(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177135
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】水改質効果の評価方法及び評価装置、並びに、水改質効果有無の判定方法及び判定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/18 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G01N33/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024092470
(22)【出願日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2023093721
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】322004005
【氏名又は名称】ティーケイケイホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田尻 惠保
(72)【発明者】
【氏名】盛田 元彰
(57)【要約】
【課題】水改質処理の効果の程度を評価したり、水改質処理の効果の有無を予め判定したりする。
【解決手段】水改質効果の評価方法が、改質対象水に対して水改質処理が施されていない未処理水と改質対象水に対して水改質処理が施された処理水とのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理(ステップS1-4)と、スケール成分の粒子が投入された未処理水と処理水とのそれぞれを濃縮する処理(ステップS1-5)と、スケール成分の粒子が投入された未処理水と処理水とのそれぞれについてゼータ電位を測定する処理(ステップS1-6)と、処理水のゼータ電位と未処理水のゼータ電位との差の絶対値を算出する処理(ステップS1-7)と、算出した差に基づいて改質対象水に対する水改質処理の効果の程度を評価する処理(ステップS1-8)と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質対象水に対して水改質処理が施されていない未処理水と前記改質対象水に対して前記水改質処理が施された処理水とのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理と、
前記スケール成分の粒子が投入された前記未処理水と前記処理水とのそれぞれについてゼータ電位を測定する処理と、
前記処理水の前記ゼータ電位と前記未処理水の前記ゼータ電位との差の絶対値を算出する処理と、
算出した前記差に基づいて前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果の程度を評価する処理と、を含み、
前記スケール成分の粒子が、水酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとのうちの少なくとも一方である、
ことを特徴とする水改質効果の評価方法。
【請求項2】
前記改質対象水が、スケール生成の影響を受ける機器又は設備で使用される水である、
ことを特徴とする請求項1に記載の水改質効果の評価方法。
【請求項3】
前記改質対象水が、水道水、地下水、河川水のうちの少なくとも1つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の水改質効果の評価方法。
【請求項4】
前記処理水が、冷却塔と、前記冷却塔の下部に設けられた水槽と、前記水槽に補給水を注水する補給水注水管と、前記水槽から冷却先へと冷却水を供給する冷却水供給管と、前記冷却先から前記冷却塔へと冷却水を回収する冷却水回収管と、を備える冷却装置における、人工鉱石を用いて前記水槽内の水を改質する第1改質ステップと、人工鉱石を用いて前記補給水を改質する第2改質ステップと、を含む水改質処理が施された水である、
ことを特徴とする請求項1に記載の水改質効果の評価方法。
【請求項5】
改質対象水に対して水改質処理が施されていない未処理水と前記改質対象水に対して前記水改質処理が施された処理水とのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理と、
前記スケール成分の粒子が投入された前記未処理水と前記処理水とのそれぞれについてゼータ電位を時系列で測定する処理と、
測定した前記処理水の前記ゼータ電位の値の経時変化と前記未処理水の前記ゼータ電位の値の経時変化とに基づいて、前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果の継続時間と、前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果が安定した状態における当該効果の程度と、のうちの少なくとも一方を評価する処理と、を含む、
ことを特徴とする水改質効果の評価方法。
【請求項6】
改質対象水に対して水改質処理が施された処理水にスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理と、
前記スケール成分の粒子が投入された前記処理水についてゼータ電位を時系列で測定する処理と、
測定した前記処理水の前記ゼータ電位の値の経時変化に基づいて前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果の程度を評価する処理と、を含む、
ことを特徴とする水改質効果の評価方法。
【請求項7】
改質対象水に対して水改質処理が施されていない未処理水と前記改質対象水に対して前記水改質処理が施された処理水とのそれぞれにスケール成分の粒子が投入されて撹拌されたうえで、前記スケール成分の粒子が投入された前記未処理水と前記処理水とのそれぞれについて測定されたゼータ電位の値の入力を受け付ける第1手段と、
前記処理水の前記ゼータ電位の値と前記未処理水の前記ゼータ電位の値との差の絶対値を算出する第2手段と、
算出された前記差に基づいて前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果の程度を評価する第3手段と、を有し、
前記スケール成分の粒子が、水酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとのうちの少なくとも一方である、
ことを特徴とする水改質効果の評価装置。
【請求項8】
前記改質対象水が、スケール生成の影響を受ける機器又は設備で使用される水である、
ことを特徴とする請求項7に記載の水改質効果の評価装置。
【請求項9】
前記改質対象水が、水道水、地下水、河川水のうちの少なくとも1つである、
ことを特徴とする請求項7に記載の水改質効果の評価装置。
【請求項10】
複数の試料水ごとに前記試料水に対して水改質処理が施されていない未処理試料水について硬度及び特性指標を測定する処理と、
複数の前記試料水ごとに前記未処理試料水と前記試料水に対して前記水改質処理が施された処理試料水とのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理と、
前記スケール成分の粒子が投入された複数の前記試料水ごとに前記未処理試料水と前記処理試料水とのそれぞれについてゼータ電位を測定する処理と、
複数の前記試料水ごとに前記処理試料水の前記ゼータ電位と前記未処理試料水の前記ゼータ電位との差の絶対値を算出する処理と、
複数の前記試料水ごとに算出した前記差に基づいて前記試料水に対する前記水改質処理の効果の程度を評価する処理と、
複数の前記試料水ごとの前記未処理試料水それぞれについての前記硬度の値と前記特性指標の値との組合せの集合を前記評価の結果に基づいて前記水改質処理の効果が有る群と前記水改質処理の効果が無い群とに分類する処理と、
改質対象水の硬度の値と特性指標の値との組合せが前記分類による前記水改質処理の効果が有る群と前記水改質処理の効果が無い群とのうちのどちらに属するかを判断する処理と、を含み、
前記スケール成分の粒子が、水酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとのうちの少なくとも一方である、
ことを特徴とする水改質効果有無の判定方法。
【請求項11】
前記試料水及び前記改質対象水が、スケール生成の影響を受ける機器又は設備で使用される水である、
ことを特徴とする請求項10に記載の水改質効果有無の判定方法。
【請求項12】
前記試料水及び前記改質対象水が、水道水、地下水、河川水のうちの少なくとも1つである、
ことを特徴とする請求項10に記載の水改質効果有無の判定方法。
【請求項13】
前記処理試料水が、冷却塔と、前記冷却塔の下部に設けられた水槽と、前記水槽に補給水を注水する補給水注水管と、前記水槽から冷却先へと冷却水を供給する冷却水供給管と、前記冷却先から前記冷却塔へと冷却水を回収する冷却水回収管と、を備える冷却装置における、人工鉱石を用いて前記水槽内の水を改質する第1改質ステップと、人工鉱石を用いて前記補給水を改質する第2改質ステップと、を含む水改質処理が施された水である、
ことを特徴とする請求項10に記載の水改質効果有無の判定方法。
【請求項14】
複数の試料水ごとに前記試料水に対して水改質処理が施されていない未処理試料水について測定された硬度の値及び特性指標の値の入力を受け付けるとともに、複数の前記試料水ごとに前記未処理試料水と前記試料水に対して前記水改質処理が施された処理試料水とのそれぞれにスケール成分の粒子が投入されて撹拌されたうえで、前記スケール成分の粒子が投入された複数の前記試料水ごとに前記未処理試料水と前記処理試料水とのそれぞれについて測定されたゼータ電位の値の入力を受け付け、さらに、改質対象水について測定された硬度の値及び特性指標の値の入力を受け付ける第4手段と、
複数の前記試料水ごとに前記処理試料水の前記ゼータ電位の値と前記未処理試料水の前記ゼータ電位の値との差の絶対値を算出する第5手段と、
複数の前記試料水ごとに算出された前記差に基づいて前記試料水に対する前記水改質処理の効果の程度を評価する第6手段と、
複数の前記試料水ごとの前記未処理試料水それぞれについての前記硬度の値と前記特性指標の値との組合せの集合を前記評価の結果に基づいて前記水改質処理の効果が有る群と前記水改質処理の効果が無い群とに分類する第7手段と、
前記改質対象水の前記硬度の値と前記特性指標の値との組合せが前記分類による前記水改質処理の効果が有る群と前記水改質処理の効果が無い群とのうちのどちらに属するかを判断する第8手段と、を有し、
前記スケール成分の粒子が、水酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとのうちの少なくとも一方である、
ことを特徴とする水改質効果有無の判定装置。
【請求項15】
前記試料水及び前記改質対象水が、スケール生成の影響を受ける機器又は設備で使用される水である、
ことを特徴とする請求項14に記載の水改質効果有無の判定装置。
【請求項16】
前記試料水及び前記改質対象水が、水道水、地下水、河川水のうちの少なくとも1つである、
ことを特徴とする請求項14に記載の水改質効果有無の判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水改質効果の評価方法及び評価装置、並びに、水改質効果有無の判定方法及び判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水質を改善する従来の技術として、銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維であって、表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維と、金属繊維を充填した充填容器であって、多数の通水孔が形成された充填容器と、を備え、水に含まれるシリカやスケールの成分を除去する水質改善装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水質の改善を行った場合には、水質の改善前に対する水質の改善の程度を客観的に評価することができることが望まれる。
【0005】
また、水質の改善を行う際には、水質を改善するために適用しようとしている水改質の方法・手法によって水質改善対象の水が改善され得るのか否か、言い換えると、水質を改善するために適用しようとしている水改質の方法・手法が水質改善対象の水を改善するのに適切で有効な方法・手法であるのか否かを予め客観的に判定することができることが望まれる。
【0006】
そこで本発明は、1つの側面では、水改質処理の効果の程度を評価することが可能な技術を提供することを目的とする。本発明は、また、水改質処理の効果の有無を予め判定することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る水改質効果の評価方法は、改質対象水に対して水改質処理が施されていない未処理水と前記改質対象水に対して前記水改質処理が施された処理水とのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理と、前記スケール成分の粒子が投入された前記未処理水と前記処理水とのそれぞれについてゼータ電位を測定する処理と、前記処理水の前記ゼータ電位と前記未処理水の前記ゼータ電位との差の絶対値を算出する処理と、算出した前記差に基づいて前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果の程度を評価する処理と、を含み、前記スケール成分の粒子が、水酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとのうちの少なくとも一方である、ようにしてもよい。
【0008】
本発明に係る水改質効果の評価方法は、前記改質対象水が、スケール生成の影響を受ける機器又は設備で使用される水である、ようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る水改質効果の評価方法は、前記改質対象水が、水道水、地下水、河川水のうちの少なくとも1つである、ようにしてもよい。
【0010】
本発明に係る水改質効果の評価方法は、前記処理水が、冷却塔と、前記冷却塔の下部に設けられた水槽と、前記水槽に補給水を注水する補給水注水管と、前記水槽から冷却先へと冷却水を供給する冷却水供給管と、前記冷却先から前記冷却塔へと冷却水を回収する冷却水回収管と、を備える冷却装置における、人工鉱石を用いて前記水槽内の水を改質する第1改質ステップと、人工鉱石を用いて前記補給水を改質する第2改質ステップと、を含む水改質処理が施された水である、ようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る水改質効果の評価方法は、改質対象水に対して水改質処理が施されていない未処理水と前記改質対象水に対して前記水改質処理が施された処理水とのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理と、前記スケール成分の粒子が投入された前記未処理水と前記処理水とのそれぞれについてゼータ電位を時系列で測定する処理と、測定した前記処理水の前記ゼータ電位の値の経時変化と前記未処理水の前記ゼータ電位の値の経時変化とに基づいて、前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果の継続時間と、前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果が安定した状態における当該効果の程度と、のうちの少なくとも一方を評価する処理と、を含む、ようにしてもよい。
【0012】
本発明に係る水改質効果の評価方法は、改質対象水に対して水改質処理が施された処理水にスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理と、前記スケール成分の粒子が投入された前記処理水についてゼータ電位を時系列で測定する処理と、測定した前記処理水の前記ゼータ電位の値の経時変化に基づいて前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果の程度を評価する処理と、を含む、ようにしてもよい。
【0013】
また、本発明に係る水改質効果の評価装置は、改質対象水に対して水改質処理が施されていない未処理水と前記改質対象水に対して前記水改質処理が施された処理水とのそれぞれにスケール成分の粒子が投入されて撹拌されたうえで、前記スケール成分の粒子が投入された前記未処理水と前記処理水とのそれぞれについて測定されたゼータ電位の値の入力を受け付ける第1手段と、前記処理水の前記ゼータ電位の値と前記未処理水の前記ゼータ電位の値との差の絶対値を算出する第2手段と、算出された前記差に基づいて前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果の程度を評価する第3手段と、を有し、前記スケール成分の粒子が、水酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとのうちの少なくとも一方である、ようにしてもよい。
【0014】
本発明に係る水改質効果の評価装置は、前記改質対象水が、スケール生成の影響を受ける機器又は設備で使用される水である、ようにしてもよい。
【0015】
本発明に係る水改質効果の評価装置は、前記改質対象水が、水道水、地下水、河川水のうちの少なくとも1つである、ようにしてもよい。
【0016】
また、本発明に係る水改質効果有無の判定方法は、複数の試料水ごとに前記試料水に対して水改質処理が施されていない未処理試料水について硬度及び特性指標を測定する処理と、複数の前記試料水ごとに前記未処理試料水と前記試料水に対して前記水改質処理が施された処理試料水とのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理と、前記スケール成分の粒子が投入された複数の前記試料水ごとに前記未処理試料水と前記処理試料水とのそれぞれについてゼータ電位を測定する処理と、複数の前記試料水ごとに前記処理試料水の前記ゼータ電位と前記未処理試料水の前記ゼータ電位との差の絶対値を算出する処理と、複数の前記試料水ごとに算出した前記差に基づいて前記試料水に対する前記水改質処理の効果の程度を評価する処理と、複数の前記試料水ごとの前記未処理試料水それぞれについての前記硬度の値と前記特性指標の値との組合せの集合を前記評価の結果に基づいて前記水改質処理の効果が有る群と前記水改質処理の効果が無い群とに分類する処理と、改質対象水の硬度の値と特性指標の値との組合せが前記分類による前記水改質処理の効果が有る群と前記水改質処理の効果が無い群とのうちのどちらに属するかを判断する処理と、を含み、前記スケール成分の粒子が、水酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとのうちの少なくとも一方である、ようにしてもよい。
【0017】
本発明に係る水改質効果有無の判定方法は、前記試料水及び前記改質対象水が、スケール生成の影響を受ける機器又は設備で使用される水である、ようにしてもよい。
【0018】
本発明に係る水改質効果有無の判定方法は、前記試料水及び前記改質対象水が、水道水、地下水、河川水のうちの少なくとも1つである、ようにしてもよい。
【0019】
本発明に係る水改質効果有無の判定方法は、前記処理試料水が、冷却塔と、前記冷却塔の下部に設けられた水槽と、前記水槽に補給水を注水する補給水注水管と、前記水槽から冷却先へと冷却水を供給する冷却水供給管と、前記冷却先から前記冷却塔へと冷却水を回収する冷却水回収管と、を備える冷却装置における、人工鉱石を用いて前記水槽内の水を改質する第1改質ステップと、人工鉱石を用いて前記補給水を改質する第2改質ステップと、を含む水改質処理が施された水である、ようにしてもよい。
【0020】
また、本発明に係る水改質効果有無の判定装置は、複数の試料水ごとに前記試料水に対して水改質処理が施されていない未処理試料水について測定された硬度の値及び特性指標の値の入力を受け付けるとともに、複数の前記試料水ごとに前記未処理試料水と前記試料水に対して前記水改質処理が施された処理試料水とのそれぞれにスケール成分の粒子が投入されて撹拌されたうえで、前記スケール成分の粒子が投入された複数の前記試料水ごとに前記未処理試料水と前記処理試料水とのそれぞれについて測定されたゼータ電位の値の入力を受け付け、さらに、改質対象水について測定された硬度の値及び特性指標の値の入力を受け付ける第4手段と、複数の前記試料水ごとに前記処理試料水の前記ゼータ電位の値と前記未処理試料水の前記ゼータ電位の値との差の絶対値を算出する第5手段と、複数の前記試料水ごとに算出された前記差に基づいて前記試料水に対する前記水改質処理の効果の程度を評価する第6手段と、複数の前記試料水ごとの前記未処理試料水それぞれについての前記硬度の値と前記特性指標の値との組合せの集合を前記評価の結果に基づいて前記水改質処理の効果が有る群と前記水改質処理の効果が無い群とに分類する第7手段と、前記改質対象水の前記硬度の値と前記特性指標の値との組合せが前記分類による前記水改質処理の効果が有る群と前記水改質処理の効果が無い群とのうちのどちらに属するかを判断する第8手段と、を有し、前記スケール成分の粒子が、水酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとのうちの少なくとも一方である、ようにしてもよい。
【0021】
本発明に係る水改質効果有無の判定装置は、前記試料水及び前記改質対象水が、スケール生成の影響を受ける機器又は設備で使用される水である、ようにしてもよい。
【0022】
本発明に係る水改質効果有無の判定装置は、前記試料水及び前記改質対象水が、水道水、地下水、河川水のうちの少なくとも1つである、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、1つの側面では、水改質処理の効果の程度を評価することが可能となる。本発明によれば、また、水改質処理の効果の有無を予め判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態に係る水改質効果の評価方法の処理手順であり、本発明の実施の形態に係る水改質効果の評価装置における処理ステップを示すフロー図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る水改質効果の評価装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る水改質効果有無の判定方法の処理手順であり、本発明の実施の形態に係る水改質効果有無の判定装置における処理ステップを示すフロー図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る水改質効果有無の判定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5A】未処理試料水についての全硬度の値と電気伝導率の値との組合せデータごとの水改質処理の効果の有無の分布の例を示す図である。
【
図5B】
図3の水改質効果有無の判定方法によって作成される水改質効果有無の判別マップの例を示すイメージ図であり、
図5Aの水改質処理の効果の有無の分布の例に基づいて作成される水改質効果有無の判別マップの例を示すイメージ図である。
【
図6】水改質処理の適用有無別の、水道水の濃縮度と水道水に分散している粒子のゼータ電位との間の関係を示すプロット図である。
【
図7】水改質処理の適用有無別の、水道水の濃縮度と電気伝導率との間の関係を示すプロット図である。
【
図9A】セラミックスファンの一態様を示す正面図である。
【
図10】改質水及び非改質水について、pHの経時変化(「アルカリシフト」)を説明するグラフである。
【
図11】開栓前の給水管内における改質水中のスケールの剥離現象を説明する図である。
【
図12】開栓後における改質水中のスケールの剥離現象を説明する図である。
【
図13】非改質水中における二酸化ケイ素のゲル状被膜の断面図である。
【
図14】改質水中における二酸化ケイ素のゲル状被膜の断面図である。
【
図15】冷却水循環方法を適用した冷却水循環システムの一例を示すブロック図である。
【
図16】実験例3における水改質処理の適用有無別の、水道水の濃縮度と水道水に分散している粒子のゼータ電位との間の関係を示すプロット図である。
【
図17】実験例3における水改質処理の適用有無別の、水道水の濃縮度と電気伝導率との間の関係を示すプロット図である。
【
図18A】実験例4における水改質処理の適用有無別の、純水に分散している粒子のゼータ電位の経時変化を示すグラフである。
【
図18B】
図18Aのうちの測定回数が1回目から38回目までを拡大して示すグラフである。
【
図19】実験例5における水改質処理の適用有無別の、水道水に分散している粒子のゼータ電位の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0026】
(水改質効果の評価方法)
図1は、本発明に係る水改質効果の評価方法の具体的な構成態様の一例としての、実施の形態に係る水改質効果の評価方法の処理手順を示すフロー図であり、また、本発明に係る水改質効果の評価装置の具体的な構成態様の一例としての、実施の形態に係る水改質効果の評価装置90における処理ステップを示すフロー図である。
【0027】
本発明は、特にスケールの付着が問題となる機器や設備に注水される水に対する水改質処理の効果(具体的には例えば、スケールの抑制効果や剥離性向上効果)の程度の評価に用いられることが考えられ、具体的には例えば、水道水に対する水改質処理の効果の程度の評価に用いられることが考えられる。
【0028】
本発明の説明では、水改質の対象の水(言い換えると、水改質処理の適用が検討されたり予定されたりしている水)のことを「改質対象水」と称する。
【0029】
本発明の説明では、水改質処理が施されていない、水改質前の改質対象水のことを「未処理水」と称し、また、水改質処理が施された、水改質後の改質対象水のことを「処理水」と称する。処理水は、すなわち、当該の改質対象水に対して適用が検討されたり予定されたりしている水改質処理(尚、実機などによる実際の水改質処理を模擬した処理を含む)が施された改質対象水である。
【0030】
改質対象水は例えば水道水であり、この場合、未処理水は水道水のままの状態であり、また、処理水は当該の水道水に対して適用が検討されたり予定されたりしている水改質処理(尚、実機などによる実際の水改質処理を模擬した処理を含む)が施された水道水である。ただし、改質対象水は、水道水に限定されるものではなく、地下水(井水を含む)、河川水(工業用水として利用されるものを含む)、海水、蒸留水、及び純水など種々の水であってよく、また、複数種類の水が混合している水であってもよい。
【0031】
実施の形態に係る水改質効果の評価方法は、改質対象水に対して水改質処理が施されていない未処理水と改質対象水に対して水改質処理が施された処理水とのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理(ステップS1-4)と、スケール成分の粒子が投入された未処理水と処理水とのそれぞれを濃縮する処理(ステップS1-5)と、スケール成分の粒子が投入された未処理水と処理水とのそれぞれについてゼータ電位を測定する処理(ステップS1-6)と、処理水のゼータ電位と未処理水のゼータ電位との差の絶対値を算出する処理(ステップS1-7)と、算出した差に基づいて改質対象水に対する水改質処理の効果の程度を評価する処理(ステップS1-8)と、を含む、ようにしている。
【0032】
水改質効果の評価方法の実施にあたっては、まず、改質対象水を準備する(ステップS1-1)。
【0033】
具体的には例えば、改質対象水(尚、水改質処理が施されていないもの)を500mL入れたビーカーを2個準備する。
【0034】
続いて、改質対象水が入れられた2個のビーカーのうちの一方のビーカーに人工鉱石を投入する(ステップS1-2)。
【0035】
人工鉱石を投入していないほうのビーカーを「未処理水ビーカー」と称し、人工鉱石を投入したほうのビーカーを「処理水ビーカー」と称する。
【0036】
ステップS1-2の処理では、当該の改質対象水に対して適用が検討されたり予定されたりしている水改質処理で使用される人工鉱石が用いられる。ステップS1-2の処理において投入される人工鉱石は、ステップS1-1の処理においてビーカーに入れられた改質対象水の量に対して水改質処理の効果を発現し得ることが考慮されるなどして量(体積、重量)が調整される。
【0037】
続いて、改質対象水の水分が蒸発しないように未処理水ビーカーと処理水ビーカーとのそれぞれを密閉し、24時間以上静置する(ステップS1-3)。
【0038】
なお、ステップS1-3の処理では、処理水ビーカーに投入された人工鉱石による水改質処理の効果の発現に見込まれる時間(尚、投入された人工鉱石の量も考慮される)だけ未処理水ビーカー及び処理水ビーカーが静置されるようにすればよく、ステップS1-3の処理における静置の時間は、24時間以上に限定されるものではなく、24時間より短くてもよい。静置の時間は、具体的には例えば、人工鉱石の表面積(言い換えると、人工鉱石が釉薬として塗布された物体の表面積)と処理水ビーカー内の改質対象水の量(体積、重量)との関係が考慮されたうえで、処理水ビーカーに投入された人工鉱石(言い換えると、人工鉱石が釉薬として塗布された物体)による水改質処理の効果の発現に見込まれる時間として設定されてよい。
【0039】
未処理水ビーカー内の改質対象水は未処理水(のまま)であり、処理水ビーカー内の改質対象水はステップS1-3の処理によって処理水となる。すなわち、ステップS1-3の処理により、実機などによる実際の水改質処理を模擬した処理が施された水が準備される。
【0040】
なお、ステップS1-3の処理において投入された人工鉱石は、ステップS1-3の処理として処理水ビーカーが所定時間だけ静置された後に取り出されてもよいし、処理水ビーカーから取り出されることなくステップS1-4以降の処理が行われるようにしてもよい。
【0041】
また、ステップS1-1の処理として、水改質処理が施されていない改質対象水が未処理水ビーカーとして準備されるとともに、実機などによって実際の水改質処理が施された改質対象水が処理水ビーカーとして準備されるようにしてもよい。この場合は、ステップS1-2及びステップS1-3の処理は行われない。
【0042】
次に、未処理水ビーカーと処理水ビーカーとのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する(ステップS1-4)。
【0043】
スケール成分の粒子として、例えば、炭酸塩スケールやケイ酸塩スケールが挙げられる。スケール成分の粒子として、具体的には例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)、二酸化ケイ素(SiO2)(シリカ、シリケート)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム(マグネシウムシリケート)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、酸化マグネシウム(MgO)、及び鉄さび(ヘマタイト、マグネタイト)が挙げられる。スケール成分の粒子として、単一種類の粒子が投入されてもよいし、複数種類の粒子が投入されてもよい。
【0044】
スケール成分の粒子として、0.3nm以上かつ10μm以下の粒径の粒子を、0.5%以上含む粉末が用いられることが好ましく、3%以上含む粉末が用いられることがより好ましく、5%以上含む粉末が用いられることがさらに好ましい。スケール成分の粒子として、一層好ましくは、1μm以上かつ3μm以下の粒子を、0.5%以上含む粉末が用いられることが好ましく、3%以上含む粉末が用いられることがより好ましく、5%以上含む粉末が用いられることがさらに好ましい。スケール成分の粒子として、さらに一層好ましくは、2μm程度以下の粒子を、0.5%以上含む粉末が用いられることが好ましく、3%以上含む粉末が用いられることがより好ましく、5%以上含む粉末が用いられることがさらに好ましい。スケール成分の粒子の粒径は、平均粒径、球相当径、メディアン径、及びモード径のうちのいずれかでよく、或いは、ストークス径でもよい。
【0045】
スケール成分の粒子は、例えば、0.01~10g/L程度の濃度で投入されてよく、1~5g/L程度の濃度で投入されることが好ましく、1~3g/L程度の濃度で投入されることがより好ましく、2g/L程度の濃度で投入されることがさらに好ましい。スケール成分の粒子が投入された後の撹拌は、撹拌用の機器が用いられて行われてもよく、ガラス棒などの撹拌用具が用いられて行われてもよい。
【0046】
スケール成分の粒子が投入された未処理水のことを「粒子添加未処理水」と称し、また、スケール成分の粒子が投入された処理水のことを「粒子添加処理水」と称する。
【0047】
次に、改質対象水(具体的には、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれ)の水分を蒸発させて改質対象水を濃縮する(ステップS1-5)。
【0048】
改質対象水(具体的には、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれ)の水分の蒸発(延いては、改質対象水の濃縮)は、未処理水ビーカーと処理水ビーカーとのそれぞれを密閉せずに開放した状態で、例えば、20℃程度に設定された恒温槽に入れることによって行われるようにしてもよく、或いは、揮発させることによって行われるようにしてもよい。
【0049】
改質対象水(具体的には、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれ)の水分の蒸発は、濃縮度が1.1~3.0倍程度になるように行われることが好ましく、1.3~3.0倍程度になるように行われることがより好ましく、1.6~3.0倍程度になるように行われることが更に好ましい。なお、蒸発前においてV〔mL〕の改質対象水をV/x〔mL〕になるまで水分を蒸発させたときの濃縮度がx倍である。
【0050】
次に、蒸発処理後(即ち、ステップS1-5の処理後)の改質対象水(具体的には、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれ)に分散している粒子のゼータ電位を測定する(ステップS1-6)。
【0051】
ゼータ電位は、水中に存在する微粒子表面の帯電状態を表す指標であり、0mV付近であるときは粒子どうしが互いに反発しないために水中で凝集し易いことを示し、マイナス側若しくはプラス側に大きく振れているときは粒子どうしが互いに反発するために水中で分散が容易であることを示す。
【0052】
ゼータ電位の測定は、蒸発処理後の1つの改質対象水(具体的には、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれ)について、1回でもよいものの、複数回行われることが好ましい。すなわち、蒸発処理後の1つの改質対象水(具体的には、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれ)についてゼータ電位の測定を複数回(好ましくは3回以上)行い、複数回の測定結果の平均値を当該の蒸発処理後の改質対象水(具体的には、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれ)のゼータ電位とすることが好ましい。
【0053】
ゼータ電位の測定は、改質対象水(具体的には、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれ)の水温が当該の改質対象水の実際の使用状態において想定される水温程度に調整されたうえで行われることが好ましい。
【0054】
このステップS1-6の処理により、蒸発処理後の粒子添加未処理水に分散している粒子のゼータ電位が取得され、また、蒸発処理後の粒子添加処理水に分散している粒子のゼータ電位が取得される。
【0055】
次に、粒子添加処理水に関するゼータ電位と粒子添加未処理水に関するゼータ電位との差を算出する(ステップS1-7)。
【0056】
具体的には、ステップS1-6の処理において得られた蒸発処理後の粒子添加処理水に関するゼータ電位Vtと蒸発処理後の粒子添加未処理水に関するゼータ電位Vnとの差の絶対値「|Vt-Vn|」(「ゼータ電位差」と称する)を算出する。
【0057】
次に、改質対象水に対する水改質処理の効果を評価する(ステップS1-8)。
【0058】
この処理では、ゼータ電位差に基づいて、改質対象水に対する水改質処理(即ち、当該の改質対象水に対して適用が検討されたり予定されたりしている水改質処理の方法・手法)の効果の程度を評価する。具体的には、ゼータ電位差が大きいときは水改質処理の効果が大きいと評価し、ゼータ電位差が小さいときは水改質処理の効果が小さいと評価する。
【0059】
ゼータ電位差が所定の閾値(「効果評価閾値」と称する)以上であるときは水改質処理の効果が有る(若しくは、水改質処理の効果が一定程度以上有る)と評価(判断)し、ゼータ電位差が効果評価閾値未満であるときは水改質処理の効果が無い(若しくは、水改質処理の効果が小さい)と評価(判断)するようにしてもよい。
【0060】
効果評価閾値は、特定の値に限定されるものではなく、例えば、水改質処理の効果として少なくとも期待される効果(言い換えると、最低限の効果)が得られるときのゼータ電位差の大きさが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。効果評価閾値は、例えば1~5mV程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられ、具体的には例えば3mV程度に設定されてよい。
【0061】
水改質処理の効果の評価結果(例えば、ゼータ電位差と効果評価閾値との比較結果)に基づいて、改質対象水と水改質処理との組合せの適切さ(言い換えると、有効性)を判断することができる。具体的には、ゼータ電位差が効果評価閾値以上であるときは当該の改質対象水(即ち、水改質処理の適用が検討されたり予定されたりしている水)に対して当該水改質処理(即ち、当該の改質対象水に対して適用が検討されたり予定されたりしている水改質処理の方法・手法)を施すことが有効であると判断し、ゼータ電位差が効果評価閾値未満であるときは当該の改質対象水に対して当該水改質処理を施すことは有効でないと判断することができる。
【0062】
ゼータ電位差が効果評価閾値未満であるとき、当該水改質処理を施すことが適切である(言い換えると、有効となる)ように当該の改質対象水に対して何らかの前処理(例えば、不純物の少ない水で希釈するなど)が必要であると判断するようにしてもよい。
【0063】
(水改質効果の評価装置)
図2は、実施の形態に係る水改質効果の評価装置90の機能構成を示すブロック図である。
【0064】
実施の形態に係る水改質効果の評価装置90は、改質対象水に対して水改質処理が施されていない未処理水と改質対象水に対して水改質処理が施された処理水とのそれぞれにスケール成分の粒子が投入されて撹拌されたうえで、スケール成分の粒子が投入された未処理水と処理水とのそれぞれについて測定されたゼータ電位の値の入力を受け付ける第1手段としての入力受部921と、処理水のゼータ電位の値と未処理水のゼータ電位の値との差の絶対値を算出する第2手段としての算出部922と、算出された差に基づいて改質対象水に対する水改質処理の効果の程度を評価する第3手段としての評価部923と、を有する、ようにしている。
【0065】
水改質効果の評価装置90は、記憶部91と、制御部92と、表示部93と、入力部94と、を有し、これらの構成要素が当該水改質効果の評価装置90の内部において通信バス99を介して電気的に接続されている。
【0066】
記憶部91は、任意の記憶媒体によって構成されてよく、種々の情報やデータを記憶する。記憶部91は、例えば、制御部92によって実行される、水改質効果の評価装置90に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)などのストレージデバイスや、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報やデータ等を記憶するランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)などのメモリによって構成されてよく、また、これらの組合せであってもよい。
【0067】
制御部92は、水改質効果の評価装置90に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部92は、例えば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてよい。制御部92は、記憶部91に記憶されている所定のプログラム(尚、水改質効果の評価プログラムを含む)を読み出すことにより、水改質効果の評価装置90に係る種々の機能を実現する。すなわち、水改質効果の評価装置90に係る種々の機能は、記憶部91に記憶されているソフトウェア(尚、水改質効果の評価プログラムを含む)による情報処理が、ハードウェアの一例である制御部92によって具体的に実現されることで、制御部92に含まれる各機能部として実行され得る。制御部92は、単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部92を有するように構成されてもよい。また、制御部92は、複数の制御部の組合せであってもよい。
【0068】
表示部93は、水改質効果の評価装置90の筐体に含まれる(言い換えると、筐体と一体である)ものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。表示部93は、例えば、液晶ディスプレイによって構成されてよい。
【0069】
入力部94は、水改質効果の評価装置90の筐体に含まれる(言い換えると、筐体と一体である)ものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。入力部94は、例えば、キーボードによって構成されてよい。作業者によってなされる操作入力を入力部94が受け付け、当該操作入力が命令信号として通信バス99を介して制御部92に伝送される。そして、制御部92が、必要に応じて、所定の制御や演算を実行する。
【0070】
制御部92は、入力受部921、算出部922、及び評価部923を備える。なお、本発明の説明における「伝送」は、記憶部91への記憶及び記憶部91からの読出しを介して行われる情報やデータのやりとりを含む。
【0071】
入力受部921は、水改質効果の評価方法におけるステップS1-1乃至ステップS1-5の処理を経てステップS1-6の処理において取得されて、作業者によって入力部94を介して入力される、蒸発処理後の粒子添加未処理水に分散している粒子のゼータ電位の値、及び、蒸発処理後の粒子添加処理水に分散している粒子のゼータ電位の値の伝送を受け付ける。
【0072】
そして、入力受部921は、粒子添加未処理水に関するゼータ電位の値及び粒子添加処理水に関するゼータ電位の値を算出部922へと伝送する。
【0073】
算出部922は、入力受部921から伝送される粒子添加未処理水に関するゼータ電位の値と粒子添加処理水に関するゼータ電位の値とを用いてゼータ電位差を算出する(水改質効果の評価方法におけるステップS1-7の処理に相当する)。
【0074】
そして、算出部922は、入力受部921から伝送される粒子添加未処理水に関するゼータ電位の値及び粒子添加処理水に関するゼータ電位の値、並びに、算出したゼータ電位差の値を評価部923へと伝送する(尚、ゼータ電位差の値のみでもよい)。
【0075】
評価部923は、算出部922から伝送される、粒子添加未処理水に関するゼータ電位の値及び粒子添加処理水に関するゼータ電位の値、並びに、ゼータ電位差の値を表示部93に表示させる(尚、ゼータ電位差の値のみでもよい)。
【0076】
そして、表示部93に表示された上記の値を作業者が確認し、作業者が、特にゼータ電位差の値に基づいて、改質対象水に対する水改質処理(即ち、当該の改質対象水に対して適用が検討されたり予定されたりしている水改質処理の方法・手法)の効果の程度を評価する(水改質効果の評価方法におけるステップS1-8の処理に相当する)。
【0077】
評価部923が、算出部922から伝送されるゼータ電位差の値が効果評価閾値以上であるか否かを判断し、ゼータ電位差の値が効果評価閾値以上であるときは水改質処理の効果が有る(若しくは、水改質処理の効果が一定程度以上有る)との評価(判断)結果を表示部93に表示させ、また、ゼータ電位差の値が効果評価閾値未満であるときは水改質処理の効果が無い(若しくは、水改質処理の効果が小さい)との評価(判断)結果を表示部93に表示させるようにしてもよい。なお、効果評価閾値は、水改質効果の評価プログラム内に規定されたり、記憶部91に予め記憶されたりする。
【0078】
(水改質処理の例)
本発明に係る水改質効果の評価方法や水改質効果有無の判定方法による水改質処理の効果に纏わる評価や判定の対象としての改質対象水に対して施される水改質処理は特定の仕法には限定されないもの、例えば、以下に説明する冷却装置10Aにおける冷却水や水道水に対する水改質処理(
図8乃至
図15参照)であってもよい。
【0079】
(冷却装置)
冷却装置10Aは、改質された冷却水を供給するものであって、冷却塔10と、冷却塔10の下部に設けられた水槽17と、水槽17に補給水を注水する補給水注水管11と、水槽17から冷却先へ冷却水を供給する冷却水供給管12と、冷却先から冷却塔10へ冷却水を回収する冷却水回収管13と、水槽17の内部に配置され、人工鉱石を用いて水槽17内の水を改質する第1改質部20と、を備えている。補給水は、この例では水道水である。補給水は、地下水などであってもよい。
【0080】
図8に示す例では、冷却塔10は、回収された冷却水と空気とを直接的に接触させ、冷却水の一部を蒸発させて温度の低下を図る開放型のものであるが、配管回路内に冷却水を流通させて熱交換を行う密閉型の冷却塔であってもよい。また、
図8に示す例では、冷却塔10は、外郭が角形であって、冷却水回収管13から回収された冷却水と空気とが直角に交差しながら流れる直交流型のものであるが、冷却塔は、外郭が丸形であって、冷却水と空気とが逆向きに対向するように流れる向流型の冷却塔であってもよい。以下では、開放型で直交流型の冷却塔10を参照して説明する。
【0081】
冷却塔10は、モータ(不図示)によって回転する送風機18により、外壁を形成する入口ルーバ14から空気を取り入れる。入口ルーバ14の内側には、充填材16が設けられており、冷却水回収管13から散水箱15に戻ってきた冷却水は、充填材16の上部に散水され、その内部を水滴で落下しながら、空気と熱交換される。空気は、エリミネータ19によって同伴する水滴が除去され、送風機18を経由して外部へと放出される。充填材16の内部で熱交換されて温度が低下した冷却水は、下部に位置する水槽17に貯留される。
【0082】
水槽17に貯留された冷却水は、水槽17の底に設けられた冷却水供給管12から供給先へと送水される。ここで、水槽17内には、人工鉱石を用いた第1改質部20が配置されており、詳しくは後述するように、冷却水は第1改質部20を流通することによって改質されてから、供給先へと送られる。
【0083】
水槽17には、補給水注水管11が設けられている。これは、特に開放型の冷却塔10の場合、冷却水が蒸発によって濃縮されることから、定期的に一定量の水の入れ替え(ブローと補給水)を行うためである。ここで、補給水注水管11には、第1改質部20と同様に、人工鉱石を用いて補給水を改質する第2改質部30を更に備えてもよい。水槽17内に配置された第1改質部20によって循環する冷却水を改質することに加え、補給水注水管11内に配置された第2改質部30によって新たに補給水として冷却塔10に注水される水道水を予め改質することにより、改質の効果がより一層発揮される。
【0084】
(第1改質部、第2改質部)
第1改質部20及び第2改質部30は、水改質装置から構成されている。第1改質部20を構成する水改質装置は、
図8に示したような水が流通できるパンチボックスの内部に配置されている。パンチボックスは、例えば、ステンレス鋼を用いて340×250×30mmの寸法を有する板箱状に形成されており、その表面には、水が流通できるようにパンチ(即ち、流通孔)が多数貫通している。
【0085】
パンチボックスの内部には、人工鉱石が横方向に並列的に2個配置されている。この人工鉱石は、人工の鉱物結晶を高温焼成して形成された水接触板である。人工鉱石により、フィルタなどは一切使わず、水に「何も加えず、何も引かず」に、降った雨が地中に浸み込んで鉱物結晶に触れ、石清水となって地表に湧出する自然の叡智を再現することができる。具体的には後述するが、人工鉱石を内蔵したパンチボックスを経由した水は、その物性が変化して石清水のようになる。また、この人工鉱石は水圧によって回転するので、その駆動に要する電気代や薬剤の投入代などの維持費は不要となる。
【0086】
人工鉱石は、4.4μm以上15.4μm以下の波長の遠赤外線を92%以上の積分放射率で放射する人工鉱石であり、水道水をこの人工鉱石で改質することにより、「生命活性力」、「制菌力」、「抗酸化力」、「洗浄力」、「環境浄化力」、「改質持続力」、及び「防食力」のうちの少なくとも1つ以上の水の改質効果が達成される。
【0087】
冷却水が人工鉱石を流通すると、人工鉱石と接触することにより、冷却水の物性が改質される。また、人工鉱石に接触する冷却水は、貫通流通孔7、傾斜板部6bとパンチボックスの内壁とで形成される間隙を通過し、人工鉱石によって冷却水の円滑な流れが遮られることにより、その水向流面で激しい乱流が形成され、この乱流による水分子の人工鉱石に対する激しい衝突によっても、冷却水の改質が促進される。改質の効果としては、「生命活性力」、「制菌力」、「抗酸化力」、「洗浄力」、「環境浄化力」、「改質持続力」、及び「防錆力」のうちの少なくとも1つ以上の改質効果が達成される。
【0088】
ここで、人工鉱石による冷却水の改質について説明する。鉱物結晶は受けた力を一定の振動に変換する性質を有しており、水分子も振動している。水分子は、その振動と共鳴する振動を起こす鉱物結晶に触れると、水分子の自己再組織化を生じ、水の改質が可能となると考えられる。具体的には、相対的に大きな水分子の固まりと相対的に大きなミネラルの固まりが混在している改質前の水をセラミックスファン1(具体的には、人工鉱石を釉薬として塗布したファン)によって改質すると、粒子の大きさが均一化した水分子の固まりが、数多く生成される。そうすると、例えば、スケールの主な要素である炭酸カルシウム(CaCO3)は、水溶性の炭酸水素カルシウム(Ca(HCO3)2)となって、配管内に堆積し難くなる。
【0089】
第2改質部30を構成する水改質装置は、水が流通できる筒状筐体(不図示)と、筒状筐体の内部に配置され、水流の旋回運動を起こすセラミックスファン1と、を備える。筒状筐体は、例えば、ステンレス鋼を用いて190φ~250φ×580~1100mmの寸法を有する筒状に形成される。筒状筐体の内部には、その長手軸に前述したセラミックスファン1が直列的に複数個配置される。セラミックスファン1は、上述した人工鉱石と同様の効果などがある。
【0090】
セラミックスファン1は、例えば
図9A及び
図9Bに示されるように構成してもよい。ここでは、セラミックスファン1は、円盤基体2に3個の液流通堰堤部3を設けて形成されており、液流通堰堤部3は、パンチボックスのパンチから液流通堰堤部3に向かって流通する水を塞き止める作用を有する。
【0091】
液流通堰堤部3は、セラミックスファン1の中心に設けられた貫通孔4の周囲縁辺に形成されたボス5の外周面からセラミックスファン1の外縁に向かって形成される3個の湾曲凸状板6を有する。湾曲凸状板6は、円盤基体2の水向流面から所定の高さを有する湾曲板部6aと、湾曲板部6aの頂上部から円盤基体2の平面へと向かって傾斜する傾斜板部6bとを備える。また、この円盤基体2には、液流通堰堤部3に囲繞される領域それぞれに、9個の貫通流通孔7が設けられる。
【0092】
セラミックスファン1の構成は、
図9A及び
図9Bに示す態様には限定されない。例えば、液流通堰堤部3や湾曲凸状板6は4個とし、円盤基体2上で四方に延在するようにしてもよい。また、貫通流通孔7の数や配置パターンなども適宜設定することが可能である。また、水が流通する筒状筐体(不図示)の内部へのセラミックスファン1の配置にあたっては、水槽17の容量や滞水時間などを考慮して、その個数を決めればよい。
【0093】
なお、第1改質部20を冷却水供給管12の内部に配置してもよい。
【0094】
(スケールの剥離及び防止のメカニズム)
第1改質部20又は第2改質部30が水を改質することによってスケールが堆積し難くなるメカニズムについて、説明する。スケールとは、前述した炭酸カルシウム(CaCO3)と二酸化ケイ素(SiO2)(シリカ)が配管内や給水給湯設備などに付着した堆積物をいうが、改質水によるスケールの剥離、付着防止の反応機序は、以下のとおりである。なお、第1改質部20又は第2改質部30によって改質された水を「改質水」と称し、改質されていない水を「未改質水」と称する。未改質水は例えば水道水である。
【0095】
まず、炭酸カルシウム(CaCO3)の場合について、説明する。一般に給水給湯設備ではポンプで加圧された水や湯が送水されるが、この高圧に加圧された水や湯には気体が大量に溶け込んでいる。未改質水の場合、水栓が開放(開栓)されて通常圧(具体的には、大気圧)に戻ると、溶け込んでいた気体が気化して大量の気泡が発生する。
【0096】
これに対し、改質水の場合、高圧下で溶け込んでいる気体は、通常圧に戻っても気化せずに、水分子の連なりの中に包摂されたり(即ち、水和化)、粒度の揃った水分子の間で安定状態を保ったまま保存されたりする。この現象は、
図10に示すように、未改質水に見られる「アルカリシフト」が改質水の場合には抑制されることからも認められる。なお、
図10は、縦軸をpHとするとともに横軸を採水からの時間(分)として「アルカリシフト」の状況を示すものであり、図中、t1~t3は異なる採取時の改質水を、n1~n3は異なる採取時の非改質水を、それぞれ示す。
【0097】
この点、
図11及び
図12を参照して概要を説明する。
図11は、開栓前の給水管内における改質水中のスケールの剥離現象を示し、
図12は、開栓後における改質水中のスケールの剥離現象を示している。
【0098】
図11に示すように、開栓前の状態では(即ち、非改質水の場合は)、炭酸カルシウム(CaCO
3)の結晶が成長し、炭酸カルシウム(CaCO
3)の微細な粒子が水中に多数生成される。
【0099】
一方、改質水の場合は、炭酸カルシウム(CaCO3)の粒子の凝集が妨げられて、反応によって炭酸水素カルシウム(Ca(HCO3)2)が生じる。この炭酸水素カルシウム(Ca(HCO3)2)は、下記の化1及び/又は化2に電離して水溶性の状態となっている。
(化1) CaHCO3
++HCO3
-
(化2) Ca2++2HCO3
-
【0100】
そして、電離して水溶性である炭酸水素カルシウム(Ca(HCO
3)
2)は、スケールとして付着している炭酸カルシウム(CaCO
3)を侵食し、溶かしていくこととなる(
図12参照)。これにより、既に堆積しているスケールが剥離していく現象が起きる。
【0101】
次に、二酸化ケイ素(SiO
2)の場合について説明する。二酸化ケイ素(SiO
2)は、共有結合結晶を有するが、未改質水の場合、横に手を繋いだような状態でゲル状の被膜を形成する。そして、このゲル状の被膜が次々に積層して強固なスケールを形成し、配管内に堆積していく。
図13は、そのスケールの断面を模式的に示したものであり、ゲル状の被膜による堆積層は強固で剥離し難い。
【0102】
これに対し、改質水の場合、二酸化ケイ素(SiO
2)の周囲を水分子が取り囲む現象が起きる。そうすると、二酸化ケイ素(SiO
2)が横に手を繋ぎ難くなり、ゲル状の被膜の形成が妨げられ、スケールとして強固な堆積層ができ難くなる。
図14は、そのスケールの断面を模式的に示したものであり、ゲル状の被膜は平板状であって、切れ目を境に切れ切れになっているため剥離し易い。
【0103】
(冷却水循環方法)
図15を参照して、冷却水循環方法について説明する。
図15は、冷却水循環方法を適用した冷却水循環システム100の一例を示すブロック図である。なお、
図15では、各配管の接続態様などは模式的に示しており、要素ごとの接続位置等は概念的なものであることに留意されたい。
【0104】
冷却水循環方法は、改質された冷却水CLWを供給するものであって、冷却塔10の下部に設けられた水槽17に水道水を補給水MWとして注水する注水ステップと、水槽17から冷却先へ冷却水CLWbを供給する供給ステップと、冷却先から冷却塔10へ冷却水CLWaを回収する回収ステップと、を備え、供給ステップは、人工鉱石を用いて水槽17内の冷却水CLWを改質する第1改質ステップを含む。なお、冷却水CLWについては、使用前のものを「冷却水CLWb」と表記し、使用後のものを「冷却水CLWa」と表記する。
【0105】
第1改質ステップにおいては、前述した第1改質部20、すなわち、水が流通できるパンチボックスPBの内部に配置される人工鉱石を用いて水槽17内の水を改質する。
【0106】
注水ステップは、人工鉱石を用いて補給水MWを改質する第2改質ステップを更に備えてもよい。第2改質ステップにおいては、前述した第2改質部30、すなわち、水が流通できる筒状筐体の内部に配置され、水流の旋回運動を起こすセラミックスファン1を用いて補給水MWを改質するようにしてもよい。
【0107】
冷却水循環システム100において、冷却塔10で生成された冷却水CLWは、第1改質部20(パンチボックス:PB)によって改質された後、改質水RWとして冷却水供給管12から供給先へ送水される。
図15では、冷却水CLWの供給先として、空調機50に冷水CWを供給する水冷式冷凍機40、成形機70に油を供給する温調器60を例として挙げている。もちろん、供給先は、これらには限定されない。
【0108】
冷却塔10の第1改質部20によって生成された改質水RWの一部は、ストレーナ81、ポンプ82を経由して、水冷式冷凍機40へ冷却水CLWbとして供給される。水冷式冷凍機40で生成された冷水CWb(具体的には例えば、7℃程度)は空調機50に供給され、使用された冷水CWa(具体的には例えば、12℃程度)は水冷式冷凍機40へ戻る。なお、冷水CWについては、使用前のものを冷水CWb、使用後のものを冷水CWaと表記する。
【0109】
水冷式冷凍機40で使用された冷却水CLWaは、冷却水回収管13を介して冷却塔10に回収される。そして、回収された冷却水CLWaは、あらためて冷却塔10で温度を低下させ、また、第1改質部20で改質したうえで、改質水RW(冷却水CLWb)として、水冷式冷凍機40へと供給される。
【0110】
同様に、冷却塔10の第1改質部20によって生成された改質水RWの一部は、ストレーナ81、ポンプ82及びフィルタ83を経由して、温調器60へ冷却水CLWbとして供給される。温調器60で使用された冷却水CLWaは、冷却水回収管13を介して冷却塔10に回収される。以下、水冷式冷凍機40から回収された冷却水CLWaと同様である。
【0111】
以上、本発明による水改質処理の効果に纏わる評価や判定の対象としての改質対象水に対して施される水改質処理の仕法の例として冷却装置10Aにおける水改質処理の仕法を説明したが、本発明における改質対象水に対して施される水改質処理の仕法は冷却装置における水改質処理の仕法には限定されない。また、本発明における改質対象水として、特にスケール生成の影響を受ける機器や設備で使用される水が挙げられ、具体的には例えば、上記のような冷却塔、冷却装置で使用される水のほかに、ボイラで使用される水や、金型などの物品の冷却設備で使用される水が挙げられる。この場合のスケール生成の影響として、スケールが付着することにより、熱のやりとりを行うための部材の熱伝導が阻害されたり、熱のやりとりを行うための部材内を流動する水の量が減少したりすることなどが挙げられる。
【0112】
(水改質効果有無の判定方法)
図3は、本発明に係る水改質効果有無の判定方法の具体的な構成態様の一例としての、実施の形態に係る水改質効果有無の判定方法の処理手順を示すフロー図であり、また、本発明に係る水改質効果有無の判定装置の具体的な構成態様の一例としての、実施の形態に係る水改質効果有無の判定装置90Aにおける処理ステップを示すフロー図である。
【0113】
本発明は、特にスケールの付着が問題となる機器や設備に注水される水に対する水改質処理の効果(具体的には例えば、スケールの抑制効果や剥離性向上効果)の有無の事前判定に用いられることが考えられ、具体的には例えば、水道水に対する水改質処理の効果の有無の事前判定に用いられることが考えられる。
【0114】
本発明の説明では、水改質の対象の水(言い換えると、水改質処理の適用が検討されたり予定されたりしている水)のことを「改質対象水」と称する。
【0115】
本発明の説明では、下記のステップS2-1乃至ステップS2-7の処理において使用される水のことを「試料水」と称する。
【0116】
本発明の説明では、水改質処理が施されていない、水改質前の試料水のことを「未処理試料水」と称し、また、水改質処理が施された、水改質後の試料水のことを「処理試料水」と称する。処理試料水は、すなわち、改質対象水に対して適用が検討されたり予定されたりしている水改質処理(尚、実機などによる実際の水改質処理を模擬した処理を含む)が施された試料水である。
【0117】
試料水は例えば水道水であり、この場合、未処理試料水は水道水のままの状態であり、また、処理試料水は当該の水道水に対して適用が検討されたり予定されたりしている水改質処理(尚、実機などによる実際の水改質処理を模擬した処理を含む)が施された水道水である。ただし、試料水は、水道水に限定されるものではなく、地下水(井水を含む)、河川水(工業用水として利用されるものを含む)、海水、蒸留水、及び純水など種々の水であってよく、また、複数種類の水が混合している水であってもよい。
【0118】
実施の形態に係る水改質効果有無の判定方法は、複数の試料水ごとに試料水に対して水改質処理が施されていない未処理試料水について硬度及び特性指標を測定する処理(ステップS2-2)と、複数の試料水ごとに未処理試料水と試料水に対して水改質処理が施された処理試料水とのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理(ステップS2-5)と、スケール成分の粒子が投入された未処理試料水と処理試料水とのそれぞれを濃縮する処理(ステップS2-6)と、スケール成分の粒子が投入された複数の試料水ごとに未処理試料水と処理試料水とのそれぞれについてゼータ電位を測定する処理(ステップS2-7)と、複数の試料水ごとに処理試料水のゼータ電位と未処理試料水のゼータ電位との差の絶対値を算出する処理(ステップS2-8)と、複数の試料水ごとに算出した差に基づいて試料水に対する水改質処理の効果の程度を評価する処理(ステップS2-9)と、複数の試料水ごとの未処理試料水それぞれについての硬度の値と特性指標の値との組合せの集合をステップS2-9の処理の評価の結果に基づいて水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とに分類する処理(ステップS2-10)と、改質対象水の硬度の値と特性指標の値との組合せがステップS2-10の処理の分類による水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とのうちのどちらに属するかを判断する処理(ステップS2-11)と、を含む、ようにしている。
【0119】
水改質効果有無の判定方法の実施にあたっては、まず、試料水を準備する(ステップS2-1)。
【0120】
具体的には例えば、試料水(尚、水改質処理が施されていないもの)を500mL入れたビーカーを2個準備する。
【0121】
次に、試料水について硬度及び特性指標を測定する(ステップS2-2)。
【0122】
硬度は、カルシウム硬度、マグネシウム硬度、及びカルシウム硬度とマグネシウム硬度との和(即ち、全硬度)のうちのいずれでもよい。
【0123】
特性指標は、例えば、電気伝導率、ph(水素イオン指数)、及びORP(酸化還元電位)のうちのいずれか1つである。
【0124】
硬度及び特性指標の測定は、未処理試料水の水温が改質対象水(即ち、水改質処理の適用が検討されたり予定されたりしている水)の実際の使用状態において想定される水温程度に調整されたうえで行われることが好ましい。
【0125】
続いて、試料水が入れられた2個のビーカーのうちの一方のビーカーに人工鉱石を投入する(ステップS2-3)。
【0126】
人工鉱石を投入していないほうのビーカーを「未処理試料水ビーカー」と称し、人工鉱石を投入したほうのビーカーを「処理試料水ビーカー」と称する。
【0127】
ステップS2-3の処理では、改質対象水に対して適用が検討されたり予定されたりしている水改質処理で使用される人工鉱石が用いられる。ステップS2-3の処理において投入される人工鉱石は、ステップS2-1の処理においてビーカーに入れられた試料水の量に対して水改質処理の効果を発現し得ることが考慮されるなどして量(体積、重量)が調整される。
【0128】
続いて、試料水の水分が蒸発しないように未処理試料水ビーカーと処理試料水ビーカーとのそれぞれを密閉し、24時間以上静置する(ステップS2-4)。
【0129】
なお、ステップS2-4の処理では、処理試料水ビーカーに投入された人工鉱石による水改質処理の効果の発現に見込まれる時間(尚、投入された人工鉱石の量も考慮される)だけ未処理試料水ビーカー及び処理試料水ビーカーが静置されるようにすればよく、ステップS2-4の処理における静置の時間は、24時間以上に限定されるものではなく、24時間より短くてもよい。
【0130】
未処理試料水ビーカー内の試料水は未処理試料水(のまま)であり、処理試料水ビーカー内の試料水はステップS2-4の処理によって処理試料水となる。すなわち、ステップS2-4の処理により、実機などによる実際の水改質処理を模擬した処理が施された水が準備される。
【0131】
なお、ステップS2-4の処理において投入された人工鉱石は、ステップS2-4の処理として処理試料水ビーカーが所定時間だけ静置された後に取り出されてもよいし、処理試料水ビーカーから取り出されることなくステップS2-5以降の処理が行われるようにしてもよい。
【0132】
また、ステップS2-1の処理として、水改質処理が施されていない試料水が未処理試料水ビーカーとして準備されるとともに、実機などによって実際の水改質処理が施された試料水が処理試料水ビーカーとして準備されるようにしてもよい。この場合は、ステップS2-2の処理において未処理試料水について硬度及び特性指標が測定され、ステップS2-3及びステップS2-4の処理は行われない。
【0133】
次に、未処理試料水ビーカーと処理試料水ビーカーとのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する(ステップS2-5)。
【0134】
スケール成分の粒子として、例えば、炭酸塩スケールやケイ酸塩スケールが挙げられる。スケール成分の粒子として、具体的には例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)、二酸化ケイ素(SiO2)(シリカ、シリケート)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム(マグネシウムシリケート)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、酸化マグネシウム(MgO)、及び鉄さび(ヘマタイト、マグネタイト)が挙げられる。スケール成分の粒子として、単一種類の粒子が投入されてもよいし、複数種類の粒子が投入されてもよい。
【0135】
スケール成分の粒子として、0.3nm以上かつ10μm以下の粒径の粒子を、0.5%以上含む粉末が用いられることが好ましく、3%以上含む粉末が用いられることがより好ましく、5%以上含む粉末が用いられることがさらに好ましい。スケール成分の粒子として、一層好ましくは、1μm以上かつ3μm以下の粒子を、0.5%以上含む粉末が用いられることが好ましく、3%以上含む粉末が用いられることがより好ましく、5%以上含む粉末が用いられることがさらに好ましい。スケール成分の粒子として、さらに一層好ましくは、2μm程度以下の粒子を、0.5%以上含む粉末が用いられることが好ましく、3%以上含む粉末が用いられることがより好ましく、5%以上含む粉末が用いられることがさらに好ましい。スケール成分の粒子の粒径は、平均粒径、球相当径、メディアン径、及びモード径のうちのいずれかでよく、或いは、ストークス径でもよい。
【0136】
スケール成分の粒子は、例えば、0.01~10g/L程度の濃度で投入されてよく、1~5g/L程度の濃度で投入されることが好ましく、1~3g/L程度の濃度で投入されることがより好ましく、2g/L程度の濃度で投入されることがさらに好ましい。スケール成分の粒子が投入された後の撹拌は、撹拌用の機器が用いられて行われてもよく、ガラス棒などの撹拌用具が用いられて行われてもよい。
【0137】
スケール成分の粒子が投入された未処理試料水のことを「粒子添加未処理試料水」と称し、また、スケール成分の粒子が投入された処理試料水のことを「粒子添加処理試料水」と称する。
【0138】
次に、試料水(具体的には、粒子添加未処理試料水と粒子添加処理試料水とのそれぞれ)の水分を蒸発させて試料水を濃縮する(ステップS2-6)。
【0139】
試料水(具体的には、粒子添加未処理試料水と粒子添加処理試料水とのそれぞれ)の水分の蒸発(延いては、試料水の濃縮)は、未処理試料水ビーカーと処理試料水ビーカーとのそれぞれを密閉せずに開放した状態で、例えば、20℃程度に設定された恒温槽に入れることによって行われるようにしてもよく、或いは、揮発させることによって行われるようにしてもよい。
【0140】
試料水(具体的には、粒子添加未処理試料水と粒子添加処理試料水とのそれぞれ)の水分の蒸発は、濃縮度が1.1~3.0倍程度になるように行われることが好ましく、1.3~3.0倍程度になるように行われることがより好ましく、1.6~3.0倍程度になるように行われることが更に好ましい。なお、蒸発前においてV〔mL〕の試料水をV/x〔mL〕になるまで水分を蒸発させたときの濃縮度がx倍である。
【0141】
次に、蒸発処理後(即ち、ステップS2-6の処理後)の試料水(具体的には、粒子添加未処理試料水と粒子添加処理試料水とのそれぞれ)に分散している粒子のゼータ電位を測定する(ステップS2-7)。
【0142】
ゼータ電位の測定は、蒸発処理後の1つの試料水(具体的には、粒子添加未処理試料水と粒子添加処理試料水とのそれぞれ)について、1回でもよいものの、複数回行われることが好ましい。すなわち、蒸発処理後の1つの試料水(具体的には、粒子添加未処理試料水と粒子添加処理試料水とのそれぞれ)についてゼータ電位の測定を複数回(好ましくは3回以上)行い、複数回の測定結果の平均値を当該の蒸発処理後の試料水(具体的には、粒子添加未処理試料水と粒子添加処理試料水とのそれぞれ)のゼータ電位とすることが好ましい。
【0143】
ゼータ電位の測定は、試料水(具体的には、粒子添加未処理試料水と粒子添加処理試料水とのそれぞれ)の水温が改質対象水(即ち、水改質処理の適用が検討されたり予定されたりしている水)の実際の使用状態において想定される水温程度に調整されたうえで行われることが好ましい。
【0144】
このステップS2-7の処理により、蒸発処理後の粒子添加未処理試料水に分散している粒子のゼータ電位が取得され、また、蒸発処理後の粒子添加処理試料水に分散している粒子のゼータ電位が取得される。
【0145】
次に、粒子添加処理試料水に関するゼータ電位と粒子添加未処理試料水に関するゼータ電位との差を算出する(ステップS2-8)。
【0146】
具体的には、ステップS2-7の処理において得られた蒸発処理後の粒子添加処理試料水に関するゼータ電位Vtと蒸発処理後の粒子添加未処理試料水に関するゼータ電位Vnとの差の絶対値「|Vt-Vn|」(「ゼータ電位差」と称する)を算出する。
【0147】
次に、試料水に対する水改質処理の効果を評価する(ステップS2-9)。
【0148】
この処理では、ゼータ電位差に基づいて、試料水に対する水改質処理(即ち、改質対象水に対して適用が検討されたり予定されたりしている水改質処理の方法・手法)の効果の程度を評価する。具体的には、ゼータ電位差が大きいときは水改質処理の効果が大きいと評価し、ゼータ電位差が小さいときは水改質処理の効果が小さいと評価する。
【0149】
具体的には、ゼータ電位差が所定の閾値(「効果評価閾値」と称する)以上であるときは水改質処理の効果が有る(若しくは、水改質処理の効果が一定程度以上有る;以下同様)と評価(判断)し、ゼータ電位差が効果評価閾値未満であるときは水改質処理の効果が無い(若しくは、水改質処理の効果が小さい;以下同様)と評価(判断)する。
【0150】
効果評価閾値は、特定の値に限定されるものではなく、例えば、水改質処理の効果として少なくとも期待される効果(言い換えると、最低限の効果)が得られるときのゼータ電位差の大きさが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。効果評価閾値は、例えば1~5mV程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられ、具体的には例えば3mV程度に設定されてよい。
【0151】
ゼータ電位差と効果評価閾値との比較結果に基づいて、試料水と水改質処理との組合せの適切さ(言い換えると、有効性)を判断することができる。具体的には、ゼータ電位差が効果評価閾値以上であるときは改質対象水(即ち、水改質処理の適用が検討されたり予定されたりしている水)に対して当該水改質処理(即ち、改質対象水に対して適用が検討されたり予定されたりしている水改質処理の方法・手法)を施すことが有効であると判断し、ゼータ電位差が効果評価閾値未満であるときは改質対象水に対して当該水改質処理を施すことは有効でないと判断することができる。
【0152】
次に、水改質効果有無の判別マップを作成する(ステップS2-10)。
【0153】
具体的には、上記のステップS2-1乃至ステップS2-9の処理を、硬度や特性指標が相互に異なる複数の試料水について行い、ステップS2-2の処理において測定される試料水の未処理試料水についての硬度及び特性指標と、ステップS2-9の処理において得られる当該の試料水についての水改質処理の効果の程度(有無)の評価結果と、の組合せデータを複数取得する。
【0154】
そして、未処理試料水についての硬度の値と特性指標の値との組合せデータの集合を水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とに分類する。
【0155】
例えば、未処理試料水についての全硬度〔mg/L〕の値と特性指標としての電気伝導率〔μS/cm〕の値との組合せデータごと(言い換えると、試料水ごと)の水改質処理の効果の有無が
図5Aに示すような分布である場合に、未処理試料水についての全硬度の値と特性指標としての電気伝導率の値との組合せデータの集合を水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とに分類する。具体的には、全硬度の値と特性指標(電気伝導率)の値との組合せデータの集合を水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とに分類する境界線(同図中の一点鎖線)を特定する。これにより、
図5Bに示すように、全硬度の値と特性指標(電気伝導率)の値との組合せが、水改質処理の効果が有る領域と水改質処理の効果が無い領域とに区分される。
【0156】
このように、未処理試料水についての硬度の値と特性指標の値との組合せデータの集合を、水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とに分類することにより、具体的には、水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とに分類する境界線を特定することにより、二次元直交座標系の一方の軸を未処理試料水についての硬度の値とするとともに他方の軸を未処理試料水についての特性指標の値とする平面が、水改質処理の効果が有る領域と水改質処理の効果が無い領域とに区分される。
【0157】
なお、上記のステップS2-1乃至ステップS2-9の処理の対象とする複数の試料水(未処理試料水)として、これら試料水についての硬度の値と特性指標の値との組合せデータの集合を適当に分類することができるように、硬度の値と特性指標の値との組合せが一方の軸を硬度の値とするとともに他方の軸を特性指標の値とする平面上にできるだけ満遍なく分布するように、硬度や特性指標が相互に異なる複数の試料水が選択される。
【0158】
未処理試料水についての硬度の値と特性指標の値との組合せデータの集合を水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とに分類する仕法として、例えば、サポートベクターマシン(SVM:Support-Vector Machine)が用いられてもよい。
【0159】
次に、改質対象水に対する水改質処理の効果の有無を判定する(ステップS2-11)。
【0160】
具体的には、まず、改質対象水(即ち、水改質処理の適用が検討されたり予定されたりしている水であり、水改質処理が未だ施されていない水)について硬度及び特性指標を測定する。
【0161】
改質対象水についての硬度及び特性指標の測定は、ステップS2-2の処理において未処理試料水についての硬度及び特性指標の測定が行われたときと同様の条件で行われることが好ましい。例えば、改質対象水の温度が、ステップS2-2の処理の測定が行われたときの未処理試料水の水温程度に調整されたうえで行われることが好ましい。
【0162】
改質対象水についての特性指標は、ステップS2-2の処理において特性指標として選択された項目であり、延いては、ステップS2-10の処理において作成された水改質効果有無の判別マップの一方の軸に相当する項目である。
【0163】
そして、測定によって得られた硬度の値と特性指標の値との組合せをステップS2-10の処理において作成された水改質効果有無の判別マップにあてはめて、これら硬度の値と特性指標の値との組合せが水改質処理の効果が有る領域と水改質処理の効果が無い領域とのうちのどちらに位置するかにより、当該の改質対象水に対して当該水改質処理を施すことが適切である(言い換えると、有効である)か否かを判定する。なお、当該水改質処理は、すなわち、ステップS2-1の処理において準備された処理試料水に対して施されている水改質処理の方法・手法である。
【0164】
上記の処理は、測定によって得られた硬度の値と特性指標の値との組合せが、ステップS2-10の処理において分類された水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とのうちのどちらに属するかを判断することにより、当該の改質対象水に対して当該水改質処理を施すことが適切である(言い換えると、有効である)か否かを判定する、ともいえる。
【0165】
改質対象水に対して当該水改質処理を施すことが適切でないと判定された場合に、当該水改質処理を施すことが適切である(言い換えると、有効となる)ように当該の改質対象水に対して何らかの前処理(例えば、不純物の少ない水で希釈するなど)を施したうえで、ステップS2-11の処理があらためて行われるようにしてもよい。これにより、当該水改質処理を施すことが適切であるようにするために必要な前処理の検討を行うことができる。
【0166】
(水改質効果有無の判定装置)
図4は、実施の形態に係る水改質効果有無の判定装置90Aの機能構成を示すブロック図である。
【0167】
実施の形態に係る水改質効果有無の判定装置90Aは、複数の試料水ごとに試料水に対して水改質処理が施されていない未処理試料水について測定された硬度の値及び特性指標の値の入力を受け付けるとともに、複数の試料水ごとに未処理試料水と試料水に対して水改質処理が施された処理試料水とのそれぞれにスケール成分の粒子が投入されて撹拌されたうえで、スケール成分の粒子が投入された複数の試料水ごとに未処理試料水と処理試料水とのそれぞれについて測定されたゼータ電位の値の入力を受け付け、さらに、改質対象水について測定された硬度の値及び特性指標の値の入力を受け付ける第4手段としての入力受部921と、複数の試料水ごとに処理試料水のゼータ電位の値と未処理試料水のゼータ電位の値との差の絶対値を算出する第5手段としての算出部922と、複数の試料水ごとに算出された差に基づいて試料水に対する水改質処理の効果の程度を評価する第6手段としての評価部923と、複数の試料水ごとの未処理試料水それぞれについての硬度の値と特性指標の値との組合せの集合を評価部923の評価の結果に基づいて水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とに分類する第7手段としての作成部924と、改質対象水の硬度の値と特性指標の値との組合せが作成部924の分類による水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とのうちのどちらに属するかを判断する第8手段としての判定部925と、を有する、ようにしている。
【0168】
水改質効果有無の判定装置90Aは、記憶部91と、制御部92と、表示部93と、入力部94と、を有し、これらの構成要素が当該水改質効果有無の判定装置90Aの内部において通信バス99を介して電気的に接続されている。
【0169】
記憶部91、表示部93、及び入力部94の基本的な構成は、上記の水改質効果の評価装置90の記憶部91、表示部93、及び入力部94の基本的な構成と同様であるので、繰り返しの説明は省略する。
【0170】
制御部92は、水改質効果有無の判定装置90Aに関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部92は、例えば、中央処理装置(CPU)によって構成されてよい。制御部92は、記憶部91に記憶されている所定のプログラム(尚、水改質効果有無の判定プログラムを含む)を読み出すことにより、水改質効果有無の判定装置90Aに係る種々の機能を実現する。すなわち、水改質効果有無の判定装置90Aに係る種々の機能は、記憶部91に記憶されているソフトウェア(尚、水改質効果有無の判定プログラムを含む)による情報処理が、ハードウェアの一例である制御部92によって具体的に実現されることで、制御部92に含まれる各機能部として実行され得る。制御部92は、単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部92を有するように構成されてもよい。また、制御部92は、複数の制御部の組合せであってもよい。
【0171】
制御部92は、入力受部921、算出部922、評価部923、作成部924、及び判定部925を備える。なお、本発明の説明における「伝送」は、記憶部91への記憶及び記憶部91からの読出しを介して行われる情報やデータのやりとりを含む。
【0172】
入力受部921は、水改質効果有無の判定方法におけるステップS2-1の処理を経てステップS2-2の処理において取得されて、作業者によって入力部94を介して入力される、硬度や特性指標が相互に異なる複数の試料水各々の、未処理試料水についての硬度の値及び特性指標の値の伝送を受け付ける。
【0173】
入力受部921は、また、水改質効果有無の判定方法におけるステップS2-3乃至ステップS2-6の処理を更に経てステップS2-7の処理において取得されて、作業者によって入力部94を介して入力される、硬度や特性指標が相互に異なる複数の試料水各々の、蒸発処理後の粒子添加未処理試料水に分散している粒子のゼータ電位の値、及び、蒸発処理後の粒子添加処理試料水に分散している粒子のゼータ電位の値の伝送を受け付ける。
【0174】
そして、入力受部921は、複数の試料水各々について、これら試料水各々に固有の識別子を付与したうえで、未処理試料水についての硬度の値及び特性指標の値を作成部924へと伝送し、また、粒子添加未処理試料水に関するゼータ電位の値及び粒子添加処理試料水に関するゼータ電位の値を算出部922へと伝送する。
【0175】
算出部922は、入力受部921から試料水ごとの識別子とともに伝送される粒子添加未処理試料水に関するゼータ電位の値と粒子添加処理試料水に関するゼータ電位の値とを用いて、識別子ごとに(即ち、複数の試料水各々について)、ゼータ電位差を算出する(水改質効果有無の判定方法におけるステップS2-8の処理に相当する)。
【0176】
そして、算出部922は、算出したゼータ電位差の値を試料水の識別子とともに評価部923へと伝送する。
【0177】
評価部923は、算出部922から処理対象水の識別子とともに伝送されるゼータ電位差の値が効果評価閾値以上であるか否かを識別子ごとに(即ち、複数の試料水各々について)判断し、ゼータ電位差の値が効果評価閾値以上であるときは水改質処理の効果が有る(若しくは、水改質処理の効果が一定程度以上有る;以下同様)と判断し、また、ゼータ電位差の値が効果評価閾値未満であるときは水改質処理の効果が無い(若しくは、水改質処理の効果が小さい;以下同様)と判断する(水改質効果有無の判定方法におけるステップS2-9の処理に相当する)。なお、効果評価閾値は、水改質効果有無の判定プログラム内に規定されたり、記憶部91に予め記憶されたりする。
【0178】
評価部923は、水改質処理の効果の有無の判定結果を処理対象水の識別子とともに作成部924へと伝送する。
【0179】
作成部924は、入力受部921から試料水ごとの識別子とともに伝送される未処理試料水についての硬度の値及び特性指標の値と、評価部923から試料水ごとの識別子とともに伝送される水改質処理の効果の有無の判定結果とを用いて、水改質効果有無の判別マップを作成する(水改質効果有無の判定方法におけるステップS2-10の処理に相当する)。
【0180】
作成部924は、具体的には、試料水ごとの識別子を利用して未処理試料水についての硬度の値及び特性指標の値と水改質処理の効果の有無の判定結果とを対応づけたうえで、未処理試料水についての硬度の値と特性指標の値との組合せデータの集合を、水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とに分類し、具体的には、水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とに分類する境界線を特定する。
【0181】
作成部924は、例えばサポートベクターマシン(SVM)を用いて、未処理試料水についての硬度の値と特性指標の値との組合せデータの集合を、水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とに分類するようにしてもよい。
【0182】
そして、作成部924は、二次元直交座標系の一方の軸を未処理試料水についての硬度の値とするとともに他方の軸を未処理試料水についての特性指標の値とする平面を水改質処理の効果が有る領域と水改質処理の効果が無い領域とに区分する境界情報を、水改質効果有無の判別マップとして作成する。
【0183】
入力受部921は、水改質効果有無の判定方法におけるステップS2-11の処理において取得されて、作業者によって入力部94を介して入力される、改質対象水(即ち、水改質処理の適用が検討されたり予定されたりしている水)についての硬度の値及び特性指標の値の伝送を受け付ける。
【0184】
判定部925は、入力受部921から伝送される改質対象水についての硬度の値と特性指標の値との組合せを作成部924によって作成された水改質効果有無の判別マップ(即ち、水改質処理の効果が有る領域と水改質処理の効果が無い領域とに区分する境界情報)にあてはめて、これら硬度の値と特性指標の値との組合せが水改質処理の効果が有る領域と水改質処理の効果が無い領域とのうちのどちらに含まれるかにより、当該の改質対象水に対して当該水改質処理を施すことが適切である(言い換えると、有効である)か否かを判定する(水改質効果有無の判定方法におけるステップS2-11の処理に相当する)。
【0185】
(実験例1)
実施の形態に係る水改質効果の評価方法の妥当性の検証のために行った実験の例を説明する。
【0186】
本実験では、水道水を未処理水とするとともに、上記の冷却装置10Aにおける冷却水や水道水に対する水改質処理が施された水道水を処理水として、実施の形態に係る水改質効果の評価方法が適用された。
【0187】
すなわち、本実験では、冷却塔10と、冷却塔10の下部に設けられた水槽17と、水槽17に水道水を補給水として注水する補給水注水管11と、水槽17から冷却先へと冷却水を供給する冷却水供給管12と、冷却先から冷却塔へと冷却水を回収する冷却水回収管13と、を備える冷却装置10Aにおける、人工鉱石を用いて水槽17内の水を改質する第1改質ステップと、人工鉱石を用いて補給水を改質する第2改質ステップと、を含む水改質処理が施された水道水が処理水として用いられた。
【0188】
水改質効果の評価方法のステップS1-1乃至ステップS1-3の処理が行われ、ステップS1-4の処理に関連して、本実験では、スケール成分の粒子として、2μm以下の粒径の粒子を5%程度含む粉末の炭酸カルシウム(CaCO3)が用いられた。本実験では、スケール成分の粒子として、炭酸カルシウム (CaCO3)が2g/Lの濃度で投入された。
【0189】
本実験では、水改質効果の評価方法のステップS1-4の処理が行われた後、改質対象水(具体的には、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれ;以下同様)の電気伝導率が測定され、また、改質対象水に分散している粒子のゼータ電位が測定された。これらの測定により、すなわち、改質対象水の濃縮度が1.0倍であるときの電気伝導率及びゼータ電位が測定された。
【0190】
次に、水改質効果の評価方法のステップS1-5の処理として改質対象水の水分の蒸発が行われた後、改質対象水の電気伝導率が測定され、また、水改質効果の評価方法のステップS1-6の処理として改質対象水に分散している粒子のゼータ電位が測定された。
【0191】
本実験では、改質対象水の水分の蒸発、改質対象水の電気伝導率の測定、及び改質対象水に分散している粒子のゼータ電位の測定が繰り返し行われ、改質対象水の濃縮度が1.3倍であるときの電気伝導率及びゼータ電位が測定され、また、改質対象水の濃縮度が1.6倍であるときの電気伝導率及びゼータ電位が測定された。
【0192】
上記の処理によって得られた、水改質処理の適用有無別(即ち、粒子添加未処理水と粒子添加処理水との別)の、改質対象水(ここでは具体的には、水道水)の濃縮度〔倍〕と改質対象水に分散している粒子(炭酸カルシウム(CaCO
3)粒子)のゼータ電位〔mV〕との間の関係を示すプロット図を
図6に示す。本実験では各濃縮度についてゼータ電位の測定を3回行い、
図6では、3回の測定結果の平均値を●印で示しているとともに標準偏差をI形のエラーバーで示している。
【0193】
図6に示す結果から、粒子添加未処理水と比べて粒子添加処理水のほうがゼータ電位の値がマイナス側に大きく振れていることが確認された。このことから、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とでゼータ電位の値が異なることが確認され、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とに関するゼータ電位差を確認することにより、改質対象水に対する水改質処理の効果(具体的には例えば、スケールの抑制効果や剥離性向上効果)の程度を評価することができ、延いては改質対象水と水改質処理との組合せの適切さ(言い換えると、有効性)を判定することができることが確認された。
【0194】
なお、粒子添加未処理水と比べて粒子添加処理水のほうがゼータ電位の値がマイナス側に大きく振れていることから、粒子添加未処理水と比べて粒子添加処理水のほうが粒子どうしが互いに反発して水中で分散が容易となっており、上記の冷却装置10Aにおける冷却水や水道水に対する水改質処理が施されることによって水道水が改質されている(具体的には例えば、スケールの抑制や剥離性向上が図られている)ことが確認された。
【0195】
図6に示す結果から、また、濃縮度が1.0倍や1.3倍でも粒子添加未処理水と比べて粒子添加処理水のほうがゼータ電位がマイナス側に大きく振れていることが確認されるものの、濃縮度が1.6倍のとき、粒子添加未処理水と比べて粒子添加処理水のほうがゼータ電位がマイナス側に最も大きく振れていることが確認された。このことから、水改質効果の評価方法のステップS1-5の処理において改質対象水の濃縮度を1.6倍程度以上とすることにより、粒子添加未処理水のゼータ電位の値と粒子添加処理水のゼータ電位の値との差を大きくできることが確認された。なお、濃縮にかかる手間を考慮すると、3.0倍程度を濃縮の上限の目安とすることが好ましい。
【0196】
一方、上記の処理によって得られた、水改質処理の適用有無別(即ち、粒子添加未処理水と粒子添加処理水との別)の、改質対象水(ここでは具体的には、水道水)の濃縮度〔倍〕と電気伝導率〔μS/cm〕との間の関係を示すプロット図を
図7に示す。
【0197】
図7に示す結果から、粒子添加未処理水の電気伝導率の値と粒子添加処理水の電気伝導率の値との差は殆ど無いことが確認された。このことから、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とに関する電気伝導率の差を確認することによっては、改質対象水に対する水改質処理の効果(具体的には例えば、スケールの抑制効果や剥離性向上効果)の程度を評価することはできず、延いては改質対象水と水改質処理との組合せの適切さ(言い換えると、有効性)を判定することはできないことが分かった。
【0198】
(実験例2)
実施の形態に係る水改質効果の評価方法の妥当性の検証のために行った実験の他の例を説明する。
【0199】
この実験では、スケール成分の粒子として、100μm以下の粒径の二酸化ケイ素(SiO2)(シリカ、シリケート)が用いられた。この実験では、また、改質対象水の濃縮度が1倍であるときのゼータ電位が測定された。そのほかの内容は、上記の実験例1と同様である。
【0200】
実験の結果、粒子添加未処理水についてはゼータ電位の3回の測定の平均値が-44.8〔mV〕(標準偏差は2.4〔mV〕)となり、粒子添加処理水についてはゼータ電位の3回の測定の平均値が-51.6〔mV〕(標準偏差は1.1〔mV〕)となった。
【0201】
この結果から、スケール成分の粒子として二酸化ケイ素(SiO2)(シリカ、シリケート)が用いられる場合も、粒子添加未処理水と比べて粒子添加処理水のほうがゼータ電位の値がマイナス側に大きく振れることも含めて、上記の実験1と同様の作用が奏されることが確認された。
【0202】
(実験例3)
実施の形態に係る水改質効果の評価方法の妥当性の検証のために行った実験の更に他の例を説明する。
【0203】
本実験では、スケール成分の粒子として、2μm以下の粒径の水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)が用いられた。本実験では、また、改質対象水の濃縮度が1.0倍であるときと1.25倍であるときとのそれぞれの電気伝導率及びゼータ電位が測定された。そのほかの内容は、上記の実験例1と同様である。
【0204】
本実験によって得られた、水改質処理の適用有無別(即ち、粒子添加未処理水と粒子添加処理水との別)の、改質対象水(ここでは具体的には、水道水)の濃縮度〔倍〕と改質対象水に分散している粒子(水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)粒子)のゼータ電位〔mV〕との間の関係を示すプロット図を
図16に示す。本実験では各濃縮度についてゼータ電位の測定を3回行い、
図16では、3回の測定結果の平均値を○や●で示しているとともに標準偏差をI形のエラーバーで示している。
【0205】
図16に示す結果から、粒子添加未処理水と比べて粒子添加処理水のほうがゼータ電位の値がマイナス側に大きく振れていることが確認された。このことから、スケール成分の粒子として水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)が用いられる場合も、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とでゼータ電位の値が異なることが確認され、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とに関するゼータ電位差を確認することにより、改質対象水に対する水改質処理の効果(具体的には例えば、スケールの抑制効果や剥離性向上効果)の程度を評価することができ、延いては改質対象水と水改質処理との組合せの適切さ(言い換えると、有効性)を判定することができることが確認された。
【0206】
一方、本実験によって得られた、水改質処理の適用有無別(即ち、粒子添加未処理水と粒子添加処理水との別)の、改質対象水(ここでは具体的には、水道水)の濃縮度〔倍〕と電気伝導率〔μS/cm〕との間の関係を示すプロット図を
図17に示す。
【0207】
図17に示す結果から、スケール成分の粒子として水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)が用いられる場合も、粒子添加未処理水の電気伝導率の値と粒子添加処理水の電気伝導率の値との差は殆ど無いことが確認された。このことから、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とに関する電気伝導率の差を確認することによっては、改質対象水に対する水改質処理の効果(具体的には例えば、スケールの抑制効果や剥離性向上効果)の程度を評価することはできず、延いては改質対象水と水改質処理との組合せの適切さ(言い換えると、有効性)を判定することはできないことが分かった。
【0208】
(実験例4)
実施の形態に係る水改質効果の評価方法の妥当性の検証及び応用例の検討のために行った実験の例を説明する。
【0209】
本実験では、300mLの純水を未処理水とするとともに、人工鉱石が投入された300mLの純水を処理水として、実施の形態に係る水改質効果の評価方法が適用された。
【0210】
本実験では、純水が入れられたビーカーに人工鉱石が投入されて3分間静置された。ビーカー内の純水は人工鉱石が投入されることによって処理水となる。すなわち、人工鉱石が投入されることにより、実機などによる実際の水改質処理を模擬した処理が施された水が準備される。本実施例では、ビーカーに投入された人工鉱石は、3分間静置された後に取り出された。
【0211】
水改質効果の評価方法のステップS1-1乃至ステップS1-3の処理が行われ、ステップS1-4の処理に関連して、本実験では、スケール成分の粒子として、非凝集性のガンマ(γ)アルミナ粉末(Struers社製 AP-D粉末 0.05μm;酸化アルミニウム(Al2O3)粒子)が用いられた。本実験では、スケール成分の粒子として、ガンマアルミナ粉末(酸化アルミニウム(Al2O3)粒子)が10mg/300mLの濃度で投入された。
【0212】
本実験では、水改質効果の評価方法のステップS1-4の処理が行われた後、改質対象水(具体的には、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれ;以下同様)に分散している粒子のゼータ電位が測定された。この測定により、すなわち、改質対象水の濃縮度が1.0倍であるときのゼータ電位が測定された。
【0213】
本実験では、ゼータ電位が時系列で測定された。ゼータ電位の時系列での測定は、具体的には、S1-4の処理における攪拌処理が行われた直後に1回目(経過時間0分)が行われ、その後、150分間隔で99回(即ち、100回目まで)行われた。これにより、改質対象水に分散している粒子のゼータ電位の経時変化が取得された。
【0214】
本実験によって得られた、水改質処理の適用有無別(即ち、粒子添加未処理水と粒子添加処理水との別)の、改質対象水(ここでは具体的には、純水)に分散している粒子(ガンマアルミナ粉末;酸化アルミニウム(Al
2O
3)粒子)のゼータ電位〔mV〕の経時変化を
図18Aに示す。また、
図18Aのうちの測定回数が1回目から38回目までを拡大して
図18Bに示す。
【0215】
図18A及び
図18Bに示す結果から、粒子添加未処理水と比べて粒子添加処理水のほうがゼータ電位の値がマイナス側に大きく振れていることが確認された。このことから、スケール成分の粒子としてガンマアルミナ粉末(酸化アルミニウム(Al
2O
3)粒子)が用いられる場合も、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とでゼータ電位の値が異なることが確認され、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とに関するゼータ電位差を確認することにより、改質対象水に対する水改質処理の効果(具体的には例えば、スケールの抑制効果や剥離性向上効果)の程度を評価することができ、延いては改質対象水と水改質処理との組合せの適切さ(言い換えると、有効性)を判定することができることが確認された。
【0216】
図18A及び
図18Bに示す結果から、また、粒子添加未処理水では測定の初期において(同図に示す例では具体的には、1回目から3回目、即ち0分から300分にかけて)ゼータ電位の絶対値が大きくなる傾向で変化するのに対し、粒子添加処理水では測定の初期において(同図に示す例では具体的には、1回目から8回目、即ち0分から1050分にかけて)ゼータ電位の絶対値が小さくなる傾向で変化することが確認された。このことから、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれに関するゼータ電位の値の経時変化を検証することにより、改質対象水に対する水改質処理の効果の推移(言い換えると、継続時間)を把握したり、改質対象水に対する水改質処理の効果が安定した状態における当該効果の程度を評価したりすることができることが確認された。
【0217】
すなわち、本発明に係る水改質効果の評価方法は、改質対象水に対して水改質処理が施されていない未処理水と前記改質対象水に対して前記水改質処理が施された処理水とのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理と、前記スケール成分の粒子が投入された前記未処理水と前記処理水とのそれぞれについてゼータ電位を時系列で測定する処理と、測定した前記処理水の前記ゼータ電位の値の経時変化と前記未処理水の前記ゼータ電位の値の経時変化とに基づいて、前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果の継続時間と、前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果が安定した状態における当該効果の程度と、のうちの少なくとも一方を評価する処理と、を含む、ようにしてもよい。
【0218】
図18A及び
図18Bに示す結果から、また、ゼータ電位の経時変化においてゼータ電位の絶対値が小さくなる傾向で変化しているときは水改質処理の効果(具体的には例えば、スケールの抑制効果や剥離性向上効果)が大きいと評価し、一方、ゼータ電位の経時変化においてゼータ電位の絶対値が大きくなる傾向で変化しているときは水改質処理の効果(具体的には例えば、スケールの抑制効果や剥離性向上効果)が無い若しくは小さいと評価することができることが確認された。なお、ゼータ電位の絶対値が小さくなる傾向の変化は、具体的には、ゼータ電位が正の値の範囲で小さくなる変化、又は、ゼータ電位が負の値の範囲で大きくなる変化である。また、ゼータ電位の絶対値が大きくなる傾向の変化は、具体的には、ゼータ電位が正の値の範囲で大きくなる変化、又は、ゼータ電位が負の値の範囲で小さくなる変化である。
【0219】
すなわち、本発明に係る水改質効果の評価方法は、改質対象水に対して水改質処理が施された処理水にスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理と、前記スケール成分の粒子が投入された前記処理水についてゼータ電位を時系列で測定する処理と、測定した前記処理水の前記ゼータ電位の値の経時変化に基づいて前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果の程度を評価する処理と、を含む、ようにしてもよい。
【0220】
(実験例5)
実施の形態に係る水改質効果の評価方法の妥当性の検証のために行った実験の更に他の例を説明する。
【0221】
本実験では、300mLの水道水を未処理水とするとともに、人工鉱石が投入された300mLの水道水を処理水として、実施の形態に係る水改質効果の評価方法が適用された。
【0222】
本実験では、水道水が入れられたビーカーに人工鉱石が投入されて5分間静置された。ビーカー内の水道水は人工鉱石が投入されることによって処理水となる。すなわち、人工鉱石が投入されることにより、実機などによる実際の水改質処理を模擬した処理が施された水が準備される。本実施例では、ビーカーに投入された人工鉱石は、5分間静置された後に取り出された。
【0223】
水改質効果の評価方法のステップS1-1乃至ステップS1-3の処理が行われ、ステップS1-4の処理に関連して、本実験では、スケール成分の粒子として、非凝集性のガンマ(γ)アルミナ粉末(Struers社製 AP-D粉末 0.05μm;酸化アルミニウム(Al2O3)粒子)が用いられた。本実験では、スケール成分の粒子として、ガンマアルミナ粉末(酸化アルミニウム(Al2O3)粒子)が10mg/300mLの濃度で投入された。
【0224】
本実験では、水改質効果の評価方法のステップS1-4の処理が行われた後、改質対象水(具体的には、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれ;以下同様)に分散している粒子のゼータ電位が測定された。この測定により、すなわち、改質対象水の濃縮度が1.0倍であるときのゼータ電位が測定された。
【0225】
本実験では、ゼータ電位が時系列で測定された。ゼータ電位の時系列での測定は、具体的には、S1-4の処理における攪拌処理が行われて5分間静置された後に1回目(経過時間0分)が行われ、その後、150分間隔で99回(即ち、100回目まで)行われた。これにより、改質対象水に分散している粒子のゼータ電位の経時変化が取得された。
【0226】
本実験によって得られた、水改質処理の適用有無別(即ち、粒子添加未処理水と粒子添加処理水との別)の、改質対象水(ここでは具体的には、水道水)に分散している粒子(ガンマアルミナ粉末;酸化アルミニウム(Al
2O
3)粒子)のゼータ電位〔mV〕の経時変化を
図19に示す。なお、
図19では、粒子添加未処理水については測定回数が1回目から22回目までの結果を示し、粒子添加処理水については測定回数が1回目から25回目までの結果を示す。
【0227】
図19に示す結果から、粒子添加未処理水と比べて粒子添加処理水のほうがゼータ電位の値がマイナス側に大きく振れていることが確認された。このことから、スケール成分の粒子としてガンマアルミナ粉末(酸化アルミニウム(Al
2O
3)粒子)が用いられる場合も、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とでゼータ電位の値が異なることが確認され、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とに関するゼータ電位差を確認することにより、改質対象水に対する水改質処理の効果(具体的には例えば、スケールの抑制効果や剥離性向上効果)の程度を評価することができ、延いては改質対象水と水改質処理との組合せの適切さ(言い換えると、有効性)を判定することができることが確認された。
【0228】
なお、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とに関するゼータ電位差の確認は、例えば、1回目から11回目、即ち0分から1500分(即ち、概ね1日=1440分程度)の範囲について行われるようにしてよい。
【0229】
図19に示す結果から、また、粒子添加未処理水ではゼータ電位の値が経時的に変動している(同図に示す例では特に、2850分までの範囲)のに対し、粒子添加処理水ではゼータ電位の値が経時的に大きくは変動しない(同図に示す例では特に、150分から3150分までの範囲)ことが確認された。このことから、粒子添加未処理水と粒子添加処理水とのそれぞれに関するゼータ電位の値の経時変化を検証することにより、改質対象水に対する水改質処理の効果の推移(言い換えると、継続時間)を把握したり、改質対象水に対する水改質処理の効果が安定した状態における当該効果の程度を評価したりすることができることが確認された。
【0230】
すなわち、本発明に係る水改質効果の評価方法は、改質対象水に対して水改質処理が施されていない未処理水と前記改質対象水に対して前記水改質処理が施された処理水とのそれぞれにスケール成分の粒子を投入して撹拌する処理と、前記スケール成分の粒子が投入された前記未処理水と前記処理水とのそれぞれについてゼータ電位を時系列で測定する処理と、測定した前記処理水の前記ゼータ電位の値の経時変化と前記未処理水の前記ゼータ電位の値の経時変化とに基づいて、前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果の継続時間と、前記改質対象水に対する前記水改質処理の効果が安定した状態における当該効果の程度と、のうちの少なくとも一方を評価する処理と、を含む、ようにしてもよい。
【0231】
(作用効果)
実施の形態に係る水改質効果の評価方法や水改質効果の評価装置によれば、スケール成分の粒子が投入された処理水のゼータ電位と未処理水のゼータ電位との差の絶対値に基づいて改質対象水に対する水改質処理の効果の程度を評価することができ、水改質処理の効果の程度を評価することが可能となる。
【0232】
実施の形態に係る水改質効果有無の判定方法や水改質効果有無の判定装置によれば、改質対象水の硬度の値と特性指標の値との組合せが水改質処理の効果が有る群と水改質処理の効果が無い群とのうちのどちらに属するかを判断することができ、水改質処理の効果の有無を予め判定することが可能となる。
【0233】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成態様は上記の実施の形態に限定されるものではなく、上記の実施の形態に、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変形や変更などが加えられた形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0234】
1 セラミックスファン
2 円盤基体
3 液流通堰堤部
4 貫通孔
5 ボス
6 湾曲凸状板
6a 湾曲板部
6b 傾斜板部
7 貫通流通孔
10A 冷却装置
10 冷却塔
11 補給水注水管
12 冷却水供給管
13 冷却水回収管
14 入口ルーバ
15 散水箱
16 充填材
17 水槽
18 送風機
19 エリミネータ
20 第1改質部
30 第2改質部
40 水冷式冷凍機
50 空調機
60 温調器
70 成形機
81 ストレーナ
82 ポンプ
83 フィルタ
100 冷却水循環システム
90 水改質効果の評価装置
90A 水改質効果有無の判定装置
91 記憶部
92 制御部
921 入力受部
922 算出部
923 評価部
924 作成部
925 判定部
93 表示部
94 入力部
99 通信バス