(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177143
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】温度センサ内蔵端末機器を用いた医薬品の品質管理システム及び品質管理方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20241212BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024092727
(22)【出願日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2023094990
(32)【優先日】2023-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】505300173
【氏名又は名称】株式会社アステム
(74)【代理人】
【識別番号】230110397
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 雅敏
(74)【代理人】
【識別番号】230128875
【弁護士】
【氏名又は名称】原 慎一郎
(74)【代理人】
【識別番号】230131945
【弁護士】
【氏名又は名称】山腰 健一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 博文
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】医薬品の温度を簡易に管理し、廃棄処分を大幅に削減して、持続可能な開発目標に寄与する医薬品の品質管理システム及び方法を提供する。
【解決手段】医薬品が収納された医薬箱11と接触するように配設された温度センサ内蔵の端末を備え、当該端末に備えられた温度センサで医薬箱の温度を適宜のサンプリングレートで測定するRFIDタグを用いた医薬品の品質管理システムであって、医薬品が収容された医薬箱と接触するように配設されたビーコン31、医薬品の使用後にビーコンを回収するための回収ボックス34及びビーコンから医薬品に係る情報を回収ボックスに備わるゲートウェイ32を介して受信するサーバー(クラウド)を備え、ビーコンが回収ボックスに投入されたとき、ゲートウェイは、当該ビーコンとペアリングを行うとともに、医薬品の識別番号、使用日、使用時刻、使用場所及び/又は使用機関に係る情報を受領して、サーバーへ送信する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品が収納された医薬箱と接触するように配設された温度センサ内蔵の端末機器を備え、当該端末機器に備えられた温度センサで前記医薬箱の温度を適宜のサンプリングレートで測定することを特徴とする医薬品品質管理システム。
【請求項2】
前記端末機器は、前記医薬箱に対して貼付部材で貼り付けて当該医薬箱に接触させている、請求項1に記載の医薬品品質管理システム。
【請求項3】
前記端末機器は、前記医薬箱と共に包装体に入れることにより当該医薬箱に接触させている、請求項1に記載の医薬品品質管理システム。
【請求項4】
前記端末機器による温度測定は5分~15分間隔である、請求項1~3のいずれかに記載の医薬品品質管理システム。
【請求項5】
前記端末機器はRFIDタグである、請求項1~4のいずれかに記載の医薬品品質管理システム。
【請求項6】
前記端末機器はビーコンである、請求項1~4のいずれかに記載の医薬品品質管理システム。
【請求項7】
前記医薬品の使用後に回収された、当該医薬品を収納していた医薬箱に接触していた前記RFIDタグ又はビーコンから、前記温度を測定した日時及び/又は場所を把握するようにした請求項5又は6に記載の医薬品品質管理システム。
【請求項8】
前記医薬箱の温度測定の結果、すべての測定温度が所定の範囲内に含まれる場合に、当該医薬箱に収納された医薬品を返品可能と判断する請求項1~7のいずれかに記載の医薬品品質管理システム。
【請求項9】
医薬品が収容された医薬箱と接触するように配設された端末機器と、前記医薬品の使用後に前記端末機器を回収するための回収ボックスと、前記端末機器から前記医薬品に係る情報を前記回収ボックスに備わる中継機を介して受信するサーバーとを備える情報管理システムであって、
前記端末機器が前記回収ボックスに投入されたとき、前記中継機は、当該端末機器とのペアリングを行うとともに、前記医薬品の識別番号、使用日、使用時刻、使用場所及び/又は使用機関に係る情報を受領して、前記サーバーへ送信することを特徴とする情報管理システム。
【請求項10】
前記サーバーは、前記中継機から受信した情報に基づき集計情報を生成する請求項9に記載の情報管理システム。
【請求項11】
前記集計情報は、前記医薬品の最適な供給量、供給頻度及び/又は供給場所に係る情報である請求項10に記載の情報管理システム。
【請求項12】
医薬品を収納した医薬箱と接触するように配設した端末機器に備えられた温度センサで当該医薬箱の温度を適宜のサンプリングレートで測定するステップを有することを特徴とする医薬品品質管理方法。
【請求項13】
前記端末機器は、前記医薬箱に対して貼付部材で貼り付けて当該医薬箱に接触させる、請求項12に記載の医薬品品質管理方法。
【請求項14】
前記端末機器は、前記医薬箱と共に包装体に入れることにより当該医薬箱に接触させる、請求項12に記載の医薬品品質管理方法。
【請求項15】
前記端末機器による温度測定は5分~15分間隔である、請求項12~14のいずれかに記載の医薬品品質管理方法。
【請求項16】
前記端末機器はRFIDタグである、請求項12~15のいずれかに記載の医薬品品質管理方法。
【請求項17】
前記端末機器はビーコンである、請求項12~15のいずれかに記載の医薬品品質管理方法。
【請求項18】
前記医薬品の使用後において、当該医薬品を収納していた医薬箱と接触していた前記RFIDタグ又はビーコンを回収ボックスに回収するステップを有し、前記医薬箱に係る温度測定の日時及び/又は場所を把握するステップを有する、請求項16又は17に記載の医薬品品質管理方法。
【請求項19】
前記医薬箱の温度測定の結果、すべての測定温度が所定の範囲内に含まれる場合に、当該医薬箱に収納された医薬品を返品可能と判断するステップを有する請求項12~18のいずれかに記載の医薬品品質管理方法。
【請求項20】
医薬品が収容された医薬箱と接触するように端末機器を配設するステップと、
前記医薬品の使用後に前記端末機器を回収ボックスに投入するステップと、
前記回収ボックスに備わる中継機が前記端末機器とペアリングを行うステップと、
前記中継機が前記医薬品の識別番号、使用日、使用時刻、使用場所及び/又は使用機関に係る情報を前記端末機器から受領するステップと、
前記中継機が当該情報をサーバーへ送信するステップとを有することを特徴とする情報管理方法。
【請求項21】
前記サーバーは、前記中継機から受信した情報に基づき集計情報を生成するステップを有する請求項20に記載の情報管理方法。
【請求項22】
前記集計情報は、前記医薬品の最適な供給量、供給頻度及び/又は供給場所に係る情報である請求項21に記載の情報管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサ内蔵端末機器を用いた医薬品の品質管理システム及び品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品などを冷却状態で保管する保管庫として、冷蔵庫のような温度管理が可能な恒温槽が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特に、病院などの医療施設においては、貴重な医薬品などを保管するための医薬品保冷庫として広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような医療施設において、貴重な医薬品はとても高価であり、保冷庫における厳密な品質管理が必要となってくる。しかしながら、従来の保冷庫における温度の管理は煩雑であることに加え、医薬品そのものの温度を直接管理するものではなく、保冷庫の温度から医薬品の品質を間接的に管理するものであり、医薬品の品質劣化の可能性を否定できず、納入元の医薬品卸への返品が困難であったため、所定の期間が経過したものは一律に廃棄処分としていた。このため、医薬品の廃棄ロスが生じてしまい、近年の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)にも反する結果となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、医薬品の温度を常時管理することで返品に耐えうる品質が担保されていることを簡易に評価し、医薬品の廃棄処分を大幅に削減してSDGsに寄与する医薬品の品質管理システム及び品質管理方法を提供することを課題とする。
【0007】
さらに本発明は、使用された医薬品に係る情報、すなわち医薬品の識別番号、使用日、使用時刻、使用場所及び/又は使用機関に係る情報を管理し、医薬品の廃棄の無駄を抑制するだけでなく、医薬品の供給元である医薬品メーカー等のマーケティング戦略立案に有用な情報の管理にも寄与する情報管理システム及び情報管理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明は、以下のような構成を有する。
[1]医薬品が収納された医薬箱と接触するように配設された温度センサ内蔵の端末機器を備え、当該端末機器に備えられた温度センサで前記医薬箱の温度を適宜のサンプリングレートで測定することを特徴とする医薬品品質管理システム。
[2]前記端末機器は、前記医薬箱に対して貼付部材で貼り付けて当該医薬箱に接触させている、[1]に記載の医薬品品質管理システム。
[3]前記端末機器は、前記医薬箱と共に包装体に入れることにより当該医薬箱に接触させている、[1]に記載の医薬品品質管理システム。
[4]前記端末機器による温度測定は5分~15分間隔である、[1]~[3]のいずれかに記載の医薬品品質管理システム。
[5]前記端末機器はRFIDタグである、[1]~[4]のいずれかに記載の医薬品品質管理システム。
[6]前記端末機器はビーコンである、[1]~[4]のいずれかに記載の医薬品品質管理システム。
[7]前記医薬品の使用後に回収された、当該医薬品を収納していた医薬箱に接触していた前記RFIDタグ又はビーコンから、前記温度を測定した日時及び/又は場所を把握するようにした[5]又は[6]に記載の医薬品品質管理システム。
[8]前記医薬箱の温度測定の結果、すべての測定温度が所定の範囲内に含まれる場合に、当該医薬箱に収納された医薬品を返品可能と判断する[1]~[7]のいずれかに記載の医薬品品質管理システム。
[9]医薬品が収容された医薬箱と接触するように配設された端末機器と、前記医薬品の使用後に前記端末機器を回収するための回収ボックスと、前記端末機器から前記医薬品に係る情報を前記回収ボックスに備わる中継機を介して受信するサーバーとを備える情報管理システムであって、前記端末機器が前記回収ボックスに投入されたとき、前記中継機は、当該端末機器とのペアリングを行うとともに、前記医薬品の識別番号、使用日、使用時刻、使用場所及び/又は使用機関に係る情報を受領して、前記サーバーへ送信することを特徴とする情報管理システム。
[10]前記サーバーは、前記中継機から受信した情報に基づき集計情報を生成する[9]に記載の情報管理システム。
[11]前記集計情報は、前記医薬品の最適な供給量、供給頻度及び/又は供給場所に係る情報である[10]に記載の情報管理システム。
[12]医薬品を収納した医薬箱と接触するように配設した端末機器に備えられた温度センサで当該医薬箱の温度を適宜のサンプリングレートで測定するステップを有することを特徴とする医薬品品質管理方法。
[13]前記端末機器は、前記医薬箱に対して貼付部材で貼り付けて当該医薬箱に接触させる、[12]に記載の医薬品品質管理方法。
[14]前記端末機器は、前記医薬箱と共に包装体に入れることにより当該医薬箱に接触させる、[12]に記載の医薬品品質管理方法。
[15]前記端末機器による温度測定は5分~15分間隔である、[12]~[14]のいずれかに記載の医薬品品質管理方法。
[16]前記端末機器はRFIDタグである、[12]~[15]のいずれかに記載の医薬品品質管理方法。
[17]前記端末機器はビーコンである、[12]~[15]のいずれかに記載の医薬品品質管理方法。
[18]前記医薬品の使用後において、当該医薬品を収納していた医薬箱と接触していた前記RFIDタグ又はビーコンを回収ボックスに回収するステップを有し、前記医薬箱に係る温度測定の日時及び/又は場所を把握するステップを有する、[16]又は[17]に記載の医薬品品質管理方法。
[19]前記医薬箱の温度測定の結果、すべての測定温度が所定の範囲内に含まれる場合に、当該医薬箱に収納された医薬品を返品可能と判断するステップを有する[12]~[18]のいずれかに記載の医薬品品質管理方法。
[20]医薬品が収容された医薬箱と接触するように端末機器を配設するステップと、前記医薬品の使用後に前記端末機器を回収ボックスに投入するステップと、前記回収ボックスに備わる中継機が前記端末機器とペアリングを行うステップと、前記中継機が前記医薬品の識別番号、使用日、使用時刻、使用場所及び/又は使用機関に係る情報を前記端末機器から受領するステップと、前記中継機が当該情報をサーバーへ送信するステップとを有することを特徴とする情報管理方法。
[21]前記サーバーは、前記中継機から受信した情報に基づき集計情報を生成するステップを有する[20]に記載の情報管理方法。
[22]前記集計情報は、前記医薬品の最適な供給量、供給頻度及び/又は供給場所に係る情報である[21]に記載の情報管理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医薬品が収納された医薬箱と接触するようにして、例えば帯状の温度センサ内蔵端末機器を配設し、当該端末機器内に埋設された温度センサで医薬箱の温度を任意のサンプリングタイムで測定し、端末内に埋設されたメモリ又はゲートウェイ等において前記温度に係る情報を収集・蓄積するようにしている。すなわち、医薬品が収納された医薬箱に端末機器を接触させ、これによって経時的に測定された温度をスマートフォンやゲートウェイ等の無線受信装置で一括してチェックすることができる。
【0010】
これにより、医薬品を保冷庫に貯蔵し、逐次保冷庫の温度を測定等して医薬品の温度管理をする場合に比較して、簡易かつ直接的に医薬品の管理を行うことができる。結果として、医薬品の温度状態を把握して返品要件を具備するか簡易かつ即時に判断することができ、無駄な医薬品の廃棄処分を大幅に削減してSDGsに寄与する医薬品の品質管理システム及び品質管理方法を提供することができる。
【0011】
また、本発明によれば、使用した後の端末機器を回収ボックスにて回収した際、当該端末機器と回収ボックスに備わる中継機がペアリングを行うことで、使用した医薬品の識別番号、使用日、使用時刻、使用場所及び/又は使用機関に係る情報を授受し、当該中継機からこれらの情報をサーバーへと送信させることができる。
【0012】
これにより、医薬品の廃棄の無駄を抑制するだけでなく、医薬品の供給元である医薬品メーカー等のマーケティング戦略立案に有用な情報の管理や集計情報の生成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のRFIDタグを用いた医薬品の品質管理システムの一例を示す図である。
【
図2】本発明のRFIDタグを用いた医薬品の品質管理システムの他の例を示す図である。
【
図3】本発明の情報管理システムの一例を示す図である。
【
図4】本発明の情報管理システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の端末機器としてRFIDタグを用いた医薬品の品質管理システムの一例を示す図である。
図1に示すように、本発明のRFIDタグを用いた医薬品の品質管理システム10は、医薬品が収納された医薬箱11と、この医薬箱11と接触するようにして配設された帯状のRFIDタグ12とを備える。医薬品は図示しないアンプルなどの瓶体に収容され、医薬箱11内に複数のアンプルを立設することもできるし、その他錠剤や粉状の医薬品が包袋体に充填された状態で収納することもでき、その態様は特に限定されるものではない。
【0015】
RFIDタグ12は、汎用のものを用いることができ、その内部には図示しないアンテナ、メモリ、温度センサ及び電池等を具備している。
【0016】
本例では、医薬箱11の大きさ、すなわち医薬箱11を画定する長さ及び幅等に比較してRFIDタグ12の大きさ、すなわち長さ及び幅等が小さい。このため、RFIDタグ12を医薬箱11に接触させるには、
図1に示すように、セキュリティテープ等の貼付部材13でRFIDタグ12を医薬箱11に貼付する。
【0017】
本例では、医薬品が収納された医薬箱11と接触するようにしてRFIDタグ12を配設し、当該RFIDタグ12内に埋設された温度センサで医薬箱11の温度を経時的に測定し、RFIDタグ12内に埋設されたメモリに前記温度に係る情報を蓄積するようにしている。すなわち、医薬品が収納された医薬箱11にRFIDタグ12を接触させ、これによって経時的に測定された温度をスマートフォンなどの無線受信装置で一括してチェックすることができる。
【0018】
このようにして、医薬品を保冷庫に貯蔵し、逐次保冷庫の温度を測定等して医薬品の温度管理をする場合に比較して、簡易かつ直接的に医薬品の管理を行うことができる。結果として、医薬品の温度を簡易に管理し、医薬品の廃棄処分を大幅に削減してSDGsに寄与する医薬品の品質管理システム及び品質管理方法を提供することができる。
【0019】
但し、医薬箱11、すなわち医薬品の保管に保冷庫を使用することを排除するものではなく、医薬品の保存温度が保冷庫を用いないと維持できないような場合は適宜併用してもよい。本発明は、保冷庫の使用そのものを排除するものでなく、その温度管理作業を排除するものである。
【0020】
なお、医薬品の保管状態を適切に管理するという観点からは、RFIDタグ12による医薬箱11の温度測定を5分~15分の間隔で行うことが好ましく、さらには15分間隔で行うことが好ましい。このような場合、RFIDタグ12内の電池は約50日で消耗し、当該RFIDタグ12は寿命となるので、RFIDタグ12の表面に使用期限(使用可能日時)を明記しておくことが好ましい。
【0021】
RFIDタグ12の使用期間内において、医薬箱11、すなわち医薬品が返品要件を満たす所定の温度内に常時維持されていた場合、医薬品の効能はそのまま持続されていると判断できるので、使用せずに残存した医薬品の返品を販売業者等は受け入れることができる。一方、医薬箱11、すなわち医薬品が所定の温度内に含まれていない場合があるときは、例えば、逸脱の程度が大きい場合は廃棄となるが、小さい場合は設定条件によっては販売可能との判断となる場合がある。
【0022】
なお、上記の状態は温度管理にRFIDタグ12を用いているので、当該RFIDタグ12内のメモリからの情報をスマートフォンなどの無線受信装置で一括してチェックすることができる。
【0023】
(第2実施形態)
図2は、本発明のRFIDタグを用いた医薬品の品質管理システムの他の例を示す図である。
図2に示すように、本発明の医薬品の品質管理システム10は、医薬品が収納された医薬箱11と、この医薬箱11と接触するようにして配設された帯状のRFIDタグ12とを備える。上記例と同様に、医薬品は図示しないアンプルなどの瓶体に収容され、医薬箱11内に複数のアンプルが立設するようにして配設することもできるし、その他、錠剤や粉状の医薬品が包袋体に充填された状態で配設することもでき、その態様は特に限定されるものではない。
【0024】
RFIDタグ12は、汎用のものを用いることができ、その構成は上述したような構成を取ることができる。
【0025】
本例では、医薬箱11の大きさ、すなわち医薬箱11を画定する長さ及び幅等に比較してRFIDタグ12の大きさ、すなわち長さ及び幅等が大きい。したがって、RFIDタグ12を医薬箱11に接触させるには、
図2に示すように、医薬箱11及びRFIDタグ12を、ビニール袋やポリ袋等の包装体23に入れて収納する。
【0026】
本例でも、医薬品が収納された医薬箱11と接触するようにして帯状のRFIDタグ12を配設し、当該RFIDタグ12内に埋設された温度センサで医薬箱11の温度を経時的に測定し、RFIDタグ12内に埋設されたメモリに前記温度を蓄積するようにしている。すなわち、医薬品が収納された医薬箱11にRFIDタグ12を接触させ、これによって経時的に測定された温度をスマートフォンなどの無線受信装置で一括してチェックすることができる。
【0027】
したがって、医薬品を保冷庫に貯蔵し、逐次保冷庫の温度を測定等して医薬品の温度管理をする場合に比較して、簡易かつ直接的に医薬品の管理を行うことができる。結果として、医薬品の温度を簡易に管理し、医薬品の廃棄処分を大幅に削減してSDGsに寄与する医薬品の品質管理システム及び品質管理方法を提供することができる。
【0028】
なお、保冷庫の使用自体を排除するものでなく、保冷庫の温度管理を排除するものであることは上記例と同様である。
【0029】
なお、医薬品の保管状態を適切に管理するという観点からは、RFIDタグ12による医薬箱11の温度測定を5分~15分の間隔で行うことが好ましく、さらには15分間隔で行うことが好ましい。このような場合、RFIDタグ12内の電池は約50日で消耗し、当該RFIDタグ12は寿命となるので、RFIDタグ12の表面に使用期限(使用可能日時)を明記しておくことが好ましい。
【0030】
RFIDタグ12の使用期間内において、医薬箱11、すなわち医薬品が全て所定の温度内に含まれている場合、医薬品の効能はそのまま持続されているので、使用せずに残存した医薬品は販売業者等に返品することができる。一方、医薬箱11、すなわち医薬品が所定の温度内に含まれていない場合があるときは、例えば、逸脱の程度が大きい場合は廃棄となるが、小さい場合は販売可能となる場合がある。
【0031】
なお、上記の状態は温度管理にRFIDタグ12を用いているので、当該RFIDタグ12内のメモリからの情報をスマートフォンなどの無線受信装置で一括してチェックすることができる。
【0032】
(第3実施形態)
本実施形態は第1実施形態の変形例であり、RFIDタグの代わりにビーコンを用いている。ビーコン31は、汎用のものを用いることができ、Bluetooth等により付近の中継機(ゲートウェイ)と通信が可能な端末機器であり、RFIDタグと比べて低コストで消費電力が少ない点でメリットがある。
【0033】
本例においても、医薬品が収納された医薬箱11と接触するようにしてビーコン31を配設し、当該ビーコン31内に埋設された温度センサで医薬箱11の温度を経時的に測定し、ショーケース等に配設したゲートウェイ32で前記温度を受信し、クラウド33で蓄積及び管理するようにしている。すなわち、医薬品が収納された医薬箱11にビーコン31を接触させ、これによって経時的に測定された温度をゲートウェイ32などの受信装置で一括してチェックすることができる。
【0034】
したがって、医薬品を保冷庫に貯蔵し、逐次保冷庫の温度を測定等して医薬品の温度管理をする場合に比較して、簡易かつ直接的に医薬品の管理を行うことができる。結果として、医薬品の温度を簡易に管理し、医薬品の廃棄処分を大幅に削減してSDGsに寄与する医薬品の品質管理システム及び品質管理方法を提供することができることは上記と同様である。
【0035】
なお、医薬箱、すなわち医薬品が所定の温度内に含まれていない場合があるときは、例えば、逸脱の程度が大きい場合は廃棄となるが、医薬箱が未開封であって、逸脱の程度が小さい場合は返品して販売可能となる場合がある。
【0036】
さらに、使用したビーコン31、すなわち医薬箱を開封して医薬品を使用した後の、当該医薬箱に接触させたビーコン31を回収ボックス34にて回収する。ビーコン31が回収ボックス34に投入されたときに、回収ボックス34に配設されたゲートウェイ32は当該ビーコン31とのペアリングを行い、当該ビーコン31を接触させていた医薬品の識別番号に係る情報を受信する。さらに、当該ビーコン31が回収ボックス34に投入された日時から当該医薬品の使用日及び/又は使用時刻に係る情報を把握する。また、当該ビーコン31とペアリングを行ったゲートウェイ32の位置情報から、医薬品の使用場所及び/又は使用機関に係る情報を把握する。ゲートウェイ32は、このようにして把握した医薬品に係る情報、すなわち医薬品の識別番号、使用日、使用時刻、使用場所及び/又は使用機関に係る情報をクラウド33へ送信し、クラウド33は当該情報を蓄積及び管理することができる。なお、ゲートウェイ32は、回収ボックス34に投入されたビーコン31とのペアリングが可能であれば備え方は問わず、回収ボックス34の内部又は外部に備えていてもよく、回収ボックス34と一体として備えていてもよい。
【0037】
クラウド33は、ゲートウェイ32から受信した当該医薬品に係る情報に基づき集計情報を生成することもできる。たとえば、クラウド33は、医薬品の使用場所及び/又は使用機関ごとに、所定の期間内に使用された医薬品の数量を算出することで、使用場所等ごとに医薬品の最適な供給量や供給頻度に関する集計情報を生成することができる。あるいは、クラウド33は、所定の期間内に使用された医薬品の数量が多い使用場所等を特定することで、最適な供給場所に関する集計情報を生成することができる。なお、クラウド33は、当該集計情報を医薬品の製造元である医薬品メーカー等に備わるPCや携帯端末その他任意の端末装置へ送信することも可能である。このとき、クラウド33は、所定の料金を支払う等の条件を満たした端末のみに集計情報を送信するように構成することやリアルタイムに集計情報を送信するように構成することも任意である。これにより、医薬品メーカー等は、医薬品の廃棄の無駄を抑制できるだけでなく、マーケティング戦略を図るために有用な情報を得ることをも可能である。
【0038】
なお、その他の特徴及び作用効果については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。本実施形態においても、保冷庫の使用自体を排除するものでなく、保冷庫の温度管理を排除するものであることは上記例と同様である。
【0039】
また、RFIDタグに代えてビーコン(及びゲートウェイ等)を使用することは、第1実施形態の変形例のみならず、第2実施形態の変形例としても適用できる。
【0040】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらは例示であり、本発明の技術的範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の本旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10 RFIDタグを用いた医薬品の品質管理システム
11 医薬箱
12 RFIDタグ
13 貼付部材
23 包袋体
31 ビーコン
32 ゲートウェイ
33 サーバー(クラウド)
34 回収ボックス