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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177213
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】口腔内センシング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20241212BHJP
   A61B 5/1459 20060101ALI20241212BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20241212BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241212BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/1459
A61B5/02 310B
A61B5/11 320
A61B5/11 300
A61B5/01 250
A61B5/00 102C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024168328
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2020219158の分割
【原出願日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2020044440
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592019213
【氏名又は名称】学校法人昭和大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宜史
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 亮介
(72)【発明者】
【氏名】槇 宏太郎
(72)【発明者】
【氏名】塩津 瑠美
(57)【要約】
【課題】製造が容易であり、かつ、使用上の安全性にも優れた、口腔内センシング装置の提供。
【解決手段】口腔内に設置されるセンシング装置であって、回路基板に電子部品を搭載した電子機器2と、電子機器すべてを覆う第一の歯科用樹脂材料3と、第一の歯科用樹脂材料3全体を覆う第二の歯科用樹脂材料4と、第一の歯科用樹脂材料及び第二の歯科用樹脂材料で覆われた電子機器を収納する第一のくぼみを持った口腔内器具1とを備え、第二の歯科用樹脂材料は、第一の歯科用樹脂材料によって全体が覆われた電子機器と、第一のくぼみとの隙間に設けられると共に、第一のくぼみの内側に対して接着され、第一のくぼみ又は第二の歯科用樹脂材料には、第一のくぼみに収納された電子機器を固定する突起1cが形成され、第一の歯科用樹脂材料及び第二の歯科用樹脂材料で覆われた電子機器は、突起が変形することで、口腔内器具から取り外し可能とされている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に設置されるセンシング装置であって、
回路基板に電子部品を搭載した電子機器と、
前記電子機器すべてを覆う第一の歯科用樹脂材料と、
前記第一の歯科用樹脂材料の全体を覆う第二の歯科用樹脂材料と、
前記第一の歯科用樹脂材料及び前記第二の歯科用樹脂材料で覆われた前記電子機器を収納する第一のくぼみを持った口腔内器具と、を備え、
前記第二の歯科用樹脂材料は、前記第一の歯科用樹脂材料によって全体が覆われた前記電子機器と、前記第一のくぼみとの隙間に設けられると共に、前記第一のくぼみの内側に対して接着され、
前記第一のくぼみ又は前記第二の歯科用樹脂材料には、前記第一のくぼみに収納された前記電子機器を固定する突起が形成され、
前記第一の歯科用樹脂材料及び前記第二の歯科用樹脂材料で覆われた前記電子機器は、前記突起が変形することで、前記口腔内器具から取り外し可能とされている、口腔内センシング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の口腔内センシング装置において、
前記第二の歯科用樹脂材料は、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面と対向する面の少なくとも2つ以上のコーナーの厚みが他の部分の厚みより薄く形成され、
前記突起は、前記第一のくぼみに形成され、
前記電子機器は、前記突起と、前記第二の歯科用樹脂材料のコーナーの厚みが他の部分の厚みより薄くなっている部分とで固定されている、口腔内センシング装置。
【請求項3】
請求項1に記載の口腔内センシング装置において、
前記第二の歯科用樹脂材料には、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に、第二のくぼみが設けられ、
前記突起は、前記第二の歯科用樹脂材料のうち前記第二のくぼみに相当する箇所に形成され、
前記電子機器は、前記第二のくぼみと前記突起とで固定されている、口腔内センシング装置。
【請求項4】
請求項1に記載の口腔内センシング装置において、
前記突起は、前記第二の歯科用樹脂材料に形成されていると共に、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に形成され、
前記第一のくぼみには、前記突起に相当する箇所にくぼみが形成され、
前記電子機器は、前記くぼみと前記突起とで固定されている、口腔内センシング装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の口腔内センシング装置において、
前記第二の歯科用樹脂材料は、前記第一の歯科用樹脂材料に比べて軟らかい材料で形成されている、口腔内センシング装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の口腔内センシング装置において、
前記第一の歯科用樹脂材料は、前記第二の歯科用樹脂材料と前記口腔内器具との間の密着力よりも、前記第一の歯科用樹脂材料と前記第二の歯科用樹脂材料との間の密着力が弱く、且つ前記第一の歯科用樹脂材料と前記電子機器との間の密着力が弱くなる材料で形成されている、口腔内センシング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内センシング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、口腔内に設置して生体情報を得る口腔内センシング装置が実用化されている。
従来、口腔内器具に生体モニタリング用センサ等の電子機器を装着する場合、口腔内器具、電子機器双方と接着力がある樹脂を用いて口腔内器具に装着していた。ここで電子機器のバッテリーの再充電等で口腔内器具から電子機器を取り出そうとした場合、樹脂が電子機器と強固に密着しているため取り除けず、無理に取り外そうとすると、電子機器を壊してしまうという課題があった。これを解決する手段として口腔内器具と電子機器を接着している樹脂を溶剤で溶解させ、電子機器を取り出すという方法も考えられる。しかし、電子機器にはバッテリーが搭載されているため、溶剤に浸漬させることで回路端子間が短絡し電子機器を破壊してしまうという課題も想定される。
このような課題に対して、口腔内器具の材料で電子機器全体を覆ってしまうという手段も可能である。例えば、特許文献1には、電子部品が実装された電子回路基板の、少なくとも耐湿性及び絶縁性が必要とされる部位に耐湿性及び絶縁性を有する保護被膜を形成する方法であって、樹脂を含む第1のコーティング剤を塗布して第1の被膜を形成する第1の工程と、前記第1のコーティング剤に増粘性を付与する添加剤を加えた第2のコーティング剤を塗布して第2の被膜を形成する第2の工程とを有することを特徴とする保護被膜による実装構造体の被覆方法が記載されている。この場合電子機器と口腔内器具は接着されていないので、電子機器を取り出すときに壊れる可能性も低くなる。しかしこの手段をとる場合、作製上、口腔内器具の材料の厚みを厚くする必要があり、例えば歯列矯正器具の場合、歯列に印加する力をコントロールすることが難しくなるという課題がある。さらに、仮に口腔内器具の材料に亀裂が入った場合、水分が電子機器に直接触れてしまうため、電子機器が破壊してしまうという課題もある。安全上、一つの手段(この場合は歯列矯正器具の材料)に亀裂等が入っても漏電等が起こらないように、第二の手段を設けておく必要がある。上述した方法では一つの手段しか設けられていないため、安全上の課題もある。また、口腔内器具と電子機器を固定する歯科用樹脂材料が液体と液体を重合硬化させたものであったため、液体の粘度が低く、硬化する前に歯科用樹脂材料が流れ落ちてしまうという課題があった。
【0003】
このような課題に対して、図17に示すように、電子機器42を熱可塑性高分子化合物からなる2枚の封止フィルムの間に挟み込んで口腔内器具41を構成することも考えられるが、製作工程をより簡略化することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-66080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、製造が容易であり、かつ、使用上の安全性にも優れた、口腔内センシング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の口腔内センシング装置は、口腔内に設置されるセンシング装置であって、回路基板に電子部品を搭載した電子機器と、前記電子機器すべてを覆う第一の歯科用樹脂材料と、前記第一の歯科用樹脂材料の全体を覆う第二の歯科用樹脂材料と、前記第一の歯科用樹脂材料及び前記第二の歯科用樹脂材料で覆われた前記電子機器を収納する第一のくぼみを持った口腔内器具と、を備え、前記第二の歯科用樹脂材料は、前記第一の歯科用樹脂材料によって全体が覆われた前記電子機器と、前記第一のくぼみとの隙間に設けられると共に、前記第一のくぼみの内側に対して接着され、前記第一のくぼみ又は前記第二の歯科用樹脂材料には、前記第一のくぼみに収納された前記電子機器を固定する突起が形成され、前記第一の歯科用樹脂材料及び前記第二の歯科用樹脂材料で覆われた前記電子機器は、前記突起が変形することで、前記口腔内器具から取り外し可能とされている。
【0007】
(2)前記第二の歯科用樹脂材料は、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面と対向する面の少なくとも2つ以上のコーナーの厚みが他の部分の厚みより薄く形成され、前記突起は、前記第一のくぼみに形成され、前記電子機器は、前記突起と、前記第二の歯科用樹脂材料のコーナーの厚みが他の部分の厚みより薄くなっている部分とで固定されても良い。
【0008】
(3)前記第二の歯科用樹脂材料には、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に、第二のくぼみが設けられ、前記突起は、前記第二の歯科用樹脂材料のうち前記第二のくぼみに相当する箇所に形成され、前記電子機器は、前記第二のくぼみと前記突起とで固定されても良い。
【0009】
(4)前記突起は、前記第二の歯科用樹脂材料に形成されていると共に、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に形成され、前記第一のくぼみには、前記突起に相当する箇所にくぼみが形成され、前記電子機器は、前記くぼみと前記突起とで固定されても良い。
【0010】
(5)前記第二の歯科用樹脂材料は、前記第一の歯科用樹脂材料に比べて軟らかい材料で形成されても良い。
【0011】
(6)前記第一の歯科用樹脂材料は、前記第二の歯科用樹脂材料と前記口腔内器具との間の密着力よりも、前記第一の歯科用樹脂材料と前記第二の歯科用樹脂材料との間の密着力が弱く、且つ前記第一の歯科用樹脂材料と前記電子機器との間の密着力が弱くなる材料で形成されても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造が容易であり、かつ、使用上の安全性にも優れた、口腔内センシング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、電子機器2を口腔内器具1に取り付けた時の口腔内センシング装置の断面図である。
図2図2は、電子機器2を口腔内器具1に取り付けた時の口腔内センシング装置の概略図である。
図3図3は、電子機器2を口腔内器具1に取り付けた時の別の口腔内センシング装置の概略図である。
図4図4は、口腔内器具の第一のくぼみに設置する第二の歯科用樹脂材料4に覆われた電子機器の形状を示す概略図である。
図5図5は、口腔内器具1の第一のくぼみに電子機器2を設置した時の第一のくぼみ部断面図である。
図6図6は、口腔内器具1の第一のくぼみに設置した電子機器2を取り外す時の状態を示す断面図である。
図7図7は、口腔内器具の第一のくぼみに設置する第二の歯科用樹脂材料4に覆われた電子機器の別の形状を示す概略図である。
図8図8は、口腔内器具1の第一のくぼみに電子機器2を設置した時の別の第一のくぼみ部断面図である。
図9図9は、口腔内器具の第一のくぼみに設置する第二の歯科用樹脂材料4に覆われた電子機器の別の形状を示す概略図である。
図10図10は、口腔内器具1の第一のくぼみに電子機器2を設置した時の別の第一のくぼみ部断面図である。
図11図11は、口腔内器具の第一のくぼみに設置する第二の歯科用樹脂材料4に覆われた電子機器の別の形状を示す概略図である。
図12図12は、口腔内器具の第一のくぼみに設置する第二の歯科用樹脂材料4に覆われた電子機器の別の形状を示す概略図である。
図13図13は、口腔内器具1の第一のくぼみに電子機器2を設置した時の別の第一のくぼみ部断面図である。
図14図14は、口腔内器具1の第一のくぼみに電子機器2を設置した時の別の第一のくぼみ部断面図である。
図15図15は、電子機器2をインプラント義歯32に取り付けた時の口腔内センシング装置の断面図である。
図16図16は、電子機器2の回路構成を示す概略ブロック図である。
図17図17は、電子機器42を口腔内器具41に取り付けた時の従来の口腔内センシング装置の断面図である。
図18図18は、口腔内センシング装置の製造方法を示すプロセスフロー図である。
図19図19は、口腔内センシング装置の別の製造方法を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、以下のような有利な特徴を有する。
電子機器2は口腔内での使用時、第一の歯科用樹脂材料3と第二の歯科用樹脂材料4で二重に覆われているため、仮にどちらか一方にクラックが入ったとしても、もう一方で保護されるため、人体に対する安全性に優れる。また、特に第一の歯科用樹脂材料3がシリコーン樹脂の場合、シリコーン樹脂は電子機器2に接着しないので、電子機器2から第一の歯科用樹脂材料3を容易に剥がすことができ、電子機器2を破損せず、再利用することもできる。さらに、電子機器2から第一の歯科用樹脂材料3を剥がして、電子機器2に搭載されて電池を交換することもでき、特に、電池が一次電池である場合に有用である。
【0015】
本発明の第一の具体的態様では、図1に示すように、第一の歯科用樹脂材料3で全体が覆われた電子機器2が、口腔内器具1の第一のくぼみに収納され、第一の歯科用樹脂材料3で全体が覆われた電子機器2と前記第一のくぼみとの隙間に第二の歯科用樹脂材料4が充填され、第二の歯科用樹脂材料4によって、電子機器2と口腔内器具1とが接着されている。図2及び図3は、口腔内器具1の斜視図である。口腔内器具を歯及び歯茎に装着する場合、図2に示すように、口腔内の内側(舌側)に電子機器2が配置されるようにしたり、図3に示すように、口腔内の外側(頬側)に電子機器2が配置されるようにしたりしてよい。
このような構成を採用したことによって、口腔内センシング装置の使用上の安全性がより優れるとともに、口腔内センシング装置の製造がより容易となった。
【0016】
本発明の第二の具体的態様では、図4に示すように、第一の歯科用樹脂材料で全体が覆われた電子機器を覆う第二の歯科用樹脂材料4が、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、前記底面と対向する面の少なくとも2つ以上のコーナーの厚みが他の部分の厚みより薄くなるように成形され、かつ、図5に示すように、口腔内器具1の第一のくぼみは、第二の歯科用樹脂材料4の側面の前記コーナーの厚みが他の部分の厚みより薄くなっている部分に相当する箇所に、第一の突起1cが設けられている。
このような構成を採用したことによって、図6に示すように、口腔内器具1を装着・取り外しする際に口腔内器具1にかかる力が電子機器2に直接はかからず、繰り返しの装着・取り外しで電子機器2が壊れる可能性を低減させた。特に、真空型押し成形により口腔内器具1を成形する場合、第一のくぼみの形成と同時に第一の突起1cも形成することができると共に電子機器2のセットも自動的に行われるので、作業効率が向上する。
【0017】
本発明の第三の具体的態様では、図7に示すように、第一の歯科用樹脂材料で全体が覆われた電子機器を覆う第二の歯科用樹脂材料4の、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、前記底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に、第二のくぼみが設けられ、かつ、図8に示すように、前記第一のくぼみの、前記歯科用樹脂材料の側面の第二のくぼみに相当する箇所に、第一の突起1cが設けられている。
このような構成を採用したことによって、口腔内器具1からの電子機器2の取外し及び口腔内器具1への電子機器2の再取付けがより容易にできるようになった。特に、真空型押し成形により口腔内器具1を成形する場合、第一のくぼみの形成と同時に第一の突起1cも形成することができると共に電子機器2のセットも自動的に行われるので、作業効率が向上する。
【0018】
本発明の第三の具体的態様では、図9に示すように、第一の歯科用樹脂材料で全体が覆われた電子機器を覆う第二の歯科用樹脂材料4の、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、前記底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に、第二の突起が設けられ、かつ、図10に示すように、前記第一のくぼみの、前記第二の歯科用樹脂材料4の側面の第二の突起に相当する箇所に、くぼみ1dが設けられている。
このような構成を採用したことによって、口腔内器具1からの電子機器2の取外し及び口腔内器具1への電子機器2の再取付けがより容易にできるようになった。特に、真空型押し成形により口腔内器具1を成形する場合、第一のくぼみの形成と同時にくぼみ1dも形成することができると共に電子機器2のセットも自動的に行われるので、作業効率が向上する。
【0019】
上述した本発明の第二の具体的態様及び第三の具体的態様では、図11又は図12に示すように、略直方体形状に限定されず、角を丸めたり、角を落としたりしてもよい。また、図13又は図14に示すように、第一のくぼみの底に接する方の角を落としたり、丸めたりしてもよい。
【0020】
[口腔内センシング装置]
口腔内センシング装置は、電子機器2、口腔内器具1、第一の歯科用樹脂材料3、第二の歯科用樹脂材料4から構成される。
【0021】
〈電子機器〉
電子機器2は、図16に示すように、無線送受信部26、信号処理部24及びメモリ25をあわせた無線モジュール部23、センサ22、並びに電池21から構成され、回路基板に実装された状態で全体を第一の歯科用樹脂材料で覆われている。
電子機器2は、無線送受信部26、信号処理部24及びメモリ25が組み合わさった無線モジュール部23と、センサ22、並びに電池21から構成され、矯正器具、義歯、又はインプラントに埋め込まれる。
無線送受信部26は、口腔内でセンシングされたデジタルデータを口腔外部のネットワーク接続器27に送信したり、ネットワーク接続器27から電子機器2に送信されたコマンドを受信したりする役目をもつ。
信号処理部24は、マイコン及びADコンバータから構成され、センサ22から送られてきたセンシングデータをデジタルデータに変換しメモリ25に保存する役目と、メモリ25に保存されたデジタルデータを送信可能なデータに変換する役目と、ネットワーク接続器27から送られてきたコマンドを解釈しセンサ22及び無線送受信部26の動作を制御する。
センサ22は、温度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、圧力センサ、歪センサ、光を使って脈波を測定する脈波センサ、光を使って血中酸素濃度を測定するパルスオキシメータ、光を使って心拍を測定する心拍センサ、及びレーザー光を使って血流を測定するレーザーセンサからなる群から選択される少なくとも1種から構成され、各種物理情報や生体情報を取得する。
電池21は、一次電池又は二次電池から構成され、無線送受信部26、信号処理部24、メモリ25及びセンサ22に電力を供給する。
これらの回路ブロックは、薄い回路基板又はフレキシブル基板上に、電池21、センサ22、信号処理部24、無線送受信部26及びメモリ25が実装されている。一般的に無線送受信部26、信号処理部24及びメモリ25は1体となったチップで提供されることが多い。また、電子機器2は、薄い回路基板又はフレキシブル基板上に、電池21、センサ22、信号処理部24、メモリ25及び無線送受信部26が実装されている。
【0022】
電子機器2は第一の歯科用樹脂材料3で覆われ、さらにその外側を第二の歯科用樹脂材料4で覆われて口腔内器具に設置されていることにより、電子機器2への水分の侵入を防ぐことができる。仮に第二の歯科用樹脂材料4に亀裂が入ったとしても、電子機器2は柔らかい第一の歯科用樹脂材料3で覆われているため、二重の安全が確保される。
【0023】
電子機器2に搭載される無線モジュール部23は、必ずしも外部とのデータのやり取りを無線で実施する必要はなく、有線を使ったデータやり取りをする電子機器でもよい。但し、有線を使ってデータやり取りをする電子機器の場合、電子機器2とネットワーク接続器27を接続するコネクタ部分に防水を施す必要がある。コネクタ部分は、ふたのような機構が設置され、データ読み出しの時は開き、口腔内に設置するときは閉じる機構を採用する。そのため、無線でデータを送受信した方が防水構造は簡便に済むメリットがある。
【0024】
センサ22に温度センサを用いることにより、口腔内器具を装着した時間を計測することで口腔内矯正治療に活用することができるだけではなく、日常の体温の変化をモニタリングすることができる。
センサ22に加速度センサ・ジャイロセンサを用いることにより、咀嚼回数をカウントすることができるだけではなく、歩数計測、活動量計測、顎の動き計測、Bruxism(歯ぎしり)の計測をすることができる。
センサ22に圧力センサ・歪センサを用いることにより、歯や義歯、インプラントにかかる力を計測することができるだけではなく、口腔内器具が歯に加える力の計測やBruxism(歯ぎしり)の計測、噛む力の計測、咀嚼回数、口腔内器具を装着した時間も計測することができる。
【0025】
〈口腔内器具〉
口腔内器具1としては、例えば、矯正装置、義歯又はインプラントが挙げられる。
【0026】
口腔内器具1は、矯正装置の場合は、熱可塑性高分子化合物により形成されることが好ましく、ポリエチレン系素材、ポリウレタン系素材及びアクリル系レジンからなる群から選択されるいずれか1種の熱可塑性高分子化合物により形成されることがより好ましい。
電子機器を口腔内器具に装着する場合、図1図3に示すように、口腔内器具は、口腔内器具製造用材料を、口腔内センシング装置を装着する予定のユーザの歯及び歯肉に整合した歯型に押し付けて型押し成型するか、3Dプリンタで歯型・歯肉型形状に成型されることが好ましく、口腔内センシング装置を装着する予定のユーザの歯及び歯肉に整合した歯型に押し付けて型押し成型することがより好ましい。
口腔内器具製造用材料は、前述した熱可塑性高分子化合物のシート又はフィルムが好ましい。
口腔内器具1の一部にくぼみを設け、そのくぼみに電子機器2を設置する。電子機器2を設置する場所は歯冠部側壁に相当するところ、歯肉に相当するところいずれでもよいが、上歯、下歯のかみ合わせを考慮すると図1に示す歯肉に相当するところに設置するのが好ましい。また、光を使って脈波を測定する脈波センサ、光を使って血中酸素濃度を測定するパルスオキシメータ、光を使って心拍を測定する心拍センサ、又はレーザー光を使って血流を測定するレーザーセンサの場合、歯肉の血管から情報を取るため、歯肉に相当するところに設置するのが好ましい。
さらに、上述した光又はレーザーを使ったセンサを搭載する場合、光の透過が必須のため、口腔内器具1は波長400~1000nmの範囲内のいずれかの波長の光を透過することができる材料で構成される。
【0027】
第一の具体的態様では、図1に示すように、電子機器2は周り全体を第一の歯科用樹脂材料3で覆われ、さらに第一の歯科用樹脂材料3の周り全体を第二の歯科用樹脂材料4で覆うと共に、口腔内器具1のくぼみに第二の歯科用樹脂材料4を充填して、口腔内器具1と電子機器2とを接着する。
【0028】
第二の具体的態様では、図4に示すように、第二の歯科用樹脂材料4の厚みが第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面と対抗する面の少なくとも2つ以上のコーナーの厚みが他の部分の厚みより薄くなっている構造を採用する。そして図5に示すように第二の歯科用樹脂材料4のコーナーの厚みが他の部分の厚みより薄くなっている部分と口腔内器具1の第一の突起1cで電子機器を固定するため、口腔内器具1に大きな力がかかったとしても電子機器2に力が直接加わることはない。そのため、口腔内器具1の装着・取り外し時に電子機器2に力が加わり電子機器2が壊れてしまう課題を回避することができる。また、第二の歯科用樹脂材料4のコーナーの厚みが薄い箇所が1箇所のみに形成された場合は、脱落する確率が非常に高く好ましくない。少なくともコーナー2箇所、できれば4箇所に形成することで、口腔内器具1の装着・取り外し時でも脱落することはなくなる。図6は、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2を口腔内器具1から取り外す際の状態を示す模式図である。矢印方向に電子機器2を取り出す際に、口腔内器具1の第一の突起1cが変形するので、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2を口腔内器具1から容易に取り出すことができる。
【0029】
第三の具体的態様では、図7に示すように第二の歯科用樹脂材料4が第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に第二のくぼみ4gが設けられた構造を採用する。そして、図8に示すように第二の歯科用樹脂材料4の側面に形成された第二のくぼみ4gと口腔内器具の第一の突起1cで電子機器2を固定するため、口腔内器具1に大きな力がかかったとしても電子機器2に力が直接加わることはない。そのため、口腔内器具1の装着・取り外し時に電子機器2に力が加わり電子機器2が壊れてしまう課題を回避することができる。また、第二のくぼみ4gが側面の1面のみに形成された場合は、脱落する確率が非常に高く好ましくない。少なくとも側面2面、できれば4面に第二のくぼみ4gを形成することで、口腔内器具1の装着・取り外し時でも脱落することはなくなる。第二のくぼみ4gは、底面に対して並行であることが好ましい。
【0030】
第四の具体的態様では、図9に示すように第二の歯科用樹脂材料4が第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に第二の突起4hが設けられた構造を採用する。そして、図10に示すように第二の歯科用樹脂材料4の側面に形成された第二の突起4hと口腔内器具のくぼみ1dで電子機器2を固定するため、口腔内器具1に大きな力がかかったとしても電子機器2に力が直接加わることはない。そのため、口腔内器具1の装着・取り外し時に電子機器2に力が加わり電子機器2が壊れてしまう課題を回避することができる。また、第二の突起4hが側面の1面のみに形成された場合は、脱落する確率が非常に高く好ましくない。少なくとも側面2面、できれば4面に第二の突起4hを形成することで、口腔内器具1の装着・取り外し時でも脱落することはなくなる。第二の突起4hは、底面に対して並行であることが好ましい。
【0031】
第二の具体的態様(図4)、第三の具体的態様(図7)又は第四の具体的態様(図9)の場合、口腔内器具1は、ポリエチレン系素材、ポリウレタン系素材又はアクリル系レジン等の熱可塑性高分子化合物で構成され、石膏や3Dプリンタで形成された歯型の上に型押しする工法が適している。歯型の上の電子機器2を設置したい箇所に図4図7又は図9で示す第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2を置き、真空型押しで熱可塑性高分子化合物のシート又はフィルムを成型すると、前記コーナーの厚みが薄い箇所や前記第一のくぼみに熱可塑性高分子化合物が入り込み、図5又は図8に示すような口腔内器具1の第一の突起1c、又は図10に示すような口腔内器具1のくぼみ1dを自動的に形成することができる。
3Dプリンタで口腔内器具1を作製した場合は、その後、電子機器2を口腔内器具1の第一のくぼみにセットする必要があるが、図4図7又は図9に示す形状の電子機器2で真空型押しを実施した場合、セットする手間が省け、作業の効率化が図れる。
【0032】
口腔内器具1に電子機器2を取り付ける位置は、上顎、下顎いずれでもよく、しかも、口腔内の内側(舌側)でも外側(頬側)のいずれでもよい。
【0033】
義歯又はインプラントに電子機器2を装着する場合、図15に示すように、義歯(インプラント義歯32)の中に電子機器2を設置することが好ましい。図15では、歯槽骨34に埋入されたインプラントの例を示しているが、義歯の場合も同様である。電子機器2は第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で全体を2重に覆われ、義歯又はインプラント義歯32の内部に設置されることが好ましい。
光を使って脈波を測定する脈波センサ、光を使って血中酸素濃度を測定するパルスオキシメータ、光を使って心拍を測定する心拍センサ、又はレーザー光を使って血流を測定するレーザーセンサの場合、歯肉の血管から情報を取るため、歯肉33に相当するところに設置するのが好ましい。さらに、上述した光やレーザーを使ったセンサを搭載する場合、光の透過のため、義歯又はインプラント義歯の一部は、波長400~1000nmのいずれかの波長の光を透過することができる材料で構成される。
【0034】
〈第一の歯科用樹脂材料〉
第一の歯科用樹脂材料3は、例えば、ポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーン樹脂又はメタクリレートに可塑剤としてフタル酸ブチルを添加し重合硬化させたものである。上記シリコーン樹脂としては、縮合型シリコーンゴム又は付加型シリコーンゴムが例示される。第一の歯科用樹脂材料3は、上述したものに限定されず、他のプラスチック等も使用可能である。第一の歯科用樹脂材料3としては、シリコーン樹脂が好ましい。
【0035】
シリコーン樹脂は電子機器2との密着力が弱いため、簡単に取り外すことができる。このため、電子機器2を使いまわす場合、シリコーン樹脂を新規に交換することにより常に清浄度が保たれる。また、後述する第二の歯科用樹脂材料4とシリコーン樹脂との密着力は弱いため、電子機器2を使いまわす際、口腔内器具1から電子機器2を容易に引きはがすことができる。
【0036】
〈第二の歯科用樹脂材料〉
第二の歯科用樹脂材料4は、例えば、メチルメタクリレートとポリメチルメタクリレートを重合硬化させたもの、2,2-ビス(4-(3-メタクソロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、ウレタンジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートを主成分としたもの、ポリメチルメタクリレート、4-メタクリロイルオキシエチルトリメリテート無水物、トリ-n-ブチルボランを重合硬化させたもの、ポリエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、又はアクリル系レジンである。第二の歯科用樹脂材料4は、上述したものに限定されず、他のプラスチック等も使用可能である。第二の歯科用樹脂材料4としては、電子機器2を覆うカバレッジ性がよく、機器内に水分が侵入することを防ぐことができることから、メチルメタクリレートとポリメチルメタクリレートを重合硬化させたものが好ましい。
【0037】
メチルメタクリレートとポリメチルメタクリレートを重合硬化させたものやポリメチルメタクリレート、4-メタクリロイルオキシエチルトリメリテート無水物、トリ-n-ブチルボランを重合硬化させた歯科用樹脂材料は、液体と粉を重合硬化させるタイプのため、歯科用樹脂材料が流れ落ちることがなく、電子機器2と口腔内器具の隙間を埋めることができる。重合の手順は、先ず筆や小手に液体をつけ、その後、筆や小手に粉をつける。これにより、歯科用樹脂材料の粘度が増し、電子機器2と口腔内器具の隙間に歯科用樹脂材料を盛り付けることができる。
【0038】
第二の歯科用樹脂材料4は、第一の歯科用樹脂材料3に比べて軟らかく、口腔内器具1との密着力が高いため、高い保持力で電子機器2を口腔内器具1に固定することができる。また、第一の歯科用樹脂材料3は、第二の歯科用樹脂材料4と比べて硬く、電子機器2を外力から保護するのに適している。
【0039】
[口腔内センシング装置の製造方法]
本発明の第一の具体的態様に係る口腔内センシング装置は、例えば、図18に示すように、回路基板に電子部品を搭載した電子機器2を準備し、電子機器2をすべて第一の歯科用樹脂材料3で覆い、前記口腔内センシング装置を装着する予定のユーザの歯及び歯肉に整合した歯型を準備し、第一の歯科用樹脂材料3で覆われた電子機器2を、前記歯型に置き、前記歯型を口腔内器具製造用材料に押し付けて型押し成型を行い、第一の歯科用樹脂材料3で覆われた電子機器2が収まる第一のくぼみを有する口腔内器具1を成形し、第一の歯科用樹脂材料3で覆われた電子機器2が前記第一のくぼみに収容された状態で口腔内器具1を前記歯型から取り外し、第一の歯科用樹脂材料3全体を覆い、かつ、口腔内器具1の前記第一のくぼみの内側と接着させるように、第一の歯科用樹脂材料3で覆われた電子機器2を第二の歯科用樹脂材料4で覆うことにより製造できる。
【0040】
本発明の第二の具体的態様に係る口腔内センシング装置は、例えば、図19に示すように、回路基板に電子機器を搭載した電子機器2を準備し、電子機器2をすべて第一の歯科用樹脂材料3で覆い、第一の歯科用樹脂材料3全体を覆い、かつ、第一の歯科用樹脂材料3の広い面の1つを底面として、底面と対向する面の少なくとも2つ以上のコーナーの厚みが他の部分の厚みより薄くなるように、第一の歯科用樹脂材料3で覆われた電子機器2を第二の歯科用樹脂材料4で覆い、前記口腔内センシング装置を装着する予定のユーザの歯及び歯肉に整合した歯型を準備し、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2を、前記歯型に置き、前記歯型を口腔内器具製造用材料に押し付けて型押し成型を行い、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2が収まる第一のくぼみを有する口腔内器具1を成形し、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2が前記第一のくぼみに収容された状態で口腔内器具1を前記歯型から取り外すことにより製造できる。
【0041】
本発明の第三の具体的態様に係る口腔内センシング装置は、例えば、図19に示すように、回路基板に電子機器を搭載した電子機器2を準備し、電子機器2をすべて第一の歯科用樹脂材料3で覆い、第一の歯科用樹脂材料3全体を覆い、かつ、第一の歯科用樹脂材料3の広い面の1つを底面として、底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に第二のくぼみが設けられるように、第一の歯科用樹脂材料3で覆われた電子機器2を第二の歯科用樹脂材料4で覆い、前記口腔内センシング装置を装着する予定のユーザの歯及び歯肉に整合した歯型を準備し、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2を、前記歯型に置き、前記歯型を口腔内器具製造用材料に押し付けて型押し成型を行い、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2が収まる第一のくぼみを有する口腔内器具1を成形し、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2が前記第一のくぼみに収容された状態で口腔内器具1を前記歯型から取り外すことにより製造できる。前記第二のくぼみは、底面に対して並行に設けることが好ましい。
【0042】
本発明の第四の具体的態様に係る口腔内センシング装置は、例えば、図19に示すように、回路基板に電子機器を搭載した電子機器2を準備し、電子機器2をすべて第一の歯科用樹脂材料3で覆い、第一の歯科用樹脂材料3全体を覆い、かつ、第一の歯科用樹脂材料3の広い面の1つを底面として、底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に第二の突起が設けられるように、第一の歯科用樹脂材料3で覆われた電子機器2を第二の歯科用樹脂材料4で覆い、前記口腔内センシング装置を装着する予定のユーザの歯及び歯肉に整合した歯型を準備し、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2を、前記歯型に置き、前記歯型を口腔内器具製造用材料に押し付けて型押し成型を行い、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2が収まる第一のくぼみを有する口腔内器具1を成形し、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4で覆われた電子機器2が前記第一のくぼみに収容された状態で口腔内器具1を前記歯型から取り外すことにより製造できる。前記第二の突起は、底面に対して並行に設けることが好ましい。
【0043】
口腔内器具1、電子機器2、第一の歯科用樹脂材料3及び第二の歯科用樹脂材料4は、本発明の口腔内センシング装置に関して記載したものと同様であり、好ましいものも同様である。
【0044】
[作用効果]
本発明の口腔内センシング装置では、第一の歯科用樹脂材料3で電子機器2すべてを覆うため、第一の歯科用樹脂材料3と電子機器2との密着力が非常に弱くても、使用時に剥がれることはない。
第一の歯科用樹脂材料3としてシリコーン樹脂を使用することにより、電子機器2を充電等で再使用する場合でも、口腔内器具1からはがしやすく、シリコーン樹脂もきれいに剥がせるため、電子機器2を破壊することもなく、再使用も容易である。
口腔内に入れたものを再使用する場合、十分な滅菌作業が必要であるが、本発明の口腔内センシング装置では、シリコーン樹脂を1回1回使い捨てるため、電子機器2の洗浄が容易である。
電子機器2は口腔内での使用時、第一の歯科用樹脂材料3と第二の歯科用樹脂材料4に覆われているため、電子機器2の防水性が向上する。
電子機器2は口腔内での使用時、第一の歯科用樹脂材料3と第二の歯科用樹脂材料4に覆われているため、仮にどちらかにクラックが入ったとしてももう一方の材料で保護されているため、人体への安全性は確保される。
【0045】
本発明の口腔内センシング装置では、口腔内器具1の一部をくぼませ、そこに電子機器2を装着する形にしたため、製作工程が簡易である。
口腔内器具1の一部をくぼませ、そこに電子機器2を装着する形にしたため、口腔内器具1の材料の厚みを薄くすることができ、例えば、口腔内器具1が矯正装置の場合、歯列に印加する力を微妙にコントロールすることも可能である。
電子機器2を口腔内器具1に装着させる第二の歯科用樹脂材料4が液体と粉を重合硬化させるものであるため、第二の歯科用樹脂材料4が流れ落ちることはない。そのため、第二の歯科用樹脂材料4で第一の歯科用樹脂材料3を覆う際には、最初に液体材料を筆にしみこませ、次に筆に粉をつけて前記第一の歯科用樹脂材料3の周りに塗る筆積み法、又は液体材料と粉を交互にふりかけるふりかけ法を用いることもできる。
第二の具体的態様では、電子機器2は第二の歯科用樹脂材料4を介して、コーナーの厚みが他の部分の厚みより薄くなっている部分と口腔内器具1の第一の突起1cで固定されているため、口腔内器具に大きな力がかかったとしても電子機器2に力が直接加わることはない。そのため、口腔内器具1の装着・取り外し時に電子機器2に力が加わり電子機器2が壊れてしまう課題を回避することができる。
【0046】
第三の具体的態様では、電子機器2は第二の歯科用樹脂材料4を介して、第二の歯科用樹脂材料4の第二のくぼみと口腔内器具1の第一の突起1cで固定されているため、口腔内器具1に大きな力がかかったとしても電子機器2に力が直接加わることはない。そのため、口腔内器具1の装着・取り外し時に電子機器2に力が加わり電子機器2が壊れてしまう課題を回避することができる。口腔内器具1を真空型押しで成型する方法で、口腔内器具1の一部をくぼませ、さらに第一の突起1cを設ける構造で電子機器2を装着する形にすると、自動的に第一の突起1cを形成することができると共に電子機器2のセットも自動的に行われるので、作業効率が向上する。
【0047】
第四の具体的態様では、電子機器2は第二の歯科用樹脂材料4を介して、第二の歯科用樹脂材料4の第二の突起と口腔内器具1のくぼみ1dで固定されているため、口腔内器具1に大きな力がかかったとしても電子機器2に力が直接加わることはない。そのため、口腔内器具1の装着・取り外し時に電子機器2に力が加わり電子機器2が壊れてしまう課題を回避することができる。口腔内器具1を真空型押しで成型する方法で、口腔内器具1の一部をくぼませ、さらにくぼみ1dを設ける構造で電子機器2を装着する形にすると、自動的にくぼみ1dを形成することができると共に電子機器2のセットも自動的に行われるので、作業効率が向上する。
【0048】
電子機器2に無線送受信部26を備えたことにより、センシングした情報を外部に取り出すことが容易である。
センサ22に温度センサを用いることにより、口腔内器具1を装着した時間を計測することで口腔内矯正治療に活用することができるだけではなく、日常の体温の変化をモニタリングすることができる。
センサ22に加速度センサ・ジャイロセンサを用いることにより、咀嚼回数をカウントすることができるだけではなく、歩数計測、活動量計測、顎の動き計測及びBruxism(歯ぎしり)からなる群から選択される1種以上の計測をすることができる。
センサ22に圧力センサ・歪センサを用いることにより、歯若しくは義歯、又はインプラントにかかる力を計測することができるだけではなく、口腔内器具1が歯に加える力の計測やBruxism(歯ぎしり)の計測、噛む力の計測、咀嚼回数及び口腔内器具を装着した時間からなる群から選択される1種以上の計測をすることができる。
【0049】
本願は、2020年3月13日に、日本に出願された特願2020-044440号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。なお、特願2020-044440号明細書における「シリコン樹脂」は、本願明細書における「シリコーン樹脂」を意味する。
【0050】
なお、本願発明には、以下の態様が含まれる。
<1>
口腔内に設置されるセンシング装置であって、
回路基板に電子部品を搭載した電子機器と、
前記電子機器すべてを覆う第一の歯科用樹脂材料と、
前記第一の歯科用樹脂材料の全体を覆う第二の歯科用樹脂材料と、
前記第一の歯科用樹脂材料及び第二の歯科用樹脂材料で覆われた前記電子機器が収まる第一のくぼみを持った口腔内器具と、を有する口腔内センシング装置。
<2>
前記第二の歯科用樹脂材料が、前記第一の歯科用樹脂材料で覆われた前記電子機器を、前記第一のくぼみの内側と接着させる、<1>に記載の口腔内センシング装置。
<3>
前記第二の歯科用樹脂材料は、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面と対向する面の少なくとも2つ以上のコーナーの厚みが他の部分の厚みより薄くなっており、前記第一のくぼみの、前記第二の歯科用樹脂材料のコーナーの厚みが他の部分の厚みより薄くなっている部分に相当する箇所に、第一の突起が設けられている、<1>に記載の口腔内センシング装置。
<4>
前記第二の歯科用樹脂材料の、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に、第二のくぼみが設けられ、前記第一のくぼみの、前記第二の歯科用樹脂材料の側面の第二のくぼみに相当する箇所に、第一の突起が設けられている、<1>に記載の口腔内センシング装置。
<5>
前記第二のくぼみが、前記底面に対して並行である、<4>に記載の口腔内センシング装置。
<6>
前記第二の歯科用樹脂材料の、前記第一の歯科用樹脂材料の広い面の1つを底面として、底面に対して側面に相当する面の少なくとも2面以上に、第二の突起が設けられ、前記第一のくぼみの、前記第二の歯科用樹脂材料の側面の第二の突起に相当する箇所に、くぼみが設けられている、<1>に記載の口腔内センシング装置。
<7>
前記第二の突起が、前記底面に対して並行である、<6>に記載の口腔内センシング装置。
<8>
前記口腔内器具は、熱可塑性高分子化合物により形成されている、<1>から<7>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
<9>
前記第一の歯科用樹脂材料は、ポリジメチルシロキサンを主成分とするものである、<1>から<7>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
<10>
前記第一の歯科用樹脂材料は、メタクリレートに可塑剤としてフタル酸ブチルを添加し重合硬化させたものである、請求項<1>から<7>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
<11>
前記第二の歯科用樹脂材料は、メチルメタクリレートとポリメチルメタクリレートとを重合硬化させたものである、<1>から<7>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
<12>
前記第二の歯科用樹脂材料は、2,2-ビス(4-(3-メタクソロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、ウレタンジメタクリレート及びトリエチレングリコールジメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を主成分としたものである、<1>から<7>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
<13>
前記第二の歯科用樹脂材料は、ポリメチルメタクリレート、4-メタクリロイルオキシエチルトリメリテート無水物及びトリ-n-ブチルボランを重合硬化させたものである、<1>から<3>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
<14>
前記第二の歯科用樹脂材料は、最初に液体材料を筆にしみこませ、次に筆に粉をつけて前記第一の歯科用樹脂材料の周りに塗る筆積み法が可能であることを特徴とする、<11>から<13>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
<15>
前記第二の歯科用樹脂材料は、液体材料と粉を交互にふりかけるふりかけ法が可能であることを特徴とする、<11>から<13>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
<16>
前記第二の歯科用樹脂材料は、ポリエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びアクリル系レジンからなる群から選択されるいずれか1種である、<1>から<7>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
<17>
前記電子機器は、
生体情報をセンシングするセンサと、
前記センサに電力を供給する電池と、
前記電池からの電力供給を受けて前記センサからの出力信号に基づきデジタルデータを生成する信号処理部と、
前記デジタルデータを保存するメモリと、
前記電池からの電力供給を受けて前記メモリに保存された前記デジタルデータをネットワーク接続器から送られた信号に応じて前記ネットワーク接続器に前記デジタルデータを送信する無線送受信部と、を有する、<1>から<16>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
<18>
前記センサは、温度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、圧力センサ、歪センサ、光を使って脈波を測定する脈波センサ、光を使って血中酸素濃度を測定するパルスオキシメータ、光を使って心拍を測定する心拍センサ、及びレーザー光を使って血流を測定するレーザーセンサからなる群から選択される少なくとも1種から構成される、<17>に記載の口腔内センシング装置。
<19>
前記口腔内器具は、矯正装置、義歯又はインプラントである、<1>から<18>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
<20>
前記口腔内器具は、波長400~1000nmの範囲内のいずれかの波長の光を透過することができる材料で形成されている、<1>から<19>のいずれか1つに記載の口腔内センシング装置。
【符号の説明】
【0051】
1…口腔内器具、1c…第一の突起、1d…くぼみ、2…電子機器、3…第一の歯科用樹脂材料、4…第二の歯科用樹脂材料、4g…第二のくぼみ、4h…第二の突起、5…歯、21…電池、22…センサ、23…無線モジュール部、24…信号処理部、25…メモリ、26…無線送受信部、27…ネットワーク接続器、31…インプラント、32…インプラント義歯、33…歯肉、34…歯槽骨、41…口腔内器具、42…電子機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図18
図19