(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177272
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】送電装置、及び送電装置が行う方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20241212BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20241212BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241212BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20241212BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/80
H02J7/00 301D
H02J50/12
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024172012
(22)【出願日】2024-10-01
(62)【分割の表示】P 2020063780の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】志村 元
(57)【要約】
【課題】 無線電力伝送を行うにあたって受電装置とは異なる物体の検出に係る複数の検出方法を実行可能な場合において、検出処理を適切に制御する。
【解決手段】 無線電力伝送システムは、送電装置から受電装置へ無線により送電を行う。また当該システムは、受電装置とは異なる物体を検出する第1の検出方法による検出処理を定期的に実行する。また当該システムは、送電装置と受電装置の少なくとも何れかの状態に関する所定の条件が満たされたかを判定する。そして当該システムは、所定の条件の判定結果に応じて、第1の検出方法とは異なる第2の検出方法による当該物体の検出処理を実行する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置であって、
受電装置へ無線により送電する送電手段と、
前記受電装置とは異なる物体を前記送電手段による送電に係る電力損失に基づいて検出する第1の検出方法による検出処理を、定期的に実行する第1検出手段と、
前記送電装置と前記受電装置の少なくとも何れかの状態に関する所定の条件が満たされたかを判定する判定手段と、
前記送電手段による送電に係る電圧の減衰状態と電流の減衰状態の少なくとも何れかに基づいて前記物体を検出する第2の検出方法による検出処理を、前記判定手段による判定の結果に応じて実行する第2検出手段と、を有することを特徴とする送電装置。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記第1の検出方法による前記物体の検出の精度に関わる条件と、前記物体が存在する可能性に関わる条件との、少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記所定の条件には、前記送電装置と前記受電装置の少なくとも何れかにおいて通信エラーが発生したという条件が含まれ、
前記第2検出手段は、前記所定の条件が満たされたと前記判定手段により判定された場合に、前記第2の検出方法による検出処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項4】
前記所定の条件には、前記送電装置による送電に応じた前記受電装置の受電電力値が所定の閾値未満であるという条件が含まれ、
前記第2検出手段は、前記所定の条件が満たされたと前記判定手段により判定された場合に、前記第2の検出方法による検出処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項5】
前記所定の条件には、前記第1の検出方法のための基準データとして取得された前記送電装置の送電電力値と前記送電装置による送電に応じた前記受電装置の受電電力値との組み合わせにおいて、当該送電電力値に応じて予め定められた範囲に当該受電電力値が含まれないという条件が含まれ、
前記第2検出手段は、前記所定の条件が満たされたと前記判定手段により判定された場合に、前記第2の検出方法による検出処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記第2の検出方法のための基準データとして取得された前記送電手段による送電に係る電圧の減衰状態と電流の減衰状態の少なくとも何れかが、予め定められた減衰状態の範囲外であるかを判定し、
前記第1検出手段は、当該減衰状態が前記所定の範囲外であると前記判定手段により判定された場合に、前記第1の検出方法による検出処理を実行することを特徴とする請求項5に記載の送電装置。
【請求項7】
前記所定の条件には、前記送電装置と前記受電装置の少なくとも何れかの温度が所定の閾値以上であるという条件が含まれ、
前記第2検出手段は、前記所定の条件が満たされたと前記判定手段により判定された場合に、前記第2の検出方法による検出処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項8】
前記所定の条件には、前記送電装置の送電電力値が所定の閾値以上であるという条件が含まれ、
前記第2検出手段は、前記所定の条件が満たされたと前記判定手段により判定された場合に、前記第2の検出方法による検出処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項9】
前記所定の条件が満たされていないと前記判定手段により判定された場合に、前記第1検出手段は前記第1の検出方法による検出処理を実行し且つ前記第2検出手段は前記第2の検出方法による検出処理を実行しないことを特徴とする請求項8に記載の送電装置。
【請求項10】
前記第1の検出方法においては、前記送電装置の送電電力値と前記送電装置による送電に応じた前記受電装置の受電電力値とに基づく電力損失が閾値を超えた場合に前記物体が存在すると判定されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の送電装置。
【請求項11】
前記第2の検出方法においては、送電中の前記送電装置が送電を一時停止した期間における、送電に係る電圧の波形、送電に係る電流の波形、受電に係る電圧の波形、及び受電に係る電流の波形の少なくとも何れかの振幅の減衰率が閾値を超えた場合に、前記物体が存在すると判定されることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の送電装置。
【請求項12】
前記送電手段は、Wireless Power Consortium(WPC)規格に従って前記受電装置へ送電することを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の送電装置。
【請求項13】
受電装置であって、
送電装置から無線により送電された電力を受電する受電手段と、
前記受電装置とは異なる物体を前記送電装置からの送電に係る電力損失に基づいて検出する第1の検出方法による検出処理を、定期的に前記送電装置に要求する第1要求手段と、
前記送電装置と前記受電装置の少なくとも何れかの状態に関する所定の条件が満たされたかを判定する判定手段と、
前記送電装置からの送電に係る電圧の減衰状態と電流の減衰状態の少なくとも何れかに基づいて前記物体を検出する第2の検出方法による検出処理を、前記判定手段による判定の結果に応じて前記送電装置に要求する第2要求手段と、を有することを特徴とする受電装置。
【請求項14】
前記所定の条件は、前記第1の検出方法による前記物体の検出の精度に関わる条件と、前記物体が存在する可能性に関わる条件との、少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項13に記載の受電装置。
【請求項15】
送電装置と受電装置とを有する無線電力伝送システムの制御方法であって、
前記送電装置から前記受電装置へ無線により送電する送電工程と、
前記受電装置とは異なる物体を前記送電工程における送電に係る電力損失に基づいて検出する第1の検出方法による検出処理を、定期的に実行する第1検出工程と、
前記送電装置と前記受電装置の少なくとも何れかの状態に関する所定の条件が満たされたかを判定する判定工程と、
前記送電工程における送電に係る電圧の減衰状態と電流の減衰状態の少なくとも何れかに基づいて前記物体を検出する第2の検出方法による検出処理を、前記判定工程における判定の結果に応じて実行する第2検出工程と、を有することを特徴とする制御方法。
【請求項16】
前記所定の条件は、前記第1の検出方法による前記物体の検出の精度に関わる条件と、前記物体が存在する可能性に関わる条件との、少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項15に記載の制御方法。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1乃至12の何れか1項に記載の送電装置、又は、請求項13若しくは14に記載の受電装置の、各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。特許文献1には、Wireless Power Consortium(WPC)規格における、異物検出(Foreign Object Detection)の方法が開示されている。また、特許文献2には、送電装置が、受電装置に対して異物検出用の信号を送信し、受電装置からのエコー信号を用いて異物の有無を判定する、異物検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-70074号公報
【特許文献2】特開2015-27172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される異物検出方法(Power Loss法)は、送電装置から受電装置への送電中における、送電装置と受電装置との間に生じる電力損失の測定結果に基づいて、受電装置とは異なる物体である異物の検出を行うものである。一方、特許文献2に開示される異物検出方法は、送電装置が送信する信号の減衰状態の測定結果に基づいて異物の検出を行うものである。このように、無線電力伝送を行うにあたって異物を検出する方法が複数考えられるが、それら複数の検出方法を実行可能な場合に検出処理を適切に制御する方法は確立されていない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、無線電力伝送を行うにあたって受電装置とは異なる物体の検出に係る複数の検出方法を実行可能な場合において、検出処理を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための一手段として、本発明の送電装置は以下の構成を有する。すなわち、送電装置は、受電装置へ無線により送電する送電手段と、前記受電装置とは異なる物体を前記送電手段による送電に係る電力損失に基づいて検出する第1の検出方法による検出処理を定期的に実行する第1検出手段と、前記送電装置と前記受電装置の少なくとも何れかの状態に関する所定の条件が満たされたかを判定する判定手段と、前記送電手段による送電に係る電圧の減衰状態と電流の減衰状態の少なくとも何れかに基づいて前記物体を検出する第2の検出方法による検出処理を、前記判定手段による判定の結果に応じて実行する第2検出手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無線電力伝送を行うにあたって受電装置とは異なる物体の検出に係る複数の検出方法を実行可能な場合において、検出処理を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】送電装置の制御部の機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】無線電力伝送システムの構成例を示す図である。
【
図5】無線電力伝送を行うための処理例を示すシーケンス図である。
【
図6】波形減衰法による異物検出を説明するための図である。
【
図7】送電中の送電波形に基づいて異物検出を行う方法を説明するための図である。
【
図8】送電装置のPower Transferフェーズにおける処理例を示すフローチャートである。
【
図9】受電装置のPower Transferフェーズにおける処理例を示すフローチャートである。
【
図10】Power Loss法による異物検出における閾値の設定方法を説明するための図である。
【
図11】波形減衰法による異物検出における閾値の設定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付す。
【0010】
[無線電力伝送システムの構成]
図4に、本実施形態における無線電力伝送システム(無線充電システム)の構成例を示す。本システムは、一例において、受電装置401と送電装置402を含んで構成される。受電装置401と送電装置402の詳細な構成については
図2及び
図1を用いて後述する。以下では、受電装置401をRXと呼び、送電装置402をTXと呼ぶ場合がある。RXは、TXから受電して内蔵バッテリに充電を行う電子機器である。TXは、TXの一部である充電台403に載置されたRXに対して無線で送電する電子機器である。以下、充電台403はTXの一部であるため、「充電台403に戴置された」ことを「TX(送電装置402)に載置された」という場合がある。点線で囲む範囲404は、RXがTXから受電が可能な範囲である。なお、RXとTXは無線充電以外のアプリケーションを実行する機能を有しうる。RXの一例はスマートフォンであり、TXの一例はそのスマートフォンを充電するためのアクセサリ機器である。RX及びTXは、タブレットや、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、RX及びTXは、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)、自動車、ロボット、医療機器、及びプリンター等であってもよい。
【0011】
本システムでは、WPC規格に基づいて、無線充電のための電磁誘導方式を用いた無線電力伝送を行う。すなわち、RXとTXは、RXの受電アンテナ205とTXの送電アンテナ105との間で、WPC規格に基づく無線充電のための無線電力伝送を行う。なお、本システムに適用される無線電力伝送方式は、WPC規格で規定された方式に限られず、他の電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザー等を利用した方式であってもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が無線充電に用いられるものとするが、無線充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。
【0012】
WPC規格では、受電装置401が送電装置402から受電する際に保証される電力の大きさが、Guaranteed Power(以下、「GP」と呼ぶ)と呼ばれる値によって規定される。GPは、例えば受電装置401と送電装置402の位置関係が変動して受電アンテナ205と送電アンテナ105との間の送電効率が低下したとしても、受電装置401の負荷(例えば、充電用の回路、バッテリー等)への出力が保証される電力値を示す。例えばGPが5ワットの場合、受電アンテナ205と送電アンテナ105の位置関係が変動して送電効率が低下したとしても、送電装置402は、受電装置401内の負荷へ5ワットを出力することができるように制御して送電を行う。
【0013】
また、送電装置402から受電装置401へ送電を行う際に、送電装置402の近傍に受電装置401ではない物体である異物が存在する場合、送電のための電磁波が異物に影響して異物の温度を上昇させたり異物を破壊したりしてしまう虞がある。そこでWPC規格では、異物が存在する場合に送電を停止することで異物の温度上昇や破壊を防げるように、送電装置402が充電台403の上に異物が存在することを検出する手法が規定されている。具体的には、送電装置402における送電電力と受電装置401における受電電力の差分により異物を検出するPower Loss(パワーロス)法が規定されている。また、送電装置402における送電アンテナ105(送電コイル)の品質係数(Q値)の変化により異物を検出するQ値計測法が規定されている。なお、本実施形態における送電装置402が検出する異物は充電台403の上に存在する物体に限定されない。送電装置402は、送電装置402の近傍に位置する異物を検出すればよく、例えば送電装置402が送電可能な範囲に位置する異物を検出することとしてもよい。
【0014】
WPC規格で規定されているPower Loss法に基づく異物検出について、
図10を用いて説明する。
図10の横軸は送電装置402の送電電力、縦軸は受電装置401の受電電力である。なお異物とは、送電装置402から受電装置401への送電に影響しうる、受電装置401以外の物体であり、例えば導電性を有する金属片等の物体である。
【0015】
まず、送電装置402は第一送電電力値Pt1で受電装置401に対して送電を行う。受電装置401は、第一受電電力値Pr1で受電する(この状態をLight Loadの状態(軽負荷状態)という)。そして、送電装置402は第一送電電力値Pt1を記憶する。ここで、第一送電電力値Pt1、又は第一受電電力値Pr1は、予め定められた最小の送電電力又は受電電力である。このとき、受電装置401は受電する電力が最小の電力となるように、負荷を制御する。たとえば、受電装置401は、受電した電力が負荷(充電回路とバッテリなど)に供給されないように、受電アンテナ205から負荷を切断してもよい。続いて、受電装置401は、第一受電電力の電力値Pr1を送電装置402に報告する。受電装置401からPr1を受信した送電装置402は、送電装置402と受電装置401との間の電力損失はPt1-Pr1(=Ploss1)であると算出し、Pt1とPr1との対応を示すキャリブレーションポイント1000を作成することができる。
【0016】
続いて、送電装置402は、送電電力値を第二送電電力値Pt2に変更し、受電装置401に対して送電を行う。受電装置401は、第二受電電力値Pr2で受電する(この状態をConnected Loadの状態(負荷接続状態)という)。そして、送電装置402は第二送電電力値Pt2を記憶する。ここで、第二送電電力値Pt2、又は第二受電電力値Pr2は、予め定められた最大の送電電力又は受電電力である。このとき、受電装置401は受電する電力が最大の電力となるように、負荷を制御する。たとえば、受電装置401は、受電した電力が負荷に供給されるように、受電アンテナ205と負荷を接続する。続いて、受電装置401はPr2を送電装置402に報告する。受電装置401からPr2を受信した送電装置402は、送電装置402と受電装置401との間の電力損失はPt2-Pr2(=Ploss2)であると算出し、Pt2とPr2との対応を示すキャリブレーションポイント1001を作成することができる。
【0017】
そして送電装置402はキャリブレーションポイント1000とキャリブレーションポイント1001の間を直線補間する直線1002を作成する。直線1002は送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在しない状態における送電電力と受電電力の関係を示している。送電装置402は直線1002に基づいて、異物がない状態において所定の送電電力で送電した場合に受電装置401が受電する電力値を予想することができる。例えば、送電装置402が第三送電電力値Pt3で送電した場合は、直線1002上のPt3に対応する点1003から、受電装置401が受電する第三受電電力値はPr3になると推測することができる。
【0018】
以上のように、負荷を変えながら測定した送電装置402の送電電力値と受電装置401の受電電力値との複数の組み合わせに基づいて、負荷に応じた送電装置402と受電装置401との間の電力損失を求めることができる。また、複数の組み合わせからの補間により、すべての負荷に応じた送電装置402と受電装置401との間の電力損失を推定することができる。このように、送電装置402が送電電力値と受電電力値との組み合わせを取得するために送電装置402と受電装置401とが行うキャリブレーション処理を、以下では「Power Loss法のCalibration処理(CAL処理)」と呼ぶ。
【0019】
キャリブレーション後、実際に送電装置402がPt3で受電装置401に送電した場合に、送電装置402が受電装置401から受電電力値Pr3’という値を受信したとする。送電装置402は異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から実際に受電装置401から受信した受電電力値Pr3’を引いた値Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)を算出する。このPloss_FOは、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在する場合に、その異物で消費される電力による電力損失と考えることができる。よって、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOがあらかじめ決められた閾値を超えた場合に、異物が存在すると判定することができる。あるいは、送電装置402は、事前に、異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から、送電装置402と受電装置401との間の電力損失Pt3-Pr3(=Ploss3)を求めておく。そして次に、異物が存在する状態において受電装置401から受信した受電電力値Pr3’から、異物が存在する状態での送電装置402と受電装置401との間の電力損失Pt3-Pr3’(=Ploss3’)を求める。そして、Ploss3’-Ploss3 (==Ploss_FO)を用いて、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOを推定してもよい。
【0020】
以上述べたように、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOの求め方としては、Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)として求めてもよいし、Ploss3’-Ploss3 (=Ploss_FO)として求めてもよい。以下の本明細書中においては、基本的にPloss3’-Ploss3 (=Ploss_FO)として求める方法について述べるが、Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)として求める方法においても本実施形態の内容を適用可能である。以上がPower Loss法に基づく異物検出の説明である。
【0021】
Power Loss法による異物検出は、後述するCalibrationフェーズにより得られたデータを基に、電力伝送(送電)中(後述のPower Transferフェーズ)に実施される。また、Q値計測法による異物検出は、電力伝送前(後述のDigital Ping送信前、NegotiationフェーズまたはRenegotiationフェーズ)に実施される。
【0022】
本実施形態によるRXとTXは、WPC規格に基づく送受電制御のための通信を行う。WPC規格では、電力伝送が実行されるPower Transferフェーズと、実際の電力伝送前の1以上のフェーズとを含んだ、複数のフェーズが規定され、各フェーズにおいて必要な送受電制御のための通信が行われる。電力伝送前のフェーズは、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、Identification and Configurationフェーズ、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズを含みうる。なお、以下では、Identification and ConfigurationフェーズをI&Cフェーズと呼ぶ。以下、各フェーズの処理について説明する。
【0023】
Selectionフェーズでは、TXが、Analog Pingを間欠的に送信し、物体がTXの充電台に載置されたこと(例えば充電台にRXや導体片等が載置されたこと)を検出する。TXは、Analog Pingを送信した時の送電アンテナ105の電圧値と電流値の少なくともいずれか一方を検出し、電圧値がある閾値を下回る場合又は電流値がある閾値を超える場合に物体が存在すると判断し、Pingフェーズに遷移する。
【0024】
Pingフェーズでは、TXが、Analog Pingより電力が大きいDigital Pingを送信する。Digital Pingの電力の大きさは、TXの上に載置されたRXの制御部が起動するのに十分な電力である。RXは、受電電圧の大きさをTXへ通知する。このように、TXは、そのDigital Pingを受信したRXからの応答を受信することにより、Selectionフェーズにおいて検出された物体がRXであることを認識する。TXは、受電電圧値の通知を受けると、I&Cフェーズに遷移する。また、TXはDigital Pingを送信する前に、送電アンテナ105のQ値(Q-Factor)を測定する。この測定結果は、Q値計測法を用いた異物検出処理を実行する際に使用する。
【0025】
I&Cフェーズでは、TXは、RXを識別し、RXから機器構成情報(能力情報)を取得する。RXは、ID Packet及びConfiguration Packetを送信する。ID PacketにはRXの識別子情報が含まれ、Configuration Packetには、RXの機器構成情報(能力情報)が含まれる。ID Packet及びConfiguration Packetを受信したTXは、アクノリッジ(ACK、肯定応答)で応答する。そして、I&Cフェーズが終了する。
【0026】
Negotiationフェーズでは、RXが要求するGPの値やTXの送電能力等に基づいてGPの値が決定される。またTXは、RXからの要求に従って、Q値計測法を用いた異物検出処理を実行する。また、WPC規格では、一旦Power Transferフェーズに移行した後、RXの要求によって再度Negotiationフェーズと同様の処理を行う方法が規定されている。Power Transferフェーズから移行してこれらの処理を行うフェーズのことをRenegotiationフェーズと呼ぶ。
【0027】
Calibrationフェーズでは、WPC規格に基づいてCalibrationを実施する。また、RXが所定の受電電力値(軽負荷状態における受電電力値/最大負荷状態における受電電力値)をTXへ通知し、TXが、効率よく送電するための調整を行う。TXへ通知された受電電力値は、Power Loss法による異物検出処理のために使用されうる。
【0028】
Power Transferフェーズでは、送電の開始、継続、及びエラーや満充電による送電停止等のための制御が行われる。TXとRXは、これらの送受電制御のために、WPC規格に基づいて無線電力伝送を行う際に使用する送電アンテナ105及び受電アンテナ205を用いて、送電アンテナ105あるいは受電アンテナ205から送信される電磁波に信号を重畳して通信を行う。なお、TXとRXとの間で、WPC規格に基づく通信が可能な範囲は、TXの送電可能範囲とほぼ同様である。
【0029】
[送電装置402および受電装置401の構成]
続いて、本実施形態における送電装置402(TX)及び受電装置401(RX)の構成について説明する。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部が)他の同様の機能を果たす他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、さらなる構成が説明される構成に追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。また、以下に示す各機能ブロックは、ソフトウェアプログラムとして機能が実施されるものとするが、本機能ブロックに含まれる一部または全部がハードウェア化されていてもよい。
【0030】
図1は、本実施形態に係る送電装置402(TX)の構成例を示す機能ブロック図である。TXは、制御部101、電源部102、送電部103、通信部104、送電アンテナ105、メモリ106、共振コンデンサ107、スイッチ108を有する。
図1では、制御部101、電源部102、送電部103、通信部104、メモリ106は別体として記載しているが、これらの内の任意の複数の機能ブロックは、同一チップ内に実装されてもよい。
【0031】
制御部101は、例えばメモリ106に記憶されている制御プログラムを実行することにより、TX全体を制御する。また、制御部101は、TXにおける機器認証のための通信を含む送電制御に関する制御を行う。さらに、制御部101は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(MicroProcessor Unit)等の1つ以上のプロセッサーを含んで構成される。なお、制御部101は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application SpecificIntegrated Circuit)等のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部101は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(FieldProgrammable Gate Array)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部101は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ106に記憶させる。また、制御部101は、タイマ(不図示)を用いて時間を計測しうる。
【0032】
電源部102は、各機能ブロックに電源を供給する。電源部102は、例えば、商用電源又はバッテリである。バッテリには、商用電源から供給される電力が蓄電される。
【0033】
送電部103は、電源部102から入力される直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流電力に変換し、その交流電力を送電アンテナ105へ入力することによって、RXに受電させるための電磁波を発生させる。例えば、送電部103は、電源部102が供給する直流電圧を、FET(Field Effect Transister)を使用したハーフブリッジ又はフルブリッジ構成のスイッチング回路で交流電圧に変換する。この場合、送電部103は、FETのON/OFFを制御するゲートドライバを含む。
【0034】
送電部103は、送電アンテナ105に入力する電圧(送電電圧)又は電流(送電電流)、又はその両方を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御する。送電電圧又は送電電流を大きくすると電磁波の強度が強くなり、送電電圧又は送電電流を小さくすると電磁波の強度が弱くなる。また、送電部103は、制御部101の指示に基づいて、送電アンテナ105からの送電が開始又は停止されるように、交流電力の出力制御を行う。また、送電部103はWPC規格に対応した受電装置401(RX)の充電部206に15ワット(W)の電力を出力するだけの電力を供給する能力があるものとする。
【0035】
通信部104は、RXとの間で、上述のようなWPC規格に基づく送電制御のための通信を行う。通信部104は、送電アンテナ105から出力される電磁波を変調し、RXへ情報を伝送して、通信を行う。また、通信部104は、RXが変調した送電アンテナ105から送電される電磁波を復調して、RXが送信した情報を取得する。すなわち、通信部104で行う通信は、送電アンテナ105から送電される電磁波に信号が重畳されて行われる。また、通信部104は、送電アンテナ105とは異なるアンテナを用いたWPC規格とは異なる規格による通信でRXと通信を行ってもよいし、複数の通信を選択的に用いてRXと通信を行ってもよい。
【0036】
メモリ106は、制御プログラムを記憶するほかに、TX及びRXの状態(送電電力値、受電電力値等)なども記憶しうる。例えば、TXの状態は制御部101により取得され、RXの状態はRXの制御部201により取得され、通信部104を介して受信されうる。
【0037】
スイッチ108は、制御部101に制御される。送電アンテナ105は、共振コンデンサ107と接続されており、スイッチ108がON状態になって短絡される場合、送電アンテナ105と共振コンデンサ107は直列共振回路となり、特定の周波数f1で共振する。この時、送電アンテナ105と共振コンデンサ107、スイッチ108が形成する閉回路に電流が流れる。スイッチ108がOFF状態になり、開放されると、送電アンテナ105と共振コンデンサ107には、送電部103から電力が供給される。
【0038】
図2は、本実施形態による受電装置401(RX)の構成例を示すブロック図である。RXは、制御部201、UI(ユーザーインタフェース)部202、受電部203、通信部204、受電アンテナ205、充電部206、バッテリ207、メモリ208、第一スイッチ部209、第二スイッチ部210、共振コンデンサ211を有する。なお、
図2に示す複数の機能ブロックを1つのハードウェアモジュールとして実現してもよい。
【0039】
制御部201は、例えばメモリ208に記憶されている制御プログラムを実行することによりRX全体を制御する。すなわち、制御部201は、
図2で示す各機能部を制御する。さらに、制御部201は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部201の一例は、CPU又はMPU等の1つ以上のプロセッサーを含んで構成される。なお、制御部201が実行しているOS(Operating System)との協働によりRX全体(RXがスマートフォンである場合には当該スマートフォン全体)を制御するようにしてもよい。
【0040】
また、制御部201は、ASIC等のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部201は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部201は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ208に記憶させる。また、制御部201は、タイマ(不図示)を用いて時間を計測しうる。
【0041】
UI部202は、ユーザーに対する各種の出力を行う。ここでいう各種の出力とは、画面表示、LED(Light Emitting Diode)の点滅や色の変化、スピーカーによる音声出力、RX本体の振動等の動作である。UI部202は液晶パネル、スピーカー、バイブレーションモーター等により実現される。
【0042】
受電部203は、受電アンテナ205を介して、TXの送電アンテナ105から放射された電磁波に基づく電磁誘導により生じた交流電力(交流電圧及び交流電流)を取得する。そして、受電部203は、交流電力を直流又は所定周波数の交流電力に変換して、バッテリ207を充電するための処理を行う充電部206に電力を出力する。すなわち、受電部203は、RXにおける負荷に対して電力を供給するために必要な、整流部と電圧制御部を含む。上述のGPは、受電部203から出力されることが保証される電力量である。受電部203は、充電部206がバッテリ207を充電するための電力を供給し、充電部206に15ワットの電力を出力するだけの電力を供給する能力があるものとする。
【0043】
通信部204は、TXが有する通信部104との間で、上述したようなWPC規格に基づく受電制御ための通信を行う。通信部204は、受電アンテナ205から入力された電磁波を復調してTXから送信された情報を取得する。そして、通信部204は、その入力された電磁波を負荷変調することによってTXへ送信すべき情報に関する信号を電磁波に重畳することにより、TXとの間で通信を行う。なお通信部204は、受電アンテナ205とは異なるアンテナを用いたWPC規格とは異なる規格による通信でTXと通信を行ってもよいし、複数の通信を選択的に用いてTXと通信を行ってもよい。
【0044】
メモリ208は、制御プログラムを記憶するほかに、TX及びRXの状態なども記憶する。例えば、RXの状態は制御部201により取得され、TXの状態はTXの制御部101により取得され、通信部204を介して受信されうる。
【0045】
第一スイッチ部209および第二スイッチ部210は、制御部201により制御される。受電アンテナ205は、共振コンデンサ211と接続されており、第二スイッチ部210がON状態になって短絡される場合、受電アンテナ205と共振コンデンサ211は直列共振回路となり、特定の周波数f2で共振する。この時、受電アンテナ205と共振コンデンサ211、第二スイッチ部210が形成する閉回路に電流が流れ、受電部に電流は流れない。第二スイッチ部210がOFF状態になり、開放されると、受電アンテナ205と共振コンデンサ211により受電された電力は、受電部203へ供給される。
【0046】
第一スイッチ部209は、受電した電力を負荷であるバッテリに供給するか否かを制御するためのものである。また、負荷の値を制御する機能も有する。充電部206とバッテリ207を、第一スイッチ部209が接続すれば、受電した電力はバッテリ207に供給される。充電部206とバッテリ207との接続を、第一スイッチ部209が切断すれば、受電した電力はバッテリ207に供給されない。なお、第一スイッチ部209は、
図2においては、充電部206とバッテリ207の間に配置されているが、受電部203と充電部206の間に配置されてもよい。あるいは、受電アンテナ205と共振コンデンサ211、及び第二スイッチ部210が形成する閉回路と受電部203との間に配置されてもよい。つまり、第一スイッチ部209は、受電した電力を受電部203に供給するか否かを制御するためのものであってもよい。また、
図2では第一スイッチ部209を一つのブロックとして記載しているが、第一スイッチ部209を充電部206の一部、あるいは受電部203の一部として実現することも可能である。
【0047】
次に、
図3を参照して、TXの制御部101の機能について説明する。
図3は、送電装置402(TX)の制御部101の機能構成例を示すブロック図である。制御部101は、通信制御部301、送電制御部302、測定部303、設定部304、異物検出部305を有する。通信制御部301は、通信部104を介したWPC規格に基づいたRXとの制御通信を行う。送電制御部302は、送電部103を制御し、RXへの送電を制御する。測定部303は、後述する波形減衰指標を測定する。また、送電部103を介してRXに対して送電する電力を計測し、単位時間ごとに平均送電電力を測定する。また、測定部303は、送電アンテナ105のQ値を測定する。設定部304は、測定部303により測定された波形減衰指標に基づいて、異物検出のために用いる閾値を、例えば算出処理により、設定する。
【0048】
異物検出部305は、Power Loss法による異物検出機能や、Q値計測法による異物検出機能や、波形減衰法による異物検出機能を実現しうる。また異物検出部305は、その他の手法を用いて異物検出処理を行うための機能を有してもよい。例えばNFC(Near Feald Communication)通信機能を備えるTXにおいては、異物検出部305は、NFC規格による対向機検出機能を用いて異物検出処理を行ってもよい。また、異物検出部305は、異物を検出する以外の機能として、TX上の状態が変化したことを検出することもできる。例えば、TXは、TX上の受電装置401の数の増減も、検出することが可能である。設定部304は、TXが、Power Loss法や、Q値計測法や、波形減衰法による異物検出を行う上で、異物の有無を判定するための基準となる閾値を設定する。また設定部304は、その他の手法を用いた異物検出処理を行う上で必要となる、異物の有無を判定するための基準となる閾値を設定する機能を有してもよい。また、異物検出部305は、設定部304により設定された閾値と、測定部303により測定された波形減衰指標や送電電力やQ値に基づいて、異物検出処理を行うことができる。
【0049】
通信制御部301、送電制御部302、測定部303、設定部304、異物検出部305は、制御部101において動作するプログラムとしてその機能が実現される。各処理部は、それぞれが独立したプログラムとして構成され、イベント処理等によりプログラム間の同期をとりながら並行して動作しうる。ただし、これらの処理部のうち2つ以上が1つのプログラムに組み込まれていてもよい。
【0050】
[WPC規格に従った電力伝送のための処理の流れ)
WPC規格では、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、I&Cフェーズ、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズ、及びPower Transferフェーズが規定されている。以下では、これらのフェーズにおける、送電装置402及び受電装置401の動作について、
図5のシーケンス図を用いて説明する。
図5は、WPC規格に従った電力伝送のためのシーケンス図である。ここでは、送電装置402(TX)と受電装置401(RX)を例に説明する。
【0051】
TXは、送電可能範囲内に存在する物体を検出するため、WPC規格のAnalog Pingを繰り返し間欠送信している(F501)。TXは、WPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定されている処理を実行し、RXが載置されるのを待ち受ける。RXのユーザーは、RX(例えばスマートフォン)を充電すべくRXをTXに近づける(F502)。例えば、RXをTXに積載することにより、RXをTXに近づける。TXは、送電可能範囲内に物体が存在することを検出すると(F503、F504)、WPC規格のDigital Pingを送信する(F505)。RXはDigital Pingを受信すると、TXがRXを検知したことを把握できる(F506)。またTXは、Digital Pingに対する所定の応答があった場合に、検出された物体がRXであり、RXが充電台403に載置されたと判定する。TXは、RXの載置を検出すると、WPC規格で規定されたI&Cフェーズの通信により、RXから識別情報と能力情報を取得する(F507)。ここで、RXの識別情報には、Manufacturer CodeとBasic Device IDが含められる。RXの能力情報には、対応しているWPC規格のバージョンを特定可能な情報要素や、RXが負荷に供給できる最大電力を特定する値であるMaximum Power Value、WPC規格のNegotiation機能を有するかを示す情報が含められる。なお、TXは、WPC規格のI&Cフェーズの通信以外の方法でRXの識別情報と能力情報を取得してもよい。また、識別情報は、Wireless Power ID等の、RXの個体を識別可能な任意の他の識別情報であってもよい。能力情報として、上記以外の情報を含んでいてもよい。
【0052】
続いて、TXは、WPC規格で規定されたNegotiationフェーズの通信により、RXとの間でGPの値を決定する(F508)。なお、F508では、WPC規格のNegotiationフェーズの通信に限らず、GPを決定する他の手順が実行されてもよい。また、TXは、RXがNegotiationフェーズに対応していないことを示す情報を(例えばF507において)取得した場合に、Negotiationフェーズの通信は行わず、GPの値を(例えばWPC規格で予め規定された)小さな値としてもよい。本実施形態では、GP=5ワットとする。
【0053】
TXは、GPの決定後、当該GPに基づいてCalibrationを行う。Calibration処理では、まず、RXが、TXに軽負荷状態(負荷切断状態、送電電力が第一の閾値以下になる負荷状態)における受電電力を含む情報(以降、第1基準受電電力情報と呼ぶ。)を送信する(F509)。本実施形態での第1基準受電電力情報は、TXの送電電力が250ミリワットの時の、RXの受電電力情報とする。第1基準受電電力情報は、WPC規格で規定されるReceived Power Packet(mode1)であるが、他のメッセージが用いられてもよい。TXは、自装置の送電状態に基づいて、第1基準受電電力情報を受け入れるか否かを判定する。TXは、受け入れる場合は肯定応答=ACKを、受け入れない場合は否定応答=NAKを、RXへ送信する。
【0054】
次にRXは、TXからACKを受信すると(F510)、TXに負荷接続状態(最大負荷状態、送電電力が第二の閾値以上になる負荷状態)における受電電力を含む情報(以降、第2基準受電電力情報と呼ぶ。)を送信するための処理を行う。本実施形態では、GPが5ワットであることから、第2基準受電電力情報は、TXの送電電力が5ワットの時の、RXの受電電力情報とする。ここで第2基準受電電力情報は、WPC規格で規定されるReceived Power Packet(mode2)であるが、他のメッセージが用いられてもよい。RXはTXからの送電電力を5ワットまで増加させるために、正の値を含む送電出力変更指示を送信する(F511)。
【0055】
TXは上述した送電出力変更指示を受信し、送電電力の増加対応が可能な場合、ACKを応答し、送電電力の増加を行う(F512、F513)。第2基準受電電力情報は、TXの送電電力が5ワットの時の受電電力情報であることから、TXは、5ワットを超える電力増加要求をRXから受信した場合は(F514)、送電出力変更指示に対してNAKを応答する。これにより、規定以上の電力送電を抑止する(F515)。
【0056】
RXは、TXよりNAKを受信することで既定の送電電力に達したと判断すると、TXへ負荷接続状態における受電電力を含む情報を、第2基準受電電力情報として送信する(F516)。TXは、TXの送電電力値、および、第1および第2基準受電電力情報に含まれる受電電力値に基づいて、軽負荷状態と負荷接続状態におけるTX-RX間の電力損失量を算出することが可能となる。また、それらの電力損失量の間を補間することで、TXの取り得るすべての送電電力(本ケースでは250ミリワットから5ワット)におけるTX-RX間の電力損失値を算出することができる(F517)。TXは、RXからの第2基準受電電力情報に対してACKを送信し(F518)、Calibration処理を完了する。充電処理を開始可能と判断したTXが、RXに対して送電処理を開始した場合、RXの充電が開始される。なお、送電処理の開始前に、TXとRXが機器認証処理を行い(F519)、相互の機器がより大きなGPに対応可能と判断した場合は、GPをより大きな値、例えば15ワットに再設定するようにしてもよい(F520)。
【0057】
この場合、RXとTXは、TXの送電電力を15ワットまで増加させるために、送電出力変更指示、ACK、及びNAKを使い送電出力を上げる(F521~F524)。そしてTX及びRXは、GP=15ワットに対して、再度Calibration処理を実施する。具体的には、RXは、TXの送電電力が15ワットの時の、RXの負荷接続状態における受電電力を含む情報(以降、第3基準受電電力情報と呼ぶ。)を送信する(F525)。TXは、第1、第2及び第3の基準受電電力情報に含まれる受電電力に基づいてCalibrationを行い、TXの取り得るすべての送電電力(本ケースでは250ミリワットから15ワット)におけるTX-RX間の電力損失量を算出できる(F526)。TXはRXからの第3基準受電電力情報に対してACKを送信し(F527)、Calibration処理を完了する。充電処理を開始可能と判断したTXは、RXに対して送電処理を開始し、Power Transferフェーズに移行する(F528)。
【0058】
Power Transferフェーズでは、TXはRXに対して、送電を行う。また、Power Loss法による、異物検出が行われる。Power Loss法ではまず、TXは、上述したCalibrationにより、TXによる送電電力と、RXによる受電電力との差分から、異物がない状態におけるTX-RX間の電力損失量を算出する。当該算出された値は、送電処理中の通常状態(異物がない状態)における、基準の電力損失量に相当する。そしてTXは、Calibration後の送電中に測定したTX-RX間の電力損失量が、当該通常状態の電力損失量から閾値以上はなれた場合に「異物あり」あるいは「異物ありの可能性がある」と判定する。
【0059】
以上がPower Loss法の説明である。Power Loss法は、送電装置402から受電装置401への送電中に、電力損失の測定結果に基づいて異物検出を行うものである。Power Loss法での異物検出は、送電装置402が大きな電力を送電しているときには異物検出の精度が低下するという短所がある一方で、送電を継続しながら異物検出を行えるため送電効率を高く保てるという長所がある。
【0060】
このように、Power Transferフェーズ中には、Power Loss法による異物検出を行うことができる。しかし、Power Loss法による異物検出のみでは、異物の誤検出の可能性や、異物が有るにも関わらず異物なしと判定してしまう誤判定の可能性がある。特に、Power TransferフェーズはTXが送電を行うフェーズであり、送電中にTXとRXの近傍に異物が存在すると異物からの発熱等が大きくなるため、このフェーズにおける異物検出精度を向上させることが求められる。そこで、本実施形態では、異物検出精度を向上させるために、Power Loss法とは異なる異物検出方法を実施することを考える。
【0061】
[波形減衰法による異物検出方法]
Power Transferフェーズでは、送電装置402は受電装置401に対して、送電を行っている。よって、この送電に係る送電波形(電圧の波形又は電流の波形)を用いて異物検出を行うことができれば、新たに規定される異物検出用信号等を用いることなく、異物検出が可能となる。送電波形の減衰状態に基づいて異物検出を行う方法(以下、波形減衰法と呼ぶ)を、
図6を用いて説明する。
図6は、波形減衰法による異物検出の原理を説明する図である。ここでは、送電装置402(TX)から受電装置401(RX)への送電に係る送電波形を用いた異物検出を例に説明する。
【0062】
図6において、波形は、TXの送電アンテナ105に印加される高周波電圧の電圧値600(以降、単に電圧値と言う)の時間経過に伴う変化を示している。
図6の横軸は時間、縦軸は電圧値を表す。送電アンテナ105を介してRXに送電を行っているTXは、時間T0において送電を停止する。すなわち、時間T0において、電源部102からの送電用の電力供給は停止される。TXからの送電に係る送電波形の周波数は、所定の周波数であり、例えばWPC規格で使用される85kHzから205kHzの間の固定された周波数である。点601は、高周波電圧の包絡線上の点であり、時間T
1における電圧値である。図中の(T
1、A
1)は、時間T
1における電圧値がA1であることを示す。同様に、点602は、高周波電圧の包絡線上の点であり、時間T
2における電圧値である。図中の(T
2、A
2)は、時間T
2における電圧値がA
2であることを示す。この送電アンテナ105の品質係数(Q値)は、時間T0以降の電圧値の時間変化に基づいて求めることが可能である。たとえば、電圧値の包絡線上の点601および602における時間、電圧値および高周波電圧の周波数fに基づいて、式1によりQ値が算出される。
Q=πf(T
2-T
1)/ln(A
1/A
2) (式1)TXとRXの近傍に異物が存在する場合には、このQ値が低下する。これは、異物が存在する場合には、当該異物によってエネルギーの損失が発生するためである。よって、電圧値の減衰の傾きに着目すると、異物が無い時よりも、異物が有る時の方が、異物によるエネルギーの損失が発生するため、点601と点602を結ぶ直線の傾きが急になり、波形の振幅の減衰率が高くなる。つまり、波形減衰法は、この点601と点602との間の電圧値の減衰状態に基づいて異物の有無の判定を行うものであり、実際に異物の有無を判定する上では、この減衰状態を表す何らかの数値の比較によって判定をすることが可能となる。例えば、上述したQ値を用いて判定を行うことができる。Q値が低くなるということは、波形減衰率(単位時間当たりの波形の振幅の減少度合い)が高くなることを意味する。あるいは、(A
1-A
2)/(T
2-T
1)から求められる点601と点602を結ぶ直線の傾きを用いて判定が行われてもよい。あるいは、電圧値の減衰状態を観測する時間(T
1及びT
2)が固定であるならば、電圧値の差を表す(A
1-A
2)や、電圧値の比(A
1/A
2)の値を用いて判定を行うこともできる。あるいは、送電を停止した直後の電圧値A
1が一定であるならば、所定の時間経過後の、電圧値A
2の値を用いて判定を行うこともできる。あるいは、電圧値A
1が所定の電圧値A
2になるまでの時間(T
2-T
1)の値を用いて判定が行われてもよい。
【0063】
以上述べたように、送電停止期間中の電圧値の減衰状態によって異物の有無は判定可能であり、その減衰状態を表す値は複数存在する。これらの減衰状態を表す値のことを、本実施形態では、「波形減衰指標」と呼ぶ。例えば、上述したように、式1で算出されるQ値は、送電に係る電圧値の減衰状態を表す値であり、「波形減衰指標」に含まれる。波形減衰指標はいずれも、波形減衰率に対応する値となる。なお、波形減衰法において、波形減衰率そのものが「波形減衰指標」として測定されてもよい。以下では、波形減衰率を波形減衰指標として用いる場合を中心に説明するが、その他の波形減衰指標を用いる場合も同様に本実施形態の内容を適用できる。
【0064】
なお、
図6の縦軸を、送電アンテナ105を流れる電流値としても、電圧値の場合と同様に、送電停止期間中の電流値の減衰状態が異物の有無によって変化する。そして、異物が有る場合は異物がない場合より波形減衰率が高くなる。よって、送電アンテナ105を流れる電流値の時間変化に関して、上述した方法を適用しても、異物を検出できる。すなわち、電流波形より求められるQ値、電流値の減衰の傾き、電流値の差、電流値の比、電流値の絶対値、及び所定の電流値になるまでの時間等を波形減衰指標として用いて、異物有無を判定し、異物を検出することができる。また、電圧値の波形減衰指標と電流値の波形減衰指標とから算出される評価値を用いて異物有無を判定するなど、電圧値の減衰状態と電流値の減衰状態の両方に基づく異物検出が行われてもよい。なお、上記の例では、TXが送電を一時停止した期間の波形減衰指標を測定するものとしたが、TXが電源部102から供給される電力を所定の電力レベルからそれより低い電力レベルまで一時的に下げた期間の波形減衰指標を測定するものとしてもよい。
【0065】
波形減衰法により、送電中の送電波形に基づいて異物検出を行う方法について、
図7を用いて説明する。
図7では、波形減衰法による異物検出を行う際の送電波形が示され、横軸は時間を表し、縦軸は送電アンテナ105もしくは共振コンデンサ107に印加される電圧の電圧値を表す。なお、
図6と同様、縦軸が送電アンテナ105を流れる電流の電流値を表すものとしてもよい。TXが送電を開始した直後の過渡応答期間は、送電波形が安定しない。よって、この送電波形が安定しない過渡応答期間中は、RXはTXに対して通信(負荷変調による通信)を行わないように制御する。また、TXはRXに対して通信(周波数偏移変調による通信)を行わないように制御する。
【0066】
TXは、異物検出を行うタイミングになったら、送電を一時停止する。すると、送電を停止した異物検出期間において送電波形の振幅は減衰するので、TXはこの減衰波形の波形減衰率を算出する。そしてTXは、算出した波形減衰率が所定の閾値を超えた場合に、異物が存在すると判定する。所定の異物検出期間の経過後、異物が検出されなければ、TXは送電を再開する。送電再開後、TXは、上述した過渡応答期間の待機、異物検出タイミングの判断、送電停止、及び異物検出処理を繰り返し実行する。以上が波形減衰法による異物検出の基本的な処理である。
【0067】
なお、送電波形の波形減衰率を測定するとき、受電装置401の受電アンテナ205と共振コンデンサ211に、受電部203、充電部206、及びバッテリ207等の要素が接続されていると、減衰波形の波形減衰率は、これらの要素による負荷の影響を受ける。すなわち、受電部203、充電部206、及びバッテリ207の状態によって、波形減衰率が変化することになる。そのため、たとえば波形減衰率が大きくても、それが異物による影響によるものなのか、受電部203、充電部206、バッテリ207等の状態変化によるものなのかの区別が困難になる。よって、波形減衰率を観測して異物検出を行う場合には、第一スイッチ部209を切断してもよい。これにより、バッテリ207の影響を排除することが可能になる。あるいは、第二スイッチ部210をONにして短絡し、受電アンテナ205、共振コンデンサ211、及び第二スイッチ部210で形成される閉ループに電流が流れる状態にしてもよい。これにより、受電部203、充電部206、及びバッテリ207の影響を排除することが可能になる。以上のように、第一スイッチ部209を切断した状態、あるいは第二スイッチ部210をONにして短絡(接続)した状態で異物検出を行うことで、精度の高い異物検出が可能となる。また、第一スイッチ部209の切断と、第二スイッチ部210の短絡(接続)との両方を実施することでも、精度の高い異物検出が可能となる。
【0068】
また、送電波形の波形減衰率を測定するとき、送電装置402の送電アンテナ105と共振コンデンサ107に、送電部103、通信部104、及び電源部102等の要素が接続されていると、減衰波形の波形減衰率は、これらの要素による負荷の影響を受ける。すなわち、送電部103、通信部104、及び電源部102の状態によって、波形減衰率が変化することになる。そのため、たとえば波形減衰率が大きくても、それが異物による影響によるものなのか、送電部103、通信部104、及び電源部102によるものなのかの区別が困難になる。よって、波形減衰率の測定の際に、スイッチ108をONにして短絡し、送電アンテナ105、共振コンデンサ107、及びスイッチ108で形成される閉ループに電流が流れる状態にしてもよい。これにより、送電部103、通信部104、及び電源部102の影響を排除することが可能になる。あるいは、送電アンテナ105、共振コンデンサ107、スイッチ108で形成される閉ループ回路と、送電部103との間にスイッチを設けてもよい。そして、異物検出を行うときには当該スイッチによって閉ループ回路と送電部とを切断することによって、送電部103、通信部104、及び電源部102の影響を排除することが可能になる。以上のように、スイッチ108をONにして短絡(接続)した状態にする、あるいは閉ループ回路と送電部103とをスイッチで切断した状態で異物検出を行うことで、精度の高い異物検出が可能となる。また、スイッチ108をONにして短絡(接続)した状態にすることと、閉ループ回路と送電部103とをスイッチで切断した状態にすることの両方を実施しても、精度の高い異物検出が可能となる。
【0069】
[波形減衰法における異物検出閾値の設定方法]
図11は、波形減衰法における異物検出閾値の設定方法を説明するための図である。まず、RXは、TXから送電があった場合に、RXの負荷に電力が供給されない、あるいはとても小さな電力しか供給されないような状態になるように、RXの負荷が軽負荷状態になるように制御する。この時のTXの送電電力をPt1とする。そして、TXは、その状態で送電を停止し、波形減衰率を測定する。この時の波形減衰率をδ1とする。この時、TXは、TXが送電している送電電力Pt1を認識しており、送電電力Pt1と波形減衰率δ1とを関連付けるキャリブレーションポイント1100をメモリに記憶しておく。次に、RXは、TXから送電があった場合にRXの負荷に最大電力が供給される、あるいは所定の閾値以上の電力が供給される状態になるように、RXの負荷が負荷接続状態になるように制御する。この時のTXの送電電力をPt2とする。そして、TXは、その状態で送電を停止し、波形減衰率を測定する。この時、TXは、送電電力Pt2と波形減衰率δ2とを関連づけるキャリブレーションポイント1101をメモリに記憶しておく。続いて、TXは、キャリブレーションポイント1100とキャリブレーションポイント1101との間を直線補間し、直線1102を作成する。直線1102は、TXとRXの周辺に異物が存在しない状態における送電電力と送電波形の波形減衰率との関係を示している。よって、TXは直線1102から、異物がない状態における、送電電力値毎の送電波形の波形減衰率を推定することができる。例えば、送電電力値がPt3の場合は、送電電力値Pt3に対応する直線1102上の点1103から、波形減衰率はδ3であると推定することができる。そして、上記の推定結果を基に、TXは、送電電力値毎の、異物有無の判定に用いる閾値を算出することが可能となる。例えば、ある送電電力値における異物なしの場合の波形減衰率の推定結果より所定値(測定誤差に対応する値)だけ大きい波形減衰率を、異物有無の判定の閾値として設定してもよい。送電装置402が送電電力値と波形減衰率との組み合わせを取得するために送電装置402と受電装置401とが行うキャリブレーション処理を、以下では「波形減衰法のCalibration処理(CAL処理)」と呼ぶ。
【0070】
なお、RXは、負荷に対して電力が供給されない/軽負荷の状態となるような制御と、負荷接続状態となるような制御を、それぞれTXに制御を行うことを通知したあとに行ってもよい。また、当該2つの制御はいずれが先に行われてもよい。
【0071】
なお、本実施形態で述べた、負荷毎(送電電力値毎)の異物有無の判定に用いる閾値を算出するための動作は、Calibrationフェーズにおいて行われてもよい。上述したように、Calibrationフェーズでは、TXは、Power Loss法による異物検出を行う際に必要となるデータを取得する。その際、TXは、RXの負荷状態が軽負荷状態の場合と、負荷接続状態の場合における、電力損失に関するデータを取得する。そこで、
図11におけるキャリブレーションポイント1100とキャリブレーションポイント1101の測定を、上述したCalibrationフェーズにおいて、RXが軽負荷状態になった時と負荷接続状態になった時に、電力損失の測定と一緒に行ってもよい。すなわち、TXは、RXから第1基準受電電力情報を受信した際に、Calibrationフェーズで行うべき所定の処理に加えて、キャリブレーションポイント1100の測定を行う。また、TXは、RXから第2基準受電電力情報を受信した際に、Calibrationフェーズで行うべき所定の処理に加えて、キャリブレーションポイント1101の測定を行う。これにより、キャリブレーションポイント1100とキャリブレーションポイント1101の測定を行う期間を別途設ける必要がなくなるため、より短時間でキャリブレーションポイント1100とキャリブレーションポイント1101の測定を行うことができる。
【0072】
[波形減衰法をWPC規格に適用した場合の送電装置の処理]
次に、WPC規格にこの波形減衰法を適用して異物検出を行う場合の、送電装置402の処理について説明する。波形減衰法による異物検出を実施する場合には、送電装置402は、異物が無い状態での波形減衰率を予め測定し、それを基準として閾値を算出する。その後、送電装置402は、波形減衰法による異物検出を実行し、測定された波形減衰率が当該閾値と比較して大きい場合には「異物有り」あるいは「異物有りの可能性がある」と判定し、当該閾値と比較して小さい場合には「異物無し」あるいは「異物無しの可能性が高い」と判定する。
【0073】
異物が無い状態での波形減衰率を予め測定するタイミングについて説明する。WPC規格においては、前述のようにNegotiationフェーズにおいて、Q値計測法による異物検出を行う。そして異物検出の結果、異物が無いと判定された場合に、Calibrationフェーズ、Power Transferフェーズと進む。つまり、Negotiationフェーズ以降に進んだということは、Q値計測法による異物検出の結果、異物が無いと判定されたことを意味している。よって、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズ、Power Transferフェーズのいずれかにおいて波形減衰率を測定すれば、異物が無い状態での波形減衰率を測定できる可能性が高い。よって、異物が無い状態での波形減衰率を測定するタイミングとしては、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズ、Power Transferフェーズのいずれかでよい。
【0074】
本実施形態では、異物が無い状態での波形減衰率を測定するタイミングを、PowerTransferフェーズの最初の段階に設定する。理由は、Q値計測法により異物がないと判定されてから時間が経過すればするほど、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が置かれる確率が上がるためである。そして、受電装置401あるいは送電装置402が指定する、異物検出を行うタイミングで、送電装置402は送電波形の波形減衰率を測定する。送電装置402はその後、測定した波形減衰率を、上述した異物が無い状態での波形減衰率から算出した閾値と比較し、異物の有無を判定する。
【0075】
なお、波形減衰法では、送電装置402が一時的に送電を停止し、送電波形の減衰率を観測して異物検出を行うため、送電の一時停止による送電効率の低下を招くという短所がある。一方で、大きな電力を送電中に異物検出処理を実行した場合でも、高精度で異物検出が可能であるという長所がある。すなわち、Power Loss法で異物を正確に検出することが困難な状況であっても、波形減衰法を用いることで異物を検出できる。
【0076】
上述した実施形態においては、波形減衰法によって異物検出を実施する場合には、異物が無い状態での波形減衰率を送電開始前に測定し、それを基準として閾値を算出するものとした。そして、波形減衰法による異物検出を実行する際に測定された波形減衰率が、前記閾値と比較して大きい場合には「異物有り」あるいは「異物有りの可能性がある」と判定し、前記閾値と比較して小さい場合には「異物無し」あるいは「異物無しの可能性が高い」と判定するものとした。しかし、送電開始後の異物が無いと推定されるタイミングに測定した波形減衰率から求められる閾値を用いて、異物検出を実施してもよい。例えば、TXが送電中に、Power Loss法によって異物が無いことを確認する。次にTXは、一回目の波形減衰率測定を実施し、測定された波形減衰率を基準とする閾値を算出する。この一回目の波形減衰率測定は、予めPower Loss法によって異物が無いことが確認された直後に実施されているので、測定された波形減衰率は、異物が無い状態の波形減衰率であると推定される。次にTXは、送電を再開し、異物検出を行うべきと判断したタイミングで、二回目の波形減衰率測定を実施する。そして、二回目の波形減衰率測定の測定結果を、一回目の波形減衰率測定の測定結果又はそれを基準として算出された閾値と比較することで、異物有無の判定を行うことができる。つまり、波形減衰法により異物検出を実施する際には、その時点で測定した波形減衰率を、それ以前の異物が無い状態で測定された波形減衰率あるいは閾値と比較してもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、送電装置402からの送電に係る送電波形の周波数は、固定の周波数であるものとした。しかし、複数の周波数それぞれにおいて、本実施形態で述べた異物検出のための処理を行い、それらの結果を組み合わせることで、異物有無の判定を行ってもよい。一つの周波数での波形減衰率だけでなく、複数の周波数での波形減衰率を用いて異物検出を行うことで、より精度の高い異物検出を行うことが可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、送電装置402が送電を停止した直後、あるいは送電を開始した直後は、過渡応答で送電波形が不安定であるため、各動作に移行する前に待機時間を設けた。しかし、この送電波形が不安定になる原因は、送電を急に開始したり、急に停止したりすることによって引き起こされる。よって、これを緩和するために、送電装置402は、送電を開始するときには送電電力を段階的に上げるように制御してもよい。あるいは、送電を停止する際には、送電電力を段階的に下げるように制御してもよい。
【0079】
[通信エラーに応じた異物検出処理]
上述したように、送電装置402と受電装置401は、WPC規格に基づく送受電制御のための通信を行う。この通信は、送電装置402が有する送電アンテナ105と、受電装置401が有する受電アンテナ205を介して、無線で行われる。そのため、送電装置402と受電装置401の近傍(例えば送電装置402と受電装置401の間)に異物が存在すると、当該異物が送電装置402と受電装置401との間の無線通信に干渉し、通信エラーを引き起こす可能性がある。よって、本実施形態では、通信エラーが発生した場合には、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在する可能性があるため、送電装置402及び受電装置401が異物検出を実施するための制御を行う。
【0080】
上述したように、送電装置402から受電装置401への送電中に行う異物検出方法としては、Power Loss法及び波形減衰法がある。Power Loss法では、
図10を用いて説明したように、受電装置401から送電装置402に対して、受電装置401が測定した受電電力値Pr3’を通知する。送電装置402は、異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から、実際に受電装置401から受信した受電電力値Pr3’を引いた値である、Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)を算出する。このPloss_FOは、送電装置402と受電装置401との近傍に異物が存在する場合に、その異物で消費される電力による電力損失と考えることができる。よって、送電装置402は、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOがあらかじめ決められた閾値を超えた場合に、異物が存在すると判定することができる。つまり、Power Loss法においては、異物検出を行う場合、上述したように受電電力値Pr3’を送電装置402に通知するために、送電装置402と受電装置401との間で通信を行う。送電装置402と受電装置401との間ではすでに通信エラーが発生しており、この異物検出のための通信においても同様の原因によりエラーが生じる可能性がある。
【0081】
一方で、波形減衰法は、送電装置402が送電を停止し、その時の波形減衰率と、予め測定した異物が無い状態の波形減衰率とを比較することで、異物の有無を判定するものである。そのため、送電装置402と受電装置401との通信を行わなくても異物検出を実施できる。よって、通信エラーが発生した場合に、送電装置402は、通信を行う必要のない波形減衰法による異物検出を行う。これにより、異物検出に成功する可能性を高めることができる。
【0082】
また、送電中に送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在しても、通信エラーが生じない場合もある。しかし、通信エラーが生じなかったとしても、異物が存在する場合には、異物により大きな電力損失が発生したり、異物が発熱したりするなどの不具合が生ずる可能性がある。よって、送電装置402は、無線送電を行うPower Transferフェーズ中に定期的に異物検出処理を行い、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在するか否かを確認する。この定期的な異物検出に波形減衰法を採用すると、異物検出を実行するたびに送電装置402からの送電を一時的に停止するため、送電効率の低下を招く。一方で、Power Loss法を採用する場合は、送電装置402から受電装置401に送電を継続しながら異物を検出することが可能である。よって、通信エラーが発生していない場合に、送電装置402と受電装置401は、Power Transferフェーズ中に定期的にPower Loss法による異物検出を行う。これにより、電力伝送効率を高く保ったまま、異物を早期に検出することができる。
【0083】
上記のような複数の異物検出方法を使用する送電装置402と受電装置401の動作について説明する。
図8は、送電装置402のPower Transferフェーズにおける動作の例を示す。
図8の処理は、送電装置402が充電台403に載置された受電装置401を検出して通信を行い、WPC規格で規定される各フェーズの処理が完了したタイミングで開始される。
図8の処理の開始前に実行されるフェーズとしては、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、I&Cフェーズ、Negotiationフェーズ、及びCalibrationフェーズがある。ただし、上記のフェーズの少なくとも一部を行わずに
図8の処理が開始されてもよい。
【0084】
S801において、送電装置402は、Power Transferフェーズにおける送電を開始する。S802において、送電装置402は、受電装置401からPower Loss法による異物検出実行のコマンドを受信したかを判定する。このコマンドには、受電装置401が測定した受電電力値が含まれる。このコマンドを受信した場合、S803において送電装置402は、受電装置401から受信した受電電力値と、送電装置402が測定した送電電力値に基づいて、Power Loss法による異物検出を実行する。
【0085】
S804において、送電装置402は、異物検出処理の結果に基づいて、送電装置402の近傍に異物が存在するか否かを判定する。異物が存在すると判定された場合、S805において送電装置402は、異物が存在することを示す情報である否定応答(NAK)を受電装置401へ送信する。S806において、送電装置402は、送電を停止するか、あるいは送電電力を下げる制御を行う。一方、S804において異物が存在しないと判定された場合、送電装置402は、異物が存在しないことを示す情報である肯定応答(ACK)を受電装置401へ送信し、送電を継続してS802へ戻る。
【0086】
S802においてPower Loss法による異物検出実行コマンドを受信しなかった場合、S808において送電装置402は、送電装置402と受電装置401との間で行われる通信における通信エラーが発生したかを判定する。送電装置402は、受電装置401から送信されるべきコマンドが送電装置402により受信されない場合に、通信エラーが発生したと判定(すなわち通信エラーを検知)する。例えば、上述したPowerLoss法による異物検出を定期的に実行するために、受電装置401は送電装置402に対して、Power Loss法による異物検出実行コマンドを定期的に送信する。送電装置402は、定期的に受信するはずの当該コマンドを受信しない場合、あるいは不正なパケットを含むコマンドを受信した場合に、通信エラーが発生したと判定する。ただし、送電装置402による通信エラーの検知の方法はこれに限定されない。
【0087】
S808において通信エラーが検知された場合、異物が存在する可能性があるため、S809において送電装置402は、波形減衰法による異物検出を実行する。そして送電装置402は、Power Loss法による異物検出を実行した場合と同様に、異物検出の結果に基づいてS804からS807の処理を行う。
【0088】
S808において通信エラーが検知されなかった場合、S810において送電装置402は、波形減衰法による異物検出実行コマンドを受電装置401から受信したかを判定する。受電装置401がこのコマンドを送信するのは、例えば、後述するように受電装置401が通信エラーを検知した場合である。送電装置402は、このコマンドを受信した場合、S809において波形減衰法による異物検出を実行する。そして送電装置402は、異物検出の結果に基づいてS804からS807の処理を行う。
【0089】
図9は、受電装置401のPower Transferフェーズにおける動作の例を示す。
図9の処理は、
図8の処理と同様のタイミングで開始される。S901において、受電装置401は、Power Transferフェーズにおける受電を開始する。S902において、受電装置401は、送電装置402に対して定期的に送信すべきコマンドである、Power Loss法による異物検出実行のコマンドを送信する。このコマンドは、受電装置401が送電装置402にPower Loss法による異物検出処理を要求する通知である。
【0090】
S903において、受電装置401は、送電装置402と受電装置401との間で行われる通信における通信エラーが発生したかを判定する。受電装置401による通信エラーの判定は、以下のように行われる。WPC規格に従って、受電装置401は、送電装置402に対して様々なコマンドを送信する。そして送電装置402は、受電装置401からのコマンドを受信すると、受電装置401に対して応答(肯定応答や否定応答等)を行う。例えば、上述したPower Loss法による異物検出を定期的に実行する上で、受電装置401は送電装置402に対して、Power Loss法による異物検出実行コマンドを定期的に送信する。送電装置402は、当該コマンドを受信したら、受電装置401に対して応答を行う。そこで受電装置401は、送電装置402に対してPowerLoss法による異物検出実行コマンドを送信したにもかかわらず、送電装置402から応答を受信しない場合に、通信エラーが発生したと判定(すなわち通信エラーを検知)する。また、受電装置401は、送電装置402から応答を受信した場合であっても、その応答が不正なパケットを含む場合に、通信エラーが発生したと判定する。ただし、受電装置401による通信エラーの検知の方法はこれに限定されない。
【0091】
S903において通信エラーが検知された場合、異物が存在する可能性があり且つPower Loss法による異物検出が正常に実行されていない可能性がある。そのため、S904において受電装置401は、波形減衰法による異物検出実行コマンドを送電装置402へ送信する。このコマンドは、受電装置401が送電装置402に波形減衰法による異物検出処理を要求する通知である。そして受電装置401は、送電装置402からの波形減衰法による異物検出実行結果に応じた応答を待ち受ける。なお、S903において通信エラーが検知されなかった場合、受電装置401は、送電装置402からのPower Loss法による異物検出実行結果に応じた応答を待ち受ける。
【0092】
S905において、受電装置401は、異物が存在することを示す情報である否定応答を送電装置402から受信したかを判定する。否定応答を受信した場合、S906において受電装置401は、送電を終了させるためのコマンドであるEPT(End Power Transfer)コマンドを送電装置402へ送信し、受電しない状態に移行する。一方、S905において否定応答を受信しなかった場合、例えば肯定応答を受信した場合には、受電装置401は、受電を継続してS902へ戻る。
【0093】
以上が、送電装置402と受電装置401の動作例の説明である。このように、送電装置402及び受電装置401は、送電装置402と受電装置401間の通信における通信エラーが検知された場合には、波形減衰法により異物検出が実施されるように制御する。これにより、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在する場合に、早期に異物を検出して送電を停止(又は送電電力を低下)することができるため、異物の極端な温度上昇や破壊を防げる蓋然性を高めることができる。なお、上記の説明では送電装置402と受電装置401の両方がエラー検知を行うものとしたが、送電装置402と受電装置401の何れか一方がエラー検知を行ってもよい。
【0094】
なお、すでに説明したように、送電装置402は波形減衰法による異物検出を実施するタイミングで、スイッチ108を短絡したり、送電アンテナ105を含む閉ループ回路と送電部103との間のスイッチを切断したりしてもよい。これにより、減衰波形に対する送電部103、通信部104、及び電源部102の影響を排除して、より精度の高い異物検出が可能となる。同様に、受電装置401は波形減衰法による異物検出を実行するタイミングで、第二スイッチ部210を短絡したり、第一スイッチ部209を切断したりしてもよい。これにより、減衰波形に対する受電部203、充電部206、及びバッテリ207の影響を排除して、より精度の高い異物検出が可能となる。この場合、送電装置402と受電装置401は、異物検出を行うタイミングを特定するための通信を行う。
【0095】
また、上述した実施形態においては、波形減衰法による異物検出を行う場合に、送電装置402が、無線送電に係る送電波形の減衰状態として、送電アンテナ105に印加される電圧あるいは送電アンテナ105に流れる電流の減衰率を測定するものとした。しかし、送電アンテナ105と受電アンテナ205は対向して電磁的に結合しているため、送電アンテナ105の電磁エネルギーは受電アンテナ205にも励起される。そのため、受電装置401が、無線送電に係る受電波形の減衰状態として、受電アンテナ205に印加される電圧あるいは受電アンテナ205に流れる電流の減衰率を測定することによっても、波形減衰法による異物検出を実現できる。
【0096】
また、送電装置402が波形減衰率を測定した場合には、波形減衰率の測定結果あるいはその測定結果から求められた閾値を受電装置401に通知してもよい。これにより、受電装置401は、送電装置402から受け取った測定結果等に基づいて異物の有無を判定することが可能となる。同様に、受電装置401が波形減衰率を測定した場合には、波形減衰率の測定結果あるいはその測定結果から求められた閾値を送電装置402に通知してもよい。これにより、送電装置402は、受電装置401から受けとった測定結果等に基づいて異物の有無を判定することが可能となる。
【0097】
なお、
図8及び
図9を用いた上記の説明では、通信エラーが検知された場合には高精度に異物検出を行うために波形減衰法を採用するものとした。これにより、定期的に行われるPower Loss法による異物検出処理で異物を検出し損ねた場合であっても、通信エラーに応じて波形減衰法による異物検出処理を行うことで異物を検出し、送電を停止(又は送電電力を低下)することができる。ただし、送電装置402及び受電装置401は、送電効率の低下を避けたい場合には、通信エラーの検知に応じてPower Loss法による異物検出を実行してもよい。この場合、
図8のS808において通信エラーを検知した送電装置402は、S809において波形減衰法による異物検出を実行する代わりに、Power Loss法による異物検出を実行してもよい。また、
図9のS903において通信エラーを検知した受電装置401は、S904において波形減衰法による異物検出実行コマンドを送信する代わりに、Power Loss法による異物検出実行コマンドを送信してもよい。S809でPower Loss法による異物検出を行う場合、送電装置402は、受電装置401へ受電電力値を含むコマンドの送信を要求し、要求に応じて受信した受電電力値と送電装置402が測定した送電電力値とに基づいて異物を検出する。S903で受電装置402がPower Loss法による異物検出実行コマンドを送信した場合、そのコマンドを受信した送電装置401はPower Loss法による異物検出を行う。このような処理により、定期的なPower Loss法による異物検出処理で異物を検出し損ねた場合であっても、通信エラーに応じて再度異物検出処理を行うことで、異物を検出できる蓋然性が高まる。
【0098】
なお、通信エラーの検知に応じてPower Loss法による異物検出を実行する場合、送電装置402と受電装置401との間で異物検出のための通信がおこなわれる。しかし、その通信においても再度通信エラーが発生し、送電装置402又は受電装置401が相手からデータを受信できない、あるいは不正なパケットを含むデータを受信してしまう可能性もある。受電装置401が送電装置402に送信した異物検出実行コマンドが通信エラーにより損失した場合、送電装置402は異物検出を要求されていることを認識できないため、異物検出を実行しない。そのため、送電装置402から受電装置401に対して、異物検出実行コマンドに対する応答が送信されることもない。
【0099】
そこで受電装置401は、このような再度通信エラーが発生したと考えられる場合に、送電装置402に対して送電を終了させるコマンドであるEPTコマンドを送信し、受電しない状態に移行してもよい。送電装置402は、EPTを受信できた場合は、送電を停止する。また、EPTを受信できなかった場合でも、送電装置402は、受電装置401が受電しない状態に移行していることを検知して送電を停止し、Selectionフェーズに移行してもよい。通信エラーの検知に応じた異物検出を行うための通信においても再度通信エラーが発生した場合には、通信エラー発生の頻度が高いことから、異物が存在する可能性が高い、あるいは異物以外に通信を妨害する要因が存在すると考えられる。そのため、このような場合に上記のように送電を停止、あるいは送電の電力を下げるように制御することで、送電による不具合の発生を抑制することが可能になる。
【0100】
また、上述したPower Loss法による異物検出、あるいは波形減衰法による異物検出を実施した場合に、異物検出が失敗する可能性もある。たとえば、送電装置402に載置された受電装置401が異物検出処理中に移動したことにより、異物検出に用いる測定値が異常値となって異物検出が失敗することが考えられる。この場合も、無線電力伝送を行うのに適切でない状態である可能性があるため、送電装置402と受電装置401は、送電を停止、あるいは送電の電力を下げるようにしてもよい。これにより、送電による不具合の発生を抑制できる。
【0101】
[電力低下に応じた異物検出処理]
図8及び
図9を用いた上記の説明では、送電装置402及び受電装置401が通信エラーの検知に応じて異物検出を行う場合の処理について述べた。次に、受電装置401の受電電力の低下に応じて異物検出を行う場合の処理について説明する。
【0102】
送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在すると、当該異物が送電装置402と受電装置401との間の無線電力伝送を妨害し、受電装置401における受電電力の低下を引き起こす可能性がある。よって、受電装置401の受電電力の低下が発生した場合には、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在する可能性があるため、送電装置402及び受電装置401が異物検出を実施するための制御を行う。
【0103】
以下、受電装置401の受電電力の低下を送電装置402が検知したことに応じて異物検出が実行される場合の送電装置402と受電装置401の動作について述べる。送電装置402は、Power Transferフェーズ中にPower Loss法による異物検出を行うために、受電電力値Pr3’を受電装置401から定期的に受信する。そして送電装置402は、受電装置401から受信した受電電力値Pr3’、あるいは予め特定したPr3とPr3’の差であるPloss_FOに基づいて、受電装置401の受電電力が低下しているか否かを判定する。受電装置401から受電した受電電力値Pr3’がある閾値を下回った場合、あるいはPloss_FOがある閾値を上回った場合には、送電装置402は、受電装置401の受電電力が低下していると判断し、波形減衰法による異物検出を実行する。
【0104】
すなわち、送電装置402は、送電効率を高く保てるPower Loss法によって定期的に異物検出を行い、その異物検出のために受電装置401から受信した受電電力に応じて、より異物検出精度の高い波形減衰法による異物検出を行う。例えば、送電装置402は、Pr3’あるいはPloss_FOの値に対して、異物が存在する可能性があると判定するための第一の閾値と、異物が存在すると判定するための第二の閾値を設けてもよい。そして送電装置402は、Pr3’あるいはPloss_FOが第二の閾値を超えた場合には、Power Loss法により異物が検出されたと判断し、送電を停止、あるいは送電電力を下げるように制御する。また送電装置402は、Pr3’あるいはPloss_FOが第一の閾値を超えたが第二の閾値を超えていない場合には、波形減衰法による異物検出を実行する。これにより、Power Loss法で異物が検出できなかった場合でも、受電電力の低下に応じてより精度の高い波形減衰法を行うことにより、異物を検出することが可能となる。なお、上述した各閾値は、Power Loss法のCalibration処理で求められるデータ(
図10の直線1002)を基に設定されてもよい。
【0105】
また、上記の説明では受電装置401の受電電力の低下に応じて送電装置402が異物検出を行うものとしたが、送電装置402は、送電装置402の送電電力の変化に応じて異物検出を行ってもよい。送電装置402は、送電装置402が送電している送電電力値を計測することが可能である。そこで送電装置402は、この送電電力値と所定の基準値との差がある閾値に対して大きい場合に、異物が存在する可能性があると判断し、波形減衰法による異物検出を行ってもよい。このような構成によっても、受電電力の低下に応じて異物検出を行う場合と同様の効果が得られる。
【0106】
次に、受電装置401の受電電力の低下を受電装置401が検知したことに応じて異物検出が実行される場合の送電装置402と受電装置401の動作について述べる。受電装置401は、Power Transferフェーズ中に送電装置402から受電している電力を定期的に測定する。そして受電装置401は、その定期的に測定した受電電力値に基づいて、受電装置401の受電電力が低下しているか否かを判定する。算出した受電電力値がある閾値を下回った場合、あるいは、算出した受電電力値と基準値との差がある閾値を上回った場合には、受電装置401は、受電装置401の受電電力が低下していると判断し、波形減衰法による異物検出の実行を送電装置402に要求する。
【0107】
すなわち、受電装置401は受電電力値を定期的に測定し、その測定結果に応じて、異物検出精度の高い波形減衰法での異物検出を送電装置402に要求する。例えば、受電装置401は、測定した受電電力と基準値との差が所定の閾値以下である場合には、Power Loss法による異物検出実行コマンドを送信してもよい。一方、受電装置401は、測定した受電電力と基準値との差が所定の閾値を超えた場合には、波形減衰法による異物検出実行コマンドを送信してもよい。このような構成によれば、異物の存在する可能性が高い場合(受電電力が低下している場合)には精度の高い波形減衰法で異物を検出し、そうでない場合にはPower Loss法により送電効率を高く保って異物検出を行うことができる。
【0108】
なお、受電装置401は、受電電力値の低下が閾値を超えた場合には、異物が存在していると判断し、送電装置402に送電を停止、あるいは送電電力を下げるように要求してもよい。また、受電装置401は、受電電力値の低下に対して、異物が存在する可能性があると判定するための第一の閾値と、異物が存在すると判定するための第二の閾値を設けてもよい。そして受電装置401は、受電電力の低下が第一の閾値を超えたが第二の閾値を超えていない場合には、送電装置402に対して波形減衰法による異物検出を実行するように要求する。また受電装置401は、受電電力の低下が第二の閾値を超えた場合には、送電装置402に対してEPTコマンドを送信することで、送電装置402に対して送電を停止するように要求してもよい。あるいは、送電装置402に対して、送電電力を下げるように要求するコマンドを送信してもよい。
【0109】
以上のように、送電装置402及び受電装置401は、受電装置401の受電電力低下を検知した場合には、波形減衰法により異物検出が実施されるように制御する。これにより、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在する可能性がある場合に、早期に異物を検出することが可能になる。
【0110】
[キャリブレーションデータに応じた異物検出処理]
次に、Power Loss法のCalibration処理で得られたデータ、あるいは波形減衰法のCalibration処理で得られたデータに応じて、異物検出が行われる場合の処理について述べる。
【0111】
上述したように、Power Loss法による異物検出と、波形減衰法による異物検出においては、異物の有無の判定に用いる基準となる閾値を設定するためのCalibration処理を行う。これらのCalibration処理で得られる基準データは、異物が無い状態での送電電力値と受電電力値の関係、あるいは送電電力値と波形減衰率の関係を示すことが想定される。よって、Calibration処理で得られた基準データが、送電電力値と受電電力値との間または送電電力値と波形減衰率との間で想定される所定の関係を示さない場合には、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在する可能性がある。そのため、送電装置402及び受電装置401が異物検出を実行するための制御を行う。
【0112】
まず、Power Loss法のCalibration処理で得られたデータに応じて異物検出が実行される場合の、送電装置402と受電装置401の動作について述べる。送電装置402と受電装置401は、Power Loss法で用いられる閾値を決定するための処理である、Power Loss法のCalibration処理を実施する。このPower Loss法のCalibration処理で得られるデータは、異物が無い状態での送電電力と受電電力の関係を表すデータとなるはずであり、送電電力値に応じた受電電力値のとりうる範囲を予め想定することが可能である。そこで送電装置402は、Power Loss法のCalibration処理でデータを得た場合、そのデータに含まれる受電電力値が送電電力値に応じて予め定められた範囲内であるかどうかを判定する。範囲外である場合は、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在する可能性があるため、送電装置402は波形減衰法による異物検出を実行する。そして、波形減衰法による異物検出により、異物が存在すると判定された場合には、送電装置402は送電を停止、あるいは送電電力を下げる制御を行う。一方、波形減衰法により異物が存在しないと判定された場合には、送電装置402はPower Loss法のCalibration処理を再度実行し、データを更新する。
【0113】
すなわち、送電装置402は、Power Loss法のCalibration処理によって得られるデータの値に応じて、Power Loss法とは異なる波形減衰法による異物検出を実行する。このような構成によれば、Power Loss法のCalibration処理において異物が存在する可能性があると判断された場合に、波形減衰法による異物検出を実行することで早期に異物を検出することが可能となる。また、キャリブレーションデータが正確でないことによりPower Loss法による異物検出の精度が低下する場合に、波形減衰法により高精度に異物を検出できる。なお、Calibration処理で得られるデータに応じた異物検出の判断は、受電装置401が行ってもよい。
【0114】
次に、波形減衰法のCalibration処理で得られたデータに応じて異物検出が実行される場合の、送電装置402と受電装置401の動作について述べる。送電装置402と受電装置401は、波形減衰法で用いられる閾値を決定するための処理である、波形減衰法のCalibration処理を実施する。この波形減衰法のCalibration処理で得られる基準データは、異物が無い状態での送電電力と波形減衰率の関係を表すデータとなるはずであり、データがとりうる範囲を予め想定することが可能である。そこで送電装置402は、波形減衰法のCalibration処理で得られる基準データが示す波形減衰率が所定の範囲内であるかどうかを判定する。波形減衰率が所定の範囲内でない場合は、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在する可能性があるため、送電装置402はPower Loss法による異物検出を実行する。より詳細には、送電装置402はPowerLoss法を実行する旨を受電装置401に通知するためのコマンドを送信する。当該コマンドを受信した受電装置401は、送電装置402に対して、受電装置401が測定した受電電力値を含む、Power Loss法による異物検出実行コマンドを送信する。送電装置402は、受電装置401からコマンドを受信したら、Power Loss法による異物検出を実行する。
【0115】
Power Loss法で異物有りだと判定された場合には、送電装置402は送電を停止する、あるいは送電電力が低下するように制御する。Power Loss法で異物無しだと判定された場合には、送電装置402は波形減衰法のCalibration処理を再度実行し、データを更新する。このように、送電装置402は、波形減衰法のCalibration処理によって得られるデータの値に応じて、波形減衰法とは異なるPower Loss法による異物検出を実行する。このような構成によれば、波形減衰法のCalibration処理において異物が存在する可能性があると判断された場合に、Power Loss法による異物検出を実行することで早期に異物を検出することが可能となる。なお、Calibration処理で得られるデータに応じた異物検出の判断は、受電装置401が行ってもよい。
【0116】
[温度上昇に応じた異物検出処理]
送電装置402あるいは受電装置401の温度上昇が検知されたことに応じて異物検出が実行される場合の処理について述べる。送電装置402あるいは受電装置401の温度が上昇する要因としては、送電装置402及び受電装置401が有するアンテナ等を含む電気回路からの発熱や、様々な処理を行うことによるCPUからの発熱が考えられる。また、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在すると、送電電力のエネルギーの一部を異物が消費することにより異物が発熱し、それに伴って、異物に接する送電装置402あるいは受電装置401の温度も上昇する可能性がある。よって、送電装置402あるいは受電装置401の温度が所定の閾値よりも上昇した場合には、送電装置402と受電装置401の近傍に異物が存在する可能性があるため、送電装置402及び受電装置401が異物検出を実施するための制御を行う。
【0117】
まず、送電装置402が温度上昇を検知した場合の、送電装置402と受電装置401の動作について述べる。送電装置402は温度センサを有しており、送電装置402の温度が所定の閾値を超えたことが温度センサにより検知された場合、送電装置402は波形減衰法による異物検出を実行する。そして、異物が存在すると判定された場合には、送電装置402は、送電を停止、あるいは送電電力が低下するように制御する。
【0118】
ここで、Power Loss法ではなく波形減衰法による異物検出を実行する理由は、以下のとおりである。すなわち、Power Loss法では送電装置402が受電装置401から受電電力値を受信する必要があるが、波形減衰法では送電装置402が受電装置401からの情報を必要としないため、短時間で異物検出を行えるからである。また、Power Loss法よりも波形減衰法の方が、より高精度に異物検出が行えるからである。すなわち、送電装置402は、温度が高くなっており異物が存在する可能性がある場合に、波形減衰法により早期かつ高精度に異物を検出できる。しかし、Power Loss法で異物検出をおこなってもよい。この場合は、送電装置402から受電装置401に対して、Power Loss法による異物検出を実施する旨を通知する。受電装置401は、当該通知を受信したら、送電装置402に対して、受電装置401が測定した受電電力値を含む、Power Loss法による異物検出実行コマンドを送信する。
【0119】
次に、受電装置401が温度上昇を検知した場合の、送電装置402と受電装置401の動作について述べる。受電装置401は温度センサを有しており、受電装置401の温度が所定の閾値を超えたことが温度センサにより検知された場合、受電装置401は送電装置402に波形減衰法による異物検出実行コマンドを送信する。そして、送電装置402は波形減衰法による異物検出を実行し、異物が存在すると判定した場合には、送電を停止、あるいは送電電力が低下するように制御する。なお、波形減衰法の代わりにPower Loss法で異物検出をおこなってもよい。この場合は、受電装置401が、温度センサによる温度情報の検知に応じて、送電装置402に対してPower Loss法による異物検出実行コマンドを送信する。
【0120】
なお、送電又は受電を行う機器の許容される温度に関しては、規格や各国の法律によって所定の規定値が存在する場合もある。そこで、上記の異物検出の実行を判断するための閾値を、それらの規定値に対して低く設定しておくことで、異物による温度上昇が発生しても、温度が規定値に達する前に早期に異物を検出することが可能となる。
【0121】
[送電電力に応じた異物検出処理]
次に、送電装置402から送電される送電電力に応じて選択された方法で異物検出が実行される場合の処理について述べる。上述したように、Power Loss法は、送電装置402から受電装置401への送電中に、送電に係る電力の損失に基づいて異物検出を行うものであり、送電装置402が大きな電力を送電しているときには異物検出の精度が低下するという短所がある。一方で、送電を継続しながら異物検出を行えるため、送電効率を高く保てるという長所がある。また、波形減衰法は、送電装置402が一時的に送電を停止した際の送電波形の減衰率を観測して異物検出を行うため、送電の一時停止により送電効率が低下するという短所がある。一方で、大きな電力を送電中に実行しても高精度で異物検出が可能であるという長所がある。
【0122】
よって、送電装置402及び受電装置401は、送電装置402からの送電電力値が所定の閾値未満である場合には、Power Loss法による異物検出のみを行うように制御する。なぜなら、送電電力が低い場合は、Power Loss法でも異物検出の精度が高いため、送電効率を高く保てるPower Loss法が有利だからである。一方で、送電装置402及び受電装置401は、送電装置402からの送電電力が所定の閾値以上である場合には、Power Loss法と波形減衰法の両方を用いて異物検出を行うか、あるいは波形減衰法による異物検出のみを行うように制御する。なぜなら、送電電力が高い場合は、Power Loss法による異物検出の精度が低下するため、異物検出の精度が高い波形減衰法を用いることが有効だからである。このように、送電電力に応じて複数の異物検出方法を使い分けることで、送電効率を高く保ちつつ異物検出精度を向上させることが可能となる。
【0123】
上述の通信エラーに応じた異物検出処理、電力低下に応じた異物検出処理、キャリブレーションデータに応じた異物検出処理、及び温度情報に応じた異物検出処理の説明では、Power Loss法と波形減衰法の両方を用いる場合を中心に説明した。しかし、送電電力が所定の閾値よりも低い場合には、これらの実施形態において波形減衰法を用いて異物検出を行うとしたタイミングで、Power Loss法による異物検出を行ってもよい。また、送電電力が所定の閾値以上である場合には、Power Loss法と波形減衰法の両方を用いてもよいし、上述の実施形態においてPower Loss法を用いて異物検出を行うとしたタイミングで、波形減衰法による異物検出を行ってもよい。
【0124】
本実施形態では、無線電力伝送システムが、送電装置402及び受電装置401の少なくとも何れかの状態に関する所定の条件が満たされたかを判定し、その判定結果に応じてPower Loss法と波形減衰法を使い分ける場合を中心に説明した。ただしこれに限らず、送電装置402及び受電装置401の少なくとも何れかが、上記以外の異物検出方法を含む複数の異物検出方法を条件に応じて使い分けてもよい。また、無線電力伝送システムは、上述した各種の条件やその他の条件を含む複数の条件を組み合わせて、異物検出方法の選択や異物検出処理の制御を行ってもよい。
【0125】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC等)によっても実現可能である。また、そのプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。
【符号の説明】
【0126】
401 受電装置
402 送電装置
【手続補正書】
【提出日】2024-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Analog Pingを送信する送信手段と、
Analog Pingを送信した後に電圧又は電流の第1の減衰包絡線から第1の品質係数を取得し、前記第1の品質係数を取得した後に電圧又は電流の第2の減衰包絡線から第2の品質係数を取得する取得手段と、
前記第1の品質係数と前記第2の品質係数との比較の結果に基づいて所定の条件を満たすか判定する判定手段と、
前記所定の条件を満たす場合に、送電を行う送電手段と、を有する送電装置。
【請求項2】
前記送電手段は、前記所定の条件を満たさない場合に送電を制限する、請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記第2の品質係数が前記第1の品質係数より小さいことである、請求項1又は2に記載の送電装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記所定の条件を満たす場合には異物がないと判定する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の送電装置。
【請求項5】
送電装置が行う方法であって、
Analog Pingを送信し、
Analog Pingを送信した後に電圧又は電流の第1の減衰包絡線から第1の品質係数を取得し、前記第1の品質係数を取得した後に電圧又は電流の第2の減衰包絡線から第2の品質係数を取得し、
前記第1の品質係数と前記第2の品質係数との比較に基づいて所定の条件を満たすか判定し、
前記所定の条件を満たす場合に、送電を行う方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、無線電力伝送を行うにあたって異物の検出処理を適切に制御することを目的とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記課題を解決するための一手段として、本発明の送電装置は以下の構成を有する。すなわち、送電装置は、Analog Pingを送信する送信手段と、Analog Pingを送信した後に電圧又は電流の第1の減衰包絡線から第1の品質係数を取得し、前記第1の品質係数を取得した後に電圧又は電流の第2の減衰包絡線から第2の品質係数を取得する取得手段と、前記第1の品質係数と前記第2の品質係数との比較の結果に基づいて所定の条件を満たすか判定する判定手段と、前記所定の条件を満たす場合に、送電を行う送電手段と、を有する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明によれば、無線電力伝送を行うにあたって異物の検出処理を適切に制御することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
図6において、波形は、TXの送電アンテナ105に印加される高周波電圧の電圧値600(以降、単に電圧値と言う)の時間経過に伴う変化を示している。
図6の横軸は時間、縦軸は電圧値を表す。送電アンテナ105を介してRXに送電を行っているTXは、時間T0において送電を停止する。すなわち、時間T0において、電源部102からの送電用の電力供給は停止される。TXからの送電に係る送電波形の周波数は、所定の周波数であり、例えばWPC規格で使用される85kHzから205kHzの間の固定された周波数である。点601は、高周波電圧の包絡線上の点であり、時間T
1における電圧値である。図中の(T
1、A
1)は、時間T
1における電圧値がA
1であることを示す。同様に、点602は、高周波電圧の包絡線上の点であり、時間T
2における電圧値である。図中の(T
2、A
2)は、時間T
2における電圧値がA
2であることを示す。この送電アンテナ105の品質係数(Q値)は、時間T
0以降の電圧値の時間変化に基づいて求めることが可能である。たとえば、電圧値の包絡線上の点601および602における時間、電圧値および高周波電圧の周波数fに基づいて、式1によりQ値が算出される。
Q=πf(T
2-T
1)/ln(A
1/A
2) (式1)
TXとRXの近傍に異物が存在する場合には、このQ値が低下する。これは、異物が存在する場合には、当該異物によってエネルギーの損失が発生するためである。よって、電圧値の減衰の傾きに着目すると、異物が無い時よりも、異物が有る時の方が、異物によるエネルギーの損失が発生するため、点601と点602を結ぶ直線の傾きが急になり、波形の振幅の減衰率が高くなる。つまり、波形減衰法は、この点601と点602との間の電圧値の減衰状態に基づいて異物の有無の判定を行うものであり、実際に異物の有無を判定する上では、この減衰状態を表す何らかの数値の比較によって判定をすることが可能となる。例えば、上述したQ値を用いて判定を行うことができる。Q値が低くなるということは、波形減衰率(単位時間当たりの波形の振幅の減少度合い)が高くなることを意味する。あるいは、(A
1-A
2)/(T
2-T
1)から求められる点601と点602を結ぶ直線の傾きを用いて判定が行われてもよい。あるいは、電圧値の減衰状態を観測する時間(T
1及びT
2)が固定であるならば、電圧値の差を表す(A
1-A
2)や、電圧値の比(A
1/A
2)の値を用いて判定を行うこともできる。あるいは、送電を停止した直後の電圧値A
1が一定であるならば、所定の時間経過後の、電圧値A2の値を用いて判定を行うこともできる。あるいは、電圧値A
1が所定の電圧値A
2になるまでの時間(T
2-T
1)の値を用いて判定が行われてもよい。