(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177128
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】交通状況を分類するためのコンピュータ実装方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20241212BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241212BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20241212BHJP
B60W 40/10 20120101ALI20241212BHJP
【FI】
B60W30/10
G08G1/16 C
B60W40/04
B60W40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024092350
(22)【出願日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】10 2023 114 947.4
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506012213
【氏名又は名称】ディスペース ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】dSPACE GmbH
【住所又は居所原語表記】Rathenaustr.26,D-33102 Paderborn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ロッシ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ カラマン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ アトルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコヴ トピツ
(72)【発明者】
【氏名】カトリーナ ソヴァ
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BB16
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE06
3D241DA39Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC01Z
3D241DC21Z
3D241DC25Z
5H181AA01
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するための方法を提供する。
【解決手段】有向グラフ(G)を第1のデータセット(DS1)に適用するステップ(S2)であって、有向グラフのノードは、第1のデータセットを、それぞれ時区間において満たされた第1の条件(14)に応じて、車両環境に対する自車両および/または同朋車両の運動挙動の少なくとも1つの区分に分化し、有向グラフの辺は、各ノード間の結合を表すステップ(S2)と、決定された区分のすべてが予め設定された交通状況の第2の条件(16)を満たす場合に、予め設定された交通状況を分類するステップ(S3)と、予め設定された交通状況を表すクラス(K)および/または予め設定された交通状況を表す区分の各開始時点および終了時点を有する第2のデータセット(DS2)を出力するステップ(S4)と、を含む。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのコンピュータ実装方法であって、前記コンピュータ実装方法は、
少なくとも1つの車両側環境識別センサによって捕捉された自車両(10)および/または同朋車両(12)の走行の複数の交通状況を含むセンサデータの第1のデータセット(DS1)、特にデータストリームを提供するステップ(S1)と、
有向グラフ(G)を前記第1のデータセット(DS1)に適用するステップ(S2)であって、前記有向グラフ(G)のノード(11)は、前記第1のデータセット(DS1)を、それぞれ時区間において満たされた第1の条件(14)に応じて、車両環境に対する自車両(10)および/または同朋車両(12)の運動挙動の少なくとも1つの区分に分化し、前記有向グラフ(G)の辺(15)は、各前記ノード(11)間の結合を表す、適用するステップ(S2)と、
決定された前記区分のすべてが予め設定された交通状況の第2の条件(16)を満たす場合に、予め設定された交通状況を分類するステップ(S3)と、
予め設定された交通状況を表すクラス(K)および/または予め設定された交通状況を表す区分の各開始時点および終了時点を有する第2のデータセット(DS2)を出力するステップ(S4)と、
を含むコンピュータ実装方法。
【請求項2】
分類すべき予め設定された交通状況が事前に確定され、前記有向グラフ(G)は、それぞれ予め設定された交通状況の区分を決定する、
請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記各ノード(11)は、少なくとも1つの入力と厳密に1つの出力とを有し、前記各ノード(11)の前記少なくとも1つの入力は、さらなるノード(11)の辺によって、または前記第1のデータセット(DS1)によって与えられる、
請求項1または2記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記各ノード(11)は、前記ノード(11)の入力データに適用されるアルゴリズム(A)を有し、前記アルゴリズム(A)は、前記車両環境に対する自車両(10)および/または同朋車両(12)の運動挙動の第1の条件(14)が満たされているか否かを分類する、
請求項1から3までのいずれか1項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記各ノード(11)の前記アルゴリズム(A)は、前記第1の条件(14)が満たされた場合に、前記運動挙動を表す区分の各開始時点および終了時点を出力する、
請求項4記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記車両環境に対する自車両(10)および/または同朋車両(12)の運動挙動の区分は、前記車両環境に対する自車両(10)および/または同朋車両(12)の第1のデータセット(DS1)、特にデータストリームによって包括される運動挙動の開始時点および終了時点を含む時区間である、
請求項1から4までのいずれか1項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記有向グラフ(G)は、少なくとも1つのノード(11)を含みかつその入力が第1のデータセットである第1の層(17a)を有し、少なくとも第1のノード(11)および第2のノード(11)を含む前記有向グラフ(G)の第2の層(17b)は、前記第1のデータセット(DS1)を、それぞれ前記第1の条件(14)に応じて、車両環境に対する自車両(10)および/または同朋車両(12)の運動挙動の少なくとも1つの区分に分化し、少なくとも1つのノード(11)を含む前記有向グラフ(G)の第3の層(17c)は、決定された時区間の組み合わせが予め設定された交通状況の第2の条件(16)を満たした場合に、前記第2の層(17b)のノード(11)によって出力された時区間を使用して予め設定された交通状況を分類する、
請求項6記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記予め設定された交通状況の第2の条件(16)は、前記第1の条件(14)に従って決定された自車両(10)の区分および/または同朋車両(12)の運動挙動の少なくとも1つの区分が、予め設定された順序で、かつ/または予め設定された時区間内で経過することを示す、
請求項7記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記車両環境に対する自車両(10)および/または同朋車両(12)の運動挙動は、前記第1のデータセット(DS1)において検出可能である、運動挙動を表すすべての車両動作を含む、
請求項1から8までのいずれか1項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記車両環境に対する自車両(10)および/または同朋車両(12)の運動挙動は、
交通インフラおよび/または少なくとも1つの同朋車両(12)に対する自車両(10)の横方向および/または長手方向挙動であり、かつ/または交通インフラおよび/または少なくとも1つの自車両(10)に対する同朋車両(12)の横方向および/または長手方向挙動であり、前記車両環境に対する自車両(10)および/または同朋車両(12)の運動挙動は、車線維持、車線変更、曲がる動作、一定のもしくは変化する加速度およびその結果生じる速度、ブレーキライトの点灯、前記車両環境内の物体の通過および/または交通標識の識別を含む、
請求項1から9までのいずれか1項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
少なくとも1つの車両側環境識別センサによって捕捉された自車両(10)および/または同朋車両(12)の走行のセンサデータは、GNSSセンサの位置データ、IMUデータ、カメラデータ、LiDARデータ、レーダーデータおよび/または超音波データである、
請求項1から10までのいずれか1項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記出力された第2のデータセット(DS2)に基づいて、自動車の自動化された走行機能を検証するための仮想テストが実施される、
請求項1から11までのいずれか1項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記有向グラフ(G)の出力およびさらなる有向グラフ(G)の出力は、さらなる予め設定された交通状況を分類するために使用され、前記有向グラフ(G)および前記さらなる有向グラフ(G)の出力の組み合わせが、さらなる予め設定された交通状況の第3の条件(18)を満たした場合、さらなる予め設定された交通状況が分類される、
請求項1から12までのいずれか1項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのシステム(1)であって、前記システム(1)は、
少なくとも1つの車両側環境識別センサによって捕捉された自車両(10)および/または同朋車両(12)の走行の複数の交通状況を含むセンサデータの第1のデータセット(DS1)、特にデータストリームを提供するように構成されたデータメモリ(20)と、
有向グラフ(G)を前記第1のデータセット(DS1)に適用するように構成された第1の計算ユニット(22)であって、前記有向グラフ(G)のノード(11)は、前記第1のデータセット(DS1)を、それぞれ時区間において満たされた第1の条件(14)に応じて、車両環境に対する自車両(10)および/または同朋車両(12)の運動挙動の少なくとも1つの区分に分化し、前記有向グラフ(G)の辺(15)は、前記各ノード(11)間の結合を表す第1の計算ユニット(22)と、
決定された前記区分のすべてが予め設定された交通状況の第2の条件を満たす場合に、予め設定された交通状況を分類するように構成された第2の計算ユニット(24)と、
予め設定された交通状況を表すクラス(K)および/または予め設定された交通状況を表す区分の各開始時点および終了時点を有する第2のデータセット(DS2)を出力するように構成されたデータ出力ユニット(26)と、
を備えるシステム(1)。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、請求項1から13までのいずれか1項記載の自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するための方法を実施するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのコンピュータ実装方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
シミュレーションのためのテストシナリオを作成するためには、テスト走行を実施する必要がある。それに続いて、これにより得られたセンサデータは、論理的なシナリオに抽象化される。
【0004】
入力データは、ここでは生データ、つまり、レーダーエコーの記録、ライダー測定による3D点群および画像データの趣旨に沿った実測走行からのセンサデータである。結果データは、一方では環境を含み、他方では軌道を含むシミュレーション可能な走行シナリオである。
【0005】
文献「Szenario-Optimierung fuer die Absicherung von automatisierten und autonomen Fahrsystemen (Florian Hauer, Bernd Holzmueller, arXiv:1901.05680)」は、自動化されかつ自律的な走行システムを検証および妥当性検査するための方法が開示されており、特に、仮想保護のための適切なテストシナリオを見つけることが開示されている。
【0006】
このテスト手法は、シナリオを最適化するためのメタヒューリスティクス探索の適合化を想定する。このためには、妥当な探索空間と適切な品質関数とを確立する必要がある。システムの機能性および適用ケースの抽象的記述から出発してパラメータ化されたシナリオが導出される。
【0007】
これは、特定のパラメータが状況に大きな影響を与えることから出発する。例えば、非常制動がかけられる状況は、主に道路利用者の両者の速度によって決定される。それゆえ、ユーザーにとっては、これらのパラメータの値の分布を理解し、どの部分がデータやシミュレーションによってカバーされていないかを知ることは極めて重要である。欠けているデータポイントは、現実かまたはシミュレーションのどちらかで収集しなければならない。
【0008】
したがって、ユーザーにとっては、危機的状況を識別し、同じシミュレーションシナリオの僅かに変化したバージョンでテストするために生成されたデータセットの効果的な評価は望ましいことである。
【0009】
さらに、自律的走行機能の検査のために作成される多くのシナリオは、先験的に確定され、どのシナリオがどのテスト目的に必要になるかについての専門知識に基づいている。
【0010】
他方で、実データに基づく手法は、機械学習アルゴリズムに基づいており、これは、他の類似の交通状況が望まれるケースについての一般化が困難である。
【0011】
その結果、運転シナリオ-データセットを分析するための既存の方法を改善することにより、危機的状況の効果的な識別および分類を可能にさせる必要性が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それゆえ、本発明の課題は、着目すべき危機的交通状況の効果的な識別および分類を可能にする、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴を有する、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのコンピュータ実装方法によって解決される。
【0014】
この課題は、さらに本発明により、請求項14の特徴を有する、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのシステムによって解決される。
【0015】
本発明は、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのコンピュータ実装方法に関する。
【0016】
本方法は、少なくとも1つの車両側環境識別センサによって捕捉された自車両および/または同朋車両の走行の複数の交通状況を含むセンサデータの第1のデータセット、特にデータストリームを提供するステップを含む。
【0017】
さらに本方法は、第1のデータセットに有向グラフを適用するステップを含み、ここで、有向グラフのノードは、第1のデータセットを、それぞれ時区間において満たされた第1の条件に応じて、車両環境に対する自車両および/または同朋車両の運動挙動の少なくとも1つの区分に分化し、ここで、有向グラフの辺は、各ノード間の結合を表す。
【0018】
本方法は、その上さらに、決定された区分のすべてが予め設定された交通状況の第2の条件を満たす場合に、予め設定された交通状況を分類するステップと、予め設定された交通状況を表すクラスおよび/または予め設定された交通状況を表す区分の各開始時点および終了時点を有する第2のデータセットを出力するステップと、を含む。
【0019】
本発明はさらに、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのシステムに関する。
【0020】
本システムは、少なくとも1つの車両側環境識別センサによって捕捉された自車両および/または同朋車両の走行の複数の交通状況を含むセンサデータの第1のデータセット、特にデータストリームを提供するように構成されたデータメモリを含む。
【0021】
さらに、本システムは、有向グラフを第1のデータセットに適用するように構成された第1の計算ユニットを含み、ここで、有向グラフのノードは、第1のデータセットを、それぞれ時区間において満たされた第1の条件に応じて、車両環境に対する自車両および/または同朋車両の運動挙動の少なくとも1つの区分に分化し、ここで、有向グラフの辺は、各ノード間の結合を表す。
【0022】
本システムは、その上さらに、決定された区分のすべてが予め設定された交通状況の第2の条件を満たす場合に、予め設定された交通状況を分類するように構成された第2の計算ユニットと、予め設定された交通状況を表すクラスおよび/または予め設定された交通状況を表す区分の各開始時点および終了時点を有する第2のデータセットを出力するように構成されたデータ出力ユニットと、を含む。
【0023】
本発明は、さらに、コンピュータプログラムであって、該コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するための本発明に係る方法を実施するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラムに関する。
【0024】
本発明の1つの考察は、改善されたデータ選択と、場合によっては後続のステップにおけるそれに基づく、第1の複数の車両側環境識別センサによって捕捉された自車両および/または同朋車両の走行のセンサデータのデータセットに含まれる交通状況の改善されたパラメータ抽出と、を実施することである。
【0025】
それにより、データを関連する状況に従って自動的に検索し、続いて、相応に抽出された交通状況のみをシミュレーションにもたらすことができる。
【0026】
それゆえ、本発明は、実世界のデータから交通状況を識別するために使用できるシナリオを選択する方法を提供する。この提案された方法はグラフベースであり、提供された生の測定データの中で識別すべき交通状況を有意に定義することが可能である。
【0027】
グラフベースの構造は、内在的に状況の類似性に結合されており、類似の状況は、対応する類似のグラフにマッピングされる。
【0028】
グラフベースのテンプレートは、様々なシナリオを識別するために簡単に変更することができ、さらにグラフは、より複雑な交通挙動を記述するために再利用および組み合わせが可能である。したがって、並行して使用される複数のグラフは、例えばカットインなどの識別された交通状況のブロックを用いたデータストリーム全体の記述を可能にする。
【0029】
識別された交通状況によるデータストリームのカバレッジは直視可能である。その他にもユーザーは、コードを記述することなく、識別すべきテンプレートを特定することができる。ユーザーは、要求されるテンプレートがどの位簡素で一般的なものであるべきか、あるいはどの位複雑で詳細なものであるべきかを自身で決定することができる。
【0030】
交通状況とは、ここでは、複数の道路利用者を伴う小規模シナリオ、基本的シナリオおよび/または大規模シナリオもしくは交通シナリオを意味するものと理解され得る。
【0031】
本発明のさらなる実施形態は、さらなる従属請求項および図面を参照した後続の説明の対象である。
【0032】
本発明の好適な発展形態によれば、分類すべき予め設定された交通状況が事前に確定され、ここで、有向グラフは、それぞれ予め設定された交通状況の区分を決定することが想定される。したがって、有利には、各交通状況によって包括される区分が第1のデータセットに存在するか否かを、設定仕様に従って決定もしくは二値分類することができる。
【0033】
本発明のさらなる好適な発展形態によれば、各ノードは、少なくとも1つの入力と厳密に1つの出力とを有し、各ノードの少なくとも1つの入力は、さらなるノードの辺によって、または第1のデータセットによって与えられることが想定される。したがって、これらのノードは、先行する層の1つまたは複数の入力を処理することができ、そのため、後続の各層を用いることにより、高い論理レベルもしくは抽象化レベルの車両挙動を決定することができる。
【0034】
本発明のさらなる好適な発展形態によれば、各ノードは、ノードの入力データに適用されるアルゴリズムを有し、ここで、アルゴリズムは、車両環境に対する自車両および/または同朋車両の運動挙動の第1の条件が満たされているか否かを分類することが想定される。
【0035】
この分類は、ここでは二値分類、すなわち区分に該当する予め設定された条件が真であるか偽であるかの決定である。
【0036】
本発明のさらなる好適な発展形態によれば、各ノードのアルゴリズムは、第1の条件が満たされた場合に、運動挙動を表す区分の各開始時点および終了時点を出力することが想定される。これにより、有利には、特定の車両挙動が生じる関連区分を決定することができる。
【0037】
本発明のさらなる好適な発展形態によれば、車両環境に対する自車両および/または同朋車両の運動挙動の区分は、車両環境に対する自車両および/または同朋車両の第1のデータセット、特にデータストリームによって包括される運動挙動の開始時点および終了時点を含む時区間であることが想定される。
【0038】
それにより、複数の交通状況を含むセンサデータのデータストリームを含む第1のデータセットから出発して、着目すべき自車両および/または同朋車両の運動挙動を含む対応する時区分を決定することができる。
【0039】
本発明のさらなる好適な発展形態によれば、有向グラフが、少なくとも1つのノードを含みかつその入力が第1のデータセットである第1の層を有し、ここで、少なくとも第1のノードおよび第2のノードを含む有向グラフの第2の層は、第1のデータセットを、それぞれ第1の条件に応じて、車両環境に対する自車両および/または同朋車両の運動挙動の少なくとも1つの区分に分化し、ここで、少なくとも1つのノードを含む有向グラフの第3の層は、決定された時区間の組み合わせが予め設定された交通状況の第2の条件を満たした場合に、第2の層のノードによって出力された時区間を使用して予め設定された交通状況を分類することが想定される。
【0040】
したがって、グラフの各層は、特定の区分に基づいて、上位レベルの交通状況がデータによって包括されているか否かを検査するために、第1のデータセットを各設定仕様に応じて連続的に分化するというタスクを満たしている。
【0041】
本発明のさらなる好適な発展形態によれば、予め設定された交通状況の第2の条件は、第1の条件に従って決定された自車両の区分および/または同朋車両の運動挙動の少なくとも1つの区分が、予め設定された順序で、かつ/または予め設定された時区間内で経過することを示すことが想定される。これにより、決定された区分が、予め設定された交通状況を特徴付ける相応の順序で生じることを保証することができる。
【0042】
本発明のさらなる好適な発展形態によれば、車両環境に対する自車両および/または同朋車両の運動挙動は、第1のデータセットにおいて検出可能である、運動挙動を表すすべての車両動作を含むことが想定される。したがって、異なるセンサタイプによって捕捉されたすべてのデータならびにデータにおいて検出可能な事象は、予め設定された交通状況を識別するために用いることができる。
【0043】
本発明のさらなる好適な発展形態によれば、
車両環境に対する自車両および/または同朋車両の運動挙動は、
交通インフラストラクチャおよび/または少なくとも1つの同朋車両に対する自車両の横方向および/または長手方向挙動であり、かつ/または
交通インフラストラクチャおよび/または少なくとも1つの自車両に対する同朋車両の横方向および/または長手方向挙動であり、
ここで、車両環境に対する自車両および/または同朋車両の運動挙動は、車線維持、車線変更、曲がる動作、一定のもしくは変化する加速度およびその結果生じる速度、ブレーキライトの点灯、車両環境内の物体の通過および/または交通標識の識別を含むことが想定される。
【0044】
したがって、交通インフラおよび/または少なくとも1つの同朋車両に対する第1のデータセットにおいて検出可能な自車両の運動挙動およびその逆は、関与する車両の複数の異なる挙動を含む。
【0045】
本発明のさらなる好適な発展形態によれば、少なくとも1つの車両側環境識別センサによって捕捉された自車両および/または同朋車両の走行のセンサデータは、GNSSセンサの位置データ、IMUデータ、カメラデータ、LiDARデータ、レーダーデータおよび/または超音波データであることが想定される。したがって、これらのセンサデータは、複数の異なるデータソースから取得することができる。
【0046】
本発明のさらなる好適な発展形態によれば、出力された第2のデータセットに基づいて、自動車の自動化された走行機能を検証するための仮想テストが実施されることが想定される。したがって、決定された交通状況は、自動車の自動化された走行機能を検証するための仮想テストの基礎を形成することができる。
【0047】
本発明のさらなる好適な発展形態によれば、有向グラフの出力およびさらなる有向グラフの出力は、さらなる予め設定された交通状況を分類するために使用され、ここで、有向グラフおよびさらなる有向グラフの出力の組み合わせが、さらなる予め設定された交通状況の第3の条件を満たした場合、さらなる予め設定された交通状況が分類されることが想定される。したがって、複数の求められた交通状況の組み合わせは、有利には、さらなる交通状況を決定するために使用することができる。
【0048】
本明細書に記載された、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのコンピュータ実装方法の特徴は、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するための本発明によるシステムにも同様に適用可能であり、その逆もまた同様に適用可能である。
【0049】
本発明およびその利点をより良好に理解するために、ここで、以下の説明を所属の図面と併せて参照する。
【0050】
以下では本発明を、図面の概略図に示されている例示的な実施形態に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1a】本発明の好適な実施形態による、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのコンピュータ実装方法を示すフローチャートである。
【
図1b】本発明の好適な実施形態による、カットインシナリオを示す概略図である。
【
図2】本発明の好適な実施形態による、カットインシナリオを決定するためのグラフを示す図である。
【
図3】本発明の好適な実施形態による、自車両の軌道を示す概略図である。
【
図4】本発明の好適な実施形態による、同朋車両の軌道を示す概略図である。
【
図5】本発明の好適な実施形態による、様々な時区間の間の車両操作を示す概略図である。
【
図6】本発明の好適な実施形態による、異なるシナリオを示す概略図である。
【
図7】本発明の好適な実施形態による、カットインシナリオを決定するためのグラフを示す図である。
【
図8】本発明の好適な実施形態による、ドリフトアウトシナリオを決定するためのグラフを示す図である。
【
図9】本発明の好適な実施形態による、追い越し操作を決定するためのグラフを示す図である。
【
図10】本発明の好適な実施形態による、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのシステムを示す概略図である。
【0052】
特に明記がない限り、同一の参照符号は図面の同一の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1aは、本発明の好適な実施形態による、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのコンピュータ実装方法のフローチャートを示す。
【0054】
本方法は、少なくとも1つの車両側環境識別センサによって捕捉された自車両10および/または同朋車両12の走行の複数の交通状況を含むセンサデータの第1のデータセットDS1、特にデータストリームを提供するステップS1を含む。
【0055】
さらに、本方法は、有向グラフGを第1のデータセットDS1に適用するステップS2を含み、ここで、有向グラフGのノード11は、第1のデータセットDS1を、それぞれ時区間において満たされた第1の条件14に応じて、車両環境に対する自車両10および/または同朋車両12の運動挙動の少なくとも1つの区分に分化し、ここで、有向グラフGの辺15は、各ノード11間の結合を表す。
【0056】
その上、本方法は、決定された区分のすべてが予め設定された交通状況の第2の条件16を満たす場合に、予め設定された交通状況を分類するステップS3と、予め設定された交通状況を表すクラスKおよび/または予め設定された交通状況を表す区分の各開始時点および終了時点を有する第2のデータセットDS2を出力するステップS4と、を含む。
【0057】
図1bに示されているカットインシナリオの例に基づいて、本発明による構想の説明が行われる。このシナリオでは、自車両10は、中央車線を走行している他車両もしくは同朋車両12の前に出るまで左側車線を走行し、その後、他車両の車線に変更する。
【0058】
カットインのようなシナリオの説明を簡単にするために、以下の説明の枠内では、時区間の間の関係が定義可能であるアレンの区間代数が使用される。
【0059】
これらのシナリオの文脈では、車両の運動を記述するために、車両の基本的な運動挙動タイプが時区間として使用される。例えば、自車両10の運動は、3つの区間に分けることができる:車線を維持するための区間、続いて車線を変更するための区間、続いて車線を維持するためのさらなる区間である。
【0060】
車両の運動を記述するために使用される時区間にアレンの区間代数を適用することにより、カットインシナリオは、3つの簡単な命題を用いて記述することができる。
【0061】
自車両順序:
車線維持、車線変更に遭遇、車線維持に遭遇。
【0062】
同朋車両順序:
車線維持。
さらに自車両順序も同朋車両順序の間に生じる。
【0063】
この説明に基づけば、入力として与えられたシナリオがカットインシナリオとしてカテゴライズもしくは分類され得るか否かを決定するために計算グラフGが作成される。その結果生じるカットインシナリオを識別するためのグラフGは、
図2に示されている。
【0064】
グラフGは、辺15によって接続された複数のノード11からなっている。各ノード11は1つまたは複数の入力を有し、常に1つの出力を生成する。これらのノード11の入力は、他のノード11から接続された辺15によって定義される。各ノード11は、入力された時区間の検査が真である区分の時区間を返す検査を実施する。
【0065】
グラフGは、異なるタイプのノード11を含む。グラフGのノード11の第1の層17aは、車両の運動データに基づく入力データ、例えば車両の軌道である。グラフGの第2の層17bは、軌跡を分析し、例えば「車線維持」などの時区間に分割するノード11である。
【0066】
次いで、これらの時区間は、分化された時区間の間の時間依存性がシナリオ記述、例えば「出くわす」もしくは「meets」に対応しているか否かを検査するために、後続のノード11によって組み合わされる。グラフGの最後のノード11を通過した後では、識別されたカットインシナリオの時区間が出力される。
【0067】
以下では、グラフGの作成を説明する。シナリオもしくは交通状況を決定するための第1のステップは、運動を意味論的に記述するために、道路利用者の軌道を時区間に分化することにある。この目的のために、1つの軌道を側方の時区間もしくは区分に分化することができる、例えば、カットインシナリオでは、「車線維持」区分と「車線変更」区分とに分化することができる分化アルゴリズムを実装するノード11が使用される。
【0068】
図1のカットイン例からの自車両10では、軌道を
図3に示されている時区間に分化することができる。既に上述したように、軌道の分化により、3つの時区間:「車線維持」、「車線変更」およびさらなる区間「車線維持」が生じる。
【0069】
同朋車両12の軌道に対して例と同じ分化を実施した場合、1つだけの「車線維持」区分が生じる(
図5)。
【0070】
分化の後、アレンの区間代数に基づく検査を実施するノード11を用いて、時区間が再組み合わせされる。カットインシナリオのグラフGに使用される、アレンの区間代数に基づく第1のノード11は、「Meet」である。このノード11「Meet」は、2つの入力:グラフGの先行する層の分化ノード11からの時区間「車線維持」と「車線変更」とを有する。
【0071】
ノード11「Meet」の検査は、「車線維持」の時区間に直接「車線変更」の時区間が続けられる時区間を提供する。
図5の例では、このことは、「車線維持」の分化結果および「車線変更」の分化結果の第1の時区間のケースである。このノード11の出力は、「車線維持」の時区間と「車線変更」の時区間とが組み合わされた時区間である。
【0072】
同じ方法は、次の「Meets」ノード11にも適用され、このノード11は、第1の「Meets」ノード11の出力に対して、さらなる「車線維持」時区間が直接追従しているか否かを検査する。グラフGの最後のノード11「During」は、自車両10順序を記述する「Meets」ノード11の出力の時区間が、識別された同朋車両12の「車線維持」時区間と同じ時区間にあるか否かを検査する。
【0073】
車両の運動の時間的記述だけを観察すれば、カットインシナリオの識別のためだけに設計されたグラフGを用いて、他の複数のシナリオを決定することが可能であることがわかる(
図6)。4つのシナリオすべてにおいて、付加的なシナリオパラメータを無視すれば、自車両と同朋車両とが同じ運動を実施する。
【0074】
それゆえ、グラフGには、付加的なシナリオパラメータを検証するために、付加的なノード11を追加する必要がある。これらの付加的なシナリオパラメータは、カットインシナリオのケースでは、車両の相対位置と、車両が走行する相対車線と、を記述するための空間パラメータである。カットインシナリオを区別するために、2つの付加的条件を追加することができる:
1)自車両と同朋車両10,12とが同じ車線上でゴールする。
2)自車両10が同朋車両12の前方にゴールする。
【0075】
カットインシナリオを検出するために、これらの2つの条件を変換して図面に追加した場合、最終的な線図は
図7に示されているようになる。
【0076】
第2のグラフGには、ノード11「同一車線」および「同朋車両前方の自車両」を有する第1の層17aが再び存在し、これは、車両軌道に基づいて分化を行い、両車両が同一車線上にある時区間、ならびに自車両10が同朋車両12の前方にある時区間を出力する。
【0077】
第2のグラフGの第2の層17bでは、検出された第1のグラフGの時区間が、「同一車線」のノード出力および「同胞車両前方の自車両」のノード出力の時区間によって終了しているか否かを計算する。最後のノード11「During」は、最終的に生じた結時区間が同じ持続時間で行われるか否かを検査する。最後に時区間が残ったままならば、カットインシナリオは識別されたことになる。
【0078】
図8では、ドリフトアウトシナリオを識別するために、カットインシナリオの識別のためのグラフGの3つのノード11だけを交換する必要があり、すなわち「前方」→「後方」に、および「終了」→「開始」に交換する必要がある。
【0079】
図9では、ドリフトアウトシナリオおよびカットインシナリオを識別するための一度定義されたグラフGが、新たに追い越しシナリオなどの複雑な交通シナリオを識別するためのノード11としてどのように定義でき、次いで、どのように組み合わせできるかが示されている。
【0080】
図10は、本発明の好適な実施形態による、自動車の環境データのデータセットによって包括される予め設定された交通状況を分類するためのシステムの概略図である。
【0081】
システム1は、少なくとも1つの車両側環境識別センサによって捕捉された自車両10および/または同朋車両12の走行の複数の交通状況を含むセンサデータの第1のデータセットDS1、特にデータストリームを提供するように構成されたデータメモリ20を含む。
【0082】
さらに、システム1は、有向グラフGを第1のデータセットDS1に適用するように構成された第1の計算ユニット22を含み、ここで、有向グラフGのノード11は、第1のデータセットDS1を、それぞれ時区間において満たされた第1の条件14に応じて、車両環境に対する自車両10および/または同朋車両12の運動挙動の少なくとも1つの区分に分化し、ここで、有向グラフGの辺15は、各ノード11間の結合を表す。
【0083】
システム1は、その上さらに、決定された区分のすべてが予め設定された交通状況の第2の条件を満たす場合に、予め設定された交通状況を分類するように構成された第2の計算ユニット24と、予め設定された交通状況を表すクラスKおよび/または予め設定された交通状況を表す区分の各開始時点および終了時点を有する第2のデータセットDS2を出力するように構成されたデータ出力ユニット26と、を含む。
【符号の説明】
【0084】
1 システム
10 自車両
11 ノード
12 同朋車両
14 第1の条件
15 辺
16 第2の条件
18 第3の条件
20 データメモリ
22 第1の計算ユニット
24 第2の計算ユニット
26 データ出力ユニット
A アルゴリズム
G グラフ
K クラス
DS1 第1のデータセット
DS2 第2のデータセット
S1~S4 処理ステップ
【外国語明細書】