(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177150
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】感放射線性組成物、硬化物、表示装置、撮像装置及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20241212BHJP
C08F 220/68 20060101ALI20241212BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G03F7/027 502
C08F220/68
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093057
(22)【出願日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2023095037
(32)【優先日】2023-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023113142
(32)【優先日】2023-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023170011
(32)【優先日】2023-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 和佳菜
(72)【発明者】
【氏名】木下 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】高田 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】秋池 利之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓之
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA04
2H197CA05
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197HA04
2H197HA05
2H225AC21
2H225AC31
2H225AC33
2H225AC35
2H225AC36
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC52
2H225AC64
2H225AD02
2H225AD06
2H225AD07
2H225AN02P
2H225AN11P
2H225AN25P
2H225AN26P
2H225AN31P
2H225AN33P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN41P
2H225AN65P
2H225AN68P
2H225AN75P
2H225AN84P
2H225BA05P
2H225BA32P
2H225CA19
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100BA02R
4J100BA03R
4J100BA15P
4J100BA15Q
4J100BA16P
4J100BC36P
4J100BC43R
4J100BC48P
4J100DA63
4J100JA37
(57)【要約】
【課題】低温の加熱による流動化によって、所望形状で高屈折率の硬化物を形成することができる感放射線性組成物を提供すること。
【解決手段】(A)成分:下記式(1)で表される化合物(ただし、(メタ)アクリロイルオキシ基を有さない。)と、(B)成分:光重合開始剤と、(C)成分:重合性化合物(ただし、(D)成分を除く)と、(D)成分:分子内にフルオレン構造、酸性基、及び、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物とを含む感放射線性組成物。
(式(1)中、各符号の定義は、明細書に記載の通りである。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:下記式(1)で表される化合物(ただし、(メタ)アクリロイルオキシ基を有さない。)と、
(B)成分:光重合開始剤と、
(C)成分:重合性化合物(ただし、(D)成分を除く)と、
(D)成分:分子内にフルオレン構造、酸性基、及び、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と
を含む感放射線性組成物。
【化1】
(式(1)中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して芳香環基である。
R
1及びR
2は、それぞれ独立して1価の置換基であるか、又はR
1とR
2とが互いに結合してAr
1及びAr
2と共に構成される縮合環構造を表す。前記縮合環構造は、2個の芳香環が単結合、-O-、-S-、-NR
5-、カルボニル基、メチレン基、又はエチレン基により連結された構造を有する。R
5は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。
R
3及びR
4は、それぞれ独立して1価の置換基である。
m1及びm2は、それぞれ独立して0~7の整数である。
k1及びk2は、それぞれ独立して0~4の整数である。k1が2以上の整数である場合、複数のR
3はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
3が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。k2が2以上の整数である場合、複数のR
4はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
4が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。
式(1)中にR
1~R
4が複数存在する場合、複数のR
1~R
4は同一又は異なる。)
【請求項2】
前記(D)成分が、下記式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の感放射線性組成物。
【化2】
(式(2)中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して芳香環基である。
R
1及びR
2は、それぞれ独立して1価の置換基であるか、又はR
1とR
2とが互いに結合してAr
1及びAr
2と共に構成される縮合環構造を表す。前記縮合環構造は、2個の芳香環が単結合、-O-、-S-、-NR
5-、カルボニル基、メチレン基、又はエチレン基により連結された構造を有する。R
5は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。
R
3及びR
4は、それぞれ独立して1価の置換基である。
X
1及びX
2は、それぞれ独立して下記式(2X)で表される基である。
n1及びn2は、それぞれ独立して1~7の整数である。
m1及びm2は、それぞれ独立して0~6の整数である。
k1及びk2は、それぞれ独立して0~4の整数である。k1が2以上の整数である場合、複数のR
3はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
3が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。k2が2以上の整数である場合、複数のR
4はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
4が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。
ただし、R
1~R
4、X
1及びX
2のうち、少なくとも1つは酸性基を有し、式(2)で表される化合物は、少なくとも1つの酸性基を有する。
式(2)中にR
1~R
4、X
1及びX
2が複数存在する場合、複数のR
1~R
4、X
1及びX
2は同一又は異なる。)
【化3】
(式(2X)中、R
8は炭素数2~4のアルカンジイル基である。
R
6は、水素原子又はメチル基である。
Xは、0又は1である。
R
9は、水素原子又は-OY
1である。
Y
1は、水素原子又は「-C(=O)-R
7-COOH」で表される基である。R
7は炭素数1以上の2価の有機基である。
pは0~4の整数である。pが2以上の場合、複数のR
8は同一又は異なる。
「*」は結合手を表す。)
【請求項3】
サーマルフロー方式によるマイクロレンズ製造用である、請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の感放射線性組成物を硬化させた硬化物。
【請求項5】
波長550nmでの屈折率が1.640以上である、請求項4に記載の硬化物。
【請求項6】
光学部材用である、請求項4に記載の硬化物。
【請求項7】
請求項4に記載の硬化物を含む、表示装置。
【請求項8】
請求項4に記載の硬化物を含む、撮像装置。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載の感放射線性組成物を基材上に塗布する工程と、
前記基材上に塗布した感放射線性組成物に放射線を照射する工程と、
放射線を照射した後の感放射線性組成物を現像する工程と、
現像後の感放射線性組成物を加熱する工程と
を含む、硬化物の製造方法。
【請求項10】
前記現像後の感放射線性組成物を加熱する工程における加熱温度が100℃以下である、請求項9に記載の硬化物の製造方法。
【請求項11】
前記現像後の感放射線性組成物を加熱する工程により、パターンを溶融してマイクロレンズを形成する、請求項9に記載の硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性組成物、硬化物、表示装置、撮像装置及び硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサなどの各種イメージセンサは、カメラ等の撮像装置における固体撮像素子として用いられている。
【0003】
固体撮像素子には、受光素子(フォトダイオード)に光を集めてセンサ感度を向上させるために、通常、微小な集光レンズ(以下「マイクロレンズ」ともいう。)が規則的に配置されている。また、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子や液晶表示素子等の各種表示素子では、光取り出し効率の向上や視野角調整等を目的に、各画素に対し光出射側にマイクロレンズを設けた構造の表示素子も採用されている。さらに、有機EL表示装置等の自発光ディスプレイにおいて、高屈折材料を用いてマイクロレンズを形成することで、輝度向上や視野角調整を図ることが試みられている。
【0004】
マイクロレンズを形成する方法の1つとしては、サーマルフロー方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。サーマルフロー方式は、感放射線性組成物を用いて、マイクロレンズに対応するパターンを受光素子や発光素子等の上部に形成した後、該形成されたパターンに対し加熱処理を行うことによってパターンを流動させ、これにより半球状のマイクロレンズアレイを形成する方法である。
【0005】
また、従来、有機EL素子や液晶表示素子において、感放射線性組成物を基材上に塗布し、露光及び現像の処理によりパターンを形成した後、加熱処理を行うことにより平坦化膜を形成することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記マイクロレンズや平坦化膜等として、高屈折率のマイクロレンズや平坦化膜等を形成する方法としては、金属酸化物等の高屈折率フィラーを用いる方法が知られている。しかしながら、金属酸化物を用いる方法は、製造ラインの洗浄が煩雑になり、装置が汚染しやすいなどのデメリットが生じる場合がある。また、高屈折率フィラーを多く含む材料の場合、露光及び現像後のパターンは熱による流動が起こりにくく、加熱処理(サーマルフロー)によりマイクロレンズや平坦化膜等を形成することが困難となることが多い。
【0008】
なお、金属酸化物等の高屈折率フィラーを用いずに、加熱処理(サーマルフロー)によりマイクロレンズや平坦化膜等を形成する方法も知られているが、従来のこの方法では、加熱処理の際に150℃以上の高温プロセスが必要になることが多く、従来の方法では、低温処理が要求されるプロセスに適合しないことが懸念される。特に有機EL素子等において光取り出し効率向上や視野角調整等を目的に各画素に対し光出射側にマイクロレンズを設ける場合や、有機EL素子等において平坦化膜を設ける場合、有機EL素子の製造工程では、有機発光材料が熱により劣化しやすいことを考慮し、マイクロレンズや平坦化膜を低温(例えば100℃以下)で形成可能であることが求められることがある。
【0009】
また、従来の感放射線性組成物を用いて、サーマルフロー方式によりマイクロレンズを形成した場合、サーマルフローにより、形成されるマイクロレンズの基材(被着体)に接する部分(以下「裾」ともいう。)が濡れ広がり、形成されたマイクロレンズ形状が所望の形状とは大きく異なる形状になることが分かった。また、加熱処理により平坦化膜を形成する場合も、サーマルフローにより、形成される平坦化膜の基材(被着体)に接する部分(裾)が濡れ広がると、形成される平坦化膜は、テーパー角が小さくなりすぎたり、コンタクトホールが埋まるなど、所望の膜形状とは大きく異なる形状になると考えられる。
【0010】
本発明は前記課題に鑑みなされたものであり、低温の加熱による流動化によって、所望形状で高屈折率の硬化物を形成することができる感放射線性組成物を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の感放射線性組成物、硬化物、表示装置、撮像装置及び硬化物の製造方法が提供される。
本開示の構成例を以下に示す。
【0012】
[1] (A)成分:下記式(1)で表される化合物(ただし、(メタ)アクリロイルオキシ基を有さない。)と、
(B)成分:光重合開始剤と、
(C)成分:重合性化合物(ただし、(D)成分を除く)と、
(D)成分:分子内にフルオレン構造、酸性基、及び、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と
を含む感放射線性組成物。
【0013】
【化1】
(式(1)中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して芳香環基である。
R
1及びR
2は、それぞれ独立して1価の置換基であるか、又はR
1とR
2とが互いに結合してAr
1及びAr
2と共に構成される縮合環構造を表す。前記縮合環構造は、2個の芳香環が単結合、-O-、-S-、-NR
5-、カルボニル基、メチレン基、又はエチレン基により連結された構造を有する。R
5は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。
R
3及びR
4は、それぞれ独立して1価の置換基である。
m1及びm2は、それぞれ独立して0~7の整数である。
k1及びk2は、それぞれ独立して0~4の整数である。k1が2以上の整数である場合、複数のR
3はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
3が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。k2が2以上の整数である場合、複数のR
4はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
4が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。
式(1)中にR
1~R
4が複数存在する場合、複数のR
1~R
4は同一又は異なる。)
【0014】
[2] 前記(D)成分が、下記式(2)で表される化合物である、前記[1]に記載の感放射線性組成物。
【0015】
【化2】
(式(2)中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して芳香環基である。
R
1及びR
2は、それぞれ独立して1価の置換基であるか、又はR
1とR
2とが互いに結合してAr
1及びAr
2と共に構成される縮合環構造を表す。前記縮合環構造は、2個の芳香環が単結合、-O-、-S-、-NR
5-、カルボニル基、メチレン基、又はエチレン基により連結された構造を有する。R
5は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。
R
3及びR
4は、それぞれ独立して1価の置換基である。
X
1及びX
2は、それぞれ独立して下記式(2X)で表される基である。
n1及びn2は、それぞれ独立して1~7の整数である。
m1及びm2は、それぞれ独立して0~6の整数である。
k1及びk2は、それぞれ独立して0~4の整数である。k1が2以上の整数である場合、複数のR
3はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
3が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。k2が2以上の整数である場合、複数のR
4はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
4が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。
ただし、R
1~R
4、X
1及びX
2のうち、少なくとも1つは酸性基を有し、式(2)で表される化合物は、少なくとも1つの酸性基を有する。
式(2)中にR
1~R
4、X
1及びX
2が複数存在する場合、複数のR
1~R
4、X
1及びX
2は同一又は異なる。)
【0016】
【化3】
(式(2X)中、R
8は炭素数2~4のアルカンジイル基である。
R
6は、水素原子又はメチル基である。
Xは、0又は1である。
R
9は、水素原子又は-OY
1である。
Y
1は、水素原子又は「-C(=O)-R
7-COOH」で表される基である。R
7は炭素数1以上の2価の有機基である。
pは0~4の整数である。pが2以上の場合、複数のR
8は同一又は異なる。
「*」は結合手を表す。)
【0017】
[3] サーマルフロー方式によるマイクロレンズ製造用である、前記[1]又は[2]に記載の感放射線性組成物。
【0018】
[4] 前記[1]~[3]のいずれかに記載の感放射線性組成物を硬化させた硬化物。
[5] 波長550nmでの屈折率が1.640以上である、前記[4]に記載の硬化物。
【0019】
[6] 光学部材用である、前記[4]又は[5]に記載の硬化物。
[7] 前記[4]~[6]のいずれかに記載の硬化物を含む、表示装置。
[8] 前記[4]~[6]のいずれかに記載の硬化物を含む、撮像装置。
【0020】
[9] 前記[1]~[3]のいずれかに記載の感放射線性組成物を基材上に塗布する工程と、
前記基材上に塗布した感放射線性組成物に放射線を照射する工程と、
放射線を照射した後の感放射線性組成物を現像する工程と、
現像後の感放射線性組成物を加熱する工程と
を含む、硬化物の製造方法。
【0021】
[10] 前記現像後の感放射線性組成物を加熱する工程における加熱温度が100℃以下である、前記[9]に記載の硬化物の製造方法。
【0022】
[11] 前記現像後の感放射線性組成物を加熱する工程により、パターンを溶融してマイクロレンズを形成する、前記[9]又は[10]に記載の硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本開示の感放射線性組成物によれば、低温での加熱による流動化によって、所望形状で高屈折率の硬化物(例:マイクロレンズ及び平坦化膜)、特にマイクロレンズを容易に形成することができる。こうした本開示の感放射線性組成物は、マイクロレンズ製造用又は平坦化膜形成用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】マイクロレンズパターンを正面から視た場合の拡大写真である。(a)はポストベーク前の状態であり、(b)はポストベーク後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施態様に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
【0026】
本明細書において「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。
「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び/又は分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。
「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有する基も含む。また、前記脂環式炭化水素の構造は、単環でもよく縮合環でもよい。
「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。また、前記芳香環構造は、単環でもよく縮合環でもよい。なお、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する環構造は、置換基として炭化水素基を有していてもよい。
【0027】
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を包含する意味である。「(メタ)アクリロイル基」は、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」を包含する意味である。「アルカリ可溶性」とは、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に25℃で溶解又は膨潤可能であることを意味する。
【0028】
≪感放射線性組成物≫
本開示の感放射線性組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、以下の(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する。なお、各成分については特に言及しない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
(A)成分:下記式(1)で表される化合物(ただし、(メタ)アクリロイルオキシ基を有さない。)
(B)成分:光重合開始剤
(C)成分:重合性化合物(ただし、(D)成分を除く。)
(D)成分:分子内にフルオレン構造、酸性基、及び、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物
【0029】
【化4】
(式(1)中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して芳香環基である。
R
1及びR
2は、それぞれ独立して1価の置換基であるか、又はR
1とR
2とが互いに結合してAr
1及びAr
2と共に構成される縮合環構造を表す。前記縮合環構造は、2個の芳香環が単結合、-O-、-S-、-NR
5-、カルボニル基、メチレン基、又はエチレン基により連結された構造を有する。R
5は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。
R
3及びR
4は、それぞれ独立して1価の置換基である。
m1及びm2は、それぞれ独立して0~7の整数である。
k1及びk2は、それぞれ独立して0~4の整数である。k1が2以上の整数である場合、複数のR
3はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
3が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。k2が2以上の整数である場合、複数のR
4はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
4が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。
式(1)中にR
1~R
4が複数存在する場合、複数のR
1~R
4は同一又は異なる。)
【0030】
[(A)成分:式(1)で表される化合物]
前記(A)成分は、式(1)で表される化合物であり、(メタ)アクリロイルオキシ基を有さないフルオレン構造を有する化合物である。
このような(A)成分を用いることにより、低温での加熱による流動化の際でも裾の濡れ広がりが抑制され、所望の形状で高屈折率の硬化物を容易に形成することができる。
【0031】
前記式(1)において、Ar1で表される芳香環基は、芳香環から(m1+1)個の水素原子を取り除いた基である。Ar2で表される芳香環基は、芳香環から(m2+1)個の水素原子を取り除いた基である。Ar1及びAr2が有する芳香環は、単環でもよく縮合環でもよい。
Ar1及びAr2が有する芳香環としては、芳香族炭化水素環が好ましく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられる。これらのうち、Ar1及びAr2が有する芳香環は、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましい。
R1及びR2が1価の置換基である場合、高屈折率化を図り、かつ耐熱性を高くできる等の点で、Ar1及びAr2は縮合多環式芳香族炭化水素環を有することが好ましく、ナフタレン環を有することがより好ましい。
【0032】
R1及びR2がそれぞれ独立して1価の置換基である場合、当該1価の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、水酸基、酸性基(カルボキシ基、スルホン酸基、フェノール性水酸基、チオール基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホンアミド基等)、炭素数1~10のアシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数6~12のアラルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のヒドロキシアルコキシ基、炭素数3~12のシクロアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数6~12のアラルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数3~12のシクロアルキルチオ基、炭素数6~12のアリールチオ基、炭素数6~12のアラルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基(-NRARB[該RA及びRBは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~10のアルキル基である。])、-NH-C(=O)-R[該Rは、後述するR3、R4と同様の置換基を有していてもよい、炭素数5~20の脂環式炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。]、-NH-SO2-R[該Rは、前記-NH-C(=O)-RにおけるRと同義である。]、-NH-C(=O)-NH-SO2-R[該Rは、前記-NH-C(=O)-RにおけるRと同義である。]、-O-C(=O)-NH-SO2-R[該Rは、前記-NH-C(=O)-RにおけるRと同義である。]等が挙げられる。これらのうち、R1及びR2で表される1価の置換基は、水酸基、カルボキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~12のアラルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のヒドロキシアルコキシ基、アミノ基、-NH-C(=O)-R、又は-NH-SO2-Rであることが好ましく、水酸基、カルボキシ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のヒドロキシアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、アミノ基、-NH-C(=O)-R、又は-NH-SO2-Rがより好ましい。
【0033】
R1及びR2が、互いに結合してAr1及びAr2と共に構成される縮合環構造を表す場合、当該縮合環構造は、Ar1中の芳香環とAr2中の芳香環とが、単結合、-O-、-S-、-NR5-、カルボニル基、メチレン基又はエチレン基により連結された構造を有する。R1及びR2が互いに結合して構成される縮合環構造としては、フルオレン環、アントロン環、キサンテン環、チオキサンテン環等が挙げられる。これらのうち、キサンテン環が好ましい。
【0034】
m1及びm2は、それぞれ独立して0~7の整数であり、Ar1及びAr2の種類に応じて選択することができる。m1及びm2は、いずれか一方が1以上であることが好ましく、いずれも1以上であることがより好ましい。m1及びm2の上限は、3が好ましく、2がより好ましい。
m1及びm2のいずれかが1以上である場合、R1及びR2の少なくとも1つにOR’基が含まれることが好ましい。前記R’は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基、又は-(R’’-O)n-H[該R’’は炭素数1~4のアルキレン基であり、nは1~10の整数である。]であり、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のヒドロキシアルキル基がより好ましい。
該OR’基は、Ar1及び/又はAr2に直接結合していてもよく、例えば、前記-NH-C(=O)-RにおけるRに含まれていてもよい。
【0035】
R3及びR4で表される1価の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、水酸基、酸性基(カルボキシ基、スルホン酸基、フェノール性水酸基、チオール基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホンアミド基等)、炭素数1~10のアシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数6~12のアラルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のヒドロキシアルコキシ基、炭素数3~12のシクロアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数6~12のアラルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数3~12のシクロアルキルチオ基、炭素数6~12のアリールチオ基、炭素数6~12のアラルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基(-NRARB[該RA及びRBは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~10のアルキル基である。])、-NH-C(=O)-R[該Rは、R1及びR2の-NH-C(=O)-RにおけるRと同義である。]、-NH-SO2-R[該Rは、R1及びR2の-NH-C(=O)-RにおけるRと同義である。]、-NH-C(=O)-NH-SO2-R[該Rは、R1及びR2の-NH-C(=O)-RにおけるRと同義である。]、-O-C(=O)-NH-SO2-R[該Rは、R1及びR2の-NH-C(=O)-RにおけるRと同義である。]等が挙げられる。R3及びR4で表される1価の置換基は、水酸基、カルボキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基又は炭素数6~12のアラルキル基であることが好ましく、水酸基、カルボキシ基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基がより好ましい。
【0036】
k1が2以上の整数である場合、複数のR3はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR3が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。k2が2以上の整数である場合、複数のR4はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR4が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。該縮合環としては、例えば、ナフタレン環、インデン環、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられ、これらの中でもナフタレン環が好ましい。
なお、k1が2の整数であり、2つのR3が互いに結合してR3が結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成し、k2が0の場合、(A)成分は、ベンゾフルオレン骨格を有する化合物であると言える。
【0037】
k1及びk2は、0~4の整数であり、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0038】
化合物(A)の好ましい具体例としては、下記式(A-1)~(A-12)のそれぞれで表される化合物が挙げられる。
【0039】
【0040】
【0041】
(A)成分の分子量は、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下であり、下限は特に制限されないが、好ましくは200以上、より好ましくは350以上である。
(A)成分の分子量が前記範囲にあると、低温での加熱による流動化の際でも裾の濡れ広がりが抑制され、所望の形状で高屈折率の硬化物を容易に形成することができる。
【0042】
本組成物における(A)成分の含有量は、後述する(D)成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
(A)成分の含有量が前記範囲にあることで、高屈折率の硬化物を容易に得ることができるとともに、比較的低温(例えば100℃以下)で硬化物を流動化させることができ、低温での加熱による流動化の際でも裾の濡れ広がりが抑制され、所望の形状の硬化物を容易に得ることができる。
【0043】
[(B)成分:光重合開始剤]
(B)成分としては特に限定されないが、放射線に感応してラジカルを発生し、重合を開始できる光ラジカル重合開始剤が好ましい。(B)成分としては、O-アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。
【0044】
O-アシルオキシム化合物としては、例えば、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、1-(9-エチル-6-ベンゾイル-9H-カルバゾール-3-イル)-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、1-〔9-n-ブチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)が挙げられる。
【0045】
アセトフェノン化合物としては、例えば、α-アミノケトン化合物、α-ヒドロキシケトン化合物が挙げられる。
α-アミノケトン化合物の具体例としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オンが挙げられる。
α-ヒドロキシケトン化合物の具体例としては、1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。
【0046】
ビイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールが挙げられる。
【0047】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0048】
本組成物における(B)成分の含有量は、後述する(C)成分及び(D)成分の合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7.5質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
(B)成分の含有量が前記範囲にあることで、良好な硬化性と透明性とを示す感放射線性組成物を容易に得ることができる。
【0049】
[(C)成分:重合性化合物]
(C)成分である重合性化合物は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。重合性炭素-炭素不飽和結合を有する化合物は、後述する(D)成分と共重合可能な成分であり、放射線照射に伴い、(D)成分と共に重合体を生成し得る化合物である。ただし、(C)成分は(D)成分とは異なる化合物である。
【0050】
重合性化合物として下記(D)成分のみを用いる場合、高屈折率の硬化物を容易に形成することができる一方で、加熱処理によりパターンを所望の形状(特にマイクロレンズ形状)にしようとすると、例えば、120℃以上の高温プロセスが必要になる場合が多い。また、重合性化合物として化合物(D)のみを用いる場合、本組成物を十分に硬化するためには、高露光量が必要になる場合が多い。これに対し、(D)成分と(C)成分とを併用することで、例えば、100℃以下での低温プロセスによってパターンの溶融、流動化を実現でき、所望の形状(特にマイクロレンズ形状)の硬化物を容易に得ることができる。また、(C)成分を用いることで、硬化速度が向上し、比較的低い露光量で硬化が可能となる。
【0051】
所望の形状の硬化物を形成するための加熱処理の温度をできるだけ低くすることができる等の点から、(C)成分の分子量は、好ましくは1200以下、より好ましくは800以下、さらに好ましくは600以下である。また、高屈折率であって、耐溶剤性に優れ、低揮発性等の信頼性に優れる硬化物を容易に形成することができる等の点から、(C)成分の分子量は100以上が好ましい。(C)成分の分子量はマススペクトルで測定できる。
【0052】
(C)成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基含有化合物、鎖状ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、マレイミド化合物が挙げられる。これらの化合物は、(D)成分との共重合性が良好である点や、可塑性が比較的高い等の点で好ましい。
【0053】
(C)成分は、重合性基を1つ有する単官能化合物及び重合性基を2つ以上有する多官能化合物のいずれであってもよい。また、(C)成分として単官能化合物と多官能化合物とを併用してもよい。
【0054】
(C)成分が単官能化合物である場合の具体例としては、鎖状構造からなる(メタ)アクリル酸エステル、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド化合物、鎖状ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、マレイミド化合物が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基含有化合物が好ましく、鎖状構造からなる(メタ)アクリル酸エステル、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル及び芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種である(メタ)アクリロイル基含有化合物がより好ましい。
【0055】
前記化合物の具体例としては、鎖状構造からなる(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレンエステル等が挙げられる。
【0056】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル等が挙げられる。
【0057】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0058】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル等が挙げられる。
【0059】
(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレンエステルとしては、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシテトラエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルオキシジエチレングリコール等が挙げられる。
【0060】
脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸4-ブチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシメチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,5]デカン-8-イルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
【0061】
芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチルメチル、(メタ)アクリル酸ナフチルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニルチオエチル、(メタ)アクリル酸m-フェノキシフェニルメチル、(メタ)アクリル酸p-フェノキシフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o-フェニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸ポリエチレンオキシノニルフェニル、(メタ)アクリル酸(1-ナフチル)メチル、(メタ)アクリル酸(2-ナフチル)メチル、(メタ)アクリル酸(1,1’-ビフェニル-4-イル)メチル等が挙げられる。
【0062】
(メタ)アクリルアミド化合物としては、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム等が挙げられる。
【0063】
鎖状ビニル化合物としては、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等が挙げられる。
【0064】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、t-ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0065】
マレイミド化合物としては、N-メチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(p-メチルフェニル)マレイミド等が挙げられる。
【0066】
(C)成分が多官能化合物である場合の具体例としては、多官能(メタ)アクリル酸エステル、多官能芳香族ビニル化合物、多官能鎖状ビニル化合物が挙げられる。
多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、2官能(メタ)アクリル酸エステル、3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの具体例としては、2官能(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエトキシレートジ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエトキシレートジ(メタ)アクリレート、ビフェニルエトキシレートジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0067】
3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドオリゴマー変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(例:ジエチレングリコール変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート)、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、カルボキシ基含有多塩基酸変性(メタ)アクリルオリゴマー、直鎖アルキレン基及び脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上のヒドロキシ基を有し、かつ3個、4個又は5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物とを用いて得られる多官能ウレタンアクリレート化合物が挙げられる。
【0068】
多官能の芳香族ビニル化合物としては、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0069】
多官能の鎖状ビニル化合物としては、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン等が挙げられる。
【0070】
(C)成分の好ましい具体例としては、下記式(C1-1)~式(C1-50)のそれぞれで表される化合物が挙げられる。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
式(C1-1)~(C1-50)中、R20は、水素原子又はメチル基である。m及びnは、それぞれ独立して0~10の整数である。x、y及びzは、それぞれ独立して0~10の整数である。
なお、式(C1-48)中のRは、式(C1-48)中のRa、Rb又はRcであり、6個のRのうちa個のRがRaであり、6個のRのうちb個のRがRbであり、6個のRのうちc個のRがRcであることを示す。但し、a+b+c=6であり、aは1以上の整数である。
【0077】
(C)成分の含有量は、低温での加熱処理により所望の形状の硬化物を容易に形成することができ、かつ耐熱性の高い硬化物を容易に得ることができる等の点から、後述する(D)成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。また、得られる硬化物の屈折率低下を抑制することができる等の点から、(C)成分の含有量は、(D)成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。
【0078】
(C)成分は、1分子内における重合性炭素-炭素不飽和結合の数が1個又は2個である化合物(以下「化合物(C1)」ともいう。)を含むことが好ましい。
化合物(C1)の含有量は、低温(例えば100℃以下の温度)によってパターンを流動化することができ、所望の形状の硬化物を容易に形成することができる等の点から、(C)成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、化合物(C1)の含有量は、耐熱性や耐薬品性に優れ、信頼性の高い硬化物を容易に形成することができる等の点から、(C)成分100質量%に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0079】
特に、(C)成分を(D)成分100質量部に対して前記量で含み、かつ化合物(C1)を(C)成分100質量%に対して前記量で含む場合、低温での加熱処理により所望の形状の硬化物を容易に形成することができ、かつ耐熱性の高い硬化物を容易に形成することができる等の点で好適である。
【0080】
[(D)成分:分子内にフルオレン構造、酸性基、及び、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物]
(D)成分は、分子内にフルオレン構造、酸性基、及び、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、屈折率が高く、良好なアルカリ可溶性及び光重合性(特に、光ラジカル重合性)を有する。
【0081】
前記フルオレン構造は、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、ジベンゾフルオレン構造等を含む。
【0082】
前記酸性基としては、カルボキシ基、カルボキシアルコキシ基、スルホン酸基、フェノール性水酸基、チオール基、イミダゾール基、トリアゾール基、テトラゾール基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホンアミド基、マレイミド基、シラノール基、炭素原子に結合した水素原子が電子求引基で置換されたヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
【0083】
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては特に制限されないが、下記式(2X)で表される基を有する化合物であることが好ましい。
【0084】
(D)成分は、下記式(2)で表される化合物(以下「化合物(D1)」ともいう。)であることが好ましい。
【0085】
【化12】
(式(2)中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して芳香環基である。
R
1及びR
2は、それぞれ独立して1価の置換基であるか、又はR
1とR
2とが互いに結合してAr
1及びAr
2と共に構成される縮合環構造を表す。前記縮合環構造は、2個の芳香環が単結合、-O-、-S-、-NR
5-、カルボニル基、メチレン基、又はエチレン基により連結された構造を有する。R
5は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。
R
3及びR
4は、それぞれ独立して1価の置換基である。
X
1及びX
2は、それぞれ独立して下記式(2X)で表される基である。
n1及びn2は、それぞれ独立して1~7の整数である。
m1及びm2は、それぞれ独立して0~6の整数である。
k1及びk2は、それぞれ独立して0~4の整数である。k1が2以上の整数である場合、複数のR
3はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
3が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。k2が2以上の整数である場合、複数のR
4はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR
4が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。
ただし、R
1~R
4、X
1及びX
2のうち、少なくとも1つは酸性基を有し、式(2)で表される化合物は、少なくとも1つの酸性基を有する。
式(2)中にR
1~R
4、X
1及びX
2が複数存在する場合、複数のR
1~R
4、X
1及びX
2は同一又は異なる。)
【0086】
【化13】
(式(2X)中、R
8は炭素数2~4のアルカンジイル基である。
R
6は、水素原子又はメチル基である。
Xは、0又は1である。
R
9は、水素原子又は-OY
1である。
Y
1は、水素原子又は「-C(=O)-R
7-COOH」で表される基である。R
7は炭素数1以上の2価の有機基である。
pは0~4の整数である。pが2以上の場合、複数のR
8は同一又は異なる。
「*」は結合手を表す。)
【0087】
前記式(2)において、Ar1で表される芳香環基は、芳香環から(m1+n1+1)個の水素原子を取り除いた基である。Ar2で表される芳香環基は、芳香環から(m2+n2+1)個の水素原子を取り除いた基である。Ar1及びAr2が有する芳香環は、単環でもよく縮合環でもよい。
Ar1及びAr2が有する芳香環としては、芳香族炭化水素環が好ましく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられる。これらのうち、Ar1及びAr2が有する芳香環は、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましい。
高屈折率化を図り、かつ耐熱性を高くできる等の点で、Ar1及びAr2は縮合多環式芳香族炭化水素環を有することが好ましく、ナフタレン環を有することがより好ましい。
【0088】
R1及びR2がそれぞれ独立して1価の置換基である場合、当該1価の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、水酸基、前記酸性基、炭素数1~10のアシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数6~12のアラルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のヒドロキシアルコキシ基、炭素数3~12のシクロアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数6~12のアラルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数3~12のシクロアルキルチオ基、炭素数6~12のアリールチオ基、炭素数6~12のアラルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基(-NRARB[該RA及びRBは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~10のアルキル基である。])、-NH-C(=O)-R[該Rは、後述するR3、R4と同様の置換基を有していてもよい、炭素数5~20の脂環式炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。]等が挙げられる。これらのうち、R1及びR2で表される1価の置換基は、前記酸性基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~12のアラルキル基又は炭素数1~10のアルコキシ基であることが好ましく、前記酸性基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基がより好ましい。
【0089】
R1及びR2が、互いに結合してAr1及びAr2と共に構成される縮合環構造を表す場合、当該縮合環構造は、Ar1中の芳香環とAr2中の芳香環とが、単結合、-O-、-S-、-NR5-、カルボニル基、メチレン基又はエチレン基により連結された構造を有する。R1及びR2が互いに結合して構成される縮合環構造としては、フルオレン環、アントロン環、キサンテン環、チオキサンテン環等が挙げられる。これらのうち、キサンテン環が好ましい。
【0090】
m1及びm2は、それぞれ独立して0~6の整数であり、Ar1及びAr2の種類に応じて選択することができる。m1及びm2は、0~3が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
n1及びn2は、それぞれ独立して1~7の整数であり、1~4が好ましく、1又は2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0091】
R3及びR4で表される1価の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、水酸基、前記酸性基、炭素数1~10のアシル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数6~12のアラルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のヒドロキシアルコキシ基、炭素数3~12のシクロアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数6~12のアラルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数3~12のシクロアルキルチオ基、炭素数6~12のアリールチオ基、炭素数6~12のアラルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基(-NRARB[該RA及びRBは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~10のアルキル基である。])、-NH-C(=O)-R[該Rは、R1及びR2の-NH-C(=O)-RにおけるRと同義である。]等が挙げられる。R3及びR4で表される1価の置換基は、前記酸性基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基又は炭素数6~12のアラルキル基であることが好ましく、前記酸性基、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基がより好ましい。
【0092】
k1が2以上の整数である場合、複数のR3はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR3が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。k2が2以上の整数である場合、複数のR4はそれぞれ独立して1価の置換基であるか、又は、互いに結合してR4が結合するベンゼン環と共に縮合環を形成する。該縮合環としては、例えば、ナフタレン環、インデン環、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられ、これらの中でもナフタレン環が好ましい。
なお、k1が2の整数であり、2つのR3が互いに結合してR3が結合するベンゼン環と共にナフタレン環を形成し、k2が0の場合、化合物(D1)は、ベンゾフルオレン骨格を有する化合物であると言える。
【0093】
k1及びk2は、0~4の整数であり、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0094】
X1及びX2は、それぞれ独立して前記式(2X)で表される基である。
【0095】
式(2X)において、R8で表される炭素数2~4のアルカンジイル基は直鎖状でも分岐状でもよい。R8は、これらのうち、炭素数2又は3の直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基が好ましい。
pは0~2が好ましく、0又は1がより好ましい。
R6は、好ましくは水素原子である。
【0096】
「-C(=O)-R7-COOH」において、R7で表される2価の有機基は、鎖状構造でもよく、環状構造でもよく、鎖状構造と環状構造とを有していてもよい。なお、フルオレン骨格を有するエポキシ基含有化合物の(メタ)アクリル酸付加体と、カルボン酸無水物との反応により化合物(D1)を製造する場合、R7は、カルボン酸無水物が有する酸無水物基(より具体的には、一分子内の2つのカルボキシ基の脱水縮合により形成される基)を除いた部分構造に対応する。
【0097】
R7の具体例としては、2価の炭化水素基、炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-や-S-、-NR-(Rは1価の炭化水素基)等を含む2価の基、炭化水素基が有する任意の水素原子が1価のヘテロ原子含有基(例えば、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基)で置換されてなる2価の基、炭化水素基中の同一の炭素に結合する2個の水素原子が「=P(R9)3」で表される基(3個のR9は互いに独立して1価の炭化水素基)で置き換えられてなる2価の基、複素環構造を有する2価の基が挙げられる。
前記2価の炭化水素基としては、炭素数1~10のアルカンジイル基、炭素数2~10のアルケンジイル基、炭素数3~20の2価の飽和若しくは不飽和の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0098】
R7が複素環構造を有する2価の基である場合、当該2価の基としては、窒素含有複素環構造、硫黄含有複素環構造又は酸素含有複素環構造を有する基が挙げられる。
窒素含有複素環構造としては、ピリジン環構造、ピリミジン環構造、ピリダジン環構造、ピラジン環構造、トリアジン構造等が挙げられる。
硫黄含有複素環構造としては、チオフェン環構造、2,3-ジヒドロ-1,4-ジチイン環構造等が挙げられる。
酸素含有複素環構造としては、フラン環構造等が挙げられる。
【0099】
得られる硬化物の高屈折率化と、低温での加熱処理による所望形状の硬化物の形成性とを両立させる等の点から、R7は中でも、硫黄原子、窒素原子及びリン原子よりなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を有する基であるか、又は、単環式芳香族炭化水素環、縮合多環式芳香族炭化水素環若しくは脂肪族炭化水素環を有する基であることが好ましい。
【0100】
より具体的には、高屈折率の硬化物を容易に形成することができる等の点からは、R7は、硫黄原子、窒素原子及びリン原子よりなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を有する基であるか、又は、単環式芳香族炭化水素環若しくは縮合多環式芳香族炭化水素環を有する基であることが好ましい。
また、硬化物からのアウトガスの発生を抑制することができる等の点からは、R7は、脂肪族炭化水素環を有する基であることが好ましい。
【0101】
R7の好ましい具体例としては、下記式(y-1)~(y-4)のそれぞれで表される基が挙げられる。
【0102】
【化14】
(式(y-1)中、Ar
3は、(r+2)価の単環式芳香族炭化水素環基、縮合多環式芳香族炭化水素環基、窒素含有複素環基、硫黄含有複素環基又は脂肪族炭化水素環基である。R
10は1価の置換基である。rは0~6の整数である。rが2以上の場合、複数のR
10は同一又は異なる。
式(y-2)中、Ar
4及びAr
5は、それぞれ独立して窒素含有複素環基又は硫黄含有複素環基である。
式(y-3)中、R
9は1価の炭化水素基である。複数のR
9は同一又は異なる。
式(y-4)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立してアルカンジイル基である。tは1~3の整数である。tが2又は3の場合、複数のR
11は同一又は異なる。
「*」は結合手を表す。)
【0103】
Ar3における単環式芳香族炭化水素環基は、単環式芳香族炭化水素環から(r+2)個の水素原子を取り除いた基である。単環式芳香族炭化水素環はベンゼン環であることが好ましい。
【0104】
Ar3における縮合多環式芳香族炭化水素環基は、縮合多環式芳香族炭化水素環から(r+2)個の水素原子を取り除いた基である。縮合多環式芳香族炭化水素環としては、ナフタレン環、インデン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられ、ナフタレン環が好ましい。
【0105】
Ar3における窒素含有複素環基は、窒素含有複素環から(r+2)個の水素原子を取り除いた基である。窒素含有複素環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環等が挙げられる。
【0106】
Ar3における硫黄含有複素環基としては、硫黄含有複素環から(r+2)個の水素原子を取り除いた基である。硫黄含有複素環としては、チオフェン環、2,3-ジヒドロ-1,4-ジチイン環等が挙げられる。
【0107】
Ar3における脂肪族炭化水素環基は、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素環から(r+2)個の水素原子を取り除いた基である。脂肪族炭化水素環は、単環式でもよく、縮合脂肪族環や有橋式脂肪族環等の多環式でもよい。脂肪族炭化水素環の具体例としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環等の飽和の単環式脂肪族環;シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環等の不飽和の単環式脂肪族環;デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレン等の縮合脂肪族環;ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン環、ノルボルネン環(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン環)等の有橋式脂肪族環;が挙げられる。
【0108】
高屈折率の硬化物を容易に形成することができる等の観点から、Ar3で表される脂肪族炭化水素環基は、不飽和の脂肪族炭化水素環から(r+2)個の水素原子を取り除いた基であることが好ましく、不飽和の有橋式脂肪族炭化水素環から(r+2)個の水素原子を取り除いた基であることがより好ましく、ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン環又はノルボルネン環を有する基であることがさらに好ましい。
【0109】
R10で表される1価の置換基としては、R1及びR2が1価の置換基である場合の具体例として例示した基と同様の基等が挙げられる。R10で表される1価の置換基は、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~12のアリールオキシ基又は炭素数6~12のアリールチオ基が好ましい。
【0110】
Ar4及びAr5における窒素含有複素環基及び硫黄含有複素環基としては、置換又は無置換の窒素含有複素環又は硫黄含有複素環から1個の水素原子を取り除いた基が挙げられる。窒素含有複素環及び硫黄含有複素環の具体例としては、Ar3の具体例として例示した窒素含有複素環及び硫黄含有複素環と同様の環が挙げられる。置換基としては、炭素数1~3のアルキル基等が挙げられる。Ar4及びAr5は、これらのうち、置換又は無置換の1価の硫黄含有芳香族複素環基が好ましい。
【0111】
R9における1価の炭化水素基としては、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数3~12の1価の脂環式炭化水素基、及び炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。なお、式(y-3)中に存在する3個のR9は、互いに同一であってもよく異なってもよい。高屈折率の硬化物を容易に形成することができる等の点から、3個のR9のうち1個以上は、炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、3個のR9の全部が、炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。R9は、置換又は無置換のフェニル基が好ましい。
【0112】
R11及びR12におけるアルカンジイル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。R11及びR12で表されるアルカンジイル基は、炭素数1~5が好ましく、炭素数1~3がより好ましい。
【0113】
なお、式(2)中のn1個のX1及びn2個のX2に含まれ得るY1のうち1個以上は、「-C(=O)-R7-COOH」で表される基であることが好ましい。現像時のアルカリ溶解性を保ちつつ、低温での加熱による流動性に優れる等の点から、化合物(D1)は、「-C(=O)-R7-COOH」で表される基を1~6個有していることが好ましく、1~2個有していることがより好ましい。
【0114】
R9の少なくとも1つが-OY1であり、且つ、Y1が「-C(=O)-R7-COOH」である場合の前記式(2X)で表される基の好ましい具体例としては、下記式(x1-1)~(x1-25)のそれぞれで表される基が挙げられる。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
高屈折率で所望形状の硬化物を低温の加熱処理で容易に形成することができる等の点から、Y1が「-C(=O)-R7-COOH」である場合の前記式(2X)で表される基は、前記式(x1-1)~(x1-3)、(x1-7)~(x1-13)、(x1-16)、(x1-17)及び(x1-22)~(x1-25)のそれぞれで表される基が好ましい。
【0120】
なお、(D)成分としては、前記式(2)で表される化合物の多量体(例えば、二量体や三量体)を用いてもよい。
【0121】
また、(D)成分は、前記式(2)で表される化合物以外の化合物(以下「化合物(D2)」ともいう。)を用いてもよい。
該化合物(D2)としては、例えば、特許第6263631号公報等に記載の化合物、特許第6059754号公報等に記載のポリマー構造を含む化合物、特許第6175259号公報等に記載の重合体が挙げられる。
【0122】
化合物(D2)の好ましい具体例としては、下記式(D-4)又は(D-5)で表される化合物が挙げられる。
【0123】
【0124】
(D)成分は、例えば、高屈折率材の形成に用いられる従来の感放射線性組成物において、ベース樹脂として配合される重合体成分に比べて分子量が低いことが好ましい。
このような(D)成分を、高屈折率材形成用の感放射線性組成物の成分として用いることにより、アルカリ現像液との接触によりネガ型のパターンを形成可能であるとともに、より低温の加熱によって露光及び現像後のパターンを流動化させることができる。また、(D)成分を含むことにより、屈折率が高い硬化物を容易に形成することができる。
【0125】
(D)成分の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは600以上、より好ましくは700以上、さらに好ましくは800以上である。Mwが前記範囲にあると、良好なアルカリ現像性を示す有機膜を容易に形成することができ、かつ耐熱性や耐薬品性に優れる硬化物を容易に形成することができる。
また、前記Mwは、低温での加熱処理により所望形状の硬化物を容易に形成することができ、かつ本組成物の粘度が高くなりすぎることを抑制することができる等の点から、好ましくは30000以下、より好ましくは15000以下、さらに好ましくは5000以下である。
【0126】
本組成物中の(D)成分の含有量は、本組成物の固形分(すなわち、本組成物中の溶剤以外の成分)100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
(D)成分の含有量が前記範囲であると、高屈折率の硬化物を容易に形成することができるとともに、比較的低温(例えば100℃以下)で硬化物を流動化させることができ、所望の形状の硬化物を容易に形成することができる。
【0127】
[その他の成分]
本組成物は、前述した(A)~(D)成分に加え、これら以外の成分(以下「その他の成分」ともいう。)を、本発明の効果が損なわれない範囲でさらに含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、重合体、溶剤、重合禁止剤、界面活性剤、酸化防止剤、増感剤、軟化剤、可塑剤、密着助剤、紫外線吸収剤が挙げられる。
これらその他の成分の配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲で各成分に応じて適宜選択される。
【0128】
・重合体
本組成物は、添加剤成分として、重合体(以下「重合体(E)」ともいう。)をさらに含有していてもよい。本組成物に重合体(E)を配合することにより、得られる硬化物の耐熱性を高め、信頼性により優れた高屈折率の硬化物を容易に形成することができる。
【0129】
重合体(E)としては、アルカリ可溶性重合体、フルオレン骨格含有感放射線性重合体、カルボキシ基含有感放射線性重合体等が挙げられる。
重合体(E)の分子量は、2,000以上100,000以下であることが好ましい。
【0130】
アルカリ可溶性重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/ベンジル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/スチレン/イソプレン/トリシクロデカニル(メタ)アクリレート/2-モノ(ヘキサヒドロキシフタロイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸変性(メタ)アクリル樹脂、酸無水物変性(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0131】
フルオレン骨格含有感放射線性重合体としては、例えば、国際公開第2009/119622号に記載された重合体が挙げられる。
【0132】
カルボキシ基含有感放射線性重合体の具体例としては、市販品を用いてもよく、該市販品としては、CCR-1235、CCR-1291H、ZAR-1035、ZAR-2000、ZFR-1401H、ZFR-1491H、ZCR-1569H、ZCR-1798H(以上、日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0133】
本組成物に重合体(E)を配合する場合、該重合体(E)の配合量は、(D)成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。重合体(E)の配合量が前記範囲にあることで、低温での加熱処理により所望の形状で耐熱性に優れる硬化物を容易に形成することができる。
【0134】
・溶剤
本組成物は、(A)~(D)成分、及び必要に応じて配合されるその他の成分が、溶剤(以下「溶剤(F)」ともいう。)に溶解又は分散された液状の組成物であることが好ましい。
溶剤(F)としては、本組成物に配合される各成分を溶解し、かつ各成分と反応しない有機溶媒が好ましい。
【0135】
溶剤(F)の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジメチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらのうち、溶剤(F)は、エーテル類、エステル類及びケトン類よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0136】
・界面活性剤
例えば、界面活性剤を用いることで、本組成物の塗布性(濡れ広がり性や塗布ムラの低減)を改良することができる。
界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0137】
フッ素系界面活性剤としては、市販品を用いてもよく、該市販品としては、メガファックF-171、同F-172、同F-173、同F-251、同F-430、同F-554、同F-563(DIC(株)製);フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム(株)製);アサヒガードAG710、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106、同S-611(AGCセイミケミカル(株)製);ポリフローNo.75、同No.95(共栄社化学(株)製);FTX-218((株)ネオス製);エフトップEF301、同EF303、同EF352(新秋田化成(株)製)等が挙げられる。
【0138】
シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いてもよく、該市販品としては、SH200-100cs、SH-28PA、SH-30PA、SH-89PA、SH-190、SH-8400、FLUID、SH-193、SZ-6032、SF-8428、DC-57、DC-190、PAINTAD19、FZ-2101、FZ-77、FZ-2118、L-7001、L-7002(ダウ・東レ(株)製);オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製);BYK-300、同306、同310、同330、同335、同341、同344、同370、同340、同345(ビックケミー・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0139】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn-オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn-ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレートが挙げられる。
【0140】
本組成物に界面活性剤を配合する場合、界面活性剤の配合量は、(D)成分100質量部に対して、好ましくは0.01~1.5質量部、より好ましくは0.02~1.2質量部、さらに好ましくは0.05~1.0質量部である。
【0141】
・酸化防止剤
例えば、酸化防止剤を用いることで、本組成物の重合体分子の解裂劣化が抑制され、耐久性等を向上させることができる。
酸化防止剤としては、例えば、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサ-スピロ[5.5]ウンデカン、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。
【0142】
本組成物に酸化防止剤を配合する場合、酸化防止剤の配合量は、(D)成分100質量部に対して、好ましくは0.01~1.5質量部、より好ましくは0.02~1.2質量部、さらに好ましくは0.05~1.0質量部である。
【0143】
・密着助剤
密着助剤を含む本組成物を用いることで、形成される硬化物と基材(被着体)との接着性を向上させて、現像工程等における硬化物の基材からの剥離を抑制することができる。
密着助剤としては、反応性官能基を有する官能性シランカップリング剤が好ましい。
官能性シランカップリング剤が有する反応性官能基としては、カルボキシ基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0144】
官能性シランカップリング剤の具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0145】
本組成物に密着助剤を配合する場合、その配合量は、(D)成分100質量部に対して、好ましくは0.01~4質量部、より好ましくは0.1~2質量部である。
【0146】
[本組成物の調製方法]
本組成物は、(A)~(D)成分、及び任意に配合されるその他の成分を混合することにより調製することができる。
なお、各成分を混合した後、必要により、得られた混合物を、例えば、孔径0.5μm以下のフィルターでろ過してもよい。
【0147】
本組成物の固形分濃度(すなわち、本組成物中の溶剤以外の成分の合計質量が、本組成物の全質量に対して占める割合)は、粘性や揮発性等を考慮して適宜に選択される。本組成物の固形分濃度は、好ましくは1~60質量%、より好ましくは2~50質量%、さらに好ましくは5~40質量%である。固形分濃度が前記下限以上であると、本組成物を基材(被着体)上に塗布した際に塗膜の膜厚を十分に確保できる等の点で好ましい。また、固形分濃度が前記上限以下であると、本組成物の粘性を適度に高くでき、良好な塗布性を確保できる等の点で好ましい。
【0148】
本組成物中の重合性を有する化合物の含有量(すなわち、(C)成分と(D)成分との合計量)は、感度を良好にし、加熱処理によって所望の形状の硬化物を容易に形成することができる等の点から、本組成物に含まれる固形分100質量%に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上である。
【0149】
本組成物は、カメラ等の撮像装置、有機EL素子や液晶表示素子等の各種表示素子等の少なくとも一部に用いられる光学部材に好適に用いられる。特に、本組成物を用いて加熱処理を経て硬化物を形成した場合、所望のマイクロレンズ形状又は平坦化膜形状の硬化物を容易に形成することができる等の点から、マイクロレンズ製造用又は平坦化膜製造用の感放射線性組成物、特にサーマルフロー方式によるマイクロレンズ製造用の感放射線性組成物として好適に利用できる。
【0150】
≪硬化物≫
本開示の硬化物(以下「本硬化物」ともいう。)は、本組成物の硬化物であり、具体的には、本組成物に放射線を照射することで形成される。
このように本硬化物は本組成物から形成されるため、耐熱性及び透明性に優れ、高屈折率である。
【0151】
本硬化物の形状は特に制限されないが、本発明の効果がより発揮される等の点から、マイクロレンズ又は平坦化膜であることが好ましく、マイクロレンズであることがより好ましい。
本硬化物は、カメラ等の撮像装置、有機EL素子や液晶表示素子等の各種表示素子等の少なくとも一部に用いられる光学部材に好適に用いられる。つまり、本硬化物は、光学部材用の材料として好適に用いられる。具体的には、カメラ等の撮像装置が備える固体撮像素子のマイクロレンズや、表示装置が備える有機EL素子(OLED)や液晶表示素子(LCD)、μLED等の各種表示素子のマイクロレンズ等の光学部材として好適に使用できる。また、有機EL素子や液晶表示素子等に設けられる平坦化膜としても好適に使用できる。
【0152】
本硬化物の波長550nmでの屈折率は、好ましくは1.640以上、より好ましくは1.660以上である。
屈折率が前記範囲にある硬化物は、高屈折率であるといえ、光学部材に好適に用いることができる。
該屈折率は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0153】
[本硬化物の製造方法]
本硬化物を製造する方法は、本組成物に放射線を照射する工程を含む。該放射線を照射する際に、必要により所定パターンのマスクを用いてもよく、該マスクを用いた放射線照射の後に、現像を行ってもよく、また、放射線を照射した後に加熱処理を行ってもよい。
【0154】
本組成物は、特に、本組成物から形成された有機膜の一部を露光し、露光後の有機膜のうちの未露光部をアルカリ現像液に溶解させることによって形成されたパターン(すなわち、本組成物により形成された硬化物)を熱処理により流動化させて所望の形状(例:マイクロレンズ形状、平坦化膜形状)とするネガ型のパターン形成材料として好適である。
【0155】
本硬化物の一態様であるマイクロレンズの製造方法の好適例としては、以下の第1の製造方法及び第2の製造方法が挙げられる。
【0156】
<第1の製造方法>
第1の製造方法は、下記工程(I)~(IV)を含む方法であり、さらに下記工程(V)を含んでもよい。
【0157】
(工程(I):塗布工程)
工程(I)は、本組成物を基材上に塗布することにより、基材上に塗膜(有機膜)を形成する工程である。
【0158】
基材としては、例えば、ガラス基板、シリコンウエハ、プラスチック基板及びこれらの表面に着色レジスト、オーバーコート、反射防止膜、各種金属薄膜、封止膜等が形成された基板が挙げられる。
【0159】
プラスチック基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチック製の樹脂基板(樹脂フィルム)が挙げられる。
基材には、各種素子(例えば、フォトダイオード等の受光素子や、有機発光ダイオード等の発光素子)が予め設けられていてもよい。
【0160】
本組成物の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法等の適宜の方法を採用することができる。塗布方法としては、これらのうち、スピンコート法、バー塗布法、スリットダイ塗布法が好ましい。
【0161】
本組成物を基材上に塗布した後には、液だれ防止等を目的として、本組成物を予備加熱する処理(プレベーク)を行ってもよい。プレベークの条件は、本組成物に用いる各成分の種類や使用割合等によって適宜設定することができるが、例えば、60~130℃で30秒間~10分間程度の条件とすることができる。
【0162】
形成される塗膜の膜厚は、プレベーク後の膜厚として、0.1~20μmが好ましく、0.2~15μmがより好ましい。
【0163】
(工程(II):露光工程)
工程(II)は、工程(I)で形成した塗膜の一部に放射線を照射する工程である。この放射線照射により露光部において硬化反応が進行し、露光部分が硬化した硬化物が得られる。
工程(II)において塗膜に対する放射線照射は、通常、所望の形状を有するマイクロレンズを得るためのパターン(例えば、ドットパターン)を有するマスクを介して実施される。該マスクは、ハーフトーンマスクやグレイトーンマスク等の多階調マスクであってもよい。
【0164】
塗膜に照射する放射線としては、例えば、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線が挙げられる。
紫外線としては、例えば、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)が挙げられる。
X線としては、例えば、シンクロトロン放射線が挙げられる。
荷電粒子線としては、例えば、電子線が挙げられる。
これらのうち、紫外線が好ましく、波長200nm以上380nm以下の紫外線がより好ましい。
【0165】
放射線照射に使用する光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーが挙げられる。
放射線の露光量としては、500~50,000J/m2(50~5,000mJ/cm2)が好ましい。
【0166】
(工程(III):現像工程)
工程(III)は、工程(II)で得られた塗膜及び硬化物を現像することにより、基材上にパターンを形成する工程である。この現像工程により、基材上に形成された未露光部の塗膜が除去されて、露光部の硬化物(微小硬化物)が残存したパターン(例:規則的に配置された多数の微小硬化物により形成された凹凸パターン)を基材上に形成することができる。
【0167】
現像液としては、アルカリ(塩基性化合物)の水溶液が挙げられる。
該アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノナンが挙げられる。
また、アルカリの水溶液には、メタノールやエタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適量添加したり、本組成物を溶解可能な各種有機溶媒を少量添加してもよい。
【0168】
現像液の濃度としては、組成物の組成に応じて適宜決定することができるが、通常は0.01~10質量%、好ましくは0.5~5質量%である。
【0169】
現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法を採用することができる。
現像時間は、本組成物の組成によって適宜調整すればよいが、例えば20~120秒である。
【0170】
現像工程を行った後、必要により、純水等を用いて現像後のパターン付き基板を洗浄する工程を行ってもよい。
また、現像後又は前記洗浄後のパターン付き基板を乾燥する工程を行ってもよい。該乾燥の条件としては特に制限されないが、例えば、前記プレベークと同様の条件が挙げられる。
【0171】
(工程(IV):加熱工程)
工程(IV)は、現像後のパターンを加熱・溶融して、サーマルフロー方式により基材上の微小硬化物をレンズ形状にする工程である。
工程(IV)の加熱処理により、微小硬化物のパターンをサーマルフローさせながら本組成物をさらに硬化することができる。
工程(IV)により、半球状の微小な硬化物が基材上に(規則的に)配置されたマイクロレンズ(アレイ)を得ることができる。
【0172】
加熱処理は、例えばオーブンやホットプレート等の加熱装置を用いて行うことができる。
工程(IV)における加熱温度は、基材や用いる本組成物に応じて適宜選択すればよいが、有機エレクトロルミネッセンス素子の高屈折率材料に適用可能にする等の点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは85℃以下である。また、耐熱性及び耐薬品性が高く、かつ所望の形状のマイクロレンズを容易に形成することができる等の点から、工程(IV)における加熱温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上である。
【0173】
本組成物によれば、加熱処理を100℃以下の低温で行った場合でも、所望形状のマイクロレンズを形成することができる。このように、加熱処理を100℃以下の低温で行うことで、低温プロセスの適用が要求される有機EL素子等を基材として使用することができる。
加熱時間は、加熱装置の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、ホットプレートを用いて加熱を行う場合、加熱時間は、例えば5~60分間である。また、オーブンを用いて加熱を行う場合、加熱時間は、例えば10~90分間である。
工程(IV)は、複数回の加熱処理を行うステップベーク法を用いることもできる。
【0174】
(工程(V):ポスト露光工程)
工程(V)は、工程(III)で得られた現像後の硬化物(微小硬化物)及び/又は工程(IV)で得られたマイクロレンズに、放射線をさらに照射する工程である。これらの中でも、低温のサーマルフローで所望形状のマイクロレンズを容易に形成することができる等の点から、工程(IV)で得られたマイクロレンズに放射線をさらに照射する工程であることが好ましい。
【0175】
工程(V)における放射線の照射(以下「ポスト露光」ともいう。)により、耐熱性や耐薬品性等をさらに向上でき、信頼性の高いマイクロレンズを容易に形成することができる。
これらのうち、ポスト露光における放射線の種類や露光条件については、工程(II)と同様の放射線の種類や露光条件を採用することができる。なお、ポスト露光の際の照射光の波長や照射量、光源等の条件は、工程(II)と同一でもよく異なってもよい。
【0176】
<第2の製造方法>
第2の製造方法は、基材上に本組成物をインクジェット塗布又はナノインプリントしてパターンを形成する工程を含む。第2のレンズの製造方法では、インクジェット塗布又はナノインプリントにより直接、球面レンズ形状のパターンを基材上に形成してもよい。又は、インクジェット塗布又はナノインプリントにより基材上にパターン(例えば、ドットパターン)を形成し、その後、第1の製造方法と同様の工程(IV)を行い、所望のマイクロレンズ形状を形成してもよい。
また、第2の製造方法は、第1の製造方法における工程(V)と同様の工程を含んでいてもよい。
【0177】
本硬化物の一態様である平坦化膜は、例えば、前記第1の製造方法における工程(II)において、マスクを用いなかったり、例えば、ドットパターン以外のパターンを用いる以外は、前記第1の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0178】
≪表示装置≫
本開示の表示装置は、本硬化物を含めば特に制限されず、本硬化物を含む以外は、従来公知の構成であればよい。
該表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(Organic light emitting diode:OLED)を用いた有機EL、μLEDディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)、電界発光ディスプレイ(ELD)、量子ドット-有機EL(QD-OLED)を用いたディスプレイが挙げられる。
【0179】
≪撮像装置≫
本開示の撮像装置は、本硬化物を含めば特に制限されず、本硬化物を含む以外は、従来公知の構成であればよい。
該撮像装置としては、例えば、ビデオカメラ、デジタルカメラ、カメラ機能付き携帯電話機、内視鏡カメラ、カプセル型内視鏡カメラ、マイクロスコープ、医療用又はヘルスケア用カメラ(例:赤外光の受光による血管撮影を行う用のカメラ)、車載用カメラ(例:車の周囲、車内を撮影するカメラ、車間距離を検出するカメラ)、監視カメラ、人物認証用カメラ、産業用カメラが挙げられる。
【実施例0180】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0181】
化合物の重量平均分子量(Mw)は、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm2
【0182】
[感放射線性組成物の調製]
実施例及び比較例にて、感放射線性組成物の調製に用いた化合物(A)~(D)、及び溶剤(F)の詳細を以下に示す。
【0183】
<化合物(A)>
A-1~A-12:下記式(A-1)~(A-12)で表される化合物
【0184】
【0185】
【0186】
化合物(A-1):6,6’-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(2-ナフトール)(BNF、JiangSu Ever Galaxy Chemical社製)
化合物(A-2):9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPFL、JFEケミカル製)
化合物(A-3):9,9-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(BCF、JFEケミカル(株)製)
化合物(A-4):2,2’-[9H-フルオレン-9,9-ジイルビス(ナフタレン-6,2-ジイルオキシ)]ジエタノール(BNF-EO、JiangSu Ever Galaxy Chemical社製)
【0187】
化合物(A-5):温度計及び窒素導入管を備えた2Lの三つ口フラスコに、6,6’-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(2-ナフトール)100g(0.22mol)、ヨードメタン94.5g(0.67mol)、炭酸カリウム92.0g(0.67mol)、およびジメチルスルホキシド1Lを仕込み、25℃で6時間撹拌した。反応終了後、反応液を蒸留水2Lに投入し、析出した固体を濾別・水洗した。次いで、濾別した固体を真空乾燥させることで、前記式(A-5)で表される化合物(A-5)の白色粉末を103g得た。
【0188】
化合物(A-6):9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(BAHF、JFEケミカル(株)製)
【0189】
化合物(A-7):温度計及び窒素導入管を備えた2Lの三つ口フラスコに、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン200g(0.53mol)、フタル酸無水物156g(1.05mol)、及びN-メチル-2-ピロリドン2Lを仕込み、25℃で12時間撹拌した。反応終了後、反応液を蒸留水4Lに投入し、析出した固体を濾別・水洗した。次いで、濾別した固体を真空乾燥させることで、前記式(A-7)で表される化合物(A-7)の白色粉末を310g得た。
【0190】
化合物(A-8):温度計及び窒素導入管を備えた2Lの三つ口フラスコに、4,4’-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジアニリン100g(0.29mol)、サリチル酸79.3g(0.57mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド92.5g(0.29mol)、及び亜リン酸トリフェニル178g(0.57mol)を仕込み、120℃で2時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却した反応液にジクロロメタン1Lを加えて、2N塩酸水溶液及び水により分液洗浄した。次いで、有機層を減圧濃縮し、粗生成物にメタノール1Lを加えて再結晶をすることで、前記式(A-8)で表される化合物(A-8)の白色粉末を160g得た。
【0191】
化合物(A-9):温度計及び窒素導入管を備えた2Lの三つ口フラスコに、4,4’-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジアニリン250g(0.72mol)、ナフタレン-2-スルホニルクロライド358g(1.58mol)、及びピリジン1Lを仕込み、25℃で3時間撹拌した。反応終了後、減圧濃縮にてピリジンを留去させ、2N塩酸水で酸性にした後、ジクロロメタンと水により分液洗浄した。次いで、有機層を減圧濃縮し、真空乾燥させることで、前記式(A-9)で表される化合物(A-9)の白色粉末を472g得た。
【0192】
化合物(A-10):化合物(A-9)の合成例におけるナフタレン-2-スルホニルクロライドを、ナフタレン-1-スルホニルクロライド358g(1.58mol)に変更した以外は、化合物(A-9)の合成例と同様にして、前記式(A-10)で表される化合物(A-10)の白色粉末を480g得た。
【0193】
化合物(A-11):温度計及び窒素導入管を備えた1Lの三つ口フラスコに、4,4’-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジアニリン100g(0.29mol)、テトラヒドロフラン200mLを仕込み氷冷した。続いて、p-トルエンスルホニルイソシアネート119g(0.57mol)を内温が20℃を超えないようにゆっくり滴下し、25℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応液をエタノール1Lに投入し、析出した固体を濾別した。次いで、濾別した固体を真空乾燥させることで、前記式(A-11)で表される化合物(A-11)の白色粉末を182g得た。
【0194】
化合物(A-12):化合物(A-11)の合成例における4,4’-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジアニリンを、6,6'-(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(2-ナフトール)に変更した以外は、化合物(A-11)の合成例と同様にして、前記式(A-12)で表される化合物(A-12)の白色粉末を147g得た。
【0195】
<化合物(B)>
B-1:1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](イルガキュアOXE01、BASF社製)
B-2:2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン(イルガキュア907、BASF社製)
B-3:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド
B-4:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン
B-5:TR-PBG-345(O-アシルオキシム化合物、常州強力電子新材料社製)
【0196】
<化合物(C)>
C-1:2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート
C-2:ポリエチレングリコールジアクリレート
C-3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(40質量%)とジペンタエリスリトールペンタアクリレート(60質量%)との混合物
C-4:ペンタエリトリトールテトラアクリレート
C-5:ジエチレングリコール変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
C-6:トリメチロールプロパンポリプロピレングリコールトリアクリレート
C-7:N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド
【0197】
<化合物(D)>
D-1:ノルボルネンジカルボン酸無水物変性フルオレン含有アクリレート(下記式(D-1)で表される化合物)
D-2:フタル酸無水物変性フルオレン含有アクリレート(下記式(D-2)で表される化合物)
D-3:ベンゾフルオレン含有アクリレート(下記式(D-3)で表される化合物)
D-4:ベンゾフルオレン含有アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルの共重合体(下記式(D-4)で表される化合物、Mw:4000)。共重合体の質量比は、ベンゾフルオレン含有アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルの共重合体=70/15/15(質量比)
D-5:酸無水物変性フルオレン含有アクリル樹脂(下記式(D-5)で表される化合物、Mw:4000)
【0198】
【0199】
<比較化合物(d)>
d-1:アクリル酸ブチル、アクリル酸、メタクリル酸3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルの共重合体(下記式(d-1)で表される化合物、Mw:4000)。共重合体の質量比は、アクリル酸ブチル、アクリル酸、メタクリル酸3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルの共重合体=80/10/10(質量比)
【0200】
【0201】
<溶剤(F)>
F-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
F-2:シクロペンタノン(CPN)
F-3:N-メチルピロリドン(NMP)
F-4:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PEGME)
【0202】
(実施例1)
化合物(A-1)30質量部、化合物(B-1)5質量部、化合物(C-1)5質量部、(C-3)10質量部、化合物(D-1)100質量部、密着助剤(3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)0.5質量部、及び界面活性剤((株)ネオス製「FTX-218」)0.2質量部を混合し、さらに固形分濃度が35質量%となるように溶剤(F-1)を添加した後、撹拌して各成分を溶解した。次いで、得られた混合物を孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過することにより感放射線性組成物を調製した。
【0203】
(実施例2~35及び比較例1~3)
各成分の種類及び使用量を表1に記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様にして感放射線性組成物を調製した。
【0204】
[感放射線性組成物の評価]
実施例1~35及び比較例1~3で調製した感放射線性組成物の特性の評価を以下のように行った。評価結果を表1に示す。
【0205】
<屈折率の評価>
無アルカリガラス基板上に、調製した各感放射線性組成物を、スピンナーを用いて塗布した後、100℃のホットプレート上で3分間プレベークすることで、膜厚9.0μmの塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜に、高圧水銀ランプ(365nmでの照度:約500mW/cm2)を用いて300mJ/cm2の露光量で放射線照射を行った。その後、23℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として25℃で液盛り法にて現像を60秒間行った後、純水洗浄を60秒間行い、次いで、基板を乾燥した。その後、85℃のオーブン中において40分間ポストベークすることにより硬化膜を形成した。得られた硬化膜の波長550nmでの屈折率を、回転補償子型分光エリプソメーター SE-2000(emilab Semiconductor Physics Laboratory Co. Ltd.社製)を用いて測定した。以下の評価基準により評価した評価結果と測定した屈折率の値を表1に示す。
【0206】
・評価基準
AA:屈折率≧1.660
BB:1.660>屈折率≧1.640
CC:1.640>屈折率
【0207】
<パターンの濡れ広がり性評価>
無アルカリガラス基板上に、調製した各感放射線性組成物を、スピンナーを用いて塗布した後、100℃のホットプレート上で3分間プレベークすることで、膜厚9.0μmの塗膜を形成した。
次いで、得られた塗膜に、直径15μmの丸状残しパターンを有するフォトマスクを介し、プロジェクション露光装置(高圧水銀ランプ。365nmでの照度:約500mW/cm2)を用いて300mJ/cm2の露光量で放射線照射を行った。
【0208】
その後、23℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として25℃で液盛り法にて現像を60秒間行った後、純水洗浄を60秒間行い、次いで、基板を乾燥することで、基板上に感放射線性組成物により形成された複数の微小体からなるパターンを形成した(この時のパターンの拡大写真を
図1(a)に示す。)。得られたパターンの基板に接している部分の直径(幅)を光学顕微鏡で測長した。測長したパターンの直径(幅)をYμmとする。
【0209】
その後、85℃のオーブン中において40分間ポストベークを行い、基板上に感放射線性組成物により形成された複数の微小体からなるレンズパターンを形成した(この時のレンズパターンの拡大写真を
図1(b)に示す。)。得られたレンズパターンの基板に接している部分の直径(幅)を光学顕微鏡で測長した。測長したレンズパターンの直径(幅)をZμmとする。
【0210】
下記の評価基準によりパターンの濡れ広がり性を評価した。以下の評価基準により評価した評価結果と算出したZ-Yの値を表1に示す。ポストベーク前のパターン直径(幅)Yμmとポストベーク後のレンズパターン直径(幅)Zμmとの差が小さいほどパターンの濡れ広がりが抑制されていることを示す。
【0211】
・評価基準
AA:(Z-Y)≦Y×0.2
BB:Y×0.2<(Z-Y)≦Y×0.4
CC:(Z-Y)>Y×0.4
-:パターンが得られなかった
【0212】