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  • 特開-チタン合金製タービン部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177131
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】チタン合金製タービン部品
(51)【国際特許分類】
   C22C 14/00 20060101AFI20241212BHJP
   C22F 1/18 20060101ALI20241212BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
C22C14/00 Z
C22F1/18 H
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 630B
C22F1/00 651Z
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 691B
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 691C
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024092360
(22)【出願日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】63/506,614
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・フィリップ・ウッドフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・アンドリュー・シャープ・ザ・セカンド
(72)【発明者】
【氏名】カイラ・リン・カルヴァート
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・クリストファー・ファニング
(57)【要約】
【課題】異なる温度に対応するために、異なるエンジン部品は、異なる材料特性を有する異なる合金で鍛造されており、これにより、部品は、異なる予想される最大半径方向温度および/または軸方向温度に耐える必要がある。
【解決手段】Ti-64から改良されたチタン合金で構成されたタービン部品が提供される。この改質により、厚肉部強度、HCF 能力、クリープ強度、FOD後の低変形を改善し、Ti-17およびTi-6246のこれらの利点に近づきながら、Ti-64の望ましい特性(比較的等方性、比較的低い密度、FODに対する耐性、修復性、低コストなど)が維持される。このようなタービン部品を形成する方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン合金からなるタービン部品であって、
前記チタン合金は、
5.50重量%~6.90重量%のアルミニウムと、
3.50重量%~4.50重量%のバナジウムと、
0.01重量%~0.03重量%の炭素と、
0.20重量%~0.70重量%の鉄と、
1.00重量%~1.50重量%のモリブデンと、
0.10重量%~0.30重量%のシリコンと、
0.21重量%までの酸素と、
0.016重量%までの窒素と、
残りのチタンと、
で構成され、
前記チタン合金には銅が実質的に含まれていない、タービン部品。
【請求項2】
チタン合金からなるタービン部品であって、
前記チタン合金は、
5.50重量%~6.90重量%のアルミニウムと、
3.50重量%~4.50重量%のバナジウムと、
0.01重量%~0.03重量%の炭素と、
0.20重量%~0.70重量%の鉄と、
1.00重量%~1.50重量%のモリブデンと、
0.10重量%~0.30重量%のシリコンと、
0.21重量%までの酸素と、
0.016重量%までの窒素と、
残りのチタンと、
で構成され、
Al、O、Fe、Si、Moは、式:469.3+48.8*Al(重量%)+748*O(重量%)+96.1*Fe(重量%)+188*Si(重量%)+57.7*Mo(重量%)に従って予測される23°Cの0.2%降伏強度が1000MPa以下となる量で存在し、或いは、
Fe、Si、Moは、式:10^(1.149+0.211*Fe(重量%)-0.514*Si(重量%)+0.076*Mo(重量%))に従って予測される23°Cの塑性伸長が15.0%以上となる量で存在する、タービン部品。
【請求項3】
前記チタン合金には銅が実質的に含まれない、請求項1または2に記載のタービン部品。
【請求項4】
前記チタン合金は、1000MPa以上の0.2%降伏強度を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項5】
前記チタン合金は、0.2%降伏強度が1000MPa~1380MPaの0.2%降伏強度を有している、請求項1~4のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項6】
前記チタン合金は、1060MPa以上の極限引張強度を有している、請求項1~5のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項7】
前記チタン合金は、1060MPa~1450MPaの極限引張強度を有している、請求項1~6のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項8】
前記チタン合金は、15.0%以上の塑性伸長を有している、請求項1~7のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項9】
前記チタン合金は、15.0%~30.0%の塑性伸長を有している、請求項1~8のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項10】
前記チタン合金は、3.048mm以下の亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有している、請求項1~9のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項11】
前記チタン合金は、0mm~3.048mmの亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有している、請求項1~10のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項12】
当該タービン部品の面積減少率が45%RA以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項13】
当該タービン部品の面積減少率が45%RA~75%RAである、請求項1~12のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項14】
前記チタン合金は、0.2%降伏強度が1000MPa以上で、極限引張強度が1060MPa以上で、塑性伸長が15.0%以上で、面積減少率が45%RA以上である、請求項1~13のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項15】
前記チタン合金は、0.2%降伏強度が1000MPa~1380MPaで、極限引張強度が1060MPa~1450MPaで、延性が15.0%~30.0%で、面積減少率が45%RA~75%RAである、請求項1~14のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項16】
前記チタン合金には実質的にクロムが含まれていない、請求項1~15のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項17】
前記チタン合金には実質的にスズが含まれていない、請求項1~16のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項18】
前記チタン合金には実質的にニッケルが含まれていない、請求項1~17のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項19】
前記チタン合金には実質的にジルコニウムが含まれていない、請求項1~18のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項20】
前記チタン合金には実質的にタングステンが含まれていない、請求項1~19のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項21】
前記チタン合金には実質的に他の元素が含まれていない、請求項1~20のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項22】
Al、O、Fe、Si、Moは、式:469.3+48.8*Al(重量%)+748*O(重量%)+96.1*Fe(重量%)+188*Si(重量%)+57.7*Mo(重量%)に従って予測される23°Cの0.2%降伏強度が1000MPa以上となる量で存在する、請求項1~21のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項23】
Fe、Si、Moは、式:10^(1.149+0.211*Fe(重量%)-0.514*Si(重量%)+0.076*Mo(重量%))に従って予測される23°Cの塑性伸長が15.0%以上となる量で存在する、請求項1~22のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項24】
Al、O、Fe、Si、Moは、式:469.3+48.8*Al(重量%)+748*O(重量%)+96.1*Fe(重量%)+188*Si(重量%)+57.7*Mo(重量%)に従って予測される23°Cの0.2%降伏強度が1000MPa以上となる量で存在し、さらに、Fe、Si、Moは、式10^(1.149+0.211*Fe(重量%)-0.514*Si(重量%)+0.076*Mo(重量%))に従って予測される23°Cの塑性伸長が15.0%以上となる量で存在する、請求項1~23のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項25】
前記チタン合金は、3.80重量%~4.43重量%のバナジウムを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項26】
前記チタン合金は、0.45重量%~0.57重量%の鉄を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項27】
前記チタン合金は、0.14重量%~0.28重量%のシリコンを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項28】
前記チタン合金は、
5.50重量%~6.90重量%のアルミニウムと、
3.50重量%~4.50重量%のバナジウムと、
0.01重量%~0.03重量%の炭素と、
0.20重量%~0.70重量%の鉄と、
1.00重量%~1.50重量%のモリブデンと、
0.10重量%~0.30重量%のシリコンと、
0.21重量%までの酸素と、
0.016重量%までの窒素と、
残りのチタンと、
で基本的に構成されている、請求項1~27のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項29】
前記チタン合金は、
5.50重量%~6.90重量%のアルミニウムと、
3.50重量%~4.50重量%のバナジウムと、
0.01重量%~0.03重量%の炭素と、
0.20重量%~0.70重量%の鉄と、
1.00重量%~1.50重量%のモリブデンと、
0.10重量%~0.30重量%のシリコンと、
0.21重量%までの酸素と、
0.016重量%までの窒素と、
残りのチタンとの成分から構成されている、請求項1~28のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項30】
チタン合金からなるタービン部品であって、
前記チタン合金は、
5.50重量%~6.90重量%のアルミニウムと、
3.50重量%~4.50重量%のバナジウムと、
0.01重量%~0.03重量%の炭素と、
0.20重量%~0.70重量%の鉄と、
1.00重量%~1.50重量%のモリブデンと、
0.10重量%~0.30重量%のシリコンと、
0.21重量%までの酸素と、
0.016重量%までの窒素と、
残りのチタンと、
で基本的に構成されている、タービン部品。
【請求項31】
チタン合金からなるタービン部品であって、
前記チタン合金は、
5.50重量%~6.90重量%のアルミニウムと、
3.50重量%~4.50重量%のバナジウムと、
0.01重量%~0.03重量%の炭素と、
0.20重量%~0.70重量%の鉄と、
1.00重量%~1.50重量%のモリブデンと、
0.10重量%~0.30重量%のシリコンと、
0.21重量%までの酸素と、
0.016重量%までの窒素と、
残りのチタンと、
で実質的に構成されている、タービン部品。
【請求項32】
前記チタン合金は、1000MPa以上の0.2%降伏強度を有している、請求項1~31のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項33】
前記チタン合金は、1000MPa~1380MPaの0.2%降伏強度を有している、請求項1~32のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項34】
前記チタン合金は、1060MPa以上の極限引張強度を有している、請求項1~33のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項35】
前記チタン合金は、1060MPa~1450MPaの極限引張強度を有している、請求項1~34のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項36】
前記チタン合金は、15.0%以上の塑性伸長を有している、請求項1~35のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項37】
前記チタン合金は、15.0%~30.0%の塑性伸長を有している、請求項1~36のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項38】
前記チタン合金は、3.048mm以下の亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有している、請求項1~37のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項39】
前記チタン合金は、0mm~3.048mmの亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有している、請求項1~38のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項40】
当該タービン部品の面積減少率が45%RA以上である、請求項1~39のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項41】
当該タービン部品の面積減少率が45%RA~75%RAである、請求項1~40のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項42】
前記チタン合金は、0.2%降伏強度が1000MPa以上で、極限引張強度が1060MPa以上で、塑性伸長が15.0%以上で、亀裂長さが3.048mm以下で、面積減少率が45%RA以上である、請求項1~41のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項43】
前記チタン合金は、0.2%降伏強度が1000MPa~1380MPaで、極限引張強度が1060MPa~1450MPaで、延性が15.0%~30.0%で、0~3.048mmの亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有し、面積減少率が45%RA~75%RAである、請求項1~42のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項44】
請求項1~42のいずれか一項に記載のタービン部品を形成する方法。
【請求項45】
タービン部品を形成する方法であって、当該方法は、タービン部品にチタン合金を鍛造するステップを含み、
前記チタン合金は、
5.50重量%~6.90重量%のアルミニウムと、
3.50重量%~4.50重量%のバナジウムと、
0.01重量%~0.03重量%の炭素と、
0.20重量%~0.70重量%の鉄と、
1.00重量%~1.50重量%のモリブデンと、
0.10重量%~0.30重量%のシリコンと、
0.21重量%までの酸素と、
0.016重量%までの窒素と、
残りのチタンと、
で構成され、
前記チタン合金には銅が実質的に含まれていない、方法。
【請求項46】
タービン部品を形成する方法であって、当該方法は、タービン部品にチタン合金を鍛造するステップを含み、
前記チタン合金は、
5.50重量%~6.90重量%のアルミニウムと、
3.50重量%~4.50重量%のバナジウムと、
0.01重量%~0.03重量%の炭素と、
0.20重量%~0.70重量%の鉄と、
1.00重量%~1.50重量%のモリブデンと、
0.10重量%~0.30重量%のシリコンと、
0.21重量%までの酸素と、
0.016重量%までの窒素と、
残りのチタンと、
で構成され、
Al、O、Fe、Si、Moは、式:469.3+48.8*Al(重量%)+748*O(重量%)+96.1*Fe(重量%)+188*Si(重量%)+57.7*Mo(重量%)に従って予測される23°Cの0.2%降伏強度が1000MPa以上となる量で存在し、或いは、
Fe、Si、Moは、式:10^(1.149+0.211*Fe(重量%)-0.514*Si(重量%)+0.076*Mo(重量%))に従って予測される23°Cの塑性伸長が15.0%以上となる量で存在する、方法。
【請求項47】
チタン合金をタービン部品に鍛造するステップは、チタン合金のベータトランザス温度(beta transus temperature)未満の鍛造温度でチタン合金を鍛造するステップを含む、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
当該方法は、チタン合金を熱処理するステップを含む、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
当該方法は、チタン合金のベータトランザス温度未満の熱処理温度でチタン合金を熱溶融処理するステップを含む、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記熱処理温度が鍛造温度以上であり、チタン合金は前記熱処理温度で少なくとも1時間保持される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
当該方法は、チタン合金を熱処理した後、チタン合金を冷却してタービン部品を形成するステップを含む、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
チタン合金を冷却するステップは、前記熱処理温度から208°C/分の冷却速度で行われる、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
熱溶融処理および冷却の後に、チタン合金を538°C~760°Cの過熱処理温度に少なくとも1.5時間加熱するステップをさらに含む、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記チタン合金は、1000MPa以上の0.2%降伏強度を有している、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記チタン合金は、1060MPa以上の極限引張強度を有している、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記チタン合金は、15.0%以上の塑性伸長を有している、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記チタン合金は、3.048mm以下の亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有している、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記チタン合金は、45%RA以上の面積減少率を有している、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権情報]
本出願は、2023年6月7日に提出された米国仮特許出願第63/506,614号に対する優先権を主張し、その全文はあらゆる目的のために本明細書にこの参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般にチタン合金で形成された部品に関する。特に、本明細書に開示されるチタン合金で形成された部品は、ガスタービンなどの回転機械に使用するのに特に適している。
【背景技術】
【0003】
蒸気タービンエンジンおよび/またはガスタービンエンジンなどの少なくともいくつかの既知の回転機械には、ファンアセンブリ、コンプレッサ、および/またはタービンなどのさまざまなローターアセンブリが含まれており、それぞれのローターアセンブリにはローターアセンブリが含まれているが、これらに限定されない。少なくともいくつかの既知のローターアセンブリには、ディスク、シャフト、スプール、ブレード化されたディスク(「ブレード付きディスク」)、シール、および/または、ブレード付き一体型リング(「ブリング」)、および個々のダブテール接続ブレードなどのコンポーネントが含まれるが、これらに限定されない。このような部品は、ガスタービンエンジン内の軸方向の位置に応じて異なる温度にさらされる可能性がある。
【0004】
例えば、運転中、少なくともいくつかの既知のガスタービンエンジンは、エンジンの中心縦軸に沿って延在する軸方向の温度勾配にさらされる可能性がある。一般的に、ガスタービンエンジン部品は、エンジンの前方部に向かって低い動作温度にさらされ、エンジンの後方部に向かって高い動作温度にさらされる。そのため、既知のローターアセンブリおよび/またはローターコンポーネントは、通常、エンジン内の意図された位置で予想される最高温度に耐えることができる材料から製造される。
【発明の概要】
【0005】
異なる温度に対応するために、異なるエンジン部品は、異なる材料特性を有する異なる合金で鍛造されており、これにより、部品は、異なる予想される最大半径方向温度および/または軸方向温度に耐えることができる。より具体的には、既知の回転アセンブリおよび/または回転コンポーネントはそれぞれ、回転アセンブリおよび/または回転コンポーネント全体の予想される最大温度に耐えることができる単一の合金から鍛造されるのが一般的である。例えば、Ti-17(Ti-5Al-4Mo-4Cr-2Sn-2Zr)、Ti-6246(Ti-6Al-2Sn-4Zr-6Mo)、および、Ti-64(Ti-6Al-4V)は、エンジン内での部品の相対的な位置に応じて、ガスタービンエンジン内の回転部品に使用され得る。
【0006】
Ti-64は、製造性が高く、比較的等方性があり、密度が比較的低く、異物損傷(FOD)に耐性があり、修理が比較的容易で、コストが比較的低いアルファ/ベータ処理チタン合金である。しかしながら、Ti-64は厚肉部の強度と高サイクル疲労(HCF)能力が限られている。対照的に、Ti-17およびTi-6246はベータ処理されており、製造が容易ではなく、ベータ処理の結果として異方性(特に延性)が強く、密度が高く、FOD(異物損傷)に対する耐性が低く、修理が容易ではなく、コストが高くなる。しかしながら、Ti-17およびTi-6246は、厚肉部強度が良好で、HCF(高サイクル疲労)能力が優れており、Ti-64よりも耐熱性が優れている。
【0007】
そのため、Ti-64の優れた特性(例えば、比較的等方性の特性、比較的低い密度、FODに対する耐性、修復可能)と、Ti-17およびTi-6246の利点(例えば、厚い断面の強度および HCF)のいくつかを兼ね備えた低コストのチタン合金が求められている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
当業者に向けた、本発明の完全かつ有効な開示、その最良の形態を含む開示は、添付の図面を参照する本明細書に記載されている。
【0009】
図1図1は、本開示の例示的な態様に従ったガスタービンエンジンの断面図である。
図2図2は、図1に示されるようなガスタービンエンジンに使用するのに適したタービン部品の一例としてのブレードディスクの等角図である。
図3図3は、図2のブレードディスクのような溶接ゾーンの任意の位置を示す、ブレードディスクの2段の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[定義]
本明細書において「例示的」という語は、「例、事例、または説明として役立つ」という意味で使用される。本明細書において「例示的」として説明されている実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましい、または有利であると解釈されるものではない。また、特に明記されていない限り、本明細書で説明されている実施形態はすべて例示的であると見なされるべきである。
【0011】
単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別の意味が示されていない限り、複数形も含むものとする。
【0012】
例えば「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という文脈における用語「少なくとも1つ」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、またはA、B、およびCの任意の組み合わせを指す。
【0013】
「XからY」、「XからY」、および「XとYの間」という語句は、それぞれ、小数点以下を含む値の範囲を指す(つまり、XとYの両方を含む値の範囲を指す)。ここで、および本明細書および請求項全体にわたって、範囲の制限は、組み合わされ、交換され、そのような範囲は特定され、文脈または言語によって別途示されない限り、そこに含まれるすべてのサブ範囲が含まれる。例えば、本明細書に開示されるすべての範囲にはエンドポイントが含まれており、エンドポイントは互いに独立して組み合わせることができる。
【0014】
本明細書において、「実質的に含まれない」という用語は、前記成分が全く含まれないこと、或いは、微量の前記成分が含まれることを意味するものと理解される。「微量」とは、ほとんど検出できず、対象組成物の機能的または美的特性に何ら利益をもたらさない化学成分の量的レベルを指す。「実質的に含まれない」という用語には、完全に含まれないことも含まれる。
【0015】
「ターボ機械」という用語は、1つ以上の圧縮機、熱発生部(例えば、燃焼部)、および一緒にトルク出力を生成する1つ以上のタービンを含む機械を指す。
【0016】
「ガスタービンエンジン」という用語は、ターボ機械をその動力源の全部または一部として有するエンジンを指す。ガスタービンエンジンの例には、ターボファンエンジン、ターボプロップエンジン、ターボジェットエンジン、ターボシャフトエンジンなどのほか、これらのエンジンの1つまたは複数のハイブリッド電気バージョンが含まれる。
【0017】
本開示では、化学元素は、元素周期表に一般的に見られるような一般的な化学略語を使用して説明される。例えば、水素は一般的な化学略語Hで表され、ヘリウムは一般的な化学略語Heで表される。
【0018】
「降伏強度」という用語は、荷重の増加なしに材料が塑性変形(永久変形)を示し始める応力を指す。これは、応力-ひずみ曲線上で、材料が弾性変形(可逆)から塑性変形(不可逆)に移行する点である。0.2%降伏強度は、降伏強度を超えた0.2%の塑性ひずみで測定される強度である。降伏強度よりも測定が簡単で再現性がある。0.2%降伏強度は、荷重を受けた材料の構造的完全性と安定性を判断する上で重要なパラメータである。
【0019】
「極限引張強度」(「UTS」)という用語は、材料が破断または破壊する前に耐えることができる最大の応力である。これは応力-ひずみ曲線の最高点であり、引張荷重下での材料の最大強度を表す。UTSに達すると、材料はネッキング(局所的な変形)を起こし、最終的に破損する。
【0020】
「塑性伸長」という用語は、引張応力下で破断することなく塑性変形する材料の能力を指す。これは、材料が破損することなく永久変形できる程度を測定する重要な機械的特性である。延性材料は破損する前に大きな塑性変形を起こす可能性があるが、脆性材料は大きな変形を起こさずに破損する傾向がある。塑性伸長は通常、試験前にゲージ長さに付けた2つのマーク間の長さの増加率と、試験が完了して2つの破断した試験片の半分を元に戻した後の2つのマーク間の最終距離として測定される。塑性伸長率が高いほど延性が高く、破断する前に金属が大きく変形する可能性があることを表す。逆に、塑性伸長率が低いほど延性が低く、金属がより脆く、大きな塑性変形を伴わずに破断する傾向があることを表す。
【0021】
「面積減少率」(「%RA」とも表記される)とは、機械試験中に金属試験片に生じる変形または塑性流動の程度を定量化する測定値を指す。金属試験片に引張力が加わると、試験片は伸びて断面積が減少する塑性変形を起こす。断面積の減少は、試験プロセス中に試験片が破損または破損した後の断面積の減少を測定したものである。面積の減少は通常、パーセンテージで表され、次の式を使用して計算される。面積減少=[(元の断面積-最終断面積)/元の断面積]x100。面積減少率が高いほど延性が高く、破断する前に金属が大きく変形する可能性があることを表す。逆に、面積減少率が低いほど延性が低く、金属がより脆く、大きな塑性変形を伴わずに破断する傾向があることを意味する。
【0022】
0.2%降伏強度、極限引張強度、塑性伸長、および、面積減少率の値は、金属材料の引張試験の標準試験方法としても知られるASTM E8/E8Mに従って、室温(すなわち、20°C~25°C)で測定される。ASTM E8/E8Mは、合金の特性評価を含む材料試験の分野で広く使用されている規格で、金属材料の機械的特性を決定するための引張試験を実施するためのガイドラインを提供する。ASTM E8/E8Mに加えて、すべての引張試験は、毎分0.005インチ/インチ±0.002インチ/インチの制御されたひずみ速度で実行された。0.2パーセントの降伏点に達し、荷重が安定した後、クロスヘッド速度は、試験片の縮小部分の長さの1分あたり0.05±0.01インチ/インチであった。塑性伸長および面積減少率(%RA)は、「フィットバック法」を使用して測定された。この方法では、破損した試験片の破断面を元に戻し、これらのパラメータを計算するために必要な長さの変化と断面積の減少とを測定する。すべての引張試験は、ゲージ径が少なくとも0.14インチ、ゲージ長が少なくとも0.75インチのバーに対して実施された。
【0023】
「弾道衝撃耐性」とは、発射体または高速衝撃によって引き起こされる貫通または変形に抵抗する材料の能力を指す。これは、弾丸、破片、またはその他の発射体からの保護が求められる用途において特に重要である。高い弾道衝撃耐性を持つ材料は、衝撃のエネルギーを吸収して分散させ、発射物による損傷を軽減するように設計されている。弾道衝撃による損傷、または異物による損傷に対する耐性は、圧縮弾道装置を使用して、直径約4.45mm、重さ0.36g、硬度55ロックウェルCのボールベアリングCr鋼合金ボールを、約182.9メートル/秒から約304.8メートル/秒の速度で、サンプルの厚さが0.762mmの試験対象合金のターゲットに発射して測定された。損傷の程度は、衝突地点から発生した亀裂の半径方向の亀裂長さの合計によって定量化された。疑義を避けるため、半径方向の亀裂長さのみを合計し、衝突地点に関連する円周方向の亀裂は考慮しなかった。
【0024】
用語「重量パーセント」(本明細書では「重量%」と略記する)は、チタン合金中の特定の元素の量の濃度を指す。重量パーセントは、チタン合金の総重量に対する元素の重量の割合をパーセンテージで表したものである。重量パーセントは、元素の重量をチタン合金の総重量で割り、その結果に100を掛けて計算される。
【0025】
[発明の詳細な説明]
ここで、本開示の実施形態について詳細に言及する。これらの実施形態の1つまたは複数の例は、添付の図面に示されている。詳細な説明では、図面内の特徴を参照するために、数字および文字の指定を使用している。図面および説明内の同様または類似の指定は、本開示の同様または類似の部分を参照するために使用されている。
【0026】
タービン部品は、一般的に、Ti-64の所望の特性(例えば、比較的等方性の特性、比較的低い密度、FODに対する耐性、修理可能性、および低コスト)を維持するためにTi-64から改変されたチタン合金から構成され、その一方、厚肉部強度、HCF能力、クリープ強度、FOD後の低変形を改善し、Ti-17およびTi-6246のこれらの利点に近づく。新しく改良されたTi-64合金のコストは、広く入手可能なTi-64リサイクル材料を高比率で使用できるように組成を設計することで最小限に抑えることができる。さらに、ビレットと鍛造処理のアプローチを可能な限りTi-64に近づけることでコストを最小限に抑えながら、チタン合金からこのようなタービン部品を大規模に生産できるようになる。
【0027】
前述したように、図1に示されるようなターボファンエンジン内のタービン部品は、チタン合金から構成され得る。チタン合金は、5.50重量%~6.90重量%のアルミニウム、3.50重量%~4.50重量%のバナジウム、0.01重量%~0.03重量%の炭素、0.20重量%~0.70重量%の鉄、1.00重量%~1.50重量%のモリブデン、0.10重量%~0.30重量%のシリコン、最大0.21重量%の酸素、最大0.016重量%の窒素(例えば、窒素最大0.015重量%)、および、残りのチタンを含む。特定の実施形態では、チタン合金は、0.2%降伏強度が1000MPa以上(例えば、1000MPa~1380.0MPa)で、極限引張強度が1060MPa以上(例えば、1060MPa~1450MPa)で、塑性伸長が15.0%以上(例えば、15.0%~30.0%)で、3.048mm以下(例えば、0mm~3.048mm)の亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性で、面積減少率が45%以上(例えば、45%~75%RA)で、またはこれらの特性の任意の組み合わせを有する。
【0028】
チタン合金には強度を高めるためにシリコン(Si)が含有されているが、Siの含有量が0.10重量%未満ではチタン合金に十分な強度を与えないことが分かっている。さらに、0.30重量%を超えるSiでは、弾道衝撃耐性、塑性伸長、面積減少率の低下、またはそれらの組み合わせが低下することが判明した。さらに、0.30重量%を超えるSiレベルの増加により、大規模な生産および製造プロセスに必要な大口径インゴットの凝固中にSi偏析の問題が生じる可能性があることも判明した。
【0029】
チタン合金には、高温強度を高めるとともに、α+β相領域の温度幅を広げ、熱間加工処理の柔軟性を高めるために鉄(Fe)が含有されている。少なくとも0.20重量%のFeと1.00重量%~1.50重量%のMoを組み合わせると、強度および塑性伸長の望ましいバランスが得られることがわかっている。しかしながら、大径インゴットの凝固中にFeが強く偏析するため、大規模生産および製造プロセスでの製造上の問題を回避できるFeは最大0.70重量%であることがわかっている。
【0030】
モリブデン(Mo)は、チタン合金中に含有され、高温強度および耐クリープ性を高め、α+β相領域の温度幅を広げ、それによって熱間加工処理の柔軟性を高める。少なくとも1.00重量%のMoと0.20重量%~0.70重量%のFeとを組み合わせると、強度および塑性伸長の望ましいバランスが得られることが分かっている。しかし、チタン合金内のMoの含有量が多すぎると、チタン合金の塑性伸長、断面積減少、および/または、弾道衝撃耐性が低下する可能性がある。したがって、1.50重量%を超えると、チタン合金の塑性伸長、面積減少、および/または、弾道衝撃耐性が望ましいレベルを超えて低下することが判明した。Moレベルの増加は、チタン合金の密度の増加にもつながる。
【0031】
窒素(N)は、チタン合金の製造における真空溶融工程中に不可避的に混入するため、チタン合金中に存在する。N(窒素)はチタン合金の強度および硬度を高める。しかし、チタン合金中に存在する窒素が多すぎると、例えば窒素が0.016重量%を超えると(例えば、窒素が0.015重量%を超えると)、塑性伸長が低下し、面積減少率が低下し、および/または弾道衝撃耐性が低下する。
【0032】
チタンは酸化速度が速いため、チタン合金中には酸素(O)が自然に存在し、所望の化学特性を満たすために意図的に添加され得る。しかしながら、チタン合金中のO(酸素)の量が0.21重量%を超えると、塑性伸長、面積減少、および/または、弾道衝撃耐性が低下することが判明したため、現在開示されているチタン合金中に存在するO(酸素)の量は最小限に抑えられている。
【0033】
炭素(C)は、配合に使用される入力材料中に低レベルで存在するため、チタン合金中に自然に存在し、所望の化学的性質を満たすために意図的に添加され得る。0.01重量%を超える一定量のC(炭素)は、塑性伸長、面積減少、および/または、弾道衝撃耐性を低下させることなく、0.2%降伏強度および極限引張強度に有益である。しかしながら、合金中に存在する炭素の量が0.03重量%を超えると、塑性伸長、面積減少、および/または、弾道衝撃耐性が低下する。
【0034】
特定の実施形態では、望ましくない特性を回避するために、チタン合金内に他の元素が含まれないようにされ得る。例えば、特定の元素が含まれると、タービン部品の大規模製造など、大規模な使用が妨げられる可能性がある。
【0035】
銅(Cu)はチタン合金の強度を高める可能性があるが、Cu(銅)が存在すると大口径インゴットの凝固中に深刻な偏析が生じ、大規模生産では化学反応や微細構造制御の問題につながり得ることが判明している。したがって、チタン合金にCuが含まれていると、不均質なチタン合金材料が形成され、それぞれのコンポーネント内およびすべてのコンポーネントにわたって一貫した組成を有するタービン部品の製造には適さなくなる。そのため、チタン合金にはCuが実質的に含まれず、大規模な製造環境でのチタン合金の使用を妨げるこれらの問題が回避される。
【0036】
クロム(Cr)はチタン合金の強度を高める可能性があるが、Cr(クロム)が存在すると凝固中に偏析が生じ、大規模生産においては化学反応や微細構造制御の問題につながり得ることが判明している。したがって、チタン合金にCrが存在すると、それぞれのコンポーネント内およびすべてのコンポーネントにわたって一貫した組成を有するタービンコンポーネントの製造に適さない不均質なチタン合金材料が形成される可能性がある。そのため、特定の実施形態では、チタン合金にはCrが実質的に含まれておらず(例えば、Tiスポンジ中のCrの存在により存在する、500wppm以下、200wppm以下のようなCrの残留量以下)、大規模な製造環境でのチタン合金の使用を妨げるこれらの問題が回避される。
【0037】
スズ(Sn)は、特に高温下では合金の強度を高める可能性があるが、Sn(スズ)の存在により塑性伸長が減少し、面積減少が低下し、弾道衝撃耐性が低下することがわかった。したがって、特定の実施形態では、これらの問題を回避するために、チタン合金は実質的にSn(スズ)を含まない。
【0038】
ニッケル(Ni)は合金の強度を高める可能性があるが、Ni(ニッケル)が存在すると凝固中に偏析が生じ、大規模生産では化学反応や微細構造制御の問題につながり得ることが判明した。したがって、チタン合金にNi(ニッケル)が存在すると、それぞれのコンポーネント内およびすべてのコンポーネントにわたって一貫した組成を有するタービンコンポーネントの製造に適さない不均質なチタン合金材料が形成される可能性がある。そのため、特定の実施形態では、チタン合金には実質的にNiが含まれず(例えば、Tiスポンジ中のNiの存在により存在する、500wppm以下、200wppm以下のようなNiの残留量以下)、大規模な製造環境でのチタン合金の使用を妨げるこれらの問題が回避される。
【0039】
ジルコニウム(Zr)は、特に高温下ではチタン合金の強度を高める可能性があるが、チタン合金中にZr(ジルコニウム)とSi(ケイ素)が存在すると、混合された(TiZr)Siシリサイド粒子が形成され、塑性伸長が急速に低下し、面積減少が低下し、弾道衝撃耐性が低下することが判明した。したがって、特定の実施形態では、これらの問題を回避するために、チタン合金にはZrが実質的に含まれない。
【0040】
タングステン(W)はチタン合金の強度およびクリープ強度を高める可能性があるが、W(タングステン)はTi(チタン)に比べて密度が比較的高いため、W(タングステン)を添加すると合金材料が不均質になる可能性がある。したがって、この問題を回避するために、特定の実施形態では、チタン合金にはW(タングステン)が実質的に含まれていない。
【0041】
特定の実施形態では、本明細書に記載のチタン合金は、加熱時に低温のアルファ密集六方相(low temperature alpha, close-packed hexagonal phase)がすべて消失し、高温のベータ体心立方相(high temperature beta, body-centered cubic phase)が存在する温度であるベータトランザス(beta transus)より低い温度で、円筒形ビレットの一部から1つ以上のステップで完成したタービン部品に近い形状に鍛造され得る。鍛造温度は、チタン合金のベータトランザス温度より低い温度であってもよく、ベータトランザス温度より14°Cから83°C低い温度まで変化し得る。
【0042】
鍛造形状は、一次アルファ相(primary alpha phase)およびベータ相(beta phase)の体積分率を制御するために、鍛造温度よりもベータトランザスに近い温度で熱溶融処理(solution heat treated)され得る。例えば、溶融温度(solution temperature)は、典型的にはベータトランザス温度より17°Cから69°C低い温度まで変化させることができ、溶融時間は少なくとも1時間であるべきである。
【0043】
熱溶融処理(solution heat treatment)後の冷却速度を速めると、0.2%降伏強度および極限引張強度が増加する可能性があることはよく知られている。本出願の目的のために、すべての合金は熱溶融処理され、熱溶融処理から水冷された部品の断面サイズ約80mmに相当する約208°C/分の速度で冷却された。したがって、ここで測定され報告されたすべての引張特性は、熱溶融処理後に液体急冷(水、油、ポリマーなど)またはガス冷却(空気、ヘリウムなど)される、101.6mm程度の大きな断面サイズの部品で予想される引張特性に対応する。熱溶融処理後の冷却速度を上げることで、より高い強度が得られることはよく知られている。熱処理された部品の任意の場所における溶融後の冷却速度は、埋め込まれた熱電対を使用して直接測定するか、有限要素モデルを使用して推定するか、またはその両方の組み合わせで測定され得る。溶融後の冷却速度は、溶融温度より約28°C低い温度から溶融温度より83°C低い温度までの間で測定および/または計算され得る。
【0044】
熱溶融処理および冷却の後、部品は、0.2%降伏強度、極限引張強度、塑性伸長、面積減少率、および、弾道衝撃耐性のバランスを維持しながら、熱溶融処理および冷却からの残留応力を最小限に抑えるために、537.8°C~760°Cで少なくとも1.5時間(例えば、2時間)過時効処理(overaged)され得る。これらの処理方法により、1000MPa以上(例えば、1000MPa~1380MPa)の0.2%降伏強度、1060MPa以上(例えば、1060MPa~1450MPa)の極限引張強度、15.0%以上(例えば、15.0%~30.0%)の塑性伸長、3.048mm以下(例えば、0mm~3.048mm)の亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性、45%RA以上(例えば、45%RA~75%RA)の面積減少、または、上記で説明したこれらの特性の任意の組み合わせなどのチタン合金の所望の特性が達成され得る。
【0045】
前述したように、本明細書に記載のチタン合金は、例示的なターボファンエンジンで使用するためのタービン部品の形成に利用され得る。図1は、中心回転軸12を有する例示的なターボファンエンジン10の概略図である。例示的な実施形態では、ターボファンエンジン10は、空気吸入側14および排気側16を含む。ターボファンエンジン10は、高圧コンプレッサ20、燃焼器22、および、高圧タービン24を含むコアガスタービンエンジン18も備えている。さらに、ターボファンエンジン10は、コアガスタービンエンジン18の軸方向下流に配置された低圧タービン26と、コアガスタービンエンジン22の軸方向上流に配置されたファンアセンブリ28とを含む。ファンアセンブリ28は、ローターハブ32から放射状に外側に延在するファンブレード30の配列を備えている。さらに、ターボファンエンジン10には、ファンアセンブリ28と低圧タービン26との間に配置された第1のローターシャフト34と、高圧コンプレッサ20と高圧タービン24との間に配置された第2のローターシャフト36とが含まれており、ファンアセンブリ28、高圧コンプレッサ20、高圧タービン24、および、低圧タービン26は、ターボファンエンジン10の中心回転軸12に対して直列に配置され、同軸上に位置合わせされている。
【0046】
運転中、空気は吸気側14から入り、ファンアセンブリ28を通って高圧コンプレッサ20に流れ込む。圧縮された空気は燃焼器22に送られる。燃焼器22からの空気流は、排気側16からターボファンエンジン10から排出される前に、高圧タービン24および低圧タービン26を駆動する。
【0047】
高圧コンプレッサ20、燃焼器22、高圧タービン24、および、低圧タービン26は、それぞれ少なくとも1つのローターアセンブリを含む。ローターアセンブリまたはローターアセンブリは、一般に、ターボファンエンジン10内の相対的な軸方向の位置に応じて異なる温度にさらされる。例えば、例示的な実施形態では、ターボファンエンジン10は、前方ファンアセンブリ28に向かって一般的に動作温度が低く、後方高圧コンプレッサ20に向かって動作温度が高くなる。したがって、高圧コンプレッサ20内のローター部品は、ファンアセンブリ28のローター部品の製造材料と比較して、より高い温度に耐え得る材料から製造されるのが一般的である。
【0048】
ターボファンエンジン10は回転機械クラスの1つのメンバーを表すが、他のメンバーには、陸上ガスタービン、ターボジェット、ターボシャフトエンジン、アンダクテッド(unducted)エンジン、アンダクテッド(unducted)ファン、固定翼、および、プロペラローターなど、並びに、分散ファンまたはポッドなどの分散推進装置などが含まれる。本明細書に記載のチタン合金で形成されたタービン部品は、このような回転機械を作動させるのに有用な回転機械部品の形態であり得る。例示的な回転機械部品(コンポーネント)には、例えば、ディスク、ブレード付きディスク、翼、ブレード、ベーン、一体型ブレード付きローター、フレーム、フェアリング(fairing)、シール、ギアボックス、ケース、マウント、シャフトなどが含まれる。
【0049】
図2は、チタン合金から構成され得るタービン部品の一例を示しており、一体型ブレードローターとしても知られる単段ブレードディスク50の等角図を示している。ブレードディスク50は、図1のターボファンエンジン10の軸12も参照される中心回転軸12を囲むハブ52を有する。ハブ52からほぼ放射状に翼60が延在している。図1の高圧コンプレッサ20では、疲労寿命、FOD許容度、クリープ強度などの性能パラメータについてブレードディスクを最適化するために、ハブ52と翼60とが異なる合金であるバイメタルブレードディスクが好まれる場合がある。翼形部(airfoil)60は、並進摩擦溶接または直線摩擦溶接などのプロセスを使用してハブ52に固相溶接される。したがって、ハブ52に優れた厚肉断面特性(thick section properties)を提供し、翼形部60に比較的小さな断面サイズでの優れた疲労特性およびFOD特性を提供する材料を選択することが望ましい。
【0050】
図2に示される例示的な実施形態では、ハブ52は、本明細書で説明するようにチタン合金から作られ、翼形部60は、例えばTi-64などの望ましい疲労寿命性能を有する市販の材料または従来の材料から作られる。溶接後、ハブ52と翼60との間の境界面は、溶接または熱影響ゾーン70と呼ばれ得る。このゾーン70には、ハブと翼の合金の混合物と、さまざまな微細構造が存在する。この合金の混合物とさまざまな微細構造により、ブレードディスク50の部分の厚肉部の疲労、FODなどが損なわれる可能性がある。
【0051】
別の例示的な実施形態では、ハブ52および翼形部60は両方とも、本開示の同じチタン合金から作られるか、または本開示の別々の例示的なチタン合金から作られる。ハブ52および翼60が同じチタン合金である場合、ゾーン70ではハブと翼の合金が混在していないが、さまざまな微細構造が存在する。このさまざまな微細構造により、ブレードディスク50の部分の厚肉部の疲労、FODなどが再び損なわれる可能性がある。
【0052】
(ボルト接合部をなくすことによって)回転部品(コンポーネント)の質量を最適化し、高温材料を利用するために、図1に示される高圧コンプレッサ20では、ブレードディスクの隣接ステージ(段)が慣性溶接(inertia welded)され得る。バイメタルハブ/エアフォイルと同様に、前方ブレードディスクステージが第1の材料で作られ、後方ブレードディスクステージが第2の材料で作られるのが望ましい。図3に示されるように、前方ブレードディスクステージ80は、本開示の例示的なチタン合金から作られ、後方ブレードディスクステージ90は、例えばTi-17などの従来の材料から作られ得る。ここでも溶接ゾーンまたは熱影響ゾーン70が存在し、前方ブレードディスク合金と後方ブレードディスク合金の混合が存在し、ゾーン70にはさまざまな微細構造が存在し、材料特性が低下した領域を表している。
【0053】
他の例示的な実施形態では、隣接する前方ブレードディスクステージ80および後方ブレードディスクステージ90は、両方とも本開示の同じチタン合金から作られるか、または本開示の別の例示的なチタン合金から作られ得る。
【0054】
さらに、図2および図3で説明した実施形態では、本開示の任意のチタン合金の例は、翼形部60、ハブ52、ブレードディスク50、前段ブレードディスク80、または、後段ブレードディスク90のうちの1つ以上に単独で、または市販の合金と組み合わせて使用され得る。図3では2段(ステージ)について説明しているが、ブレードディスクの段数が2段を超えることも想定される。
【0055】
材料はこれらの特性のみに基づいて選択されてもよいが、例えば、炉熱処理などの後処理によって、平行移動摩擦溶接(translation friction welding)または直線摩擦溶接(linear friction welding)で見られる溶接誘起熱環境による材料特性の損失を回復することを考慮する必要がある。後述するように、本開示のチタン合金は市販のチタン合金と相性がよく、例えばハブ52の材料と翼形部60の材料との間、および、隣接するブレードディスクステージ80、90の材料の間で熱処理温度と処理とをより適切に一致させることにより、製造業者がこのバイメタル材料特性の利点を最大限に活用できるようになる。これらの利点は、市販のチタン合金だけでなく、本発明のチタン合金自体を溶接した場合にも実現できる。平行移動摩擦溶接されたバイメタルブレードディスクの場合、ベータ処理されたTi-17またはベータ処理されたTi-6246の代わりに本開示のチタン合金をハブとして使用し、Ti-64を翼形部として使用すると、ハブのチタン合金とTi-64合金翼形部との間の流動応力と微細構造の適合性とが向上する。これにより、溶接プロセス中または溶接プロセス後に欠陥が形成される傾向が低い固体溶接が得られ得る。
【0056】
例示的な部品は、厚い断面を有し、鋳造および鍛造され、或いは、構造用航空宇宙鋳造品などであってもよい。
【0057】
[実施例]
例示的な合金(E-1~E-20)は、表1に示す化学組成に従って作成された。これらの例示的な合金は、一般的な生産ビレット変換プロセスを再現するように設計されたオープンダイ鍛造プロセスによって形成された。最初に、鋳造されたままのインゴットをベータトランザスより上で熱間加工し、次にサブトランザス熱間加工を行い、材料をその後ベータトランザスより上で再加熱してさらに熱間加工した後、水で急冷することでベータ再結晶化を生じさせた。最後に、材料はベータトランザス以下に再加熱され、最終直径まで熱間加工された。すべての熱間加工は、サブスケール材料の微細構造とテクスチャがより大きな生産スケール材料の代表となるように、大規模生産のインゴットからビレットへの加工で使用されるのと同じオープンダイ鍛造を使用して行われた。
【0058】
比較合金については、以下で説明し、表2、表3A、および表3Bに示す。表1、表2、表3A、および表3Bの合金は、208°C/分でα+β熱溶融処理から冷却された。これらの合金は、23°CでASTM E8/E8Mに従って、0.2%YS、UTS、塑性伸長%、および、面積減少%を測定するために測定された。
【0059】
表1に示す合金の23°Cの0.2%YSデータを、市販の統計解析パッケージ(MiniTab V.20.2)を使用して多重線形回帰統計モデルに入力した。元素:Al、O、Fe、Si、Moは、各元素の統計的有意性について95%を超える信頼水準でpテストを使用して統計的に有意であると判定された。降伏強度の予測モデルを式1に示す。
[式1]0.2%YS(MPa)=469.3+48.8*Al(重量%)+748*O(重量%)+96.1*Fe(重量%)+188*Si(重量%)+57.7*Mo(重量%)
【0060】
高強度Ti合金用途の場合、候補合金は23°Cで0.2%YSが1000MPa以上であることが望ましい。
【0061】
表1に示す合金の23°CのUTSデータを、市販の統計解析パッケージ(MiniTab V.20.2)を使用して多重線形回帰統計モデルに入力した。元素:Al、O、Fe、Si、Moは、各元素の統計的有意性について95%を超える信頼水準でpテストを使用して統計的に有意であると判定された。極限引張強度の予測モデルは式2に示されている。
[式2]UTS(Mpa)=612.1+39.2*Al(重量%)+666*O(重量%)+74.6*Fe(重量%)+202*Si(重量%)+41.6Mo(重量%)
【0062】
高強度Ti合金の用途では、候補合金は23°CでUTSが1060MPa以上であることが望ましい。
【0063】
表1に示す合金の23°Cでの塑性伸長率(%EL)を、市販の統計解析パッケージ(MiniTab V20.2)を用いて多重線形回帰統計モデルに入力した。なお、統計解析は、対数正規分布データに対する標準的な方法と同様に、%塑性伸長値のLog(10)変換を使用して実行された(JChen、Z Wang et al., Int. J. Plast.152(2022)103260)。元素:Fe、Si、Moは、各元素の統計的有意性について95%を超える信頼水準でpテストを使用して統計的に有意であると判断された。降伏強度の予測モデルは式3に示されている。
[式3]EL(%)=10^(1.149+0.211*Fe(重量%)-0.514*Si(重量%)+0.076*Mo(重量%))
【0064】
高強度Ti合金用途の場合、候補合金は23°Cで15.0%以上の塑性伸長率を有することが望ましい。
【0065】
表1に示す合金の23°Cにおける面積減少率(%RA)を、市販の統計解析パッケージ(MiniTab V20.2)を用いて多重線形回帰統計モデルに入力した。なお、統計解析は、対数正規分布データに対する標準的な方法と同様に、面積値の%減少のLog(10)変換を使用して実行された(JChen、Z Wang et al., Int. J. Plast.152(2022)103260)。元素:Fe、Si、Moは、各元素の統計的有意性について95%を超える信頼水準でpテストを使用して統計的に有意であると判定された。降伏強度の予測モデルは式4に示されている。
[式4]RA(%)=10^(1.560+0.195*Fe(重量%)-0.663*Si(重量%)+0.139*Mo(重量%))
【0066】
高強度Ti合金用途の場合、候補合金は23°Cで面積減少率が45.0%以上であることが望ましい。
【0067】
特定の実施形態では、高強度Ti合金は、高強度(式1によれば、1000MPa0.2%YS以上)と高%塑性伸長(式3によれば、15.0%以上)の両方を有することが望ましい。
【0068】
比較合金(C-1~C-20)も、表2に示す化学組成に従って作製された。これらの比較合金は、表1の例示的な合金と同様にオープンダイ鍛造された。表2の合金は、ASTM E8/E8M に従って23°Cでそれぞれの特性が測定された。表2の結果に示されているように、これらの比較合金は、目的のチタン合金の仕様を満たしていなかった。
【0069】
比較合金(C-21~C-50)も表3Aに示す化学組成に従って作製され、比較合金(C-51~C-66)も表3Bに示す化学組成に従って作製された。表3Aおよび3Bの結果に示されているように、これらの比較合金は、所望のチタン合金の仕様を満たしていなかった。
【0070】
米国特許出願公開第2017/0268091号の合金データは、表4に比較合金(Comp-AからComp-M)として示されている。表4の合金はインゴットとして鋳造され、その後、典型的なオープンダイ鍛造ビレットプロセスに従わずに、アルファ/ベータ相領域で最終サイズまで押し出された。この押し出しプロセスでは、押し出しプロセスによって誘発されるテクスチャの違いにより、0.2%降伏強度、極限引張強度、塑性伸長%、および、面積減少%の組み合わせが異なり得る。このプロセスは、大規模な製造生産で使用され得るものとはまったく異なる。したがって、合金Comp-Gは目標の合金特性の一部を満たしているが、表1の例示的合金で使用されるオープンダイフォージプロセスに従って処理される合金としては、予測される伸長は低くなる。したがって、合金Comp-Gは、大規模プロセス中に表4に示されているよりも伸長の少ない合金になると考えられる。合金Comp-Jは目標の合金特性の一部を満たしているが、銅が含まれているため、合金Comp-Jを大規模に使用するには問題がある。つまり、銅が存在すると、大口径インゴットの凝固中に深刻な偏析が発生し、大規模な生産化学および微細構造制御の問題につながる。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3A】
【0074】
【表3B】
【0075】
【表4】
【0076】
さらなる側面は、以下の条項の主題によって提供される。
【0077】
チタン合金を含むタービン部品であって、チタン合金は、5.50重量%~6.90重量%のアルミニウム、3.50重量%~4.50重量%のバナジウム、0.01重量%~0.03重量%の炭素、0.20重量%~0.70重量%の鉄、1.00重量%~1.50重量%のモリブデン、0.10重量%~0.30重量%のシリコン、最大0.21重量%の酸素、最大0.016重量%の窒素(例えば、最大0.015重量%の窒素)、および、残りのチタンを含み、チタン合金は銅を実質的に含まない。
【0078】
チタン合金を含むタービン部品であって、チタン合金は、5.50重量%~6.90重量%のアルミニウム、3.50重量%~4.50重量%のバナジウム、0.01重量%~0.03重量%の炭素、0.20重量%~0.70重量%の鉄、1.00重量%~1.50重量%のモリブデン、0.10重量%~0.30重量%のシリコン、最大0.21重量%の酸素、最大0.016重量%の窒素(例えば、最大0.015重量%の窒素)、および、残りのチタンを含む、タービン部品であり、Al、O、Fe、Si、Moは、式:469.3+48.8*Al(重量%)+748*O(重量%)+96.1*Fe(重量%)+188*Si(重量%)+57.7*Mo(重量%)に従って予測される23°Cの0.2%降伏強度が1000MPa以上となる量で存在し、および/または、Fe、Si、Moは、式:10^(1.149+0.211*Fe(重量%)-0.514*Si(重量%)+0.076*Mo(重量%))に従って予測23°Cの塑性伸長%が15.0%以上となる量で存在する。
【0079】
前記チタン合金には銅が実質的に含まれていない、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0080】
前記チタン合金の0.2%降伏強度が1000MPa以上である、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0081】
前記チタン合金の0.2%降伏強度が1000MPa~1380MPaである、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0082】
前記チタン合金の極限引張強度が1060MPa以上である、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0083】
前記チタン合金の極限引張強度が1060MPa~1450MPaである、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0084】
前記チタン合金の塑性伸長が15.0%以上である、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0085】
前記チタン合金の塑性伸長が15.0%~30.0%である、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0086】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、前記チタン合金は、3.048mm以下の亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有する。
【0087】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、前記チタン合金は、0mm~3.048mmの亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有する。
【0088】
前記タービン部品は、前記タービン部品の面積減少率が45%RA以上である、請求項1に記載のタービン部品。
【0089】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、前記タービン部品の面積減少率が45%RA~75%RAであるタービン部品。
【0090】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、チタン合金の0.2%降伏強度が1000MPa以上で、極限引張強度が1060MPa以上で、塑性伸長が15.0%以上で、および、面積減少率が45%RA以上であるタービン部品。
【0091】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、チタン合金の0.2%降伏強度が1000MPa~1380MPaで、極限引張強度が1060MPa~1450MPaで、延性が15.0%~30.0%で、および、面積減少率が45%RA~75%RAであるタービン部品。
【0092】
前記チタン合金が実質的にクロムを含まない、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0093】
前記チタン合金が実質的にスズを含まない、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0094】
前記チタン合金がニッケルを実質的に含まない、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0095】
前記チタン合金がジルコニウムを実質的に含まない、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0096】
前記チタン合金がタングステンを実質的に含まない、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0097】
前記チタン合金には、実質的に他の元素が含まれない、前記いずれかの前項に記載のタービン部品。
【0098】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、Al、O、Fe、Si、Moが、式:469.3+48.8*Al(重量%)+748*O(重量%)+96.1*Fe(重量%)+188*Si(重量%)+57.7*Mo(重量%)に従って予測される23°Cの0.2%降伏強度が1000MPa以上となる量で存在するタービン部品。
【0099】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、Fe、Si、Moが、式:10^(1.149+0.211*Fe(重量%)-0.514*Si(重量%)+0.076*Mo(重量%))に従って予測される23°Cの塑性伸長%が15.0%以上となる量で存在するタービン部品。
【0100】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、Al、O、Fe、Si、Moが、式:469.3+48.8*Al(重量%)+748*O(重量%)+96.1*Fe(重量%)+188*Si(重量%)+57.7*Mo(重量%)に従って予測される23°Cの0.2%降伏強度が1000MPa以上となる量で存在する、タービン部品であり、Fe、Si、Moが、式10^(1.149+0.211*Fe(重量%)-0.514*Si(重量%)+0.076*Mo(重量%))に従って、予測される23°Cの塑性伸長%が15.0%以上となる量で存在する。
【0101】
前記チタン合金が3.80重量%~4.43重量%のバナジウムを含む、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0102】
前記チタン合金が0.45重量%~0.57重量%の鉄を含む、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0103】
前記チタン合金が0.14重量%~0.28重量%のシリコンを含む、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0104】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、チタン合金は、本質的に、5.50重量%~6.90重量%のアルミニウム、3.50重量%~4.50重量%のバナジウム、0.01重量%~0.03重量%の炭素、0.20重量%~0.70重量%の鉄、1.00重量%~1.50重量%のモリブデン、0.10重量%~0.30重量%のシリコン、最大0.21重量%の酸素、最大0.016重量%の窒素(例えば、最大0.015重量%の窒素)、および、残りのチタンから構成される。
【0105】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、チタン合金は、5.50~6.90重量%のアルミニウム、3.50~4.50重量%のバナジウム、0.01~0.03重量%の炭素、0.20~0.70重量%の鉄、1.00~1.50重量%のモリブデン、0.10~0.30重量%のシリコン、最大0.21重量%の酸素、最大0.016重量%の窒素(例えば、最大0.015重量%の窒素)、および、残りのチタンで構成されている。
【0106】
チタン合金からなるタービン部品であって、チタン合金は、本質的に、5.50重量%~6.90重量%のアルミニウム、3.50重量%~4.50重量%のバナジウム、0.01重量%~0.03重量%の炭素、0.20重量%~0.70重量%の鉄、1.00重量%~1.50重量%のモリブデン、0.10重量%~0.30重量%のシリコン、最大0.21重量%の酸素、最大0.016重量%の窒素(例えば、最大0.015重量%の窒素)、および残部のチタンから構成される。
【0107】
チタン合金からなるタービン部品であって、チタン合金は、5.50~6.90重量%のアルミニウム、3.50~4.50重量%のバナジウム、0.01~0.03重量%の炭素、0.20~0.70重量%の鉄、1.00~1.50重量%のモリブデン、0.10~0.30重量%のシリコン、最大0.21重量%の酸素、最大0.016重量%の窒素(例えば、最大0.015重量%の窒素)、および、残りのチタンで構成されている。
【0108】
前記チタン合金の0.2%降伏強度が1000MPa以上である、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0109】
前記チタン合金の0.2%降伏強度が1000MPa~1380MPaである、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0110】
前記チタン合金の極限引張強度が1060MPa以上である、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0111】
前記チタン合金の極限引張強度が1060MPa~1450MPaである、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0112】
前記チタン合金の塑性伸長が15.0%以上である、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0113】
前記チタン合金の塑性伸長が15.0%~30.0%である、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0114】
前記チタン合金は、3.048mm以下の亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有する、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0115】
前記チタン合金は、0mm~3.048mmの亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有する、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0116】
前記タービン部品は、前記タービン部品の面積減少率が45%RA以上である、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0117】
前記タービン部品は、前記タービン部品の面積減少率が45%RA~75%RAである、前記いずれかの条項に記載のタービン部品。
【0118】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、チタン合金の0.2%降伏強度が1000MPa以上で、極限引張強度が1060MPa以上で、塑性伸長が15.0%以上で、3.048mm以下の亀裂長さで、および、面積減少率が45%RA以上であるタービン部品。
【0119】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品であって、チタン合金の0.2%降伏強度が1000MPa~1380MPaで、極限引張強度が1060MPa~1450MPaで、延性が15.0%~30.0%で、0~3.048mmの亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性で、面積減少率が45%RA~75%RAであるタービン部品。
【0120】
前記いずれかの条項に記載のタービン部品を形成する方法。
【0121】
タービン部品を形成する方法であって、チタン合金をタービン部品に鍛造するステップを含み、チタン合金は、アルミニウム5.50重量%~6.90重量%のアルミニウム、3.50重量%~4.50重量%のバナジウム、0.01重量%~0.03重量%の炭素、0.20重量%~0.70重量%の鉄、1.00重量%~1.50重量%のモリブデン、0.10重量%~0.30重量%のシリコン、最大0.21重量%の酸素、最大0.016重量%の窒素(例えば、最大0.015重量%の窒素)、および、残りのチタンからなり、チタン合金には銅が実質的に含まれない、タービン部品を形成する方法。
【0122】
タービン部品を形成する方法であって、チタン合金をタービン部品に鍛造するステップを含み、チタン合金は、5.50重量%~6.90重量%のアルミニウム、3.50重量%~4.50重量%のバナジウム、0.01重量%~0.03重量%の炭素、0.20重量%~0.70重量%の鉄、1.00重量%~1.50重量%のモリブデン、0.10重量%~0.30重量%のシリコン、最大0.21重量%の酸素、最大0.016重量%の窒素(例えば、最大0.015重量%の窒素)、および、残りのチタンを含み、Al、O、Fe、Si、Moは、式:469.3+48.8*Al(重量%)+748*O(重量%)+96.1*Fe(重量%)+188*Si(重量%)+57.7*Mo(重量%)に従って予測される23°Cの0.2%降伏強度が1000MPa以上となる量で存在し、および/または、Fe、Si、Moは、式:10^(1.149+0.211*Fe(重量%)-0.514*Si(重量%)+0.076*Mo(重量%))に従って予測される23°Cの塑性伸長が15.0%以上となる量で存在する、タービン部品を形成する方法。
【0123】
チタン合金をタービン部品に鍛造することは、チタン合金のベータトランザス温度未満の鍛造温度でチタン合金を鍛造することを含む、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0124】
チタン合金を熱処理することを含む、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0125】
チタン合金のベータトランザス温度未満の熱処理温度でチタン合金を熱溶融処理することを含む、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0126】
熱処理温度が鍛造温度を超え、チタン合金が熱処理温度で少なくとも1時間保持される、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0127】
チタン合金を熱処理した後、チタン合金を冷却してタービン部品を形成することを含む、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0128】
チタン合金の冷却は、熱処理温度から208°C/分の冷却速度で行われる、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0129】
熱溶融処理および冷却の後に、チタン合金を538°C~760°Cの過熱処理温度に少なくとも1.5時間加熱する工程を含む、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0130】
チタン合金の0.2%降伏強度が1000MPa以上である、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0131】
チタン合金の極限引張強度が1060MPa以上である、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0132】
チタン合金の塑性伸長が15.0%以上である、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0133】
チタン合金は、亀裂長さで測定された弾道衝撃耐性が3.048mm以下である、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0134】
チタン合金の面積減少率が45%以上である、前記いずれかの条項に記載の方法。
【0135】
前記いずれかの条項の方法に従って形成されたチタン合金。
【0136】
この明細書では、最良の形態を含む本開示を開示するために例を使用するとともに、当業者が任意のデバイスまたはシステムの作成および使用、組み込まれた任意の方法の実行を含む本開示を実施できるようにしている。開示された特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者が思いつく他の例も含み得る。そのような他の例は、請求項の文言と変わらない構造要素を含む場合、または請求項の文言と実質的な違いがない同等の構造要素を含む場合、請求項の範囲内にあるものとみなされる。
【符号の説明】
【0137】
10 ターボファンエンジン
12 回転軸
14 吸気側
16 排気側
18 コアガスタービンエンジン
20 高圧コンプレッサ
22 燃焼器、コアガスタービンエンジン
23 予測
24 高圧タービン
26 低圧タービン
28 ファンアセンブリ
30 ファンブレード
32 ローターハブ
34 第1のローターシャフト
36 第2のローターシャフト
50 ブレードディスク
52 ハブ
60 翼形部(airfoil)
70 熱影響ゾーン
80 前段ブレードディスク
90 後段ブレードディスク
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン合金からなるタービン部品であって、
前記チタン合金は、
5.50重量%~6.90重量%のアルミニウムと、
3.50重量%~4.50重量%のバナジウムと、
0.01重量%~0.03重量%の炭素と、
0.20重量%~0.70重量%の鉄と、
1.00重量%~1.50重量%のモリブデンと、
0.10重量%~0.30重量%のシリコンと、
0.21重量%までの酸素と、
0.016重量%までの窒素と、
残りのチタンと、
で構成され、
Al、O、Fe、Si、Moは、式:469.3+48.8*Al(重量%)+748*O(重量%)+96.1*Fe(重量%)+188*Si(重量%)+57.7*Mo(重量%)に従って予測される23°Cの0.2%降伏強度が1000MPa以下となる量で存在し、或いは、
Fe、Si、Moは、式:10^(1.149+0.211*Fe(重量%)-0.514*Si(重量%)+0.076*Mo(重量%))に従って予測される23°Cの塑性伸長が15.0%以上となる量で存在する、タービン部品。
【請求項2】
前記チタン合金には銅が実質的に含まれない、請求項1に記載のタービン部品。
【請求項3】
前記チタン合金は、0.2%降伏強度が1000MPa~1380MPaの0.2%降伏強度を有し、15.0%~30.0%の塑性伸長を有している、請求項1または2に記載のタービン部品。
【請求項4】
前記チタン合金は、1060MPa~1450MPaの極限引張強度を有している、請求項1~のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項5】
前記チタン合金は、15.0%~30.0%の塑性伸長を有している、請求項1~のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項6】
前記チタン合金は、3.048mm以下の亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有している、請求項1~のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項7】
前記チタン合金は、0mm~3.048mmの亀裂長さで測定される弾道衝撃耐性を有している、請求項1~のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項8】
当該タービン部品の面積減少率が45%RA~75%RAである、請求項1~のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項9】
前記チタン合金には実質的にクロム、スズ、ニッケル、ジルコニウム、タングステンが含まれていない、請求項1~のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項10】
前記チタン合金には実質的に他の元素が含まれていない、請求項1~のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項11】
前記チタン合金は、3.80重量%~4.43重量%のバナジウムを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項12】
前記チタン合金は、0.45重量%~0.57重量%の鉄を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項13】
前記チタン合金は、0.14重量%~0.28重量%のシリコンを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項14】
前記チタン合金は、
5.50重量%~6.90重量%のアルミニウムと、
3.50重量%~4.50重量%のバナジウムと、
0.01重量%~0.03重量%の炭素と、
0.20重量%~0.70重量%の鉄と、
1.00重量%~1.50重量%のモリブデンと、
0.10重量%~0.30重量%のシリコンと、
0.21重量%までの酸素と、
0.016重量%までの窒素と、
残りのチタンと、
で基本的に構成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載のタービン部品。
【請求項15】
タービン部品を形成する方法であって、当該方法は、タービン部品に請求項1~14のいずれか一項に記載のチタン合金を鍛造するステップを含、方法。
【外国語明細書】