IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ベーパーチャンバー 図1
  • 特開-ベーパーチャンバー 図2
  • 特開-ベーパーチャンバー 図3
  • 特開-ベーパーチャンバー 図4
  • 特開-ベーパーチャンバー 図5
  • 特開-ベーパーチャンバー 図6
  • 特開-ベーパーチャンバー 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017724
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバー
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20240201BHJP
   F28F 21/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28D15/02 102G
F28F21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120555
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼妻 誠
(57)【要約】
【課題】電気機器の性能の維持と省スペース性を両立することができ、かつ、小型の電子機器用途だけでなく壁面といった大面積にも対応可能となる。
【解決手段】ベーパーチャンバー1は、熱輸送の作動流体11が封入された内部空間12を有し、面状の樹脂シート10を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱輸送の作動流体が封入された内部空間を有し、面状の樹脂シートを備える、
ベーパーチャンバー。
【請求項2】
前記樹脂シートは、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載のベーパーチャンバー。
【請求項3】
前記樹脂シートは、前記内部空間に面する内壁に毛細管構造を有する、
請求項1又は2に記載のベーパーチャンバー。
【請求項4】
前記樹脂シートは、導電性材料を含む、
請求項1又は2に記載のベーパーチャンバー。
【請求項5】
前記樹脂シートの耐熱温度は、40℃~80℃である、
請求項1又は2に記載のベーパーチャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーパーチャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、家庭内で使用される電気機器の内、発熱する機器においては、放熱部の熱を拡散させ冷却するヒートシンクやファンが設けられている。また、小型の電気機器においては、金属製のパイプ内に液体を封入し、液体の蒸発、凝縮を利用した熱輸送素子が設けられている。例えば、熱輸送素子としてはヒートパイプがあり、特に薄型のものはベーパーチャンバー(平板状ヒートパイプ)がある。また、テレビや冷蔵庫等の電気機器は壁に近づけて設置する場合がある。この場合は、熱を拡散させるため壁から一定の距離をおくことが求められる。
【0003】
特許文献1には、表示パネルの表示面側にヒートシンクの放熱フィンを設け、表示パネルの動作で生じる熱を放熱フィンにより放熱する構成が開示されている。
特許文献2には、外気の低温を建造物の内部に伝えることを解消するために、蓄熱性材料をシート化して建装部材に適用した構成が開示されている。
特許文献3には、天井や床などの室内側面に貼り付けて、蓄熱した熱を徐々に放熱して快適な室温を維持するために、蓄熱材(融点0~40℃)を内包するマイクロカプセルをシート状支持体に塗工した蓄熱性シートが開示されている。
特許文献4には、第1金属板と第2金属板との間に形成される内部空間に作動流体を有するベーパーチャンバーが開示されている。特許文献4のベーパーチャンバーでは、小型化及び機械的強度向上を両立するために、第1金属板と第2金属板との接合部から延在する延在部を備えている。
特許文献5には、カバー板と底板とが接合されて構成され、内部に作動流体を収容する筐体と、筐体内に設けられた蒸発部及び凝縮部と、凝縮した作動流体を蒸発部へ流通させるための第1の隙間を形成するように、カバー板及び底板の配列方向と蒸発部及び凝縮部の配列方向との両方向に略直交する方向に配列された複数の第1の板状体と、各第1の板状体の周囲に形成され、蒸発した作動流体を凝縮部へ流通させる気相流路部と、を備える熱輸送装置が開示されている。
特許文献6には、密閉された空間が形成されており、空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバーであって、密閉空間には、作動流体が凝縮した液が流れる複数の凝縮液流路と、作動流体が気化した蒸気が流れる蒸気流路と、が具備され、蒸気流路には、凝縮液流路及び蒸気流路が配列される方向に蒸気流路側に突出した張出部が備えられるとともに、蒸気流路が延びる方向において張出部の張出量が異なっている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/138202号
【特許文献2】特開2000-314187号公報
【特許文献3】特開2003-306672号公報
【特許文献4】特開2022-11550号公報
【特許文献5】特開2007-113864号公報
【特許文献6】国際公開第2019-230911号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したベーパーチャンバーは小型であり、壁面等の大面積に対応した仕様ではない。
【0006】
そこで、本発明は、家庭内に設置される電気機器が壁に密着した状態でも熱を分散させることで、電気機器の性能の維持と省スペース性を両立することを目的とする。また、従来の小型の電子機器用途だけでなく、壁面といった大面積にも対応可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係るベーパーチャンバーは、熱輸送の作動流体が封入された内部空間を有し、面状の樹脂シートを備える。
【0008】
(2)(1)の態様のベーパーチャンバーにおいて、前記樹脂シートは、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0009】
(3)(1)又は(2)の態様のベーパーチャンバーにおいて、前記樹脂シートは、前記内部空間に面する内壁に毛細管構造を有していてもよい。
【0010】
(4)(1)から(3)の何れか1つの態様のベーパーチャンバーにおいて、前記樹脂シートは、導電性材料を含んでいてもよい。
【0011】
(5)(1)から(4)の何れか1つの態様のベーパーチャンバーにおいて、前記樹脂シートの耐熱温度は、40℃~80℃であってもよい。
【0012】
(6)(1)から(5)の何れか1つの態様のベーパーチャンバーにおいて、熱源からの熱を前記樹脂シートに伝導する熱伝導シートを更に備えていてもよい。
【0013】
(7)(1)から(6)の何れか1つの態様のベーパーチャンバーにおいて、前記樹脂シートは、前記内部空間に面する内壁にバリア層を有していてもよい。
【0014】
(8)(1)から(7)の何れか1つの態様のベーパーチャンバーにおいて、前記樹脂シートは、前記内部空間を保持するための柱を有していてもよい。
【0015】
(9)(3)の態様のベーパーチャンバーにおいて、前記毛細管構造は、前記内壁の全面に均一に配置されていてもよいし、又は不均一に配置されていてもよい。
【0016】
(10)本発明の一態様に係るベーパーチャンバーの製造方法は、熱輸送の作動流体が封入された内部空間を有し、面状の樹脂シートを備えるベーパーチャンバーの製造方法であって、前記樹脂シートの前記内部空間に前記作動流体を入れた後、熱圧着、接着剤による接着、構造的な接合の少なくとも1つにより封止する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気機器の性能の維持と省スペース性を両立することができ、かつ、小型の電子機器用途だけでなく壁面といった大面積にも対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るベーパーチャンバーの平面図。
図2図1に示す矢視II-II断面図。
図3】第2実施形態に係るベーパーチャンバーの平面図。
図4図3に示す矢視IV側面図。
図5】第3実施形態に係るベーパーチャンバーの平面図。
図6】ベーパーチャンバーを床に実装する例を示す図。
図7】ベーパーチャンバーを窓ガラスに実装する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
以下の説明で参照する図面は、特徴部分を強調する目的で、特徴となる部分を拡大して示している場合がある。また、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0021】
(第1実施形態)
(ベーパーチャンバー)
図1は、第1実施形態に係るベーパーチャンバー1の平面図である。図2は、図1に示す矢視II-II断面図である。
図1では、ベーパーチャンバー1を介して薄型テレビ等の電気機器2(熱源の一例)を壁に装着する例を示す。本実施形態のベーパーチャンバー1は、樹脂シート10と、熱伝導シート20と、を備える。
【0022】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。X方向は、平面視長方形のベーパーチャンバー1の長辺に沿う方向(図1の紙面左右方向)である。Y方向は、ベーパーチャンバー1の厚さ方向(図1の紙面奥行き方向)である。Z方向は、X方向及びY方向に直交する方向であり、ベーパーチャンバー1の短辺に沿う方向(図1の紙面上下方向)である。本実施形態において、Z方向は、高さ方向(重力方向)である。
【0023】
また、以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。本実施形態において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
【0024】
(樹脂シート)
樹脂シート10は、熱輸送の作動流体11が封入された内部空間12を有する。本実施形態において、作動流体11は、液体である。例えば、作動流体11としては、水、アルコール類(エタノール、メタノール等)、ケトン類(アセトン等)、これらの混合物などが使用できる。本実施形態において、作動流体11は、アルコールである。
【0025】
樹脂シート10は、面状である。例えば、樹脂シート10は、ロール・トゥ・ロール方式等の成膜方法で製造することができる。樹脂シート10は、全体としてシート状の薄型の部材である。樹脂シート10は、壁面3に沿って配置されている。
【0026】
樹脂シート10は、平面視でXZ面内方向に沿う長方形形状を有する。樹脂シート10は、平面視で電気機器2よりも大きい外形を有する。樹脂シート10の上部は、平面視で電気機器2と重なっていない。樹脂シート10の下部は、平面視で電気機器2と重なっている。作動流体11は、樹脂シート10の下部に貯留されている。作動流体11は、樹脂シート10下部の内部空間12(平面視で電気機器2と重なる部分)に封入されている。
【0027】
例えば、樹脂シート10は、ポリプロピレンフィルム(PPフィルム)、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)、ポリ塩化ビニルフィルム(PVCフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の少なくとも1つを含む。本実施形態において、樹脂シート10は、PPフィルムである。
【0028】
例えば、樹脂シート10は、導電性材料を含む。例えば、導電性材料としては、炭素繊維、セラミック系のフィラーを使用できる。例えば、導電性材料の含有量を調整することで、樹脂シート10の熱伝導性を調整してもよい。
【0029】
例えば、樹脂シート10の耐熱温度は、40℃~80℃である。樹脂シート10の耐熱温度は、樹脂シート10の形成材料の融点よりも低い温度に設定される。樹脂シート10の耐熱温度は、作動流体11が蒸気となる温度(例えば25℃~100℃)に対応する。例えば、壁紙に使用されるPVCの耐熱温度は、60℃~80℃である。
【0030】
樹脂シート10は、内部空間12を介して互いに対向する第1シート10A及び第2シート10Bを備える。第1シート10A及び第2シート10Bは、互いに同じ外形を有する。内部空間12は、第1シート10Aと第2シート10Bとの間の密閉空間である。第1シート10A及び第2シート10Bは、それぞれの4辺に沿って互いに結合されている。
【0031】
第1シート10Aが第2シート10Bと対向する面(第1シート10Aの+Y側面)は、樹脂シート10の内壁の一方(樹脂シート10において内部空間12に面する内壁の一例)に相当する。第2シート10Bが第1シート10Aと対向する面(第2シート10Bの-Y側面)は、樹脂シート10の内壁の他方(樹脂シート10において内部空間12に面する内壁の一例)に相当する。
【0032】
樹脂シート10は、内部空間12に面する内壁に毛細管構造15を有する。毛細管構造15は、毛細管現象を生じさせる構造である。例えば、毛細管構造15は、樹脂シート10と同じ材料(例えば、PP、PE、PVC、PET等の樹脂)で形成されている。本実施形態において、毛細管構造15は、PPである。
【0033】
例えば、毛細管構造15は、ウイック構造、メッシュ構造等である。例えば、毛細管構造15は、樹脂シート10の内壁表面に押し出し加工、エンボス加工等で直接形成することで、ロール・トゥ・ロール方式で製造することができる。また、繊維状、メッシュ状の樹脂を別途、樹脂シート10の内壁に装着してもよい。
【0034】
例えば、毛細管構造15は、樹脂シート10の内壁の全面に均一に配置されていてもよいし、又は不均一に配置されていてもよい。図の例では、毛細管構造15は、バリア層16を介して、樹脂シート10の内壁の全面に均一に配置されている。
【0035】
樹脂シート10は、内部空間12に面する内壁にバリア層16を有する。例えば、バリア層16は、アルミニウム、シリカ、チタニア等の蒸着層や、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、エバール、ポリプロピレン等の樹脂積層を使用できる。バリア層16は、樹脂シート10の内壁と毛細管構造15との間に配置されている。図の例では、バリア層16は、樹脂シート10の内壁の全面に沿って配置されている。
【0036】
(熱伝導シート)
熱伝導シート20は、熱源である電気機器2からの熱を樹脂シート10に伝導するシート状の部材である。例えば、熱伝導シート20は、樹脂シート10よりも熱伝導率が高い材料で形成されている。熱伝導シート20は、樹脂シート10の外壁において壁面3側とは反対側の面(-Y側面)に設けられている。熱伝導シート20は、電気機器2と樹脂シート10との間に配置されている。樹脂シート10は、電気機器2の+Y側面と樹脂シート10下部の-Y側面とに接している。
【0037】
(ベーパーチャンバーによる熱輸送)
次に、ベーパーチャンバー1による熱輸送の一例を説明する。図中矢印は、熱(作動流体11)の流れを示す。
電気機器2(熱源)から供給される熱は、熱伝導シート20を介して、作動流体11(液体)に伝導される。作動流体11(液体)は、熱伝導シート20から伝動される熱により温められることで、気化する。作動流体11が気化することで、電気機器2の熱を奪う。気化した作動流体11(気体)は、樹脂シート10の内部空間12を上方へ移動する。作動流体11(気体)は、樹脂シート10の内部空間12に面する内壁で冷却され、液化する。液化した作動流体11(液体)は、毛細管構造15を通って下方へ移動する。作動流体11(液体)は、熱源部(電気機器2と平面視で重なる樹脂シート10の下部)へ戻り、再度気化することで熱を奪う。作動流体11が気化、液化を繰り返すことで、熱を移動させる。
【0038】
(ベーパーチャンバーの製造方法)
次に、ベーパーチャンバー1の製造方法の一例を説明する。
ベーパーチャンバー1の製造方法は、熱輸送の作動流体11が封入された内部空間12を有し、面状の樹脂シート10を備えるベーパーチャンバー1の製造方法であって、樹脂シート10の内部空間12に作動流体11を入れた後、熱圧着、接着剤による接着、構造的な接合の少なくとも1つにより封止する。
【0039】
例えば、袋状の樹脂シート10を準備し、袋状の樹脂シート10の開口部を通じて作動流体11を入れてもよい。その後、開口部を重力方向上方に向けることで、作動流体11は樹脂シート10の下部に流れこむ。これにより、作動流体11は樹脂シート10の上部には存在しなくなる。その後、樹脂シート10の開口部分を熱圧着等で封止する。
【0040】
(作用効果)
本実施形態のベーパーチャンバー1は、熱輸送の作動流体11が封入された内部空間12を有し、面状の樹脂シート10を備える。
この構成によれば、ベーパーチャンバー1を壁に装着することで、電気機器2(熱源)から発生した熱は作動流体11に吸収され、作動流体11が蒸発する。蒸発した作動流体11は、電気機器2から離れた場所で凝縮して液体となる。これにより、電気機器2から発生した熱を放熱できる。加えて、従来は壁面と電気機器との間に隙間を設ける必要があったが、本実施形態では隙間を設ける必要がなくなる。また、面状の樹脂シート10であることで、ロール・トゥ・ロール方式で製造することができるため、壁面3に対応した大面積での生産に適している。したがって、電気機器2の性能の維持と省スペース性を両立することができ、かつ、小型の電子機器用途だけでなく壁面3といった大面積にも対応可能となる。
加えて、電気機器2を平面視でベーパーチャンバー1下部に部分的に重ね、ベーパーチャンバー1を壁に装着することで、電気機器2からの熱を壁の面積で発散することができ、冷却効率が改善される。また、電気機器2からの熱を壁の面積で発散することで、冬場の暖房効果が期待できる。
【0041】
本実施形態のベーパーチャンバー1において、樹脂シート10は、ポリプロピレンフィルムである。
この構成によれば、樹脂シート10の内部空間12に作動流体11を封入した状態で、熱圧着で封止できる。そのため、壁面3に対応した大面積であっても簡単に封止しやすいため、生産に適している。
【0042】
本実施形態のベーパーチャンバー1において、樹脂シート10は、内部空間12に面する内壁に毛細管構造15を有する。
この構成によれば、毛細管構造15は、樹脂シート10の内壁表面に押し出し加工、エンボス加工等で直接形成することで、ロール・トゥ・ロール方式で製造することができるため、壁面3に対応した大面積での生産に適している。また、繊維状、メッシュ状の樹脂を別途、樹脂シート10の内壁に装着する場合は、毛細管構造15を樹脂シート10と同じ材料で形成することで、熱圧着により容易に接着して積層できるため、好ましい。
【0043】
本実施形態のベーパーチャンバー1において、樹脂シート10は、導電性材料を含む。
この構成によれば、導電性材料の含有量を調整することで、樹脂シート10の熱伝導性を調整することができる。
【0044】
本実施形態のベーパーチャンバー1において、樹脂シート10の耐熱温度は、40℃~80℃である。
この構成によれば、熱輸送の作動流体11は25℃~100℃で蒸気となるため、それに対応する樹脂シート10を実現することができる。
【0045】
本実施形態のベーパーチャンバー1において、電気機器2(熱源)からの熱を樹脂シート10に伝導する熱伝導シート20を更に備える。
この構成によれば、電気機器2から発生した熱をより効果的に樹脂シート10に伝導させることができるため、放熱効率の向上が期待できる。
【0046】
本実施形態のベーパーチャンバー1において、樹脂シート10は、内部空間12に面する内壁にバリア層16を有する。
この構成によれば、熱輸送の作動流体11の封止性が向上する。
【0047】
本実施形態のベーパーチャンバー1において、毛細管構造15は、樹脂シート10の内壁の全面に均一に配置されている、又は、不均一に配置されている。
この構成によれば、熱輸送の作動流体11(液体、気体)の循環効率を調整することができる。例えば、毛細管構造15が樹脂シート10の内壁の全面に均一に配置されている場合は、作動流体11は均一に速く動く。一方、毛細管構造15が樹脂シート10の内壁に不均一に配置されている場合は、作動流体11は動きがゆっくりとなり、放熱具合の調整となる。
【0048】
本実施形態のベーパーチャンバー1の製造方法は、熱輸送の作動流体11が封入された内部空間12を有し、面状の樹脂シート10を備えるベーパーチャンバー1の製造方法であって、樹脂シート10の内部空間12に作動流体11を入れた後、熱圧着、接着剤による接着、構造的な接合の少なくとも1つにより封止する。
この方法によれば、樹脂シート10の内部空間12に作動流体11を入れることで、作動流体11は樹脂シート10の下部に流れこむ。これにより、作動流体11は樹脂シート10の上部には存在しないため、熱圧着等の熱の加わる処理を安全に行うことができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、樹脂シート10が内部空間12を保持するための柱230を有する点で、第1実施形態と相違する。このような第2実施形態について図3図4をもとに説明する。
図3は、第2実施形態に係るベーパーチャンバー201の平面図である。図4は、図3に示す矢視IV側面図である。第2実施形態に係るベーパーチャンバー201の構成要素において、第1実施形態と同一態様の構成要素には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0050】
本実施形態の樹脂シート10は、内部空間12を保持するための柱230を有する。例えば、柱230は、樹脂シート10と同じ材料(例えば、PP、PE、PVC、PET等の樹脂)で形成されている。本実施形態において、柱230は、PPである。例えば、柱230の厚さ(Y方向の長さ)は、樹脂シート10の厚さよりも厚くてもよい。例えば、柱230の厚さは、0.1mm~0.5mmであってもよい。本実施形態において、柱230の厚さは、0.3mmである。
【0051】
柱230は、Z方向に沿って直線状に延びている。柱230は、X方向に間隔をあけて一対設けられている。一対の柱230の一方は、樹脂シート10の-X側部分においてX方向中央に配置されている。一対の柱230の他方は、樹脂シート10の+X側部分においてX方向中央に配置されている。
【0052】
本実施形態において、毛細管構造は、樹脂シート10の内壁の片面に装着されたメッシュ構造215である。例えば、柱230は、樹脂シート10の内壁のうちメッシュ構造215が装着されていない片面に設けられている。本実施形態では、柱230の厚さにより、樹脂シート10の内部空間12が確保されている。樹脂シート10下部の内部空間12には、作動流体(不図示)が封入されている。樹脂シート10上部は、ジッパー構造240(構造的な接合の一例)により、封止されている。
【0053】
本実施形態のベーパーチャンバー201において、樹脂シート10は、内部空間12を保持するための柱230を有する。
この構成によれば、熱輸送の作動流体(蒸気)をより効果的に循環させることができるため、放熱効率を高めることができる。例えば、柱230を樹脂シート10と同じ材料で形成することで、熱圧着等の簡易な処理で接着することができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
第3実施形態では、柱230無しでメッシュ構造315A,315Bが内部空間12を保持する点で、第2実施形態と相違する。このような第3実施形態について図5をもとに説明する。
図5は、第3実施形態に係るベーパーチャンバー301の平面図である。第3実施形態に係るベーパーチャンバー301の構成要素において、第1実施形態又は第2実施形態と同一態様の構成要素には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0055】
本実施形態の樹脂シート10は、内部空間12を保持するためのメッシュ構造315A,315Bを有する。例えば、メッシュ構造315A,315Bは、樹脂シート10と同じ材料(例えば、PP、PE、PVC、PET等の樹脂)で形成されている。本実施形態において、メッシュ構造315A,315Bは、PPである。
【0056】
メッシュ構造315A,315Bは、Z方向に沿って短冊状に延びている。メッシュ構造315A,315Bは、樹脂シート10の内壁の両面に設けられている。2枚のメッシュ構造315A,315Bは、Y方向に並んでいる。メッシュ構造315A,315Bは、X方向に間隔をあけて3組設けられている。3組のメッシュ構造315A,315Bは、樹脂シート10の-X側端部と、X方向中央部と、+X側端部とに配置されている。
【0057】
本実施形態では、2枚のメッシュ構造315A,315Bの厚さにより、樹脂シート10の内部空間12が確保されている。樹脂シート10下部の内部空間12には、作動流体(不図示)が封入されている。樹脂シート10上部は、ジッパー構造240(構造的な接合の一例)により、封止されている。
【0058】
本実施形態のベーパーチャンバー301において、樹脂シート10は、内部空間12を保持するためのメッシュ構造315A,315Bを有する。
この構成によれば、熱輸送の作動流体(蒸気)をより効果的に循環させることができるため、放熱効率を高めることができる。例えば、メッシュ構造315A,315Bを樹脂シート10と同じ材料で形成することで、熱圧着等の簡易な処理で接着することができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、及びその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0060】
(変形例)
例えば、上述した実施形態では、樹脂シートは、ポリプロピレンフィルムである構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、樹脂シートは、ポリプロピレンフィルムでなくてもよい。例えば、樹脂シートは、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムの少なくとも1つを含んでいてもよい。例えば、樹脂シートの構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0061】
例えば、上述した実施形態では、樹脂シートは、内部空間に面する内壁に毛細管構造を有する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、樹脂シートは、毛細管構造を有しなくてもよい。例えば、毛細管構造の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0062】
例えば、上述した実施形態では、樹脂シートは、導電性材料を含む構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、樹脂シートは、導電性材料を含まなくてもよい。例えば、樹脂シートの構成材料は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0063】
例えば、上述した実施形態では、樹脂シートの耐熱温度は、40℃~80℃である構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、樹脂シートの耐熱温度は、40℃以下又は80℃以上であってもよい。例えば、樹脂シートの耐熱温度は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0064】
例えば、上述した実施形態では、ベーパーチャンバーは、熱源からの熱を樹脂シートに伝導する熱伝導シートを備える構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、ベーパーチャンバーは、熱伝導シートを備えていなくてもよい。例えば、熱源は、樹脂シートの直に接していてもよい。例えば、熱伝導シートの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0065】
例えば、上述した実施形態では、樹脂シートは、内部空間に面する内壁にバリア層を有する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、樹脂シートは、バリア層を有しなくてもよい。例えば、バリア層の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0066】
また、例えば、上述した実施形態では、熱源は、薄型テレビ等の電気機器である構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、熱源は、薄型テレビ以外の電気機器であってもよい。例えば、熱源は、携帯型端末等の電子機器であってもよい。例えば、熱源の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0067】
例えば、上述した実施形態では、樹脂シートは、平面視長方形形状である構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、樹脂シートは、平面視で矩形以外の多角形形状であってもよいし、円形形状であってもよい。例えば、樹脂シートの平面視形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0068】
例えば、上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。例えば、ベーパーチャンバーは、天井や床、窓ガラスなどの一面に装着されてもよい。例えば、ベーパーチャンバーの装着態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0069】
図6は、ベーパーチャンバー101Aを床105に実装する例を示す図である。図6の例では、ベーパーチャンバー101Aは、室内107において太陽108等の熱(太陽光109等)により加熱される床105に設置されている。図6の例では、ベーパーチャンバー101Aは、床105の一面において窓ガラス106の左右幅に対応する領域(窓ガラス106を通じて太陽光109が照射される領域)よりも広い範囲に設置されている。この構成によれば、床105の熱の分散にベーパーチャンバー101Aを適用することができる。
【0070】
図7は、ベーパーチャンバー101Bを窓ガラス106に実装する例を示す図。図7の例では、ベーパーチャンバー101Bは、太陽108等の熱(太陽光109等)により加熱される窓ガラス106の室内107側の面に設置されている。図7の例では、ベーパーチャンバー101Bは、左右一対の窓ガラス106の両方に設置されている。この構成によれば、窓ガラス106の熱の分散にベーパーチャンバー101Bを適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 ベーパーチャンバー
10 樹脂シート
11 作動流体
12 内部空間
15 毛細管構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7