(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177130
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電気光学デバイスおよび電気光学デバイスを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G02F1/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024092355
(22)【出願日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】2305745
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン・デュポン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・デジエール
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA02
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD09
2K102CA28
2K102DA05
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA02
2K102EA08
2K102EA22
(57)【要約】
【課題】最適化された費用および/または適合性を有する、オンシリコン基板ニオブ酸リチウムの層部分の局所化した形成のための方法を提案すること。
【解決手段】本発明は、垂直方向(z)にスタックされる、シリコンベースの基板(10)と、窒化物ベースの耐熱材料から作られる核生成層(20)と、核生成層(20)上のメサから作られLNO部分と呼ばれるニオブ酸リチウムベースの層部分(30)とを備え、前記LNO部分はマスク層と境界を接している、デバイス(1)に関する。デバイス(1)は、LNO部分(30)に電界を印加するように構成される少なくとも1つの電極(51、51b、52)をさらに備える。
本発明は、LNO部分の局所化エピタキシーによる形成を含む、そのようなデバイスを生成するための方法にも関する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
いわゆる垂直方向(z)に沿ってスタックされる、シリコンベースの基板(10)と、前記基板(10)上の核生成層(20)であって、窒化物ベースの耐熱材料から作られる核生成層(20)と、前記核生成層(20)上のメサ状の、LNO部分と呼ばれるニオブ酸リチウムベースまたはタンタル酸リチウムベースの層部分(30)とを備え、前記LNO部分はマスク層と境界を接している、デバイス(1)であって、前記LNO部分(30)に電界を印加するように構成される2つの電極(51、51b、52)をさらに備える、デバイス(1)。
【請求項2】
前記窒化物ベースの耐熱材料が、窒化ガリウムGaN、窒化アルミニウムAlN、およびAlGaN合金などといった、III族の元素に基づいた、III-N族耐熱窒化物の中から採用される、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記基板(10)が方位(111)に向けられたシリコンベースであり、前記核生成層(20)が方位(0001)に向けられた窒化アルミニウムAlNベースであり、前記LNO部分(30)が前記方位(0001)に向けられた、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記LNO部分(30)が、たとえば、窒化アルミニウムAlNベースまたはサファイアAl2O3ベースといった、アルミニウムベースの封止部分(31)を載せている、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記2つの電極のうちのいわゆる上電極(52)が前記LNO部分(30)の上方に配設され、前記2つの電極のうちのいわゆる下電極(51、51b)が前記LNO部分(30)の下方に配設される、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
光位相変調器などといった、電気光学デバイスを形成するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記LNO部分(30)が、前記LNO部分(30)と共に端部導波路を形成するように構成される導波路パターン(4)を載せている、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
前記LNO部分(30)が、窒化ニオブNbN、窒化チタンTiN、または、NbTiN合金などといった、遷移金属窒化物ベースの超伝導体材料から作られる構造物(6)を載せており、前記デバイスが超伝導体検出器(2)を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
1つの同じシリコンベースの基板(10)上に、請求項6または7に記載の少なくとも1つの電気光学デバイス(1)と、たとえば請求項8に記載の超伝導体検出器(2)といった電子構成要素とを備える、システム。
【請求項10】
シリコンベースの基板(10)を設けるステップと、
前記基板(10)上に、窒化物ベースの耐熱材料から作られる核生成層(20)を形成するステップと、
前記核生成層(20)の一部を露出させる少なくとも1つの開口(3a)を備える、前記核生成層(20)上のマスク層(300)を形成するステップと、
前記少なくとも1つの開口(3a)中に、前記核生成層(20)の前記露出した部上のメサ状の、LNO部分と呼ばれる、ニオブ酸リチウムベースまたはタンタル酸リチウムベースの層部分(30)をエピタキシーによって形成するステップと、
前記LNO部分(30)に電界を印加するように構成される2つの電極(51、51b、52)を形成するステップと
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス(1)を生成するための方法。
【請求項11】
前記LNO部分(30)のエピタキシーの後に、前記少なくとも1つの開口(3a)中に局所的に形成された前記LNO部分(30)を保つことによる、前記マスク層(300)の少なくとも部分的な除去をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記除去が化学機械研磨によって行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記LNO部分(30)のエピタキシーの後に、前記LNO部分(30)上に、たとえば窒化アルミニウムAlNベースまたはサファイアAl2O3ベースといった、アルミニウムベースの封止部分(31)の、エピタキシーによる形成をさらに含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記LNO部分(30)のエピタキシーの後に、前記LNO部分(30)と共にリッジ導波路を形成するように構成される窒化シリコンSiNベースの導波路パターン(4)の形成をさらに含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記核生成層(20)の前記形成および前記LNO部分(30)の前記形成が、パルスレーザ堆積によって行われる、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、電気光学構成要素およびこの構成要素のコアを形成するポッケルス効果材料に基づいた層を生成するための方法に関する。本発明は、より具体的には、光位相変調器を生成することに関する。
【背景技術】
【0002】
これらの位相変調器は、有利には、たとえば、LIDAR(レーザ撮像の検知および測距)システムと呼ばれるレーザ遠隔検知システムを設計するための、「光位相アレイ」(OPA)タイプの回路で使用することができる。
【0003】
光位相変調器の原理は、典型的には、その中を光波が伝播する材料の屈折率の局所的変調に基づく。この屈折率の変化は、有利なことに、軸に対する対称性なしで、ある種の結晶質材料について、ポッケルス効果によって得ることができる。
【0004】
それは、具体的には、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)およびニオブ酸タンタル(LiTaO3)の場合である。それらの固有特性によって、具体的には、低い光学損失(典型的には、πの位相偏移についておよそ数デシベル)、および低いエネルギー消費で、高い周波数で動作する変調器を生成することを考慮することが可能になる。しかし、これらの材料の薄い層の合成は複雑であり、それらの結晶品質に関する要件は高い。薄いLiNbO3またはLiTaO3層は、具体的には、高い結晶品質および制御された化学量論的組成を有さなければならない。それは、生成する電気光学構成要素の電極のアーキテクチャおよび位置にしたがって、制御された結晶方位も有さなければならない。下記では、たとえば簡潔にするために、LiNbO3だけが言及される。LiTaO3およびLi(Nb、Ta)O3合金の特性は、LiNbO3の特性に非常に近い。LiTaO3またはLi(Nb、Ta)O3はそのままLiNbO3と置き換わることができることが理解される。
【0005】
サファイア基板上の薄い層の中にLiNbO3を合成するのを可能にする解決策が開発されてきた。このタイプの基板は高価であり、これらの解決策に関する用途は限定されたままである。シリコンベースの基板上に薄いLiNbO3層を生成するには、かなりの困難が示される。このことによって、1つの同じ基板上に共に一体化される、電気光学デバイス、音響デバイス、マイクロエレクトロニクスデバイス、および/または量子デバイスを備える新世代の複数機能システムを考慮することが可能になる。解決策は、ドナー基板から、典型的には単結晶LiNbO3基板から、レシーバ基板、典型的には表面酸化物層を有するシリコン基板に薄いLiNbO3層を転写するステップからなる。多数の技術的ステップを実施するこの解決策は、かなりの費用がかかる。薄い層の厚さの実施可能範囲は、典型的には200nmより厚く1μm未満であるが、転写および薄層化の技術的応力によっても制限される。転写によって得られる薄層の厚さの均一性は、概して、目標の用途にとって十分でない。転写によって得られる200nmの薄いLiNbO3層の厚さの標準偏差は、典型的には約50nmに達する。このタイプの転写によって、レシーバ基板の全面にわたる「固体プレート」がさらに行われる。こうして、転写されるLiNbO3層をエッチングして、レシーバ基板上に局所的にLiNbO3層部分を得ることが必要である。LiNbO3のエッチングは、具体的には光学用途で適合性がある粗さを得るために制御するのが複雑である。リチウムで製造ラインを汚染する問題がエッチング中に生じる可能性がある。固体プレート転写中に、シリコンとLiNbO3の間の熱膨張差に関する機械的応力を管理することも必要である。したがって、局所化されるLiNbO3部のレシーバ基板上での形成は、困難で高価である。
【0006】
したがって、目標の用途と適合性がある結晶品質を有する一方で製造費用が制限される、シリコンベースの基板上にニオブ酸リチウムベースの層を局所的に生成するステップからなる必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、この必要性に少なくとも部分的に合致することである。
【0008】
具体的には、本発明の目的は、現在の方法に関して最適化された費用および/または適合性を有する、オンシリコン基板ニオブ酸リチウム層部分の局所化した形成のための方法を提案することである。そのような方法は、有利には、ニオブ酸リチウム層部分を備えるデバイスを生成するために実施される。
【0009】
本発明の別の目的は、ニオブ酸リチウム層部分を備えるデバイス、典型的には、位相変調器タイプの電気光学デバイスを提案することである。
【0010】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、下の記載および添付図面を検討すれば明らかとなろう。他の利点を組み込むことができることが理解される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、実施形態によれば、ニオブ酸リチウム層部分またはタンタル酸リチウム層部分を備えるデバイスを生成するための方法が提供され、前記方法が、以下のステップ、すなわち
- シリコンベースの基板を設けるステップと、
- 基板上に、窒化物ベースの耐熱材料から作られる核生成層を形成するステップと、
- 核生成層の一部を露出させる少なくとも1つの開口を備える、核生成層上のマスク層を形成するステップと、
- 少なくとも1つの開口中の、核生成層の露出した部上のメサから作られて、LNO部分と呼ばれる、ニオブ酸リチウムベースまたはタンタル酸リチウムベースの層部分をエピタキシーによって形成するステップと、
- 好ましくは、LNO部分に電界を印加するように構成される2つの電極を形成するステップと
を含む。
【0012】
本発明の発展形態の範囲で、核生成層についての仕様が確立されている。核生成層は、好ましくは以下の特性を有さなければならない。
- シリコンベースの基板と適合性がある結晶構造および/またはメッシュパラメータを有すること。このことによって、具体的には、基板上で核生成層をエピタキシャル成長させることが可能になる。
- ニオブ酸リチウムに近い、またはニオブ酸リチウムと適合性がある結晶構造および/またはメッシュパラメータを有すること。このことによって、核生成層上のLNO部分をエピタキシャル成長させることが可能になる。
- 好ましくは、ニオブ酸リチウムに近い熱膨張係数を有すること。このことによって、LNO部分の形成中に温度変動に起因したひび割れが現れるのを制限することが可能になる。
- 具体的には、SiまたはSiO2中のLi原子の拡散をブロックすることができること。このことによって、LNO部分の化学量論的組成の損失を回避することが可能になる。
【0013】
従来技術の技術的バイアスは、LNO部分から核生成層への酸素の拡散に起因するLNO部分の化学量論的組成の損失を回避するために、そのような核生成層は必然的に酸化物ベースでなければならないことである。
【0014】
反対に、これらの仕様を満たすため、核生成層は、窒化物ベースの耐熱材料から作られる本発明にしたがって選択される。窒化物ベースの耐熱材料から作られるこの核生成層は、簡潔にするために、下記では、耐熱窒化物ベースの核生成層と呼ばれる。本発明の発展形態の範囲で、そのような耐熱窒化物ベースの核生成によって、完全に予想外に、よい条件下でのLNO部分のエピタキシーが可能になることが、実際に観察されている。驚いたことに、そのような核生成層によって、シリコンベースの基板への酸素の拡散とリチウムの拡散の両方をブロックするのが可能になることも観察されている。このことによって、そのような核生成層上のエピタキシャル成長したLNO部分が要求された化学量論的組成を保つ結果となる。
【0015】
さらに、耐熱窒化物、典型的には、III-N族窒化物の異なる結晶構造およびメッシュパラメータは、ニオブ酸リチウムおよびシリコンのものと完全に適合性がある。そのような核生成層は、したがって、シリコンベースの基板上で有利にエピタキシャル成長することができ、次いで、LNO部分のエピタキシーが可能になる。
【0016】
本発明によれば、LNOのエピタキシーは、マスク層の少なくとも1つの開口中で、局所化した方式で行われる。このことによって、LNO層部分だけを得ることが可能になる。このことによって、ニオブ酸リチウムと窒化物ベースの耐熱材料との間の熱膨張係数の違いによってもたらされる機械的応力を制限することが可能になる。LNO部分は、ニオブ酸リチウムの「固体プレート」層よりも少ない機械的応力を受ける。LNO部分の結晶品質およびその電気光学特性は、エピタキシーによる形成後に、最良に保たれる。局所化した成長によって、プレート全体上のニオブ酸リチウムの存在を制限することも可能になる。このことによって、光学品質のLNO部分を得るため実施するには複雑な、ニオブ酸リチウムのエッチングを用いることが回避される。
【0017】
LNOのエピタキシーによって、LNO部分の厚さをより良好に制御することがさらに可能になる。具体的には、全基板にわたる厚さの良好な制御を用いたエピタキシーによって、たとえば200nm以下の薄い厚さを得ることができる。層転写技術では、そのような厚さを得ることが可能にならず、および/または、全基板にわたる十分な精度および再生産性が可能にならない。転写によって得られる200nmの薄いLNO層の厚さにおける標準偏差は、約50nmに達する可能性がある。全基板にわたるそのような厚さの変動は、電気光学を目的とする用途に適合性がない。反対に、有利なことに、LNOのエピタキシーによって、200nm厚である層について、10nm未満の厚さの標準偏差を得ることが可能になる。
【0018】
こうして、本発明は、耐熱窒化物ベースの核生成層を介して、シリコンベースの基板上に直接、すなわち転写ステップなしで、薄いLNO層部分を合成することを可能にする解決策を提案する。耐熱窒化物ベースの核生成層のおかげで、このLNO部分は化学量論的であって高い結晶品質のものである。そのような方法は、(nタイプおよびpタイプ相補型金属酸化物半導体トランジスタに基づいた)CMOS技術標準と製造工場で直接一体化することがさらにできる。
【0019】
本発明の別の態様にしたがって、垂直方向zにスタックされる、シリコンベースの基板、前記基板上の核生成層、前記核生成層上のメサから作られLNO部分と呼ばれるニオブ酸リチウムベースまたはタンタル酸リチウムベースの層部分を備えるデバイスが提供される。LNO部分はマスク層と境界を接している。デバイスは、LNO部分に電界を印加するように構成される2つの電極をさらに備える。
【0020】
有利なことに、デバイスの核生成層は、窒化物ベースの耐熱材料から作られる。上で述べた利点は、必要な変更を加えて適用される。そのようなデバイスは、シリコン技術にさらに直接一体化可能である。それは、たとえば、他のマイクロエレクトロニクスデバイスまたは電気光学デバイスまたは量子デバイスと容易に共に一体化することができる。好ましくは、このデバイスは、位相変調器タイプ電気光学デバイスである。本発明の態様は、1つの同じシリコンベースの基板上に複数のデバイスを備えるシステムに関し、各々は、たとえば少なくとも1つの電気光学デバイスといった本発明にしたがったLNO部分と超伝導体検出器などの電子構成要素とを備える。
【0021】
本発明のねらい、目的、ならびに、特徴および利点は、以下の添付図面によって説明される、本発明の実施形態の詳細な説明から最も良好に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図8】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図10】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図11】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図12】本発明の実施形態にしたがったデバイスを生成するための方法のステップを示す断面図である。
【
図13】
図12に図示される実施形態にしたがったデバイスを示す上面図である。
【
図14】本発明の実施形態にしたがったデバイス中を伝播する光の強度のシミュレーションした分布を示す断面図である。
【
図15】本発明の実施形態にしたがったデバイスの変形形態を示す断面図である。
【
図16】本発明の実施形態にしたがったデバイスの別の変形形態を示す断面図である。
【
図17】本発明の実施形態にしたがって、共に一体化した電気光学デバイスおよび量子デバイスを備えるシステムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面は、例として与えられ、本発明を限定するものではない。図面は、本発明の理解を容易にすることが意図される原理的な概略表現を構成し、必ずしも実際の用途のスケールではない。特に、原理図では、様々な層および部分の厚さ、ならびに、パターンの寸法は現実を表さない。
【0024】
本発明の実施形態の詳細な検討を開始する前に、以下に、関連してまたは代替で、任意選択で使用することができる、任意選択の特徴が述べられる。
【0025】
例によれば、LNO部分は、ニオブ酸リチウムLiNbO3ベースである。例によれば、LNO部分は、タンタル酸リチウムLiTaO3ベースである。例によれば、LNO部分は、Li(Nb、Ta)O3合金に基づく。
【0026】
例によれば、核生成層の窒化物ベースの耐熱材料は、以下を有するように、または以下を形成するように選択される。
-酸化に対する耐性、
-リチウムの拡散に対する障壁。
【0027】
このことによって、LNO部分から核生成層への酸素およびリチウムの拡散を回避することが可能になる。こうして、LNO部分の化学量論的組成が保たれる。
【0028】
例によれば、核生成層の窒化物ベースの耐熱材料は、基板およびLNO部分と適合性がある、六角構造などといった、結晶構造を有するように選択される。このことによって、エピタキシーによるLNO部分の形成中に、構造的欠陥が現れるのを制限することが可能になる。例によれば、窒化物ベースの耐熱材料とLNO材料との間のメッシュパラメータの差異は2%未満である。このメッシュパラメータの差異は、LNO材料の通常セルのサブアレイでとることができる。たとえば、LiNbO3の場合には、通常セルのメッシュパラメータは、5.148Åである。しかし、平面(0001)では、3.056Åのメッシュパラメータの六角またはミニセルサブアレイを決定することが可能である。例によれば、窒化物ベースの耐熱材料が、3.112Åのメッシュパラメータを有する窒化アルミニウムAlNである場合、LiNbO3ミニセルとAlNとの間のメッシュパラメータの差異は、約1.8%である。LiNbO3エピタキシーは、こうして、驚いたことに、AlN上で行うことができる。AlN六角アレイとLiNbO3ミニセルを整合させるために、平面(0001)において、典型的にはLiNbO3とAlNアレイとの間に約30°のねじれが現れる。
【0029】
例によれば、窒化物ベースの耐熱材料は、窒化ガリウムGaN、窒化アルミニウムAlN、およびAlGaN合金などといった、III族の元素に基づいた、III-N族耐熱窒化物の中から採用される。
【0030】
例によれば、基板は、方位(111)に向けられたシリコンベースであり、核生成層は、方位(0001)に向けられた窒化アルミニウムAlNベースであり、LNO部分は、方位(0001)に向けられる。
【0031】
例によれば、LNO部は、核生成層と直接接触する。具体的には、核生成層とLNO部分との間に酸化物中間層がない。
【0032】
例によれば、LNO部分には、たとえば、窒化アルミニウムAlNベースまたはサファイアAl2O3ベースといった、アルミニウムベースの封止部が載っている。このアルミニウムベースの封止部は、典型的には、核生成層と一緒にLNO部分の封止を形成する。このことによって、LNO部分から上層への酸素および/またはリチウムの拡散を回避することが可能になる。こうして、LNO部分の化学量論的組成が保たれる。CMOS技術との適合性が保たれる。LNO部分の電気光学特性が保たれ、改善さえされる。
【0033】
例によれば、2つの電極のうちのいわゆる上電極は、LNO部分の上方に配設され、2つの電極のうちのいわゆる下電極は、LNO部分の下方に配設される。このデバイスアーキテクチャは、具体的には、いわゆる「Zカット」方位LNO部分(0001)を使用するように構成されている。
【0034】
例によれば、デバイスは、光位相変調器などといった、電気光学デバイスを形成するように構成される。具体的には、デバイス中を伝播する光波の位相変調は、LNO部分に電界を印加することによって、ポッケルス効果により行われる。電界の印加は、LNO部分の屈折率の変動および光波の位相偏移を引き起こすことになる。
【0035】
例によれば、LNO部分には、LNO部分と共に端部導波路を形成するように構成される窒化シリコンSiNベースの導波路パターンが載っている。
【0036】
例によれば、LNO部分には窒化ニオブNbNベースの構造物が載っており、デバイスは超伝導体検出器を形成する。
【0037】
例によれば、LNO部分は、50nmから500nmの間、たとえば約100nmまたは200nmの厚さe3を有する。
【0038】
例によれば、方法は、LNO部分のエピタキシーの後に、少なくとも1つの開口中に局所的に形成されたLNO部分を保つことによる、マスク層の少なくとも部分的な除去をさらに含む。このことによって、典型的には、開口の外側のマスク層上のLNO材料の堆積物を除去することが可能になる。このことによって、ニオブ酸リチウム層部分を備えるデバイスが上に生成されるプレートの他のデバイスにとっての汚染源の可能性が除去される。このことによって、後続の製造ステップ中の、シリコン基板との熱膨張係数差の影響が制限される。
【0039】
例によれば、除去は、化学機械研磨によって行われる。
【0040】
例によれば、方法は、LNO部分のエピタキシーの後に、LNO部分上に、たとえば窒化アルミニウムAlNベースまたはサファイアもしくはアルミナAl2O3ベースといった、アルミニウムベースの封止部の、エピタキシーによる形成をさらに含む。
【0041】
例によれば、方法は、LNO部分のエピタキシーの後に、LNO部分と共に端部導波路を形成するように構成される導波路パターンの形成をさらに含む。例によれば、導波路パターンは、窒化シリコンSiN、または、TiO2、ZrO2、Ta2O5ベースである。
【0042】
例によれば、核生成層の形成およびLNO部分の形成は、好ましくはこれら2つのステップ間で換気することのない、パルスレーザ堆積によって行われる。このことによって、核生成層の表面が空気にさらされるのを回避することが可能になる。核生成層は、水および/または炭化水素によって汚染されない。LNO部分の成長が最適化され、全体的な性能が改善される。例によれば、LNO部分の形成および封止部の形成は、前記形成の間で換気することなく、1つの同じ反応器内で連続的にパルスレーザ堆積によって行われる。このことによって、LNO部分の表面が空気にさらされるのを回避することが可能になる。LNO部分は、水および/または炭化水素によって汚染されない。このことによって、中間表面クリーニングステップを回避して、方法の合計持続時間を減らして費用を制限することが可能になる。全体的な性能が改善される。
【0043】
例によれば、核生成層の形成は、前記核生成層が、200nm以下、好ましくは50nm以下の厚さe2を有するように構成される。このことによって、エピタキシーによる核生成層の形成中に、構造的欠陥が現れるのを制限することが可能になる。
【0044】
例によれば、LNO部分の形成は、前記LNO部分がエピタキシーの後に、50nmから500nmの間、たとえば約200nmの厚さe3を有するように構成される。そのような厚さe3が、薄いLNO層に対応する。そのような厚さe3は、レシーバ基板とは別個のドナー基板から来る層の転写および薄層化による基板全体にわたる厚さの良好な制御では得ることができない。
【0045】
例によれば、方法は、LNO部分上の上電極の形成、および、LNO部分の下の下電極の形成を含む。このことによって、具体的には、「Zカット」アーキテクチャの位相変調器タイプ電気光学デバイスを生成することが可能になる。
【0046】
一貫性がないのでない限り、上記の任意選択の特徴の全部および/または示される変形形態は、必ずしも図示または記載されない実施形態を形成するように組み合わせることができることが理解される。そのような実施形態は、明らかに本発明から除外されない。本発明の態様の特徴、たとえばデバイスまたは方法は、本発明の他の態様に必要な変更を加えて適用できる。
【0047】
本発明の範囲では、「の上(on)」、「載っている(surmounts)」、「覆う(covers)」、「下にある(underlying)」、「対向する(opposite)」といった用語およびそれらの均等物は、必ずしも「と接触して(in contact with)」を意味しないことが明示される。こうして、たとえば、第2の層上の第1の層の堆積は、必ずしも、2つの層が互いに直接接触することを意味せず、それと直接接触すること、または、少なくとも1つの他の層もしくは少なくとも1つの他の要素によってそれから分離されることによって、第1の層が少なくとも部分的に第2の層を覆うことを意味する。
【0048】
層は、さらに、1つの同じ材料または異なる材料のいくつかのサブレイヤから構成することができる。
【0049】
材料Mに「基づいた」または「Mベースの」基板、スタック、層によって、この材料Aだけ、または、この材料Aと任意選択で他の材料、たとえば合金元素および/もしくはドープ元素とを含む基板、スタック、層を意味する。したがって、たとえば、シリコンベースの基板は、SiまたはドープSi、またはSiGe基板を意味する。たとえば、AlNベースの層は、AlN、ドープAlNベースの層、またはAlN合金、たとえばAlGaNを意味する。たとえば、窒化シリコンSiNベースの導波路は、非化学量論的窒化シリコン(SixNy)、または化学量論的窒化シリコン(Si3N4)を含むことができる。
【0050】
製造方法の連続したステップを実施する本発明のいくつかの実施形態が以下に記載される。別段に明記されない限り、「連続した」という形容詞は、これが一般的に好ましい場合であっても、必ずしも、ステップは互いに直ちに続くわけではなく、中間ステップがそれらを分離することができる。
【0051】
さらに、「ステップ」という用語は、方法の一部を実行することを意味し、サブステップの組を意味することができる。
【0052】
さらに、「ステップ」という用語は、ステップ中に実行される行為が同時または直ちに連続することを必ずしも意味しない。具体的には、第1のステップのある行為に、異なるステップに関する行為が続くことができ、次いで、第1のステップの他の行為を再開することができる。したがって、「ステップ」という用語は、必ずしも、単一の行為であることや、それらが経時的に分離不可能で、方法の一連のフェーズ中にあることを意味しない。
【0053】
x、y、z軸を備える好ましくは正規直交系が、添付図面に表現される。1つの単一の系が1つの同じ組の図上で表現されるとき、この系は、この組の図面全部に適用される。
【0054】
本特許出願では、層の厚さは、層の主延長平面に直角な方向にとられる。こうして、層は、典型的には、zに沿った厚さを有する。「の上(on)」、「載っている(surmounts)」、「下の(under)」、「下にある(underlying)」、「挿入される(inserted)」、「上方の(above)」、「下方の(below)」といった相対的な用語は、z方向にとられる位置のことを言う。この用語のリストは、網羅的なものではない。他の相対的な用語は、添付図面を参照することにより、必要に応じて容易に明示することができる。
【0055】
「垂直の(vertical)」、「垂直に(vertically)」という用語は、zに沿った方向のことを言う。「水平の(horizontal)」、「水平に(horizontally)」、「横の(lateral)」、「横に(laterally)」という用語は、xy平面の方向のことを言う。明示的に言及されない限り、厚さ、高さ、および深さはzに沿って測定される。
【0056】
別の要素「と垂直に位置合わせして」または別の要素「に直角に」配置される要素とは、これら2つの要素が両方とも平面に垂直な1つの同じ直線上に配置されることを意味し、ここで、基板の下面または上面は、すなわち、図中で垂直に向けられる1つの同じ直線上に主に延在する。
【0057】
本発明の範囲では、III-N族窒化物は、好ましくは、周期表のIIIa族(三価電子)に属する窒化物元素である。このIIIa族は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどといった、土類元素と一緒にグループとなる。本発明で考慮されるIII-N族窒化物は、具体的には、たとえば窒化ホウ素BN、窒化アルミニウムAlN、窒化ガリウムGaN、窒化インジウムInN、およびそれらの合金、ならびに非限定の形で、AlGaN、GaInNである。
【0058】
本発明の範囲では、導波路は、添付図面中のx軸に沿ってとられる主たる伝播方向の光波の伝播を確実にするように意図される。光波は、好ましくは、コヒーレント、単色で、波長λのものである。光波は、好ましくは、1つの単一の光伝播モード、典型的には、基本光学モードにしたがって伝播する。こうして、導波路は、光波の、単一の横電界(TE00)基本モードまたは横磁界(TM00)基本モードを案内するように構成することができる。代替で、案内部は、局所的に、伝播中に、TMモードをTEモードに(および、相互に)変換するのを可能にするように構成することができる。光波は、基本モードに加えて、いくつかの2次モードを有することができる。基本モードだけがそこを伝播することができる場合、案内部は、単一モードと呼ばれる。案内部は、少なくとも2つのモードを許容する場合、マルチモードと見なされる。
【0059】
以下に記載される例では、図示されるLNO部分は、ニオブ酸リチウムLiNbO3ベースである。これらの例では、LiTaO3またはLi(Nb、Ta)O3が直接LiNbO3と置き換わることができることが理解される。LNO部分は、下にある核生成層から突き出る。LNO部分は、核生成層に関して、メサまたはパッドの形で示される。LNO部分は、有界の実体である。これは、たとえば、平面全体をカバーするより広い層の抽象的で任意の切片ではない。LNO部分は、具体的には、マスク層の開口の断面によって規定される。
【0060】
たとえば、2θ構成、またはφおよび/もしくはΩ(ファイスキャンおよびオメガスキャン)の周りの回転におけるX線回折分析は、LNO層、核生成層、および/または封止層の結晶品質、およびそれらのエピタキシャル関係を決定するように実行することができる。
【0061】
図1から
図12は、本発明にしたがった電気光学デバイス1の第1の実施形態を示す。
【0062】
図1に示されるように、基板10が最初に設けられる。基板10は、SOI(シリコンオンインシュレータ)タイプの基板であってよい。そのような基板10は、典型的には、zに沿ってスタックされる、典型的にはいわゆるシリコン「バルク」基板であるサポート層11、典型的にはいわゆる「ボックス」埋込み酸化物層である絶縁層12、および、たとえばいわゆるトップSiシリコン層であるシリコンベースの半導体層13を備える。絶縁層12は、典型的には、約2μmの厚さe
12を有する。トップSi層13は、典型的には、約5nmから20nmの厚さe
13を有する。好ましくは、トップSi層13は、(111)に沿って配向されるシリコンから作られる。たとえば、デバイスに望まれるアーキテクチャにしたがって、シリコン層13について、具体的には(001)といった他の結晶方位が可能である。
【0063】
図2に示されるように、トップSi層13は、局所的に1回または数回ドープすることができ、それにより、層13の残りとドーピング差異を有するシリコン部分13pを局所的に有するようにできる。例によれば、層13の全部が、たとえば打込みによってpドープされ、次いで層13は部分13pでマスクされ、打込みによる新しいドーピングが実行される。こうして、p+ドープ層13+およびpドープ部分13pを得ることが可能である。pドープ部分13pは、電気光学デバイスの下電極を形成することができる。たとえば、光学用途の範囲では、位相変調器を形成するため、典型的には、デバイス中の光学損失を限定させるためにpタイプドーピングを用いることが好ましい。p+ドープ層13+の部分は、たとえば後続の再接触中に、部分13pと電気的に接触するように構成することができる。
【0064】
図3に示されるように、核生成層20は、pドープ部分13pを備えるトップSi層13上に形成される。核生成層20は、好ましくは、III-N族材料ベースである。核生成層20は、好ましくは、六角結晶構造を有する。そのようなIII-N族材料構造によって、具体的には、(001)および/または(111)に沿って配向されるオンシリコン核生成層20のエピタキシーが可能になる。このことによって、後で、異なる結晶方位でLNO材料をエピタキシャル成長させることも可能になる。
【0065】
核生成層20は、たとえば、窒化アルミニウムAlNベースである。AlNは、(111)に沿って配向されるシリコン上に堆積および/またはエピタキシャル成長することができ、その堆積方法は、有利なことに知られており、制御される。窒化アルミニウムは、ニオブ酸リチウムのものに近いメッシュパラメータをさらに有する。このことによって、ニオブ酸リチウムのエピタキシャル成長が容易になり、その後、LNO部分が形成される。AlNの熱膨張係数は、さらに、LiNbO3のものとSiのものとの間にある。このことによって、異なる堆積ステップに関する温度変動中にLNO部分中の構造的欠陥が現れるのを制限することが可能になる。AlNは、また、酸化に対する良好な耐性と、LNO堆積法に対する良好な耐性とを有する(イオン化種プラズマと化学的前駆体とに対する耐性を有し、LNO材料を合成するのを可能にする)。窒化ホウ素および窒化ガリウムは、窒化アルミニウムについて上記で言及されたものと同様の特性を有する。それらは、核生成層20用に有利に選択することもできる。
【0066】
核生成層20は、たとえば、パルスレーザ堆積(PLD)による、物理的または化学的堆積技法によって形成することができる。核生成層20は、代替で、以下の技法すなわち、化学気相堆積(CVD)、好ましくは有機金属化学気相堆積(MOCVD)、PVDスパッタリング、プラズマ強化原子層堆積(PEALD)のうちの1つによって形成することができる。
【0067】
核生成層20は、好ましくは単結晶である。核生成層20は、好ましい方位を有する。典型的には、シリコントップSi層13上のAlN核生成層20について、成長面(0001)に沿った方位を選択することができる(111)。核生成層20は、好ましくは、化学量論的組成である。核生成層20は、典型的には、5ナノメートルから20ナノメートルの間、たとえば約10nmの厚さe2を有する。
【0068】
耐熱窒化物、具体的には、AlN核生成層20を使用することによって、有利なことに、シリコンベースの基板10上でLiNbO3のヘテロエピタキシーを実行することが可能になる。具体的には、エピタキシーによって、好ましく配向され、高い結晶品質の、化学量論的組成のLiNbO3層を得ることが可能になる。エピタキシーによって得られるこのLiNbO3層の厚さは、さらに完全に制御される。LiNbO3層は、中間の転写ステップなしに、異なるサイズの基板10上に直接形成することができる。このことによって、有利なことに、LNO/AlN/Si層スタックの製造費用を減らすことが可能になる。
【0069】
図4に示されるように、マスク層300が次いで核生成層20上に形成され、次いで構造化される。マスク層300は、典型的には、たとえば、SiO2ベースの層301、SiNベースの層302、SiO2ベースの層303といった、zに沿ってスタックされる異なる層301、302、303を備えることができる。マスク層に挿入されるSiNベースの層302は、典型的には、たとえば後続の化学機械研磨(CMP)ステップ中に、停止層として機能する。SiO2ベースの層301は、典型的には、約100nmから500nmの厚さe
301を有する。SiNベースの層302は、典型的には、5nmから50nmの厚さe
302を有する。SiO2ベースの層303は、典型的には、約100nmから500nmの厚さe
303を有する。層303の厚さe
303は、好ましくは、LNO部分のために設けられる厚さより厚く、たとえば2倍の厚さである。
【0070】
このマスク層300は、核生成層20上に開口する1つまたは複数の開口3aを形成するように、たとえば標準的にリソグラフィおよびエッチングによって構成される。開口3aは、典型的には、たとえば1μmから100μmの間の数ミクロンの横寸法l3を有する。
【0071】
図5に示されるように、ニオブ酸リチウムLiNbO3ベースの部分30(LNO)が、次いで核生成層20の露出した部上に開口3a中に形成される。この部分30のLNOは、物理的または化学的堆積技法により、たとえばパルスレーザ堆積PLDによって形成することができる。この部分30は、代替で、以下の技法すなわち、化学気相堆積(CVD)、好ましくは有機金属化学気相堆積(MOCVD)、PVDスパッタリング、分子線エピタキシー(MBE)のうちの1つによって形成することができる。
【0072】
LNO部分30は、有利なことに、核生成層20上でエピタキシャル成長する。LNO部分30は、好ましくは単結晶である。LNO部分30は、好ましい方位を有する。典型的には、成長面(0001)に沿った方位を選択することができる。このことによって、zに沿ってLNO部分30のそれぞれ下方および上方に配置される電極を有するLNO部分30内で、ポッケルス効果を最大化させることが可能になる。望まれるデバイスアーキテクチャおよび/または望まれる用途にしたがって、他の方位を選択することができる。
【0073】
核生成層20上に形成されるLNO部分30は、好ましくは、たとえばLi1Nb1O3といった、化学量論的組成である。リチウムの原子百分率は、理想的にはニオブのものに近い。例によれば、リチウムおよびニオブの原子百分率は、約20%である。LNO部分30は50ナノメートルから500ナノメートルの間、たとえば200nmの厚さe3を有する。LNO部分30の厚さe3は、望まれる用途にしたがって選択することができる。
【0074】
開口3a中のLNO部分30の形成後に、典型的にはAlNベースの封止部分31が、好ましくは、LNO部分30上にエピタキシーによって形成される。部分31は、5ナノメートルから20ナノメートルの間、たとえば約10nmの厚さe31を有する。部分30、31の厚さの合計は、典型的には、層302の下にある層301の厚さe301未満である。層302は、したがって、zに沿って、部分30、31の上方に残る。このことによって、後続のCMP研磨中に、層302を研磨の終了を検出するための層として使用することが可能になる。
【0075】
任意選択によれば、封止部分31およびLNO部分30は、両方が、1つの同じ成長反応器中でPLDによってその場で生成される。封止部分31の成長は、こうして、LNO部分30の成長の終了直後に生成することができる。このことによって、封止部分31のエピタキシーの前のLNO部分30の換気を回避することが可能になる。したがって、LNO部分30の表面がきれいなままである。このことが中間のクリーニングステップを回避させる。方法の期間がこうして減少する。このことによって、封止部分31の形成中に、粗さが現れるのを制限することも可能になる。後者の表面状態がこうして最適化される。
【0076】
開口3a中の部分30、31のエピタキシー中に、マスク層300上の開口3の周辺で、成長残渣30r、31rが堆積される場合がある。
【0077】
図6に示されるように、開口3は、次いで、誘電体充填材料32、典型的にはSiO2によって充填することができる。このことによって、構造物を平坦化することが可能になる。
【0078】
図7に示されるように、充填後に、成長の残渣30r、31rを除去するように、化学機械研磨CMPが実行される。SiNベースの層302は、有利なことに、停止層として、または研磨の終了を検出するための層として使用される。研磨は、典型的には、層302が除去された直後に、層301で停止される。CMP後、部分30、31は、層の部分301によって境界をつけられて存続し、材料充填部分32が載っている。
【0079】
図8に示されるように、研磨後に、封止部分31の表面310を露出するように、新しい開口3bが部分30、31の上方に作られる。この新しい開口3bは、典型的には、開口3aのものと比べて小さい、またはほぼ等しい横寸法l
3を有する。この新しい開口3bは、典型的には、部分30、31上に中心がある。開口3bは、標準的にはリソグラフィおよびエッチングによって作ることができる。
【0080】
図9に示されるように、好ましいオプションによれば、SiO2ベースのスペーサ層41が、次いで層40が、封止部分31上に次いで形成される。この場合、層40は、xに沿ってデバイス中で光の伝播を案内するため、導波路パターンの形で構成されるように意図される。層40は、目標の用途にしたがって、たとえば、案内される光の波長および使用される材料にしたがって、典型的には、約100nmから800nmの厚さe
4を有する。層40は、たとえば、SiN、TiO2、ZrO2、Ta2O5ベースであってよい。代替で、この層40は、アモルファスシリコンSi-aベースであってよい。スペーサ層41は、開口3b中に共形に堆積することができる。スペーサ層41は、典型的には、約200nmの厚さe
41を有する。このスペーサ層41によって、導波路パターンとLNO部分との間の光結合を制御することが可能になる。このことによって、具体的には、LNO部分なしで導波路パターンだけを備えるゾーンと、LNO部分と導波路パターンの両方を備えるハイブリッドゾーンとの間を通過中、光結合損失を制限することが可能になる。
【0081】
図10に示されるように、層40は、導波路パターン4を形成するため、標準的にリソグラフィおよびエッチングによって構成される。導波路パターン4は、典型的には、200nmから2000nmの間のyに沿った横寸法l
4、および、100nmから800nmの間のzに沿った高さe4を有する。導波路パターン4は、図示される例で、xに沿ってデバイス中で光の伝播を案内するように構成される。伝播は、yに沿って行われることも、またはより一般的に、LNO部分の方位がZカットである場合は、導波路パターン4の設計にしたがって、平面xyで行われることもできる。導波路パターン4は、下にあるLNO部分30と一緒に端部導波路を形成することができる。このことによって、ZカットLNO部分に基づいた位相変調デバイス中で、TM光モードの伝播を案内することが可能になる。
【0082】
図11に示されるように、導波路パターン4の生成後に、誘電体材料33、典型的にはSiO2による封止が、導波路パターン4上および導波路パターン4の周りで行われる。CMP平坦化ステップは、平坦な表面330を得るように、誘電体材料33による充填後に実行することができる。
【0083】
図12に示されるように、平坦化の後に、デバイス1の下電極51を形成するpドープシリコン部分13pを電気的に接続するため、スルービアの形で相互接続50vを実行することができる。これらの相互接続50vは、典型的には、層301および核生成層20を通過し、p+ドープされたトップSi層13+と接触する端部を有する。ここで、デバイス1の前面に接触レベルを生成することができる。このレベルは、典型的には、スルービア50vに接続される接点50、およびLNO部分30の上方に配設される上電極52を備える。こうして、電気光学デバイス1が形成される。有利なことに、このデバイス1は、配向シリコン基板(111)上に配向される(0001)LNO部分30を備える。LNO部分30は、典型的には、2つの層AlN20、31(0001)の間に挿入される。デバイス1は、LNO部分30の下方に配置される下電極51およびLNO部分30の上方に配置される上電極52をさらに備える。任意選択によれば、デバイス1は、LNO部分30が載っている端部導波路パターン4を備える。この電気光学デバイス1によって、有利なことに、下電極51と上電極52との間に電界を印加することによるポッケルス効果によって、LNO部分30と端部導波路パターン4によって形成される導波路中でxに沿って伝播する光波の位相を変調することが可能になる。
【0084】
図13は、電気光学デバイス1を上面図として示す。断面A-Aは、
図12に示された横面図に対応する。当業者に知られているルールにしたがって、光伝播損失を最小化するように、共面接点50と電極52の設計を行うことができる。
【0085】
図14は、デバイス1の中の、LNO部分30と端部導波路4とによって形成される導波路内の光波の分布を示すシミュレーション結果を有する。光波は、この場合、波長λ=1.55μmを有する。トップSi層13は、厚さe
13=20nmを有する。AlN核生成層20は、厚さe
2=20nmを有する。LNO部分30は、厚さe
3=300nmを有する。AlN封止層40は、厚さe
4=20nmを有する。導波路パターン4は、高さe
4=200nm、および、幅l
4=1200nmを有する。こうして形成される導波路の実際の屈折率は、2.35である。LNO部分上の光波のカバレッジは、この場合、50%である。したがって、このデバイス中のポッケルス効果によるLNO部分30の屈折率の変調によって、効率的に、光波の位相を変調することが可能になる。オンシリコンLNO部分を備える光位相変調器は、こうして有利に生成される。この位相変調器は、オンシリコンマッハツェンダーアーキテクチャに組み込むことができる。
【0086】
図15は、電気光学デバイス1の変形形態を示しており、導波路は、他に突き出た導波路なしで、封止部分31と核生成層20との間に挿入されるLNO部分30によって全体が形成される。このタイプの導波路は、典型的には、100ナノメートルから500ナノメートルの間の高さe
3’、および、500ナノメートルから2000ナノメートルの間のyに沿った幅l
3を有する。このタイプの導波路は、より少ない製造ステップを必要とし、生成するのがより安価である。
【0087】
図16は、電気光学デバイス1の別の変形形態を示しており、下電極51bが、ドープシリコンベースのサポート層11の下方で、デバイスの背面上に形成される。トップSi層13は、この場合、非ドープである。このことによって、デバイス1の光損失が減少する。
【0088】
他の用途を考えることもできる。局所化したオンシリコンLNOエピタキシャルを有利に実施して、異なる機能を有する異なるデバイスを共に一体化することができる。
【0089】
図17は、1つの同じシリコンベースの基板10上に、上で述べたような、電気光学デバイス1と窒化ニオブNbNベースの超伝導体検出器2とを備える本発明にしたがったシステムを示す。こうして、マスク層の第2の開口中に、第2のLNO部分30bのエピタキシャル、次いで、LNO上のNbN構造物6またはNbN/AlN/LNOのエピタキシャルによる形成を実行することが可能である。このことによって、異なる開口中に局所化される同じ成長により部分的に形成される異なるデバイス1、2を共に一体化するのを考えることが可能になる。LNO部分によって、有利なことに、NbN、または、TiN、または、NbTiN、または他のものなどといった、遷移金属窒化物ベースの超伝導体材料をエピタキシャル成長させることが可能になる。LNO部分は、典型的には、これらの超伝導体材料のための核生成層を形成する。それらのメッシュパラメータは近く、それらの熱膨張係数差異は小さい。異なる層および部分の形成は、有利なことに、エピタキシャルによって連続して行うことができる。電気光学デバイス1および超伝導体検出器2を備えるシステムを製造するための方法の全体的な費用が減少する。
【0090】
上記から、本発明によって、有利なことに、窒化物ベースの耐熱材料から作られる、典型的にはIII-N族材料ベースの核生成層を備えるシリコンベースの基板上で良好な結晶品質の薄いLNO層の局所化部分を形成することが可能になることが明らかになる。これらの局所化したLNO部分は、有利なことに、電気光学デバイスまたは量子デバイスに直接一体化可能である。他の用途も考えることができる。本発明は、上で述べた実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0091】
1 デバイス、電気光学デバイス
2 超伝導体検出器
3 開口
3a 開口
3b 開口
4 窒化シリコンSiNベースの導波路パターン、導波路パターン、端部導波路、端部導波路パターン
6 構造物、NbN構造物
10 シリコンベースの基板
11 ドープシリコンベースのサポート層
12 絶縁層
13 トップSi層、シリコンベースの半導体層
13p pドープシリコン部分
13+ p+ドープトップSi層、p+ドープ層
20 核生成層
30 ニオブ酸リチウムベースの層部分、ニオブ酸リチウムベースまたはタンタル酸リチウムベースの層部分、LNO部分
30b 第2のLNO部分
30r 成長残渣
31 封止部分
31r 成長残渣
32 材料充填部分、誘電体充填材料
33 誘電体材料
40 層
41 スペーサ層
50 共面接点
50v 相互接続
51 下電極
51b 下電極
52 上電極
300 マスク層
301 SiO2ベースの層
302 SiNベースの層
303 SiO2ベースの層
310 表面
330 表面
【外国語明細書】