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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177092
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】水生生物の防除処理工法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20241212BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241212BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20241212BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241212BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20241212BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241212BHJP
   E04B 1/72 20060101ALN20241212BHJP
   E04B 1/92 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 D
C09D163/00
C09D7/63
C09D5/16
B05D7/00 D
E04B1/72
E04B1/92
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086368
(22)【出願日】2024-05-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2023095346
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】壁谷 康平
(72)【発明者】
【氏名】太田 伶美
(72)【発明者】
【氏名】三谷 誠
【テーマコード(参考)】
2E001
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
2E001DH11
2E001DH13
2E001EA01
2E001FA30
2E001GA06
2E001HD11
2E001KA01
4D075AE03
4D075CA06
4D075CA34
4D075DB12
4D075DC06
4D075EA41
4D075EB33
4D075EB42
4D075EC11
4J038DB061
4J038HA126
4J038JB04
4J038JB05
4J038JB27
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA09
4J038MA15
4J038NA05
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】多大な労力又はコストを要することなく、コンクリート水路内壁に付着する水生生物を効果的に防除する実用的な工法を提供する。
【解決手段】既設コンクリート水路の水生生物の防除処理工法であって、空気中に露出したコンクリート水路内壁面の一部が濡れたままの状態で、コンクリート水路内壁に、樹脂成分及び溶媒を含み、塗装時の不揮発分濃度が75質量%以下であり、イワタカップ法による粘度が30秒以下であるプライマー塗料を塗装する工程、及び前記塗装する工程におけるプライマー塗料が塗装された面に、樹脂成分及びシリコーンオイルを含む上塗り塗料を塗装し、養生する工程、を有する処理工法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設コンクリート水路の水生生物の防除処理工法であって、
空気中に露出したコンクリート水路内壁面の一部が濡れたままの状態で、コンクリート水路内壁面に、樹脂成分及び溶媒を含み、塗装時の不揮発分濃度が75質量%以下であり、イワタカップ法による粘度が30秒以下であるプライマー塗料を塗装する工程、及び
前記塗装する工程におけるプライマー塗料が塗装された面に、樹脂成分及びシリコーンオイルを含む上塗り塗料を塗装し、養生する工程
を有する処理工法。
【請求項2】
既設コンクリート水路の水生生物の防除処理工法であって、
コンクリート水路内部の水を排水してコンクリート水路内壁面を空気中に露出させる工程(1)、
コンクリート水路内壁面の一部が濡れたままの状態で、コンクリート水路内壁面に、樹脂成分及び溶媒を含み、塗装時の不揮発分濃度が75質量%以下であり、イワタカップ法による粘度が30秒以下であるプライマー塗料を塗装する工程(2)、
工程(2)におけるプライマー塗料が塗装された面に、樹脂成分及びシリコーンオイルを含む上塗り塗料を塗装し、養生する工程(3)、及び
コンクリート水路内部への導水を再開して、養生後のコンクリート水路内壁面を水に浸漬させる工程(4)、
を有する処理工法。
【請求項3】
コンクリート水路内の水を排水してコンクリート水路内壁面が空気中に露出されてからプライマー塗料の塗装を実施するまでの養生期間が、0.05~7日間である、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項4】
プライマー塗料に含まれる樹脂成分が、エポキシ樹脂及びポリアミン化合物を含む、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項5】
プライマー塗料が、顔料を含まないか、又は顔料体積濃度が15%以下である、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項6】
プライマー塗料の塗装後、常温で0.05~15日間養生させた後、工程(3)を実施する、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項7】
上塗り塗料に含まれる樹脂成分が、ポリシロキサン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項8】
上塗塗料の塗装後、常温で1~10日間養生させた後、工程(4)を実施する、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項9】
工程(1)における排水開始から工程(4)における導水再開までの養生期間の合計日数が2週間以内である、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項10】
コンクリート水路が、水力発電所に水を供給するための水路である、請求項1~9のいずれか1項に記載の処理工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生生物の防除処理工法に関する。
【背景技術】
【0002】
水力および火力発電所の水路には、トビケラなどの水棲昆虫類、水ごけなどの癬苔類、ムラサキ貝、マガキ及びフジツボなどの貝類などの水生生物が付着生息し、障害を起こすためその対策が必要とされている。このため、発電所水路内部への水生生物の付着を抑制する方法が種々研究されてきた。
例えば、特許文献1には、水経路中の少なくともその一部に2枚以上の導電性基材を設け、電極として機能するように配置すると共に、前記導電性基材間に通電することにより、前記導電性基材への水棲昆虫、もしくはその幼虫、もしくはその巣の付着防止及び/または除去することを特徴とする水棲昆虫の付着防止及び/または除去制御方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、配管の中を流れる淡水に対するオゾンなどの付着抑制剤の添加量を所定量に設定し、前記付着抑制剤を前記配管の内部に間欠的に添加することで、生物系付着物が前記配管の内壁に付着することを抑制することを特徴とする生物系付着物の付着抑制方法が提案されている。
【0004】
また、本出願人は特許文献3において、水中構築物の表面に厚塗り型防食塗膜を形成し、かつ厚塗り型防食塗膜表面に防汚性金属を露出させておくことを特徴とする防汚方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-247466号公報
【特許文献2】特開2017-192901号公報
【特許文献3】特開昭63-110269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水路に付着する水生生物の付着防止及び/または除去を行うために、電気化学的な装置を利用したり、塗料を用いて管内壁面に防汚機能を付与したりするなどの試みが古くからなされてきた。しかしながら、特許文献1及び2に記載の防除方法は大掛かりな装置とそれに伴うメンテナンスコストを要するわりに、水生生物の防除効果という点においても十分とは言い難い。また、特許文献3の塗料を用いる方法は、厚塗り型防食塗料を水中でコテを使用して塗装するものであり、広範囲の面積を処理するには長期間を要し不経済である。
【0007】
このように従来提案されている水生生物の防除方法は実用性に欠けているため、現状は定期的に水路の稼働を停止し、停止期間中に付着した水生生物を物理的に除去せざるを得ない状況である。物理的な除去方法とは、具体的には、コンクリート水路の場合、高圧水洗をしながらスクレーパーなどの器具を使用して人力で水生生物を剥がしとる方法である。ただしこの方法では除去作業を行う前にあらかじめ水路底面全体にシートを敷き、剥がしとった水生生物及びゴミなどの剥離物を回収しなければならない。この除去作業に加えて回収作業に要する労力は多大であり、水路の稼働停止期間も非常に長くなるため、水路への水生生物の付着を予防し、付着した水生生物を容易に除去する方法、すなわち防除方法の開発が必要とされている。
【0008】
本発明の目的は、多大な労力又はコストを要することなく、コンクリート水路内壁に付着する水生生物を効果的に防除する実用的な処理工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記した課題について鋭意検討した。その結果、濃度と粘度が特定範囲であるプライマー塗料をコンクリート水路内壁面が濡れたままの状態で塗装することでコンクリート水路内壁面を後続の上塗り塗料との付着性に優れる性質に改質でき、その上に特定の上塗り塗料を塗装する処理を行うことで、コンクリート水路内壁面が水中で流水摩耗に耐え、水生生物防除性を発揮せしめることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、
項1
既設コンクリート水路の水生生物の防除処理工法であって、
空気中に露出したコンクリート水路内壁面の一部が濡れたままの状態で、コンクリート水路内壁面に、樹脂成分及び溶媒を含み、塗装時の不揮発分濃度が75質量%以下であり、イワタカップ法による粘度が30秒以下であるプライマー塗料を塗装する工程、及び
前記塗装する工程におけるプライマー塗料が塗装された面に、樹脂成分及びシリコーンオイルを含む上塗り塗料を塗装し、養生する工程
を有する処理工法。
項2
既設コンクリート水路の水生生物の防除処理工法であって、
コンクリート水路内部の水を排水してコンクリート水路内壁面を空気中に露出させる工程(1)、
コンクリート水路内壁面の一部が濡れたままの状態で、コンクリート水路内壁面に、樹脂成分及び溶媒を含み、塗装時の不揮発分濃度が75質量%以下であり、イワタカップ法による粘度が30秒以下であるプライマー塗料を塗装する工程(2)、
工程(2)におけるプライマー塗料が塗装された面に、樹脂成分及びシリコーンオイルを含む上塗り塗料を塗装し、養生する工程(3)、及び
コンクリート水路内部への導水を再開して、養生後のコンクリート水路内壁面を水に浸漬させる工程(4)、
を有する、処理工法。
項3
コンクリート水路内の水を排水してコンクリート水路内壁面が空気中に露出されてからプライマー塗料の塗装を実施するまでの養生期間が、0.05~7日間程である、項1又は2に記載の処理工法。
項4
プライマー塗料に含まれる樹脂成分が、エポキシ樹脂及びポリアミン化合物を含む、項1又は2に記載の処理工法。
項5
プライマー塗料が、顔料を含まないか、又は顔料体積濃度が15%以下である、項1又は2に記載の処理工法。
項6
プライマー塗料塗装後、常温で0.05~15日間養生させた後、工程(3)を実施する、項1又は2に記載の処理工法。
項7
上塗り塗料に含まれる樹脂成分が、ポリシロキサン樹脂を含む、項1又は2に記載の処理工法。
項8
上塗塗料塗装後、常温で1~10日間養生させた後、工程(4)を実施する、項1又は2に記載の処理工法。
項9
工程(1)における排水開始から工程(4)における導水再開までの養生期間の合計日数が2週間以内である、項1又は2に記載の処理工法。
項10
コンクリート水路が、水力発電所に水を供給するための水路である、項1~9のいずれか1項に記載の処理工法。
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の処理工法は短期間でコンクリート水路内壁面に優れた水生生物防除性を付与することができる。また、本工法による処理面は流水摩耗耐性を有するので、水生生物防除性を長期間にわたって維持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
コンクリート水路:
本発明の処理工法の対象となるコンクリート水路とは、水を流すための人工的に造られた構造物をいい、形状、用途など制限はない。この水源としては河川、湖、池などの淡水が挙げられる。具体例としては、農業用水路、工業用水路、上下水道、水力発電所用水路等に用いられるコンクリート水路トンネルが挙げられる。また、本発明における前記水路の材質はコンクリートであり、前記水路は既に設置され、稼働状態にある場合には、内部に水流を有する。
【0013】
本発明工法は水力発電所に水を供給するための水路(導水路、取水路とも呼ばれる)への適用が有用である。水力発電所水路のコンクリート表面は吸水性がある凹凸面で、淡水を含んだ状態では藻が生えやすい。コンクリート表面に藻が生えるとその部分に種々の水棲昆虫が付着する。水力発電所に供給される淡水域に生息する水棲昆虫として、トビケラ類がよく知られている。トビケラ類は、水路内の壁面に大量に営巣または付着することにより、水量低下による発電効率低下の一因となる害虫として問題とされている。本発明の処理工法はトビケラ類などの水棲昆虫及び藻などの植物の防除効果が極めて優れているので、既設コンクリート水路の稼働を一時的に停止しても実施する意義がある。
【0014】
尚、本明細書における水生生物とは水中に生息する動物類だけでなく、藻などの植物類も包含する概念である。
【0015】
工程(1):
本発明工法において、工程(1)は次工程となる処理工程を実施するための準備工程である。すなわち前記コンクリート水路内部の水を排水してコンクリート水路内壁面を空気中に露出させる工程である。
【0016】
工程(2):
次いでコンクリート水路内壁面の一部が濡れたままの状態で、コンクリート水路内壁面にプライマー塗料を塗装する。本発明において、コンクリートが濡れた状態とは、コンクリート表面を手で触ったときに手が水で濡れる状態である、及び/又は、コンクリートが暗色の濡れ色を呈している状態をいう。コンクリートが水で濡れたときの色は乾燥コンクリートよりも暗色である。この暗色は「濡れ色」と呼ばれ、周知である。また、コンクリートは多孔質であるので、前記濡れたコンクリートはコンクリートが有する穴(巣穴)に水の存在が視認可能な状態である程度に水を含んだ状態であってもよい。一方で、コンクリートが乾燥した状態とは、コンクリート表面を手で触ったときに手が水で全く濡れない状態であり、且つ、暗色の濡れ色が全く見られない状態である。尚、コンクリート水路内壁面の濡れ具合は均一的である必要はなく、コンクリート水路内壁面全面が濡れていてもよいし、ムラがあってもよいし、部分的に乾燥している箇所があってもよい。乾燥している箇所がある場合、その面積比率は好ましくは多くても30%程度である。前記プライマー塗料は乾燥コンクリートに対しても十分に適用可能であるが、コンクリート内壁面全体が完璧に乾燥していると工期が長く、水路稼働停止期間が長くなり、不経済であるから好ましくない。
【0017】
また、本発明工法において、短時間で効率的に、且つ十分な水生生物防除性を発揮するにはコンクリート水路内壁面が適度に濡れている状態であることが重要である。理由は定かではないが、コンクリート水路内壁面が濡れているとむしろプライマー塗料の染み込み性が向上する。これは、プライマー塗料の不揮発分濃度が75%以下で粘度が30秒以下であることによって、コンクリート表層部及びコンクリート巣穴へプライマー塗料が入りやすくなるともに濡れたコンクリート表面にプライマー塗料がぬれ広がりやすくなるものと推定している。このように、コンクリート水路内壁面をプライマー塗料がしみ込みやすくなるような適度の濡れた状態にするためには、例えば、コンクリート水路内の水を排水してコンクリート水路内壁面が空気中に露出されてからプライマー塗料の塗装を実施するまでの養生期間を、常温で0.05~7日間程度にすることが好ましい。
【0018】
次いで本発明工法に使用されるプライマー塗料について説明する。
【0019】
プライマー塗料:
前記プライマー塗料は、樹脂成分及び溶媒を含み、塗装時の不揮発分濃度が75質量%以下であり、イワタカップ法による粘度が30秒以下となる塗料である。
【0020】
本発明工法に用いられるプライマー塗料が塗装時の不揮発分濃度が75質量%以下であり、且つイワタカップ法による粘度が30秒以下であることによって、水に濡れた状態のコンクリート表層部にプライマー塗料が十分に浸透しつつも、表面部にも残存して連続した膜を形成でき、コンクリート表面が後述の上塗り塗料と付着しやすくなるという効果がある。
プライマー塗料の不揮発分濃度が75質量%を超えると、コンクリート面/プライマー塗膜間及び/又はプライマー塗膜/上塗り塗膜間で剥がれ又は膨れが発生し、好ましくない。また、プライマー塗料の粘度が30秒を超えると、コンクリート面/プライマー塗膜間及び/又はプライマー塗膜/上塗り塗膜間で剥がれ又は膨れが発生し、好ましくない。
【0021】
プライマー塗料の不揮発分濃度としては、好ましくは、5質量%以上、15質量%以上、又は25質量%以上であり、好ましくは、65質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下である。不揮発分濃度は、塗料質量に対する塗料不揮発分質量の占める割合(%)である。
【0022】
また、プライマー塗料の粘度としては、イワタカップ法で、好ましくは、1秒以上、3秒以上、又は5秒以上であり、好ましくは、25秒以下、20秒以下、又は15秒以下である。
【0023】
本明細書において、不揮発分とは水や有機溶剤等の揮発する成分を除いた成分を指し、最終的に塗膜を形成することになる成分である。本発明では試料3.3gを130℃で1時間乾燥させた際に残存する成分を不揮発分として取り扱う。試料質量及び乾燥温度以外の測定条件はJIS K5601-1-2:2008に準じて行う。プライマー塗料が2液型塗料である場合など試料調整後に経時で反応が進行することがあるため、測定試料の調製は20℃で行い、試料調整後5分以内に乾燥を開始させるものとする。
【0024】
また、粘度は、プライマー塗料を塗装に用いる状態に調製した時点における粘度を意味する。本明細書ではイワタカップを用いて測定される粘度である。イワタカップ法では、粘度カップとして、アネスト岩田社製粘度カップNK-2を用いる。粘度カップには、その底部に、オリフィスが設けられている。本発明で規定する粘度は、まず、カップを試料に沈め、次に、試料からカップを引き上げ、そして、カップを引き上げてからカップ内の試料の流出が途切れるまでの時間(秒)を計測する。プライマー塗料が2液型塗料である場合など試料調整後に経時で反応が進行することがあるため、粘度測定は塗装直前のプライマー塗料を25℃に調整したものを試料とし、5分以内に測定を完了するものとする。
【0025】
プライマー塗料の粘度は、プライマー塗料製造時及び塗装時に調整できる。具体的にはプライマー塗料に含まれる不揮発分の含有量、樹脂の種類、塗料組成、溶剤量等によって調整可能である。また、粘度を調整するために公知の増粘剤を添加してもよい。
【0026】
樹脂成分:
前記プライマー塗料に含まれる樹脂成分は、塗膜形成成分となる成分であり、特に限定されるものではなく、水系、溶剤系、無溶剤系を問わず、塗料業界において通常使用されている樹脂及び架橋剤を例示することができる。具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、ポリアミン化合物、ポリイソシアネート化合物及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。濡れたコンクリート面に対する付着性の点で、特に樹脂成分がエポキシ樹脂及びポリアミン化合物を含むことが好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂は、1分子中に2以上のエポキシ基を有する樹脂である。具体的にはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、これらエポキシ樹脂のダイマー酸、脂肪酸等の変性剤により変性されたエポキシ樹脂及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。濡れたコンクリート及び後述の上塗り塗料に対する付着性の観点から、前記エポキシ樹脂は好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が好ましくは160g/eq以上、180g/eq以上であり、好ましくは1000g/eq以下、500g/eq以下の範囲内である。エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)を意味する。本明細書において、エポキシ当量はメーカー公表値もしくはJIS K 7236:2009に準じて測定されたエポキシ当量を意味する。
【0028】
ポリアミン化合物は、1分子中に2以上のアミノ基を有する化合物であり、具体的には脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、これらポリアミンのポリアミド及びその変性物、エポキシ化合物を付加させたエポキシアダクト体、マンニッヒ変性体、並びにこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0029】
前記ポリアミン化合物としては、1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物であり、具体的には脂肪族系ポリアミン、脂環族系ポリアミン、芳香族系ポリアミン化合物が挙げられる。脂肪族系ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン等が挙げられ、脂環族系ポリアミンとしては、4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナンジアミン(NBDA/2,5-及び2,6-ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)、イソホロンジアミン(IPDA/3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられ、芳香族系ポリアミンとしては、m-キシリレンジアミン(MXDA)、フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0030】
このようなポリアミン化合物の活性水素当量は、好ましくは40以上、又は80以上であり、好ましくは1,000以下、又は600以下である。活性水素当量は1グラム当量の活性水素を含む樹脂のグラム数(g/eq)である。本明細書では、活性水素当量はメーカー公表値、もしくはJIS K-7237:1986に準拠して測定される値である。
【0031】
前記樹脂成分の含有量としては、塗装時のプライマー塗料の質量100質量部を基準として好ましくは75質量部以下、55質量部以下、又は50質量部以下であり、好ましくは5質量部以上、又は15質量部以上である。
【0032】
溶媒:
前記溶媒としては有機溶剤であっても水であってもよい。
有機溶剤としては、塗料分野で使用される有機溶剤を制限なく使用できる。具体的には芳香族系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、エステル系有機溶剤、弱溶剤を挙げることができる。芳香族系有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン等が挙げられ、ケトン系有機溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、エーテル系有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、アルコール系有機溶剤としては、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等が挙げられ、弱溶剤としてはガソリン、灯油、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油、ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリットおよびミネラルターペンを含む)等が挙げられる。濡れたコンクリートに対する浸透性及びプライマー塗膜の付着性の観点から、前記溶媒は好ましくは弱溶剤を含む。あるいは、好ましくは芳香族系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤及びアルコール系有機溶剤の組み合わせを含む。また、芳香族系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及び弱溶剤の組み合わせはさらに好ましい溶媒の一例である。
【0033】
前記溶媒の含有量としては、濡れたコンクリートに対する浸透性の観点から、塗装時のプライマー塗料の質量100質量部を基準として好ましくは25質量部以上であり、好ましくは35質量部以上、55質量部以上、好ましくは95質量部以下、85質量部以下の範囲内である。
【0034】
その他成分:
前記プライマー塗料は樹脂成分及び溶媒以外に、顔料、シランカップリング剤、可塑剤、造膜助剤、防錆剤、硬化促進剤、沈降防止剤等を更に含んでいてもよい。
顔料:
顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、鉄‐マンガン複合酸化物、鉄‐銅‐マンガン複合酸化物、鉄‐クロム‐コバルト複合酸化物、銅‐クロム複合酸化物、銅‐マンガン‐クロム複合酸化物、酸化第二鉄(弁柄)、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等の着色顔料;炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、マイカ、クレー、シリカ、水酸化アルミニウム等の体質顔料等が挙げられる。
【0035】
本発明工法においては、プライマー塗膜のコンクリート表面及び後述の上塗り塗膜との付着性の観点から、プライマー塗料が顔料を含まないか、又は含有量が少ないことが望ましい。顔料体積濃度であれば、好ましくは15%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは0.5%以下である。本明細書において顔料体積濃度は、塗料中の全樹脂分と全顔料との合計固形分に占める当該顔料分の体積割合である。顔料の体積を算出する際のもとになる顔料の比重は、メーカー公表値もしくは「塗料原料便覧第9版」(社団法人日本塗料工業会)によるものであり、また、樹脂固形分の比重は1と近似するものとする。
プライマー塗料が顔料、特に着色顔料を少量含むことで、コンクリート水路内壁面に対する付着性を保ちつつも、プライマー塗料を塗装した箇所及びコンクリートへの浸透度合い、並びに後続の上塗り塗料の塗り残しが可視化されるという効果もある。
【0036】
シランカップリング剤としては、例えば、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-(2-アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0037】
前記プライマー塗料がシランカップリング剤を含有する場合、プライマー塗料不揮発分100質量部を基準とするシランカップリング剤の含有量は、濡れたコンクリート及び上塗り塗膜との付着性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、0.05質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、5質量部以下である。
【0038】
処理工程:
本発明工法において、上記濡れたコンクリート水路内壁面は前記プライマー塗料によって処理される。プライマー塗料の塗装方法としてはコンクリート水路内壁面に対して既知の塗装手段、例えば、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗装、コテ塗装、ヘラ塗装等の塗装手段を用いて、コンクリート内壁面へのプライマー塗料の吸収とコンクリート内壁面に対して連続膜が形成するように塗装する方法が挙げられる。塗装終了後の養生方法としては、常温放置であっても加熱又は冷却操作を実施してもよい。常温とは、大気温度により異なるが、強制的な加熱又は冷却などの温度操作を行なわない温度を指す。
【0039】
本発明では、プライマー塗料によって処理されたコンクリート内壁面を上塗り塗料が塗装しやすく、且つ形成された上塗り塗膜がプライマー塗膜と強固に付着し、水流によって剥離しにくくするために、プライマー塗料塗装後は常温で0.05~15日間養生させた後、上塗り塗料を塗装する工程(3)を実施することが好ましい。
【0040】
工程(3):
上塗り塗料:
本発明の処理工法において工程(3)で使用される上塗り塗料は、樹脂成分及びシリコーンオイルを含む塗料である。本発明工法では濡れたコンクリートに対して上述の工程(2)による処理を行うと共に前記上塗り塗料を塗装することによって、コンクリート塗装面が水流によって剥離せず長期間にわたって水生生物防除性を与え、そして維持される。
【0041】
樹脂成分:
前記上塗り塗料に含まれる樹脂成分としては、塗膜形成成分となる成分であり、特に限定されるものではなく、プライマー塗料の説明で例示した樹脂及び架橋剤を例示することができる。特に上塗り塗料としては水生生物防除性の観点から、樹脂成分が好ましくはポリシロキサン樹脂を含む。特に室温硬化性液状オルガノポリシロキサンが好ましい。室温硬化性液状ポリシロキサンとは、分子中に反応性官能基を有し、該反応性官能基が互いに反応するか、又は該反応性官能基基と反応可能な官能基を有する架橋剤と反応することにより三次元架橋構造のシリコーンゴムを形成して硬化するオルガノポリシロキサンである。
【0042】
反応性官能基としては、水酸基、オキシム基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基、アミド基、及びアミノオキシ基等が挙げられる。前記室温硬化性液状オルガノポリシロキサンは、塗装時は液状で、硬化後にシリコーンゴムを形成するため上塗り塗膜がゴム弾性を有することができ、水生生物防除性に効果があると考えられる。
前記室温硬化性液状オルガノポリシロキサンは、従来公知のものを使用でき、そして市販されている。市販品としては、信越化学工業株式会社製の一液型液状ゴム(RTVゴム)KE-シリーズ、東レ・ダウ社製DOWSILシリーズ等が挙げられる。
【0043】
シリコーンオイル:
前記シリコーンオイルは、上塗り塗膜表面に浮き出て、水生生物の付着防止に寄与するものであり、具体例としてはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられる。これらシリコーンオイルはアミノ基、エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基、ポリエーテル基、フェノール基、シラノール基、アクリル基、酸無水物基、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが付加された変性シリコーンオイルも包含される。
前記シリコーンオイルは、市販されているものを使用することができる。市販品としては、例えば、「KF-96」、「KF-50」、「X-22-2516」、「X-22-4272」、「KF-6020」(以上、信越化学株式会社製)、「FZ-2203」、「FZ-2160」(以上、東レ・ダウ社製)等が挙げられる。
【0044】
前記シリコーンオイルの含有量は、水生生物防除性の観点から、上塗り塗料100質量部を基準として好ましくは0.5質量部以上、又は5質量部以上であり、好ましくは50質量部以下、又は45質量部以下の範囲内である。
【0045】
その他成分:
前記上塗り塗料は樹脂成分及びシリコーンオイルの他に、必要に応じて、無機充填剤、シランカップリング剤、防汚剤、硬化触媒、脱水剤、着色顔料、有機溶剤、増粘剤等を含有していてもよい。必要に応じて配合される前記防汚剤としては、例えば、メデトミジン、トラロピリル、亜酸化銅、酸化亜鉛、銅ピリチオン、亜鉛ピリチオン及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
塗装方法:
前記上塗り塗料は、工程(2)にて処理されたコンクリート水路内壁面に対して既知の塗装手段、例えば、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗装、コテ塗装、ヘラ塗装等の塗装手段で塗装される。養生方法としては、常温放置であっても加熱又は冷却操作を実施してもよい。
【0047】
本発明では、前記プライマー塗膜と強固に付着し、流水摩耗に耐える上塗り塗膜を形成させる観点から、上塗り塗料塗装後は常温で1~10日間養生させた後、工程(4)を実施することが好ましい。
【0048】
工程(4):
本発明工法では、上塗り塗料を塗装後、養生させた後、コンクリート水路内部への導水を再開し、処理後のコンクリート水路内壁面を水に浸漬させる。本発明では前記プライマー塗料及び上塗り塗料によって処理されたコンクリート水路内壁面が再度水に浸漬されることによって、複合塗膜がコンクリートからはがれにくくなり、水生生物防除性を持続する効果がある。
また、本発明工法では工程(1)における排水開始から工程(4)における導水再開までの養生期間の合計日数が2週間以内であると有用である。本発明工法によれば、最小限の稼働停止期間で効果的にそして長期間にわたって水生生物防除性を付与することができる。
なお、工程(1)~(4)は、例えば工程(1)及び(4)は電力会社又は建設会社、工程(2)及び(3)は塗装業者のように、違う主体が実施することがあり得るが、同じコンクリート水路内壁に対して関連する複数の主体が共同して工程(1)~(4)を実施することにより本発明の処理工法を実施した場合も、本発明の処理工法を実施したものとみなされる。
【実施例0049】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0050】
<プライマー塗料>
製造例1~9
下記表1記載の配合組成でベース塗料及び硬化剤を製造し、2液型のプライマー塗料を製造した。試験では下記配合組成で各成分を撹拌混合してプライマー塗料(P-1)~(P-9)を得た。表中の性状値は、明細書に記載の方法で測定した値である。
【0051】
【表1】
【0052】
(注1)エポキシ樹脂A溶液:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量475g/eqのキシレン溶液
(注2)エポキシ樹脂B:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190g/eq
(注3)銅フタロシアニンブルー:比重1.5
(注4)チタン白:比重4.1
(注5)シリカ:比重2.2
(注6)ポリアミン化合物A:ポリアミンのエポキシアダクト化物、活性水素当量250g/eq
(注7)ポリアミン化合物B:変性脂肪族ポリアミン、活性水素当量178g/eq。
【0053】
<上塗り塗料>
上塗塗料としては下記上塗り塗料(T-1)~(T-5)を使用した。
【0054】
【表2】
【0055】
<試験体の作成及び評価試験>
実施例1~27及び比較例1~12
大きさが50×50×2cmのコンクリート板を、23℃の水に7日間没水し、水を十分に浸透させた後に引き上げ、23℃、相対湿度90%の恒温恒湿庫内にて表3記載の期間(プライマー塗装前養生期間)放置し、養生させた。本試験の条件では最長の養生時間でもコンクリート板は完全乾燥してはおらず、コンクリート表面を手で触ると水が手につくことが認められ、且つ面積全部が濡れ色であることが視認できる状態であり、すっかり濡れた状態であった。そしてコンクリートの表面が水で濡れたまま、表1記載の各プライマー塗料を刷毛にて、コンクリート巣穴内の水がプライマー塗料で置き換わるように、かつ処理後のコンクリート表面が連続したプライマー塗膜で覆われるようになるまで塗布した。
その後、表3記載の期間(上塗り塗装前養生期間)23℃で養生した後、表2記載の上塗り塗料を乾燥膜厚150μmとなるような条件でエアースプレー塗装し、23℃で7日間養生させ、試験体(X-1)~(X-39)を得た。
試験体は各条件に対して水浸漬試験用と導水路パネル試験用に2種類ずつ作成した。表3に試験体の作成条件と評価試験の結果を併せて示す。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
(*)コンクリート板引き上げ後から水浸漬するまでの養生期間の合計日数
水路の停止期間を想定し、コンクリート板を没水後、引き上げた時から下記水浸漬試験開始するまでの養生期間の合計日数を記載した。
【0059】
(*)水浸漬試験
各試験体を23℃の水に30日間浸漬し、引き上げた後、状態を目視観察し下記基準で評価した。
【0060】
コンクリート面からの膨れ及び剥がれ
◎:コンクリート面からの膨れ及び剥がれが全くなし
〇:コンクリート面からの膨れがやや認められるが剥がれは全くなし
△:コンクリート面からの膨れ及び剥がれが共にやや認められる
×:コンクリート面からの膨れ及び剥がれが共に著しく認められる
プライマー/上塗り層間の膨れ及び剥がれ
◎:プライマー/上塗り層間の膨れ及び剥がれが全くなし
〇:プライマー/上塗り層間の膨れがやや認められるが剥がれは全くなし
△:プライマー/上塗り層間の膨れ及び剥がれが共にやや認められる
×:プライマー/上塗り層間の膨れ及び剥がれが共に著しく認められる
【0061】
(*)導水路パネル試験
各試験体を、水力発電所の導水路に取り付け180日間水に浸漬させたのち、引き上げて以下の評価基準に基づき状態を評価した。
防藻性
◎:藻類の付着汚れが見られない
〇:藻類が薄く付着しているが、素地が見える程度である
△:藻類が付着しており、素地が見えない程度であるが、藻類の成長は確認できない
×:藻類の付着が著しく、素地が見えない程度であり、藻類の成長も確認できる
防虫性
◎:虫類の付着が全く見られない
〇:虫類の付着がごくわずかに認められる
△:虫類が付着しており、付着面積が30%以下
×:虫類の付着が著しく、付着面積が30%を超える
【手続補正書】
【提出日】2024-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設コンクリート水路の水生生物の防除処理工法であって、
空気中に露出したコンクリート水路内壁面の一部が濡れたままの状態で、コンクリート水路内壁面に、樹脂成分及び溶媒を含み、塗装時の不揮発分濃度が75質量%以下であり、イワタカップ法による粘度が30秒以下であるプライマー塗料を塗装する工程、及び
前記塗装する工程におけるプライマー塗料が塗装された面に、樹脂成分及びシリコーンオイルを含む上塗り塗料を塗装し、養生する工程
を有する処理工法。
【請求項2】
既設コンクリート水路の水生生物の防除処理工法であって、
コンクリート水路内部の水を排水してコンクリート水路内壁面を空気中に露出させる工程(1)、
コンクリート水路内壁面の一部が濡れたままの状態で、コンクリート水路内壁面に、樹脂成分及び溶媒を含み、塗装時の不揮発分濃度が75質量%以下であり、イワタカップ法による粘度が30秒以下であるプライマー塗料を塗装する工程(2)、
工程(2)におけるプライマー塗料が塗装された面に、樹脂成分及びシリコーンオイルを含む上塗り塗料を塗装し、養生する工程(3)、及び
コンクリート水路内部への導水を再開して、養生後のコンクリート水路内壁面を水に浸漬させる工程(4)、
を有する処理工法。
【請求項3】
コンクリート水路内の水を排水してコンクリート水路内壁面が空気中に露出されてからプライマー塗料の塗装を実施するまでの養生期間が、0.05~7日間である、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項4】
プライマー塗料に含まれる樹脂成分が、エポキシ樹脂及びポリアミン化合物を含む、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項5】
プライマー塗料が、顔料を含まないか、又は顔料体積濃度が15%以下である、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項6】
プライマー塗料の塗装後、常温で0.05~15日間養生させた後、工程(3)を実施する、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項7】
上塗り塗料に含まれる樹脂成分が、ポリシロキサン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項8】
上塗塗料の塗装後、常温で1~10日間養生させた後、工程(4)を実施する、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項9】
工程(1)における排水開始から工程(4)における導水再開までの養生期間の合計日数が2週間以内である、請求項1又は2に記載の処理工法。
【請求項10】
コンクリート水路が、水力発電所に水を供給するための水路である、請求項1又は2に記載の処理工法。