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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177104
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】成型設備および入れ子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20241212BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20241212BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20241212BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/38
B22C9/06 C
B22D17/22 C
B22D17/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090540
(22)【出願日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】63/506,612
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 旭
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄大
【テーマコード(参考)】
4E093
4F202
【Fターム(参考)】
4E093NA01
4E093NB01
4E093NB07
4E093NB10
4F202AM32
4F202AR13
4F202AR14
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CD30
4F202CK42
4F202CK81
4F202CN05
4F202CN30
(57)【要約】
【課題】入れ子を有する金型を用いて成型を行う成型設備において、入れ子が蓄熱しにくくなり、それによって成型サイクルが長くなるのを回避できるようにする。
【解決手段】製品の形状の少なくとも一部を成型するための入れ子を有する金型を用いて製品の成型を行う成型設備において、前記入れ子は中空部分を有するようにした。また、入れ子の内部の中空部分は、複数の面で囲われた単位空間を形成する格子が連結した3次元メッシュ構造で構成されているようにした。そして、3次元メッシュ構造は、例えば複数の立方体格子が縦方向および横方向に連結した構成、あるいは縦方向の柱状部材と横方向の柱状部材と斜め方向の柱状部材とが交差して連結されたトラス構造とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の形状の少なくとも一部を成型するための入れ子を有する金型を用いて製品の成型を行う成型設備であって、
前記入れ子は中空部分を有することを特徴とする成型設備。
【請求項2】
前記入れ子の前記中空部分は、複数の面で囲われた単位空間を形成する格子が連結した3次元メッシュ構造で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の成型設備。
【請求項3】
前記単位空間を構成する格子は、少なくとも一面が開放されていることを特徴とする請求項2に記載の成型設備。
【請求項4】
前記3次元メッシュ構造は、複数の立方体格子が垂直方向および水平方向に連結して構成されていることを特徴とする請求項3に記載の成型設備。
【請求項5】
前記3次元メッシュ構造は、縦方向の柱状部材と横方向の柱状部材と斜め方向の柱状部材とが交差結合されたトラス構造であることを特徴とする請求項3に記載の成型設備。
【請求項6】
前記中空部分の体積は前記入れ子の外殻部分の体積よりも大きいことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の成型設備。
【請求項7】
前記入れ子の外殻部分には、当該外殻部分の表面から前記中空部分まで貫通するエア注入孔が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の成型設備。
【請求項8】
前記外殻部分には、当該外殻部分の表面から前記中空部分まで貫通するエア排出孔が設けられ、前記エア注入孔から注入されたエアが前記中空部分を経由して前記エア排出孔より当該入れ子の外部へ排出可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の成型設備。
【請求項9】
前記外殻部分は矩形状をなしており、
前記エア注入孔と前記エア排出孔は、前記外殻部分の別の面に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の成型設備。
【請求項10】
前記入れ子の外殻部分には、当該外殻部分の表面から前記中空部分まで貫通するエア注入孔とエア排出孔とが設けられ、
前記中空部分には、前記エア注入孔から前記エア排出孔に至るエア通路が設けられており、
前記単位空間を構成する格子は、少なくとも前記エア通路に面した格子面が開放されていることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の成型設備。
【請求項11】
前記中空部分は真空であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の成型設備。
【請求項12】
前記入れ子は3次元積層技術を利用した3次元造形装置により形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の成型設備。
【請求項13】
前記入れ子は廃棄する際の環境への負荷が小さな材料で形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の成型設備。
【請求項14】
内部が中空であり製品の形状の少なくとも一部を成型するための入れ子を、内部を真空状態にすることが可能な容器内に配設された3次元積層技術を利用した3次元造形装置により製造する入れ子の製造方法であって、
前記容器の内部を真空状態に移行させる工程と、
内部が真空状態である前記容器内において前記3次元造形装置により製品を成型する工程と、
前記容器の内部を当該容器の外部の圧力と同一の圧力に移行させる工程と、
を有することを特徴とする入れ子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を用いた成型設備およびメインの金型に嵌め込んで使用する入れ子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型を用いて射出成型法等で樹脂成型品を製造する場合、溶融された樹脂材により金型の温度が高くなり成型サイクルが長くなるのを防止するために、金型本体に冷却通路を設け金型を冷却するなどの温度調節を実施している。
【0003】
また、射出成型等においては、金型本体に対して挿抜可能な入れ子を用いることもあり、入れ子を用いた成型においては、入れ子が蓄熱して成型品が冷却しにくくなるため、入れ子を冷却することも行われている。
例えば特許文献1には、入れ子に冷却水を流す冷却通路を設けて入れ子を冷却可能にした金型およびその製造方法に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-66048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却通路を備えた入れ子にあっては、入れ子に設けた冷却通路に冷却水を流す冷却水循環装置を設ける必要があるため、金型および成型設備が複雑かつ大型になるという問題がある。
【0006】
そこで、本出願人は、入れ子を熱伝達性の良い材料(例えばベリリム銅)で製造し、入れ子の熱を主型(メインの金型)へ伝達させることによって、入れ子の温度上昇を抑える技術について検討した。その結果、成型サイクルが長くなるのを回避することができるものの、入れ子の材料としてベリリム銅を選択した場合、劣化した入れ子を廃棄する際に環境への負荷が大きくなるおそれがあるという課題があることが分かった。
【0007】
本発明は、上記のような背景の下になされたもの、入れ子を有する金型を用いて成型を行う成型設備において、入れ子を蓄熱しにくい構造とし、それによって成型サイクルが長くなるのを回避できるようにすることを目的とする。
本発明の他の目的は、廃棄する際の環境への負荷を軽減することができる入れ子を備えた成型設備および入れ子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
製品の形状の少なくとも一部を成型するための入れ子を有する金型を用いて製品の成型を行う成型設備であって、
前記入れ子は中空部分を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の成型設備において、
前記入れ子の前記中空部分は、複数の面で囲われた単位空間を形成する格子が連結した3次元メッシュ構造で構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の成型設備において、
前記単位空間を構成する格子は、少なくとも一面が開放されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の成型設備において、
前記3次元メッシュ構造は、複数の立方体格子が垂直方向および水平方向に連結して構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の成型設備において、
前記3次元メッシュ構造は、縦方向の柱状部材と横方向の柱状部材と斜め方向の柱状部材とが交差結合されたトラス構造であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の成型設備において、
前記中空部分の体積は前記入れ子の外殻部分の体積よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の成型設備において、
前記入れ子の外殻部分には、当該外殻部分の表面から前記中空部分まで貫通するエア注入孔が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の成型設備において、
前記外殻部分には、当該外殻部分の表面から前記中空部分まで貫通するエア排出孔が設けられ、前記エア注入孔から注入されたエアが前記中空部分を経由して前記エア排出孔より当該入れ子の外部へ排出可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の成型設備において、
前記外殻部分は矩形状をなしており、
前記エア注入孔と前記エア排出孔は、前記外殻部分の別の面に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項2~4のいずれか一項に記載の成型設備において、
前記入れ子の外殻部分には、当該外殻部分の表面から前記中空部分まで貫通するエア注入孔とエア排出孔とが設けられ、
前記中空部分には、前記エア注入孔から前記エア排出孔に至るエア通路が設けられており、
前記単位空間を構成する格子は、少なくとも前記エア通路に面した格子面が開放されていることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の成型設備において、
前記中空部分は真空であることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の成型設備において、
前記入れ子は3次元積層技術を利用した3次元造形装置により形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の成型設備において、
前記入れ子は廃棄する際の環境への負荷が小さな材料で形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、
内部が中空であり製品の形状の少なくとも一部を成型するための入れ子を、内部を真空状態にすることが可能な容器内に配設された3次元積層技術を利用した3次元造形装置により製造する入れ子の製造方法であって、
前記容器の内部を真空状態に移行させる工程と、
内部が真空状態である前記容器内において前記3次元造形装置により製品を成型する工程と、
前記容器の内部を当該容器の外部の圧力と同一の圧力に移行させる工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、入れ子が中空部分を有しているため、中空部分を有していない入れ子に比べて熱容量を小さくすることができ、それによって入れ子が蓄熱しにくくなり、成型サイクルが長くなるのを回避することに貢献できる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、複数の格子により中空部分が形成されるため、構造が単純化され、入れ子の製造が比較的容易となる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、格子の少なくとも一面が解放されていることにより、格子内のエア(空気)が循環し、熱の伝達が速くなり入れ子の冷却を速めることが可能となる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、立方体格子は骨組みが比較的単純であるので、入れ子の製造が比較的容易となる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、比較的小さな重量で入れ子の強度を高くすることができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、中空部分の相対的な体積を大きくして、入れ子の熱容量を効率よく小さくすることができる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、入れ子の内部にエアを入れることができ、それによって入れ子の冷却速度を速くすることが可能となる。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、入れ子の内部の中空部分にエアを循環させることができ、入れ子の冷却速度をさらに速くすることが可能となる。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、同じ面にエア注入孔とエア排出孔が設けられている場合に比べて、入れ子の内部の中空部分におけるエアの循環量を多くし入れ子の冷却速度を速くすることが可能となる。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、入れ子のエア注入孔とエア排出孔との間にエア通路が設けられているため、入れ子の内部の中空部分におけるエアの循環量を多く入れ子の冷却速度をさらに速くすることが可能となる。
【0032】
請求項11に記載の発明によれば、中空部分が真空であることにより、入れ子の熱容量をさらに小さくすることができる。
【0033】
請求項12に記載の発明によれば、内部に中空部分を有する入れ子を市販の装置を用いて形成することができ、成型設備のコストを低減することができる。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、劣化した入れ子を廃棄する際の環境への負荷を軽減することができる。
【0035】
請求項14に記載の発明によれば、内部の中空部分が真空状態である入れ子を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明が適用される入れ子を有する金型を用いた射出成型装置の概略構成を示す概略構成図である。
図2】型開き状態にある入れ子と金型の一例を示す斜視図である。
図3】(A),(B)は、それぞれ本発明の第1実施形態の射出成型装置に用いられる入れ子の断面構造の例を示すもので、(A)は内部が中空である入れ子の断面図、(B)は内部が3次元メッシュ構造である入れ子の断面図である。
図4】(A)~(F)は実施形態の入れ子の内部の3次元メッシュ構造を構成する格子の具体例を示す斜視図である。
図5】(A)は本発明の第2実施形態の射出成型装置に用いられる入れ子の例を示す斜視図、(B)は(A)に示す入れ子の内部のエア通路の例を示す断面説明図である。
図6】(A),(B)は、それぞれ入れ子の内部の3次元メッシュ構造に設けられるエア通路の一部を拡大して示す模式図である。
図7】第2実施形態の射出成型装置に用いられる嵌込み式の入れ子および金型の構成例を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1には入れ子を用いた成型設備としての射出成型装置の概略構成図が示されている。
図1に示す射出成型装置10は、固定側のキャビティ入れ子11Aと、該キャビティ入れ子11Aと対向する可動側のコア入れ子11Bと、上記キャビティ入れ子11Aを保持する固定側モールドベース12Aと、上記コア入れ子11Bを保持する可動側モールドベース12Bとを備えている。上記キャビティ入れ子11Aとモールドベース12Aとにより固定側金型が構成され、上記コア入れ子11Bとモールドベース12Bとにより可動側金型が構成される。
【0038】
固定側モールドベース12Aは固定側ダイプレート13Aによって支持され、可動側モールドベース12Bは可動側ダイプレート13Bによって支持されている。また、固定側モールドベース12Aおよびキャビティ入れ子11Aには、溶融材料が流れる材料供給通路(スプール、ランナー、ゲート等)14が設けられている。固定側ダイプレート13Aには溶融材料の注入ノズル15が臨む開口13aが設けられており、上記材料供給通路14の入り口に上記注入ノズル15の先端が当接されている。
【0039】
一方、コア入れ子11Bおよび可動側モールドベース12Bは、図示しない油圧シリンダ等の昇降装置によりモールドベース12Bを介して昇降可能に構成されている。コア入れ子11Bが上昇してキャビティ入れ子11Aと接合した状態で形成されるキャビティ内に、上記注入ノズル15により通路14に注入された溶融材料が充填され、冷却固化することで製品(成型品)が形成される。
なお、固定側モールドベース12Aおよび可動側モールドベース12Bには、冷却水が流れる冷却水通路16が設けられている。
【0040】
図2には、上記入れ子11A、11Bおよびモールドベース12A、12Bの具体例が示されている。入れ子11Aはモールドベース12Aの内側凹部に設置され、入れ子11Bはモールドベース12Bの内側凹部に設置され、入れ子11Aを内包したモールドベース12Aと入れ子11Bを内包したモールドベース12Bとが接合されることで、キャビティが形成される。
なお、金型に使用される入れ子には、主型(メインの金型)に設けられた凹部に嵌め込んで使用するタイプもある。本発明が適用される成型装置は、図2に示すようなキャビティとコアの入れ子を使用するものに限定されず、嵌め込みタイプの入れ子を使用するものにも適用することができる。このような例については、後に図7を用いて説明する。
【0041】
さらに、本実施形態においては、上記入れ子11Aと11Bを、図3(A)に示すように完全な中空もしくは図3(B)に示すように3次元メッシュ構造としている。
3次元メッシュ構造の例としては、格子構造または三角形を基本単位する骨組み構造であるトラス構造がある。また、格子構造は、図4(A)に示すような立方体格子、(B)に示すような側対角線サポートを伴う立方体格子、(C)に示すような底面中心サポートを伴う立方体格子、(D)に示すような中央サポートを伴う立方体格子、(E)に示すようなダイヤモンド格子、(F)に示すような八面体体格子がある。これらの格子の中では、(A)に示す立方体格子が最も骨組みが単純であるため、入れ子の製造が比較的容易となる。一方、トラス構造を採用した場合は、比較的少ない骨組みで入れ子の強度を高くすることができ、入れ子の重量を小さくすることができる。
【0042】
図4(A)~(E)から分かるように、格子内には空間があるので、内部が3次元メッシュ構造である場合も、入れ子は中空部分を有しているということができる。
なお、図4(A)~(E)に示す格子は複数の柱状部材を組み合わせた骨組みであるが、格子間に壁を設けて閉鎖空間を形成しているもの(部屋)を、水平方向および垂直方向に連結して3次元メッシュ構造を構成するようにしても良い。また、格子の境界に壁を設ける場合、各格子の空間を囲むすべての面に壁を設けても良いが、少なくとも一面は壁がなく解放されているようにすると良い。これにより、格子内の空気(エア)が循環し、熱の伝達が速くなり入れ子の冷却速度を速めることが可能となる。
【0043】
また、上記のような中空部分を有する入れ子の外殻の厚みは、入れ子の材料の強度にも依存するが、金型の内部に注入される溶融樹脂の圧力によって変形しないような寸法とする。なお、内部が3次元メッシュ構造である場合には、完全な中空である場合に比べて外部からの圧力によって変形しにくくなるので、完全な中空の場合よりも外殻の厚みを薄くするようにしても良い。ただし、後述のように入れ子の内部空間を真空とすることも考えられ、その場合には、金型の内部に注入される溶融樹脂の圧力を大気圧に加算した圧力によって入れ子が変形しないように外殻の厚みを設定する。また、入れ子の中空部分の体積は外殻部分の体積よりも大きく設定しても良く、それにより中空部分の相対的な体積を大きくして、入れ子の熱容量を効率よく小さくすることができる。
【0044】
さらに、本実施形態の射出成型装置を用いて樹脂製の成型品を製造する場合、上記入れ子11A、11Bの材料として、鉄あるいはアルミニウムのような、廃棄する際に環境への負荷が小さい材料を選択する。なお、入れ子の材料が鉄やアルミニウムのような汎用性の高い金属であれば、リサイクルすることも可能である。
また、内部が3次元メッシュ構造の場合、構造が複雑であるので、3Dプリンタを用いて入れ子11A、11Bを作成すると良い。市販されている金属3Dプリンタが使える材料は、メーカーや方式によって様々で、ステンレス鋼や工具鋼、銅やチタン合金などが使える機種がある。
【0045】
一方、入れ子を備えた金型を用いて金属の溶湯を鋳造して金属製品を製造する場合には、耐熱性が高いセラミック等で入れ子を形成する。具体的には、砂とレジン液を混ぜたもの材料をとして用い、3Dプリンタによって材料を積層造形する工程と、造形後に紫外線レーザーを当てて硬化させる工程とを繰り返すことで入れ子を形成することが考えられる。この場合も、廃棄する際に環境への負荷が大きな物質を含まないように、入れ子の材料を選択するのが望ましい。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の射出成型装置においては、入れ子11A、11Bが内部が中空であるので、入れ子の熱容量が小さくなり、溶融樹脂または溶湯を金型内へ注入した後に冷却する際に、中空でない入れ子を使用した場合に比べて短い時間で温度を低下させることができ、それによって成型サイクルを短縮して製造効率を向上させることができる。また、入れ子の内部の3次元メッシュ構造が複数の格子により形成されている、つまり同一パターンの繰り返し構造であるため、入れ子の製造に使用する3Dプリンタのプログラムの作成が比較的容易となる。
【0047】
(第2実施形態)
第2の実施形態は、内部が中空である入れ子の外殻のキャビティに面していない部位に一対の通風孔を設け、内部をエア(空気)が流れることで冷却速度を速くするようにしたものである。
さらに、成型装置に上記一対の通風孔より入れ子の内部へエアを注入するためのエアノズルを設けるようにすると良い。この場合、上記一対の通風孔のうち、一方はエア注入孔となり他方はエア排出孔となり、エアの循環速度が高くなって、より冷却速度を速くすることができる。エアノズルは、モールドベース(金型)と一体に構成しても良いし、型開きをした後にエアノズルを入れ子のエア注入孔へ移動させるように構成しても良い。
【0048】
図5には、第1の実施形態において一例として示した可動側のコア入れ子11Bにエア注入孔17aとエア排出孔17bを設けたものを一例と示す。なお、図5のうち、(A)はコア入れ子11Bの斜視図、(B)は(A)に示されているコア入れ子11Bをエア注入孔17aがある位置とエア排出孔17bがある位置で断面した断面平面図である。図示しないが、固定側のコア入れ子11Aにも同様のエア注入孔とエア排出孔を設けても良い。
図5に示されているように、この実施例のコア入れ子11Bには、前面の左上にエア注入孔17aが設けられ、前面側から見て背面の右下に相当する部位にエア排出孔17bが設けられている。
【0049】
さらに、本実施形態の入れ子11Bにおいては、内部の3次元メッシュ構造の一部を省略することで、図5(B)に矢印Aで示すように、エア注入孔17aからエア排出孔17bへ向かってエアの通りが良くなるようにするためのエア通路が形成されている。
図6には、入れ子内部のエア通路の一部である、図5(B)に示されている点線Bで囲まれた部分を拡大したものが示されている。図6(A)において、破線Cは3次元メッシュ構造を構成する格子を表している。図6(A)に示されているように、3次元メッシュ構造を構成する複数の格子の一部が省略されることで、注入されたエアの流れが特に良好な通路が形成され、入れ子の冷却速度を速めることができる。
【0050】
図6(B)に示すエア通路は、3次元メッシュ構造を構成する格子の一部(実線Dの部分)を、エアを通さないもしくは通しにくい壁体として設けることによって、エア通路に面した部分が開口した複数のチャンバーを形成したものである。このような構成とすることによって、図6(B)に矢印Eで示すように、各チャンバー内においてループ状のエア流れが生じ、入れ子全体を均一に冷却させ易くすることができる。
【0051】
図7には、第2の実施形態を、嵌め込み式の入れ子に適用した場合の一例が示されている。
図7に示す入れ子21は、固定側金型22Aに設けられた凹部22aに嵌め込まれて使用される。凹部22aは、図における左側および下側の部分が入れ子21の左側面および下面と同一の形状を有するとともに、内部には、3次元メッシュ構造体21cが設けられている。入れ子21の内部に3次元メッシュ構造体21cを設ける代わりに、完全な中空としても良い。さらに、入れ子21の上記キャビティに面していない部位には、エア注入孔21aとエア排出孔21bが設けられている。このうち、エア注入孔21aには、エアノズル23の先端が係合可能な凹部が設けられている。
【0052】
固定側金型22Aに設けられた上記凹部22aの右側は入れ子21の右側面と離間しており、入れ子21と凹部22aの隙間(キャビティの一部)に溶融樹脂が充填されることで、成型品の一部を形成する。また、固定側金型22Aおよび入れ子21の上方には所定の間隔をおいて、可動側金型22Bが配設されており、金型22Bと金型22Aおよび入れ子21との隙間(キャビティの一部)に溶融樹脂が充填されることで、成型品の他の部分を形成する。このとき、キャビティ内の溶融樹脂から入れ子21へ熱が伝達し(矢印F)、入れ子21の温度が上昇する。
【0053】
そこで、金型22Aの内部には、冷却水流すための冷却水通路22bが設けられている。また、入れ子21は、上記キャビティに溶融樹脂を充填した後、型を開いた状態で、上記エア注入孔21aにエアノズル23の先端を係合させてエアを吹き込むことによって、急速に冷却することができるように構成されている。
図示しないが、入れ子21の内部の3次元メッシュ構造体21cの一部を省略することで、エア注入孔21aからエア排出孔21bへ向かうエア通路を形成するようにしても良い。
【0054】
本実施例の入れ子21は、図7における左側の側面が可動側金型22Bの移動方向に対して傾斜した形状を有しており、金型を開いて成型品を取り出す際に、入れ子21を金型22Aの凹部22aから引き抜くこととなる。そして、入れ子21を引き抜いた状態では、エア排出孔21bが金型22Aの壁面から離れるので、エアノズル23によりエア注入孔21aから入れ子21の内部に注入したエアがエア排出孔21bから排出され易くなり、それによってより速い速度で入れ子21の温度を下げることができる。
【0055】
(変形例)
上記第1実施形態または第2実施形態のいずれにおいても、入れ子11A,11Bまたは21は、内部の中空部分が真空状態となるように形成しても良い。なお、内部の中空部分が真空状態である入れ子は、真空タンク内に3Dプリンタを設置して造形することによって製造することができる。
ここで、中空部分が真空状態である入れ子は、内部の3次元メッシュ構造を形成する格子が設けられているものも、3次元メッシュ構造体がなく完全な中空であるものも含まれる。上記のように、入れ子の内部の中空部分を真空状態とすることによって、入れ子の熱容量をさらに減少させることができ、冷却する際の冷却速度を速くして成型サイクルを短縮することができる。
【0056】
なお、内部の中空部分が真空状態である入れ子を製造する場合、真空タンク(内部を真空状態にすることが可能な容器)の内部を真空状態に移行させる工程と、内部が真空状態である上記真空タンク内において3次元積層技術を利用した3次元造形装置(3Dプリンタ)により入れ子を成型する工程と、真空タンクの内部を当該真空タンクの外部の圧力と同一の圧力に移行させる工程と、を実行することとなる。
【0057】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記のような実施形態に限定されるものではない。例えば、入れ子内部の3次元メッシュ構造を形成する格子の径が充分に細い場合には、格子の素材を通して伝達する熱の量を少なくできるので、内部の中空部分を真空状態にしなくても、空気を断熱材として利用して入れ子の内部の温度が上がりにくくすることができる。
【0058】
また、入れ子内部の金型のキャビティに面する部位に、格子がなくエアが満たされた空間を設けて、この空間内のエアを断熱材として働かせて、キャビティ内に充填された溶融樹脂からの熱が入れ子の中心側へ伝わりにくくして、入れ子の温度が上昇するのを抑制するように構成することも可能である。
また、上記実施形態では、内部に3次元メッシュ構造を有する入れ子を、3Dプリンタを用いて作成すると説明したが、入れ子の作成は3Dプリンタに限定されず、3次元積層技術を利用した3次元造形装置であればどのような構成のものであっても良い。
【0059】
さらに、上記実施形態では、本発明を、溶融樹脂を金型内に供給して樹脂の成型品を形成する射出成型装置に適用したものについて説明したが、本発明は射出成型装置に限定されず、供給装置から金属の溶湯を金型内に供給して金属製品を鋳造する装置に適用してもよい。この場合にも上記実施形態と同様の効果を得られ、内部に中空部を有する入れ子を用いることで入れ子の熱容量を減少させ、金型に注入された金属の溶湯が冷却、固化される際の冷却速度を速くすることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 射出成型装置
11A キャビティ入れ子
11B コア入れ子
12A 固定側モールドベース
12B 移動側モールドベース
13A 固定側ダイプレート
13B 可動側ダイプレート
14 材料供給通路
15 注入ノズル
16 冷却水通路
17a エア注入孔
17b エア排出孔
21 入れ子
21a エア注入孔
21b エア排出孔
21c 3次元メッシュ構造体
22A 固定側金型
22B 可動側金型
22a 凹部
22b 冷却水通路
23 エアノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7