(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177294
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】レジストパターンの形成方法及び感放射線性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241212BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024172496
(22)【出願日】2024-10-01
(62)【分割の表示】P 2022501692の分割
【原出願日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2020026009
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 一樹
(72)【発明者】
【氏名】錦織 克聡
(72)【発明者】
【氏名】大澤 壮祐
(72)【発明者】
【氏名】玉田 美樹
(72)【発明者】
【氏名】白谷 宗大
(57)【要約】
【課題】次世代露光技術を適用した場合に露光工程における感度や解像度等において優れた性能を有するレジストパターンの形成方法及び感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A2)EUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含有する樹脂、(B)溶剤、及び、(C)感放射線性酸発生剤を含有し、前記感放射線性樹脂組成物中、前記(C)感放射線性酸発生剤は(B)溶剤以外の成分の合計に対して0.1質量%以下である、感放射線性樹脂組成物であって、
前記(A2)樹脂は、(A1)感放射線性酸発生剤の非存在下でのEUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含む構造単位(a2)を有し、
前記構造単位(a2)は、三級アルキルエステル部分を有する構造単位である、
感放射線性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A2)EUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含有する樹脂、(B)溶剤、及び、(C)感放射線性酸発生剤を含有し、前記感放射線性樹脂組成物中、前記(C)感放射線性酸発生剤は(B)溶剤以外の成分の合計に対して0.1質量%以下である、感放射線性樹脂組成物であって、
前記(A2)樹脂は、(A1)感放射線性酸発生剤の非存在下でのEUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含む構造単位(a2)を有し、
前記構造単位(a2)は、三級アルキルエステル部分を有する構造単位である、
感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
(A2)EUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含有する樹脂、及び(B)溶剤のみからなる、感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A2)樹脂における電子線(EB)露光により解離する基は、第三級アルキルエステル部分を有する構造単位である、請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A2)解離する基を含有する樹脂は、解離してカルボン酸構造を生じる基を含有する樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A2)解離する基を含有する樹脂は、下記式(2)で表される構造単位を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化1】
前記式(2)中、R
7は、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。R
8は、水素原子、又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R
9及びR
10は、それぞれ独立して、フッ素原子で置換若しくは非置換の炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、フッ素原子で置換若しくは非置換の炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、若しくは炭素数5~20の1価の芳香族炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子とともに構成される、フッ素原子で置換若しくは非置換の炭素数3~20の2価の脂環式基を表す。また、R
8~R
10のいずれか、及び/又は、前記脂環式基が存在する場合の当該脂環式基において、不飽和結合を有していてもよい。また、R
8~R
10のいずれかのうち複数が、共に1つの脂環式構造を形成する場合も含む。
【請求項6】
前記R9及びR10は、互いに合わせられこれらが結合する炭素原子とともに構成される、炭素数3~20の2価の飽和又は不飽和の脂環式基である、請求項5に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
前記R8は、水素原子、フッ素原子で置換若しくは非置換の炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、又は、炭素数5~20の1価の芳香族炭化水素基である、請求項5又は6に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(A2)解離する基を含有する樹脂は、解離してカルボン酸構造を生じる基を有する構造単位と、フェノール性水酸基を有する構造単位、及び、極性基を有する構造単位から選ばれる少なくとも一種の構造単位とを含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
前記極性基を有する構造単位が、アルコール性水酸基を有する構造単位、ラクトン構造を有する構造単位、環状カーボネート構造を有する構造単位、及び、スルトン構造を有する構造単位から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項8に記載の感放射線性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターンの形成方法及びそれに用いることができる感放射線性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子における微細な回路形成にレジスト組成物を用いるフォトリソグラフィー技術が利用されている。代表的な手順として、例えば、レジスト組成物の被膜に対するマスクパターンを介した放射線照射による露光で酸を発生させ、その酸を触媒とする反応により露光部と未露光部とにおいて樹脂のアルカリ系や有機系の現像液に対する溶解度の差を生じさせることで、基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
上記フォトリソグラフィー技術ではArFエキシマレーザー等の短波長の放射線を用いたり、この放射線と液浸露光法(リキッドイマージョンリソグラフィー)とを組み合わせたりしてパターン微細化を推進している。次世代技術として、電子線、X線及びEUV(極端紫外線)等のさらに短波長の放射線の利用が図られており、こうした放射線の吸収効率を高めたスチレン系の樹脂を含むレジスト材料も検討されつつある。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の次世代技術においても、感度や解像度等の点で従来と同等以上のレジスト諸性能が要求される。しかしながら、既存の感放射線性樹脂組成物ではそれらの特性は十分なレベルで得られていない。
【0006】
本発明は、次世代技術を適用した場合に感度や解像度を十分なレベルで発揮可能な感放射線性樹脂組成物及びレジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、本課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記構成を採用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一実施形態において、
(C)感放射線性酸発生剤の含有量が0.1質量%以下であるレジスト膜を形成する工程(1)、
上記レジスト膜をEUV、又は、電子線(EB)露光する工程(2)、及び、
上記工程(2)で露光されたレジスト膜を現像する工程(3)を含む、レジストパターンの形成方法に関する。
【0009】
本発明のレジストパターンの形成方法は、(C)感放射線性酸発生剤の含有量が0.1質量%以下であるレジスト膜を形成する工程(1)を含むため、露光工程における感度や解像度等を優れたレベルで発揮可能となる。上記効果発現の作用機序として、必ずしもこの推察によって本発明の権利範囲を限定するものではないが、レジスト膜における(C)感放射線性酸発生剤の含有量を0.1質量%以下とすることにより、レジスト膜の構成成分が単純化することで均一性が向上したり、露光工程時に発生した酸による露光部、未露光部境界面での悪影響が抑制されたりした結果、レジスト諸性能が向上したものと推察される。
【0010】
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、一実施形態において、
上記工程(1)において、レジスト膜は(A)感放射線性樹脂組成物により形成され、上記感放射線性樹脂組成物は、(A1)感放射線性酸発生剤の非存在下でのEUV、又は、電子線(EB)露光により可溶性が変化する樹脂を含むことが好ましい。上記構成を有することにより、従来のような(C)感放射線性酸発生剤を実質的に含まずとも従来の露光工程等でレジスト膜として機能することができ、その結果、より確実にレジスト諸性能が向上したものとなりうる。
【0011】
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、一実施形態において、
上記工程(1)において、レジスト膜は(A)感放射線性樹脂組成物により形成され、上記(A)感放射線性樹脂組成物中、上記(C)感放射線性酸発生剤は(B)溶剤以外の成分の合計に対して0.1質量%以下である、とすることが好ましい。上記構成を有することにより、(C)感放射線性酸発生剤を実質的に含まないレジスト膜をより簡便に形成でき、より確実にレジスト諸性能が向上したものとなりうる。
【0012】
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、一実施形態において、
上記工程(1)において、レジスト膜は(A)感放射線性樹脂組成物により形成され、上記(A)感放射線性樹脂組成物は、感放射線性酸発生剤を含有しない、とすることが好ましい。上記構成を有することにより、(C)感放射線性酸発生剤を実質的に含まないレジスト膜をより簡便に形成でき、より確実にレジスト諸性能が向上したものとなりうる。
【0013】
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、一実施形態において、
上記(A1)可溶性が変化する樹脂は、水溶性又はアルカリ可溶性に変化する樹脂である、とすることが好ましい。上記構成を有することにより、より確実にレジスト諸性能が向上したものとなりうる。
【0014】
一方、本発明は、他の実施形態として、
(A2)EUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含有する樹脂、(B)溶剤、及び、(C)感放射線性酸発生剤を含有し、上記感放射線性樹脂組成物中、上記(C)感放射線性酸発生剤は(B)溶剤以外の成分の合計に対して0.1質量%以下である、感放射線性樹脂組成物に関する。
【0015】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、(A2)EUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含有する樹脂を含むとともに、上記感放射線性樹脂組成物中、上記(C)感放射線性酸発生剤は(B)溶剤以外の成分の合計に対して0.1質量%以下であるため、露光工程における感度や解像度等を優れたレベルで発揮可能となる。上記効果発現の作用機序として、必ずしもこの推察によって本発明の権利範囲を限定するものではないが、上記感放射線性樹脂組成物中、(B)溶剤以外の成分の合計に対して(C)感放射線性酸発生剤の含有量を0.1質量%以下とすることにより、レジスト膜の構成成分が単純化することで均一性が向上したり、露光工程時に発生した酸による露光部、未露光部境界面での悪影響が抑制されたりした結果、レジスト諸性能が向上したものと推察される。
【0016】
また、本発明の感放射線性樹脂組成物は、一実施形態において、
(A2)EUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含有する樹脂、及び(B)溶剤のみからなることが好ましい。上記構成を有することにより、従来のような(C)感放射線性酸発生剤を実質的に含まずとも従来の露光工程等でレジスト膜として機能することができ、その結果、より確実にレジスト諸性能が向上したものとなりうる。
【0017】
また、また、本発明の感放射線性樹脂組成物は、一実施形態において、
上記(A2)解離する基を含有する樹脂は、解離してカルボン酸構造を生じる基を含有する樹脂であることが好ましい。上記構成を有することにより、従来のような(C)感放射線性酸発生剤を実質的に含まずとも従来の露光工程等でレジスト膜として機能することができ、その結果、より確実にレジスト諸性能が向上したものとなりうる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
<(A)感放射線性樹脂組成物>
本実施形態に係る(A)感放射線性樹脂組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、所定の樹脂(A0)、及び(B)溶剤を含む。上記組成物は、本発明の効果を損なわない限り、他の任意成分を含んでいてもよい。
【0020】
(樹脂(A0))
本発明における樹脂(A0)は、感放射線性酸発生剤を実質的に含まなくても、EUV、又は、電子線(EB)露光等により現像液への可溶性が変化する等により、露光工程や現像工程でレジスト膜として利用可能な樹脂である。樹脂(A0)を用いることにより、従来のような露光感放射線性酸発生剤から露光によって発生する酸に実質的に依存することなく、露光工程や現像工程でレジスト膜として利用可能となる。そして、レジスト膜の構成成分が単純化することで均一性が向上したり、露光工程時に発生した酸による露光部、未露光部境界面での悪影響が抑制されたりした結果、レジスト諸性能が向上したものとなりうる。
【0021】
本発明において、樹脂(A0)として、例えば、(A1)感放射線性酸発生剤の非存在下でのEUV、又は、電子線(EB)露光により可溶性が変化する樹脂をあげることができる。
【0022】
本発明において、(A1)感放射線性酸発生剤の非存在下でのEUV、又は、電子線(EB)露光により可溶性が変化する樹脂とは、従来のような露光感放射線性酸発生剤から露光によって発生する酸に実質的に依存することなく、EUV、又は、電子線(EB)露光により現像液への可溶性が変化する樹脂をいう。また、上記「可溶性が変化する」とは、現像液への溶解性が増加、又は、低下する性質があげられる。
【0023】
また、上記(A1)可溶性が変化する樹脂として、例えば、水溶性又はアルカリ可溶性に変化する樹脂をあげることができる。上記水溶性又はアルカリ可溶性に変化する樹脂としては、露光により、例えば、水酸基やカルボキシル基、アミノ基、イオン性基、スルホ基等を樹脂構造中に再生又は生成する樹脂等をあげることができる。
【0024】
また、本発明において、樹脂(A0)として、例えば、(A2)EUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含有する樹脂をあげることができる。
【0025】
本発明において、(A2)EUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含有する樹脂とは、従来のような露光感放射線性酸発生剤から露光によって発生する酸に実質的に依存することなく、EUV、又は、電子線(EB)露光により樹脂構造において脱離反応等により解離する基を含有する樹脂をいう。また、上記「解離する基」とは、例えば、上記露光により当該基が解離することで水酸基やカルボキシル基、アミノ基、イオン性基、スルホ基等を生じうる基をあげることができる。
【0026】
また、(A2)EUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含有する樹脂として、例えば、解離してカルボン酸構造を生じる基を含有する樹脂や、解離して水酸基構造を生じる基を含有する樹脂をあげることができる。また、解離して生じる上記カルボン酸構造とは、例えば、カルボキシル基(-COOH)やその塩(カルボキシレート基、-COO-)をあげることができる。また、解離して生じる上記水酸基構造とは、アルコール性水酸基やフェノール性水酸基(-OH)とその塩(-O-)等をあげることができる。
【0027】
また、上記(A2)解離する基を含有する樹脂は、例えば、解離してカルボン酸構造を生じる基を有する構造単位を含有するものや、解離して水酸基構造を生じる基を有する構造単位をあげることができる。好ましい例としては、解離してカルボン酸構造を生じる基を有する構造単位と、フェノール性水酸基を有する構造単位、及び、極性基を有する構造単位から選ばれる少なくとも一種の構造単位とを含有するものをあげることができる。
【0028】
また、上記極性基を有する構造単位が、例えば、アルコール性水酸基を有する構造単位、ラクトン構造を有する構造単位、環状カーボネート構造を有する構造単位、及び、スルトン構造を有する構造単位から選ばれる少なくとも一種を含むものを、好ましい例としてあげることができる。
【0029】
また、本発明において、樹脂(A0)として、フェノール性水酸基を含む構造単位(a1)及び感放射線性酸発生剤の非存在下でのEUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基を含む構造単位(a2)を有する重合体の集合体をあげることができる(以下、この樹脂を「ベース樹脂」ともいう。)。
【0030】
上記ベース樹脂たる樹脂(A0)は、構造単位(a1)及び構造単位(a2)以外のその他の構造単位を有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0031】
[構造単位(a1)]
構造単位(a1)は、フェノール性水酸基を含む構造単位である。樹脂(A0)は、構造単位(a1)及び必要に応じその他の構造単位を有することで、現像液への溶解性をより適度に調整することができ、その結果、上記感放射線性樹脂組成物の感度や解像度等のレジスト諸性能等をより向上させることができる。また、レジストパターン形成方法における露光工程で照射する放射線として、EUV、電子線等を用いる場合には、樹脂(A0)が構造単位(a1)を有することで、構造単位(a1)はエッチング耐性の向上と、露光部と未露光部との間の現像液溶解性の差(溶解コントラスト)の向上に寄与する。特に、電子線やEUVといった波長50nm以下の放射線による露光を用いるパターン形成に好適に適用することができる。
【0032】
上記構造単位(a1)としては、例えば、下記式(af)で表される構造単位等をあげることができる。
【0033】
【0034】
上記式(af)中、RAF1は、水素原子又はメチル基である。LAFは、単結合、-COO-、-O-又は-CONH-である。RAF2は、炭素数1~20の1価の有機基である。nf1は、0~3の整数である。nf1が2又は3の場合、複数のRAF2は同一でも異なっていてもよい。nf2は、1~3の整数である。ただし、nf1+nf2は、5以下である。nafは、0~2の整数である。
【0035】
LAFとしては、単結合及び-COO-であることが好ましい。
【0036】
構造単位(a1)を与える単量体の共重合性の観点から、LAFが単結合の場合には上記RAF1が水素原子であることが好ましい。LAFが-COO-の場合には上記RAF1がメチル基であることが好ましい。
【0037】
なお、樹脂(A0)における有機基とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0038】
上記RAF2で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間又は結合手側の末端に2価のヘテロ原子含有基を含む基、当該基及び上記炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等をあげることができる。
【0039】
上記RAF2で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などの鎖状炭化水素基;
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基;
シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等のシクロアルケニル基などの脂環式炭化水素基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などの芳香族炭化水素基等をあげることができる。
【0040】
上記RAF2としては、鎖状炭化水素基、シクロアルキル基が好ましく、アルキル基及びシクロアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基及びアダマンチル基がさらに好ましい。
【0041】
上記2価のヘテロ原子含有基としては、例えば、-O-、-CO-、-CO-O-、-S-、-CS-、-SO2-、-NR’-、これらのうちの2つ以上を組み合わせた基等をあげることができる。R’は、水素原子又は1価の炭化水素基である。
【0042】
上記1価のヘテロ原子含有基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、スルファニル基(-SH)等をあげることができる。
【0043】
これらの中で、1価の鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0044】
上記nf1としては、0~2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0045】
上記nf2としては、1及び2が好ましく、1がより好ましい。
【0046】
上記nafとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0047】
本発明の感放射線性樹脂組成物においては、上記構造単位(a1)が、ヒドロキシスチレン由来の構造単位とすることができる。
【0048】
上記構造単位(a1)としては、下記式(a1-1)~(a1-6)で表される構造単位等であることが好ましい。
【0049】
【0050】
上記式(a1-1)~(a1-6)中、RAF1は、上記式(af)と同様である。
【0051】
これらの中で、構造単位(a1-1)及び(a1-2)が好ましく、(a1-1)がより好ましい。
【0052】
樹脂(A0)中における構造単位(a1)について、構造単位(a1)の含有割合の下限としては、樹脂(A0)を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、25モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましく、60モル%が特に好ましい。構造単位(a1)の含有割合を上記範囲とすることで、上記感放射線性樹脂組成物は、感度や解像度等のレジスト諸性能等をさらに向上させうることができる。
【0053】
ヒドロキシスチレン等のフェノール性水酸基を有するモノマーを直接ラジカル重合させようとすると、フェノール性水酸基の影響により重合が阻害される場合がある。この場合、アルカリ解離性基等の保護基によりフェノール性水酸基を保護した状態で重合させておき、その後加水分解を行って脱保護することにより構造単位(a1)を得るようにすることができる。加水分解により構造単位(a1)を与える構造単位としては、下記式(1)で表されることが好ましい。
【0054】
【0055】
上記式(1)中、R11は、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。R12は、炭素数1~20の1価の炭化水素基、又はアルコキシ基である。R12の炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、炭素数1~20の1価の炭化水素基をあげることができる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等をあげることができる。
【0056】
上記R12としては、アルキル基及びアルコキシ基が好ましく、中でもメチル基、tert-ブトキシ基がより好ましい。
【0057】
[構造単位(a2)]
構造単位(a2)は、感放射線性酸発生剤の非存在下でのEUV、又は、電子線(EB)露光により可溶性が変化する基、及び、感放射線性酸発生剤の非存在下でのEUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基等である。
【0058】
本発明において「感放射線性酸発生剤の非存在下」とは、感放射線性酸発生剤が存在しない、ないし、実質的に存在しない状況をいう。構造単位(a2)としては、例えば、第三級アルキルエステル部分を有する構造単位、フェノール性水酸基の水素原子が第三級アルキル基で置換された構造を有する構造単位、アセタール結合を有する構造単位等をあげることができるが、上記感放射線性樹脂組成物のパターン形成性の向上の観点から、下記式(2)で表される構造単位(以下、「構造単位(a2-1)」ともいう)が好ましい。
【0059】
前段落で例示した構造単位は、本技術分野においては酸解離性基として知られている構造である。なお、本発明において、「酸解離性基」とは、カルボキシ基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、スルホ基等が有する水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する性質を有する基をいう。上述のように、本発明においては、露光工程時の酸の存在や、露光により感放射線性酸発生剤から発生する酸によって上記構造単位(a2)が脱離などの解離や可溶性変化が起こることを必要としているものではない。上記感放射線性樹脂組成物は、樹脂が構造単位(a2)を有することで、パターン形成性に優れる。
【0060】
【0061】
上記式(2)中、R7は、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。R8は、水素原子、又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R9及びR10は、それぞれ独立して、フッ素原子で置換若しくは非置換の炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、フッ素原子で置換若しくは非置換の炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、若しくは炭素数5~20の1価の芳香族炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子とともに構成される、フッ素原子で置換若しくは非置換の炭素数3~20の2価の脂環式基を表す。また、R8~R10のいずれか、及び/又は、上記脂環式基が存在する場合の当該脂環式基において、不飽和結合を有していてもよい。また、R8~R10のいずれかのうち複数が、共に1つの脂環式構造を形成する場合も含む。
【0062】
上記R7としては、構造単位(a2-1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0063】
上記R8で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等をあげることができる。
【0064】
上記R9及びR10で表される炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~20の直鎖若しくは分岐鎖飽和炭化水素基、又は炭素数1~20の直鎖若しくは分岐鎖不飽和炭化水素基をあげることができる。
【0065】
上記R9及びR10で表される炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、単環若しくは多環の飽和炭化水素基、又は単環若しくは多環の不飽和炭化水素基をあげることができる。単環の飽和炭化水素基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が好ましい。多環のシクロアルキル基としてはノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の有橋脂環式炭化水素基が好ましい。なお、有橋脂環式炭化水素基とは、脂環を構成する炭素原子のうち互いに隣接しない2つの炭素原子間が1つ以上の炭素原子を含む結合連鎖で結合された多環性の脂環式炭化水素基をいう。
【0066】
上記R9及びR10で表される炭素数5~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などをあげることができる。
【0067】
上記R8としては、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0068】
また、R8~R10のいずれか、及び/又は、上記脂環式基が存在する場合の当該脂環式基において、不飽和結合を有していてもよい。
【0069】
また、R8~R10のいずれかのうち複数が、共に1つの脂環式構造を形成する場合も含む。
【0070】
上記R8~R10のいずれか複数が互いに組み合わさり、少なくとも1つ以上の環状構造を有する場合、鎖状炭化水素基、又は脂環式炭化水素基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子とともに構成される炭素数3~20の2価の脂環式基は、上記炭素数の単環又は多環の脂環式炭化水素の炭素環を構成する同一炭素原子から2個の水素原子を除いた基であれば特に限定されない。単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基のいずれでもよく、多環式炭化水素基としては、有橋脂環式炭化水素基及び縮合脂環式炭化水素基のいずれでもよく、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれでもよい。なお、縮合脂環式炭化水素基とは、複数の脂環が辺(隣接する2つの炭素原子間の結合)を共有する形で構成された多環性の脂環式炭化水素基をいう。
【0071】
単環の脂環式炭化水素基のうち飽和炭化水素基としては、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、シクロオクタンジイル基等が好ましく、不飽和炭化水素基としてはシクロペンテンジイル基、シクロヘキセンジイル基、シクロヘプテンジイル基、シクロオクテンジイル基、シクロデセンジイル基等が好ましい。多環の脂環式炭化水素基としては、有橋脂環式飽和炭化水素基が好ましく、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,2-ジイル基(ノルボルナン-2,2-ジイル基)、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,2-ジイル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-2,2-ジイル基(アダマンタン-2,2-ジイル基)等が好ましい。
【0072】
上記L1で表される2価の連結基としては、例えば、アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、アルケンジイル基、*-RLAO-、*-RLBCOO-等をあげることができる(*は酸素側の結合手を表す。)。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0073】
上記アルカンジイル基としては、炭素数1~8のアルカンジイル基が好ましい。
【0074】
上記シクロアルカンジイル基としては、例えば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の単環のシクロアルカンジイル基;ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の多環のシクロアルカンジイル基等をあげることができる。上記シクロアルカンジイル基としては、炭素数5~12のシクロアルカンジイル基が好ましい。
【0075】
上記アルケンジイル基としては、例えば、エテンジイル基、プロペンジイル基、ブテンジイル基等をあげることができる。上記アルケンジイル基としては、炭素数2~6のアルケンジイル基が好ましい。
【0076】
上記*-RLAO-のRLAとしては、上記アルカンジイル基、上記シクロアルカンジイル基、上記アルケンジイル基等をあげることができる。上記*-RLBCOO-のRLBとしては、上記アルカンジイル基、上記シクロアルカンジイル基、上記アルケンジイル基、アレーンジイル基等をあげることができる。アレーンジイル基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等をあげることができる。上記アレーンジイル基としては、炭素数6~15のアレーンジイル基が好ましい。
【0077】
これらの中で、R8は炭素数1~4のアルキル基であり、R9及びR10が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子とともに構成される脂環構造が多環又は単環のシクロアルカン構造であることが好ましい。L1は単結合又は*-RLAO-であることが好ましい。RLAとしてはアルカンジイル基が好ましい。
【0078】
また、上記構造単位(a2-1)としては、例えば、下記式(2-1)~(2-6)で表される構造単位(以下、「構造単位(a2-1-1)~(a2-1-6)」ともいう)等をあげることができる。
【0079】
【0080】
上記式(a2-1-1)~(a2-1-6)中、R7~R10は、上記式(2)と同様である。i及びjは、それぞれ独立して、1~4の整数である。また式(a2-1-3)におけるシクロアルキル環は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0081】
上記式(a2-1-5)~(a2-1-6)中、nAは、0又は1である。
【0082】
i及びjとしては、1が好ましい。R8~R10としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基又はフェニル基が好ましい。
【0083】
また、上記構造単位(a2-1)としては、下記式(2-7)~(2-8)で表される構造単位(以下、「構造単位(a2-1-7)~(a2-1-8)」ともいう)等をあげることもできる。
【0084】
【0085】
上記式(2-7)~(2-8)中、Rαfはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。Rβfは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5の鎖状アルキル基である。h1は、1~4の整数である。
【0086】
上記Rβfとしては、水素原子、メチル基、又はエチル基が好ましい。h1としては1又は2が好ましい。
【0087】
また、上記Rβfの複数がともに1つの脂環式構造を形成していてもよい。例えば、2つのRβfがともに1つのシクロヘキサン構造やベンゼン環構造を形成する例をあげることができる。
【0088】
構造単位(a2-1)としては、これらの中で、構造単位(a2-1-1)、構造単位(a2-1-2)、(a2-1-3)、(a2-1-4)、(a2-1-7)が好ましく、1-アルキルシクロアルキル基を有する構造単位、1-アリールシクロアルキル基を有する構造単位、シクロアルケニル基を有する構造単位、1-アルキルアダマンチル基を有する構造単位、アリールアルキル基を有する構造単位、置換又は非置換のシクロアルキルアルキル基を有する構造単位がより好ましい。
【0089】
樹脂(A0)は、構造単位(a2)を1種又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0090】
構造単位(a2)の含有割合の下限としては、ベース樹脂たる樹脂(A0)を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、30モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、75モル%がさらに好ましく、70モル%が特に好ましい。構造単位(a2)の含有割合を上記範囲とすることで、上記感放射線性樹脂組成物のパターン形成性をより向上させることができる。
【0091】
[構造単位(a3)]
構造単位(a3)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位である。樹脂(A0)が構造単位(a1)、構造単位(a2)に加えて構造単位(a3)をさらに有することで、極性が適度なものとなりうる。その結果、上記感放射線性樹脂組成物は、化学増幅型レジスト材料として、より微細かつ断面形状の矩形性に優れたレジストパターンを形成することができる。ここで、ラクトン構造とは、-O-C(O)-で表される基を含む1つの環(ラクトン環)を有する構造をいう。また、環状カーボネート構造とは、-O-C(O)-O-で表される基を含む1つの環(環状カーボネート環)を有する構造をいう。スルトン構造とは、-O-S(O)2-で表される基を含む1つの環(スルトン環)を有する構造をいう。
【0092】
構造単位(a3)としては、例えば、下記式で表される構造単位等をあげることができる。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
上記式中、RALは水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。
【0098】
上記RALとしては、構造単位(a3)を与える単量体の共重合性の観点から水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0099】
構造単位(a3)としては、これらの中で、ノルボルナンラクトン構造を含む構造単位オキサノルボルナンラクトン構造を含む構造単位、γ-ブチロラクトン構造を含む構造単位、エチレンカーボネート構造を含む構造単位、及びノルボルナンスルトン構造を含む構造単位が好ましく、ノルボルナンラクトン-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、オキサノルボルナンラクトン-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、シアノ置換ノルボルナンラクトン-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、ノルボルナンラクトン-イルオキシカルボニルメチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、ブチロラクトン-3-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、ブチロラクトン-4-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、3,5-ジメチルブチロラクトン-3-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、4,5-ジメチルブチロラクトン-4-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、1-(ブチロラクトン-3-イル)シクロヘキサン-1-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、エチレンカーボネート-イルメチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、シクロヘキセンカーボネート-イルメチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、ノルボルナンスルトン-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、及びノルボルナンスルトン-イルオキシカルボニルメチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましい。
【0100】
樹脂(A0)が構造単位(a3)を有する場合、樹脂(A0)を構成する全構造単位に対する構造単位(a3)の含有割合の下限としては、1モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、25モル%が特に好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、70モル%が好ましく、65モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましく、55モル%が特に好ましい。上記含有割合を上記範囲とすることで、より微細かつ断面形状の矩形性に優れたレジストパターンを形成することができる。
【0101】
[構造単位(a4)]
樹脂(A0)は、上記構造単位(a1)~(a3)以外のその他の構造単位(構造単位(a4)ともいう。)を適宜有してもよい。構造単位(a4)としては、例えば、フッ素原子、アルコール性水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基等を有する構造単位などをあげることができる。これらの中で、フッ素原子を有する構造単位、アルコール性水酸基を有する構造単位及びカルボキシ基を有する構造単位が好ましく、フッ素原子を有する構造単位及びアルコール性水酸基を有する構造単位がより好ましい。
【0102】
樹脂(A0)が構造単位(a4)を有する場合、樹脂(A0)を構成する全構造単位に対する構造単位(a4)の含有割合の下限としては、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、50モル%が好ましく、40モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。その他の構造単位の含有割合を上記範囲とすることで、樹脂(A0)の現像液への溶解性をより適度にすることができる。その他の構造単位の含有割合が上記上限を超えると、パターン形成性が低下する場合がある。
【0103】
また、本発明の樹脂(A0)において、例えば、(i)アルカリ加水分解可能な基で保護されたヒドロキシスチレンモノマーを重合させた後、加水分解させて得られたヒドロキシスチレンの繰り返し構造、ならびに、(ii)ヒドロキシスチレンモノマーをそのまま重合させて得られた繰り返し構造は、いずれも上記構造単位(a1)に該当し得る。また、(iii)EUV、又は、電子線(EB)露光により解離する基で水酸基が保護されたヒドロキシスチレンモノマーを重合させて得られた繰り返し構造については上記「構造単位(a2)」に該当し得る。
【0104】
樹脂(A0)の含有量としては通常、上記感放射線性樹脂組成物の全固形分中、85質量%以上である。中でも95質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましく、99.9質量%以上がさらに好ましく、99.99質量%以上が特に好ましい。ここで「固形分」とは、上記感放射線性樹脂組成物中に含まれる成分のうち(B)溶剤を除いた全ての成分をいう。
【0105】
(樹脂(A0)の合成方法)
ベース樹脂たる樹脂(A0)は、例えば、各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤等を用い、適当な溶剤中で重合反応を行うことにより合成できる。
【0106】
上記ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等をあげることができる。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0107】
上記重合反応に使用される溶剤としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、2-ヘプタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール等のアルコール類等をあげることができる。これらの重合反応に使用される溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0108】
上記重合反応における反応温度としては、通常40℃~150℃であり、50℃~120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間~48時間であり、1時間~24時間が好ましい。
【0109】
ベース樹脂たる樹脂(A0)の分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、3,000以上15,000以下がさらに好ましく、4,000以上12,000以下が特に好ましい。樹脂(A0)のMwが上記下限未満だと、得られるレジスト膜の耐熱性が低下する場合がある。樹脂(A0)のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0110】
ベース樹脂たる樹脂(A0)のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0111】
本明細書における樹脂のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本(以上、東ソー製)
カラム温度:40℃
溶出溶剤:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0112】
(他の樹脂)
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、他の樹脂として、上記ベース樹脂よりもフッ素原子の質量含有率が大きい樹脂(以下、「高フッ素含有量樹脂」ともいう。)を含んでいてもよい。上記感放射線性樹脂組成物が高フッ素含有量樹脂を含有する場合、上記ベース樹脂に対してレジスト膜の表層に偏在化させることができ、その結果、レジスト膜表面の状態やレジスト膜中の成分分布を所望の状態に制御することができる。
【0113】
高フッ素含有量樹脂としては、例えば、下記式(3)で表される構造単位(以下、「構造単位(a5)」ともいう。)を有することが好ましい。
【化12】
【0114】
上記式(3)中、R13は、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-COO-、-SO2ONH-、-CONH-又は-OCONH-である。R14は、炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基、又は炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基である。
【0115】
上記R13としては、構造単位(a5)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0116】
上記GLとしては、構造単位(a5)を与える単量体の共重合性の観点から、単結合及び-COO-が好ましく、-COO-がより好ましい。
【0117】
上記R14で表される炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖アルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものをあげることができる。
【0118】
上記R14で表される炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基としては、炭素数3~20の単環又は多環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものをあげることができる。
【0119】
上記R14としては、フッ素化鎖状炭化水素基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基及び5,5,5-トリフルオロ-1,1-ジエチルペンチル基がさらに好ましい。
【0120】
高フッ素含有量樹脂が構造単位(a5)を有する場合、構造単位(a5)の含有割合の下限としては、高フッ素含有量樹脂を構成する全構造単位に対して、10mol%が好ましく、15mol%がより好ましく、20mol%がさらに好ましく、25mol%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、60mol%が好ましく、50mol%がより好ましく、40mol%がさらに好ましい。構造単位(a5)の含有割合を上記範囲とすることで、高フッ素含有量樹脂のフッ素原子の質量含有率をより適度に調整してレジスト膜の表層への偏在化をさらに促進することができる。
【0121】
高フッ素含有量樹脂は、構造単位(a5)以外に、下記式(f-1)で表されるフッ素原子含有構造単位(以下、構造単位(a6)ともいう。)を有していてもよい。高フッ素含有量樹脂は構造単位(f-1)を有することで、アルカリ現像液への溶解性が向上し、現像欠陥の発生を抑制することができる。
【化13】
【0122】
構造単位(a6)は、(x)アルカリ可溶性基を有する場合と、(y)アルカリの作用により解離してアルカリ現像液への溶解性が増大する基(以下、単に「アルカリ解離性基」とも言う。)を有する場合の2つに大別される。(x)、(y)双方に共通して、上記式(f-2)中、RCは水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。RDは単結合、炭素数1~20の(s+1)価の炭化水素基、この炭化水素基のRE側の末端に酸素原子、硫黄原子、-NRdd-、カルボニル基、-COO-若しくは-CONH-が結合された構造、又はこの炭化水素基が有する水素原子の一部がヘテロ原子を有する有機基により置換された構造である。Rddは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。sは、1~3の整数である。
【0123】
構造単位(a6)が(x)アルカリ可溶性基を有する場合、RFは水素原子であり、A1は酸素原子、-COO-*又は-SO2O-*である。*はRFに結合する部位を示す。W1は単結合、炭素数1~20の炭化水素基、又は2価のフッ素化炭化水素基である。A1が酸素原子である場合、W1はA1が結合する炭素原子にフッ素原子又はフルオロアルキル基を有するフッ素化炭化水素基である。REは単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。sが2又は3の場合、複数のRE、W1、A1及びRFはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位(a6)が(x)アルカリ可溶性基を有することで、アルカリ現像液に対する親和性を高め、現像欠陥を抑制することができる。(x)アルカリ可溶性基を有する構造単位(a6)としては、A1が酸素原子でありW1が1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-メタンジイル基である場合が特に好ましい。
【0124】
構造単位(a6)が(y)アルカリ解離性基を有する場合、RFは炭素数1~30の1価の有機基であり、A1は酸素原子、-NRaa-、-COO-*又は-SO2O-*である。Raaは水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。*はRFに結合する部位を示す。W1は単結合又は炭素数1~20の2価のフッ素化炭化水素基である。REは、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。A1が-COO-*又は-SO2O-*である場合、W1又はRFはA1と結合する炭素原子又はこれに隣接する炭素原子上にフッ素原子を有する。A1が酸素原子である場合、W1、REは単結合であり、RDは炭素数1~20の炭化水素基のRE側の末端にカルボニル基が結合された構造であり、RFはフッ素原子を有する有機基である。sが2又は3の場合、複数のRE、W1、A1及びRFはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位(a6)が(y)アルカリ解離性基を有することにより、アルカリ現像工程においてレジスト膜表面が疎水性から親水性へと変化する。この結果、現像液に対する親和性を大幅に高め、より効率的に現像欠陥を抑制することができる。(y)アルカリ解離性基を有する構造単位(a6)としては、A1が-COO-*であり、RF若しくはW1又はこれら両方がフッ素原子を有するものが特に好ましい。
【0125】
RCとしては、構造単位(a6)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0126】
REが2価の有機基である場合、ラクトン構造を有する基が好ましく、多環のラクトン構造を有する基がより好ましく、ノルボルナンラクトン構造を有する基がより好ましい。
【0127】
高フッ素含有量樹脂が構造単位(a6)を有する場合、構造単位(a6)の含有割合の下限としては、高フッ素含有量樹脂を構成する全構造単位に対して、10mol%が好ましく、20mol%がより好ましく、30mol%がさらに好ましく、35mol%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、90mol%が好ましく、75mol%がより好ましく、60mol%がさらに好ましい。構造単位(a6)の含有割合を上記範囲とすることで、液浸露光時のレジスト膜の撥水性をより向上させることができる。
【0128】
高フッ素含有量樹脂のMwの下限としては、1,000が好ましく、2,000がより好ましく、3,000がさらに好ましく、5,000が特に好ましい。上記Mwの上限としては、50,000が好ましく、30,000がより好ましく、20,000がさらに好ましく、15,000が特に好ましい。
【0129】
高フッ素含有量樹脂のMw/Mnの下限としては、通常1であり、1.1がより好ましい。上記Mw/Mnの上限としては、通常5であり、3が好ましく、2がより好ましく、1.7がさらに好ましい。
【0130】
高フッ素含有量樹脂の含有量の下限としては、上記感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対して、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましく、1.5質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、7質量%が特に好ましい。
【0131】
高フッ素含有量樹脂の含有量の下限としては、上記ベース樹脂100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、1.5質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、8質量部がさらに好ましく、5質量部が特に好ましい。
【0132】
高フッ素含有量樹脂の含有量を上記範囲とすることで、高フッ素含有量樹脂をレジスト膜の表層へより効果的に偏在化させることができ、その結果、液浸露光時におけるレジスト膜の表面の撥水性をより高めることができる。上記感放射線性樹脂組成物は、高フッ素含有量樹脂を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0133】
(高フッ素含有量樹脂の合成方法)
高フッ素含有量樹脂は、上述のベース樹脂の合成方法と同様の方法により合成することができる。
【0134】
((B)溶剤)
上記感放射線性樹脂組成物は、溶剤を含有する。溶剤は、少なくとも樹脂、感放射線性酸発生剤、及び、所望により含有される任意成分等を溶解又は分散可能な溶剤であれば特に限定されない。
【0135】
溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤等をあげることができる。
【0136】
アルコール系溶剤としては、例えば、
iso-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、フルフリルアルコール、シクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ジアセトンアルコール等の炭素数1~18のモノアルコール系溶剤;
エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶剤;
上記多価アルコール系溶剤が有するヒドロキシ基の一部をエーテル化した多価アルコール部分エーテル系溶剤等をあげることができる。
【0137】
エーテル系溶剤としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶剤;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶剤;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶剤;
上記多価アルコール系溶剤が有するヒドロキシ基をエーテル化した多価アルコールエーテル系溶剤等をあげることができる。
【0138】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、ブタノン、メチル-iso-ブチルケトン等の鎖状ケトン系溶剤:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶剤:
2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等をあげることができる。
【0139】
アミド系溶剤としては、例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶剤;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶剤等をあげることができる。
【0140】
エステル系溶剤としては、例えば、
酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶剤;
ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶剤;
γ-ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶剤;
ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;
ジ酢酸プロピレングリコール、酢酸メトキシトリグリコール、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、フタル酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶剤をあげることができる。
【0141】
炭化水素系溶剤としては、例えば、
n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;
ベンゼン、トルエン、ジ-iso-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶剤等をあげることができる。
【0142】
これらの中で、エステル系溶剤、ケトン系溶剤が好ましく、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶剤、環状ケトン系溶剤、ラクトン系溶剤がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトンがさらに好ましい。上記感放射線性樹脂組成物は、溶剤を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0143】
((C)感放射線性酸発生剤)
本発明の感放射線性樹脂組成物は感放射線性酸発生剤を含有していても良い。(C)感放射線性酸発生剤としては、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩がより好ましい。このようなオニウム塩化合物としては公知の化合物を用いることができる。
【0144】
また、本発明において、上記(A)感放射線性樹脂組成物中に、(C)感放射線性酸発生剤を含有する場合、(C)感放射線性酸発生剤は少ない方が望ましく、上記(A)感放射線性樹脂組成物中、例えば、上記(C)感放射線性酸発生剤は(B)溶剤以外の成分の合計に対して0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましい例としてあげることができる。一方、上記配合量の下限としては、例えば、0.0001質量%、0.00001質量%があげられるが、(C)感放射線性酸発生剤を含まない(0質量%)であることが望ましい。
【0145】
上述のように、本発明においては、露光工程時の酸の存在や、露光により感放射線性酸発生剤から発生する酸によって上記構造単位(a2)が脱離などの解離や可溶性変化が起こることを必要としているものではない。また、本発明の感放射線性樹脂組成物やレジスト膜において、(C)感放射線性酸発生剤は含まない、ないし、実質的に存在しないものとすることにより、レジスト膜の構成成分が単純化することで均一性が向上したり、露光工程時に発生した酸による露光部、未露光部境界面での悪影響が抑制されたりする。その結果、より確実にレジスト諸性能が向上したものとなりうる。よって、上記(C)感放射線性酸発生剤は本発明の感放射線性樹脂組成物やレジスト膜に含まれない、ないし、実質的に存在しないことが特に望ましい。
【0146】
(その他の任意成分)
上記感放射線性樹脂組成物は、上記成分以外にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、酸拡散制御剤、架橋剤、偏在化促進剤、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等をあげることができる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0147】
((D)酸拡散制御剤)
上記感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて、酸拡散制御剤を含有してもよい。酸拡散制御剤は、露光により感放射線性酸発生剤から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する。また、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上する。さらに、レジストパターンの解像度がさらに向上するとともに、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0148】
(架橋剤)
架橋剤は2つ以上の官能基を有する化合物であり、一括露光工程後のベーク工程において、酸触媒反応により重合体成分において架橋反応を引き起こし、重合体成分の分子量を増加させることで、パターン露光部の現像液に対する溶解度を低下させるものである。上記官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、エポキシ基、ビニルエーテル基等をあげることができる。
【0149】
(偏在化促進剤)
偏在化促進剤は、上記高フッ素含有量樹脂をより効率的にレジスト膜表面に偏在させる効果を有するものである。上記感放射線性樹脂組成物にこの偏在化促進剤を含有させることで、上記高フッ素含有量樹脂の添加量を従来よりも少なくすることができる。従って、上記感放射線性樹脂組成物のリソグラフィー性能を維持しつつ、レジスト膜から液浸媒体への成分の溶出をさらに抑制したり、高速スキャンにより液浸露光をより高速に行うことが可能になり、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制するレジスト膜表面の疎水性を向上させることができる。このような偏在化促進剤として用いることができるものとしては、例えば、比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物をあげることができる。このような化合物としては、具体的には、ラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、多価アルコール等をあげることができる。
【0150】
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn-オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn-ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤;市販品としては、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、DIC製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106(以上、旭硝子工業製)等をあげることができる。上記感放射線性樹脂組成物における界面活性剤の含有量としては、樹脂100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0151】
(脂環式骨格含有化合物)
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0152】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば、
1-アダマンタンカルボン酸、2-アダマンタノン、1-アダマンタンカルボン酸t-ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t-ブチル、デオキシコール酸t-ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2-エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t-ブチル、リトコール酸t-ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2-エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3-〔2-ヒドロキシ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.1(2,5).1(7,10)]ドデカン、2-ヒドロキシ-9-メトキシカルボニル-5-オキソ-4-オキサ-トリシクロ[4.2.1.0(3,7)]ノナン等をあげることができる。上記感放射線性樹脂組成物における脂環式骨格含有化合物の含有量としては、樹脂100質量部に対して通常5質量部以下である。
【0153】
(増感剤)
増感剤は、感放射線性酸発生剤等からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、上記感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0154】
増感剤としては、例えば、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等をあげることができる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。上記感放射線性樹脂組成物における増感剤の含有量としては、樹脂100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0155】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
上記(A)感放射線性樹脂組成物は、例えば、樹脂(A0)、及び(B)溶剤、並びに、必要に応じて他の成分を所定の割合で混合することにより調製できる。上記感放射線性樹脂組成物は、混合後に、例えば、孔径0.05μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。上記感放射線性樹脂組成物の固形分濃度としては、通常0.1質量%~50質量%であり、0.5質量%~30質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましい。
【0156】
<レジストパターン形成方法>
本発明におけるレジストパターン形成方法は、
(C)感放射線性酸発生剤の含有量が0.1質量%以下であるレジスト膜を形成する工程(1)(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、
上記レジスト膜をEUV、又は、電子線(EB)露光する工程(2)(以下、「露光工程」ともいう)、及び、
上記工程(2)で露光されたレジスト膜を現像する工程(3)(以下、「現像工程」ともいう)を含む。
【0157】
上記レジストパターン形成方法によれば、上記感放射線性樹脂組成物等を用いて形成した(C)感放射線性酸発生剤の含有量が0.1質量%以下であるレジスト膜等を用いているため、露光工程における感度や解像度を優れたレベルで発揮可能なレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0158】
[レジスト膜形成工程]
本工程(上記工程(1))では、上記感放射線性樹脂組成物等によりレジスト膜を形成する。このレジスト膜を形成する基板としては、例えば、シリコンウェハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知のもの等をあげることができる。また、例えば、特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。塗布方法としては、例えば、回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等をあげることができる。塗布した後に、必要に応じて、塗膜中の溶剤を揮発させるため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PB温度としては、通常60℃~140℃であり、80℃~120℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒~600秒であり、10秒~300秒が好ましい。形成されるレジスト膜の膜厚としては、10nm~1,000nmが好ましく、10nm~500nmがより好ましい。
【0159】
液浸露光を行う場合、上記感放射線性樹脂組成物における上記高フッ素含有量樹脂等の撥水性重合体添加剤の有無にかかわらず、上記形成したレジスト膜上に、液浸媒体とレジスト膜との直接の接触を避ける目的で、液浸媒体に不溶性の液浸用保護膜を設けてもよい。液浸用保護膜としては、現像工程の前に溶剤により剥離する溶剤剥離型保護膜(例えば、特開2006-227632号公報参照)、現像工程の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005-069076号公報、WO2006-035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。ただし、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0160】
また、次工程である露光工程を波長50nm以下の放射線にて行う場合、上記組成物中のベース樹脂として上記構造単位(a1)及び構造単位(a2)を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0161】
また、上記工程(1)は、(C)感放射線性酸発生剤の含有量が0.1質量%以下であるレジスト膜を形成する工程であるが、上記レジスト膜の形成は、公知の手法を適宜用いることができる。上記レジスト膜の形成は、例えば、上述の樹脂(A0)等を用いることで形成し得る。より具体的には、例えば、上記レジスト膜は、(A)感放射線性樹脂組成物中、上記(C)感放射線性酸発生剤が(B)溶剤以外の成分の合計に対して0.1質量%以下である(A)感放射線性樹脂組成物により簡便に形成することができうる。または、例えば、上記レジスト膜は、感放射線性酸発生剤を含有しない(A)感放射線性樹脂組成物により簡便に形成することができうる。
【0162】
また、上記工程(1)において形成されるレジスト膜は、(C)感放射線性酸発生剤の含有量が0.1質量%以下であるが、レジスト膜中に(C)感放射線性酸発生剤を含有する場合、(C)感放射線性酸発生剤は少ない方が望ましく、レジスト膜中、例えば、上記(C)感放射線性酸発生剤は、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましい例としてあげることができる。一方、上記配合量の下限としては、(C)感放射線性酸発生剤を含まない(0質量%)であることが望ましい。
【0163】
上述のように、本発明においては、例えば、露光工程時の酸の存在や、露光により感放射線性酸発生剤から発生する酸によって上記構造単位(a2)が脱離などの解離や可溶性変化が起こることを必要としているものではない。また、本発明におけるレジスト膜において、(C)感放射線性酸発生剤は含まない、ないし、実質的に存在しないものとすることにより、レジスト膜の構成成分が単純化することで均一性が向上したり、露光工程時に発生した酸による露光部、未露光部境界面での悪影響が抑制されたりする。その結果、より確実にレジスト諸性能が向上したものとなりうる。よって、上記(C)感放射線性酸発生剤は本発明におけるレジスト膜に含まれない、ないし、実質的に存在しないことが特に望ましい。
【0164】
[露光工程]
本工程(上記工程(2))では、上記工程(1)であるレジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜に、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し、露光する。露光に用いる放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、EUV(極端紫外線)や電子線(EB)をあげることができる。
【0165】
露光を液浸露光により行う場合、用いる液浸媒体としては、例えば、水、フッ素系不活性液体等をあげることができる。液浸媒体は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤をわずかな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
【0166】
本願発明においては、上記露光の後、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差が生じる。なお、本願発明においては、感放射線性酸発生剤を含まない、ないし実質的に含まないため、基本的に、上記露光の後、感放射線性酸発生剤から発生した酸による樹脂等が有する酸解離性基の解離を促進させる目的でのポストエクスポージャーベーク(PEB)は行う必要がない。しかしながら、本発明の全ての実施態様において、露光後に、露光により感放射線性酸発生剤から酸を発生させる目的とは異なる目的のために、加熱処理としてのPEBを行うことを排除するものではない。上記加熱処理としてのPEB温度としては、例えば、50℃~180℃であり、80℃~130℃があげられる。また、上記加熱処理としてのPEB時間としては、例えば、5秒~600秒であり、10秒~300秒をあげることができる。
【0167】
[現像工程]
本工程(上記工程(3))では、上記工程(2)である上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0168】
また、上記工程(3)において、ある実施形態では、有機溶剤で現像してネガ型パターンを形成することができる。
【0169】
また、上記工程(3)において、ある実施形態では、アルカリ現像液で現像してポジ型パターンを形成することができる。
【0170】
上記現像に用いる現像液としては、アルカリ現像の場合、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等をあげることができる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0171】
また、有機溶剤現像の場合、炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤等の有機溶剤、又は有機溶剤を含有する溶剤をあげることができる。上記有機溶剤としては、例えば、上述の感放射線性樹脂組成物の溶剤として列挙した溶剤の1種又は2種以上等をあげることができる。これらの中でも、エステル系溶剤、ケトン系溶剤が好ましい。エステル系溶剤としては、酢酸エステル系溶剤が好ましく、酢酸n-ブチル、酢酸アミルがより好ましい。ケトン系溶剤としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶剤の含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。現像液中の有機溶剤以外の成分としては、例えば、水、シリコンオイル等をあげることができる。
【0172】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等をあげることができる。
【0173】
<基板の加工方法、金属膜パターンの製造方法>
本発明における基板の加工方法は、
さらに、上記いずれかの方法により形成されたレジストパターンをマスクにして基板にパターンを形成する工程(4-1)を含む。
【0174】
また、本発明における金属膜パターンの製造方法は、
さらに、上記いずれかに記載の方法により形成されたレジストパターンをマスクにして金属膜を形成する工程(4-2)を含む。
【0175】
上記基板の加工方法、及び、上記金属膜パターンの製造方法は、上記感放射線性樹脂組成物ないし上記レジスト膜を用いているため、従来のような(C)感放射線性酸発生剤を実質的に含まずとも従来の露光工程等でレジスト膜として機能することができ、各々、高品位の基板パターン、及び、高品位の金属膜パターンの加工が可能となる。
【0176】
上記工程(4-1)は、いずれかに記載の方法により形成されたレジストパターンをマスクにして基板にパターンを形成する工程である。レジストパターンをマスクにして基板にパターンを形成する方法として、例えば、基板上にレジストパターンを形成後、レジストがない部分にドライエッチング等の方法により基板にパターンを形成する方法や、レジストパターンを形成後、レジストがない部分にCVD等により基板構成成分を蒸着させたり、無電解めっき等の方法により金属を付着させて、基板の一部又は全部を形成したりする方法をあげることができる。
【0177】
上記工程(4-2)は、いずれかに記載の方法により形成されたレジストパターンをマスクにして金属膜を形成する工程であるが、レジストパターンをマスクにして金属膜を形成する方法として、例えば、レジストパターンを形成後、レジストがない部分に無電解めっき等の方法により金属を付着させて金属膜を形成する方法や、金属膜上にレジストパターンを形成し、レジストがない部分の金属膜をドライエッチング等の方法により除去して金属膜を形成する方法をあげることができる。
【実施例0178】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0179】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)の測定]
実施例で用いる重合体のMw及びMnは、東ソー社製GPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本、及びG4000HXL:1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0180】
<[A]重合体の合成>
各実施例及び比較例における各重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。なお以下の合成例においては特に断りのない限り、質量部は使用した単量体の合計質量を100質量部とした場合の値を意味し、モル%は使用した単量体の合計モル数を100モル%とした場合の値を意味する。
【0181】
【0182】
[合成例1](重合体(A-1)の合成)
化合物(M-1)、化合物(M-4)を、モル比率が40/60となるように、1-メトキシ-2-プロパノール(全モノマー量に対して200質量部)に溶解させた。次に、開始剤として、アゾビスイソブチロニトリルを、全モノマーに対して6モル%添加し、単量体溶液を調製した。一方、空の反応容器に1-メトキシ-2-プロパノール(全モノマー量に対して100質量部)を加え、攪拌しながら85℃に加熱した。次に、上記で調製した単量体溶液を3時間かけて滴下し、その後さらに3時間85℃で加熱し、重合反応を合計6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を室温に冷却した。
【0183】
その後、ヘキサン(重合溶液に対して500質量部)中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を、重合溶液に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、ろ別し、1-メトキシ-2-プロパノール(300質量部)に溶解させた。次に、メタノール(500質量部)、トリエチルアミン(50質量部)及び超純水(10質量部)を加え、撹拌しながら70℃で6時間加水分解反応を実施した。
【0184】
反応終了後、残溶媒を留去し、得られた固体をアセトン(100質量部)に溶解させた。500質量部の水中に滴下して樹脂を凝固させ、得られた固体をろ別した。50℃、12時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-1)を合成した。
【0185】
得られた重合体(A-1)のMwは5,700であり、Mw/Mnは1.61であった。
【0186】
[合成例2~18](重合体(A-2)~(A-12)の合成)
表1の処方に従って、モノマーを各々選択し、合成例1と同様の操作を行うことによって、重合体(A-2)~(A-12)、(A-14)を合成した。また、得られた重合体(A-2)~(A-12)のMw及びMw/Mnについても表1に示す。
【0187】
各合成例の処方内容及び調製結果を下記表1に示す。
【0188】
【0189】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
実施例及び比較例の感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[C]酸発生剤、[D]酸拡散制御剤、及び[B]溶剤について、以下に示す。
【0190】
[[C]酸発生剤]
酸発生剤の構造式を以下に示す。
【化15】
【0191】
[[D]酸拡散制御剤]
酸拡散制御剤の構造式を以下に示す。
【化16】
【0192】
[[B]有機溶剤]
有機溶剤を以下に示す。
B-1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
B-2:プロピレングリコール1-モノメチルエーテル
【0193】
[実施例1]
[A]重合体としての(A-1)100質量部、並びに、[B]有機溶剤としての(B-1)12,200質量部、及び、(B-2)5,200質量部を混合し、20nmのメンブランフィルターでろ過し、感放射線性樹脂組成物(R-1)を調製した。
【0194】
[実施例2~18及び比較例1](感放射線性樹脂組成物(R-2)~(R-18)及び(CR-1))
下記表2に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、各感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0195】
【0196】
[EUV露光及びアルカリ現像によるレジストパターンの形成]
膜厚20nmの下層膜(AL412(Brewer Science社製))が形成された12インチのシリコンウエハ表面に、スピンコーター(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を使用して、表2に記載の各感放射線性樹脂組成物を塗布し、100℃で60秒間プレベーク(PB)を行った。その後、23℃で30秒間冷却し、膜厚20nmのレジスト膜を形成した。
【0197】
次に、得られたレジスト膜に、EUV露光機(型式「NXE3300」、ASML製、NA=0.33、照明条件:Dipole)を用いてEUV光を照射した。照射後、2.38wt%のTMAH水溶液を用いて上記レジスト膜を23℃で30秒間現像し、その後、水で洗浄し、さらに乾燥させることでポジ型のラインアンドスペースのレジストパターンを形成した。
【0198】
[評価]
上記形成した各レジストパターンについて、下記方法に従って測定することにより、各感放射線性樹脂組成物の感度、解像性を評価した。なお、レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「CG-4100」)を用いた。評価結果を下記表3に示す。
【0199】
[感度]
上記レジストパターンの形成において、18nmラインアンドスペースパターンを形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm2)とした。感度は、100mJ/cm2以下の場合は「良好」と、100mJ/cm2を超える場合は「不良」と判定した。
【0200】
[解像性]
上記最適露光量において、ラインアンドスペース(1L/1S)を形成するマスクパターンのサイズを変えた場合に解像される最小のレジストパターンの寸法を測定し、この測定値を解像性(nm)とした。解像性は、値が小さいほど良いことを示す。解像性は、18nm未満の場合は良好と、18nm以上の場合は不良と評価できる。
【0201】
各レジストパターンの形成結果を下記表3に示す。
【0202】
【0203】
[合成例19](重合体(A-19)の合成)
化合物(M-5)及び(M-13)を、モル比率が60/40(モル%)となるよう2-ブタノン(200質量部)に溶解し、開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)(使用した単量体の合計100モル%に対して8モル%)を添加して単量体溶液を調製した。空の反応容器に2-ブタノン(100質量部)を入れ、30分窒素パージした後、反応容器内を80℃とし、撹拌しながら上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。冷却した重合溶液をメタノール(2,000質量部)中に投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末をメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で10時間乾燥して白色粉末状の重合体(A-19)を得た。重合体(A-19)のMwは5,700であり、Mw/Mnは1.61であった。また、13C-NMR分析の結果、(M-5)及び(M-13)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ58.5モル%及び41.5モル%であった。
【0204】
[合成例20](重合体(A-20)の合成)
表4の処方に従って、モノマーを各々選択し、合成例1と同様の操作を行うことによって、重合体(A-20)を合成した。また、得られた重合体(A-20)のMw及びMw/Mnについても表4に示す。
【0205】
各合成例の処方内容及び調製結果を下記表4に示す。
【0206】
【0207】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
[実施例19](感放射線性樹脂組成物(R-19))
[A]重合体としての(A-19)100質量部、並びに、[B]有機溶剤としての(B-1)12,200質量部、及び、(B-2)5,200質量部を混合し、20nmのメンブランフィルターでろ過し、感放射線性樹脂組成物(R-19)を調製した。
【0208】
[実施例20](感放射線性樹脂組成物(R-20))
下記表5に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例19と同様に操作して、各感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0209】
【0210】
[EUV露光及びアルカリ現像によるレジストパターンの形成]
感放射線性樹脂組成物(R-19)又は(R-20)を用いて、前述と同様にしてポジ型のラインアンドスペースのレジストパターンを形成した。
【0211】
[評価]
上記形成した各レジストパターンについて、前述と同様にして感度、解像性を評価した。評価結果を下記表6に示す。
【0212】
【0213】
表3、6に示すように、実施例における感放射線性樹脂組成物は、いずれにおいても、露光工程における感度、及び解像度が良好であった。これに対し、比較例における感放射線性樹脂組成物は、上述の性能において実施例の結果に比して良好でなかった。このように、本発明の実施例の感放射線性樹脂組成物によれば、感度、及び解像度に優れることがわかった。
以上説明したように、本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法等によれば、従来よりも感度や解像性等において優れた性能を発現することが可能である。本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法等は、半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスのリソグラフィー工程における微細なレジストパターン形成等に好適に用いることができる。