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特開2024-177108電気化学発光ナノプローブの製造方法、電気化学発光ナノプローブ、電気化学発光センサ、電気化学発光検出方法、および電気化学発光検出用キット
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  • 特開-電気化学発光ナノプローブの製造方法、電気化学発光ナノプローブ、電気化学発光センサ、電気化学発光検出方法、および電気化学発光検出用キット 図1
  • 特開-電気化学発光ナノプローブの製造方法、電気化学発光ナノプローブ、電気化学発光センサ、電気化学発光検出方法、および電気化学発光検出用キット 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177108
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電気化学発光ナノプローブの製造方法、電気化学発光ナノプローブ、電気化学発光センサ、電気化学発光検出方法、および電気化学発光検出用キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20241212BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20241212BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241212BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20241212BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20241212BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z ZNA
C12Q1/34
C12M1/34 B
C12M1/42
G01N21/78 C
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090810
(22)【出願日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】202310685007.0
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー シァオティン
(72)【発明者】
【氏名】シュ チチ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ヂィー フアンシィェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ヂィエ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB20
4B029FA15
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR83
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX04
(57)【要約】
【課題】増幅する必要がなく、高感度、高精度及び特異性を有しかつ高柔軟性を有する電気化学発光ナノプローブを提供することである。
【解決手段】実施形態の電気化学発光ナノプローブの製造方法は、共役ポリマーとコポリマー分子を重合させ、Pdotsナノ粒子を合成するPdotsナノ粒子合成工程と、クエンチャー分子修飾を有するオリゴヌクレオチド鎖を用いて、得られたPdotsナノ粒子を修飾するPdotsナノ粒子修飾工程とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ポリマーとコポリマー分子を重合させ、Pdotsナノ粒子を合成するPdotsナノ粒子合成工程と、
クエンチャー分子修飾を有するオリゴヌクレオチド鎖を用いて、得られたPdotsナノ粒子を修飾するPdotsナノ粒子修飾工程と、
を含む、電気化学発光ナノプローブの製造方法。
【請求項2】
前記共役ポリマーは、下記の化学式(1)に示すPDHF、PFO、PPE、MEH-PPV、PFPV、PFBT、CN-PPV、PF-DBT5、およびPBOCのうちの一つである、
請求項1に記載の製造方法。
【化1】
【請求項3】
前記コポリマー分子は、下記の化学式(2)に示すポリスチレン-ポリアクリル酸ブロック共重合体(PS-PAA)、ポリスチレン無水マレイン酸共重合体(PSMA)、およびポリ(イソブチレン-alt-無水マレイン酸)(PIMA)のうちの一つである、
請求項1に記載の製造方法。
【化2】
【請求項4】
前記共役ポリマーと前記コポリマー分子は、ナノ共沈法により前記Pdotsナノ粒子を合成する、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記クエンチャー分子は、ブラックホールクエンチャー、ダーククエンチャー、およびアミン反応性クエンチャーのうちの一つである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチド鎖は、一本鎖DNAである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記一本鎖DNAは、ヘアピン構造の一本鎖DNAである、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチド鎖は、二本鎖DNAである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
共役ポリマーとコポリマー分子とが重合されたPdotsナノ粒子であって、クエンチャー分子修飾を有するオリゴヌクレオチド鎖が修飾されたPdotsナノ粒子である、
電気化学発光ナノプローブ。
【請求項10】
共役ポリマーとコポリマー分子とが重合されたPdotsナノ粒子であって、クエンチャー分子修飾を有するオリゴヌクレオチド鎖が修飾されたPdotsナノ粒子である電気化学発光ナノプローブが滴下された動作電極である、
電気化学発光センサ。
【請求項11】
前記動作電極は、ガラス炭素電極、酸化インジウムスズ電極、およびスクリーン印刷電極のうちの一つである、
請求項10に記載の電気化学発光センサ。
【請求項12】
測定されるサンプルを標的核酸と結合可能なガイド核酸を含むCas酵素触媒体系に添加する酵素反応工程と、
共役ポリマーとコポリマー分子とが重合されたPdotsナノ粒子であって、クエンチャー分子修飾を有するオリゴヌクレオチド鎖が修飾されたPdotsナノ粒子である電気化学発光ナノプローブが滴下された動作電極に、前記酵素反応工程で得られた反応溶液を添加し、電気化学発光信号を採取し、分析するサンプル検出工程と、
を含む、電気化学発光検出方法。
【請求項13】
前記Cas酵素は、Cas12(VA型)、Cas13(VI型)、およびCas14(VF型)のうち少なくとも一つのCasタンパク質を含む、
請求項12に記載の電気化学発光検出方法。
【請求項14】
前記Cas酵素は、Cas12a、Cas13a、Cas13b、Cas14a、Cas14b、およびCas14cのうち少なくとも一つのCasタンパク質を含む、
請求項13に記載の電気化学発光検出方法。
【請求項15】
前記電気化学発光ナノプローブにおけるオリゴヌクレオチド鎖は、一本鎖DNAである、
請求項12に記載の電気化学発光検出方法。
【請求項16】
前記一本鎖DNAは、ヘアピン構造の一本鎖DNAである、
請求項15に記載の電気化学発光検出方法。
【請求項17】
前記電気化学発光ナノプローブにおけるオリゴヌクレオチド鎖は、二本鎖DNAであり、かつ前記酵素反応工程においてさらにEXO III酵素を使用する、
請求項12に記載の電気化学発光検出方法。
【請求項18】
標的核酸と結合可能なガイド核酸を含むCas酵素触媒系を含む酵素反応溶液と、
動作電極に、共役ポリマーとコポリマー分子とが重合されたPdotsナノ粒子であって、クエンチャー分子修飾を有するオリゴヌクレオチド鎖が修飾されたPdotsナノ粒子である電気化学発光ナノプローブが固定されている検出チップと、
を含む、電気化学発光検出用キット。
【請求項19】
前記電気化学発光ナノプローブにおけるオリゴヌクレオチド鎖は、二本鎖DNAであり、かつ前記酵素反応溶液はさらにEXO III酵素を含む、
請求項18に記載の電気化学発光検出用キット。
【請求項20】
前記検出チップは、前記動作電極といてスクリーン印刷された三電極シートの動作電極が用いられた使い捨てのPdots使い捨て検出チップである、
請求項18に記載の電気化学発光検出用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気化学発光ナノプローブの製造方法、電気化学発光ナノプローブ、電気化学発光センサ、電気化学発光検出方法、および電気化学発光検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学発光(ECL)は、電気化学によるエネルギー緩和過程であり、励起モードと信号検出が分離されるため、電気化学的制御可能性と低バックグラウンドの特徴を有する。電気化学発光技術の比較的に簡便な時間及び空間制御により、電荷結合素子(CCD)カメラを利用して信号収集を行う電気化学発光イメージングは、急速に発展しかつ様々な標的分子の分析に用いられ、遺伝子毒素スクリーニング、免疫測定、指紋分析、細胞検出、及び反応メカニズムの研究に広く応用される。電気化学発光の検出方法は、化学発光方法が持つ高感度、広い線形範囲、観察の便利さ及び装置の簡単などの利点を保留するとともに、化学発光方法が比較にならない利点、例えば再現性が高く、試薬が安定し、制御が簡単で、及びいくつかの試薬が繰り返し使用できることなどもある。
【0003】
従来の電気化学発光イメージングは、ルテニウム及びイリジウム錯体などの無機錯体発光系を採用することが多いが、これらの錯体の水溶液における不溶性及び含まれる重金属による細胞毒性問題により、その生物学的分析への応用が制限される。
【0004】
半導体ポリマー量子ドット(Semiconducting Polymer Dots,Pdots)は新規な有機蛍光材料であり、無毒性で、且つ大きい光吸収断面、高い蛍光量子効率、光安定性及び生体適合性等の特徴を有するため、生体検出、細胞生物学及び臨床医学などに広く用いられる。
【0005】
従来技術において、半導体高分子量子ドットを蛍光プローブとし、電気化学発光検出に用いられている様々な試みがなされている(非特許文献1、2参照)。半導体ポリマー量子ドットの形式で製造された電気化学発光センサは、従来の電気化学発光プラットフォームと比べて、例えば発光輝度がより高く、光安定性がよりよく、生体適合性がより良い等の利点がある。
【0006】
しかし、電気化学発光プラットフォームは信号検出のプラットフォームとし、それ自体が測定される標的分子に対する識別機能を備えず、一般的に特殊なプローブを配合して特定の標的分子に対する識別及び分析を実現する必要がある。そのため、測定対象物に対する識別特異性/正確性はそれに配合される特殊なプローブに依存する。このようなプローブの選択及び標的可能な核酸配列は、一般的に特異的な要求により制限され、すなわち検出の精度/特異性が限られ、任意の核酸配列を検出しにくい。例えば、非特許文献2にPdotsをDNA又はRNAオリゴヌクレオチドプローブに連結することにより、微量核酸分子の識別及び分析を実現した。
【0007】
Cas酵素は、checkpointメカニズムを有する核酸認識及び切断酵素タンパク質であるため、一塩基分解精度を有し、Cas酵素に基づく核酸検出の最大の利点はCas酵素特有のcheckpointメカニズムを利用することにより、核酸に対する検出が一塩基の分解感度に達することができるにある。また、Cas酵素のガイドRNA(gRNA)を設計し合成することにより、任意の核酸配列を低コストで検出することができる。
【0008】
例えば、非特許文献3は、Cas12aに基づく電気化学発光バイオセンサを設計しかつそれをヒトパピローマウイルス(HPV-16)DNAの検出に用いる。
【0009】
このような技術は、超高精度な核酸認識の正確性を有するが、微量核酸の識別感度が十分ではない。そのため、検出限界を向上するために一般的に核酸の予備増幅を行う必要がある。予備増幅の利用により、検出の感度が向上するが、検出の正確性が低下する。大量の核酸断片の増幅によりエアロゾルの汚染を引き起こす可能性があり、偽陽性結果を発生するためである。また、予備増幅ステップも検出ステップを複雑にし、かつ検出時間を延長させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ningning Wang, Yaqiang Feng,et al.,”ElectrochemiluMinescent Imaging for Multi-immunoassay Sensitized by Dual DNA Amplification of Polymer Dot Signal”, Anal. Chem., 2018, 90, 7708-7714
【非特許文献2】Guangming Li et al., “Ratiometric fluorescent detection of miRNA-21 via pH-regulated adsorption of DNA on polymer dots and exonuclease III-assisted amplification”,Analytica Chimica Acta, 1232(2022)340450
【非特許文献3】Peng-Fei Liu et al., “Cas12a-based electrochemiluMinescence biosensor for target amplification-free DNA detection”, Biosensors and Bioelectronics, 176, (2021), 112954
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、増幅する必要がなく、高感度、高精度及び特異性を有しかつ高柔軟性を有する電気化学発光ナノプローブの製造方法、電気化学発光ナノプローブ、電気化学発光センサ、電気化学発光検出方法、および電気化学発光検出用キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の電気化学発光ナノプローブの製造方法は、共役ポリマーとコポリマー分子を重合させ、Pdotsナノ粒子を合成するPdotsナノ粒子合成工程と、クエンチャー分子修飾を有するオリゴヌクレオチド鎖を用いて、得られたPdotsナノ粒子を修飾するPdotsナノ粒子修飾工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態のナノプローブの構造例を示す模式図である。
図2図2は、hDNA-Pdotsナノプローブに基づくECLスイッチ原理を示す標的核酸検出の概略図である。
図3図3は、dsDNA-Pdotsナノプローブに基づく二重酵素触媒ECLスイッチ原理を示す標的核酸検出の概略図である。
図4図4は、実施例1で製造されたPFBT PdotsのTEM解析結果を示す図である。
図5A図5Aは、実施例1で製造されたDNA-Pdotsの紫外の解析結果を示す図である。
図5B図5Bは、実施例1で製造されたDNA-PdotsのDLSの解析結果を示す図である。
図6A図6Aは、実施例2で製造された異なるECLセンサ電極の酵素活性化前後でのECL強度の比較結果を示す図である。
図6B図6Bは、実施例2で製造された異なるECLセンサ電極の酵素活性化前後でのECL強度の比較結果を示す図である。
図6C図6Cは、実施例2で製造された異なるECLセンサ電極の酵素活性化前後でのECL強度の比較結果を示す図である。
図7図7は、実施例2で製造されたhDNA-Pdotsセンサ電極を用いてHPV 16 DNAを検出した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記のように、Cas酵素は任意の核酸断片を標的することができるという利点を有するが、それ自体の感度が限られ、他の技術(例えば一般的に使用される予備増幅)と結合して感度を向上させる必要がある。ただし、前述のように偽陽性の発生を引き起こし、元の核酸を定量することも困難である。電気化学発光方法、例えば半導体ポリマー量子ドット(Pdots)に基づく電気化学発光検出方法は信号増幅を行うことができ、正確性が高く、定量できる利点を有し、かつ予備増幅を行う必要がなく、エアロゾルによる偽陽性を回避することができる。しかし、配合し使用されるオリゴヌクレオチドプローブに高度に依存し、検出の精度/特異性が限られ、任意の核酸配列を検出しにくい。
【0015】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、高感度、高精度及び特異性を有しかつ高い柔軟性を有する電気化学発光検出方法を提供することである。
【0016】
本発明の発明者らは、上記従来技術に存在する問題に対して鋭意研究を行った結果、Cas酵素体系を半導体ポリマー量子ドット(Pdots)に基づく電気化学発光方法に応用することにより、Cas酵素に基づく電気化学発光検出方法を構築し、Pdotsに基づくECL及びCas12に基づく方法のそれぞれの不足を補足することができることにより、増幅する必要がなく、高感度、高精度及び特異性を有しかつ高柔軟性を有する電気化学発光検出方法を提供できることを見出した。
【0017】
具体的には、Casタンパク質とcrRNAの複合体(Casタンパク質-crRNA)により標的核酸を識別しCas酵素活性を活性化させ、クエンチャー分子で修飾されたオリゴヌクレオチド鎖(Q-DNA)を用いてPdotsナノ粒子を修飾して、ナノプローブを作製し、標的により活性化されたCasタンパク質―crRNAの切断活性を利用してナノプローブ上のQ-DNAを切断することにより、Pdots ECL信号スイッチに対する制御を実現できる。また、Cas酵素とエキソヌクレアーゼIII(以下、「EXO III」ということもある)との二重酵素触媒系を採用することにより、さらにPdots ECL信号スイッチの感度をさらに向上させる。
【0018】
本発明により、増幅する必要がなく、高感度、高精度及び特異性を有しかつ高柔軟性を有する電気化学発光検出方法を提供することができる。具体的には、
(1)PdotsナノプローブとCas酵素による連帯切断活性との組み合わせるにより、予備増幅を必要とせずに、標的核酸に対する検出感度を向上させることができる。
(2)Cas酵素の一塩基分解特異性により、ECL信号検出の正確性を向上させ、標的核酸の誤認識による偽陽性信号を回避することができる。
(3)カスタマイズされたCas酵素のガイドRNA(crRNA)により、任意の核酸配列への標的、及びECLに基づく高感度信号の出力を実現することができる。
(4)dsDNA剛性構造を介してクエンチ基を連結する場合、Cas12とEXO IIIとの二重酵素触媒系を採用することにより、Cas12酵素の切断適用範囲を広くすることができ、かつECL検出の感度をさらに向上させることが望まれている。
(5)本発明のECLナノプローブは使い捨て検出チップに作製可能であり、POCT(point-of-care testing)に役立ち、便利で、迅速な核酸検出を実現することができる。
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態についての説明は、本発明の発明構想を説明するためだけであり、本発明を限定するものではない。
【0020】
<電気化学発光ナノプローブ及びその製造方法>
本発明の一実施形態は、共役ポリマーとコポリマー分子を重合させ、Pdotsナノ粒子を合成するPdotsナノ粒子合成工程と、クエンチャー分子修飾を有するオリゴヌクレオチド鎖を用いて、得られたPdotsナノ粒子を修飾するPdotsナノ粒子修飾工程とを含む、電気化学発光ナノプローブ(以下、「ECLナノプローブ」ということもある)の製造方法に関する。
【0021】
(半導体ポリマー量子ドット)
半導体ポリマー量子ドット(以下、「Pdots」ということもある)は、主にπ-共役ポリマーで構成される小粒径(通常、直径20-30 nm)で、高輝度を有するナノ粒子である。
【0022】
共役ポリマーは主鎖の構造によって、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン等に分類され、現在一般的に使用される共役ポリマーの主鎖構造は下記の化学式(1)の構造式に示すとおりである。
【0023】
【化1】
【0024】
具体的な共役ポリマーとしては、特に限定されず、例えばAngew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 3086 - 3109に記載の共役ポリマーを用いることができ、例えば下記の化学式(2)に示すPDHF、PFO、PPE、MEH-PPV、PFPV、PFBT、CN-PPV、PF-DBT5、及びPBOCから選択される化合物であってもよい。
【0025】
【化2】
【0026】
なお、上記列挙されている共役ポリマーは例示に過ぎず、当業者には明らかなように、上記化合物が一つ又は複数の置換基(例えばアルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン等)で置換されて形成された誘導体、及びそれらの空間異性体等は、本発明において同様に使用することができる。
【0027】
本発明に使用される共役ポリマーの製造方法は特に限定されず、例えば鈴木カップリング反応、シェラーカップリング反応及びクロスカップリング反応などの合成経路を介して化学反応により合成することができ、又は商業的な経路で購入することができ、特に限定されない。
【0028】
(Pdotsナノ粒子の合成)
本発明において、共役ポリマーとコポリマー分子を重合させることにより、Pdotsナノ粒子を合成する。
【0029】
本発明におけるナノ粒子とは三次元空間において少なくとも一次元がナノサイズ(0.1~100 nm)にある粒子を指す。前記ナノ粒子は具体的にはナノボール、ナノチューブ、ナノロッド、又はナノオニオン等の様々な幾何学的形態であってもよい。半導体ポリマー量子ドットをナノ形態に形成することにより、ECL応答信号を効果的に増幅し、ECLセンサの検出限界、検出範囲、選択性及び安定性等を向上させることができる。本発明では、後述する実施例のように、ナノボール形態の材料を成功的に製造したが、本発明において使用可能なナノ粒子はナノボールに限定されず、採用される化合物原料及び合成経路によってナノロッドなどの他のナノ形態を形成することもできる。
【0030】
本発明において、共役ポリマーと前記コポリマー分子は、従来の技術における既知の有機材料ナノ構造を製造する方法により合成することができ、例えばナノ共沈法、マイクロエマルション法及び自己組織化法等(劉栄華、新規な蛍光共役重合体ナノ粒子の製造及び応用、北京科技大学博士学位論文、2018年)は、特に限定されない。ここで、生体適合性の観点から、マイクロエマルション法及びナノ共沈法を用いることがより好ましい。
【0031】
マイクロエマルション法では、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)等のポリエチレングリコール系分子、生体高分子例えばリン脂質等の無毒性、非免疫原性の親水性ポリマーで発光分子を被覆することにより、生体適合性が高く、安定性が高い発光分子ナノ粒子を得ることができる。
【0032】
ナノ共沈法は発光分子(共役ポリマー)を良溶媒に溶解し、超音波条件下で大量の貧溶媒を注入し、発光分子の溶解度が急激に低下して凝集し、それにより小粒子の形で沈殿し、その後に残留した有機溶媒を除去すれば発光分子ナノ粒子を得る。ナノ共沈法は操作しやすくかつ製造されたナノ粒子のサイズが小さくかつ均一であるため、好ましい。
【0033】
ナノ共沈法において、両親媒性ポリマーを用いて発光分子ナノ粒子を表面機能化することができる。製造プロセスにおいて、発光分子と両親媒性ポリマーは自己組織化し、両親媒性ポリマーの一端は疎水性機能性基を有し他端は親水性機能性基を有するため、両親媒性ポリマーで被覆された発光分子ナノ粒子を得ることができ、かつ両親媒性ポリマーの機能性基(例えばアミノ基及びカルボキシ基)はナノ粒子の外表面に露出し、これにより表面機能化された発光ナノ粒子を得る。核酸、ポリペプチド、糖、又はタンパク質等の機能性基は、縮合反応又は生物直交クリック反応により上記両親媒性ポリマーのナノ粒子の外表面に露出する官能基と反応し、識別機能を有する発光分子ナノ粒子を得ることができる。
【0034】
本発明において、上記両親媒性ポリマーはコポリマー分子とも呼ばれる。コポリマー分子として、本分野のよく用いられるコポリマー分子、例えば下記の化学式(3)に示すポリスチレン-ポリアクリル酸ブロックコポリマー(PS-PAA)、ポリスチレン無水マレイン酸コポリマー(PSMA)又はポリ(イソブチレン-alt-無水マレイン酸)(PIMA)等を使用することができ、特に限定されない。
【0035】
【化3】
【0036】
ナノ共沈法により得られたナノ粒子の直径は最小で1 nm~2 nmに達することができる。
【0037】
なお、Pdotsナノ粒子の表面機能化修飾は上記の両親媒性ポリマーによる修飾方法に限定されず、直接機能化法(即ち、アルコキシ鎖、アミノ/カルボキシ基、又は標的機能を有する生体分子等の官能基を共有結合の方法により発光分子に直接修飾する)、物理的被覆(即ち、リン脂質又は二酸化ケイ素等でナノ粒子を被覆する)等の他の修飾方法を採用することができる。
【0038】
発光分子ナノ粒子を表面機能化することにより、ナノ粒子1個あたりの表面に大量の官能基を有することができ、さらに大量のオリゴヌクレオチドなどの生体分子を結合することができるため、電気化学発光信号を増幅し、その検出感度を向上させることができる。
【0039】
(Pdotsナノ粒子の修飾)
本発明において、Pdotsナノ粒子の修飾とは、Pdotsナノ粒子のオリゴヌクレオチド修飾を指し、具体的には、クエンチャー分子で修飾されたオリゴヌクレオチド鎖を用いて上記表面機能化されたPdotsナノ粒子を修飾し、オリゴヌクレオチドで修飾されたPdotsナノ粒子(以下、「ECLナノプローブ」ということもある)を得る。
【0040】
オリゴヌクレオチドとPdotsナノ粒子との結合方式は共有結合反応(例えばNH-COOHによる架橋)に限らず、静電作用、親和吸着等の他の結合方式によりもよい。
【0041】
修飾に用いられるオリゴヌクレオチド鎖は二本鎖オリゴヌクレオチド鎖(例えばdsDNAなど)であってもよく、一本鎖オリゴヌクレオチド鎖(例えばRNA、ssDNA)などであってもよく、具体的には使用されるCas酵素の種類に応じて適宜選択することができる。
【0042】
クエンチャー分子をPdotsに近接させ、ECLシグナルの増幅を増強する観点から、前記オリゴヌクレオチド鎖は、二本鎖オリゴヌクレオチド鎖、またはクエンチャー分子をPdotsに近接させることができる二次構造を有する一本鎖オリゴヌクレオチド鎖、例えばヘアピン構造の一本鎖オリゴヌクレオチド鎖であることが好ましい。
【0043】
また、Cas酵素による連帯切断活性が非特異的であるため、オリゴヌクレオチド鎖を構成するヌクレオチド配列は特に限定されず、任意の配列であればよい。オリゴヌクレオチド鎖の長さも特に限定されず、クエンチャー分子をPdotsに結合でき、且つクエンチャー分子とPdotsナノ粒子との間に共鳴エネルギー移動を発生させることができればよく、従来技術でよく用いられている様々な連結用のオリゴヌクレオチド鎖を参照して設計することができる。
【0044】
前記オリゴヌクレオチド鎖が直鎖の一本鎖オリゴヌクレオチド鎖である場合、Cas酵素による切断の感度の観点から、そのヌクレオチドの数は多く過ぎない方がよく、好ましくは3~20個、より好ましくは4~11個、さらに好ましくは5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個である。
【0045】
前記オリゴヌクレオチド鎖がヘアピン構造の一本鎖のオリゴヌクレオチド鎖である場合、そのヌクレオチドの数は、例えば20個以上であってもよく、ヘアピンを構成する環状断片のヌクレオチドの数は特に限定されず、環状を形成すればよい。Cas酵素による切断の感度の観点から、ヘアピンを構成する茎部断片のヌクレオチドの数は多く過ぎない方がよく、好ましくは4~20個、より好ましくは4~10個、さらに好ましくは4個、5個、6個、7個、又は8個である。
【0046】
前記オリゴヌクレオチド鎖が二本鎖のオリゴヌクレオチド鎖である場合、当該二本鎖のオリゴヌクレオチド鎖は、好ましくはPdotsに直接的に結合される鎖と、ハイブリダイゼーションによってPdotsに間接的に結合される鎖とを含む。前記Pdotsに直接的に結合される鎖は、好ましくは、Cas酵素によって切断可能な一本鎖の末端部分と、ハイブリッド鎖と、二本鎖部分を構成するDNAエキソヌクレアーゼによって切断可能な二本鎖部分を含む。Cas酵素およびDNAエキソヌクレアーゼによる切断の感度の観点から、前記二本鎖のオリゴヌクレオチド鎖における一本鎖の末端部分のヌクレオチドの数は、好ましくは3~20個、より好ましくは4~10個、より好ましくは4個、5個または6個であり、前記二本鎖のオリゴヌクレオチド鎖における二本鎖部分は、単本鎖としてヌクレオチドの数が好ましくは15~24個、より好ましくは16~20個、より好ましくは17個、18個または19個である。
【0047】
本発明のオリゴヌクレオチド鎖にはクエンチャー分子が修飾されている。クエンチャー分子の動的消光は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)又は衝突消光により発生する。クエンチャー分子は光吸収とPdotsナノ粒子の蛍光放射とが重なるため、共鳴エネルギーは励起されたナノ粒子からクエンチャー分子に転移することができ、共役ポリマー分子の発射を消光することができる。
【0048】
前記クエンチャー分子は本分野の一般的に用いられる共鳴エネルギー転移特性を有するクエンチャー分子を使用することができ、特に限定されず、例えばブラックホールクエンチャー(Black Hole QuencherTM試薬、即ちBHQ系クエンチャー)、ダーククエンチャー(dark quenchers、例えばDABCYLシリーズクエンチャー等)、BlackBerryTMクエンチャー(即ちBBQシリーズクエンチャー)、Blueberryクエンチャー(即ちBLUシリーズクエンチャー)、又はアミン反応性クエンチャー(QSYシリーズクエンチャー)等を用いることができる。そのうち、BHQクエンチャーはよく用いられる。これらのクエンチャーはいずれも商業的(例えばLGC、BiochTechnologiesTM)等)に得ることができる。
【0049】
クエンチャー分子とオリゴヌクレオチドとの連結方法は特に限定されず、本分野において慣用される方法を使用することができる。また、クエンチャー分子はオリゴヌクレオチドの末端に連結されてもよく、オリゴヌクレオチド配列の中に挿入されてもよい。
【0050】
本発明において、前記クエンチャー分子が修飾されている前記オリゴヌクレオチドは以下に記載のCas酵素と共に本発明の信号スイッチとして機能する。具体的には、オリゴヌクレオチドが活性化されたCas酵素により切断されない場合、クエンチャー分子はオリゴヌクレオチドを介してPdotsナノ粒子の表面に連結され、Pdotsに対して消光作用を発揮し、センサ電極は低いECL強度(ECL OFF)を表示する。一方、オリゴヌクレオチドが活性化されたCas酵素により切断された時に、クエンチャー分子はPdotsナノ粒子の表面から離脱し、それによりセンサ電極は強いECL信号(ECL ON)を表示する。
【0051】
<電気化学発光センサ>
本発明の電気化学発光センサ(以下、ECLセンサということもある)は、上記ECLナノプローブを動作電極に滴下することにより得ることができる。
【0052】
本発明に使用される動作電極としては、特に限定されず、ECL検出に一般的に用いられる電極、例えばガラス炭素電極(GCE)、酸化インジウムスズ(ITO)電極、又はスクリーン印刷電極(SPE)等のうちの一種を使用することができる。好ましくは酸化インジウムスズ電極を使用し、より好ましくは三電極システムを使用する。該電極システムには例えば白金ワイヤ対電極、Ag/AgCl参照電極及び酸化インジウムスズ(ITO)動作電極が配置されている。
【0053】
<電気化学発光検出方法>
本発明の一実施形態は、測定されるサンプルを標的核酸と結合可能なガイド核酸を含むCas酵素触媒体系に添加する酵素反応工程と、上記電気化学発光ナノプローブを動作電極に固定するPdotsチップ作製工程と、酵素反応工程で得られた反応溶液を前記動作電極に添加し、電気化学発光信号を採取し、分析するサンプル検出工程とを含む、Cas酵素に基づく電気化学発光検出方法(以下、「ECL検出方法」ということもある)に関する。
【0054】
また、本発明のECL検出方法は上記のPdotsチップ作製工程を含まずに上記のECLセンサ(ECLチップともいう)を直接使用してもよい。
【0055】
本発明のECL検出方法により、測定されるサンプル中の標的分子を検出することができる。前記測定されるサンプルは特に限定されず、例えば尿、血液、血清、脳脊髄液又は唾液等であってもよい。前記標的分子は特に限定されず、例えば核酸、タンパク質、化学小分子等であってもよい。
【0056】
本発明において、酵素触媒反応又は他の特異的化学反応において標的識別及び信号変換単位として、標的分子を滴下する時、この酵素反応又は化学反応によりECLナノプローブの信号スイッチ状態を変更することができ、それにより標的信号に対する定性又は定量検出を実現する。
【0057】
酵素触媒反応に使用される酵素として、例えばCRISPR/Cas酵素中の連帯切断活性(collateral cleavage)を有するCas酵素を使用することができ、当該活性は非特異的なヌクレアーゼの切断活性に属し、標的核酸分子に標的化されると、Cas酵素が活性化されて、任意の核酸分子を切断する非特異的な活性を取得する。
【0058】
前記Cas酵素は例えばCas12(VA型)、Cas13(VI型)及びCas14(VF型)から選択される少なくとも一種のCasタンパク質を含んでもよく、例えばCas12a、Cas12b、Cas13a、Cas13b、Cas14a、Cas14b及びCas14cから選択される少なくとも一種のCasタンパク質である。ここで、Cas12はdsDNA(double-stranded DNA、二本鎖DNA)を標的とし、Cas13はssRNA(single-stranded RNA、一本鎖RNA)を標的とし、Cas14はssDNAを標的とする。また、Cas12aはさらにssDNA(single-stranded DNA、一本鎖DNA)に対する非特異的切断活性(トランス切断活性とも呼ばれる)を有するため、さらにssDNAを標的とすることができる。
【0059】
また、Cas12酵素はDNAを標的とし、商業的に成熟し、且つDNAに加えて他の非核酸検出分野(例えばタンパク質、生物小分子等)に用いることができるため、より好ましい。
【0060】
本発明において、Cas酵素のガイドRNA(gRNA)を設計し合成することにより、任意の核酸配列を標的とすることができる。gRNAは二つの部分で構成され、一つはCRISPR RNA(crRNA)であり、標的核酸と相補的にペアリングする17~20個の塩基長さのヌクレオチド配列である;及び一つは足場としてCas酵素の折り畳みを助けるtracr RNAである。ガイドRNAは標的核酸のオリゴヌクレオチドと結合することによりCas酵素を活性化する。活性化されたCas酵素は、連帯切断活性によりECLナノプローブに連結されているオリゴヌクレオチドを切断してECLナノプローブの信号スイッチ状態を変更させる。
【0061】
以下、本発明の信号スイッチの原理及びECL検出方法を具体的に説明する。本発明の信号スイッチの原理は以下のとおりである。
【0062】
本発明においてオリゴヌクレオチド鎖で修飾されたPdotsナノ粒子をECLナノプローブとして使用し、オリゴヌクレオチド鎖(例えば実施例で使用されているssDNA、hDNA及びdsDNA)の末端にクエンチャー分子が修飾されているため、PdotsはECL OFF状態である。標的分子が存在せず、Cas酵素が標的分子により活性化されない場合、クエンチャー分子で修飾されたオリゴヌクレオチド鎖がPdots表面から離脱することがなく、センサ電極が低ECL強度を表示する(ECL OFF)。逆に、標的分子が存在し、Cas酵素が活性化される場合、Cas12酵素等のCas酵素が連帯切断活性を有するため、Pdotsに連結されているオリゴヌクレオチド鎖が切断され、これによりクエンチャー分子がPdots表面から離脱し、PdotsのECLを回復し、センサ電極が強いECL信号を生成する(ECL ON)。
【0063】
図1は、実施形態のナノプローブの構造例を示す模式図である。図1には、それぞれ直鎖の一本鎖DNAで修飾されたPdotsナノプローブ(ssDNA-Pdots)、ヘアピン構造の一本鎖DNAで修飾されたPdotsナノプローブ(hDNA-Pdots)、及び二本鎖DNAで修飾されたPdotsナノプローブ(dsDNA-Pdots)の構造を示す模式図を例示する。
【0064】
図1に示すように、オリゴヌクレオチド(DNA)鎖の末端にクエンチャー分子が連結されており、hDNA-Pdots及びdsDNA-Pdotsの構造において、クエンチャー分子がPdotsに近いため、より良好な信号消光効果を有し、より強い信号増幅を有するため、より良好な検出感度を有することが期待されている。
【0065】
hDNA-Pdotsをレポータープローブとする場合、酵素反応にCas酵素のみを使用すればよく、図2に示すように、hDNA自体は一本鎖DNA断片であり、標的分子が存在し、Cas酵素が活性化される時、Cas酵素の連帯切断活性により、ヘアピンの環状一本鎖断片はまずCas酵素により切断され、水素結合により結合された二本鎖部分はヘアピンの一本鎖断片が切断された後、結合力が弱くなりハイブリダイゼーションが解消されるため、BHQはPdots表面から離脱し、PdotsのECLを回復させ、センサ電極は強いECL信号を生成する(ECL ON)。図2は、hDNA-Pdotsナノプローブに基づくECLスイッチ原理を示す標的核酸検出の概略図である。
【0066】
dsDNA-Pdotsナノプローブをレポータープローブとする場合、酵素反応にCas酵素とDNAエキソヌクレアーゼIIIとの二重酵素触媒系を使用する必要があり、図3に示すように、標的分子が存在し、Cas酵素が活性化される時、まずdsDNAの外端に露出した短い一本鎖断片を切断し、さらにエキソヌクレアーゼIIIが活性化され、残りの二本鎖断片を切断し、それによりクエンチャー分子がPdots表面から離脱し、PdotsのECLを回復させ、センサ電極が強いECL信号を生成する(ECL ON)。図3は、dsDNA-Pdotsナノプローブに基づく二重酵素触媒ECLスイッチ原理を示す標的核酸検出の概略図である。
【0067】
上記DNA-Pdotsナノプローブについての説明は例示に過ぎず、当業者が分かるように、本発明において使用可能なオリゴヌクレオチドはDNAに限定されず、RNA等であってもよい;Cas酵素も図面に示すCas12aに限定されず、他の種類のCas12酵素又はCas13、Cas14酵素も同様に使用することができる。また、上記二本鎖DNAを切断するための酵素もEXO IIIに限定されず、他の本分野で利用可能な切断酵素を使用してもよい。
【0068】
本発明のECL検出方法の具体的な工程は例えば以下のとおりである。
【0069】
酵素反応工程:測定されるサンプルをCasタンパク質、crRNAを含むCas酵素体系に添加し、サンプル反応溶液を得る。ここで、上記crRNAは測定されるサンプル中の標的核酸を特異的に識別することができる。
【0070】
Pdotsチップ作製工程:動作電極に本発明のECLナノプローブを滴下し、本発明のPdotsチップ(すなわちECLセンサ、Pdots ECLチップ)を得る。当然のことながら、当該ECLチップを使用時に製造することなく、本発明のECLセンサを直接使用することもできる。該ECLセンサは好ましくは使い捨て検出チップ(本発明において、“Pdots使い捨て検出チップ”ということもある)である。それは、スクリーン印刷電極に本発明のECLナノプローブを固定することにより得ることができる。
【0071】
サンプル検出工程:上記サンプル反応溶液をPdotsチップに滴下し、一定の温度で一定の時間インキュベートした後に、電気化学発光信号を採取し、分析を行う。上記の信号スイッチにより、本発明のECL検出を実現することができる。
【0072】
<電気化学発光検出用キット>
本発明の一実施形態は、標的核酸と結合可能なガイド核酸を含むCas酵素触媒系を含む酵素反応溶液と、スクリーン印刷電極に上記電気化学発光ナノプローブが固定されているPdots使い捨て検出チップと、を含むCas酵素に基づく電気化学発光検出用キット(以下、「ECL検出用キット」ということもある)に関する。
【0073】
前述したように、本発明のECLナノプローブにおけるオリゴヌクレオチド鎖が二本鎖DNAである場合、前記酵素反応溶液はさらにEXO III酵素を含んでもよい。
【0074】
また、本発明のECL検出用キットは、さらにECL検出に必要の他の試薬及び取扱説明書等を含むことができる。
【0075】
以上、実施形態に基づいて本発明の電気化学発光ナノプローブ及びその製造方法及び応用等を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、実施の形態に当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0076】
(実施例)
以下に実施例を挙げて本発明のPdotsナノ粒子、ECLナノプローブ、ECL検出方法等を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
実施例で使用された試薬、実験方法及び使用される装置は以下のとおりである。
(1)試薬
EnGen(登録商標)Lba Cas12aはNew England Biolabs (Ipswich, MA, UK)から購入した。
ポリスチレン無水マレイン酸(PSMA、平均Mw:1700)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、ポリエチレングリコール(PEG、平均Mw:3350)、及び1-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)はいずれもSigma-Aldrich Co., Ltd. (Shanghai, China)から購入した。
ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(1,4-ベンゾ-{2,1’,3}-チアゾール)](PFBT)及びトリプロピルアミン(TPrA、]98%)はJ&K Chemical Ltd. (Beijing, China)から購入した。
使い捨てスクリーン印刷電極は、Nanjing Jingjie Biotechnology Co., Ltd (Nanjing, China)から購入した。
表1に記載の全てのオリゴヌクレオチドはいずれもSangon Bioengineering Co. Ltd. (Shanghai, China)から購入した。
また、リン酸塩緩衝液(PBS、0.1M、pH 7.4)はKHPOとNaHPOの貯蔵溶液を混合することにより調製される。
【0078】
実施例で使用されるオリゴヌクレオチド配列は以下のとおりである。
【0079】
【表1】
【0080】
(2)実験方法及び装置
透過型電子顕微鏡(TEM)は、TECNAIG2F 20透過型電子顕微鏡(FEI、USA)により得られる。
【0081】
ゼータ電位は、90 Plus DynaPro NanoStar(Brookhaven Instrument Corporation,USA)を用いて記録される。
【0082】
紫外吸収スペクトルは、UV-3600分光光度計(日本島津)により得られる。
【0083】
サイクリックボルタンメトリー実験は、CHI 630D電気化学ワークステーション(CHI instruments Inc., China)で行われる。
【0084】
ECL実験は、MPI-EII ECL分析器(Xi’an Remex, China)の自製反応槽で行われ、該分析器は三電極システムを採用する。
【0085】
実施例1:ECLナノ材料の製造
1.PFBT Pdotsの製造
製造プロセスは、発明者が発表した文章Anal.Chem.2018、90、7708-7714を参照する。
【0086】
まず、1 mgのPFBT及びPSMAをそれぞれ1 mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解して1 mg/mLのPFBT及びPSMAを調製した。次に、500μLのPFBT(1 mg/mL)及び100μLのPSMA(1 mg/mL)を取って9.4 mLのTHFに添加し、混合し、超音波で20分間脱気し、前駆体溶液を得た。さらに5回に分けて超音波条件下で2 mLの前駆体溶液をそれぞれ8 mLの超純水に迅速に注入し、3分間超音波処理した後に、回転蒸留により余分な超純水及びテトラヒドロフランを除去した。最後に、孔径0.22μmのポリエーテルスルホンシリンジを用いて濾過し、PFBT-Pdotsを製造した。
【0087】
透過型電子顕微鏡(TEM)により製造されたPFBT Pdots形態を解析し、結果を図4に示す。図4は、実施例1で製造されたPFBT PdotsのTEM解析結果を示す図である。図4に示すように、Pdotsナノ粒子は、良好な規則的な球状を呈し、大きさが均一であり、その平均粒径が24 ± 2 nmである。
【0088】
2.ECLナノプローブの製造
1)核酸で修飾されたPFBT Pdotsプローブの製造
a.ssDNA-Pdotsの製造
600μLのPFBT Pdots、12μLの5% PEG及び12μLの1 M HEPESを取って振動して均一に混合した後に、0.1 M NaOHでPHを7.3に調整した。さらに12μLの10 mg/mLのEDC及び3μLの10 mg/mL NHSを添加し、30 min発振して均一に混合した。次に、10μLの100μM ssDNAを添加し、200 rpmで48 h撹拌した後に、30 kd限外濾過管で限外濾過して遊離ssDNA(10000 rpm、5 min/回、8回繰り返す)を除去し、ssDNA-Pdotsを得た。
【0089】
b.hDNA-Pdotsの製造
600μLのPFBT Pdots、12μLの5% PEG及び12μLの1 M HEPESを取って振動して均一に混合した後に、0.1 M NaOHでPHを7.3に調整した。さらに12μLの10 mg/mL EDC及び3μLの10 mg/mL NHSを添加し、10 min発振して均一に混合した。次に、10μLの100μM hairpinDNAを添加し、200 rpmで48 h撹拌した後に、30 kd限外濾過管で限外濾過して遊離hairpinDNA(10000 rpm、5 min/回、8回繰り返す)を除去し、hDNA-Pdotsを得た。
【0090】
c.dsDNA-Pdotsの製造
600μLのPFBT Pdots、12μLの5% PEG及び12μLの 1 M HEPESを取って振動して均一に混合した後に、0.1 M NaOHでPHを7.3に調整した。さらに12μLの10 mg/mL EDC及び3μLの10 mg/mLのNHSを添加し、10 min発振して均一に混合した。次に、60μLの15.5μM dsDNAを添加し、200 rpmで48 h撹拌した後に、30 kd限外濾過管で限外濾過して遊離dsDNAを除去し(10000 rpm、5 min/回、8回繰り返す)、dsDNA-Pdotsを得た。
【0091】
なお、上記ssDNA、hairpinDNA、dsDNAは、表1に示すように、いずれもクエンチャー分子BHQ2が予め連結されている。
【0092】
d.DNA-Pdotsの特性解析
合成されたssDNA-Pdots、dsDNA-Pdots及びhDNA-Pdotsに対して紫外線及びDLS解析を行い、結果を図5Aおよび図5Bに示す。図5Aは、実施例1で製造されたDNA-Pdotsの紫外の解析結果を示す図である。図5Bは、実施例1で製造されたDNA-PdotsのDLSの解析結果を示す図である。
【0093】
図5Aから分かるように、Pdotsより、ssDNA-Pdots(図示せず)、dsDNA-Pdots及びhDNA-Pdotsはいずれも260 nmにDNAの特性ピークを有する。また、図5Bから分かるように、Pdotsより、ssDNA-Pdots(図示せず)、dsDNA-Pdots及びhDNA-Pdotsの吸収及び粒径はいずれも増加した。これらの結果はssDNA-Pdots、dsDNA-Pdots及びhDNA-Pdotsの合成が成功したことを示す。
【0094】
実施例2:Cas12a変換触媒に基づく信号スイッチの検証及びHPV DNAの検出
1)信号スイッチの原理
a.基本原理
オリゴヌクレオチド鎖(上記のssDNA、dsDNA及びhDNA)の末端にBHQが修飾されているため、PdotsはECL OFF状態である。標的分子が存在せず、Cas酵素が標的分子により活性化されない場合、BHQで修飾されたオリゴヌクレオチド鎖がPdots表面から離脱することがなく、センサ電極が低ECL強度を表示する(ECL OFF)。逆に、標的分子が存在し、Cas酵素が活性化される場合、その連帯切断活性によりオリゴヌクレオチド鎖が切断され、これによりBHQがPdots表面から離脱し、PdotsのECLを回復させ、センサ電極が強いECL信号を生成する(ECL ON)。
【0095】
b.ssDNA-Pdots及びhDNA-Pdotsナノプローブに基づくECLスイッチ
ssDNA-Pdots及びhDNA-Pdotsをレポータープローブとする場合、ssDNA及びhDNAはいずれも一本鎖DNA断片であり、上記aに示すように、標的分子が存在し、Cas酵素が活性化される時、連帯切断活性により一本鎖DNAが切断されるため、クエンチャー分子がPdots表面から脱離する。
【0096】
hDNA断片において、図2に示すように、ヘアピンの環状一本鎖断片はまずCas酵素により切断され、水素結合により結合された二本鎖部分は一本鎖が切断された後、結合力が弱くなり、ハイブリダイゼーションが解消されるため、BHQはPdots表面から離脱し、PdotsのECLを回復させ、センサ電極は強いECL信号を生成する(ECL ON)。
【0097】
c.dsDNA-Pdotsナノプローブに基づく二重酵素触媒ECLスイッチ
dsDNA-Pdotsナノプローブをレポータープローブとする場合、標的分子が存在し、Cas12a酵素が活性化される時、まずdsDNAの外端に露出した短い一本鎖断片を切断し、さらにエキソヌクレアーゼIII(EXO III)が活性化され、残りの二本鎖断片を切断し、それによりBHQがPdots表面から離脱し、PdotsのECLを回復させ、センサ電極が強いECL信号を生成する(ECL ON)。
【0098】
2)信号スイッチの検証
1.ECLセンサ電極の製造
それぞれ2μlのssDNA-Pdots、hDNA-Pdots、dsDNA-Pdotsをスクリーン印刷電極の表面に滴下し、乾燥して固定し、ssDNA-Pdots、hDNA-Pdots及びdsDNA-Pdotsのセンサ電極を製造する。
【0099】
2.検出
a.ssDNA-Pdots又はhDNA-Pdotsナノプローブに基づくECL検出
まず、50nM Cas12aタンパク質及び0.25μM crRNAを含有するサンプル反応溶液を調製した。19μLのサンプル反応溶液に1μLのHPV16 DNAを添加し、均一に混合し、Cas12 a検出溶液を調製した。
【0100】
次に、4μLのCas12a検出溶液を取り、それぞれssDNA-Pdots及びhDNA-Pdotsセンサ電極の表面に滴下し、37℃で1hインキュベートし、1xPBSで洗浄し、自然乾燥する。
【0101】
最後に、ECL検出電解液(0.1M TPrAと0.1M KNOを含む0.1M pH 7.4 PBS)にECL応答を記録した。ここで、ECL検出はサイクリックボルタンメトリーを用いて、0から+1.50 Vまで走査し、走査速度は100 mV/sである。
【0102】
b.dsDNA-Pdotsナノプローブに基づく二重酵素触媒ECL検出
まず、上記のようにCas12a検出溶液(50 nM Cas12a、0.25μM crRNA、50 nM HPV16 DNAを含む10倍希釈のBufferII)を調製した。
【0103】
次に、4μlのCas12a検出溶液を取り、dsDNA-Pdotsセンサ電極の表面に滴下し、37℃で1時間インキュベートし、1xPBSで洗浄し、自然乾燥する。
【0104】
次に、3μlのEXO III溶液(100U/ml EXO IIIを含む10倍希釈のBuffer I)をセンサ電極の表面に滴下し、37℃で、30分間インキュベートし、1xPBSで洗浄する。
【0105】
最後に、ECL検出電解液(0.025M TPrAと0.1M KNOを含有する0.1M pH 7.4 PBS)にECL応答を記録した。具体的なECL検出条件は以下のとおりである。
検出方法:サイクリックボルタンメトリー法
最高電位:+1.5V
最低電位:0V
走査速度:100 mV/s
PMT:高圧500V
【0106】
ECL検出結果を図6A図6Cに示す。図6A図6Cは、実施例2で製造された異なるECLセンサ電極の酵素活性化前後でのECL強度の比較結果を示す図である。ここで、図6AはssDNA-Pdots修飾電極のCas酵素活性化前後のECL強度の比較結果を示す図であり、図6BはhDNA-Pdots修飾電極のCas酵素活性化前後のECL強度の比較結果を示す図であり、図6CはdsDNA-Pdots修飾電極の二重酵素活性化前後のECL強度の比較結果を示す図である。
【0107】
図6A図6B及び図6Cから分かるように、上記異なるPdotsナノプローブで修飾されたセンサ電極を使用する場合、ECL強度はいずれも低下し、酵素が標的核酸により活性化された後にECL強度はいずれも回復する。この結果は、本発明のPdotsナノプローブに基づく直接式ECLスイッチ体系の実行可能性を表明した。
【0108】
また、図6Bから分かるように、Pdots修飾電極に比べて、hDNA-Pdots修飾電極のECL強度が~20%に低下し、センサ界面がECL OFF状態であることを表明した。1μMの標的分子を添加する場合、Cas12a酵素が活性化され、ECL ON応答を発生し、修飾電極のECL強度が~80%に回復した。すなわち、hDNA-Pdots修飾電極は、ssDNA-Pdots修飾電極より良好な検出感度を示した。該結果は、ヘアピン構造のssDNAにおいて、クエンチャー分子がPdotsに近いため、より良好な信号消光効果を有し、より強い信号増幅を有すると考えられる。
【0109】
図6Cから分かるように、Pdots修飾電極に比べて、dsDNA-Pdots修飾電極のECL強度が~30%低下し、センサ界面がECL OFF状態であることを表明した。1μMの標的分子を添加する場合、Cas12a酵素が活性化され、Cas12a-EXO III二重酵素による切断反応を起動し、ECL ON応答を生成し、修飾電極のECL強度が~65%に回復した。この結果は、dsDNA-Pdotsナノプローブに基づく二重酵素触媒ECLスイッチ体系の実行可能性だけでなく、良好な検出感度を有することを表明した。dsDNA構造はhDNA構造と類似するため、クエンチャー分子は直鎖のssDNAよりもPdotsに近いため、同様に良好な検出感度を有すると考えられる。また、該検出にCas酵素及びエキソヌクレアーゼという二重酵素切断システムを採用するため、二重酵素切断システムの高活性に役立ち、ECL信号を取得するのに必要な時間がより短くなった(30分間より小さい)。
【0110】
c.検出性能実験
上記のように製造されたhDNA-Pdotsセンサ電極を用いて、異なる濃度のHPV 16 DNAを検出した。図7は、実施例2で製造されたhDNA-Pdotsセンサ電極を用いてHPV 16 DNAを検出した結果を示す図である。図7に示すように、HPV16 DNA濃度が10 pMに達する時に依然として応答があり、本発明の製造されたECLナノプローブ及びECLセンサが実際に標的核酸の検出に用いられることを表明した。
【0111】
産業上の利用可能性
上記実施例から分かるように、本発明で製造されたECLナノプローブ、特にhDNA-Pdotsナノプローブ及びdsDNA-Pdotsナノプローブは、Cas酵素システムと組み合わせることにより、ECL信号をオフからオンに切り替えることができ、それにより増幅する必要がなく、高感度、高精度及び特異性を有しかつ高柔軟性を有する電気化学発光検出方法を提供することができる。また、本発明のECLナノプローブはさらに使い捨て検出チップ、例えば、使い捨てプラスチックチップまたは紙基チップに製造することができるため、POCTに役立ち、便利で、迅速な核酸検出を実現することができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
【配列表】
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