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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177280
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】容器詰ミルク入り飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20241212BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241212BHJP
   A23C 9/152 20060101ALI20241212BHJP
   A23F 3/16 20060101ALN20241212BHJP
   A23F 5/24 20060101ALN20241212BHJP
   A23G 1/56 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
A23L2/38 P
A23L2/52
A23C9/152
A23F3/16
A23F5/24
A23G1/56
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024172112
(22)【出願日】2024-10-01
(62)【分割の表示】P 2020217134の分割
【原出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】結城 沙織
(72)【発明者】
【氏名】谷 鷹明
(72)【発明者】
【氏名】神崎 範之
(72)【発明者】
【氏名】片山 透
(57)【要約】
【課題】乳成分の配合量が低く抑えられた容器詰ミルク入り飲料において、乳感が増強された飲料を提供する。
【解決手段】飲料100gあたり、0.3~4.0gの乳たんぱく質を含む容器詰ミルク入り飲料において、γ-アミノ酪酸を25~70mg/100g含有させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料100gあたり、0.3~4.0gの乳たんぱく質と25~70mgのγ-アミノ酪酸を含有する、容器詰ミルク入り飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳成分とγ-アミノ酪酸を含有することにより、乳感が増強された容器詰ミルク入り飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ミルク入りコーヒー飲料、ミルク入り紅茶飲料などのミルク入り飲料は、一年を通して飲用される嗜好性の高い飲料である。ミルク入り飲料は、コーヒー、紅茶などの素材本来の持つ香味に、乳が持つ乳風味や乳感が付与されるので、より嗜好性の高い飲料となっており、RTD飲料の形態でも多数販売されている。
【0003】
ミルク入り飲料を容器詰飲料の形態にする場合、乳成分の使用量には限界がある。これは、加熱殺菌による劣化臭の抑制、沈殿や分離などの保存安定性の向上、コストの抑制、カロリーオフなどの健康上の理由のためである。この乳成分の配合量が低く抑えられた容器詰めのミルク入り飲料においては、乳風味や乳感(特に、乳感)が欠如するという問題がある。そこで、乳感を増強するための方法が種々提案されている。例えば、天然甘味料の成分であるレバウディオサイドAとモグロシドVとを質量比で50:50~99:1の割合で含有する乳感増強剤をミルク入り飲料に添加する方法(特許文献1)、カフェオフラン又はその類縁体からなる乳含有飲食品用添加剤をミルク入り飲料に添加する方法(特許文献2)、ミルク入り飲料中の環状ジペプチドの一種であるCyclo(Pro-Arg)の濃度を4~1000ppmに調整する方法(特許文献3)がある。
【0004】
また、ミルク入り飲料のコク味や濃厚感を増強する方法も種々提案されている。例えば、フタライド類を有効成分とする飲食品の呈味改善剤を乳飲料を含む様々な飲料に添加する方法(特許文献4)、濃縮牛乳状組成物に甘味料(ブドウ糖とガラクトース)と特定の乳清ミネラルとを含有させる方法(特許文献5)、牛乳と、乳製品と、原料水とを主成分とする乳飲料において、原料水の一部を海洋深層水とする方法(特許文献6)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-198324号公報
【特許文献2】特開2008-79545号公報
【特許文献3】特開2020-171321号公報
【特許文献4】特開2011-103774号公報
【特許文献5】特開2011-217645号公報
【特許文献6】特開2008-67641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、乳成分の配合量が低く抑えられた容器詰ミルク入り飲料において、乳感が増強された飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ミルク入り飲料の乳感が、飲料を摂取した際の中味と後味の厚みと広がりに強く関係することを見い出した。そして、飲料の中味と後味の厚みと広がりを改善できる成分を種々検討した結果、γ-アミノ酪酸がその目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
[1]飲料100gあたり、0.3~4.0gの乳たんぱく質と25~70mgのγ-アミノ酪酸を含有する、容器詰ミルク入り飲料。
[2]乳たんぱく質が飲料100gあたり0.3g以上3.0g未満であり、乳固形分が3質量%未満である、[1]に記載の飲料。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、乳成分の配合量が低く抑えられているにも関わらず、飲料の中味と後味の厚みと広がりが改善され、乳感が増強されたミルク入り飲料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、乳感が増強されたミルク入り飲料である。ここで、本明細書でいう「乳感」とは、乳が有しているコク味であり、乳感が増強するとは、より大量の乳を配合したミルク入り飲料やより濃厚な乳を原料として用いたミルク入り飲料と同様のコク味を有するようになることを意味する。ここで、コク味とは、飲料の中味と後味の厚み(濃厚感)と広がりである。中味と後味とは、味を3段階(先味、中味、後味)に分けた際の中味と後味であり、先味は飲食品を口に含んだ瞬間の味を指し、中味は飲食品が口中にある間の味を指し、後味は飲食品を飲み込む瞬間から飲み込んだ後の味を指す。味の厚みとは、単純な基本味では出せない、複数の呈味成分からなる統一感であり、味の広がりは、口中で感じる味の持続性である。
【0011】
また、ミルク入り飲料とは、乳又は乳由来の素材(本明細書中、「乳成分」とも表記する)を含有する飲料をいう。ここで、「乳」とは、牛乳、山羊乳、羊乳など家畜から搾乳して得られる乳を意味する。ミルク入り飲料として、具体的には、ミルク入りコーヒー、ミルク入り紅茶、抹茶ミルク、ミルク入りココア飲料、その他ヨーグルト風味飲料などの乳性飲料や、乳酸菌を含む乳酸菌飲料、乳製品乳酸菌飲料などが挙げられる。
【0012】
(ミルク入り飲料)
本発明のミルク入り飲料は、乳感が増強された容器詰ミルク入り飲料である。ホイップクリームでは、脂肪分が同じで無脂乳固形分を増やした場合に、乳本来の味のインパクトが増強され、味の持続性が向上したことが報告されている(https://www.takanashi-milk.com/html/page19.html)。本発明者らが検討した結果、ミルク入り飲料の「乳感」には
、無脂乳固形分の一種である乳たんぱく質が大きく関係し、乳たんぱく質を減らした場合に、ミルク入り飲料の中味と後味の厚みと広がりが低減し、乳感が低減することを見い出した。本発明のミルク入り飲料は、乳成分の配合量が低く抑えられており、「乳感」に関与する乳たんぱく質の量が比較的低い飲料において、「乳感」を増強したものである。そのような飲料における乳たんぱく質の量は、飲料100gあたり0.3~4.0g程度であり、好ましくは0.3~3.5g程度であり、より好ましくは0.3g以上3.0g未満であり、さらに好ましくは0.3~2.5gであり、さらに好ましくは0.3~2.0gであり、さらに好ましくは0.3~1.5gである。なお、飲料中のたんぱく質含量の測定はケルダール法によって測定することができる。飲料中のたんぱく質含量を測定し、乳成分以外の成分が持ち込むたんぱく質量を減じた値が、乳たんぱく質含量となる。
【0013】
本発明のミルク入り飲料に配合される乳成分は、上述の通り乳又は乳由来の素材である。通常、乳成分には、乳たんぱく質が含まれる。また、乳たんぱく質それ自体も、乳由来の素材の一種であるということができ、乳成分の一種である。乳たんぱく質とは、乳に含まれる又は乳を由来とする各種のたんぱく質である。
【0014】
乳成分としては、例えば、上述した牛乳、山羊乳、羊乳など家畜から搾乳して得られる
乳の他、これらの乳から得られた素材(乳由来素材)であるカゼイン、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、ラクトフェリン、ホエープロテインコンセントレート(WPC)、トータルミルクプロテイン(TMP)、乳タンパクペプチド、全脂粉乳、脱脂粉乳、チーズ、乳タンパク濃縮物(MPC;milk protein concentrate)、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。飲料に配合する乳成分は、液体の形態であってもよいし、固体であってもよい。乳成分の中でも、牛乳を含む飲料は、本発明の好ましい態様の一つである。
【0015】
乳たんぱく質を飲料100gあたり0.3~4.0g程度含むミルク入り飲料の中でも、乳たんぱく質が飲料100gあたり0.3g以上3.0g未満と低く、かつ、乳固形分が3質量%未満の飲料は、通常、「乳感」を付与することが難しい。本発明ではこのような乳固形分が低い飲料の「乳感」を増強することができるため、このような飲料は、本発明の適用対象として好適であると言える。ここで、乳固形分とは、乳製品における水分以外の成分をいい、無脂乳固形分と乳脂肪分が含まれる。本発明のミルク入り飲料において「乳固形分」というときは、乳成分由来の無脂乳固形分と乳脂肪分との合計をいうものとする。
【0016】
乳固形分が3質量%未満の飲料としては、茶、コーヒー、ココア、果汁などの植物素材に乳成分を加えた飲料や、乳成分に甘味成分や香料を加えた飲料(いわゆる「乳性飲料」)などの清涼飲料が挙げられる。すなわち、乳固形分が3質量%未満で、食品表示基準に基づく「名称」として、コーヒー飲料、ココア飲料、紅茶飲料、清涼飲料の群から選択される1以上の表記がなされる飲料は、本発明の好適な態様である。
【0017】
本発明は、乳たんぱく質が上記範囲のように低く抑えられたミルク入り飲料に対して、γ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid, 以下「GABA」と略記する)を添加することによって、飲料の中味と後味の厚みと広がりを改善し、乳感を増強する。
【0018】
GABAは、野菜類、果物類、穀類、発酵食品等に幅広く含まれるアミノ酸の一種である。本発明に用いられるGABAとしては、特に限定されるものではなく、例えば野菜類、果物類、穀類などから抽出されたGABA、醗酵によって生産されたGABA、有機合成により得られたGABA等を用いることができる。飲料自体の香味への影響を最小限にして本発明の効果を享受するために、本発明の飲料に用いるGABAとしては、GABAを80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上含有するGABAの精製品を使用することが好ましい。精製品の形態としては、固体、水溶液、スラリー状など種々のものを用いることができる。市販されているGABAの精製品としては、GABA100%ピュアパウダー(NOW FOODS社)、オリザギャバエキスHC-90(オリザ油化社)などがある。
【0019】
本発明においては、飲料中のGABAの濃度が25mg/100g以上、好ましくは30mg/100g以上、さらに好ましくは35mg/100g以上となるように添加する。また、GABAの含有量は70mg/100g以下が好ましく、65mg/100g以下がより好ましく、60mg/100g以下がさらに好ましい。GABAの含有量は、アミノ酸分析装置を用いて測定することができる。
【0020】
GABAの添加方法は、特に制限されない。容器に充填する前の飲料調合液に予め所定量のGABAを添加してもよいし、各容器に所定量のGABAを添加した後に飲料調合液を充填してもよい。
【0021】
(その他成分)
飲料に甘味成分が含まれていると、中味から後味にかけての濃厚感や乳感をより一層増
強できる。したがって、甘味成分を含むミルク入り飲料は、本発明の好ましい態様の一つである。ここで本明細書でいう「甘味成分」とは、飲料に甘味を付与するために添加される成分を指す。具体的には、黒砂糖、白下糖、カソナード(赤砂糖)、和三盆、ソルガム糖、メープルシュガーなどの含蜜糖、ザラメ糖(白双糖、中双糖、グラニュー糖など)、車糖(上白糖、三温糖など)、加工糖(角砂糖、氷砂糖、粉砂糖、顆粒糖など)、液糖などの精製糖、単糖類(ぶどう糖、果糖、木糖、ソルボース、ガラクトース、異性化糖など)、二糖類(蔗糖、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖、パラチノースなど)、オリゴ糖類(フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガーなど)、糖アルコール類(エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール、オリゴ糖アルコール、粉末還元麦芽糖水飴)などのような糖質甘味料の他、天然非糖質甘味料(ステビア抽出物、カンゾウ抽出物等)や合成非糖質甘味料(アスパルテーム、アセスルファムK等)のような高甘味度甘味料などの甘味料が挙げられる。
【0022】
甘味成分の含有量は所望の香味に合わせて適宜設定すればよいが、通常、甘味度で1~15程度、好ましくは2~13程度、より好ましくは3~10程度、さらに好ましくは4~8程度である。ここで、甘味度とは、甘味の強さを示す尺度であり、蔗糖1質量%(20℃)の甘味を1とした場合の相対比である。飲料の甘味度は、当該飲料に含まれる各甘味成分の量(質量濃度)を、蔗糖の甘味1に対する当該甘味成分の甘味の相対比に基づいて、蔗糖相当量に換算して、次いで当該飲料に含まれる全ての甘味成分のショ糖相当量を総計することによって求めることができる。なお、蔗糖の甘味1に対する各種甘味成分の甘味の相対比は、公知の砂糖甘味換算表(マクマリー有機化学(第7版)988頁)から求めることができる。
【0023】
その他、本発明の飲料には、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲であれば、上記成分に加え、ミルク入り飲料に一般的に配合される成分、例えば、pH調整剤、酸化防止剤、酸味料、エキス類、香料、着色料、ビタミン、乳化剤、増粘安定剤等を適宜添加することができる。
【0024】
(容器詰飲料)
本発明のミルク入り飲料は、容器詰飲料の形態である。ここで、容器詰飲料とは、RTD飲料(RTD=Ready To Drink:蓋を開けてすぐ飲めるPETボトル、缶、瓶、紙などの容器詰飲料)と同義で用いられる。RTD飲料には一貫して冷蔵保存される飲料と常温保存が可能な飲料の2種類があるが、本発明の飲料はいずれでもよい。本発明の効果の顕著さからは、常温保存が可能なタイプのRTD飲料が好適である。常温保存が可能な飲料は、通常、100℃以上の加熱殺菌を経て製造されるが、この高温加熱により、ミルク入り飲料の乳感が低減しやすく、乳感の不足という課題がより顕著になるからである。乳感が低減するような加熱殺菌方法としては、特に制限されないが、例えば、高温短時間殺菌(UHT;120~150℃、1~120秒)、レトルト殺菌(110℃~130℃、10~30分)などを挙げることができる。
【実施例0025】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0026】
実施例の飲料におけるたんぱく質含量は、ケルダール法にて測定した。GABA含有量は、測定サンプルを採取して遠心分離した後、その上清を0.02Nの塩酸で処理したものを、0.45μmのフィルターをつけたシリンダを用いてろ過し、これを全自動アミノ
酸分析装置(日本電子(株)社製、JLC-500/V)によって定量することにより測定した。
【0027】
実験例1 ミルク入りコーヒー飲料の調製(1)
焙煎度L値23のコーヒー豆を中挽きに粉砕した後、攪拌を行いながら、コーヒー豆の質量の約10倍の質量の90℃の熱水で、15分間抽出を行った。抽出終了後、市販の紙製の濾過フィルターで抽出液を濾過し、濾液を速やかに25℃以下程度まで冷却した。このコーヒー抽出液(Brixは2.5)に、表1に示すGABA(純度99%以上)及び蔗糖を加えて完全に溶解させた後、牛乳及び乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル)を加え、全量が1000gとなるように加水してpH調整剤(炭酸水素ナトリウム)でpHを6.9に調整して調合液とした。この調合液を120kg/cmでホモゲナイズ処理して均質化し、90℃に昇温後、190mL缶に充填し、レトルト殺菌(124℃、20分)を行い、表2に示す成分を含有する容器詰ミルク入りコーヒー飲料(pH6.5)を製造した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
得られた容器詰ミルク入りコーヒー飲料について、専門パネル5名による官能評価を行った。評価は、GABAを配合しないコーヒー飲料(陰性コントロール)(サンプルNo.1-1)の乳感を0点とし、またGABAを配合せずに牛乳を100g/1000gか
ら150g/1000gに増量配合したコーヒー飲料(陽性コントロール)(サンプルNo.1-2)の乳感を2点とし、調製した容器詰ミルク入りコーヒー飲料の乳感(0点)
から陽性コントロールの乳感(2点)に近づき、両者の中間程度である場合を1点とした。すなわち、
0点:陰性コントロールと同程度の乳感
1点:陰性コントロールよりも強いが、陽性コントロールよりは弱い乳感が感じられる
2点:陽性コントロールとほぼ同じか、それ以上の強い乳感が感じられる
として、評価したパネルの人数をカウントした。
【0031】
結果を表3に示す。100g/1000gの牛乳を含むミルク入りコーヒー飲料に、GABAを25mg/100g以上含有するように添加することにより、150g/1000gの牛乳を配合したミルク入り飲料と同様の乳感が付与されると過半数が判断した。これは、乳たんぱく質が約0.3g/100gである乳成分が低濃度に抑えられたコーヒー飲料において、GABAを25~70mg/100g配合することによって、飲料の中味と後味の厚みと広がりを改善し、乳感が増強されたことを示唆する。60mg/100gのGABAを含有する飲料と70mg/100gのGABAを含有する飲料とでは、その乳感の強さに大差がなかった。
【0032】
【表3】
【0033】
実験例2 ミルク入りコーヒー飲料の調製(2)
コーヒー原料としてコーヒーエキス、乳成分として牛乳、脱脂粉乳、生クリーム(乳脂47%)、甘味成分として蔗糖を用いた。表4に示す処方のコーヒーエキス、乳成分、甘味成分、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル)、pH調整剤(炭酸カリウム)、香料にGABA(純度99%以上)を加えて完全に溶解させ全量が1000gとなるように加水して調合液とした。この調合液を150kg/cmでホモゲナイズ処理して均質化し、高温短時間殺菌(110℃、1分)を行い、直ちに10℃以下に冷却し、プラスチック製のチルドカップに180mLずつ充填し、表5に示す成分を含有する容器詰ミルク入りコーヒー飲料(pH7.0)を製造した。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
得られた容器詰ミルク入りコーヒー飲料について、実験例1と同様に官能評価を行った。すなわち、GABAを配合しないコーヒー飲料(陰性コントロール)(サンプルNo.
2-1)の乳感を0点、GABAを配合せずに脱脂粉乳を5g/1000gから10g/1000gに増量配合したコーヒー飲料(陽性コントロール)(サンプルNo.2-2)
の乳感を2点とし、調製した容器詰ミルク入りコーヒー飲料について、それぞれ評価したパネルの人数をカウントした。結果を表6に示す。乳たんぱく質が約0.6g/100gである乳成分が低濃度に抑えられたコーヒー飲料において、GABAを25~70mg/100g配合することによって、飲料の中味と後味の厚みと広がりが改善され、乳感が増強された。
【0037】
【表6】
【0038】
実験例3 ミルク入りココア飲料の調製(1)
60℃の温水に、表7に示す量のココアパウダー(脂肪15%含有)、甘味成分、乳成分、及びGABAを添加し溶解した。また、60℃の温水に表7に示す量の微結晶セルロース及び乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル)を添加し溶解した。これら2つの溶液を混合攪拌後、120kg/cmでホモゲナイズ処理して均質化して140℃で2秒間殺菌処理し、直ちに25℃以下に冷却し、紙パック容器に200mLずつ充填し、表8に示す成分を含有する容器詰ミルク入りココア飲料(pH7.0)を製造した。
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】
得られた容器詰ミルク入りココア飲料について、実験例1と同様に官能評価を行った。すなわち、GABAを配合しないココア飲料(陰性コントロール)(サンプルNo.3-
1)の乳感を0点、GABAを配合せずに全粉乳を10g/1000gから16g/1000gに増量配合したココア飲料(陽性コントロール)(サンプルNo.3-2)の乳感
を2点とし、調製した容器詰ミルク入りココア飲料について、それぞれ評価したパネルの人数をカウントした。結果を表9に示す。ココア飲料においても、GABAを25mg/100g以上配合することによって、飲料の中味と後味の厚みと広がりが改善され、乳感が増強された。
【0042】
【表9】
【0043】
実験例4 ミルク入りココア飲料の調製(2)
甘味成分及び乳成分を表10に示す配合にする以外は、実験例3と同様にして、ミルク入りココア飲料を調製した。GABAを配合しないココア飲料(サンプルNo.3-6)
とGABAを25mg/100g以上配合したココア飲料(サンプルNo.3-7)につ
いて、どちらが乳感を強く感じるかを官能評価した。パネル全員(5名)がGABAを配合した飲料の乳感が強いと評価した。
【0044】
【表10】
【0045】
【表11】
【0046】
実験例5 ミルク入り紅茶飲料の調製
紅茶葉20gを600gの熱水(90℃)で、5分間抽出を行った。抽出終了後、メッシュで固液分離し、濾液を速やかに25℃以下まで冷却した後、遠心分離処理して紅茶抽出液を得た。この紅茶抽出液に表12に示す量の甘味成分、乳成分、その他各種成分を加えて全量を1000gとし、高圧ホモジナイザーにて150kg/cmの圧力で均質化して141℃、30秒にてプレート殺菌を行い、PET容器に充填し、容器詰ミルク入り紅茶飲料(pHは6.4)を製造した。
【0047】
【表12】
【0048】
【表13】
【0049】
得られた容器詰ミルク入り紅茶飲料について、実験例1と同様に官能評価を行った。すなわち、GABAを配合しない紅茶飲料(陰性コントロール)(サンプルNo.4-1)
の乳感を0点、GABAを配合せずに乳成分を増量配合した紅茶飲料(陽性コントロール)(サンプルNo.4-2)の乳感を2点とし、調製した容器詰ミルク入り紅茶飲料につ
いて、それぞれ評価したパネルの人数をカウントした。結果を表14に示す。紅茶飲料においても、GABAを25mg/100g以上配合することによって、飲料の中味と後味の厚みと広がりが改善され、乳感が増強された。
【0050】
【表14】
【0051】
実験例6 酸性乳飲料の調製
70℃の温水に、表15に示す量の甘味成分及び安定剤(HMペクチン)を加えて溶解した。この溶液と、乳成分、GABA、その他各種成分を加えて全量を1000gとし、よく攪拌した後、120kg/cmでホモゲナイズ処理して均質化して120℃で4秒間殺菌処理し、直ちに25℃以下に冷却し、紙パック容器に200mLずつ充填し、表16に示す成分を含有するヨーグルト風味の酸性乳飲料(pH3.9)を製造した。なお、乳清たんぱくには、ホエイたんぱく濃縮物(WPC/80、Nutra Food Ingredients, LLC)を用いた。
【0052】
【表15】
【0053】
【表16】
【0054】
得られた酸性乳飲料について、実験例1と同様に官能評価を行った。すなわち、GABAを配合しない酸性乳飲料(陰性コントロール)(サンプルNo.5-1)の乳感を0点
、GABAを配合せずに乳成分を増量配合した酸性乳飲料(陽性コントロール)(サンプルNo.5-2)の乳感を2点とし、調製した酸性乳飲料について、それぞれ評価したパ
ネルの人数をカウントした。結果を表17に示す。酸性乳飲料においても、GABAを25mg/100g以上配合することによって、飲料の中味と後味の厚みと広がりが改善され、乳感が増強された。
【0055】
【表17】