(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177166
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】極性官能基を含む少なくとも1種の官能化エラストマーと特定のフェノール化合物をベースとするゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/18 20060101AFI20241212BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241212BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241212BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08G59/18
C08L63/00 C
C08K3/013
B60C1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024146244
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2021534388の分割
【原出願日】2019-12-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-11-27
(31)【優先権主張番号】1873024
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1900923
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ガヴァール-ロンシェ オディル
(72)【発明者】
【氏名】チュリエ アンヌ-リーズ
(57)【要約】
【課題】従来技術の組成物に比べて簡単な方法で改善された接着特性を有する可能性がある特定の架橋性組成物を調製することを課題とする。
【解決手段】本発明は、極性官能基を含む少なくとも1種の官能化エラストマーと、補強フィラーと、特定のフェノール化合物とをベースとするゴム組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性官能基を含む少なくとも1種の官能化エラストマーと、補強フィラーと、下記一般式(I)
【化1】
(式中:
-G
1は、ヒドロキシル、カルボキシル若しくはアルコキシ基又は水素原子を表し;
-G
2は、ヒドロキシル基又は水素原子を表し;
-G
3は、水素原子又は下記基:ヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロゲノカルボニル、アルキル、カルボキシルアルキル、カルボキシルアルケニル、カルボニルアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールカルボニル、アミノ、アミノアルキルから選択される基を表し;
-置換基G
1~G
3の少なくとも1つは酸素原子を含む)
のフェノール化合物とをベースとするゴム組成物であって、前記ゴム組成物は、アルキル-イミダゾール及び下記一般式(P1):
【化2】
のポリカルボン酸を同時には含まず、
Aは、共有結合を表すか、又は少なくとも1個の炭素原子を含み、任意に置換されていてもよく、任意に1個以上のヘテロ原子で中断されていてもよい炭化水素ベース基を表す、前記ゴム組成物。
【請求項2】
G3が、水素原子又は下記基:ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールカルボニルから選択される基を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
一般式(I)のフェノール化合物が、互いにメタ位に少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有し、前記ヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対する2つの位置オルトは置換されていない、少なくとも1つの芳香核を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
一般式(I)のフェノール化合物が、優先的には互いにメタ位に、少なくとも3つのヒドロキシル官能基を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
一般式(I)のフェノール化合物の各ヒドロキシル官能基に対する2つの位置オルトが置換されていない、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
G3が、下記基:アリール、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールカルボニルから選択される基を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
一般式(I)のフェノール化合物の少なくとも2つの芳香核が、互いにメタ位に少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有し、少なくとも1つの芳香核の前記ヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対する2つの位置オルトは置換されていない、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
一般式(I)のフェノール化合物の各芳香核の少なくとも1つのヒドロキシル官能基に対する2つの位置オルトが置換されていない、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
一般式(I)のフェノール化合物が、レゾルシノール、フロログルシノール、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン及びこれらの化合物の混合物から成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記官能化エラストマーの極性官能基が、ハロゲン、酸素及び窒素から選択される少なくとも1個の原子を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記官能化エラストマーの極性官能基が、ヒドロキシル、カルボニル、イミン及びエポキシ基から選択され、好ましくは一級アルジミン、アルデヒド及びエポキシ基、優先的にはエポキシ基から選択される少なくとも1つの基を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の補強要素及び請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物をベースとする複合材料。
【請求項13】
前記補強要素が金属表面を含む、請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物又は請求項12及び13のどちらかに記載の複合材料を含む、完成品又は半完成品。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物又は請求項12及び13のどちらかに記載の複合材料を含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、極性官能基を含む少なくとも1種のエラストマーをベースとするゴム組成物に関し、これらの組成物を含む複合材料、完成品又は半完成品及びタイヤにも関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
そのエラストマーマトリックスが硫黄で架橋されているゴム組成物をタイヤに使用し、この架橋が加硫として知られていることは公知であり、非常に多くの年数にわたって習慣化されてきた。従来の加硫系は、分子硫黄と少なくとも1種の加硫促進剤を併用する。しかしながら、該系は、スコーチ(scorching)現象によって、硬化前の組成物の加工に有害であり得ることが知られている。「スコーチ」は、ゴム組成物の調製中に、急速に時期尚早の加硫(「スコーチ現象」)、未加工状態で非常に高い粘度をもたらし、最終的に、工業的に作業し、加工するのが困難なゴム組成物をもたらすと想起される。
その結果として、加硫系は長年にわたって、上記欠点を制御するため、ゴム組成物を調製するためのプロセスと共に改善されてきた。従って、組成物は、分子硫黄又は分子硫黄供与体に加えて、加硫促進剤、活性化剤及び場合によっては加硫抑制剤を組み合わせて含むことが多い。
タイヤの種々の要素の中で、既知のように、ゴム混合物及び補強コード、例えば金属コードを含む補強プライは、一般的にゴム混合物に特有の処方を必要とし、特に高含量の硫黄及び酸化亜鉛、少量のステアリン酸、コバルト塩の存在、及び特に接着機能を保証するため、長遅延相(long lag phase)促進剤の使用を必要とする。しかしながら、高硫黄含量を有するこれらの加硫系は、特に時期尚早の架橋を避けるために、半完成品の製造中の大きな制約となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、加硫に代わる架橋系を開発し、同時に組成物及びその製法を単純化するために研究が行われた。こうして、特許出願WO2014/095586は、エポキシ化エラストマーを含むゴム組成物及びポリカルボン酸とイミダゾールを含む架橋系を提示している。しかしながら、前記文書は、接着の問題に取り組んでいない。
WO2017/081387及びWO2017/081388は、官能性ジエンポリマーを含むポリマーマトリックスをベースとするゴム組成物及び複合材料を提示している。この官能性ジエンポリマーは、少なくとも2個のビシナルヒドロキシル官能基で置換された少なくとも1つの芳香族基を有する。ゴム組成物の架橋は、加硫系又は1種以上のペルオキシド化合物をベースとする系で行なわれる。金属へのゴム組成物の良好な接着特性が得られるが、グラフトポリマーの使用を必要とする。
その研究を継続して、出願人は、今や従来技術の組成物に比べて簡単な方法で特定の架橋性組成物を調製することができ、これらの組成物は改善された接着特性を有する可能性があることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の詳細な説明
以下にさらに詳述する本発明は、下記諸点で列挙する実施形態の少なくとも1つに関するものである。
1. 極性官能基を含む少なくとも1種の官能化エラストマーと、補強フィラーと、下記一般式(I)
【0005】
【0006】
(式中:
-G1は、ヒドロキシル、カルボキシル若しくはアルコキシ基又は水素原子を表し;
-G2は、ヒドロキシル基又は水素原子を表し;
-G3は、水素原子又は下記基:ヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロゲノカルボニル(hydrogenocarbonyl)、アルキル、カルボキシルアルキル、カルボキシルアルケニル、カルボニルアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールカルボニル、アミノ、アミノアルキルから選択される基を表し;
-置換基G1~G3の少なくとも1つは酸素原子を含む)
のフェノール化合物とをベースとするゴム組成物であって、前記ゴム組成物は、アルキル-イミダゾール及び下記一般式(P1):
【0007】
【0008】
のポリカルボン酸を同時には含まず、
Aは、共有結合を表すか、又は少なくとも1個の炭素原子を含み、任意に置換されていてもよく、任意に1個以上のヘテロ原子で中断されていてもよい炭化水素ベース基を表す、ゴム組成物。
2. G3が、水素原子又は下記基:ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールカルボニルから選択される基を表す、先行する実施形態に記載のゴム組成物。
3. 一般式(I)のフェノール化合物が、互いにメタ位に少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有し、これらのヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対する2つの位置オルトは置換されていない、少なくとも1つの芳香核を含む、実施形態1又は2に記載の組成物。
4. 一般式(I)のフェノール化合物が、優先的には互いにメタ位に、少なくとも3つのヒドロキシル官能基を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
5. 一般式(I)のフェノール化合物の各ヒドロキシル官能基に対する2つの位置オルトが置換されていない、すぐ前の実施形態に記載の組成物。
6. G3が、下記基:アリール、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールカルボニルから選択される基を表す、実施形態1に記載の組成物。
7. 一般式(I)のフェノール化合物の少なくとも2つの芳香核が、互いにメタ位に少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有し、少なくとも1つの芳香核のこれらのヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対する2つの位置オルトが置換されていない、すぐ前の実施形態に記載の組成物。
8. 一般式(I)のフェノール化合物の各芳香核の少なくとも1つのヒドロキシル官能基に対する2つの位置オルトが置換されていない、すぐ前の実施形態に記載の組成物。
9. 一般式(I)のフェノール化合物が、レゾルシノール、フロログルシノール、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン及びこれらの化合物の混合物から成る群より選択される、実施形態1に記載の組成物。
10. 一般式(I)の少なくとも2つのフェノール化合物を含み、優先的には、2つのフェノール化合物の少なくとも1つが少なくとも2つのヒドロキシル官能基を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0009】
11. 少なくとも1つのポリアルデヒドをも含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
12. 官能化エラストマーが、官能化ジエンエラストマー、官能化オレフィンエラストマー及びその混合物から成る群より選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
13. 官能化エラストマーが、高度不飽和型のジエンエラストマー、優先的には天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IRs)、ポリブタジエン(BRs)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物から成る群より選択されるジエンエラストマーである、すぐ前の実施形態に記載の組成物。
14. ブタジエンコポリマー及びイソプレンコポリマーが、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBRs)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIRs)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIRs)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIRs)及び該コポリマーの混合物から成る群より選択される、すぐ前の実施形態に記載の組成物。
15. 官能化エラストマーの極性官能基が、ハロゲン、酸素及び窒素から選択される少なくとも1個の原子を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
16. 官能化エラストマーの極性官能基が、ヒドロキシル、カルボニル、イミン及びエポキシ基から選択され、好ましくは一級アルジミン、アルデヒド及びエポキシ基、優先的にはエポキシ基から選択される少なくとも1つの基を含む、すぐ前の実施形態に記載の組成物。
17. 前記組成物が、コバルト塩がないか又は1phr未満のコバルト塩を含有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
18. 前記組成物が、亜鉛又は酸化亜鉛がないか、或いは極少量のみ、優先的には1phr未満、好ましくは0.5phr未満、さらに優先的には0.2phr未満の亜鉛又は酸化亜鉛を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のゴム組成物。
19. 補強フィラーが、カーボンブラック、シリカ又はカーボンブラックとシリカの混合物を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のゴム組成物。
20. 補強フィラーの含量が、20phrと200phrの間である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のゴム組成物。
【0010】
21. 少なくとも1種の補強要素及び先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物をベースとする複合材料。
22. 補強要素が金属表面を含む、すぐ前の実施形態に記載の複合材料。
23. 前記補強要素の金属表面が、鉄、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、コバルト、ニッケル及びこれらの金属の少なくとも1種を含む合金から成る群より選択される金属を含む、すぐ前の実施形態に記載の複合材料。
24. 金属表面の金属が、鉄、銅、スズ、亜鉛又はこれらの金属の少なくとも1種を含む合金である、すぐ前の実施形態に記載の複合材料。
25. 金属表面の金属が、黄銅又は鋼である、すぐ前の実施形態に記載の複合材料。
26. 実施形態1~20のいずれか1つに記載の組成物又は実施形態21~25のいずれか1つに記載の複合材料を含む、完成品又は半完成品。
27. 実施形態1~20のいずれか1つに記載の組成物又は実施形態21~25のいずれか1つに記載の複合材料を含む、タイヤ。
28. 実施形態1~20のいずれか1つに記載の組成物又は実施形態21~25のいずれか1つに記載の複合材料を含む内層を含む、タイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
「をベースとする組成物」という表現は、使用する種々の成分の混合物及び/又はその場反応生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきであり、これらの成分のいくつかは、組成物の製造の種々の段階中に少なくとも部分的に、互いに反応することができ及び/又は互いに反応するように意図され;従って、組成物は、全体的若しくは部分的に架橋状態又は非架橋状態である可能性がある。
本発明の目的では、「エラストマーの重量で100部当たりの重量部」(又はphr)という表現は、エラストマーの質量で100部当たりの質量部」を意味するものと理解すべきである。
本テキストでは、明示的に別段の定めがない限り、表示する全ての百分率(%)は、質量百分率(%)である。
さらに、「aとbの間」という表現で示す値のいずれの区間も、aより大きいからb未満に及ぶ値の範囲(すなわち、限界a及びbは除外)を表し、一方で「a~b」という表現で示す値のいずれの区間も、aからbまで及ぶ値の範囲(すなわち、厳密な制限a及びbを含む)を意味する。
本説明で言及する炭素を含む化合物は、化石又はバイオ起源のものである。バイオ起源の場合、それらは部分的又は全体的にバイオマス由来であってよく、或いはバイオマス由来の再生可能出発材料から得ることができる。ポリマー、可塑剤、フィラー等が特に該当する。
【0012】
官能化エラストマー
用語「極性官能基を含む官能化エラストマー又はゴム(これら2つの用語は、既知のように、同義かつ互換的である)」は、それがホモポリマー又はブロック、統計的若しくは他のコポリマーでも、官能化されているエラストマー特性を有する、すなわち、それが極性官能基から選択される官能基を有する、当業者に既知の意味の範囲内のいずれのタイプのエラストマーをも意味する。
本発明のゴム組成物は、1種のみの官能化エラストマー又は数種の官能化エラストマーの混合物(従って、単数で「官能化エラストマー」と表して、組成物の官能化エラストマーの全てを意味することになる)を含有してよく、官能化エラストマーは、任意のタイプの非官能化エラストマー、例えばジエンエラストマー、又はジエンエラストマー以外のエラストマーと組み合わせて使用する可能性がある。
官能化エラストマーは、本発明のゴム組成物において中心的であり、すなわち、それは唯一のエラストマーであるか、又は組成物の全てのエラストマーの中で最大質量を占めるエラストマーである。
【0013】
本発明の優先的実施形態によれば、ゴム組成物は、0~50phr、好ましくは0~30phrの1種以上の他の少量非官能化エラストマーとのブレンドとして、50超~100phr、好ましくは70~100phrの官能化エラストマーを含む。
本発明の別の優先的実施形態によれば、組成物は、100phrのエラストマー全体のために、極性官能基を含む1種以上の官能化エラストマーを含む。
官能化エラストマーは、官能化ジエンエラストマー、官能化オレフィンエラストマー及びその混合物から成る群より優先的に選択される。優先的には、官能化エラストマーは、官能化オレフィンエラストマー及びその混合物から選択される。本発明の別の優先的異形によれば、官能化エラストマーは、官能化ジエンエラストマー及びその混合物から選択される。
【0014】
本テキストに記載のエラストマーのガラス転移温度Tgは、DSC(示差走査熱量測定)により、例えば、特に別段の指示がない限り、1999年の規格ASTM D3418に従って、既知の方法で測定する。
サイズ排除クロマトグラフィー又はSECを利用して、ポリマーのマクロ構造を決定する。SECは、多孔性ゲルを詰めたカラムを通るそれらのサイズに応じて溶液中のマクロ分子を分離できるようにする。マクロ分子は、それらの流体力学的体積に応じて分離され、最もかさ高いものが最初に溶出される。
絶対的方法ではないが、SECは、ポリマーのモル質量分布を理解できるようにする。種々の数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)を市販の標準物質から決定し、「Moore」較正によって多分散指数(PDI=Mw/Mn)を計算することができる。
【0015】
ポリマーの調製:分析前にポリマーサンプル特有の処理はない。1vol%のジイソプロピルアミン、1vol%のトリエチルアミン及び0.1vol%の蒸留水を含有するテトラヒドロフラン(THF)に前記サンプルを約1g/lの濃度で溶かすだけである。そして注入前に0.45μmの空隙率を有するフィラーを通して溶液を濾過する。
【0016】
SEC分析:使用装置はWaters Allianceクロマトグラフである。溶出溶媒は、1vol%のジイソプロピルアミン及び1vol%のトリエチルアミンを含有するテトラヒドロフランである。流速は0.7ml/分であり、システムの温度は35℃であり、分析時間は90分である。商品名Styragel HMW7、Styragel HMW6E及び2つのStyragel HT6Eを有する連続した4つのWatersカラムセットを使用する。注入するポリマーサンプル溶液の体積は100μlである。検出器はWaters 2410示差屈折計であり、クロマトグラフデータを処理するためのソフトウェアはWaters Empowerシステムである。
平均分子量の計算値をPSS Ready Cal-Kitの市販ポリスチレン標準物質から作成された検量線と比較する。
【0017】
-ジエンエラストマー
用語「官能化ジエン型のエラストマー」は、少なくとも一部はジエンモノマー(2つの共役又は非共役炭素-炭素二重結合を有するモノマー)由来のエラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味し、このポリマーは官能化され、すなわち、極性官能基から選択される官能基を有すると理解すべきであると考えられる。
従って官能化ジエンエラストマーの第1の特徴は、それらがジエンエラストマーであることである。これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー:「本質的に不飽和」又は「本質的に飽和」に分類し得る。用語「本質的に不飽和」とは、一般的に少なくとも部分的に、15%(モル%)より大きい含量のジエン起源単位(共役ジエン)を有する共役ジエンモノマー由来であり;従ってブチルゴム又はジエンとEPDM型のαオレフィンのコポリマーのようなジエンエラストマーは、前述の定義に入らず、特に「本質的に飽和した」ジエンエラストマー(低含量又は極低含量、常に15%未満のジエン起源単位)と記述し得る。本発明の組成物に含まれるジエンエラストマーは、優先的には本質的に不飽和である。
【0018】
用語「本発明の組成物に使用可能なジエンエラストマー」は、特に下記:
(a)4~18個の炭素原子を含有する共役又は非共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー;
(b)4~18個の炭素原子を含有する共役又は非共役ジエンモノマー及び少なくとも1種の他のモノマーの任意のコポリマー
を意味する。
他のモノマーは、エチレン、オレフィン又は共役若しくは非共役ジエンであり得る。
適切な共役ジエンとしては、4~12個の炭素原子を含有する共役ジエン、特に1,3-ジエン、特に例えば1,3-ブタジエン及びイソプレン等が挙げられる。
適切なオレフィンとしては、8~20個の炭素原子を含有するビニル芳香族化合物及び3~12個の炭素原子を含有する脂肪族αモノオレフィンが挙げられる。
適切なビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、オルト、メタ若しくはパラメチルスチレン、「ビニルトルエン」市販混合物又はパラ(tert-ブチル)スチレンが挙げられる。
適切な脂肪族αモノオレフィンとしては、特に3~18個の炭素原子を含有する非環式脂肪族αモノオレフィンが挙げられる。
【0019】
官能化ジエンエラストマーは、好ましくは高度不飽和型のジエンエラストマー、特に天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IRs)、ポリブタジエン(BRs)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物から成る群より選択されるジエンエラストマーである。該コポリマーは、さらに優先的にはブタジエン/スチレンコポリマー(SBRs)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIRs)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIRs)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIRs)及び該コポリマーの混合物から成る群より選択される。
上記ジエンエラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、シーケンシャル又はミクロシーケンシャルエラストマーであってよく、分散系又は溶液中で調製可能であり;それらは、カップリング剤及び/又は星状分岐剤又は官能化剤でカップリング及び/又は星状分岐或いは官能化され得る。
【0020】
以下のものは優先的に適している:ポリブタジエン、特に4%と80%の間の含量の1,2-単位を有するもの又は80%より多い含量のcis-1,4-単位を有するもの、ポリイソプレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、特に質量で5%と50%の間、さらに特に20%と40%の間のスチレン含量、4%と65%の間の含量のブタジエン部分の1,2-結合及び20%と80%の間の含量のtrans-1,4-結合を有するもの、ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に質量で5%と90%の間のイソプレン含量及び-40℃~-80℃のガラス転移温度を有するもの、又はイソプレン/スチレンコポリマー、特に質量で5%と50%の間のスチレン含量及び-25℃と-50℃の間のTgを有するもの。
ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合、質量で5%と50%の間、さらに特に10%と40%の間のスチレン含量、質量で15%と60%の間、さらに特に20%と50%の間のイソプレン含量、質量で5%と50%の間、さらに特に20%と40%の間のブタジエン含量、4%と85%の間の含量のブタジエン部分の1,2-単位、6%と80%の間の含量のブタジエン部分のtrans-1,4-単位、5%と70%の間の含量のイソプレン部分の1,2-単位プラス3,4-単位及び10%と50%の間の含量のイソプレン部分のtrans-1,4-単位を有するもの、さらに一般的には、-20℃と70℃の間のTgを有するブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが特に適している。
【0021】
-オレフィンエラストマー
用語「官能化オレフィン型のエラストマー」は、極性官能基から選択される官能基を有するエラストマーであり、そのエラストマー鎖は、Oと表されるオレフィンモノマー単位を主に含む炭素鎖であるエラストマーを意味するものと理解すべきであると考えられる。
モノマーOは、当業者に既知の任意のオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン又はイソブチレンが起源であってよく、これらのモノマーは、任意に直鎖又は分岐アルキル基で置換されていてもよい。
優先的には、Oはエチレン単位[-CH2-CH2-]であり、この優先的な場合、官能化オレフィンエラストマーは官能化エチレンエラストマーである。
Oのモル含量は50%より大きい。より正確には、Oのモル含量は50%と95%の間、優先的には65%と85%の間である。従って、本発明の目的では、オレフィンエラストマーは、5~50モル%の非オレフィン単位、すなわちO以外の単位をも含むコポリマーである。
【0022】
これらの非オレフィン単位は、部分的又は全体的に、本発明の要件に必要なRと表される官能基を有する単位で構成される。
前述の官能化オレフィンエラストマーの単位Rの含量(モル%)は、本発明の特定実施形態に応じて大幅に変動し得るが、好ましく0.1%~50%の範囲内、優先的には0.3%~50%の範囲内、さらに優先的には0.3%~30%の範囲内、非常に優先的には2.5%~30%の範囲内である。単位Rの含量が0.1%未満であるとき、目標とする技術的効果が不十分であるリスクがあり、一方で50%を超えると、エラストマーはもはや主にオレフィン性でないことになる。
全ての非オレフィン単位が単位Rであるわけではない場合、A’と表される他の単位が炭素鎖に存在し、その結果モノマーO、R及びA’によって占められる総モル含量は100%に等しい。官能化オレフィンエラストマーの調製に役立つ非オレフィンモノマーは、不飽和をもたらさない非オレフィンモノマー及び重合されると、エラストマー鎖に支えられる不飽和をもたらすモノマー(ジエンモノマー以外)から選択され得る。
不飽和をもたらさない非オレフィンモノマーは、本質的にビニル及びアクリル/メタクリルモノマーである。例えば、該モノマーは、スチレン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリロニトリル、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルから選択可能であり、これらのモノマーは、任意にアルキル若しくはアリール基又は他の官能化基で置換されていてもよい。
また、例えば、共重合によって不飽和を有するオレフィンエラストマーを調製するために役立つ非ジエンモノマーは、不飽和エラストマーを形成するために当業者に既知の全てのもの、例えばジシクロペンタジエニルオキシエチルメタクリラートである。
【0023】
-極性官能基
本発明によれば、ゴム組成物は、極性官能基を含む少なくとも1種の官能化エラストマーをベースとする。エラストマー中の極性官能基の存在は、エラストマーの構造の残部、例えば、ジエン又はオレフィンとは無関係に、一般式(I)のフェノール化合物によるその架橋、また全体で改善された接着特性を有することを可能にする。
本発明の目的では、用語「極性官能基」は、非対称に配置された反対電荷(すなわち部分的正電荷及び部分的負電荷)に起因する非ゼロ双極子モーメントを有する官能基を意味する。極性官能基中の極性結合は、例えば、炭素原子と、O、N、F及びCl等の相対的に高い電気陰性度を有する他の原子との間の結合であり得る。
好ましくは、官能化エラストマーの極性官能基は、ハロゲン、酸素及び窒素から選択される少なくとも1個の原子を含む。好ましくは、官能化エラストマーの極性官能基は、ヒドロキシル、カルボニル、イミン及びエポキシ基から選択される基を含む。
ヒドロキシル、カルボニル、イミン及びエポキシ基は当業者に周知である。用語「ヒドロキシル基」は、式-OHの基を意味する。用語「カルボニル基」は、二重結合を介して酸素原子に結合された炭素原子を含む基を意味する。用語「イミン基」は、二重結合を介して窒素原子に結合された炭素原子を含む基を意味する。用語「エポキシ基」は、炭素-炭素結合と交差して架橋された酸素原子を含む基を意味する。
エラストマーに存在する官能基は、当業者に既知のように、共重合又は重合後修飾によって得られ、鎖の骨格によって直接支えられるか、又は製造方法によっては側鎖基によって支えられることになる。
好ましくは、本発明のゴム組成物の官能化エラストマーは、一級アルジミン、アルデヒド及びエポキシ基から選択される少なくとも1種の基、優先的にはエポキシ基を含む。
用語「一級アルジミン」は、式-(CH)=NHのイミン型の一価基を意味する。用語「アルデヒド」は、式-(CH)=Oのカルボニル型の一価基を意味する。
【0024】
-エポキシド-官能化エラストマー
極性官能基を含む官能化エラストマーは、好ましくはエポキシ基を含む官能化エラストマーである。優先度なしで「エポキシ化エラストマー」又は「エポキシド-官能化エラストマー」と呼ばれるエポキシ基を含む官能化エラストマーは、既知のように、室温(20℃)で固体であり;用語「固体」は、最も遅くて24時間後に、単独では重力の影響下及び室温(20℃)で、それが中に存在している容器の形を最終的に取る能力を持たないいずれの物質をも指す。
エポキシ化エラストマーのエポキシ化度(モル%)は、本発明の特定実施形態に応じて大幅に変動し得るが、好ましくは0.1%~80%の範囲内、優先的には0.1%~50%の範囲内、さらに優先的には0.3%~50%の範囲内である。エポキシ化度が0.1%未満であるとき、目標とする技術的効果が不十分であるリスクがあり、一方で80%を超えると、ポリマー固有の特性が劣化する。これらの全ての理由のため、官能化度、特にエポキシ化度は、さらに優先的には0.3%~30%の範囲内、優先的には2.5%~30%の範囲内である。
【0025】
エポキシ化ジエンエラストマーは、例えば、既知のように等価の非エポキシ化ジエンエラストマーのエポキシ化によって、例えばクロロヒドリン若しくはブロモヒドリンに基づくプロセス又は過酸化水素、アルキルヒドロペルオキシド若しくは過酸(例えば過酢酸又は過ギ酸)に基づくプロセスによって得ることができ;特にKautsch. Gummi Kunstst., 2004, 57(3), 82を参照されたい。その結果エポキシ官能基はポリマー鎖中にある。特にエポキシ化天然ゴム(ENRと略記)に言及することができ;該ENRは、例えば、Guthrie Polymer社によって商品名ENR-25及びENR-50(それぞれ25%及び50%のエポキシ化度)で販売されている。エポキシ化BRsも、それら自体周知であり、例えばSartomer社によって商品名Poly Bd(例えば、Poly Bd 605E)で販売されている。エポキシ化SBRsは、当業者に周知のエポキシ化技術によって調製可能である。
エポキシ基を有するジエンエラストマーは、例えば、US2003/120007又はEP0763564、及びUS6903165又はEP1403287に記載されている。
優先的には、エポキシ化ジエンエラストマーは、エポキシ化天然ゴム(NRs)(ENRsと略記)、エポキシ化合成ポリイソプレン(IRs)、優先的には90%より大きい含量のcis-1,4-結合を有するエポキシ化ポリブタジエン(BRs)、エポキシ化ブタジエン/スチレンコポリマー(SBRs)及びこれらのエラストマーの混合物から成る群より選択される。
【0026】
エポキシ化ジエンエラストマーは、エポキシ側鎖官能基を有してもよい。この場合、それらは、重合後修飾によって(例えば、J. Appl. Polym. Sci., 1999, 73, 1733参照)、又はジエンモノマーとエポキシ官能基を有するモノマー、特にエポキシ官能基を含むメタクリル酸エステル、例えばメタクリル酸グリシジルのラジカル共重合によって(このラジカル重合、特に塊状、溶液又は分散媒、特に分散系、乳化又は懸濁重合はポリマー合成の当業者に周知であり;例えば、下記文献:Macromolecules 1998, 31, 2822に言及し得る)又はエポキシ官能基を有するニトリルオキシドの使用によって得ることができる。例えば、US2011/0098404は、1,3-ブタジエン、スチレン及びメタクリル酸グリシジルの乳化共重合について記載している。
エポキシ化オレフィンエラストマー及びそれらを得るためのプロセスは当業者に周知である。エポキシ基を有するオレフィンエラストマーは、例えば、EP0247580及びUS5576080に記載されている。Arkema社は、商品名Lotader AX8840及びLotader AX8900でエポキシ化ポリエチレンを市販している。
【0027】
エポキシ官能基は炭素骨格によって直接支えられることがあり、そのときは主に、共重合後に、最初に存在する炭素-炭素二重結合のエポキシ化によって得られる。不飽和ポリマーのこのエポキシ化は当業者に周知であり、例えば、クロロヒドリン又はブロモヒドリンに基づくプロセス、直接酸化プロセス又は過酸化水素、アルキルヒドロペルオキシド若しくは過酸(例えば過酢酸又は過ギ酸)に基づくプロセスによって行なうことができる。
エポキシ官能基は、ペンダントであってもよく、そのときはオレフィン(このモノマーは、例えば、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル又はビニルグリシジルエーテルであり得る)との共重合に関与するモノマーに既に存在しているか又はペンダント官能基の共重合後修飾によって得られる。
エポキシ化オレフィンエラストマーは、非常に多くの場合にマイナス(すなわち0℃未満)であるTgを有する。
エポキシ化オレフィンエラストマーは、少なくとも10000g/モル、優先的には少なくとも15000g/モル、かつ1500000g/モル以下の数平均分子量(Mn)を有する。Mw/Mn(Mwは質量平均分子量である)に等しい多分散指数PDIは、1.05と11.00の間である。
【0028】
好ましくは、かつ要約すれば、エポキシ官能基を含むオレフィンエラストマーは、このように少なくとも50%(モルで)のオレフィンモノマー単位を含有し、2種以上、優先的には2~5種、さらに優先的には2又は3種のいくつかの異なるモノマーとのコポリマーである。このコポリマーは、共重合又はエラストマーの重合後修飾によって得ることができる。共重合又は重合後修飾によって得られる、オレフィンコポリマーに存在するエポキシ官能基は、調製方法に応じて、例えば、共重合後のエラストマー鎖に存在するジエン官能のエポキシ化又は任意の他の修飾によって、鎖の骨格によって直接支えられるか又は側鎖基によって支えられることになる。
【0029】
補強フィラー
タイヤの製造に使用し得るゴム組成物を補強するその能力のために知られるいずれのタイプの補強フィラーをも、例えば、カーボンブラック等の有機フィラー、シリカ等の補強無機フィラー、又はこれらの2タイプのフィラーのブレンド、特にカーボンブラックとシリカのブレンドを利用することができる。
全てのカーボンブラック、特にタイヤに通常使用されるHAF、ISAF又はSAF型のブラック(「タイヤグレード」ブラック)がカーボンブラックとして適している。後者の中で、さらに特に100、200又は300シリーズ(ASTMグレード)の補強用カーボンブラック、例えばN115、N134、N234、N326、N330、N339、N347又はN375ブラック、或いは目標とする用途によっては、より高級シリーズのブラック(例えばN660、N683又はN772)に言及する。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形態でイソプレンエラストマーに既に組み込まれていることもある(例えば、特許出願WO97/36724及びWO99/16600参照)。カーボンブラックのBET比表面積は、規格D6556-10に従って測定される[多点(最小5点)法-ガス:窒素-相対圧力P/P0範囲:0.1~0.3]。
【0030】
本特許出願では、用語「補強無機フィラー」は、定義により、中間のカップリング剤、タイヤ製造を意図したゴム組成物以外のいずれの手段もなしで、それ単独で補強する能力があり、すなわち、その補強役割において、通常のタイヤグレードのカーボンブラックに取って代わることができる、カーボンブラックの対語として「ホワイトフィラー」、「クリアフィラー」又は「非ブラックフィラー」としても知られるいずれの無機又は鉱物フィラー(その色及びその起源、天然又は合成に関係なく)をも意味するものと理解すべきであり;このようなフィラーは一般的に、既知のように、その表面のヒドロキシル(-OH)基の存在を特徴とする。
シリカ質タイプの鉱物フィラー、特にシリカ(SiO2)、又はアルミナ質タイプ、特にアルミナ(Al2O3)が特に補強無機フィラーとして適している。使用するシリカは、当業者に既知のいずれの補強用シリカ、特に両方とも450m2/g未満、好ましくは30~400m2/gであるBET表面積及びCTAB比表面積を有する任意の沈降シリカ又はヒュームドシリカであってよい。高分散性沈降シリカ(HDSs)として、例えば、Degussa社のUltrasil 7000及びUltrasil 7005シリカ、Rhodia社のZeosil 1165MP、1135MP及び1115MPシリカ、PPG社のHi-Sil EZ150Gシリカ、Huber社のZeopol 8715、8745及び8755シリカ又は特許出願WO03/16837に記載の高比表面積を有するシリカを挙げる。
【0031】
補強無機フィラーが提供される物理的状態は、それが粉末、ミクロパール、顆粒、ビーズの形態又は他のいずれの適切な高密度化形態であろうと重要でない。言うまでもなく、用語「補強無機フィラー」は、異なる補強無機フィラー、特に高分散性シリカ質及び/又はアルミナ質フィラーの混合物をも指す。
使用する補強無機フィラーは、特にシリカである場合、好ましくは45m2/gと400m2/gの間、さらに優先的には60m2/gと300m2/gの間のBET表面積を有する。
優先的には、補強フィラー(カーボンブラック及び/又は補強無機フィラー、例えばシリカ)の総含量は、20phrと200phrの間、さらに優先的には30phrと150phrの間であり、至適含量は、既知のように、目標とする特定用語に応じて異なり:例えば、自転車のタイヤに関して期待される補強レベルは、当然に、持続的に高速で走ることができるタイヤ、例えばオートバイのタイヤ、乗用車のタイヤ又はヘビーデューティービークル等のユーティリティービークル用タイヤに関して必要とされる補強レベルより低い。
【0032】
本発明の優先的実施形態によれば、30phrと150phrの間、さらに優先的には50phrと120phrの間の有機フィラー、特にカーボンブラック、及び任意的にシリカを含む補強フィラーを利用し;シリカが存在するときは、20phr未満、さらに優先的には10phr未満(例えば0.1phrと10phrの間)の含量でシリカを使用するのが好ましい。この優先的実施形態は、特に組成物の主エラストマーがエポキシ化イソプレンゴム、さらに特にエポキシ化天然ゴムであるときに好ましい。
これとは別に、本発明の別の優先的実施形態によれば、30phrと150phrの間、さらに優先的には50phrと120phrの間の無機フィラー、特にシリカ、及び任意的にカーボンブラックを含む補強フィラーを利用し;カーボンブラックが存在するときは、20phr未満、さらに優先的には10phr未満(例えば0.1phrと10phrの間)の含量でカーボンブラックを使用するのが好ましい。この優先的実施形態は、特に組成物の主エラストマーがエポキシ化イソプレンゴム、さらに特にエポキシ化天然ゴムであるときも好ましい。
【0033】
好ましくは、本発明のゴム組成物は、カップリング剤(又は結合剤)がない。「ある化合物がない組成物」という用語は、組成物に意図的に導入されたこの化合物を組成物が含まず、この化合物が存在する場合、それは、例えば、組成物の製造プロセスに関して痕跡の形態又はそれが構成されている元素の形態で存在することを意味する。例えば、この化合物がない組成物は、0.2phr以下、好ましくは0.1phr以下、好ましくは0.05phr以下の量のこの化合物を含む。
本セクションに記載の補強無機フィラーに等価なフィラーとして別の天然の、特に有機性の補強フィラーを利用できるが、この補強フィラーはシリカ等の無機層で覆われているか、或いは、被覆剤又はカップリング剤の存在下又は非存在下でフィラーとエラストマーの間の結合を確立できるようにする官能部位、特に、ヒドロキシル部位をその表面に含むことを条件とすることを当業者なら理解するであろう。
【0034】
フェノール化合物
本発明の組成物は、下記一般式(I)
の少なくとも1種のフェノール化合物を含む。
【0035】
【0036】
(式中:
-G1は、ヒドロキシル、カルボキシル若しくはアルコキシ基又は水素原子を表し;
-G2は、ヒドロキシル基又は水素原子を表し;
-G3は、水素原子又は下記:ヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロゲノカルボニル、アルキル、カルボキシルアルキル、カルボキシルアルケニル、カルボニルアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールカルボニル、アミノ、アミノアルキルの中から選択される基を表し;
-置換基G1~G3の少なくとも1つは酸素原子を含む)
の少なくとも1種のフェノール化合物を含む。
【0037】
本説明では、用語「フェノール化合物」は、一般式(I)の芳香族化合物を表す。
用語「カルボキシル基」又は「カルボン酸官能基」は、式-COOHの基を意味し、式中、炭素原子は、二重結合を介して酸素原子に結合し、単結合を介してヒドロキシル基-OHに結合している。
用語「ヒドロゲノカルボニル基」は、式-CHOの基を意味し、式中、炭素原子は、二重結合を介して酸素原子に結合し、単結合を介して水素原子に結合している。
用語「カルボキシアルケニル基」は、式-(CnH2n-2)-COOHの基を意味する。用語「カルボニルアルキル基」は、式-(CnH2n)-CHOを意味する。
用語「アリールオキシ基」は、一般式-O-アリールの基を意味し、式中、アリール基は、酸素原子に結合している。用語「アリールチオキシ基」は、一般式-S-アリールの基を意味し、式中、アリール基は、硫黄原子に結合している。用語「アリールカルボニル基」は、一般式-CO-アリールの基を意味し、式中、アリール基は、カルボニル基に結合している。
用語「アミノ基」は、式-NH2の基を意味する。
用語「アミノアルキル基」は、式-CnH2n-NH2の基を意味する。
【0038】
前述の定義において、nは、有利には1と15の間、優先的には1と10の間、非常に優先的には1と5の間、好ましくは1と3の間の整数である。
好ましくは、G3は、水素原子又は下記基:ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールカルボニルから選択される基を表す。
好ましくは、一般式(I)のフェノール化合物は、互いにメタ位に少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有する少なくとも1つの芳香核を含み、ヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対する2つの位置オルトは置換されていない。
優先的には、一般式(I)のフェノール化合物は、好ましくは互いにメタ位に少なくとも3つのヒドロキシル官能基を有し、各ヒドロキシル官能基に対する2つの位置オルトは、優先的には置換されていない。
好ましいアレンジメントでは、G3は、下記基:アリール、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールカルボニルから選択される基を表す。好ましくは、このアレンジメントによれば、一般式(I)のフェノール化合物の少なくとも2つの芳香核は、互いにメタ位に少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有し、少なくとも1つの芳香核、好ましくは各芳香核のヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対する2つの位置オルトは置換されていない。
非常に好ましくは、一般式(I)のフェノール化合物は、レゾルシノール、フロログルシノール、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン及びこれらの化合物の混合物から成る群より選択される。
【0039】
本発明のゴム組成物は、有利には0.1~60phr、好ましくは0.1~50phr、好ましくは0.1~30phr、非常に好ましくは2~30phr、非常に好ましくは4~30phrのフェノール化合物を含む。0.1phr未満では、フェノール化合物は、本発明のゴム組成物の架橋に対して注目に値する効果を及ぼさない。当業者なら、架橋性ゴム組成物に望ましい特性、特にその剛性及びそのヒステリシス損失の関数として、正確な含量を調整する。
驚いたことに、一般式(I)の少なくとも1種の化合物の存在は、本発明のゴム組成物の架橋を可能にする。
同様に驚いたことに、特に一般式(I)の数種のフェノール化合物を使用すると、補強コードへの本発明の組成物の非常に良好な接着が得られる。従って、好ましくは、本発明の組成物は、一般式(I)の少なくとも2種のフェノール化合物を含み、これらの2種のフェノール化合物の少なくとも1つは、優先的には少なくとも2つのヒドロキシル官能基を含む。
【0040】
アルデヒド
好ましくは、本発明の組成物は、特許出願WO2016/116468、WO2017/103403、WO2017/103404及びWO2017/103406に定義されたアルデヒド化合物(これらの特許出願において、それぞれ、式(A)のアルデヒド、式W5の化合物、式Wのアルデヒド及び式W2の化合物と示された化合物)を含んでもよい。
非常に好ましくは、本発明の組成物は、1,3-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド及びその混合物、優先的には1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒドから成る群より選択されるアルデヒドを含んでよい。
この化合物を添加すると、本発明の組成物が架橋された時点で、ヒステリシス特性を不利にすることなく、その剛性を改変できるようになる。
【0041】
種々の添加剤
本発明のゴム組成物は、当業者に知られ、かつタイヤ用のゴム組成物、特に本特許出願で後に定義する内層の組成物に一般的に使用される通常の添加剤、例えば可塑剤(可塑化用オイル及び/又は可塑化用樹脂)、前述のもの以外の補強フィラー若しくは非補強フィラー、顔料、保護剤、例えばオゾン劣化防止ワックス、化学的オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、疲労防止剤又は補強用樹脂(例えば、特許出願WO02/10269に記載)の全て又はいくつかを含んでもよい。
これらの組成物は、既知のように、ゴムマトリックス中のフィラーの分散の改善及び組成物の粘度の低減のおかげで、未加工状態で処理される組成物の能力を改善できる加工助剤を含有することもでき、これらの薬剤は、例えば加水分解性シラン、例えばアルキルアルコキシシラン(例えばオクチルトリエトキシシラン又はシランオクテオ(silane octeo))、ポリオール、ポリエーテル、一級、二級若しくは三級アミン、又はヒドロキシル化若しくは加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
驚いたことに、一般式(I)の化合物は、本発明のゴム組成物の架橋を可能にする。すなわち、この化合物は、硬化することによって、組成物の剛性を高め、かつその弾性を高めることを可能にする。
従って、本発明のゴム組成物は極性官能基を含む官能化エラストマーに通常付随する架橋系がない。特に、本発明のゴム組成物は、アルキル-イミダゾール及び下記一般式(P1)のポリカルボン酸を同時には含まない。
【0042】
【0043】
Aは、共有結合を表すか、又は少なくとも1個の炭素原子、優先的には1~1800個の炭素原子を含む炭化水素ベース基を表し、この基は任意に置換されていてもよく、任意に1個以上のヘテロ原子で中断されていてもよい。
好ましくは、本発明のゴム組成物は、20phr未満、優先的には10phr未満、非常に優先的には2phr未満の一般式(P1)のポリカルボン酸を含み、非常に好ましくは一般式(P1)のいずれのポリカルボン酸をも含まない。好ましくは、本発明のゴム組成物は、2phr未満、優先的には1phr未満、非常に優先的には0.2phr未満のアルキルイミダゾールを含み、非常に好ましくはいずれのアルキルイミダゾールをも含まない。
好ましくは、本発明のゴム組成物は、加硫系がないか又は1phr未満、好ましくは0.5phr未満、さらに優先的には0.2phr未満の加硫系を含有する。従って、本発明のゴム組成物は、優先的には分子硫黄がないか又は1phr未満、好ましくは0.5phr未満、さらに優先的には0.2phr未満の分子硫黄を含有する。同様に、本組成物は、優先的には当業者に既知のいずれの加硫促進剤又は活性化剤もないか又は1phr未満、好ましくは0.5phr未満、さらに優先的には0.2phr未満の加硫促進剤又は活性化剤を含有する。特に、本発明のゴム組成物は、優先的には亜鉛若しくは酸化亜鉛がないか又は1phr未満、好ましくは0.5phr未満、非常に好ましくは0.2phr未満の亜鉛若しくは酸化亜鉛を含有する。
同様に、本発明のゴム組成物は優先的には、当業者に知られ、かつ当業者に既知のその効果が接着の改善であるコバルト塩がないか、又は1phr未満、好ましくは0.5phr未満、さらに優先的には0.2phr未満、非常に優先的には0.1phr未満のコバルト塩を含有する。
このように、驚いたことに、コバルト塩の使用を必要とせずに補強コードへの本発明の組成物の非常に良好な接着が得られる。
【0044】
ゴム組成物の調製
本発明のゴム組成物は、当業者に周知の以下の2つの連続調製段階を用いて適切なミキサーで製造可能である。
-熱機械的作業又は混練の第1段階であり、単一の熱機械的工程で行なうことができ、その間に全ての必要成分、特にエラストマーマトリックス、フィラー及び任意的な種々の他の添加剤を適切なミキサー、例えば標準的内部ミキサー(例えば「バンバリー」型)に導入する。エラストマーへのフィラーの組み入れは、熱機械的に混練しながら1回で又は複数回に分けて行なってよい。例えば、特許出願WO97/36724及びWO99/16600に記載されているように、マスターバッチの形態で全体的又は部分的にフィラーが既にエラストマーに組み込まれている場合、マスターバッチを直接混練し、必要に応じて、本組成物に存在する、マスターバッチの形態でない他のエラストマー又はフィラー、及びまた任意的な種々の他の添加剤を組み入れる。
第1の段階は、110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温で、一般的に2分と10分の間の時間にわたって行なわれる。
【0045】
-第2の機械的作業であり、第1の段階中に得られた混合物を外部ミキサー、例えばオープンミルで、典型的に110℃未満、例えば40℃と100℃の間のより低い温度まで冷却した後に行なう。次にフェノール化合物を組み入れてから全体を例えば2分と15分の間の数分間混合する。
このようにして得られた最終組成物は、特に研究室の特徴づけのために引き続き例えばシート又はプラークの形態でカレンダー仕上げするか、又はタイヤ製造に用いるゴム半完成品(又はプロファイル要素(profiled element))の形態に押し出してよい。
本組成物は、未加工状態(架橋前)若しくは硬化状態(架橋後)のどちらであってもよく、又はタイヤに使用可能な半完成製品であり得る。
【0046】
複合材料
本発明は、少なくとも補強要素及び本発明のゴム組成物をベースとする複合材料にも関する。
「少なくとも補強要素及び本発明の組成物をベースとする」複合材料という表現は、補強要素及び前記組成物を含む複合材料を意味し、複合材料製造の種々の段階中、特に組成物の架橋中又は組成物の架橋前に複合材料の製造中に、組成物が補強要素の表面と反応することができたことを意味するものと理解すべきである。
前記補強要素は糸状要素である。それは全体的又は部分的に金属又は織物であり得る。用語「糸状要素」は、その断面の最大寸法の少なくとも10倍の長さを有する要素を指し、前記断面の形状:円形、楕円形、長方形、多角形、特に矩形又は四角形又は卵円形は問わない。矩形断面の場合、糸状要素はバンド形状を有する。
特に、前記補強要素は、織物性のもの、すなわち、有機材料、特にポリマー材料、又は無機材料、例えばガラス、石英、玄武岩又は炭素で作られる可能性がある。ポリマー材料は、熱可塑性タイプのもの、例えば脂肪族ポリアミド、特にポリアミド6,6、及びポリエステル、特にポリエチレンテレフタラートであり得る。ポリマー材料は、非熱可塑性タイプのもの、例えば芳香族ポリアミド、特にアラミド、及びセルロース、天然又は人工の、特にレーヨンであり得る。
【0047】
特定アレンジメントでは、前記補強要素は金属表面を含む。
補強要素の金属表面は、前記要素の表面の少なくとも一部、優先的には全てを構成し、本発明の組成物と直接接触するように意図される。好ましくは、補強要素は金属であり、すなわちそれは金属材料で形成される。
本発明の複合材料は、補強要素の少なくとも一部、優先的には前記要素の全てを覆う。
本発明の第1の異形によれば、補強要素の金属表面は、補強要素の残部とは異なる材料で作られる。他言すれば、補強要素は、金属表面を構成する金属層で少なくとも部分的に、優先的には全体的に覆われている材料で作られる。少なくとも部分的に、優先的には全体的に金属表面で覆われている材料は、金属性又は非金属性、好ましくは本質的に金属性である。
本発明の第2の異形によれば、補強要素は1種かつ同一の材料で作られ、この場合、補強要素は、金属表面の金属と同一の金属で作られる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、金属表面は、鉄、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、コバルト、ニッケル及びこれらの金属の少なくとも1つを含む合金から成る群より選択される金属を含む。合金は、例えば、二元又は三元合金、例えば、鋼、青銅及び黄銅であってよい。好ましくは、金属表面は、鉄、銅、スズ、亜鉛及びこれらの金属の少なくとも1つを含む合金から成る群より選択される金属を含む。さらに優先的には、金属表面は、鋼、黄銅(Cu-Zn合金)、亜鉛及び青銅(Cu-Sn合金)から成る群より選択される金属、さらに好ましくは黄銅及び鋼から成る群より選択される金属を含む。非常に好ましくは、金属表面は黄銅で作られる。
特定金属が周囲空気との接触下で酸化にさらされると、金属は部分的に酸化され得る。
金属表面が鋼で作られるとき、鋼は、優先的には炭素鋼又はステンレス鋼である。鋼が炭素鋼であるとき、その炭素含量は、好ましくは0.01%と1.2%の間又は0.05%と1.2%の間、又は0.2%と1.2%の間、特に0.4%と1.1%の間である。鋼がステンレス鋼であるとき、それは好ましくは少なくとも11%のクロム及び少なくとも50%の鉄を含む。
【0049】
好ましい実施形態によれば、複合材料は、上記定義どおりのいくつかの補強要素及び補強要素が埋め込まれたカレンダー仕上げゴムを含む補強製品であり、カレンダー仕上げゴムは、本発明のゴム組成物から成る。この実施形態によれば、補強要素は、一般的に主方向に沿って隣り合わせに配置される。タイヤに想定される用途では、複合材料は、このようにタイヤ補強の構成要素となり得る。
本発明の複合材料は、未加工状態(ゴム組成物の架橋前)又は硬化状態(ゴム組成物の架橋後)であってよい。複合材料は、補強要素を本発明のゴム組成物と接触させた後に硬化される。
複合材料は、下記工程:
-本発明の組成物の2つの層を作る工程、
-これらの2つの層間に補強要素(複数可)を正確に置くことによって2つの層で補強要素を挟む工程、
-必要に応じて、複合材料を硬化させる工程
を含むプロセスによって製造可能である。
【0050】
これとは別に、複合材料は、層の一部に補強要素を正確に置き、この層を次にそれ自体の上に折り畳んで補強要素を覆い、このようにしてその全長又はその長さの一部にわたって補強要素を挟むことによって製造してもよい。
カレンダー仕上げによって層を作り出してよい。複合材料の硬化中に、ゴム組成物が架橋される。
複合材料がタイヤの補強要素として用いるよう意図されるとき、複合材料の硬化は、一般的にタイヤケーシングの硬化中に起こる。
【0051】
完成品又は半完成品及びタイヤ
本発明の主題は、本発明の組成物を含む完成品又は半完成品でもある。完成品又は半完成品は、ゴム組成物を含むいずれの物品であってもよい。非限定様式で言及し得る例としては、バルーン、コンベアベルト、靴底、及び空気式又は非空気式タイヤケーシングが挙げられる。
本発明の別の主題であるタイヤは、本発明の組成物又は複合材料を含むという必須の特徴を有する。タイヤは、未加工状態(ゴム組成物の架橋前)又は硬化状態(ゴム組成物の架橋後)であってよい。一般的に、タイヤの製造中に、組成物又は複合材料は、未加工状態(すなわちゴム組成物の架橋前)で、タイヤを硬化させる工程の前にタイヤの構造体の中に正確に置かれる。
本発明は、特に、乗用車タイプの自動車、SUVs(スポーツユーティリティービークル)、又は二輪車(特にオートバイ)、又は航空機、或いはトラック、ヘビーデューティービークル、すなわち地下鉄、バス、ヘビーロード輸送車両(ローリー、トラクター、トレーラー)又はオフロードビークル、例えば重量農業用車両又は建設車両等から選択される産業車両に備え付けることを意図したタイヤに関する。
【0052】
タイヤ内には、以下の3タイプの領域を定義することができる。
・周囲空気と接触している半径方向の外側領域であり、この領域は、本質的にタイヤのトレッド及び外部サイドウォールから成る。外部サイドウォールは、クラウンからビードまで伸長するカーカス補強の領域を全体的又は部分的に覆うように、クラウンとビードの間に、タイヤの内部空洞に対してカーカス補強の外側に位置するエラストマー層である。
・膨張ガスと接触している半径方向の内側領域であり、この領域は一般的に、膨張ガスに対して気密性(leaktight)である層から成り、この層は気密性内層又はインナーライナーとして知られることもある。
・タイヤの内部領域、すなわち、外側領域と内側領域の間の領域。この領域は、ここではタイヤの内層と呼ばれる層又はプライを含む。例えば、カーカスプライ、トレッド副層、タイヤベルトプライ又はタイヤの周囲空気若しくは膨張空気と接触していない他の任意の層がある。
本説明で定義した組成物は、タイヤの内層に特によく適している。
従って、本発明は、本発明の組成物又は複合材料を含む内層を含むタイヤにも関する。本発明によれば、内層は、カーカスプライ、クラウンプライ、ビード-ワイヤーフィリング、クラウンフィート、デカップリング層、トレッド下層及びこれらの内層の組み合わせから成る群より選択され得る。好ましくは、内層は、カーカスプライ、クラウンプライ、ビード-ワイヤーフィリング、クラウンフィート、デカップリング層、及びこれらの内層の組み合わせから成る群より選択される。
【実施例0053】
実施例
測定方法
-引張試験
この試験は、1988年9月の仏国規格NF T 46-002に従って行なった。全ての引張測定は温度(23±2℃)及び湿度測定(50%±5%の相対湿度)の標準条件下で、仏国規格NF T 40-101(1979年12月)に従って行なった。
第2の伸び(すなわち順応後)で、試験片の初期断面について計算される公称セカントモジュラス(又は見掛けの応力、MPa)を10%及び100%の伸び率で測定し、それぞれ、MA10及びMA100と表す。これらの全ての測定は、硬化した(又は架橋した)試験片に対して行なう。
結果は、基数100で表し、値100をコントロールに割り当てる。100より大きい結果は、検討中の実施例の組成物がコントロールの剛性より大きい剛性を有することを意味する。
【0054】
-転がり抵抗の評価
試験組成物によって誘発される転がり抵抗は、2000年4月の規格DIN 53-512に記載されているように、その上に初期エネルギーが課されたサンプルの6回目の反跳で復元されたエネルギーの、温度60℃における測定によるエネルギー損失を測定することによって評価する。この測定はP60と表され、下記のように計算され:P60(%)=100×(E0-E1)/E0、E0は初期エネルギーを表し、E1は復元エネルギーを表す。この値が小さいほど、試験サンプルは小さいヒステリシス損失を示す。結果をコントロールに対して基数100で表し、100未満の値は、より低いエネルギー損失に相当する。
【0055】
ゴム組成物の調製
下記手順を用いて様々なゴム組成物を調製する:官能化ポリマー、次に混合物のフェノール化合物以外の全ての他の成分を連続的に内部ミキサーに導入し(最終充填度:容積で約70%)、その初期容器温度は約60℃である。次に最大「降下」温度が150℃に達するまで1工程で熱機械的作業を行なう。このようにして得られる混合物を回収し、0フェノール化合物を組み入れて全体を外部ミキサー(ホモフィニッシャー(homofinisher)で30℃にて混合しながら冷却する。
調製した組成物を表1に示す。
【0056】
試験片の調製
このように調製したゴム組成物を用いて、下記プロトコルに従って試験片の形の複合材料を作製する。
互いに硬化前に加えられる2つのプラークから成るゴムのブロックを調製する。ブロックの2つのプラークは、同一のゴム組成物から成る。ブロックの調製中、未加工状態で2つのプラーク間に、等距離離れ、かつこれらのプラークの両側に飛び出させたまま、金属補強要素を捕捉させ、この金属補強要素の端部は、その後の引張試験のために十分な長さを有する。次に金属補強要素を含むグロックを目標とする試験条件に適合した型に入れ、当業者の自由裁量に任せ;例として、本ケースでは、ブロックを5.5トンの圧力下で組成物に応じて50分~100分の範囲の時間にわたって170℃で硬化させる。
各金属補強要素は、0.7%の炭素を含有し、直径30/100で、一緒にねじった鋼製の2本のワイヤーから成り、黄銅コーティングは63%の銅を含む。
【0057】
接着試験
硬化の結論に関して、このように架橋ブロック及び金属補強要素で形成された試験片を、規格ASTM D 2229-02に記載の方法に従って、各断面を別個に所与の速度及び所与の温度で(例えば、本ケースでは、100mm/分及び周囲温度で)測定できるように適合させた引張試験機のジョーに入れる。
試験片から該断面を剥がすための「ストリッピング」力を測定することによって接着レベルを特徴づける。
調べた試験片の性質と同一の性質の金属補強要素を含有し、かつ表1に示すゴム組成物「T1」を含有するコントロール試験片に対して基数100で結果を表す。
任意に100と設定したコントロール試験片の値より大きい値は、改善された結果、すなわちコントロール試験片のストリッピング力より大きいストリッピング力を示す。
試験片T0は、いずれの架橋系又はいずれのフェノール化合物をも含まない。架橋しないことが観察され、結果として、硬化した試験片に関するどの特性も測定できない。試験片T1は、エポキシ化天然ゴム組成物に標準的な架橋系を含む。
本発明の組成物は、それらが架橋されたことを示す硬化状態の剛性及びヒステリシス損失特性を有することが分かる。接着試験を行なった組成物C2、C5及びC6は、良好な接着特性をも示す。
【0058】
【0059】
全ての組成はphrで与えてある;-:測定不可;n.m.:測定せず
(1) Guthrie Polymer社のエポキシ化天然ゴム、ENR-25
(2) N326
(3) N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン(Flexsys社のSantoflex 6-PPD)
(4) Sigma-Aldrich社によって供給された
(5) 1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、CAS=13750-62-4、Sigma-Aldrich