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  • 特開-リンク機構及びエンドエフェクタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017722
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】リンク機構及びエンドエフェクタ
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B25J15/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120550
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ ウソク
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS27
3C707CY01
3C707ES06
3C707ES07
3C707ET03
3C707EU11
3C707EU14
3C707EU18
3C707EW04
3C707HS27
3C707MT09
(57)【要約】
【課題】2つのリンクが回転軸を中心に相対回転自在に連結されたリンク機構、及び、そのリンク機構を備えたエンドエフェクタにおいて、回転軸に向く荷重のピーク値を緩和可能とする。
【解決手段】リンク機構23、25であって、第1リンク9、11と、第1リンクに回転軸X、Yを中心とする相対回転自在に連結される第2リンク11、13と、第2リンクに加わる回転軸に向く荷重に抗する付勢力を第2リンクに付与する付勢手段45、45A,45Bと、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リンクと、
前記第1リンクに回転軸を中心とする相対回転自在に連結される第2リンクと、
前記第2リンクに加わる前記回転軸に向く荷重に抗する付勢力を前記第2リンクに付与する付勢手段と、を備えるリンク機構。
【請求項2】
前記第1リンクは基部と、前記回転軸に沿って延び、前記第2リンクが回転可能に接続された軸部とを備え、
前記付勢手段は前記基部と前記軸部との間に設けられている請求項1に記載のリンク機構。
【請求項3】
前記基部は、前記軸部を受容し、且つ、前記軸部が固定される筒部と、間隔をおいて前記筒部を外囲する本体部とを備え、
前記筒部と前記本体部との間に前記付勢手段が設けられている請求項2に記載のリンク機構。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記回転軸の方向と、前記回転軸の周方向とに延在する少なくとも1つの板ばねを備え、
前記板ばねは、前記筒部から、前記回転軸回りの一方に向けて、前記回転軸から遠ざかる方向に延び、前記本体部に接続されている請求項3に記載のリンク機構。
【請求項5】
前記板ばねの前記回転軸に沿う方向の幅は、前記板ばねの厚さよりも大きい請求項4に記載のリンク機構。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1つの項に記載のリンク機構と、
前記回転軸を中心として前記第1リンク及び前記第2リンクを相対回転させる駆動源とを備えたエンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2つのリンクが相対回転自在に連結されたリンク機構、及び、そのリンク機構を備えたエンドエフェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットハンドの指関節機構が公知である(例えば、特許文献1)。特許文献1の指関節機構は、手掌分割部と、手掌分割部に第1関節を介して連結された第1指部材と、第1指部材に第2関節を介して連結された第2指部材とを備えている。
【0003】
第1指部材は手掌分割部に対して第1関節軸の軸線回りに回転自在であり、第2指部材は第1指部材に対して第2関節軸の軸線回りに回転自在となっている。
【0004】
手掌分割部には、第1関節軸と平行をなす第1リンク軸が固定されている。第2指部材には第2関節軸と平行をなす第2リンク軸が軸線回りに回転自在に設けられている。第1リンク軸と第2リンク軸とにはコイルスプリングが掛け渡されている。第2指部材に衝撃力若しくは過負荷力が入力したときには、コイルスプリングが緩衝部材として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-220589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のコイルスプリングは、第2関節軸回りの回転を引き起こす荷重を緩和することができる。しかし、特許文献1のコイルスプリングでは、第2指部材に第2関節軸に向く荷重を緩和することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑み、2つのリンクが回転軸を中心に相対回転自在に連結されたリンク機構、及び、そのリンク機構を備えたエンドエフェクタにおいて、回転軸に向く荷重のピーク値を緩和可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、リンク機構(23、25)であって、第1リンク(9、11)と、前記第1リンクに回転軸(X、Y)を中心とする相対回転自在に連結される第2リンク(11、13)と、前記第2リンクに加わる前記回転軸に向く荷重に抗する付勢力を前記第2リンクに付与する付勢手段(45、45A,45B)と、を備える。
【0009】
この態様によれば、回転軸に向く荷重が加えられると、付勢手段によってその荷重に抗するように付勢力が付与される。よって、回転軸に向く荷重のピーク値を付勢手段によって緩和させることができる。
【0010】
上記の態様において、好ましくは、前記第1リンクは基部(31)と、前記回転軸に沿って延び、前記第2リンクが回転可能に接続された軸部(33、33A,33B)とを備え、前記付勢手段は前記基部と前記軸部との間に設けられている。
【0011】
この態様によれば、第1リンクと第2リンクとを回転軸を中心とする相対回転自在に接続することができるとともに、第2リンクに加わる回転軸に向く荷重に抗する付勢力を付与可能となるように付勢手段を設けることができる。
【0012】
上記の態様において、好ましくは、前記基部は、前記軸部を受容し、且つ、前記軸部が固定される筒部(43、43A,43B)と、間隔(44)をおいて前記筒部を外囲する本体部(41)とを備え、前記筒部と前記本体部との間に前記付勢手段が設けられている。
【0013】
この態様によれば、第1リンクと第2リンクとを回転軸を中心とする相対回転自在に接続することができるとともに、第2リンクに加わる回転軸に向く荷重に抗する付勢力を付与可能となるように付勢手段を設けることができる。
【0014】
上記の態様において、好ましくは、前記付勢手段は、前記回転軸の方向と、前記回転軸の周方向とに延在する少なくとも1つの板ばね(45、45A,45B)を備え、前記板ばねは、前記筒部から、前記回転軸回りの一方に向けて、前記回転軸から遠ざかる方向に延び、前記本体部に接続されている。
【0015】
この態様によれば、付勢手段を簡素に構成することができる。
【0016】
上記の態様において、好ましくは、前記板ばねの前記回転軸に沿う方向の幅は、前記板ばねの厚さよりも大きい。
【0017】
この態様によれば、回転軸に平行な方向の軸部の移動を防止することができる。
【0018】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、エンドエフェクタ(1)であって、上記の前記リンク機構と、前記回転軸を中心として前記第1リンク及び前記第2リンクを相対回転させる駆動源(21)とを備える。
【0019】
この態様によれば、回転軸に向く荷重が加えられると、付勢手段によってその荷重に抗するように付勢力が付与される。よって、回転軸を介して回転自在に設けられた2つのリンクを備え、回転軸に向く荷重のピーク値を付勢手段によって緩和可能なエンドエフェクタを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の態様によれば、2つのリンクが回転軸を中心に相対回転自在に連結されたリンク機構、及び、そのリンク機構を備えたエンドエフェクタにおいて、回転軸に向く荷重のピーク値を緩和可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係るロボットハンドの指部(エンドエフェクタ)の斜視図
図2】中節リンクの基部の側面図
図3図1のIII-III断面図
図4】中節リンクの基部の斜視図
図5】中節リンクの基部の板ばね部分の構造を説明するための側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るリンク機構及びエンドエフェクタを、ヒューマノイドロボットのロボットアームの先端に設けられた指部に適用した実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、指部1は人の掌に相当する部分を構成する掌部3に接続されている。本実施形態では、1つの掌部3に5つの指部1が接続され、ロボットハンドは人の手を模した形状をなしている。
【0024】
掌部3は人の手根骨に対応する手根部(不図示)と、人の中手骨に対応する複数の中手リンク7とを備えている。中手リンク7はそれぞれ、手根部に接続されている。本実施形態では、掌部3には5つの中手リンク7が設けられている。
【0025】
指部1はそれぞれ、人の基節骨に対応する基節リンク9と、人の中節骨に対応する中節リンク11(第1リンク)と、人の末節骨に対応する末節リンク13(第2リンク)とを含む。
【0026】
基節リンク9は所定の方向に延びる棒状をなしている。基節リンク9は一端側において、中手リンク7に直交する2軸(図1の軸線L及び軸線Mの方向)を中心とする相対回転自在に連結されている。以下、基節リンク9と中手リンク7との接続部分をM関節15(又は、MP関節)と記載する。
【0027】
中節リンク11もまた所定の方向に延びる棒状をなしている。中節リンク11は一端側において、基節リンク9の他端側に所定の回転軸線(以下、第1回転軸線X)を中心とする相対回転自在に接続されている。以下、中節リンク11と基節リンク9との接続部分をP関節17(又は、PIP関節)と記載する。
【0028】
末節リンク13もまた所定の方向に延びる棒状をなしている。末節リンク13は一端側において、中節リンク11の他端側に所定の回転軸線(以下、第2回転軸線Y)を中心とする相対回転自在に接続されている。末節リンク13の他端は遊端となっている。以下、末節リンク13と中節リンク11との接続部分をD関節19(又は、DIP関節)と記載する。
【0029】
指部1には基節リンク9、中節リンク11、及び、末節リンク13をそれぞれ、相対回転させる駆動源21が設けられている。駆動源21の駆動によって、指部1は基節リンク9、中節リンク11、及び、末節リンク13が一直線状に並ぶ伸展位置(図1参照)と、M関節15、P関節17及びD関節19のいずれか一つが屈曲した屈曲位置とに変位する。
【0030】
中節リンク11は駆動源21にワイヤ27を介して回転駆動される(すなわち、ワイヤ駆動される)とよい。例えば、中節リンク11は、2つのワイヤ27を介して駆動源21に接続され、双方向に相対回転駆動されてもよい。具体的には、駆動源21がモータによって構成され、駆動源21が一方のワイヤ27を引っ張ることによって、中節リンク11は基節リンク9に対して一方向に相対回転する。駆動源21が他方のワイヤ27を引っ張ることによって、中節リンク11は基節リンク9に対して他方向に相対回転するように構成されるとよい。その他、中節リンク11は、1つのワイヤ27を介して駆動源21に接続されて、駆動源21により一方向に回転駆動され、ばねなどの付勢力によって他方向に回転駆動されるように構成されていてもよい。
【0031】
末節リンク13は駆動源21にワイヤ27を介して回転駆動されてもよく、また、基節リンク9や中節リンク11の回転によって、末節リンク13が回転するように、基節リンク9と末節リンク13との間や、中節リンク11と末節リンク13との間にワイヤ27やリンク機構などが設けられていてもよい。
【0032】
このように、指部1には、基節リンク9及び中節リンク11が第1回転軸線Xを中心とする相対回転自在に連結されたリンク機構(以下、第1リンク機構23)と、中節リンク11と末節リンク13とが第2回転軸線Yを中心とする相対回転自在に連結されたリンク機構(以下、第2リンク機構25)とが設けられている。本実施形態では、第1回転軸線X、及び、第2回転軸線Yは平行となるように構成されている。
【0033】
図2に示すように、P関節17及びD関節19にはそれぞれ、指部1先端に加わる荷重に基づく衝撃を吸収する構造が設けられている。本実施形態では、指部1先端に加わる荷重に基づく衝撃を吸収する構造は、中節リンク11に設けられている。以下、主に中節リンク11の構成について、図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
図2図3及び図4に示すように、中節リンク11は平板状をなす板状部材によって構成されている。中節リンク11は樹脂によって構成されていてもよく、また、金属などによって構成されていてもよい。図3に示すように、中節リンク11は基部31と、軸部33とを備えている。本実施形態では、中節リンク11は、2つの軸部33を備えている。基部31は樹脂などの材料によって、一体成形されることによって構成されている。
【0035】
図2及び図4に示すように、基部31は本体部41と、筒部43と、本体部41及び筒部43を接続する板ばね45とを有している。本実施形態では、基部31は2つの筒部43を備え、筒部43それぞれと本体部41とを接続する複数の板ばね45を備えている。
【0036】
図2に示すように、本体部41は中節リンク11の延在方向に延び、中節リンク11の外形を構成する。基部31は長円形状をなしていてもよく、また、ひょうたん形状をなしていてもよい。
【0037】
図3に示すように、本体部41には厚さ方向に貫通する2つの貫通孔51が設けられている。一方の貫通孔51(以下、第1貫通孔51A)は、基節リンク9側の端部に設けられ、他方の貫通孔51(以下、第2貫通孔51B)は、末節リンク13側の端部に設けられている。本実施形態では、第1貫通孔51A及び第2貫通孔51Bはともに円形をなしている。図2に示すように、第1貫通孔51Aは第2貫通孔51Bよりも大きく、第1貫通孔51Aの内径は、第2貫通孔51Bの内径よりも大きい。
【0038】
図2に示すように、基部31には、2つの筒部43が設けられている。筒部43はそれぞれ、対応する貫通孔51の略中心に位置し、貫通孔51の内周面と、筒部43と隙間44が形成されている。詳細には、図3に示すように、一方の筒部43(以下、第1筒部43A)は少なくともその一部が第1貫通孔51Aの内部に収容され、他方の筒部43(以下、第2筒部43B)は少なくともその一部が第2貫通孔51Bの内部に収容されている。第1筒部43A及び第2筒部43Bはそれぞれ間隔(隙間44)をおいて本体部41によって外囲されている。
【0039】
図4に示すように、第1筒部43Aは円筒形をなしている。図3に示すように、2つの軸部33のうち、一方の軸部33(以下、第1軸部33A)が第1筒部43Aに受容されている。第1軸部33Aは略円柱状をなしている。第1軸部33Aは第1筒部43Aに圧入されて固定されている。第1軸部33Aには滑り軸受47Aを介して、基節リンク9が接続されている。これにより、基節リンク9は第1軸部33Aに相対回転自在に連結されている。
【0040】
基節リンク9は第1軸部33Aに相対回転自在に連結され、第1軸部33Aは第1筒部43Aに固定され、第1筒部43Aは板ばね45を介して本体部41に接続されている。よって、基節リンク9は中節リンク11の本体部41に対して第1軸部33Aの軸線を中心として相対回転自在に結合される。すなわち、第1軸部33Aの軸線が上記の第1回転軸線Xに対応する。
【0041】
図4に示すように、第2筒部43Bは円筒形をなしている。図3に示すように、2つの軸部33のうち、一方の軸部33(以下、第2軸部33B)が第2筒部43Bに受容されている。第2軸部33Bは略円柱状をなしている。第2軸部33Bは第2筒部43Bに圧入されて固定されている。第2軸部33Bには滑り軸受47Bを介して、末節リンク13が接続されている。これにより、末節リンク13は第2軸部33Bに相対回転自在に連結されている。
【0042】
末節リンク13は第2軸部33Bに相対回転自在に連結され、第2軸部33Bは第2筒部43Bに固定され、第2筒部43Bは板ばね45を介して本体部41に接続されている。よって、末節リンク13は中節リンク11の本体部41に対して第2軸部33Bの軸線を中心として相対回転自在に結合される。すなわち、第2軸部33Bの軸線が上記の第2回転軸線Yに対応する。
【0043】
図4に示すように、中節リンク11には、第1筒部43Aと本体部41とを接続する複数の板ばね45(以下、第1板ばね45A)と、第2筒部43Bと本体部41とを接続する複数の板ばね45(以下、第2板ばね45B)とが設けられている。
【0044】
図5に示すように、第1板ばね45Aは、第1軸部33Aの軸線方向(すなわち、第1回転軸線Xの方向)と、第1軸部33Aの軸線方向の周方向とに延在する板状をなしている。第1板ばね45Aは、第1筒部43Aの外周面と、本体部41の第1貫通孔51Aの内周面(第1貫通孔51Aを画定する壁面)とを接続している。詳細には、第1板ばね45Aは、第1筒部43Aから、第1回転軸線X回りの一方に向けて、第1回転軸線Xから遠ざかる方向に延び、本体部41に接続されている。
【0045】
図4に示すように、第1板ばね45Aの第1回転軸線Xに沿う方向の幅は、第1板ばね45Aの厚みよりも大きくなるように設定されている。
【0046】
本実施形態では、図5に示すように、第1筒部43Aの外周面と、第1貫通孔51Aの内周面との間に、4つの第1板ばね45Aが設けられている。4つの第1板ばね45Aは同形状をなしている。4つの第1板ばね45Aは第1貫通孔51Aの中心線に対して回転対称をなし、周方向に等間隔に配置されている。
【0047】
4つの第1板ばね45Aは同形をなし、第1貫通孔51Aの中心線に対して回転対称に配置されている。そのため、第1筒部43Aに荷重が加わっていないときには、第1筒部43Aは第1貫通孔51Aの中心に位置する。よって、第1軸部33Aの軸線、すなわち、第1回転軸線Xは第1貫通孔51Aの中心線に重なり、第1回転軸線Xは第1貫通孔51Aの中心をその貫通方向に通過する。
【0048】
中節リンク11の側面視における、第1筒部43Aの中心軸線、及び、第1板ばね45Aの第1筒部43Aの外周面への接続地点を結ぶ半直線と、第1筒部43Aの中心軸線、及び、第1板ばね45Aの第1貫通孔51Aの内周面の接続地点を結ぶ半直線とがなす角度θAは、90度以上180度未満に設定されているとよい。ここでいう、第1板ばね45Aの第1筒部43Aの外周面への接続地点とは、第1板ばね45Aと第1筒部43Aとが接続されている部分の周方向の中点を意味し、第1板ばね45Aの第1貫通孔51Aの内周面の接続地点とは、第1板ばね45Aと第1貫通孔51Aの内周面とが接続されている部分の周方向の中点を意味する。
【0049】
図5に示すように、第2板ばね45Bは、第2軸部33Bの軸線方向(すなわち、第2回転軸線Yの方向)と、第2軸部33Bの軸線方向の周方向とに延在する板状をなしている。第2板ばね45Bは、第2筒部43Bの外周面と、本体部41の第2貫通孔51Bの内周面(第2貫通孔51Bを画定する壁面)とを接続している。詳細には、第2板ばね45Bは、第2筒部43Bから、第2回転軸線Y回りの一方に向けて、第2回転軸線Yから遠ざかる方向に延び、本体部41に接続されている。
【0050】
図4に示すように、第2板ばね45Bの第2回転軸線Yに沿う方向の幅は、第2板ばね45Bの厚みよりも大きくなるように設定されている。
【0051】
本実施形態では、図5に示すように、第2筒部43Bの外周面と、第2貫通孔51Bの内周面との間に、4つの第2板ばね45Bが設けられている。4つの第2板ばね45Bは同形状をなしている。4つの第2板ばね45Bは第2筒部43Bの中心軸線に対して回転対称をなし、周方向に等間隔に配置されている。
【0052】
4つの第2板ばね45Bは同形をなし、第2貫通孔51Bの中心線に対して回転対称に配置されている。そのため、第2筒部43Bに荷重が加わっていないときには、第2筒部43Bは第2貫通孔51Bの中心に位置する。よって、第2軸部33Bの軸線、すなわち、第2回転軸線Yは第2貫通孔51Bの中心線に重なり、第2回転軸線Yは第2貫通孔51Bの中心をその貫通方向に通過する。
【0053】
中節リンク11の側面視における、第2筒部43Bの中心軸線、及び、第2板ばね45Bの第2筒部43Bへの接続地点を結ぶ半直線と、第2筒部43Bの中心軸線、及び、第2板ばね45Bの第2貫通孔51Bの内周面の接続地点を結ぶ半直線とがなす角度θBは、90度以上180度未満に設定されているとよい。ここでいう、第2板ばね45Bの第2筒部43Bへの接続地点とは、第2板ばね45Bと第2筒部43Bとが接続されている部分の周方向の中点を意味し、第2板ばね45Bの第2貫通孔51Bの内周面の接続地点とは、第2板ばね45Bと第2貫通孔51Bの内周面とが接続されている部分の周方向の中点を意味する。
【0054】
図4に示すように、第1板ばね45Aの第1回転軸線Xに沿う方向の幅は、第2板ばね45Bの第2回転軸線Yに沿う方向の幅よりも大きくなるように設定されている。本実施形態では、更に、第1板ばね45Aの厚みは、第2板ばね45Bの厚みよりも大きくなるように設定されている。
【0055】
その他、図4に示すように、中節リンク11には、中節リンク11や末節リンク13を駆動させるためのワイヤ27を掛けるための溝53(図1も参照)や、ワイヤ27を係止するための係止部55が設けられている。
【0056】
次にこのように構成したリンク機構(第1リンク機構23及び第2リンク機構25)と、指部1(エンドエフェクタ)との動作及び効果について説明する。
【0057】
基節リンク9、中節リンク11、及び末節リンク13が一直線となるように配置されているとき、すなわち指部1が進展しているとき(図1参照)に、指部1の先端に衝撃力が加わり、掌部3に向く荷重が加わる場合がある。
【0058】
このとき、末節リンク13には第2回転軸線Yに向く荷重が加わる。これにより、滑り軸受47Bを介して、第2軸部33B及び第2筒部43Bにもまた、第2回転軸線Yに向く荷重が加わる。
【0059】
第2筒部43Bに加わる第2回転軸線Yに向く荷重は、第2筒部43Bを第2貫通孔51Bの中心からずらすように作用する。これにより、第2板ばね45Bがそれぞれ撓み、第2板ばね45Bによってその荷重に抗するように第2筒部43Bや本体部41に付勢力が付与される。これにより、第2回転軸線Yに向く荷重が第2板ばね45B(付勢手段)によって緩和され、第2リンク機構25の保護が図られる。
【0060】
末節リンク13に加わる荷重は、中節リンク11にも伝わる場合がある。このとき、本体部41には第1回転軸線Xに向く荷重が加わることがある。これにより、本体部41には、第1筒部43Aを第1貫通孔51Aの軸線からずらすように荷重が加わる。これにより、第1板ばね45Aがそれぞれ撓み、第1板ばね45Aからその荷重に抗するように第1筒部43Aや本体部41に付勢力が付与される。これにより、第1回転軸線Xに向く荷重が第1板ばね45A(付勢手段)によって吸収され、第1リンク機構23の保護が図られる。
【0061】
第1板ばね45A及び第2板ばね45Bはそれぞれ、基部31と筒部43との間に設けられている。これにより、中節リンク11に加わる第1回転軸線X、第2回転軸線Yに向く荷重に抗する付勢力を付与することができる。よって、突き指の際に人の指に加わる荷重と同様の荷重が加わった場合でも、第1板ばね45A及び第2板ばね45Bによって荷重を緩和することができる指部1(エンドエフェクタ)を構成することができる。このように、第1板ばね45A及び/又は第2板ばね45Bによって荷重のピーク値の緩和が行われることによって、指部1の保護を図ることができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1軸部33A及び第2軸部33Bをそれぞれ、その軸線を中心として回転させる荷重が加わったときにも、第1板ばね45A及び/又は第2板ばね45Bが弾性変形し、その荷重に抗するように付勢力を付与する。このように、第1板ばね45A及び第2板ばね45Bは全方向ばねとして機能し、第1回転軸線X、第2回転軸線Yに向く直線荷重のみではなく、各リンクを相対回転させるモーメント荷重も緩和することができる。
【0063】
第2板ばね45Bは、第2回転軸線Yの延在方向と、第2回転軸線Yの周方向とに延在する板状をなすように構成されている。第2板ばね45Bは、第2筒部43Bの外周面から第2回転軸線Y回りの一方に向けて、第2回転軸線Yから遠ざかる方向に延び、本体部41に接続されている。
【0064】
これにより、第2板ばね45Bを、第2筒部43Bを本体部41に対して相対変位させる荷重に抗するように構成することができる。これにより、末節リンク13に第2回転軸線Yに向く荷重や、第2回転軸線Yから離れる方向に荷重に抗する付勢力を付与することができるように、第2板ばね45Bを構成することができる。
【0065】
同様に、第1板ばね45Aは、第1回転軸線Xの延在方向と、第1回転軸線Xの周方向とに延在する板状をなすように構成されている。第1板ばね45Aは、第1筒部43Aの外周面から第1回転軸線X回りの一方に向けて、第1回転軸線Xから遠ざかる方向に延び、本体部41に接続されている。
【0066】
これにより、第1板ばね45Aを、第1筒部43Aを本体部41に対して相対変位させる荷重に抗するように構成することができる。これにより、中節リンク11に加わる第1回転軸線Xに向く荷重や、第1筒部43Aを第1貫通孔51Aの中心からずらす荷重に抗する付勢力を付与することができるように、第1板ばね45Aを構成することができる。
【0067】
第1板ばね45A及び第2板ばね45Bによって、第1筒部43A及び第2筒部43Bそれぞれの本体部41に対する相対変位に抗する付勢力が付与される。このように、第1板ばね45A、第2板ばね45Bによって、付勢力を付与する付勢手段が構成できるため、付勢手段の構成が簡素である。また、第1板ばね45A、第2板ばね45Bを本体部41と一体成形することができるため、第1板ばね45A、第2板ばね45Bを別体で構成する場合に比べて、指部1を構成する部材の数を低減することができ、また、組立工数を少なくすることができる。
【0068】
第1板ばね45Aの第1回転軸線Xに沿う方向の幅はその厚みよりも大きい。これにより、第1軸部33Aの第1回転軸線Xに平行な方向の移動が防止できる。同様に、第2板ばね45Bの第1回転軸線Xに沿う方向の幅はその厚みよりも大きいため、第2軸部33Bの第2回転軸線Yに平行な方向の移動が防止できる。
【0069】
本実施形態では、第1板ばね45Aの第1回転軸線Xに沿う方向の幅は、第2板ばね45Bの第2回転軸線Yに沿う方向の幅よりも大きくなるように設定されている。更に、第1板ばね45Aの厚みは、第2板ばね45Bの厚みよりも大きくなるように設定されている。
【0070】
このように、指部1先端側に設けられた板ばね45の厚みや幅を小さくすることによって、指部1先端側(遊端側)に位置する関節に設けられる付勢手段のばね定数を小さくすることができる。これにより、指部1先端側に設けられたリンク(本実施形態では、末節リンク13)が荷重に応じて変位し易くなる。これにより、人の手と同様に、指部1の先端側に基端側に比べてしなやかさを持たせることができる。
【0071】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【0072】
例えば、上記実施形態では、リンク機構(第1リンク機構23、第2リンク機構25)及びエンドエフェクタが人型ロボットのロボットハンドの指部1に設けられた例を示した。但し、リンク機構及びエンドエフェクタが設けられる装置は、多関節を有した装置であればよく、人型以外のロボットや、移動手段として車輪や無限軌道、オムニホイール等の走行ユニットを備えたロボット、移動不能なロボット、各種産業用のロボットに適用されてもよい。
【0073】
また、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、或いは、制御の手順など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。また、上記実施形態に示した各構成要素や手順は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。上記実施形態では、指部1先端側に位置する関節に設けられた板ばね45の厚み及び幅がともに小さくなるように構成されていたが、先端側に位置する関節に設けられた付勢手段(板ばね45)のばね定数が小さくなるように構成されていれば、いかなる態様であってもよい。例えば、先端側に位置する関節に設けられた板ばね45の厚み及び幅のいずれか一方が小さくなるように構成されて、遊端側に位置する関節に設けられた板ばね45のばね定数を小さくなるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 :指部(エンドエフェクタ)
9 :基節リンク
11 :中節リンク
13 :末節リンク
21 :駆動源
23 :第1リンク機構
25 :第2リンク機構
31 :基部
33 :軸部
33A :第1軸部
33B :第2軸部
41 :本体部
43 :筒部
43A :第1筒部
43B :第2筒部
44 :隙間
45 :板ばね
45A :第1板ばね
45B :第2板ばね
X :第1回転軸線
Y :第2回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5