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特開2024-177238二軸延伸ポリプロピレンフィルム及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177238
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリプロピレンフィルム及び積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/32 E
B32B27/32 103
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024170060
(22)【出願日】2024-09-30
(62)【分割の表示】P 2024073488の分割
【原出願日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2023083206
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023209564
(32)【優先日】2023-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】植本 咲衣
(72)【発明者】
【氏名】中島 禎彦
(72)【発明者】
【氏名】濱田 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺本 靖丈
(57)【要約】
【課題】リサイクル原料を使用しても剛性や耐熱性を損なわずに製膜性に優れた二軸延伸ポリプロピレンフィルム及び積層体を提供する。
【解決手段】基材層にリサイクル原料が配合されてなる積層フィルムのうち、縦方向の弾性率が2.0GPa以上かつ横方向の弾性率が4.0GPa以上であり、熱機械測定装置(TMA)にて測定した30℃から150℃まで20℃/minで昇温し縦(MD)方向に荷重0.32Nを加えた際の140℃における縦(MD)方向の寸法変化率L140(%)と120℃における縦(MD)方向の寸法変化率L120(%)との差(L140-L120)が15以下であって、基材層は、メソペンタッド分率が95%以上であるポリプロピレン樹脂(A)55重量%以上と、MFRが3.0~11.0g/10minであり、融解ピーク温度が145~170℃でありかつ融解エンタルピー(ΔH)が87.0J/g以上であるリサイクル原料(B)5~25重量%と、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)を0~10重量%とを含む少なくとも2種以上の異なる樹脂が混合された樹脂混合体よりなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の一側又は両側に表層が積層されてなり、
前記基材層にポリプロピレン樹脂を主体とする成形物を由来とするリサイクル原料が配合されてなる積層フィルムのうち、
JIS K 7127(1999)に準拠して測定した縦(MD)方向の弾性率が2.0GPa以上かつ横(TD)方向の弾性率が4.0GPa以上であり、
熱機械測定装置(TMA)にて測定した30℃から150℃まで20℃/minで昇温し縦(MD)方向に荷重0.32Nを加えた際の140℃における縦(MD)方向の寸法変化率L140(%)と120℃における縦(MD)方向の寸法変化率L120(%)との差(L140-L120)が15以下である前記積層フィルムであって、
前記基材層は、
メソペンタッド分率(mmmm)が95%以上であるポリプロピレン樹脂(A)55重量%以上と、
メルトフローレート(MFR)が3.0~11.0g/10minであり、示差走査熱量計(DSC)でJIS K 7122(2012)に準拠して測定した融解ピーク温度が145~170℃であり、かつ、融解エンタルピー(ΔH)が87.0J/g以上である前記リサイクル原料(B)5~25重量%と、
を含む少なくとも2種以上の異なる樹脂が混合された樹脂混合体よりなる
ことを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
前記リサイクル原料(B)は、示差走査熱量計(DSC)でJIS K 7122(2012)に準拠して測定した結晶化温度が105℃以上である請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
前記リサイクル原料(B)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で求められる分子量分布(Mw/Mn、Mz+1/Mw)の関係がMw/Mn<Mz+1/MwかつMz+1/Mw≧4.7を満たす請求項1又は2に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
Mw:重量平均分子量
Mn:数平均分子量
Mz+1:Z+1平均分子量
【請求項4】
前記基材層にプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)が10重量%以下含まれる請求項1又は2に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
前記基材層にプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)が10重量%以下含まれる請求項3に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層された積層体。
【請求項7】
請求項3に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層された積層体。
【請求項8】
請求項4に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層された積層体。
【請求項9】
請求項5に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層された積層体。
【請求項10】
前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムである請求項6に記載の積層体。
【請求項11】
前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムである請求項7に記載の積層体。
【請求項12】
前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムである請求項8に記載の積層体。
【請求項13】
前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムである請求項9に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ポリプロピレンフィルム及びこのフィルムを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、延伸ポリプロピレンフィルムは、その優れた透明性、機械的強度、防湿性、剛性等を活かして包装材料をはじめ種々の用途に広く用いられている。近年では環境負荷低減の観点から、ポリプロピレンの使用量の削減を目的に、厚みを減らす等の工夫がされる。
【0003】
厚みの薄い延伸ポリプロピレンフィルムにあっては、使用感を損なわないためにユーザーから剛性の維持が求められていることから、従来の延伸ポリプロピレンフィルムよりも、著しく剛性を向上させる必要がある。また、延伸ポリプロピレンフィルムには印刷やラミネート加工が行われるため、剛性を向上させつつも、十分な耐熱性、寸法安定性も要求される。そこで、フィルムの縦(MD)方向及び横(TD)方向の熱収縮率や、衝撃強度(耐衝撃性)を調整することによって、高い耐熱性や剛性等が付与された二軸延伸ポリプロピレンフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、持続可能な開発目標(SDGs)の推進により、環境へ配慮した循環型社会の実現に向けた取り組みとして、例えば、温暖化の原因の1つとされる二酸化炭素等の温室効果ガスの排出を抑制するために再生可能エネルギーを利用すること等が挙げられる。そこで、樹脂フィルムの分野においては、石油由来の原料に替えて植物由来の原料(バイオマス原料)を使用するフィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。植物由来の原料は、カーボンニュートラルな資源であるから、石油由来の原料と比較して環境負荷低減に貢献することができる資源として有効である。
【0005】
さらに、環境に配慮した取り組みとしては、リサイクル原料の使用が挙げられる。フィルムを構成する材料として使用が想定されるリサイクル原料としては、再利用されるフィルムをはじめとして、フィルム生産時に発生する端切れ等のスクラップや余剰生産品等、市場に出る前の製品製造工程で発生した材料を再利用するポストインダストリアルリサイクルによるリサイクル材料と、市場で使用済みの製品を回収、再生資源化したポストコンシューマーリサイクルによるリサイクル材料等が挙げられる。また、これらリサイクル原料を成形する手法として、再利用の際に粉砕、溶融しペレット状に成形するメカニカルリサイクルという手法が一般的に用いられることが多い。
【0006】
これらメカニカルリサイクル原料の中で、延伸ポリプロピレンに使用されるものは、主にポリプロピレンが主原料として用いられている。その中でも種類が異なる樹脂や、帯電防止剤、アンチブロッキング剤等の添加剤のほか、これら添加剤のマスターバッチに用いられる樹脂等、主原料の樹脂と異なる材料が不特定の割合で含有されることがある。そして、リサイクル原料に含有されるこれら異材料は、技術的又は経済的に除去することが困難である。そのため、リサイクル原料は、異材料が残留したまま再利用される。
【0007】
このようなリサイクル原料が使用された高剛性・高耐熱の二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、リサイクル原料に含有される異材料の影響により、弾性率等のフィルムの剛性や耐熱性等のフィルム性能が低下する傾向がある。そのため、従来では、高剛性・高耐熱の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造に際して、この種のリサイクル原料を使用することは適しているとはいえず、実用に至らなかった。
【0008】
しかしながら、環境へ配慮する社会的要請により、温室効果ガス排出削減や石油資源の効率利用等に寄与することを目的として、リサイクル原料を使用することが求められる。また、リサイクル原料の使用は、経済的合理性にも適うものであり、有用性が高まっている。そこで発明者らは鋭意検討を重ね、異材料が含有されるリサイクル原料を使用しても各フィルム性能を損なわずに製膜性にも優れたフィルムを発明するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-055283号公報
【特許文献2】特開2021-133509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、リサイクル原料を使用しても剛性や耐熱性を損なわずに製膜性に優れた二軸延伸ポリプロピレンフィルム及び積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、第1の発明は、基材層と、前記基材層の一側又は両側に表層が積層されてなり、前記基材層にポリプロピレン樹脂を主体とする成形物を由来とするリサイクル原料が配合されてなる積層フィルムのうち、JIS K 7127(1999)に準拠して測定した縦(MD)方向の弾性率が2.0GPa以上かつ横(TD)方向の弾性率が4.0GPa以上であり、熱機械測定装置(TMA)にて測定した30℃から150℃まで20℃/minで昇温し縦(MD)方向に荷重0.32Nを加えた際の140℃における縦(MD)方向の寸法変化率L140(%)と120℃における縦(MD)方向の寸法変化率L120(%)との差(L140-L120)が15以下である前記積層フィルムであって、前記基材層は、メソペンタッド分率(mmmm)が95%以上であるポリプロピレン樹脂(A)55重量%以上と、メルトフローレート(MFR)が3.0~11.0g/10minであり、示差走査熱量計(DSC)でJIS K 7122(2012)に準拠して測定した融解ピーク温度が145~170℃であり、かつ、融解エンタルピー(ΔH)が87.0J/g以上である前記リサイクル原料(B)5~25重量%と、を含む少なくとも2種以上の異なる樹脂が混合された樹脂混合体よりなることを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記リサイクル原料(B)は、示差走査熱量計(DSC)でJIS K 7122(2012)に準拠して測定した結晶化温度が105℃以上である二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0013】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記リサイクル原料(B)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で求められる分子量分布(Mw/Mn、Mz+1/Mw)の関係がMw/Mn<Mz+1/MwかつMz+1/Mw≧4.7を満たす二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0014】
第4の発明は、第1又は2の発明において、前記基材層にプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)が10重量%以下含まれる二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0015】
第5の発明は、第3の発明において、前記基材層にプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)が10重量%以下含まれる二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0016】
第6の発明は、第1又は2の発明に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層された積層体に係る。
【0017】
第7の発明は、第3の発明に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層された積層体に係る。
【0018】
第8の発明は、第4の発明に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層された積層体に係る。
【0019】
第9の発明は、第5の発明に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層された積層体に係る。
【0020】
第10の発明は、第6の発明において、前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムである積層体に係る。
【0021】
第11の発明は、第7の発明において、前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムである積層体に係る。
【0022】
第12の発明は、第8の発明において、前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムである積層体に係る。
【0023】
第13の発明は、第9の発明において、前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムである積層体に係る。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、基材層と、前記基材層の一側又は両側に表層が積層されてなり、前記基材層にポリプロピレン樹脂を主体とする成形物を由来とするリサイクル原料が配合されてなる積層フィルムのうち、JIS K 7127(1999)に準拠して測定した縦(MD)方向の弾性率が2.0GPa以上かつ横(TD)方向の弾性率が4.0GPa以上であり、熱機械測定装置(TMA)にて測定した30℃から150℃まで20℃/minで昇温し縦(MD)方向に荷重0.32Nを加えた際の140℃における縦(MD)方向の寸法変化率L140(%)と120℃における縦(MD)方向の寸法変化率L120(%)との差(L140-L120)が15以下である前記積層フィルムであって、前記基材層は、メソペンタッド分率(mmmm)が95%以上であるポリプロピレン樹脂(A)55重量%以上と、メルトフローレート(MFR)が3.0~11.0g/10minであり、示差走査熱量計(DSC)でJIS K 7122(2012)に準拠して測定した融解ピーク温度が145~170℃であり、かつ、融解エンタルピー(ΔH)が87.0J/g以上である前記リサイクル原料(B)5~25重量%と、を含む少なくとも2種以上の異なる樹脂が混合された樹脂混合体よりなるため、リサイクル原料中の異材料の有無に左右されることなく、剛性や耐熱性等のフィルム性能を損なわずに優れた製膜性が得られる。
【0025】
第2の発明に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、第1の発明において、前記リサイクル原料(B)は、示差走査熱量計(DSC)でJIS K 7122(2012)に準拠して測定した結晶化温度が105℃以上であるため、結晶化速度が速くなって良好な剛性を得ることができる。
【0026】
第3の発明に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、第1又は2の発明において、前記リサイクル原料(B)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で求められる分子量分布(Mw/Mn、Mz+1/Mw)の関係がMw/Mn<Mz+1/MwかつMz+1/Mw≧4.7を満たすため、高い剛性を維持することができる。
【0027】
第4の発明に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、第1又は2の発明において、前記基材層にプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)が10重量%以下含まれるため、フィルムの延伸可能な温度範囲を広げて延伸斑による不良率を低減させて生産の高効率化を図ることができる。
【0028】
第5の発明に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、第3の発明において、前記基材層にプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)が10重量%以下含まれるため、フィルムの延伸可能な温度範囲を広げて延伸斑による不良率を低減させて生産の高効率化を図ることができる。
【0029】
第6の発明に係る積層体によると、第1又は2の発明に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層されたため、リサイクル原料が配合されても剛性や耐熱性等のフィルム性能が損なわれず、環境負荷低減を図った包装用フィルム等のフィルム製品として好適に使用することができる。
【0030】
第7の発明に係る積層体によると、第3の発明に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層されたため、リサイクル原料が配合されても剛性や耐熱性等のフィルム性能が損なわれず、環境負荷低減を図った包装用フィルム等のフィルム製品として好適に使用することができる。
【0031】
第8の発明に係る積層体によると、第4の発明に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層されたため、リサイクル原料が配合されても剛性や耐熱性等のフィルム性能が損なわれず、環境負荷低減を図った包装用フィルム等のフィルム製品として好適に使用することができる。
【0032】
第9の発明に係る積層体によると、第5の発明に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシーラントフィルムが積層されたため、リサイクル原料が配合されても剛性や耐熱性等のフィルム性能が損なわれず、環境負荷低減を図った包装用フィルム等のフィルム製品として好適に使用することができる。
【0033】
第10の発明に係る積層体によると、第6の発明において、前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムであるため、優れたリサイクル適性やヒートシール強度が得られる。
【0034】
第11の発明に係る積層体によると、第7の発明において、前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムであるため、優れたリサイクル適性やヒートシール強度が得られる。
【0035】
第12の発明に係る積層体によると、第8の発明において、前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムであるため、優れたリサイクル適性やヒートシール強度が得られる。
【0036】
第13の発明に係る積層体によると、第9の発明において、前記シーラントフィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムであるため、優れたリサイクル適性やヒートシール強度が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の一実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、基材層と、基材層の一側又は両側に積層される表層とを有する積層フィルムである。この二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、基材層にリサイクル原料が配合される。本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、Tダイ法等の公知のフィルム製造方法により製造される。このフィルムは、例えば、食品、日用品、雑貨、化粧品、薬剤、その他製品等の包装用フィルム等に好適に使用される。包装用フィルムは、適宜包装袋として製袋することも可能である。
【0038】
当該二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、包装用フィルム等の種々の用途で要求される物性として、縦(MD)方向の弾性率が2.0GPa以上かつ横(TD)方向の弾性率が4.0GPa以上であり、熱機械測定装置(TMA)にて測定した30℃から150℃まで20℃/minで昇温し縦(MD)方向に荷重0.32Nを加えた際の140℃における縦(MD)方向の寸法変化率(L140)%と120℃における縦(MD)方向の寸法変化率(L120)%との差(L140-L120)が15以下であり、縦(MD)方向及び横(TD)方向の熱収縮率がそれぞれ10%以下であることを満たす。
【0039】
弾性率は、JIS K 7127(1999)に準拠する引張特性の試験方法により測定された値である。弾性率は、フィルムの剛性の指標の1つとして用いられる。弾性率の値が高いフィルムであるほど高い剛性を備えてコシ感が強くなることを示す。二軸延伸ポリプロピレンフィルムの縦(MD)方向の弾性率が2.0GPa以上かつ横(TD)方向の弾性率が4.0GPa以上であることにより、包装用フィルム等の種々の用途に対応する優れた加工適性が得られる。縦(MD)方向の弾性率又は横(TD)方向の弾性率が低すぎると、変形等が生じやすい加工適性に劣ったフィルムとなって、生産性の低下を招くおそれがある。
【0040】
寸法変化率は、フィルムが昇温によって変形する割合を示し、フィルムの伸び性能等の寸法安定性の指標として用いられる。特に、金属や無機酸化物層の蒸着、印刷、ラミネート等のフィルムの二次加工時にフィルムに張力がかかる等のフィルムが伸縮する状態を想定した寸法安定性である。
【0041】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、熱機械測定装置(TMA)にて測定した30℃から150℃まで20℃/minで昇温し縦(MD)方向に荷重0.32Nを加えた際の140℃における縦(MD)方向の寸法変化率をL140(%)、120℃における縦(MD)方向の寸法変化率をL120(%)として、寸法変化率L140と寸法変化率L120との差(L140-L120)が15以下であることが要求される。寸法変化率の差(寸法安定度)が15以下であるということは、昇温による変形の割合が小さく寸法安定性に優れることを示す。寸法変化率の差が大きすぎると、昇温によってフィルムが変形しやすく、寸法安定性が劣る。そのため、印刷等の二次加工時のしわの発生や外観の悪化等、生産性の低下を招くおそれがある。
【0042】
熱収縮率は、所定温度におけるフィルムの収縮する割合を示し、フィルムの縮み性能等の寸法安定性の指標として用いられる。本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、150℃・5分の加熱処理における縦(MD)方向及び横(TD)方向の熱収縮率がそれぞれ10%以下であることが要求される。熱収縮率が10%以下であると、高温でフィルムが収縮しにくく、寸法安定性に優れることを示す。縦(MD)方向と横(TD)方向のいずれか又は双方の熱収縮率が大きすぎると、高温でのフィルムが収縮しやすく、寸法安定性が劣る。そのため、包装工程におけるしわの発生や外観の悪化等、生産性の低下を招くおそれがある。
【0043】
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、包装用フィルム等の用途において求められる透明性を有することが好ましい。フィルムの透明性は、JIS K 7136(2000)に準拠して測定したヘーズ値によって表される。当該フィルムにおいて好ましいヘーズ値は、5.0%以下である。ヘーズ値が大きすぎると、包装用フィルム等で一般的に要求される透明性が不足するため、好ましくない。
【0044】
基材層は、ポリプロピレン樹脂(A)55重量%以上と、リサイクル原料(B)5~25重量%とを含む少なくとも2種以上の異なる樹脂が混合された樹脂混合体よりなる。基材層には、上記ポリプロピレン樹脂(A)とリサイクル原料(B)以外に、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)や、帯電防止剤やアンチブロッキング剤等を含むマスターバッチ等の添加剤が必要に応じて混合される。
【0045】
ポリプロピレン樹脂(A)は、メソペンタッド分率(mmmm)が95%以上であることを要する。メソペンタッド分率(mmmm)は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって得られる立体規則性の指標である。メソペンタッド分率(mmmm)の測定は、FT-NMR装置(株式会社JEOL RESONANCE社製、「JNM-ECA400」)を用い、13C-NMR測定を行った。試料120mgに重水素化オルトジクロロベンゼン:重ベンゼン=8:2(体積比)の混合液0.6mLを加え、135℃に加温して溶解し、135℃で測定した。メソペンタッド分率は、「Zambelliら、Macromolecules,第6巻,925頁(1973)」に記載の方法によって算出し、ピークの帰属に関しては、「Macromolecules、8巻、687頁(1975)」に記載の上記文献の訂正版に基づいて行った。
観測核:13C(100MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス間隔:5秒
パルス幅:45°
シフト基準:溶媒由来シグナル=132.39ppm
積算回数:11,000回
【0046】
立体規則性度を表すペンタッド分率は、13C-NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の存在割合を示している。このペンタッド分率は、プロピレン単位で5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマーの分率(mmmm)である。具体的には、13C-NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中mmmmピークの強度分率をアイソタクチックのペンタッド単位とする。
【0047】
基材層がメソペンタッド分率(mmmm)95%以上のポリプロピレン樹脂を主体とした配合であることにより、結晶性が向上しやすく、剛性、耐熱性に優れた樹脂層となる。このポリプロピレン樹脂の配合割合が少なすぎると、フィルムの剛性や耐熱性等が低下するおそれがある。また、ポリプロピレンフィルムのメソペンタッド分率が95%未満である場合も、同様にフィルムの剛性や耐熱性等が低下するおそれがある。
【0048】
リサイクル原料(B)は、フィルム成形物、フィルム生産時に発生する端切れ等のスクラップや余剰生産品、その他の樹脂製品等、主としてポリプロピレン樹脂成形物を由来とし、これらに再ペレット化等の再原料化加工を施して得られる樹脂材料である。このリサイクル原料には、主原料として用いられる樹脂と種類が異なる樹脂、帯電防止剤、アンチブロッキング剤等の添加剤のほか、これら添加剤のマスターバッチに用いられる樹脂等、主原料とは異なる除去困難な材料である異材料が残留した樹脂成形物も含まれる。このような樹脂成形物に残留する異材料を含んだリサイクル原料を二軸延伸ポリプロピレンフィルムの構成材料として使用する場合、通常は弾性率等のフィルムの剛性や耐熱性等のフィルム性能を低下させる原因となる。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、基材層の主原料が高結晶性のポリプロピレン樹脂であるため、リサイクル原料に結晶性が低い樹脂が含まれる場合もフィルム性能を低下させる原因となりうる。
【0049】
そこで、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、配合されるリサイクル原料のメルトフローレート、融解ピーク温度、融解エンタルピーに着目して、所定条件のメルトフローレート、融解ピーク温度、融解エンタルピーを備えたリサイクル原料を使用することによって、フィルム性能の低下の原因となる異材料の有無に左右されることなく、剛性や耐熱性等のフィルム性能を損なわずに優れた製膜性を得ることが可能であることを見出した。
【0050】
すなわち、リサイクル原料は、メルトフローレート(MFR)が3.0~11.0g/10minであり、融解ピーク温度が145~170℃であり、かつ、融解エンタルピー(ΔH)が87.0J/g以上であることを要する。リサイクル原料のメルトフローレート(MFR)、融解ピーク温度、融解エンタルピー(ΔH)の好ましい条件は、いずれも異材料が含まれることも考慮して設定される。
【0051】
メルトフローレート(MFR)は、樹脂の流動性の指標として用いられる。MFRは、値が大きいほど優れた流動性が示される。MFRが小さすぎるリサイクル原料を使用すると流動性の不足によるフィルムの成形性の低下を招くおそれがある。MFRが大きすぎると、過剰な流動性によるフィルムの成形性の低下を招くおそれがある。MFRが3.0~11.0g/10minのリサイクル原料を使用することにより、リサイクル原料に異材料が含まれる場合でも良好なフィルムの成形性が得られる。
【0052】
融解ピーク温度は、示差走査熱量計(DSC)でJIS K 7122(2012)に準拠して測定した値である。融解ピーク温度は、樹脂の耐熱性の指標の1つとして用いられる。融解ピーク温度が低すぎるリサイクル原料を使用すると、耐熱性が不足してフィルムの熱収縮率が大きくなってフィルムが熱変形しやすくなり、フィルムの剛性や寸法安定性も低下するおそれがある。また、融解ピーク温度としては、リサイクル原料として使用可能な樹脂成形物の融解ピーク温度が170℃を上回る例がほとんど見られないことから、現実的な上限値として170℃が適当であると考えられる。そのため、融解ピーク温度が145~170℃のリサイクル原料を使用することにより、リサイクル原料に異材料が含まれる場合でも良好な耐熱性が得られてフィルムの熱変形を抑制するとともに、フィルムの剛性や寸法安定性の悪化を抑制することができる。
【0053】
融解エンタルピー(ΔH)は、示差走査熱量計(DSC)でJIS K 7122(2012)に準拠して測定した樹脂が融解する際に必要なエネルギーである。融解エンタルピーは、樹脂の耐熱性の指標の1つとして用いられる。融解エンタルピーが低すぎるリサイクル原料を使用すると、耐熱性が不足してフィルムが熱変形しやすくなり、フィルムの剛性や寸法安定性も低下するおそれがある。リサイクル原料の融解エンタルピーは、熱安定性の観点から87.0J/g以上必要であり、これによりリサイクル原料に異材料が含まれる場合でも良好な耐熱性が得られてフィルムの熱変形を抑制するとともに、フィルムの剛性や寸法安定性の悪化を抑制することができる。
【0054】
また、リサイクル原料としては、結晶化温度が105℃以上であることが好ましい。結晶化温度は、示差走査熱量計(DSC)でJIS K 7122(2012)に準拠して測定した値である。結晶化温度は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの剛性、耐熱性、成形性等に作用する。リサイクル原料の結晶化温度が低すぎると、耐熱性が低下してフィルムが熱変形しやすくなり、フィルムの剛性や寸法安定性等を低下させるおそれがある。リサイクル原料の結晶化温度が105℃以上であれば、結晶化速度が速くなって良好な剛性を得ることができ、フィルムの寸法安定性の悪化等を抑制することができる。
【0055】
さらに、リサイクル原料は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で求められる分子量分布(Mw/Mn、Mz+1/Mw)の関係がMw/Mn<Mz+1/MwかつMz+1/Mw≧4.7を満たすことが好ましい。上記分子量分布において、Mwは重量平均分子量であり、各分子の数に分子量を乗じた後に平均を求めた値である。Mnは数平均分子量であり、分子の構成を単純に数で平均化した値である。
【0056】
Mz+1(Z+1平均分子量)はMwよりも高分子量の存在に影響を受けやすい数値であるMzよりもさらに分子量の高い部分の影響を受ける。なお、Mz+1は下記式(i)で、Mz(Z平均分子量)は下記式(ii)でそれぞれ定義される。
Mz+1=Σ(Ni・Mi)/Σ(Ni・Mi) … (i)
Mz=Σ(Ni・Mi)/Σ(Ni・Mi) … (ii)
【0057】
Mw/Mnは、各分子の分子量分布を表す指標である。また、Mz+1/Mwは、高分子量成分の分子量分布を表す指標である。分子量分布の関係において、Mw/Mn<Mz+1/Mwとなる場合、高分子量成分の分子量分布が広く、非常に高い分子量成分が存在し、さらに成分割合が高いことを意味する。このような高分子量成分が多いリサイクル原料を使用することにより、二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて高い剛性を維持することができる。また、その際のMz+1/Mwは、4.7以上である。Mz+1/Mwが低すぎると、高分子量成分の成分割合が不十分で高い剛性を維持することができなくなるおそれがある。
【0058】
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、フィルムの延伸可能な温度範囲を広げて延伸斑による不良率を低減させて生産の高効率化を図るために、必要に応じて配合される樹脂材料である。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体をフィルムの基材層に配合することにより、さらにTMA測定におけるMD方向の寸法変化率等を調整しやすくなる。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を配合する場合の割合は、10重量%以下が好ましい。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体が多すぎると、フィルムの剛性や耐熱性等が低下するおそれがある。
【0059】
基材層に配合されるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、プロピレンと、プロピレンを除く適宜のα-オレフィンとのランダム共重合体である。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。これら共重合体は、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の中でも、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体が好ましく、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体がさらに好ましい。
【0060】
表層は、基材層の一側又は両側に積層される樹脂層である。表層は、蒸着、印刷、ラミネート等のフィルムの二次加工が施される層である。表層を構成する樹脂材料は、リサイクル適性の観点から、基材層と同様の樹脂材料となるポリプロピレン樹脂を主体とすることが好ましい。ポリプロピレン樹脂としては、基材層と同種のポリプロピレン樹脂でもよいし、異種のポリプロピレン樹脂でもよい。例えば、基材層の片面に表層が積層される場合、当該フィルムは1種2層構造又は2種2層構造とすることができる。また、基材層の両面に表層が積層される場合、当該フィルムは、1種3層構造、2種3層構造、3種3層構造のいずれかとすることができる。さらに、3層以上の二軸延伸フィルムとして、基材層と表層との間に必要に応じて中間層等の任意の層を積層させてもよい。
【0061】
表層では、当該フィルムの剛性、耐熱性、寸法安定性等を確保する観点から、使用されるポリプロピレン樹脂のペンタッド分率を90%以上とすることが好ましい。また、帯電防止性能を効果的にブリードアウトさせたり、ヒートシール性能を付与したりする場合には、所望する積層フィルムの物性を損なわない範囲で低結晶性の樹脂を使用することも可能である。低結晶性の樹脂としては、例えばプロピレンとα-オレフィン(ただし、プロピレンを除く)とのランダム共重合体であり、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体等が挙げられる。
【0062】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、必要に応じて添加剤が適宜添加される。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、無機又は有機の充填剤等が挙げられる。帯電防止剤としては例えば、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン等の脂肪族アミン化合物、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド等の脂肪族アミド化合物、多価アルコール等である。前記帯電防止剤は、公知の方法で添加し得る。例えば高濃度のマスターバッチを別に作製して任意の工程で混合してもよいし、ポリオレフィンパウダーやポリオレフィンペレットとあらかじめ混合してもよい。高濃度マスターバッチを作製する際は、例えば、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、一軸押出機及び多軸押出機などの公知の混合機又は押出機を用いてポリオレフィン系樹脂と帯電防止剤とを加熱混練する等により得ることができる。
【0063】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みは、用途等に応じて適宜に設定される。例えば9~100μmが好ましく、10~80μmがより好ましく、12~60μmがさらに好ましく、12~50μmが特に好ましい。また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、表層の厚みは所望するフィルムの物性を損なわない範囲で適宜に調整される。例えば0.1~10μmが好ましく、0.5~8μmがより好ましい。
【0064】
以上の通り、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、基材層にリサイクル原料(B)を配合して環境負荷低減を図った積層フィルムである。特に配合するリサイクル原料として、メルトフローレート(MFR)が3.0~11.0g/10min、融解ピーク温度が145~170℃、融解エンタルピー(ΔH)が87.0J/g以上の条件をすべて満たすリサイクル原料を使用して、その配合割合を5~25重量%としたことを特徴とする。従来、リサイクル原料がフィルムの構成材料として使用されると、リサイクル原料中の異材料の影響によって剛性や耐熱性等のフィルム性能が低下することがあった。しかし、上記条件をすべて満たしたリサイクル原料を基材層に適量配合することにより、リサイクル原料中の異材料の有無に左右されることなく、剛性や耐熱性等のフィルム性能を損なわずに優れた製膜性を得ることが可能となった。そのため、リサイクル原料の使用が困難であった樹脂フィルムの分野において、リサイクル原料の再利用を促進することができ、環境負荷低減に大きく貢献することができる。
【0065】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、表層又は表層が設けられていない側の基材層に、シーラントフィルムを積層させて積層体を形成することができる。シーラントフィルムとしては、ヒートシール性を有する単層又は多層の樹脂フィルムが好適に使用される。
【0066】
シーラントフィルムでは、ヒートシール性能を有する適宜の樹脂材料が使用可能であるが、リサイクル適性の観点から、基材層や表層と同様の樹脂材料となるポリプロピレン樹脂を主体とすることが好ましい。ポリプロピレン樹脂は、一般的なポリプロピレン系の樹脂から選択可能である。例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体やプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体等のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、又はプロピレン-エチレンブロック共重合体の少なくとも1種以上から選択される。
【0067】
また、シーラントフィルムは、上記ポリプロピレン樹脂を用いた無延伸ポリプロピレンフィルムとすることが好ましい。無延伸のフィルムは、フィルムの配向性が低下することから、ヒートシール強度が高くなり、シーラントフィルムに好適である。なお、無延伸とは、意図的な延伸を施していない状態を意味し、製膜時等で不可抗力の延伸が加わった場合も無延伸に含まれる。
【0068】
このようにして得られる積層体は、リサイクル原料が配合された二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、シーラント層とを備えるため、環境負荷低減を図った包装用フィルム等のフィルム製品として好適に使用することができる。
【実施例0069】
[二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製]
試作例1~24の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製に際し、後述する各材料を所定の配合割合(重量%)に基づいて混練、溶融し、基材層と、その両面に積層される第一表層及び第二表層との3層構造となるようにTダイ法にて共押出しして、原反シート状物を得た。次に、原反シート状物を縦(MD)方向に5.0倍に延伸した後、横(TD)方向に8.0倍に延伸して、第一表層と、基材層と、第二表層とからなる二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。試作例1~24の各層に使用された樹脂材料の配合割合等については、後述の表1~4に示した。
【0070】
[使用材料]
各層の樹脂材料として、以下の樹脂を使用した。各材料において、メルトフローレート(MFR)はそれぞれメルトインデクサー(株式会社東洋精機製作所製,G-01)を用いて、JIS K 7210(2014)に準拠し、試験温度230℃で測定した値である。また、リサイクル原料の結晶化温度(℃)、融解ピーク温度(℃)、融解エンタルピー(J/g)は、それぞれ示差走査熱量計(NETZSCH製,DSC214 Polyma)を用いて測定した。この測定では、窒素気流下で10℃/minの速度で20℃から200℃まで昇温して200℃で3分間保持し、次いで、10℃/minの速度で200℃から20℃まで降温する過程からなる測定(1st Run)を行い、20℃で3分間保持し、その後10℃/minの速度で20℃から200℃まで昇温する過程からなる測定(2nd Run)を行った。得られた1st RunのDSC曲線から発熱ピーク温度を結晶化温度(℃)とし、2nd RunのDSC曲線から、融解ピーク温度及び融解エンタルピーを求めた。なお、融解ピークが複数存在する場合は、最も高温の融解ピーク温度を用い、融解エンタルピーはDSC曲線の50℃から180℃までを直線でつなげたベースラインを設定して求めた。
【0071】
また、各材料において、分子量及び分子量分布は、高温型GPC装置(東ソー株式会社社製、「HLC-8321GPC-HT」)を用いて下記条件にて測定した。
カラム:TSKgel GMHHR-H(20)HT×3本
(7.8mm I.D.×300mm×3本)
溶離液:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.05% BHT添加)
流量:1.0mL/分
検出器:RI検出器(ポラリティー:-)
カラム温度:140℃
注入量:300μL
分子量標準:標準ポリスチレン
【0072】
<ポリプロピレン樹脂(A)>
・樹脂A1:プロピレン単独重合体(メソペンタッド分率(mmmm)96.1%、MFR3.5g/10min、融解ピーク温度166℃)
・樹脂A2:プロピレン単独重合体(メソペンタッド分率(mmmm)95.8%、MFR4.6g/10min、融解ピーク温度166℃)
・樹脂A3:プロピレン単独重合体(メソペンタッド分率(mmmm)91.0%、MFR3.0g/10min、融解ピーク温度163℃)
【0073】
<リサイクル原料(B)>
・樹脂B1:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(市販品、樹脂組成:ポリプロピレン樹脂99.4重量%、ポリエチレン樹脂0.6重量%)からなるリサイクル原料(MFR5.4g/10min、融解ピーク温度162℃、融解エンタルピー100.2J/g、結晶化温度112℃、Mw/Mn:4.3、Mz+1/Mw5.0)
・樹脂B2:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(市販品、樹脂組成:ポリプロピレン樹脂97.0重量%、ポリエチレン樹脂3.0重量%)からなるリサイクル原料(MFR5.7g/10min、融解ピーク温度161℃、融解エンタルピー100.5J/g、結晶化温度114℃、Mw/Mn4.3、Mz+1/Mw4.8)
・樹脂B3:無延伸ポリプロピレンフィルム(市販品、樹脂組成:ポリプロピレン樹脂98.5重量%、ポリエチレン樹脂1.5重量%)からなるリサイクル原料(MFR10.1g/10min、融解ピーク温度150℃、融解エンタルピー87.6J/g、結晶化温度117℃、Mw/Mn4.6、Mz+1/Mw4.9)
・樹脂B4:ポリプロピレン製ボトル(市販品、樹脂組成:ポリプロピレン樹脂主体(詳細不明))からなるリサイクル原料(MFR10.1g/10min、融解ピーク温度140℃、融解エンタルピー86.8J/g、結晶化温度102℃、Mw/Mn4.8、Mz+1/Mw4.6)
【0074】
<プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)>
・樹脂C1:プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(MFR6.0g/10min、融解ピーク温度162℃)
【0075】
<添加剤>
添加剤として、帯電防止剤のマスターバッチ(樹脂D1:MFR7.8g/10min)を用いた。樹脂A3をベースとして帯電防止剤の濃度が9%となるように調整した。
【0076】
[試作例1]
試作例1は、第一表層としてポリプロピレン樹脂である樹脂A3を100重量%、基材層としてポリプロピレン樹脂である樹脂A1を80重量%とリサイクル原料である樹脂B1を10重量%と添加剤(帯電防止剤のマスターバッチ)である樹脂D1を10重量%、第二表層としてポリプロピレン樹脂である樹脂A3を100重量%配合し、厚さ20μmで製膜して得られたフィルムである。
【0077】
[試作例2]
試作例2は、基材層の樹脂A1を75重量%、樹脂B1を15重量%とした以外は試作例1と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0078】
[試作例3]
試作例3は、基材層の樹脂A1を70重量%、樹脂B1を20重量%とした以外は試作例1と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0079】
[試作例4]
試作例4は、基材層の樹脂A1を65重量%、樹脂B1を25重量%とした以外は試作例1と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0080】
[試作例5]
試作例5は、試作例1の基材層のリサイクル原料を樹脂B1から樹脂B2に変更し、基材層の樹脂A1を85重量%、樹脂B2を5重量%とした以外は試作例1と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0081】
[試作例6]
試作例6は、試作例1の基材層のリサイクル原料を樹脂B1から樹脂B2に変更し、それ以外は同一として製膜して得られたフィルムである。
【0082】
[試作例7]
試作例7は、試作例2の基材層のリサイクル原料を樹脂B1から樹脂B2に変更し、それ以外は同一として製膜して得られたフィルムである。
【0083】
[試作例8]
試作例8は、試作例3の基材層のリサイクル原料を樹脂B1から樹脂B2に変更し、それ以外は同一として製膜して得られたフィルムである。
【0084】
[試作例9]
試作例9は、試作例4の基材層のリサイクル原料を樹脂B1から樹脂B2に変更し、それ以外は同一として製膜して得られたフィルムである。
【0085】
[試作例10]
試作例10は、試作例1の基材層のポリプロピレン樹脂を樹脂A1から樹脂A2に変更するとともに、基材層にプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体である樹脂C1を2重量%配合して樹脂A2を78重量%とした以外は試作例1と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0086】
[試作例11]
試作例11は、フィルムの厚さを18μmとし、それ以外は試作例10と同一に製膜して得られたフィルムである。
【0087】
[試作例12]
試作例12は、基材層の樹脂A2を68重量%、樹脂B1を20重量%、フィルムの厚さを16μmとした以外は試作例10と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0088】
[試作例13]
試作例13は、試作例10の基材層にポリプロピレン樹脂である樹脂A3を15重量%配合して樹脂A2を58重量%とし、樹脂B1を15重量%として、それ以外は同一として製膜して得られたフィルムである。
【0089】
[試作例14]
試作例14は、試作例10の基材層のポリプロピレン樹脂を樹脂A2から樹脂A1、リサイクル原料を樹脂B1から樹脂B3にそれぞれ変更し、基材層の樹脂A1を83重量%、樹脂B3を5重量%とした以外は試作例10と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0090】
[試作例15]
試作例15は、基材層の樹脂A1を78重量%、樹脂B3を10重量%とした以外は試作例14と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0091】
[試作例16]
試作例16は、基材層の樹脂A1を68重量%、樹脂B3を20重量%とした以外は試作例14と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0092】
[試作例17]
試作例17は、基材層としてリサイクル原料を配合せずに樹脂A1を87重量%と樹脂C1を3重量%と樹脂D1を10重量%配合し、それ以外は試作例1と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0093】
[試作例18]
試作例18は、基材層の樹脂A1を87重量%、樹脂B1を3重量%とした以外は試作例1と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0094】
[試作例19]
試作例19は、基材層の樹脂A1を60重量%、樹脂B2を30重量%とした以外は試作例5と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0095】
[試作例20]
試作例20は、試作例2の基材層のリサイクル原料を樹脂B1から樹脂B4に変更し、それ以外は同一として製膜して得られたフィルムである。
【0096】
[試作例21]
試作例21は、試作例3の基材層のリサイクル原料を樹脂B1から樹脂B4に変更し、それ以外は同一として製膜して得られたフィルムである。
【0097】
[試作例22]
試作例22は、基材層としてリサイクル原料を配合せずに樹脂A3を90重量%配合し、それ以外は試作例1と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0098】
[試作例23]
試作例23は、試作例1の基材層のプロピレン樹脂を樹脂A1から樹脂A3に変更し、それ以外は同一として製膜して得られたフィルムである。
【0099】
[試作例24]
試作例24は、基材層の樹脂A1を58重量%、樹脂B3を30重量%とした以外は試作例14と同一として製膜して得られたフィルムである。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
試作例1~24の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの性能として、ヘーズ、熱収縮率、引張弾性率、寸法安定度、製膜性をそれぞれ評価した。各試験の結果及び評価を、各試作例中のリサイクル原料の物性等とともに後述の表5~8に示した。
【0105】
[ヘーズ]
ヘーズ(%)は透明性の指標であり、JIS K 7136(2000)に準拠した試験方法により、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製,NDH-8000)を使用して測定を行った。試作例1~24の二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、包装用フィルムとして要求される透明性として、ヘーズ値が5.0%以下を良品と判定した。
【0106】
[熱収縮率]
熱収縮率(%)は、JIS Z 1712(2009)に準拠した加熱収縮率試験に基づいて測定した。この試験では、各試作例1~24のフィルムから試験片(幅15mm、長さ150mm)を切り出し、試料中央に100mm間隔の標点をつけ、150℃・5分の加熱処理を行い、加熱後の縦(MD)方向と横(TD)方向の試験片の標点間の長さを測定した。測定された加熱後の縦及び横方向の長さから、加熱前の縦及び横方向の長さに対する変化の割合を熱収縮率(%)として算出した。熱収縮率(%)では、10%以下を良品と判定した。
【0107】
[引張弾性率]
引張弾性率(GPa)は、JIS K 7127(1999)に準拠するプラスチック引張特性の試験方法に基づいて、引張試験機(株式会社オリエンテック製,RTF-1310)を使用して、試作例1~24で得られたフィルムから15mm×200mmの試験片を切り出した。次いで、JIS K 7127(1999)に準拠するプラスチック引張特性の試験方法に基づいて、引張試験機(株式会社オリエンテック製,RTF-1310)を使用し、チャック間距離100mm、引張速度200mm/minの条件で上記フィルムの縦(MD)方向と横(TD)方向の各方向の引張弾性率について測定した。測定結果では、縦(MD)方向の弾性率が2.0GPa以上、横(TD)方向の弾性率が4.0GPa以上をいずれも満たした場合を良品と判定した。
【0108】
[寸法安定度]
熱機械測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製,Q400)を使用して後述する手順で120℃及び140℃の縦(MD)方向の寸法変化率(%)をそれぞれ算出し、得られた140℃の寸法変化率(L140)と120℃の寸法変化率(L120)との差(L140-L120)を寸法安定度として求めた。寸法安定度が15以下の場合を良品と判定した。
【0109】
寸法変化率の測定では、試作例1~24のフィルムから試験片(幅4mm、長さ25mm)を縦(MD)方向から切り出した。試験片の縦(MD)方向を引張方向として、サンプルホルダーにチャック間が約8mmとなるようにセットし、熱機械装置のプローブに固定した。試験片に0.32Nの荷重を加えた加熱前の試験片の長さ(L)を読み取った。試験片の縦方向に0.32Nの荷重を加えながら20℃/minの昇温速度で30℃から150℃まで昇温して、120℃到達時点の試験片の縦(MD)方向の長さ(L)と、140℃到達時点の試験片の縦(MD)方向の長さ(L)をそれぞれ読み取った。加熱前後の試験片の長さ(L)、(L)(L)を下記式(iii)(iv)に代入し、加熱前の試験片の長さと変化量との関係から120℃の寸法変化率(L120)及び140℃の寸法変化率(L140)を算出した。
120(%)={(L-L)/L}×100 … (iii)
140(%)={(L-L)/L}×100 … (iv)
【0110】
[製膜性]
製膜性の判定では、試作例1~24のフィルムの製膜時に、延伸ムラ等の外観不良を目視にて確認し、良好な外観性が得られた場合を「○」、外観不良が確認された場合を「×」として判定した。
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
【表8】
【0115】
[結果と考察]
試作例17は、高結晶性のポリプロピレン樹脂(樹脂A1)を主体としたリサイクル原料を含まない樹脂組成の二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。試作例17は、表7に示すように、ヘーズ、熱収縮率、引張弾性率、寸法安定度、製膜性のいずれのフィルム性能も良好である。リサイクル原料を配合した他のフィルムでは、試作例17のフィルムと同程度のフィルム性能を備えることが好ましい。
【0116】
試作例1~4,18は、基材層の主原料として高結晶性のポリプロピレン樹脂(樹脂A1)を使用し、リサイクル原料として樹脂B1を使用して、その配合量を調整した例である。同様に、試作例5~9,19はリサイクル原料として樹脂B2を使用してその配合量を調整した例である。試作例14~16,24はリサイクル原料として樹脂B3を使用してその配合量を調整した例である。試作例20,21はリサイクル原料として樹脂B4を使用してその配合量を調整した例である。
【0117】
上記各試作例のフィルムにおいて、十分なフィルム性能が得られなかったフィルムは試作例19~21,24であった。試作例19,24のフィルムと、他の良好なフィルム性能が得られたフィルムとを対比すると、試作例19,24のフィルムは他のフィルムより過剰にリサイクル原料が配合されていた。一方、試作例20,21は、リサイクル原料の配合割合が良好なフィルムと同等であった。これらから、試作例20,21に配合された樹脂B4の物性が、リサイクル原料として好ましくないと考えられる。
【0118】
そこで、良好な結果が得られたリサイクル原料(樹脂B1,B2,B3)の物性と、樹脂B4のリサイクル原料の物性との対比から、リサイクル原料は、MFRが11.0g/10min以下、融解ピーク温度が145℃以上、融解エンタルピーが87.0J/g以上、結晶化温度が105℃以上が好ましい物性と考えられる。これらの物性のうち、MFRは樹脂の流動性を考慮して下限が3g/10min程度と考えられる。融解ピーク温度は現実的に使用可能な樹脂成形物を考慮して上限が170℃程度と考えられる。また、リサイクル原料では、樹脂B1,B2,B3と樹脂B4との対比から、GPC測定で求められる分子量分布(Mw/Mn、Mz+1/Mw)が、Mw/Mn<Mz+1/Mwの関係とともに、Mz+1/Mw≧4.7であることを満たすことが好ましいと考えられる。
【0119】
次に、リサイクル原料の好ましい配合割合を検討する。試作例19(樹脂B2)と試作例24(樹脂B3)は、配合割合が過剰であったと考えられる。そこで、良好な結果が得られた試作例1~4,18(樹脂B1)、試作例5~9(樹脂B2)、試作例14~16(樹脂B3)から、リサイクル原料の好ましい配合割合は25重量%以下と考えられる。環境負荷低減の観点も考慮すると、リサイクル原料の配合割合は5重量%程度含まれていることが好ましい。そうすると、良好なフィルム性能と環境への貢献度が両立された好ましいリサイクル原料の配合割合は、5~25重量%程度であると考えられる。
【0120】
試作例10は、試作例1に対して基材層の主原料を他の高結晶性のポリプロピレン樹脂(樹脂A2)に変更するとともに、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(樹脂C1)を配合したフィルムである。試作例10では、試作例1とほぼ同等のフィルム性能が得られた。このように、基材層にプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を少量配合してもフィルム性能の低下は見られなかった。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、プロピレン樹脂の配合量が不足しない程度の配合量を添加することができ、例えば10重量%以下が好ましいと考えられる。
【0121】
また、試作例11~13は、試作例10のフィルムに対して、一部変更を加えたフィルムである。試作例11は厚さを薄くしたフィルムである。試作例12はリサイクル原料(樹脂B1)を増加させたフィルムである。試作例13は基材層に少量の低結晶性ポリプロピレン樹脂(樹脂A3)を加えたフィルムである。試作例11~13では、いずれも良好なフィルム性能が得られた。試作例11から、フィルムに必要な厚みの範囲内での厚さ調整であれば、フィルム性能に大きな変化は生じないと考えられる。試作例12から、基材層にプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体が少量配合されたフィルムにおいても、リサイクル原料の配合量を5~25重量%の範囲内で増やしても良好なフィルム性能が得られることがわかった。試作例13から、高結晶性のポリプロピレン樹脂を主体とした基材層に少量の低結晶性ポリプロピレン樹脂が含まれても良好なフィルム性能が得られることがわかった。
【0122】
主原料であるポリプロピレン樹脂の検討のため、試作例22では、低結晶性のポリプロピレン樹脂(樹脂A3)を主原料として使用し、リサイクル原料を含まない二軸延伸ポリプロピレンフィルムとした。試作例22のフィルムでは、横(TD)方向の引張弾性率が不足して要求される剛性が得られず、さらに寸法安定度も不十分であった。これは、ポリプロピレン樹脂の結晶性が低いことにより、フィルムの剛性や耐熱性等が低下したと考えられる。
【0123】
また、試作例23は、試作例22にリサイクル原料として樹脂B1を10重量%配合したフィルムであって、試作例1の基材層の高結晶性ポリプロピレン樹脂(樹脂A1)を低結晶性ポリプロピレン樹脂(樹脂A3)に変更したフィルムに相当する。試作例23では、寸法安定度が不十分であった。これは、試作例22のようにポリプロピレン樹脂の結晶性が低いことによって耐熱性等が低下したと考えられ、リサイクル原料の有無にかかわらず、フィルムの主原料であるポリプロピレン樹脂の結晶性がフィルム性能に影響を及ぼしたことを示していると考えられる。
【0124】
以上各試作例の評価を踏まえると、リサイクル原料を含むフィルムにおいて、縦方向及び横方向の弾性率、寸法安定度(140℃の縦方向の寸法変化率と120℃の寸法変化率の差)、縦方向及び横方向の熱収縮率の各性能を損なわない条件として、基材層の主原料はメソペンタッド分率が95%以上の高結晶性ポリプロピレン樹脂55重量%以上、リサイクル原料はMFR3.0~11.0g/10min、融解ピーク温度145~170℃、融解エンタルピー87.0J/g以上をすべて満たし、かつ配合割合が5~25重量%とすることが好ましいことが示された。また、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を配合する場合でも、10重量%以下程度であればフィルム性能が損なわれないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、メルトフローレートと、所定条件のメルトフローレート、融解ピーク温度、融解エンタルピーをすべて満たしたリサイクル原料を使用することによって、剛性や耐熱性等のフィルム性能を損なわずに優れた製膜性を得ることができた。そのため、環境負荷低減に貢献することが可能な二軸延伸ポリプロピレンフィルム及びこのフィルムを使用した積層体を提供することができ、従来の二軸延伸ポリプロピレンフィルムやその積層体の代替として有望である。