(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177252
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】カルボジイミドで処理された寛容化ワクチンによる移植寛容誘導
(51)【国際特許分類】
A61K 35/15 20150101AFI20241212BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241212BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241212BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20241212BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241212BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20241212BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241212BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241212BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20241212BHJP
A61K 35/22 20150101ALI20241212BHJP
A61K 35/407 20150101ALI20241212BHJP
A61K 35/34 20150101ALI20241212BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20241212BHJP
A61K 35/42 20150101ALI20241212BHJP
A61K 35/37 20150101ALI20241212BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20241212BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20241212BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20241212BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241212BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20241212BHJP
【FI】
A61K35/15
A61P37/06
A61P43/00 105
A61K45/06
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P37/02
A61K31/439
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K38/16
A61K35/545
A61K35/22
A61K35/407
A61K35/34
A61K35/39
A61K35/42
A61K35/37
A61K35/28
A61K35/15 ZNA
C07K7/08 ZNA
C07K16/18
C07K16/28
C12N5/078
C07K7/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024170828
(22)【出願日】2024-09-30
(62)【分割の表示】P 2021521149の分割
【原出願日】2019-10-19
(31)【優先権主張番号】62/748,115
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/902,091
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】バーナード ジェイ. へリング
(72)【発明者】
【氏名】サバリナサン ラマチャンドラン
(57)【要約】
【課題】カルボジイミドで処理された寛容化ワクチンによる移植寛容誘導の提供。
【解決手段】本開示は、移植レシピエントにおける移植された細胞、臓器または組織に対する免疫寛容を誘導するための組成物およびシステムに関する。寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンを作製する方法、およびこれを投与する方法も本明細書に提供する。一部の態様では、同種移植または異種移植のための前処置レジメンであって、(a)架橋剤中において固定されたアポトーシス性ドナー白血球、(b)mTOR阻害剤、(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を含み、前処置レジメンが、移植細胞、組織または臓器のレシピエントへの投与のためである、前処置レジメンが本明細書に開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年10月19日に出願された米国仮特許出願第62/748,115号、および2019年9月18日に出願された米国仮特許出願第62/902,091号の利益を主張し、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
連邦政府支援研究に関する陳述
【0002】
本発明は、国立衛生研究所(NIH)によって付与された助成U01AI102463の政府支援により行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
移植は、末期の臓器不全を有する患者のための最も有効な処置の選択肢になっている。現在の免疫抑制処置は、移植された臓器および細胞の急性拒絶反応の予防において有効であるが、しかしながら、それらの重大な病的状態および慢性拒絶反応の予防におけるそれらの有効性の欠如により、慢性的に免疫抑制された移植レシピエントの増加する集団において深刻な満たされていない医学的必要性が存在する。適切なブタドナー由来の臓器、組織および細胞の異種移植は、同種移植に関連するドナー不足を克服するが、同種移植の場合と同様、レシピエントは、感染症、悪性腫瘍、糖尿病、心臓血管系の合併症、腎臓毒性、および慢性的な免疫抑制に関連する他の病的状態を発生するリスクの増加にさらされるだろう。同種グラフトおよび異種グラフトに対する免疫寛容の誘導は、維持免疫抑制の必要性を克服し、慢性拒絶反応に起因するグラフト喪失を排除することによってグラフト生着の寿命を延ばし、これによって、患者の満足度、転帰および移植の費用効果が大きく改善する。
参照による組み込み
【0004】
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。他に任意の指示がない限り、本出願において言及される刊行物、特許および特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一部の態様では、同種移植または異種移植のための前処置レジメンであって、(a)架橋剤中において固定されたアポトーシス性ドナー白血球、(b)mTOR阻害剤、(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を含み、前処置レジメンが、移植細胞、組織または臓器のレシピエントへの投与のためである、前処置レジメンが本明細書に開示される。
【0006】
一部の実施形態では、前処置レジメンは、レシピエントへの(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の投与のための説明書をさらに含む。一部の実施形態では、(a)、(b)、(c)、(d)および(e)は、同種移植または異種移植の約10日前~約30日後にレシピエントに投与される。一部の実施形態では、(a)、(b)、(c)、(d)および(e)のうちの少なくとも1つは、同種移植または異種移植の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10日前にレシピエントに投与される。一部の実施形態では、(a)、(b)、(c)、(d)および(e)のうちの少なくとも1つは、同種移植または異種移植の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、15、17、18、19、20、21、22、23、24または25日前にレシピエントに投与される。一部の実施形態では、(a)、(b)、(c)、(d)および(e)のうちの少なくとも1つは、レシピエントに、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、脳室内、鼻腔内、頭蓋内、腔内、脳内、髄腔内もしくは経皮、または局所に投与される。一部の実施形態では、(a)、(b)、(c)、(d)および(e)は、静脈内に投与される。一部の実施形態では、mTOR阻害剤は、ラパマイシンである。一部の実施形態では、レシピエントにおけるmTOR阻害剤の目標トラフレベルは、1mLあたり約5~12ngである。一部の実施形態では、抗腫瘍壊死因子剤は、抗腫瘍壊死因子抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、抗腫瘍壊死因子剤は、腫瘍壊死因子受容体の腫瘍壊死因子結合ドメインを含む。一部の実施形態では、抗腫瘍壊死因子剤は、エタネルセプトである。一部の実施形態では、抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤は、約0.1mg/kg~約10mg/kgの用量でレシピエントに投与される。一部の実施形態では、抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤は、約0.5mg/kg~約1mg/kgの用量でレシピエントに投与される。一部の実施形態では、抗インターロイキン6受容体剤は、アンタゴニスト性抗インターロイキン6受容体抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、抗インターロイキン6受容体剤は、トシリズマブである。一部の実施形態では、抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤は、約1mg/kg~約100mg/kgの用量でレシピエントに投与される。一部の実施形態では、抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤は、約10mg/kgの用量でレシピエントに投与される。一部の実施形態では、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤は、アンタゴニスト性抗CD40抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤は、2C10または2C10R4である。一部の実施形態では、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤は、約1mg/kg~100mg/kgの用量でレシピエントに投与される。一部の実施形態では、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤は、約50mg/kgの用量でレシピエントに投与される。一部の実施形態では、前処置レジメンのレシピエントへの投与は、移植細胞、組織または臓器に対する長期寛容を提供する。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、哺乳動物白血球である。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、ブタ白血球である。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、ヒト白血球である。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、死体ドナー、脳死ドナー、心停止ドナーまたは生体ドナー由来である。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、ex vivoで増やされた白血球である。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、脾臓または末梢血から単離される。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、Bリンパ球を含む。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、ex vivoで幹細胞または誘導多能性幹細胞から分化した細胞を含む。一部の実施形態では、幹細胞は、移植細胞、組織または臓器のドナーに由来する。一部の実施形態では、移植細胞、組織または臓器は、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、膵島細胞、小腸、骨髄、造血幹細胞、胚性幹細胞由来膵島ベータ細胞、誘導多能性幹細胞由来膵島ベータ細胞、胚性幹細胞由来膵島、誘導多能性幹細胞由来膵島、幹細胞由来の細胞、組織もしくは臓器、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、レシピエントおよび移植細胞、組織または臓器のドナーは、MHCクラスI不適合である。一部の実施形態では、レシピエントおよび移植細胞、組織または臓器のドナーは、MHCクラスII不適合である。一部の実施形態では、レシピエントおよび移植細胞、組織または臓器のドナーは、ハプロタイプ一致である。一部の実施形態では、レシピエントおよび移植細胞、組織または臓器のドナーは、少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子について適合する。一部の実施形態では、レシピエントおよび移植細胞、組織または臓器のドナーは、少なくとも1つのMHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子またはMHCクラスII DP対立遺伝子について適合する。一部の実施形態では、レシピエントおよび移植細胞、組織または臓器のドナーは、MHCクラスII DRB対立遺伝子である少なくともMHCクラスII DR対立遺伝子について適合する。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球およびレシピエントは、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子またはMHCクラスII DP対立遺伝子のうちの少なくとも1つについて適合する。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球およびレシピエントは、MHCクラスII DRB対立遺伝子であるMHCクラスII DR対立遺伝子について適合する。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球およびレシピエントは、完全に不適合である。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球および移植片は、少なくとも1つのMHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子またはMHCクラスII DP対立遺伝子について適合する。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球および移植片は、ハプロタイプ一致である。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、移植のドナーに由来する。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、移植細胞、組織または臓器のドナー由来の幹細胞の分化に由来する。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、その表面上にコンジュゲートされた、レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドを含む。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、DRβ鎖、DQβ鎖もしくはDPβ鎖、またはそれらの組合せに由来するペプチドを含む。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、DR、DPまたはDQのα1またはα2ドメイン全部を含む。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、DR、DPまたはDQのβ1またはβ2ドメイン全部を含む。一部の実施形態では、MHCクラスII分子は、レシピエントのHLA-DRB1*03またはHLA-DRB1*04対立遺伝子によってコードされる。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、超可変領域由来の配列を含む。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、少なくとも10アミノ酸長である。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、約10~30アミノ酸長である。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、合成または組換えである。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、レシピエントに由来するか、またはレシピエント由来の幹細胞の分化の際に誘導されたものであり、アポトーシス性白血球は、その表面にコンジュゲートされたMHCクラスI分子に由来する1種または複数のペプチドを含む。一部の実施形態では、MHCクラスI分子は、移植のドナー中で発現する。一部の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A1、HLA-A3、HLA-B7またはHLAB8である。一部の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A*02、24、01またはHLA-B*35、44、51によってコードされる。一部の実施形態では、1種または複数のペプチドは、架橋剤での処理によってアポトーシス性白血球の表面にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、架橋剤は、カルボジイミドを含む。一部の実施形態では、カルボジイミドは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、架橋剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)を含む。一部の実施形態では、架橋剤は、カルボジイミドを含まない。一部の実施形態では、架橋剤は、ゲニピン、アクリルアルデヒド、ジホルミル、四酸化オスミウム、ジイミドエステル、塩化第二水銀、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、トリニトロフェノール(ピクリン酸)、重クロム酸カリウム、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、ジイミドエステルは、塩化シアヌル、ジイソシアネート、ジエチルピロカーボネート(DEPC)、マレイミド、ベンゾキノン、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、所定の時間、固定されている。一部の実施形態では、所定の時間は、少なくとも約10分、20分、30分、40分、50分、60分、75分、90分、120分、150分、180分、210分または240分である。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、ある量の1種または複数の免疫調節分子とさらに接触されたものである。一部の実施形態では、1種または複数の免疫調節分子の前記量は、レシピエントの抗原提示細胞の機能を改変するのに十分である。一部の実施形態では、1種または複数の免疫調節分子は、IFN-γ、NF-kB阻害剤、ビタミンD3、siCD40、コバルトプロトポルフィリン、インスリンB9-23、表面抗原分類タンパク質のすべてもしくは一部、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、NF-kB阻害剤は、クルクミン、トリプトリド、Bay-117085、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、(a)、(b)、(c)、(d)および(e)は、別々に、または同時に投与される。
【0007】
一部の態様では、同種移植片または異種移植片のレシピエントの移植後安定化のための寛容化レジメンであって、カルボジイミド架橋剤でモジュレートされたアポトーシス性白血球であって、架橋剤との接触の前に、IL-2、IL-4、IL-21、BAFFおよびCD40Lの1つまたは複数の存在下で増やされる、アポトーシス性白血球;mTOR阻害剤;抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤;抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤;ならびに抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を含み、寛容化レジメンが、移植細胞、組織または臓器のレシピエントへの投与のためである、寛容化レジメンが本明細書に開示される。
【0008】
一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、架橋剤との接触の前に、出発集団に対して、少なくとも約3倍、5倍、10倍、50倍、100倍、150倍、200倍または250倍増やされる、請求項74に記載の寛容化レジメン。一部の実施形態では、(a)、(b)、(c)、(d)および(e)は、別々に、または同時に投与される。
【0009】
一部の態様では、細胞、組織または臓器移植片をレシピエントに移植するための前処置レジメンであって、架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球を含み、ここで、アポトーシス性白血球は、その表面上にコンジュゲートされた、レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種もしくは複数のペプチド、または細胞、組織もしくは臓器移植片のドナーのMHCクラスI分子に由来する1種もしくは複数のペプチドを含み、前処置レジメンが、レシピエントへの投与のためである、前処置レジメンが本明細書に開示される。
【0010】
一部の実施形態では、前処置レジメンは、移植レシピエントの短期免疫抑制のための1種または複数の薬剤を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制のための1種または複数の薬剤は、mTOR阻害剤、抗腫瘍壊死因子剤もしくは抗腫瘍壊死因子受容体剤、抗インターロイキン6剤もしくは抗インターロイキン6受容体剤、抗CD40剤もしくは抗CD40リガンド剤、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、前処置レジメンは、移植レシピエントへの短期免疫抑制のための1種または複数の薬剤の投与のための説明書をさらに含む。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、DRβ鎖、DQβ鎖もしくはDPβ鎖、またはそれらの組合せに由来するペプチドを含む。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、DRのβ1またはβ2ドメイン全部を含む。一部の実施形態では、MHCクラスII分子は、レシピエントのHLA-DRB1*03またはHLA-DRB1*04対立遺伝子によってコードされる。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、DR、DPまたはDQのα1またはα2ドメイン全部を含む。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、DQのβ1またはβ2ドメイン全部を含む。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、超可変領域由来の配列を含む。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、少なくとも10アミノ酸長である。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、約10~30アミノ酸長である。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、合成または組換えである。一部の実施形態では、架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球は、レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドを含み、アポトーシス性白血球は、ドナーとMHCクラスII適合、およびレシピエントとMHCクラスII不適合である。一部の実施形態では、MHCクラスI分子は、移植のドナー中で発現する。一部の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A1、HLA-A3、HLA-B7またはHLAB8である。一部の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A*02、24、01またはHLA-B*35、44、51によってコードされる。一部の実施形態では、架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球は、ドナーのMHCクラスI分子に由来する1種または複数のペプチドを含み、アポトーシス性白血球は、レシピエントと、MHCクラスI適合もしくはMHCクラスII適合、またはその両方である。一部の実施形態では、1種または複数のペプチドは、架橋剤での処理によってアポトーシス性白血球の表面にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、架橋剤は、カルボジイミドを含む。一部の実施形態では、カルボジイミドは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、架橋剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)を含む。一部の実施形態では、架橋剤は、カルボジイミドを含まない。一部の実施形態では、架橋剤は、ゲニピン、アクリルアルデヒド、ジホルミル、四酸化オスミウム、ジイミドエステル、塩化第二水銀、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、トリニトロフェノール(ピクリン酸)、重クロム酸カリウム、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、ジイミドエステルは、塩化シアヌル、ジイソシアネート、ジエチルピロカーボネート(DEPC)、マレイミド、ベンゾキノン、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、所定の時間、固定されている。一部の実施形態では、所定の時間は、少なくとも約10分、20分、30分、40分、50分、60分、75分、90分、120分、150分、180分、210分または240分である。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、ある量の1種または複数の免疫調節分子とさらに接触されたものである。
【0011】
一部の態様では、レシピエントにおいて細胞、組織または臓器移植片に対する寛容を誘導する方法であって、(a)架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球、(b)mTOR阻害剤、(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を含む、有効量の組成物をレシピエントに投与することを含む、方法が本明細書に開示される。
【0012】
一部の実施形態では、アポトーシス性白血球およびレシピエントは、レシピエントと少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子について適合する。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球およびレシピエントは、MHC不適合である。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドを含み、1種または複数のペプチドは、アポトーシス性白血球の表面上にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、ex vivoで幹細胞から分化した細胞を含み、幹細胞は、細胞、組織または臓器移植片のドナーに由来する。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、レシピエントとMHC適合である。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、細胞、組織または臓器移植片のドナーのMHCクラスI分子に由来する1種または複数のペプチドを含み、1種または複数のペプチドは、アポトーシス性白血球の表面上にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、ex vivoで幹細胞から分化した細胞を含み、幹細胞は、細胞、組織または臓器移植片のレシピエントに由来する。一部の実施形態では、本方法は、細胞、組織または臓器移植片を移植することをさらに含む。一部の実施形態では、移植することは、組成物の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日後、またはそれよりも後に行われる。一部の実施形態では、本方法は、組成物の少なくとも1ブースター用量を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、ブースター用量は、移植の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、17、20、21または24日後に投与される。一部の実施形態では、寛容は、少なくとも1か月の期間にわたる。一部の実施形態では、寛容は、少なくとも100日の期間にわたる。一部の実施形態では、寛容は、少なくとも1年の期間にわたる。
【0013】
一部の態様では、レシピエントにおいて細胞、組織または臓器移植片に対する寛容を誘導する方法であって、架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球を含む有効量の組成物をレシピエントに投与することを含み、アポトーシス性白血球は、その表面上にコンジュゲートされた、レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種もしくは複数のペプチド、または細胞、組織もしくは臓器移植片のドナーのMHCクラスI分子に由来する1種もしくは複数のペプチドを含む、方法が本明細書に開示される。
【0014】
一部の実施形態では、寛容は、移植後50日後に免疫抑制療法の非存在下において存在する。一部の実施形態では、寛容は、ブースターレジメンの非存在下において存在する。
【0015】
一部の態様では、レシピエントにおいて細胞、組織または臓器移植片に対する免疫応答を阻害するための方法であって、(a)架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球、(b)mTOR阻害剤、(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤の有効量をレシピエントに投与することを含む、方法が本明細書に開示される。
【0016】
一部の態様では、レシピエントにおいて細胞、組織または臓器移植片に対する免疫応答を阻害するための方法であって、架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球を含む有効量の組成物をレシピエントに投与することを含み、ここで、アポトーシス性白血球は、その表面上にコンジュゲートされた、レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種もしくは複数のペプチド、または細胞、組織もしくは臓器移植片のドナーのMHCクラスI分子に由来する1種もしくは複数のペプチドを含む、方法が本明細書に開示される。
【0017】
一部の実施形態では、免疫応答は、B細胞活性化、T細胞増殖、B細胞増殖、マクロファージ活性化、サイトカイン産生、またはそれらの組合せを含む。
【0018】
一部の態様では、対象を移植後免疫寛容化する方法であって、(a)カルボジイミド架橋剤でモジュレートされたアポトーシス性白血球であって、架橋剤との接触の前に、IL-2、IL-4、IL-21、BAFFおよびCD40Lの1つまたは複数の存在下で増やされる、アポトーシス性白血球、(b)mTOR阻害剤、(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、ならびに(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を対象に投与することを含む、方法が本明細書に開示される。
【0019】
一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、末梢血から単離される。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、陰性選択によってB細胞について富化されている。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、カルボジイミド架橋剤によるモジュレートの前に、出発集団に対して少なくとも200倍増やされる。
【0020】
一部の態様では、レシピエントにおける細胞、組織または臓器移植片の移植のためのキットであって、(a)架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球を含む第1の組成物を含む第1の容器、(b)mTOR阻害剤を含む第2の組成物を含む第2の容器、(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤を含む第3の組成物を含む第3の容器、(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を含む第4の組成物を含む第4の容器、および(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を含む第5の組成物を含む第5の容器を含む、キットが本明細書に開示される。
【0021】
一部の態様では、レシピエントにおける細胞、組織または臓器移植片の移植のためのキットであって、架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球を含む第1の組成物を含む第1の容器を含み、ここで、アポトーシス性白血球は、その表面上にコンジュゲートされた、レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種もしくは複数のペプチド、または細胞、組織もしくは臓器移植片のドナーのMHCクラスI分子に由来する1種もしくは複数のペプチドを含む、キットが本明細書に開示される。
【0022】
一部の実施形態では、キットは、細胞、組織または臓器移植片をさらに含む。
【0023】
一部の態様では、前処置レジメンおよび寛容化レジメンを含む移植キットであって、前処置レジメンが、架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球;mTOR阻害剤;抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤;抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤;および抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を含み、寛容化レジメンが、カルボジイミド架橋剤でモジュレートされたアポトーシス性白血球であって、架橋剤との接触の前に、IL-2、IL-4、IL-21、BAFFおよびCD40Lの1つまたは複数の存在下で増やされる、アポトーシス性白血球;mTOR阻害剤;抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤;抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤;ならびに抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を含み、前処置レジメンが、移植の前に対象に投与され、寛容化レジメンが、移植後に対象に投与される、移植キットが本明細書に開示される。
【0024】
一部の実施形態では、移植キットは、細胞、組織または臓器移植片をさらに含む。一部の実施形態では、寛容化レジメンのアポトーシス性白血球は、末梢血から単離される。一部の実施形態では、寛容化レジメンのアポトーシス性白血球は、陰性選択によってB細胞について富化されている。一部の実施形態では、寛容化レジメンのアポトーシス性白血球は、架橋剤との接触の前に、出発集団に対して少なくとも200倍増やされる。
【0025】
一態様では、本明細書において、同種グラフトのための哺乳動物白血球であって、前記哺乳動物白血球が、死体の哺乳動物白血球であり、前記死体の哺乳動物白血球が、カルボジイミド中において固定されている、哺乳動物白血球が提供される。
【0026】
別の態様では、本開示は、同種グラフトのための哺乳動物白血球であって、前記哺乳動物白血球が、ex vivoで増やされた哺乳動物白血球であり、前記ex vivoで増やされた哺乳動物白血球が、カルボジイミド中において固定されている、哺乳動物白血球を提供する。
【0027】
一部の実施形態では、前記ex vivoで増やされた哺乳動物白血球は、生体ドナー由来である。一部の実施形態では、前記生体ドナーは、ヒトである。一部の実施形態では、前記死体の哺乳動物白血球は、ex vivoで増やされた白血球の集団由来である。一部の実施形態では、前記死体の哺乳動物白血球は、心停止ドナー由来である。一部の実施形態では、前記死体の哺乳動物白血球は、脳死ドナー由来である。一部の実施形態では、前記哺乳動物白血球は、ヒト白血球である。一部の実施形態では、前記哺乳動物白血球は、脾臓から単離される。一部の実施形態では、前記哺乳動物白血球は、B細胞である。一部の実施形態では、前記哺乳動物白血球は、所定の時間、固定されている。一部の実施形態では、前記所定の時間は、少なくとも約1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、75分、90分、120分、150分、180分、210分または240分である。
【0028】
上記態様の一部の実施形態では、前記哺乳動物白血球は、ある量の1種または複数の免疫調節分子とさらに接触されたものである。一部の実施形態では、前記量は、その後に37℃に4時間曝露された時に、ドナー反応性細胞のアポトーシス死の引き金を引くのに十分である。一部の実施形態では、1種または複数の免疫調節分子は、IFN-γ、NF-kB阻害剤、ビタミンD3、siCD40、コバルトプロトポルフィリン、インスリンB9-23、α1-アンチトリプシン、表面抗原分類タンパク質のすべてもしくは一部、gp39アンタゴニスト、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、クルクミン、トリプトリド、Bay-117085、またはそれらの組合せである前記NF-kB阻害剤。一部の実施形態では、前記カルボジイミドは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、前記カルボジイミド剤は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)を含む。
【0029】
一態様では、本明細書において、細胞、組織または臓器移植片に対する寛容を誘導する方法であって、上記に開示される前記哺乳動物白血球の量を含む組成物を対象に投与することを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、前記細胞または組織移植片は、前記哺乳動物白血球のドナー由来である。一部の実施形態では、前記細胞または組織移植片は、前記哺乳動物白血球のドナーとMHC適合であるドナー由来である。一部の実施形態では、前記細胞または組織移植片は、前記哺乳動物白血球のドナーとハプロタイプ一致であるドナー由来である。一部の実施形態では、前記細胞または組織移植片は、前記哺乳動物白血球のドナーと、少なくとも1つのMHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI
B対立遺伝子、MHCクラスII DR対立遺伝子またはMHCクラスII DQ対立遺伝子を共有するドナー由来である。一部の実施形態では、前記細胞または組織移植片は、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、膵島細胞、小腸、骨髄、造血幹細胞、胚性もしくは誘導多能性幹細胞由来膵島ベータ細胞、胚性もしくは誘導多能性幹細胞由来膵島、またはそれらの組合せである。
【0030】
一部の実施形態では、本方法は、前記細胞または組織移植片を前記対象に移植することをさらに含む。一部の実施形態では、前記移植することは、前記組成物の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30日後、またはそれよりも後に行われる。一部の実施形態では、前記移植することは、前記組成物の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30日前、またはそれよりも前に行われる。一部の実施形態では、上記に開示される態様の方法は、前記組成物の少なくとも1ブースター用量を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、前記組成物の1、2、3、4または5ブースター用量を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、前記ブースター用量は、前記移植することの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30日後、またはそれよりも後に投与される。一部の実施形態では、前記ブースター用量は、前記移植することの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30日前、またはそれよりも前に投与される。一部の実施形態では、前記ブースター用量は、より低い量の前記哺乳動物白血球を含む。
【0031】
一態様では、本明細書において、架橋剤中において固定された白血球を含む移植のための前処置レジメンであって、前記白血球が、レシピエントにおける抗炎症性サイトカインの発現を増加させる薬剤で処理される、前処置レジメンが提供される。一部の実施形態では、前記抗炎症性サイトカインは、TGF-β、IL-10、IL-13、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、前記前処置レジメンは、前記白血球のドナー由来の移植された細胞、組織または臓器に対する前記レシピエントの長期寛容を提供する。一部の実施形態では、前記長期寛容は、少なくとも1か月の期間にわたる。一部の実施形態では、前記長期寛容は、ブースターレジメンの非存在下において存在する。
【0032】
一部の実施形態では、前記白血球は、哺乳動物白血球である。一部の実施形態では、前記白血球は、ブタ白血球である。一部の実施形態では、前記白血球は、ヒト白血球である。一部の実施形態では、前記白血球は、死体の白血球である。一部の実施形態では、前記白血球は、ex vivoで増やされた白血球である。一部の実施形態では、前記死体の白血球は、心停止ドナー由来である。一部の実施形態では、前記死体の白血球は、脳死ドナー由来である。他の実施形態では、前記ex vivoで増やされた白血球は、生体ドナー由来である。
【0033】
一部の実施形態では、前記白血球は、脾臓から単離される。一部の実施形態では、前記白血球は、所定の時間、固定されている。一部の実施形態では、前記所定の時間は、少なくとも約1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、75分、90分、120分、150分、180分、210分または240分である。一部の実施形態では、前記薬剤は、α1-アンチトリプシンを含む。一部の実施形態では、前記白血球は、ある量の1種または複数の免疫調節分子とさらに接触されたものである。一部の実施形態では、前記量は、ドナー反応性細胞のアポトーシス死の引き金を引くのに十分である。
【0034】
一部の実施形態では、1種または複数の免疫調節分子は、IFN-γ、NF-kB阻害剤、ビタミンD3、siCD40、コバルトプロトポルフィリン、インスリンB9-23、表面抗原分類タンパク質のすべてもしくは一部、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、クルクミン、トリプトリド、Bay-117085、またはそれらの組合せである前記NF-kB阻害剤。一部の実施形態では、前記白血球は、ドナーから単離され、ex vivoで増やされた白血球の集団由来である。一部の実施形態では、前記架橋剤は、カルボジイミド、ゲニピン、アクリルアルデヒド、ジホルミル、四酸化オスミウム、ジイミドエステル、塩化第二水銀、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、トリニトロフェノール(ピクリン酸)、重クロム酸カリウム、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸、またはそれらの組合せを含む。
【0035】
一部の実施形態では、塩化シアヌル、ジイソシアネート、ジエチルピロカーボネート(DEPC)、マレイミド、ベンゾキノン、またはそれらの組合せを含むジイミドエステルを含む前処置レジメン。一部の実施形態では、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、またはそれらの組合せを含む前記カルボジイミドを含む前処置レジメン。一部の実施形態では、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)である前記カルボジイミド。一部の実施形態では、前記白血球は、Bリンパ球を含む。一部の実施形態では、前記Bリンパ球は、生体ドナー由来である。
【0036】
本開示の特徴は、特に、添付の特許請求の範囲と共に記載される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本開示の原理を利用する、例示的実施形態を記載する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、ポジティブおよび寛容化および前処置ワクチンおよびレジメン(あるいは、ネガティブワクチンと呼ばれる)を例示する。本開示のある特定の実施形態では、寛容化もしくは前処置ワクチンもしくはレジメン、またはそれに由来する成分を、本明細書に記載の前処置レジメンの一部として提供することができる。
【0038】
【
図2】
図2は、ドナーが生きているドナーまたは死体ドナー、例えば、死亡したドナーであってもよい、ドナー移植における寛容誘導のためのプロトコールの概略図である。
【0039】
【
図3】
図3は、必要に応じて、一過的免疫抑制の支援下での、寛容化または前処置ワクチン接種またはレジメンのために、脾細胞などのアポトーシス性ドナー白血球を注入した対象におけるグラフトの生存を延長する例示的手法を示す。
【0040】
【
図4】
図4は、必要に応じて、レシピエントの慢性的かつ全身性の免疫抑制の非存在下での、レシピエントにおける移植およびグラフトの拒絶を阻害する、もしくは最小化する、および/またはその生存を延長するための例示的な移植レジメンを示す。ある特定の実施形態では、レジメンは、以下の3つの成分のうちの1つまたは複数:i)αGal、NLRC5、B2M、MHCクラスI、補体C3、および/またはCXCL10の発現ならびに必要に応じて、HLA-Gおよび/またはHLA-Eのトランスジェニック発現が欠損および/または低減した、遺伝子操作された膵島などの移植細胞または組織;ii)αGal、Neu5Gc、NLRC5、B2M、ヒトPD-L1、ヒトPD-L2および/またはSda/CADの発現ならびに必要に応じて、HLA-Gおよび/またはHLA-Eのトランスジェニック発現が欠損および/または低減し、ヒトCD47を含む、または含まない(例えば、前処置レジメンまたは寛容化ワクチンにおける遺伝子操作された細胞)、遺伝子操作されたドナーアポトーシス性および非アポトーシス性単核細胞(例えば、ECDI固定脾細胞またはECDI固定Bリンパ球などのECDI固定白血球を含む前処置レジメンまたは寛容化レジメンまたはワクチン);ならびにiii)例えば、限定されるものではないが、アンタゴニスト性抗CD40 mAb抗体、Fc操作された抗CD40L抗体、ラパマイシン、コンプスタチンもしくはコンプスタチン誘導体(例えば、コンプスタチン誘導体APL-2)を含む一過性抗炎症療法、抗IL-6受容体mAb、可溶性TNF受容体、B細胞標的化戦略(例えば、B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19、もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BLyS、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)、および/またはα1-抗トリプシンのうちの1つまたは複数などの、本明細書に記載の前処置レジメンの1つまたは複数の成分を含む一過的免疫抑制の投与を含んでもよい。B細胞を標的とする生物製剤の非限定例としては、リツキシマブ、抗CD20抗体が挙げられる。
【0041】
【
図5】
図5は、ヒト死体ドナーに由来する脾臓B細胞などの前処置または寛容化レジメンにおける使用のための、アポトーシス性ドナー白血球(ADL)の調製のための白血球の増幅のための例示的プロトコールを示す。脾細胞を単離し、ナイロンウールカラム上でRBC溶解およびB細胞富化にかける。単離された脾細胞の第1の画分(例えば、約80%)を使用して、移植に対して最初の時点(例えば、-7日目)での注入のためのアポトーシス性ドナー白血球(ADL)の用量を生成することができる。脾細胞を、本明細書に開示されるようにECDI処理し、リリース試験にかけ、レシピエントに注入することができる。単離された脾細胞の第2の画分(例えば、約20%)を取り分け、これを使用して、+1日目での注入のためのADLの第2の用量を生成することができる。第2の画分は、B細胞を富化するための選択(例えば、Miltenyi CliniMACSを使用する陽性または陰性選択)に供してもよく、ex vivoで増幅することができる(例えば、hIL-2、hIL-4、h-IL21、hBAFF、およびh-CD40L多量体の存在下で8日を超える)。富化されたB細胞は、ECDI処理、リリース試験、および移植レシピエントへの注入の前(例えば、1日目)に少なくとも15倍の増幅に供してもよい。
【0042】
【
図6】
図6は、生きているドナーの腎臓同種グラフトに対する寛容誘導のための例示的プロトコールを示す。計画された腎移植に対して-22または-21日目(±2日)に、B細胞を採血または白血球除去輸血から取得する。ex vivoで増幅され、ECDI固定されたドナーB細胞を、0日目の腎移植に対して-7日目および+1日目にレシピエントにIVにより注入する。短期免疫抑制および抗炎症療法を、本明細書に開示される移植レシピエントに投与する。
【0043】
【
図7】
図7は、ドナーの末梢血から得られ、移植に対して-7および+1日目での注入のためにex vivoで増幅した、寛容化アポトーシス性ドナーB細胞の患者用量を生成するための例示的プロトコールを示す。プロトコールを、移植の少なくとも約3~4週間前に開始することができる。1回または複数回の低体積白血球除去輸血手順を、サイトカイン刺激されていない生きているドナー(例えば、腎臓ドナー)に対して行う。B細胞を富化して(例えば、CliniMACSを使用する陽性または陰性選択による)、約0.5x10^9個のB細胞の入力細胞収量を提供する。富化されたB細胞を、ex vivoで少なくとも200倍に増幅して、標的細胞用量を提供する(例えば、hIL-2、hIL-4、h-IL-21、hBAFF、およびh-CD40L多量体の存在下で、約16日にわたって増幅される)。増幅後、B細胞を、本明細書に開示されるようにECDI処理し、リリース試験にかけ、レシピエントに注入する(例えば、移植に対して-7日目および+1日目に)。
【0044】
【
図8】
図8Aは、本開示の例において使用される前処置レジメンを示す。コホートBには短期免疫抑制を投与したが、コホートCには短期免疫抑制とアポトーシス性ドナー白血球を投与した。
【0045】
図8Bは、拒絶がない膵島同種グラフト生存のKaplan-Meir推定量を提供する。本明細書に記載のアポトーシス性白血球を含む前処置および寛容化レジメンの投与は、生存の有意な改善と関連していた。P=0.021、Mantel-Cox。
【0046】
【
図9】
図9A~Fは、本明細書に記載のアポトーシス性白血球を含む前処置および寛容化レジメンの投与が、膵島同種グラフトの安定な寛容を容易にすることを示す。
図9Aは、本明細書に記載のアポトーシス性白血球を含む前処置および寛容化レジメンを受けたサルが、移植後すぐに正常血糖になり、移植後21日目の免疫抑制および外因性インスリンの中止後もそのままであったことを示す。食前および食後BGを線で示し、1日インスリンをバーで示す。グラフは、7日間培養した膵島の門脈内移植後の正常血糖の回復(DNAによる5547IE/kg)、および移植後+21日目でのインスリンおよび免疫抑制の中止にも拘わらず、正常血糖の維持を示す。
図9Bは、レシピエントの糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベルが、移植後に正常になり、それを保持したことを示す。
図9Cは、移植後の継続的体重増加を示す。
図9Dは、コホートCのサルにおける、強く陽性の移植後の空腹時および無作為血清Cペプチドレベルならびに1年のフォローアップを通した刺激後のその増加が、安定な膵島同種グラフト機能を確認したことを示す。
図9Eは、そのレシピエントにおける、STZ前の速度と同等である、グルコースのIVチャレンジ後の安定な移植後血中グルコース消失速度(Kg)が観察されたことを示す。
図9Fは、適合試験に由来するCペプチドレベルが、移植後の経過を通して1ng/mLを超える実質的な増加を示したことを示す。
【0047】
【
図10】
図10A~
図10Cは、本明細書に記載のアポトーシス性白血球を含む前処置および寛容化レジメンを受け、安定な正常血糖を示した動物に由来する肝臓の組織病理学的分析を示す。
図10Aは、組織病理学的分析により、いくつかのインタクトな膵島が示され、膵島周囲浸潤がない、または最小限の浸潤を示したことを示す。移植された、肝内膵島は、インスリンに関する強い陽性染色を示した(
図10B);剖検での天然膵臓中のインスリン陽性膵島ベータ細胞の非存在(
図10C)は、移植後の正常血糖が、グラフトの機能を反映し、STZ誘導性糖尿病後の寛解に起因するものではないことを示していた。
【0048】
【
図11】
図11A~Fは、移植の1年後に犠牲にならなかった、本開示の前処置レジメンを受けた移植レシピエントが、免疫抑制の中止後も2年を超えて継続的な膵島同種グラフトの機能を示したことを示す。
図11Aは、食前および食後血糖(それぞれ、実線および破線)ならびに1日インスリン(バー)を提供する。
図11Bは、フォローアップを通した正の、かつ安定なCペプチドレベル(空腹、無作為、および混合食刺激)を示す。
図11Cは、フォローアップを通した正常に近いHbA1cレベルの回復を示す。
図11Dは、移植後の継続的な体重増加を示し、移植後の正常血糖が吸収不良状態に起因するものではないことを示している。
図11Eは、0.5g/kgのグルコースのIV注入(IVGTT)の前後での血糖ならびに糖尿病誘導の前後および移植後のKgレベルを示す。
図11Fは、IVグルコース(0.5g/kg)に対する急性Cペプチド応答を示す。
【0049】
【
図12】
図12は、剖検時の組織病理学的分析により、免疫抑制の中止後、2年を超えて継続的な膵島同種グラフト機能を示したサルにおいて拒絶がない膵島同種グラフト生存が確認されたことを示す。サルは、本開示の前処置レジメンを受けた。
【0050】
【
図13】
図13A~Fは、本明細書に記載のアポトーシス性白血球を含む前処置および寛容化レジメンの投与を受けなかったサルが、特に、移植の4ヶ月後に明らかであったように、グラフト機能の徐々の低下を示したことを示す。
図13Aは、食前および食後血糖値(それぞれ、実線および破線)ならびに1日インスリン(バー)を示す。上向きの傾向と共に、移植後133日目で出発して食後不安定性が明らかであり、拒絶に起因する同種グラフトの喪失を示唆していた。
図13Bは、Cペプチドレベル(空腹、無作為、および混合食刺激)が移植後に正になり、基底レベルは、移植後161日目まで約1ng/mLのままであったことを示す。
図13Cは、正常に近いHbA1cレベルの回復を示し、次いで、140日目あたりで、継続的な上向きの傾向と共にレベルの上昇が始まっている。
図13Dは、移植後の継続的な体重増加を示し、移植後の正常血糖が吸収不良状態に起因するものではないことを示している。
図13Eは、0.5g/kgのグルコースのIV注入(IVGTT)の前後での血糖値ならびに糖尿病誘導の前後および移植後のKgレベルを示す。
図13Fは、IVグルコース(0.5g/kg)に対する急性のCペプチド応答を示す。
【0051】
【
図14】
図14A~Fは、移植前および移植後の様々な時点でのコホートBおよびCにおけるエフェクター細胞応答を示す。
図14Aは、コホートB(n=7)およびC(n=5)に由来するレシピエントにおける、移植前ならびに移植後3、6および12ヶ月で長期的に測定された、末梢血リンパ球(PBL)中のCD4+Tエフェクター記憶(TEM)細胞のパーセンテージを示す。
図14Bは、コホートB(n=3~7)およびC(n=2~5)に由来するレシピエントにおける、終結時のPBL、肝臓単核細胞(LMNC)、およびリンパ節(LN)中のCD4+TEM細胞のパーセンテージを示す。
図14Cは、6日間の混合リンパ球反応(MLR)における、移植前および移植後の示された間隔での照射されたドナーPBLに応答するコホートBおよびCにおけるカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)標識されたCD4+T細胞の増殖の倍率変化(移植前レベルとの比較;ナイーブ)を示す。
図14Dは、コホートB(n=7)およびC(n=5)に由来するPBL中の循環CD8+TEM細胞のパーセンテージを示す。
図14Eは、コホートB(n=3~7)およびC(n=3~5)に由来するレシピエントにおける終結時のPBL、LMNC、およびLN中のCD8+TEM細胞のパーセンテージを示す。
図14Fは、6日間のMLRにおける、移植前および移植後の示された間隔での照射されたドナーPBLに応答するコホートBおよびCにおけるCFSE標識されたCD8+T細胞の増殖の倍率変化(移植前レベルとの比較;ナイーブ)を示す。
【0052】
【
図15】
図15A~Dは、移植前および移植後の様々な時点でのコホートBおよびCにおける免疫細胞サブセットの頻度を示す。パーセンテージは、循環濾胞性ヘルパー細胞(Tfh、
図15A)、PD-1+CD4+T細胞(
図15B)、PD-1+CD8+T細胞(
図15C)、およびCD20+B細胞(
図15D)について示される。
【0053】
【
図16】
図16A~Dは、コホートBおよびCにおける免疫調節性細胞サブセットのパーセンテージを示す。
図16Aは、循環ナチュラルサプレッサー(NS)細胞のパーセンテージを示す。
図16Bは、循環Treg細胞のパーセンテージを示す。
図16Cは、循環Breg細胞のパーセンテージを示す。
図16Dは、犠牲時の末梢血、肝臓、およびリンパ節中のBreg細胞のパーセンテージを示す。
【0054】
【
図17】
図17A~Eは、寛容化および前処置レジメンの部分としてのADLが、MDSCの増幅および寛容原性APCを誘導することを示す。
図17Aは、MDSCの特定のためのゲーティング戦略を示す。シングレットを最初にゲート化して、ダブレットを除去し、死滅した細胞を除外した。CD33+およびCD11b+の同時発現に基づいて、Lin-HLA-DR-集団内のゲート化されたCD14+細胞中で、およびCD3-CD20-細胞を描写するLinを用いて、MDSCを特定した。1匹のコホートB(上)および1匹のコホートC(下)のサルに由来する代表的なFACSプロファイルを示す。
図17Bは、コホートBのサルと比較した、コホートCのサルにおける循環MDSCのパーセンテージの有意な増加を示す。
図17Cは、循環HLA-DR+CD11b+樹状細胞のMFIの倍率変化を示す。
図17Dは、循環HLA-DR+CD14+単球のMFIの倍率変化を示す。
図17Eは、循環HLA-DR+CD20+B細胞のMFIの倍率変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本開示の以下の議論は、例示および説明の目的で提示されている。以下は、本発明を本明細書に開示の1つまたは複数の形態に限定することを意図するものではない。本開示の説明は、1つまたは複数の実施形態、ならびにある特定の変形および改変の説明を含むが、他の変形および改変は、例えば、本開示を理解した後、当業者の技能および知識内であり得るように、本開示の範囲内である。特許請求に係る構造、機能、範囲またはステップに対して、代替、互換および/または同等の構造、機能、範囲またはステップを含む代替の実施形態を、そのような代替、互換および/または同等の構造、機能、範囲またはステップが本明細書に開示されているか否かにかかわらず、かつ任意の特許可能な主題を公に供することを意図することなく、許容される程度で含む権利を取得することを意図する。
【0056】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成上の目的のみのためであって、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0057】
本開示のさまざまな特徴は、単一の実施形態の文脈で記載され得るが、この特徴はまた、別々に、または任意の適切な組合せで提供することができる。逆に、本開示は、明確にするために別々の実施形態の文脈で本明細書に記載され得るが、さまざまな態様および実施形態は、単一の実施形態で実行することができる。
【0058】
本明細書に開示の一部の実施形態の実施は、他に指示されない限り、当技術分野の技能の範囲内である、免疫学、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノミクスおよび組換えDNAの従来の技術を用いる。例えば、Sambrook and Green, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th Edition (2012);the series Current Protocols in Molecular Biology (F. M.
Ausubel, et al. eds.);the series Methods In Enzymology (Academic Press, Inc.), PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995))、Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique and Specialized Applications, 6th Edition (R.I. Freshney, ed. (2010))を参照されたい。
定義
【0059】
以下の定義は、当技術分野における定義を補足するものであり、現在の出願を対象とし、任意の関連または非関連の場合に、例えば、任意の一般に所有されている特許または出願に帰属させるべきではない。本明細書に記載の方法および材料に類似または同等の任意の方法および材料を本開示の試験のための実施において使用することができるが、好ましい材料および方法を本明細書に記載する。したがって、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態のみを記載する目的であって、限定することを意図するものではない。
【0060】
本出願では、単数形の使用は、他に具体的に言及されない限り、複数形を含む。本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が他に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。さらに、「含む(including)」いう用語、ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」および「含む(included)」などの他の形態の使用は限定的ではない。
【0061】
本明細書で使用される場合、「および/または」および「その任意の組合せ」という用語、ならびにそれらの文法的に同等の用語は、互換的に使用することができる。これらの用語は、任意の組合せが具体的に企図されることを伝えることができる。単なる説明の目的のために、以下の「A、Bおよび/またはC」または「A、B、C、またはそれらの任意の組合せ」という語句は、「個々にA、個々にB、個々にC、AおよびB、BおよびC、AおよびC、ならびにA、BおよびC」を意味し得る。
【0062】
「または」という用語は、文脈が具体的に選言的な使用を指していない限り、接続的または選言的に使用することができる。
【0063】
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値についての許容される誤差の範囲内を意味し、これは、その値が測定または決定される方法、すなわち、測定系の限界に、部分的に依存し得る。例えば、「約」は、当技術分野における実施で、標準偏差が1または1を超える範囲内を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、10%まで、5%まで、または1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生物システムまたはプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。特定の値が、本出願および特許請求の範囲に記載される場合、他に言及されない限り、特定の値についての許容される誤差範囲内を意味する「約」という用語を想定すべきである。
【0064】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「含む(comprising)(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの含む(including)の任意の形態)または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含有する(containing)の任意の形態)という語は、包括的またはオープンエンドなものであり、追加の列挙されていない要素または方法のステップを排除しない。本明細書で議論される任意の実施形態は、本発明の任意の方法または組成物に関して実行することができ、逆もまた同様であることが企図される。さらにまた、本発明の組成物を使用して、本発明の方法を達成することができる。
【0065】
本明細書における「一部の実施形態」、「1つの実施形態」、「一実施形態」または「他の実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも一部の実施形態に含まれるが、必ずしも本発明のすべての実施形態に含まれなくてもよいことを意味する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「移植」という用語およびその文法的に同等の用語は、ドナーからレシピエントへの細胞、組織または臓器の移植、埋込または注入を含む任意の手順を包含する。移植の非限定的な例示的な種類としては、自家移植、自家グラフト、同種移植(allotransplant)、同種グラフト、同系移植、同系グラフト、異種移植、異種グラフト、ならびに分割グラフトおよびドミノ移植が挙げられる。1つの実施形態では、「分割グラフト」という用語は、2以上のレシピエントに分割されるドナーからの細胞、臓器、組織、またはさらに特定のタンパク質の移植を含む任意の手順を包含する。
【0067】
本明細書で使用される場合、「自家移植」、「自家移植片」、「自家グラフト」という用語または文法的に同等の用語は、身体の一部由来の臓器、組織、細胞、またはさらに特定のタンパク質もしくは発現産物の同じ対象の別の部分への移植を含む任意の手順を包含する。1つの実施形態では、対象は、Laurasiatheria上目のメンバーである。1つの実施形態では、対象は、有蹄動物、例えば、ブタ、キリン、ラクダ、シカまたはウシである。1つの実施形態では、対象は、ヒトまたは非ヒト霊長類である。このような手順によって移植される自家組織(自家(autogenous)、自家(autogeneic)または自家(autogenic)組織とも呼ばれる)は、自家グラフトまたは自家移植片と呼ばれる。
【0068】
本明細書で使用される場合、「同種移植」、「同種移植片」、「同種グラフト」という用語またはそれらの文法的に同等の用語は、レシピエントおよびドナーが同じ種である、レシピエントへの細胞、組織もしくは臓器の移植、埋込または注入を含む任意の手順を包含する。1つの実施形態では、レシピエントおよび/またはドナーは、Laurasiatheria上目のメンバーである。1つの実施形態では、レシピエントおよび/またはドナーは、有蹄動物、例えば、ブタ、キリン、ラクダ、シカまたはウシである。1つの実施形態では、本明細書に記載の細胞、組織または臓器は、ヒトまたは非ヒト霊長類に移植される。同種移植としては、限定されるものではないが、血管化同種移植片、部分的血管化同種移植片、非血管化同種移植片、同種ドレッシング、同種包帯および同種構造が挙げられる。一部の場合では、同種移植片は、臓器または組織が、ドナーから遺伝的に同一のレシピエント(一卵性双生児など)へ移植される、同系グラフトまたは同系移植片である。
【0069】
本明細書で使用される場合、「異種移植」、「異種移植片」または「異種グラフト」という用語またはその文法的に同等の用語は、レシピエントおよびドナーが異なる種である、レシピエントへの細胞、組織または臓器の移植、埋込または注入を含む任意の手順を包含する。1つの実施形態では、レシピエントおよび/またはドナーは、Laurasiatheria上目のメンバーである。1つの実施形態では、レシピエントおよび/またはドナーは、有蹄動物、例えば、ブタ、キリン、ラクダ、シカまたはウシである。1つの実施形態では、ドナーは、ブタであり、レシピエントは、ヒトまたは非ヒト霊長類である。1つの実施形態では、本明細書に記載の細胞、組織または臓器は、ヒトまたは非ヒト霊長類に移植される。異種移植としては、限定されるものではないが、血管化異種移植片、部分的血管化異種移植片、非血管化異種移植片、異種ドレッシング、異種包帯およびナノ構造が挙げられる。
【0070】
本明細書で使用される場合、「移植片拒絶反応」という用語およびその文法的に同等の用語は、臓器移植レシピエントの免疫応答が、移植された材料(例えば、細胞、組織および/または臓器)に対する反応を、移植された材料の機能を損なうまたは破壊するのに十分に高める、1つまたは複数のプロセスを指し得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、「超急性拒絶反応」という用語およびその文法的に同等の用語は、移植後最初の24時間以内に起こるかまたは始まる、移植された材料または組織の拒絶反応を指し得る。例えば、超急性拒絶反応は、限定されるものではないが、「急性体液性拒絶反応」および「抗体媒介拒絶反応」を包含し得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)、IgA(IgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、またはIgM、およびIgYを含み、単鎖全抗体を含む全抗体、およびその抗原結合性(Fab)断片を含むことを意味する。抗原結合性抗体断片としては、限定されるものではないが、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd(VHおよびCH1からなる)、単鎖可変断片(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結可変断片(dsFv)、ならびにVLまたはVHドメインのいずれかを含む断片が挙げられる。抗体は、任意の動物起源由来であり得る。単鎖抗体を含む抗原結合性抗体断片は、可変領域を、単独で、または以下、ヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3ドメインの全部もしくは一部と組み合わせて、含むことができる。可変領域、ならびにヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3ドメインの任意の組合せも含まれる。抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ならびにヒトモノクローナル抗体およびヒトポリクローナル抗体であり得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「改善する」、「増強する」、「向上する」およびその文法的に同等の用語は、当業者によって認識される任意の改善を意味し得る。例えば、移植を改善するとは、超急性拒絶反応を軽減することを意味し得、これは、望ましくない効果または症状の減少、軽減または減弱を包含し得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、「膵島(islet)」、「膵島細胞」、「膵島同等物」、「膵島様細胞」、「膵島(pancreatic islet)、「天然膵島細胞」、「非天然膵島細胞」、「膵島様細胞培養物」という用語およびそれらの文法的に同等の用語は、生物体の膵臓に存在する内分泌(例えば、ホルモン産生)細胞、または生物体の膵臓に存在する細胞の1つまたは複数の機能を模倣する細胞を指す。例えば、膵島細胞は、限定されるものではないが、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞および/または膵ε細胞を含む、異なる種類の細胞を含み得る。膵島細胞は、in vitroで培養された細胞を含む、細胞、細胞集塊などの群も指し得る。一部の実施形態では、膵島細胞は、膵島ドナーから抽出され、分化、増幅および血管新生のために膵島レシピエントの所定の部位に埋込または移植されて、本明細書に記載の方法、システムおよび/または試薬によって治療用量のβ細胞塊を形成する。1つの実施形態では、所定の部位は、膵島レシピエントの腎臓被膜下腔である。一部の実施形態では、ドナーから抽出された膵島細胞は、一過性の免疫抑制に援護されて、レシピエントに埋込または移植される。ランゲルハンス島は、内分泌(例えば、ホルモン産生)細胞(例えば、ベータ細胞)を含有する膵臓の領域である。一部の実施形態では、本明細書において、本明細書に記載の方法、システムおよび/または試薬によってドナーから単離された膵臓系列細胞(例えば、ベータ様細胞またはベータ様細胞を含む細胞集団)を含む、新生仔膵島クラスター(NICC)または新生仔ブタ膵島(NPI)が提供される。一部の実施形態では、NICCまたはNPIは、膵島ドナーから抽出され、分化、増幅および血管新生のために膵島レシピエントの所定の部位に埋込または移植されて、本明細書に記載の方法、システムおよび/または試薬によって治療用量のβ細胞塊を形成する。1つの実施形態では、所定の部位は、膵島レシピエントの腎臓被膜下腔である。一部の実施形態では、ドナーから抽出されたNICCまたはNPIは、一過性の免疫抑制に援護されて、レシピエントに埋込または移植される。一部の実施形態では、膵島細胞は、幹細胞由来膵島細胞、誘導多能性幹細胞由来膵島細胞、分化形質転換または代替膵島細胞であり得る。「ドナー」は、任意の哺乳動物生物体、ヒトまたは非ヒトを含むことを意味し、これは、移植のため、および/またはドナー細胞寛容を誘導するためのドナー組織または細胞の供給源としての役割を果たし得る。非ヒト哺乳動物としては、限定されるものではないが、偶蹄類(例えば、ブタ、ペッカリー、カバ、ラクダ、ラマ、マメジカ(マウスシカ)、シカ、キリン、プロングホーン、アンテロープ、ヤギ-アンテロープ(ヒツジ、ヤギなどを含む)、またはウシ)もしくは奇蹄類(例えば、ウマ、バクおよびサイ)などの有蹄動物、非ヒト霊長類(例えば、サルまたはチンパンジー)、イヌ科(例えば、イヌ)またはネコが挙げられる。非ヒト動物は、Laurasiatheria上目のメンバーであり得る。ドナーは、生体ドナーまたは死体ドナーであり得る。一部の場合では、ドナーは、生体ドナーである。一部の場合では、ドナーは、死体ドナーである。死体ドナーは、例えば、脳死の心臓が鼓動しているドナー(BDD)であり得る。死体ドナーは、例えば、心停止ドナー(NHBD)であり得る。ドナーが、生体ドナーまたは死体ドナー(例えば、BDDまたはNHBD)であるかに関わらず、ドナーは、任意の動物、例えば、ヒトまたは非ヒト動物由来であり得る。ドナーは、限定されるものではないが、胎児、周産期、新生児、離乳前、離乳後、子供、若年成体または成体を含む、任意の発育段階におけるものであり得る。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの調製において使用される細胞のドナーは、移植ドナー(例えば、移植のために使用される細胞、組織または臓器のドナー)と完全または部分的にMHC(主要組織適合遺伝子複合体)適合であり得る。一部の場合では、部分的に適合したドナーは、移植ドナーとハプロタイプ一致である。一部の場合では、部分的に適合したドナーは、移植ドナーと1つまたは複数のMHC対立遺伝子を共有する。例えば、部分的に適合したドナーは、移植ドナーと、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子、またはそれらの組合せの1つまたは複数を共有することができる。一部の場合では、部分的に適合したドナーは、移植ドナーと、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子、またはそれらの組合せの1つまたは複数を共有することができる。部分的に適合したドナーは、移植ドナーと1つのDR対立遺伝子を共有することができる。
【0075】
「レシピエント」は、移植グラフトを受けることができるか、移植グラフトを受けているか、もしくは移植グラフトを受けた、ヒトまたは非ヒト動物であり得、寛容化ワクチン、移植のための前処置レジメンおよび/または他の組成物が本開示において提供される。レシピエントはまた、本明細書に提供される、移植グラフト、寛容化ワクチン、移植のための前処置レジメンおよび/または他の組成物を必要とし得る。一部の場合では、レシピエントは、移植グラフトを受けることができるか、移植グラフトを受けているか、もしくは移植グラフトを受けた、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。一部の場合では、レシピエントは、本記載の移植のための寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを受けることができるか、それを受けているか、もしくはそれを受けた、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「非ヒト動物」という用語およびその文法的に同等の用語は、非ヒト哺乳動物を含む、ヒト以外のすべての動物種を含み、これは、在来動物または遺伝子改変された非ヒト動物であり得る。非ヒト哺乳動物としては、偶蹄類(例えば、ブタ、ペッカリー、カバ、ラクダ、ラマ、マメジカ(マウスシカ)、シカ、キリン、プロングホーン、アンテロープ、ヤギ-アンテロープ(ヒツジ、ヤギなどを含む)、またはウシ)もしくは奇蹄類(例えば、ウマ、バクおよびサイ)などの有蹄動物、非ヒト霊長類(例えば、サルまたはチンパンジー)、イヌ科(例えば、イヌ)またはネコが挙げられる。非ヒト動物は、Laurasiatheria上目のメンバーであり得る。Laurasiatheria上目は、Waddell et al., Towards Resolving the Interordinal Relationships of Placental Mammals. Systematic Biology 48 (1): 1-5 (1999)に記載の哺乳動物の群を含み得る。Laurasiatheria上目のメンバーとしては、Eulipotyphla(ハリネズミ、トガリネズミおよびモグラ)、Perissodactyla(サイ、ウマおよびバク)、Carnivora(肉食動物)、Cetartiodactyla(偶蹄類およびクジラ類)、Chiroptera(コウモリ)およびPholidota(センザンコウ)が挙げられ得る。Laurasiatheria上目のメンバーは、本明細書に記載の有蹄動物、例えば、奇蹄類または偶蹄類であり得る。有蹄動物は、ブタであり得る。メンバーは、ネコまたはイヌなどのCarnivoraのメンバーであり得る。一部の場合では、Laurasiatheria上目のメンバーは、ブタであり得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、「ブタ(porcine)」、「ブタ(porcine)動物」、「ブタ(pig)」および「ブタ(swine)」という用語ならびにその文法的に同等の用語は、偶蹄類のSuidae科ファミリー内のSus属の動物を指し得る。例えば、ブタは、野生ブタ、飼育ブタ、ミニブタ、Sus scrofaブタ、Sus scrofa domesticusブタ、または近交系ブタであり得る。
【0078】
「胎児動物」という用語およびその文法的に同等の用語は、動物の任意の生まれていない子孫を指し得る。一部の場合では、膵臓細胞または組織は、移植のために、6週齢の胚性ブタから単離される。「周産期動物」という用語およびその文法的に同等の用語は、出生直前または直後の動物を指し得る。例えば、周産期は、妊娠の20~28週から開始して、出生の1~4週後に終わり得る。「新生児動物」という用語およびその文法的に同等の用語は、任意の新たに生まれた動物を指し得る。例えば、新生児動物は、出生の1か月以内の動物であり得る。「離乳前非ヒト動物」という用語およびその文法的に同等の用語は、母乳をやめる前の任意の動物を指し得る。「子動物」という用語およびその文法的に同等の用語は、若年成体動物になる前の任意の動物を指し得る。例えば、幼若期のブタは、2歳またはそれよりも若い任意のブタを指し得る。
【0079】
本明細書で使用される場合、「遺伝子改変された」、「遺伝子操作された」、「トランスジェニック」、「遺伝子改変」という用語およびその文法的に同等の用語は、核酸、例えば、生物体のゲノム内の核酸の1つまたは複数の変更を有することを指す。例えば、遺伝子改変とは、遺伝子の変更、付加および/または欠失を指し得る。遺伝子改変細胞は、付加、欠失および/または変更された遺伝子を有する細胞も指し得る。遺伝子改変細胞は、遺伝子改変非ヒト動物由来であり得る。遺伝子操作非ヒト動物由来の遺伝子操作細胞は、このような遺伝子操作非ヒト動物から単離された細胞であり得る。遺伝子改変非ヒト動物由来の遺伝子改変細胞は、このような遺伝子改変非ヒト動物が起源の細胞であり得る。遺伝子操作細胞または遺伝子操作動物は、動物の少なくとも1つの細胞において、および典型的には、動物の少なくとも1つの生殖系列細胞において、遺伝子型または表現型の効果を媒介するために、付加もしくは組み込まれた導入遺伝子もしくは他の外来DNA、または、標的とされ、組換えられ、中断され、欠失し、破壊され、置き換えられ、抑制され、増強され、もしくは他に変更されることを含む、改変された内在性遺伝子を含むことができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」という用語およびその文法的に同等の用語は、生物体に移動することができる遺伝子または遺伝子材料を指し得る。例えば、導入遺伝子は、生物体に導入される遺伝子を含有するDNAの区間またはセグメントであり得る。遺伝子または遺伝子材料は、異なる種由来であり得る。遺伝子または遺伝子材料は、合成であり得る。導入遺伝子が生物体に移動する場合、その結果、生物体は、トランスジェニック生物体と称され得る。導入遺伝子は、トランスジェニック生物体においてRNAまたはポリペプチド(例えば、タンパク質)を産生するその能力を保持することができる。導入遺伝子は、タンパク質またはその断片(例えば、機能的断片)をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。導入遺伝子のポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチドであり得る。タンパク質の断片(例えば、機能的断片)は、タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも、または少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%を含むことができる。タンパク質の断片は、タンパク質の機能的断片であり得る。タンパク質の機能的断片は、タンパク質の機能の一部またはすべてを保持することができる。外因性ポリペプチドは、外因性タンパク質またはその機能的断片をコードすることができる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「外因性核酸配列」、「外因性ポリヌクレオチド」という用語およびその文法的に同等の用語は、細胞または動物の外側で生じた、細胞または動物に移動した遺伝子または遺伝材料を指し得る。外因性核酸配列は、合成的に生成し得る。外因性核酸配列は、異なる種、または同じ種の異なるメンバー由来であり得る。外因性核酸配列は、内因性核酸配列の別のコピーであり得る。
【0082】
「遺伝子ノックアウト」または「ノックアウト」という用語は、「ノックアウト」される遺伝子の発現を低減する任意の遺伝子改変を指し得る。発現の低減は、発現なしを含み得る。遺伝子改変は、ゲノム破壊を含み得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、「破壊する」という用語およびその文法的に同等の用語は、例えば、欠失、挿入、突然変異、転位、またはそれらの任意の組合せによる、遺伝子を変更するプロセスを指し得る。例えば、遺伝子は、ノックアウトによって破壊され得る。遺伝子の破壊は、遺伝子の発現(例えば、mRNAおよび/またはタンパク質の発現)を部分的に低減する、または完全に抑制することであり得る。破壊は、shRNA、siRNA、microRNA、ドミナントネガティブなどの阻害技術、または遺伝子もしくはタンパク質の機能性もしくは発現を阻害する任意の他の手段も含み得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、「遺伝子編集」という用語およびその文法的に同等の用語は、1つまたは複数のヌクレオチドが、ゲノムに挿入、置き換えまたはそれから除去される遺伝子操作を指し得る。例えば、遺伝子編集は、ヌクレアーゼ(例えば、天然に存在するヌクレアーゼまたは人工的に操作されたヌクレアーゼ)を使用して行うことができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「ガイドRNA」という用語およびその文法的に同等の用語は、標的DNAに特異的であり得、かつCasタンパク質と複合体を形成し得る、RNAを指し得る。RNA/Cas複合体は、Casタンパク質を標的DNAに「導く」のを助けることができる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「状態」という用語およびその文法的に同等の用語は、疾患、事象または健康状態の変化を指し得る。
【0087】
本明細書で使用される場合、「糖尿病」という用語およびその文法的に同等の用語は、長期にわたる高血糖レベルによって特徴付けられる疾患を指し得る。例えば、本明細書で使用される場合、「糖尿病」という用語およびその文法的に同等の用語は、限定されるものではないが、1型、2型、3c型(嚢胞性線維症関連、ならびに外科的、およびヘモクロマトーシス関連を含む膵性糖尿病)、妊娠糖尿病および一遺伝子性糖尿病(HNF1A-MODY、GCK-MODY 2など)、ならびに他の形態のミトコンドリア糖尿病を含む、すべてまたは任意の種類の糖尿病を指し得る。一部の場合では、糖尿病は、遺伝性糖尿病の形態であり得る。
【0088】
本明細書で使用される場合、「表現型」という用語およびその文法的に同等の用語は、生物体の観察可能な特性または形質、例えば、その形態、発生、生物学的または生理学的性質、生物季節学、挙動、および挙動の生成物の複合を指し得る。文脈に応じて、「表現型」という用語は、時々、集団の観察され得る特性または形質の複合を指し得る。
【0089】
全体にわたって開示される一部の数値は、例えば、「Xは、少なくとも、または少なくとも約100、または200[または任意の数値]である」と称する。この数値は、数字それ自体および以下のすべてを含む:
i)Xは、少なくとも100である;
ii)Xは、少なくとも200である;
iii)Xは、少なくとも約100である;および
iv)Xは、少なくとも約200である。
【0090】
すべてのこれらの異なる組合せは、全体にわたって開示される数値によって企図される。すべての開示される数値は、他に具体的にその反対を指示しない限り、治療薬の投与を指すか、または日、月、年、体重、投薬量などを指すかにかかわらず、このように解釈されるものとする。
【0091】
全体にわたって開示される範囲は、時々、例えば、「Xは、1~2日目もしくは2~3日目、または約1~2日目もしくは約2~3日目[または任意の数の範囲]に投与される」と称する。この範囲は、数字それら自体(例えば、範囲の端点)、および以下のすべてを含む:
i)Xは、1日目~2日目に投与される;
ii)Xは、2日目~3日目に投与される;
iii)Xは、約1日目~2日目に投与される;
iv)Xは、約2日目~3日目に投与される;
v)Xは、1日目~約2日目に投与される;
vi)Xは、2日目~約3日目に投与される;
vii)Xは、約1日目~約2日目に投与される;および
viii)Xは、約2日目~約3日目に投与される。
【0092】
すべてのこれらの異なる組合せは、全体にわたって開示される範囲によって企図される。すべての開示される範囲は、他に具体的にその反対を指示しない限り、治療薬の投与を指すか、または日、月、年、体重、投薬量などを指すかにかかわらず、このように解釈されるものとする。
移植免疫調節
【0093】
本明細書において、グラフト寛容を誘導するための組成物、システムおよび方法を記載する。特に、本開示は、ドナーの移植細胞、組織または臓器の投与の前、その間またはその後に、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを投与することに関する。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、グラフトレシピエントにおける同種グラフトまたは異種グラフトに対する寛容を誘導することができる。
【0094】
臓器、組織または細胞は、幹細胞から分化され得るか、デノボで成長し得るか、または動物(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)から単離され得、同じ種(同種移植)または異なる種(異種移植)から移植を必要とするレシピエントに移植され得る。臓器、組織または細胞のドナーは、本明細書において、移植ドナーと称され得る。移植された臓器、組織または細胞は、本明細書において、移植片またはグラフトと称され得る。
【0095】
移植片またはグラフトのドナーは、ヒトおよび非ヒト動物を含む任意の動物であり得る。一部の場合では、ドナーは、ヒトである。一部の場合では、移植ドナーは、非ヒト動物である。移植ドナー(例えば、非ヒト動物ドナー)は、例えば、移植片もしくはグラフトがレシピエントの免疫系によって認識され得る可能性を低減もしくは排除するため、または移植片もしくはグラフトを認識する際に、レシピエントの免疫系による免疫応答を低減するために、遺伝子改変され得る。
【0096】
移植片またはグラフトのドナーは、生体ドナーまたは死体ドナーであり得る。一部の場合では、移植ドナーは、生体ドナーである。一部の場合では、移植ドナーは、死体ドナーである。死体ドナーは、脳死の心臓が鼓動しているドナー(BDD)であり得る。あるいは、死体ドナーは、心停止ドナー(NHBD)であり得る。移植ドナーが、生体ドナーまたは死体ドナー(例えば、BDDまたはNHBD)であるかに関わらず、ドナーは、任意の動物、例えば、ヒトまたは非ヒト動物由来であり得る。
【0097】
移植片またはグラフトのドナーは、任意の年齢または発育段階であり得る。例えば、移植ドナーは、胎児、周産期、新生児、離乳前、離乳後、子供、若年成体または成体のヒトまたは動物であり得る。
【0098】
移植片またはグラフトは、それを必要とするレシピエントにおける疾患または障害を処置するために使用することができる。処置され得る適切な疾患は、レシピエントの臓器、組織または細胞が、欠陥または傷害を受けており、レシピエントが、臓器、組織または細胞(例えば、腎臓、心臓、肺、肝臓、静脈、皮膚、膵内分泌部、膵臓の膵島細胞、またはそれらの組合せ)の移植によって処置され得る、任意のものである。一部の場合では、移植片は、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、膵内分泌部、膵島細胞、小腸、骨髄、造血幹細胞、膵島ベータ細胞もしくは肝細胞などの胚性もしくは誘導多能性幹細胞由来細胞、胚性もしくは誘導多能性幹細胞由来膵島、胚性もしくは誘導多能性幹細胞由来肝細胞、またはそれらの組合せを含む。
移植片/グラフト拒絶反応
【0099】
移植片/グラフト拒絶反応は、ドナー特異的抗原の認識、例えば、宿主の抗原提示細胞(間接的)またはドナーの抗原提示細胞(直接的)によってT細胞に提示されるドナー特異的抗原の認識を含み得る。ドナー特異的抗原への応答におけるT細胞活性化は、炎症促進性応答および移植片拒絶反応をもたらし得る。
【0100】
移植片/グラフト拒絶反応は、本明細書に記載の方法を含む、免疫応答を和らげる方法によって、予防することができる。本開示の寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、例えば、移植片に対する炎症促進性免疫応答を低減すること、および/または寛容促進免疫応答を増強することによって、移植片拒絶反応を予防するため、または拒絶反応を遅延させるために、使用することができる。一部の場合では、本開示の寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、レシピエントの長期免疫抑制についての必要性を回避することができる。
【0101】
移植片拒絶反応(例えば、T細胞媒介移植片拒絶反応)は、1種または複数の免疫調節分子による慢性的な免疫抑制によって予防することができる。しかしながら、免疫抑制は、費用がかかり、深刻な副作用のリスクと関連する。慢性的な免疫抑制についての必要性を回避するために、国際公開第2016/094679号、米国特許出願公開第20160165861号および国際公開第2017/218714号に記載のような多面的なT細胞を標的とする拒絶反応の予防が開発されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、T細胞を標的とする拒絶反応の予防は、(i)MHCクラスIの機能発現を欠く遺伝子改変グラフトを利用し、それによって直接特異性によるCD8+T細胞の活性化を妨げ、これらのCD8+T細胞の細胞溶解性エフェクター機能を起こさないようにする、(ii)B細胞(および他のAPC)媒介T細胞プライミング、およびアンタゴニスト性抗CD40 mAb、B細胞標的剤(例えば、B細胞を生物学的に枯渇させる、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を生物学的に標的とする、および/またはB細胞を生物学的にモジュレートする、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を生物学的に標的とする)、mTOR阻害剤、TNF-アルファ阻害剤、IL-6阻害剤、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)、補体C3もしくはC5阻害剤、またはそれらの組合せを含む誘導免疫療法を使用する抗ドナーT細胞のメモリー発生を妨げる、ならびに/あるいは(iii)アポトーシス性ドナー細胞ワクチン(すなわち、寛容化ワクチン)の移植前後の注入を介して間接的特異性により抗ドナーT細胞を枯渇させる。一部の場合では、B細胞標的剤は、抗CD20 mAb、リツキシマブおよび/またはB細胞枯渇抗体であり得る。
【0102】
一部の実施形態では、最小限の免疫抑制薬の使用(例えば、1種または複数の免疫調節分子)なし、またはありで、移植拒絶反応を予防するため、または移植拒絶反応までの時間を延長するための本明細書に記載の方法は、細胞、臓器または組織ドナーとして、遺伝子改変動物を使用することを含む。変更されたドナー動物、例えば、ドナーの非ヒト動物の細胞、臓器および/または組織は、採取することができ、同種グラフトまたは異種グラフトにおいて使用することができる。あるいは、細胞、臓器または組織は、動物から抽出することができ、遺伝子変更された細胞、臓器または組織を発生させるために使用することができる。一部の場合では、初代細胞は、動物から抽出することができ、遺伝子変更された細胞を作製するために使用することができる。一部の場合では、動物(例えば、細胞系)に由来する細胞、臓器または組織は、遺伝子変更された細胞、臓器または組織を作出するために使用することができる。
【0103】
移植片拒絶反応は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを使用して、移植片またはグラフトに対する寛容を誘導することによって、低減または排除することもできる。
寛容の誘導
【0104】
本明細書において、細胞、組織または臓器移植片に対する寛容を誘導する方法およびレジメンが提供される。本明細書で使用される場合、「寛容」または「免疫寛容」という用語は、免疫応答を誘発する能力を有する物質または組織に対する免疫系の無応答の状態を指す。本開示の組成物、前処置レジメンまたは寛容化レジメンは、前記移植片の移植の際に、移植片に対する寛容または部分寛容を達成するために有用である。本明細書で使用される場合、「部分寛容」は、免疫応答の低減または阻害をもたらす部分的な免疫寛容である。一部の実施形態では、本明細書において、免疫応答を阻害するため、および/または出現もしくはGVHDを阻害するための方法およびレジメンが提供される。本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、T細胞媒介および/またはB細胞媒介免疫応答を含む。例示的な免疫応答としては、T細胞応答、例えば、サイトカイン産生および細胞傷害活性が挙げられ、加えて、免疫応答という用語は、T細胞活性化、例えば、抗体産生(体液性応答)およびサイトカイン応答性細胞、例えば、マクロファージの活性化によって間接的にもたらされる免疫応答を含む。免疫応答に関与する免疫細胞としては、B細胞およびT細胞(CD4+、CD8+、Th1およびTh2細胞)などのリンパ球;抗原提示細胞(例えば、樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞);ナチュラルキラー細胞;マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球および顆粒球などの骨髄性細胞が挙げられる。例えば、免疫応答は、移植片拒絶反応、および例えば、間質性線維症、慢性グラフト動脈硬化症または血管炎などのそのような免疫応答の随伴的な生理学的結果に関与する。
【0105】
したがって、本明細書に開示のアポトーシス性白血球および他の組成物、または前処置レジメンもしくは寛容化レジメンが投与されていない対象に対する比較において、本明細書に開示の白血球などのアポトーシス細胞および他の組成物、または前処置レジメンもしくは寛容化レジメンが投与される対象は、例えば、a)移植片に対する免疫応答のレベル低下(B細胞媒介免疫応答、より詳細にはドナー特異的抗体によって少なくとも一部は媒介されると考えられる)、b)移植片に対する免疫応答の開始もしくは進行の遅延、c)移植片に対する免疫応答の開始もしくは進行のリスク低下、またはd)GVHDの出現の阻害もしくはその出現のリスク低下を示す。
本明細書で使用される場合、「移植片拒絶反応を予防する、または低減する」というという用語は、免疫移植片拒絶反応の予防または阻害、および免疫移植片拒絶反応の開始または進行を遅延させることを包含することを意味する。この用語はまた、患者の移植片の生着を延長すること、または患者の移植片の失敗を反転させることを包含することを意味する。さらに、この用語は、例えば、間質性線維症、慢性グラフト動脈硬化症または血管炎などの、例えば、免疫拒絶反応に関連する免疫学的合併症を改善することを含む、免疫移植片拒絶反応の症状を改善することを包含することを意味する。したがって、「寛容を誘導する」とは、免疫細胞のレベルの変化(例えば、寛容原性APCの数の増加、Tregの数の増加、Tr1細胞の数の増加、CD4+、CD8+および/またはCD20+細胞の減少)、免疫調節分子のレベルの変化(例えば、IL-10およびTGF-βの増加)、またはそれらの組合せを指し得る。一部の実施形態では、免疫応答のモジュレートは、免疫応答の抑制または免疫抑制であり得る。本明細書で使用される場合、レベル、数、カウントおよび濃度という用語は、互換的に使用することができる。本明細書で使用される場合、「免疫調節分子」という用語は、対象の免疫系の細胞の増殖または活性化をもたらすことができる任意の分子を指す。このような分子としては、限定されないが、プロスタグランジンE2(PGE2)、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、一酸化窒素、肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン6(IL-6)およびインターロイキン10(IL-10)が挙げられる。
【0106】
細胞培養系および対象の免疫系が両方とも基礎レベルの免疫細胞および免疫調節分子を含むことが当業者に理解される。基礎レベルおよび正常レベルという語句は、互換的に使用することができる。本明細書で使用される場合、免疫細胞の種類もしくは免疫調節分子の基礎レベルは、ある特定の参照状態(例えば、健康な個体において、移植前、本明細書に開示の白血球組成物もしくは前処置レジメンもしくは寛容化レジメンなどのアポトーシス細胞の投与前、または免疫抑制療法の投与前、あるいはそれらの組合せ)下の個々の集団に存在する細胞型もしくは免疫調節分子の平均数を指すか、または免疫細胞の種類もしくは免疫調節分子の基礎レベルは、活性化されていない細胞の集団に存在する細胞型もしくは免疫調節分子の平均レベルを指す。当業者は、このような細胞の集団中、または生体試料中の特定の免疫細胞のレベルを決定することができる。本明細書で使用される場合、「生体試料」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、in vitro評価の目的で対象(例えば、移植片のレシピエント)から得られ得る任意の試料を指す。好ましい生体試料は、血液試料(例えば、全血試料、血清試料または血漿試料)である。
【0107】
例えば、フローサイトメトリーによる特異的表面マーカータンパク質の発現の特定に基づく方法を含む、免疫細胞を測定するための方法は、当技術分野において周知である。免疫細胞のレベルは、例えば、3H-チミジン取り込み、ブロモデオキシウリジン取り込み(BrdU)、ATP発光、蛍光色素減少(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)様色素)によって増殖を測定すること;例えば、Multi-Analyte ELISArrayキット、ビーズ系マルチプレックスアッセイを使用するサイトカイン測定;例えば、フローサイトメトリーによって表面抗原発現を測定すること;例えば、Two-Labelフローサイトメトリー、カルセインAM色素放出、ルシフェラーゼ形質導入標的またはアネキシンVによって細胞傷害性を測定することによって測定することができる。T細胞応答およびB細胞応答を測定するための方法は、当技術分野において周知であり、例えば、Expert Rev. Vaccines 9(6),
595-600 (2010), mBio. 2015 Jul-Aug; 6(4)を参照されたい。
【0108】
細胞または分子の参照レベルまたは基礎レベルは、特定の量(例えば、特定の濃度)であり得るか、またはこれは、量の範囲を包含し得る。免疫細胞および免疫調節性分子の基礎レベルまたは範囲は、当業者に公知である。例えば、健康な個体において、ヒト血液中に存在するCD4+ T細胞の正常レベルは、細胞500~1500個/mlである。細胞の基礎レベルはまた、総細胞集団のパーセンテージとして報告することができる。
【0109】
免疫細胞の数および機能は、例えば、サイトカインの産生、増殖または細胞傷害性などの活性によって免疫細胞を検出するアッセイによって、モニタリングされてもよい。例えば、抗原に対する応答において増殖するT細胞の能力をアッセイするリンパ増殖アッセイを、抗原特異的CD4+ヘルパーT細胞の存在の指標として使用することができる。典型的には、精製T細胞またはPBMCの検体を、さまざまな希釈の抗原、または刺激細胞(照射された自家性、またはHLA適合の抗原提示細胞)の存在下の抗原と混合する。72~120時間後、[3H]チミジンを添加し、DNA合成(増殖の測定として)を、DNAに組み込まれた放射性標識チミジンの量を測定するガンマカウンターを使用することによって定量化する。刺激指数を、検体についてのcpmの数を対照における1分あたりのカウントの数で割ることによって、計算することができる。増殖アッセイは、本開示の組成物による処置の前後でT細胞応答を比較するために使用することができる。免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞)の増殖の検出のために用いることができるアッセイの別の例としては、細胞内蛍光色素の使用、混合リンパ球反応における5,6-カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)(CFSE-MLR)およびフローサイトメトリーを使用する増殖性細胞の決定が挙げられる。用いることができるアッセイの別の例は、ELISAおよびELISPOTアッセイによる分泌されたサイトカインの検出である。
【0110】
対象における免疫細胞によるサイトカイン分泌(例えば、移植片に応答して)は、いずれかのバルクのサイトカイン産生を測定すること(ELISAによる)、または免疫細胞を産生する個々のサイトカインを数え上げること(ELISPOTアッセイによる)によって検出されてもよい。マクロファージ活性化は、例えば、好中球、未成熟樹状細胞、ナチュラルキラー細胞および活性化T細胞のための化学誘引物質として放出される、IL-8/CXCL8、IP-10/CXCL10、MIP-1アルファ/CCL3、MIP-1ベータ/CCL4およびRANTES/CCL5などのケモカインのレベルを測定することによって、決定することができる。IL-1ベータ/IL-1F2、IL-6およびTNF-アルファを含む炎症促進性サイトカインのレベルが放出され、またはIL-10、TGF-βを含む抗炎症性サイトカインは、当技術分野において周知のアッセイによって測定することもできる。
【0111】
本明細書において、移植片またはグラフトに対する免疫寛容を誘導するための組成物、方法およびシステムが提供される。本明細書に開示の組成物、方法およびシステムは、寛容化ワクチン、または寛容化ワクチンを含む前処置レジメンを含むことができる。
【0112】
移植の利益は、生じた慢性的な免疫抑制の感染、代謝および悪性の負荷によって一般に減少する。慢性的な移植片拒絶反応は、長期の移植の成功を達成する上での課題のままであるが、しかしながら、長期免疫抑制(例えば、1種または複数の免疫調節分子)の使用は、感染症および薬物毒性などの重大なリスクに関連し得る。本開示の組成物および方法は、長期免疫抑制を回避しながら、移植片に対する長期寛容を呼び起こすことができる。安定的なドナー特異的免疫寛容の誘導は、維持免疫抑制のための必要性を取り除くことができる。移植片寛容の誘導は、移植の結果を改善することができる。
【0113】
自己免疫およびアレルギーに対する抗原特異的で安定的な寛容の誘導は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)で架橋された抗原の、白血球または間葉間質細胞などの同系アポトーシス細胞の表面へのIV送達を介して確立することができる。同種移植モデルでは、-7日目および+1日目でのECDI処置ADL(アポトーシス性ドナー白血球)の移植前後のIV注入は、マイナーな抗原不適合皮膚グラフト、完全なMHC不適合の膵島同種グラフトに対して、および短期のmTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、シロリムス、エベロリムス)と組み合わせた場合に心臓同種グラフトに対しても、効果的かつ安全に、長続きする寛容を誘導することができる。ECDI固定アポトーシス性ドナー脾細胞のIV注入は、膵島および心臓同種グラフトなどの移植片に対するドナー特異的寛容を誘導することが公知である。ドナーのECDI固定脾細胞は、IV注入後、迅速なアポトーシスを受け得、アポトーシス小体の取り込み後に、成熟が停止し、負の共刺激分子を選択的に上方調節するが、正の共刺激分子を上方調節しない、脾臓の樹状細胞(DC)によって急速に内部移行され得る。このようなレシピエントDCに遭遇すると、間接的な同種特異性を有するT細胞は、迅速に増幅され、続いて著明なクローン収縮を起こし、残りのT細胞は、グラフトまたはグラフト流入領域リンパ節への輸送なく、脾臓に隔離される。宿主食細胞によって内部移行されないドナーのECDI固定脾細胞は、直接的な同種特異性を有するT細胞を弱く活性化し、それらをその後の刺激に対して耐性にする(アネルギー)ことができる。ECDI固定脾細胞は、Tregおよび骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を誘導/増やすこともできる。したがって、これらのモデルにおけるグラフト保護のメカニズムは、T細胞の直接的および間接的な特異性の、欠失、アネルギーおよび調節を含み得る。この抗原特異的寛容戦略は、ナイーブT細胞のプライミングを防止することも、既存のメモリー/エフェクターCD4+およびCD8+ T細胞応答を効果的に制御することもできる。
【0114】
同種グラフトに対する強い寛容は、ネガティブワクチン戦略を用いることによって、激烈な前処置療法に関連する同じドナーの骨髄または造血幹細胞移植の必要なく、達成することができる。例示的なプロトコールは、0日目の同じドナーの膵島同種移植、続いて例えば+1日目の第2の用量のADLに対して、例えば-7日目に、予定レシピエントの静止免疫系に先制する第1の用量のECDI固定ADLを投与することを含むことができる。寛容は、非感作レシピエントにおいて、達成、および例えば、≧1年間維持することができる。短期免疫抑制に追加されたADL注入は、著明な方法で、宿主の同種抗原特異的エフェクターおよび調節性免疫も変化させる。
【0115】
1つの例示的な実施形態では、本開示の寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、アポトーシス性ドナー白血球をレシピエントに投与すること、および(i)mTOR阻害剤、(ii)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、(iii)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および(iv)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤のいずれか1つまたは複数を含む短期免疫抑制を含むことができる。これらの薬剤と本明細書に開示のアポトーシス性ドナー白血球と一緒の短期投与は、長期維持免疫抑制をレシピエントに投与していないにもかかわらず、移植された細胞、臓器または組織に対する長期寛容を促進することができる。
【0116】
1つの例示的な実施形態では、短期免疫抑制は、mTOR阻害剤、抗腫瘍壊死因子剤、抗インターロイキン6受容体剤および抗CD40剤を投与することを含む。これらの薬剤と本明細書に開示のアポトーシス性ドナー白血球と一緒の短期投与は、長期維持免疫抑制をレシピエントに投与していないにもかかわらず、移植された細胞、臓器または組織に対する長期寛容を促進することができる。
【0117】
1つの例示的な実施形態では、短期免疫抑制は、mTOR阻害剤、可溶性抗腫瘍壊死因子受容体、抗インターロイキン6受容体抗体およびアンタゴニスト性抗CD40抗体を投与することを含む。これらの薬剤と本明細書に開示のアポトーシス性ドナー白血球と一緒の短期投与は、長期維持免疫抑制をレシピエントに投与していないにもかかわらず、移植された細胞、臓器または組織に対する長期寛容を促進することができる。
ex vivoの白血球の増幅
【0118】
本開示の寛容誘導戦略を生体ドナー同種移植(例えば、腎臓または膵島同種移植)の臨床の場へと移行させるために、臨床的に適用可能な白血球の供給源、例えば、ドナー白血球または幹細胞由来/分化白血球は、例えば、短期免疫抑制レシピエントにおいて、予定同種グラフトに対するドナー特異的寛容を誘導するのに効果的であると特定することができる。ドナー白血球の供給源として生体ドナーの脾臓を回収することで、感染症を阻止するドナーの能力を損なうことがあり、したがって、ドナー白血球の代替供給源のほうが好ましいことがある。例えば、Bリンパ球は、1つもしくは複数の採血および/もしくはアフェレーシス手順でドナーから採取することができ、必要に応じてex vivoで増やされるか、または移植ドナーと適切に適合もしくは部分的に適合する別個の細胞ドナーを特定することができる。
【0119】
一部の場合では、別個のドナーは、寛容原性白血球および同種グラフトのために使用することができる。例えば、予定生体移植ドナーと、完全に適合または部分的に適合する(例えば、ハプロタイプ一致)死体ドナー由来の脾細胞は、寛容原性白血球の臨床的に実行可能な供給源である。適合、部分的に適合またはハプロタイプ一致の脾臓が利用可能になると、寛容化プロトコールは、例えば-7日目に脾細胞の注入で開始して、続いて、例えば0日目に生体ドナー移植(例えば、腎臓移植)、および例えば+1日目にex vivoで増やされた脾臓B細胞の注入を行うことができる。生体ドナーと1つのMHCクラスIおよびIIハプロタイプを共有する死体ドナーから調製された脾細胞および/または増やされた脾臓B細胞の移植前後の注入によって可能になる寛容誘導は、連鎖抑制に依存し得る。これらの自己抗原に対する特異性を有する調節性細胞は、共有ハプロタイプを有するADLの注入によって活性化および増やすことができ、これらが、同じ宿主の抗原提示T細胞において共有抗原と一緒に提示される、連鎖抑制と称される現象のために、不適合の生体ドナーの抗原を対象にする拒絶反応を抑制するそれらの影響を延長することができる。
【0120】
ヒト同種移植レシピエントにおける使用のために、例えば、-7日目にワクチンを死体ドナーの脾臓から調製し、同じ日に予定膵島移植レシピエントに注入することができる。これは、単離された膵島は、例えば、移植前の7日間、培養で保つことができるので、膵島移植の状況において可能である。+1日目のワクチンは、死体ドナーの脾臓のアリコートに由来する、ex vivoで増やされたB細胞に基づき得る。腎臓、新生仔ブタ膵島または複合腎臓-膵島異種グラフトのいずれかのブタとヒトの異種移植における使用のために、アポトーシス性ドナー白血球は、十分な数でまたはクローンのブタドナーから利用可能である場合、グラフトドナー由来であり得、必要によりex vivoで増やすことができる。
【0121】
寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンの調製において使用される細胞(例えば、白血球)は、ex vivoで増やすことができる。一部の場合では、白血球細胞は、寛容化ワクチンとしての使用の前に所定の期間、1種または複数の試薬の存在下でin
vitroで増やすことができる。例えば、細胞は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、160、165、170、175、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、390または300時間、少なくとも1種のサイトカインと接触させることができる。一部の場合では、細胞は、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30日間、またはそれよりも長く、少なくとも1種のサイトカインと接触させることができる。一部の場合では、細胞は、約1~2、2~3、3~4、1~4、1~3または2~4週間、少なくとも1種のサイトカインと接触させることができる。一部の場合では、サイトカインは、1種または複数のインターロイキンである。一部の場合では、インターロイキン(IL)は、IL-2、IL-4、IL-21、BAFF、マルチマーCD40L、IL-10、IL-12およびIL-15のうちの少なくとも1つである。一部の場合では、細胞は、IL-2、IL-4、IL-21、BAFFおよびマルチマーCD40Lと接触される。
【0122】
寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンにおいて使用される白血球は、少なくとも、または少なくとも約10%、例えば、25%のCD19陽性、CD20陽性またはCD21陽性のMHCクラスII陽性B細胞を含むことができる。例えば、ドナー脾細胞は、少なくとも、または少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または80%、例えば、約、少なくとも、または少なくとも約10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%または60~70%のCD19、CD20および/またはCD21陽性のMHCクラスII陽性B細胞を含むことができる。一部の場合では、寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンにおいて使用される脾臓のB細胞または白血球は、少なくとも、または少なくとも約60%、例えば、90%のCD19、CD20またはCD21陽性のMHCクラスII陽性B細胞を含むことができる。例えば、寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンにおいて使用される脾臓のB細胞または白血球は、約、少なくとも、または少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%、例えば、少なくとも、または少なくとも約60~70%、70~80%、80~90%または90~95%のCD19、CD20またはCD21陽性のMHCクラスII陽性B細胞を含むことができる。一部の場合では、寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンにおいて使用されるドナーの脾細胞または白血球は、50%~100%または約50%~100%、例えば、60%~100%もしくは約60%~100%、または80%~100%もしくは約80%~100%のCD19、CD20またはCD21陽性のMHCクラスII陽性B細胞を含むことができる。一部の実施形態では、MHCクラスIIは、ブタ白血球抗原(SLA)クラスIIである。一部の実施形態では、MHCクラスIIは、ヒト白血球抗原(HLA)クラスIIである。
【0123】
一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、生体ドナー由来の細胞を含む。例えば、細胞は、末梢血白血球(例えば、末梢血B細胞)であり得る。末梢血白血球は、1つもしくは複数の採血、アフェレーシス、または任意の他の方法によって得ることができる。末梢血白血球は、B細胞について富化され得る。末梢血白血球は、直接使用することができ、またはex vivoで増やすことができる。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、直接単離された白血球、ex vivoで増やされた白血球、またはそれらの組合せを含むことができる。一部の場合では、寛容化ワクチンの初期用量は、直接単離された末梢血白血球(例えば、B細胞)を含み得るが、その後の用量は、ex vivoで増やされた末梢血白血球(例えば、B細胞)を含むことができる。
【0124】
一部の場合では、寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンは、死体ドナー由来の細胞を含む。死体ドナーは、脳死の心臓が鼓動しているドナー(BDD)であり得る。あるいは、死体ドナーは、心停止ドナー(NHBD)であり得る。ドナーは、任意の動物、例えば、ヒトまたは非ヒト動物由来であり得る。例えば、細胞は、脾臓(例えば、脾細胞、脾臓B細胞)、肝臓、末梢血(末梢血B細胞を含む)、リンパ節、胸腺、骨髄、またはそれらの任意の組合せから得られた死体の白血球であり得る。一部の場合では、寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンは、脾臓白血球(例えば、脾臓B細胞)、末梢血白血球(例えば、末梢血B細胞)、またはそれらの組合せを含む。白血球は、直接使用することができ、またはex vivoで増やすことができる。一部の場合では、寛容化ワクチンの初期用量は、直接単離された末梢血白血球(例えば、末梢血B細胞)、脾臓白血球(例えば、脾臓B細胞)、またはそれらの組合せを含み得るが、その後の用量は、ex vivoで増やされた末梢血白血球(例えば、末梢血B細胞)、脾臓白血球(例えば、脾臓B細胞)、またはそれらの組合せを含むことができる。
【0125】
寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンの調製のための細胞は、幹細胞、または幹細胞から生成する分化細胞型(例えば、白血球)であり得る。幹細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞または誘導幹細胞であり得る。幹細胞は、全能性幹細胞、多能性幹細胞または複能性幹細胞であり得る。一部の場合では、幹細胞は、完全に発達した動物(例えば、ヒト動物)に発達することはできない。一部の場合では、幹細胞は、誘導多能性幹細胞(iPSC)である。一部の場合では、幹細胞は、動員剤、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、モゾビルまたはそれらの組合せにより骨髄から末梢血に幹細胞を動員することによって得ることができる。
【0126】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの調製において使用される細胞のドナーは、移植ドナー(例えば、移植のために使用される細胞、組織または臓器のドナー)と完全または部分的にMHC(主要組織適合遺伝子複合体)適合であり得る。一部の場合では、部分的に適合したドナーは、移植ドナーとハプロタイプ一致である。一部の場合では、部分的に適合したドナーは、移植ドナーと1つまたは複数のMHC対立遺伝子を共有する。例えば、部分的に適合したドナーは、移植ドナーと、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子、またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数を共有することができる。一部の場合では、1つまたは複数の共有されたMHC対立遺伝子は、MHCクラスI Cを含まない。部分的に適合したドナーは、移植ドナーと1つのDR対立遺伝子を共有することができる。
【0127】
一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの調製において使用される細胞の部分的に適合したドナーは、移植ドナーと、少なくとも1つのMHCクラスI対立遺伝子(例えば、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子)、および少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP)対立遺伝子を共有し得る。一部の場合では、1つまたは複数の共有されたMHC対立遺伝子は、MHCクラスI Cを含まない。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの調製において使用される細胞の部分的に適合したドナーは、移植ドナーと、少なくとも1つのMHCクラスI対立遺伝子(例えば、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子)、および少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)、ならびに移植レシピエントと、少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を共有し得、ここで、移植ドナーおよび移植レシピエントと共有されたMHCクラスII対立遺伝子は、同じMHCクラスII対立遺伝子である。一部の場合では、1つまたは複数の共有されたMHC対立遺伝子は、MHCクラスI Cを含まない。
【0128】
一部の場合では、細胞のドナーは、移植ドナーまたは移植レシピエントと、部分的または完全にMHC不適合であり得る。例えば、一部の場合では、移植ドナーおよび/または移植レシピエントと適合するMHC分子に由来するペプチドは、本明細書に開示のex vivoで増やされたドナー細胞とコンジュゲートされ得る。
寛容化ワクチン/レジメン
【0129】
伝統的に、ワクチンは、宿主において特定の疾患に対する活性な獲得免疫を提供する生物学的調製物である。伝統的なワクチンは、疾患を引き起こす病原体と似ている薬剤を含有し得、病原体、その毒素またはその表面タンパク質の1つの減弱形態または死滅形態から作製され得る。薬剤は、宿主の免疫系を刺激して、脅威として薬剤を認識し、それを破壊し、将来遭遇し得るその薬剤に関連するいずれかの病原体をさらに認識および破壊する。例えば、皮下に不活化ウイルスをアジュバントとともに注射することで、そのウイルスの活性および/または病原性のあるバージョンに対する一時的または永久的な免疫をもたらし得る。これは、正のワクチンと称され得る(
図1)。
【0130】
しかしながら、静脈内に注射もしくは注入された不活性化細胞またはアポトーシス細胞は、同様の細胞マーカーまたは抗原を有する細胞(例えば、移植されたドナー細胞)に対する免疫寛容をもたらし得る。これは、寛容化ワクチンと称され得る(負のワクチンとも称される)(
図1)。一部の実施形態では、不活性化細胞またはアポトーシス細胞は、アジュバントまたは追加薬剤(例えば、1種または複数の免疫調節分子)なしで注射または注入され得る。一部の実施形態では、不活性細胞またはアポトーシス細胞は、追加薬剤(例えば、1種または複数の免疫調節分子)とともに注射され得る。一部の場合では、追加薬剤は、抗原提示細胞の活性化および/または成熟を阻害することによって、寛容化ワクチンの寛容原性を増強する。
寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンのための細胞の供給源
【0131】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの調製のための細胞は、動物、細胞系および/または実験室で生成された細胞を含む任意の供給源から得ることができる。例えば、細胞は、ヒトまたは非ヒト動物から得ることができる。別の例では、細胞は、細胞系(例えば、ヒトまたは非ヒト細胞系)由来であり得る。一部の場合では、細胞は、ヒト細胞である。他の場合では、細胞は、非ヒト細胞である。一部の場合では、細胞は、非ヒト霊長類の細胞である。一部の場合では、細胞は、Laurasiatheria上目のメンバーの細胞である。一部の場合では、細胞は、有蹄動物、例えば、ラクダ類またはブタの細胞である。一部の場合では、細胞は、ブタの細胞である。一部の場合では、細胞は、移植ドナーと同じ種由来である。一部の場合では、細胞は、移植レシピエントと同じ種由来である。一部の場合では、細胞は、移植ドナーおよび移植レシピエントと同じ種由来である。一部の場合では、細胞は、移植ドナーと異なる種由来である。一部の場合では、細胞は、移植レシピエントと異なる種由来である。一部の場合では、細胞は、移植ドナーおよび移植レシピエントと異なる種由来である。
【0132】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの調製のための細胞は、生体ドナーまたは死体ドナーから得ることができる。一部の場合では、ドナーは、生体ドナーである。一部の場合では、ドナーは、死体ドナーである。死体ドナーは、例えば、脳死の心臓が鼓動しているドナー(BDD)であり得る。死体ドナーは、例えば、心停止ドナー(NHBD)であり得る。ドナーが、生体ドナーまたは死体ドナー(例えば、BDDまたはNHBD)であるかに関わらず、ドナーは、任意の動物、例えば、ヒトまたは非ヒト動物由来であり得る。一部の場合では、寛容化ワクチンの調製のための細胞は、グラフトまたは移植片と同じドナー由来であり得る。一部の場合では、寛容化ワクチンの調製のための細胞は、グラフトまたは移植片と異なるドナー由来であり得る。
【0133】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの調製のための細胞は、任意の年齢または発育段階のドナー動物から得ることができる。例えば、ドナー動物は、胎児、周産期、新生児、離乳前、離乳後、子供、若年成体または成体の動物であり得る。一部の場合では、非ヒト動物は、離乳年齢を過ぎていることができる。例えば、ドナー動物は、少なくとも、または少なくとも約6か月齢であり得る。一部の場合では、ドナー動物は、少なくとも、または少なくとも約18か月齢であり得る。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの調製のための細胞は、幹細胞(例えば、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞および/または間葉系幹細胞)から得ることができる(例えば、分化することができる)。
【0134】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを作製するために使用される細胞は、組織、臓器または体液由来の1種または複数の細胞を含み得る。例えば、細胞は、限定されるものではないが、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、膵臓、小腸、大腸、骨格筋、平滑筋、皮膚、骨、脂肪組織、毛髪、甲状腺、気管、胆嚢、腎臓、尿管、膀胱、大動脈、静脈、食道、横隔膜、胃、直腸、副腎、気管支、耳、眼、網膜、生殖器、視床下部、喉頭、鼻、舌、脊髄、もしくは尿管、子宮、卵巣、精巣、血液、髄液、リンパ液、またはそれらの組合せを含む、組織、臓器または体液由来であり得る。
【0135】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを作製するために使用される細胞は、1つまたは複数の種類の細胞を含み得る。例えば、細胞としては、限定されるものではないが、トリコサイト、ケラチノサイト、性腺刺激ホルモン産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、成長ホルモン産生細胞、乳腺刺激ホルモン分泌細胞、クロム親和性細胞、傍濾胞細胞、グロムス細胞、メラニン細胞、母斑細胞、メルケル細胞、象牙芽細胞、セメント芽細胞、角膜実質細胞、網膜ミュラー細胞、網膜色素上皮細胞、ニューロン、グリア(例えば、乏突起膠細胞、星状膠細胞)、上衣細胞、松果体細胞、肺細胞(例えば、I型肺細胞およびII型肺細胞)、クララ細胞、杯細胞、G細胞、D細胞、ECL細胞、胃主細胞、壁細胞、小窩細胞、K細胞、D細胞、I細胞、杯細胞、パネート細胞、腸細胞、小襞細胞、肝細胞、肝星細胞(例えば、中胚葉由来のクッパー細胞)、胆嚢細胞、腺房中心細胞、膵星細胞、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞(例えば、PP細胞)、膵臓ε細胞、甲状腺(例えば、濾胞細胞)、副甲状腺(例えば、副甲状腺主細胞)、好酸性細胞、尿路上皮細胞、骨芽細胞、骨細胞、軟骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋芽細胞、筋細胞、筋衛星細胞、腱細胞、心筋細胞、脂肪芽細胞、脂肪細胞、カハール介在細胞、血管芽細胞、内皮細胞、メサンギウム細胞(例えば、糸球体内メサンギウム細胞および糸球体外メサンギウム細胞)、傍糸球体細胞、緻密斑細胞、間質細胞、間細胞、テロサイト、単純上皮細胞、有足細胞、腎近位尿細管刷子縁細胞、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、顆粒膜細胞、peg細胞、胚細胞、精子、卵子、リンパ球、骨髄性細胞、内皮前駆細胞、内皮幹細胞、血管芽細胞、メソ血管芽細胞、周皮細胞、壁細胞、間葉間質細胞、または脾細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞、マイクロファージ、白血球)が挙げられ得る。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを作製するために使用される細胞は、MHCクラスIIを発現する細胞型を含む。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを作製するために使用される細胞は、MHCクラスIIを発現しない細胞型を含む。
【0136】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、白血球を含むことができる。白血球としては、例えば、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球、またはそれらの組合せが挙げられ得る。リンパ球としては、例えば、Bリンパ球(B細胞)、Tリンパ球(T細胞)、ナチュラルキラー(NK)細胞、またはそれらの組合せが挙げられ得る。
【0137】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける白血球は、例えば、ドナー、細胞系または分化幹細胞を含む、任意の供給源から得ることができる。ドナーから得られる白血球としては、脾臓(例えば、脾細胞、脾臓B細胞)、肝臓、末梢血(末梢血B細胞を含む)、リンパ節、胸腺、骨髄、または任意の他の臓器、組織もしくは体液、あるいはそれらの任意の組合せから得られる白血球が挙げられ得る。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、脾臓B細胞、末梢血B細胞、またはそれらの組合せを含む。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、動員剤により骨髄から末梢血に動員された細胞、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、モゾビルまたはそれらの組合せにより動員された細胞を含む。ドナーから得られる寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける白血球は、初代細胞、ex vivoで増やされた細胞、またはそれらの組合せを含むことができる。
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための遺伝子改変細胞
【0138】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの調製において使用される細胞のドナーは、遺伝子改変することができる。あるいは、または加えて、ドナーから得られる細胞は、ex vivoで遺伝子改変することができる。一部の場合では、細胞系を、遺伝子改変して、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける使用のための細胞を産生する。遺伝子改変されたドナーおよび/または細胞は、本明細書に記載の方法を含む当技術分野において公知の任意の方法を使用して、生成することができる。遺伝子改変細胞が、遺伝子改変動物から単離されるか、培養で産生されるか、またはそれらの組合せであるかにかかわらず、遺伝子改変細胞は、ヒトおよび非ヒト動物を含む任意の動物種の遺伝子改変細胞であり得る。
【0139】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおいて使用される遺伝子改変細胞は、発現または遺伝子もしくは遺伝子産物(例えば、タンパク質)を低減または排除する、1つまたは複数の遺伝子改変を含むことができる。遺伝子改変は、その発現が低減または排除される遺伝子への改変であり得る。このような遺伝子は、破壊遺伝子と称され得る。遺伝子改変はまた、その発現が低減または排除される遺伝子とは別個のゲノムの領域に向けてであり得る(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、転写因子などへの改変)。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおいて使用される遺伝子改変細胞は、その発現が遺伝子改変によって低減または排除される、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20、またはそれよりも多くの遺伝子を含むことができる。
【0140】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおいて使用される細胞における遺伝子改変によって発現が低減または排除され得る遺伝子の非限定的な例としては、限定されるものではないが、アルファ1,3ガラクトース転移酵素(GGTA1);推定上のシチジンモノホスファターゼ-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH);β1,4 N-アセチルガラクトサミン転移酵素(B4GALNT2);主要組織適合遺伝子複合体(MHC)I特異的エンハンセオソームの構成成分(例えば、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5));MHC I-結合ペプチドのトランスポーター(例えば、抗原プロセシングに関連するトランスポーター1(TAP1));補体成分3(C3);CXCケモカイン受容体3リガンド(CXCL3);CXCモチーフケモカインリガンド10(CXCL10)遺伝子;MHC IIトランス活性化因子(MHCIITA);MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)遺伝子;MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)遺伝子;ナチュラルキラー(NK)グループ2Dリガンド(NKG2DL);腫瘍壊死因子受容体(TNF-R);ブタ内因性レトロウイルス(PERV);B2M、PD-1、PD-L1、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0141】
一部の場合では、寛容化ワクチンにおいて使用される遺伝子改変細胞は、GGTA1、CMAH、B4GALNT2、B2M、NLRC5、またはそれらの任意の組合せを含む1つまたは複数の遺伝子中に破壊を含むことができる。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを作製するために使用される遺伝子改変細胞は、GGTA1のみが破壊されている可能性があり、またはCMAHのみが破壊されている可能性があり、またはB4GALNT2、B2MもしくはNLRC5のみが破壊されている可能性がある。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを作製するために使用される遺伝子改変細胞はまた、GGTA1およびCMAHが破壊されている可能性があり、GGTA1およびB4GALNT2が破壊されている可能性があり、またはCMAHおよびB4GALNT2が破壊されている可能性があり、またはNLRC5およびB2Mが破壊されている可能性がある。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを作製するために使用される遺伝子改変細胞は、GGTA1、CMAHおよびB4GALNT2が破壊されている可能性がある。任意の特定の理論に縛られることを望まないが、このような破壊は、臓器、組織、細胞および細胞系グラフト(例えば、寛容化ワクチンにおいて使用される細胞と同じ遺伝子改変を含む異種グラフトまたは同種グラフト)に対する、細胞媒介免疫、抗体媒介免疫、抗体依存性細胞媒介免疫および/または細胞依存性抗体媒介免疫を最小化または排除することができる。
【0142】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおいて使用される遺伝子改変細胞は、1つまたは複数の遺伝子または遺伝子産物の発現を増加させる1つまたは複数の遺伝子改変を含むことができ、またはさらに含むことができる。増加した発現は、ゼロ発現からであり得、例えば、増加した発現は、遺伝子改変なしの細胞中で正常に発現しない遺伝子または遺伝子産物の発現であり得る。増加した発現は、閾値レベル、例えば、遺伝子改変なしの細胞中で正常に発現するレベルと比較することができる。遺伝子改変は、ポリペプチド(例えば、内因性または外因性ポリペプチド)をコードする1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを含むことができる。
【0143】
外因性ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、限定されるものではないが、MHC
I形成サプレッサー(例えば、感染細胞タンパク質47(ICP47));補体活性化の調節因子(例えば、CD46、CD55またはCD59);NK細胞に対する阻害性リガンド;B7ファミリーメンバー(例えば、PD-L1またはPD-L2などのプログラム死リガンド);セリンプロテアーゼ阻害剤(例えば、Spi9);ガレクチン;インターロイキン(例えば、IL-37);CD40:CD40L遮断剤(例えば、CD40アンタゴニストポリペプチド、抗CD40リガンドポリペプチド);Fasリガンド(FasL);それらの任意の機能的断片;またはそれらの任意の組合せのうちの1つまたは複数をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。一部の実施形態では、NK細胞のための阻害性リガンドは、ヒト白血球抗原E(HLA-E)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、β-2-ミクログロブリン(B2M)、またはそれらの任意の組合せなどのヒト白血球抗原(HLA)である。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、HLA-G7、またはそれらの任意の組合せである。一部の場合では、ガレクチンは、ガレクチン-1、ガレクチン-2、ガレクチン-3、ガレクチン-4、ガレクチン-5、ガレクチン-6、ガレクチン-7、ガレクチン-8、ガレクチン-9、ガレクチン-10、ガレクチン-11、ガレクチン-12、ガレクチン-13、ガレクチン-14またはガレクチン-15である。例えば、ガレクチンは、ガレクチン-9であり得る。
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞の発生
【0144】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、アポトーシス細胞、非アポトーシス細胞、またはそれらの組合せを含むことができる。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、非アポトーシス細胞を含む。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、アポトーシス細胞および非アポトーシス細胞の両方を含む。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、アポトーシス細胞を含む。
【0145】
「アネルギー」という用語は、特定の抗原に対する正常な免疫応答の非存在下(例えば、炎症促進性応答の非存在下)を指し得る。「T細胞アネルギー」という用語は、免疫細胞(例えば、T細胞)が、抗原遭遇後に本質的に機能的に不活性化されるが、反応性低下状態で長期間生存したままである、寛容メカニズムを指し得る。本開示は、任意の特定のメカニズムに限定されない。理論によって縛られないが、アポトーシス細胞は、宿主抗原提示細胞によって捕捉され(例えば、脾臓において)、免疫細胞(例えば、T細胞)におけるアネルギーの誘導をもたらす非免疫原性様式で宿主免疫細胞(例えば、T細胞)に提示され得る。例えば、寛容化ワクチンにおけるアポトーシス細胞(例えば、ECDI処理脾細胞、白血球または間葉間質細胞、これらは細胞表面に固定され、多くの表面分子を不活性化することができる)は、抗原特異的正常T細胞クローンの活性化および/または増殖を刺激することができない。理論に縛られることを望まないが、寛容化ワクチンにおけるアポトーシス細胞は、T細胞に共刺激シグナルを提供することができない。結果として、アポトーシス細胞は、アネルギーと称される長期無応答の状態を誘導することができる。一部の実施形態では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの注入によって誘導される寛容は、無傷プログラム死1受容体-プログラム死リガンド1シグナル伝達経路およびCD4+CD25+Foxp3+調節性T細胞の間の相乗効果に依存し得る。
【0146】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞は、いくつかの異なる方法でアポトーシスを起こすことができる。例えば、細胞を、化学物質(例えば、固定剤または架橋剤、細胞損傷剤、またはそれらの組合せ)と接触させて、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こすことができる。別の例では、細胞に、照射(例えば、紫外線照射、ガンマ線照射など)を行って、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こすことができる。
【0147】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞は、固定剤または架橋剤などの化学物質と接触させることができる。接触は、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こすことができる。適切な固定剤または架橋剤としては、限定されるものではないが、アミン-アミンクロスリンカー、スルフヒドリル-スルフヒドリルクロスリンカー、アミン-スルフヒドリルクロスリンカー、in vivoクロスリンカー、スルフヒドリル-炭水化物クロスリンカー、光反応性クロスリンカー、化学選択的ライゲーション架橋剤、カルボキシル-アミンクロスリンカー、カルボジイミド、ゲニピン、アクリルアルデヒド、ジホルミル、四酸化オスミウム、ジイミドエステル、塩化第二水銀、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、トリニトロフェノール(ピクリン酸)、重クロム酸カリウム、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0148】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞は、カルボジイミドまたはカルボジイミド誘導体と接触させることができる。カルボジイミドでの処理は、遊離アミンおよびカルボキシル基を化学的に架橋することができ、細胞、臓器および/または組織においてアポトーシスを効果的に誘導することができる。接触は、所定の時間の間であり得る。接触は、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こすことができる。カルボジイミドは、エチルカルボジイミド、エチレンカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDCI、EDC、ECDIまたはEDAC)、またはそれらの組合せを含み得る。一部の場合では、カルボジイミドは、エチルカルボジイミドを含む。一部の場合では、カルボジイミドは、エチレンカルボジイミドを含む。一部の場合では、カルボジイミドは、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を含む。一部の場合では、カルボジイミドは、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を含む。一部の場合では、カルボジイミドは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDCI、EDC、ECDIまたはEDAC)を含む。一部の場合では、寛容化ワクチンは、EDCI誘導体および/または官能化EDCIで処理された細胞を含む。
【0149】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞は、ジイミドエステルと接触させることができる。接触は、所定の時間の間であり得る。接触は、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こすことができる。ジイミドエステルは、塩化シアヌル、ジイソシアネート、ジエチルピロカーボネート(DEPC)もしくはジエチルジカーボネート、マレイミド、ベンゾキノン、またはそれらの組合せを含み得る。
【0150】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞は、アミン-アミンクロスリンカーと接触させることができる。接触は、所定の時間の間であり得る。接触は、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こすことができる。一部の場合では、アミン-アミンクロスリンカーは、グルタル酸ジスクシンイミジル(DSG)、スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)、スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)(BS3)、トリス-(スクシンイミジル)アミノトリアセテート(TSAT)、BS(PEG)5、BS(PEG)9、ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル)(DSP)、3,3’-ジチオビス(プロピオン酸スルホスクシンイミジル)(DTSSP)、酒石酸ジスクシンイミジル(DST)、ビス(2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル)スルホン(BSOCOES)、エチレングリコールビス(コハク酸スクシンイミジル)(EGS)、スルホ-EGS、またはそれらの任意の組合せを含む。一部の場合では、アミン-アミンクロスリンカーは、アジプイミド酸ジメチル(DMA)、ピメルイミド酸ジメチル(DMP)、スベルイミド酸ジメチル(DMS)、ジメチル3,3’-ジチオビスプロピオンイミデート(DTBP)、またはそれらの任意の組合せなどのイミドエステルを含む。一部の場合では、アミン-アミンクロスリンカーは、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン(DFDNB)などのジフルオロを含む。
【0151】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞は、スルフヒドリル-スルフヒドリルクロスリンカーと接触させることができる。接触は、所定の時間の間であり得る。接触は、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こすことができる。一部の場合では、スルフヒドリル-スルフヒドリルクロスリンカーは、ビスマレイミドエタン(BMOE)、1,4-ビスマレイミドブタン(BMB)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、トリス(2-マレイミドエチル)アミン(TMEA)、BM(PEG)2(1,8-ビスマレイミド-ジエチレングリコールなど);BM(PEG)3(1,11-ビスマレイミド-トリエチレングリコールなど)、ジチオビスマレイミドエタン(DTME)、またはそれらの任意の組合せなどのマレイミドを含む。
【0152】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞は、アミン-スルフヒドリルクロスリンカーと接触させることができる。接触は、所定の時間の間であり得る。接触は、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こすことができる。一部の場合では、アミン-スルフヒドリルクロスリンカーは、NHS-ハロアセチルクロスリンカー、NHS-マレイミド、NHS-ピリジルジチオールクロスリンカー、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スルホスクシンイミジル(SMCC)クロスリンカー、またはそれらの任意の組合せを含む。NHS-ハロアセチルクロスリンカーは、ヨード酢酸スクシンイミジル(SIA)、3-(ブロモアセトアミド)プロピオン酸スクシンイミジル(SBAP)、(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸スクシンイミジル(SIAB)、スルホ-SIAB、またはそれらの組合せを含み得る。NHS-マレイミドは、N-α-マレイミドアセト-オキシスクシンイミドエステル(AMAS)、N-β-マレイミドプロピル-オキシスクシンイミドエステル(BMPS)、N-γ-マレイミドブチリル-オキシスクシンイミドエステル(GMBS)、スルホ-GMBS、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロスクシンイミドエステル(MBS)、スルホ-MBS、SMCC、スルホ-SMCC、N-ε-マレイミドカプロイル-オキシスクシンイミドエステル(EMCS)、スルホ-EMCS、4-(p-マレイミドフェニル)酪酸スクシンイミジル(SMPB)、スルホ-SMPB、6-((ベータ-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサン酸)スクシンイミジル(SMPH)、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロン酸)スルホスクシンイミジル(LC-SMCC)、N-κ-マレイミドウンデカノイル-オキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ-KMUS)、またはそれらの組合せを含み得る。NHS-ピリジルジチオールクロスリンカーは、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸スクシンイミジル(SPDP)、6-(3(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド)ヘキサン酸スクシンイミジル(LC-SPDP)、スルホ-LC-SPDP、または4-スクシンイミジルオキシカルボニル-アルファ-メチル-α(2-ピリジルジチオ)トルエン(tolune)(SMPT)を含み得る。
【0153】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞は、スルフヒドリル-炭水化物クロスリンカーと接触させることができる。接触は、所定の時間の間であり得る。接触は、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こすことができる。一部の場合では、スルフヒドリル-炭水化物クロスリンカーは、(N-β-マレイミドプロピオン酸ヒドラジド(BMPH)、N-ε-マレイミドカプロン酸ヒドラジド(EMCH)、4-(4-N-マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、N-κ-マレイミドウンデカン酸ヒドラジド(KMUH)、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH)、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0154】
一部の場合では、カルボキシル-アミンクロスリンカーは、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDCI、EDCまたはEDAC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、スルホ-NHS、またはそれらの任意の組合せである。
【0155】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞は、光反応性クロスリンカーと接触させることができる。接触は、所定の時間の間であり得る。接触は、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こすことができる。一部の場合では、光反応性クロスリンカーは、NHSエステル/アリールアジド、NHSエステル/ジアジリン、またはそれらの組合せを含む。NHSエステル/アリールアジドは、N-5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド(ANB-NOS)、スルホ-SANPAH、またはそれらの組合せを含み得る。NHSエステル/ジアジリンは、SDA(NHS-ジアジリン/4,4’-アジペンタン酸スクシンイミジル)、スルホ-SDA、LC-SDA(NHS-LC-ジアジリン/6-(4,4’-アジペンタンアミド)ヘキサン酸スクシンイミジル)、スルホ-LC-SDA、SDAD(NHS-SS-ジアジリン/2-((4,4’-アジペンタンアミド)エチル)1,3’-ジチオプロピオン酸スクシンイミジル)、スルホ-SDAD、またはそれらの組合せを含み得る。
【0156】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞は、in vivoクロスリンカーと接触させることができる。接触は、所定の時間の間であり得る。接触は、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こすことができる。in vivoクロスリンカーは、BS3、DTSSP、スルホ-EGS、DSG、DSP、DSS、EGS、スルホ-SDA、スルホ-LC-SDA、スルホ-SDAD、SDA、LC-SDA、SDAD、NHS-エステルジアジリン、またはそれらの任意の組合せを含み得る。
【0157】
一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける使用のための細胞は、細胞損傷剤またはアポトーシス誘導因子で処理される。一部の場合では、細胞損傷剤は、接触させた細胞の一部またはすべてにおいてアポトーシスを誘導する。非限定的な例示の細胞損傷剤としては、ドキソルビシン、スタウロスポリン、エトポシド、カンプトテシン(comptothecin)、パクリタキセル、ビンブラスチン、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。非限定的な例示のアポトーシス誘導因子としては、マリノピロールA、マリトクラックス、(E)-3,4,5,4’-テトラメトキシスチルベン、17-(アリルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン、2,4,3’,5’-テトラメトキシスチルベン、2OHOA、6,8-ビス(ベンジルチオ)-オクタン酸、AT101、アポトリジン、FU 40A、ara-G水和物、アリールキン(arylquin)1、BAD、BAM7、BAX活性化因子分子7、BH3I-1、BID、BMS-906024、BV02、ベンダムスチン、ボレリジン(borrelidin)、ボレリジン(borrelidine)、シクロペンタンカルボン酸、NSC 216128、トレポネマイシン、ブラシニン(brassinin)、ブラシニン(brassinine)、ブレフェルジンA、アスコトキシン、BFA、シアネイン、デクンビン、ブファリン、CCF642、CCT007093、CD437、CHM-1水和物、2-(2-フルオロフェニル)-6,7-メチレンジオキシ-2-4-キノロン水和物、NSC 656158、CIL-102、CP-31398、二塩酸塩水和物、カマレキシン(camalexin)、3-(チアゾール-2-イル)-1H-インドール、カマレキシン(camalexine)、カルボキシアトラクチロシド、セファランチン、セファランチン、シンナバリン酸、シルシリオール、コンブレタスタチンA4、コスツノリド、DBeQ、DIM-C-pPhtBu、DMXAA、DPBQ、エンニアチンA1、エンニアチンA、エンニアチンB1、エンニアチンB、エラスチン、オイパトリン、FADD、プロピオン酸フルチカゾン、フォスブレタブリン二ナトリウム、GO-201トリフルオロ酢酸塩、ガンボギン酸、HA 14-1、HMBA、ヘキサアミノレブリネート(HAL)、IMB5046、IMS2186、イカルガマイシン、イミキモド、イニパリブ、クラリノン、LLP-3、リポカリン-2、ロメトレキソール、MI-4F、ML 210、ML291、モルギン、ムリステロンA、NA-17、NID-1、NPC26、NSC59984、Nap-FF、ネオカルチノスタチン、ニフェテピミン、ニチジンクロリド、ヌトリン-3、ヌトリン-3a、PKF118-310、PRIMA-1、PRT4165、ペメトレキセド、ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコース水和物、フェノキソジオール、プロジギオシン(PG)、プソラリジン、プテロスチルベン、ラルチトレキセド、ラプチナール、リダイフェン-B、リファブチン、ロスリン2、s-p-ブロモベンジルグルタチオンシクロペンチルジエステル、SJ-17255、SMBA1、STF-62247、スプラフェナシン(suprafenacine)、シロシンゴピン、タルニフルメート、タウロリジン、テモポルフィン、テモゾロミド、テトラザンビゲン(tetrazanbigen)、タキストミンA、チオコルヒチン、チラパザミン、UCD38B、UMI-77、ウンデシルプロジギオシン、VK3-OCH3、バキノール-1、ビオラセイン、ボサロキシン、ゼルンボン、gAcrp30、gAcrp30/アジポリーン(adipolean)、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。細胞損傷剤またはアポトーシス誘導因子と接触させた細胞は、その後、固定剤または架橋剤と接触させてもよい。
【0158】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞は、細胞を化学物質(例えば、固定剤もしくは架橋剤、細胞損傷剤、またはそれらの組合せ)と所定の時間接触させることによってアポトーシスを起こすことができる。一部の実施形態では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける細胞は、架橋剤(例えば、ECDI)で所定の時間固定することによってアポトーシスを起こす。一部の場合では、所定の時間は、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間または約72時間である。一部の場合では、所定の時間は、1時間未満である。一部の場合では、所定の時間は、少なくとも約1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、75分、90分、120分、150分、180分、210分または240分である。一部の場合では、所定の時間は、最大で約30分、40分、50分、60分、75分、90分、120分、150分、180分、210分または240分である。一部の場合では、所定の時間は、約1分~約240分、1分~約10分、10分~約240分、約10分~約180分、約10分~約120分、約10分~約90分、約10分~約60分、約10分~約30分、約30分~約240分、約30分~約180分、約30分~約120分、約30分~約90分、約30分~約60分、約50分~約240分、約50分~約180分、約50分~約120分、約50分~約90分、約50分~約60分、約10分~約20分、約20分~約30分、約30分~約40分、約40分~約50分、約50分~約60分、約60分~約70分、約70分~約80分、約80分~約90分、約90分~約100分、約100分~約110分、約110分~約120分、約10分~約30分、約30分~約50分、約50分~約70分、約70分~約90分、約90分~約110分、約110分~約130分、約130分~約150分、約150分~約170分、約170分~約190分、約190分~約210分、約210分~約240分、約30分まで、約30分~約60分、約60分~約90分、約90分~約120分または約120分~約150分である。
【0159】
接触は、任意の温度においてであり得る。一部の場合では、接触は、氷上(例えば、4℃)で行われる。他の場合では、接触は、室温で行われる。一部の場合では、接触は、少なくとも約0℃、2℃、4℃、8℃、15℃、20℃、25、30℃、35℃または37℃の温度で行われる。一部の場合では、接触は、最高で約4℃、8℃、15℃、20℃、25、30℃、35℃、37℃または40℃の温度で行われる。一部の場合では、接触は、約0℃~約37℃、約0℃~約25℃、約0℃~約15℃、約0℃~約10℃、約0℃~約8℃、約0℃~約6℃、約0℃~約4℃、約0℃~約2℃、約2℃~約10℃、約2℃~約8℃、約2℃~約6℃、約4℃~約25℃、約4℃~約10℃、約15℃~約37℃、約15℃~約25℃、約20℃~約40℃、約20℃~約37℃または約20℃~約30℃の温度で行われる。
【0160】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける細胞は、一部またはすべての細胞のアポトーシスを起こす方法の結果として、凝集し得る。例えば、細胞は、固定剤または架橋剤などの化学物質との接触の後に凝集し得る。細胞を化学物質と接触させる所定の時間は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける凝集の量を最小化するために選択することができる。一部の場合では、凝集物は、例えば、洗浄および/または濾過によって除去することができる。
【0161】
一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、1μlあたり、0.01~10または約0.01~10の凝集物を含むことができる。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、1μlあたり、0.01~1、0.1~1、0.25~1、0.5~1、1~5もしくは1~10、または約0.01~1、0.1~1、0.25~1、0.5~1、1~5もしくは1~10の凝集物を含むことができる。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、1μlあたり、約0.1、0.5、0.75、1、5または10未満の凝集物を含むことができる。
【0162】
一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、1μlあたり5未満の凝集物を含むことができる。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、1μlあたり、約5、4、3、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05または0.01未満の凝集物を含むことができる。
【0163】
一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、1μlあたり1またはそれよりも少ない凝集物を含む。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、1μLあたり、約0.01、約0.05、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9または約1.0の凝集物を含むことができる。
【0164】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、0.01%~10%または約0.01%~10%、例えば0.01%~2%または約0.01%~2%の壊死細胞を含み得る。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの細胞は、0.01%~10%、0.01%~7.5%、0.01%~5%、0.01%~2.5%、もしくは0.01%~1%、または約0.01%~10%、0.01%~7.5%、0.01%~5%、0.01%~2.5%、もしくは0.01%~1%の壊死細胞を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの細胞は、最大で約0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%の壊死細胞を含むことができる。
アポトーシス性白血球の表面上にコンジュゲートされる分子
【0165】
免疫調節分子
【0166】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞(例えば、白血球)は、1種または複数の免疫調節分子の存在下、固定剤または架橋剤(例えば、ECDIなどのカルボジイミド)で処理することができる。1種または複数の免疫調節分子は、IFN-γ、NF-kB阻害剤、ビタミンD3、siCD40、抗CD40抗体、コバルトプロトポルフィリン、インスリンB9-23、α1-アンチトリプシン、表面抗原分類タンパク質、gp39アンタゴニスト、α1-アンチトリプシン、CD47、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、ラパマイシン、コンプスタチン、アバタセプト、イピリムマブ、またはそれらの組合せのすべてまたは一部を含み得る。NF-kB阻害剤は、デヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ)、クルクミン、トリプトリド、Bay-117085、またはそれらの組合せを含み得る。表面抗原分類タンパク質は、CD4、CD46、CD47、CD55、CD59、もしくはそれらの一部、またはそれらの組合せを含み得る。
【0167】
一部の実施形態では、1種または複数の免疫調節分子は、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリンまたはタクロリムス)、共刺激シグナル遮断物質、IL-2シグナル伝達阻害剤(例えば、ダクリズマブまたはバシリキシマブ)、細胞周期ブロッカー(例えば、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)またはアザチオプリン)、T細胞再循環阻害剤(例えば、FTY720または別のスフィンゴシン1-ホスフェート(S1P)受容体アゴニスト)、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)、補体C3もしくはC5阻害剤、またはそれらの任意の組合せのすべてまたは一部を含み得る。
【0168】
一部の実施形態では、免疫調節分子は、T細胞受容体(TCR)、CD3e、FK506-結合タンパク質12(FKBP12)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1、例えば、ペムブロリズマブ)、プログラム死リガンド1(PD-L1、例えば、MPDL3280A)、CD40L(CD154)、CD40、誘導性共刺激(ICOS)、IL-2、TNF-α(例えば、インフリキシマブ)、IL-6またはIL-6R(例えば、トシリズマブ、アクテムラ、クラザキズマブ、ALD518、シルツキシマブ、エルシリモマブ、シルクマブ、サリルマブ、オロキズマブ)、IL-7、CD2、CD20、CD52、α-4インテグリン、mTOR(例えば、ラパマイシンまたはエベロリムス)、DNA合成、炎症促進性経路の分子(例えば、サイトカイン、α1-アンチトリプシン、NFkB)、またはそれらの任意の組合せを標的とすることができる。
【0169】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞(例えば、白血球)は、レシピエントにおいて抗炎症性サイトカインの発現を増加させる薬剤の存在下、固定剤または架橋剤(例えば、ECDIなどのカルボジイミド)で処理することができる。抗炎症性サイトカインとしては、例えば、TGF-β、IL-10、IL-13、またはそれらの組合せが挙げられ得る。一部の場合では、レシピエントにおいて抗炎症性サイトカインの発現を増加させる薬剤は、α1-アンチトリプシンを含む。
【0170】
ADLが移植レシピエントに複数回投与される一部の場合では、すべての用量からのADLは、同じ免疫調節分子、抗炎症性サイトカインの発現を増加させる薬剤および/または抗原もしくはエピトープとすべてコンジュゲートされ得る。ADLが移植レシピエントに複数回投与される一部の場合では、1つまたは複数の用量からのADLは、免疫調節分子、抗炎症性サイトカインの発現を増加させる薬剤および/または抗原もしくはエピトープの第1のセットとコンジュゲートされ得、他の用量からのADLは、免疫調節分子、抗炎症性サイトカインの発現を増加させる薬剤および/または抗原もしくはエピトープの異なるセットとコンジュゲートされ得る。ADLが移植レシピエントに複数回投与される一部の場合では、1つまたは複数の用量からのADLは、免疫調節分子、抗炎症性サイトカインの発現を増加させる薬剤および/または抗原もしくはエピトープのセットとコンジュゲートされ得、他の用量からのADLは、任意のコンジュゲートされた免疫調節分子、抗炎症性サイトカインの発現を増加させる薬剤および/または抗原もしくはエピトープが欠如し得る。
【0171】
ペプチド、抗原およびエピトープ
【0172】
一態様では、本開示は、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドを含む白血球または間葉間質細胞などのアポトーシス細胞を含む、前処置レジメンならびに/または寛容化ワクチンおよびレジメンを提供する。一部の実施形態では、アポトーシス細胞は、MHCクラスI分子に由来する1種または複数のペプチドをさらに含む。
【0173】
このように、ペプチド中のアミノ酸残基の配列は、MHC分子中のポリペプチド配列と実質的に類似または機能的に同等であり得る。したがって、「MHCクラスII分子に由来するペプチド」は、「MHCクラスII分子中の領域由来」配列(例えば、超可変領域)を有するペプチドを指し、その領域の天然に存在するMHCアミノ酸配列と、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.9%、99.95%または100%同一の配列を有するペプチドである。一部の実施形態では、MHCクラスII分子に由来するペプチドは、MHCクラスII分子の超可変領域と、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.9%、99.95%または100%同一の配列を含むことができる。したがって、「MHCクラスI分子に由来するペプチド」は、「MHCクラスI分子中の領域由来」配列(例えば、超可変領域)を有するペプチドを指し、その領域の天然に存在するMHCアミノ酸配列と、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.9%、99.95%または100%同一の配列を有するペプチドである。一部の実施形態では、MHCクラスI分子に由来するペプチドは、MHCクラスI分子の超可変領域由来の配列を含む。
【0174】
本明細書で使用される場合、MHC分子の「超可変領域」は、同じ遺伝子座の異なる対立遺伝子によってコードされるポリペプチドが高い配列変動性または多型を有する分子の領域である。多型は、典型的には、クラスI分子のα1およびα2ドメイン、ならびにクラスII分子のα1およびβ1ドメインに集中する。対立遺伝子の数、および対立遺伝子の中の多型の程度は、異なる遺伝子座で変わり得る。例えば、HLA-DR分子において、すべての多型は、β鎖の属性と考えられ、α鎖は、比較的不変である。HLA-DQについて、αおよびβ鎖は両方とも多型である。
【0175】
本開示のペプチドは、単離されたペプチドであり得る。「単離された」または「生物学的に純粋」という語句は、その天然状態で見られるような、通常それに付随する成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。したがって、本開示のペプチドは、それらのin situ環境、例えば、抗原提示細胞上の他の表面タンパク質に通常関連する材料を含有しない。タンパク質が、均質または優性バンドに単離されている場合でさえ、所望のタンパク質と共精製される天然タンパク質の5~10%の範囲の微量の夾雑物が存在する。本開示の単離されたペプチドは、このような内因性の共精製されたタンパク質を含有しない。
【0176】
「残基」という用語は、アミド結合またはアミド結合ミメティックによってオリゴペプチドに組み込まれたアミノ酸またはアミノ酸ミメティックを指す。本開示における使用に適切なペプチドは、各種の方法で得ることができる。好都合には、それらは、Beckman、Applied Biosystems、または周知のプロトコールを使用する他の市販のペプチド合成機などの自動合成機を用いる従来技術によって合成することができる。それらはまた、当技術分野において周知の技術を使用して、手作業で合成することもできる。例えば、参照により本明細書に組み込まれるStewart and Young, Solid Phase Peptide Synthesis, (Rockford, Ill., Pierce), 2d Ed. (1984)を参照されたい。
【0177】
あるいは、または加えて、特定のMHC分子をコードするDNA配列は、ペプチドを提供するためにクローニングおよび発現され得る。各種のMHC遺伝子を含む細胞は、容易に入手でき、例えば、それらは、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(”Catalogue of Cell Lines and Hybridomas,” 6th edition (1988) Rockville, Md., U.S.A)から入手してもよい。標準的な技術を使用して、cDNAライブラリーをスクリーニングして、所望の配列をコードする配列を特定することができる(参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al., Molecular Cloning--A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989を参照されたい)。融合タンパク質(2種またはそれよりも多くのタンパク質のアミノ酸配列のすべてまたは一部からなるもの)は、組換えで生成することができる。加えて、in vitro突然変異誘発技術を使用して、無関係のタンパク質は、適した配列を含むように突然変異され得る。
【0178】
各種の天然起源由来のMHC糖タンパク質はまた、標準的なタンパク質精製技術を使用して、好都合に単離される。ペプチドは、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオン交換または免疫アフィニティークロマトグラフィー、サイズでの分離、または電気泳動(一般に、参照により本明細書に組み込まれるScopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y. (1982)を参照されたい)を含む、任意の各種の公知の技術によって精製することができる。
【0179】
本開示のペプチドを改変して、各種の所望の特質、例えば、未改変ペプチドの生物学的活性を増加させるか、または実質的にすべてを少なくとも保持しながら、改善された薬理学的特性を提供することができることが理解される。例えば、ペプチドは、ペプチドのアミノ酸配列を伸長させること、減少させることによって、改変することができる。異なるアミノ酸またはアミノ酸ミメティックによる置換を行うこともできる。
【0180】
一部の実施形態では、アポトーシス性白血球の表面上にコンジュゲートされたペプチドは、MHC分子に由来する。「MHC分子」という用語は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)糖タンパク質のタンパク質配列を含む分子を指す。本明細書で使用される場合、「MHC」という用語は、主要組織適合遺伝子複合体を指すことが理解され、これは、ヒト白血球抗原(HLA)を含む主要組織適合遺伝子複合体の糖タンパク質抗原を特定する遺伝子座のセットとして定義される。本明細書で使用される場合、「HLA」という用語は、ヒト白血球抗原を指すことが理解され、これは、ヒトにおいて見出される主要組織適合抗原として定義される。本明細書で使用される場合、「HLA」は、ヒト型の「MHC」であり、したがって、互換的に使用することができる。本開示および特許請求の範囲に係る発明概念に従って利用することができるHLAタンパク質の例としては、限定されるものではないが、HLAクラスIα鎖、HLAクラスIIα鎖およびHLAクラスIIβ鎖が挙げられる。本開示および特許請求の範囲に係る発明概念に従って利用し得るHLAクラスIIαおよび/またはβタンパク質の特定の例としては、限定されるものではないが、以下の遺伝子座:HLA-DRA;HLA-DRB1;HLA-DRB3、4、5;HLA-DQA;HLA-DQB;HLA-DPA;およびHLA-DPBでコードされるものである。
【0181】
一部の実施形態では、ペプチドは、MHCクラスI分子に由来し得るか、またはMHCクラスI分子に由来するそのようなペプチドのバリアントである。一部の実施形態では、ペプチドは、MHCクラスII分子に由来し得るか、またはMHCクラスII分子に由来するペプチドのバリアントである。MHC分子は、高等脊椎動物の細胞で発現するヘテロ二量体糖タンパク質であり、免疫応答において役割を果たす。ヒトでは、これらの分子をヒト白血球抗原(HLA)と称する。MHC糖タンパク質は、クラスIおよびクラスIIの2つの群に分けられ、これは、互いに構造的および機能的に異なる。一般に、MHC分子の主要な機能は、抗原性ペプチドに結合すること、および細胞の表面上でそれらを表示することである。MHCによってコードされる糖タンパク質は、ヒトおよびマウス系の両方において広く研究されており、それらの核酸およびタンパク質の配列は、当技術分野において周知である。多くの組織適合性タンパク質は、単離され、特徴付けられている。MHC糖タンパク質の構造および機能の一般的な概説について、Fundamental Immunology, 3d Ed., W. E. Paul, ed., (Ravens Press N.Y. 1993)を参照されたい。
【0182】
MHCクラスI分子は、ほとんどすべての有核細胞で発現し、細胞傷害性Tリンパ球によって認識され、これは次いで、抗原保有細胞を破壊する。マウスでは、クラスI分子は、MHCのK、DおよびQa領域によってコードされる。クラスII分子は、I-AおよびI-Eサブ領域によってコードされる。マウスI-AおよびI-Eサブ領域によってコードされる単離された抗原は、2つの非共有結合的に結合したペプチド鎖:32~38kdのα鎖および26~29kdのβ鎖からなることが示されている。第3の不変の31kdのペプチドは、これらの2つのペプチドと非共有結合的に会合するが、これは、多型ではなく、細胞表面上の抗原の成分とは思われない。I-A領域のいくつかの対立遺伝子バリアントのαおよびβ鎖は、クローニングおよび配列決定されている。
【0183】
ヒトクラスIタンパク質も研究されている(Bjorkman, P. J., et
al., (1987) Nature 329:506-512)。これらは、44kdのサブユニットMHCクラスI重鎖、およびすべての抗原特異性に共通する12kdのβ2-ミクログロブリンサブユニットからなることが見出されている。さらなる研究は、クラスIヒト抗原のHLA-A2の3次元構造の詳細な像をもたらしている。
【0184】
構造的に、MHCクラスI分子は、2つの非共有結合的に結合したポリペプチド鎖のより大きな「MHCクラスI重鎖(α)」およびより小さな「軽」鎖((β-2-ミクログロブリン)で構成されるヘテロ二量体である。多型の多遺伝子性の重鎖(45kDa)は、第6染色体のMHC内でコードされる。第6染色体は、HLA-A、HLA-BおよびHLA-Cの3つの遺伝子座を有し、この最初の2つは、MHCクラスI重鎖同種抗原のHLA-A、HLA-Bをそれぞれコードする多数の対立遺伝子を有する。MHCクラスI重鎖(α)(例えば、HLA-A、HLA-BおよびHLA-C)は、3つの細胞外ドメイン(α1、α2およびα3と指定)、1つの細胞内ドメインおよび1つの膜貫通ドメインに細分化される。2つの最外部の細胞外ドメインのα1およびα2は、一緒に、抗原ペプチドに結合する溝を形成する。したがって、TCRとの相互作用は、タンパク質のこの領域で起こる。分子の3番目の細胞外ドメインは、CTLにおけるCD8タンパク質についての認識部位を含有し、この相互作用は、T細胞とAPCとの間の接触を安定化する働きをする。
【0185】
第15染色体のMHCの外側でコードされる不変の軽鎖(12kDa)は、単一の細胞外ポリペプチドからなる。「MHCクラスI軽鎖」、「β-2-ミクログロブリン」および「β2m」という用語は、本明細書において、互換的に使用され得る。クラスI重鎖および軽鎖の会合は、細胞膜上のクラスI分子の発現のために必要である。この状況では、β2-ミクログロブリンタンパク質および重鎖のα3ドメインが会合する。したがって、本明細書に開示のMHCクラスI分子は、MHCクラスIヘテロ二量体、MHCクラスI重鎖(例えば、HLA-A、HLA-BまたはHLA-C)、MHCクラスI軽鎖、またはそれらの部分を指し得る。一部の実施形態では、ペプチドは、MHCクラスI重鎖、例えば、HLA-AまたはHLA-Bに由来し得る。一部の実施形態では、全MHCクラスI重鎖を使用することができる。一部の実施形態では、MHCクラスI分子は、MHCクラスI重鎖のドメイン(α1、α2またはα3)であり得る。一部の実施形態では、ペプチドは、MHCクラスI重鎖のα1、α2またはα3領域由来の配列を含み得るか、またはそれらと70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.9%、99.95%もしくは100%同一の配列を含むことができる。重鎖のα1およびα2ドメインは、ペプチドが結合する抗原結合部位を形成する超可変領域を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、MHCクラスI重鎖のα1またはα2ドメインに由来し得る。一部の実施形態では、MHCクラスI分子に由来するペプチドは、MHCクラスI分子の超可変領域由来の配列を含むことができる。一部の実施形態では、MHCクラスIに由来する1種または複数のペプチドは、本明細書に開示の表から選択されるか、または本明細書における表に開示されるペプチドと、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.9%、99.95%もしくは100%同一である。
【0186】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのための細胞(例えば、白血球)は、1種または複数の抗原および/またはエピトープの存在下、固定剤または架橋剤(例えば、ECDIなどのカルボジイミド)で処理することができる。抗原および/またはエピトープは、移植ドナー、移植レシピエント、第三者、またはそれらの組合せ由来の抗原および/またはエピトープを含むことができる。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける細胞は、レシピエントの抗原および/またはエピトープにカップリングされる。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける細胞は、第三者の抗原および/またはエピトープにカップリングされる。一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける細胞は、移植ドナーの抗原および/またはエピトープにカップリングされる。
【0187】
MHCクラスII分子は、免疫応答の開始および支持に関与する細胞、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージなどにおいて主に発現する。MHCクラスII分子は、ヘルパーTリンパ球によって認識され、ヘルパーTリンパ球の増殖、および表示される特定の抗原ペプチドに対する免疫応答の増幅を誘導する。T細胞受容体の関与は、チロシンリン酸化の増加、Ca++流入、PI代謝回転、サイトカインおよびサイトカイン受容体の合成、ならびに細胞分裂などの細胞活性化に特徴的な一連の分子事象を誘導する(Altman et al., (1990) Adv. Immunol. 48:227-360を参照されたい。T細胞が抗原を認識する方法の一般的な議論については、Grey, H. M., et al., Scientific American pp 56-64, (November, 1989)を参照されたい。
MHCクラスII糖タンパク質のHLA-DR、HLA-DQおよびHLA-DP(HLA-DR、DPおよびDQ遺伝子座の対立遺伝子によってコードされる)は、クラスIのものと同様の抗原結合部位を含むドメイン構造を有する。MHCクラスII分子は、2つのほぼ相同のサブユニット:αおよびβ鎖からなるヘテロ二量体であり、この両方とも、MHCにおいてコードされる。したがって、一部の実施形態では、MHCクラスII分子は、MHCクラスIIα鎖およびMHCクラスIIβ鎖(例えば、HLA-DQ、HLA-DR、HLA-DP)のヘテロ二量体を指す。一部の実施形態では、MHCクラスII分子は、ヘテロ二量体のサブユニットであり得る。一部の実施形態では、MHCクラスII分子は、MHCクラスIIα鎖(例えば、HLA-DPA、HLA-DQAまたはHLA-DRA)、もしくはMHCクラスIIβ鎖(例えば、HLA-DPB、HLA-DQBまたはHLA-DRB)、またはそれらのドメインであり得る。一部の実施形態では、MHCクラスII分子は、HLA-DRBである。
【0188】
HLA-DRBは、ヒトの4つの遺伝子座(HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4およびHLA-DRB4)によってコードされるが、しかしながら、3つ以下の機能的遺伝子座が、単一の個体に存在し、2つ以下の機能的遺伝子座が、単一の染色体に存在する。一部の実施形態では、HLA-DRBであるMHCクラスII分子は、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4またはHLA-DRB4遺伝子座によってコードされる。一部の実施形態では、MHCクラスII分子は、HLA-DRB1*03またはHLA-DRB1*04によってコードされる。HLA-DRB1遺伝子座は、広範に分布し、非常に多数の機能的可変遺伝子産物(HLA-DR1~HLA-DR17)をコードする。HLA-DR52を特異的にコードするHLA-DRB3遺伝子座は、中程度の可変性であり、ある特定のHLA-DRB1の種類に可変的に関連する。HLA-DRB4遺伝子座は、HLA-DR53をコードする。一部の実施形態では、HLA-DRBであるMHCクラスII分子は、HLA-DR1、HLA-DR2、HLA-DR3、HLA-DR4またはHLA-DR5から選択される。
【0189】
クラスII分子中のそれぞれのサブユニットは、α1、α2、β1およびβ2と称される球状ドメインからなる。α1ドメインを除くすべてが、免疫グロブリンスーパーファミリーの分子の典型的な鎖内ジスルフィド結合によって安定化される。クラスII分子中のそれぞれの鎖は、2つの外部ドメイン:α1およびα2外部ドメインを含有する33kDaのα鎖、さらにβ1およびβ2外部ドメインを含有する28kDaのβ鎖を含有する。クラスI重鎖分子の膜近位の第3の細胞外ドメインのような膜近位のα2およびβ2ドメインは、免疫グロブリンの折り畳みドメイン構造に相同の配列を保有する。クラスII分子の膜遠位のドメインは、α1およびβ1ドメインで構成され、これは、処理されたペプチド抗原の抗原結合間隙を形成する。したがって、MHCクラスII分子は、球状ドメイン、例えば、α1、α2、β1またはβ2であり得る。MHCクラスII分子に由来するペプチドは、全サブユニット(αまたはβ鎖)、またはそれらの大部分を含むことができる。例えば、ペプチドは、約90~100残基のMHCクラスIIサブユニット由来の細胞外ドメイン(例えば、クラスII分子のβ1およびβ2、またはα1およびα2)を含み得るか、またはそれらと70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.9%、99.95%もしくは100%同一の配列を含むことができる。αおよびβ鎖のN末端部分のα1およびβ1ドメインは、抗原結合部位の大部分を含むと考えられる超可変領域を含有する(Brown et al., Nature 364:33-39 (1993)を参照されたい)。したがって、MHCクラスII分子に由来するペプチドは、MHCクラスII分子の超可変領域(例えば、それぞれ、αおよびβ鎖サブユニットのα1およびβ1ドメイン)由来の配列、またはそれらと70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.9%、99.95%または100%同一の配列を含むことができる。
【0190】
一部の実施形態では、ペプチドは、有害な免疫応答に関連するMHCクラスII分子のαまたはβ鎖の超可変領域に由来する。この方法において、標的抗原(例えば、自己抗原またはアレルゲン)を提示する抗原提示細胞(APC)の能力が阻害される。
【0191】
レピシエント型のMHCクラスII分子を白血球または間葉間質細胞などのアポトーシス細胞にコンジュゲートすることにより、哺乳動物レシピエントにおける同種移植または異種移植(例えば、膵島、腎臓、または胚性幹細胞もしくは誘導多能性幹細胞(iPS)由来の細胞、組織および臓器などの他の細胞、組織もしくは臓器の移植)の前処置レジメンの寛容誘導有効性を増強することができる。例えば、部分的または完全にMHCクラスIおよびクラスII不適合のドナー-レシピエントの対について、レピシエント型のMHCクラスII分子をADLにコンジュゲートすることにより、移植された細胞、組織または臓器に対する寛容の誘導におけるADL有効性を増強することができる。移植レシピエントのMHCクラスII分子の1つ(または複数)に由来する1種または複数のペプチドの完全に不適合のADLの表面へのカップリングにより、ADLの取り込み後(例えば、レシピエント脾臓周辺帯抗原提示細胞または肝臓類洞内皮細胞による)、レシピエントのMHCクラスII分子による提示のための豊富な量のレピシエント型のMHCクラスIIペプチドを提供することができる。自己MHCクラスIIの認識は、例えば、調節性T細胞サブセットを介して、レシピエントの寛容を促進することができる。
【0192】
寛容を誘導することができる手段の追加例は、胸腺由来CD4+Treg(tTreg)の活性化を介してである。例えば、マウスにおける実験移植研究では、MHCクラスIIペプチド特異的tTregの発生およびMHC-II適合同種グラフトの寛容は、ドナーのMHCクラスII由来ペプチドの胸腺発現に依存し得る。tTregは、それら自身のMHCクラスII分子によって提示されるそれら自身のMHCクラスIIペプチドの認識によって選択される。MHCクラスII複合体に結合し、それによって提示される自己ペプチドのかなりの割合は、MHCクラスIIそれ自身に由来する。したがって、多くの循環(t)Tregは、自己MHCクラスIIペプチドに対する特異性を有する。この複合体が、活性化されたエフェクターT細胞の表面上に提示される場合、これは、tTregに対する強力な活性化シグナルとしての機能を果たし得、tTreg活性化、したがって免疫寛容の促進をもたらす。
【0193】
tTregが活性化され得る1つの方法は、MHCクラスIIによって提示されるMHCクラスIIペプチドの活性化T細胞へのトロゴサイトーシスによる。トロゴサイトーシスは、MHCクラスIIペプチドを提示するMHCクラスII分子全体の交換を含む。結合した自己MHCクラスII(例えば、DRB)ペプチドとのMHCクラスII複合体の活性化T細胞へのトロゴサイトーシスは、これらのT細胞を、同じ自己MHCクラスIIペプチドに対する特異性を有するtTregの強力な活性化因子に変化させることができる。したがって、レシピエントのMHCクラスIIペプチドを提示するレシピエント型のMHCクラスII分子が、活性化レシピエントT細胞に送達され、活性化レシピエントT細胞によって提示されると、これは、tTregに対する強力な活性化シグナルとしての機能を果たし得る。tTregの活性化は、抗原特異性を必要とするが、それらの調節機能は、抗原特異性を必要としない。このように、活性化tTregは、直接的および間接的特異性のドナー特異的CD4+およびCD8+T細胞を含む抗ドナー免疫を直接下方調節することができ、Tr1細胞を含む調節能を有する他の免疫細胞サブセットの増幅による抗ドナー免疫を下方調節することもできる。
【0194】
自己MHCクラスIIに結合する自己MHCクラスIIペプチド(例えば、DRBペプチド)は、LAG-3受容体シグナル伝達を介した寛容の誘導にも寄与し得る。それらが由来するMHCクラスII複合体に結合するMHCクラスIIペプチド(例えば、DRBペプチド)は、ペプチド:T細胞上のLAG-3受容体による認識およびそれを介したシグナル伝達に必要なMHCクラスIIの立体構造を安定化することができる。LAG-3は、安定なペプチドを不安定なペプチド:MHCクラスII複合体から区別することができるTCR共受容体である。自己MHCクラスIIに結合するペプチドの特異性は、したがって、LAG-3を介して免疫応答の特異性を調節し得る。したがって、
【0195】
LAG-3の発現および機能は、寛容誘導に関連する。例えば、LAG3およびCD49bの共発現を使用して、Tr1細胞を特定することができ、Tr1細胞上のLAG3の遮断は、Tr1誘導寛容を抑止する。LAG3はまた、活性化されたtTregにおいて一過的に、および活性化されたTeff細胞において有意に低いレベルで発現し、LAG3が調節能力を有する細胞の確実なマーカーであり得ることを示唆する。加えて、DCにおけるMHCクラスIIのLAG3架橋は、DCを寛容化する。自己MHCクラスIIペプチドが、LAG-3認識に関連する立体構造でペプチドを提示する自己MHCクラスIIを安定化することを考慮すると、豊富な量の自己MHCクラスIIペプチド(例えば、DRBペプチド)の送達は、DCにおいて安定な自己ペプチドMHCクラスII複合体の存在を強化し得、それによって、寛容に寄与し得る(例えば、Tr1細胞の増幅を介して)。これは、1つのMHCクラスII DRB対立遺伝子で適合したアポトーシス性ドナー白血球が、同種移植レシピエントにおいて寛容を促進することを示すデータによって裏付けられる。
【0196】
1つ(または複数)の移植レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチド(例えば、DRα鎖、DRβ鎖、DQα鎖、DQβ鎖、DPα鎖またはDPβ鎖)は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのADLの白血球の表面にコンジュゲートされ得る。一部の場合では、移植レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドは、DRβ鎖、DQβ鎖、DPβ鎖、またはそれらの組合せを含む。一部の場合では、1種または複数のペプチドは、1つまたは複数の移植レシピエントのMHCクラスII DRB対立遺伝子由来である。一部の場合では、1種または複数のペプチドは、1つまたは複数の移植レシピエントのMHCクラスII DRA対立遺伝子由来である。一部の場合では、1種または複数のペプチドは、1つまたは複数の移植レシピエントのMHCクラスII DQA対立遺伝子由来である。一部の場合では、1種または複数のペプチドは、1つまたは複数の移植レシピエントのMHCクラスII DQB対立遺伝子由来である。一部の場合では、1種または複数のペプチドは、1つまたは複数の移植レシピエントのMHCクラスII DPA対立遺伝子由来である。一部の場合では、1種または複数のペプチドは、1つまたは複数の移植レシピエントのMHCクラスII DPB対立遺伝子由来である。
【0197】
DRα鎖は、機能的に単形性であり得、したがって、一部の実施形態では、他のMHCクラスII分子に由来するペプチドが、寛容誘導のために好ましい。他の実施形態では、レシピエント型のMHCクラスII DRA分子をアポトーシス性ドナー白血球(ADL)にコンジュゲートすることにより、前処置レジメンの寛容を誘導する有効性を増強することができる。DRα鎖は、機能的に単形性であり得、これは、DRα鎖を寛容誘導のために好都合な標的とし得る。一部の場合では、単形性DRアルファ鎖由来のペプチドを提示するレシピエント型のMHCクラスIIは、その同族特異性について胸腺で選択されるtTreg細胞のサブセットへの活性化シグナルとしての機能を果たし得る。普遍的細胞に由来する任意の容易に増幅可能なT細胞などの任意の細胞は、単形性DRA抗原に由来する同じ鎖、ドメインまたはペプチドとコンジュゲートすることができ、プロセシングして、移植片に対する寛容を促進するために使用することができるADLを発生させることができる。この方法は、レシピエントがDRA抗原について陽性である、移植シナリオの範囲に幅広く適用可能であり得る。例えば、この方法は、普遍的ドナー細胞を使用して寛容を誘導するために使用することができる。
【0198】
一部の場合では、ADLは、移植レシピエントと完全にMHC不適合である。一部の場合では、ADLは、移植レシピエントと部分的にMHC適合である(例えば、レシピエントと1つもしくは複数のMHCクラスIまたはMHCクラスII抗原を共有する)。一部の場合では、ADLは、移植レシピエントとハプロタイプ一致である。一部の場合では、ADLは、移植片と同じドナー由来である。一部の場合では、ADLは、移植片と同じドナー由来ではない。
【0199】
レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、全MHCクラスII分子を含み得る。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DR、DQまたはDPの全α鎖を含み得る。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DR、DQまたはDPの全β鎖を含み得る。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DR、DQまたはDPの全α1および/またはα2ドメインを含み得る。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DR、DQまたはDPの全β1および/またはβ2ドメインを含み得る。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、MHC-DR1、MHC-DR2、MHC-DR3、MHC-DR4および/またはMHC-DR5を含み得る。
【0200】
レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DR、DQまたはDPのα1および/またはα2ドメインの断片を含み得る。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DR、DQまたはDPのβ1および/またはβ2ドメインの断片を含み得る。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、MHC-DR1、MHC-DR2、MHC-DR3、MHC-DR4および/またはMHC-DR5の断片を含み得る。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、超可変領域由来の配列を含み得る。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DRB分子の超可変領域由来のin silicoで特定される高、中または低親和性のペプチド(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸のペプチド)を含むことができる。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、ペプチド結合領域におよぶ可変領域(例えば、約20、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35または40アミノ酸のペプチド)を含むことができる。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DRB結合溝に対して異なる親和性を有するカテプシンS切断可能リンカーを有する二量体ペプチドを含むことができる。一部の場合では、レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DR、DQまたはDPのアルファ鎖由来のペプチドを含まない。
【0201】
レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、合成または組換えであってもよい。一部の場合では、レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、約10~30アミノ酸長であってもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、少なくとも10~30アミノ酸長であってもよい。一部の実施形態では、レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、275、200または250アミノ酸長であり得る。一部の実施形態では、レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、最大で約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、275、200または250アミノ酸長であり得る。一部の実施形態では、レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、275、200または250アミノ酸長であり得る。一部の実施形態では、レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、約5~250、10~250、20~250、30~250、50~250、100~250、5~100、10~100、20~100、30~100、50~100、5~50、10~50、20~50、30~50、5~30、10~30、15~30または20~30アミノ酸長であり得る。
【0202】
一部の場合では、レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、1型糖尿病を有する患者において最も優勢なMHCクラスII対立遺伝子であるHLA DR3およびDR4分子のペプチド結合溝への結合に関する高い親和性を有し得る。ヒトにおけるMHCクラスII DR3およびMHCクラスII DR4分子への結合に関する高い親和性を有するMHCクラスII DR3およびDR4ペプチドの非限定的な例を、実施例14に提示する(表2~6)。
【0203】
一部の場合では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける細胞は、HLA-G、HLA-E、またはそれらの組合せにカップリングされる。
【0204】
一部の実施形態では、ペプチドの「カクテル」が、アポトーシス性白血球の表面上にコンジュゲートされ得る。一部の実施形態では、白血球などのアポトーシス細胞は、MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドを含むことができる。一部の実施形態では、白血球などのアポトーシス細胞は、MHCクラスII分子に由来する、例えば、少なくとも2、3、5、7、10、15、20、30、40、50、100、またはそれよりも多くのペプチドを含むことができる。一部の実施形態では、アポトーシス性白血球は、MHCクラスI分子に由来する1種または複数のペプチドを含むことができる。一部の実施形態では、白血球などのアポトーシス細胞は、MHCクラスI分子に由来する、例えば、少なくとも2、3、5、7、10、15、20、30、40、50、100、またはそれよりも多くのペプチドを含むことができる。MHCクラスII分子に由来する2種以上のペプチドの混合物は、レシピエントにおいて増加した免疫寛容応答を誘導する利点を有する。増加した寛容は、例えば、連鎖廃止と呼ばれるメカニズムによるものであり得る。連鎖抑制のメカニズムは、当業者に公知である。例えば、αおよびβ鎖の超可変領域由来の配列を含むペプチドは、組み合わせて使用されてもよい。ある特定の実施形態では、タンパク質またはポリペプチド(野生型または改変)のサイズは、限定されるものではないが、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1750、2000、2250、2500、またはそれよりも多くのアミノ分子を含んでいてもよく、それらにおいて導きだせる任意の範囲もしくは値、またはその派生を含む。ある特定の態様では、MHC分子の、5、6、7、8、9、10、12、15、20、30またはそれよりも多くの連続した、誘導体を含むアミノ酸および断片を使用することができる。ペプチドは、トランケーションによって突然変異されて、それらの対応する野生型形態よりも短くされ得るが、特定の機能を有する異種タンパク質配列と融合またはコンジュゲートすることによって変化させられる可能性もあることが企図される(例えば、タンパク質複合体としての提示のため、免疫原性の増強のためなど)。
【0205】
ドナーまたはレシピエントのMHCクラスII分子、MHCクラスI分子、およびMHC状態は、例えば、当技術分野において公知のHLAタイピングまたは組織タイピングの従来の方法によって、決定することができる。用いることができる方法の非限定的な例としては、血清学的方法、細胞法およびDNAタイピング法が挙げられる。血清学を使用して、細胞の表面上のHLAタンパク質が特定される。補体依存性細胞傷害試験またはマイクロリンパ球毒性アッセイを、MHC分子の血清学的識別のために使用することができる。末梢血リンパ球(PBL)は、MHCクラスI抗原を発現し、HLA-A、HLA-BおよびHLA-Cの血清学タイピングのために使用される。MHCクラスIIタイピングは、これらの細胞がクラスII分子を発現するので、PBLから単離されたBリンパ球を用いて行われる。HLAタイピングは、公知のHLA特異性の血清を含有する各ウェルを有するマルチウェルプラスチックトレイ中で行われる。
【0206】
リンパ球は、ウェルにプレーティングされ、インキュベートされ、補体(供給源としてウサギ血清)を添加して、抗体結合リンパ球の溶解を媒介する(Terasaki Pi, Nature. 1964を参照されたい)。混合リンパ球培養(MLC)などの細胞アッセイは、個体間のクラスIIタンパク質の相違を測定する。これは、そのすべてが当業者に公知のいくつかの方法で達成され得、例えば、サブタイピングは、混合リンパ球応答(MLR)タイピングによって、および薬物刺激リンパ球試験(PLT)によって達成され得る。両方の方法は、参照により本明細書に組み込まれるWeir and Blackwell, eds., Handbook of Experimental Immunologyに記載されている。これはまた、調べるMHC遺伝子座に特異的なDNAプローブを使用してDNA制限断片長多型(RFLP)を分析することによって達成され得る。MHC遺伝子座のためのプローブを調製するための方法は、当業者に公知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるGregersen et al. (1986), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:5966を参照されたい。移植片およびレシピエントにおけるMHC分子の高分解能識別は、DNAタイピング法によって行うことができる。DNAタイピングによって定義される異なるHLA対立遺伝子は、血清学タイピングを使用して区別できないHLAタンパク質を特定することができる。例えば、DRB1*040101対立遺伝子を持つ個体は、DRB1*0412対立遺伝子を持つ個体と同じ血清型(DR4)を有するだろう。したがって、DRB1*040101およびDRB1*0412は、広い特異性のDR4の分割である。これらの分割は、DNAタイピングによって特定される。
【0207】
MHC分子の特定は、遺伝子座のゲノムDNA、または遺伝子座内でコードされるmRNAに対するcDNAの配列決定によって達成することができる。配列決定されたDNAは、MHCコードポリペプチドの超可変領域をコードするセクションを含む。プローブを有する所望のDNAを特異的に特定するため、所望の領域の増幅のための技術は、当技術分野において公知であり、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術が挙げられる。
【0208】
代替法として、多型DNA配列は、増幅プライマーとして使用することができ、この場合において、これらのプライマーに相補的な配列を含む対立遺伝子のみがプライマーにアニーリングされ、増幅が進行する。DNAタイピングのこの第2の戦略は、配列特異的プライマー(SSP)法と呼ばれ、例えば、Altaf et al World J Transplant. 2017、Erlich H. A. et al. Immunity, Vol. 14, 347-356, April, 2001、Dunckley H, Methods Mol Biol. 2012、米国特許出願公開第20090069190A1号、米国特許出願公開第US20110117553A1号に記載されている。当業者は、MHC分子の遺伝子配列がDNAタイピング法によって決定されると、タンパク質産物を決定することができる。一部の実施形態では、DNA配列は、MHCクラスII分子およびMHCクラスI分子のペプチドの組換え合成のために使用することができる。
【0209】
あるいは、または加えて、細胞は、ビオチンまたはストレプトアビジンの存在下、固定剤または架橋剤で処理することができる。このような場合では、1種もしくは複数の免疫調節分子、抗炎症性サイトカインの発現を増加させる薬剤および/または抗原もしくはエピトープは、ストレプトアビジンまたはビオチンとカップリングさせることができ、固定剤または架橋剤との接触後に、細胞と接触させることができる。1種もしくは複数の免疫調節分子、抗炎症性サイトカインの発現を増加させる薬剤および/または抗原もしくはエピトープは、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用を介して細胞に結合することができる。
【0210】
代替戦略は、免疫調節分子、レシピエントにおける抗炎症性サイトカインの発現を増加させる薬剤、移植ドナーの抗原および/もしくはエピトープ、移植レシピエントの抗原および/もしくはエピトープ、ならびに/または第三者の抗原および/もしくはエピトープのうちの1種または複数をポリスチレンナノ粒子などのナノ粒子にカップリングさせることを含むことができる。このようなナノ粒子は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンとともに、またはその一部として、投与することができる。
【0211】
本明細書で使用される場合、「コンジュゲートする」または「にコンジュゲートされる」などの用語は、分子実体(例えば、本開示のペプチドおよびアポトーシス性白血球)が共有結合または非共有結合により一緒に連結されることを指す。コンジュゲーションは、2つの分子実体の直接カップリング、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基およびカルボン酸からエステルまたはアミドの作出によって、達成されてもよい。コンジュゲーションは、2つの分子実体の間接カップリング、例えば、ポリエチレングリコールなどの連結基の設立によって、達成されてもよい。コンジュゲーションは、分子実体を互いと反応する化学基で修飾することによって、例えば、アジド官能化実体を有するアルキン官能化実体、またはジスルフィド結合を形成する個々の実体上のチオール基の還元によって、達成されてもよい。エチレンカルボジイミド(ECDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、2つのエポキシ残基を含有するプロピレングリコールジグリシジルエーテル、およびエピクロロヒドリンなどのコンジュゲートを、ペプチドまたはタンパク質のアポトーシス性白血球の表面への固定のために使用することができる。アポトーシス性白血球の表面上の反応性カルボキシル基は、ペプチドまたはタンパク質上の遊離アミン(例えば、Lys残基由来)に、それらを、例えば、1-エチル-3-[3,9-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)またはN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)と反応させることによって、接合することができる。同様に、同じ化学物質を、アポトーシス性白血球の表面上の遊離アミンを、ペプチドまたはタンパク質上の遊離カルボキシル(例えば、C末端由来、またはAspもしくはGIu残基由来)とコンジュゲートさせるために使用してもよい。あるいは、アポトーシス性白血球の表面上の遊離アミノ基は、本質的にArano et al. (1991) Chem. 2:71-6に記載されているスルホ-SIAB化学を使用して、ペプチドおよびタンパク質、またはペプチドもしくはタンパク質の融合タンパク質に共有結合的に結合されてもよい。当技術分野において周知の多種多様な手段を、ペプチドをアポトーシス性白血球の表面にコンジュゲートさせるために使用してもよい。これらの方法には、ペプチドの生物活性およびアポトーシス性白血球の生物活性を破壊または大幅に限定せず、寛容を誘導することを可能にする配向で十分な数のペプチドを表面にコンジュゲートするのを可能にする任意の標準的な化学を含む。一部の実施形態では、ペプチドのC末端領域がコンジュゲートされる。他の実施形態では、ペプチドのN末端を、アポトーシス性白血球の表面上にコンジュゲートさせることができる。
短期免疫抑制
【0212】
本開示の前処置レジメンまたは寛容化ワクチンは、1種もしくは複数の免疫抑制剤および/または抗炎症剤を移植レシピエントに投与すること、例えば、アポトーシス細胞(アポトーシス性ドナー白血球または間葉間質細胞など)に加えて1種もしくは複数の免疫抑制剤および/または抗炎症剤を投与することを含むことができる。
【0213】
一部の場合では、本開示の前処置レジメンまたは寛容化ワクチンは、移植レシピエントの短期免疫抑制を含むことができる。一部の場合では、移植された細胞、臓器または組織に対する移植レシピエントの寛容は、レシピエントに長期免疫抑制または維持免疫抑制を投与していないにもかかわらず、維持され得る。
【0214】
短期免疫抑制は、本明細書に開示の任意の免疫抑制剤および/または抗炎症剤を移植レシピエントに投与することを含むことができる。
【0215】
一部の実施形態では、本開示の寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、レシピエントに対するアポトーシス細胞(例えば、アポトーシス性ドナー白血球または間葉間質細胞)、およびmTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン)を含む短期免疫抑制を投与することを含むことができる。
【0216】
例示的な実施形態では、本開示の寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、アポトーシス性ドナー白血球をレシピエントに投与すること、ならびに(i)mTOR阻害剤、(ii)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、(iii)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および(iv)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤のうちの1種または複数を含む短期免疫抑制を含むことができる。これらの薬剤と本明細書に開示のアポトーシス性ドナー白血球と一緒の短期投与は、長期維持免疫抑制をレシピエントに投与していないにもかかわらず、移植された細胞、臓器または組織に対する長期寛容を促進することができる。
【0217】
1つの例示的な実施形態では、短期免疫抑制は、mTOR阻害剤、抗腫瘍壊死因子剤、抗インターロイキン6受容体剤および抗CD40剤を投与することを含む。これらの薬剤と本明細書に開示のアポトーシス性ドナー白血球と一緒の短期投与は、長期維持免疫抑制をレシピエントに投与していないにもかかわらず、移植された細胞、臓器または組織に対する長期寛容を促進することができる。
【0218】
1つの例示的な実施形態では、短期免疫抑制は、mTOR阻害剤、可溶性抗腫瘍壊死因子受容体、抗インターロイキン6受容体抗体およびアンタゴニスト性抗CD40抗体を投与することを含む。これらの薬剤と本明細書に開示のアポトーシス性ドナー白血球と一緒の短期投与は、長期維持免疫抑制をレシピエントに投与していないにもかかわらず、移植された細胞、臓器または組織に対する長期寛容を促進することができる。
【0219】
mTOR阻害剤の非限定的な例としては、ラパマイシン、シロリムスおよびエベロリムスが挙げられる。一部の場合では、本開示のmTOR阻害剤は、ラパマイシンである。
【0220】
抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤は、抗腫瘍壊死因子抗体もしくはその抗原結合性断片、アンタゴニスト性抗腫瘍壊死因子受容体抗体もしくはその抗原結合性断片、または腫瘍壊死因子受容体の可溶性腫瘍壊死因子結合ドメイン(例えば、エタネルセプト)を含み得る。腫瘍壊死因子は、TNF-アルファであり得る。一部の場合では、抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤は、腫瘍壊死因子受容体の可溶性腫瘍壊死因子結合ドメイン(例えば、エタネルセプト)である。抗腫瘍壊死因子剤および抗腫瘍壊死因子受容体剤の非限定的な例としては、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴルおよびゴリムマブが挙げられる。
【0221】
抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤は、抗インターロイキン6抗体、アンタゴニスト性抗インターロイキン6受容体抗体、またはそれらの抗原結合性断片であり得る。一部の場合では、本開示の抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤は、アンタゴニスト性抗インターロイキン6受容体抗体(例えば、トシリズマブ)である。抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤の非限定的な例としては、トシリズマブ、アクテムラ、クラザキズマブ、ALD518、シルツキシマブ、エルシリモマブ、シルクマブ、サリルマブおよびオロキズマブが挙げられる。
【0222】
抗CD40剤または抗CD40リガンド剤は、例えば、アンタゴニスト性抗CD40抗体およびアンタゴニスト性抗CD40リガンド抗体、またはそれらの抗原結合性断片であり得る。抗CD40剤または抗CD40リガンド剤は、アンタゴニスト性抗CD40抗体またはそれらの抗原結合性断片であり得る。アンタゴニスト性抗CD40抗体の非限定的な例としては、2C10、2C10R4、ASKP1240、4D11、ブレセルマブ、BI-655064、HCD122、CFZ533、ch5D12、CDP7657およびFFP104が挙げられる。一部の場合では、抗CD40剤は、ASKP1240である。抗CD40剤または抗CD40リガンド剤は、アンタゴニスト性抗CD40リガンド抗体またはそれらの抗原結合性断片であり得る。アンタゴニスト性抗CD40リガンド抗体の非限定的な例としては、BG9588、ルプリズマブ、トラリズマブ、IDEC-131、ダピロリズマブ、レトリズマブ、BMS-986004、VIB4920およびMEDI4920が挙げられる。
【0223】
一部の実施形態では、短期免疫抑制は、mTOR阻害剤を投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤を投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を投与することを含む。
【0224】
一部の実施形態では、短期免疫抑制は、(i)mTOR阻害剤、および(ii)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤を投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、(i)mTOR阻害剤、および(ii)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、(i)mTOR阻害剤、および(ii)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、(i)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、および(ii)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、(i)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、および(ii)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、(i)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および(ii)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を投与することを含む。
【0225】
一部の実施形態では、短期免疫抑制は、(i)mTOR阻害剤、(ii)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、および(iii)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、(i)mTOR阻害剤、(ii)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、および(iii)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、(i)mTOR阻害剤、(ii)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および(iii)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、(i)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、(iii)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および(iii)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を投与することを含む。
【0226】
短期免疫抑制は、本開示の1種または複数の免疫抑制剤および/または抗炎症剤を、移植後最長で約100日間、投与することを含むことができる。短期免疫抑制は、本開示の1種または複数の免疫抑制剤および/または抗炎症剤を、例えば、移植後最長で約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、31、32、33、34、35、40、42、49、50、55、60、70、80、90または100日間投与することを含むことができる。一部の場合では、短期免疫抑制は、移植後28日以内に終了することができる。一部の場合では、短期免疫抑制は、移植の約21日後に終了することができる。
【0227】
一部の実施形態では、短期免疫抑制は、移植の前に始めることができる。例えば、短期免疫抑制は、移植の約または最長で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、35または50日前に開始することができる。一部の場合では、短期免疫抑制は、移植の最長で約10日前に開始することができる。一部の場合では、短期免疫抑制は、移植の約7日前に開始することができる。
【0228】
短期免疫抑制の期間(例えば、免疫抑制剤および/または抗炎症剤の最初の用量および最後の用量を投与する間の時間の長さ)は、約または最長で約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、31、32、33、34、35、40、42、49、50、55、60、70、80、90または100日であり得る。一部の場合では、短期免疫抑制の期間は、約または最長で約30日であり得る。一部の場合では、短期免疫抑制の期間は、約28日であり得る。
【0229】
一部の場合では、短期免疫抑制は、mTOR阻害剤を、移植の最長で約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、31、32、33、34、35、40、42、49、50、55、60、70、80、90または100日後に投与することを含む。一部の場合では、短期免疫抑制は、mTOR阻害剤を、移植の最長で約21日後に投与することを含む。
【0230】
一部の場合では、短期免疫抑制は、mTOR阻害剤を、移植の約または最長で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、35または50日前に始めて投与することを含む。一部の場合では、短期免疫抑制は、mTOR阻害剤を、移植の約または最長で約7日前に始めて投与することを含む。
【0231】
一部の場合では、短期免疫抑制は、mTOR阻害剤を、約または最長で約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、31、32、33、34、35、40、42、49、50、55、60、70、80、90または100日の期間、投与することを含む。一部の場合では、短期免疫抑制は、mTOR阻害剤を、約または最長で約28日の期間、投与することを含む。
【0232】
mTOR阻害剤は、0日目の移植に対して、約、例えば、-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34および35日目のうちの任意の1日またはそれよりも多く、短期抑制のために投与することができる。一部の場合では、mTOR阻害剤は、0日目の移植に対して、約-7日目から21日目に短期抑制のために投与することたできる。
【0233】
一部の場合では、短期免疫抑制は、抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤を、移植の最長で約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、31、32、33、34、35、40、42、49、50、55、60、70、80、90または100日後に投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤を、移植の最長で約21日後に投与することを含む。
【0234】
一部の場合では、短期免疫抑制は、抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤を、移植の約または最長で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、35または50日前に始めて投与することを含む。一部の場合では、短期免疫抑制は、抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤を、移植の約または最長で約7日前に始めて投与することを含む。
【0235】
一部の場合では、短期免疫抑制は、抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤を、約または最長で約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、31、32、33、34、35、40、42、49、50、55、60、70、80、90または100日の期間、投与することを含む。一部の実施形態では、短期免疫抑制は、抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤を、約または最長で約28日の期間、投与することを含む。
【0236】
抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤は、0日目の移植に対して、約、例えば、-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34および35日目のうちの任意の1日またはそれよりも多く、短期抑制のために投与することができる。一部の場合では、抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤は、0日目の移植に対して、約-7、0、3、7、10、14および21日目に、短期抑制のために投与することができる。
【0237】
一部の場合では、短期免疫抑制は、抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を、移植の最長で約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、31、32、33、34、35、40、42、49、50、55、60、70、80、90または100日後に投与することを含む。一部の場合では、短期免疫抑制は、抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を、移植の最長で約21日後に投与することを含む。
【0238】
一部の場合では、短期免疫抑制は、抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を、移植の約または最長で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、35または50日前に始めて投与することを含む。一部の場合では、短期免疫抑制は、抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を、移植の約または最長で約7日前に始めて投与することを含む。
【0239】
一部の場合では、短期免疫抑制は、抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を、約または最長で約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、31、32、33、34、35、40、42、49、50、55、60、70、80、90または100日の期間、投与することを含む。一部の場合では、短期免疫抑制は、抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を、約または最長で約28日の期間、投与することを含む。
【0240】
抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤は、0日目の移植に対して、約、例えば、-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34および35日目のうちの任意の1日またはそれよりも多く、短期抑制のために投与することができる。一部の場合では、抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤は、0日目の移植に対して、約-7、0、7、14および21日目に、短期抑制のために投与することができる。
【0241】
一部の場合では、短期免疫抑制は、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を、移植の最長で約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、31、32、33、34、35、40、42、49、50、55、60、70、80、90または100日後に投与することを含む。一部の場合では、短期免疫抑制は、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を、移植の最長で約14日後に投与することを含む。
【0242】
一部の場合では、短期免疫抑制は、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を、移植の約または最長で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、35または50日前に始めて投与することを含む。一部の場合では、短期免疫抑制は、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を、移植の約または最長で約8日前に始めて投与することを含む。
【0243】
一部の場合では、短期免疫抑制は、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を、約または最長で約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、25、28、29、30、31、32、33、34、35、40、42、49、50、55、60、70、80、90または100日の期間、投与することを含む。一部の場合では、短期免疫抑制は、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を、約または最長で約22日の期間、投与することを含む。
【0244】
抗CD40剤または抗CD40リガンド剤は、0日目の移植に対して、約、例えば、-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34および35日目のうちの任意の1日またはそれよりも多く、短期抑制のために投与することができる。一部の場合では、抗CD40剤または抗CD40リガンド剤は、0日目の移植に対して、約-8、-1、7および14日目に、短期抑制のために投与することができる。
【0245】
一部の場合では、短期免疫抑制は、1種または複数の免疫抑制剤(例えば、免疫調節分子)を投与することを含むことができる。1種または2種以上の免疫抑制剤/免疫抑制薬は、一緒にまたは連続して使用することができる。免疫抑制剤としては、限定されるものではないが、抗CD40剤もしくは抗CD40L(CD154)剤(例えば、抗CD40抗体)、B細胞標的化剤(例えば、B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)、mTOR阻害剤、TNF-アルファ阻害剤、IL-6阻害剤、α1-アンチトリプシン、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)、補体C3もしくはC5阻害剤、IFN-γ、NFκB阻害剤、ビタミンD3、siCD40、コバルトプロトポルフィリン、インスリンB9-23、表面抗原分類タンパク質(例えば、CD46、CD55またはCD59)、それらの任意の組合せ、またはそれらの任意の断片が挙げられる。一部の場合では、NFκB阻害剤は、デヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ)、クルクミン、トリプトリド、Bay-117085、またはそれらの組合せである。B細胞標的化生物製剤の非限定的な例としては、抗CD20抗体のリツキシマブが挙げられる。任意のこれらの追加の免疫抑制剤は、移植の前および/または後に対象に与えられ得る。
【0246】
一部の場合では、短期免疫抑制のために使用される免疫抑制剤は、MMF(ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト))、ATG(抗胸腺細胞グロブリン)、抗CD154(CD40L)、アレムツズマブ(キャンパス)、CTLA4-Ig(アバタセプト/オレンシア)、ベラタセプト(LEA29Y)、ダクリズマブ(ゼナパックス)、バシリキシマブ(シムレクト)、インフリキシマブ(レミケード)、シクロスポリン、デオキシスペルグアリン、可溶性補体受容体1、コブラ毒因子、コンプスタチン、抗C5抗体(エクリズマブ/ソリリス)、メチルプレドニゾロン、FTY720、エベロリムス、抗CD154-Ab、レフルノミド、抗IL-2R-Ab、抗CXCR3抗体、抗ICOS抗体、抗OX40抗体、および抗CD122抗体、ヒト抗CD154モノクローナル抗体、CD40アンタゴニスト、ならびにCD40L(CD154)アンタゴニストのうちのいずれか1種または複数であり得る。
【0247】
一部の場合では、短期免疫抑制のために使用される免疫抑制剤は、T細胞受容体(TCR)、CD3e、FK506結合タンパク質12(FKBP12)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム死リガンド1(PD-L1)、CD40L(CD154)、CD40、誘導性共刺激(ICOS)、IL-2、TNF-α、IL-6、IL-7、CD2、CD20、CD52、α-4インテグリン、mTOR(ラパマイシン、エベロリムス、セロリムスのメカニスティク標的)、DNA合成、またはそれらの任意の組合せを標的とすることができる。
【0248】
一部の場合では、短期免疫抑制のために使用される免疫抑制剤は、MHC/TCR相互作用遮断物質、非選択的枯渇剤、カルシニューリン阻害剤、共刺激シグナル遮断物質、サイトカイン遮断物質、リンパ球枯渇剤、細胞接着阻害剤、IL-2シグナル伝達阻害剤、細胞周期ブロッカー、またはそれらの任意の組合せであり得る。例えば、MHC/TCR相互作用遮断物質は、抗abTCR mAb T10B9であり得る。例えば、非選択的枯渇剤は、抗CD3 mAb(OKT3)または抗胸腺細胞グロブリン(ATG)であり得る。例えば、カルシニューリン阻害剤は、シクロスポリンまたはタクロリムスであり得る。例えば、共刺激シグナル遮断物質は、抗CTLA-4 mAb、アバタセプト、イピリムマブ、抗PD-1(ペムブロリズマブなど)、抗PD-L1(MPDL3280Aなど)、抗CD154 mAb、抗CD40 mAbまたは抗ICOS mAbであり得る。例えば、サイトカイン遮断物質は、抗CD25 mAb(ダクリズマブまたはバシリキシマブなど)、抗TNF(エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴルおよびゴリムマブ)、抗IL-6/IL-6R mAb(クラザキズマブ、ALD518、シルツキシマブ、エルシリモマブ、シルクマブ、オロキズマブ、サリルマブ、トシリズマブ、アクテムラなど)または抗IL-7 mAbであり得る。例えば、リンパ球枯渇剤は、抗CD2 mAb、IgG1との融合タンパク質(アレファセプトなど)、抗CD20 mAb(リツキシマブなど)または抗CD52 mAb(アレムツズマブなど)であり得る。例えば、細胞接着阻害剤は、抗very large antigen 4(VLA4)(ナタリズマブなど)であり得る。例えば、IL-2シグナル伝達阻害剤は、シロリムス(ラパマイシン)またはエベロリムスであり得る。例えば、細胞周期ブロッカーは、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)またはアザチオプリンであり得る。
投与方法
【0249】
細胞、組織または臓器移植片に対する寛容を誘導する方法が、本明細書で提供される。移植片は、異種移植片であることもあり、または同種移植片であることもある。方法は、寛容化ワクチンを含む組成物をまたは前処置レジメンを対象に投与するステップを含み得る。投与は、静脈内注入により得る。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与は、移植レシピエントにおける細胞、組織または臓器移植片に対する長期寛容をもたらすことができる。
【0250】
本明細書で開示される寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンは、レシピエントにおける移植片(例えば、異種グラフトまたは同種グラフト移植片)の生存期間を少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも6年、少なくとも7年、少なくとも8年、少なくとも9年、または少なくとも10年間増加させることができる。本明細書で開示される寛容化ワクチンまたは前処置レジメンはまた、移植後の免疫抑制の必要を低減または消失させることができる。
【0251】
異種グラフトまたは同種グラフト移植片は、臓器、組織、細胞、または幹細胞から分化した細胞を含む、臓器、組織、細胞、または細胞系であり得る。移植片および寛容化ワクチンは、異なるドナーからのものであることもあり、または同じドナーからのものであることもある。移植片および寛容化ワクチンは、異なる種からのものであることもあり、または同じ種からのものであることもある。一部の場合には、異種グラフト移植片および寛容化ワクチンは、実質的に遺伝学的に同一である異なるドナーからのものであることもある。
【0252】
寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンの1または複数の用量を、移植レシピエントに投与することができる。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの1または複数の用量を、細胞、組織もしくは臓器が移植される前および/または移植中および/または移植された後に投与することができる。細胞、組織または臓器の移植日は、0日目と言うことができる。0日目を基準にして先行する日(レシピエントがグラフト細胞、組織または臓器を受け取る日)は、負の数によって述べることができる。例えば、グラフト細胞、組織または臓器の7日前に投与される寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、-7日目に投与されると表すことができる。同様に、レシピエントが移植細胞、臓器または組織を受け取る日より後の日は、正の数によって述べることができる。例えば、グラフト細胞、組織または臓器の7日後に投与される寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、7日目または+7日目に投与されると表すことができる。
【0253】
一部の場合には、寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンの用量は、グラフト細胞、組織または臓器の移植の少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日または60日前に投与される。
【0254】
一部の場合には、寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンの用量は、グラフト細胞、組織または臓器の移植の最大でも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日または60日前には投与される。
【0255】
一部の場合には、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの用量は、グラフト細胞、組織または臓器の移植の約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日または60日前に投与される。
【0256】
一部の場合には、寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンの用量は、レシピエントがグラフト細胞、組織または臓器を受け取る同じ日に投与される(例えば、用量は、0日目に投与される)。0日目に投与される用量を、グラフト細胞、組織もしくは臓器と同時に投与することができ、またはグラフト細胞、組織もしくは臓器の24時間以内に投与することができる。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの用量は、グラフト細胞、組織または臓器を基準にして-23、-22、-21、-20、-19、-18、-17、-16、-15、-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23時間の時点で投与され得る。
【0257】
一部の場合には、寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンの用量は、グラフト細胞、組織または臓器の移植の少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日または60日後に投与される。
【0258】
一部の場合には、寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンの用量は、グラフト細胞、組織または臓器の移植の最大でも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日または60日後には投与される。
【0259】
一部の場合には、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの用量は、グラフト細胞、組織または臓器の移植の約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日または60日後に投与される。
【0260】
前処置レジメンは、グラフト細胞、組織もしくは臓器の移植前および/または移植中および/または移植後に寛容化ワクチンの複数用量を含み得る。複数用量は、初回用量および1または複数のブースター用量を含むと言うことができる。初回用量は、グラフト細胞、組織または臓器の移植の前にまたはそれと同時に存在し得る。ブースター用量は、投与される場合、初回用量の後に存在する。寛容化ワクチンの初回用量がいつ投与されるのかに依存して、1または複数のブースター用量をグラフト細胞、組織もしくは臓器の移植の前におよび/または移植と同時におよび/または移植の後に投与することができる。
【0261】
寛容化ワクチン/レジメンの後続の(例えば、ブースター)用量は、先行する用量(例えば、初回用量)後に任意の時間間隔で投与され得る。例えば、後続の用量は、先行する用量の約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日、60日、90日、120日、150日または180日後に投与され得る。初回用量がいつ投与されるのかに依存して、後続の(例えば、ブースター)用量を、グラフト細胞、組織もしくは臓器の移植の前におよび/または移植と同時におよび/または移植の後に投与することができる。一部の場合には、前処置レジメンは、移植の前に寛容化ワクチンの少なくとも1用量を含む。一部の場合には、前処置レジメンは、移植の前に寛容化ワクチンの少なくとも2用量(例えば、初回用量およびブースター用量)を含む。一部の場合には、前処置レジメンは、移植の前に寛容化ワクチンの少なくとも3用量(例えば、初回用量および2用量のブースター用量)を含む。一部の場合には、前処置レジメンは、寛容化ワクチンの初回用量を移植の前に含み、ブースターワクチンの少なくとも1用量をグラフト細胞、組織もしくは臓器の移植と同時にもしくは移植の後に含む。
【0262】
一部の場合には、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの2用量が投与され得る。初回用量は、例えば、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして-14、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6または7日目に投与され得る。2回目用量は、例えば、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28日目に投与され得る。一部の実施形態では、初回用量は、-8日目に投与され、2回目用量は、-1日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-8日目に投与され、2回目用量は、0日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-8日目に投与され、2回目用量は、1日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-7日目に投与され、2回目用量は、-1日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-7日目に投与され、2回目用量は、0日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-7日目に投与され、2回目用量は、1日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-12日目に投与され、2回目用量は、-4日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-11、-12、-13または-14日目に投与され、2回目用量は、-3、-4、-5または-6日目に投与される。
【0263】
一部の場合には、寛容化ワクチン/レジメン(例えば、ブースターワクチン)の2回目用量は、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして100日目、90日目、80日目、70日目、60日目、50日目、40日目、30日目、29日目、28日目、27日目、26日目、25日目、24日目、23日目、22日目、21日目、20日目、19日目、18日目、17日目、16日目、15日目、14日目、13日目、12日目、11日目、10日目、9日目、8日目、7日目、6日目、5日目、4日目、3日目、2日目または1日目に投与され得る。例えば、寛容化ワクチン(例えば、ブースターワクチン)の2回目用量は、ドナー細胞、臓器および/または組織の移植の1日後に投与され得る。一部の場合には、寛容化ワクチンの2回目用量は、0日目に移植ドナー細胞、臓器および/または組織に不随して投与される。一部の場合には、寛容化ワクチンの2回目用量は、必要とされない。
【0264】
一部の場合には、寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンの3回目用量が投与され得る。初回用量は、例えば、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして-14、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6または7日目に投与され得る。2回目用量は、例えば、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28日目に投与され得る。3回目用量は、例えば、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、180、200、250、300、350または365日目に投与され得る。一部の実施形態では、初回用量は、-8日目に投与され、2回目用量は、1日目に投与され、3回目用量は、7日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-8日目に投与され、2回目用量は、1日目に投与され、3回目用量は、14日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-8日目に投与され、2回目用量は、1日目に投与され、3回目用量は、21日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-7日目に投与され、2回目用量は、1日目に投与され、3回目用量は、7日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-7日目に投与され、2回目用量は、1日目に投与され、3回目用量は、14日目に投与される。一部の実施形態では、初回用量は、-7日目に投与され、2回目用量は、1日目に投与され、3回目用量は、21日目に投与される。
【0265】
一部の場合には、寛容化ワクチン/レジメン(例えば、ブースターワクチン)の3回目用量は、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして300日目、200日目、100日目、90日目、80日目、70日目、60日目、50日目、40日目、30日目、29日目、28日目、27日目、26日目、25日目、24日目、23日目、22日目、21日目、20日目、19日目、18日目、17日目、16日目、15日目、14日目、13日目、12日目、11日目、10日目、9日目、8日目、7日目、6日目、5日目、4日目、3日目、2日目または1日目に投与され得る。例えば、寛容化ワクチンは、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、もしくは7~1日目に、約300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、もしくは7~1日目に、投与され得る。
【0266】
一部の場合には、寛容化ワクチン/レジメン(例えば、ブースターワクチン)の4回目用量が、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして600日目、500日目、400日目、300日目、200日目、100、90日目、80日目、70日目、60日目、50日目、40日目、30日目、29日目、28日目、27日目、26日目、25日目、24日目、23日目、22日目、21日目、20日目、19日目、18日目、17日目、16日目、15日目、14日目、13日目、12日目、11日目、10日目、9日目、8日目、7日目、6日目、5日目、4日目、3日目、2日目または1日目に投与され得る。例えば、寛容化ワクチンは、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして、600~500、500~400、400~300、300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、7~1日目に、または約600~500、500~400、400~300、300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、7~1日目に、投与され得る。
【0267】
一部の場合には、寛容化ワクチン(例えば、ブースターワクチン)の5回目用量が、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして、1,000日目、900日目、800日目、700日目、600日目、500日目、400日目、300日目、200日目、100、90日目、80日目、70日目、60日目、50日目、40日目、30日目、29日目、28日目、27日目、26日目、25日目、24日目、23日目、22日目、21日目、20日目、19日目、18日目、17日目、16日目、15日目、14日目、13日目、12日目、11日目、10日目、9日目、8日目、7日目、6日目、5日目、4日目、3日目、2日目または1日目に投与され得る。例えば、寛容化ワクチンは、0日目のドナー細胞、臓器および/または組織の移植を基準にして、1,000~900、900~800、800~700、700~600、600~500、500~400、400~300、300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、7~1日目に、または約1,000~900、900~800、800~700、700~600、600~500、500~400、400~300、300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、7~1日目に、投与され得る。
【0268】
寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンの投与は、移植レシピエントにおける細胞、組織または臓器移植片に対する長期寛容をもたらすことができる。一部の場合には、長期寛容は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも13ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも17ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも19ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも21ヶ月、少なくとも22ヶ月、少なくとも23ヶ月または少なくとも24ヶ月間である。一部の場合には、長期寛容は、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも6年、少なくとも7年、少なくとも8年、少なくとも9年または少なくとも10年間である。一部の場合には、長期寛容は、ブースターワクチンまたはブースターレジメンの非存在下で実現される。一部の場合には、長期寛容は、ブースターワクチンまたはブースターレジメンの1または複数の用量の投与で実現される。一部の場合には、1または複数のブースターワクチン用量は、移植の当日に投与されるか、または移植の少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、90日、95日、100日、105日、110日、115日、120日、125日、130日、135日、140日、145日、150日、155日、160日、165日、170日、175日、180日、185日、190日、195日、200日、205日、210日、215日、220日、230日もしくは240日後に、投与される。ある特定の場合には、前処置レジメンの1または複数(例えば、3)用量は、移植の前に投与され、1または複数のブースターワクチンの用量は、移植の1、7、14、21、90または最大180日後に投与される。
【0269】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの用量は、寛容化ワクチンのレシピエントの体重に基づいて変わり得る。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの用量は、約1×101細胞/kg、1×102細胞/kg、1×103細胞/kg、1×104細胞/kg、1×105細胞/kg、1×106細胞/kg、1×107細胞/kg、1×108細胞/kg、1×109細胞/kg、1×1010細胞/kg、1×1011細胞/kg、1×1012細胞/kg、またはそれを超える用量を含み得る。一部の場合には、寛容化ワクチンまたは前処置レジメン用量は、約1×101~1×102細胞/kg、1×102~1×103細胞/kg、1×103~1×104細胞/kg、1×104~1×105細胞/kg、1×105~1×106細胞/kg、1×106~1×107細胞/kg、1×107~1×108細胞/kg、1×108~1×109細胞/kg、1×109~1×1010細胞/kg、1×1010~1×1011細胞/kg、1×1011~1×1012細胞/kgを含み得る。例えば、投与のための寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの用量は、約0.01×109細胞/kg、0.02×109細胞/kg、0.03×109細胞/kg、0.04×109細胞/kg、0.05×109細胞/kg、0.06×109細胞/kg、0.07×109細胞/kg、0.08×109細胞/kg、0.09×109細胞/kg、0.1×109細胞/kg、0.2×109細胞/kg、0.21×109細胞/kg、0.22×109細胞/kg、0.23×109細胞/kg、0.24×109細胞/kg、0.25×109細胞/kg、0.26×109細胞/kg、0.27×109細胞/kg、0.28×109細胞/kg、0.29×109細胞/kg、0.3×109細胞/kg、0.4×109細胞/kg、0.5×109細胞/kg、0.6×109細胞/kg、0.7×109細胞/kg、0.8×109細胞/kg、0.9×109細胞/kg、1.0×109細胞/kg、1.5×109細胞/kg、2.0×109細胞/kg、2.5×109細胞/kg、3.0×109細胞/kg、3.5×109細胞/kg、4.0×109細胞/kg、4.5×109細胞/kg、5.0×109細胞/kg、5.5×109細胞/kg、6.0×109細胞/kg、6.5×109細胞/kg、7.0×109細胞/kg、7.5×109細胞/kg、8.0×109細胞/kg、8.5×109細胞/kg、9.0×109細胞/kg、9.5×109細胞/kg、10.0×109細胞/kg、または25.0×109細胞/kgであり得る。
【0270】
一部の場合には、寛容化ワクチンまたは前処置レジメン用量は、少なくとも約1×104細胞/kg、5×104細胞/kg、1×105細胞/kg、5×105細胞/kg、1×106細胞/kg、5×106細胞/kg、1×107細胞/kg、5×107細胞/kg、1×108細胞/kg、2×108細胞/kg、3×108細胞/kg、4×108細胞/kg、5×108細胞/kg、6×108細胞/kg、7×108細胞/kg、8×108細胞/kg、9×108細胞/kg、1×109細胞/kg、1×1010細胞/kg、またはそれを超える用量を含み得る。
【0271】
本明細書における方法は、レシピエントの体重1kg当たり少なくともまたは少なくとも約0.25×109の細胞(例えば、アポトーシス性ドナー白血球(ADL)、例えばECDI処理細胞、例えばECDI処理白血球、またはアポトーシス性間葉系間質細胞)を投与するステップを含み得る。例えば、レシピエントの体重1kg当たり少なくともまたは少なくとも約1×107、1×108、0.25×109、0.50×109、0.75×109、1.00×109、1.25×109、1.50×109、1.75×109もしくは2×109の細胞(例えば、ECDI処理細胞、例えばECDI処理白血球)である、ECDI処理細胞が投与され得る。
【0272】
細胞は、白血球、例えば、脾細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、幹細胞由来白血球またはこれらの組合せを含み得る。脾細胞、PBMC、幹細胞由来白血球またはこれらの組合せは、B細胞またはBリンパ球を含み得る。細胞は、初代細胞、ex vivoで増幅された細胞、細胞系の細胞、またはこれらの組合せを含み得る。細胞は、間葉系間質細胞を含み得る。
【0273】
各用量を投与するための寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンの細胞が、輸注に好適な体積に浮遊していることもある。例えば、細胞は、約0.1ml、0.2ml、0.3ml、0.4ml、0.5ml、0.6ml、0.7ml、0.8ml、0.9ml、1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、11ml、12ml、13ml、14ml、15ml、16ml、17ml、18ml、19ml、20ml、21ml、22ml、23ml、24ml、25ml、26ml、27ml、28ml、29ml、30ml、31ml、32ml、33ml、34ml、35ml、36ml、37ml、38ml、39ml、40ml、41ml、42ml、43ml、44ml、45ml、46ml、47ml、48ml、49ml、50ml、60ml、70ml、80ml、90ml、100ml、200ml、300ml、400mlまたは500mlの体積に浮遊していることがある。例えば、各用量を投与するための寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの細胞は、約0.1ml~1ml、1ml~10ml、10ml~50ml、50ml~100ml、100ml~200ml、200ml~300ml、300ml~400ml、または400ml~500mlの体積に浮遊していることもある。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの75×106細胞が、0.5mlの体積に浮遊していることもある。
【0274】
寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンを、レシピエントの体重に依存して変わる体積で(例えば、静脈内注入により)投与することができる。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、レシピエントの体重1kg当たり少なくともまたは少なくとも約0.01ml、0.1ml、0.5ml、1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、10ml、20ml、30ml、40mlまたは50ml、例えば、レシピエントの体重1kg当たり少なくともまたは少なくとも約0.01~0.1、0.1~1、1~2、2~3、3~4、4~5、1~5、5~10、10~20、20~30、30~40、または40~50mlの体積で、静脈内投与され得る。一部の場合には、寛容化ワクチン(例えば、ECDI処理細胞を含む)は、レシピエントの体重1kg当たり約7mlの体積で静脈内投与される。
【0275】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのブースター用量は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの初回用量より少ない細胞を含み得る。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンのブースター用量または後続の用量は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの初回用量または先行する用量より約1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%もしくは75%少ないまたはそれ未満の細胞を含み得る。
【0276】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの細胞は、対象への投与後に循環半減期を有し得る。一部の場合には、本明細書に記載の寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、少なくともまたは少なくとも約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、18、24、36、48、60または72時間の循環半減期を有し得る。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメン細胞の循環半減期は、0.1~0.5、0.5~1.0、1.0~2.0、1.0~3.0、1.0~4.0、1.0~5.0、5~10、10~15、15~24、24~36、36~48、48~60、もしくは60~72時間、または約0.1~0.5、0.5~1.0、1.0~2.0、1.0~3.0、1.0~4.0、1.0~5.0、5~10、10~15、15~24、24~36、36~48、48~60、もしくは60~72時間、であり得る。一部の場合には、本明細書に記載の寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、少なくともまたは少なくとも約3時間の循環半減期を有し得る。
【0277】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの細胞を、それらの循環半減期を向上させるように処理することができる。そのような処理は、タンパク質、例えばCD47、で細胞をコーティングすることを含む。その循環半減期を向上させるように処理される細胞は、非アポトーシス性細胞であることがある。その循環半減期を向上させるように処理される細胞は、アポトーシス性細胞であることもある。あるいは、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンにおける細胞を、その循環半減期を向上させるように遺伝子改変すること(例えば、そのゲノム内にCD47などの導入遺伝子を挿入すること)ができる。その循環半減期を向上させるように遺伝子改変される細胞は、非アポトーシス性細胞であることがある。その循環半減期を向上させるように遺伝子改変される細胞は、アポトーシス性細胞であることもある。
【0278】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、グラフトレシピエントを寛容化してグラフト拒絶反応を防止または遅延させるため、移植において、例えば異種移植においてまたは同種移植において、有利であり得る。免疫抑制療法(例えば、1つまたは複数の免疫調節分子)を使用せずに、寛容化または前処置レジメンをグラフトレシピエントにもたらすことができる。しかし、一部の場合には、移植拒絶反応を防止、減少または遅延させるために、他の免疫抑制療法を寛容化ワクチンと組み合わせて使用することができる。
【0279】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンをアジュバント(例えば、1つまたは複数の免疫調節分子)とともにまたはなしで投与することができる。一部の場合には、アジュバントは、抗原提示細胞の活性化および成熟を阻害することにより寛容化ワクチンの免疫寛容原性を増強する。
【0280】
一部の実施形態では、免疫調節分子は、T細胞受容体(TCR)、CD3e、FK506結合タンパク質12(FKBP12)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、CD40L(CD154)、CD40、誘導性共刺激(ICOS)、IL-2、TNF-α、IL-6、IL-7、CD2、CD20、CD52、α-4インテグリン、mTOR、DNA合成、炎症促進性経路の分子(例えば、サイトカイン)、α1-アンチトリプシン、NFkB、またはこれらの任意の組合せを標的とすることができる。一部の実施形態では、免疫調節分子は、NFkB阻害剤(例えば、デヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ))である。一部の実施形態では、1つまたは複数の免疫調節分子は、B細胞を標的とすることができる(例えば、B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)。一部の実施形態では、B細胞を標的とする生物製剤は、抗CD20 mAb(例えば、リツキシマブ)または他のB細胞枯渇抗体であり得る。一部の実施形態では、免疫調節分子は、MHC/TCR相互作用遮断物質、非選択的枯渇剤、カルシニューリン阻害剤、共刺激シグナル遮断物質、サイトカイン遮断物質、B細胞をモジュレートする薬剤、リンパ球枯渇剤、細胞接着阻害剤、IL-2シグナル伝達阻害剤、細胞周期ブロッカー、またはこれらの任意の組合せであり得る。例えば、MHC/TCR相互作用遮断物質は、抗abTCR mAb T10B9であり得る。例えば、非選択的枯渇剤は、抗CD3 mAb(OKT3)または抗胸腺細胞グロブリン(ATG)であり得る。例えば、カルシニューリン阻害剤は、シクロスポリンまたはタクロリムスであり得る。例えば、共刺激シグナル遮断物質は、抗CTLA-4 mAb、アバタセプト、イピリムマブ、抗PD-1(例えば、ペムブロリズマブ)、抗PD-L1(例えば、MPDL3280A)、抗CD154 mAb、Fcが操作された抗CD40L抗体、抗CD40 mAb、または抗ICOS mAbであり得る。例えば、サイトカイン遮断物質は、抗CD25 mAb(例えば、ダクリズマブもしくはバシリキシマブ)、抗TNF(エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、およびゴリムマブ)、抗IL-6/IL-6R mAb(例えば、トシリズマブ、アクテムラ、クラザキズマブ、ALD518、シルツキシマブ、エルシリモマブ、シルクマブ、サリルマブ、オロキズマブ)、または抗IL-7 mAbであり得る。例えば、リンパ球枯渇剤は、抗CD2 mAb、IgG1との融合タンパク質(例えば、アレファセプト)、抗CD20 mAb(例えば、リツキシマブ)、または抗CD52 mAb(例えば、アレムツズマブ)であり得る。例えば、細胞接着阻害剤は、抗very large antigen 4(VLA4)(例えば、ナタリズマブ)であり得る。例えば、mTOR阻害剤は、シロリムス(ラパマイシン)またはエベロリムスまたは任意の他のmTOR阻害剤であり得る。例えば、細胞周期ブロッカーは、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)またはアザチオプリンであり得る。一部の実施形態では、免疫調節分子は、T細胞再循環阻害剤(例えば、FTY720および他のスフィンゴシン1リン酸(S1P)受容体アゴニスト)であり得る。
【0281】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを、T細胞活性化を阻害する1つまたは複数の免疫調節分子とともにまたはなしで投与することができる。T細胞活性化を阻害する免疫調節分子は、抗CD40または抗CD40L(CD154)剤であり得る。抗CD40または抗CD40L剤は、抗体、例えばアンタゴニスト抗体であり得る。抗CD40または抗CD40L抗体は、Fab’抗CD40Lモノクローナル抗体断片CDP7657であり得る。抗CD40または抗CD40L抗体は、FcRが操作された、Fcサイレント抗CD40Lモノクローナルドメイン抗体、Fab’抗CD40L抗体、または別様にFcが操作された抗CD40L抗体であり得る。抗CD40または抗CD40L剤は、2C10、2C10R4、ASKP1240、4D11、ブレセルマブ、BI-655064、HCD122、CFZ533、ch5D12、FFP104、CDP7657、BG9588、ルプリズマブ、トラリズマブ、IDEC-131、ダピロリズマブ、レトリズマブ、BMS-986004、VIB4920、またはMEDI4920であり得る。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、本明細書に記載の1つまたは複数のさらなる免疫調節分子とともに、例えば、B細胞を標的とする生物製剤(例えば、B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)、mTOR阻害剤、TNF-アルファ阻害剤、IL-6阻害剤、α1ーアンチトリプシン、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)、補体C3もしくはC5阻害剤、IFN-γ、NFκB阻害剤、ビタミンD3、siCD40、コバルトプロトポルフィリン、インスリンB9-23、表面抗原分類タンパク質(例えば、CD46、CD55またはCD59)、これらの任意の組合せ、またはそれらの任意の断片のうちの1つまたは複数とともに、さらに投与することができる。一部の場合には、NFκB阻害剤は、クルクミン、トリプトリド、Bay-117085、またはこれらの組合せである。B細胞を標的とする生物製剤の非限定的な例としては、リツキシマブ、抗CD20抗体が挙げられる。一部の場合には、前処置レジメンの一部としての投与のための免疫調節分子を同種移植片または異種移植片に適応させることができる。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、異種移植の際にB細胞枯渇抗体とともに投与される。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、同種移植の際にはB細胞枯渇抗体とともに投与する必要がない。
【0282】
寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンを、MMF(ミコフェノール酸モフェチル(Cellcept))、ATG(抗胸腺細胞グロブリン)、抗CD154(CD40L)、アレムツズマブ(Campath)、B細胞標的化剤(例えば、B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)、抗IL-6R抗体(サリルマブ、トシリズマブ、アクテムラ)、抗IL-6抗体(クラザキズマブ、ALD518、シルツキシマブ、エルシリモマブ、シルクマブ、オロキズマブ)、CTLA4-Ig(Abatacept/Orencia)、ベラタセプト(LEA29Y)、シロリムス(Rapamune)、タクロリムス(Prograf)、ダクリズマブ、バシリキシマブ(Simulect)、インフリキシマブ(Remicade)、シクロスポリン、デオキシスパガリン、可溶性補体1、コブラ毒因子、コンプスタチン、抗C5抗体(エクリズマブ/Soliris)、メチルプレドニゾロン、FTY720、エベロリムス、抗CD154-Ab、レフルノミド、抗IL-2R-Ab、ラパマイシン、抗CXCR3抗体、抗ICOS抗体、抗OX40抗体、および抗CD122抗体、ヒト抗CD154モノクローナル抗体、CD40アンタゴニスト、およびCD40L(CD154)アンタゴニストなどの、1つもしくは複数の免疫調節分子とともに、またはそのような1つもしくは複数の免疫調節分子に加えて、投与することができる。B細胞を標的とする生物製剤の非限定的な例としては、Rituximab、抗CD20抗体が挙げられる。
【0283】
寛容化ワクチン/レジメンまたは前処置レジメンを、1つもしくは複数の免疫抑制剤/薬とともに、または1つもしくは複数の免疫抑制剤/薬に加えて、投与することができる。例えば、1つまたは複数の免疫抑制剤/薬を、誘導療法にまたは維持療法に使用することができる。同じまたは異なる薬物を誘導および維持段階中に使用することができる。例えば、ダクリズマブ(Zenapax)が誘導療法に使用され、タクロリムス(Prograf)およびmTOR阻害剤(例えば、シロリムス、ラパマイシン、エベロリムス)が維持療法に使用される。別の例では、ダクリズマブ(Zenapax)が誘導療法に使用され、低用量タクロリムス(Prograf)および低用量mTOR阻害剤(例えば、シロリムス、ラパマイシン、エベロリムス)が維持療法に使用される。全身照射、胸腺照射、ならびに脾全および/または部分摘出術を含むがこれらに限定されない、非投薬レジメンを使用して、免疫抑制を実現することもできる。これらの技法を、1つまたは複数の免疫抑制薬または剤と組み合わせて使用することもできる。
【0284】
一部の実施形態では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを、本明細書で開示される少なくとも1つの抗CD40/CD40L剤とともに投与することができる。一部の実施形態では、抗CD40/CD40L剤は、移植の前に投与される本明細書に記載の前処置レジメンの一部である。一部の場合には、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、少なくとも1つの抗CD40/CD40L剤と同時に、またはその前にもしくは後に投与される。一部の実施形態では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、1つもしくは複数のさらなる免疫抑制剤、ならびに/または抗CD40剤(例えば、抗体)および/もしくは抗CD40L(CD154)剤との併用CD40:CD40L遮断物質とともに、またはその前もしくは後に投与することもできる。追加の免疫抑制剤を、例えば、対象における寛容化ワクチンの免疫寛容原性有効性を増強するために、対象に投与することができる。追加の免疫抑制剤は、抗CD40剤もしくは抗CD40L(CD154)剤(例えば、抗CD40抗体)、B細胞標的化剤(例えば、B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)、mTOR阻害剤、TNF-アルファ阻害剤、IL-6阻害剤、α1-アンチトリプシン、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)、補体C3もしくはC5阻害剤、IFN-γ、NFκB阻害剤、ビタミンD3、siCD40、コバルトプロトポルフィリン、インスリンB9-23、表面抗原分類タンパク質(例えば、CD46、CD55またはCD59)、これらの任意の組合せ、またはそれらの任意の断片を含み得る。一部の場合には、NFκB阻害剤は、デヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ)、クルクミン、トリプトリド、Bay-117085、またはこれらの組合せである。B細胞を標的とする生物製剤の非限定的な例としては、Rituximab、抗CD20抗体が挙げられる。これらの追加の免疫抑制剤のいずれかを移植の前および/または後に対象に投与することができる(
図4)。
【0285】
追加の免疫抑制剤を寛容化ワクチンもしくは前処置レジメンの投与の前、投与の後および/または投与中に投与することができる。一部の場合には、追加の免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与を基準にして-100日目~0日目の間に、例えば、-90日目、-80日目、-70日目、-60日目、-50日目、-40日目、-30日目、-20日目、-15日目、-14日目、-13日目、-12日目、-11日目、-10日目、-9日目、-8日目、-7日目、-6日目、-5日目、-4日目、-3日目、-2日目、-1日目または0日目に投与され得る。一部の場合には、追加の免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンに付随して投与され得る。一部の場合には、追加の免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与を基準にして-100~-50、-50~-40、-40~-30、-30~-20、-20~-10、-10~-5、-10~-1、-7~-1、-10~0、もしくは-7~0日目に、または約-100~-50、-50~-40、-40~-30、-30~-20、-20~-10、-10~-5、-10~-1、-7~-1、-10~0、もしくは-7~0日目に、投与され得る。
【0286】
一部の場合には、追加の免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与を基準にして0日目~100日目の間に、例えば、100日目、90日目、80日目、70日目、60日目、50日目、40日目、30日目、28日目、21日目、20日目、15日目、14日目、13日目、12日目、11日目、10日目、9日目、8日目、7日目、6日目、5日目、4日目、3日目、2日目または1日目に投与され得る。例えば、免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与を基準にして100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、21~1、14~1、7~1、21~0、14~0、もしくは7~0日目に、または約100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、21~1、14~1、7~1、21~0、14~0、もしくは7~0日目に、投与され得る。
【0287】
一部の場合には、追加の免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与を基準にして0日目~300日目の間に、例えば、300日目、200日目、100日目、90日目、80日目、70日目、60日目、50日目、40日目、30日目、20日目、15日目、14日目、13日目、12日目、11日目、10日目、9日目、8日目、7日目、6日目、5日目、4日目、3日目、2日目または1日目に投与され得る。例えば、免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与を基準にして300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、7~1日目に、または約300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、7~1日目に、投与され得る。
【0288】
一部の場合には、追加の免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与を基準にして0日目~600日目の間に、例えば、600日目、500日目、400日目、300日目、200日目、100日目、90日目、80日目、70日目、60日目、50日目、40日目、30日目、20日目、15日目、14日目、13日目、12日目、11日目、10日目、9日目、8日目、7日目、6日目、5日目、4日目、3日目、2日目または1日目に投与され得る。例えば、免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与を基準にして600~500日目、500~400日目、400~300、300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、7~1日目に、または約600~500日目、500~400日目、400~300、300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、7~1日目に、投与され得る。
【0289】
一部の場合には、追加の免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与を基準にして0日目~1000日目の間に、例えば、1000日目、900日、800日、700日、600日目、500日目、400日目、300日目、200日目、100日目、90日目、80日目、70日目、60日目、50日目、40日目、30日目、20日目、15日目、14日目、13日目、12日目、11日目、10日目、9日目、8日目、7日目、6日目、5日目、4日目、3日目、2日目または1日目に投与され得る。例えば、免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与を基準にして1000~900、900~800、800~700、700~600、600~500日目、500~400日目、400~300、300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、7~1日目に、または約1000~900、900~800、800~700、700~600、600~500日目、500~400日目、400~300、300~200、200~100、100~50、50~40、40~30、30~20、20~10、10~5、7~1日目に、投与され得る。
【0290】
一部の場合には、追加の免疫抑制剤は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンが投与される日に投与され得る。他の場合には、追加の免疫抑制は、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与の前および後に投与され得る。例えば、シクロホスファミドが寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与後3日目または約3日目に投与され得る。
【0291】
免疫寛容原性有効性調節因子(例えば、シクロホスファミド)を5~100mg/kg/日または約5~100mg/kg/日の用量で投与することができる。単位「mg/kg/日」は、1日当たりの対象の体重1kg当たりの投与される免疫寛容原性調節因子のミリグラム数を指すことができる。一部の場合には、免疫寛容原性有効性調節因子(例えば、シクロホスファミド)は、20mg/kg/日~100mg/kg/日、30mg/kg/日~90mg/kg/日、40mg/kg/日~80mg/kg/日、50mg/kg/日~70mg/kg/日、50mg/kg/日~60mg/kg/日、もしくは40mg/kg/日~60mg/kg/日、または約20mg/kg/日~100mg/kg/日、30mg/kg/日~90mg/kg/日、40mg/kg/日~80mg/kg/日、50mg/kg/日~70mg/kg/日、50mg/kg/日~60mg/kg/日、もしくは40mg/kg/日~60mg/kg/日の用量で、投与され得る。
【0292】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、細胞、臓器および/または組織の拒絶反応を防止または遅延させるために必要とされる免疫抑制の用量を低減させることおよび/または期間を短縮することができる。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、維持免疫抑制を必要とすることなく細胞、臓器および/または組織の生存を延長することができる。
【0293】
一部の場合には、移植レシピエントは、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与後に免疫抑制を必要としないことがある。
【0294】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、必要とされる免疫抑制の用量を少なくともまたは少なくとも約5%低減させることができる。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、免疫抑制剤の必要用量を少なくともまたは少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低減させることができる。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、免疫抑制剤の必要用量を少なくともまたは少なくとも約5~10、5~25、25~50、50~75、75~85、85~90、90~95、または95~100%低減させることができる。本明細書で使用される場合の用語「低減する/させる」およびその文法的等価表現は、1つまたは複数の細胞、臓器および/または組織がレシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)に移植されるときの免疫抑制の必要用量と比較して少ない免疫抑制を使用することを指すことがある。用語「低減する/させる」は、1つまたは複数の細胞、臓器および/または組織がレシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)に移植されるときの免疫抑制薬の必要用量と比較して少ない免疫抑制薬または剤を使用することを指すこともある。
【0295】
レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)は、免疫抑制剤の低減用量を、移植後、少なくともまたは少なくとも約1、5、7、10、14、20、21、28、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、900または1,000日間、例えば、少なくともまたは少なくとも約1~5、5~10、10~20、20~30、30~60、60~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、900~1,000日間、必要とすることもある。レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)は、免疫抑制剤の低減用量を、移植後、少なくともまたは少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35または36ヶ月間、例えば、移植後、少なくともまたは少なくとも約1~2、2~3、3~6、6~9、9~12、12~18、18~24、24~30、30~36ヶ月間、必要とすることもある。レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)は、免疫抑制剤の低減用量を、移植後、少なくともまたは少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または30年間、例えば、移植後、少なくともまたは少なくとも約1~2、2~3、3~4、4~5、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30年間、必要とすることもある。一部の場合には、レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)は、免疫抑制剤の低減用量を最長でレシピエントの生涯にわたって必要とすることもある。
【0296】
レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)は、免疫抑制を、移植後、少なくともまたは少なくとも約1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、900または1,000日間、例えば、少なくともまたは少なくとも約1~5、5~10、10~20、20~30、30~60、60~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、900~1,000日間、必要としないこともある。レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)は、免疫抑制剤の低減用量を、移植後、少なくともまたは少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35または36ヶ月間、例えば、移植後、少なくともまたは少なくとも約1~2、2~3、3~6、6~9、9~12、12~18、18~24、24~30、30~36ヶ月間、必要とすることもある。レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)は、免疫抑制剤の低減用量を、移植後、少なくともまたは少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または30年間、例えば、少なくともまたは少なくとも約1~2、2~3、3~4、4~5、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30年間、必要とすることもある。一部の場合には、レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)は、免疫抑制を最長でレシピエントの生涯にわたって必要としないこともある。
【0297】
対象(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類)における移植されたグラフト(例えば、同種グラフトまたは異種グラフト)の生存を延長するための非限定的な例示的手法は、
図3および
図4に示されている。一部の実施形態では、対象(グラフトレシピエント)は、グラフトドナーまたは別のドナーに由来するアポトーシス性細胞の注入(例えば、静脈内注入)(例えば、一過性免疫抑制の援護のもとでアポトーシス性ドナー白血球(ADL)を用いる寛容化ワクチン接種)を受ける。一部の場合には、同じドナーが、移植のための同種グラフトまたは異種グラフト(例えば、膵島、腎臓)も、寛容化ワクチンとしての細胞(例えば、脾細胞、脾B細胞、末梢血白血球、末梢血B細胞、アポトーシス性白血球、またはこれらの組合せ)も、提供することがある。
【0298】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの細胞は、移植に使用される細胞、臓器および/または組織と同じ遺伝子型および/または表現型を有し得る。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンと移植片の遺伝子型および/または表現型が異なることもある。移植レシピエントに使用される寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、移植グラフトドナーからの細胞を含むことがある。移植レシピエントに使用される寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、移植のグラフトとは遺伝学的におよび/または表現型的に異なる細胞を含むことがある。一部の場合には、移植レシピエントに使用される寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、移植グラフトドナーからの細胞と、移植グラフトとは遺伝学的におよび/または表現型的に異なる細胞とを含むこともある。移植グラフトとは遺伝学的におよび/または表現型的に異なる細胞は、移植グラフトドナーの同じ種の動物からのものであり得る。
【0299】
一部の場合には、遺伝子改変細胞を含む寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、免疫応答を低減、阻害、または消失させることができる。例えば、遺伝子改変は、免疫細胞エフェクター機能を低下させることができ、免疫細胞増殖を減少させることができ、または免疫細胞における細胞溶解性エフェクター分子、例えばグランザイムBおよびCD107アルファ、の存続を減少させることおよび/もしくは発現を低減させることができる。免疫細胞は、単球および/またはマクロファージであることがある。免疫細胞は、T細胞および/またはB細胞であることもある。一部の場合には、IFN-γなどのT細胞由来サイトカインは、IFN-γの分泌によってマクロファージを活性化することができる。一部の場合には、T細胞活性化は阻害され、マクロファージも阻害される原因になり得る。
【0300】
これらの寛容化細胞ワクチンのいずれかの免疫寛容原性能力を、次のものの1つまたは複数を細胞の表面にカップリングさせることによってさらに最適化することができる:IFN-γ、NF-κB阻害剤(例えば、デヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ)、クルクミン、トリプトリド、Bay-117085)、ビタミンD3、コバルトプロトポルフィリン、インスリンB9-23、または宿主抗原提示細胞および宿主リンパ球の機能を改変する本明細書で開示される他の免疫調節分子。
【0301】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、アポトーシス性細胞を含むことがあり、ドナー反応性細胞のアポトーシス死を誘発するそれらの表面分子、例えばFasL、PD-L1、ガレクチン-9、CD8アルファ、を提示するように操作されたドナー細胞により補完されることもある。
【0302】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、予定レシピエントの体重1kg当たり、0.001~約5.0または約0.001~約5.0、例えば、0.001~1.0または約0.001~1.0の、エンドトキシン単位を含み得る。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、予定レシピエントの体重1kg当たり0.01~5.0、0.01~4.5、0.01~4.0、0.01~3.5、0.01~3.0、0.01~2.5、0.01~2.0、0.01~1.5、0.01~1.0、0.01~0.9、0.01~0.8、0.01~0.7、0.01~0.6、0.01~0.5、0.01~0.4、0.01~0.3、0.01~0.2、もしくは0.01~0.1、または約0.01~5.0、0.01~4.5、0.01~4.0、0.01~3.5、0.01~3.0、0.01~2.5、0.01~2.0、0.01~1.5、0.01~1.0、0.01~0.9、0.01~0.8、0.01~0.7、0.01~0.6、0.01~0.5、0.01~0.4、0.01~0.3、0.01~0.2、もしくは0.01~0.1の、エンドトキシン単位を含み得る。
【0303】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、約50,000の凍結されて解凍されたヒト末梢血単核細胞が、寛容化ワクチンの約160,000細胞(例えば、ブタ細胞)とともにインキュベートされたとき、0.001pg/ml~10.0pg/ml、または約0.001pg/ml~10.0pg/ml、例えば、0.001pg/ml~1.0pg/ml、または約0.001pg/ml~1.0pg/mlの、IL-1ベータの放出を誘発することができる。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、約50,000の凍結されて解凍されたヒト末梢血単核細胞が、寛容化ワクチンの約160,000細胞(例えば、ヒト細胞またはブタ細胞)とともにインキュベートされたとき、0.001~10.0、0.001~5.0、0.001~1.0、0.001~0.8、0.001~0.2もしくは0.001~0.1pg/ml、または約0.001~10.0、0.001~5.0、0.001~1.0、0.001~0.8、0.001~0.2もしくは0.001~0.1pg/mlの、IL-1ベータの放出を誘発する。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、約50,000の凍結されて解凍されたヒト末梢血単核細胞が、寛容化ワクチンの約160,000細胞(例えば、ヒト細胞またはブタ細胞)とともにインキュベートされたとき、0.001~2.0pg/ml、または約0.001~2.0pg/ml、例えば、0.001~0.2pg/ml、または約0.001pg/ml~0.2pg/mlの、IL-6の放出を誘発することができる。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、約50,000の凍結されて解凍されたヒト末梢血単核細胞が、寛容化ワクチンの約160,000細胞(例えば、ヒト細胞またはブタ細胞)とともにインキュベートされたとき、0.001~2.0、0.001~1.0、0.001~0.5もしくは0.001~0.1pg/ml、または約0.001~2.0、0.001~1.0、0.001~0.5もしくは0.001~0.1pg/mlの、IL-6の放出を誘発することができる。
【0304】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、37℃での4時間の放出後インキュベーションまたは約4時間の放出後インキュベーション後に、60%を超えるまたは約60%を超える、例えば、85%を超えるまたは約85%を超える、Annexin V陽性のアポトーシス性細胞を含み得る。例えば、寛容化ワクチンは、37℃での約4時間の放出後インキュベーション後に、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%を超えるAnnexin V陽性のアポトーシス性細胞を含む。
【0305】
有効量
【0306】
本開示の組成物(例えば、アポトーシス性白血球)は、有効量で投与される。「有効量」は、単独でまたはさらなる用量と一緒に所望の応答を生じさせる組成物のその量である。移植の場合、所望の応答は、移植片拒絶反応の阻害、または移植片生存の増加である。慢性腎臓疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、がんなどの、特定の疾患を処置する場合、所望の応答は、疾患の進行の阻害である。これは、疾患の進行を一時的に緩徐化することをもっぱら含み得るが、より好ましくは、疾患の進行を永久に停止させることを含む。これを通例の方法によりモニタリングすることができる。
【0307】
そのような量は、もちろん、処置される特定の状態、障害の重症度、具体的な化合物の活性、投与の経路、組成物のクリアランス率、処置期間、組成物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、対象の年齢、体重、性別、食事および総体的な健康、ならびに医術および科学において周知のこれらに類する因子に依存し得る。「治療有効量」を決定する上で考慮される様々な一般的考慮事項は、当業者には公知であり、例えば、Gilman
et al, eds., Goodman And Gilman’s: The Pharmacological Bases of Therapeutics, 8th ed., Pergamon Press, 1990;およびRemington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990に記載されている。これらの因子は当業者には周知であり、単に通例の実験だけでこれらに因子に対処することができる。使用される個々の成分またはそれらの組合せの最大用量、すなわち、正当な医学的判断に従って最高安全用量が、一般に好ましい。上述の方法で使用される組成物は、好ましくは、無菌であり、患者への投与に好適な重量または体積の単位で所望の応答を生じさせる活性薬剤の有効量を含有する。
【0308】
本明細書で開示される組成物(例えば、アポトーシス性白血球)を投与するステップを含む、本明細書で開示される方法の有効性を、グラフト生存またはグラフト拒絶反応の防止を評価する際に一般に使用される様々な評価項目により評価することができ、そのような評価項目としては、a)移植片に対する免疫応答のレベル低下(B細胞媒介免疫応答、より詳細にはドナー特異的抗体、によって少なくとも一部は媒介されると考えられる)もしくはグラフト対宿主病(GVHD)の発生率低下、b)移植片に対する免疫応答の開始もしくは進行の遅延、c)移植片に対する免疫応答の開始もしくは進行のリスク低下、d)免疫寛容原性APCのレベルの上昇、e)Tregのレベルの上昇、f)Tr1細胞のレベルの上昇、g)IL-10、TGFβなどの、抗炎症性サイトカインのレベルの上昇、またはh)これらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0309】
別の実施形態では、本明細書に記載の方法は、移植を受けるヒト対象群における奏効率を、追加の免疫抑制を用いてまたは用いずに有意に上昇させることができる。奏効率は、処置に奏効した移植レシピエントのパーセンテージと定義される。
自己免疫疾患に対する寛容の誘導
【0310】
本明細書で提供される組成物、方法、キットおよび系を、自己免疫障害を予防および/または処置するために利用することができる。用語「自己免疫障害」、「自己免疫疾患」、「自己免疫状態」、およびこれらの文法的等価表現は、本明細書で使用される場合、同義的に使用され得る。一部の場合には、本明細書で提供される寛容ワクチンを自己抗原ペプチド、自己抗原、または他の細胞担体に架橋させることができ、自己免疫障害に対する寛容療法として使用することができる。一部の場合には、細胞担体は、アポトーシス性細胞担体である。一部の場合には、細胞担体は、同系アポトーシス性細胞担体である。
【0311】
本明細書に記載の寛容化ワクチンを細胞担体(例えば、自己抗原、自己抗原ペプチド、アポトーシス性細胞担体)とともに使用して、自己免疫状態の処置に対する抗原特異的T細胞寛容を誘導することができる。理論により拘束されないが、担体を伴うまたは伴わない寛容化ワクチンは、宿主脾臓抗原提示細胞により取り込まれ、プロセシングされ、免疫寛容原性様式で提示されることによって、調節性T細胞を誘導すること、および免疫抑制性サイトカイン(例えば、IL-4、IL-10、IL-13、TGF-β)の分泌を誘導することができる。
【0312】
自己免疫障害の非限定的な例としては、炎症、抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、自己免疫性血管炎、セリアック病、自己免疫性甲状腺炎、輸血後免疫化、母胎不適合、輸血反応、免疫欠損、例えばIgA欠損症、分類不能免疫不全症、薬物誘発性ループス、真性糖尿病、I型糖尿病、II型糖尿病、若年発症糖尿病、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、免疫不全、アレルギー、喘息、乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、慢性皮膚病、筋萎縮性側索硬化症、化学療法による損傷、グラフト対宿主病、骨髄移植拒絶反応、強直性脊椎炎、アトピー性湿疹、天疱瘡、ベーチェット病、慢性疲労症候群、線維筋痛症、化学療法による損傷、重症筋無力症、糸球体腎炎、アレルギー性網膜炎、全身性硬化症、亜急性皮膚エリテマトーデス、皮膚エリテマトーデス、例えば凍瘡状エリテマトーデスなど、シェーグレン症候群、自己免疫性腎炎、自己免疫性血管炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性心臓炎、自己免疫性脳炎、自己免疫介在性血液疾患、lc-SSc(限局皮膚硬化型強皮症)、dc-SSc(びまん皮膚硬化型強皮症)、自己免疫性甲状腺炎(AT)、グレーブス病(Grave’s disease)(GD)、重症筋無力症、多発性硬化症(MS)、強直性脊椎炎、移植拒絶反応、免疫老化、リウマチ性/自己免疫疾患、混合性結合組織病、脊椎関節症、乾癬、乾癬性関節炎、筋炎、強皮症、皮膚筋炎、自己免疫性血管炎、混合性結合組織病、特発性血小板減少性紫斑病、クローン病、ヒトアジュバント病、変形性関節症、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、特発性炎症性ミオパチー、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、甲状腺炎、免疫介在性腎疾患、中枢または末梢神経系の脱髄疾患、特発性脱髄性多発神経炎、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、肝胆汁性疾患、感染性もしくは自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、硬化性胆管炎、炎症性腸疾患(クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)を含む)、グルテン感受性腸疾患、ウィップル病、自己免疫性もしくは免疫介在性皮膚疾患、水疱性皮膚疾患、多形紅斑、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、蕁麻疹、肺の免疫疾患、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、過敏性肺炎、移植関連疾患、グラフト拒絶反応もしくはグラフト対宿主病、乾癬性関節炎、乾癬、皮膚炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、全身性強皮症および硬化症、炎症性腸疾患に関連する反応、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、脳炎、ぶどう膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー状態、湿疹、喘息、T細胞浸潤および慢性炎症反応を伴う状態、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、アレルギー性脳脊髄炎、サイトカインおよびTリンパ球により媒介される急性および遅延型過敏症に関連する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例えばウェゲナー肉芽腫症など、顆粒球減少症、血管炎(例えば、ANCAなど)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、免疫性溶血性貧血、例えば自己免疫性溶血性貧血(AIHA)など、悪性貧血、赤芽球ろう(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球遊出を伴う疾患、中枢神経系(CNS)炎症性障害、多臓器損傷症候群、重力筋無力症(mysathenia gravis)、抗原-抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、ランバート・イートン筋無力症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome)、スティーブンス・ジョンソン症候群、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌異常、ライター病、スティフ・マン症候群、巨細胞動脈炎、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発性ニューロパチーまたはIgM介在性ニューロパチー、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、精巣および卵巣の自己免疫疾患、例えば自己免疫性精巣炎および卵巣炎など、原発性甲状腺機能低下症、自己免疫性内分泌疾患、例えば自己免疫性甲状腺炎など、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、アジソン病、グレーブス病、多腺性自己免疫性症候群(または多腺性内分泌異常症候群)、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、リンパ球様間質性肺炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植症例)対NSIP、ギラン・バレー症候群、大血管炎(例えば、リウマチ性多発筋痛症および巨細胞(高安)動脈炎など)、中型血管炎(例えば、川崎病および結節性多発動脈炎など)、強直性脊椎炎、ベルジェ病(IgA腎症)、急速進行性糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変、セリアックスプルー(グルテン腸症)、クリオグロブリン血症、ならびに筋萎縮性側索硬化症(ALS)が挙げられる。一部の場合には、自己免疫疾患は、SLE、関節リウマチ、またはセリアック病である。
医薬組成物
【0313】
対象における投与のためのキットおよび寛容化ワクチンを含む組成物または前処置レジメンが、本明細書で提供される。一部の実施形態では、寛容化ワクチンもしくは前処置レジメンまたはそれらの成分(例えば、アポトーシス性ドナー白血球、例えば、ECDI固定脾細胞、もしくは間葉系間質細胞)は、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と併せられる。使用され得る賦形剤は、食塩水である。使用され得る賦形剤は、リン酸緩衝食塩水(PBS)である。したがって、これらの医薬組成物を、移植を必要とする患者を処置するために使用することができる。
【0314】
本開示の組成物は、緩衝剤、例えば、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロースもしくはデキストランなど;マンニトール;タンパク質;ポリペプチドもしくはアミノ酸、例えばグリシン;抗酸化剤;キレート剤、例えば、EDTAもしくはグルタチオン;保存剤;またはこれらの組合せを含み得る。本発明の組成物を静脈内投与(例えば、静脈内注射または注入)用に製剤化することができる。本開示の組成物は、無菌液体調製物、例えば、等張水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液または粘性組成物であり得る。
【0315】
本開示の組成物を選択されたpHに緩衝することができる。例えば、本開示の組成物をおおよそ5~9、5~8、5~7、5~6、6~9、6~8、6~7、7~9、7~8、6.5~8.5、6.5~8、6.5~7.7、6.5~7.6、6.5~7.5、6.5~7.4、6.5~7.3、6.5~7.2、6.5~7、7~7.7、7~7.6、7~7.5、7~7.4、7~7.3、7~7.2、7~7.1、7.2~7.6、7.2~7.5、7.2~7.4、7.3~7.7、7.3~7.6、7.3~7.5、7.34~7.45、7.0~7.2、7.2~7.4、7.3~7.5、7.4~7.6、または7.6~7.8のpHに緩衝することができる。加えて、組成物は、pH緩衝剤、例えば、0.1mM~100mMリン酸塩pH6.0~9.0、0.1~100mM HEPES pH6.0~9.0、0.1mM~100mM重炭酸塩pH6.0~9.0、0.1mM~100mMクエン酸塩pH6.0~9.0、0.1~100mM酢酸塩pH4.0~8.0、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0316】
組成物は、電解質、例えば、5mM~400mM NaCl、0.5mM~50mM KCl、0.05mM~50mM CaCl2、0.05mM~50mM MgCl2、0.05mM~50mM LiCl2、0.05mM~50mM MnCl2、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0317】
組成物は、抗酸化剤、例えば、0.05~10mMグルタチオン(還元型)、0.05~10mMグルタチオン(酸化型)、0.001mM~10mM β-メルカプトエタノール、0.001mM~10mMジチオトレイトール、0.01~100mMアスコルビン酸塩、0.001~10mMトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0318】
組成物は、安定剤、例えば、0.01%~10%ヒト血清アルブミン、0.01%~10%ウシ血清アルブミン、0.1%~99%ヒト血清、0.1%~99%ウシ胎仔血清、0.01%~10%IgG、0.1%~10%免疫グロブリン、0.06%~60%トレハロース、もしくは0.1%~20%ポリエチレングリコール(MW200~20,000,000)のような分子ポリマー、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0319】
液体または粘性組成物は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)およびこれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る、担体を含み得る。
【0320】
抗菌性保存剤、抗酸化剤、キレート剤および緩衝剤をはじめとする、組成物の安定性および無菌性を向上させる様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にすることできる。
【0321】
組成物は、等張性であり得、すなわち、それらは、血液および涙液と同じ浸透圧を有し得る。本発明の組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウム、あるいは他の薬学的に許容される薬剤、例えば、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコールまたは他の無機もしくは有機溶質を使用して得ることができる。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含有する緩衝剤に特に好ましい。
【0322】
一部の実施形態では、寛容化ワクチンもしくは前処置レジメンまたはこれらの成分は、1つまたは複数のアジュバント(例えば、1つまたは複数の免疫調節分子)とともに投与される。
【0323】
一部の実施形態では、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、免疫抑制剤(例えば、1つまたは複数の免疫調節分子)とともに投与される。一部の場合には、免疫抑制剤は、T細胞活性化を阻害する。T細胞活性化を阻害する免疫抑制剤は、抗CD40剤または抗CD40L(CD154)剤であり得る。一部の実施形態では、抗CD40剤は、抗CD40抗体であり得る。抗CD40抗体は、アンタゴニスト抗体であり得る。抗CD40抗体は、Fab’抗CD40Lモノクローナル抗体断片CDP7657であり得る。抗CD40抗体は、FcRが操作されたFcサイレント抗CD40Lモノクローナルドメイン抗体であり得る。抗CD40または抗CD40L剤は、2C10、2C10R4、ASKP1240、4D11、ブレセルマブ、BI-655064、HCD122、CFZ533、ch5D12、FFP104、CDP7657、BG9588、ルプリズマブ、トラリズマブ、IDEC-131、ダピロリズマブ、レトリズマブ、BMS-986004、VIB4920、またはMEDI4920であり得る。
【0324】
一部の場合には、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンは、本明細書に記載の1つまたは複数の追加の免疫抑制剤、例えば、抗CD40剤もしくは抗CD40L(CD154)剤(例えば、抗CD40抗体)、B細胞標的化剤(例えば、B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)、mTOR阻害剤、TNF-アルファ阻害剤、IL-6阻害剤、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)、補体C3もしくはC5阻害剤、IFN-γ、NFκB阻害剤、α1-アンチトリプシン、ビタミンD3、siCD40、コバルトプロトポルフィリン、インスリンB9-23、表面抗原分類タンパク質(CD46、CD55またはCD59)、これらの任意の組合せ、またはそれらの任意の断片、のうちの1つまたは複数とともに投与される。一部の場合には、NFκB阻害剤は、デヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ)、クルクミン、トリプトリド、Bay-117085、またはこれらの組合せである。一部の場合には、B細胞を標的とする生物製剤は、Rituximabまたは別の抗CD20抗体であり得る。
【0325】
一部の場合には、免疫抑制薬は、MMF(ミコフェノール酸モフェチル(Cellcept))、ATG(抗胸腺細胞グロブリン)、抗CD154(CD40L)、アレムツズマブ(Campath)、B細胞標的化剤(例えば、B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)、抗IL-6R抗体(サリルマブ、トシリズマブ、アクテムラ)、抗IL-6抗体(クラザキズマブ、ALD518、シルツキシマブ、エルシリモマブ、シルクマブ、オロキズマブ)、CTLA4-Ig(Abatacept/Orencia)、ベラタセプト(LEA29Y)、mTOR阻害剤(シロリムス(例えば、Rapamune)、ラパマイシン、エベロリムス)、タクロリムス(Prograf)、ダクリズマブ(Ze-napax)、バシリキシマブ(Simulect)、インフリキシマブ(Remicade)、シクロスポリン、デオキシスパガリン、可溶性補体受容体1、コブラ毒因子、コンプスタチン、抗C5抗体(エクリズマブ/Soliris)、メチルプレドニゾロン、FTY720、エベロリムス、抗CD154-Ab、レフルノミド、抗IL-2R-Ab、抗CXCR3抗体、抗ICOS抗体、抗OX40抗体、および抗CD122抗体、ヒト抗CD154モノクローナル抗体、CD40アンタゴニスト、およびCD40L(CD154)アンタゴニストであり得る。B細胞を標的とする生物製剤の非限定的な例としては、アンタゴニスト性抗CD40
mAb抗体、Fcが操作された抗CD40L抗体、Rituximab、抗CD20抗体が挙げられる。1つまたは1つより多くの免疫抑制剤/薬を一緒にまたは別々に使用することができる。1つまたは1つより多くの免疫抑制剤/薬を誘導療法にまたは維持療法に使用することができる。同じまたは異なる薬物を誘導および維持段階中に使用することができる。例えば、ダクリズマブ(Zenapax)が誘導療法に使用され、タクロリムス(Prograf)およびシロリムス(Rapamune)、もしくはエベロリムス、または任意の他のmTOR阻害剤が、維持療法に使用される。別の例では、ダクリズマブ(Zenapax)が誘導療法に使用され、低用量タクロリムス(Prograf)および低用量シロリムス(Rapamune)が維持療法に使用される。全身照射、胸腺照射、ならびに脾全および/または部分摘出術を含むがこれらに限定されない、非投薬レジメンを使用して、免疫抑制を実現することもできる。これらの技法を、1つまたは複数の免疫抑制薬と組み合わせて使用することもできる。
【0326】
一部の実施形態では、1つまたは複数の免疫調節分子は、T細胞受容体(TCR)、CD3e、FK506結合タンパク質12(FKBP12)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、CD40L(CD154)、CD40、誘導性共刺激(ICOS)、IL-2、TNF-α、IL-6、IL-7、CD2、CD20、CD52、α-4インテグリン、mTOR(ラパマイシン、エベロリムス、セロリムスのメカニスティク標的)、DNA合成、またはこれらの任意の組合せを標的とすることができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の免疫調節分子は、B細胞を標的とすることができる(B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)。一部の場合には、B細胞標的化剤は、抗CD20 mAb(例えば、リツキシマブ)または他のB細胞枯渇抗体であり得る。一部の実施形態では、免疫抑制薬は、MHC/TCR相互作用遮断物質、非選択的枯渇剤、カルシニューリン阻害剤、共刺激シグナル遮断物質、サイトカイン遮断物質、リンパ球枯渇剤、細胞接着阻害剤、IL-2シグナル伝達阻害剤、細胞周期ブロッカー、またはこれらの任意の組合せであり得る。例えば、MHC/TCR相互作用遮断物質は、抗abTCR mAb T10B9であり得る。例えば、非選択的枯渇剤は、抗CD3 mAb(OKT3)または抗胸腺細胞グロブリン(ATG)であり得る。例えば、カルシニューリン阻害剤は、シクロスポリンまたはタクロリムスであり得る。例えば、共刺激シグナル遮断物質は、抗CTLA-4 mAb、アバタセプト、イピリムマブ、抗PD-1(例えば、ペムブロリズマブ)、抗PD-L1(例えば、MPDL3280A)、抗CD154 mAb、抗CD40 mAb、または抗ICOS mAbであり得る。例えば、サイトカイン遮断物質は、抗CD25 mAb(例えば、ダクリズマブもしくはバシリキシマブ)、抗TNF(エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、およびゴリムマブ)、抗IL-6/IL-6R mAb(例えば、クラザキズマブ、ALD518、シルツキシマブ、エルシリモマブ、シルクマブ、オロキズマブ、サリルマブ、トシリズマブ、アクテムラ)、または抗IL-7 mAbであり得る。例えば、リンパ球枯渇剤は、抗CD2 mAb、IgG1との融合タンパク質(例えば、アレファセプト)、抗CD20 mAb(例えば、リツキシマブ)、または抗CD52 mAb(例えば、アレムツズマブ)であり得る。例えば、細胞接着阻害剤は、抗very large antigen 4(VLA4)(例えば、ナタリズマブ)であり得る。例えば、IL-2シグナル伝達阻害剤は、シロリムス(ラパマイシン)またはエベロリムスであり得る。例えば、細胞周期ブロッカーは、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)またはアザチオプリンであり得る。
キット
【0327】
本開示の別の実施形態では、アポトーシス性白血球、mTOR阻害剤、抗腫瘍壊死因子剤もしくは抗腫瘍壊死因子受容体剤、抗インターロイキン6剤もしくは抗インターロイキン6受容体剤および抗CD40剤もしくは抗CD40リガンド剤を含む組成物を含有する溶液形態のまたは凍結乾燥形態の製造物品、または製造物品を含むキットが、提供される。本開示のキットは、レシピエントにおける移植片の移植の際に使用するためのものであることもあり、またはレシピエントにおけるGVHDの発生を低減もしくは抑制するために使用するためのものであることもある。一部の実施形態では、キットは、移植前の前処置レジメンとして有用である。一部の実施形態では、キットは、移植後の寛容化レジメンとして有用である。キットは、組成物を希釈するための、またはその復元および/もしくは使用のための説明を含むことができる。製造物品は、1つまたは複数の容器を含む。好適な容器としては、例えば、瓶、バイアル(例えば、二室式バイアル)、注射器(例えば、二室式注射器)および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、組成物を、例えば凍結乾燥形態または溶液形態で保持し、容器上のまたは容器に付随するラベルは、復元および/または使用についての指示を示し得る。例えば、ラベルは、凍結乾燥組成物が上記の有効量に復元されることを示し得る。ラベルは、組成物が皮下投与もしくは静脈内投与に有用であることまたは皮下投与もしくは静脈内投与のためのものであることをさらに示し得る。組成物を保持する容器は、組成物の反復投与(例えば、2~6回の投与)を可能にする複数回使用用バイアルであることもある。製造物品は、好適な希釈剤(例えば、BWFI)を含む容器をさらに含むこともある。希釈剤と組成物の混合時、組成物中の最終濃度は、例えば、投与に好適な有効量であり得る。製造物品は、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料、例えば、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、注射器、および使用説明書を伴う添付文書などを、さらに含むこともある。
【0328】
キットは、例えば、架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球を他の成分(例えば、mTOR阻害剤、抗腫瘍壊死因子剤もしくは抗腫瘍壊死因子受容体剤、抗インターロイキン6剤もしくは抗インターロイキン6受容体剤、および抗CD40剤もしくは抗CD40リガンド剤)とともにまたはなしで収容している単一容器を有することもあり、または成分ごとに別個の容器を有することもある。一部の実施形態では、キットは、例えば、架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球であって、その表面上にコンジュゲートされた、レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種もしくは複数のペプチドまたは細胞、組織もしくは臓器移植片のドナーのMHCクラスI分子に由来する1種もしくは複数を含むアポトーシス性白血球を、他の成分(例えば、mTOR阻害剤、抗腫瘍壊死因子剤もしくは抗腫瘍壊死因子受容体剤、抗インターロイキン6剤もしくは抗インターロイキン6受容体剤、および抗CD40剤もしくは抗CD40リガンド剤)とともにまたはなしで収容している単一の容器を含み、または成分ごとに別個の容器を有することもある。
【0329】
患者への投与前、キットの組成物が、あらかじめ複合体化されていることもあり、または各成分が別々の異なる容器の中にあることもある。キットの成分は、1つまたは複数の液体溶液、好ましくは水溶液、より好ましくは滅菌水溶液の状態で備えられていることがある。キットの成分は、固体として備えられていることもあり、これらの固体を、別の異なる容器に好ましくは備えられている好適な溶媒の添加によって液体に変換することができる。一部の実施形態では、本開示のキットは、追加の成分(例えば、抗炎症剤、免疫調節剤、抗腫瘍剤、天然産物、ホルモンもしくはアンタゴニスト、抗血管新生剤もしくは阻害剤、アポトーシス誘導剤、またはキレート剤)の併用投与と組み合わせて使用するために包装された、本明細書に開示される成分を含む。キットの容器は、バイアル、試験管、フラスコ、瓶、注射器、または固体もしくは液体を封入する任意の他の手段であり得る。一部の実施形態では、キットは、別々の投与を可能にする、第2のバイアルまたは他の容器を含むことになる。キットは、薬学的に許容される液体のための別の容器も含むことがある。好ましくは、キットは、本キットの成分である本開示の組成物の投与を可能にする器具(例えば、1つまたは複数の針、注射器、点眼器、ピペットなど)を含むことになる。
【0330】
一部の実施形態では、本明細書で開示されるキットは、移植片をさらに含む。一部の実施形態では、移植片は、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、膵島細胞、小腸、骨髄、造血幹細胞、胚性もしくは誘導多能性幹細胞由来膵島ベータ細胞、胚性もしくは誘導多能性幹細胞由来膵島、胚性もしくは誘導多能性幹細胞由来肝細胞、またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、移植片は、自己移植片、同種グラフト移植片または異種グラフト移植片であり得る。
遺伝子改変を行う方法
【0331】
上記の遺伝子改変細胞または非ヒト動物を生じさせるために、様々な技法を使用することができる。遺伝子改変細胞または動物を作出するための少数の例が、本明細書で開示される。本明細書で開示される方法が単なる例であり、いかなる点においても限定を意図したものでないことを理解されたい。
【0332】
本明細書で開示される方法は、DNAまたはRNA構築物を宿主細胞に侵入させるために使用され得る技法を利用し得、それらは、これらに限定されないがリン酸カルシウム/DNA共沈、核へのDNAのマイクロインジェクション、電気穿孔、無傷細胞との細菌プロトプラスト融合、トランスフェクション、リポフェクション、感染、パーティクルボンバードメント、精子媒介遺伝子移入、または当業者が公知の任意の他の技法を含む。
【0333】
本明細書で開示されるある特定の態様は、ベクターを利用し得る。任意のプラスミドおよびベクターを、それらが選択された宿主において複製可能かつ生存可能であるのであれば、使用することができる。当技術分野において公知のベクターおよび市販のもの(およびそれらのバリアントまたは誘導体)を、方法に使用するための1つまたは複数の組換え部位を含むように操作することができる。使用され得るベクターは、これらに限定されないが、真核生物発現ベクター、例えば、pFastBac、pFastBacHT、pFastBacDUAL、pSFVおよびpTet-Splice(Invitrogen)、pEUK-C1、pPUR、pMAM、pMAMneo、pBI101、pBI121、pDR2、pCMVEBNAおよびpYACneo(Clontech)、pSVK3、pSVL、pMSG、pCH110、およびpKK232-8(Pharmacia,Inc.)、p3’SS、pXT1、pSG5、pPbac、pMbac、pMClneoおよびpOG44(Stratagene,Inc.)、ならびにpYES2、pAC360、pBlueBa-cHis A、BおよびC、pVL1392、pBlueBac111、pCDM8、pcDNA1、pZeoSV、pcDNA3、pREP4、pCEP4ならびにpEBVHis(Invitrogen,Corp.)、ならびにこれらのバリアントまたは誘導体を含む。
【0334】
これらのベクターを使用して、遺伝子、例えば導入遺伝子、または目的の遺伝子の一部分を発現させることができる。部分の遺伝子、または遺伝子を、制限酵素に基づく技法などの公知の方法を使用して挿入することができる。
遺伝子破壊
【0335】
遺伝子破壊は、下記のいずれかの方法により、例えば、ノックアウト、ノックダウン、RNA干渉、ドミナントネガティブなどにより、実行することができる。遺伝子破壊を非ヒト動物において行うことができる。遺伝子破壊をヒト細胞(例えば、ヒト脾細胞、末梢血白血球、および/または幹細胞由来の細胞、組織もしくは臓器)において行うことができる。方法の詳細な説明は、下記の遺伝子改変非ヒト動物に関するセクションで開示される。
【0336】
一部の実施形態では、グラフトドナーおよび/またはアポトーシス性細胞は、アルファ1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ(GGTA1)、推定上のシチジンモノホスファターゼ-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ様タンパク質(CMAH)およびβ1,4 N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(B4GALNT2)を発現する1つまたは複数の遺伝子の発現低減を有する。一部の実施形態では、グラフトドナーおよび/またはアポトーシス性細胞は、GGTA1、CMAHおよびB4GALNT2を発現する1つまたは複数の遺伝子の破壊を有する。これは、アポトーシス性細胞ワクチンドナー動物と遺伝学的に同一であるグラフトドナー動物からの臓器、組織、細胞および細胞系グラフト(例えば、異種グラフトまたは同種グラフト)に対する細胞媒介免疫および細胞依存性抗体媒介免疫を最小にすることまたは消失させることができる。
【0337】
例えば、細胞は、GGTA1、CMAH、B4GALNT2、NLRC5、B2M、PD-L1および/またはこれらの任意の組合せを含む、破壊され(例えば、発現が低減され)得る1つまたは複数の遺伝子を有し得る。例えば、細胞は、GGTA1のみが破壊されていること、またはCMHAのみが破壊されていること、またはB4GALNT2のみが破壊されていることがある。細胞は、GGTA1およびCMAHが破壊されていること、GGTA1およびB4GALNT2が破壊されていること、またはCMAHおよびB4GALNT2が破壊されていることもある。細胞は、GGTA1、CMAHおよびB4GALNT2が破壊されていることがある。一部の場合には、破壊されている遺伝子は、GGTA1を含まない。細胞は、GGTA1および/またはCMAHが破壊されていても、HLA-Gを(内因的にまたは外因的に)発現することもある。細胞は、C3が破壊されていることもある。
【0338】
一部の実施形態では、グラフトドナー動物および/またはアポトーシス性細胞は、追加の遺伝子改変を含む。一部の実施形態では、グラフトドナー動物および/またはアポトーシス性細胞は、主要組織適合複合体(MHC)I特異的エンハンセオソームの成分(例えば、NOD様受容体ファミリーCARDドメイン含有5(NLRC5))、MHC-I結合ペプチドの輸送体(例えば、抗原プロセシング1(TAP1))、補体成分3(C3)、CXCケモカイン受容体3リガンド(CXCL3)、CXCモチーフケモカインリガンド10(CXCL10)遺伝子、MHC IIトランス活性化因子(MHCIITA)、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(MICA)遺伝子、MHCクラスIポリペプチド関連配列B(MICB)遺伝子、ナチュラルキラー(NK)グループ2Dリガンド(NKG2DL)、腫瘍壊死因子受容体(TNF-R)、ブタ内在性レトロウイルス(PERV)、PD-1、PD-L1、またはこれらの任意の組合せをコードする、1つまたは複数の遺伝子の抑制または破壊を含む。
【0339】
一部の実施形態では、グラフトドナー動物および/またはアポトーシス性細胞は、1つまたは複数の外因性ポリペプチドをコードする1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、外因性ポリペプチドは、MHC I形成サプレッサー(例えば、感染細胞タンパク質47(ICP47))、補体活性化の調節因子(例えば、CD46、CD55もしくはCD59)、NK細胞の阻害性リガンド、B7ファミリーメンバー(例えば、プログラム死リガンド、例えばPD-L1もしくはPD-L2)、セリンプロテアーゼ阻害剤(例えば、Spi9)、ガレクチン、インターロイキン(例えば、IL-37)、CD40:CD40L遮断剤(例えば、CD40アンタゴニストポリペプチド、抗CD40リガンドポリペプチド)、ST6ベータ-ガラクトシドアルファ-2,6-シアリルトランスフェラーゼ1(ST6Gal1)、Fasリガンド(FasL)、これらの任意の機能性断片、またはそれらの任意の組合せのうちの、1つまたは複数を発現する。一部の実施形態では、NK細胞の阻害性リガンドは、ヒト白血球抗原(HLA)、例えば、ヒト白血球抗原E(HLA-E)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、β-2-ミクログロブリン(B2M)、またはこれらの任意の組合せである。一部の実施形態では、HLA-Gは、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、HLA-G7、またはこれらの任意の組合せである。一部の場合には、ガレクチンは、ガレクチン-1、ガレクチン-2、ガレクチン-3、ガレクチン-4、ガレクチン-5、ガレクチン-6、ガレクチン-7、ガレクチン-8、ガレクチン-9、ガレクチン-10、ガレクチン-11、ガレクチン-12、ガレクチン-13、ガレクチン-14、またはガレクチン-15である。例えば、ガレクチンは、ガレクチン-9であり得る。
【0340】
一部の場合には、破壊は、これらの遺伝子のみに限定されない。本願の範囲内の遺伝子の遺伝子相同体(例えば、遺伝子の任意の哺乳動物バージョン)が包含されると考えられる。例えば、破壊される遺伝子は、本明細書で開示される遺伝子、例えば、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、CXCL10、MICA、MICB、C3および/またはMHCIITAに対して、ある特定の同一性および/または相同性を示すことができる。したがって、少なくともまたは少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%相同性を(核酸またはタンパク質レベルで)示す遺伝子、例えば、少なくともまたは少なくとも約50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、または90%~99%相同性を示す遺伝子が破壊され得ると考えられる。少なくともまたは少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、99%、または100%同一性を(核酸またはタンパク質レベルで)示す遺伝子、例えば、少なくともまたは少なくとも約50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、または90%~99%同一性を示す遺伝子が破壊され得ることも考えられる。一部の遺伝子相同体は当技術分野において公知であるが、相同体が不明である場合もある。しかし、哺乳動物間の相同遺伝子は、NCBI BLASTなどの公開されている利用可能なデータベースを使用して核酸(DNAもしくはRNA)配列またはタンパク質配列を比較することにより見つけることができる。
【0341】
遺伝子抑制も多数の方法で行うことができる。例えば、遺伝子のプロモーターを変更してノックアウトにより、および/または干渉RNAを投与すること(ノックダウン)により、遺伝子発現を低減させることができる。これを生物レベルでまたは組織、臓器および/もしくは細胞レベルで行うことができる。細胞、組織および/または臓器における1つまたは複数の遺伝子をノックダウンする場合、RNA干渉試薬、例えば、siRNA、shRNAまたはマイクロRNAを投与することにより1つまたは複数の遺伝子を低減させることができる。例えば、shRNAを発現することができる核酸を細胞に安定にトランスフェクトして、発現をノックダウンすることができる。さらに、shRNAを発現することができる核酸を細胞または非ヒト動物のゲノムに挿入し、結果として、細胞または非ヒト動物における遺伝子をノックダウンすることができる。
【0342】
破壊方法は、ドミナントネガティブタンパク質を過剰発現させることも含み得る。この方法は、機能性野生型遺伝子の機能の全般的低下をもたらすことができる。加えて、ドミナントネガティブ遺伝子を発現させることにより、ノックアウトおよび/またはノックダウンのものと同様である表現型を生じさせることができる。
【0343】
一部の場合には、1つもしくは複数の遺伝子において(例えば、ヌクレオチド置換により)停止コドンを挿入または作出することができ、その結果、非機能性転写物またはタンパク質(ノックアウトと呼ばれることもある)を生じさせることができる。例えば、停止コドンを1つまたは複数の遺伝子の中央部内で作出した場合、結果として生じる転写および/またはタンパク質は、短縮化されることもあり、非機能性になることもある。しかし、一部の場合には、短縮化は、活性(ある程度または過度に活性な)タンパク質をもたらすことがある。一部の場合には、タンパク質が過度に活性である場合、これは、ドミナントネガティブタンパク質、例えば、野生型タンパク質の活性を破壊する突然変異型ポリペプチドを、生じさせる結果となり得る。
【0344】
このドミナントネガティブタンパク質を任意のプロモーターの制御の及ぶ範囲内で核酸において発現させることができる。例えば、プロモーターは、普遍的プロモーターであることがある。プロモーターは、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、および/または成長特異的プロモーターであることもある。
【0345】
したがって、ドミナントネガティブタンパク質をコードする核酸を細胞または非ヒト動物に挿入することができる。任意の公知の方法を使用することができる。例えば、安定なトランスフェクションを使用することができる。加えて、ドミナントネガティブタンパク質をコードする核酸を細胞または非ヒト動物のゲノムに挿入することができる。
【0346】
細胞または非ヒト動物における1つまたは複数の遺伝子を、当技術分野において公知の任意の方法を使用してノックアウトすることができる。例えば、1つまたは複数の遺伝子をノックアウトすることは、細胞または非ヒト動物のゲノムから1つまたは複数の遺伝子を欠失させることを含み得る。ノックアウトすることは、細胞または非ヒト動物から遺伝子配列の全てまたは一部を除去することも含み得る。ノックアウトすることはまた、細胞または非ヒト動物のゲノム内の遺伝子の全てまたは一部を1つまたは複数のヌクレオチドで置換することを含み得ると考えられる。1つまたは複数の遺伝子のノックアウトすることは、1つまたは複数の遺伝子に配列を挿入することによって1つまたは複数の遺伝子の発現を妨げることも含み得る。例えば、配列を挿入することにより、1つまたは複数の遺伝子の中央部に停止コドンを生成することができる。配列を挿入することにより、1つまたは複数の遺伝子のオープンリーディングフレームをシフトさせることもできる。一部の場合には、ノックアウトを遺伝子の第1のエクソンにおいて実行することができる。他の場合には、ノックアウトを遺伝子の第2のエクソンにおいて実行することができる。
【0347】
ノックアウトを、ヒト細胞、または非ヒト動物の任意の細胞、臓器および/もしくは組織において行うことができる。例えば、ノックアウトは、全身ノックアウトであることがあり、例えば、非ヒト動物の全ての細胞において1つまたは複数の遺伝子の発現が低減される。ノックアウトは、非ヒト動物の1つまたは複数の細胞、組織および/または臓器に特異的であることもある。これは、1つまたは複数の遺伝子の発現が1つまたは複数の臓器、組織または細胞型において選択的に低減される、条件付きノックアウトによって実現することができる。条件付きノックアウトは、creが細胞、組織および/または臓器特異的プロモーターの制御下で発現される、Cre-lox系によって実行することができる。例えば、1つまたは複数の組織または臓器において1つまたは複数の遺伝子をノックアウトすることができ(または発現を低減させることができ)、この場合の1つまたは複数の組織または臓器は、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、膵臓、小腸、大腸、骨格筋、平滑筋、皮膚、骨、脂肪組織、毛髪、甲状腺、気管、胆嚢、腎臓、尿管、膀胱、大動脈、静脈、食道、横隔膜、胃、直腸、副腎、気管支、耳、眼、網膜、生殖器、視床下部、喉頭、鼻、舌、脊髄、または尿管、子宮、卵巣、精巣、および/またはこれらの任意の組合せを含み得る。1つの細胞型において1つまたは複数の遺伝子をノックアウトすることもでき(または発現を低減させることができ)、この場合の1つまたは複数の細胞型は、トリコサイト、ケラチノサイト、性腺刺激ホルモン産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、成長ホルモン産生細胞、乳腺刺激ホルモン分泌細胞、クロム親和性細胞、傍濾胞細胞、グロムス細胞、メラニン細胞、母斑細胞、メルケル細胞、象牙芽細胞、セメント芽細胞、角膜実質細胞、網膜ミュラー細胞、網膜色素上皮細胞、ニューロン、グリア(例えば、乏突起膠細胞、星状膠細胞)、上衣細胞、松果体細胞、肺細胞(例えば、I型肺細胞およびII型肺細胞)、クララ細胞、杯細胞、G細胞、D細胞、腸クロム親和性細胞様細胞、胃主細胞、壁細胞、小窩細胞、K細胞、D細胞、I細胞、杯細胞、パネート細胞、腸細胞、小襞細胞、肝細胞、肝星細胞(例えば、中胚葉由来のクッパ-細胞)、胆嚢細胞、腺房中心細胞、膵星細胞、膵α細胞、膵β細胞、膵δ細胞、膵F細胞、膵ε細胞、甲状腺(例えば、濾胞細胞)、副甲状腺(例えば、副甲状腺主細胞)、好酸性細胞、尿路上皮細胞、骨芽細胞、骨細胞、軟骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋芽細胞、筋細胞、筋衛星細胞、腱細胞、心筋細胞、脂肪芽細胞、脂肪細胞、カハール介在細胞、血管芽細胞、内皮細胞、メサンギウム細胞(例えば、糸球体内メサンギウム細胞および糸球体外メサンギウム細胞)、傍糸球体細胞、緻密斑細胞、間質細胞、間細胞、テロサイト、単純上皮細胞、有足細胞、腎近位尿細管刷子縁細胞、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、顆粒膜細胞、peg細胞、胚細胞、精子、卵子、リンパ球、骨髄性細胞、内皮前駆細胞、幹細胞、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、血管芽細胞、中胚葉性血管芽細胞、周皮細胞、壁細胞、および/またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0348】
条件付きノックアウトは、誘導性であることもあり、例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーター、成長特異的プロモーターを使用することによることもある。これは、任意の時点でまたは特定の時点で遺伝子/タンパク質の発現を消失させることまたは抑制することを可能にし得る。例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーターの場合に関して、テトラサイクリンを非ヒト動物に出生後任意の時点で与えることができる。非ヒト動物が、子宮内で成長する存在である場合には、テトラサイクリンを妊娠中の母体に与えることによりプロモーターを誘導することができる。非ヒト動物が卵の中で成長する場合、テトラサイクリンを注射することまたはテトラサイクリン中でインキュベートすることによりプロモーターを誘導することができる。テトラサイクリンを非ヒト動物に与えると、テトラサイクリンは、creの発現をもたらすことができ、するとそのcreが目的の遺伝子の切除をもたらすことができる。
【0349】
cre/lox系は、成長特異的プロモーターの制御下にあることもある。例えば、一部のプロモーターは、出生後にまたはさらには思春期の開始後に活性化される。これらのプロモーターを使用してcre発現を制御することができ、したがって、成長特異的ノックアウトに使用することができる。
【0350】
ノックアウト技術の任意の組合せを併用することができることも考えられる。例えば、組織特異的ノックアウトを誘導性技術と併用して、組織特異的、誘導性ノックアウトを生じさせることができる。さらに、成長特異的プロモーターなどの他の系を、組織特異的プロモーターおよび/または誘導性ノックアウトと組み合わせて使用することができる。
【0351】
細胞または非ヒト動物の1つまたは複数の遺伝子の全てに満たない対立遺伝子をノックアウトすることができることも考えられる。例えば、二倍体細胞および/または非ヒト動物では、2つの対立遺伝子の一方がノックアウトされると考えられる。これは、遺伝子の発現減少およびタンパク質レベル低下をもたらし得る。発現の全体的減少は、両方の対立遺伝子が機能している、例えば、ノックアウトおよび/またはノックダウンされていない場合と比較して、99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%もしくは20%未満、または約99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%もしくは20%未満、例えば、99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60%、60%~50%、50%~40%、40%~30%、もしくは30%~20%、または約99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60%、60%~50%、50%~40%、40%~30%、もしくは30%~20%の発現であり得る。加えて、タンパク質レベルの全体的低下は、全体的発現の減少と同じであることもあり、異なることもある。タンパク質レベルの全体的低下は、両方の対立遺伝子が機能している、例えば、ノックアウトおよび/またはノックダウンされていない場合と比較して、約99%、95%、90%、85%、80%、70%、60%、50%、40%、30%もしくは20%、または約99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%もしくは20%未満、例えば、99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60%、60%~50%、50%~40%、40%~30%、もしくは30%~20%、または約99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60%、60%~50%、50%~40%、40%~30%、もしくは30%~20%の発現であり得る。しかし、細胞および/または非ヒト動物における1つまたは複数の遺伝子の全ての対立遺伝子をノックアウトすることができることも考えられる。
【0352】
1つまたは複数の遺伝子のノックアウトを遺伝子型判定により検証することができる。遺伝子型判定方法は、シークエンシング、制限酵素断片長多型特定(RFLPI)、ランダム増幅多型検出(RAPD)、増幅断片長多型検出(AFLPD)、PCR(例えば、ロングレンジPCR、または段階的PCR)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ、およびDNAマイクロアレイまたはビーズへのハイブリダイゼーションを含み得る。例えば、遺伝子型判定をシークエンシングにより実行することができる。一部の場合には、シークエンシングは、高忠実度シークエンシングであり得る。シークエンシング法は、マクサム・ギルバートシークエンシング、連鎖停止法(例えば、サンガーシークエンシング)、ショットガンシークエンシング、およびブリッジPCRを含み得る。一部の場合には、遺伝子型判定を次世代シークエンシングにより実行することができる。次世代シークエンシング法は、超並列シグネチャーシークエンシング、コロニーシークエンシング、パイロシークエンシング(例えば、454 Life Sciencesにより開発されたパイロシークエンシング)、一分子リアルタイムシークエンシング(例えば、Pacific Biosciencesによる)、イオン半導体シークエンシング(例えば、Ion Torrent半導体シークエンシングによる)、一塩基合成法(例えば、IlluminaによるSolexaシークエンシングによる)、ライゲーションによるシークエンシング(例えば、Applied BiosystemによるSOLiDシークエンシング)、DNAナノボールシークエンシング、およびヘリスコープ一分子シークエンシングを含み得る。一部の場合には、本明細書における細胞または非ヒト動物の遺伝子型判定は、全ゲノムシークエンシング解析を含み得る。一部の場合には、細胞または動物における遺伝子のノックアウトを遺伝子の一部または遺伝子全体のシークエンシング(例えば、次世代シークエンシング)により検証することができる。
相同組換え
【0353】
相同組換えも、本明細書で開示される関連遺伝子改変のいずれかに使用することができる。相同組換えは、内在性遺伝子の部位特異的改変を可能にすることができ、ひいては新規改変をゲノムに組み込むことができる。例えば、相同組換え(遺伝子変換および古典的鎖切断/再結合)がDNA分子間で遺伝子配列情報を伝達できることにより、標的相同組換えを行うことができ、相同組換えがDNA分子間で遺伝子配列情報を伝達できることは、遺伝子操作および遺伝子マニピュレーションの効果的な方法になり得る。
【0354】
相同組換えされた細胞を多数の方法により特定することができる。例えば、選択法は、例えばヒト抗gal抗体により、細胞に対する免疫応答の非存在を検出することができる。選択法は、細胞または組織に曝露されたときのヒト血液の凝固レベルを評定するステップも含み得る。抗生物質に対する耐性による選択をスクリーニングに使用することができる。
ランダム挿入
【0355】
本明細書に記載の方法の1つまたは複数の導入遺伝子を細胞のゲノムの任意の遺伝子座にランダムに挿入することができる。これらの導入遺伝子は、ゲノム内のどこに挿入されても機能性であり得る。例えば、導入遺伝子は、それ自体のプロモーターをコードすることができ、または導入遺伝子を、それが内在性プロモーターの制御下に置かれる位置に挿入することができる。あるいは、導入遺伝子を、遺伝子に、例えば、遺伝子のイントロンもしくは遺伝子のエクソン、プロモーター、または非コード領域に、挿入することができる。導入遺伝子を遺伝子の第1のエクソンに組み込むことができる。
【0356】
導入配列をコードするDNAを細胞の染色体にランダムに挿入することができる。ランダム挿入は、当業者に公知の、細胞にDNAを導入する任意の方法の結果として生じ得る。この方法は、電気穿孔、ソノポレーション、遺伝子銃の使用、リポトランスフェクション、リン酸カルシウムトランスフェクション、デンドリマーの使用、マイクロインジェクション、ウイルスベクター、例えばアデノウイルス、AAVおよびレトロウイルスベクターなど、の使用、ならびに/またはグループIIリボザイムを、これらに限定されないが、含み得る。
【0357】
導入遺伝子をコードするDNAを、レポーター遺伝子を含むように設計することもでき、したがって、導入遺伝子またはその発現産物の存在をレポーター遺伝子の活性化によって検出することができる。上記のものなどの、当技術分野において公知の任意のレポーター遺伝子を使用することができる。レポーター遺伝子が活性化された細胞を細胞培養下で選択することにより、導入遺伝子を含有する細胞を選択することができる。
【0358】
導入遺伝子をコードするDNAを電気穿孔によって細胞に導入することができる。DNAをリポフェクション、感染または形質転換によって細胞に導入することもできる。電気穿孔および/またはリポフェクションを使用して、線維芽細胞にトランスフェクトすることができる。
【0359】
導入遺伝子の発現は、発現アッセイ、例えばqPCRにより、またはRNAのレベルを測定することにより、検証することができる。発現レベルは、コピー数も示すことができる。例えば、発現レベルが極めて高度である場合、これは、導入遺伝子の1つより多くのコピーがゲノムに組み込まれたことを示すことができる。あるいは、高度な発現は、導入遺伝子が、高度に転写されるエリア内に、例えば、高度に発現されたプロモーターの付近に組み込まれたことを示すことができる。タンパク質レベルを、例えばウエスタンブロット法によって、測定することにより、発現を検証することもできる。
部位特異的挿入
【0360】
本明細書で開示される方法のいずれかでの1つまたは複数の導入遺伝子の挿入は、部位特異的であり得る。例えば、1つまたは複数の導入遺伝子をプロモーターに隣接して、例えば、Rosa26プロモーターに隣接してまたはその付近に挿入することができる。
【0361】
細胞の標的となる遺伝子座の改変を、DNAをそのDNAが標的遺伝子座に対して相同性を有する細胞に導入することにより、生じさせることができる。DNAは、組み込まれた構築物を含む細胞の選択を可能にするマーカー遺伝子を含むことができる。標的ベクター中の相同DNAを標的遺伝子座において染色体DNAと組み換えることができる。マーカー遺伝子の両側に、相同DNA配列である3’組換えアームおよび5’組換えアームを隣接させることができる。
【0362】
様々な酵素は、宿主ゲノムへの外来DNAの挿入を触媒することができる。例えば、部位特異的リコンビナーゼを、明確に異なる生化学的特性を有する2つのタンパク質ファミリー、すなわち、チロシンリコンビナーゼ(DNAをチロシン残基に共有結合させる)およびセリンリコンビナーゼ(共有結合がセリン残基において起こる)に分けることができる。一部の場合には、リコンビナーゼは、Cre、fC31インテグラーゼ(StreptomycesファージfC31に由来するセリンリコンビナーゼ)、またはバクテリオファージ由来の部位特異的リコンビナーゼ(Flp、ラムダインテグラーゼ、バクテリオファージHK022リコンビナーゼ、バクテリオファージR4インテグラーゼおよびファージTP901-1インテグラーゼを含む)を含むことができる。
【0363】
発現制御配列も構築物に使用することができる。例えば、発現制御配列は、多種多様な細胞型に発現される構成的プロモーターを含むことができる。例えば、好適な、強力な構成的プロモーターおよび/またはエンハンサーには、DNAウイルス(例えば、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス、CMV、HSVなど)からのまたはレトロウイルスLTRからの発現制御配列などがある。組織特異的プロモーターも使用することができ、特異的細胞系統に対して発現を指令するために組織特異的プロモーターを使用することができる。Rosa26遺伝子プロモーターを使用して実験を行うことができるが、当業者には明らかであり得るように、遺伝子発現を指令することができる他のRosa26関連プロモーターを使用して同様の結果を得ることができる。したがって、本明細書における記載は、限定することを意図したものではなく、むしろ多くの可能な例の1つを開示することを意図したものである。一部の場合には、より短いRosa26 5’上流配列であって、それにもかかわらず同程度の発現を実現することができるRosa26 5’上流配列を使用することができる。Rosa26プロモーターの小規模なDNA配列バリアント、例えば、点突然変異、部分的欠失または化学修飾も有用である。
【0364】
Rosa26プロモーターを哺乳動物における発現に使用することができる。例えば、他の種(例えば、ヒト、ウシ、マウス、ヒツジ、ヤギ、ウサギおよびラット)のRosa26相同体のプロモーターを含むがこれらに限定されない、ブタRosa26遺伝子の5’隣接配列に類似している配列も、使用することができる。Rosa26遺伝子は、異なる哺乳動物種間で十分に保存され得るため、他の哺乳動物Rosa26プロモーターも使用することができる。
【0365】
CRISPR/Cas系を使用して部位特異的挿入を実行することができる。例えば、ゲノムの挿入部位にニックまたは二本鎖切断をCRISPR/Casにより生じさせて挿入部位への導入遺伝子の挿入を助長することができる。
CRISPR/Cas系による遺伝子編集
【0366】
一部の場合には、遺伝子編集は、ノックアウトを設計するのに有用であり得る。例えば、遺伝子編集は、CRISPR関連タンパク質(Casタンパク質、例えば、Cas9)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)およびメガヌクレアーゼ(maganucleases)を含む、ヌクレアーゼを使用して実行することができる。ヌクレアーゼは、遺伝子改変されたおよび/または組換えの、天然に存在するヌクレアーゼであり得る。例えば、CRISPR/Cas系は、遺伝子編集系として好適であり得る。
【0367】
本明細書に記載の方法は、CRISPR/Cas系を利用し得る。例えば、二本鎖切断(DSB)を、CRISPR/Cas系、例えば、II型CRISPR/Cas系を使用して生じさせることができる。本明細書で開示される方法において使用されるCas酵素は、DNA切断を触媒するCas9であり得る。Streptococcus pyogenesに由来するCas9または任意の他のCas9による酵素作用は、標的部位配列において二本鎖切断を生じさせることができ、これらの標的部位配列は、ガイド配列の20ヌクレオチドにハイブリダイズし、そしてその標的配列の20ヌクレオチドの後にプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を有する。
【0368】
Casタンパク質などのCRISPR酵素をコードする酵素コード配列にベクターを作動可能に連結させることができる。ここで使用され得るCasタンパク質は、クラス1およびクラス2を含む。Casタンパク質の非限定的な例としては、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5d、Cas5t、Cas5h、Cas5a、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1もしくはCsx12としても公知)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Csy4、Cse1、Cse2、Cse3、Cse4、Cse5e、Csc1、Csc2、Csa5、Csn1、Csn2、Csm1、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx1S、Csf1、Csf2、CsO、Csf4、Csd1、Csd2、Cst1、Cst2、Csh1、Csh2、Csa1、Csa2、Csa3、Csa4、Csa5、C2c1、C2c2、C2c3、Cpf1、CARF、DinG、これらの相同体、またはこれらの改変バージョンが挙げられる。非改変CRISPR酵素は、Cas9などのDNA切断活性を有することができる。CRISPR酵素は、一方または両方の鎖の標的配列における、例えば、標的内列内および/または標的配列の補体内での、切断を指示することができる。例えば、CRISPR酵素は、一方または両方の鎖の標的配列の最初または最後のヌクレオチドから約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、100、200、500またはそれより多くの塩基対以内での切断を指示することができる。CRISPR酵素をコードするベクターであって、CRISPR酵素が、対応する野生型酵素に対して突然変異しており、したがって、突然変異CRISPR酵素が、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖を切断する能力を欠いている、ベクターを、使用することができる。
【0369】
Cas9は、野生型例示的Cas9ポリペプチド(例えば、S.PyogenesからのCas9)に対して少なくともまたは少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性および/または配列相同性を有するポリペプチドを指すことがある。Cas9は、野生型例示的Cas9ポリペプチド(例えば、S.Pyogenesからのもの)に対して最大でまたは最大で約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性および/または配列相同性を有するポリペプチドを指すこともある。Cas9は、野生型のCas9タンパクを指すこともあり、または欠失、挿入、置換、バリアント、突然変異、融合、キメラもしくはこれらの任意の組合せなどのアミノ酸変化を含み得る改変形態のCas9タンパク質を指すこともある。
【0370】
S.Pyogenes Cas9(SpCas9)をゲノム操作のためのCRISPRエンドヌクレアーゼとして使用することができる。しかし、他のものも使用することができる。一部の場合には、ある特定のゲノム標的を標的とするために異なるエンドヌクレアーゼが使用されることがある。一部の場合には、非NGG PAM配列を有する合成のSpCas9由来バリアントが使用されることもある。加えて、様々な種からの他のCas9オルソログが特定されており、これらの「非SpCas9」は、本発明にも有用であり得る様々なPAM配列に結合することができる。例えば、比較的大きいサイズのSpCas9(おおよそ4kbのコード配列)は、細胞内で効率的に発現されないこともあるSpCas9 cDNAを有するプラスミドをもたらし得る。逆に、Staphylococcus aureus Cas9(SaCas9)のコード配列は、SpCas9よりおおよそ1キロ塩基短く、このことが、細胞におけるその効率的発現を可能にする可能性がある。SpCas9と同様に、SaCas9エンドヌクレアーゼは、in vitroで哺乳動物細胞においておよびin vivoでマウスにおいて標的遺伝子を改変することができる。一部の場合には、Casタンパク質は、異なるPAM配列を標的とし得る。一部の場合には、NLRC5などの標的遺伝子が、例えば、Cas9 PAM、5’-NGGに隣接していることがある。他の場合には、他のCas9オルソログは、異なるPAM必要要件を有することがある。例えば、他のPAM、例えば、S.thermophilusのPAM(CRISPR1については5’-NNAGAAおよびCRISPR3については5’-NGGNG)およびNeisseria meningiditisのPAM(5’-NNNNGATT)が、NLRC5などの標的遺伝子に隣接して見出されることもある。本発明の導入遺伝子を任意のCas、またはCas誘導体、タンパク質からの任意のPAM配列に隣接して挿入することができる。一部の場合には、PAMは、ゲノム内に8~12塩基対ごとに、または約8~12塩基対ごとに見出されることがある。PAMは、ゲノム内に1~15塩基対ごとに見出されることがある。PAMは、ゲノム内に5~20塩基対ごとに見出されることもある。一部の場合には、PAMは、ゲノム内に5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多くの塩基対ごとに見出されることがある。PAMは、ゲノム内の5~100塩基対ごとにまたはそれらの間に見出されることがある。
【0371】
例えば、S.pyogenes系については、標的遺伝子配列は、5’-NGG PAMに先行し(すなわち、その5’側にあり)、20ntガイドRNA配列は、逆鎖と塩基対合して、PAMに隣接したCas9切断を媒介することができる。一部の場合には、隣接切断部は、PAMの3塩基対上流にあることがあり、または約3塩基対上流にあることがある。一部の場合には、隣接切断部は、PAMの10塩基対上流にあることがあり、または約10塩基対上流にあることがある。一部の場合には、隣接切断部は、PAMの0~20塩基対上流にあることがあり、または約0~20塩基対上流にあることがある。例えば、隣接切断部は、PAMの隣に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30塩基対上流にあることがある。隣接切断部は、PAMの下流1~30塩基対までにあることもある。
【0372】
S.pyogenes Cas9の代替としては、哺乳動物細胞において切断活性を示すCpf1ファミリーからのRNA誘導型エンドヌクレアーゼを挙げることができる。Cas9ヌクレアーゼとは異なり、Cpf1媒介DNA切断の結果は、短い3’オーバーハングを伴う二本鎖切断である。Cpf1の位置のずれた切断パターンは、旧来の制限酵素クローニングに類似した指向性遺伝子移入であって、遺伝子編集効率を向上させ得る指向性遺伝子移入の可能性を広げることができる。上記のCas9バリアントおよびオルソログと同様に、Cpf1もまた、SpCas9により選好されるNGG PAM部位を欠いているATリッチ領域またはATリッチゲノムにCRISPRにより標的化され得る部位の数を増やすことができる。
【0373】
1または複数の核局在配列(NLS)を含むCRISPR酵素をコードするベクターを使用することができる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のまたは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のNLSを使用することができる。CRISPR酵素は、アミノ末端にまたはその付近にNLSを含むこともあり、カルボキシ末端にまたはその付近に約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のもしくは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10より多くのNLSを含むこともあり、またはこれらの組合せ(例えば、アミノ末端に1つまたは複数のNLS、およびカルボキシ末端に1つまたは複数のNLS)を含むこともある。1つより多くのNLSが存在する場合、各々を互いに独立して選択することができ、したがって、単一のNLSが1つより多くのコピーで存在することもあり、および/または1つもしくは複数のコピーで存在する1つもしくは複数の他のNLSと組み合わせて存在することもある。
【0374】
方法に使用されるCRISPR酵素は、最大で6つのNLSを含むことができる。NLSに最も近いアミノ酸が、NまたはC末端からポリペプチド鎖に沿って約50アミノ酸以内、例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40または50アミノ酸以内にある場合、NLSは、NまたはC末端付近にあると見なされる。
【0375】
本明細書で開示される方法はまた、少なくとも1つのガイドRNAまたは核酸、例えば少なくとも1つのガイドRNAをコードするDNAを、細胞または胚に導入するステップを含むことができる。ガイドRNAは、RNA誘導型エンドヌクレアーゼと相互作用してエンドヌクレアーゼを特定の標的部位に方向付けることができ、この部位で、ガイドRNAの5’末端は、染色体配列内の特定のプロトスペーサー配列と塩基対合する。
【0376】
ガイドRNAは、2つのRNA、例えば、CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)を含み得る。ガイドRNAは、一本鎖RNAを含むことがあり、またはcrRNAの一部分(例えば、機能的部分)とtracrRNAの融合により形成されたシングルガイドRNA(sgRNA)を含むこともある。ガイドRNAは、crRNAとtracrRNAとを含む二重RNAであることもある。さらに、crRNAは、標的DNAとハイブリダイズすることができる。
【0377】
上記で論じられたように、ガイドRNAは、発現産物であり得る。例えば、ガイドRNAをコードするDNAは、ガイドRNAをコードする配列を含むベクターであり得る。単離されたガイドRNAを、またはそのガイドRNAとプロモーターとをコードする配列を含むプラスミドDNAを、細胞または生物にトランスフェクトすることにより、ガイドRNAを細胞または生物に移入することができる。他の方法で、例えばウイルス媒介遺伝子送達を使用して、ガイドRNAを細胞または生物に移入することもできる。
【0378】
ガイドRNAは、単離されていることもある。例えば、ガイドRNAを単離されたRNAの形態で細胞または生物にトランスフェクトすることができる。ガイドRNAは、当技術分野において公知の任意のin vitro転写系を使用してin vitro転写により調製することができる。ガイドRNAのコード配列を含むプラスミドの形態ではなく単離されたRNAの形態で、ガイドRNAを細胞に移入することができる。
【0379】
ガイドRNAは、染色体配列内の標的部位に相補的であり得る5’末端の第1の領域、ステムループ構造を形成し得る第2の内部領域、および一本鎖であり得る第3の3’領域という、3つの領域を含むことができる。各ガイドRNAが融合タンパク質を特定の標的部位に誘導するように、各ガイドRNAの第1の領域が異なっていることもある。さらに、各ガイドRNAの第2および第3の領域は、全てのガイドRNAにおいて同一であることがある。
【0380】
ガイドRNAの第1の領域が標的部位と塩基対合することができるように、ガイドRNAの第1の領域は、染色体配列内の標的部位の配列に相補的であることがある。一部の場合には、ガイドRNAの第1の領域は、10ヌクレオチド~25ヌクレオチドもしくは約10ヌクレオチド~25ヌクレオチド(すなわち、10nt~25nt、もしくは約10nt~約25nt、もしくは10nt~約25nt、もしくは約10nt~25nt)またはそれより多くを含み得る。例えば、ガイドRNAの第1の領域と染色体配列内の標的部位との間の塩基対合領域は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25もしくはそれを超えるヌクレオチド長であり得、または約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25もしくはそれを超えるヌクレオチド長であり得る。ガイドRNAの第1の領域は、19、20もしくは21ヌクレオチド長であり得ることもあり、または約19、20もしくは21ヌクレオチド長であり得ることもある。
【0381】
ガイドRNAはまた、二次構造を形成する第2の領域を含むこともある。例えば、ガイドRNAにより形成される二次構造は、ステム(またはヘアピン)およびループを含み得る。ループおよびステムの長さは、変わり得る。例えば、ループは、長さに3~10ヌクレオチドまたは約3~10ヌクレオチドの幅があり得、ステムは、長さに6~20塩基対または約6~20塩基対の幅があり得る。ステムは、1~10または約10ヌクレオチドの1つまたは複数のバルジを含み得る。第2の領域の全長は、長さに16~60ヌクレオチドまたは約16~60ヌクレオチドの幅があり得る。例えば、ループは、4ヌクレオチド長であり得または約4ヌクレオチド長であり得、ステムは、12塩基であり得または約12塩基対であり得る。
【0382】
ガイドRNAは、本質的に一本鎖であり得る第3の領域を3’末端に含むこともある。例えば、第3の領域は、目的の細胞内のいずれの染色体配列にも相補的でないこともあり、ガイドRNAの残部に相補的でないこともある。さらに、第3の領域の長さは、変わり得る。第3の領域は、4ヌクレオチド長を超えるまたは約4ヌクレオチド長を超えることがある。例えば、第3の領域の長さは、長さに5~60ヌクレオチドまたは約5~60ヌクレオチドの幅があり得る。
【0383】
ガイドRNAは、遺伝子標的の任意のエクソンまたはイントロンを標的とすることができる。一部の場合には、ガイドは、遺伝子の第1または第2のエクソンを標的とすることができ、他の場合には、ガイドは、遺伝子の第3または第4のエクソンを標的とすることができる。組成物は、全てが同じエクソンを標的とする複数のガイドRNAを含むこともあり、または一部の場合には、異なるエクソンを標的とすることができる複数のガイドRNAを含むこともある。遺伝子のエクソンおよびイントロンを標的とすることができる。
【0384】
ガイドRNAは、20ヌクレオチドのまたは約20ヌクレオチドの核酸配列を標的とすることができる。標的核酸は、20ヌクレオチド未満または約20ヌクレオチド未満であり得る。標的核酸は、長さが少なくともまたは少なくとも約5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、または1~100ヌクレオチドの間の範囲であり得る。標的核酸は、長さが最大でまたは最大で約5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、または1~100ヌクレオチドの間の範囲であり得る。標的核酸配列は、PAMの第1のヌクレオチドのすぐ5’側の20塩基であり得、またはすぐ5’側の約20塩基であり得る。ガイドRNAは、核酸配列を標的とすることができる。標的核酸は、少なくともまたは少なくとも約1~10、1~20、1~30、1~40、1~50、1~60、1~70、1~80、1~90、または1~100であり得る。
【0385】
ガイド核酸、例えば、ガイドRNAは、別の核酸、例えば、細胞のゲノム内の標的核酸またはプロトスペーサーにハイブリダイズすることができる核酸を指すこともある。ガイド核酸は、RNAであることがある。ガイド核酸は、DNAであることもある。ガイド核酸を、核酸の配列に部位特異的に結合するようにプログラムまたは設計することができる。ガイド核酸は、ポリヌクレオチド鎖を含むことがあり、シングルガイド核酸と呼ばれることがある。ガイド核酸は、2本のポリヌクレオチド鎖を含むことがあり、ダブルガイド核酸と呼ばれることがある。ガイドRNAを、RNA分子として細胞または胚に導入することができる。例えば、RNA分子をin vitroで転写することができ、および/または化学的に合成することができる。RNAを、合成DNA分子、例えばgBlocks(登録商標)遺伝子断片から転写することができる。次いで、ガイドRNAを、RNA分子として細胞または胚に導入することができる。ガイドRNAを、非RNA核酸分子、例えばDNA分子、の形態で細胞または胚に導入することもできる。例えば、ガイドRNAをコードするDNAを、目的の細胞または胚におけるガイドRNAの発現のためのプロモーター制御配列に作動可能に連結させることができる。RNAコード配列を、RNAポリメラーゼIII(Pol III)により認識されるプロモーター配列に作動可能に連結ことができる。ガイドRNAを発現させるために使用され得るプラスミドベクターとしては、px330ベクターおよびpx333ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。一部の場合には、プラスミドベクター(例えば、px333ベクター)は、少なくとも2つのガイドRNAコードDNA配列を含むことができる。px333ベクターを使用して、例えば、GGTA1-10およびGal2-2、またはGGTA1-10、Gal2-2およびNLRC5-6を導入することができる。他の場合には、NLRC5-6およびGal2-2をpx333ベクターで導入することができる。
【0386】
ガイドRNAをコードするDNA配列がベクターの一部であることもある。さらに、ベクターは、追加の発現制御配列(例えば、エンハンサー配列、コザック配列、ポリアデニル化配列、転写終結配列など)、選択可能なマーカー配列(例えば、抗生物質耐性遺伝子)、複製起点などを含むことがある。ガイドRNAをコードするDNA分子は、直線状であることもある。ガイドRNAをコードするDNA分子は、環状であることもある。
【0387】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするDNA配列、およびガイドRNAをコードするDNA配列が、細胞に導入される場合、各々のDNA配列が別の分子(例えば、RNA誘導型エンドヌクレアーゼコード配列を含有する1つのベクター、およびガイドRNAコード配列を含有する第2のベクター)の一部であることもあり、または両方が同じ分子(例えば、RNA誘導型エンドヌクレアーゼとガイドRNAの両方のコード(および調節)配列を含有する1つのベクター)の一部であることもある。
【0388】
ガイドRNAは、ブタまたはブタ細胞における遺伝子を標的とすることができる。一部の場合には、ガイドRNAは、ブタNLRC5遺伝子を標的とすることができる。一部の場合には、ガイドRNAを、ブタGGTA1、CMAHまたはB4GALNT2遺伝子を標的とするように設計することができる。一部の場合には、少なくとも2つのガイドRNAが導入される。少なくとも2つのガイドRNAは、各々、2つの遺伝子を標的とすることができる。例えば、一部の場合には、第1のガイドRNAは、GGTA1を標的とすることができ、第2のガイドRNAは、CMAHを標的とすることができる。一部の場合には、第1のガイドRNAは、GGTA1を標的とすることができ、第2のガイドRNAは、B4GALNT2を標的とすることができる。他の場合には、第1のガイドRNAは、GGTA1を標的とすることができ、第2のガイドRNAは、CMAHを標的とすることができ、第3のガイドRNAは、B4GALNT2を標的とすることができる。一部の場合には、ガイドRNAは、ヒトまたは非ヒト動物細胞における遺伝子を標的とすることができる。
【0389】
ガイド核酸は、新しいまたは増強された特徴を有する核酸を提供するための1つまたは複数の改変を含み得る。ガイド核酸は、核酸親和性タグを含むことがある。ガイド核酸は、合成ヌクレオチド、合成ヌクレオチドアナログ、ヌクレオチド誘導体、および/または改変ヌクレオチドを含み得る。
【0390】
一部の場合には、gRNAは、改変を含み得る。改変をgRNAの任意の位置に加えることができる。1つより多くの改変をシングルgRNAに加えることができる。gRNAは、改変後に品質管理され得る。一部の場合には、品質管理は、PAGE、HPLC、MSまたはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0391】
gRNAの改変は、置換、挿入、欠失、化学的修飾、物理的修飾、安定化、精製、またはこれらの任意の組合せであり得る。gRNAを、5’アデニレート、5’グアノシン三リン酸キャップ、5’N7-メチルグアノシン三リン酸キャップ、5’三リン酸キャップ、3’リン酸エステル、3’チオリン酸エステル、5’リン酸エステル、5’チオリン酸エステル、Cis-Synチミジンダイマー、トリマー、C12スペーサー、C3スペーサー、C6スペーサー、dスペーサー、PCスペーサー、rスペーサー、スペーサー18、スペーサー9、3’-3’改変、5’-5’改変、脱塩性、アクリジン、アゾベンゼン、ビオチン、ビオチンBB、ビオチンTEG、コレステリルTEG、デスチオビオチンTEG、DNP TEG、DNP-X、DOTA、dT-ビオチン、デュアルビオチン、PCビオチン、ソラレンC2、ソラレンC6、TINA、3’DABCYL、ブラックホールクエンチャー1、ブラックホールクエンチャー2、DABCYL SE、dT-DABCYL、IRDye QC-1、QSY-21、QSY-35、QSY-7、QSY-9、カルボキシルリンカー、チオールリンカー、2’デオキシリボヌクレオシドアナログプリン、2’デオキシリボヌクレオシドアナログピリミジン、リボヌクレオシドアナログ、2’-0-メチルリボヌクレオシドアナログ、糖修飾アナログ、ゆらぎ/ユニバーサル塩基、蛍光色素標識、2’フルオロRNA、2’O-メチルRNA、メチルホスホン酸エステル、ホスホジエステルDNA、ホスホジエステルRNA、ホスホチオエートDNA、ホスホロチオエートRNA、UNA、プソイドウリジン-5’-三リン酸、5-メチルシチジン-5’-三リン酸、またはこれらの任意の組合せにより、改変することもできる。
【0392】
一部の場合には、改変は、永続的である。他の場合には、改変は、一過的である。一部の場合には、複数の改変がgRNAに加えられる。gRNA改変は、ヌクレオチドの物理化学的特性、例えば、それらの立体構造、方向性、疎水性、化学反応性、塩基対合相互作用、またはこれらの任意の組合せを変更することができる。
【0393】
改変は、代用ホスホロチオエートであることもある。一部の場合には、天然ホスホジエステル結合は、細胞ヌクレアーゼによって急速に分解されやすいことがあり、代用ホスホロチオエート(PS)結合を使用するヌクレオチド間連結の改変によって、細胞分解による加水分解に対する安定性がより高くなり得る。改変は、gRNAの安定性を増大させることができる。改変は、生物活性を増強することもできる。一部の場合には、ホスホロチオエート増強RNA gRNAは、RNase A、RNase T1、仔ウシ血清ヌクレアーゼ、またはこれらの任意の組合せを阻害することができる。これらの特性は、in vivoまたはin vitroでのヌクレアーゼへの曝露の可能性が高い用途に使用されるPS-RNA gRNAの使用を可能にすることができる。例えば、ホスホロチオエート(PS)結合をgRNAの5’または3’末端の最後の3~5ヌクレオチドの間に導入することができ、これはエンドヌクレアーゼ分解を阻害することができる。一部の場合には、ホスホロチオエート結合をgRNA全体にわたって付加させて、エンドヌクレアーゼによる攻撃を低減させることができる。
導入遺伝子
【0394】
導入遺伝子、または外来性核酸配列は、導入遺伝子を用いないよりも高レベルで内在性遺伝子を過剰発現させるのに有用であり得る。加えて、外来性核酸配列を使用して、外来性遺伝子を発現させることができる。導入遺伝子は、他の遺伝子型、例えば、ドミナントネガティブ遺伝子も包含し得る。
【0395】
タンパク質Xの導入遺伝子は、タンパク質Xをコードする外来性核酸配列を含む導入遺伝子を指すこともある。本明細書で使用される場合、一部の場合には、タンパク質Xをコードする導入遺伝子は、タンパク質Xのアミノ酸配列の100%または約100%をコードする導入遺伝子であり得る。一部の場合には、タンパク質Xをコードする導入遺伝子は、タンパク質Xの全アミノ酸配列をコードすることもあり、または部分アミノ酸配列をコードすることもある。例えば、導入遺伝子は、タンパク質Xのアミノ酸配列の少なくともまたは少なくとも約99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%、例えば、99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60もしくは60%~50%、または約99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60もしくは60%~50%をコードし得る。導入遺伝子の発現は、機能性タンパク質、例えば、部分的にまたは完全に機能性のタンパク質を最終的にもたらすことができる。上記で論じられたように、部分配列が発現された場合、最終的な結果は、非機能性タンパク質となり得る場合もあり、またはドミナントネガティブタンパク質となり得る場合もある。非機能性タンパク質またはドミナントネガティブタンパク質は、機能性(内在性または外来性)タンパク質と競合することもある。導入遺伝子は、RNA(例えば、mRNA、shRNA、siRNA、またはマイクロRNA)をコードすることもある。一部の場合には、導入遺伝子がmRNAをコードする場合、その結果として、この導入遺伝子は、ポリペプチド(例えば、タンパク質)に翻訳され得る。したがって、導入遺伝子は、タンパク質をコードすることができると考えられる。導入遺伝子は、一部の事例では、タンパク質をコードすることもあり、またはタンパク質の一部分をコードすることもある。加えて、タンパク質は、野生型ポリペプチドと比較して1つまたは複数の突然変異(例えば、欠失、挿入、アミノ酸置換、または再配列)を有することがある。タンパク質は、天然ポリペプチドであることもあり、または人工ポリペプチド(例えば、組換えポリペプチド)であることもある。導入遺伝子は、2つまたはそれより多くのポリペプチドにより形成された融合タンパク質をコードすることもある。
【0396】
導入遺伝子、または外来性核酸配列は、天然に存在するmRNA(例えば、別の種に通常は見られるmRNA)をコードし、このmRNAは、5’または3’非翻訳領域に1つまたは複数の改変を含むことがある。1つまたは複数の改変は、1つもしくは複数の挿入、1つもしくは複数の欠失、または1つもしくは複数のヌクレオチド変化、またはこれらの組合せを含み得る。1つまたは複数の改変は、mRNAの安定性を増大させることができる。1つまたは複数の改変は、翻訳を阻害することまたはmRNA分解を刺激することができるmiRNA分子などの、miRNA分子の結合部位を除去することができる。例えば、HLA-Gタンパク質をコードするmRNAを、miR148ファミリーmiRNAの結合部位を除去するように改変することができる。この結合部位の除去は、mRNA安定性を増大させることができる。
【0397】
導入遺伝子を、導入遺伝子の産物を産生する様式で生物、細胞、組織または臓器内に配置することができる。例えば、1つまたは複数の導入遺伝子を含む非ヒト動物が、本明細書で開示される。1つまたは複数の導入遺伝子は、本明細書に記載の1つまたは複数の破壊と組み合わせて存在することができる。導入遺伝子を細胞の組み入れることができる。例えば、導入遺伝子を生物の生殖細胞系に組み入れることができる。細胞に挿入された場合、導入遺伝子は、メッセンジャーRNA(mRNA)のコピーである相補的DNA(cDNA)セグメント、またはゲノムDNAのその元々の領域(イントロンを有するもしくは有さない)に存在するそれ自体の遺伝子、のどちらかになり得る。
【0398】
導入遺伝子は、ある種のタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、異なる種の動物においてタンパク質を発現するポリヌクレオチドを含むことができる。例えば、導入遺伝子は、ヒトタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。そのようなポリヌクレオチドは、非ヒト動物(例えば、ブタ)においてヒトタンパク質(例えば、CD47)を発現させるために使用することができる。一部の場合には、ポリヌクレオチドは、合成のものであることがあり、例えば、任意のネイティブポリヌクレオチドとは配列および/または化学的特性の点で異なることがある。
【0399】
種Xのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを、種Yの動物においてそのタンパク質を発現させるために最適化することができる。コドン使用頻度の偏り(例えば、コードDNAにおける同義コドンの出現頻度の差)があることがある。コドンは、ポリペプチド鎖内の特定のアミノ酸残基をコードする一連のヌクレオチド(例えば、一連の3ヌクレオチド)であることもあり、または翻訳の終結のためのもの(例えば、停止コドン)であることもある。異なる種は、DNAコドンにおける異なる選好性を有し得る。最適化されたポリヌクレオチドは、一部の場合には種Yのコドンを有する、種Xのタンパク質をコードすることができ、したがって、種Xのタンパク質をコードするネイティブ遺伝子と比較して、種Yにおいてタンパク質をより高い効率で発現することができる。一部の場合には、最適化されたポリヌクレオチドは、種Yにおいてタンパク質を、同じタンパク質をコードする種Xのネイティブ遺伝子よりも少なくとも5%、10%、20%、40%、80%、90%、1.5倍、2倍、5倍または10倍高い効率で発現することができる。
【0400】
導入遺伝子と遺伝子破壊の組合せを使用することができる。非ヒト動物は、1つまたは複数の低減された遺伝子および1つまたは複数の導入遺伝子を含むことができる。例えば、発現が低減される1つまたは複数の遺伝子は、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、CXCL10、MICA、MICB、C3、MHCIITAおよび/またはこれらの任意の組合せのうちのいずれか1つを含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、ICP47、CD46、CD55、CD59、これらの任意の機能性断片、および/またはそれらの組合せを含むことがある。例えば、単に様々な組合せを説明すると、発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子は、NLRC5を含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、ICP47を含むことがある。発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子はまた、TAP1を含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、ICP47を含むことがある。発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子はまた、NLRC5およびTAP1を含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、ICP47を含むことがある。発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1およびGGTA1を含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、ICP47を含むことがある。発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1、B4GALNT2およびCMAHを含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、ICP47を含むことがある。発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2およびCMAHを含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、ICP47を含むことがある。発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子はまた、NLRC5を含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、CD59を含むことがある。発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子はまた、TAP1を含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、CD59を含むことがある。発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子はまた、NLRC5およびTAP1を含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、CD59を含むことがある。発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1およびGGTA1を含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、CD59を含むことがある。発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1、B4GALNT2およびCMAHを含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、CD59を含むことがある。発現が破壊される1つまたは複数の遺伝子はまた、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、B2M、PD-L1およびCMAHを含むことがあり、1つまたは複数の導入遺伝子は、CD59を含むことがある。
【0401】
一部の場合には、遺伝子の第1のエクソンは、遺伝子改変される。例えば、遺伝子改変され得る、遺伝子の1つまたは複数の第1のエクソンは、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、CXCL10、MICA、MICB、C3、MHCIITA、B2Mおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される遺伝子であり得る。
【0402】
一部の場合には、導入遺伝子は、1つまたは複数のMHC対立遺伝子の全てまたは一部をコードする。例えば、導入遺伝子は、MHCクラスIまたはMHCクラスII対立遺伝子の全てまたは一部(例えば、移植片ドナーもしくはレシピエントのクラスI A、クラスI B、クラスI C、クラスII DRA、クラスII DRB、クラスII DPA、クラスII DPB、クラスII DQA、クラスII DQB対立遺伝子、これらの断片、これらのペプチド、またはそれらの組合せ)をコードし得る。
【0403】
使用され得るおよび特に考えられる導入遺伝子は、本明細書で開示される遺伝子、例えば、ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-E、HLA-G(例えば、HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3、HLA-G4、HLA-G5、HLA-G6、もしくはHLA-G7)、B2M、Spi9、PD-L1、PD-L2、CD47、ガレクチン-9、これらの任意の機能性断片、および/またはそれらの組合せに対して、ある特定の同一性および/または相同性を示す遺伝子を含み得る。したがって、遺伝子が、少なくともまたは少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%相同性、例えば、少なくともまたは少なくとも約99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60%相同性を(核酸またはタンパク質レベルで)示す場合、その遺伝子を導入遺伝子として使用することができると考えられる。少なくともまたは少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一性、例えば、少なくともまたは少なくとも約99%~90%、90%~80%、80%~70%、70%~60%同一性を(核酸またはタンパク質レベルで)示す遺伝子を導入遺伝子として使用することができることも考えられる。
【0404】
細胞または非ヒト動物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多くのドミナントネガティブ導入遺伝子も含むことがある。ドミナントネガティブ導入遺伝子の発現は、ドミナントネガティブ導入遺伝子の野生型対応物の発現および/または機能を抑制し得る。それ故、例えば、ドミナントネガティブ導入遺伝子Xを含む細胞または非ヒト動物は、発現が低減されるX遺伝子を含む異なる細胞または非ヒト動物と比較して同様の表現型を有することもある。1つまたは複数のドミナントネガティブ導入遺伝子は、ドミナントネガティブNLRC5、ドミナントネガティブTAP1、ドミナントネガティブGGTA1、ドミナントネガティブCMAH、ドミナントネガティブB4GALNT2、ドミナントネガティブCXCL10、ドミナントネガティブMICA、ドミナントネガティブMICB、ドミナントネガティブMHCIITA、ドミナントネガティブC3、またはこれらの任意の組合せであり得る。
【0405】
遺伝子発現を抑制することができる、例えば、遺伝子をノックダウンすることができる、1つまたは複数の核酸をコードする1つまたは複数の導入遺伝子を含む細胞または非ヒト動物も提供される。遺伝子発現を抑制するRNAは、shRNA、siRNA、RNAiおよびマイクロRNAを、これらに限定されないが、含み得る。例えば、siRNA、RNAiおよび/またはマイクロRNAを非ヒト動物に与えて遺伝子発現を抑制することができる。さらに、非ヒト動物は、shRNAをコードする1つまたは複数の導入遺伝子を含むことがある。shRNAは、特定の遺伝子に特異的であり得る。例えば、shRNAは、NLRC5、TAP1、GGTA1、B4GALNT2、CMAH、CXCL3、CXCL10、MICA、MICB、B4GALNT2、MHCIITA、C3、B2Mおよび/またはこれらの任意の組合せを含むがそれらに限定されない、本願に記載の任意の遺伝子に特異的であり得る。
【0406】
対象に移植されたとき、遺伝子改変細胞、組織または臓器は、対象において非遺伝子改変細胞、組織または臓器と比較して低い免疫応答(例えば、移植片拒絶反応)を誘発し得る。一部の場合には、免疫応答は、T細胞(例えば、CD8+T細胞および/またはCD4+T細胞)およびNK細胞の活性化、増殖および細胞傷害性を含み得る。したがって、本明細書で開示される遺伝子改変細胞の表現型は、細胞をNK細胞、T細胞(例えば、CD8+T細胞および/またはCD4+T細胞)と共培養し、NK細胞またはT細胞の活性化、増殖および細胞傷害性を試験することにより、測定することができる。一部の場合には、遺伝子改変細胞により誘導されるT細胞またはNK細胞活性化、増殖および細胞傷害性は、非遺伝子改変細胞により誘導されるものより低いことがある。一部の場合には、本明細書における遺伝子改変細胞の表現型を酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイにより測定することができる。
【0407】
対象に移植されたとき、遺伝子改変細胞、組織または臓器は、免疫寛容原性免疫応答を誘発し得る。例えば、本明細書で開示される移植レシピエントMHCクラスIまたはMHCクラスII対立遺伝子(例えば、クラスI DRB対立遺伝子)の全てまたは一部を発現する遺伝子改変細胞は、免疫寛容原性免疫応答(例えば、Treg細胞、自然サプレッサー細胞、Tr1細胞、tTreg細胞、抗炎症性サイトカインまたはこれらの組合せを含む、免疫応答)を促進し得る。
【0408】
1つまたは複数の導入遺伝子は、異なる種からのものであり得る。例えば、1つまたは複数の導入遺伝子は、ヒト遺伝子、マウス遺伝子、ラット遺伝子、ブタ遺伝子、ウシ遺伝子、イヌ遺伝子、ネコ遺伝子、サル遺伝子、チンパンジー遺伝子、またはこれらの任意の組合せを含み得る。例えば、導入遺伝子は、ヒトからのものであり得、したがって、ヒト遺伝子配列を有する。1つまたは複数の導入遺伝子は、ヒト遺伝子を含み得る。一部の場合には、1つまたは複数の導入遺伝子は、アデノウイルス遺伝子でない。
【0409】
導入遺伝子を非ヒト動物のゲノムにランダムまたは部位特異的様式で挿入することができる。例えば、導入遺伝子を非ヒト動物のゲノム内のランダム遺伝子座に挿入することができる。これらの導入遺伝子は、ゲノム内のどこに挿入されても完全に機能性であり得る。例えば、導入遺伝子は、それ自体のプロモーターをコードすることができ、または導入遺伝子を、それが内在性プロモーターの制御下に置かれる位置に挿入することができる。あるいは、導入遺伝子を、遺伝子に、例えば、遺伝子のイントロンもしくは遺伝子のエクソン、プロモーター、または非コード領域に挿入することができる。導入遺伝子を遺伝子の第1のエクソンに組み込むことができる。
【0410】
導入遺伝子の1つより多くのコピーをゲノム内の1つより多くのランダム遺伝子座に挿入することができることもある。例えば、複数のコピーをゲノム内のランダム遺伝子座に挿入することができる。これは、導入遺伝子が1回ランダムに挿入された場合よりも全体的な発現の増加をもたらすことができる。あるいは、導入遺伝子のコピーを遺伝子に挿入することができ、導入遺伝子の別のコピーを異なる遺伝子に挿入することができる。導入遺伝子を標的とすることができ、したがって、それを非ヒト動物のゲノム内の特定の遺伝子座に挿入することができよう。
【0411】
導入遺伝子の発現を1つまたは複数のプロモーターにより制御することができる。プロモーターは、普遍的、組織特異的プロモーター、または誘導性プロモーターであることがある。プロモーターに隣接して挿入される導入遺伝子の発現が調節され得る。例えば、導入遺伝子を普遍的プロモーターの付近または隣に挿入した場合、導入遺伝子を非ヒト動物の全ての細胞に発現させることができる。一部の普遍的プロモーターは、CAGGSプロモーター、hCMVプロモーター、PGKプロモーター、SV40プロモーター、またはRosa26プロモーターであり得る。
【0412】
プロモーターは、内在性プロモーターであることもあり、または外来性プロモーターであることもある。例えば、1つまたは複数の導入遺伝子を内在性または外来性Rosa26プロモーターに隣接して挿入することができる。さらに、プロモーターは、非ヒト動物に特異的であることがある。例えば、1つまたは複数の導入遺伝子をブタRosa26プロモーターに隣接して挿入することができる。
【0413】
組織特異的プロモーター(細胞特異的プロモーターと同義であり得る)を使用して発現の位置を制御することができる。例えば、1つまたは複数の導入遺伝子を組織特異プロモーターに隣接して挿入することができる。組織特異的プロモーターは、FABPプロモーター、Lckプロモーター、CamKIIプロモーター、CD19プロモーター、ケラチンプロモーター、アルブミンプロモーター、aP2プロモーター、インスリンプロモーター、MCKプロモーター、MyHCプロモーター、WAPプロモーター、またはCol2Aプロモーターであり得る。例えば、プロモーターは、膵臓特異的プロモーター、例えばインスリンプロモーターであることがある。
【0414】
誘導性プロモーターを使用することもできる。これらの誘導性プロモーターを所望されるときに誘導剤の付加または除去により活性化および遮断することができる。誘導性プロモーターは、Lac、tac、trc、trp、araBAD、phoA、recA、proU、cst-1、tetA、cadA、nar、PL、cspA、T7、VHB、Mxおよび/またはTrexであり得ると考えられる。
【0415】
本明細書に記載の非ヒト動物または細胞は、インスリンをコードする導入遺伝子を含むことがある。インスリンをコードする導入遺伝子は、ヒト遺伝子、マウス遺伝子、ラット遺伝子、ブタ遺伝子、ウシ遺伝子、イヌ遺伝子、ネコ遺伝子、サル遺伝子、チンパンジー遺伝子、または任意の他の哺乳動物遺伝子であり得る。例えば、インスリンをコードする導入遺伝子は、ヒト遺伝子であることがある。インスリンをコードする導入遺伝子は、キメラ遺伝子、例えば、部分的にヒトの遺伝子であることもある。
【0416】
導入遺伝子の発現は、導入遺伝子の転写物のレベルを検出することにより測定することができる。例えば、導入遺伝子の発現は、ノーザンブロット法、ヌクレアーゼ保護アッセイ(例えば、RNase保護アッセイ)、逆転写PCR、定量的PCR(例えば、リアルタイムPCR、例えばリアルタイム定量的逆転写PCR)、in situハイブリダイゼーション(例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH))、ドットブロット分析、ディフェレンシャルディスプレイ、遺伝子発現連鎖解析、サブトラクティブハイブリダイゼーション、マイクロアレイ、ナノストリング、および/またはシークエンシング(例えば、次世代シークエンシング)により測定することができる。一部の場合には、導入遺伝子の発現を、遺伝子によりコードされているタンパク質を検出することによって測定することができる。例えば、1つまたは複数の遺伝子の発現を、タンパク質免疫染色法、タンパク質免疫沈降、電気泳動(例えば、SDS-PAGE)、ウエスタンブロット法、ビシンコニン酸アッセイ、分光光度測定、質量分析、酵素アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着検定法)、免疫組織化学的検査、フローサイトメトリー、および/または免疫細胞化学的検査により測定することができる。一部の場合には、導入遺伝子の発現を顕微鏡法により測定することができる。顕微鏡法は、光学、電子または走査プローブ顕微鏡法であり得る。一部の場合には、光学顕微鏡法は、明視野、斜照明、交差偏光、分散染色、暗視野、位相差、微分干渉コントラスト、干渉反射顕微鏡法、蛍光(例えば、粒子、例えば細胞が免疫染色される場合)、共焦点、単一平面照明顕微鏡法、ライトシート蛍光顕微鏡法、逆重畳積分、または連続時間符号化振幅顕微鏡法の使用を含む。
【0417】
導入遺伝子の挿入は、遺伝子型判定により検証することができる。遺伝子型判定法は、シークエンシング、制限酵素断片長多型特定(RFLPI)、ランダム増幅多型検出(RAPD)、増幅断片長多型検出(AFLPD)、PCR(例えば、ロングレンジPCR、または段階的PCR)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ、およびDNAマイクロアレイまたはビーズへのハイブリダイゼーションを含み得る。一部の場合には、遺伝子型判定をシークエンシングにより実行することができる。一部の場合には、シークエンシングは、高忠実度シークエンシングであり得る。シークエンシング法は、マクサム・ギルバートシークエンシング、連鎖停止法(例えば、サンガーシークエンシング)、ショットガンシークエンシング、およびブリッジPCRを含み得る。一部の場合には、遺伝子型判定を次世代シークエンシングにより実行することができる。次世代シークエンシング法は、超並列シグネチャーシークエンシング、コロニーシークエンシング、パイロシークエンシング(例えば、454 Life Sciencesにより開発されたパイロシークエンシング)、一分子リアルタイムシークエンシング(例えば、Pacific Biosciencesによる)、イオン半導体シークエンシング(例えば、Ion Torrent半導体シークエンシングによる)、一塩基合成法(例えば、IlluminaによるSolexaシークエンシングによる)、ライゲーションによるシークエンシング(例えば、Applied BiosystemによるSOLiDシークエンシング)、DNAナノボールシークエンシング、およびヘリスコープ一分子シークエンシングを含み得る。一部の場合には、本明細書における非ヒト動物の遺伝子型判定は、全ゲノムシークエンシング解析を含み得る。
【0418】
一部の場合には、動物における導入遺伝子の挿入を、導入遺伝子一部または導入遺伝子全体のシークエンシング(例えば、次世代シークエンシング)により検証することができる。例えば、Rosa26プロモーター(例えば、細胞内のおよび/またはブタにおける)に隣接した導入遺伝子の挿入を、例えば、フォワードプライマー5’-cgcctagagaagaggctgtg-3’およびリバースプライマー5’-ctgctgtggctgtggtgtag-3’を使用して、Rosa第1~第4のエクソンの次世代シークエンシングにより検証することができる。
【実施例0419】
これらの実施例は、単に例証目的で提供するものであり、本明細書において提供する特許請求の範囲を限定するために提供するものではない。
(実施例1)
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンでのT細胞活性化の抑制
【0420】
ドナーからの寛容化ワクチンまたは前処置レジメンが、レシピエントによるグラフトに対する拒絶反応を抑制することができるかどうかを判定するために、寛容化ワクチンまたは前処置レジメン(例えば、異種グラフトまたは同種グラフトドナーからのECDI処理アポトーシス性脾細胞)をレシピエントに移植前および後に投与する。移植および寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与後に、レシピエントのPBMCにおけるT細胞活性化を調査する。
【0421】
ドナー膵島(例えば、野生型同種ブタ膵島、遺伝子改変ブタ膵島および/または非遺伝子改変ブタ膵島)を、1名または複数名の同種または異種レシピエント、例えば、糖尿病哺乳動物対象(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類)に移植する。膵島と同じドナーから調製したアポトーシス性脾細胞をレシピエントに異なる時点で、例えば、(1)移植の7日前に、(2)移植の7日前におよび0日目に移植片に不随して、または(3)移植の7日前および1日後に投与する(
図3)。PBMCを同種または異種レシピエント各々から移植の前ならびに移植の7、14、28、49、77および91日後に採取する。PBMCにおける直接および間接的T細胞活性化をELISPOTにより調査する。非移植レシピエントからのPBMCを陰性対照として使用する。非遺伝子改変ブタ膵島を移植したレシピエントからのPBMCを陽性対照として使用する。T細胞活性化を次の群に関して分析する:(1)非移植レシピエント(寛容化ワクチンも前処置レジメンもなし)、(2)例えば遺伝子改変ブタ膵島を、+寛容化ワクチンまたは前処置レジメンで移植した、同種または異種レシピエント、(3)例えば遺伝子改変ブタ膵島を、+寛容化ワクチンも前処置レジメンもなしで移植した、同種または異種レシピエント、(4)例えば非遺伝子改変ブタ膵島を、+寛容化ワクチンまたは前処置レジメンで移植した、同種または異種レシピエント、および(5)例えば非遺伝子改変ブタ膵島を、+寛容化ワクチンも前処置レジメンもなしで移植した、同種または異種レシピエント。寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与は、同種または異種レシピエントにおいてグラフトされた同種または異種ブタ膵島により誘導されるT細胞活性化を有意に低減させることができると予想される。
(実施例2)
移植レシピエントにおける移植寛容の誘導
【0422】
本実施例は、移植レシピエント、例えば、哺乳動物対象(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類)を本明細書に記載の寛容化ワクチンまたは前処置レジメン(例えば、ECDI固定脾細胞、ECDI固定Bリンパ球、ECDI固定遺伝子改変細胞)で寛容化するための例示的な方法を示す。移植片は、ヒトからのまたは有蹄動物を含むがこれらに限定されない非ヒト動物からの細胞、組織および/または臓器であり得る。例えば、膵島細胞を、例えば、死体または生存ヒトドナー、例えば、MHC不適合ドナー、ハプロイド一致ドナーなど、または遺伝子改変もしくは遺伝子非改変有蹄動物(例えば、ブタ)から抽出し、ヒトレシピエント、例えば、糖尿病に罹患している対象に移植することができる。
【0423】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの細胞を、移植片と同じドナーの細胞を使用して調製することができる。一部の場合には、MHC不適合またはハプロイド一致ドナーは、移植レシピエントと部分的MHC適合である。一部の場合には、部分的適合ドナーは、移植レシピエントと少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を共有し得る。一部の場合には、部分的適合ドナーは、移植レシピエントと少なくとも1つのMHCクラスI対立遺伝子(例えば、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子)を共有し得る。一部の場合には、部分的適合ドナーは、移植レシピエントと少なくとも1つのMHCクラスI対立遺伝子(例えば、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子)および少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を共有し得る。一部の場合には、1つまたは複数の共有MHC対立遺伝子は、MHCクラスI Cを含まない。
【0424】
寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの細胞を、移植ドナーとは異なるドナーからの細胞を使用して調製することができる。例えば、寛容化ワクチンまたは前処置レジメンを、細胞のドナーからの細胞を使用して調製することができ、移植片は、別の移植ドナーからのものであり得る。一部の場合には、細胞のMHC不適合またはハプロイド一致ドナーは、移植ドナーと部分的MHC適合である。一部の場合には、細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーと少なくとも1つのMHCクラスI対立遺伝子(例えば、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子)および少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を共有し得る。一部の場合には、1つまたは複数の共有MHC対立遺伝子は、MHCクラスI Cを含まない。一部の場合には、細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーと少なくとも1つのMHCクラスI対立遺伝子(例えば、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI
B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子)および少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を共有し得、移植ドナーおよび移植レシピエントによって共有されるMHCクラスII対立遺伝子が同じMHCクラスII対立遺伝子である場合、移植レシピエントと少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を共有し得る。一部の場合には、1つまたは複数の共有MHC対立遺伝子は、MHCクラスI Cを含まない。
【0425】
ドナーからの細胞(例えば、脾細胞)をECDIにより固定し、移植レシピエントにおけるグラフト拒絶反応を抑制するために使用する。寛容化ワクチンまたは前処置レジメン(例えば、異種グラフトまたは同種グラフトドナーからのECDI処理アポトーシス性脾細胞)を移植前および後にレシピエントに投与して、異種グラフトまたは同種グラフトドナーからの寛容化ワクチンまたは前処置レジメンがレシピエントによる異種グラフトまたは同種グラフトに対する拒絶反応を抑制することができるかどうかを判定する。レシピエントのPBMCにおけるT細胞活性化を、実施例1で説明したように、移植および寛容化ワクチンまたは前処置レジメンの投与後に調査する。
【0426】
例えば、移植を必要とするヒトレシピエントをECDI固定細胞(例えば、ECDI固定脾細胞)で処置して、レシピエントを移植に対して寛容化する。ECDI固定細胞を遺伝子改変することができ、その結果、これらの細胞は、例えば、GGTA1、CMAHおよびB4GALNT2をコードする1つまたは複数の遺伝子の破壊を有することになる。例えば、細胞は、GGTA1のみが破壊されていること、またはCMAHのみが破壊されていること、またはB4GALNT2のみが破壊されていることがある。細胞はまた、GGTA1およびCMAHが破壊されていること、GGTA1およびB4GALNT2が破壊されていること、またはCMAHおよびB4GALNT2が破壊されていることがある。細胞は、GGTA1、CMAHおよびB4GALNT2が破壊されていることがある。一部の場合には、細胞は、NLRC5、TAP1、C3、CXCL3、CXCL10、MHCIITA、MICA、MICB、NKG2DL、TNFR、PERVまたはこれらの任意の組合せをコードする1つまたは複数の遺伝子のさらなる破壊を有することがある。一部の場合には、細胞は、ICP47、CD46、CD55、CD59、HLA-G、HLA-E、B2M、PD-L1、PD-L2、Spi9、ガレクチン、IL-37、CD40:CD40L遮断剤、ST6Gal1、FasL、これらの任意の機能性断片、またはそれらの任意の組合せをコードする、1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを有し得る。一部の場合には、細胞のその表面をCD47でコーティングすることができる。
【0427】
ECDI固定細胞を移植の約7日前にレシピントに投与すること、0日目の移植に付随して投与すること、および/または移植の約1日後に再び投与することができる(
図3および
図4)。CD40/CD40L経路遮断剤(例えば、アンタゴニスト性抗CD40抗体、アンタゴニスト性抗CD154(CD40L)抗体、アンタゴニスト性抗CD40 mAb抗体、Fcが操作されたアンタゴニスト性CD40L抗体、アンタゴニスト性抗gp39抗体、2C10、2C10R4、ASKP1240、4D11、ブレセルマブ、BI-655064、HCD122、CFZ533、ch5D12、FFP104、CDP7657、BG9588、ルプリズマブ、トラリズマブ、IDEC-131、ダピロリズマブ、レトリズマブ、BMS-986004、VIB4920、もしくはMEDI4920)、ラパマイシン、コンプスタチン、α-IL-6R、sTNFR、またはこれらの任意の組合せの用量も、移植の約8日前、ならびに移植の7および14日後にレシピエントに投与することができる(
図4)。CD40/CD40L経路遮断剤の用量は、レシピエント体重1kg当たりアンタゴニスト性抗CD40抗体少なくとも約30mgであり得る。一部の場合には、CD40/CD40L経路遮断剤の用量は、約5~10mg/kgであり得る。
【0428】
必要に応じて、B細胞標的化剤(例えば、B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)、またはこれらの任意の組合せも、移植の約8日前、ならびに移植の7および14日後にレシピエントに投与することができる。B細胞を標的とする生物製剤は、Rituximab、または抗CD20抗体であり得る。
(実施例3)
免疫抑制の維持を用いないヒトまたは非ヒト霊長類における膵島を移植することによるおよび同じドナーからの寛容化ワクチン(または前処置レジメン)を用いる糖尿病の処置。
【0429】
本実施例は、in vivoでのECDI固定ドナー細胞の免疫抑制効果を調査する。異種または同種供給源からのECDI固定脾細胞を、膵島を移植したヒトまたは非ヒト霊長類に投与することによって、ヒトまたは非ヒト霊長類におけるグラフト拒絶反応の可能性を最小限に抑える。
【0430】
説明に役立つ実例では、糖尿病哺乳動物対象、例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類に、膵島、例えばブタ膵島、の同種グラフトまたは異種グラフトを移植する。ヒトまたは非ヒト霊長類にECDI固定ドナー脾細胞を移植の7日前におよび必要に応じて移植の1日後に静脈内注入により投与する。免疫抑制薬を移植の当日から移植後21日目まで投与する(
図3)。ECDI処理脾細胞は、移植片に対する寛容を促進し、その結果、免疫抑制の中止にもかかわらず、移植片拒絶反応のリスクを低下させ、膵島による機能的状態の維持を可能にすると予想される。少用量の外因性インスリンを移植後21日目まで投与することができる。正常血糖値を維持するために必要な外因性インスリンを移植の当日に低減させることができ、21日目には完全に中止することができる。
【0431】
血糖値およびCペプチドレベルを測定し、対照と比較する。例えば、非ヒト霊長類の処置のために、表1に概要を示す群に関してストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルを使用することができる。
【0432】
表1:糖尿病の非ヒト霊長類ストレプトゾトシン誘発モデルにおける膵島移植片と寛容化前処置レジメンの有効性を試験するための例示的処置群。+は、処置を投与することを示し、-は、処置を投与しないことを示す。
【表1】
【0433】
群1については、血糖値は、移植直後に正常になり、21日目にインスリンの中止にもかかわらず引き続き正常であると予想される。群1についての血糖値は、移植後100日目を過ぎても外因性インスリンなしで正常なままであると予想される。移植後のピーク値、ランダムレベル、ならびに空腹条件下およびグルコース刺激条件下でのレベルを含む、血中Cペプチドレベルを試験することができ、血中Cペプチドレベルは、群1については移植後に上昇して長期間ベースラインより高いままであると予想され、これは、移植された膵島が機能していることを示す。
【0434】
ヒトまたは非ヒト霊長類のグルコース代謝は、例えば、静脈内グルコース負荷試験(IVGTT)、混合食負荷試験(MMTT)、または膵島ベータ細胞機能をモニタリングするために確立された任意の他の代謝試験によって調査することができる。IVGTTでは、外因性グルコースをヒトまたは非ヒト霊長類に注射し、注射後、経時的に血糖値を測定する。IVGTTを移植後28日目および90日目にヒトまたは非ヒト霊長類に対して実行することができる。群1の対象は、注射後により急速に血糖値を低下させ、グルコース濃度曲線下面積の低減を示すと予想される。
(実施例4)
寛容化ワクチン(または前処置レジメン)および抗CD40/CD40L剤での循環免疫細胞レベルの抑制。
【0435】
本実施例は、異種移植または同種移植後の循環免疫細胞のレベルに対する寛容化ワクチンまたは前処置レジメン(例えば、ECDI固定細胞)および抗CD40/CD40L剤(例えば、アンタゴニスト性α-CD40抗体)の効果を調査する。循環免疫細胞のレベルは、移植片拒絶反応の指標になり得る。ECDI固定細胞およびアンタゴニスト性α-CD40抗体は、異種移植または同種移植後のレシピエントにおける循環免疫細胞のレベルをモジュレートすることができる。循環免疫細胞を、CD8+CD2hiCD28-エフェクターメモリーT細胞、CD4+CD25hiFoxp3+CD127low調節性T細胞、およびCD8+CD122+自然サプレッサー細胞について試験する。ECDI固定細胞およびα-CD40抗体は、CD8+CD2hiCD28-エフェクターメモリー細胞の移植後増幅を阻害する、CD4+CD25hiFoxp3+CD127low調節性T細胞のパーセンテージおよび/もしくは絶対数を増加させる、CD8+CD122+自然サプレッサー細胞のパーセンテージおよび/もしくは絶対数を増加させる、またはこれらの組合せであると予想される。
CD8+CD2hiCD28-エフェクターメモリーT細胞
【0436】
ヒトまたは非ヒト霊長類に異種または同種膵島を移植し、循環CD8+CD2hiCD28-エフェクターメモリーT細胞のレベルをフローサイトメトリーにより判定する。寛容化ワクチンを投与しない場合、移植を受けるヒトまたは非ヒト霊長類における循環CD8+CD2hiCD28-エフェクターメモリーT細胞のレベルは、ベースライン対照(移植片なし)と比較して増加すると予想される。CD8+CD2hiCD28-エフェクターメモリーT細胞は、屠殺時に肝臓単核細胞中のCD8+T細胞区画内の存在率が高いはずである。
【0437】
ヒトまたは非ヒト霊長類の2つの群に異種または同種膵島を移植する。第1の群は対照群であり、第1の群には寛容化ワクチンを投与しない。第2の群には寛容化ワクチン(例えば、ECDI固定脾細胞)および抗CD40/CD40L剤の移植前後の注入を施す。両群における循環CD8+CD2hiCD28-エフェクターメモリーT細胞をフローサイトメトリーにより測定する。
【0438】
寛容化ワクチンの移植前後の注入は、循環CD8+CD2hiCD28-エフェクターメモリーT細胞の移植後増幅を対照群(寛容化ワクチンを投与しない)と比較して低減させる。一部の場合には、CD8+エフェクターメモリーT細胞の移植後増幅の抑制レベルは、膵島移植後の免疫抑制剤、抗CD40抗体、および/またはラパマイシンの長期投与から観察されるものと同等である。
CD4+CD25hiFoxp3+CD127low調節性T細胞
【0439】
異種移植または同種移植後の循環CD4+CD25hiFoxp3+CD127low調節性T細胞のレベルに対する寛容化ワクチン(例えば、ECDI固定脾細胞)およびアンタゴニスト性α-CD40抗体の効果を調査する。低い循環CD4+CD25hiFoxp3+CD127low調節性T細胞レベルは、移植片拒絶反応の指標になり得る。
【0440】
ヒトまたは非ヒト霊長類の2つの群に異種または同種膵島を移植する。第1の群は対照群であり、第1の群には寛容化ワクチンを投与しない。第2の群には寛容化ワクチン(例えば、ECDI固定脾細胞)および抗CD40/CD40L剤の移植前後の注入を施す。循環CD4+CD25hiFoxp3+CD127low調節性T細胞を移植の当日、移植後7日目、50日目および100日目にフローサイトメトリーにより測定する。ナイーブ哺乳動物対象、例えばヒトまたは非ヒト霊長類、からの循環CD4+CD25hiFoxp3+CD127low調節性T細胞のレベルを追加の対照として使用する。
【0441】
フローサイトメトリー結果は、寛容化ワクチン(例えば、ECDI固定脾細胞)および抗CD40/CD40L剤の移植前後の注入が、寛容化ワクチンおよび抗CD40/CD40L剤を施さなかった対照レシピエントと比較して循環CD4+CD25hiFoxp3+CD127low調節性T細胞の増加を促進することを示すと予想される。寛容化ワクチンを投与したヒトまたは非ヒト霊長類におけるこれらの調節性T細胞の移植後増加は、一部の場合には、膵島移植後に抗CD40抗体およびラパマイシンでの維持免疫抑制を施す対象について観察される増加と同等であると予想される。
CD8+CD122+自然サプレッサー細胞
【0442】
異種移植または同種移植後の循環CD8+CD122+自然サプレッサー細胞のレベルに対する寛容化ワクチン(例えば、ECDI固定脾細胞)およびアンタゴニスト性α-CD40抗体の効果を調査する。低い循環CD8+CD122+自然サプレッサー細胞レベルは、移植片拒絶反応の指標になり得る。
【0443】
ヒトまたは非ヒト霊長類の2つの群に異種または同種膵島を移植する。第1の群は対照群であり、第1の群には寛容化ワクチンを投与しない。第2の群には寛容化ワクチン(例えば、ECDI固定脾細胞)および抗CD40/CD40L剤の移植前後の注入を施す。循環CD8+CD122+自然サプレッサー細胞を異種移植または同種移植の当日、ならびに異種移植または同種移植後7日目、50日目および100日目にフローサイトメトリーにより測定する。ナイーブヒトまたは非ヒト霊長類からの循環CD8+CD122+自然サプレッサー細胞レベルを追加の対照として使用する。
【0444】
フローサイトメトリー結果は、寛容化ワクチンおよび抗CD40/CD40L剤の移植前後の注入が、寛容化ワクチンおよび抗CD40/CD40L剤を施していない対照レシピエントと比較して循環CD8+CD122+自然サプレッサー細胞の増加を促進することを示すと予想される。寛容化ワクチンレシピエントにおけるこれらの自然サプレッサー細胞の移植後増加は、一部の場合には、膵島移植後に抗CD40抗体およびラパマイシンでの維持免疫抑制を施すレシピエントにおいて観察される増加と同等である。
(実施例5)
寛容化ワクチンおよび追加の免疫抑制剤でのヒトおよび非ヒト霊長類などの哺乳動物対象における膵島異種グラフトおよび/または同種グラフト生存の延長
【0445】
本実施例は、ECDI固定ドナー細胞(寛容化ワクチン)を他の免疫抑制薬と組み合わせて使用する免疫拒絶反応を抑制する例示的方法(
図4)を示す。新規前処置レジメンの免疫寛容原性有効性を、ヒトまたは非ヒト霊長類などの哺乳動物対象における膵島(例えば、異種移植または同種移植膵島、ブタ膵島、または幹細胞由来の膵島)の門脈内移植の設定で研究する。レジメンは、(1)ECDI固定細胞(寛容化ワクチン)を用いて送達される抗原、(2)リツキシマブを伴うまたは伴わない、ラパマイシン、可溶性TNF受容体(sTNFR)、およびアンタゴニスト性抗IL-6R抗体、および(3)アンタゴニスト性抗CD40 Ab 2C10または2C10R4の、移植前後の投与を含む。
【0446】
ECDI固定ドナー脾細胞は、例えばクローンブタドナーからの、サイトカイン動員脾B細胞から調製する。ドナー脾臓は、例えば、クローンブタドナーから脾摘出術を使用して新たに採取する。ドナー脾B細胞をex vivoで増幅させる。約0.25×109/kgのECDI固定ドナー脾細胞を、レシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類)に移植の7日前に静脈内投与する。ドナー脾B細胞をレシピエントに移植の1日後にも投与する。
【0447】
移植を基準にして-7日目から+21日目までレシピエントにラパマイシンを5~12ng/mlの目標トラフレベルで投与する(例えば、経口的に)。可溶性TNF受容体(sTNFR)を-6日目から+21日目まで(例えば、0.5~1mg/kgの用量で)皮下投与する。アンタゴニスト性抗IL-6R抗体を-7、0、7、14および21日目に(例えば、10mg/kgの用量で)静脈内投与する。
【0448】
一部のレシピエントについては、ECDI固定ドナー細胞の初回注入の前でもある膵島移植(異種または同種)の10日前に、リツキシマブを用いてB細胞枯渇を開始する。20mg/kgのリツキシマブの4用量を、移植を基準にして-10、-3、+5および+12日目にレシピエントに静脈内投与する。
【0449】
一部のレシピエントについては、50mg/kgのアンタゴニスト性抗CD40 Ab
2C10または2C10R4の3用量を、-1、+7および+14日目に静脈内投与する。他のレシピエントについては、50mg/kgの抗CD40 Ab 2C10または2C10R4の4用量を、-8、-1、+7および+14日目に静脈内投与する。
【0450】
一部の場合には、クローンブタドナーからの成体ブタ膵島産物を移植片に使用することができる。例えば、ブタ膵島産物を7日間培養することができ、全ての放出基準を満たした時点で、レシピエントの体重1キログラム当たり25,000の膵島当量の用量で門脈血管アクセスポート経由で門脈内注入することができる。
【0451】
異種移植または同種移植の場でECDI固定ドナー細胞と一緒に薬学的活性薬剤を使用することの有効性を判定するためにレシピエント(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類)を試験する。例えば、T細胞活性化ならびに循環調節性T細胞、エフェクターメモリーT細胞および自然サプレッサーT細胞のレベルを経時的にモニタリングすることができる。ECDI処理脾細胞、ラパマイシン、sTNFR、アンタゴニスト性抗IL-6R抗体およびアンタゴニスト性抗CD40 Ab(リツキシマブを伴うまたは伴わない)の移植前後レジメンは、ECDI処理脾細胞を施さない対象と比べて、グラフト生存を延長させる、エフェクターメモリーT細胞の活性化および増幅を制限する、ならびに調節性T細胞および自然サプレッサーT細胞の活性化および増幅を促進すると予想される。
(実施例6)
腎臓および膵島同種グラフトに対する寛容誘導の臨床移行
【0452】
死体グラフトドナー
【0453】
死体(例えば、死亡)ドナー同種移植(例えば、腎臓または膵島同種グラフト)は、本開示の寛容化ワクチンおよびプロトコールを使用する寛容誘導にさらなる課題を提示する。本明細書で開示するプロトコールの一部は、0日目の移植を基準にして-7日目と+1日目の両方におけるアポトーシス性ドナー白血球の移植前後の注入を含み、これらのプロトコールは、小型および大型非ヒト動物実験モデルにおいて有効であることが判明した。しかし、死亡ドナー同種移植にこのプロトコールを直接移行させることは、(1)予定ドナーの正体および利用可能性がドナー死亡時まで分からない可能性があるため、および(2)一部のタイプのグラフト(例えば、腎臓または膵臓)をドナー(例えば、死亡ドナー)からの回収後7日間、体外で保管することができないため、困難である。
図2は、これらの制限を克服できる方法のプロセス概要の概略図である。
【0454】
予定の死体ドナーが前もって特定された場合(例えば、脳死した心拍のあるドナー(BDD))、死体ドナー同種移植(例えば、腎臓の)の前に寛容誘導白血球の供給源としての第2の好適なドナーを特定することにより、本明細書に記載の寛容化ワクチンを使用する寛容誘導プロトコールを臨床の場に移行させることができる。第2のドナーからの白血球を予定同種グラフトに対するドナー特異的寛容の誘導に使用することができる。例えば、Bリンパ球を第2の生体ドナーから1回もしくは複数回の採血および/もしくはアフェレーシス手順で採取し、ex vivoで増幅させることができ、または脾細胞を第2の死体ドナーから採取し、必要に応じてex vivoで増幅させることができる。第2のドナーは、第1の(予定同種移植)ドナーと完全MHC適合または部分的MHC適合であり得る。一部の場合には、寛容化ワクチンの調製または前処置レジメンに使用される免疫寛容原性細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーとハプロイドが一致している。一部の場合には、寛容化ワクチンの調製または前処置レジメンに使用される免疫寛容原性細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーと1つまたは複数のMHC対立遺伝子を共有する。例えば、免疫寛容原性細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーと、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子、MHCクラスII
DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子またはこれらの組合せのうちの1つまたは複数を共有し得る。寛容化ワクチンの調製または前処置レジメンに使用される免疫寛容原性細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーと1つのDR対立遺伝子を共有し得る。一部の場合には、細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーと少なくとも1つのMHCクラスI対立遺伝子(例えば、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子)および少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を共有し得る。一部の場合には、細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーと少なくとも1つのMHCクラスI対立遺伝子(例えば、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子)および少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を、ならびに移植レシピエントと少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を、共有し得る。一部の場合には、MHCクラスII対立遺伝子は、免疫寛容原性細胞のドナーと移植ドナーとレシピエントとの間で共有される。一部の場合には、1つまたは複数の共有MHC対立遺伝子は、MHCクラスI Cを含まない。
【0455】
第2の生体ドナーについては、反復採血によってまたは1回もしくは2、3回のアフェレーシス手順によって採取したドナーBリンパ球(MHCクラスI抗原とMHCクラスII抗原の両方を発現する)をex vivoで増幅させることによって、死体ドナー(例えば、腎臓同種グラフト)に対する寛容の誘導に十分なドナー白血球を得ることができる。ヒトBリンパ球のex vivoでの大規模増幅を可能にするプロトコールは、Su KY et al.(J Immunol November 15, 2016, 197 (10) 4163-4176)で報告されている。
【0456】
第2の死体ドナーから適合、部分的適合またはハプロイド一致脾臓を入手できる次第、プロトコールを開始し、-7日目に寛容誘導脾細胞、その後、0日目に移植片(例えば、腎臓移植片)の注入、そして+1日目にex vivo増幅脾B細胞の注入を行うことができる(
図2および
図3)。脾細胞の大部分は、MHCクラスIとMHCクラスIIの両方を発現するBリンパ球であり、したがって、ECDI固定ドナー脾細胞を、同種グラフト(例えば、腎臓、膵島、心臓)に対する寛容誘導のためにうまく使用することができる。1つのMHCクラスI対立遺伝子および1つのMHCクラスII対立遺伝子を生体ドナーと共有する死体ドナーから調製した脾細胞および増幅脾B細胞の移植前後の注入により可能になる寛容誘導は、連鎖抑制に依存する。連鎖抑制および感染性寛容の現象は、実験的移植寛容文献に記載されている(Waldmann HによりNature Immunology 2008において総説されている)。
【0457】
膵島移植レシピエントのために-7日目の寛容化ワクチンを死体ドナー脾臓から調製し、同日に予定膵島移植レシピエントに注入することができる。これは、単離された膵島を移植前に7日間培養下で保持することができるため、膵島移植の状況下で実行できる。+1日目の寛容化ワクチンは、死体ドナー脾臓の分割量に由来するex vivo増幅B細胞に基づき得る(例えば、
図5に示す通り)。したがって、膵島移植に使用するための寛容化ワクチン接種の臨床移行を、非ヒト霊長類における膵島または腎臓同種グラフトの前臨床研究において詳しく調査することができる手法に続いてすぐに行うことができる。
【0458】
生体グラフトドナー
【0459】
本明細書に記載の寛容化ワクチンを使用する寛容誘導プロトコールを、ドナー白血球の臨床的に適切な供給源を特定することにより生体ドナー同種移植(例えば、腎臓または膵島)の臨床の場に移行させることができる。あるいはまたは加えて、代用白血球の好適な供給源を特定し、予定同種グラフトに対するドナー特異的寛容を誘導するために使用することができる。ドナー白血球の供給源として生体ドナーの脾臓を回収することで、感染を阻止するドナーの能力を損なうことがあり、そのため、ドナー白血球の代替供給源のほうが好ましいこともある。例えば、Bリンパ球をドナーから1回もしくは複数回の採血および/もしくはアフェレーシス手順で採取し、ex vivoで増幅させることができ、または移植ドナーとの好適な適合者もしくは部分的適合者である別の細胞ドナーを特定することができる。
【0460】
別のドナーを免疫寛容原性白血球および同種グラフトに使用することができる。例えば、予定生体移植ドナーと完全に適合しているまたは部分的に適合している死体ドナーからの脾細胞は、免疫寛容原性白血球の臨床的に実行可能な供給源である。一部の場合には、寛容化ワクチンの調製または前処置レジメンに使用される免疫寛容原性細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーとハプロイドが一致している。一部の場合には、寛容化ワクチンの調製または前処置レジメンに使用される免疫寛容原性細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーと1つまたは複数のMHC対立遺伝子を共有する。例えば、部分的適合ドナーは、移植ドナーと、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子またはこれらの組合せのうちの1つまたは複数を共有し得る。寛容化ワクチンの調製または前処置レジメンに使用される免疫寛容原性細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーと1つのDR対立遺伝子を共有し得る。一部の場合には、細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーと少なくとも1つのMHCクラスI対立遺伝子(例えば、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子)および少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を共有し得る。一部の場合には、細胞の部分的適合ドナーは、移植ドナーと少なくとも1つのMHCクラスI対立遺伝子(例えば、MHCクラスI
A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスI C対立遺伝子)および少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を共有し得、MHCクラスII対立遺伝子が、免疫寛容原性のドナーと、移植ドナーと、移植レシピエントとによって共有される場合、移植レシピエントと少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子(例えば、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、MHCクラスII DP対立遺伝子)を共有し得る。一部の場合には、1つまたは複数の共有MHC対立遺伝子は、MHCクラスI Cを含まない。
【0461】
生体ドナーからの移植片については、反復採血によってまたは1回もしくは2、3回のアフェレーシス手順によって採取したドナーBリンパ球(MHCクラスI抗原とMHCクラスII抗原の両方を発現する)をex vivoで増幅させることによって、同じドナー同種グラフト(例えば、腎臓同種グラフト)に対する寛容の誘導に十分なドナー白血球を得ることができる。ヒトBリンパ球のex vivoでの大規模増幅を可能にするプロトコールは、Su KY et al.(J Immunol November 15, 2016, 197 (10) 4163-4176)において報告されている。
【0462】
死体ドナーから適合、部分的適合またはハプロイド一致脾臓を入手でき次第、プロトコールを開始し、-7日目の寛容誘導脾細胞、その後、0日目に生体ドナー移植片(例えば、腎臓移植片)の注入、そして+1日目にex vivo増幅脾B細胞の注入を行うことができる(
図2および
図3)。1つのMHCクラスI対立遺伝子および1つのMHCクラスII対立遺伝子を生体ドナーと共有する死体ドナーから調製した脾細胞および増幅脾B細胞の移植前後の注入により可能になる寛容誘導は、連鎖抑制に依存する。連鎖抑制および感染性寛容の現象は、実験的移植寛容文献に記載されている(Waldmann HによりNature Immunology 2008において総説されている)。
(実施例7)
臨床の場における慢性および全身性免疫抑制の非存在下でのヒトレシピエントの膵島同種グラフトもしくは異種グラフトに対する拒絶反応の防止または膵島同種グラフトもしくは異種グラフトの生存の延長
【0463】
本実施例は、臨床の場において異種グラフトレシピエントの慢性および全身性免疫抑制の非存在下でヒトレシピエントの異種グラフト(細胞、組織もしくは臓器異種グラフト、例えば膵島)に対する拒絶反応を防止するおよび/または異種グラフトの生存を延長する例示的手法を示す。この手法は、次の3つの構成要素を含み、統合する:(1)膵島;αGal、MHCクラスI、補体C3およびCXCL10の発現の欠損および/もしくは低減を有する、ならびに/またはHLA-Gおよび/もしくはHLA-Eをトランスジェニック発現する、必要に応じて遺伝子操作された膵島;(2)αGal、Neu5GcおよびSda/CADの発現の欠損/低減を有する、ならびに/またはHLA-Gおよび/もしくはHLA-EをヒトCD47、ヒトPD-L1、ヒトPD-L2とともにもしくはなしでトランスジェニック発現する、遺伝子操作された寛容化ワクチン(例えば、ドナーアポトーシス性および非アポトーシス性単核細胞、例えば脾細胞)(遺伝子操作されたワクチン);および(3)アンタゴニスト性抗CD40 mAb、Fcが操作されたアンタゴニスト性抗CD40L抗体、アンタゴニスト性抗gp39 mAb、B細胞標的化剤(例えば、B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)、ラパマイシンおよび一過性抗炎症療法(例えば、アンタゴニスト性抗IL-6受容体mAb、可溶性TNF受容体、NFκB阻害剤(例えば、デヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ))および/またはアルファ1アンチトリプシンの任意の組合せ)の任意の組合せを含む、一過性免疫抑制の投与。(
図4)。B細胞を標的とする生物製剤の非限定的な例としては、Rituximabおよび他の抗CD20抗体が挙げられる。
【0464】
破壊されたGGTA1、CMAHおよびB4GALNT2とHLA-G(またはHLA-Eおよび/またはB2M)、ヒトCD47、ヒトPD-L1およびヒトPD-L2を発現する導入遺伝子とを含む寛容化ワクチンドナーを生成する。これらのワクチンドナーは、αGal欠損、Neu5Gc欠損、Sda/CAD欠損、ならびにHLA-Gおよび/またはHLA-E、ヒトCD47、ヒトPD-L1およびヒトPD-L2の発現を有する、単核細胞(例えば、脾細胞)を提供することができる。単核細胞(例えば、脾細胞)の一部をECDI固定によりアポトーシス性にすることができる。アポトーシス性および非アポトーシス性単核細胞(例えば、脾細胞)を混合して寛容化ワクチンを作製することができる。グラフトドナーは、ワクチンドナーにおけるNLRC5(またはTAP1)、C3およびCXCL10遺伝子をさらに破壊することにより作製することができる。グラフトドナーは、ヒトレシピエントへの移植のための細胞、組織または臓器(例えば、膵島)を提供することができる。例えば体細胞核移植を使用して、クローニングによりワクチンドナーおよびグラフトドナーの集団を増幅させることができる。
【0465】
グラフトドナー(例えば、ヒトまたはブタ)からのグラフトをレシピエントに移植する。ワクチンドナー(例えば、ワクチンドナーブタ)により提供された細胞を含む寛容化ワクチンを移植の7日前および1日後にレシピエントに投与する。一部の場合には、ワクチンドナーとグラフトドナーは同じである。一部の場合には、グラフトドナーとワクチンドナーは、遺伝学的に同一である。一部の場合には、ワクチンドナーおよび/またはグラフトドナーは、死体である。一部の場合には、ワクチンドナーとグラフトドナーは異なる。一部の場合には、グラフトドナーとワクチンドナーは、遺伝学的に同一でない。一部の場合には、ワクチンドナーおよび/またはグラフトドナーは、死体でない。免疫抑制剤を移植より前の時点から移植後21日目まで投与する。免疫抑制剤は、アンタゴニスト性α-CD40抗体、アンタゴニスト性抗CD40 mAb抗体、Fcが操作されたアンタゴニスト性CD40L抗体、B細胞標的化剤(例えば、B細胞を枯渇させる生物製剤、例えば、CD20、CD19もしくはCD22を標的とする生物製剤、および/またはB細胞をモジュレートする生物製剤、例えば、BAFF、BAFF/APRIL、CD40、IgG4、ICOS、IL-21、B7RP1を標的とする生物製剤)、ラパマイシン、ならびに/または抗炎症剤、例えば、コンプスタチン、α-IL-6R抗体、sTNFR、およびNFκB阻害剤(例えば、デヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ))の、任意の組合せを含み得る。B細胞標的化剤の非限定的な例としては、Rituximabおよび他の抗CD20抗体が挙げられる。この手法は、レシピエントの慢性および全身性免疫抑制の非存在下でヒトレシピエントにおける異種グラフト(例えば、ブタ膵島)に対する拒絶反応を防止することおよび/または異種グラフトの生存を延長することができる。
(実施例8)
臨床試験のためのヒトおよび/またはブタADL産物のex vivo増幅
【0466】
非ヒト霊長類におけるおよびヒトにおける0日目の腎臓および/または膵島移植を基準にして-7および+1日目に注入するためのアポトーシス性ドナー白血球(ADL)の目標用量は、近似的に、レシピエント種の脾臓に存在する脾細胞の数またはその約80%に相当し得る。例えば、ヒトレシピエントにおける0日目の腎臓および/または膵島移植を基準にして-7および+1日目に注入するためのアポトーシスドナー白血球の目標用量は、近似的に、1つのヒト脾臓から入手可能な脾細胞の数またはその約80%であり得る。別の例では、目標用量は、ネズミ科動物モデルでの研究により提案されているように、マウスについては約1×108であり得る。別の例では、目標用量は、非ヒト霊長類同種移植モデルでの研究により提案されているように、約0.25×109/kgまたはそれより高い用量であり得る。この多くの細胞を得るために、かなりのex vivo増幅が必要であり得る。
脾臓からのex vivo増幅
【0467】
アポトーシス性ドナー白血球を脾細胞(例えば、死体ドナー脾臓からの)から生成することができる。例示的プロトコールを
図5に示す。脾細胞を単離し、RBC溶解に供し、ナイロンウールカラムでのB細胞濃縮に供する。
【0468】
単離された脾細胞の第1の画分(例えば、約80%)を使用して、移植を基準にして第1の時点(例えば、-7日目)の注入のためのアポトーシス性ドナー白血球(ADL)の用量を生成することができる。脾細胞を本明細書で開示するようにECDI処理し、放出試験に供し、レシピエントに注入することができる。
【0469】
単離された脾細胞の第2の画分(例えば、約20%)を取っておき、+1日目の注入のためのADLの第2の用量を生成するために使用することができる。第2の画分をB細胞について濃縮するための選択(例えば、Miltenyi CliniMACSを使用する陽性または陰性選択)に供することができ、ex vivoで(例えば、hIL-2、hIL-4、h-IL-21、hBAFF、およびh-マルチマーCD40Lの存在下で8日にわたって)増幅することができる。ECDI処理、放出試験、および移植レシピエントへの(例えば1日目の)注入の前に、濃縮B細胞を少なくとも15倍増幅することができる。
末梢血のからのex vivo増幅
【0470】
血液500mL当たり1×108のB細胞に相当する、年齢25~50歳のヒト個体(例えば、生体腎臓ドナー)の末梢血1μL当たりおおよそ200のCD19+B細胞が存在すると仮定し、B細胞が初回濃縮プロセスにおいておよびECDI固定中に(最大50%)喪失されると仮定すると、レシピエントにおける寛容誘導に十分な数の細胞を得るには≧200倍ex vivo増幅(例えば、約400倍)が必要であり得る。例えば、体重80kgのレシピテントについては、B細胞約4×1010個は、-7日目と+1日目両方のADL注入のために、ECDI固定後のB細胞2×1010個を得る必要があり得る。
【0471】
例示的プロトコールを
図7に示す。このプロトコールを移植の少なくとも3~4週間前に開始することができる。1回または複数回の低体積白血球アフェレーシス手順を非サイトカイン刺激生体ドナー(例えば、腎臓ドナー)に対して行う。CliniMACSを使用して陽性または陰性選択によってB細胞を濃縮して、B細胞おおよそ0.5×10
9という投入細胞収量を得る。目標細胞用量を得るためにex vivoで濃縮したB細胞を少なくとも200倍増幅させる(例えば、hIL-2、hIL-4、h-IL-21、hBAFF、およびh-マルチマーCD40Lの存在下で、約16日にわたって)。増幅後、B細胞を本明細書で開示するようにECDI処理し、放出試験に供し、レシピエントに(例えば、移植を基準にして-7日目および+1日目に)注入する。
【0472】
増幅プロトコールは、CD20ビーズを使用する磁気選別によって末梢血から循環B細胞を濃縮すること、ex vivoでGREX100MフラスコにおいてrhIL-10、rIL-4、rhBAFF、rhTLR9a、rhCD40L-マルチマー型、およびrhAPRILの存在下で増幅することも含み得る。増幅された細胞を回収前に24時間、rhIL-21で刺激することができる。
細胞増幅のための標準実施要領の確立
【0473】
例示的な標準実施要領(SOP)を以下のように確立することができる。
【0474】
凍結保存/解凍した、または新たに使用する、Ficoll-Paque PLUS密度勾配を用いて、血液試料から単核細胞を単離し、ヒト成熟ナイーブB(CD19+CD27-IgM+IgD+)細胞をEasySep Human Naive B Cell Enrichment Kitにより陰性選択によって濃縮する。rh IL-2(50ng/ml)、IL-4(10ng/ml)、IL-21(10ng/ml)およびBAFF(10ng/ml)を補充した、5%ヒトAB血清を含有するRPMI 1640培地(R5培地)中、様々な密度でB細胞を8~16日の間、培養する。培養プレートもしくは皿にCD154発現細胞(例えば、CD40low間質細胞系)を一晩、事前播種するか、または培養プレートもしくは皿をCD40L-マルチマー(500ng/ml)の存在下で培養する。4および6日目(ならびに細胞を分割し、16日間培養する場合には12および14日目)に、培地の50%を、サイトカインを含有する新鮮な予温したR5培地で置換する。ex vivo増幅期間の終了時に、細胞を回収し、計数し、小分けし、使用するまで液体窒素中で凍結保存する。これらの条件、低投入細胞数(1条件当たり1~10×103またはそれ未満)および密度(100 B細胞/cm2)、ならびに6ウェルプレートまたは10cm組織培養皿のどちらかを使用して、8および16日にわたって増幅倍率および生存率を、健常ヒトボランティア、非ヒト霊長類および新生仔ブタドナー(各々n=3)からの末梢血由来B細胞、ならびに死亡ヒトドナーおよび新生仔ブタドナー(各々n=3)からの脾臓由来B細胞について比較する。
【0475】
実験計画(DOE)統計的方法を使用して、以下のパラメーターを評価する:(1)3つの投入細胞密度;(2)3つの異なる培養容器(培養皿、Tフラスコ、およびGREX100Mフラスコ);(3)CD40L-マルチマー(非存在、低、中および高濃度)およびCD40low間質細胞;(4)IL-2対IL-10(各々非存在または低、中もしくは高濃度);(5)IL-4(非存在、低、中および高濃度);(6)培養の最終日中のみ非存在もしくは10ng/ml、または培養期間全体にわたって低、中もしくは高濃度のいずれかのIL-21;(7)BAFF(非存在、低、中および高濃度);(8)APRIL(非存在、低、中および高濃度);および(9)rhTLR9(非存在、低、中および高濃度)。ロバストなB細胞増幅をもたらす実験条件を特定する。
【0476】
DOE研究で特定した好適な実験条件を、血液500mlから単離したB細胞1×108などの多い投入細胞数の増幅に適した培養容器を使用して評価した。増幅したB細胞産物の完全品質管理(例えば、B細胞マーカーおよびMHCクラスII遺伝子産物の発現、エンドトキシン含量、生存率、生存細胞、アポトーシス性細胞および壊死細胞の計数、共培養ヒトPBLからのIL-1ベータおよびIL-6の放出などについてのフローサイトメトリー)を行う。
【0477】
a)ヒト末梢血由来のBリンパ球、b)新生仔ブタ末梢血由来のBリンパ球、c)死亡ヒト臓器ドナー脾臓由来のBリンパ球、d)新生仔ブタドナー脾臓由来のBリンパ球、およびe)非ヒト霊長類末梢血由来のBリンパ球という5つの供給源からのB細胞のex vivo増幅のためのSOPを開発する。
【0478】
生体ドナー腎臓移植の場で末梢血から単離したB細胞の実規模増幅において最適化播種密度およびサイトカイン濃度を利用することにより、プロトコールの拡張性を試験する。意図した移植日の21日前に、500mLの末梢血を採取し、陽性および陰性選択を使用してB細胞を精製する。精製したB細胞を、サイトカインと増殖因子とを補充した5Lの培地中で10日間、2G-Rex(登録商標)500M-CSで増幅させて、増幅14日目に44×109のB細胞を得、そのうちの40×109のB細胞を-7日目のワクチンに使用するが、残りの4×109のB細胞をex vivoでさらに増幅させて、+1日目のワクチンとして使用するための40×109のB細胞にする。
(実施例9)
腎臓同種グラフトに対するドナー特異的寛容を誘導する点でのex vivo増幅ADLの移植前後の注入の有効性
【0479】
ADLでの先行陰性ワクチン接種は、安全であり、その有効性は、非ヒト霊長類における膵島同種移植の臨床移行モデルにおけるロバストな寛容の誘導について比類ない。臨床移行可能なADL産物での非ヒト霊長類における腎臓同種移植へのその用途の拡大は、臨床の場で移植寛容試験の開始への重要な波及効果があり得る。ex vivo増幅B細胞を含むADL産物は、短期免疫抑制(SI)哺乳動物レシピエント(例えば、1つのMHCクラスII DRB対立遺伝子について適合している(1DRB適合)ヒトまたは非ヒト霊長類)における腎臓同種グラフトに対する安定した同種抗原特異的寛容を誘導すると予想される。例示的プロトコールを
図6に示す。
【0480】
安定した腎同種グラフト寛容を誘導するためのADL産物の移植前後の注入の有効性を、1DRB適合のSI非ヒト霊長類において評価する。実験群には、ex vivo増幅ドナーB細胞を含むADL産物を施し、その一方で対照群には食塩水注入を施す。n=5の群サイズを研究し、1群当たり最大2匹の追加の非ヒト霊長類を加えて、情報価値のないレシピエント(例えば、無関係の疾患に罹患しているレシピエント)の代わりに使用する。SI哺乳動物レシピエントは、両群において同一であり、長期維持薬をどのレシピエントにも投与しない。腎同種グラフト不全は、血清クレアチニン>2.5mg/dLと定義し、グラフト組織診断により確認する。
【0481】
研究用に繁殖された適格な非ヒト霊長類ドナーおよびレシピエント(検査、実験、微生物スクリーニング、ワクチン接種など)を認定ベンダーから選択する。ドナーおよびレシピエントは、定義されたMHCの差異を有する(ディープシークエンシング用のアンプリコンを生成するためにFluidigm Access Arrayを使用する高分解能MHCクラスIおよびII遺伝子型判定に基づいて、MHCクラスIが異なり、1つのMHCクラスII DRB対立遺伝子が適合している、ドナー-レシピエント対)。
【0482】
既存同種反応性記憶の証拠があるレシピエントを研究から除外することができる。レシピエントの適格性基準は、ABO適合性、負のパネル反応性抗体(PRA;OneLambda Beadアッセイ)により定義される低い記憶同種反応性、流量による負のドナー特異的抗体(DSA)、およびドナー非ヒト霊長類に対するIFN-γ ELISPOT≦12 SFC/106 PBMC(B細胞ELISPOT)を含み得る。雄または雌非ヒト霊長類レシピエントを協力するようにトレーニングし、留置する中心および門脈血管アクセスを装着する。
【0483】
非ヒト霊長類における腎臓移植は、確立された手順に従う。手短に述べると、ドナーとレシピエントの両方の全身ヘパリン化後、ドナー臓器を切除し、血管をレシピエントの腎下大動脈および大静脈と吻合する。典型的に、これは、左腎血管の長さのほうが長いことから左から右への形式で実行する。ドナー尿管の中を進んで後腹膜を通り抜け、改良Leadbetter-Politano手法を使用して初期尿管膀胱吻合を膀胱の後壁に典型的には形成する。尿漏出および尿管狭窄を回避することに特に注意を払う。両側自己腎摘出を完了した後、閉鎖する。
【0484】
ex vivoで増幅させ、ECDI固定したドナーB細胞を、レシピエント体重1kg当たり0.25×109の用量で-7および+1日目に実験レシピエントにIV注入する。おおよそ60mlの血液(体重の1%に相当する)を計画した腎移植を基準にして-21または-22日目(±2日)にドナーから採取し、非ヒト霊長類CD20ビーズを使用する磁気選別によりB細胞を精製する。あるいはまたは加えて、B細胞を白血球アフェレーシス産物から濃縮することができる。B細胞増幅プロトコールを、Suらにより報告された培養システム(J Immunol 2016, 197:4163-76)から適応させる。精製されたB細胞(血液60mlからのおおよそ24×106B細胞)をGREX100Mフラスコ(Wilson Wolf)内で5%アカゲザル血清と55μMの2-MEと2mMのL-グルタミンと100U/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシンと10mMのHEPESと1mMのピルビン酸ナトリウムと1%MEM非必須アミノ酸とを添加したRPMI 1640培地において-7日目までex vivoで増幅させる。培養培地に組換えヒトCD40L-マルチマー型、IL-2(50ng/ml)、IL-4(10ng/ml)、IL-21(10ng/ml)およびBAFF(10ng/ml)を補充する。投入細胞数、培地体積、およびCD40L-マルチマー型の濃度を実行可能性研究で最適化する。細胞を7および14日後に計数し、14日後(-7日目)に分割し、-7日目に注入しない細胞を、+1日目の注入のためにさらに8日間増幅させる。注入当日、細胞を氷上で1時間、DPBS中のECDI(3.2×108細胞当たり30mg/mL)とともに攪拌し、洗浄し、清澄化して壊死細胞および微小凝集塊を除去し、AO/PI蛍光顕微鏡法により生存率/壊死について評定する。全てのリリース基準を満たすECDI固定B細胞を、20×106細胞/mLの最大濃度でIV注入用の冷却注射器にロードする。細胞は、レシピエントへの投与まで氷上に置いたままである。ECDI固定細胞の分割量を37℃で4~6時間インキュベートし、Annexin V/PIで標識し、蛍光顕微鏡法またはフローサイトメトリーによって分析することにより、アポトーシスの誘導をin vitroでモニタリングする。
【0485】
同一の短期免疫抑制および抗炎症療法を対照および実験対象に投与する。各薬物の初回用量を0日目の移植を基準にして-8または-7日目に投与する。アンタゴニスト性抗CD40 mAb 2C10R4を50mg/kgで-8、-1、7および14日目にIV投与する。ラパマイシン(Rapamune(登録商標))を-7日目から移植後21日目まで経口(PO)投与する。目標トラフレベルは5~12ng/mlである。併用抗炎症療法は、i)-7、0、7、14および21日目における10mg/kg IVでのα-IL-6R(トシリズマブ、Actemra(登録商標))と、ii)-7および0日目における1mg/kg IVでのならびに3、7、10、14および21日目における皮下的に0.5mg/kgでのsTNFR(エタネルセプト、Enbrel(登録商標))とを用いるものである。
【0486】
主要有効性アウトカムは、拒絶反応のない同種グラフト生存(病理組織診断により確認される)を移植後365日目に示す、移植を受けた非ヒト霊長類の割合である。したがって、追跡調査は、365日目またはグラフト不全、どちらか早く起こる方、までである。ADLを施した実験群である群は、短期免疫抑制および抗炎症療法のみを施した対照群と比較して、拒絶反応のない同種グラフト生存の上昇を示すと予想される。
(実施例10)
MHCにより定義されるヒトレスポンダーを使用する、MHCにより定義されるアポトーシス性ドナーB細胞のin vitroでの樹状およびT細胞免疫調節効果
【0487】
異なる実験条件下で生成したECDI固定B細胞産物を、樹状細胞(DC)において成熟停止を誘導するそれらの能力について比較する。ヒト単球由来DCをIL-4およびGCSFで生成する。これらのDCを様々なECDI固定B細胞産物の存在または非存在下でインキュベートする。標準ECDI固定B細胞産物と、ECDI固定の前にDC成熟の阻害剤を培養物に添加する、増強産物とを比較する。ECDIでB細胞の表面にカップリングさせる、DC成熟の阻害剤は、例えば、ラパマイシン、クルクミン、ビタミンD3、Bay-117085、siCD40、コバルトプロトポルフィリン、およびα1-アンチトリプシンを含み得る。IFN-γへの早期曝露はDCにおいてSTAT-6およびNF-kB活性化を阻害するので、IFN-γも調査する。DC成熟阻止の読み取りは、i)DC表現型マーカー(CD83、CD80、CD86、MHCクラスII、CD40)の発現、ii)STAT-6リン酸化、iii)RELP核移行、iv)IL-12p70産生、v)同種刺激能、およびvi)調節表現型を有するT細胞(CD4+CD25hiCD127lowFoxp3+TregおよびCD4+CD49b+Lag-3+CD45RA-Tr1細胞)のプライミングを含む。DCにおいて成熟阻止を誘導するECDI処理B細胞産物を特定する。
【0488】
レスポンダー末梢血リンパ球(PBL)における免疫プロファイルに対するECDI固定ドナーBリンパ球の厳密な組成(抗原特異性、表面にコンジュゲートしているサイトカイン/分子、MHCの差異)の効果を評価する。様々なサイトカイン/分子(例えば、ラパマイシン、クルクミン、定義されたMHCクラスII抗原)がECDIによってそれらの表面上にコンジュゲートされているB細胞を含む、ECDI固定ドナーB細胞を生成する。漸増用量のECDI固定ドナーB細胞を添加してまたは添加せずに、完全不適合、1DRB適合、または1DQ適合ドナーレシピント対からのPBLを使用して、一方向混合リンパ球反応(MLR)を行う。
【0489】
細胞を表現型判定し、増殖を様々な時点でマルチパラメーターフローサイトメトリー(例えば、CFSE希釈、および目的の細胞サブセットを区別するマーカーについての染色を含む)により評価する。遮断抗体を添加し、明確に異なる細胞サブセットを枯渇させて、根本的なメカニズムを精査し、増強されたECDI固定B細胞産物(例えば、ラパマイシン、クルクミン、定義されたMHCクラスII抗原を伴うまたは伴わないB細胞産物)がT細胞免疫にどのような影響を与えるのかを判定する。読み取りは、i)表面マーカー、細胞内サイトカインおよび/または転写因子により判定したときにエフェクター表現型を有するCD4+およびCD8+T細胞の増殖倍率、ii)表面マーカー、細胞内サイトカインおよび/または転写因子により判定したときに調節表現型を有するCD4+およびCD8+T細胞の増殖倍率、ならびにiii)MLRにおける標的細胞に対するCD8+T細胞媒介細胞傷害性を含む。
(実施例11)
ADL注入ならびに二次リンパ器官(SLO)ドナー特異的エフェクターおよび調節性免疫細胞サブセットの効果
【0490】
本開示の前処置レジメンおよび寛容化ワクチンがどのように移植寛容を誘導するかを決定するため、ならびに移植寛容および/または拒絶の相関を特定するために、以下のアッセイを行うことができる。
【0491】
同種反応性T細胞の持続的欠失
【0492】
ナイーブな動物においては、約1~10%の循環T細胞が同種反応性であってよく、その増幅および/または収縮は、移植グラフトの運命を決定付け得る。ADL注入の直後、間接的なドナー特異性を示すCD4+T細胞を含む、同種反応性TおよびB細胞の不稔性(abortive)増幅が観察される。例えば、同種反応性TおよびB細胞は、初期には増幅を示した後、鋭い数の減少を示し得る。本開示の寛容化ワクチンに応答する同種反応性T細胞を長期的に追跡するために、以下の4つの試験を同時に実施する。
【0493】
第1に、循環中の増殖しているT細胞を、ADL注入後の様々な時点でKi67染色によって連続的に数える。Ki67+T細胞は、ADL注入後、最初は数の増加を示した後、鋭く減少すると予想される。これらの細胞を、ナイーブな、エフェクター、および記憶表現型マーカーについて同時染色して、ADL注入後に不稔性増幅を起こす特定のサブセットを特定する。エフェクター記憶T細胞は、初期には増幅を起こした後、鋭く減少すると予想される。ADL注入後のドナー特異的T細胞の欠失がアポトーシスによって媒介されるかどうかを決定するために、T細胞によるアポトーシスマーカー(例えば、FASL、TRAF、ホスファチジルセリン)の発現を、特異的抗体およびアネキシンVを使用するフローサイトメトリーによって分析する。ドナー特異的エフェクター記憶T細胞は、ADL注入後のその初期増幅後にアポトーシスを起こすと予想される。
【0494】
第2に、自己MHCクラスIIによって提示される不適合ドナー抗原に対する間接的免疫に対するADL注入の効果を決定するために、レシピエントのPBL(連続試料)および脾臓細胞(SPLC;終結時)を、ドナーPBLに由来する溶解物でパルスした自己DCと共にインキュベートする。読出しは、CD4+T細胞増殖(CFSE)、細胞内IFN-γ、IL-10、およびTGF-β染色、上清中のサイトカイン、ならびにCD4+T細胞上でのCD40Lの上方調節を含む。ADL注入は、ドナーPBLに由来する溶解物でパルスした自己DCに応答したT細胞増殖の減少をもたらすと予想されるが、第3者のPBLに応答した増殖は変化しない。ADL注入は、ドナーPBLに由来する溶解物でパルスしたDCに応答してIFN-γおよび/またはCD40Lを発現するCD4+T細胞の数および/または割合の減少をもたらすと予想される。ADL注入は、ドナーPBLに由来する溶解物でパルスしたDCに応答してIL-10およびTGF-βを発現するCD4+T細胞の数および/または割合の増加または不変化をもたらすと予想される。
【0495】
第3に、MHCクラスII四量体を使用して、ADL処置された対象および対照哺乳動物対象(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類)における間接特異性を有する抗ドナーCD4+T細胞を追跡する。非ヒト霊長類およびヒトにおけるMHCクラスII分子のペプチド結合モチーフにおける高い程度の類似性のため、NCBIのウェブサイトのヒトゲノムを用いたMamu DRB1*03:03:01配列のt-BLAST分析を実施して、ヒトホモログを決定する。Mamu DRB1*03:03:01は、HLAクラスIIによって DRB1-13ベータ鎖(受託番号PO1912)と94%同一であり、95%陽性であり、0%のギャップを有し、そのe値は1e-177である。かくして、NIH四量体施設で利用可能なHLA DRB1-13四量体が使用される。HLA DRB1-13四量体を、Mamu DRB1*03:03:01/HLA DRB1-13に対する高い親和性を有する、クラスI同種ペプチドおよび共通のクラスIIペプチドと共にロードする。免疫エピトープデータベース(IEDB)および分析資源は、IEDBにより推奨される予測方法を使用してMamu DRB1*03:03:01に対する高い結合親和性を有するドナーMHCクラスI Mamu AおよびB同種ペプチドの超可変領域中のエピトープを特定するのに役立つ(例えば、Mamu-A4*01:01は、DRB1*10.01に対する非常に高い親和性を示す;その配列はTQFVRFDSDAASQRMであり、9.6のパーセンタイル順位を有する)。これらの四量体を使用して、間接同種ペプチドおよび自己ペプチド特異性を有するCD4+T細胞を追跡することができる。間接同種ペプチド特異性を有するCD4+T細胞は、ADLを注入された哺乳動物対象において、初期増幅、次いで、数の鋭い減少を示すと予想される。
【0496】
第4に、移植されたサルにおけるドナー反応性T細胞クローンを追跡するために、TCRβ鎖CDR3領域の高効率シーケンシングを用いる。ドナー反応性T細胞クローンは、ADL注入に応答して最初は不稔性増幅を起こした後、数が減少すると予想される。RNAに基づく高効率TCRシーケンシング技術を使用して、(i)ADL注入および移植の前後の間隔でT細胞クローンの全レパートリーを比較する;ならびに(ii)その所定の分子フィンガープリントを使用することによって直接および間接ドナー特異性を示すADL後および移植後の選択的T細胞クローンをモニタリングする。この手法は、ゲノムDNAから始まる他の方法を超える利点を有する。この手法は、V遺伝子セグメント全体に及ぶ多重プライマーセットを設計および最適化する要求の多いステップを必要としない。その代わりに、ADL注入の前後でのヒトまたは非ヒト霊長類における全TCRレパートリーを、1回目のADL注入の2日後および2回目のADL注入の6日後にVDJセグメントの5’UTRおよび定常領域のプライマーを使用してシーケンシングする。これらの試験を拡張し、クローンレベルでのドナー反応性細胞の移植後増幅の規模および動力学を追跡するために、TCRシーケンシングを使用して、移植後に増幅されたCD4+Tfh細胞、CD4+TEM、CD8+TEM、およびCD107a+CD8+T細胞が、ベースライン時に存在するクローンに由来するか、またはde novoで出現するクローンに由来するかどうかを決定する。直接および間接特異性を有するドナー反応性T細胞に対するADL注入の効果を見定めるために、その分子フィンガープリントを決定する。直接特異性を有するT細胞のフィンガープリントについては、1方向の混合リンパ球反応(MLR)を、応答因子として移植前、ADL前のAPC枯渇レシピエントPBLを用いて実施する。増殖している(CFSE-低)CD4+およびCD8+T細胞を選別し、そのTCRβ鎖CDR3領域をシーケンシングする。ベースライン時のレシピエントであるアカゲザルに由来するPBLを、ドナーPBL溶解物と共に培養した後、3サイクルの刺激後に限界希釈し、次いで、そのTCRβ鎖CDR3領域をシーケンシングすることによって、間接ドナー特異性を有するCD4+T細胞のフィンガープリントについては、ADL前の自己限定、同種抗原特異的CD4+T細胞クローンを生成する。ADL注入および移植の前後の間隔での全TCRレパートリー内の直接および間接TCRフィンガープリントの分析は、直接および間接にプライミングされたT細胞クローンの単離された追跡を可能にする。
同種反応性T細胞におけるアネルギーの誘導
【0497】
ADLで処置された非ヒト霊長類におけるT細胞の機能状態を決定するために、Bcl-xLおよびNFAT転写物の発現を、定量的RT-PCRによって分析し、タンパク質をウエスタンブロットによって分析する。アネルギーT細胞は、Bcl-xLおよびNFATの発現プロファイルの変更を示すと予想される。アネルギーは、IL-2および他のエフェクター機能の減少と関連し、主にCTLA4およびPD-1阻害シグナルによって媒介され得る。PD-1ライゲーションは、重要な細胞生存因子であるBcl-xLの誘導を阻害する。そのリガンドの結合時に、PD-1はリン酸化され、SHP1/2の動員および重要なTCRシグナル伝達分子の下流の脱リン酸化を可能にし、T細胞アネルギーをもたらす。一部の場合、T細胞アネルギーは、本開示の寛容化ワクチンによる寛容誘導に寄与しない。一部の場合、T細胞アネルギーは、本開示の寛容化ワクチンによる寛容誘導に寄与する。
同種反応性B細胞レパートリー
【0498】
ナイーブ(CD3-CD19+CD21+CD27-)、移行(CD3-CD19+CD27-IgD+)、調節性(CD3-CD19+CD24hiCD38hi)、および活性化記憶(CD3-CD19+CD21+CD27+)B細胞サブセットを連続的に分析して、i)寛容または拒絶に関する移植前のサブセットの重要性;および(ii)B細胞レパートリー中の移植後変化に対する本開示のレジメンの効果を決定する。結果はまた、CD4+T細胞に対するADL+SIの効果およびB細胞の回収からのその(失われる)助けを示す。
【0499】
B細胞ELISPOTアッセイは、循環およびグラフト浸潤記憶B細胞の頻度および抗原特異性における洞察を提供することができる。連続血清試料を、ドナーPBLに対するその反応性について試験して、再度、間接ドナー特異性を有するCD4+T細胞において誘導された寛容の間接的読出しであってもよい、ドナー特異的抗体のde novoでの発生に対するADL産物の効果を試験する。精製されたTおよびB細胞に対する血清反応性を使用して、それぞれ、不適合MHCクラスIおよびクラスII抗原に対する抗体の発生を区別する。ADLを含む本開示のレジメンは、レシピエントにおけるドナー特異的抗体のde novoでの発生を減少させると予想される。
【0500】
B細胞受容体(BCR)におけるVDJセグメントの体細胞組換えは、TCRと同様、受容体多様性をもたらす。ADL注入が、ドナー反応性エフェクターB細胞クローンの欠失と関連し、調節性クローンの増幅を促進するかどうかを試験する。エフェクターおよび調節性B細胞を、蛍光活性化細胞選別によって選別し、5’-RACE手法およびBCRネットワーク分析を使用してBCRシーケンシングを行う。ADLを含む本開示のレジメンは、ドナー反応性エフェクターB細胞クローンの増幅の減少および/または欠失と関連すると予想される。ADLを含む本開示のレジメンは、調節性B細胞クローンの増幅の増加と関連すると予想される。
ドナー特異的応答の調節
【0501】
ADL+短期免疫抑制(SI)が、エフェクター/活性化CD4+(TEM、Tbet+、CD40+、Tfh)およびCD8+(TEM、Tbet+、CD40+、CD107+)T細胞サブセット、ならびに活性化記憶CD20+(Tbet+、CD21+CD27+)B細胞サブセットの移植後増幅を抑制するかどうかを、ADL処置腎臓移植レシピエントにおいて試験し、対照である非ADL処置腎臓レシピエントと比較する。
【0502】
ADL注入が、活性化T細胞の負の調節因子であるPD-1のその発現を上方調節することによって、T細胞免疫応答を負に調節するかどうかを決定するために、PD-1+CD4+およびPD-1+CD8+T細胞を、ADLおよびSIを投与したヒトまたは非ヒト霊長類の腎臓レシピエントにおいて連続的にモニタリングする。PD-1発現およびT細胞疲弊表現型に対するADLの効果を検査する。ADL投与は、ドナー反応性T細胞によるPD-1発現を増加させると予想される。細胞内サイトカイン染色を使用して、ドナー抗原による刺激に応答するPBLのサイトカイン分泌プロファイルを分析する。ADL投与は、ドナー抗原による刺激に応答する炎症促進性サイトカインの産生の減少、およびドナー抗原による刺激に応答する寛容と関連するサイトカインの発現の増加と関連すると予想される。IFN-γ分泌T細胞のプライミングを抑制するADL注入の能力を、1方向ELISPOTによって評価する。一部の場合、ADL投与は、IFN-γ分泌T細胞のプライミングの減少と関連すると予想される。一部の場合、ADL投与は、IFN-γ分泌T細胞のプライミングの減少と関連しないと予想される。
【0503】
ADL+SIが、調節性免疫細胞サブセットの数および/または頻度を増加させるかどうかを検査する。ヒトまたは非ヒト霊長類腎臓移植モデルにおける免疫サブセットの分析は、ADL注入後のTr1、Treg、ナチュラルサプレッサー(NS)、Breg、および他の調節性免疫細胞サブセットの増幅を示すことができる。ADL注入されたレシピエントおよび対照レシピエントにおけるこれらのサブセットの発生および増幅の動力学および頻度を、フローサイトメトリーによって検査し、ADLの効果を決定する。ADL注入は、レシピエントにおけるTr1、Treg、ナチュラルサプレッサー(NS)、Breg、および/または他の調節性免疫細胞サブセットの増幅と関連すると予想される。循環中のこれらの調節性細胞の頻度の増加は、短命であるか、または持続的であってもよい。マウスモデルにおける試験は、共通の自己MHCクラスIIによる同種抗原由来ペプチドの提示が、ハプロタイプ共通ドナー特異的輸注(DST)の有益な効果にとって必須であることを示唆する。存在する場合、寛容の喪失の先に、1つまたは複数の調節性サブセットの喪失があるかどうかを検査する。
【0504】
調節性表現型を有する循環細胞がCD4+、CD8+、およびCD20+細胞のドナー抗原特異的増殖を抑制するかどうかを評価する。ドナー抗原に応答するレシピエントのCD4+、CD8+、およびCD20+細胞の増殖を、第3者抗原に応答する増殖と比較する。調節性細胞は、直接接触ならびに/またはIL-10およびTGF-βを含むサイトカインによりその抑制を示す抗原特異的エフェクター細胞の能動的な抑制によって末梢寛容を媒介することができる。枯渇および受動移入試験を実施して、腎臓または膵島同種グラフトの寛容が、ドナー特異的CD4+およびCD8+T細胞の増殖を効率的に抑制する、循環およびグラフト内Tr1、Treg、およびBreg細胞の頻度の増大と関連するかどうかを検査する。さらなる試験は、ドナー反応性TおよびB細胞クローンが移植後1年で寛容レシピエントに依然として存在するが、その活性化および増殖が調節性細胞によって抑制されるかどうかを決定する。単一のMHCが、ドナーと、Tregを増幅するために使用される抗原との間で共有される限り、Tregは、連鎖抑制を誘導することができる。ドナー特異的増殖を抑制するための調節性サブセットの効力に対するADLの影響を試験するために、レシピエントに由来するTr1、Treg、NS、およびBreg細胞を精製し、ドナーおよび第3者のPBLに応答してCD4+およびCD8+T細胞の増殖を抑制するその能力を、CFSE混合リンパ球反応(MLR)において試験する。移植寛容を誘導する本開示の前処置レジメンは、Tr1、Treg、NS、もしくはBregサブセット、またはその組合せにより、CD4+およびCD8+T細胞のドナー特異的増殖を抑制すると予想される。
【0505】
ドナー抗原に特異的である細胞の調節性プロファイルに寄与する分子メカニズムを解明するために、単一細胞プロテオミクスを行って、ドナー抗原への曝露後、細胞内リン酸化事象を特定する。マウスにおける試験により、末梢寛容の維持における異なる調節性サブセット間の多方面の相互作用が示された。本明細書に開示されるモデルにおける異なる調節性サブセット間の協調を試験するために、調節性サブセットを抑制アッセイにおいて様々な組合せで試験する。抗原認識およびTCRによるシグナル伝達は、調節性T細胞の抗原特異性にとって必須である。
ADL+SI処置された非ヒト霊長類における寛容原性調節性メカニズムの確立および持続
【0506】
AhRおよびPD-1シグナル伝達は、免疫系において重要な役割を果たす。ナイーブ、エフェクター、および調節性T細胞サブセットにおけるAhRおよびPD-1の分析は、本明細書に記載のモデルにおける調節性T細胞サブセットが、調節性細胞の活性化および増幅から生じる、またはエフェクター細胞のトランス分化形質転換から生じるかどうかを明確にすることができる。T細胞におけるTGFβシグナル伝達の標準的活性化およびAhRの発現の増加は、エフェクター細胞の調節性表現型への変換をもたらす。AhRは、トランス活性化により、Tr1細胞の機能における重要な要素であるIL-10の産生を調節する。ADLを注入された非ヒト霊長類に由来するCD4+T細胞のAhR転写およびタンパク質発現の分析は、本明細書に記載のモデルにおけるTr1およびTreg細胞の発生におけるその役割を解明するのに役立ち得る(例えば、AhR、Ab MA1-513を用いるフローサイトメトリーおよび/または免疫沈降による)。AhRの連続モニタリングも実施して、その発現の喪失が寛容原性調節性細胞サブセットおよびエフェクター細胞増幅の喪失と関連するかどうかを決定する。
【0507】
アポトーシス性細胞は、PD-1/PD-L1経路の活性化を介して、調節性T細胞サブセットの発生に寄与する。APCによるPD-L1発現およびT細胞によるPD-1発現の連続モニタリングは、調節性サブセットの発生におけるこの経路の役割を解明することができる。拒絶の前後での調節性およびエフェクター細胞のTCRシーケンシングは、新しいエフェクタークローンが、拒絶を起こす完全に不適合のレシピエントにおいてde
novoで出現する、および/または調節性細胞から変換されるかどうかを特定する。
【0508】
最新の胸腺移出(RTE)から分化するT細胞サブセットと、寛容または拒絶との関連を評価する。最新の胸腺移出(RTE)は、末梢において誘導される調節性細胞の主要な前駆体を形成し、微小環境がその運命を決定付ける。CD4+RTE(CD4+CD31+PKT7+)およびCD8+RTE(CD8+CD103+)細胞を、PBLにおいては長期的に、肝臓および二次リンパ器官においては終結時に断面的に分析する。RTEおよび成熟ナイーブT細胞は、エフェクター、アネルギー、もしくはTreg(Tr1、NS)サブセットへの分極化、または欠失を含む、抗原に遭遇した後、いくつかの異なる運命をたどり得る。フロー選別されたCD4/CD8 RTE細胞の転写物を分析する。トランスクリプトームプロファイル(例えば、NFATおよび関連するパートナーAP-1(Fos/Jun)および他のアネルギー関連遺伝子)は、RTE細胞の系列または運命へのコミットメントを示し得る。本開示の前処置レジメンによって誘導される寛容は、調節性および/またはアネルギー表現型を有するT細胞へのRTEの分化と関連すると予想される。胸腺依存性末梢調節は、MHCクラスIが異なるブタにおける、高用量カルシニューリン阻害剤(CNI)に基づく腎移植寛容の誘導にとって重要であると考えられる。
寛容バイオマーカーとしての調節性細胞のトランスクリプトーム
【0509】
寛容な非ヒト霊長類の腎臓および膵島移植レシピエントにおけるフロー選別された免疫調節性細胞サブセットのトランスクリプトームを検査して、調節性細胞が、対照と比較した場合、寛容なレシピエントにおいて機能的であり、代謝的に活性化されることを示す、ミトコンドリア呼吸の免疫調節因子および活性化因子の発現の増加が存在するかどうかを試験する。本開示の寛容誘導前処置レジメンを受けたレシピエント中の調節性細胞は、ミトコンドリア呼吸活性および免疫調節性シグナル伝達の増加と関連する遺伝子の発現の増加を示すと予想される。
【0510】
ADL注入後の免疫調節性細胞サブセットの誘導、増幅、および維持に関与するメカニズムをさらに理解するために、移植後14、90、および180日でPBLから単離されたフロー選別された細胞のトランスクリプトームを分析して、調節性T細胞の運命を決定付ける転写プログラムを見定める。ADL処置されたレシピエントおよび対照レシピエントにおいて誘導される調節性細胞のトランスクリプトームを検査して、本明細書に記載のモデルにおける調節の誘導および維持におけるADLの役割をさらに定義する。
(実施例12)
ADL処置された、1つのDRB適合および不適合SI哺乳動物レシピエントにおける腎臓同種グラフトに対する抗原特異的寛容の誘導および維持におけるグラフトの役割
【0511】
ADL+短期免疫抑制(SI)が同種グラフトをモジュレートすることによって寛容を潜在的に持続させることができる方法の例は、(i)エフェクターの、調節性免疫細胞サブセットに対する比を変化させること、(ii)両方とも、調節性免疫細胞の生成に寄与する、形質細胞様(p)DCおよび尿細管上皮細胞(RTEC)の表現型の動員/生成に影響すること、ならびに(iii)同種グラフト由来循環エキソソームの組成を変更することを含む。非ヒト霊長類腎同種グラフトレシピエントにおいて試験を行う。ADLを含む前処置レジメンを受けるレシピエントを、ADLを受けないレシピエントと比較する。剖検時に得られた腎臓組織を、標準的な組織病理、RNA転写物発現試験、および回収された腎臓単核細胞(KMNC)の表現型決定のためにプロセシングする。
腎臓同種グラフトにおけるADLおよびエフェクター:調節性免疫細胞サブセットの比
【0512】
ADL注入がどのようにグラフト浸潤白血球(GIL)の動員および普及に影響するかを確認するために、腎臓生検からKMNCを回収し、以下の細胞サブセットの絶対数および頻度を、フローサイトメトリーによって決定する:(i)エフェクター/活性化CD4+T細胞(TEM、Tbet+、CD40+、Tfh)、エフェクター/活性化CD8+T細胞(TEM、Tbet+、CD40+、CD107+)、および活性化記憶CD20+B細胞(Tbet+、CD21+CD27+);(ii)宿主DC;(iii)骨髄由来抑制細胞(MDSC)、Treg、Tr1、NS、およびBreg細胞;ならびに(iv)組織常在性リンパ球(Trm、iNKTなど)。GIL表現型のフローサイトメトリーによる評価は、免疫病理学的試験を補完することができる。ADLを含む前処置レジメンを受けるレシピエントは、より少ないグラフト浸潤エフェクター/活性化T細胞および/またはより少ない活性化記憶B細胞を示すと予想される。ADLを含む前処置レジメンを受けるレシピエントは、より多くのMDSC、Treg、Tr1、NS、および/またはBreg細胞を示すと予想される。
【0513】
ケモカインIP-10、MIP-1α、MIP-1β、およびリンホタクチン、ならびにケモカイン受容体CCR2、CXCR4、およびCCR5のmRNAの上方調節が、同種グラフト拒絶の間に示された。ADL処置された、およびADL処置されていない腎同種グラフトレシピエントから、生検を採取する。タンパク質および転写物プロファイリングを行って、エフェクターおよび調節性免疫サブセットの動員に関与するケモカインおよびケモカイン受容体の発現レベルを決定する。ADLを含む前処置レジメンを受けるレシピエントは、IP-10、MIP-1α、MIP-1β、リンホタクチン、CCR2、CXCR4、および/またはCCR5のより低い発現レベルを示すと予想される。
【0514】
CD3+Foxp3+T細胞、CD4+T細胞、DC、B細胞およびインドールアミン-ピロール2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)陽性細胞の動脈周囲リンパ鞘含有結節を示すT細胞に富むリンパ構造(TOL)の存在を、腎臓において検査する。
同種グラフトへのpDCの動員および尿細管上皮細胞(RTEC)の表現型に対するADL注入の効果
【0515】
血管形成された同種グラフトに対する寛容を誘導するのに熟練した細胞集団は、(i)形質細胞様樹状細胞(pDC);および(ii)尿細管上皮細胞(RTEC;IFN-γの存在下)を含む。pDCおよびRTECは、移植された腎臓において特定されている。両方とも、IDO、TGFβ、ICOS-L、およびPD-L1を含む異なる分子の発現によって、Tregの発生および同種反応性細胞の抑制を媒介することができる。IFN-γで処理されたヒトRTECは、クラスII経路によって同種特異的寛容を誘導する。
【0516】
実験を行って、ADL注入が共通のMHCクラスII上でのRTECによる同種ペプチド提示を促進するかどうか、およびこれが寛容の維持と関連するかどうかを決定する。共通のMHCクラスIIによる同種ペプチド提示は、非TregのTregへの変換を促進することができる。実験を行って、腎同種グラフト内皮上に発現された共通のMHCクラスIIによる同種ペプチド提示が、腎同種グラフトにおけるTregおよび他の調節性サブセットの富化と関連するかどうかを決定する。
【0517】
ADLを含む前処置レジメンを受けるレシピエントは、共通のMHCクラスII上でのRTECによる同種ペプチド提示の増加を示すと予想され、これは、腎同種グラフトにおけるTregおよび他の調節性サブセットの富化と関連すると予想される。
グラフト由来循環エキソソームプロファイルに対するADL注入の効果
【0518】
エキソソームは、細胞によって循環中に放出される細胞外小胞である。エキソソームは、そのプロテオミック、RNA、およびDNAカーゴによって組織の条件状態を示すことができる。エキソソームのサイズ、プロテオーム、およびRNAプロファイルは、免疫応答をモジュレートすることができ、ドナーMHCエキソソームシグナルは、膵島、腎臓、および心臓移植の拒絶のバイオマーカーとして役立ち得る。エキソソーム中に存在するドナーMHC分子は、レシピエントのAPCをクロスドレッシングすることができ、これらの同種MHCによりクロスドレッシングされた細胞による抗原提示は、移植後のT細胞活性化に寄与することができる。寛容化された同種グラフトに由来するエキソソームが寛容を媒介し、それを持続させる方法は、依然としてあまり理解されていない。
【0519】
血清精製されたエキソソームを、ADL処置された、およびADL処置されていないヒトまたは非ヒト霊長類の移植レシピエントから取得する。ドナーMHCおよび腎組織特異性を示すエキソソームのサイズ、量、腎組織特異性、RNAプロファイル、およびプロテオミックカーゴ(同種MHC/ペプチド複合体を含む)を、例えば、NanoSight蛍光を使用して特徴付ける。ADLを含む前処置レジメンを受けるレシピエントは、ADLを受けていないレシピエントと比較して、変更されたエキソソームサイズ、量、腎組織特異性、RNAプロファイル、および/またはプロテオミックカーゴを示すと予想される。
(実施例13)
膵島を移植し、短期免疫抑制と共に前処置レジメンを提供することによる糖尿病の処置。
【0520】
本実施例は、in vivoでの膵島移植のためのECDI処理されたドナー細胞の寛容原性効果を検査する。異種または同種起源に由来するECDI処理された脾細胞を、膵島を移植されたヒトまたは非ヒト霊長類に投与することによって、ヒトまたは非ヒト霊長類におけるグラフト拒絶の可能性を最小化する。本実施例の前処置レジメンを、ヒトレシピエントにおける同種移植または異種移植(例えば、膵島、腎臓、または他の細胞、組織、もしくは臓器の移植)に容易に適合させることができる。
【0521】
実例では、糖尿病のストレプトゾトシン誘導モデルを、非ヒト霊長類対象と共に使用する。ストレプトゾトシンを用いた静脈内処置によって、糖尿病を誘導する。レシピエント対象に、MHC-Iが異なる、1つのMHC-II DRB対立遺伝子適合ドナーに由来する膵島を移植する。(i)移植に対して-8、-1、7、および14日目に50mg/kgの用量で静脈内投与される、アンタゴニスト性抗CD40抗体;(ii)5~12ng/mLの標的トラフレベルで移植に対して-7日目から21日目まで経口投与されるラパマイシン;(iii)移植に対して-7および0日目に1mg/kgの用量で静脈内に、移植に対して3、7、10、14、および21日目に0.5mg/kgの用量で皮下的に投与される可溶性TNF受容体;ならびに(iv)移植に対して-7、0、7、14、および21日目に10mg/kgの用量で静脈内投与されるアンタゴニスト性抗IL-6受容体抗体を含む短期免疫抑制レジメンを用いて、レシピエントを処置する。
【0522】
実験群の移植レシピエントは、移植前および必要に応じて移植後にECDI処理されたアポトーシス性ドナー白血球(ADL)の静脈内注入を受ける。一部の場合、ADLは、移植の約8日前に投与される。一部の場合、ADLは、移植の約7日前に投与される。一部の場合、ADLは、移植の約1日後に投与される。一部の場合、ADLは、移植の約7日後に投与される。一部の場合、ADLは、移植の約14日後に投与される。一部の場合、ADLは、移植の約7または8日前および移植の約1、7、および/または14日後に投与される。ADLは、本明細書に開示されるように、膵島と同じドナーまたは異なるドナーに由来するものであってもよい。
【0523】
対照群の移植レシピエントはADLを受けない。
【0524】
小用量の外因性インスリンを、移植後、21日目まで投与してもよい。
【0525】
ADLを受ける移植レシピエントは、ADLを受けない群と比較して、生存の改善を示すと予想される。ADLを受ける移植レシピエントは、ADLを受けない群と比較して、拒絶のない生存の改善を示すと予想される。ADLを受ける移植レシピエントは、膵島同種グラフトの長期的な機能的生存を示すと予想される。例えば、ADLを受ける移植レシピエントは、彼らが外因性インスリンを受けるのをやめた後の時点(例えば、過ぎた100日目または移植後365日目)を含め、移植後に血糖制御の改善を示す(例えば、正常血糖になる)と予想される。例えば、静脈内ブドウ糖負荷試験(IVGTT)、混合食事負荷試験(MMTT)、または膵島ベータ細胞機能をモニタリングするために確立された他の任意の代謝試験によって、血糖制御を評価することができる。IVGTTでは、外因性グルコースを静脈内注射し、注射後、経時的に血糖値を測定する。ADLを受ける移植レシピエントは、IVGTT後に血糖値の急速な低下およびグルコース濃度曲線下面積の減少を示すと予想される(例えば、ストレプトゾトシン処置の前のものと同等のレベル)。ADLを受ける移植レシピエントは、移植後にヘモグロビンA1Cレベルの低下を示すと予想される。ADLを受ける移植レシピエントは、長期的に維持される移植後のCペプチドレベルの増加を示すと予想され、これは、移植された膵島が機能的であることを示す(例えば、空腹時Cペプチドレベル、グルコース刺激Cペプチドレベル、および/またはグルコース刺激時のCペプチドレベルの増加)。
(実施例14)
寛容誘導のためのレシピエント型MHC-IIの完全に不適合のアポトーシス性ドナー白血球(ADL)へのコンジュゲーション
【0526】
本実施例は、レシピエント型MHCクラスII分子をアポトーシス性ドナー白血球(ADL)にコンジュゲートすることにより、前処置レジメンの寛容誘導有効性を増強することができることを証明する。例えば、完全にMHCクラスIおよびクラスII不適合のドナー-レシピエント対について、レシピエント型MHCクラスII分子をADLにコンジュゲートすることにより、移植された細胞、組織、または臓器に対する寛容の誘導におけるADLの有効性を増強することができる。
【0527】
1つ(または複数)の移植レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1つまたは複数のペプチドの、完全に不適合のADLの表面へのカップリングは、ADLの取込み後のレシピエントのMHCクラスII分子による提示のための豊富な量のレシピエント型MHCクラスIIペプチドを提供することができる(例えば、レシピエント脾臓辺縁帯抗原提示細胞または肝臓類洞内皮細胞による)。自己MHCクラスIIの認識は、例えば、調節性T細胞サブセットにより、レシピエントにおいて寛容を促進することができる。
【0528】
寛容を誘導することができる手段のさらなる例は、胸腺由来CD4+Treg(tTreg)の活性化によるものである。tTregは、それ自身のMHCクラスII分子によって提示される、それ自身のMHCクラスIIペプチドの認識によって選択される。MHCクラスII複合体に結合し、それによって提示される自己ペプチドのかなりの割合は、MHCクラスII自体に由来する。したがって、循環(t)Tregの多くは、自己MHCクラスIIペプチドに対する特異性を有する。この複合体が活性化されたエフェクターT細胞の表面上に提示される場合、それはtTregに対する強力な活性化シグナルとして働き、tTreg活性化、かくして、免疫寛容の促進をもたらすことができる。
【0529】
tTregを活性化することができる1つの方法は、MHCクラスIIによって提示されるMHCクラスIIペプチドの、活性化T細胞へのトロゴサイトーシスによるものである。トロゴサイトーシスは、MHCクラスIIペプチドを提示するMHCクラスII分子全体の交換を含む。自己MHCクラスII(例えば、DRB)ペプチドが結合したMHCクラスII複合体の、活性化T細胞へのトロゴサイトーシスは、これらのT細胞を、同じ自己MHCクラスIIペプチドに対する特異性を有するtTregの強力な活性化因子に変化させることができる。したがって、レシピエントMHCクラスIIペプチドを提示するレシピエント型MHCクラスII分子が、活性化されたレシピエントT細胞に送達され、それによって提示される場合、これはtTregに対する強力な活性化シグナルとして働くことができる。tTregの活性化は抗原特異性を必要とするが、その調節機能は抗原特異性を必要としない。そのため、活性化されたtTregは、直接および間接特異性のドナー特異的CD4+およびCD8+T細胞を含む抗ドナー免疫を直接下方調節し、また、Tr1細胞を含む、調節能を有する他の免疫細胞サブセットの増幅によって抗ドナー免疫を下方調節することもできる。
【0530】
自己MHCクラスIIに結合した自己MHCクラスIIペプチド(例えば、DRBペプチド)は、LAG-3受容体シグナル伝達により寛容の誘導にも寄与することができる。それらが由来するMHCクラスII複合体に結合した自己MHCクラスIIペプチド(例えば、DRBペプチド)は、T細胞上のLAG-3受容体による認識およびそれによるシグナル伝達にとって必要とされるペプチド:MHCクラスIIコンフォメーションを安定化することができる。LAG-3は、不安定なペプチド:MHCクラスII複合体と安定なものを区別することができるTCRコレセプターである。かくして、自己MHCクラスIIに結合したペプチドの特異性は、LAG-3を介して免疫応答の特異性を調節することができる。したがって、
【0531】
LAG-3の発現および機能は、寛容誘導と関連する。例えば、LAG3とCD49bとの同時発現を使用して、Tr1細胞を特定することができ、Tr1細胞上でのLAG3の遮断は、Tr1により誘導される寛容を抑止する。LAG3はまた、活性化されたtTreg上において一過的に、および活性化されたTeff細胞上において有意により低いレベルで発現し、LAG3が調節能力を有する細胞の信頼できるマーカーであり得ることを示唆する。さらに、DC上のMHCクラスIIのLAG3架橋は、DCを寛容化する。自己MHCクラスIIペプチドが、LAG-3認識と関連するコンフォメーションでペプチドを提示している自己MHCクラスIIを安定化することを考慮すると、豊富な量の自己MHCクラスIIペプチド(例えば、DRBペプチド)の送達は、DC上の安定な自己ペプチドMHCクラスII複合体の存在をブーストし、それによって、寛容に寄与し得る(例えば、Tr1細胞の増幅による)。これは、1つのMHCクラスII DRB対立遺伝子で適合するアポトーシス性ドナー白血球が同種移植レシピエントにおいて寛容を促進することを示すデータによって支持される。
混合リンパ球反応
【0532】
レシピエント型DRBペプチドとECDIを介してカップリングしたアポトーシス性ドナー白血球が、免疫調節および移植寛容を促進する能力を決定するために、MHCにより定義される刺激性(ドナー)および応答性(レシピエント)末梢血単核細胞(PBMC)を用いて、in vitroで混合リンパ球反応(MLR)を実施した。レシピエント(応答性)型MHCクラスIIペプチド(例えば、Mamu DR3対立遺伝子について陽性の試験されたアカゲザルまたはMafa DRB*w501対立遺伝子について陽性の試験されたモーリシャスカニクイザルに由来する抗原)の、ECDIを用いたアポトーシス性ドナー白血球(ADL)の表面へのコンジュゲーションは、レシピエント(応答性)において、レシピエント/応答型MHCクラスIIペプチド(例えば、DR3またはDRB*W005:01ペプチド)に対する間接的特異性を有する(t)Treg細胞およびTr1細胞の活性化および増幅を増加させると仮定された。
【0533】
以下の完全に不適合のサルレシピエント/ドナー対および実験条件を選択した:レシピエントPBMCは、モーリシャスカニクイザル(Mafa M4A、M4A、M4B、M4B、M4DR、M1DR)であった。アポトーシス性ドナー白血球は、ECDIを介して細胞表面にコンジュゲートされた14μgの合成DRB*W005:01ペプチド(アミノ酸32~46、TRPRFLEQAKSECHF、配列番号44)を含む、モーリシャスカニクイザル(M3A、M3A、M3B、M3B、M3DR、M3DR)であった。
【0534】
MLRアッセイでは、コンジュゲートされたDRBペプチドを含む、および含まない3x106個のアポトーシス性ドナー白血球を使用して、CO2インキュベーター中、37℃で3x106個のレシピエントPBMCを刺激した。1日目および3日目に刺激後に収集した連続試料を、フローサイトメトリーにより、DC-10(CD14+CD16+のCD141+CD163+)、Treg細胞(CD4+のCD25hiCD127-FoxP3+)およびTr1細胞(CD4+のCD49b+LAG-3+)の誘導について分析した。刺激した細胞の分析により、対照アポトーシス性ドナー白血球のみで刺激したPBLと比較して、ペプチドにコンジュゲートされたアポトーシス性ドナー白血球を用いた刺激後、Tregの頻度が1日目に6.8倍増加し、3日目に44.3倍増加することが示された。同様に、Tr1細胞の頻度の徐々の増加(1日目に36%および3日目に80%)が、DRBペプチドにコンジュゲートされた、および対照のアポトーシス性ドナー白血球を用いる刺激後に観察された。DC-10細胞については、1日目および3日目に、それぞれ、0.98倍および1.23倍の増加が観察された。Bregについては、1日目および3日目に、それぞれ、2.16倍および2.52倍の増加が観察された。
【0535】
これらの結果は、アポトーシス性ドナー白血球へのレシピエント型MHCクラスIIペプチド(例えば、DRB)のコンジュゲーションが、寛容促進性免疫調節性細胞サブセットの増幅を促進することができることを示す。
好適なMHCクラスIIペプチドの特定
【0536】
免疫調節性細胞サブセット(例えば、tTregおよびTr1細胞)を活性化および増幅するのに有効であるMHCクラスIIペプチド(例えば、DRBペプチド)を特定するためのさらなる試験を行う。目的のペプチドを、例えば、上に開示された混合リンパ球反応によって評価することができる。読出しは、それぞれの刺激後、1、3、4および7日目でのフローサイトメトリーおよび/またはCyTOFによるtTreg、Tr1細胞、DC-10、B10、およびBreg細胞の頻度の計数を含んでもよい。増幅されたT細胞クローンの特異性を、合成された応答型MHCクラスIIおよび不適合ドナーMHCクラスIペプチドをロードした四量体(例えば、DR3およびDRB*w501四量体)を使用するフローによって試験することができる。目的のペプチドを、公知の、または本明細書に開示される他の技術を使用して評価することもできる。
【0537】
応答型MHCクラスII分子(例えば、DRB分子)に対する高い、中程度の、および低い結合親和性を有するペプチドを特定する。アポトーシス性ドナー白血球にカップリングされるペプチドの最も有効な量を、用量滴定試験において決定する。
【0538】
1つ(または複数)の移植レシピエントのMHCクラスII分子(例えば、DRα鎖、DRβ鎖、DQα鎖、DQβ鎖、DPα鎖、またはDPβ鎖)に由来する1つまたは複数のペプチドを、ECDIを用いて(または任意の他のプロセスを用いて)、完全に不適合のADLの表面にコンジュゲートする。DRα鎖は機能的に単形性であってよく、かくして、一部の場合、MHCクラスII DR、DQ、およびDP分子のβ鎖に由来するペプチドが寛容誘導にとって好ましい。
【0539】
レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、MHCクラスII分子全体を含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DR、DQまたはDPのα鎖全体を含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DR、DQまたはDPのβ鎖全体を含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DR、DQまたはDPのα1および/またはα2ドメイン全体を含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DR、DQまたはDPのβ1および/またはβ2ドメイン全体を含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、MHC-DR1、MHC-DR2、MHC-DR3、MHC-DR4、および/またはMHC-DR5を含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、超可変領域に由来する配列を含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DRB分子の超可変領域に由来するin silicoで特定される高い、中程度の、または低い親和性のペプチド(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸のペプチド)を含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、ペプチド結合領域に広がる可変領域(例えば、約20、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または40アミノ酸のペプチド)を含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、DRB結合溝に対する親和性が変化するカテプシンS切断性リンカーを含む二量体ペプチドを含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、約10~30アミノ酸長であってもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、少なくとも10~30アミノ酸長であってもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、合成または組換えであってもよい。
【0540】
一部の場合、レシピエントのMHCクラスII分子に由来するペプチドは、1型糖尿病を有する患者において最も優勢なMHCクラスII対立遺伝子であるHLA DR3およびDR4分子のペプチド結合溝への結合に関する高い親和性を有してもよい。考察された候補MHCクラスIIペプチドおよび提示されたMHCクラスII対立遺伝子は、HLA
DR3および/またはDR4について陽性の移植レシピエントと関連する例として働き、この知見は、1型糖尿病、2型糖尿病、および高血圧、糸球体腎炎、間質性腎炎、多発性嚢胞腎、腎盂腎炎を含む他の疾患によって引き起こされる末期腎不全の処置のための腎臓移植を受ける移植レシピエントを含む、異なるMHCクラスII対立遺伝子を有する患者における寛容誘導のためのMHCクラスIIペプチドの選択に関する有意性を有するであろう。
【0541】
ヒトにおけるMHCクラスII DR3およびMHCクラスII DR4分子への結合に関する高い親和性を有するMHCクラスII DR3およびDR4ペプチドの例を、以下に提示する。
【0542】
表2:HLA DR3複合体に結合することができるHLA DR3に由来する例示的ペプチド。
【表2-1】
【表2-2】
【0543】
表3:HLA DR4複合体に結合することができるHLA DR3に由来する例示的ペプチド。
【表3】
【0544】
表4:HLA DR3複合体に結合することができるHLA DR4に由来する例示的ペプチド
【表4】
【0545】
MHCクラスIIペプチドを、アカゲザルにおいて特定することもできる。応答型DRB分子に対する高い、中程度の、および低い結合親和性を有するペプチドを、これらのDRB分子のヒトホモログおよび免疫エピトープデータベース(IEDB)を使用することによって特定することができる。
【0546】
前臨床試験において使用されるアカゲザル集団におけるMHCクラスII DRB遺伝子座の分析は、14.39%のコロニーがハプロタイプDR3aのものであり、19.9%がハプロタイプDR4のものであることを示す。Mamu DRB配列と、ヒトゲノムとのt-BLASTアラインメントを行って、ヒトホモログを決定した。HLA DRB1*03(受託番号CDP32905.1)は、Mamu DRB03aと92%同一であり、96%陽性であり、0%のギャップであり、5e-178のe値であった。HLA
DRB1*14(受託番号ABN54683.1)は、Mamu DRB04と92%同一であり、95%陽性であり、0%のギャップであり、2e-174のe値であった。HLA DRB1*13またはHLA DRB1*14に対する高い結合親和性を有するMamuクラスII配列に由来するペプチドを、免疫エピトープデータベース分析資源を使用して特定して、DR結合ペプチドを特定した。アカゲザルにおける選択されたMHCクラスII分子への結合に関する高い親和性を有するペプチドを、以下に提示する。
【0547】
表5:Mamu DR03a複合体に結合することができるMamu DR3に由来する例示的ペプチド。
【表5】
【0548】
表6:Mamu DR03a複合体に結合することができるMamu DR4に由来する例示的ペプチド
【表6】
【0549】
本実施例の前処置レジメンを、哺乳動物レシピエントにおける同種移植または異種移植(例えば、膵島、腎臓、または胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS)由来、もしくは間葉幹細胞由来細胞、組織および臓器などの、他の細胞、組織、もしくは臓器の移植)に容易に適合させることができる。
【0550】
実例では、レシピエント型MHCクラスII鎖、ドメイン、および/またはペプチドをADLにコンジュゲートし、ADLを使用して、異種または同種ドナーにMHC-IおよびMHC-IIが完全に不適合のヒト膵島移植レシピエントに対する寛容を誘導する。
【0551】
脾細胞を、MHC-IおよびMHC-IIが完全に不適合の異種または同種起源から取得する。MHCクラスII鎖、ドメイン、および/またはペプチドを、ECDI処理の間にコンジュゲートして、MHC-IIにコンジュゲートした(ADL)を生成する。MHC-IIにコンジュゲートしたADLを、膵島移植を受けるヒト対象に投与することによって、グラフト拒絶の可能性を低減させる。移植レシピエントは、移植前および必要に応じて、移植後、例えば、移植に対して-7日目および+1日目に、MHC-IIにコンジュゲートしたADLの静脈内注入を受ける。ADLは、本明細書に開示されるように、膵島と同じドナーまたは異なるドナーに由来するものであってもよい。
【0552】
レシピエント対象に、MHCクラスIおよびMHCクラスIIが完全に不適合のドナーに由来する膵島を移植する。
【0553】
(i)移植に対して-8、-1、7、および14日目に50mg/kgの用量で静脈内投与される、アンタゴニスト性抗CD40抗体;(ii)5~12ng/mLの標的トラフレベルで移植に対して-7日目から21日目まで経口投与されるラパマイシン;(iii)移植に対して-7および0日目に1mg/kgの用量で静脈内に、移植に対して3、7、10、14、および21日目に0.5mg/kgの用量で皮下的に投与される可溶性TNF受容体;ならびに(iv)移植に対して-7、0、7、14、および21日目に10mg/kgの用量で静脈内投与されるアンタゴニスト性抗IL-6受容体抗体を含む短期免疫抑制レジメンを用いて、レシピエントを処置する。
【0554】
小用量の外因性インスリンを、移植後、21日目まで投与してもよい。
【0555】
対照群の移植レシピエントは、ADLを受けないか、またはレシピエント型MHCクラスIIにコンジュゲートされていないADLを受ける。MHC-IIにコンジュゲートされたADLを受ける移植レシピエントは、MHC-IIにコンジュゲートされたADLを受けないレシピエントと比較して、改善された生存を示すと予想される。MHC-IIにコンジュゲートされたADLを受ける移植レシピエントは、MHC-IIにコンジュゲートされたADLを受けないレシピエントと比較して、改善された拒絶のない生存を示すと予想される。ADLを受ける移植レシピエントは、MHC-IIにコンジュゲートされたADLを受けないレシピエントと比較して、膵島同種グラフトの長期的な機能的生存を示すと予想される。例えば、MHC-IIにコンジュゲートされたADLを受ける移植レシピエントは、彼らが外因性インスリンを受けるのをやめた後(例えば、過ぎた100日目または移植後365日目)を含む、移植後に血糖制御の改善を示す(例えば、正常血糖になる)と予想される。例えば、静脈内ブドウ糖負荷試験(IVGTT)、混合食事負荷試験(MMTT)、または膵島ベータ細胞機能をモニタリングするために確立された他の任意の代謝試験によって、血糖制御を評価することができる。IVGTTでは、外因性グルコースを静脈内注射し、注射後、経時的に血糖値を測定する。MHC-IIにコンジュゲートされたADLを受ける移植レシピエントは、IVGTT後に血糖値の急速な低下およびグルコース濃度曲線下面積の減少(例えば、健康な対象と同等のレベル)を示すと予想される。MHC-IIにコンジュゲートされたADLを受ける移植レシピエントは、移植後にヘモグロビンA1Cレベルの低下を示すと予想される。MHC-IIにコンジュゲートされたADLを受ける移植レシピエントは、長期的に維持される移植後のCペプチドレベルの増加を示すと予想され、これは、移植された膵島が機能的であることを示す(例えば、空腹時Cペプチドレベル、グルコース刺激Cペプチドレベル、および/またはグルコース刺激時のCペプチドレベルの増加)。
(実施例15)
同じ幹細胞ドナーに由来する細胞、組織、または臓器に対する寛容誘導のためのドナーMHC-IおよびMHC-II抗原の供給源としての幹細胞由来B細胞
【0556】
1つのドナーに由来する幹細胞を、アポトーシス性ドナー白血球(ADL)としての使用のための第1の細胞集団に分化させ、移植のための第2の細胞集団に別々に分化させることができる。この技術を使用して、任意の普遍的な細胞に由来する細胞、組織、または臓器移植に対する寛容を誘導することができる。
【0557】
幹細胞は、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、および/または間葉幹細胞であってもよい。幹細胞を、MHCクラスI抗原とMHCクラスII抗原との両方を発現する第1の細胞集団に分化させる。例えば、移植ドナーに由来するiPSCを、MHCクラスIとII抗原との両方を発現するBリンパ球に分化させる。iPSCをB細胞に分化させる方法は、例えば、French A et al. (2015), Stem Cells and Development 24(9):1082-95に記載されている。
【0558】
好ましくは、寛容原性有効性の増大のために、ドナー幹細胞由来B細胞は、1つのMHCクラスII抗原をレシピエントと共有する(例えば、少なくとも1つのMHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、またはMHCクラスII DP対立遺伝子)。1つのレシピエント型MHCクラスII抗原と適合するグラフトおよびB細胞が入手可能でない場合、B細胞を、実施例14に記載されたレシピエント型MHCクラスII鎖、ドメイン、もしくはペプチドとコンジュゲートするか、または任意の幹細胞由来MHCクラスI発現細胞(例えば、T細胞)を、ECDIもしくは任意の他の方法を使用して、レシピエント型MHCクラスII抗原とコンジュゲートすることができる。
【0559】
別に、iPSCを、移植しようとする第2の細胞集団に分化させる。
【0560】
幹細胞由来B細胞および/またはMHC-IIにコンジュゲートされた細胞を、ECDIで処理して、アポトーシス性ドナー白血球(ADL)を生成する。
【0561】
幹細胞由来ADLを、同じ幹細胞ドナーに由来する細胞、組織、または臓器の移植を受ける対象に投与することによって、移植拒絶の可能性を低減させる。移植レシピエントは、移植前および必要に応じて、移植後に、例えば、移植に対して-7日目および+1日目に幹細胞由来ADLの静脈内注入を受ける。
【0562】
必要に応じて、(i)移植に対して-8、-1、7、および14日目に50mg/kgの用量で静脈内投与される、アンタゴニスト性抗CD40抗体;(ii)5~12ng/mLの標的トラフレベルで移植に対して-7日目から21日目まで経口投与されるラパマイシン;(iii)移植に対して-7および0日目に1mg/kgの用量で静脈内に、移植に対して3、7、10、14、および21日目に0.5mg/kgの用量で皮下的に投与される可溶性TNF受容体;ならびに(iv)移植に対して-7、0、7、14、および21日目に10mg/kgの用量で静脈内投与されるアンタゴニスト性抗IL-6受容体抗体を含む短期免疫抑制レジメンを用いて、レシピエントを処置することができる。
【0563】
レシピエントは、幹細胞由来ADLを受けていないレシピエントと比較して改善された拒絶のない生存を示すと予想される。
【0564】
この技術を使用して、任意の普遍的な細胞に由来する細胞、組織、または臓器移植に対する寛容を誘導することができる。
(実施例16)
寛容誘導のためのレシピエント型MHCクラスII DRAの不適合アポトーシス性ドナー白血球(ADL)へのコンジュゲーション
【0565】
本実施例は、レシピエント型MHCクラスII DRA分子をアポトーシス性ドナー白血球(ADL)にコンジュゲートすることにより、前処置レジメンの寛容誘導有効性を増強することができることを証明する。一部の場合、単形性DRアルファ鎖に由来するレシピエント型MHCクラスII提示ペプチドは、その同族特異性について胸腺において選択されるtTreg細胞のサブセットに対する活性化シグナルとして働き得る。普遍的細胞に由来する任意の用意に増幅可能なT細胞などの任意の細胞を、単形性DRA抗原に由来する同じ鎖、ドメイン、またはペプチドとコンジュゲートさせ、プロセシングして、移植に対する寛容を促進するために使用することができるADLを生成することができる。この方法は、レシピエントがDRA抗原について陽性である様々な移植シナリオに広く適用可能であり得る。例えば、この方法を使用して、普遍的ドナー細胞を使用して寛容を誘導することができる。
【0566】
部分的にまたは完全にMHCクラスIおよびクラスIIが不適合のドナー-レシピエント対について、レシピエント型MHCクラスII DRA分子をアポトーシス性ドナー白血球(ADL)にコンジュゲートすることにより、移植された細胞、組織、または臓器に対する寛容の誘導においてADLの有効性を増強することができる。
【0567】
1つ(または複数)の移植レシピエントのMHCクラスII DRA分子に由来する1つまたは複数のペプチドの、ADLの表面へのカップリングは、ADLの取込み後のレシピエントのMHCクラスII分子による提示のための豊富な量のレシピエント型MHCクラスII DRAペプチドを提供することができる(例えば、レシピエント脾臓辺縁帯抗原提示細胞または肝臓類洞内皮細胞による)。
【0568】
自己MHCクラスII DRAの認識は、例えば、胸腺由来CD4+Treg(tTreg)により、レシピエントにおける寛容を促進することができる。tTregは、それ自身のMHCクラスII分子によって提示される、それ自身のMHCクラスIIペプチドの認識によって選択される。この複合体が活性化されたエフェクターT細胞の表面上に提示される場合、それはtTregに対する強力な活性化シグナルとして働き、tTreg活性化、かくして、免疫寛容の促進をもたらすことができる。活性化されたエフェクターT細胞は、MHCクラスIIペプチドを提示するMHCクラスII分子全体の交換を含む、トロゴサイトーシスのプロセスによってそのようなMHC複合体を提示することができる。したがって、レシピエントMHCクラスII DRAペプチドを提示するレシピエント型MHCクラスII分子が、活性化されたレシピエントT細胞に送達され、それによって提示される場合、これはtTregに対する強力な活性化シグナルとして働くことができる。tTregの活性化は抗原特異性を必要とするが、その調節機能は抗原特異性を必要としない。そのため、活性化されたtTregは、直接および間接特異性のドナー特異的CD4+およびCD8+T細胞を含む抗ドナー免疫を直接下方調節し、また、Tr1細胞を含む、調節能を有する他の免疫細胞サブセットの増幅によって抗ドナー免疫を下方調節することもできる。
【0569】
DRα鎖は機能的に単形性であってよく、それを寛容誘導のための都合のよい標的にし得る。1つ(または複数)の移植レシピエントのMHCクラスII DRα鎖に由来する1つまたは複数の鎖、ドメイン、またはペプチドを、ECDIを用いて(または任意の他のプロセスを用いて)、不適合ADLの表面にコンジュゲートする。レシピエントのMHCクラスII分子に由来する鎖、ドメイン、またはペプチドは、DRアルファ鎖全体を含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII分子に由来する鎖、ドメイン、またはペプチドは、DRのα1および/またはα2ドメイン全体を含んでもよい。レシピエントのMHCクラスII DRAに由来するペプチドは、約10~30アミノ酸長であってもよい。レシピエントのMHCクラスII DRAに由来するペプチドは、少なくとも10~30アミノ酸長であってもよい。レシピエントのMHCクラスII DRAに由来するペプチドは、合成または組換えであってもよい。
【0570】
本実施例の前処置レジメンを、哺乳動物レシピエントにおける同種移植または異種移植(例えば、膵島、腎臓、または細胞、組織および臓器の胚性幹細胞由来、人工多能性幹細胞(iPS)由来グラフトなどの、他の細胞、組織、もしくは臓器の移植)に容易に適合させることができる。ADLを、本明細書に開示される脾細胞、末梢血、または分化した幹細胞から調製することができる。
【0571】
実例では、レシピエント型MHCクラスII DRA鎖、ドメイン、および/またはペプチドを、幹細胞由来細胞にコンジュゲートし、処理してADLを生成し、そのADLを使用して、移植のための幹細胞由来細胞の別々に分化した第2の集団に対する寛容を誘導する。この技術を使用して、任意の普遍的な細胞に由来する細胞、組織、または臓器移植に対する寛容を誘導することができる。
【0572】
幹細胞は、胚性幹細胞または人工多能性幹細胞(iPSC)であってもよい。幹細胞を、第1の細胞集団に分化させる。一部の場合、第1の細胞集団は、MHCクラスI抗原とMHCクラスII抗原との両方を発現する。例えば、移植ドナーに由来するiPSCを、MHCクラスIとII抗原との両方を発現するBリンパ球に分化させる。iPSCをB細胞に分化させる方法は、例えば、French A et al. (2015), Stem Cells and Development 24(9):1082-95に記載されている。一部の場合、寛容原性有効性の増大のために、ドナー幹細胞由来B細胞は、1つのMHCクラスII抗原をレシピエントと共有する(例えば、少なくとも1つのMHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子、またはMHCクラスII DP対立遺伝子)。一部の場合、ドナー幹細胞は、1つもMHCクラスII抗原をレシピエントと共有しない。一部の場合、ドナー幹細胞由来寛容誘導細胞は、T細胞である。
【0573】
幹細胞由来細胞を、レシピエント型MHCクラスII DRA鎖、ドメイン、またはペプチドとコンジュゲートし、ECDIまたは任意の他の方法を用いる処理によって、アポトーシス性ドナー白血球(ADL)にする。
【0574】
別に、iPSCを、移植しようとする第2の細胞集団に分化させる。
【0575】
MHCクラスII DRAにコンジュゲートしたADLを、同じ幹細胞ドナーに由来する細胞、組織、または臓器の移植を受ける対象に投与することによって、移植拒絶の可能性を低減させる。移植レシピエントは、移植前および必要に応じて、移植後、例えば、移植に対して-7日目および+1日目に、MHCクラスII DRAにコンジュゲートしたADLの静脈内注入を受ける。
【0576】
必要に応じて、(i)移植に対して-8、-1、7、および14日目に50mg/kgの用量で静脈内投与される、アンタゴニスト性抗CD40抗体;(ii)5~12ng/mLの標的トラフレベルで移植に対して-7日目から21日目まで経口投与されるラパマイシン;(iii)移植に対して-7および0日目に1mg/kgの用量で静脈内に、移植に対して3、7、10、14、および21日目に0.5mg/kgの用量で皮下的に投与される可溶性TNF受容体;ならびに(iv)移植に対して-7、0、7、14、および21日目に10mg/kgの用量で静脈内投与されるアンタゴニスト性抗IL-6受容体抗体を含む短期免疫抑制レジメンを用いて、レシピエントを処置することができる。
【0577】
レシピエントは、MHCクラスII DRAにコンジュゲートしたADLを受けないレシピエントと比較して、改善された拒絶のない生存を示すと予想される。
【0578】
この技術を使用して、任意の普遍的な細胞に由来する細胞、組織、または臓器移植に対する寛容を誘導することができる。
(実施例17)
ECDIによる共通ドナーMHCクラスI抗原の、ex vivoで増幅されたレシピエント由来B細胞へのコンジュゲーション
【0579】
レシピエント型MHCクラスIIペプチドの、本明細書に開示されるアポトーシス性ドナー白血球へのコンジュゲーションは、移植に対する寛容を誘導するのに有効であり得るが、MHCクラスIIは、製造において課題が多い分子であり得る。MHCクラスIIが異なるドナーのアポトーシス性ドナー白血球へのカップリングのための大量のレシピエント型MHCクラスII DRB(またはDPおよびDQ)ペプチドの製造と関連する困難を回避するために、Bリンパ球をレシピエントから採取し、増幅し、ECDIを介して、ドナー集団において非常に一般的である対立遺伝子(例えば、HLA-A*02、24、01またはHLA-B*35、44、51)のMHCクラスIα鎖、ドメイン、またはペプチドとカップリングすることができる。例えば、Bリンパ球を、MHCクラスIおよびIIが不適合の死体ドナーからの計画された臓器または膵島細胞移植の約3週間前に移植レシピエントから取得し、増幅し、ECDIを介して、ドナー集団において非常に一般的である対立遺伝子(例えば、HLA-A*02、24、01またはHLA-B*35、44、51)のMHCクラスIα鎖とカップリングすることができる。
【0580】
抗原の担体としてのB細胞を、非サイトカイン刺激レシピエントにおける低体積白血球除去輸血によって取得し、約0.5x10^9個の細胞のナイーブB細胞の入力収量を提供することができる。これらの細胞は、IL-2、IL-4、IL-21、BAFF、およびCD40L-多量体の存在下(または他のサイトカインおよび増殖因子の組合せの存在下)、ex vivoでの増幅の前後で大量の自己MHCクラスII分子を発現する。2週間で120倍以上のB細胞のex vivoでの増幅は、ECDIへの曝露に起因する細胞喪失を考慮し、+1日目の細胞療法生成物のための入力細胞収量として5~10x10^9個のB細胞を取り分けると、-7日目でのIV注入のための35x10^9個の細胞のアポトーシス性自己白血球の用量、および+1日目での注入のための継続的増幅後に同様の用量を提供する。ECDIによって自己B細胞にカップリングしたMHCクラスI対立遺伝子を発現する任意の死体ドナー(例えば、臓器または膵島細胞ドナー)は、連鎖抑制および感染寛容が他の不適合抗原に対する特異性を有するT細胞に対する寛容化を拡張する限り、寛容誘導のための好適なドナーであると考えられる。免疫抑制レジメン(例えば、本明細書に開示される短期免疫抑制レジメン)を、レシピエントに投与することができる。
(実施例18)
共通のMHCクラスI抗原による、ex vivoで増幅された、レシピエント由来B細胞を使用する寛容誘導
【0581】
ex vivoで増幅された、レシピエント由来B細胞の使用は、レシピエントとMHCクラスII対立遺伝子を共有しない、生きている非関連ドナーグラフトに対する寛容誘導を可能にし得る。アポトーシス性自己B細胞の移植前後の注入は、レシピエントにおいてtTregを活性化し、増幅すると予想される。
【0582】
Bリンパ球を、レシピエントから採取し、増幅することができる。例えば、Bリンパ球を、計画された移植の約3週間前に移植レシピエントから取得することができる。抗原の担体としてのB細胞を、非サイトカイン刺激レシピエントにおける低体積白血球除去輸血によって取得し、約0.5x10^9個の細胞の成熟ナイーブB細胞の入力収量を提供することができる。これらの細胞は、IL-2、IL-4、IL-21、BAFF、およびCD40L-多量体の存在下(または他のサイトカインおよび増殖因子の組合せの存在下)、ex vivoでの増幅の前後で大量の自己MHCクラスII分子を発現する。2週間で120倍以上のB細胞のex vivoでの増幅は、ECDIへの曝露に起因する細胞喪失を考慮し、+1日目の細胞療法生成物のための入力細胞収量として5~10x10^9個のB細胞を取り分けると、-7日目でのIV注入のための35x10^9個の細胞のアポトーシス性自己白血球の用量、および+1日目での注入のための継続的増幅後に同様の用量を提供する。
【0583】
一部の場合、Bリンパ球を、ECDIによって、ドナーと共有される対立遺伝子のMHCクラスIα鎖、ドメイン、またはペプチドとカップリングさせることができる。ECDIによって自己B細胞にカップリングしたMHCクラスI対立遺伝子を発現する任意のドナー(例えば、臓器または膵島細胞ドナー)は、連鎖抑制および感染寛容が他の不適合抗原に対する特異性を有するT細胞に対する寛容化を拡張する限り、寛容誘導のための好適なドナーであると考えられる。
【0584】
一部の場合、MHCクラスIIが不適合の非関連の生きているドナーが、少なくとも1つのMHCクラスI抗原をレシピエントと共有する場合、不適合MHCクラスIドナー抗原を、寛容誘導のために増幅された、自己アポトーシス性ドナーB細胞の表面にカップリングさせる必要はないかもしれない。
【0585】
免疫抑制レジメン(例えば、本明細書に開示される短期免疫抑制レジメン)を、レシピエントに投与することができる。
(実施例19)
アポトーシス性ドナー白血球は安定な膵島同種グラフト寛容を促進する
【0586】
本実施例は、本開示の前処置レジメンまたは寛容化ワクチンが、膵島同種グラフトに対する長期寛容を誘導することができることを示す。アンタゴニスト性抗CD40抗体2C10R4、ラパマイシン、可溶性腫瘍壊死因子受容体、および抗インターロイキン6受容体抗体を用いる短期免疫療法下でのアポトーシス性ドナー白血球の2回の移植前後の注入は、感作されていないMHCクラスIが異なり、1つのMHCクラスII DRB対立遺伝子が適合するアカゲザルにおける膵島同種グラフトに対する長期的(1年以上)寛容を誘導する。
動物試験
【0587】
研究用に繁殖されたサル(Macaca mulatta)ドナーおよびレシピエントのコホートを、認定ベンダーから取得した。レシピエントサルの構成を表7に提示する。
【0588】
表7:レシピエントサルの構成。
【表7-1】
【表7-2】
【0589】
調査群(コホートA)は、7.3±0.1歳および12.5±1.5kgの体重の3匹の雄を含んでいた。対照コホート(B)は、4.3±2.1歳および6.2±1.6kgの体重の8匹の雄を含んでいた。実験コホート(C)は、4.1±1.7歳および5.2±1.2kgの体重の7匹の雄および1匹の雌を含んでいた。ドナーコホートは、6.7±3.3歳および11.7±3.6kgの体重の19匹の雄を含んでいた。
【0590】
動物は、ヘルペスウイルス-1(Bウイルス)、サル免疫不全ウイルス、D型サルレトロウイルス、およびサルTリンパ向性ウイルスを含まなかった。適格性はさらに、ABO適合性および試験により定義されるMHC適合(MHC-Iが異なり、1つのMHC-II DRB対立遺伝子が適合するドナー-レシピエント対)を含んでいた。全ての動物は、454のパイロシーケンシングによる高分解能MHC-IおよびII遺伝子型決定を受けた。コホートBおよびCでは、STZ(100mg/kg IV)を用いて糖尿病を誘導し、0.3ng/mL未満の基底CペプチドおよびIVグルコース負荷に対する陰性のCペプチド応答によって確認した。
ADLプロセシング
【0591】
膵島移植に対して-7日目に、脾細胞をドナーサル脾臓から単離し、赤血球を溶解し、残りの細胞を、ナイロンウール製カラムを用いてB細胞について富化した。細胞(80%)を、Dulbeccoのリン酸緩衝食塩水(PBS)中、ECDI(3.2x108個の細胞あたり30mg/mL)を用いて1h、氷上で撹拌し、洗浄し、壊死細胞および微小凝集体を清浄し、アクリジンオレンジ/ヨウ化プロピジウム(PI)蛍光顕微鏡により生存性/壊死について評価した。ECDI固定脾細胞を、20x106細胞/mLの最大濃度と共にレシピエントの体重1キログラムあたり0.25x109個の細胞の標的用量でのIV注入のために冷やしたシリンジ(n=9)またはIVバッグ(n=2)にロードし、レシピエントへの投与まで氷上に置いた。37℃で4~6時間、ECDI固定された細胞をインキュベートし、アネキシンV/PIで標識し、蛍光顕微鏡によって分析することによって、アポトーシスの誘導をin vitroでモニタリングした。
【0592】
+1日目の注入のためのECDI固定されたADLの標的用量を満たすために、膵島移植に対して-15および-7日目にドナーサルから採取した血液、および残りの20%の脾細胞を、NHP CD20ビーズを使用する磁気選別によりB細胞について富化し、rhIL-10(10ng/mL)、rIL-4(10ng/mL)、rhBAFF(30ng/mL)、rhTLR9a(10ng/mL)、およびrhCD40L-MEGAまたはrhCD40L多量体(500ng/mL)とrhAPRIL(50ng)との両方の存在下、+1日目までGREX100Mフラスコ中、ex vivoで増幅した。増幅された細胞を、rhIL-21(5ng/mL)で刺激し、24h後に収穫した。レシピエントを、注入前にジフェンヒドラミン12.5mg、アセトアミノフェン160mg、およびオンダンセトロン4mgの組合せで経口(PO)により準備処置した。
短期免疫抑制
【0593】
免疫抑制を、コホートA~Cにおける全てのレシピエントサルに投与した。コホートAおよびCのサルにおいて全てのADL注入をカバーするために、第1の用量のそれぞれの薬物を、0日目の膵島移植に対して-8または-7日目にコホートA~Cの全てのレシピエントに与えた。アンタゴニスト性抗CD40 mAb 2C10R4を、-8、-1、7、および14日目に50mg/kgでIVにより与えた。ラパマイシン(Rapamune(登録商標))を、-7日目から移植後21日目までPOにより与えた;標的トラフレベルは5~12ng/mLであった。同時的抗炎症療法は、(i)-7、0、7、14、および21日目の10mg/kg IVでのαIL-6R(トシリズマブ、Actemra(登録商標))、ならびに(ii)-7日目の1mg/kg IVならびに3、7、10、14、および21日目の0および0.5mg/kgの皮下でのsTNFR(エタネルセプト、Enbrel(登録商標))からなっていた。調査コホートのサルを、+7日目に終結させ、したがって、免疫抑制の最後の用量を、+7日目にこれらのサルに与えた。
膵島のプロセシング、移植、および機能
【0594】
ドナーサルは、膵全切除術を受け、膵島を単離し、精製し、7日間培養して、直接経路刺激能力を最小化し、品質制御にかけた。0日目に、1.0EU/kg以下のレシピエント体重の内毒素含量を有するDNAによる5000IE/kg以上の標的数を、留置門脈内血管アクセスポートを使用して非外科的にSTZ糖尿病サルに移植した。防御的外因性インスリンを、完全なグラフト機能を示す動物において移植後21日目に停止させた。代謝モニタリングは、グルコースに対する急性Cペプチド応答およびグルコース消失速度(Kg)の決定と共に、毎日a.m./p.m.の血糖、毎週のCペプチド、毎月のHbA1c、混合食事試験、および2ヶ月毎のIVブドウ糖負荷試験を含んでいた。
膵島グラフトの組織病理
【0595】
肝臓標本を、それぞれのレシピエントの10の異なる解剖学的領域から取得し、10%ホルマリン中で固定し、日常的な組織学のためにプロセシングした。10個のブロックのそれぞれに由来する切片をヘマトキシリン&エオシンで染色するか、またはインスリンについて免疫染色して、移植された膵島をスコア化した。剖検時にグラフトの組織病理上でかなりの数のインタクトなA型および軽度に浸潤したB型の膵島を示し、C型からF型の膵島を示さない、またはわずかしか示さないことによって(中程度から顕著に浸潤した膵島および浸潤物または線維化によって部分的または完全に置き換えられた膵島)、拒絶のない膵島同種グラフト生存を確認した。
免疫細胞表現型のフローサイトメトリー分析
【0596】
コホートB~Cのサルの凍結保存されたPBL、LMNC、およびLN試料に対して、マルチカラーフローサイトメトリー分析を実施した。全てにおいて、1x106個の細胞を、生存性を示す染料で染色して、生きた細胞と、細胞デブリとを識別した。細胞を、室温(RT)で25min、抗体、蛍光マイナスワン、および/またはアイソタイプ対照で染色した後、固定および洗浄した。調節性T細胞および増殖性TおよびB細胞ならびに細胞内サイトカインを評価するために、PBLを、細胞外エピトープ(CD3、CD4、CD8、CD25、およびCD127)を認識する抗体で染色した後、FoxP3固定/透過処理キットを用いて固定/透過処理し、抗FoxP3、Ki67、IFN-γ、IL-10、およびTGF-β抗体で染色した。FACSDIVA6.1.3を含む3レーザーBD Canto II(BD Bioscience)上で最小で200,000の事象を獲得した。これらのサブ集団のそれぞれの相対パーセンテージを、FlowJo 10.1.ソフトウェア(TreeStar)を使用して決定した。
ゲーティング戦略
【0597】
第1に、細胞を、FSC-H対FSC-A上でゲート化した後、SSC-H対SSC-A上でゲート化して、ダブレットを識別した。次いで、リンパ球を、よく特徴付けられたSSC-AおよびFSC-A特性に基づいてゲート化した。死滅した細胞を、生存性を示す染料に基づいて除外した。以下の表現型特性を使用して、免疫細胞集団を定義した:T細胞:CD3+リンパ球;CD4+T細胞:CD4+/CD3+/CD8-;CD8+T細胞:CD8+/CD3+/CD4-;CD4またはCD8 TEM細胞を、CD4またはCD8 T細胞内のCD2hi/CD28-と決定した。PD-1、Tbet、CD40およびKi67の発現を、CD4+、CD8+T細胞と、CD20+B細胞の両方の上で決定した。ケモカイン受容体(CXCR-5)発現を、CD4 T細胞上で検査して、Tfh細胞を計数した:CXCR5+CD4+T細胞。Treg細胞:ゲート化されたCD4+CD25+リンパ球のうち、CD127-FoxP3+。NS細胞:ゲート化されたCD8リンパ球のうち、CD8+CD122+。Breg細胞:調節性B細胞(CD24hiCD38hi)、B10細胞:CD24、CD27、およびCD38抗原の発現に基づいて、CD3-CD19+/CD20+リンパ球内の(CD24hiCD27+)。ゲート化されたLin-(CD3-CD20-)HLA-DR-CD14+細胞を分析して、CD14+Lin-HLA-DR-細胞のうちのMDSC:CD11bhiCD33hiを計数した。
ドナー特異的TおよびB細胞応答
【0598】
MLRを、膵島ドナーおよび移植レシピエントに由来する凍結保存されたPBL試料上で実施した。レシピエントサルに由来する応答性PBL(300,000個の細胞)試料を、2.5μMのCFSEで標識し、膵島ドナー(ドナー)由来の照射された(3000cGy)VPD-450で標識された刺激性PBL(300,000個の細胞)と共に同時培養した。
ADLは安定な膵島同種グラフト寛容を促進する
【0599】
コホートBおよびCのサルは、ストレプトゾトシン(STZ)誘導性糖尿病後に1回のDRBが適合する膵島移植を受けた。両方のコホートが短期免疫抑制を受けたが、コホートCのみはアポトーシス性ドナー白血球(ADL)を受けた(
図8A)。ADL注入は、有意に改善された生存と関連していた(
図8B)。全てのコホートCのサルが、移植後365日以上にわたって膵島同種グラフトの操作可能な寛容を示した。7匹のコホートBのサルのうちの2匹が、365日以上にわたって門脈内移植を受け入れた。
【0600】
コホートCに由来するサルは、移植の直後に正常血糖になり、移植後21日目の免疫抑制および外因性インスリンの中止後でも、そのままであった(
図9A)。そのレシピエントの糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベルは、移植後に正常になり、そのままであった(
図9B)。他のコホートCのサルにおいても観察された、移植後の継続的な体重増加(
図9C)は、処置レジメンの全体的な安全性と一致している。移植前の血清Cペプチドレベルおよびグルコース刺激に対する応答は、5匹全てのレシピエントにおいて陰性であった。コホートCに由来するサルにおいて、強く陽性の移植後空腹時および無作為の血清Cペプチドレベルならびに1年のフォローアップを通した刺激後のその増加により、安定な膵島同種グラフト機能が確認された(
図9D)。そのレシピエントは、グルコースによるIV負荷後に安定な移植後血糖消失速度(Kg)を示し、これはSTZ前の速度と同等であった(
図9E);適合試験に由来するCペプチドレベルは、移植後の経過を通じて1ng/mLを超える実質的な増加を示した(
図9F)。剖検時のそのレシピエントの肝臓の組織病理学的分析により、いくつかのインタクトな膵島が示され、膵島周囲への浸潤は見られないか、または最小限であった(
図10A)。移植された、肝内膵島は、インスリンに関する強い陽性染色を示した(
図10B);剖検での天然膵臓中のインスリン陽性膵島ベータ細胞の非存在(
図10C)は、移植後の正常血糖が、グラフトの機能を反映し、STZ誘導性糖尿病後の寛解に起因するものではないことを示していた。
【0601】
移植の1年後に犠牲にならなかったコホートCのサルは、免疫抑制の中止後も2年を超えて継続的な膵島同種グラフト機能を示した(
図11A~F)。
図11Aは、食前および食後血糖(それぞれ、実線および破線)ならびに1日インスリン(バー)を提供する。
図11Bは、フォローアップを通した正の、かつ安定なCペプチドレベル(空腹、無作為、および混合食刺激)を示す。
図11Cは、フォローアップを通した正常に近いHbA1cレベルの回復を示す。
図11Dは、移植後の継続的な体重増加を示し、移植後の正常血糖が吸収不良状態に起因するものではないことを示している。
図11Eは、0.5g/kgのグルコースのIV注入(IVGTT)の前後での血糖ならびに糖尿病誘導の前後および移植後のKgレベルを示す。
図11Fは、IVグルコース(0.5g/kg)に対する急性Cペプチド応答を示す。
【0602】
剖検時の組織病理学的分析により、そのサルにおける拒絶のない膵島同種グラフト生存が確認された(
図12)。比較により、コホートBのサル(ADLを受けなかった)は、移植後に正常血糖になったが、グラフト機能の低下が移植後4ヶ月から始まって明らかであった(
図13A~F)。
図13Aは、食前および食後血糖値(それぞれ、実線および破線)ならびに1日インスリン(バー)を示す。上向きの傾向と共に、移植後133日目で出発して食後不安定性が明らかであり、拒絶に起因する同種グラフトの喪失を示唆していた。
図13Bは、Cペプチドレベル(空腹、無作為、および混合食刺激)が移植後に正になり、基底レベルは、移植後161日目まで約1ng/mLのままであったことを示す。
図13Cは、正常に近いHbA1cレベルの回復を示し、次いで、140日目あたりで、継続的な上向きの傾向と共にレベルの上昇が始まっている。
図13Dは、移植後の継続的な体重増加を示し、移植後の正常血糖が吸収不良状態に起因するものではないことを示している。
図13Eは、0.5g/kgのグルコースのIV注入(IVGTT)の前後での血糖値ならびに糖尿病誘導の前後および移植後のKgレベルを示す。
図13Fは、IVグルコース(0.5g/kg)に対する急性のCペプチド応答を示す。1ヶ月後の剖検により、拒絶を確認した。
【0603】
これらの結果は、免疫抑制の中止後であっても、ADL処置されたサルにおける1つのDRBが適合する膵島同種グラフトの長期的な機能的および組織学的生存を示し、厳密な臨床移行モデルにおけるロバストな寛容を示している。これらの結果は、本開示の前処置レジメンまたは寛容原性ワクチンが、同種グラフトの長期的な機能的および組織学的生存を促進することができることを示す。
ADLはエフェクター細胞の増幅および機能を抑制する
【0604】
コホートBおよびCにおけるエフェクター細胞応答を比較した。移植前後のADL注入(コホートC)は、循環肝臓単核細胞(LMNC)、腸間膜リンパ節(LN)、および抗ドナーCD4+(
図14A~C)およびCD8+(
図14D~F)Tエフェクター記憶(TEM)細胞の増幅の長期的抑制と関連していた。LMNCおよびLNの分析を、拒絶またはスケジュール化された終結の時点で実施したところ、コホートBについては変化したが、コホートCの動物については変化しなかった。LMNCおよびLN内のCD4+およびCD8+TEM細胞のパーセンテージは、
図14Bおよび
図14Eに示されるように寛容性のコホートCのサルにおいて移植後1年またはそれより後でも低かった;寛容な動物が移植後1年より前に犠牲にされたとすれば、これらのパーセンテージはおそらく、グラフト機能を失ったコホートBのサルと同等に低かったであろう。
【0605】
12ヶ月の移植後フォローアップを通じて、ADL注入は、コホートBのサルと比較してコホートCにおいて低頻度の循環T濾胞性ヘルパー(Tfh)細胞と関連していた(
図15A)。PD-1+CD4+T細胞(
図15B)およびPD-1+CD8+T細胞(
図15C)の割合は、コホートC対コホートBにおいて移植後により高かったが、これは、ADLによるT細胞疲弊表現型誘導を示唆している。循環CD20+B細胞の頻度は、コホートBおよびCにおいて類似していた(
図15D)。
【0606】
まとめると、移植前後のADL注入は、エフェクターTおよびB細胞の移植後の活性化および増幅、ならびに短期免疫抑制での1つのDRBが適合するサルにおける同種グラフトへのそれらの動員を妨げた。これらの結果は、本開示の前処置レジメンまたは寛容原性ワクチンが、移植レシピエントにおけるエフェクター免疫細胞の増幅および機能を抑制することができることを示している。
ADLは移植レシピエントにおいて免疫調節性細胞を増幅させる
【0607】
コホートBおよびCにおける調節性表現型を有するリンパ系細胞および骨髄性細胞の頻度を比較した。
【0608】
移植後のフォローアップ期間を通して、ADL処置された動物において、有意により高いパーセンテージの循環ナチュラルサプレッサー(NS)およびTreg細胞が観察された(
図16Aおよび
図16B)。調節性B細胞(Breg)もまた、コホートBのサルよりもコホートCにおいて、移植後のフォローアップ期間に循環中(
図16C)で、ならびに犠牲時の肝臓およびLNにおいて(
図16D)、有意により豊富であった。
【0609】
骨髄由来抑制細胞(MDSC)も、移植後のフォローアップ期間に循環中で有意により豊富であった。
図17Aは、MDSCの特定のためのゲーティング戦略を示す。シングレットを最初にゲート化して、ダブレットを除去し、死滅した細胞を除外した。CD33+およびCD11b+の同時発現に基づいて、Lin-HLA-DR-集団内のゲート化されたCD14+細胞中で、およびCD3-CD20-細胞を描写するLinを用いて、MDSCを特定した。1匹のコホートB(上)および1匹のコホートC(下)のサルに由来する代表的なFACSプロファイルを示す。
【0610】
移植後14日目の循環MDSCに対するADL注入の効果に関するさらなる試験は、コホートCにおいては実質的な増加(CD14+Lin-HLA-DR-細胞の22.86±6.20%から47.74±15.48%への増加)を示し、コホートBにおいては小さな増加のみ(CD14+Lin-HLA-DR-細胞の17.65±5.80%から24.01±10.45%への増加)を示した。
図17Bは、コホートBのサルと比較した、コホートCのサルにおける循環MDSCのパーセンテージの有意な増加を示す。
【0611】
APCサブセットに対するADL注入の効果も分析した。興味深いことに、コホートBおよびCを比較する場合、ADL注入は、移植後2および4週間で、CD11b+DC、CD14+単球におけるHLA-DR発現の下方調節と関連し、CD20+B細胞においてはごくわずかであったが、HLA-DR発現は、対照コホートBのサブセットにおいては3つ全てのAPCサブセットにおいて増加した(
図17C~E)。
図17Cは、循環HLA-DR+CD11b+樹状細胞のMFIの倍率変化を示す。
図17Dは、循環HLA-DR+CD14+単球のMFIの倍率変化を示す。
図17Eは、循環HLA-DR+CD20+B細胞のMFIの倍率変化を示す。
【0612】
これらのデータは、移植前後のADL注入が、短期免疫抑制を受ける1つのDRBが適合するサルにおいて調節性免疫細胞サブセットの移植後増幅を促進することを示している。これらの結果は、本開示の前処置レジメンまたは寛容原性ワクチンが、移植レシピエントにおける調節性免疫細胞の増幅および機能を促進することができることを示している。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
同種移植または異種移植のための前処置レジメンであって、
(a)架橋剤中において固定されたアポトーシス性ドナー白血球、
(b)mTOR阻害剤、
(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、
(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および
(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤
を含み、
前記前処置レジメンが、移植細胞、組織または臓器のレシピエントへの投与のためである、前処置レジメン。
(項目2)
前記レシピエントへの(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の投与のための説明書をさらに含む、項目1に記載の前処置レジメン。
(項目3)
(a)、(b)、(c)、(d)および(e)が、前記同種移植または異種移植の約10日前~約30日後に前記レシピエントに投与される、項目1から2のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目4)
(a)、(b)、(c)、(d)および(e)のうちの少なくとも1つが、前記同種移植または異種移植の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10日前に前記レシピエントに投与される、項目1から3のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目5)
(a)、(b)、(c)、(d)および(e)のうちの少なくとも1つが、前記同種移植または異種移植の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、15、17、18、19、20、21、22、23、24または25日前に前記レシピエントに投与される、項目1から4のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目6)
(a)、(b)、(c)、(d)および(e)のうちの少なくとも1つが、前記レシピエントに、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、脳室内、鼻腔内、頭蓋内、腔内、脳内、髄腔内もしくは経皮、または局所に投与される、項目1から5のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目7)
前記(a)、(b)、(c)、(d)および(e)が、静脈内に投与される、項目6に記載の前処置レジメン。
(項目8)
前記mTOR阻害剤が、ラパマイシンである、項目1から7のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目9)
前記レシピエントにおける前記mTOR阻害剤の目標トラフレベルが、1mLあたり約5~12ngである、項目1から8のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目10)
前記抗腫瘍壊死因子剤が、抗腫瘍壊死因子抗体またはその抗原結合性断片である、項目1から9のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目11)
前記抗腫瘍壊死因子剤が、腫瘍壊死因子受容体の腫瘍壊死因子結合ドメインを含む、項目1から9のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目12)
前記抗腫瘍壊死因子剤が、エタネルセプトである、項目1から9のいずれか一項に記
載の前処置レジメン。
(項目13)
前記抗腫瘍壊死因子剤または前記抗腫瘍壊死因子受容体剤が、約0.1mg/kg~約10mg/kgの用量で前記レシピエントに投与される、項目1から12のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目14)
前記抗腫瘍壊死因子剤または前記抗腫瘍壊死因子受容体剤が、約0.5mg/kg~約1mg/kgの用量で前記レシピエントに投与される、項目1から13のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目15)
前記抗インターロイキン6受容体剤が、アンタゴニスト性抗インターロイキン6受容体抗体またはその抗原結合性断片である、項目1から14のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目16)
前記抗インターロイキン6受容体剤が、トシリズマブである、項目1から15のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目17)
前記抗インターロイキン6剤または前記抗インターロイキン6受容体剤が、約1mg/kg~約100mg/kgの用量で前記レシピエントに投与される、項目1から16のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目18)
前記抗インターロイキン6剤または前記抗インターロイキン6受容体剤が、約10mg/kgの用量で前記レシピエントに投与される、項目1から17のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目19)
前記抗CD40剤または前記抗CD40リガンド剤が、アンタゴニスト性抗CD40抗体またはその抗原結合性断片である、項目1から18のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目20)
前記抗CD40剤または前記抗CD40リガンド剤が、2C10または2C10R4である、項目1から19のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目21)
前記抗CD40剤または前記抗CD40リガンド剤が、約1mg/kg~100mg/kgの用量で前記レシピエントに投与される、項目1から20のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目22)
前記抗CD40剤または前記抗CD40リガンド剤が、約50mg/kgの用量で前記レシピエントに投与される、項目1から21のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目23)
前記前処置レジメンの前記レシピエントへの投与が、前記移植細胞、組織または臓器に対する長期寛容を提供する、項目1から22のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目24)
前記アポトーシス性白血球が、哺乳動物白血球である、項目1から23のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目25)
前記アポトーシス性白血球が、ブタ白血球である、項目1から24のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目26)
前記アポトーシス性白血球が、ヒト白血球である、項目1から24のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目27)
前記アポトーシス性白血球が、死体ドナー、脳死ドナー、心停止ドナーまたは生体ドナー由来である、項目1から26のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目28)
前記アポトーシス性白血球が、ex vivoで増やされた白血球である、項目1から27のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目29)
前記アポトーシス性白血球が、脾臓または末梢血から単離されている、項目1から28のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目30)
前記アポトーシス性白血球が、Bリンパ球を含む、項目1から29のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目31)
前記アポトーシス性白血球が、ex vivoで幹細胞または誘導多能性幹細胞から分化した細胞を含む、項目1から30のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目32)
前記幹細胞が、前記移植細胞、組織または臓器のドナーに由来する、項目31に記載の前処置レジメン。
(項目33)
前記移植細胞、組織または臓器が、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、膵島細胞、小腸、骨髄、造血幹細胞、胚性幹細胞由来膵島ベータ細胞、誘導多能性幹細胞由来膵島ベータ細胞、胚性幹細胞由来膵島、誘導多能性幹細胞由来膵島、幹細胞由来の細胞、組織もしくは臓器、またはそれらの組合せである、項目1から32のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目34)
前記レシピエントおよび前記移植細胞、組織または臓器のドナーが、MHCクラスI不適合である、項目1から33のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目35)
前記レシピエントおよび前記移植細胞、組織または臓器のドナーが、MHCクラスII不適合である、項目1から33のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目36)
前記レシピエントおよび前記移植細胞、組織または臓器のドナーが、ハプロタイプ一致である、項目1から33のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目37)
前記レシピエントおよび前記移植細胞、組織または臓器のドナーが、少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子について適合している、項目1から33のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目38)
前記レシピエントおよび前記移植細胞、組織または臓器のドナーが、少なくとも1つのMHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子またはMHCクラスII DP対立遺伝子について適合している、項目1から33のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目39)
前記レシピエントおよび前記移植細胞、組織または臓器のドナーが、MHCクラスII
DRB対立遺伝子である少なくともMHCクラスII DR対立遺伝子について適合している、項目38に記載の前処置レジメン。
(項目40)
前記アポトーシス性白血球および前記レシピエントが、MHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子またはMHCクラスII DP対立遺伝子のうちの少なくとも1つについて適合している、項目1から39のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目41)
前記アポトーシス性白血球およびレシピエントが、MHCクラスII DRB対立遺伝子であるMHCクラスII DR対立遺伝子について適合している、項目40に記載の前処置レジメン。
(項目42)
前記アポトーシス性白血球および前記レシピエントが、完全に不適合である、項目1から35のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目43)
前記アポトーシス性白血球および移植片が、少なくとも1つのMHCクラスI A対立遺伝子、MHCクラスI B対立遺伝子、MHCクラスII DR対立遺伝子、MHCクラスII DQ対立遺伝子またはMHCクラスII DP対立遺伝子について適合している、項目1から42のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目44)
前記アポトーシス性白血球および移植片が、ハプロタイプ一致である、項目1から42のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目45)
前記アポトーシス性白血球が、移植片の前記ドナーに由来する、項目1から42のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目46)
前記アポトーシス性白血球が、前記移植細胞、組織または臓器の前記ドナー由来の幹細胞の分化に由来する、項目45に記載の前処置レジメン。
(項目47)
前記アポトーシス性白血球が、その表面上にコンジュゲートされた、前記レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドを含む、項目1から46のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目48)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、DRβ鎖、DQβ鎖もしくはDPβ鎖、またはそれらの組合せに由来するペプチドを含む、項目47に記載の前処置レジメン。
(項目49)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、DR、DQまたはDPのα1またはα2ドメイン全部を含む、項目47または項目48に記載の前処置レジメン。
(項目50)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、DR、DQまたはDPのβ1またはβ2ドメイン全部を含む、項目47から49のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目51)
前記MHCクラスII分子が、前記レシピエントのHLA-DRB1*03またはHLA-DRB1*04対立遺伝子によってコードされている、項目47から50のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目52)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、超可変領域由来の配列を含む、項目47から51のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目53)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、少なくとも10アミノ酸長である、項目47から52のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目54)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、約10~30アミノ酸長である、項目47から53のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目55)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、合成または組換えである、項目47から54のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目56)
前記アポトーシス性白血球が、前記レシピエントに由来するか、または前記レシピエント由来の幹細胞の分化の際に誘導されたものであり、前記アポトーシス性白血球が、その表面にコンジュゲートされたMHCクラスI分子に由来する1種または複数のペプチドを含む、項目1から55のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目57)
前記MHCクラスI分子が、前記移植片の前記ドナー中で発現している、項目56に記載の前処置レジメン。
(項目58)
前記MHCクラスI分子が、HLA-A1、HLA-A3、HLA-B7またはHLAB8である、項目56または項目57に記載の前処置レジメン。
(項目59)
前記MHCクラスI分子が、HLA-A*02、24、01またはHLA-B*35、44、51によってコードされている、項目56から58のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目60)
前記1種または複数のペプチドが、前記架橋剤での処理によって前記アポトーシス性白血球の表面にコンジュゲートされている、項目47から59のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目61)
前記架橋剤が、カルボジイミドを含む、項目1から60のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目62)
前記カルボジイミドが、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、またはそれらの組合せを含む、項目61に記載の前処置レジメン。
(項目63)
前記架橋剤が、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)を含む、項目62に記載の前処置レジメン。
(項目64)
前記架橋剤が、カルボジイミドを含まない、項目1から60のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目65)
前記架橋剤が、ゲニピン、アクリルアルデヒド、ジホルミル、四酸化オスミウム、ジイミドエステル、塩化第二水銀、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、トリニトロフェノール(ピクリン酸)、重クロム酸カリウム、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸、またはそれらの組合せを含む、項目1から60のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目66)
前記ジイミドエステルが、塩化シアヌル、ジイソシアネート、ジエチルピロカーボネート(DEPC)、マレイミド、ベンゾキノン、またはそれらの組合せを含む、項目65に記載の前処置レジメン。
(項目67)
前記アポトーシス性白血球が、所定の時間、固定されている、項目1から66のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目68)
前記所定の時間が、少なくとも約10分、20分、30分、40分、50分、60分、75分、90分、120分、150分、180分、210分または240分である、項目67に記載の前処置レジメン。
(項目69)
前記アポトーシス性白血球が、ある量の1種または複数の免疫調節分子とさらに接触されたものである、項目1から68のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目70)
1種または複数の免疫調節分子の前記量が、前記レシピエントの抗原提示細胞の機能を改変するのに十分である、項目69に記載の前処置レジメン。
(項目71)
前記1種または複数の免疫調節分子が、IFN-γ、NF-kB阻害剤、ビタミンD3、siCD40、コバルトプロトポルフィリン、インスリンB9-23、表面抗原分類タンパク質のすべてもしくは一部、またはそれらの組合せを含む、項目69または項目70に記載の前処置レジメン。
(項目72)
前記NF-kB阻害剤が、クルクミン、トリプトリド、Bay-117085、またはそれらの組合せである、項目71に記載の前処置レジメン。
(項目73)
前記(a)、(b)、(c)、(d)および(e)が、別々に、または同時に投与される、項目1から72のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目74)
同種移植片または異種移植片のレシピエントの移植後安定化のための寛容化レジメンであって、
(a)カルボジイミド架橋剤でモジュレートされたアポトーシス性白血球であって、前記架橋剤との接触の前に、IL-2、IL-4、IL-21、BAFFおよびCD40Lの1つまたは複数の存在下で増やされているアポトーシス性白血球、
(b)mTOR阻害剤、
(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、
(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、ならびに
(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤
を含み、
前記寛容化レジメンが、移植細胞、組織または臓器のレシピエントへの投与のためである、寛容化レジメン。
(項目75)
前記アポトーシス性白血球が、前記架橋剤との接触の前に、出発集団に対して、少なくとも約3倍、5倍、10倍、50倍、100倍、150倍、200倍または250倍増やされている、項目74に記載の寛容化レジメン。
(項目76)
前記(a)、(b)、(c)、(d)および(e)が、別々に、または同時に投与される、項目74または項目75に記載の寛容化レジメン。
(項目77)
細胞、組織または臓器移植片をレシピエントに移植するための前処置レジメンであって、
架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球を含み、前記アポトーシス性白血球は、その表面上にコンジュゲートされた、
前記レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種もしくは複数のペプチド、または
前記細胞、組織もしくは臓器移植片のドナーのMHCクラスI分子に由来する1種もしくは複数のペプチド
を含み、前記前処置レジメンが、前記レシピエントへの投与のためである、前処置レジメン。
(項目78)
前記移植レシピエントの短期免疫抑制のための1種または複数の薬剤を投与することをさらに含む、項目77に記載の前処置レジメン。
(項目79)
短期免疫抑制のための前記1種または複数の薬剤が、mTOR阻害剤、抗腫瘍壊死因子剤もしくは抗腫瘍壊死因子受容体剤、抗インターロイキン6剤もしくは抗インターロイキン6受容体剤、抗CD40剤もしくは抗CD40リガンド剤、またはそれらの組合せを含む、項目77または項目78に記載の前処置レジメン。
(項目80)
前記移植レシピエントへの短期免疫抑制のための前記1種または複数の薬剤の投与のための説明書をさらに含む、項目77から79のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目81)
前記MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドが、DRβ鎖、DQβ鎖もしくはDPβ鎖、またはそれらの組合せに由来するペプチドを含む、項目77から80のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目82)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、DRのβ1またはβ2ドメイン全部を含む、項目77から81のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目83)
前記MHCクラスII分子が、前記レシピエントのHLA-DRB1*03またはHLA-DRB1*04対立遺伝子によってコードされている、項目77から82のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目84)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、DR、DQまたはDPのα1またはα2ドメイン全部を含む、項目77から80のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目85)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、DR、DQまたはDPのβ1またはβ2ドメイン全部を含む、項目77から81のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目86)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、超可変領域由来の配列を含む、項目77から85のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目87)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、少なくとも10アミノ酸長である、項目77から86のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目88)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、約10~30アミノ酸長である、項目77から87のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目89)
前記MHCクラスII分子に由来する前記1種または複数のペプチドが、合成または組換えられたものである、項目77から88のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目90)
架橋剤中において固定された前記アポトーシス性白血球が、前記レシピエントの前記MHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドを含み、前記アポトーシス性白血球が、前記ドナーとMHCクラスII適合、および前記レシピエントとMHCクラスII不適合である、項目77から89のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目91)
前記MHCクラスI分子が、前記移植片の前記ドナー中で発現している、項目77から90のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目92)
前記MHCクラスI分子が、HLA-A1、HLA-A3、HLA-B7またはHLAB8である、項目77から91のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目93)
前記MHCクラスI分子が、HLA-A*02、24、01またはHLA-B*35、44、51によってコードされている、項目77から92のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目94)
架橋剤中において固定された前記アポトーシス性白血球が、前記ドナーの前記MHCクラスI分子に由来する1種または複数のペプチドを含み、前記アポトーシス性白血球が、前記レシピエントと、MHCクラスI適合もしくはMHCクラスII適合、またはその両方である、項目91から93のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目95)
前記1種または複数のペプチドが、前記架橋剤での処理によって前記アポトーシス性白血球の表面にコンジュゲートされている、項目77から94のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目96)
前記架橋剤が、カルボジイミドを含む、項目77から95のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目97)
前記カルボジイミドが、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、またはそれらの組合せを含む、項目96に記載の前処置レジメン。
(項目98)
前記架橋剤が、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(ECDI)を含む、項目97に記載の前処置レジメン。
(項目99)
前記架橋剤が、カルボジイミドを含まない、項目77から95のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目100)
前記架橋剤が、ゲニピン、アクリルアルデヒド、ジホルミル、四酸化オスミウム、ジイミドエステル、塩化第二水銀、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、トリニトロフェノール(ピクリン酸)、重クロム酸カリウム、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸、またはそれらの組合せを含む、項目77から95のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目101)
前記ジイミドエステルが、塩化シアヌル、ジイソシアネート、ジエチルピロカーボネート(DEPC)、マレイミド、ベンゾキノン、またはそれらの組合せを含む、項目100に記載の前処置レジメン。
(項目102)
前記アポトーシス性白血球が、所定の時間、固定されている、項目77から101のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目103)
前記所定の時間が、少なくとも約10分、20分、30分、40分、50分、60分、75分、90分、120分、150分、180分、210分または240分である、項目102に記載の前処置レジメン。
(項目104)
前記アポトーシス性白血球が、ある量の1種または複数の免疫調節分子とさらに接触されたものである、項目77から103のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目105)
レシピエントにおいて細胞、組織または臓器移植片に対する寛容を誘導する方法であって、
(a)架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球、
(b)mTOR阻害剤、
(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、
(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および
(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤
を含む、有効量の組成物を前記レシピエントに投与することを含む、方法。
(項目106)
前記アポトーシス性白血球および前記レシピエントが、前記レシピエントと少なくとも1つのMHCクラスII対立遺伝子について適合している、項目105に記載の方法。
(項目107)
前記アポトーシス性白血球および前記レシピエントが、MHC不適合である、項目105に記載の方法。
(項目108)
前記アポトーシス性白血球が、前記レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種または複数のペプチドを含み、前記1種または複数のペプチドが、前記アポトーシス性白血球の表面上にコンジュゲートされている、項目105から107のいずれか一項に記載の方法。
(項目109)
前記アポトーシス性白血球が、ex vivoで幹細胞から分化した細胞を含み、前記幹細胞が、前記細胞、組織または臓器移植片のドナーに由来する、項目108に記載の方法。
(項目110)
前記アポトーシス性白血球が、前記レシピエントとMHC適合である、項目105に記載の方法。
(項目111)
前記アポトーシス性白血球が、前記細胞、組織または臓器移植片のドナーのMHCクラスI分子に由来する1種または複数のペプチドを含み、前記1種または複数のペプチドが、前記アポトーシス性白血球の表面上にコンジュゲートされている、項目110に記載の方法。
(項目112)
前記アポトーシス性白血球が、ex vivoで幹細胞から分化した細胞を含み、前記幹細胞が、前記細胞、組織または臓器移植片の前記レシピエントに由来する、項目110または項目111に記載の方法。
(項目113)
前記細胞、組織または臓器移植片を移植することをさらに含む、項目105から112のいずれか一項に記載の方法。
(項目114)
前記移植することが、前記組成物の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日後、またはそれよりも後に行われる、項目113に記載の方法。
(項目115)
前記組成物の少なくとも1ブースター用量を投与することをさらに含む、項目105から114のいずれか一項に記載の方法。
(項目116)
前記ブースター用量が、前記移植の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、17、20、21または24日後に投与される、項目115
に記載の方法。
(項目117)
前記寛容が、少なくとも1か月の期間にわたる、項目105から115のいずれか一項に記載の方法。
(項目118)
前記寛容が、少なくとも100日の期間にわたる、項目117に記載の方法。
(項目119)
前記寛容が、少なくとも1年の期間にわたる、項目118に記載の方法。
(項目120)
レシピエントにおいて細胞、組織または臓器移植片に対する寛容を誘導する方法であって、
架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球を含む有効量の組成物を前記レシピエントに投与することを含み、前記アポトーシス性白血球は、その表面上にコンジュゲートされた、
前記レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種もしくは複数のペプチド、または
前記細胞、組織もしくは臓器移植片のドナーのMHCクラスI分子に由来する1種もしくは複数のペプチド
を含む、方法。
(項目121)
前記寛容が、移植後50日後に免疫抑制療法の非存在下において存在する、項目120に記載の前処置レジメン。
(項目122)
前記寛容が、ブースターレジメンの非存在下において存在する、項目120から121のいずれか一項に記載の前処置レジメン。
(項目123)
レシピエントにおいて細胞、組織または臓器移植片に対する免疫応答を阻害するための方法であって、
(a)架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球、
(b)mTOR阻害剤、
(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、
(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および
(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤
の有効量を前記レシピエントに投与することを含む、方法。
(項目124)
レシピエントにおいて細胞、組織または臓器移植片に対する免疫応答を阻害するための方法であって、
架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球を含む有効量の組成物を前記レシピエントに投与することを含み、前記アポトーシス性白血球は、その表面上にコンジュゲートされた、
前記レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種もしくは複数のペプチド、または
前記細胞、組織もしくは臓器移植片のドナーのMHCクラスI分子に由来する1種もしくは複数のペプチド
を含む、方法。
(項目125)
前記免疫応答が、B細胞活性化、T細胞増殖、B細胞増殖、マクロファージ活性化、サイトカイン産生、またはそれらの組合せを含む、項目123から124のいずれか一項に記載の方法。
(項目126)
対象を移植後免疫寛容化する方法であって、
(a)カルボジイミド架橋剤でモジュレートされたアポトーシス性白血球であって、前記架橋剤との接触の前に、IL-2、IL-4、IL-21、BAFFおよびCD40Lの1つまたは複数の存在下で増やされているアポトーシス性白血球、
(b)mTOR阻害剤、
(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、
(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、ならびに
(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤
を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目127)
前記アポトーシス性白血球が、末梢血から単離されている、項目126に記載の方法。
(項目128)
前記アポトーシス性白血球が、陽性または陰性選択によってB細胞について富化されている、項目127に記載の方法。
(項目129)
前記アポトーシス性白血球が、前記カルボジイミド架橋剤による前記モジュレートの前に、出発集団に対して少なくとも200倍増やされている、項目128に記載の方法。
(項目130)
レシピエントにおける細胞、組織または臓器移植片の移植のためのキットであって、
(a)架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球を含む第1の組成物を含む第1の容器、
(b)mTOR阻害剤を含む第2の組成物を含む第2の容器、
(c)抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤を含む第3の組成物を含む第3の容器、
(d)抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤を含む第4の組成物を含む第4の容器、および
(e)抗CD40剤または抗CD40リガンド剤を含む第5の組成物を含む第5の容器を含む、キット。
(項目131)
レシピエントにおける細胞、組織または臓器移植片の移植のためのキットであって、
架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球を含む第1の組成物を含む第1の容器を含み、前記アポトーシス性白血球は、その表面上にコンジュゲートされた、
前記レシピエントのMHCクラスII分子に由来する1種もしくは複数のペプチド、または
前記細胞、組織もしくは臓器移植片のドナーのMHCクラスI分子に由来する1種もしくは複数のペプチド
を含む、キット。
(項目132)
前記細胞、組織または臓器移植片をさらに含む、項目127から131のいずれか一項に記載のキット。
(項目133)
前処置レジメンおよび寛容化レジメンを含む移植キットであって、
前記前処置レジメンが、
架橋剤中において固定されたアポトーシス性白血球、
mTOR阻害剤、
抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、
抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、および
抗CD40剤または抗CD40リガンド剤
を含み、
前記寛容化レジメンが、
カルボジイミド架橋剤でモジュレートされたアポトーシス性白血球であって、前記架橋剤との接触の前に、IL-2、IL-4、IL-21、BAFFおよびCD40Lの1つまたは複数の存在下で増やされているアポトーシス性白血球、
mTOR阻害剤、
抗腫瘍壊死因子剤または抗腫瘍壊死因子受容体剤、
抗インターロイキン6剤または抗インターロイキン6受容体剤、ならびに
抗CD40剤または抗CD40リガンド剤
を含み、
前記前処置レジメンが、移植の前に対象に投与され、前記寛容化レジメンが、移植後に前記対象に投与される、移植キット。
(項目134)
細胞、組織または臓器移植片をさらに含む、項目133に記載の移植キット。
(項目135)
前記寛容化レジメンの前記アポトーシス性白血球が、末梢血から単離されている、項目133に記載の移植キット。
(項目136)
前記寛容化レジメンの前記アポトーシス性白血球が、陽性または陰性選択によってB細胞について富化されている、項目135に記載の移植キット。
(項目137)
前記寛容化レジメンの前記アポトーシス性白血球が、前記架橋剤との接触の前に、出発集団に対して少なくとも200倍増やされている、項目136に記載の移植キット。