(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177095
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】一体型空気調和機及び防音室
(51)【国際特許分類】
F24F 1/029 20190101AFI20241212BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20241212BHJP
F24F 1/0373 20190101ALI20241212BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F24F1/029
F24F1/02 371F
F24F1/0373
E04H1/12 302C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086837
(22)【出願日】2024-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2023094469
(32)【優先日】2023-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519207974
【氏名又は名称】テレキューブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】間下 浩之
【テーマコード(参考)】
3L050
【Fターム(参考)】
3L050BA04
3L050BA05
3L050BC03
3L050BD05
3L050BE04
3L050BF03
(57)【要約】
【課題】執務空間における熱環境の変化をユーザに短時間で直接的に伝えることができる一体型空気調和機及びそれを備えた防音室を提供する。
【解決手段】キャビネット35内に冷房用の冷凍サイクルと、暖房用のヒータとを収容した一体型空気調和機28において、キャビネット前部は、開口方向が互いに直角をなす上面送風口と前面送風口とが設けられ、上面送風口には、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転可能に接続され、この鉛直方向に延びる回転軸に対して斜め方向に開口した上面側吹出管40が設けられ、前面送風口には、水平方向に延びる回転軸を中心に回転可能に接続され、この水平方向に延びる回転軸に対して斜め方向に開口した前面側吹出管42が設けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット内に冷房用の冷凍サイクルと、暖房用のヒータとを収容した一体型空気調和機において、
キャビネット前部は、開口方向が互いに直角をなす上面送風口と前面送風口とが設けられ、
前記上面送風口には、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転可能に接続され、前記鉛直方向に延びる回転軸に対して斜め方向に開口した上面側吹出管が設けられ、
前記前面送風口には、水平方向に延びる回転軸を中心に回転可能に接続され、前記水平方向に延びる回転軸に対して斜め方向に開口した前面側吹出管が設けられていることを特徴とする一体型空気調和機。
【請求項2】
前記キャビネットは、前面に前面吸気口が、後面に後面吸気口が、一側面に排気口がそれぞれ設けられ、
前記キャビネット内は、前後方向を仕切る第1仕切板が設けられることにより、後部側に後部側熱交換室が画成され、前部側は、更に上下方向を仕切る第2仕切板が設けられることにより、上部側に送風室が、下部側に前部側熱交換室がそれぞれ画成され、
前記後部側熱交換室は、前記冷凍サイクルを駆動する圧縮機が配置されるとともに、前記後面吸気口の位置に対応して凝縮器が、前記排気口の位置に対応して凝縮器用ファンがそれぞれ配置され、
前記前部側熱交換室は、前記前面吸気口の位置に対応して蒸発器が、前記第2仕切板の通風口の位置に対応して蒸発器用ファンがそれぞれ配置され、
前記送風室は、前記通風口の位置に対応して前記ヒータが配置されていることを特徴とする請求項1記載の一体型空気調和機。
【請求項3】
前記キャビネットの底部にドレン水処理部が設けられ、
前記ドレン水処理部は、前記蒸発器に発生した水滴を確保するタンクと、該タンク内に貯留したドレン水を霧化する霧化装置とを備え、
前記霧化装置で霧化されたドレン水は、前記後部側熱交換室に導かれることを特徴とする請求項2記載の一体型空気調和機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一体型空気調和機が設置されている可搬式の防音室において、
前記防音室は、
ユーザが入ることができる執務空間を形成する筐体と、該筐体に結合した扉とを備え、
前記執務空間は、テーブルと、該テーブルと対で使用される座席とが設けられた状態で、テーブル端の位置を境界として、テーブル側空間と座席側空間とに区分され、
前記一体型空気調和機は、前記キャビネットの一側面を筐体内壁面に沿わせ、かつ、前記テーブル側空間と前記座席側空間との両方にわたって配置され、
前記上面側吹出管及び前面側吹出管が前記座席側空間に設けられていることを特徴とする防音室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型空気調和機及び防音室に関し、詳しくは、屋内や屋外に設置して使用可能な可搬式の防音室及びそれに用いられる一体型空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
室内を静粛に保つための遮音性を有した防音室は、従来から、家庭や企業など様々な場所に設置され、種々の目的に使用されてきた。近年では、各企業におけるテレワークへの関心の高まりを受けて、テレワーカを対象とする可搬式の防音室が開発され、運用に至っている。こうした防音室の室内には、キャビネットに冷房用の冷凍サイクルを収容した一体型空気調和機(エアコン)が設置され、ユーザにとって快適な空気環境を簡易に実現することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された防音室は、一体型空気調和機をテーブル下に収めて前面送風口から冷風又は温風を吹き出す構成であり、天井に設けられた換気ファンとの相互作用で室内空間の温度設定が実現されている。しかしながら、送風口から吹き出した冷気は室内の空気よりも重く、暖気は室内の空気よりも軽いため、冷気又は暖気が熱環境の変化(清涼感、温熱感、気流感など)としてユーザに伝わるまでに時間を必要とし、特に、冬場の暖房運転では暖気が座席の足元付近に十分に行き渡らないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、執務空間における熱環境の変化をユーザに短時間で直接的に伝えることができる一体型空気調和機及びそれを備えた防音室を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一体型空気調和機は、キャビネット内に冷房用の冷凍サイクルと、暖房用のヒータとを収容した一体型空気調和機において、キャビネット前部は、開口方向が互いに直角をなす上面送風口と前面送風口とが設けられ、前記上面送風口には、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転可能に接続され、前記鉛直方向に延びる回転軸に対して斜め方向に開口した上面側吹出管が設けられ、前記前面送風口には、水平方向に延びる回転軸を中心に回転可能に接続され、前記水平方向に延びる回転軸に対して斜め方向に開口した前面側吹出管が設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、前記キャビネットは、前面に前面吸気口が、後面に後面吸気口が、一側面に排気口がそれぞれ設けられ、前記キャビネット内は、前後方向を仕切る第1仕切板が設けられることにより、後部側に後部側熱交換室が画成され、前部側は、更に上下方向を仕切る第2仕切板が設けられることにより、上部側に送風室が、下部側に前部側熱交換室がそれぞれ画成され、前記後部側熱交換室は、前記冷凍サイクルを駆動する圧縮機が配置されるとともに、前記後面吸気口の位置に対応して凝縮器が、前記排気口の位置に対応して凝縮器用ファンがそれぞれ配置され、前記前部側熱交換室は、前記前面吸気口の位置に対応して蒸発器が、前記第2仕切板の通風口の位置に対応して蒸発器用ファンがそれぞれ配置され、前記送風室は、前記通風口の位置に対応して前記ヒータが配置されていることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記キャビネットの底部にドレン水処理部が設けられ、前記ドレン水処理部は、前記蒸発器に発生した水滴を確保するタンクと、該タンク内に貯留したドレン水を霧化する霧化装置とを備え、前記霧化装置で霧化されたドレン水は、前記後部側熱交換室に導かれることを特徴としている。
【0009】
加えて、本発明の防音室は、前記一体型空気調和機が設置されている可搬式の防音室において、前記防音室は、ユーザが入ることができる執務空間を形成する筐体と、該筐体に結合した扉とを備え、前記執務空間は、テーブルと、該テーブルと対で使用される座席とが設けられた状態で、テーブル端の位置を境界として、テーブル側空間と座席側空間とに区分され、前記一体型空気調和機は、前記キャビネットの一側面を筐体内壁面に沿わせ、かつ、前記テーブル側空間と前記座席側空間との両方にわたって配置され、前記上面側吹出管及び前面側吹出管が前記座席側空間に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防音室によれば、執務空間の一側床上に設置した一体型空気調和機について、執務空間をテーブル端位置で区分してなるテーブル側空間と座席側空間とにわたって配置し、その一方側の座席側空間に位置したキャビネット前部に開口方向が互いに直角をなす上面送風口と前面送風口とを設け、上面送風口に接続して鉛直方向の回転軸を中心に回転可能な上面側吹出管が該回転軸に対して斜め方向に開口し、前面送風口に接続して水平方向の回転軸を中心に回転可能な前面側吹出管が該回転軸に対して斜め方向に開口しているので、テーブルに向かって着座したユーザの手の届く範囲に上面側吹出管及び前面側吹出管を設けることが可能となり、着座状態から手元の操作で各吹出管を任意に回転させて送風を自分の顔や足元付近に到達させることができる。すなわち、執務空間における冷気の清涼感や暖気の温熱感などがユーザに短時間で直接的に伝わり、特に、冬場の暖房運転では暖気を座席の足元付近に十分に行き渡らせることができる。
【0011】
また、キャビネット内に仕切板を設けて2つの熱交換室と1つの送風室とを画成し、そこに冷房運転及び暖房運転に必要な各種部品を機能的に配置したので、冷凍サイクル(圧縮機)とヒータとを選択的に稼働しながら、送風室の送風機能の共用化を図ることができる。さらに、冷房運転時に稼働するドレン水処理部を設けているので、霧化装置で霧化したドレン水(ミスト)を温風に乗せて室外に送出できるようになり、水抜き作業を必要としない実用性の高い一体型空気調和機の構成が得られ、もって防音室の適正な運用に寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一形態例を示す防音室の正面図である。
【
図15】同じく上面側吹出管及び前面側吹出管の向きを示す斜視図である。
【
図16】同じく上面側吹出管及び前面側吹出管の向きを示す平面図である。
【
図17】同じく上面側吹出管及び前面側吹出管の向きを示す前面図である。
【
図18】同じく前面側吹出管の向きを水平から下向きに回転操作した状態を示す前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図18は、本発明の一形態例を示すもので、防音室11は、
図1乃至
図6に示すように、筐体12と扉13とによって形成され、ユーザが入室して執務を行うことができる執務空間を有し、例えば、駅構内、空港、商業施設、展示場、屋外の広場、店舗の内部、ホテル、共同住宅、又はオフィス内のように、さまざまな人が通行する場所に設置される。また、防音室11は、インターネットなどのネットワークを介して外部機器との間でデータを送受信することができる。防音室11を利用するユーザは、例えば、防音室11に設置されたテレビ会議用端末を用いて、テレビ会議機能を有する外部機器を利用するユーザとの間でテレビ会議を行うことができる。
【0014】
筐体12は、金属、木材又は樹脂などの部材からなり、全体として高さ寸法の大きい直方体に形成され、その一側面である正面(
図1)に、ユーザが出入りするための開口が設けられている。また、筐体12の底面の四隅にはキャスター14及びその近傍にアジャスター15がそれぞれ設けられている。防音室11の設置者は、キャスター14を使って設置場所に防音室11を移動した後に、アジャスター15の長さが防音室11の底面と床面との距離に等しくなるように調整することで、防音室11を定位置に固定することができる。
【0015】
扉13は、筐体12の開口を塞ぐことができるように筐体12に結合されており、ハンドル13aを操作することにより、筐体12との結合部位を軸にして開閉可能な外開きの扉として構成されている。扉13には扉ガラス13bが設けられており、外部から防音室11の内部を視認することが可能になっている。
【0016】
筐体12の内側には吸音材が設けられており、防音室11の内部でユーザが話した声、及び外部機器を使用するユーザが発した声が防音室11の外部に漏れにくい。したがって、防音室11が、不特定多数の人が通る公共場所に設置されている場合であっても、ユーザは、機密性が高い内容を安心して話すことができる。また、床材の仕様は、枠組みされた基材の内側に梁が複数介在されることによって上下床板の間に床下空間が形成された二重床の構造となっており、人の出入りや座席16などの支持に必要な強度が確保されている。さらに、防災上の観点から、内壁面の吸音材や床面に敷き詰めたタイル材については不燃性のものが使用されている。
【0017】
座席16は、大人一人が若干の余裕をもって着座できるだけの幅を有して形成され、背もたれ16aが筐体12の幅方向(
図6の左右方向)に互いに対向する内壁面のうちの一方の内壁面12aに近接して配置されており、他方の内壁面12bには、着座した状態で使用可能なテーブル17が片持ち状に取り付けられている。
【0018】
テーブル17は、筐体12の奥行き方向(
図6の上下方向)に延び、扉13を室内側に向かって回転投影した投影線18との重なりを有する範囲において、テーブル端(縁部)19が直線状あるいは曲線状に切除されることで、扉13から奥行き方向に離間する扉離間部20を有している。
【0019】
執務空間は、一組の座席16及びテーブル17が配置された状態で、ユーザの出入りを妨げず、かつ、執務を行うユーザの利便性を損なわない程度の大きさで、直方体を形成する高さ、幅及び奥行きの各寸法が設定されている。また、執務空間は、
図6などに示すように、テーブル端19の位置を境界として、テーブル17が配置されるテーブル側空間21と、座席16が配置される座席側空間22とに区分されている。両空間21,22は、基本的に、執務空間を幅方向に概略2等分して得られるものである。
【0020】
筐体12と扉13との間には錠(図示せず)が設けられており、筐体12に組み込まれた制御部(CPU)の制御により、扉13を開くことができる解錠状態と扉13を開くことができない施錠状態とを切り替える。錠は、筐体12の内側からユーザが操作することによって解錠状態と施錠状態とを切り替えたり、遠隔操作によって切り替えたりすることで、防音室11を解錠又は施錠するように制御がなされる。
【0021】
また、筐体12の正面側には、ユーザの操作を受け付ける操作受付部23が設けられている。操作受付部23は、例えば、タッチパネル付きのディスプレイであり、ユーザにより入力された使用予定時間として、30分、60分、90分のいずれか一つの時間を受け付ける。さらには、スマートフォンなどの情報端末から、あらかじめ日時を指定した予約も行える。ユーザは、予約した時間になったら、自分が予約した防音室11の操作受付部23をタッチし、画面に表示されたQRコード(登録商標)を情報端末で読み取る。そして、ネットワーク上の管理装置(サーバ)において、ユーザ識別情報に基づく必要な認証が完了すると、防音室11が解錠されて入室可能な状態となる。決済される料金は、使用予定時間に応じて決定されており、決済が完了してから使用予定時間が経過するまでの間、防音室11の内部に設けた電子機器に電力が供給される。
【0022】
前記電子機器は、筐体12に組み込まれた電源部から電力供給を受けて機能を発揮し、常設されたテレビ会議用の設備24、筐体12の天井12cに設置された照明25、監視カメラ26、スピーカ27及び空調設備、並びにユーザが持ち込んだコンピュータ又は携帯端末などである。空調設備は、防音室の内部空間を換気するとともに、内部温度を調整するもので、例えば、床12d上に設置された冷暖房用の一体型空気調和機(エアコン)28や、天井12cに設置された換気ファン29が挙げられる。一体型空気調和機28の具体的な構成については後述する。
【0023】
前記制御部は、外部の電源コンセントと電源部とが配線された状態で、ユーザ認証が完了した管理装置から指示を受けると、空調設備など各種電子機器に対して電源部による電力供給を開始させる制御を行う。すなわち、これらの機器は、制御部による制御に基づいて、決済が完了してから使用予定時間が経過するまでの間、動作する。また、ユーザは、
必要に応じて、室内に設けられた電子機器の接続ポート30を使用して給電を受けることができる(
図4)。
【0024】
防音室11の天井12cには、防災設備の一つとして、自動消火装置31が設けられている。自動消火装置31は、電源を必要としない下方放出型の消火装置(スプリンクラー)であって、消火剤が充填された消火剤容器32と、該消火剤容器32の下端中央に設けられ、内蔵される熱感知部の感知を受けて消火剤を室内に放出可能な放出ノズル33とを一体的に備えている。熱感知部には低融点金属が使用され、火災が発生した非常時に、放出ノズル33の下端にある集熱板が火災源からの熱を感知すると、低融点金属が融けるとともに、容器内の加圧されたガスが密閉栓及び集熱板を吹き飛ばし、消火剤の放出が始まる。
【0025】
自動消火装置31は、防音室11の機能性を失わないように、その取付位置が照明25や、スピーカ27、換気ファン29、各種カバー部材34などの配置を考慮して設定されている(
図3)。特に、放出ノズル33の位置、つまり熱感知部の位置と換気ファン29の位置とは、換気ファン29の作動によって形成した上昇気流で、火災源からの熱の上昇を促進させるように、互いに横並びの関係になるように設けられている。
【0026】
ところで、防音室11には、通常の使用状態において、室内で執務を行うユーザに熱的な不快感を与えることなく、快適な空気環境を提供できる空調が望まれている。特に、防音室11を駅構内などの公共施設に設置することを考えると、夏期においては、外気温度に比べて高温となり、一方、冬季においては、熱はすぐに天井12cに上がってしまうため、床12dの近くが底冷えとなる。このような事情から、防音室11の床上には、室内を冷房又は暖房に適した状態に整える一体型空気調和機28が設置されている。
【0027】
図7乃至
図18は、本発明の防音室11に適用した一体型空気調和機28を示すものである。一体型空気調和機28は、冷房用の冷凍サイクルと、暖房用の発熱体であるPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータとを同一キャビネット内に収容したものであって、付属の操作パネルを操作することにより、冷房運転又は暖房運転の運転モードの選択や設定温度の入力が可能になっている。
【0028】
キャビネット35は、防災の観点から優れた板金構造を有し、
図7乃至
図15に示すように、座席側空間22から前面35aを正対して見たときに(
図8)、左右幅の狭い矩形箱状に形成され、右側面35bを扉側と反対側の筐体内壁面12eに沿わせ、かつ、テーブル側空間21と座席側空間22との両方(前後空間)にわたって配置されている。これにより、一体型空気調和機28は、
図4乃至
図6に示すように、キャビネット35の底部に設けられた4箇所の支持脚36にて水平に支持されるとともに、キャビネット35の前後方向長さの2/3程度がテーブル17の下に程よく収まった状態に置かれる。こうして、執務空間奥側のテーブル17下に配置されたキャビネット35により、その左側面35c側の空間があけられて、座席16の足元スペースが広く確保される。
【0029】
座席側空間22に位置したキャビネット35の前部、すなわち、主に上面35dと前面35aとで作られる前側上角部は、
図14に示すように、円形状の開口とした開口方向が互いに直角をなす上面送風口37と前面送風口38とが設けられている。ここで、
図15に示すように、上面送風口37には、鉛直方向に延びる回転軸39を中心に回転可能に接続され、この鉛直方向に延びる回転軸39に対して斜め方向(矢印Aの方向)に開口した上面側吹出管(例えば45度のエルボ管)40が設けられている。一方、前面送風口38には、水平方向に延びる回転軸41を中心に回転可能に接続され、この水平方向に延びる回転軸41に対して斜め方向(矢印Bの方向)に開口した前面側吹出管(例えば45度のエルボ管)42が設けられている。
【0030】
上面側吹出管40及び前面側吹出管42は、部品共通化が図られ、互いの回転軸39,41同士が直角に交わる交点Pを有している(
図15)。各吹出管40,42の具体的構成は、曲げ角度を例えば45度で形成した円筒体43を中心に構成され、該円筒体43の両端開口に、送風口37,38と同心に組み付けられる円環板状のフランジ44と、円筒体43で導かれた気流を放出するスリット孔を複数備えた円板状の蓋体45とが設けられている。
【0031】
フランジ44は、複数枚のゴムプレートで形成した円環状溝部(図示せず)に係合し、外側から金属プレート46によって弾性的に押圧されている。この取付状態で、各吹出管40,42は、テーブル17に向かって着座したユーザの手の届く範囲、換言すると、腕の曲げ伸ばし動作のみで届く範囲に配置され、人手による回転操作を受け付けると、フランジ44がゴムプレートに対して摺動回転し、斜めの開口向き、すなわち、送風口37,38からの気流の放出向きが変更される。
【0032】
蓋体45は、円筒体43の外径よりも若干大きく形成されており、手指を掛けるのに都合のよい形状、すなわち、吹出管40,42の回転操作を行うときの滑り防止、握りやすさ(グリップ感)の向上が図れる形状となっている。また、連続したスリット孔が設けられているので、テーブル面からの落下物が吹出管40,42の内部に入り込む心配がなく、デザイン性にも優れている。
【0033】
ここで、キャビネット35の前面35aには、室内の空気を取り入れるための前面吸気口47が設けられている(
図8)。また、キャビネット35の後面35eについても、室内の空気を取り入れるための後面吸気口48が設けられている(
図11)。キャビネット35の右側面35bは、
図9に示すように、テーブル側空間21に対応した位置に排気口49が設けられている。排気口49は、円筒状の排気ダクト(例えばストレート管)50が気密に接続されており、排気口49からの温風の通気性を確保している。さらに、
図4及び
図6などに示すように、排気ダクト50の先端部は、筐体12の壁穴にダクトカバー51を嵌めて形成した放出部に挿入されている。
【0034】
キャビネット35内は、
図13及び
図14に示すように、第1仕切板52が設けられることにより、前後方向の一方の後部側(
図13の左側)に後部側熱交換室53が画成され、他方の前部側は、更に第2仕切板54が設けられることにより、上下方向の上部側に送風室55が、下部側に前部側熱交換室56がそれぞれ画成されている。また、キャビネット35の底部には、冷房運転時に稼働するドレン水処理部57が設けられている。
【0035】
主な構成部品として、後部側熱交換室53には、圧縮機58が配置されるとともに、後面吸気口48の位置に対応して凝縮器59が、排気口49の位置に対応して凝縮器用ファン60が、適正な通風を考慮した向きでそれぞれ配置されている。一方、前部側熱交換室56には、前面吸気口47の位置に対応して蒸発器61が、第2仕切板54の通風口54aの位置に対応して蒸発器用ファン62が、適正な通風を考慮した向きでそれぞれ配置されている(
図14)。
【0036】
ここで、第1仕切板52及び第2仕切板54は、例えば、板面からの曲げ角度が略45度の板曲げ部を有してキャビネット35内に組み付けられ、互いの板面同士の間に設けられた側面視三角形状の空間63に蒸発器用ファン62の吹出口が位置している。これにより、蒸発器用ファン62は、取付状態で、送風室55の角隅部64を狙うように風の吹出向きが斜め上向きに設定される。
【0037】
送風室55は、キャビネット35における前側上角部の内部空間を形成し、第2仕切板54の通風口54aの位置に対応してPTCヒータ65が配置されている。また、蒸発器用ファン62からの送風、より具体的には、PTCヒータ65を通過した送風を上面側吹出管40及び前面側吹出管42に導く2枚の整流板66が設けられている(
図13)。送風は、キャビネット35の左右側面35b,35cの板と上下の整流板66からなる矩形断面の通風路を通って、上面及び前面の各送風口37,38へと送出される。
【0038】
ドレン水処理部57は、図示は省略するが、蒸発器61に発生した水滴を確保するタンクと、タンク内に貯留したドレン水を霧化する霧化装置とを備えている。例えば、タンク内の水位が設定値に達すると、通電された振動子が超音波を発生してドレン水を霧化する。この霧化されたドレン水(ミスト)は、上昇して後部側熱交換室53へと導かれる。複数の振動子を設けることにより、1つの振動子が故障しても、ドレン水を霧化することが可能になっている。
【0039】
[冷房運転時]
このように形成された一体型空気調和機28を使用する場合、冷房運転時には、PTCヒータ65の回路がオフ状態にあり、圧縮機58の駆動によって冷凍サイクルが運転される。これにより、冷媒は、圧縮機58によって高圧状態となり、凝縮器59に送られ、凝縮器59によって凝縮して放熱される。さらに、膨張弁を経由した低温の冷媒は、蒸発器61に送られ、蒸発器61によって吸熱(冷房効果)し、低圧状態となって圧縮機58に戻される。
【0040】
ここで、凝縮器用ファン60の作動により後面吸気口48から取り込まれた空気(室内空気)は、凝縮器59で昇温され、温風となって凝縮器用ファン60から吹き出した後、排気口49を抜けて排気ダクト50を通り、筐体12の外部空間(室外)へと送出される。
【0041】
蒸発器用ファン62の作動により前面吸気口47から取り込まれた空気(室内空気)は、蒸発器61で冷却され、冷風となって蒸発器用ファン62から吹き出した後、送風室55内で、送風が上方に向かう風と前方に向かう風とに分流される。そして、上方に向かう風は上面送風口37を抜けて上面側吹出管40に導かれ、該上面側吹出管40の曲げ作用で斜め方向に向きを変えてから執務空間(室内)へと送出される。一方、前方に向かう風は前面送風口38を抜けて前面側吹出管42に導かれ、該前面側吹出管42の曲げ作用で斜め方向に向きを変えてから執務空間(室内)へと送出される。こうして、一体型空気調和機28の冷房運転が行われる。
【0042】
前面吸気口47から取り込まれた空気が蒸発器61で冷却される際に、蒸発器61に水滴が発生する。蒸発器61内の受け皿(図示せず)に溜まった水滴は、排水口(図示せず)からドレン水処理部57のタンク内に流れる。タンク内の水位が設定値に達するとドレン水が霧化されて、ミストが生成される。生成されたミストは、後部側熱交換室53の底面の開口から立ち昇り、上述した外部空間(室外)へと送出される温風とともに、室外に送出される。これにより、冷房運転時において、ドレン水の水抜き作業が不要となる。
【0043】
[暖房運転時]
暖房運転時には、冷凍サイクルの運転が停止され、PTCヒータ65の回路がオンの状態になる。これにより、暖房運転においても兼用される蒸発器用ファン62の作動により前面吸気口47から取り込まれた空気が昇温され、温風となって送風室55内に流れ込んだ後、上面側及び前面側の各吹出管40,42を通って執務空間(室内)へと送出される。こうして、一体型空気調和機28の暖房運転が行われる。PTCヒータ65は、温度が上がると抵抗値も上がるPTC特性を利用したヒータであるため、一定の温度に達したら、それ以上に温度が上がらなくなることで過加熱を防止し、省エネ性、安全性を確保している。
【0044】
暖房運転時には、冷凍サイクルの運転が停止されていることから、蒸発器61による結露がないため、ドレン水が発生することはない。よって、暖房運転時には、ドレン水処理部57が稼働することはない。
【0045】
このように形成された防音室11は、操作パネルの操作により一体型空気調和機28を起動した後、着座状態から手元の操作で各吹出管40,42を任意に回転させ、冷風又は温風を自分の顔や足元付近に集中して吹き出すことができる。例えば、
図16及び
図17に示すように、使用開始時において、上面側吹出管40は、テーブル端19の前側に位置した状態で、テーブル端19を含む鉛直面に沿った向きで、かつ、斜め上向きの風を吹き出す。これにより、
図4乃至
図6から想像できるように、送風がユーザの顔に直接当たり、特に夏場の冷房運転では、汗の蒸発が促進されて高い清涼感を得ることができる。
【0046】
ここで、前面側吹出管42の向きに注目すると、
図16及び
図17に表された状態では、座席16に向かって水平方向に風を吹き出している。この状態で、前面側吹出管42を反時計回りに回転操作した場合、
図18に示すように、水平方向からの回転角度θを例えば60度に設定することで、座席16の下に入り込むように斜め下向きの風を吹き出す。これにより、送風が床近傍に届きやすくなり、特に冬場の暖房運転では、足元(ふくらはぎ部分)に得られる温熱感を持続させることができる。
【0047】
このように、本発明の防音室11によれば、執務空間の一側床上に設置した一体型空気調和機28について、執務空間をテーブル端19位置で区分してなるテーブル側空間21と座席側空間22とにわたって配置し、その一方側の座席側空間22に位置したキャビネット35前部に開口方向が互いに直角をなす上面送風口37と前面送風口38とを設け、上面送風口37に接続して鉛直方向の回転軸39を中心に回転可能な上面側吹出管40が該回転軸39に対して斜め方向に開口し、前面送風口38に接続して水平方向の回転軸41を中心に回転可能な前面側吹出管42が該回転軸41に対して斜め方向に開口しているので、テーブル17に向かって着座したユーザの手の届く範囲に上面側吹出管40及び前面側吹出管42を設けることが可能となり、着座状態から手元の操作で各吹出管40,42を任意に回転させて送風を自分の顔や足元付近に到達させることができる。すなわち、執務空間における冷気の清涼感や暖気の温熱感などがユーザに短時間で直接的に伝わり、特に、冬場の暖房運転では暖気を座席16の足元付近に十分に行き渡らせることができる。
【0048】
また、キャビネット35内に仕切板52,54を設けて2つの熱交換室53,56と1つの送風室55とを画成し、そこに冷房運転及び暖房運転に必要な各種部品を機能的に配置したので、冷凍サイクル(圧縮機58)とヒータ65とを選択的に稼働しながら、送風室55の送風機能の共用化を図ることができる。さらに、冷房運転時に稼働するドレン水処理部57を設けているので、霧化装置で霧化したドレン水(ミスト)を温風に乗せて室外に送出できるようになり、水抜き作業を必要としない実用性の高い一体型空気調和機28の構成が得られ、もって防音室11の適正な運用に寄与するものとなる。
【0049】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、防音室には空調や防災に関する設備の他に、必要な各種設備を備えることができる。また、筐体の形状は、直方体に限られず、円柱体形状であってもよく、機動的な可搬式防音室の利点が損なわれない範囲で、一人だけでなく二人以上の収容が可能な空間を有して形成することができる。この場合、ユーザに熱的な不快感を与えず、執務空間を快適に使用できる範囲で、機材や空調設備の構成、配置を変更することができる。
【0050】
さらに、一体型空気調和機の仕様は、キャビネットの前側上角部に直角に配される2つの吹出管を備えていれば種々のものが採用でき、キャビネットの板金構造(仕切板、整流板などの形状、配置を含む)やキャビネットに収容される機器の配置も適宜に変更できる。加えて、吹出管の形状や大きさ(外径、曲げ角度など)は任意であり、例えば、フレキシブルダクトのような柔軟性のある管を用いて形成してもよい。また、使用上、上面側及び前面側の各吹出管の向きは特に限定されず、必要により適宜回転させて、風の吹出向きをユーザにとって最適な向きに調節することができる。
【符号の説明】
【0051】
11…防音室、12…筐体、12a,12b…内壁面、12c…天井、12d…床、12e…内壁面、13…扉、13a…ハンドル、13b…扉ガラス、14…キャスター、15…アジャスター、16…座席、16a…背もたれ、17…テーブル、18…投影線、19…テーブル端、20…扉離間部、21…テーブル側空間、22…座席側空間、23…操作受付部、24…設備、25…照明、26…監視カメラ、27…スピーカ、28…一体型空気調和機、29…換気ファン、30…接続ポート、31…自動消火装置、32…消火剤容器、33…放出ノズル、34…カバー部材、35…キャビネット、35a…前面、35b…右側面、35c…左側面、35d…上面、35e…後面、36…支持脚、37…上面送風口、38…前面送風口、39…回転軸、40…上面側吹出管、41…回転軸、42…前面側吹出管、43…円筒体、44…フランジ、45…蓋体、46…金属プレート、47…前面吸気口、48…後面吸気口、49…排気口、50…排気ダクト、51…ダクトカバー、52…第1仕切板、53…後部側熱交換室、54…第2仕切板、54a…通風口、55…送風室、56…前部側熱交換室、57…ドレン水処理部、58…圧縮機、59…凝縮器、60…凝縮器用ファン、61…蒸発器、62…蒸発器用ファン、63…空間、64…角隅部、65…PTCヒータ、66…整流板