(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177306
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01L21/60 301N
H01L21/60 301P
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024172788
(22)【出願日】2024-10-01
(62)【分割の表示】P 2021117976の分割
【原出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】古川 泰至
(72)【発明者】
【氏名】藤田 裕人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 哲人
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 敦也
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い半導体装置を提供すること
【解決手段】半導体素子は、一面にソース電極を有し、裏面にドレイン電極を有する。半導体素子は、一面においてソース電極とは異なる位置に配置されたパッド44を有する。パッド44には、ボンディングワイヤ90が接続される。封止体30は、半導体素子やボンディングワイヤ90などを封止する。パッド44は、保護膜45の開口部451から露出する露出面441を有する。露出面441は、ボンディングワイヤ90が接続される接続領域441aと、接続領域441aの周辺領域441bを有する。周辺領域441bは、接続領域441aの面に対する相対的な角度が90度以下の面を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板(41)と、前記半導体基板の一面上に配置された第1主電極(42)と、前記半導体基板において前記一面とは板厚方向において反対の裏面上に配置された第2主電極(43)と、前記一面上において前記第1主電極とは異なる位置に配置された信号用の電極であるパッド(44)と、を有する半導体素子(40)と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50、70)と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
前記パッドに接続されたボンディングワイヤ(90)と、
前記第1配線部材および前記第2配線部材それぞれの少なくとも一部と、前記半導体素子と、前記ボンディングワイヤを封止する封止体(30)と、を備え、
前記半導体素子は、前記一面上に配置され、開口部(451)が形成された保護膜(45)を有し、
前記パッドは、前記開口部から露出する露出面(441)を有し、
前記露出面は、前記ボンディングワイヤが接続される接続領域(441a)と、前記接続領域の周辺領域(441b)と、を有し、
前記周辺領域は、前記接続領域の面に対する相対的な角度が90度以下の面を含み、
前記保護膜は、前記板厚方向の平面視において、前記第1主電極と前記パッドとの間に、凸部(455)および/または凹部(456)を有する、半導体装置。
【請求項2】
前記パッドは、下地層(44a)と、前記下地層上に積層配置され、前記露出面の少なくとも一部を提供する上地層(44b)と、前記上地層を貫通する溝(445)と、を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体基板(41)と、前記半導体基板の一面上に配置された第1主電極(42)と、前記半導体基板において前記一面とは板厚方向において反対の裏面上に配置された第2主電極(43)と、前記一面上において前記第1主電極とは異なる位置に配置された信号用の電極であるパッド(44)と、を有する半導体素子(40)と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50、70)と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
前記パッドに接続されたボンディングワイヤ(90)と、
前記第1配線部材および前記第2配線部材それぞれの少なくとも一部と、前記半導体素子と、前記ボンディングワイヤを封止する封止体(30)と、を備え、
前記半導体素子は、前記一面上に配置され、開口部(451)が形成された保護膜(45)を有し、
前記パッドは、前記開口部から露出する露出面(441)を有し、
前記露出面は、前記ボンディングワイヤが接続される接続領域(441a)と、前記接続領域の周辺領域(441b)と、を有し、
前記周辺領域は、前記接続領域の面に対する相対的な角度が90度以下の面を含み、
前記パッドは、下地層(44a)と、前記下地層上に積層配置され、前記露出面の少なくとも一部を提供する上地層(44b)と、前記上地層を貫通する溝(445)と、を有する、半導体装置。
【請求項4】
前記パッドは、前記保護膜における前記開口部の周縁(453)に対して突出する凸部(442)を有し、
前記凸部の上面(442a)が前記接続領域を提供し、前記凸部の側面(442b)が前記周辺領域を提供する、請求項1~3いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記側面において前記凸部の下端から所定の範囲の部分は、前記保護膜の前記開口部の周縁に対する相対的な角度が90度以下である、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記パッドは、前記開口部内において設けられた凹部(443)を有し、
前記凹部の底面(443c)が前記接続領域を提供し、前記凹部の側面(443b)と前記側面に連なる上面(443a)が前記周辺領域を提供する、請求項1~3いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板(41)と、前記半導体基板の一面上に配置された第1主電極(42)と、前記半導体基板において前記一面とは板厚方向において反対の裏面上に配置された第2主電極(43)と、前記一面上において前記第1主電極とは異なる位置に配置された信号用の電極であるパッド(44)と、を有する半導体素子(40)と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50、70)と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
前記パッドに接続されたボンディングワイヤ(90)と、
前記第1配線部材および前記第2配線部材それぞれの少なくとも一部と、前記半導体素子と、前記ボンディングワイヤを封止する封止体(30)と、を備え、
前記半導体素子は、前記一面上に配置され、開口部(451)が形成された保護膜(45)を有し、
前記パッドは、前記開口部から露出する露出面(441)を有し、
前記露出面は、前記ボンディングワイヤが接続される接続領域(441a)と、前記接続領域の周辺領域(441b)と、を有し、
前記周辺領域は、前記接続領域の面に対する相対的な角度が90度以下の面を含み、
前記パッドは、前記開口部内において設けられた凹部(443)を有し、
前記凹部の底面(443c)が前記接続領域を提供し、前記凹部の側面(443b)と前記側面に連なる上面(443a)が前記周辺領域を提供する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体素子を備えた半導体装置を開示している。半導体素子は、一面に第1主電極およびパッドを有し、裏面に第2主電極を有している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パッドにおいて保護膜から露出する部分には、ボンディングワイヤが接続されている。半導体素子やボンディングワイヤは、封止体により封止されている。このような構成においては、パワーサイクルや冷熱サイクル等の熱応力により、たとえば封止体と保護膜との界面で剥離が生じる虞がある。剥離が、パッドとボンディングワイヤとの接続部に進展すると、接続信頼性が低下する。また、熱応力によりパッドとボンディングワイヤとの接続部にクラックが生じる虞がある。クラックを起点とする封止体の剥離が、たとえばパッドと同一面に設けられた主電極に向けて進展すると、主電極の接続信頼性が低下する。剥離が、たとえば半導体素子の端面まで進展すると、絶縁信頼性が低下する。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、半導体装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
本開示はこのような課題に鑑みてなされたものであり、信頼性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された半導体装置は、
半導体基板(41)と、半導体基板の一面上に配置された第1主電極(42)と、半導体基板において一面とは板厚方向において反対の裏面上に配置された第2主電極(43)と、一面上において第1主電極とは異なる位置に配置された信号用の電極であるパッド(44)と、を有する半導体素子(40)と、
第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50、70)と、
第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
パッドに接続されたボンディングワイヤ(90)と、
第1配線部材および第2配線部材それぞれの少なくとも一部と、半導体素子と、ボンディングワイヤを封止する封止体(30)と、を備え、
半導体素子は、一面上に配置され、開口部(451)が形成された保護膜(45)を有し、
パッドは、開口部から露出する露出面(441)を有し、
露出面は、ボンディングワイヤが接続される接続領域(441a)と、接続領域の周辺領域(441b)と、を有し、
周辺領域は、接続領域の面に対する相対的な角度が90度以下の面を含む。
開示のひとつにおいて、保護膜は、板厚方向の平面視において、第1主電極とパッドとの間に、凸部(455)および/または凹部(456)を有する。
開示の他のひとつにおいて、パッドは、下地層(44a)と、下地層上に積層配置され、露出面の少なくとも一部を提供する上地層(44b)と、上地層を貫通する溝(445)と、を有する。
開示の他のひとつにおいて、パッドは、開口部内において設けられた凹部(443)を有し、
凹部の底面(443c)が接続領域を提供し、凹部の側面(443b)と側面に連なる上面(443a)が周辺領域を提供する。
【0007】
開示の半導体装置によると、パッドの露出面において、周辺領域の少なくとも一部の面と、接続領域の面との相対的な角度が90度以下である。このため、露出面において、周辺領域と接続領域との間で封止体の剥離が進展し難い。以上より、信頼性が高い半導体装置を提供することができる。
【0008】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置が適用される車両の駆動システムの概略構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る半導体装置において、半導体素子のパッド周辺を示す断面図である。
【
図12】第3実施形態に係る半導体装置において、ソース電極とパッドとの間の保護膜周辺を示す断面図である。
【
図14】第4実施形態に係る半導体装置において、半導体素子のパッド周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0011】
本実施形態の半導体装置は、たとえば回転電機を駆動源とする移動体の電力変換装置に適用される。移動体は、たとえば、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)などの電動車両、ドローンなどの飛行体、船舶、建設機械、農業機械である。以下では、車両に適用される例について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
先ず、
図1に基づき、車両の駆動システムの概略構成について説明する。
【0013】
<車両の駆動システム>
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3と、電力変換装置4を備えている。
【0014】
直流電源2は、充放電可能な二次電池で構成された直流電圧源である。二次電池は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池である。モータジェネレータ3は、三相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、車両の走行駆動源、つまり電動機として機能する。モータジェネレータ3は、回生時に発電機として機能する。電力変換装置4は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で電力変換を行う。
【0015】
<電力変換装置>
次に、
図1に基づき、電力変換装置4の回路構成について説明する。電力変換装置4は、電力変換回路を備えている。本実施形態の電力変換装置4は、平滑コンデンサ5と、電力変換回路であるインバータ6を備えている。
【0016】
平滑コンデンサ5は、主として、直流電源2から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ5は、高電位側の電源ラインであるPライン7と低電位側の電源ラインであるNライン8とに接続されている。Pライン7は直流電源2の正極に接続され、Nライン8は直流電源2の負極に接続されている。平滑コンデンサ5の正極は、直流電源2とインバータ6との間において、Pライン7に接続されている。平滑コンデンサ5の負極は、直流電源2とインバータ6との間において、Nライン8に接続されている。平滑コンデンサ5は、直流電源2に並列に接続されている。
【0017】
インバータ6は、DC-AC変換回路である。インバータ6は、図示しない制御回路によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、モータジェネレータ3へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動する。インバータ6は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてモータジェネレータ3が発電した三相交流電圧を、制御回路によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、Pライン7へ出力する。このように、インバータ6は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行う。
【0018】
インバータ6は、三相分の上下アーム回路9を備えて構成されている。上下アーム回路9は、レグと称されることがある。上下アーム回路9は、上アーム9Hと、下アーム9Lをそれぞれ有している。上アーム9Hおよび下アーム9Lは、上アーム9HをPライン7側として、Pライン7とNライン8との間で直列接続されている。上アーム9Hと下アーム9Lとの接続点は、出力ライン10を介して、モータジェネレータ3における対応する相の巻線3aに接続されている。インバータ6は、6つのアームを有している。各アームは、スイッチング素子を備えて構成されている。Pライン7、Nライン8、および出力ライン10それぞれの少なくとも一部は、たとえばバスバーなどの導電部材により構成される。
【0019】
本実施形態では、各アームを構成するスイッチング素子として、nチャネル型のMOSFET11を採用している。各アームを構成するスイッチング素子の数は特に限定されない。ひとつでもよいし、複数でもよい。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。
【0020】
一例として、本実施形態では、各アームがひとつのMOSFET11を有している。上アーム9Hにおいて、MOSFET11のドレインがPライン7に接続されている。下アーム9Lにおいて、MOSFET11のソースがNライン8に接続されている。上下アーム回路9において、上アーム9HのMOSFET11のソースと、下アーム9LのMOSFET11のドレインが、相互に接続されている。
【0021】
MOSFET11のそれぞれには、還流用のダイオード12が逆並列に接続されている。ダイオード12は、MOSFET11の寄生ダイオード(ボディダイオード)でもよいし、寄生ダイオードとは別に設けたものでもよい。ダイオード12のアノードは対応するMOSFET11のソースに接続され、カソードはドレインに接続されている。
【0022】
電力変換装置4は、電力変換回路として、コンバータをさらに備えてもよい。コンバータは、直流電圧を異なる値の直流電圧に変換するDC-DC変換回路である。コンバータは、直流電源2と平滑コンデンサ5との間に設けられる。コンバータは、たとえばリアクトルと、上記した上下アーム回路9を備えて構成される。この構成によれば、昇降圧が可能である。電力変換装置4は、直流電源2からの電源ノイズを除去するフィルタコンデンサを備えてもよい。フィルタコンデンサは、直流電源2とコンバータとの間に設けられる。
【0023】
電力変換装置4は、インバータ6などを構成するスイッチング素子の駆動回路を備えてもよい。駆動回路は、制御回路の駆動指令に基づいて、対応するアームのMOSFET11のゲートに駆動電圧を供給する。駆動回路は、駆動電圧の印加により、対応するMOSFET11を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。駆動回路は、ドライバと称されることがある。
【0024】
電力変換装置4は、スイッチング素子の制御回路を備えてもよい。制御回路は、MOSFET11を動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路に出力する。制御回路は、図示しない上位ECUから入力されるトルク要求、各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。各種センサとして、たとえば電流センサ、回転角センサ、電圧センサがある。電流センサは、各相の巻線3aに流れる相電流を検出する。回転角センサは、モータジェネレータ3の回転子の回転角を検出する。電圧センサは、平滑コンデンサ5の両端電圧を検出する。制御回路は、駆動指令として、たとえばPWM信号を出力する。制御回路は、たとえばプロセッサとメモリを備えて構成されている。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。
【0025】
<半導体装置>
次に、
図2、
図3、および
図4に基づき、半導体素子が適用される半導体装置の概略構成について説明する。
図2は、半導体装置を示す平面図である。
図2は、半導体装置の上面視平面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う断面図である。
図3では、半導体素子の構造を簡素化して図示している。
図4は、半導体素子を示す平面図である。
図4は、半導体基板の一面側、つまりソース電極側から見た平面図である。
【0026】
以下において、半導体基板の板厚方向をZ方向とする。Z方向に直交する一方向をX方向とする。Z方向およびX方向の両方向に直交する方向をY方向とする。特に断わりのない限り、Z方向から平面視した形状、換言すればX方向およびY方向により規定されるXY面に沿う形状を平面形状とする。また、Z方向からの平面視を、単に平面視と示すことがある。
【0027】
図2および
図3に示すように、半導体装置20は、封止体30と、半導体素子40と、ヒートシンク50、60と、導電スペーサ70と、外部接続端子80と、ボンディングワイヤ90を備えている。半導体装置20は、上記したアームのひとつを構成する。すなわち、2つの半導体装置20により、一相分の上下アーム回路9が構成される。半導体装置20は、パワーモジュールと称されることがある。
【0028】
封止体30は、電気絶縁性の材料を用いて形成され、半導体装置20を構成する他の要素の一部を封止している。他の要素の残りの部分は、封止体30の外に露出している。封止体30は、たとえば樹脂を材料とする。樹脂の一例は、エポキシ系樹脂である。封止体30は、樹脂を材料として、たとえばトランスファモールド法により成形されている。このような封止体30は、封止樹脂体、モールド樹脂、樹脂成形体と称されることがある。封止体30は、たとえばゲルを用いて形成されてもよい。ゲルは、たとえば一対のヒートシンク50、60の対向領域に充填(配置)される。
【0029】
図2に示すように、封止体30は平面略矩形状をなしている。封止体30は、外郭をなす表面として、一面30aと、Z方向において一面30aとは反対の面である裏面30bを有している。一面30aおよび裏面30bは、たとえば平坦面である。また、一面30aと裏面30bとをつなぐ面である側面30c、30dを有している。側面30cは、外部接続端子80のうち、主端子81、82が突出する面である。側面30dは、Y方向において側面30cとは反対の面である。側面30dは、信号端子83が突出する面である。
【0030】
半導体素子40は、半導体基板41と、ソース電極42と、ドレイン電極43と、パッド44を有している。半導体素子40は、パワー素子、半導体チップなどと称されることがある。半導体基板41は、シリコン(Si)、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とし、縦型素子が形成されてなる。ワイドバンドギャップ半導体としては、たとえばシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンドがある。
【0031】
縦型素子は、半導体基板41(半導体素子40)の板厚方向、すなわちZ方向に主電流を流すように構成されている。型素子は、通電により発熱する発熱素子である。本実施形態の半導体基板41は、SiCを材料とし、ひとつのアームを構成するMOSFET11が形成されてなる。半導体基板41には、図示しないゲート電極が形成されている。ゲート電極は、たとえばトレンチ構造をなしている。
【0032】
半導体基板41は、平面略矩形状をなしている。半導体基板41は、主電極が設けられる板面として、一面41aおよび裏面41bを有している。一面41aは、半導体基板41において封止体30の一面30a側の面である。裏面41bは、一面41aとは板厚方向において反対の面である。主電極のひとつであるソース電極42は、半導体基板41の一面41a上に配置されている。主電極の他のひとつであるドレイン電極43は、半導体基板41の裏面41b上に配置されている。ソース電極42が第1主電極に相当し、ドレイン電極43が第2主電極に相当する。
【0033】
MOSFET11がオンすることで、主電極間、つまりソース電極42とドレイン電極43との間に、電流(主電流)が流れる。ドレイン電極43は、半導体基板41の裏面41bのほぼ全体に形成されている。ソース電極42は、半導体基板41の一面41aの一部分に形成されている。
【0034】
パッド44は、信号用の電極である。パッド44は、半導体基板41の一面41aにおいて、ソース電極42の形成領域とは異なる位置に形成されている。パッド44は、ソース電極42と電気的に分離されている。
図4に示すように、パッド44は、Y方向においてソース電極42の形成領域とは反対側の端部に形成されている。パッド44は、Y方向においてソース電極42と並んで設けられている。パッド44の個数は特に限定されない。パッド44は、ゲート電極用のパッドを少なくとも含む。本実施形態の半導体素子40は、5つのパッド44を有している。5つのパッド44は、X方向に並んでいる。
【0035】
ヒートシンク50、60は、Cu、Cu合金などの導電性が良好な金属を材料とする金属板である。ヒートシンク50、60は、Z方向において、複数の半導体素子40を挟むように配置されている。ヒートシンク50、60は、Z方向において互いに少なくとも一部が対向するように配置されている。ヒートシンク50、60は、平面視において半導体素子40を内包している。
【0036】
ヒートシンク50は、ソース電極42に電気的に接続され、配線機能を提供する。同様に、ヒートシンク60は、ドレイン電極43に電気的に接続され、配線機能を提供する。ヒートシンク50、60は、半導体素子40の生じた熱を放熱する放熱機能を提供する。ヒートシンク50、60は、表面に、NiやAuなどのめっき膜を備えてもよい。本実施形態のヒートシンク50は、導電スペーサ70を介して、ソース電極42に電気的に接続される。ヒートシンク50および導電スペーサ70が、第1配線部材に相当する。ヒートシンク60が、第2配線部材に相当する。
【0037】
ヒートシンク50は、半導体素子40側の面である対向面50aと、対向面50aとはZ方向において反対の面である裏面50bを有している。同様に、ヒートシンク60も、対向面60aと裏面60bを有している。ヒートシンク50、60は、平面略矩形状をなしている。ヒートシンク50、60それぞれの裏面50b、60bは、封止体30から露出している。裏面50b、60bは、放熱面、露出面などと称されることがある。ヒートシンク50の裏面50bは、封止体30の一面30aと略面一である。ヒートシンク60の裏面60bは、封止体30の裏面30bと略面一である。
【0038】
導電スペーサ70は、半導体素子40とヒートシンク50の間に介在している。導電スペーサ70は、半導体素子40とヒートシンク50との間に所定の間隔を確保するスペーサ機能を提供する。たとえば導電スペーサ70は、半導体素子40のパッド44に、対応する信号端子83を電気的に接続するための高さを確保する。導電スペーサ70は、半導体素子40のソース電極42とヒートシンク50との電気伝導、熱伝導経路の途中に位置し、配線機能および放熱機能を提供する。
【0039】
導電スペーサ70は、Cuなどの導電性、熱伝導性が良好な金属材料を含んでいる。導電スペーサ70は、表面にめっき膜を備えてもよい。導電スペーサ70は、ターミナル、ターミナルブロック、金属ブロック体などと称されることがある。半導体装置20は、半導体素子40と同数の導電スペーサ70を備えている。導電スペーサ70は、半導体素子40に個別に接続されている。導電スペーサ70は、たとえば平面略矩形状をなす柱状体である。導電スペーサ70は、平面視においてソース電極42の接合領域にほぼ一致するか若干小さい大きさを有している。
【0040】
外部接続端子80は、半導体装置20を外部機器と電気的に接続するための端子である。外部接続端子80は、銅などの導電性が良好な金属材料を用いて形成されている。外部接続端子80は、たとえば板材である。外部接続端子80は、リードと称されることがある。外部接続端子80は、主端子81、82と、信号端子83を備えている。主端子81、82は、半導体素子40の主電極に電気的に接続された外部接続端子80である。
【0041】
主端子81は、ソース電極42に電気的に接続されている。主端子81は、ソース端子と称されることがある。主端子81は、ヒートシンク50を介して、ソース電極42に接続されている。主端子81は、ヒートシンク50におけるY方向の一端に連なっている。主端子81の厚みは、ヒートシンク50よりも薄い。主端子81は、たとえば対向面50aと略面一となるように、ヒートシンク50に連なっている。主端子81は、ヒートシンク50に対して一体的に設けられることで連なってもよいし、別部材として設けられ、接合により連なってもよい。
【0042】
本実施形態の主端子81は、リードフレームの一部として、ヒートシンク50と一体的に設けられている。主端子81は、ヒートシンク50からY方向に延設され、封止体30の側面30cから外部に突出している。主端子81は、封止体30により覆われる部分の途中に屈曲部を有し、側面30cにおいてZ方向の中央付近から突出している。
【0043】
主端子82は、ドレイン電極43に電気的に接続されている。主端子82は、ドレイン端子と称されることがある。主端子82は、ヒートシンク60を介して、ドレイン電極43に接続されている。主端子82は、ヒートシンク60におけるY方向の一端に連なっている。主端子82の厚みは、ヒートシンク60よりも薄い。主端子82は、たとえば、対向面60aと略面一となるようにヒートシンク60に連なっている。主端子82は、ヒートシンク60に対して一体的に設けられることで連なってもよいし、別部材として設けられ、接合により連なってもよい。
【0044】
本実施形態の主端子82は、主端子81とは別のリードフレームの一部として、ヒートシンク60と一体的に設けられている。主端子82は、ヒートシンク60からY方向に延設され、主端子81と同じ側面30cから外部に突出している。主端子82も、封止体30により覆われる部分の途中に屈曲部を有し、側面30cにおいてZ方向の中央付近から突出している。2本の主端子81、82は、側面が互いに対向するようにX方向に並んで配置されている。
【0045】
信号端子83は、ボンディングワイヤ90を介して、半導体素子40のパッド44に電気的に接続されている。信号端子83は、Y方向に延設されており、封止体30のする複数の信号端子83を備えている。信号端子83は、たとえばヒートシンク60および主端子82と共通のリードフレームに構成されている。複数の信号端子83は、図示しないタイバーをカットすることで、互いに電気的に分離されている。
【0046】
半導体素子40のソース電極42は、接合材91を介して導電スペーサ70に接合されている。導電スペーサ70は、接合材92を介してヒートシンク50に接合されている。半導体素子40のドレイン電極43は、接合材93を介してヒートシンク60に接合されている。接合材91、92、93は、導電性を有する接合材である。たとえば、接合材91、92、93として、はんだを採用することができる。はんだの一例は、Snの他に、Cu、Niなどを含む多元系の鉛フリーはんだである。はんだに代えて、焼結銀などのシンター系の接合材を用いてもよい。接合材91、92、93として互いに共通の材料を用いてもよいし、少なくともひとつが他と異なる材料を用いてもよい。本実施形態では、接合材91、92、93として、はんだを用いている。
【0047】
上記したように、半導体装置20では、封止体30によってひとつのアームを構成する半導体素子40が封止されている。封止体30は、半導体素子40、ヒートシンク50の一部、ヒートシンク60の一部、導電スペーサ70、外部接続端子80それぞれの一部、およびボンディングワイヤ90を一体的に封止している。
【0048】
Z方向において、ヒートシンク50、60の間に、半導体素子40が配置されている。半導体素子40は、対向配置されたヒートシンク50、60によって挟まれている。これにより、半導体素子40の熱を、Z方向において両側に放熱することができる。半導体装置20は、両面放熱構造をなしている。ヒートシンク50の裏面50bは、封止体30の一面30aと略面一である。ヒートシンク60の裏面60bは、封止体30の裏面30bと略面一である。裏面50b、60bが露出面であるため、放熱性を高めることができる。
【0049】
<パッド>
次に、
図4、
図5、および
図6に基づき、半導体素子40のパッド44について説明する。
図5は、
図4のV-V線に沿う断面図である。
図5では、便宜上、ドレイン電極43の図示を省略している。
図6は、パッド44の凸部形状を示している。
図6は、
図5に一点鎖線で示す領域VIを拡大した図である。
図6では、封止体30およびボンディングワイヤ90についても図示している。明確化のために、
図6では、封止体30およびパッド44のハッチングを意図的に省略している。
【0050】
図4および
図5に示すように、半導体素子40は、半導体基板41の一面41a上に配置された保護膜45を有している。保護膜45は、絶縁膜である。保護膜45の材料として、たとえばポリイミド、シリコン窒化膜などを採用することができる。保護膜45は、開口部451を有している。開口部451は、パッド44に対して個別に設けられている。開口部451は、平面視において対応するパッド44と重なるように設けられている。パッド44は、開口部451から露出する露出面441をそれぞれ有している。
【0051】
なお、保護膜45は、開口部452を有している。開口部452は、ソース電極42と重なるように設けられている。ソース電極42は、開口部452から露出する露出面421を有している。開口部451は第1開口部、開口部452は第2開口部と称されることがある。
【0052】
露出面441は、接続領域441aと、周辺領域441bを有している。接続領域441aは、露出面441のうち、ボンディングワイヤ90が接続される領域である。周辺領域441bは、露出面441のうち、接続領域441aの周辺の領域である。周辺領域441bは、一例として、接続領域441aを取り囲む。
【0053】
本実施形態のパッド44は、保護膜45の開口周縁453に対して突出する凸部442を有している。開口周縁453は、保護膜45の上面のうち、開口部451の周縁部分である。開口周縁453が、開口部の周縁に相当する。凸部442は、Z方向において保護膜45の開口周縁453(上面)よりも上方に突出している。
【0054】
パッド44は、多層構造をなしている。パッド44は、下地層44aと、上地層44bを有している。下地層44aは、たとえばアルミニウム(Al)を主成分とする材料を用いて形成されている。本実施形態では、AlSi、AlSiCuなどのAl合金を材料としている。本実施形態の下地層44aは、第1層44a1と、第2層44a2を有している。
【0055】
第1層44a1は、層間絶縁膜46を介して、半導体基板41の一面41a上に配置されている。第1層44a1は、平面視において開口部451の直下およびその周囲に設けられている。第1層44a1の周囲部分は、保護膜45によって覆われている。第2層44a2は、第1層44a1のうち、開口部451から露出する部分に対して積層配置されている。第2層44a2は、開口部451内に配置されている。本実施形態の第2層44a2は、開口部451とほぼ一致するように配置されている。第2層44a2の下端は開口部451の下端にほぼ一致し、第2層44a2の上端は開口部451の上端にほぼ一致している。第2層44a2は、開口部451を、ほぼ隙間なく埋めている。第1層44a1と第2層44a2は、共通の材料(Al合金)を用いて形成されている。
【0056】
上地層44bは、下地層44a上に積層配置されている。上地層44bは、接続層と称されることがある。上地層44bは、少なくともひとつの金属層を含む。上地層44bを構成する金属層は、たとえばニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)、プラチナ(Pt)、銀(Ag)のいずれかを含む。本実施形態の上地層44bは、Ni層を少なくとも含む。Niは、下地層44aを構成するAl合金よりも硬い。上地層44bは、Ni層上に、さらにAu層を備えてもよい。
【0057】
本実施形態の上地層44bは、平面視において下地層44aの上端とほぼ一致し、Z方向に延びる柱状体である。上地層44bは、平面視において保護膜45の上面の開口端とほぼ一致するように設けられている。上地層44bの下端は、Z方向において保護膜45の開口周縁453にほぼ一致している。上地層44bが、パッド44の凸部442を構成している。
【0058】
凸部442の表面が、パッド44の露出面441をなしている。凸部442は、上面442aと、側面442bを有している。上面442aは、突出先端面である。上面442aが、接続領域441aを提供している。また、側面442bが、周辺領域441bを提供している。
【0059】
本実施形態では、接続領域441aを提供する上面442aのほぼ全域が、XY平面に対して略平行な面である。上面442aは、略平坦な面である。上面442aは、Y方向を長手方向とする平面略矩形状をなしている。また、周辺領域441bを提供する側面442bのほぼ全域が、Z方向に対して略平行な面である。これにより、上面442aと側面442bとの相対的な角度θa、つまり接続領域441aと周辺領域441bとの相対的な角度が、90度である。上面442aと側面442bとの相対的な角度θaとは、上面442aと側面442bとのなす角度である。
【0060】
さらに本実施形態では、保護膜45の開口周縁453が、XY平面に略平行である。これにより、側面442bと保護膜45の開口周縁453との相対的な角度θbが、90度である。
【0061】
なお、ソース電極42も、パッド44同様、多層構造をなしている。ただし、下地層が第1層のみを有し、第1層上に上地層が積層配置されている。下地層は、層間絶縁膜46の図示しないコンタクトホールを介して半導体基板41に接続されている。上地層は、開口部452内に配置されている。
【0062】
上記した構造のパッド44は、たとえば以下に示す方法により形成することができる。まず、層間絶縁膜46上に、たとえばスパッタ法により、第1層44a1を成膜する。次いで、たとえばスピンコートにより、第1層44a1を覆うように保護膜45を形成する。そして、フォトレジストをマスクとしてエッチングを行うことで保護膜45をパターニングし、開口部451、452を形成する。
【0063】
次いで、たとえばスパッタ法により、第2層44a2を成膜する。このとき、開口部451を埋めるように、第2層44a2を成膜する。そして、フォトレジストをマスクとしてエッチングを行うことで第2層44a2をパターニングし、第2層44a2を開口部452内のみに残す。次いで、めっき法により、上地層44bを第2層44a2上に成膜する。以上により、凸部442を有するパッド44を形成することができる。
【0064】
<第1実施形態のまとめ>
半導体素子40は、大電流を流すため発熱する。半導体素子40(MOSFET11)のオンオフの繰り返しにより、半導体装置20は、過熱状態と冷却状態とを繰り返す。これにより、半導体装置20の構成要素には、線膨張係数の違いによる熱応力が作用する。
【0065】
本実施形態では、パッド44の露出面441において、周辺領域441bの少なくとも一部の面と、接続領域441aの面との相対的な角度が90度である。このため、露出面441において、周辺領域441bと接続領域441aとの間で封止体30の剥離が進展し難い。
【0066】
たとえば周辺領域441bの面に対して封止体30が剥離しても、剥離が接続領域441aの面に進展し難い。これにより、ボンディングワイヤ90とパッド44との接続部(接合部)に応力が作用し、クラックや断線などの電気的な接続不良が生じるのを抑制することができる。また、熱応力によりボンディングワイヤ90とパッド44との接続部にクラックが生じても、クラックを起点とし、接続領域441aの面に対する封止体30の剥離が、周辺領域441bの面に進展し難い。以上より、信頼性が高い半導体装置20を提供することができる。
【0067】
本実施形態では、パッド44が、保護膜45の開口周縁453に対して突出する凸部442を有している。そして、凸部442において、接続領域441aを提供する上面442aと、周辺領域441bを提供する側面442bとのなす角度θaを、90度としている。たとえば
図6に示すように、側面442bに対する封止体30の剥離がZ1方向に進展しても、上面442a側に進展するのを抑制することができる。また、上面442aに対する封止体30の剥離が
図6に示すY1方向に進展しても、側面442b側に進展するのを抑制することができる。
【0068】
本実施形態では、凸部442の側面442bと保護膜45の開口周縁453とのなす角度θbを、90度としている。たとえば
図6に示すように、保護膜45に対する封止体30の剥離がY2方向に進展しても、側面442b側に進展するのを抑制することができる。また、側面442bに対する封止体30の剥離が
図6に示すZ2方向に進展しても、保護膜45の開口周縁453、つまり保護膜45の上面側に進展するのを抑制することができる。
【0069】
凸部442を有する構成では、上記したY2方向に剥離が進展すると凸部442に達する。角度θbが鈍角、つまり90度より大きい場合、Y方向成分により剥離が側面442bとの界面を進展する虞がある。本実施形態では、角度θbが90度であるため、剥離の進展を効果的に抑制することができる。これにより、たとえば封止体30と保護膜45との界面で生じた剥離が、ボンディングワイヤ90とパッド44との接続部(接合部)まで進展するのを効果的に抑制することができる。つまり、剥離進展によるボンディングワイヤ90とパッド44との接続部にクラックや断線などが生じるのを抑制することができる。角度θaをなす部分と、角度θbをなす部分との相乗効果により、剥離進展を効果的に抑制することができる。
【0070】
<変形例>
凸部442が上地層44bのみにより構成される例を示したが、これに限定されない。たとえば
図7に示すように、下地層44aと上地層44bとにより、凸部442を構成してもよい。
図7では、第2層44a2が、保護膜45の開口部451を埋めるとともに、開口周縁453よりも上方まで配置されている。側面442bのほぼ全域は、Z方向に対して略平行である。このような凸部442は、開口部451の上端よりも上方まで第2層44a2を成膜し、パターニングすればよい。
図7は、
図5に対応する断面図である。
【0071】
周辺領域441bの少なくとも一部の面と、接続領域441aの面との相対的な角度が90度の例を示したが、これに限定されない。周辺領域441bの少なくとも一部の面と、接続領域441aの面との相対的な角度を90度より小さい角度にしてもよい。つまり、角度θaを鋭角にしてもよい。鋭角にすることで、剥離の進展をより効果的に抑制することができる。
【0072】
角度θbが90度の例を示したこれに限定されない。
図8に示すように、側面442bと開口周縁453とのなす角度、つまり上記した角度θbを鋭角にしてもよい。
図8は、
図5に対応する断面図である。
図8では、
図7同様、下地層44aと上地層44bとにより、凸部442を構成している。第2層44a2をパターニングする際、側面がテーパ面となるようにエッチングすることで、側面442bにおいて凸部442の下端から所定の範囲と開口周縁453とのなす角度θbを、90度より小さい角度にしている。
【0073】
凸部442の側面442bに溝を設けてもよい。これにより、側面442bに対する封止体30の密着性を高めることができる。つまり、側面442bを介した剥離の進展を抑制することができる。
【0074】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、パッド44に凸部442を設けた。これに代えて、パッド44に凹部を設けてもよい。
【0075】
図9は、本実施形態に係る半導体装置20において、半導体素子40のパッド周辺を示す断面図である。
図9は、
図5に対応している。
図9では、便宜上、ドレイン電極43の図示を省略している。
図10は、パッド44の凹部形状を示している。
図10は、
図9に一点鎖線で示す領域Xを拡大した図である。
図10では、封止体30およびボンディングワイヤ90についても図示している。明確化のために、
図10では、封止体30およびパッド44のハッチングを意図的に省略している。
【0076】
図9および
図10に示すように、本実施形態では、パッド44が、凹部443を有している。凹部443は、保護膜45の開口部451内において設けられている。パッド44は、先行実施形態同様、下地層44aと上地層44bとを備えて構成されている。第2層44a2は、開口部451内に配置されている。第2層44a2の下端は開口部451の下端にほぼ一致し、第2層44a2の上端は開口部451の上端にほぼ一致している。
【0077】
第2層44a2は、上端(上面)に開口する溝444を有している。溝444は、第2層44a2の下端に達しない深さを有している。上地層44bは、溝444内に配置されている。上地層44bは、溝444を第2層44a2の上面より低い位置まで埋めている。
【0078】
パッド44は、凹部443を規定する壁面として、上面443aと、側面443bと、底面443cを有している。上面443aは、第2層44a2の上端(上面)である。側面443bは、第2層44a2において、溝444の側面の一部を規定する面である。底面443cは、上地層44bの上面である。そして、底面443cが、露出面441の接続領域441aを提供している。また、上面443aおよび側面443bが、周辺領域441bを提供している。
【0079】
本実施形態では、接続領域441aを提供する底面443cのほぼ全域が、XY平面に対して略平行である。底面443cは、略平坦な面である。底面443cは、たとえばY方向を長手方向とする平面略矩形状をなしている。また、周辺領域441bを提供する側面443bのほぼ全域が、Z方向に対して略平行である。これにより、底面443cと側面443bとの相対的な角度θc、つまり接続領域441aと周辺領域441bとの相対的な角度が、90度である。底面443cと側面443bとの相対的な角度θcとは、底面443cと側面443bとのなす角度である。
【0080】
さらに本実施形態では、上面443aが、XY平面に略平行である。上面443aは、略面一で開口周縁453に連なっている。これにより、側面443bと上面443a、ひいては開口周縁453との相対的な角度θdが、90度である。その他の構成については、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0081】
上記した構造のパッド44は、たとえば以下に示す方法により形成することができる。まず、層間絶縁膜46上に、たとえばスパッタ法により、第1層44a1を成膜する。次いで、たとえばスピンコートにより、第1層44a1を覆うように保護膜45を形成する。そして、フォトレジストをマスクとしてエッチングを行うことで保護膜45をパターニングし、開口部451、452を形成する。
【0082】
次いで、たとえばスパッタ法により、第2層44a2を成膜する。このとき、開口部451を埋めるように、第2層44a2を成膜する。そして、フォトレジストをマスクとしてエッチングを行うことで第2層44a2をパターニングする。これにより、第2層44a2を開口部452内のみに残すとともに、第2層44a2に溝444を形成する。次いで、めっき法により、上地層44bを第2層44a2の溝444内に成膜する。以上により、凹部443を有するパッド44を形成することができる。
【0083】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態においても、パッド44の露出面441において、周辺領域441bの少なくとも一部の面と、接続領域441aの面との相対的な角度が90度である。このため、露出面441において、周辺領域441bと接続領域441aとの間で封止体30の剥離が進展し難い。以上より、信頼性が高い半導体装置20を提供することができる。
【0084】
本実施形態では、パッド44が、保護膜45の開口部451内において設けられた凹部443を有している。そして、接続領域441aを提供する底面443cと、周辺領域441bを提供する側面443bとのなす角度θcを、90度としている。たとえば
図10に示すように、側面443bに対する封止体30の剥離がZ3方向に進展しても、底面443c側に進展するのを抑制することができる。また、底面443cに対する封止体30の剥離が
図10に示すY3方向に進展しても、側面443b側に進展するのを抑制することができる。
【0085】
本実施形態では、側面443bと上面443aとのなす角度θd、つまり側面443bと開口周縁453とのなす角度を、90度としている。たとえば
図10に示すように、保護膜45に対する封止体30の剥離がY4方向に進展しても、側面443b側に進展するのを抑制することができる。また、側面443bに対する封止体30の剥離が
図10に示すZ4方向に進展しても、保護膜45の開口周縁453、つまり保護膜45の上面側に進展するのを抑制することができる。
【0086】
凹部443を有する構成では、上記したY3方向に剥離が進展すると側面443bに達する。角度θcが鈍角、つまり90度より大きい場合、Y方向成分により剥離が側面443bとの界面を進展する虞がある。本実施形態では、角度θcが90度であるため、剥離の進展を効果的に抑制することができる。これにより、ボンディングワイヤ90とパッド44との接続部(接合部)のクラックを起点とする剥離が、パッド44の周囲に進展するのを効果的に抑制することができる。たとえば、剥離がソース電極42に向けて進展し、ソース電極42の接続信頼性が低下するのを抑制することができる。また、剥離が半導体素子40の外周端に進展し、ソース電極42とドレイン電極43とが短絡する、つまり絶縁信頼性が低下するのを抑制することができる。角度θcをなす部分と、角度θdをなす部分との相乗効果により、剥離進展を効果的に抑制することができる。
【0087】
<変形例>
周辺領域441bの少なくとも一部の面と、接続領域441aの面との相対的な角度が90度の例を示したが、これに限定されない。周辺領域441bの少なくとも一部の面と、接続領域441aの面との相対的な角度を90度より小さい角度にしてもよい。
図11に示す例では、底面443cと側面443bとのなす角度、つまり上記した角度θcが鋭角である。このような構造は、第2層44a2をパターニングする際に、溝444が逆テーパとなるようにエッチングすることで得ることができる。角度θcを鋭角にすることで、剥離の進展をより効果的に抑制することができる。
図11は、
図9に対応する断面図である。
【0088】
角度θdが90度の例を示したこれに限定されない。
図11に示すように、角度θdを、90度より小さい角度、つまり鋭角としてもよい。
【0089】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、パッド44に凸部442または凹部443を設けた。これに代えて、保護膜45に凸部および/または凹部を設けてもよい。
【0090】
図12は、本実施形態に係る半導体装置20において、ソース電極42とパッド44との間の保護膜周辺を示す断面図である。
図12では、半導体基板41などを省略して図示している。
【0091】
ソース電極42は、上記したように多層構造をなしている。ソース電極42は、下地層42aと、上地層42bを有している。下地層42aは、下地層44aと共通の材料、たとえばAl合金を材料として形成されている。
【0092】
上地層42bは、開口部452から露出する下地層42a上に積層配置されている。上地層42bは、開口部452内に配置されている。上地層42bの上面は、保護膜45の開口周縁454よりも低い位置である。開口周縁454は、保護膜45の上面のうち、開口部452の周縁部分である。
【0093】
上地層42bは、上地層44bと共通の構成である。上地層42bは、Ni層を少なくとも含む。Niは、下地層42aを構成するAl合金よりも硬い。上地層42bは、Ni層上に、さらにAu層を備えてもよい。Au層は、たとえば、Ni層の酸化を抑制してはんだとの濡れ性を向上する。Auは、はんだ付け時にはんだ中に拡散する。接合材91がはんだの場合、Au層は、はんだ接合する前の状態で存在し、はんだ接合した状態で存在しない。
【0094】
ソース電極42は、パッド44のひとつと電気的に接続されてもよい。
図12に示すパッド44は、半導体基板41に形成されたMOSFET11のソース電位を検出するケルビンソース用のパッドである。ソース電極42の下地層42aとケルビンソース用のパッド44の第1層44a1とが、電気的に接続されている。他のパッド44の第1層44a1は、ソース電極42の下地層42aに対して電気的に分離されている。
【0095】
保護膜45は、保護膜45aを含んでいる。保護膜45aは、保護膜45のうち、平面視においてソース電極42とパッド44との間に配置された部分である。保護膜45aは、凸部455および凹部456を有している。凸部455は、開口周縁454に連なっている。凸部455は、Z方向において開口周縁454よりも上方に突出している。凹部456は、開口周縁453に連なっている。凹部456は、Z方向において開口周縁453に対して凹んでいる。その他の構成については、先行実施形態に記載の半導体装置20と同様である。パッド44は、第1実施形態に記載の構成(
図5参照)と同様である。
【0096】
<第3実施形態のまとめ>
近年、大電流化のために素子面積を拡大しており、ソース電極42とパッド44との距離が短くなってきている。つまり、ソース電極42側で生じた剥離が、パッド44に到達しやすくなっている。
図12に示すように、封止体30、ソース電極42(上地層42b)、および接合材91の三重点TPが形成される構成では、三重点TPに熱応力が集中しやすい。たとえば封止体30の剥離は、三重点TPを起点として生じ、パッド44に向けて進展する。剥離がパッド44に到達することで、ボンディングワイヤ90とパッド44との接続部(接合部)にクラックが生じたり、ボンディングワイヤ90に断線が生じたりする虞がある。つまり、ボンディングワイヤ90とパッド44との接続部において接続信頼性が低下する。
【0097】
また、熱応力によりボンディングワイヤ90とパッド44との接続部に生じたクラックを起点として剥離が進展し、ソース電極42に到達すると、接合材91やソース電極42に熱応力が集中しやすくなる。つまり、ソース電極42の接続部において接続信頼性が低下する。
【0098】
本実施形態では、保護膜45aが、凸部455および凹部456を有している。凸部455を規定する壁面は、保護膜45の上面に対する封止体30の剥離の進行方向に対して直交成分を有する。これにより、凸部455よりもソース電極42寄りの部分と、凸部455よりもパッド44よりも部分との間で、封止体30の剥離が進展し難い。同様に、凹部456を規定する壁面は、保護膜45の上面に対する封止体30の剥離の進行方向に対して直交成分を有する。これにより、凹部456よりもソース電極42寄りの部分と、凹部456よりもパッド44よりも部分との間で、封止体30の剥離が進展し難い。この結果、ソース電極42とパッド44との間で、封止体30の剥離が進展するのを抑制することができる。したがって、先行実施形態に記載の効果と相まって、接続信頼性の低下をより効果的に抑制することができる。
【0099】
また、保護膜45に凸部455および凹部456を設けることで、封止体30と保護膜45との接触面積が増加し、アンカー効果も期待できる。つまり、保護膜45に対する封止体30の密着性を高めることができる。これによっても、剥離の進展を抑制することができる。
【0100】
<変形例>
保護膜45aが凸部455および凹部456を有する例を示したが、これに限定されない。凸部455のみを有してもよいし、凹部456のみを有してもよい。ソース電極42側に凹部456を設け、パッド44側に凸部455を設けてもよい。
【0101】
保護膜45aに凸部455および/または凹部456を設ける例を示したが、これに限定されない。パッド44の周辺において、保護膜45a以外の部分に、凸部455および/または凹部456を設けてもよい。たとえば
図13に示すように、Y方向の両サイドに凸部455および凹部456を設けてもよい。
図13は、
図5に対応する断面図である。
【0102】
凸部455および凹部456は、ソース電極42とパッド44との間の保護膜45aだけでなく、パッド44と半導体素子40の端部との間の保護膜45bにも設けられている。これによれば、上記した効果に加えて、ボンディングワイヤ90とパッド44との接続部に生じたクラックを起点として剥離が半導体素子40の端部に到達し、絶縁信頼性が低下するのを抑制することができる。
図13では、保護膜45a、45bのそれぞれに凸部455および凹部456を設けているが、凸部455および凹部456の一方のみを設けてもよいことは言うまでもない。
【0103】
本実施形態に記載の構成は、第1実施形態に記載の構成、第2実施形態に記載の構成、各種変形例のいずれとも組み合わせが可能である。たとえば
図12においてパッド44が凸部442を有する例を示したが、凹部443を有する構成とも組み合わせが可能である。
【0104】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、はんだと保護膜との境界、すなわち保護膜の開口端を、アクティブ領域と重なる位置に設けた。これに代えて、保護膜の開口端を、アクティブ領域よりも外側に設けてもよい。
【0105】
図14は、本実施形態に係る半導体装置20において、半導体素子40のパッド周辺を示す断面図である。
図14は、
図6に対応している。ただし、
図14では、封止体30およびパッド44にもハッチングを施している。
図15は、パッド44を示す平面図である。
【0106】
パッド44は、第1実施形態に記載の構成(
図5参照)と同様、凸部442を有している。
図14および
図15に示すように、パッド44は、上地層44bを貫通し、下地層44aを底とする溝445を有している。溝445は、パッド44におけるボンディングワイヤとの接合部を取り囲むように、平面視において環状に設けられている。その他の構成については、先行実施形態に記載の半導体装置20と同様である。
【0107】
<第4実施形態のまとめ>
本実施形態では、パッド44が、上地層44bを貫通する溝445を有している。溝445を規定する壁面は、凸部442の上面442aに対する封止体30の剥離の進行方向に対して直交成分を有する。これにより、封止体30の剥離が進展し難い。したがって、先行実施形態に記載の効果と相まって、半導体装置20の信頼性をさらに高めることができる。
【0108】
また、溝445を設けることで、封止体30とパッド44との接触面積が増加し、アンカー効果も期待できる。つまり、パッド44に対する封止体30の密着性を高めることができる。これによっても、剥離の進展を抑制することができる。
【0109】
<変形例>
溝445を多重に設けてもよい。また、多重に設けた溝445の一部を、平面視においてパッド44におけるボンディングワイヤ90との接合部の直下に配置してもよい。
【0110】
本実施形態に記載の構成は、第1実施形態に記載の構成、第2実施形態に記載の構成、第3実施形態に記載の構成、各種変形例のいずれとも組み合わせが可能である。たとえば凹部443を有する構成において、上地層44bに溝445を設けてもよい。
【0111】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0112】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0113】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0114】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0115】
車両の駆動システム1は、上記した構成に限定されない。モータジェネレータ3をひとつ備える例を示したが、これに限定されない。複数のモータジェネレータを備えてもよい。電力変換装置4が、電力変換部としてインバータ6を備える例を示したが、これに限定されない。たとえば、複数のインバータを備える構成としてもよい。すくなくともひとつのインバータと、コンバータを備える構成としてもよい。コンバータのみを備えてもよい。
【0116】
半導体素子40が、スイッチング素子としてMOSFET11を有する例を示したが、これに限定されない。たとえば、IGBTを採用することもできる。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。
【0117】
ヒートシンク50、60の裏面50b、60bが、封止体30から露出する例を示したが、これに限定されない。裏面50b、60bの少なくとも一方が、封止体30によって覆われた構成としてもよい。裏面50b、60bの少なくとも一方が、封止体30とは別の図示しない絶縁部材によって覆われた構成としてもよい。
【0118】
ソース電極42(第1主電極)に接続される第1配線部材として、ヒートシンク50および導電スペーサ70を備え、ドレイン電極43(第2主電極)に接続される第2配線部材としてヒートシンク60を備える例を示した。しかしながら、配線部材は、上記した例に限定されない。たとえば、ヒートシンク50、60に代えて、絶縁基材の両面に金属体が配置された基板を採用してもよい。基板の一例は、DBC基板である。DBCは、Direct Bonded Copperの略称である。導電スペーサ70に代えて、ヒートシンク50に凸部を設けてもよい。同様に、基板の内面側の金属体に凸部を設けてもよい。
【0119】
半導体装置20として、両面放熱構造の例を示したが、これに限定されない。片面放熱構造にも適用することができる。たとえばドレイン電極43はヒートシンクまたは基板の金属体に接続され、ソース電極42はリードに接続されてもよい。
【0120】
半導体装置20が、ひとつのアームを構成する半導体素子40をひとつのみ備える例を示したが、これに限定されない。半導体装置20が、ひとつのアームを構成する複数の半導体素子40を備えてもよい。つまり、複数の半導体素子40が互いに並列接続されてひとつのアームを構成してもよい。また、半導体装置20が、一相分の上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子40を備えてもよい。複数相の上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子40を備えてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1…駆動システム、2…直流電源、3…モータジェネレータ、4…電力変換装置、5…平滑コンデンサ、6…インバータ、7…Pライン、8…Nライン、9…上下アーム回路、9H…上アーム、9L…下アーム、10…出力ライン、11…IGBT、12…ダイオード、20…半導体装置、30…封止樹脂体、30a…一面、30b…裏面、30c、30d…側面、40…半導体素子、41…半導体基板、41a…一面、41b…裏面、42…ソース電極、42a…下地層、42b…上地層、421…露出面、43…ドレイン電極、44…パッド、44a…下地層、44a1…第1層、4a2…第2層、44b…上地層、441…露出面、441a…接続領域、441b…周辺領域、442…凸部、442a…上面、442b…側面、442c…一部、443…凹部、443a…上面、443b…側面、443c…底面、444、445…溝、45、45a、45b…保護膜、451、452…開口部、453、454…開口周縁、455…凸部、456…凹部、46…層間絶縁膜、50…ヒートシンク、50a…対向面、50b…裏面、60…ヒートシンク、60a…対向面、60b…裏面、70…導電スペーサ、80…外部接続端子、81、82…主端子、83…信号端子、90…ボンディングワイヤ、91、92、93…接合材
【手続補正書】
【提出日】2024-10-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板(41)と、前記半導体基板の一面上に配置された第1主電極(42)と、前記半導体基板において前記一面とは板厚方向において反対の裏面上に配置された第2主電極(43)と、前記一面上において前記第1主電極とは異なる位置に配置された信号用の電極であるパッド(44)と、を有する半導体素子(40)と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50、70)と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
前記パッドに接続されたボンディングワイヤ(90)と、
前記第1配線部材および前記第2配線部材それぞれの少なくとも一部と、前記半導体素子と、前記ボンディングワイヤを封止する封止体(30)と、を備え、
前記半導体素子は、前記一面上に配置され、開口部(451)が形成された保護膜(45)を有し、
前記パッドは、前記開口部から露出する露出面(441)を有し、
前記露出面は、前記ボンディングワイヤが接続される接続領域(441a)と、前記接続領域の周辺領域(441b)と、を有し、
前記周辺領域は、前記接続領域の面に対する相対的な角度が90度以下の面を含み、
前記保護膜は、前記板厚方向の平面視において、前記第1主電極と前記パッドとの間に、凸部(455)および/または凹部(456)を有し、
前記第1配線部材を介して前記第1主電極に電気的に接続された第1主端子(81)と、前記第2配線部材を介して前記第2主電極に電気的に接続された第2主端子(82)と、を含む複数の主端子(81,82)をさらに備え、
前記封止体は前記主端子のそれぞれの一部を封止し、前記主端子のそれぞれは前記封止体から突出している、半導体装置。
【請求項2】
前記ボンディングワイヤを介して前記パッドに電気的に接続される信号端子(83)をさらに備え、
前記封止体は前記信号端子の一部を封止し、前記信号端子は前記封止体から突出している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記信号端子は、前記封止体において前記主端子が突出する面とは反対の面から突出している、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2配線部材の一部が前記封止体から露出している、請求項1~3いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1配線部材の一部が前記封止体から露出している、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1配線部材は、前記第2配線部材が露出する面とは前記板厚方向において反対の面から露出している、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板は、シリコン、シリコンカーバイド、窒化ガリウム、酸化ガリウム、およびダイヤモンドのいずれかを材料として形成されている、請求項1~6いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記封止体は、モールド樹脂またはゲルである、請求項1~7いずれか1項に記載の半導体装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
ここに開示された半導体装置は、
半導体基板(41)と、半導体基板の一面上に配置された第1主電極(42)と、半導体基板において一面とは板厚方向において反対の裏面上に配置された第2主電極(43)と、一面上において第1主電極とは異なる位置に配置された信号用の電極であるパッド(44)と、を有する半導体素子(40)と、
第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50、70)と、
第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
パッドに接続されたボンディングワイヤ(90)と、
第1配線部材および第2配線部材それぞれの少なくとも一部と、半導体素子と、ボンディングワイヤを封止する封止体(30)と、を備え、
半導体素子は、一面上に配置され、開口部(451)が形成された保護膜(45)を有し、
パッドは、開口部から露出する露出面(441)を有し、
露出面は、ボンディングワイヤが接続される接続領域(441a)と、接続領域の周辺領域(441b)と、を有し、
周辺領域は、接続領域の面に対する相対的な角度が90度以下の面を含み、
保護膜は、板厚方向の平面視において、第1主電極とパッドとの間に、凸部(455)および/または凹部(456)を有し、
第1配線部材を介して第1主電極に電気的に接続された第1主端子(81)と、第2配線部材を介して第2主電極に電気的に接続された第2主端子(82)と、を含む複数の主端子(81,82)をさらに備え、
封止体は主端子のそれぞれの一部を封止し、主端子のそれぞれは封止体から突出している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0120
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0120】
半導体装置20が、ひとつのアームを構成する半導体素子40をひとつのみ備える例を示したが、これに限定されない。半導体装置20が、ひとつのアームを構成する複数の半導体素子40を備えてもよい。つまり、複数の半導体素子40が互いに並列接続されてひとつのアームを構成してもよい。また、半導体装置20が、一相分の上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子40を備えてもよい。複数相の上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子40を備えてもよい。
ここまで説明した実施形態及び変形例から把握される技術的思想を、付記として以下に記載する。
<付記1>
半導体基板(41)と、前記半導体基板の一面上に配置された第1主電極(42)と、前記半導体基板において前記一面とは板厚方向において反対の裏面上に配置された第2主電極(43)と、前記一面上において前記第1主電極とは異なる位置に配置された信号用の電極であるパッド(44)と、を有する半導体素子(40)と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50、70)と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
前記パッドに接続されたボンディングワイヤ(90)と、
前記第1配線部材および前記第2配線部材それぞれの少なくとも一部と、前記半導体素子と、前記ボンディングワイヤを封止する封止体(30)と、を備え、
前記半導体素子は、前記一面上に配置され、開口部(451)が形成された保護膜(45)を有し、
前記パッドは、前記開口部から露出する露出面(441)を有し、
前記露出面は、前記ボンディングワイヤが接続される接続領域(441a)と、前記接続領域の周辺領域(441b)と、を有し、
前記周辺領域は、前記接続領域の面に対する相対的な角度が90度以下の面を含み、
前記保護膜は、前記板厚方向の平面視において、前記第1主電極と前記パッドとの間に、凸部(455)および/または凹部(456)を有する、半導体装置。
<付記2>
前記パッドは、下地層(44a)と、前記下地層上に積層配置され、前記露出面の少なくとも一部を提供する上地層(44b)と、前記上地層を貫通する溝(445)と、を有する、付記1に記載の半導体装置。
<付記3>
半導体基板(41)と、前記半導体基板の一面上に配置された第1主電極(42)と、前記半導体基板において前記一面とは板厚方向において反対の裏面上に配置された第2主電極(43)と、前記一面上において前記第1主電極とは異なる位置に配置された信号用の電極であるパッド(44)と、を有する半導体素子(40)と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50、70)と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
前記パッドに接続されたボンディングワイヤ(90)と、
前記第1配線部材および前記第2配線部材それぞれの少なくとも一部と、前記半導体素子と、前記ボンディングワイヤを封止する封止体(30)と、を備え、
前記半導体素子は、前記一面上に配置され、開口部(451)が形成された保護膜(45)を有し、
前記パッドは、前記開口部から露出する露出面(441)を有し、
前記露出面は、前記ボンディングワイヤが接続される接続領域(441a)と、前記接続領域の周辺領域(441b)と、を有し、
前記周辺領域は、前記接続領域の面に対する相対的な角度が90度以下の面を含み、
前記パッドは、下地層(44a)と、前記下地層上に積層配置され、前記露出面の少なくとも一部を提供する上地層(44b)と、前記上地層を貫通する溝(445)と、を有する、半導体装置。
<付記4>
前記パッドは、前記保護膜における前記開口部の周縁(453)に対して突出する凸部(442)を有し、
前記凸部の上面(442a)が前記接続領域を提供し、前記凸部の側面(442b)が前記周辺領域を提供する、付記1~3いずれかひとつに記載の半導体装置。
<付記5>
前記側面において前記凸部の下端から所定の範囲の部分は、前記保護膜の前記開口部の周縁に対する相対的な角度が90度以下である、付記4に記載の半導体装置。
<付記6>
前記パッドは、前記開口部内において設けられた凹部(443)を有し、
前記凹部の底面(443c)が前記接続領域を提供し、前記凹部の側面(443b)と前記側面に連なる上面(443a)が前記周辺領域を提供する、付記1~3いずれかひとつに記載の半導体装置。
<付記7>
半導体基板(41)と、前記半導体基板の一面上に配置された第1主電極(42)と、前記半導体基板において前記一面とは板厚方向において反対の裏面上に配置された第2主電極(43)と、前記一面上において前記第1主電極とは異なる位置に配置された信号用の電極であるパッド(44)と、を有する半導体素子(40)と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50、70)と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
前記パッドに接続されたボンディングワイヤ(90)と、
前記第1配線部材および前記第2配線部材それぞれの少なくとも一部と、前記半導体素子と、前記ボンディングワイヤを封止する封止体(30)と、を備え、
前記半導体素子は、前記一面上に配置され、開口部(451)が形成された保護膜(45)を有し、
前記パッドは、前記開口部から露出する露出面(441)を有し、
前記露出面は、前記ボンディングワイヤが接続される接続領域(441a)と、前記接続領域の周辺領域(441b)と、を有し、
前記周辺領域は、前記接続領域の面に対する相対的な角度が90度以下の面を含み、
前記パッドは、前記開口部内において設けられた凹部(443)を有し、
前記凹部の底面(443c)が前記接続領域を提供し、前記凹部の側面(443b)と前記側面に連なる上面(443a)が前記周辺領域を提供する、半導体装置。