッセ行列により管状物フィルタリングを用いて管状物特徴を抽出し、強調された管状物特徴の特徴領域を取得する。そして、特徴領域強調部104は、確率図における確率値の大きい点をシードポイントとして、管状物特徴領域にて領域拡張法を行い、管状物特徴を接続させることにより、切断血管(血管切断箇所)を補修し、微細血管を補充する。
【0061】
ここで、第2実施形態においても、第1実施形態の具体例を適用する。
図4Aに示す対象画像、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果、
図4Cに示す第1実施形態のセグメンテーション結果、及び、
図8に示す第2実施形態のセグメンテーション結果を比較する。ここで、
図8に示す第2実施形態のセグメンテーション結果において、網目や斜線でハッチングした部分は、セグメンテーション部103によりセグメンテーションされた血管であり、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果に対して、さらにセグメンテーションされた部分を実線枠で示している。
図8に示す第2実施形態のセグメンテーション結果は、
図4Aに示す対象医用画像の血管がセグメンテーションされており、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果より多くの血管がセグメンテーションされている。さらに、
図8に示す第2実施形態のセグメンテーション結果では、
図4Cに示す第1実施形態のセグメンテーション結果よりも、実線枠で示した部分が多く、微細な血管までセグメンテーションされている。
【0062】
以上の説明により、第2実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Aでは、第1実施形態と同様に、セグメンテーション結果として、より多くの血管がセグメンテーションされるため、血管セグメンテーションを高精度に行い、セグメンテーション結果における血管の接続性を改善することができる。また、第2実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Aは、特徴領域強調部104を備えているため、管状物フィルタリング及び領域拡張法に基づいて、管状物特徴領域において、深層学習モデルによるセグメンテーション結果における血管切断箇所が補修され、さらに、微細血管のセグメンテーション品質を向上させ、微細血管を補充することもできる。
【0063】
(第3実施形態)
<血管セグメンテーション装置100Bの構成>
まず、
図9を参照して、第3実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Bの構成について説明する。
図9は、第3実施形態に係る血管セグメンテーション装置の構成を示すブロック図である。
【0064】
図9に示すように、本実施形態の血管セグメンテーション装置100Bは、画像取得部101と、深層学習モデル取得部102と、セグメンテーション部103とを備えるのに加えて、画像領域強調部105をさらに備える。
【0065】
ここで、第3実施形態における画像取得部101、深層学習モデル取得部102及びセグメンテーション部103は、それぞれ第1実施形態における画像取得部101、深層学習モデル取得部102及びセグメンテーション部103と同一である。このため、本実施形態では重複する説明を省略する。
【0066】
第3実施形態では、画像領域強調部105は、セグメンテーション部103のセグメンテーション結果に対して、画像領域でセグメンテーション結果における遊離血管セグメントについて接続性修復処理を行って、画像領域強調後のセグメンテーション結果を得る。例えば、画像領域強調部105は、スーパーボクセル(super voxel)法の適用により、セグメンテーション部103のセグメンテーション結果について接続性修復を行う。
【0067】
ここで、
図10を用いて、画像領域強調部105がスーパーボクセル(super voxel)法の適用により、セグメンテーション結果に対して接続性修復を行う過程について説明する。
図10は、画像領域強調部105がセグメンテーション結果を接続性修復する過程(接続性修復処理)を説明するための概略図である。なお、説明の便宜上、セグメンテーション結果の一部のみを示す。
【0068】
まず、接続性修復処理では、画像領域強調部105は、セグメンテーション部103のセグメンテーション結果について遊離分岐分析を行って、セグメンテーション結果における血管主幹部及び接続しない部分となる遊離分岐を判別する。例えば、
図10に示すように、画像領域強調部105は、セグメンテーション結果の中で最も体積の大きい接続領域を血管主幹部Mとし、血管主幹部M以外の、血管主幹部と接続せず且つ体積が比較的小さい血管セグメントを遊離分岐Dとする。
図10では、説明の便宜上、血管主幹部M及び1つの遊離分岐Dしか示されていないが、遊離分岐は複数であってもよい。画像領域強調部105が各遊離分岐について接続性修復を行う過程は同じであるため、
図10に示す遊離分岐Dの接続性修復過程のみについて説明する。また、遊離分岐が複数である場合、画像領域強調部105は、各遊離分岐について接続性修復を順次または並行に行うことができる。
【0069】
次に、接続性修復処理において、画像領域強調部105は、遊離分岐Dに対して中心線(
図10に示す太線)を抽出し、遊離分岐Dの中心線の2つの端点(
図10に示す星印マーク)であるP1及びP2を特定する。そして、画像領域強調部105は、2つの端点P1及びP2と血管主幹部Mとの距離を計算し、距離の短い端点を遊離分岐Dの近端点とする。ここで、2つの端点P1、P2から血管主幹部Mまでの至近距離(即ち、最短距離)を、端点と血管主幹部Mとの距離と定義する。
図10に示す例では、端点P2と血管主幹部Mとの距離は、端点P1と血管主幹部Mとの距離よりも短いため、端点P2を遊離分岐Dの近端点とする。
【0070】
次に、接続性修復処理において、画像領域強調部105は、スーパーボクセル分析として、遊離分岐Dから血管主幹部MまでのスーパーボクセルSを分析する。そして、画像領域強調部105は、スーパーボクセル分析に基づいて、遊離分岐Dの近端点P2側を血管主幹部Mに接続させる。なお、スーパーボクセル分析に基づいて遊離分岐Dの近端点P2側を血管主幹部Mに接続させる方法は、既存技術であるため、本実施形態では詳細な説明を省略する。
【0071】
<血管セグメンテーション装置100Bの動作>
次に、第3実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Bによる処理(血管セグメンテーション方法)について説明する。
図11は、第3実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Bによる処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【0072】
まず、
図11のステップS100~S300の処理が実行される。
図11のステップS100~S300の処理は、
図3におけるステップS100~S300の処理と同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0073】
次に、
図11のステップS302において、画像領域強調部105は、ステップS300におけるセグメンテーション部103のセグメンテーション結果に対して、画像領域にて、
図10を参照して説明した遊離血管セグメントの接続性修復を行って、画像領域強調後のセグメンテーション結果を得る。
【0074】
ここで、第3実施形態においても、第1実施形態の具体例を適用する。
図4Aに示す対象画像、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果、
図4Cに示す第1実施形態のセグメンテーション結果、及び、
図12に示す第3実施形態のセグメンテーション結果を比較する。ここで、
図12に示す第3実施形態のセグメンテーション結果において、網目や斜線でハッチングした部分は、セグメンテーション部103によりセグメンテーションされた血管であり、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果に対して、さらにセグメンテーションされた部分を実線枠で示している。
図12に示す第3実施形態のセグメンテーション結果は、
図4Aに示す対象医用画像の血管がセグメンテーションされており、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果より多くの血管がセグメンテーションされている。さらに、
図12に示す第3実施形態のセグメンテーション結果では、
図4Cに示す第1実施形態のセグメンテーション結果よりも、実線枠で示した部分が多く、微細な血管までセグメンテーションされている。
【0075】
以上の説明により、第3実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Bでは、第1実施形態と同様に、セグメンテーション結果として、より多くの血管がセグメンテーションされるため、血管セグメンテーションを高精度に行い、セグメンテーション結果における血管の接続性を改善することができる。また、第3実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Bは、画像領域強調部105を備えているため、スーパーボクセル法に基づいて血管セグメンテーション結果に対して遊離セグメント分析(上述の遊離分岐分析)が行われ、遊離セグメントの中心線の端点から主幹部までの距離の大きさに応じて、画像領域において切断血管(血管切断箇所)の接続性修復が行われる。これにより、第2実施形態における特徴領域強調部104では処理できない、突出管状構造を備えていない遊離血管の接続性の問題を解決することができる。
【0076】
(第4実施形態)
<血管セグメンテーション装置100Cの構成>
まず、
図13を参照して、第4実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Cの構成について説明する。
図13は、第4実施形態に係る血管セグメンテーション装置の構成を示すブロック図である。
【0077】
図13に示すように、本実施形態の血管セグメンテーション装置100Cは、画像取得部101と、深層学習モデル取得部102と、セグメンテーション部103とを備えるのに加えて、特徴領域強調部104及び画像領域強調部105aを備える。
【0078】
ここで、第4実施形態における画像取得部101、深層学習モデル取得部102及びセグメンテーション部103は、それぞれ第1実施形態における画像取得部101、深層学習モデル取得部102及びセグメンテーション部103と同一である。また、第4実施形態における特徴領域強調部104は、第2実施形態における特徴領域強調部104と同一である。また、第4実施形態における画像領域強調部105aと第2実施形態における画像領域強調部105との相違点は、画像領域強調部105aが処理する対象は、セグメンテーション部103のセグメンテーション結果ではなく、特徴領域強調部104によって特徴領域強調された後のセグメンテーション結果である。ここでは重複する説明を省略する。
【0079】
<血管セグメンテーション装置100Cの動作>
次に、第4実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Cによる処理(血管セグメンテーション方法)について説明する。
図14は、第4実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Cによる処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【0080】
まず、
図14のステップS100~S301の処理が実行される。
図14のステップS100~S301の処理は、
図6におけるステップS100~S301の処理と同一である。このため、本実施形態では重複する説明を省略する。
【0081】
次に、
図14のステップS302において、画像領域強調部105は、ステップS301における特徴領域強調部104によって処理されたセグメンテーション結果について、画像領域にて、
図10を参照して説明した遊離血管セグメントの接続性修復を行って、画像領域強調後のセグメンテーション結果を得る。
【0082】
ここで、第4実施形態においても、第1実施形態の具体例を適用する。
図4Aに示す対象画像、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果、
図4Cに示す第1実施形態のセグメンテーション結果、及び、
図15に示す第4実施形態のセグメンテーション結果を比較する。ここで、
図15に示す第4実施形態のセグメンテーション結果において、網目や斜線でハッチングした部分は、セグメンテーション部103によりセグメンテーションされた血管であり、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果に対して、さらにセグメンテーションされた部分を実線枠で示している。
図15に示す第4実施形態のセグメンテーション結果は、
図4Aに示す対象医用画像の血管がセグメンテーションされており、
図4Bに示す既存技術のセグメンテーション結果より多くの血管がセグメンテーションされている。さらに、
図15に示す第4実施形態のセグメンテーション結果では、
図4Cに示す第1実施形態のセグメンテーション結果よりも、実線枠で示した部分が多く、微細な血管までセグメンテーションされている。
【0083】
以上の説明により、第4実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Cでは、第1実施形態と同様に、セグメンテーション結果として、より多くの血管がセグメンテーションされるため、血管セグメンテーションを高精度に行い、セグメンテーション結果における血管の接続性を改善することができる。また、第4実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Cは、特徴領域強調部104を備えているため、セグメンテーション結果における血管切断箇所を補修し、微細血管を補充することができる。また、第4実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Cは、画像領域強調部105aを備えているため、特徴領域強調部104では処理できない、突出管状構造を備えていない遊離血管の接続性の問題を解決することができる。
【0084】
(第5実施形態)
<血管セグメンテーション装置100Dの構成>
まず、
図16を参照して、第5実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Dの構成について説明する。
図16は、第5実施形態に係る血管セグメンテーション装置の構成を示すブロック図である。
【0085】
図16に示すように、本実施形態の血管セグメンテーション装置100Dは、画像取得部101と、深層学習モデル取得部102と、セグメンテーション部103とを備えるのに加えて、さらに前処理部106を備える。
【0086】
ここで、第5実施形態における画像取得部101、深層学習モデル取得部102及びセグメンテーション部103は、それぞれ第1実施形態における画像取得部101、深層学習モデル取得部102及びセグメンテーション部103と同一である。このため、本実施形態では重複する説明を省略する。
【0087】
第5実施形態では、前処理部106は、画像取得部101により取得された複数枚の医用画像について前処理を行い、標準化医用画像を得る。
【0088】
さらに、第5実施形態では、深層学習モデル取得部102は、前処理部106により前処理された標準化医用画像、及び、アノテーションGT(教師データ)に基づいて、中心線強調損失関数、統計的形状制約損失関数を用いた深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを取得する。
【0089】
前処理部106が複数枚の医用画像に対して行う前処理は、例えば、データフォーマット変換、クロップ(crop)、リサンプリング(resample)及び標準化(normalization)のうちの少なくとも1つが用いられる。
【0090】
データフォーマット変換による前処理では、よく用いられる医用画像フォーマットとしては、DICOM(拡張子は「.dcm」である)、MHD(拡張子は「.mhd」または「.raw」である)、およびNIFTY(拡張子は「.nii」または「.nii.gz」である)がある。これらのフォーマットは、直接、深層学習操作には適さず、通常のデータフォーマット変換が必要である。
【0091】
また、クロップ(Crop)による前処理は、三次元の医用画像をその非ゼロ領域にクロップすることである。クロップ前に比べて、クロップ後の医用画像は最後のセグメンテーション結果に影響を与えることなく、画像サイズを小さくし、無駄な計算を回避し、計算効率を高めることができる。
【0092】
また、リサンプリング(Resample)による前処理では、いくつかの三次元医用画像データセットにおいて、異なる医用画像において1つのボクセル(voxel)により表される実際の空間サイズ(spacing)が一致しないという問題を解決することを目的としている。このような差異性を回避するためには、異なる医用画像データに対してボクセル空間において寸法リセットを行い、異なる画像データの中で、各ボクセルにより表される実際の物理空間が一致していることを保証する必要がある。
【0093】
また、標準化(Normalization)による前処理では、訓練セットにおける各医用画像の階調値が同じ分布を持つことができるようにすることを目的としている。
【0094】
ここで、本実施形態では、前処理部106は、例えば、少なくとも、クロップによる前処理、標準化による前処理を行う。
【0095】
<血管セグメンテーション装置100Dの動作>
次に、第5実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Dによる処理(血管セグメンテーション方法)について説明する。
図17は、第5実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Dによる処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【0096】
まず、
図17のステップS100の処理が実行される。
【0097】
次に、
図17のステップS101において、前処理部106は、例えば、取得された医用画像に対して、少なくとも、クロップによる前処理、標準化による前処理を行う。
【0098】
次に、
図17のステップS200、S300の処理は、
図3におけるステップS200、S300の処理と同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0099】
ここで、第5実施形態による血管セグメンテーション装置100Dは、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第5実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Dは、前処理部106を備えているため、血管セグメンテーションを迅速かつ効率的に行うことができる。
【0100】
(第6実施形態)
<血管セグメンテーション装置100Eの構成>
まず、
図18を参照して、第6実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Eの構成について説明する。
図18は、第6実施形態に係る血管セグメンテーション装置の構成を示すブロック図である。
【0101】
図18に示すように、本実施形態の血管セグメンテーション装置100Eは、画像取得部101と、深層学習モデル取得部102と、セグメンテーション部103と、前処理部106とを備えるのに加えて、さらに形態学的処理部107を備える。
【0102】
ここで、第6実施形態における画像取得部101、深層学習モデル取得部102、セグメンテーション部103及び前処理部106は、それぞれ第5実施形態における画像取得部101、深層学習モデル取得部102、セグメンテーション部103及び前処理部106と同一である。このため、本実施形態では重複する説明を省略する。
【0103】
第6実施形態では、形態学的処理部107は、セグメンテーション結果に対して、形態学的画像処理を行い、最終的なセグメンテーション結果を得る。ここで、セグメンテーション結果は、セグメンテーション部103のセグメンテーション結果、第2実施形態における特徴領域強調後のセグメンテーション結果、第3実施形態における画像領域強調後のセグメンテーション結果、第4実施形態における特徴領域強調後および画像領域強調後のセグメンテーション結果であってもよい。
【0104】
画像形態学的処理としては、例えば、収縮、膨張、開演算、閉演算、骨格抽出、極線収縮、ヒットミス変換、Top-hat変換、粒子分析、流域変換、形態学的勾配などが挙げられる。その中で最も基本的な形態学的操作は、膨張(dilation)と収縮(erosion)という2種類であり、収縮と膨張の主な作用は、ノイズを除去すること、独立した画像要素をセグメンテーションして画像において隣接する要素を接続すること等にある。
【0105】
<血管セグメンテーション装置100Eの動作>
次に、第6実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Eによる処理(血管セグメンテーション方法)について説明する。
図19は、第6実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Eによる処理(血管セグメンテーション方法)の手順を示すフローチャートである。
【0106】
まず、
図19のステップS100、S101、S200、S300の処理が実行される。ここで、
図19のステップS100、S101、S200、S300の処理は、
図17におけるステップ100、S101、S200、S300の処理と同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0107】
次に、
図19のステップS400では、セグメンテーション結果に対して、形態学的画像処理を行い、最終的なセグメンテーション結果を得る。
【0108】
ここで、第6実施形態による血管セグメンテーション装置100Eは、第5実施形態と同様の効果を奏する。また、第6実施形態に係る血管セグメンテーション装置100Eは、形態学的処理部107を備えていることで、セグメンテーション結果における、例えばノイズ等による小面積の遊離血管をさらに除去し、血管セグメンテーションの精度を高めることができる。
【0109】
以上、第1実施形態~第6実施形態について説明した。上述した各実施形態は、発明の要旨に合致する範囲で省略、置換、組み合わせ及び変更を行うことができる。
【0110】
例えば、第6実施形態では、第4実施形態における特徴領域強調部104及び画像領域強調部105aを適用して、第7実施形態を構成することができる。
【0111】
ここで、比較例について説明する。
【0112】
既存の深層学習に基づく技術(既存技術)、本実施形態における統合損失関数を用いた深層学習に基づく技術(例えば、第5実施形態)について、それぞれ同一の肝血管セグメンテーションの具体例を適用した場合、係るセグメンテーション結果は表1に示す通りである。
【0113】
【0114】
表1に示す例では、既存技術で肝血管セグメンテーションを行った結果、肝静脈及び門脈の中心線適合度は、それぞれ「0.795」、「0.868」である。また、本実施形態(第5実施形態)の構成で肝血管セグメンテーションを行った結果、肝静脈及び門脈の中心線適合度は、それぞれ「0.814」、「0.875」である。
【0115】
表1から明らかなように、本実施形態(第5実施形態)における肝血管セグメンテーションでは、既存技術に比べて、肝静脈及び門脈の何れもより高い中心線適合度を有する。中心線適合度は、血管セグメンテーション精度を特徴づけるための指標であり、中心線適合度が高いほど、血管セグメンテーションの精度が高い。
【0116】
また、第5実施形態と第7実施形態について、それぞれ同一の肝血管セグメンテーションの具体例を適用した場合、係るセグメンテーション結果は表2に示す通りである。
【0117】
【0118】
表2に示す例では、第5実施形態の構成で肝血管セグメンテーションを行った結果、肝静脈及び門脈の主血管樹以外の非接続領域の数は、それぞれ「1.4」、「0.7」である。また、第7実施形態の構成で肝血管セグメンテーションを行った結果、肝静脈及び門脈の主血管樹以外の非接続領域の数は、それぞれ「0」、「0」である。
【0119】
表2から分かるように、第5実施形態の構成で肝血管セグメンテーションを行う場合、肝静脈及び門脈のセグメンテーション結果には、いずれも主血管樹以外の非接続領域が存在する。ここで、主血管樹以外の非接続接続領域とは、実際に接続しているがセグメンテーション結果が非接続となっている領域をいう。
【0120】
また、例えば、第6実施形態の構成に第4実施形態の特徴領域強調部104及び画像領域強調部105aを適用して第7実施形態を構成し、第7実施形態の構成で肝血管セグメンテーションを行う場合、肝静脈及び門脈のセグメンテーション結果のいずれにおいても、主血管樹以外の非接続領域が存在しない。つまり、特徴領域強調部104及び画像領域強調部105aにより、医用画像において血管と組織のコントラストが高くない場合においても、血管セグメンテーションを高精度に行い、セグメンテーション結果における血管の接続性を改善することができるということが実現されている。
【0121】
また、第5実施形態と第7実施形態について、それぞれ同一の肝血管セグメンテーションの具体例を適用し、セグメンテーション結果に係る肝静脈血管分岐及び門脈血管分岐の統計は表3に示す通りである。
【0122】
【0123】
表3に示す例では、第5実施形態の構成で肝血管セグメンテーションを行った結果、肝静脈血管分岐の統計として、アノテーションGT(教師データ)が「55」であるのに対して、予測結果が「45」であるため、その検出率は「82%」である。また、第7実施形態の構成で肝血管セグメンテーションを行った結果、肝静脈血管分岐の統計として、アノテーションGTが「55」であるのに対して、予測結果が「52」であるため、その検出率は「95%」である。
【0124】
表3に示す例では、第5実施形態の構成で肝血管セグメンテーションを行った結果、門脈血管分岐の統計として、アノテーションGT(教師データ)が「37」であるのに対して、予測結果が「34」であるため、その検出率は「92%」である。また、第7実施形態の構成で肝血管セグメンテーションを行った結果、門脈血管分岐の統計として、アノテーションGTが「34」であるのに対して、予測結果が「36」であるため、その検出率は「97%」である。
【0125】
表3から分かるように、特徴領域強調部104及び画像領域強調部105aを備える第7実施形態の構成では、第5実施形態の構成に比べて、アノテーションGTに対する、肝静脈及び門脈に関する予測結果の検出率は高く、それぞれ95%及び97%である。即ち、第7実施形態の構成では、第5実施形態の構成に比べて、血管セグメンテーションの精度が高い。
【0126】
このように、第7実施形態の構成では、特徴領域強調部104及び画像領域強調部105aにより、医用画像において血管と組織のコントラストが高くない場合においても、血管セグメンテーションを高精度に行い、セグメンテーション結果における血管の接続性を改善することができるということが実現されている。
【0127】
また、本実施形態によれば、深層学習モデルに基づく訓練やセグメンテーションを行う際に、GTにおいてアノテーションされている血管も、GTにおいてアノテーションされていない血管も予測され得る。これは、完全に漏れのない血管アノテーションを実現することが実際には困難であるためである。
【0128】
(変形例)
これまで実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0129】
また、主に肝血管セグメンテーションを例に説明したが、本実施形態は各種の器官の血管セグメンテーションに適用され得る。すなわち、医用画像において血管と組織のコントラストが高くない場合に限り、本実施形態を有効に適用することができる。
【0130】
なお、本実施形態に係る数値範囲は一例にすぎず、必要に応じて適宜設定や変更を行うことができる。
【0131】
また、本実施形態では、血管セグメンテーション装置及び血管セグメンテーション方法を具体的に説明したが、本実施形態はこれに限られるものではなく、医用画像処理装置、集積回路、プログラム及びプログラムが記録された媒体等を含む種々の形態で具体化してもよい。
【0132】
例えば、本発明に係る医用画像処理装置は、対象医用画像を取得する対象画像取得部と、上述の血管セグメンテーション装置と、血管セグメンテーション装置によるセグメンテーション結果を出力する出力部と、を備える。
【0133】
例えば、医用画像処理装置は、コンピュータであり、各処理機能を実行する処理回路と、当該各処理機能をコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶する記憶回路とを備える。例えば、医用画像処理装置の処理回路は、対象画像取得部、画像取得部101、深層学習モデル取得部102、セグメンテーション部103、出力部を備える。
【0134】
医用画像処理装置において、対象画像取得部は、例えば、通信インターフェースにより医用画像診断装置から対象医用画像を取得する。または、対象医用画像が予め記憶装置に記憶され、対象画像取得部は、記憶装置から対象医用画像を読み取って取得してもよい。記憶装置の一例として、例えば、医用画像処理装置の記憶回路に当該対象医用画像が記憶されてもよいし、PACSや画像保管装置に当該対象医用画像が管理されてもよい。さらに、対象画像取得部は、医用画像診断装置以外の装置により処理された対象医用画像を読み取ってもよい。
【0135】
ここで、対象医用画像は、医用画像診断装置により生成される。即ち、対象医用画像は、三次元画像であってもよいし、2次元画像であってもよい。
【0136】
また、医用画像処理装置において、画像取得部101がアノテーションGT(教師データ)及び複数枚の医用画像を取得する。深層学習モデル取得部102が、画像取得部101により取得された教師データ及び複数枚の医用画像に基づいて、少なくとも中心線強調損失関数、統計的形状制約損失関数を用いて深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを取得する。そして、セグメンテーション部103は、深層学習モデル取得部102により得られた訓練済み深層学習モデルに基づいて、対象画像取得部により取得された対象医用画像をセグメンテーションすることにより、血管に関するセグメンテーション結果を得る。出力部は、セグメンテーション部103により得られたセグメンテーション結果を出力する。
【0137】
上述の血管セグメンテーション装置の各構成は分散配置されてもよい。分散配置の一例として、例えば、訓練済み深層学習モデルは、深層学習モデル生成装置により生成されてもよい。例えば、深層学習モデル生成装置は、コンピュータであり、各処理機能を実行する処理回路と、当該各処理機能をコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶する記憶回路とを備える。例えば、深層学習モデル生成装置の処理回路は、画像取得部101と、深層学習モデル取得部102とを備える。
【0138】
深層学習モデル生成装置において、画像取得部101がアノテーションGT(教師データ)及び複数枚の医用画像を取得する。深層学習モデル取得部102が、画像取得部101により取得された教師データ及び複数枚の医用画像に基づいて、少なくとも中心線強調損失関数、統計的形状制約損失関数を用いて深層学習モデル訓練を行って得られた訓練済み深層学習モデルを取得する。取得された訓練済み深層学習モデルは、対象医用画像を入力することで、当該対象医用画像の血管に関するセグメンテーション結果を出力するモデルである。
【0139】
さらに、深層学習モデル生成装置の処理回路は、前処理部106を備えてもよい。この場合、深層学習モデル生成装置において、前処理部106は、画像取得部101により取得された複数枚の医用画像について前処理を行い、標準化医用画像を得る。深層学習モデル取得部102は、画像取得部101により取得された教師データ、及び、前処理部106により前処理された標準化医用画像に基づいて、訓練済み深層学習モデルを取得する。
【0140】
また、医用画像処理装置において、セグメンテーション部103は、例えば、通信インターフェースにより深層学習モデル生成装置から訓練済み深層学習モデルを取得し、訓練済み深層学習モデルに基づいてセグメンテーション結果を得る。または、セグメンテーション部103は、深層学習モデル生成装置が取得した訓練済み深層学習モデルを記憶する記憶装置にアクセスして、訓練済み深層学習モデルを取得し、訓練済み深層学習モデルに基づいてセグメンテーション結果を得る。記憶装置の一例として、例えば、深層学習モデル生成装置の記憶回路に当該訓練済み深層学習モデルが記憶されてもよいし、医用画像処理装置の記憶回路に当該訓練済み深層学習モデルが記憶されてもよいし、それ以外の記憶装置に当該訓練済み深層学習モデルが記憶されてもよい。
【0141】
なお、本実施形態で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0142】
また、本実施形態で説明した方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0143】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、医用画像において血管と組織のコントラストが高くない場合においても、血管セグメンテーションを高精度に行い、セグメンテーション結果における血管の接続性を改善することができる。
【0144】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0145】
100、100A、100B、100C、100D、100E 血管セグメンテーション装置
101 画像取得部
102 深層学習モデル取得部
103 セグメンテーション部