IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・コロラド,ア・ボディー・コーポレイトの特許一覧

特開2024-177160バクテリアセルロースゲル、製造方法および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177160
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】バクテリアセルロースゲル、製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20241212BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08J9/28 CEP
C08J5/18
C08J5/18 CEP
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024124320
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2020569102の分割
【原出願日】2019-06-13
(31)【優先権主張番号】16/017,319
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/684,661
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508214950
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・コロラド,ア・ボディー・コーポレイト
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】スマリュク,アイバン・アイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘス,アンドリュー・ジョンストン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チュインクン
(72)【発明者】
【氏名】デ ラ クルーズ,ジョシュア・エイ
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー,ブレーズ
(72)【発明者】
【氏名】アブラーム,エルド
(72)【発明者】
【氏名】セニュク,ボーダン
(72)【発明者】
【氏名】チェルパク,ブラディスラフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高められた機械的ロバスト性、調節可能な光学異方性、および低い熱伝導性を特徴とする、透明性が高く柔軟性のセルロースナノファイバー-ポリシロキサン複合エアロゲルを提供する。
【解決手段】増殖培地中のナノセルロースの間の水素結合を低減する添加剤を含む増殖培地の存在下でバクテリアによって製造されるナノセルロースを含む透明なエアロゲルであって、ポリシロキサンネットワークを含み、95%~100%の範囲内の電磁放射線の透過率を有し、97%~99%の範囲内の気孔率を有し、ここで、気孔率(ε)は、ε=(l-ρb/ρs)×100%として定義され、ρbはかさ密度であり、ρsは骨格密度である、透明なエアロゲルが提供される。さらに、前記エアロゲルを含むフィルムおよびゲルを形成する方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バクテリアセルロースを含むエアロゲル。
【請求項2】
約10-3W/(m・K)~約10W/(m・K)の熱伝導率を有する、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項3】
ナノセルロースを含む、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項4】
約1Pa~約10Paの体積弾性率を有する、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項5】
バクテリアセルロースがセルロース産生細菌から得られる、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項6】
バクテリアセルロースがAcetobacter hansenii、Acetobacter xylinum、またはそれらの混合物から得られる、請求項5に記載のエアロゲル。
【請求項7】
バクテリアセルロースナノ材料を含むフィルム。
【請求項8】
約1μm~約10cmの厚さを有する、請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
約1Pa~約10Paの体積弾性率を有する、請求項7に記載のフィルム。
【請求項10】
バクテリアセルロースがセルロース産生細菌から得られる、請求項7に記載のエアロゲル。
【請求項11】
バクテリアセルロースがAcetobacter hansenii、Acetobacter xylinumまたはそれらの混合物から得られる、請求項7に記載のフィルム。
【請求項12】
ナノ材料がセルロース系材料のナノリボンを含む、請求項7に記載のフィルム。
【請求項13】
セルロース系材料のフィブリルを含む、請求項7に記載のフィルム。
【請求項14】
セルロース系材料の整列させられたナノリボンを含む層を含む、請求項7に記載のフィルム。
【請求項15】
ナノリボンが約1:100~約1:1000のアスペクト比を有する、請求項14に記載のフィルム。
【請求項16】
セルロース系材料の整列させられたナノロッドを含む層を含む、請求項7に記載のフィルム。
【請求項17】
ナノロッドが約1:10~約1:100のアスペクト比を有する、請求項16に記載のフィルム。
【請求項18】
請求項7から17のいずれか1項に記載のフィルムを含む複合構造。
【請求項19】
a)増殖培地、細菌、および場合によりセルロースフィブリル間の結合の程度を低減す
る添加剤の混合物を準備するステップと、
b)バクテリアセルロースの薄膜を生成させるステップと、
c)薄膜に含有される水を溶媒と交換するステップと、
d)薄膜を乾燥して溶媒を除去して、エアロゲルを形成するステップと
を含む方法。
【請求項20】
バクテリアセルロースの薄膜を処理して細菌を含まない薄膜を提供するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
添加剤が細菌増殖培地中のフィブリル間の水素結合を低減する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
作用剤がフィブリル間の結合に対する立体障害を提供する分子を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
バクテリアセルロースがセルロース産生細菌から得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
バクテリアセルロースがAcetobacter hansenii、Acetobacter xylinum、またはそれらの混合物から得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
増殖培地および増殖培地内の栄養組成物の1つまたは複数を変更することによりフィブリルの密度を操作するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
分散液内のナノセルロース材料を整列させるステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
整列させるステップが分散液に剪断応力をかけるステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
整列させるステップが電場および磁場の1つまたは複数を分散液にかけるステップを含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、バクテリアセルロースゲル、製造方法および使用方法と題される、2018年6月25日に出願された米国出願第16/017,319号の優先権を主張する。本出願はまた、断熱のためのナノセルロースバイオフィルムおよび構造ゲルと題される、2018年6月13日に出願された米国仮出願第62/684,661号の利益も主張する。これらの出願の全内容はここで参照したことによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
連邦政府委託研究
この発見はアメリカ国立科学財団により授与された認可DMR-1410735およびアメリカ合衆国エネルギー省により授与された認可DE-AR0000743の下で政府支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【発明の概要】
【0003】
セルロースナノロッド、リボン、ファイバーなどを含有するセルロースベースの柔軟ゲル、およびセルロースにより可能にされた(cellulose-enabled)無機またはポリマー複
合材料が開示され、ここでゲルは調節可能な光学的、熱伝達、および剛性特性を有する。開示されるゲルはヒドロゲル、オルガノゲル、液晶(LC)ゲル、およびエアロゲルの形態である。さらに、高められた機械的ロバスト性、調節可能な光学異方性、および低い熱伝導性を特徴とする、透明性が高く柔軟性のセルロースナノファイバー-ポリシロキサン複合エアロゲルが開示される。さらに、細菌由来のセルロース系材料を含むゲルならびにバクテリアセルロースゲルを製造する方法および使用方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】セルロースにより可能にされた秩序化された(ordered)ゲルの製造手順を示す概略図である。(a)セルロースナノ材料水性分散液、(b)ヒドロゲル、(c)オルガノゲル、(d)エアロゲル、および(e)液晶ゲル。
図2】いろいろな供給源からのセルロースナノロッド、ナノファイバー、ナノリボンの透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。(a)綿からのセルロースナノロッド、(b)綿からのセルロースナノワイヤ、(c)木材パルプからのセルロースナノワイヤ、および(d)バクテリアセルロースからのセルロースナノリボン。
図3】ネマチックセルロース(a)ヒドロゲル、(b)オルガノゲル、(c)エアロゲル、(d)ネマトゲル(nematogel)の写真、および(e)秩序化されたエアロゲルの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す図である。スケールバーは1cmである。
図4】コレステリック(a)セルロース-シリカ組成物、(b)シリカエアロゲル、(c)シリカネマトゲルの写真、および(d)秩序化されたシリカエアロゲルのSEM像を示す図である。スケールバーは5mmである。
図5】拡散照明および一方向視野でヘイズ測定に使用されることができる分光計アセンブリの概略図である。
図6】開示されるエアロゲルの製造の1つの実施形態を示す一般的な概略図である。
図7】典型的なポンプ-プローブ測定系の光学経路を示す図である。
図8】ホットボックス装置の構成要素、すなわち、窓試料の1つの面上の(内部温度をシミュレートする)計測ボックス;計測ボックスを包囲する制御ガードボックス;他の面上の(外部温度をシミュレートする)人工気候室ボックス;ならびに試料支持および断熱を提供する試料フレームを示す図である。
図9図9A~9Cは、様々なTEMPO酸化セルロースナノ粒子改質剤を示す図である。図9Aはアリルアミンによる表面改質を示す図である。図9Bは2-(カルバモイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム付加物による表面改質を示す図である。図9Cはメトキシポリエチレングリコールアミン(mPEG-アミン)の例による表面改質を示す図である。
図10】ポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)ネットワークセルロースヒドロゲル、オルガノゲルおよびエアロゲルを一般に形成するための開示される方法を示す図である。
図11】開示された方法で形成されたヒドロゲルの光透過性を示す写真である。
図12】開示された方法で形成されたオルガノゲルの光透過性を示す写真である。
図13】表面改質剤がアリルアミンである開示された方法で形成されたエアロゲルの光透過性を示す写真である。
図14】表面改質剤が5000ダルトンの平均分子量を有するm-PEG-アミンである開示された方法により形成されたエアロゲルの写真である。
図15】表面改質剤が塩化カルバモイルコリンである開示された方法により形成されたエアロゲルの写真である。
図16】塩化カルバモイルコリンでキャッピングされたTOCN-PMSQエアロゲルが疎水性の表面特性を示すことを示す図である。
図17A図17A~17Cは、開示されたエアロゲルの様々な倍率の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。図17Aは、コロイド分散液が、大部分が各々直径Dc約5nmおよび長さLc=1~2μmに個別化されたTOCNからなることを示す。
図17B図17A~17Cは、開示されたエアロゲルの様々な倍率の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。図17Bは、ポリシロキサンにより形成された明確で均一な直径10~15nmのナノファイバーを示す走査型電子顕微鏡像(SEM)である。
図17C図17A~17Cは、開示されたエアロゲルの様々な倍率の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。図17Cは、ポリシロキサンにより形成された明確で均一な直径10~15nmのナノファイバーを示す走査型電子顕微鏡像(SEM)である。
図18】開示されたエアロゲルの可視透過率を示すグラフである。
図19】開示されたエアロゲルのヘイズ率を示すグラフである。
図20】PMSQマトリックスが、TOCN-PMSQエアロゲルに、主としてSi-0結合のために6-20μmの波長で強い吸収を示させることを示すグラフである。
図21】TOCN-PMSQエアロゲルの測定された熱伝導率対サンプルの気孔率を示すグラフである。
図22】塩化カルバモイルコリンで改質されたナノセルロース(第四級アミン)から形成されたエアロゲルとアリルアミンで改質されたエアロゲルとの熱伝導率の比較を示すグラフである。
図23】0.06wt.%のTOCNを含むTOCN-PMSQエアロゲルに対する圧縮応力-歪み関係を示すグラフである。
図24図24Aは、レーザートラップの赤外線レーザービームを用いたA. hansenii細菌の再配向を示す図である。図24Bは、レーザートラップの赤外線レーザービームを用いたA. hansenii細菌の再配向を示す図である。
図25】セルロースファイバーを産生するA. hansenii細菌を示す暗視野顕微鏡検査の写真である。
図26】セルロースファイバーを産生するA. xylinum細菌を示す。
図27図27Aは、1.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムがA. xylinumに加えられたときのセルロースフィブリルの太さに対する影響を示すことを示す写真である。図27Aにおいてセルロースフィブリルは目に見える。図27Bは、1.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムがA. xylinumに加えられたときのセルロースフィブリルの太さに対する影響を示すことを示す写真である。図27Bにおいてフィブリルの太さは大いに低減されて、フィブリルが写真で目に見えない。
図28】セルロースフィブリルを細胞膜から押し出す多数のセルロース合成酵素を示すアセトバクター細胞を示す図である。フィブリルが長くなるにつれて隣接するストランド間の水素結合がフィブリルを合体させリボンを生成する。
図29】セルロースフィブリルを細胞膜から押し出す多数のセルロース合成酵素を示すアセトバクター細胞を示す図である。この反復においては、カルボキシメチルセルロースが増殖培地に加えられ、結果として水素結合がフィブリルをファイバーのリボンに形成しない。
図30図30Aは、開示されたエアロゲルバイオフィルムの一例を示す写真である。図30Bは、開示されたエアロゲルバイオフィルムの一例を示す写真である。
図31図31Aは、標準的なポリシロキサンポリマーを開示された方法により形成されたゲルと比較するサーマルイメージング写真である。図31Bは、標準的なポリシロキサンポリマーを開示された方法により形成されたゲルと比較するサーマルイメージング写真である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書で使用されるとき、「ゲル」は、定常状態であるとき流動を示さない実質的に希薄な架橋系であると理解される。ゲルの主要な構成成分はそれを包囲する周囲の流体であり、その形態は液体または気体であってよい。「エアロ」、「オルガノ」、「ヒドロ」、および変化形のような接頭辞はゲル材料の架橋したゲルマトリックスおよび主要な構成成分における周囲の流体を示すと理解される。
【0006】
開示されたゲルは、秩序化された液晶相に整列させられたセルロース系ナノ複合材料を含有する。したがって、開示されたゲルは、配合者がゲルの光学透過率を調整することにより、ゲルの光学的性質を不透明から透明まで及ぶようにすることを可能にする。加えて、これらの性質は広範囲の電磁スペクトル、例えば可視スペクトルから赤外線スペクトルまでと相互作用するように調整され得る。1つの実施形態において、ゲルの熱伝導率が調整され得る。開示されたゲルのバルク特性、例えば剛性または柔軟性のレベルは構成成分のセルロース系材料、例えば、ナノロッド、リボン、ファイバー、などの選択、ならびに、得られるゲル中のこれらの材料の濃度により調整され得る。
【0007】
本明細書で使用されるとき、「フィルム」および変化形は約10nm~1mmの厚さの範囲および任意の横方向の広がりに及ぶ非多孔質のラメラを示す。
本明細書で使用される用語「横断面」は幅を意味し、これらの用語は同義で使用される。開示されたセルロース系ナノ材料は約10nm~約500nmの幅を有する。ナノ材料の長さは幅の少なくとも10倍である。
【0008】
用語「組成物」は本明細書で使用されるとき開示されたセルロースナノ材料水性分散液、ヒドロゲル、オルガノゲル、エアロゲル、および液晶ゲルを指す。組成物はナノ材料を含む材料の単一の層の場合もあり、または組成物は各々の層が1つの材料のみからなる2つ以上の別個の層から形成る場合もある。非限定例として、1つの層が秩序化されたネマチックセルロースゲルからなる場合があり、その上に整列させたコレステリックセルロースフィルムの第2の層が設けられる。この層はこうして別個の層をもつ一体化された複合材料を形成する。
【0009】
用語「ヒドロゲル」は本明細書で使用されるとき担体中に分散されたコロイド状ゲルとしてのセルロース系材料のネットワークを表わす。1つの実施形態において担体は水である。別の実施形態において担体は水と相溶性(混和性)の有機溶媒の混合物である。セルロース系材料は架橋性かまたは非架橋性であり得る。
【0010】
用語「オルガノゲル」は本明細書で使用されるとき、前駆体ヒドロゲルの水性相が、実質的に全ての水が除かれ、水と相溶性の溶媒により置き換えられているゲルである。相溶性の溶媒の非限定例にはメタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールがある。1つの実施形態において、開示されたオルガノゲルは二次元の架橋されたネットワークを有する。別の実施形態において開示されたオルガノゲルは三次元の架橋されたネットワークを有する。
【0011】
用語「エアロゲル」は本明細書で使用されるとき、本明細書に記載された開示されたオルガノゲルのさらなる加工処理由来のゲルをいう。
用語「液晶ゲル」は、本明細書に記載された開示されたオルガノゲルのさらなる加工処理由来の組成物をいう。
【0012】
用語「ナノ材料」は開示されたセルロース系材料を指す。これらの材料の幅はナノメートル範囲であり、一方セルロース系材料の長さはナノメートルの長さからマイクロメートルまで変化し得る。用語「ナノ材料」、「セルロース系材料」および「セルロース系ナノ材料」は本開示を通じて同義で使用される。
【0013】
用語「ネマチック」は本明細書で使用されるとき、開示されたセルロース系材料が長距離配向秩序を保有する組成物をいう。加えて、セルロース系材料は自由に流動し、その重心位置はランダムに分布させられるが、それでもまだその長距離方向秩序を維持する。開示されたネマチック組成物は一軸性であり、より長くて好まれる1つの軸を有し、他の2つは等価である。
【0014】
用語「コレステリック」は本明細書で使用されるときらせん構造をもち、それゆえにキラルである組成物をいう。開示されたコレステリック組成物は、層内に位置秩序がないが層と共に変化する配向子(director)軸がある層に組織化される。配向子軸の変動は事実上周期的である場合もある。存在する場合、この変動の時間(360°の完全な回転が完了するまでの間隔)はピッチとして知られ、これは配合者により調整されてもよく、ピッチの程度は反射される電磁放射線の波長を決定する。
【0015】
本明細書を通じて使用される略語「TOCN」は「TEMPO酸化セルロースナノファイバー」を意味する。
用語「カチオン性の部分を含む低分子量化合物」は、別のカチオン性の部分に加えて酸化されたセルロースカルボキシル基と反応することができる部分を有する化合物を意味する。酸化されたセルロースカルボキシル基と反応することができる単位の非限定例にはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、などがある。カチオン性の部分の非限定例には第四級アンモニウム基がある。
【0016】
本開示の1つの態様において、組成物は、一緒に整列させられたセルロース系ナノリボンを含み、その配向は配合者により調整されてもよい。開示されたナノリボンは約1:100~約1:1000のアスペクト比を有する。1つの態様において、開示されたナノリボンはネマチック柔軟ゲルを形成するために使用され得る。
【0017】
これらのセルロースベースの柔軟ゲルは、セルロースリボン、ファイバー、および1つの実施形態において約1:1000のアスペクト比を有する他の構成成分-粒子構造を含み得る。これらの柔軟ゲルは材料内のセルロース粒子ネットワークを連結することから形成される。ゲルネットワークの形成のために使用される元のセルロース溶媒は保持されることもあり、またはいろいろなゲルタイプ、例えば、ヒドロゲル、アルコゲル、エアロゲル、および液晶ゲルを生成するために置き換えられることもある。ゲルネットワークを形成するための開示されたセルロース系材料の使用は配合者がゲルの柔軟性を調整すること
を可能にする。
【0018】
アスペクト比はセルロース系ナノ材料の選択に応じてより大きい程度の柔軟性または剛性を可能にする。さらに、セルロース粒子は、秩序相をもつリオトロピック液晶分散液を生成するために化学的および機械的手段によって秩序化されることができる。秩序化は、非限定例が上に挙げられた様々な秩序化されたゲルを生成するための架橋プロセス中保存される場合がある。図1は、セルロースの秩序化されたゲルの製造手順を示す。
【0019】
柔軟性に加えて、開示されたゲルの光学透過率は、不透明から透明まで及ぶように調整されることができる。不透明または透明の程度も電磁スペクトルのいずれかの波長または任意の範囲の波長で調和させられ得る。これらの結果は、開示された複合材料の各種の性質、すなわち、セルロース系ナノ材料の密度または粒度分布を調整することにより得られ得る。また、液晶材料のような補助成分の添加も、開示された複合材料の光学的性質を調節するために使用されることができる。
【0020】
配合者のニーズに合わせられることができるさらなる性質はゲルにより示される熱抵抗の程度である。いくつかの要因が熱抵抗性の調整を可能にする:(1)セルロースの本来低い熱伝導性、(2)セルロースネットワーク内の流体の希薄化、これにより熱対流を調節する、および(3)セルロース-ゲルネットワークを含む流体の熱伝導および対流特性。
【0021】
本開示の別の態様において、組成物は整列させられたセルロースナノロッドを含み、その配向は配合者により調整されてもよい。開示されたナノリボンは約1:10~約1:100のアスペクト比を有する。1つの態様において、開示されたナノロッドはコレステリック相をもつ組成物を形成するために使用され得る。
【0022】
1つの実施形態において開示されたナノ結晶は秩序化されたフィルムを形成し、これらは周期的構造を形成するようにフィルムにおいてコレステリック相に秩序化されることがあり、そのピッチおよびピッチ勾配は入射電磁放射線の広帯域Bragg反射に対して調整可能である。別の実施形態において得られる秩序化されたゲルはセルロースナノロッドまたはナノ結晶を含む類似のナノ材料の小さい相対アスペクト比のために得られる。ナノロッドは他のナノ材料と異なる相、すなわち、ナノファイバーを生成する。この事実のために、広帯域の反射が、約1:10~約1:100のアスペクト比のセルロース構造から形成された秩序化されたセルロースゲル内で可能にされる。
【0023】
したがって、機械的柔軟性、光学透過率、および熱抵抗は、これらのパラメーターが現在明確にセルロースナノロッドまたは他の幾何学的に異方性のセルロース構造を指す場合を除いて、記載されたナノファイバーを同一のパラメーターを調節することにより構成され得る。
【0024】
本開示のさらなる態様は、開示されたエアロゲルまたは液晶ゲルから形成されたラメラを含む複合構造に関する。ラメラを有する複合構造はナノファイバー様のセルロース系材料(ネマチック相)を含む開示された組成物から、またはナノロッド様のセルロース系材料(コレステリック相)から形成されてもよい。これらの複合構造は複数の層を含む。
【0025】
本開示のさらに別の態様において、ある量のセルロース系ナノ材料が複合ナノ材料の整列に影響を及ぼすことができる1種または複数の補助材料で置き換えられた複合構造である。1つの実施形態においてセルロース系ナノ材料の一部分が液晶で置き換えられる。したがって、ネマチック相またはコレステリック相ゲルは他の異方性の有機または無機材料により置換された液体相を有することがある。1つの実施形態においてシリカがヒドロゲ
ル中に導入される。別の実施形態において液晶材料、例えば、l-(trans-4-ヘキシルシクロヘキシル)-4-イソチオシアナトベンゼンがヒドロゲルの担体と取って代わることができる。もう1つ別の実施形態において、非セルロース系材料の組み込みおよび整列後、セルロースは、一部または全体のセルロース置換を有するゲルおよびフィルムを生成するために、化学的な手段により、部分的または全体的に除去されることがある。
【0026】
本開示のなおさらなる別の態様において、ラメラは、開示された複合構造を含むものである。この態様によるとラメラは、各々の層が異なる材料を含む2つ以上の別個の層から形成される。各々の層を含むセルロース系ナノ材料はさらに鋳型として役に立ち得、部分的または全体的にシリカまたは他のポリマーのような他の材料により置換される場合がある。
【0027】
さらに複合構造の製造方法が開示される。代表的な方法は増殖培地、細菌、およびセルロースフィブリル間の(例えば、水素)結合の程度を低減する添加剤の混合物を準備するステップと、バクテリアセルロースの薄膜を生成させるステップと、薄膜内に含有される水を溶媒と交換するステップと、薄膜を乾燥して溶媒を除去して、エアロゲルを形成するステップとを含み得る。添加剤は、増殖培地内でフィブリル間の水素結合を低減することができ(例えば、カルボキシメチルセルロース)、および/またはフィブリル間の結合に対して立体障害を提供する分子であり得る。代表的な添加剤としては、セルロースフィブリル(ナノファイバー)が創成されるとそれと水素結合を作る短い分子を挙げることができる。添加剤は、水素結合または他の相互作用によってセルロースに吸着することができる荷電したまたは荷電していないオリゴマーであり得る。
【0028】
セルロースナノ材料
開示されたセルロースナノ材料は、ナノ材料の天然の供給源および粒子を生成するのに使用されたプロセスに依存するいろいろな形状および横断面形状を有し得る。開示されたセルロースナノ材料はロッド、ファイバー、リボン、ウィスカー、などの形状を有し得る。
【0029】
開示されたセルロースナノ材料はいろいろな天然の供給源、例えば、綿、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、被嚢類およびバクテリアセルロースなどの化学的または機械的な処理により得られ得る。通例、ナノロッドおよびナノファイバーは複数の供給源、例えば、綿およびバクテリアセルロースから得られ得る。
【0030】
1つの実施形態において、開示されたナノセルロースは長さ約10μm~100μm、横断面約10nm~50nmを有し得る。別の実施形態において、開示されたナノセルロースは長さ約1μm~10μm、横断面約3nm~10nmを有し得る。さらにもう1つ別の実施形態において、開示されたナノセルロースは長さ約100nm~1μm、横断面約3nm~10nmを有し得る。図2は、:(a)綿から化学的処理で得られる10nm×200nmのセルロースナノロッド、(b)綿からの7nm×800nmのセルロースナノワイヤ、(c)木材パルプからの4.8nm×1μmのセルロースナノワイヤ、および(d)バクテリアセルロースからの10nm×50nm×10μmのセルロースナノリボンの、上述の実施形態の特有の長さスケールによるセルロース粒子のTEM顕微鏡写真を示す。
【0031】
セルロースナノ材料は、天然のセルロースの硫酸、塩酸、等による化学的加水分解により、または2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-l-オキシルラジカル(TEMPO)媒介酸化により得られ得る。
整列方法
セルロースナノ材料はネマチックまたはコレステリック秩序化に対して、それぞれ線状
または円形剪断により整列させられてもよい。開示されたセルロースナノファイバーのネマチック秩序化が図1(b)に示される。1つの実施形態において、セルロースナノ材料分散液はモールド内でガラスプレート間に閉じ込められることができて、剪断応力がプレートから特定の方向にかけられたとき、個々のナノセルロース粒子は閉じ込められた分散液を横切って唯一の配向子整列を形成するように整列する。別の実施形態において、ナノセルロースは充分に小さい直径のノズル、シリンジ、または同様なデバイスからの押出の際に一方向の整列を受ける。押出整列の場合、閉じ込めるプレートは必要でなく、整列された分散液はその横断面の広がりよりずっと大きな線状の広がりをもった細いビーズの形態をとり、支持基材または他の構造上にある。さらに別の実施形態において、コレステリック相におけるセルロースナノロッドのらせん軸は分散液の蒸発中反時計回りの円形剪断により整列させられてもよい。
【0032】
開示されたセルロースナノ材料はまた、磁場または電場によって整列させられてもよい。1つの実施形態において、セルロースナノ材料の相対的浸透性の磁気異方性はナノ結晶の均一な整列を引き起こすために利用され得る。充分に強い磁場(約1T)の下で、磁場に垂直なナノ結晶の均一な整列はセルロースナノ材料の誘発された磁気双極子モーメントとかけられた磁場との磁気相互作用によって達成される。別の実施形態において、振動電場もまた、セルロースナノ材料を、その長軸を電場に沿って整列させるのに使用され得る。
秩序化されたヒドロゲル
開示されたセルロースナノ材料分散液の整列はそのヒドロゲルへの変換により保存されてもよく、例の実施形態が図1(b)および図3(a)に示される。セルロースナノ材料の架橋の程度は均一な秩序化が分散液中で保存される度合いを確立する。例えば、低レベルの架橋はより弱いゲル化を提供する。逆により大きな度合いの架橋はより堅固なゲル化を生み出す。ゲル化は、均一に秩序化されたセルロースナノ材料分散液に対する酸、光酸発生剤の添加および光、アルコール、または他のカチオン交換試薬への曝露により成し遂げられる。1つの実施形態において、ゲル化を推進するために塩酸、酢酸、硝酸、硫酸、およびリン酸が加えられてもよい。別の実施形態において、架橋を提供するためにCa2+が加えられてもよい。
秩序化されたオルガノゲル
開示された秩序化されたヒドロゲルは溶媒交換法を用いて図1(c)および図3(b)に示されるようにオルガノゲルに変換され得る。例えば、ヒドロゲルは穏やかに振盪される間エタノールが満たされた浴に浸漬され、その後溶媒を規則的な間隔で取り替えることができる。このようにして、水がマトリックスから順次除去されエタノールで置き換えられる。他の有機溶媒をエタノールと置き換えることができる。他の溶媒の非限定例にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサン、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびトルエンがある。
秩序化されたエアロゲルまたはフィルム
本明細書のセルロースエアロゲルまたはフィルムは本明細書の上で開示されたナノ構造化されたオルガノゲルから生産され得る。例示のエアロゲルが図1(d)および図3(c)に示される。得られるセルロースナノ材料エアロゲルは多孔質であり、約0.1~99.9%のセルロースナノ結晶の骨格および約0.01~約99.99%の気孔率を有する。1つの実施形態において気孔率は約97%~約99%である。
【0033】
低い割合のナノセルロース系材料を含むエアロゲルは高度の透明性を有するエアロゲル、例えば、約1%~約50重量%のエアロゲルを生じる。約50%~約90重量%のナノセルロース系材料を含むエアロゲルは高度半透明散乱を有するエアロゲルを生じる。
【0034】
周囲雰囲気における表面張力および毛細管圧力に起因する乾燥中のエアロゲルの変形お
よび崩壊を防ぐために、超臨界乾燥、凍結乾燥、または低い表面張力の溶媒を用いた周囲乾燥(ambient drying)が、開示された液晶構造、例えばネマチックまたはコレステリック液晶秩序化を維持したまま液体溶媒をセルロースナノ結晶複合材料から除去するのに使用される。
【0035】
本明細書中で先に開示されたように、得られるモノリシックのセルロースナノ材料フィルムは100%セルロース組成物の固体材料である。液体溶媒を除去するには周囲乾燥が使用される。
【0036】
秩序化された液晶ゲル
本明細書に開示されたセルロースLCゲルは開示されたナノ構造化されたオルガノゲルから生産されてもよい。有機溶媒は溶媒交換によりLCと置き換えられる。LCゲルの場合、LCはゲルの溶媒として機能する。図1(e)はLCゲルの概略図を示し、一方図3(d)はLC溶媒がネマチック相であるLCゲルを示す。開示された組成物は、ゲルに対する溶媒としていずれかのLCを含み得る。ネマチックLCの非限定例には:1-(trans-4-ヘキシルシクロヘキシル)-4-イソチオシアナトベンゼン:4’-(ヘキシルオキシ)-4-ビフェニルカルボニトリル;4’-(オクチルオキシ)-4-ビフェニル-カルボニトリル;4’-(ペンチルオキシ)-4-ビフェニルカルボニトリル;4’-ヘプチル-4-ビフェニルカルボニトリル;4’-ヘキシル-4-ビフェニルカルボニトリル;4’-オクチル-4-ビフェニルカルボニトリル;4’-ペンチル-4-ビフェニルカルボニトリル;4,4’-アゾキシアニソール;4-イソチオシアナトフェニル
4-ペンチルビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボキシレート;4-(trans-4-ペンチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル;4-メトキシケイ皮酸;N-(4-エトキシベンジリデン)-4-ブチルアニリン;およびN-(4-メトキシベンジリデン)-4-ブチルアニリンがある。
【0037】
セルロースを鋳型とした秩序化された無機ゲルまたはフィルム
無機のナノ材料は、セルロースナノ材料を鋳型として用いてこれまで開示された秩序化されたゲルまたはフィルムに組み込まれてもよい。非限定例として、図4はセルロースにより可能にされたコレステリック(a)セルロース-シリカフィルム組成物、(b)シリカエアロゲル、および(c)溶媒がそのネマチック相にあるLCであるシリカLCゲルを示す。秩序化されたシリカエアロゲルのSEM像は図4(d)に示される。最終の処理段階で、無機のゲルまたはフィルムを得るためにセルロースナノ材料が除去されてもよい。あるいは、無機/セルロース複合ゲルまたはフィルムはセルロースナノ材料をエッチングすることなく形成される。1つの非限定例として、無機のゲルまたはフィルムはシリカ、オルガノ-シリカ、二酸化チタン、酸化アルミニウム、希土類酸化物、等で作成される。無機/セルロース複合材料中の無機ナノ材料の重量濃度は約1%~約99%の範囲であり得る。
【0038】
セルロースを鋳型とした秩序化されたポリマーゲルまたはフィルム
ポリマーは、セルロースナノ材料を鋳型として用いてこれまで開示された秩序化されたゲルまたはフィルムに組み込まれてもよい。最終の処理段で、ポリマーゲルまたはフィルムを得るためにセルロースナノ材料が除去されることもある。あるいは、ポリマー/セルロース複合ゲルまたはフィルムはセルロースナノ材料をエッチングすることなく形成される。1つの非限定例として、ポリマーゲルまたはフィルムはフェノール-ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、尿素-ホルムアルデヒド、ポリ(アクリル酸)、ポリエステル、等で作成される。ポリマー/セルロース複合材料中のポリマーナノ材料の重量濃度は約1%~99%の範囲であり得る。
【0039】
秩序化されたゲルの表面官能化
開示されたゲルの表面特性はセルロースのネットワークの表面を官能化することにより改質され得る。表面官能化を有さない開示されたエアロゲルは親水性であり、水と接触した際に溶解することができるかまたはその全容積を縮小することができる。表面改質剤、例えば、ジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(DMOAP)およびトリクロロ(lH,lH,2H,2H-ペルフルオロ-オクチル)シランは、エアロゲルへの変換の前にヒドロゲルに添加されてもよい。このタイプの表面改質は、水への曝露の際に安定な疎水性エアロゲルを提供する。
【0040】
ゲル内の秩序化されたコロイド分散液
約1nm~10μmの範囲の長さを有するコロイド粒子はゲル内に均質に分散され得る。1つの実施形態においてコロイドは金および銀プラズモンナノ粒子、例えばロッド、三角形プレートレット、および三角形フレーム;強磁性ナノ粒子、例えば強磁性のナノプレートレット;量子ドット、例えばナノスフェア、-キューブ、-ロッド、などを含み得る。コロイド粒子は架橋が起こる前にセルロース中に導入される。本明細書中先に記載されたように、架橋は、コロイド表面リガンドとの相互作用を介して、コロイド介在物を秩序化されたセルロース系ネットワークに結合する。開示されたゲルはいずれも1つまたは複数のタイプのコロイド粒子を含有することができる。
【0041】
開示されたゲルは約1μm~約10cmの厚さを有する。1つの実施形態において厚さは約10μm~約1cmで変化する。別の実施形態において厚さは約100μm~約10cmで変化する。さらなる実施形態において厚さは約50μm~約1cmで変化する。さらに別の実施形態において厚さは約1cm~約10cmで変化する。さらにもう1つ別の実施形態において厚さは約10μm~約100cmで変化する。さらに別の実施形態において厚さは約500μm~約10cmで変化する。
【0042】
開示されたゲルの透過率はゲルを通過するのを妨げられる電磁放射線の量に関連する。0%透過の結果は透過を許容しない不透明な材料となる。100%透過は電磁放射線に対して透明な材料となる。開示されたゲルは0%~100%の透過率を有することができる。1つの実施形態においてゲルは約5%~約15%の透過率を有する。別の実施形態においてゲルは約25%~約50%の透過率を有する。さらに別の実施形態においてゲルは約95%~100%の透過率を有する。またさらなる実施形態においてゲルは約15%~約35%の透過率を有する。なおもさらに別の実施形態においてゲルは約50%~約75%の透過率を有する。さらにもう1つ別の実施形態においてゲルは約25%~約75%の透過率を有する。
【0043】
開示されたゲルおよび複合材料は約10-3W/(mK)~約10W/(mK)の熱伝導率を有することができる。別の実施形態において熱伝導率は約10-2W/(mK)~約10W/(mK)である。さらに別の実施形態において熱伝導率は約10-1W/(mK)~約10W/(mK)である。またさらなる実施形態において熱伝導率は約10-3W/(mK)~約1W/(mK)である。さらに別の実施形態において熱伝導率は約10-2W/(mK)~約1W/(mK)である。さらにもう1つ別の実施形態において熱伝導率は約1W/(mK)~約10W/(mK)である。
【0044】
開示されたゲルの相対放射率値は約10-2~0.99の範囲である。
開示されたゲルおよび複合材料は約1Pa~約10Paの体積弾性率を有することができる。1つの実施形態において弾性率は約10Pa~約10Paである。別の実施形態において弾性率は約10Pa~約10Paである。さらに別の実施形態において弾性率は約10Pa~約10Paである。またさらなる実施形態において弾性率は約10Pa~約10Paである。なおもさらに別の実施形態において弾性率は約1Pa~約10Paである。さらにもう1つ別の実施形態において弾性率は約10Pa~約10
Paである。
【0045】
手順
開示されたゲルのセルロース系出発材料はいろいろな供給源に由来し得る。水に懸濁させられた表面硫酸化された(surface-sulfuricated)セルロース粒子(図1(a)および図2)は天然セルロースの硫酸媒介酸化により調製され得る。水に懸濁させられた表面カルボキシル化されたセルロースナノファイバーおよびナノリボンは天然セルロースの2,2,6,6-テトラメチル-l-ピペリジニルオキシ(TEMPO)媒介酸化により調製され得る。これらのナノ材料の分散液は熱力学的に安定なコレステリック(セルロースナノロッドの場合)またはネマチック(セルロースナノファイバーまたはナノリボンの場合)液晶相を自発的に生成し、これはセルロース粒子の同様に秩序化された空間構造を有するヒドロゲル(図1(b)および図3(a))に変換され得る。
【0046】
開示されたエアロゲルのセルロース系出発材料はAcetobacter xylinum、Acetobacter hanseniiまたは、例えば、グルコースを炭素源として利用する細菌菌株の他の例によって生合成され得る。1つの例として、Acetobacter xylinumをグルコース培地中1~3週間静的条件下で培養してセルロース薄膜を産生させることができる。細菌細胞残屑を除去するために、バクテリアセルロースを1wt.%NaOH水溶液中で2時間煮沸した後、水で洗浄し0.2%酢酸で中和してもよい。
【0047】
このようにして得られた天然のセルロース材料は制御されたTEMPO媒介酸化により個々のナノ結晶に容易に分解され得る。例えば、2gのバクテリアセルロースを、TEMPO(0.025g)およびNaBr(0.25g)を含有する水(150mL)に懸濁させた。1.8MのNaClO溶液(4mL)を加え、0.5MのNaOHを加えることにより懸濁液のpHを10に維持した。pHのさらなる低下が観察されなくなったら、反応を終了させた。次いで0.5MのHC1を加えることによりpHを7に調整する。TEMPO酸化生成物は4~10nmの直径および1000~3000nmの長さに制御されたセルロースナノロッドであり、次いでこれをろ過により水で十分に洗浄し、4℃で貯蔵した。
【0048】
セルロースナノ結晶はまた、硫酸加水分解法により天然のセルロースから合成されてもよい。臨界濃度(約3~6wt.%)を超えるこのようなセルロースナノ結晶の水性懸濁液は液晶構造のキラルネマチック相に自己集合し、これは5~70μmの範囲で制御されることがあるピッチの周期的ならせん形構造を示す。この構造はピッチに匹敵する波長の電磁放射線を強く反射することができ、ピッチを適当な範囲であるように調節することにより高い効率の低放射率構造として同時に役に立つ。開示されたフィルムはらせん状に秩序化されたナノ結晶自己集合体内に予め設定された勾配のコレステリックピッチを有することができ、広帯域の赤外線選択的反射および低い放射率(引合い書(solicitation)からとられる赤色赤外線発光曲線との比較)を達成することができ、一方可視スペクトル範囲で透明であり、また近IR範囲の太陽放射線(青色曲線)を透過することができる。
【0049】
次いで液晶セルロースナノ結晶分散液の濃度を3wt.%に調整し、予備研究に使用した。キラルネマチック液晶秩序のナノ結晶を次にモールドに注ぎ入れ、円形剪断または磁場を用いてらせんの配向をフィルム平面に対して垂直に均一に整列させることができた。図4(c)に示されている偏光光学顕微鏡写真は水平方向に整列したらせん軸を有するサンプルについて得られたものであり、キラルネマチック液晶の周期的らせん形構造の側面図を提供する。AIR FILMの設計および製作において、このらせん軸はフィルムの面に直交して窓の法線に沿って設定され(図2)、これは円形剪断の方法を用いて達成さ
れる(Park J.H. et al.“Macroscopic control of helix orientation in films dried from
cholesteric liquid-crystalline cellulose nanocrystal suspensions”, ChemPhysChem. 15, 1477-1484,2014参照)。
【0050】
1つまたは多数の供給源からのセルロースナノ材料の調製後、セルロースナノ材料は水に分散され、以下の方法により整列させられてもよい。第一に、臨界濃度を超える(約0.1~4%)セルロースナノロッドの水性懸濁液はネマチックまたはコレステリック秩序化の液晶相に自己集合する。第二に、分散液全体にわたって均一な整列を誘発するために、線状または円形剪断がそれぞれネマチックまたはコレステリック相に対して使用され得る。特に、剪断応力がプレートから特定の方向に(ある線に沿ってまたは回転によって)かけられたとき、個々のナノ材料配向子が整列して閉じ込められた分散液全体で唯一の配向子整列を形成するように、分散液はモールド内でガラスプレート間に閉じ込められ得る。分散液整列に対する代わりの、しかし補完するアプローチとして、ナノ結晶は充分に小さい直径のノズル、シリンジ、または同様なデバイスからの押出の際に均一な整列を受ける。押出整列の場合、整列させられた分散液は横断面の広がりよりずっと大きな線状の広がりを有する細いビーズの形態をとり、支持基材または他の構造体上に留まるように、閉じ込めるプレートは必要とされない。さらに、セルロースナノ材料の相対的浸透性の磁気異方性がナノセルロースの均一な整列を引き起こすのに利用され得る。充分に強い磁場(約100mT)の下で、ナノ結晶の均一な整列はセルロースナノ材料の誘発された磁気双極子モーメントとかけられた磁場との磁気相互作用によって達成される。(ナノセルロースを、その長軸を電場に沿って整列させるために振動電場が使用され得る。)
整列させられたセルロースナノ材料分散液はその秩序化を保存したままでヒドロゲルに変換するために架橋されてもよい。セルロースナノ材料の鎖の架橋の程度は均一な秩序化が分散液内に保存される度合いを確立する。すなわち、緩く架橋されたセルロースナノ材料の場合、弱いゲル化が生じる。逆に、強い架橋は堅固なゲル化を生成する。ゲル化は均一に秩序化されたセルロースナノ材料分散液に対する酸、光酸発生剤の添加および光、アルコール、または別のカチオン交換機構への曝露の結果生じる。あるいは、セルロースナノロッド、無機/セルロースナノロッド、またはポリマー/セルロースナノロッドは蒸発によりコレステリック相に自己集合することができる。
【0051】
ナノセルロースベースの秩序化されたヒドロゲルを、セルロース-ナノ材料ヒドロゲルを有機溶媒が満たされた浴内で穏やかに揺り動かしつつヒドロゲル中の水の有機溶媒による交換を促すために規則的に溶媒を取り替えることによりオルガノゲル(図1(c)および図3(b))に変換した。1つの例として、1日2回3日間エタノールを取り替えて溶媒全体の交換を促進した。
【0052】
開示されたセルロースエアロゲル(図1(d)および図3(c))は本明細書上に開示されたナノ構造化されたオルガノゲルから生産されてもよい。得られるセルロースナノ結晶エアロゲルは約0.1~99.9%セルロースナノ結晶の骨格および約0.1~99.9%の気孔率をもつ多孔質材料である。周囲雰囲気における表面張力および毛細管圧力に起因する乾燥段階中のエアロゲルの変形および崩壊を防ぐために、超臨界乾燥、凍結乾燥、または低い表面張力の溶媒を用いた周囲乾燥が、開示された液晶構造、例えばネマチックまたはコレステリック液晶秩序化を維持したままセルロースナノ結晶複合材料から液体溶媒を除去するのに使用される。
【0053】
開示されたセルロースLCゲル(図1(e)および図3(d))は秩序化されたナノ構造化されたオルガノゲルから生産されてもよく、その際LCと完全に混和性の有機溶媒が選ばれる。オルガノゲルは有機溶媒の沸点を超えるLCの浴内に入れられて、有機溶媒が
ゲルの置換溶媒として機能するLCと置き換えられる。
【0054】
開示されたセルロースを鋳型とした秩序化された無機およびポリマーゲルまたはフィルムはセルロースナノ材料をシリカ前駆体またはプレポリマーと混合し、複合材料を周囲環境中で乾燥することにより生産されてもよい。次いでセルロースナノ材料は酸性(シリカ
エアロゲルの場合)または塩基性(ポリマーエアロゲルの場合)処理のいずれかにより除去
されてヒドロゲルを生成する。ヒドロゲルはさらに上に記載された方法に基づいてオルガノゲル、エアロゲル、およびLCゲルに移されてもよい。
【0055】
実施例1
セルロースナノロッドから作成された秩序化されたゲル
Revolおよび協力者により記載された方法(J. F. Revol, H. Bradford, J. Giasson, R. H. Marchessault,
D. G. Gray. Int. J. Biol. Macromol. 14,
170 (1992))に従って、綿繊維の制御された硫酸加水分解により、セルロースナノロッドからなるセルロースナノ結晶(CNC)のコロイド状懸濁液を調製した。この方法の間、セルロースの乱雑または準結晶領域は優先的に加水分解されるが、酸に対してより高い耐性を有する結晶領域はそのまま残る。7gの綿を200gの65wt%硫酸に加え、45℃の水浴中でセルロースが完全に加水分解するまで数時間まで撹拌した。混合物を時々超音波処理した。これは、非晶質のセルロース領域を分解させるのに役立つことが分かった。次いでセルロースの懸濁液を9000rpmで10分遠心分離し、脱イオン水に6回再分散させて過剰の硫酸を除去した。得られた沈殿を、脱イオン水中の透析チューブ(MWCO 12000~14000、Thermo Fisher Scientific Inc.)に、水のpHが一定のままになるまで3日間入れた。CNCの寸法は横断面が約5~10nm、長さが平均で100~300nmである。次いで3wt%のCNC溶液をモールドに注型し、周囲条件下で蒸発させてエアロゲルを得た。
【0056】
実施例2
セルロースナノファイバーまたはナノリボンから作成された秩序化されたゲル
4.8nm×数マイクロメートルの寸法のセルロースナノファイバー(CNF)を、文献(T. Saito, M. Hirota, N. Tamura, S. Kimura, H. Fukuzumi, L. Heux and A. Isogai,
Biomacromolecules, 10, 1992 (2009))に従って合成した。簡潔にいうと、セルロースベースの、漂白コーヒーフィルター(1g)を気密のフラスコ内で、16mgの2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-l-ラジカル(TEMPO)および1.13gの80%亜塩素酸ナトリウムを溶かした0.05Mリン酸ナトリウムバッファー(90mL、pH6.8)に懸濁させた。2M次亜塩素酸ナトリウム溶液(0.5mL、1.0mmol)を酸化媒体として用いた同じ0.05Mバッファーで0.1Mに希釈し、1つのステップでフラスコに加えた。フラスコに直ちに栓をし、懸濁液を500rpm、60℃で96時間撹拌した。懸濁液を室温に冷却した後、TEMPO酸化セルロースをろ過により水で十分に洗浄した。次いで0.1~1.0vol.%のCNF水性分散液をモールドに注ぎ入れ、剪断力により整列させ、数滴の1M HC1溶液を加えて2時間後にヒドロゲルを形成させた。ヒドロゲルを溶媒交換のために2日間エタノールに浸漬してオルガノゲルを形成した。液晶ゲルを形成するために、オルガノゲルを液晶4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルの浴に90℃で12時間浸漬した。その溶媒交換後室温に冷却すると、LCがその期待されたネマチック相に入った。エアロゲルをオルガノゲルの臨界点乾燥により生成した。
【0057】
実施例3
セルロース-ナノロッドを鋳型としたシリカから作成された秩序化されたゲル
CNCを実施例1の方法に従って合成した。次いで5mLの3wt%CNC分散液を10~75μLのシリカ前駆体オルトケイ酸テトラメチルと混合し、1時間撹拌した。次いで複合材料をペトリ皿に投入し、1~2日にわたって乾燥させた。CNCを次いで熱分解法(例えば540℃、20時間)により、または16%水酸化ナトリウム溶液中に16時間保つことにより除去した。シリカヒドロゲルが形成された。これはさらに溶媒交換によりオルガノゲルに、臨界点乾燥または周囲乾燥によりエアロゲルに移されてもよい。
【0058】
実施例4
セルロース-ナノロッドを鋳型としたポリマーから作成された秩序化されたゲル
CNCを実施例1の方法に従って合成した。次いで5mLの3wt%CNC分散液を10~75mgの水溶性の予め形成されたポリマーと混合し、10分撹拌した。次に複合材料をペトリ皿に投入し、1~2日にわたって乾燥した。フィルムを次いで重合温度で24時間硬化させた。CNCを次いで16%水酸化ナトリウム溶液により16時間除去した。ポリマーヒドロゲルが形成された。これはさらに溶媒交換によりオルガノゲルに、臨界点乾燥または周囲乾燥によりエアロゲルに移されてもよい。
【0059】
エアロゲルを通過する際に散乱した光は曇った外観を作り出し得、この結果フィルムを通して見た物体のコントラストが低下することになり得る。ヘイズ測定を、ヘイズメーターまたは分光計を用いて行なうことができる。図5は、開示されたエアロゲルの質を測定するために開発され適合させられた装置を記載する。図5の装置は、ヘイズの原因に関する検知データを提供するヘイズ測定を行なう利点を有する。
【0060】
典型的な構成は、測定されるフィルムが球入射窓に対して配置される積分球を含む。積分球の内部の表面は光源から得られる全可視波長にわたって高反射性である。積分球に入る光は表面から試験されるフィルムに向かって反射する。次いでフィルムを透過した光は焦点を合わせ、光検出器に向かう。分光光度計に構成された光検出器はコンピューターにより作動され、透過率およびヘイズの値を自動的に計算することができる。ヘイズはヘイズ=l00×(Td/Tt)により決定され得、ここでTtは入射光の強度およびフィルムにより透過される全光に依存する全透過率であり、Tdは測定構成およびフィルムにより散乱される光に依存する拡散透過率である。
【0061】
ナノセルロースゲルの形態学の特性決定
防音の特性決定をTEMおよびSEMを用いたナノ粒子の撮像により行なうことができる。図6は、いろいろな調製条件下でのコレステリックセルロースベースのエアロゲルの細孔径、表面積、および構造上の特性の探査の手順の概要を示す。大規模のナノ結晶の秩序化はFluorescence Confocal Polarizing Microscopy(FCPM)、Coherent Anti-Stokes Raman Scattering Polarizing Microscopy(CARS-PM)、およびThree-Photon Excitation Fluorescence Polarizing Microscopy(3PEF-PM)のような3Dイメージング技術を用いて探査されることになる。さらに、開示された液晶およびエアロゲルの横方向の均一性のモニターは従来の暗視野、明視野、および偏光光学顕微鏡法を用いることにより成し遂げられる。可視および赤外線範囲の分光法も利用され得る。開示されたエアロゲルの他の特性には、機械的な性質(調製されたままのエアロゲルおよびカプセル化された直ぐに設置できるフィルムの両方)、ならびに単板ガラスの窓に設置されたフィルムの防音および結露耐性がある。
【0062】
エアロゲルの熱物理特性の測定
フィルムの窓への適用前に、特定の用途に適したフィルムのタイプを決定するために、熱物理的性質(例えば、熱伝導率、熱容量)が光ポンププローブ法により特徴付けられる
。この方法はフェムト秒レーザーを使用して高い時間分解能の温度測定系を構築する。図7は、典型的なポンプ-プローブ測定系の光学経路を示す。光ポンプ-プローブ法において、ピコ秒(ps)以下の時間分解能は、超高速のps以下のレーザーパルス出力を強烈な加熱パルス、すなわち、「ポンプ」ビーム、およびより弱い「プローブ」ビームに分割し、ポンプおよびプローブビームの光路長差を機械的な遅延段階によって制御することにより可能になる。温度上昇の減衰はプローブパルスシリーズの反射されたエネルギーにより測定される。次いで熱伝導率は温度減衰曲線を適合させることにより推定され得る。
【0063】
結露耐性
開示されたエアロゲルの熱伝導率を決定した後、フィルムは、ASTM C1363-11およびASTM C1199-14の現行基準に従って断熱および結露耐性性能を決定するために窓の上に適用され得る。この試験方法は、制御された実験室条件に曝露されたときの窓の定常状態の熱的性能の決定のためのホットボックス装置および必要条件の設計のための原理を確立する。窓の断熱および結露性能は総括伝熱係数Uにより表わされる。図8は、ホットボックス装置の構成要素:窓試料の1つの面上の計測ボックス(内部の温度をシミュレートする);計測ボックスを包囲する制御されたガードボックス;他の面上の人工気候室ボックス(外部の温度をシミュレートする);ならびに試料支持および断熱を提供する試料フレームを開示する。
【0064】
ホットボックスの壁はXPS断熱材の固体層の両面に接着された合板の断熱されたパネルである。メーターボックスに使用される空気調和系は温水循環式の冷却および電気抵抗加熱を採用する。メーターボックス冷却は、メーターボックスから除去される熱を正確に定量化するために高精度流量計と組み合わせて高精度熱電対を用いて測定される。熱はPID-制御された電気ヒーターを介してメーターボックスに加えられる。高精度抵抗器回路がメーターボックスに加えられる熱を測定するために採用される。一定で正確な温度を維持することができ、全熱付加/除去を測定することができる。ホットボックスはメーターボックスを取り囲む断熱されたガードボックスを採用し、温水循環式ガードループがメーターボックスの外面を覆って設置される。ガードボックスは実験室における温度変化の影響を最小化する。液体ガードループはさらにメーターボックスの外面が一定の温度のままであることを保証する。断熱されたバッフルはメーターボックスの混合チャンバーから空気空間を分離する。バッフル板は断熱材料を用いて構築される。1m×1mの試験窓サンプルに対して、少なくとも25の較正された高精度熱電対が、バッフル表面の温度を、空気流中の25の対応する点および試験窓試料の内面上の少なくとも25の点で測定するのに使用される。空気はメーターボックスバッフル空間を通して実世界状態の対流に典型的な速さで引き出される。バッフルの上下のDCを動力源とした軸方向の引き出し循環ファンが、対流が起こる方向における壁サンプルの表面に沿った滑らかな流れを確実にするために使用される。
【0065】
気候ボックスはガードボックスと同じ寸法および構造を有する。気候側空気バッフルはメーターボックス内の空気バッフルと同じ材料および方法を用いて構築される。熱は、液体冷却器および温水ヒーターに接続された4つのファンコイルを介して気候ボックスに加えられ/そこから除去される。抵抗加熱ヒーターは温度の微調節を可能にし、試験の持続時間中温度が設定点付近に留まることを確実にする。気候ボックスは-30℃~60℃の範囲の現実的な屋外温度を実現する能力を有する。これは、試験される窓アセンブリが寒冷から高温までの気候条件で試験されるとき乱されずそのままであることを可能にする。総括伝熱係数は、
【0066】
【数1】
【0067】
(式中、Qはメーターボックス開口を通る正味の熱流Wの時間速度であり、Aはメーター
ボックス開口面積mであり、TmeterおよびTclimateはそれぞれメーターボックスおよび気候ボックスの温度である)
である。
【0068】
セルロース-ポリシロキサンハイブリッドエアロゲル
透明なセルロース-ポリシロキサンハイブリッドヒドロゲル、オルガノゲルおよびエアロゲルならびに開示された透明なセルロース-ポリシロキサンハイブリッドヒドロゲル、オルガノゲルおよびエアロゲルを製造する方法がさらに開示される。
【0069】
a)セルロースマトリックスと、
b)ポリシロキサン表面ネットワークと
を含むセルロース-ポリシロキサンハイブリッドエアロゲルが開示される。
【0070】
理論により制限されることなく、これらの特徴はナノファイバーの寸法およびそれらが形成する均質なゲル骨格ネットワークを厳密に制御することにより達成され、それらは配向性において秩序化された液晶(LC)状態を形成するように調節され得る。ゲル製造方法において、界面活性剤に基づく溶液における最適化された酸/塩基に触媒されるゾル-ゲル反応がポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)表面ネットワークを形成するのに使用される。
【0071】
均一な直径を有するセルロースナノファイバーは最初に表面官能化される。この官能化は、増大したセルロースナノファイバー安定性を生じる小さい荷電した分子またはポリマーグラフト化を採用することができる。その後、これらのナノファイバーはPMSQファイバーと共に架橋される。その高い光透過性、超断熱性、柔軟性および機械的ロバスト性に加えて、開示されたハイブリッドエアロゲルは配合者により意図された使用に応じて光学的に等方性または異方性にされてよい。異方性のエアロゲルの場合、これらはナノファイバーのコロイド分散液のLC状態から出発して製作されてもよい。得られる組成物は、可視偏光を有し、それにより可視光偏光を制御しながら同時の断熱を提供するデバイスを得ることができるので、実用的な用途を有し得る。
【0072】
本明細書には、シルセスキオキサン(PMSQ)ネットワークセルロースエアロゲルを製造する方法であって、
a)セルロースの水性分散液をセルロースのC6ヒドロキシル単位をカルボキシレート単位に酸化させる酸化系と接触させて、酸化されたセルロースナノファイバーの水溶液を形成するステップと、
b)酸化されたセルロースナノファイバーを表面改質剤と反応させて、表面改質されたセルロースナノファイバーの水溶液を形成するステップと、
c)表面改質されたセルロースナノファイバーをポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)と接触させて、水性ポリシロキサン前駆体を形成するステップと、
d)ポリシロキサン前駆体を酸触媒の存在下で加水分解して、PMSQネットワークセルロースヒドロゲルを形成するステップと、
e)ヒドロゲルに含有される水を揮発性溶媒と交換して、オルガノゲルを形成するステップと、
f)揮発性溶媒を除去して、エアロゲルを形成するステップと
を含む、方法が開示される。
【0073】
1つの実施形態において酸化系は、
a)(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-l-イル)オキシル(TEMPO)およびNaClOの混和物
を含む。
【0074】
改質剤
1つの実施形態において表面改質剤はC~C線状または分岐の飽和または不飽和アルキルアミン、カチオン性部分を含む低分子量化合物、オリゴマーまたはポリマーから選ばれる。
【0075】
~C線状または分岐の飽和または不飽和アルキルアミンは本方法の条件下でセルロースのカルボキシル単位と反応して、例えば図9Aに示されているように、カルボキシレート-第四級アンモニウム複合体を形成する。この実施形態の1つの例は改質剤としてアリルアミンの使用を含む。
【0076】
別の実施形態は改質剤としてオリゴマーまたはポリマーの使用を含む。1つの繰り返しにおいて約2000~約10,000ダルトンの平均分子量を有するm-PEG-アミンが酸化されたセルロースナノファイバーの表面を改質するのに使用される。この繰り返しの1つの非限定例において改質剤は5000ダルトンの平均分子量を有するm-PEGアミンである。例えば、図9Cに示されるm-PEGアミンで添え字nはおよそ112である。酸化されたナノファイバーの表面カルボキシレートに共有結合することができるあらゆるオリゴマーまたはポリマーがセルロースの表面を改質するのに使用され得る。
【0077】
さらなる実施形態はカチオン性の部分を含む低分子量化合物である改質単位を含む。このタイプの化合物の分子量は約400g/mol未満である。この実施形態の非限定例が図9Bに描かれており、ここではカルバモイルコリン塩の使用が改質剤である。塩は塩素、臭素などであることができる。
【0078】
一般手順
ナノファイバーの自発的なネマチック秩序化が起こるには、ナノセルロース濃度が臨界濃度を超えなければならない。この挙動は配合者が、開示された光学異方性およびその他の特性を得る手段を提供する低いTOCN体積分率でLC秩序化を付与する唯一の機会を提供する。
【0079】
天然の供給源から得られる生のセルロース系材料は開示されたヒドロゲル、オルガノゲルおよびエアロゲルを生成するのに使用される。例えば、綿、穀物、天然の供給源から作成される紙製品など、セルロース系材料は最初にC6糖類炭素を酸化され、これにより-CHOH部分をカルボキシレート部分-COOHに酸化させる。
【0080】
酸化されたセルロース系材料は次いで改質剤で処理され、これはヒドロゲル中のセルロースナノファイバーを整列させられたままにし、その後のネットワーク剤による処理に対して反応しないことを可能とする。次に、改質剤による処理後、ナノファイバーはメチルトリメトキシシラン(ネットワーク剤)で処理され、これは酸性条件下で加水分解されてヒドロゲル全体にポリシロキサンネットワークを形成する。ゲル化の結果、等方性の双連続(bicontinuous)ポリシロキサンナノファイバーのネットワークにより架橋された、官能化されたTOCNの透明性の高いモノリシックヒドロゲルが生じる。
【0081】
水は揮発性の有機溶媒との交換によりヒドロゲルから除去されて対応するオルガノゲル
を形成する。得られるオルガノゲルは等方性および液晶性の両方の配列を示し、これは表面改質されたTOCNの濃度を調節することにより制御され得る。これらの配向性において秩序化された自己集合した構造はポリシロキサンネットワークの形成により所定の位置に固定される。開示された方法は個々のファイバーの小さい均一な横断面およびそれらのネットワークを保存し、結果として、低い光散乱を確保する。
【0082】
対応するエアロゲルはオルガノゲルの乾燥により形成され、これは配合者の要望により成形され得る。機械的柔軟性およびロバスト性に加えて、多くの実用的なエアロゲル用途は(例えば、これらのエアロゲルが周囲条件下および湿潤環境中で確実に安定であるように)高い度合いの疎水性を必要とする場合がある。
【0083】
実施例5
PMSQネットワークセルロースエアロゲル
開示されたセルロースナノファイバーは自然のセルロースの酸化を介して自然のセルロースの表面のC6一級ヒドロキシル基を穏やかなpHの水性条件下でTEMPOに触媒されてカルボキシレート基に選択的に改質することにより生産される。直径4.8nmおよびマイクロメートル-スケールの長さのナノファイバーはそのアニオン性のカルボキシレート部分のその水素結合を形成する傾向に打ち勝つクーロン斥力により塩基性溶液中で安定化される。結果として、水性のTOCN分散液は透明性が高い。ポリマー繊維状エアロゲルでしばしば観察される直接のヒドロゲル結合により制御不能に架橋されるTOCNの束になったり房になったりすることに帰する強い光散乱を排除するために、発明者らは、代わりにTOCNをポリシロキサンで架橋する。この技術はTOCN間の直接の接触を阻むことにより小さい散乱断面積を示す均一なナノファイバーのネットワークを生成する。ポリシロキサン前駆体の加水分解は酸により触媒される。しかしながら、弱酸性の条件および希薄な濃度でさえ、TOCNはカルボン酸官能基間の水素結合のためにゲル様の相を形成する傾向がある。TOCNをポリシロキサン前駆体溶液中に安定して分散させるために、発明者らは図9A-9Cに示されるように様々なTOCN表面官能化計画を実行する。
【0084】
セルロースのTEMPO媒介酸化はナノフィブリル化されたセルロースの表面に表面改質のために使用できる大きい密度のカルボン酸基(約0.8mmol/g)を生成する。これは低分子量のカチオン性分子またはポリマー鎖のいずれかを表面に共有結合させることによりセルロースナノ粒子の物理吸着特性を変更することにより静電気斥力または立体障害により安定化されたTOCNを生じる手段を提供する。
【0085】
図9Aに示される1つの実施形態において、この改質は酸化されたセルロースのアニオン性のカルボキシレート基に対する1種または複数の高分子電解質モノマー、この例ではアリルアミンの物理吸着により影響を受ける。このプロセスは低分子量のカチオン性小分子のサイズのためにTOCNの断面直径に著しい影響を及ぼすことはない。
【0086】
図9Bに示される別の実施形態において表面官能化はカチオン性アミンを含む付加物とカルボキシル基の反応により成し遂げられる。図9Bは2-(カルバモイルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム(カルバミン酸コリン)とTOCNとの反応を示す。この反応は別の形態のカチオン性電荷静電気斥力を導入する。
【0087】
図9Cに示されるさらに別の実施形態においてTOCNの表面はポリマー材料、この例ではメトキシポリエチレングリコールアミン(mPEG-アミン)との反応により改質される。このタイプのポリマーのグラフト化はコロイド-TOCN安定化を改良する手段を提供する。
【0088】
TOCNの官能化は開示された方法の後のステップにおけるポリシロキサンによる処理に対して安定なセルロースマトリックスを生成する。
図10は方法を一般的に示す。水性懸濁液として酸化され表面改質されたセルロースナノファイバーは長く整列させられたファイバーにより表わされ、異なった陰影を付けられたドットは水分子およびPMSQの分子を表わす(左端の図)。中央の図は上記方法のステップ(c)および(d)を表わし、ナノファイバーは最初にPMSQと接触させられ、次いでPMSQが加水分解されてPMSQネットワークセルロースヒドロゲルを生成する。ステップ(e)および(f)の結果産物は右端の図に得られたエアロゲルとして描かれる。得られる透明な表面改質されたTOCNの水性コロイド分散液はコロイド分散液中のナノファイバーの体積分率に応じてLC秩序化を示し得る。加えて、これらの溶液は図10に示されているようにクロスポラライザー間で観察されると複屈折を示し得る。
【0089】
TOCNの表面改質
1.カチオン性表面物理吸着
TEMPO酸化されたセルロースナノファイバーの表面を次いでナノファイバーへのアリルアミンの物理吸着により官能化した。500mgの0.2wt.%ナノファイバー水溶液を2mLの蒸留された脱イオン水で希釈し、10mgのアリルアミンと合わせた。混合物を一晩撹拌し、12,000~14,000g/molのカットオフ分子量を有する酢酸セルロース膜を介した脱イオン水浴で2日間透析して所望のアリルアミン-TOCNを得た。
2.荷電した小分子改質
水性のTOCN分散液(500mgの0.38wt.%)を2mLの脱イオン水で希釈した後24mgの1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、20μLのN,N-ジイソプロピル-エチルアミン(DIPEA)および50mgの塩化カルバモイルコリンおよび40μLのジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。混合物を2日間撹拌し、さらに2日間透析して所望の分散した表面改質されたナノファイバーを得た。
3.オリゴマー/ポリマー改質
水性のTOCN分散液(500mgの0.2wt.%)を2mLのDI水で希釈した後28mgのHATU、20μLのDIPEA、18mgのmPEG-アミン(MW=5000)および40μLのDMFと共に混合した。混合物を2日間撹拌した後さらに2日間透析して最終的にmPEG-TOCNを得た。官能化されたTOCN分散液のすべてをロータリーエバポレーターで所望の濃度に濃縮した。
PMSQネットワークセルロースヒドロゲルの調製
官能性のTOCNをポリシロキサンで架橋することにより開示されたPMSQネットワークセルロースヒドロゲルを製作した。例えば、一般的に、臭化セチルトリメチルアンモニウム(0.4g)(CTAB)および3.0gの尿素を超音波処理でゾルが均質になるまで8mLの脱イオン(DI)水に溶かした。この溶液に異なる濃度の2mLの官能化された表面改質されたTOCN、1~5mLのメチルトリメトキシシラン(MTMS)および0.01mmolの酢酸を激しく撹拌しながら加える。各々のサンプルを30分間室温で撹拌した後、真空オーブン中でゾルのガスを抜き、次いで直径5cmのポリスチレンペトリ皿に移し、ゲル化のためにシールし、3日間60℃の炉でエージングさせて所望のヒドロゲルを形成した。
PMSQネットワークセルロースエアロゲルの調製
上で生成したヒドロゲルをペトリ皿から取り、DI水中に24時間浸漬して尿素および残留CTABを除去した。これに続いて、12時間毎に取り替えられたイソプロパノールで60℃で2日間溶媒交換をした。最後に、38℃、8.6MPaでCO超臨界乾燥を実施して臨界点乾燥器で乾燥したエアロゲルサンプルを得た。これにより、上のステップで官能化された表面改質されたセルロースに加えられたMTMの量に応じて30~200
mg/cmの範囲のかさ密度を有するエアロゲルが得られた。1つの実施形態において69mg/cmの密度を有するエアロゲルは最適な光の透過および機械的柔軟性をもつに至る。開示された方法の1つの繰り返しにおいて方法中TOCN-PMSQエアロゲルに応力は導入されない。
【0090】
図11は、開示された方法で形成されたヒドロゲルの光透過性を示す写真である。このヒドロゲルは本明細書に記載された通り等方性の双連続ポリシロキサンナノファイバーネットワークにより架橋された、透明性が高いモノリシックヒドロゲルである。ヒドロゲルは破線で囲んだ領域内に含まれる。図12は、開示された方法で形成されたオルガノゲルの光透過性を示す写真である。オルガノゲルは破線で囲んだ領域内に含まれる。図13は、表面改質剤がアリルアミンである開示された方法で形成されたエアロゲルの光透過性を示す写真である。エアロゲルは円内に含まれる。図14は、表面改質剤が5000ダルトンの平均分子量を有するm-PEG-アミンである開示された方法で形成されたエアロゲルの写真である。円形のエアロゲルはテキストのコピーの上に位置する。写真に見られるように、エアロゲルは変色もテキストのゆがみもない点で透明である。図15は、表面改質剤が塩化カルバモイルコリンである開示された方法で形成されたエアロゲルの写真である。円形のエアロゲルはテキストのコピーの上に位置する。エアロゲルは変色もテキストのゆがみもない点で透明である。
【0091】
図16に示されているように、塩化カルバモイルコリンでキャッピングされたTOCN-PMSQエアロゲルは、主としてナノ構造化されたエアロゲル内のポリシロキサンファイバー上の疎水性のメチル基の存在のために、148°の典型的な接触角をもつ疎水性の表面特性を示す。開示された方法の1つの利点は、開示されたゲルが疎水性用途に使用されるとき合成後の疎水化処理が必要ないということである。
【0092】
開示されたエアロゲルの光学的および電子イメージングおよびスペクトル特性を分析した。偏光および非偏光の両方の明視野光学顕微鏡のイメージングのために、Olympus BX-51偏光光学顕微鏡は、開口数NA=0.3~0.9の10×、20×、および50×の空気対物レンズならびにCCDカメラSpot 14.2 ColorMosaic(Diagnostic Instruments, Inc.)の直前に取り付けられた0.5×チューブレンズを備えていた。顕微鏡に取り付けられた分光計USB2000-FLG(Ocean Optics)を用いて透過スペクトルを研究した。エアロゲルの光線透過率およびヘイズ測定のために、LabSphereブランド積分球付属品を備えた190nm~3200nmの範囲のUV-VIS-NIR分光計(UV-3l0lpc、Shimadzu)を採用した。ヘイズは全透過に対する拡散透過の比率として定義され、拡散透過は入射光の方向から5°以上分離した透過光として定義される。波数400cm-1~4000cm-1(波長2.5μm~25μm)の赤外透過スペクトルを、積分球(NIR IntegratIR、Pike)を備えたフーリエ変換赤外分光(FTIR)分光計(Nicolet AVATAR 370 DTGS、Thermo)に記録した。デジタルカメラを用いてサンプルの写真を撮った。IRカメラ(T630sc、FLIR)によりIRサーモグラフを得た。CM100顕微鏡(FEI Philips)を80kVで用いてTEM像を得た。TOCNサンプルをリンタングステン酸で陰性に染色してイメージングコントラストを増大させた:2μLのサンプルを、formvarでコートした銅グリッド上にドロップキャストし、乾燥のために静置した後染色溶液(水性の2wt.%リンタングステン酸)に漬ける。TOCN-PMSQの多孔質形態は、Hitachi Su3500およびCarl Zeiss EVO MA 10系を用いたSEMを用い、特徴付けた。このために、TOCN-PMSQエアロゲルの新たにカットした表面に金の薄い層をスパッタリングし、(エアロゲルサンプルのゆがみを回避するように最適化された)5kVの低電圧のSEMで観察した。
【0093】
図17A~17Cは、開示されたエアロゲルの様々な倍率の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。図17Aは、コロイド分散液が大部分各々の直径Dc約5nmおよび長さLc=1~2μmに個別化されたTOCNからなることを示す。図17Bおよび17Cは、ポリシロキサン処理により形成され、エアロゲル内に個別に分散したTOCNファイバーである明確に規定された均一な直径10~15nmのナノファイバーならびにそれから得られる多孔質ネットワークの狭い細孔径分布を示す走査型電子顕微鏡(SEM)である。示されたエアロゲルサンプルは3D双連続ネットワーク様の構造を示し、ここでは滑らかなゲル骨格および気孔の両方が凝集したりクラスター化したりすることなく相互に連結されている。図17A~Cに示された例はサンプルの重量/容積比で69mg/cmと計算されるかさ密度ρを有する。次いで、ε=(l-ρ/ρ)×100%として定義される気孔率がε約94.9%と決定される。ここでρは1.35g/cmとされる骨格密度である。この特定の例に対する平均の細孔径はSEM像から直接観察される値と一致しておよそ100nmと計算される。極細のファイバーおよび均一な気孔径分布を有する2.0mm厚のQAでキャッピングされたTOCN-PMSQ複合エアロゲルの中規模形態学は図18に示されているように90%を超える非常に高い光透過率のヒドロゲルおよびオルガノゲルならびに600nmで90%に近い可視透過率を有するエアロゲルを生成する。
【0094】
拡散透過率と全光線透過率の比として定義される例示されたエアロゲルのヘイズ率は8.4%に等しいと決定された。図19は、ASTM D1003基準に従い、積分球設定を用い、図Slに示される可視範囲(390~700nm)にわたって積分されたとき特徴付けられる。PMSQマトリックスは、TOCN-PMSQエアロゲルに、主として図20のSi-0結合に起因して6~20μmの波長で強い吸収を示させる。これは、配合者に、ソーラーゲインおよび放射率の制御が重要な実施形態、すなわち、スマートウインドウ用途で、可視および赤外光の透過を独立して制御する機会を提供する。
【0095】
開示されたエアロゲルの熱的、機械的、および耐久性特性を分析した。熱伝導率は、エアロゲルサンプルの熱容量および熱拡散率の両方を測定することにより測定される。エアロゲルの熱容量は示差走査熱量測定(DSC 204 Fl Phoenix、Netzsch)により測定される。エアロゲルの熱拡散率はレーザー閃光装置(LFA 457、Netzsch)により特徴付けられる。簡潔にいうと、光源が材料の1つの面を瞬時に加熱し、材料の他の面の温度増分が容易な非侵襲性の温度感知のために赤外線サーモグラフィーにより記録される。レーザー光による検出器の直接加熱を抑制するために、エアロゲルの上部および底部を高伝導性の炭素テープで覆ってレーザーがサンプルを貫通するのを防いだ。エアロゲルの熱伝導率はサンドイッチ構造の有効熱伝導率から炭素テープの寄与を差し引くことにより計算することができ、これはいろいろな厚さのサンプルに対して測定を実行することにより決定された。Instron 5965材料試験系を使用して機械的特性を調べ、応力-ゆがみ関係を決定した。図4fに示された機械的特性は20mm×6mm×1mmの長方形のストリップにカットされた0.25vol.%のQAでキャッピングされたTOCNを有するTOCN-PMSQエアロゲルサンプルで測定された。エアロゲル耐久性試験は80℃、80%相対湿度に保たれたTenney環境試験チャンバー中で24時間500ワットの水銀ランプ(Sun System 5、Sunlight Supply Inc.)の下で行なった。
【0096】
図21は、TOCN-PMSQエアロゲルの測定された熱伝導率をサンプル気孔率に対して示す。図22は、塩化カルバモイルコリンで改質されたナノセルロース(第四級アミン)から形成されたエアロゲルとアリルアミンで改質されたエアロゲルとの間の熱伝導率の比較を示す。図23は、0.06wt.%のTOCNを有するTOCN-PMSQエアロゲルに対する圧縮応力-ゆがみ関係を示す。
バクテリアセルロース
本明細書には、バクテリアセルロース由来のセルロース(例えば、ナノセルロース)バイオフィルムが開示される。開示されたバイオフィルムは断熱および構造ゲルを製造する際に使用するのに適切である。開示されたバイオフィルムを提供するのに使用され得るセルロース産生細菌の非限定例にはAcetobacter hanseniiおよびAcetobacter xylinumがある。
【0097】
細菌性バイオフィルムは、例えば、図6、9A-9C、および10に示されているように、その場で生成される。得られるセルロースゲルは、例えば、シリコーン油のような油を用いて、および/または赤外線レーザービームのような外部刺激を用いて、配向性において秩序化され得る。赤外線レーザービームをレーザートラップとして用いて、細菌は互いに隣接して移動され、再配向され、配置されることができて、結果として得られるセルロース系材料のフィブリルは互いに合体することができる。
【0098】
開示されたセルロースゲルは、フィブリル間の水素結合のせいで生成されると、その整列のために配向性において秩序化されることができる。この結果、リボンを形成するフィブリルが生じる。さらに、成長栄養の変更によって、束内のフィブリルの数密度、したがって、リボンは配合者により決定されることができる。加えて、細菌培養の変更は結果としてフィブリル直径の変化を生じることができる。
【0099】
したがって、増殖培地および栄養組成物に対する変更、ならびに、細菌種の変化は、得られるゲルを透明または不透明、柔軟性または剛性、断熱または熱伝導性、および脆弱性または耐荷重性に調節するために使用されてもよい。得られるゲルは、本発明の材料および熱的特性、例えば架橋密度、材料組成、および疎水性を調節するためにさらに化学的に処理されてもよい。コロイド介在物は、ゲルの光学的、熱的、磁気的、および電気的性質を調節するために得られるゲルに導入されることができる。
【0100】
図24Aおよび図24Bは、レーザートラップの赤外線レーザービームを用いたA. hansenii細菌の再配向を示す。レーザートラップは、薄膜のより容易な収穫を提供する増殖培地中のある位置へ細菌を移動するか、あるいは薄膜の密度を決定するために使用されてもよい。図25は、セルロースファイバーを産生するA. hansenii細菌を示す暗視野顕微鏡の写真である。セルロース系材料は、セルロースの様々な単一のストランドがリボンに合体しているので目に見える。これは図28に概略的に示される。図26は、セルロースファイバーを産生するA. xylinum細菌を示す。
【0101】
図27Aおよび図27Bは、1.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)がA. xylinumに加えられたときのセルロースフィブリルの太さの影響を示す。図27Aにおいてセルロースフィブリルは目に見える。図27Bにおいてフィブリルの太さは非常に低下していて、フィブリルはもはや目に見えない/写真で解像できない。これは図29に概略的に示される。
【0102】
薄膜が生成したら、細菌は、塩基性溶液、飢餓、UV光、熱、毒素、プラズマまたはその他の照射処理、窒息、などの使用のようないずれかの適切な技術を用いて死滅させ得る。
【0103】
実施例6
A. hansenii由来のバクテリアセルロースがこの実施例で使用される。バクテリアセルロース薄膜は、最初に残留する細菌をすべて死滅させるために70℃の1wt%NaOH水溶液中で約4時間洗浄することにより精製される。次いで薄膜は70℃または室温のDI水に移されて過剰のNaOHを除去し、イオン強度を低下させて純粋なDI水に近くする。70℃に加熱すると方法が加速されるが、この方法は室温(RT)でも同
様に行なわれ得る。薄膜は、さらに2回純粋なDI水で(RTで、または、例えば70℃に穏やかに加熱しながら)、全部で3回DI水のすすぎで洗浄される。次いで薄膜は純粋なイソプロパノール(IPA)に移され、溶媒交換を受ける。この水からIPAへの溶媒交換は緊急性および所望の速度に応じてRTまたは60℃で行なわれ得る。次いで薄膜はIPAの新鮮な浴に入れられ、溶媒交換浴内に残るあらゆる水をさらに希釈する。薄膜が新鮮なIPAで洗浄される回数は薄膜厚さに依存する。例えば、薄い薄膜は水を充分に除去するのに全部で2回だけのIPA浴を必要とし得るが、より厚い薄膜はIPAでの3~5回の交換サイクルを必要とし得る。水/IPA溶媒交換が完了した後、薄膜を従来の臨界点乾燥(CPD)技術(エアロゲルを乾燥したのと同じ液体COを用いる)によって乾燥させる。CO臨界点で圧力を約50PSI/分で抜き取るとバクテリアセルロースエアロゲルが得られる。
【0104】
図28は、セルロースフィブリルを細胞膜から押し出す多数のセルロース合成酵素を示すアセトバクター細胞の描写である。フィブリルが長くなると隣接するストランド間の水素結合がフィブリルを合体させ、リボンを形成させる。
【0105】
図29は、セルロースフィブリルを細胞膜から押し出す多数のセルロース合成酵素を示すアセトバクター細胞の描写である。この繰り返しにおいて、カルボキシメチルセルロース(CMC)が増殖培地に添加され、その結果フィブリルをファイバーのリボンに形成しない水素結合を生じる。
【0106】
図30Aおよび図30Bは、バクテリアセルロースから調製された開示されたエアロゲルの光学的および機械的性質を示す。図30Aにおいてエアロゲルは不透明であるが、図30Bは対応するエアロゲルの柔軟性を示す。
【0107】
実施例7
1.5%カルボキシメチルセルロースが培養培地に添加されたA. hansenii由来のバクテリアセルロースがこの実施例で使用された。バクテリアセルロース薄膜は、残っている細菌をすべて死滅させるために最初に70℃の1wt%NaOH水溶液中で約4時間洗浄することにより精製される。次いで薄膜は70℃または室温のDI水に移されて過剰のNaOHを除去し、イオン強度を低下させて純粋なDI水に近づける。70℃に加熱すると方法を加速するが、方法は室温(RT)で行なわれることもできる。薄膜はさらに2回純粋なDI水で(RTで、または、例えば70℃に穏やかに加熱しながら)、全部で3回DI水のすすぎで洗浄される。次に薄膜は純粋なイソプロパノール(IPA)中に移され、溶媒交換にかけられる。この水からIPAへの溶媒交換は緊急性および所望の速度に応じてRTまたは60℃で行なわれ得る。次いで薄膜はIPAの新鮮な浴に入れられて、残ったままであるあらゆる水をさらに希釈する。薄膜が新鮮なIPAで洗浄される回数は薄膜の厚さに依存する。例えば、薄い薄膜は水を充分に除去するのに全部で2回だけのIPA浴を必要とし得るが、より厚い薄膜はIPA中での3~5回の交換サイクルを必要とし得る。水/IPA溶媒交換が完了した後、薄膜は従来の臨界点乾燥(CPD)技術により(エアロゲルを乾燥したのと同じ液体COを用いて)乾燥される。CO臨界点で、圧力は約50PSI/分で抜き取られる。
【0108】
開示されたバクテリアセルロースゲルの熱伝導率は公知の方法で測定されることができる(Hayase el al, App. Materials & Interfaces 6, 9466 (2014)およびZu el al, Chem. Mater. 30, 2759 (2018)参照)。図31Aおよび図31Bは、標準的なポリシロキサンポリマー(図31A)を開示された方法により形成されたゲル(図31B)と比較するサーマルイメージング写真である。バクテリアセルロースエアロゲルのパッチは周囲の加熱された表面と比べて冷たい。
【0109】
本開示の特定の実施形態が例示され説明されて来たが、当業者には明らかなように、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な他の変更および修正がなされることができる。したがって、本開示の範囲内にあるすべてのかかる変更および修正は添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【手続補正書】
【提出日】2024-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増殖培地中のナノセルロースの間の水素結合を低減する添加剤を含む増殖培地の存在下でバクテリアによって製造されるナノセルロースを含む透明なエアロゲルであって、
ポリシロキサンネットワークを含み、
95%~100%の範囲内の電磁放射線の透過率を有し、
97%~99%の範囲内の気孔率を有し、ここで、気孔率(ε)は、ε=(l-ρ /ρ )×100%として定義され、ρ はかさ密度であり、ρ は骨格密度である
透明なエアロゲル。
【請求項2】
約10-3W/(m・K)~約10W/(m・K)の熱伝導率を有する、請求項1に記載の透明なエアロゲル。
【請求項3】
添加剤が、カルボキシメチルセルロースを含む、請求項1に記載の透明なエアロゲル。
【請求項4】
約1Pa~約10Paの体積弾性率を有する、請求項1に記載の透明なエアロゲル。
【請求項5】
透明なエアロゲルが親水性である、請求項1に記載の透明なエアロゲル。
【請求項6】
バクテリアがAcetobacter hansenii、Acetobacter xylinum、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の透明なエアロゲル。
【請求項7】
請求項1に記載の透明なエアロゲルを含むフィルム。
【請求項8】
フィルムが約1μm~約10cmの厚さを有する、請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
フィルムが約1Pa~約10Paの体積弾性率を有する、請求項7に記載のフィルム。
【請求項10】
透明なエアロゲル内の6~20μmの波長を有する放射線の透過率が可視光スペクトルにおける放射線の透過率よりも少ない、請求項7に記載のフィルム。
【請求項11】
窓の上に適用される請求項7に記載のフィルム。
【請求項12】
ナノセルロースが、直径約10~約15nmのナノリボンを含む、請求項7に記載のフィルム。
【請求項13】
フィルムが、セルロース系材料の整列させられたナノリボンを含む層を含む、請求項7に記載のフィルム。
【請求項14】
フィルムが、セルロース系材料の整列させられたナノロッドを含む層を含む、請求項7に記載のフィルム。
【請求項15】
請求項7から14のいずれか1項に記載のフィルムを含む複合構造であって、前記複合構造の複合ナノ材料の整列に影響を及ぼす1種または複数の補助材料を含む、前記複合構造。
【請求項16】
ゲルを形成する方法であって、
セルロースの水性分散液をセルロースを酸化させる酸化系と接触させて、酸化セルロースナノファイバーの水溶液を形成するステップと、
酸化セルロースナノファイバーを表面改質剤と反応させて、表面改質されたセルロースナノファイバーの水溶液を形成するステップと、
表面改質されたセルロースナノファイバーを試薬と接触させて、水性ポリシロキサン前駆体を形成するステップと、
水性ポリシロキサン前駆体を酸触媒の存在下で加水分解して、ヒドロゲルを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
ヒドロゲルに含有される水を揮発性溶媒と交換して、オルガノゲルを形成するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
揮発性溶媒を除去して、エアロゲルを形成するステップさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エアロゲルが透明なエアロゲルである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記透明なエアロゲルが、約95%~100%の範囲内の電磁放射線の透過率を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒドロゲルにシリコンを加えるステップを含む、請求項16に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0109
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0109】
本開示の特定の実施形態が例示され説明されて来たが、当業者には明らかなように、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な他の変更および修正がなされることができる。したがって、本開示の範囲内にあるすべてのかかる変更および修正は添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図されている。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
バクテリアセルロースを含むエアロゲル。
[2]
約10 -3 W/(m・K)~約10W/(m・K)の熱伝導率を有する、[1]に記載のエアロゲル。
[3]
ナノセルロースを含む、[1]に記載のエアロゲル。
[4]
約1Pa~約10 Paの体積弾性率を有する、[1]に記載のエアロゲル。
[5]
バクテリアセルロースがセルロース産生細菌から得られる、[1]に記載のエアロゲル。
[6]
バクテリアセルロースがAcetobacter hansenii、Acetobacter xylinum、またはそれらの混合物から得られる、[5]に記載のエアロゲル。
[7]
バクテリアセルロースナノ材料を含むフィルム。
[8]
約1μm~約10cmの厚さを有する、[7]に記載のフィルム。
[9]
約1Pa~約10 Paの体積弾性率を有する、[7]に記載のフィルム。
[10]
バクテリアセルロースがセルロース産生細菌から得られる、[7]に記載のエアロゲル。
[11]
バクテリアセルロースがAcetobacter hansenii、Acetobacter xylinumまたはそれらの混合物から得られる、[7]に記載のフィルム。
[12]
ナノ材料がセルロース系材料のナノリボンを含む、[7]に記載のフィルム。
[13]
セルロース系材料のフィブリルを含む、[7]に記載のフィルム。
[14]
セルロース系材料の整列させられたナノリボンを含む層を含む、[7]に記載のフィルム。
[15]
ナノリボンが約1:100~約1:1000のアスペクト比を有する、[14]に記載のフィルム。
[16]
セルロース系材料の整列させられたナノロッドを含む層を含む、[7]に記載のフィルム。
[17]
ナノロッドが約1:10~約1:100のアスペクト比を有する、[16]に記載のフィルム。
[18]
[7]から[17]のいずれか1項に記載のフィルムを含む複合構造。
[19]
a)増殖培地、細菌、および場合によりセルロースフィブリル間の結合の程度を低減する添加剤の混合物を準備するステップと、
b)バクテリアセルロースの薄膜を生成させるステップと、
c)薄膜に含有される水を溶媒と交換するステップと、
d)薄膜を乾燥して溶媒を除去して、エアロゲルを形成するステップと
を含む方法。
[20]
バクテリアセルロースの薄膜を処理して細菌を含まない薄膜を提供するステップをさらに含む、[19]に記載の方法。
[21]
添加剤が細菌増殖培地中のフィブリル間の水素結合を低減する、[19]に記載の方法。
[22]
作用剤がフィブリル間の結合に対する立体障害を提供する分子を含む、[21]に記載の方法。
[23]
バクテリアセルロースがセルロース産生細菌から得られる、[19]に記載の方法。
[24]
バクテリアセルロースがAcetobacter hansenii、Acetobacter xylinum、またはそれらの混合物から得られる、[19]に記載の方法。
[25]
増殖培地および増殖培地内の栄養組成物の1つまたは複数を変更することによりフィブリルの密度を操作するステップをさらに含む、[19]に記載の方法。
[26]
分散液内のナノセルロース材料を整列させるステップをさらに含む、[19]に記載の方法。
[27]
整列させるステップが分散液に剪断応力をかけるステップを含む、[26]に記載の方法。
[28]
整列させるステップが電場および磁場の1つまたは複数を分散液にかけるステップを含む、[26]に記載の方法。
【外国語明細書】