(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177152
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】乗物用シート及び乗物用シートの制御方法
(51)【国際特許分類】
B60N 3/06 20060101AFI20241212BHJP
A47C 7/50 20060101ALI20241212BHJP
B60N 2/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60N3/06
A47C7/50 A
B60N2/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093231
(22)【出願日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】63/507,238
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(72)【発明者】
【氏名】田邉 仁一
(72)【発明者】
【氏名】富岡 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 拓也
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良啓
(72)【発明者】
【氏名】高野 敦司
【テーマコード(参考)】
3B087
3B088
【Fターム(参考)】
3B087DE10
3B088JA02
3B088JB02
(57)【要約】
【課題】シートクッションの変形に合わせてオットマンを回動させることが可能な乗物用シート及び乗物用シートの制御方法を提供する。
【解決手段】乗物用シートSは、シートクッション1とシートクッション1に対してシート前後方向に回動可能なオットマン4とを有し、オットマン4が垂下した通常状態とオットマン4がシート前方に回動した展開状態とを切り替え可能なシート本体Shを備え、シートクッション1は、骨格を成すクッションフレーム10を有し、クッションフレーム10は、側部に配置される左右一対のサイドフレーム12を有する固定側フレーム11と、左右一対のサイドフレーム12に対し回動可能に支持される可動側フレーム21と、を有し、オットマン4は、骨格を成すオットマンフレーム40を有し、オットマンフレーム40は、可動側フレーム21と連結し、可動側フレーム21の回動に合わせて回動する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと該シートクッションに対してシート前後方向に回動可能なオットマンとを有し、前記オットマンが垂下した通常状態と前記オットマンがシート前方に回動した展開状態とを切り替え可能なシート本体を備え、
前記シートクッションは、骨格を成すクッションフレームを有し、
前記クッションフレームは、
側部に配置される左右一対のサイドフレームを有する固定側フレームと、
前記左右一対のサイドフレームに対し回動可能に支持される可動側フレームと、を有し、
前記オットマンは、骨格を成すオットマンフレームを有し、
前記オットマンフレームは、前記可動側フレームと連結し、前記可動側フレームの回動に合わせて回動することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記シート本体が前記通常状態である場合、前記オットマンフレームと前記可動側フレームとの連結部分は、前記可動側フレームの前記左右一対のサイドフレームに対するフレーム回動軸より上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記クッションフレームは、前記左右一対のサイドフレームを連結する連結フレームを有し、
前記オットマンフレームは、前記連結フレームを回動中心軸として回動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項4】
空調用の空気流発生装置を備え、
前記空気流発生装置は、前記可動側フレームの下面に配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記オットマンフレームは、シート幅方向の両側部に前記オットマンフレームの回動を案内する案内装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項6】
乗物用シートの制御方法であって、
前記乗物用シートは、シートクッションと該シートクッションに対してシート前方に回動可能なオットマンとを有し、前記オットマンが垂下した通常状態と、前記オットマンがシート前方に回動した展開状態とを切り替え可能なシート本体を備え、前記シートクッションは、骨格を成すクッションフレームを有し、前記クッションフレームは、側部に配置される左右一対のサイドフレームを備える固定側フレームと、前記左右一対のサイドフレームに対し回動可能に支持される可動側フレームと、を有し、
前記乗物用シートの制御方法は、
前記シート本体が前記通常状態から前記展開状態に移行するとき、前記可動側フレームの前端部を下方に下げることと、
前記可動側フレームの前端部が下がった後、又は、下方に移動中に、前記オットマンを前方に回動させることと、を含むことを特徴とする乗物用シートの制御方法。
【請求項7】
前記シート本体は、シート前後方向に回動可能なシートバックを有し、
前記乗物用シートの制御方法は、
前記シートバックをシート後方に回動させたときに、前記可動側フレームの後端部を上げて前記可動側フレームの前端部を下方に下げることを含むことを特徴とする請求項6に記載の乗物用シートの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シート及び乗物用シートの制御方法に係り、特に、オットマンを備える乗物用シート及び乗物用シートの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された車両用シートのように、シートクッションの前端部に、乗員の脚を乗せるためのオットマンが設けられた車両用シートが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オットマンを備えた車両用シートでは、シートをベッド状態とするために、シートバックを後傾させると共に、シートクッションの前端部を上げる変形を行い、オットマンをシート前方に展開させている。従来は、シートクッションとオットマンとが別々に制御されており連動させる構造となっていないため、例えば、車両用シートをベッド状態とするためには、シートクッションの変形とオットマンの回動とを個別に行っていた。そのため、シートクッションの変形に合わせてオットマンを回動させる連動構造が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートクッションの変形に合わせてオットマンを回動させることが可能な乗物用シート及び乗物用シートの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートクッションと該シートクッションに対してシート前後方向に回動可能なオットマンとを有し、前記オットマンが垂下した通常状態と前記オットマンがシート前方に回動した展開状態とを切り替え可能なシート本体を備え、前記シートクッションは、骨格を成すクッションフレームを有し、前記クッションフレームは、側部に配置される左右一対のサイドフレームを有する固定側フレームと、前記左右一対のサイドフレームに対し回動可能に支持される可動側フレームと、を有し、前記オットマンは、骨格を成すオットマンフレームを有し、前記オットマンフレームは、前記可動側フレームと連結し、前記可動側フレームの回動に合わせて回動することにより解決される。
オットマンフレームが、クッションフレームの可動側フレームの回動に合わせて回動することで、シートクッションの変形に合わせてオットマンを回動させることが可能な乗物用シートを提供することができる。
【0007】
上記の構成において、前記シート本体が前記通常状態である場合、前記オットマンフレームと前記可動側フレームとの連結部分は、前記可動側フレームの前記左右一対のサイドフレームに対するフレーム回動軸より上方に位置するとよい。
シート本体が通常状態である場合、オットマンはシートクッションから垂下した状態であるが、オットマンと可動側フレームとの連結部分が可動側フレーム回動軸より上方に位置することで、通常状態におけるオットマンの下端の位置が上がり、例えばオットマンの下端が車体フロアに干渉することを抑制することができる。
【0008】
上記の構成において、前記クッションフレームは、前記左右一対のサイドフレームを連結する連結フレームを有し、前記オットマンフレームは、前記連結フレームを回動中心軸として回動可能に構成されているとよい。
オットマンフレームが連結フレームを回動中心軸とすることにより、オットマンのシート前後方向の回動動作を安定化させることができる。
【0009】
上記の構成において、空調用の空気流発生装置を備え、前記空気流発生装置は、前記可動側フレームの下面に配置されるとよい。
空気流発生装置を可動側フレームの下面に配置することで、空気流発生装置を可動側フレームに追従させることができ、それにより例えばダクト等の変形が抑制されるため、空気流をシート本体等に安定的に供給することができる。
【0010】
上記の構成において、前記オットマンフレームは、シート幅方向の両側部に前記オットマンフレームの回動を案内する案内装置を備えるとよい。
オットマンフレームが案内装置を備えることで、オットマンフレームの回動を安定して行うことができる。
【0011】
上記課題は、乗物用シートの制御方法であって、前記乗物用シートは、シートクッションと該シートクッションに対してシート前方に回動可能なオットマンとを有し、前記オットマンが垂下した通常状態と、前記オットマンがシート前方に回動した展開状態とを切り替え可能なシート本体を備え、前記シートクッションは、骨格を成すクッションフレームを有し、前記クッションフレームは、側部に配置される左右一対のサイドフレームを備える固定側フレームと、前記左右一対のサイドフレームに対し回動可能に支持される可動側フレームと、を有し、前記乗物用シートの制御方法は、前記シート本体が前記通常状態から前記展開状態に移行するとき、前記可動側フレームの前端部を下方に下げることと、前記可動側フレームの前端部が下がった後、又は、下方に移動中に、前記オットマンを前方に回動させることと、を含むことにより解決される。
可動側フレームの前端部が下方に下げることに合わせて、オットマンを前方に回動させることにより、シートクッションの変形に合わせて、オットマンを回動させることができる。
【0012】
上記の制御方法において、前記シート本体は、シート前後方向に回動可能なシートバックを有し、前記乗物用シートの制御方法は、前記シートバックをシート後方に回動させたときに、前記可動側フレームの後端部を上げて前記可動側フレームの前端部を下方に下げることを含むとよい。
シートバックをシート後方に回動させた場合に、可動側フレームを回動させることで、オットマンも前方に回動する。そのため、シート本体を容易に展開状態とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の乗物用シートによれば、オットマンフレームが、クッションフレームの可動側フレームの回動に合わせて回動することで、シートクッションの変形に合わせてオットマンを回動させることが可能な乗物用シートを提供することができる。
また、本発明によれば、シート本体が通常状態である場合、オットマンはシートクッションから垂下した状態であるが、オットマンと可動側フレームとの連結部分が可動側フレーム回動軸より上方に位置することで、通常状態におけるオットマンの下端の位置が上がり、例えばオットマンの下端が車体フロアに干渉することを抑制することができる。
また、本発明によれば、オットマンフレームが連結フレームを回動中心軸とすることにより、オットマンのシート前後方向の回動動作を安定化させることができる。
また、空気流発生装置を可動側フレームの下面に配置することで、空気流発生装置を可動側フレームに追従させることができ、それにより例えばダクト等の変形が抑制されるため、空気流をシート本体等に安定的に供給することができる。
また、本発明によれば、オットマンフレームが案内装置を備えることで、オットマンフレームの回動を安定して行うことができる。
また、本発明の乗物用シートの制御方法によれば、可動側フレームの前端部が下方に下げることに合わせて、オットマンを前方に回動させることにより、シートクッションの変形に合わせて、オットマンを回動させることができる。
また、本発明の乗物用シートの制御方法によれば、シートバックをシート後方に回動させた場合に、可動側フレームを回動させることで、オットマンも前方に回動するため、乗物用シートを容易に展開状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートを斜め前方から見た斜視図である。
【
図2】車両用シートのシートフレームを示す斜視図である。
【
図4】通常状態の車両用シートを示す側面図である。
【
図5】展開状態の車両用シートを示す側面図である。
【
図6】可動側フレームとオットマンフレームとの連動動作を示す説明図である。
【
図7】車両用シートの制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態(本実施形態)に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0016】
なお、以下では、乗物用シートの一例として自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートSを挙げ、その構成例について説明する。
また、以下の説明において、「シート前後方向」とは、車両用シートSの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートSの幅方向であり、車両用シートSに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートSの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
また、以下では車両用シートSに着座者が端座位(足を下して座った姿勢)で着座している状態を、車両用シートSの「通常状態」と呼び、着座者が半座位(上半身を後方に倒し足を上げた姿勢)で座ることが可能な状態を、「展開状態」と呼ぶこととする。
また、以下に説明する車両用シートSの各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートSが通常状態であるケースを想定して説明する。
【0017】
<車両用シートS>
本実施形態に係る車両用シートSの基本構成について、
図1から
図6を参照しながら説明する。
図1は車両用シートSを斜め前方から見た斜視図であり、
図2は車両用シートSのシートフレームFを示す斜視図である。
図3はクッションフレーム10の上面図である。
図4は通常状態の車両用シートSを示す側面図であり、
図5は展開状態の車両用シートSを示す側面図である。
図6は可動側フレーム21とオットマンフレーム40との連動動作を示す説明図である。なお、
図1中、車両用シートSの一部については図示の都合上、表皮材Trを外した構成で図示している。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用シートSは、シートクッション1、シートバック2、ヘッドレスト3、オットマン4、リクライニング装置5及びレール装置6を主な構成として備えている。また、
図2に示すように、車両用シートSの内部には、車両用シートSの骨格を成すシートフレームFが設けられている。シートフレームFには、クッションフレーム10、バックフレーム30、ヘッドレストフレーム35、オットマンフレーム40が含まれる。また、シートクッション1、シートバック2、ヘッドレスト3及びオットマン4を纏めてシート本体Shと称する場合がある。
【0019】
なお、以下の説明においては、まず、シートクッション1、シートバック2、ヘッドレスト3、リクライニング装置5及びレール装置6等の説明を行い、その後、本発明の要となる、オットマン4、及び、車両用シートSの制御方法について説明する。
【0020】
<シートクッション1>
シートクッション1は、着座する乗員(以下、着座者と呼ぶ場合がある)の臀部を支える支持部材であって、着座者を下方から支持している。シートクッション1は、
図2に示すように、シートクッション1の骨格を形成するクッションフレーム10を備える。また、本実施形態のクッションフレーム10は、固定側フレーム11と、固定側フレーム11に回動可能に設けられる可動側フレーム21とから構成されている。可動側フレーム21は、シート幅方向に延びるフレーム回動軸26を中心に、固定側フレーム11に対して回動可能に取り付けられている。
【0021】
固定側フレーム11は、上面視で矩形形状を有する枠体である。固定側フレーム11は、側部に配置されシート前後方向に延びる左右一対のクッションサイドフレーム12,12を有する。また、固定側フレーム11は、左右一対のクッションサイドフレーム12,12の前端部を連結する前方連結フレーム13と、後端部を連結する後方連結フレーム14とを有する。前方連結フレーム13は、
図3に示すように、一部が折れ曲がり中央部分が前側に突出した形状に形成されている。なお、左右一対のクッションサイドフレーム12,12は、本発明の左右一対のサイドフレームに相当する。また、前方連結フレーム13は、本発明の連結フレームに相当する。
【0022】
可動側フレーム21は、固定側フレーム11の枠内に設けられ、上面視で矩形形状を有する枠体として形成されている。可動側フレーム21は、側部に配置されシート前後方向に延びる左右一対の可動側サイドフレーム22,22を有する。また、可動側フレーム21は、左右一対の可動側サイドフレーム22,22の前端部を連結する可動側前方フレーム23と、後端部を連結する可動側後方フレーム24と主な構成要素としている。
【0023】
また、上述したように、可動側フレーム21は固定側フレーム11に回動可能に取り付けられている。より詳細に述べると、可動側フレーム21の可動側サイドフレーム22,22が、固定側フレーム11のクッションサイドフレーム12,12に回動可能に取り付けられている。
可動側フレーム21は、モータとギアを有するアクチュエータ等の駆動部(不図示)を用いて、自動でフレーム回動軸26を中心に回動するように構成されている。アクチュエータ等は、後述する制御装置8により制御される。なお、可動側フレーム21は、手動で固定側フレーム11に対して回動するように構成されてもよい。
【0024】
また、受圧部材25が、可動側前方フレーム23と可動側後方フレーム24とに架け渡すように設けられている。受圧部材25は弾性を有する板状の部材からなり、可動側フレーム21に載置されるクッション用のパッド材Pを支持するように構成されている。
また、受圧部材25には、
図2及び
図3に示すように、軽量化を図るため複数の貫通孔27が形成されている。なお、受圧部材25は、複数のSバネ等からなる弾性部材により構成されてもよい。
【0025】
<パッド材P>
クッションフレーム10にはシートクッション用のパッド材Pが載置され、パッド材Pは表皮材Trにより被覆される。パッド材Pは、クッション材であり、例えば軟質ポリウレタンフォーム等のウレタン樹脂(発泡樹脂)により形成される。パッド材Pは、バイオマスウレタンから形成されてもよい。また、パッド材Pを被覆する表皮材Trは、例えば伸縮性を有する合成皮革材料により形成される。表皮材Trは、布、フィルム、革等により形成されてもよい。
シートクッション1のパッド材P及び表皮材Trは、可動側フレーム21の回動に合わせて、変形するように構成されている。すなわち、シートクッション1は、可動側フレーム21が回動することにより変形することが可能に構成されている。
【0026】
<シートバック2>
シートバック2は、着座者の背中を支える支持部材であって、着座者を後方から支持している。シートバック2は、
図2に示すように、シートバック2の骨格を成すバックフレーム30を有する。
【0027】
バックフレーム30は、正面視で略矩形形状を有する枠体である。バックフレーム30は、バックフレーム30の側部に配置される一対のバックサイドフレーム31,31と、左右一対のバックサイドフレーム31,31の上端部を連結する上部フレーム32と、左右のバックサイドフレーム31の下端部を連結する下部フレーム33とから構成されている。
【0028】
バックサイドフレーム31は、上下に延びる長尺状のフレーム材であり、シート幅方向に対向した状態で互いに離隔して配置されている。各バックサイドフレーム31は、板状部材を垂直に折り曲げて形成されたアングル材である。バックサイドフレーム31の下端には、リクライニング装置5が取り付けられている。
【0029】
上部フレーム32は、略逆U字形状を有するフレーム材であり、左右のバックサイドフレーム31,31の上端部を連結している。上部フレーム32は、金属製の丸パイプ材から構成されているが、上部フレーム32は樹脂製であってもよい。
【0030】
下部フレーム33は、左右に延びる長尺状のフレーム材であり、下部フレーム33は左右のバックサイドフレーム31,31の下端部を連結している。下部フレーム33の前方にはリクライニング装置5のリクライニング回動軸50が配置されている。
【0031】
バックフレーム30にはシートバック2用のパッド材Pが載置され、更に、パッド材Pは表皮材Trにより被覆される。パッド材Pは、軟質ポリウレタンフォーム等のウレタン樹脂(発泡樹脂)により形成されている。また、パッド材Pは、バイオマスウレタンから構成されてもよい。シートバック2用の表皮材Trは、例えば伸縮性を有する合成皮革材料からなる。表皮材Trは、布、フィルム、革等により構成されてもよい。
【0032】
シートバック2は、リクライニング装置5により、シートクッション1に対して前後方向に回動可能に構成されており、
図4及び
図5に示すように、着座状態(通常状態)から後方に回動させ展開状態とすることができる。また、シートバック2を前方に回動させることにより収納状態とすることも可能である。
【0033】
<ヘッドレスト3>
ヘッドレスト3は、着座者の頭部を支える支持部材であって、着座者の頭部を後方から支持している。
図2に示すように、ヘッドレスト3は、ヘッドレスト3の骨格を成すヘッドレストフレーム35を内部に有する。ヘッドレスト3は、ヘッドレストフレーム35を覆うヘッドレスト用のパッド材Pと、パッド材Pを覆う表皮材Trとを有する。
【0034】
<レール装置6>
レール装置6は、
図1及び
図2に示すように、車両用シートSを車両のフロアに対して前後方向にスライド移動可能に連結する装置である。
図1に示すように、レール装置6は、車両用シートSの下方に設けられている。レール装置6は、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)を有している。詳細には、レール装置6は、フロアに固定されるロアレール6aと、ロアレール6aに対して前後方向にスライド移動可能なアッパーレール6bとを有している。
【0035】
<リクライニング装置5>
リクライニング装置5は、リクライニング回動軸50を有し、シートバック2をシートクッション1に対してリクライニング回動軸50を中心に回動可能に連結している。リクライニング装置5は、
図2に示すように、バックフレーム30の下方に設けられる。また、リクライニング装置5は、上述したようにシートバック2を通常状態から後方に回動させ展開状態とすることができる。また、シートバック2を前方に回動させることにより収納状態とすることも可能で、シートバック2を収納状態から展開状態まで変位させることができる。リクライニング装置5は不図示のアクチュエータを備えており、制御装置8により自動で通常状態から、展開状態に移行させることができる。
【0036】
<ブロワ装置7>
ブロワ装置7は、空調用の装置であり、車両用シートSに空気流を発生させる装置である。ブロワ装置7には、不図示の吹出口と吸込口が設けられており、ブロワ装置7内部のファンを回転駆動させることにより、吸い込み口から空気を吸い込み、吹出口から空気を吹き出す空気流を生成する。ブロワ装置7には不図示のダクトが接続されており、車両用シートSの着座者に向かって空気を吹き出すことが可能に構成されている。ブロワ装置7を設けることにより、着座者の快適性を高めることができる。ブロワ装置7は、本発明の空気流発生装置に相当する。
【0037】
ブロワ装置7は、
図1~
図5に示すように、可動側フレーム21の下面に取り付けられている。より詳細に述べると、ブロワ装置7は、可動側フレーム21の可動側前方フレーム23の下面にブラケットを介して取り付けられている。
ブロワ装置7を可動側フレーム21の下面に設けることにより、ブロワ装置7を可動側フレーム21に追従させることができ、それにより、例えばダクト等の変形が抑制されるため、空気流をシート本体等に安定的に供給することができる。
【0038】
<制御装置8>
制御装置8が、ブロワ装置7と同様に可動側フレーム21の下面に、ブラケット等を介して取り付けられている。制御装置8は、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれるもので、車両又は車両用シートSに搭載された駆動装置等を制御する。例えば、車両又は車両用シートSに搭載された操作ボタンが押下された場合、押下されたボタンに応じて、リクライニング装置5を駆動させたり、可動側フレーム21を回動させたりする。また、制御装置8は、ブロワ装置7を制御してもよい。
制御装置8により、可動側フレーム21やリクライニング装置5を制御することにより、車両用シートSに着座する乗員の快適性を向上させることができる。
【0039】
<オットマン4>
本実施形態の車両用シートSは、シートクッション1の前端部に、着座者の脚を支持するオットマン4が設けられている。オットマン4は、シートクッション1に対して、シート前後方向に回動可能に取り付けられている。
【0040】
オットマン4は、
図2及び
図3に示すように、オットマン4の骨格となるオットマンフレーム40を有する。オットマンフレーム40は、金属製の板状部材からなり、複数の貫通孔43が形成されている。オットマンフレーム40の上端部は、連結部材41を介して、可動側フレーム21の可動側前方フレーム23と連結している。また、オットマンフレーム40と連結部材41との間にはヒンジ部42が形成されており、オットマンフレーム40は連結部材41に対して回動可能に構成されている。
【0041】
図4は、着座者が端座位で着座する車両用シートSの通常状態を示している。通常状態は着座モードと呼ばれる場合がある。通常状態において、オットマン4は、シートクッション1の前端部から垂下した状態となっており、着座者は足を下げて座ることができる。
【0042】
また、車両用シートSのシート本体Shは、
図5に示すように、シートバック2を後方(
図4の矢印A方向)に回動させて着座者を半坐位とする展開状態に変形することができる。展開状態になるとき、シートクッション1の可動側フレーム21が、フレーム回動軸26を中心に回動して、シートクッション1の前端部1aが下方(
図4の矢印B方向)に移動する。また、このとき、シートクッションの1の後端部1bは上方に移動する。
【0043】
車両用シートSが展開状態となるとき、オットマン4は、前方(
図4の矢印C方向)に回動して着座者の足を上げる。このように、オットマン4の回動動作は、シートクッション1の可動側フレーム21の回動と連係して行われる。
【0044】
可動側フレーム21の回動に合わせてオットマン4が回動する仕組み、すなわち可動側フレーム21とオットマン4との連動動作について
図6を用いて説明する。
図6の上段は、通常状態における可動側フレーム21とオットマンフレーム40の位置を示しており、
図6の下段は、展開状態における可動側フレーム21とオットマンフレーム40の位置を示している。
【0045】
通常状態において、オットマンフレーム40は、可動側フレーム21の前端部21aから垂れ下がった状態となっている。このとき、オットマンフレーム40は、固定側フレーム11の前方連結フレーム13に支持されている。
【0046】
車両用シートSが展開状態となるとき、フレーム回動軸26を中心に可動側フレーム21が矢印B方向に回動し、可動側前方フレーム23が下方に位置するようになる。
可動側前方フレーム23が下がることにより連結部材41が下がり、それにより、ヒンジ部42により接合されたオットマンフレーム40が、前方連結フレーム13を回動中心軸として、シート前方(
図6の矢印C方向)に回動するようになる。すなわち、オットマン4がシート前方に回動して展開状態となる。シートバック2が後傾している場合、着座者の足が上がることで、着座者は半坐位で車両用シートSに座ることができる。オットマン4の回転軸を、固定側フレーム11の前方連結フレーム13を回動中心軸とすることで、例えば、オットマン4のシート前後方向の回動動作を安定化させることができる。
なお、オットマンフレーム40は、ヒンジ部42を回動中心軸として回動動作するように構成されてもよい。
また、ヒンジ部42は、オットマンフレーム40の上端部と、連結部材41の前端部との間に設けられ、オットマンフレーム40が連結部材41に対して回動するように構成されている。これは、一例であり、ヒンジ部42は、連結部材41の後端部と可動側前方フレーム23との間に設けられてもよい。オットマンフレーム40と連結部材41とが、可動側前方フレーム23に設けられたヒンジ部42を回動中心軸として回動させることにより、可動側前方フレーム23が下がることにより、オットマン4がシート前方に回動するように構成されてもかまわない。
【0047】
可動側フレーム21のフレーム回動軸26を中心とした回動動作は、
図5に示すように、シートバック2が後傾されたときに連係して実施されてもよい。それにより、シートバック2を後傾させたときに合わせて、オットマン4がシート前方に回動し、車両用シートSのシート本体Shを展開状態とすることができる。
【0048】
なお、車両用シートSのシート本体Shが通常状態のとき、
図4に示すように、オットマン4のオットマンフレーム40と可動側フレーム21との連結部分、より詳細に述べるとヒンジ部42は、フレーム回動軸26よりも上方に位置するとよい。
ヒンジ部42が上方に位置することにより、オットマン4が垂れ下がった場合においても、オットマン4の下端部が車体フロアと干渉し難くなり、接触を抑制することができる。
【0049】
本実施形態ではオットマン4のオットマンフレーム40が、可動側フレーム21と連結部材41により連結することにより、可動側フレーム21の回動に合わせてオットマンフレーム40を回動させているが、これは一例である。オットマンフレーム40を回動させるアクチュエータを可動側フレーム21の前端部21a、又は、オットマンフレーム40に設け、制御装置8によりアクチュエータを制御することで、オットマンフレーム40を可動側フレーム21の回動に合わせて回動させてもよい。
【0050】
図7を用いて、車両用シートSの制御方法について説明する。車両用シートSは、最初通常状態であり、通常状態から展開状態に移行するものとする。
車両用シートSの着座者は、車両用シートSのシート本体Shを展開状態とするため、シートバック2を、リクライニング装置5を用いてシート後方に後傾させる(ステップS101)。このとき、着座者は、車両又は車両用シートに設けられた操作ボタン等を用いてよく、操作ボタン等から入力信号を受信した制御装置8はリクライニング装置5を制御してシートバック2を後傾させてもよい。
【0051】
シートバック2の後傾に合わせて、シートクッション1の後端部1b、すなわち、可動側フレーム21の後端部21bを上方に移動させ、それにより、可動側フレーム21を、フレーム回動軸26を中心に回動させる。それにより、
図5に示すように、可動側フレーム21の前端部21aが、通常状態の位置よりも下方に移動した状態となる(ステップS102)。言い換えれば、制御装置8は、可動側フレーム21を回動させ前端部21aを下方に移動させる。なお、シートバック2とシートクッション1との連係は、シートバック2の下端と、シートクッション1の後端部1bとを連結することにより機械的に行われてもよく、また、制御装置8を用いて実行されてもよい。
【0052】
シートクッション1の前端部1aが下方に移動すると、可動側フレーム21の前端部21aが下がり、前端部21aと連結したオットマンフレームが前方に回動して展開する(ステップS103)。
展開状態に移行中、連結部材41により可動側フレーム21と連結するオットマンフレーム40が前方に回動して、オットマン4が展開状態となる。
【0053】
なお、オットマン4がアクチュエータ等により自動で回動可能である場合は、可動側フレーム21の前端部21aが下がる状態への移行中だけでなく、可動側フレーム21の前端部21aが下がった状態になった後に、制御装置8によりオットマンフレーム40を前方に回動させオットマン4が展開状態となるように制御してもよい。
このように車両用シートSを制御することにより、可動側フレーム21の回動に合わせて、オットマン4を展開させることができる。
【0054】
なお、シートバック2が後傾した状態である場合、又は、シートバック2を後傾させなくてもよい場合は、ステップS101の処理をすることなく、ステップS102及びステップS102の処理を実行する、すなわち、可動側フレーム21の前端部21aが下がる状態に移行中にオットマンフレーム40を前方に回動させてもよい。
【0055】
<<第二実施例>>
図8を用いて、第二実施例について説明する。
図8は第二実施例に係る車両用シートS2のシートフレームF2の斜視図である。
図2に示すシートフレームFとは、オットマンフレーム40に案内装置80が設けられていることが異なっている。他の構成は、
図1及び
図2に示す車両用シートS及びシートフレームFと同様であるため、同一又は均等の部材については同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
図8に示すシートフレームF2にはオットマンフレーム40にオットマンフレーム40の回動を案内する案内装置80が設けられている。案内装置80は、オットマンフレーム40のシート幅方向の両側部(左右側部)において、オットマンフレーム40の延在方向に沿って延びるピラー81と、ピラー81を保持するリング状のガイド部82と、ガイド部82を固定側フレーム11に固定する固定側ブラケット83とから構成される。ガイド部82は固定側ブラケット83に対して回転可能に取り付けられており、オットマンフレーム40が前方に回動すると、ガイド部82のピラー81を保持する位置が移動するように構成されている。オットマンフレーム40は、連結部材41だけでなく、左右側部に設けられた案内装置80によっても支持されるため、より安定してオットマン4を回動させることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態として、車両に搭載される車両用シートSを挙げ、その構成例について図を用いて説明した。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用の乗物に搭載されるシートに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
S、S2 車両用シート(乗物用シート)
F、F2 シートフレーム
P パッド材
Tr 表皮材
Sh シート本体
1 シートクッション
1a 前端部
1b 後端部
2 シートバック
3 ヘッドレスト
4 オットマン
5 リクライニング装置
6 レール装置
6a ロアレール
6b アッパーレール
7 ブロワ装置(空気流発生装置)
8 制御装置
10 クッションフレーム
11 固定側フレーム
12 クッションサイドフレーム(サイドフレーム)
13 前方連結フレーム(連結フレーム)
14 後方連結フレーム
21 可動側フレーム
21a 前端部
21b 後端部
22 可動側サイドフレーム
23 可動側前方フレーム
24 可動側後方フレーム
25 受圧部材
26 フレーム回動軸
27 貫通孔
30 バックフレーム
31 バックサイドフレーム
32 上部フレーム
33 下部フレーム
35 ヘッドレストフレーム
40 オットマンフレーム
41 連結部材
42 ヒンジ部
43 貫通孔
50 リクライニング回動軸
80 案内装置
81 ピラー
82 ガイド部
83 固定側ブラケット