(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177367
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】画像処理装置、移動体、制御方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20241212BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241212BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R11/02 C
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174000
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2021155237の分割
【原出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】登川 生就
(72)【発明者】
【氏名】土屋 知朗
(57)【要約】
【課題】
高解像度の第1画像と、下方を広範囲に表示し確認することができる低解像度の第2画像とを1つの撮像手段からの画像より生成可能な画像処理装置を実現する。
【解決手段】
画像処理装置において、移動体の後方を撮像する撮像手段から画像を取得する取得手段と、前記画像の内、前記撮像手段のセンサ面の中心を含む領域で形成された第1領域を切り出すことにより第1画像を生成し、前記第1領域とは異なる画像領域から第2領域を切り出すことにより第2画像を生成する画像生成手段と、前記第1画像を表示させると共に、前記第2画像を前記移動体の後退時に表示させる表示制御手段と、を有し、前記画像生成手段は、前記第1領域の下部の領域と前記第2領域の上部の一部の領域とが重複するように前記第1画像及び前記第2画像を生成することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の後方を撮像する撮像手段から画像を取得する取得手段と、
前記画像の内、前記撮像手段のセンサ面の中心を含む領域で形成された第1領域を切り出すことにより第1画像を生成し、前記第1領域とは異なる画像領域から第2領域を切り出すことにより第2画像を生成する画像生成手段と、
前記第1画像を表示させると共に、前記第2画像を前記移動体の後退時に表示させる表示制御手段と、を有し、
前記画像生成手段は、前記第1領域の下部の領域と前記第2領域の上部の一部の領域とが重複するように前記第1画像及び前記第2画像を生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像は、前記撮像手段のセンサ面の中心から所定の半画角未満の中心寄りの高解像度領域と前記センサ面の前記所定の半画角以上外寄りの低解像度領域とを有するセンサ面に、光学像を形成する光学系を用いて撮像され、
前記画像生成手段は、前記高解像度領域に対応する画像領域から前記第1領域を切り出すことにより前記第1画像を生成し、前記第1画像とは異なり前記低解像度領域を含む画像領域から前記第2領域を切り出すことにより前記第2画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像生成手段は、
前記第1領域の下端より前記第2領域の下端全てが下になるようにかつ、
前記第1領域の上端より前記第2領域の上端全てが下になるように前記第1画像及び前記第2画像を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像生成手段は、
前記第2領域の左端は前記第1領域の左端より左側でかつ、
前記第2領域の右端は前記第1領域の右端より右側になるように前記第1画像及び前記第2画像を生成することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像生成手段は、
前記第2領域の上端が、前記第1領域の上端と下端の間になるように前記第1画像及び前記第2画像を生成することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像生成手段は、
前記第2領域の上端が、撮像画像上の地平線又は水平線より上になるように前記第1画像及び前記第2画像を生成することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記撮像手段の焦点距離をf、半画角をθ、像面での像高をy、像高yと半画角θとの関係を表す射影特性をy(θ)とするとき、
前記第1領域におけるy(θ)はf×θより大きく、前記第2領域における前記射影特性とは異なることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1領域は、中心射影方式(y=f×tanθ)又は等距離射影方式(y=f×θ)に近似した射影特性となるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
θmaxを前記撮像手段の光学系が有する最大の半画角、Aを所定の定数とするとき、
【数1】
を満足するように構成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記第1画像に対して幾何学変形処理を施さず、前記第2画像に対して所定の幾何学変形処理を施して前記表示制御手段から出力することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
車両の状態情報を取得する通信手段を有し、
前記画像生成手段は、前記車両の状態情報に応じて前記第2領域を変化させることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記画像生成手段は、前記車両の状態情報に含まれる前記車両の走行速度情報に基づいて、所定の走行速度より速いか否かを判断し、前記所定の走行速度より速いと判断しなかった場合の前記第2領域の上端より、前記所定の走行速度より速いと判断した場合の前記第2領域の上端を上にすることを特徴とする請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記画像生成手段は、前記車両の状態情報に含まれる前記車両の周囲の障害物情報に基づいて、障害物があると判断した場合は、障害物がないと判断した場合よりも、前記第2領域を大きくすると共に、前記第2領域に前記障害物が含まれるようにすることを特徴とする請求項11又は12に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記画像生成手段は、前記車両の状態情報に含まれる前記車両の進行方向情報に基づいて、前記車両が後退していると判断した場合は、前記第2画像を前記表示制御手段から出力し、
前記車両が後退していると判断しなかった場合は、前記第2画像を前記表示制御手段から出力しないことを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載された画像処理装置を搭載し、
前記表示制御手段から出力された前記第1画像及び前記第2画像の少なくとも一方を表示する表示手段と、を有することを特徴とする移動体。
【請求項16】
移動体の後方を撮像する撮像手段から画像を取得する取得ステップと、
前記画像の内、前記撮像手段のセンサ面の中心を含む領域で形成された第1領域を切り出すことにより第1画像を生成し、前記第1領域とは異なる画像領域から第2領域を切り出すことにより第2画像を生成する画像生成ステップと、
前記第1画像を表示させると共に、前記第2画像を前記移動体の後退時に表示させる表示制御手段と、を有し
前記画像生成ステップは、前記第1領域の下部の領域と前記第2領域の上部の一部の領域とが重複するように前記第1画像及び前記第2画像を生成することを特徴とする制御方法。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか1項に記載の画像処理装置又は請求項15に記載の移動体の各手段をコンピュータにより制御するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解像度の異なる画像を取得可能な画像処理装置、移動体、制御方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されるルームミラー(後写鏡)を電子ルームミラーで置き換えるという要望がある。特許文献1には、車両外の後方を撮像範囲とする撮像手段と車両内の表示手段で構成され、撮像手段で撮像した画像を車両内のディスプレイで表示することにより、ドライバーが車両外の後方の様子を確認できる電子ルームミラーシステムが開示されている。
【0003】
他方、車両の後退時などに車両後方の死角をドライバーが確認できるようにする後方確認システムがある。特許文献2には、車両後方を撮像するようにカメラを設置し、撮像画像を車室内に表示することにより、後退時などに車両後方の死角をドライバーが確認できるようにするための後方確認システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-95202号公報
【特許文献2】特開2004-345554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の電子ルームミラー用画像を撮像する撮像手段としてのカメラは、ドライバーが後方の比較的遠方の様子をより精細に確認するため高解像度を有することが求められる。一方で、後方確認システム用カメラは、後退時などの衝突を回避するために、車両後方の死角や後側方を含んだより広い範囲での安全を確認するため、より広い範囲を撮像することが求められる。
【0006】
従って、電子ルームミラーシステムと後方確認システムを車両に同時に搭載する場合、電子ルームミラーシステム用のカメラと、後方確認システム用のカメラを個別に搭載すると車載カメラシステムが複雑になるという課題があった。
【0007】
従って本発明では、上記の課題を鑑みて、高解像度の第1画像と、下方を広範囲に表示し確認することができる低解像度の第2画像とを1つの撮像手段からの画像より生成可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の1つの側面の画像処理装置は、
移動体の後方を撮像する撮像手段から画像を取得する取得手段と、
前記画像の内、前記撮像手段のセンサ面の中心を含む領域で形成された第1領域を切り出すことにより第1画像を生成し、前記第1領域とは異なる画像領域から第2領域を切り出すことにより第2画像を生成する画像生成手段と、
前記第1画像を表示させると共に、前記第2画像を前記移動体の後退時に表示させる表示制御手段と、を有し、
前記画像生成手段は、前記第1領域の下部の領域と前記第2領域の上部の一部の領域とが重複するように前記第1画像及び前記第2画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高解像度の第1画像と、下方を広範囲に表示し確認することができる低解像度の第2画像とを1つの撮像手段からの画像より生成可能な画像処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】車両1と撮像部2の位置関係を説明する図である。
【
図2】(A)、(B)は、撮像部2の光学特性を説明するための図である。
【
図3】実施例1におけるカメラシステムの構成を示すブロック図である。
【
図4】(A)~(D)は、実施例1における切り出し領域の例を説明するための図である。
【
図5】実施例2におけるカメラシステムの処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について実施例を用いて説明する。尚、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化する。
【実施例0012】
本実施例では、高精細な電子ルームミラー用の表示と広範囲な後方確認用の表示を1つのカメラで両立する改善された方法について説明する。
図1は、車両1と撮像部2の位置関係を説明する図である。
本実施例では、
図1に示すように、移動体としての例えば自動車の車両1の後方に撮像部2が設置される。撮像部2は、移動体としての車両の後方を撮像範囲とするように設置されている。撮像部2は、光学像を形成する光学系と、光学系が撮像部2の受光部に形成した光学像を撮像するためのセンサを有する。尚、撮像部2が有する光学系の光軸が略水平となるように設置することが望ましい。
【0013】
又、本実施例で使用する撮像部2は遠方を高精細かつ広範囲な画角の撮像画像を得るため、十分な画角と中心画角領域での結像倍率とを有する光学系を有している。本実施例における撮像部2が有する光学系について
図2を用いて説明する。
【0014】
図2(A)、(B)は、撮像部2の光学特性を説明するための図であり、
図2(A)は、本実施例における撮像部2が有する光学系の、撮像部2のセンサ面上での各半画角における像高yを等高線状に示した図である。
図2(B)は、本実施例における撮像部2が有する光学系の像高yと半画角θとの関係を表す射影特性を表した図である。
図2(B)では、半画角(光軸と入射光線とがなす角度)θを横軸とし、撮像部2のセンサ面上(像面上)での結像高さ(像高)yを縦軸として示している。
【0015】
本実施例における撮像部2が有する光学系は、
図2(B)に示すように、所定の半画角θa未満の領域と半画角θa以上の領域でその射影特性y(θ)が異なるように構成されている。従って、単位あたりの半画角θに対する像高yの増加量を解像度というとき解像度が領域によって異なる。この局所的な解像度は、射影特性y(θ)の半画角θでの微分値dy(θ)/dθで表されるともいえる。即ち、
図2(B)の射影特性y(θ)の傾きが大きいほど解像度が高いといえる。又、
図2(A)の等高線状の各半画角における像高yの間隔が大きいほど解像度が高いともいえる。
【0016】
本実施例においては、半画角θが所定の半画角θa未満のときにセンサ面上に形成される中心寄りの領域を高解像度領域41(
図2(A))、半画角θが所定の半画角θa以上の外寄りの領域を低解像度領域42(
図2(A))と呼ぶ。
【0017】
本実施例における撮像部2が有する光学系は、高解像度領域41においてその射影特性y(θ)がf×θより大きくなるように構成されている(fは撮像部2が有する光学系の焦点距離)。又、高解像度領域における射影特性y(θ)は低解像度領域における射影特性とは異なるように設定されている。
又、θmaxを撮像部2が有する光学系が有する最大の半画角とするとき、θaとθmaxの比θa/θmaxは所定の下限値以上であることが望ましく、例えば所定の下限値として0.15~0.16が望ましい。
【0018】
又、θaとθmaxの比θa/θmaxは所定の上限値以下であることが望ましく、例えば0.25~0.35とすることが望ましい。例えば、θmaxを90°とし、所定の下限値を0.15、所定の上限値0.35とする場合、θaは13.5~31.5°の範囲で決定することが望ましい。
更に、撮像部2が有する光学系は、その射影特性y(θ)が、以下の数1も満足するように構成されている。
【0019】
【数1】
fは、前述のように撮像部2が有する光学系の焦点距離であり、Aは所定の定数である。下限値を1とすることで、同じ最大結像高さを有する正射影方式(y=f×sinθ)の魚眼レンズよりも中心解像度を高くすることができ、上限値をAとすることで、魚眼レンズ同等の画角を得つつ良好な光学性能を維持することができる。所定の定数Aは、高解像度領域と、低解像度領域の解像度のバランスを考慮して決めればよく、1.4~1.9となるようにするのが望ましい。
【0020】
以上のように光学系を構成することで、高解像度領域41においては、解像度が得られる一方、低解像度領域42では、単位あたりの半画角θに対する像高yの増加量を小さくし、より広い画角を撮像することが可能になる。従って、魚眼レンズと同等の広画角を撮像範囲としつつ、高解像度領域41においては、高い解像度を得ることができる。
【0021】
更に、本実施例では、高解像度領域においては、通常の撮像用の光学系の射影特性である中心射影方式(y=f×tanθ)や等距離射影方式(y=f×θ)に近い特性としているため、光学歪曲が小さく、精細に表示することが可能となる。従って、先行車や後続車両といった周囲の車両等を目視する際における自然な遠近感が得られると共に、画質の劣化を抑えて良好な視認性を得ることができる。
尚、上述の数1の条件を満たす射影特性y(θ)であれば、同様の効果を得ることができるため、
図2に示した射影特性に限定されない。
【0022】
次に本実施例におけるカメラシステム(画像処理装置)の構成について
図3を用いて説明する。
図3は実施例1におけるカメラシステムの構成を示すブロック図である。
本実施例におけるカメラシステムは、撮像部2、画像処理部3、第1表示部4と第2表示部5等を含む。
【0023】
撮像部2は、光学系、センサ、画像出力インターフェースなどから構成される。光学系は、1枚以上の光学レンズから構成されており、数1の条件を満たすように構成されており、例えば
図2に示すような特性を有するように構成される。
光学系を通った光は、センサの受光面上に結像する。センサは、受光した光を電気信号に変換して画像データとして出力する。センサとしては、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサを用いることができる。センサから出力された画像データは、画像出力インターフェースを介して、画像処理部3へ出力される。
【0024】
画像処理部3は、画像補正部300、第1画像生成部311、第2画像生成部312、表示制御部320、CPU330、RAM340、ROM350、通信部360等から構成される。画像補正部300、第1画像生成部311、第2画像生成部312、表示制御部320、CPU330、RAM340、ROM350、通信部360は、バス399により夫々相互に接続されている。
【0025】
コンピュータとしてのCPU330は、画像処理部3の各動作ブロックを制御するものであり、記憶媒体としてのROM350には、CPU330の処理手順を記述した制御用のコンピュータプログラムが記憶されている。RAM340は、ワークメモリとして一時的に制御用のコンピュータプログラムやデータが格納される。
【0026】
尚、
図3に示される300、311,312,320等の機能ブロックの一部又は全部をハードウェアで実現するようにしても良いし、CPU330に、ROM350に記憶されたコンピュータプログラムを実行させることによって実現しても良い。ハードウェアとしては、専用回路(ASIC)やプロセッサ(リコンフィギュラブルプロセッサ、DSP)などを用いることができる。
【0027】
通信部360は、ナビゲーションシステムや、車両の駆動を制御する車両制御装置などの、車両1に搭載されている他の装置と、CANやFlexRay、Ethernetなどのプロトコルを用いて通信を行う。
【0028】
画像補正部300は、撮像部2からの入力画像データに現像処理や色調整などの画像処理を行い第1画像生成部311と第2画像生成部312へ出力する。より具体的には、撮像部2からベイヤー配列で入力された画像データをデベイヤー処理し、RGBのラスタ形式の画像データへ変換する。更に、ホワイトバランスの調整やゲイン・オフセット調整、ガンマ処理、カラーマトリックス処理など種々の補正処理も行う。
【0029】
尚、本実施例における画像補正部300で行う処理の一部又は全てを、撮像部2に画像処理LSI等を設けて、撮像部2で行う構成としても良い。或いは、撮像部2センサ内に積層された論理回路で一部の画像処理を行うようにしても良い。
第1画像生成部311、第2画像生成部312は、画像補正部300から入力された画像データから夫々所定の領域を切り出して第1画像、第2画像を生成し出力する。尚、切り出し領域は第1画像生成部311と第2画像生成部312で個別に設定可能なように構成されている。第1画像生成部311と第2画像生成部312が切り出す領域についての詳細は後述する。
【0030】
表示制御部320は、第1画像生成部311と第2画像生成部312から夫々入力された切り出し後の画像データである第1画像及び第2画像の少なくとも一方を表示のために出力する。又、画像データを、第1表示部4と第2表示部5のいずれに表示させるのかを制御する。又、第1表示部4と第2表示部5の表示解像度や表示周波数が、切り出し後の画像データと異なる場合に、表示解像度や表示周波数を夫々の表示部に合わせるように変換したのちに出力する。
【0031】
ここで、表示制御部320は第1画像及び第2画像の少なくとも一方を表示のために出力する出力部として機能している。又、第1表示部4と第2表示部5は出力部から出力された前記第1画像及び第2画像の少なくとも一方を表示する表示部として機能している。尚、
図3の実施例では表示部としての第1表示部4と第2表示部5は別々の構成であるが、共通の表示画面を用いても良い。
【0032】
又、切り出し後の夫々の画像データに所定の幾何学変形処理(例えば歪補正等)を施すこともできる。又、切り出し後の夫々の画像データを出力する代わりに、通信部360を介して取得したカーナビゲーションシステムの地図画像や空調や音響や車両制御用のユーザーインターフェース用のCG画像などを出力することもできる。
【0033】
第1表示部4は、入力された画像データに基づいて表示を行うディスプレイであり、車両1の例えば運転席の前方上部の車幅方向の中央付近に、表示画面を車両後方に向けて設置される。尚、ハーフミラーなどを用いて、ディスプレイとして使用しないときは鏡として使用できる構成としても良い。又、タッチパネルや操作ボタンを備えユーザーからの指示を取得し、画像処理部3へ出力可能な構成としても良い。
【0034】
第2表示部5は、入力された画像データに基づいて表示を行うディスプレイであり、例えば運転席の前方の車幅方向の中央付近の操作パネル周辺に設置される。尚、移動体としての車両には、不図示のナビゲーションシステムや、オーディオシステムや車両の駆動を制御する車両制御装置(エンジンやモータ)などが搭載されている。
【0035】
そして、例えば第2表示部には、ナビゲーションシステムや、オーディオシステムや車両制御装置を制御するための制御用のUI画像などを表示することも可能である。又、タッチパネルや操作ボタンを備え、ユーザーからの指示を取得可能な構成としている。
尚、第1表示部4、第2表示部5のディスプレイパネルとしては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどを用いることができる。
【0036】
次に
図4を用いて、画像処理部3の第1画像生成部311と第2画像生成部312が切り出す領域について説明する。
図4(A)~(D)は、実施例1における切り出し領域の例を説明するための図であり、41は、所定の半画角θa未満の領域である高解像度領域、42は、所定の半画角θa以上の領域である低解像度領域を夫々示す。
【0037】
本実施例における第1画像生成部311は、撮像素子から読出された画像の内、高解像度領域41に対応する画像領域から第1領域を切り出すことにより第1画像を生成する。即ち、
図4において、実線で囲まれた画像領域である、第1領域としての電子ルームミラー用画像領域43を切り出して第1画像を生成して出力するようにCPU330によって制御される。更に、第1画像生成部311が生成した第1画像の画像データを第1表示部4に表示するように表示制御部320をCPU330によって制御する。
【0038】
又、第2画像生成部312は、撮像素子から読出された画像の内、前記第1領域とは異なる画像領域から第2領域を切り出すことにより第2画像を生成する。即ち、例えば
図4(A)の破線で囲まれた画像領域である、第2領域としてのバックモニタ用画像領域44を切り出して第2画像を生成して出力するようにCPU330によって制御される。
【0039】
このとき、CPU330は、バックモニタ用画像領域44の上端(上辺)44aが電子ルームミラー用画像領域43の上端(上辺)43aより下になるように、バックモニタ用画像領域44の上端(上辺)44aと電子ルームミラー用画像領域43の上端(上辺)43aを夫々決定する。
【0040】
更に、CPU330は、バックモニタ用画像領域44の下端(下辺)44bが電子ルームミラー用画像領域43の下端(下辺)43bより下になるように、バックモニタ用画像領域44の下端(下辺)44bと電子ルームミラー用画像領域43の下端(下辺)43bを夫々決定する。
即ち、
図4(A)の例では、画像生成部は、第1領域の下端より第2領域の下端全てが下になるようにかつ、第1領域の上端より第2領域の上端全てが下になるように第1画像及び第2画像を生成している。
【0041】
そして、CPU330は、第1画像生成部311が生成した画像データを第1表示部4に、第2画像生成部312が生成した画像データを第2表示部5に表示するように表示制御部320を制御する。その結果、撮像部2が撮像した画像データから電子ルームミラー用画像領域43を切り出した第1画像が第1表示部4に、バックモニタ用画像領域44を切り出した第2画像が第2表示部5に表示される。
【0042】
本実施例では、高解像度領域41は、上述のように通常の撮像用の光学系の中心射影方式(y=f×tanθ)又は等距離射影方式(y=f×θ)に近似した射影特性となるように構成されている。従って、第1表示部4に表示される電子ルームミラー用の画像は、解像度が低解像度領域42と比較して高く、車両後方をより精細に表示することができる。
【0043】
又、高解像度領域41は光学歪曲が小さいため、電子ルームミラー用の画像も歪みが小さい状態で表示することができ、車両の後方をドライバーがより自然な遠近感で目視することが可能になる。又、後方車両のナンバープレートや人物などを画像認識する際の画像認識精度を高めることができる。
【0044】
一方、バックモニタ用画像領域44の下端44bが電子ルームミラー用画像領域43の下端43bより下になるようにしているため、車両1の後退時などに、車両1の後部と、ドライバーの死角となる地面付近をより広範囲に表示し確認することができる。これは、低解像度領域42で、単位あたりの半画角θに対する像高yの増加量を小さくし、より広い画角を撮像できるように撮像部2の光学系のパラメータを設定していることが寄与している。
【0045】
又、前述のように、バックモニタ用画像領域44の上端44aが電子ルームミラー用画像領域43の上端43aより下に設定している。従って、バックモニタ用画像領域44の上端44aを電子ルームミラー用画像領域43の上端43aより上に設定する場合や、撮像画像をそのままバックモニタ用の画像として表示する場合などに比べて、地面付近をより大きく精細に表示することができ、より安全な運転ができる。
【0046】
又、本実施例の撮像部2の光学系と同じ最大画角を有する魚眼レンズなどを使用して、本実施例における電子ルームミラー用画像領域43と同等の画角の画像を切り出した場合、光学歪が大きいため、光学歪を補正する幾何学変形処理が必要になる。ここでいう幾何学変形処理とは表示の際に画像の領域ごとに異なる拡大・縮小をして画像の歪補正をする処理を指す。
【0047】
一方、本実施例における撮像部2の高解像度領域41は、光学歪みが小さくなるように構成されているため、光学歪を補正する幾何学変形処理を不要にすることができ、処理負荷を低減することができるという効果を得られる。即ち、第1画像に対しては幾何学変形処理を施さなくて済む。一方、第2画像に対して幾何学変形処理を施して出力部から出力するようにしても良い。
【0048】
以上のように、本実施例によれば、撮像部2、画像処理部3の各部、第1表示部4、第2表示部5を動作させることにより、高精細で歪みの少ない電子ルームミラー用の表示と広範囲な後方確認用の表示を1つのカメラで取得できる。
【0049】
尚、
図4(A)の例では、電子ルームミラー用画像領域43とバックモニタ用画像領域44をともに矩形形状で切り出す場合を例にとって説明した。しかし、バックモニタ用画像領域44の上端44aと下端44bが、夫々電子ルームミラー用画像領域43の上端43aより下、下端43bより下になるように夫々決定されていれば良く、切り出し形状は矩形に限定されない。例えば、
図4(B)のように、バックモニタ用画像領域45の切り出し形状の一部が曲線であっても良い。
【0050】
この場合、電子ルームミラー用画像領域43の下端(下辺)43bとその延長線上より、バックモニタ用画像領域45の下端(下辺450~452)が下になるように領域の境界が決定されている。即ち、ここで、垂直方向をy座標軸とし、上方向にy座標値が増加するとする。その場合、電子ルームミラー用画像領域43の下端(下辺)43bのy座標より、バックモニタ用画像領域45の下端(下辺450~452)のy座標が小さくなるように領域の境界が決定されている。
【0051】
このようにバックモニタ用画像領域45の下端(下辺450~452)を曲線とすることで、
図4(A)の場合より、更に車両に近い地面付近の領域を表示することができ、より広範囲な後方確認用の表示を行うことができる。
【0052】
又、バックモニタ用の表示における左右方向をより広範囲に表示したい場合、例えば
図4(C)のように、電子ルームミラー用画像領域43とバックモニタ用画像領域46を夫々設定すると良い。この場合、電子ルームミラー用画像領域43の左端43cと右端43dの延長線(二点鎖線)より外側に位置する、バックモニタ用画像領域46の下端(両端460と462)が電子ルームミラー用画像領域43の下端(下辺)43bより上になるように設定する。
【0053】
このようにすることで、高精細な電子ルームミラー用の表示と後方確認用の地面付近の広範囲な表示を1つのカメラで両立しつつ更に、左右方向をより広範囲に表示することができる。
尚、低解像度領域42は外側になるほど光学歪みが大きくなるため、表示制御部320で、幾何学変形処理を施すことにより光学歪みを補正したのち、表示することが望ましい。
【0054】
又、
図4(D)の例においては、バックモニタ用画像領域47の上端47aを、撮像画像上の水平線48(又は地平線)より上になるように設定している。
このように設定することにより、ドライバーが車両後方の距離感を更に把握しやすくできるためより望ましい。
【0055】
又、
図4(A)~(D)の例では、電子ルームミラー用画像領域43の上端43aより下かつ電子ルームミラー用画像領域43の下端43bより上になるようにバックモニタ用画像領域44、45,46,47の夫々の上端44a、45a、46a、47aを設定している。即ち、第2領域の上端が、第1領域の上端と下端の間になるように第1画像及び第2画像を生成している。従って、電子ルームミラー用画像領域43とバックモニタ用画像領域44~47が部分的に重複することになり、第1表示部4と第2表示部5に車両後方に同じ被写体が表示される。
【0056】
これによって、第1表示部4と第2表示部5の夫々の表示画像において、ドライバーが車両後方の距離感をより把握しやすくなるという更なる効果を得ることができる。
更に又、
図4(A)~(D)の例では、バックモニタ用画像領域44~47の右端が電子ルームミラー用画像領域43の右端より右に、バックモニタ用画像領域44~47の左端が電子ルームミラー用画像領域43の左端より左になるように設定している。
【0057】
即ち、画像生成部は、第1領域としての電子ルームミラー用画像領域43の左端より第2領域としてのバックモニタ用画像領域44~47の左端が左側で、かつ第2領域の右端が第1領域の右端より右側になるように第1画像及び第2画像を生成している。
このようにすることにより、高精細な電子ルームミラー用の表示と後方確認用の地面付近の広範囲な表示を1つのカメラで両立しつつ更に、バックモニタ用の表示において左右方向をより広範囲に表示することができる。
【0058】
以上のように、本実施例では、画像生成部は、第1領域の下端より第2領域の下端の少なくとも一部が下になるようにすると共に、第1領域の上端より第2領域の上端の少なくとも一部が下になるように第1画像及び前記第2画像を生成している。従って、従来技術に比べて地面付近をより大きく精細に表示することができる。
【0059】
尚、本実施例では、電子ルームミラー用画像領域43とバックモニタ用画像領域44~47を夫々、第1表示部4と第2表示部5に個別に表示させる場合を例にとって説明した。しかし、上述の切り出し条件を満たした電子ルームミラー用画像領域43とバックモニタ用画像領域44をドライバーに提示できれば表示方法はこれに限定されない。例えば、表示制御部320で電子ルームミラー用画像領域43と、バックモニタ用画像領域44~47から切り出した画像を並べるように合成し、第1表示部4と第2表示部5の一方だけに表示する構成としても良い。
【0060】
又、第1表示部4と第2表示部5の一方だけに、電子ルームミラー用画像領域43とバックモニタ用画像領域44~47から切り出した画像を選択的に切り替えて表示する構成としても良い。
又、車両1の駆動用のギアが、バックギアに入ったか否かの情報をCPU330が通信部360を介して取得するように構成しても良い。そして、バックギアに入ったと判断した場合にのみ第1表示部4と第2表示部5のいずれかに、バックモニタ用画像領域44~47から切り出した画像を表示する構成にしても良い。
次に、実施例2について説明する。本実施例においては、画像処理部3が車両の制御状態に応じて出力する画像の切り出し領域の大きさ等を変化させる点が実施例1と異なる。
尚、本実施例における撮像部2、画像処理部3、第1表示部4、第2表示部5及びそれらの内部構成は、実施例1と同様であるため説明を省略する。
次に、ステップS520において、CPU330は、ステップS500で取得した車両制御情報が所定の条件を満たしているか否かを判断する。条件を満たしていると判断した場合は、ステップS530へ処理を進め、条件を満たしていないと判断した場合はステップS535へ処理を進める。
ステップS535において、CPU330は、バックモニタ用画像領域44をより広角のとするように決定し、第2画像生成部312へ領域情報を出力することで設定する。即ちステップS530においてCPU330が決定するバックモニタ用画像領域44よりも切り出し範囲を相対的に拡大した広角の領域とする。そしてステップS510、S530,S535等からなる画像生成ステップによって生成された第1画像及び第2画像は、表示のために表示制御部320から表示部に対して出力される。(出力ステップ)
以上のように、ステップS500からS535までの処理をCPU330が実行することにより、車両制御状態に応じて、より重要な範囲が確認できるよう表示様態を適切に変化させることができる。即ち、車両の後退時の走行速度が所定値より速い場合、車両が短時間で長い距離を走行することになるため、ドライバーはより広い範囲又はより遠い距離の安全を確認する必要がある。
そこでステップS520で車両速度が所定値より速いと判断した場合、ステップS535において、より広角のバックモニタ用画像領域47を表示する。従って、バックモニタ用画像領域47の上端47aは、走行速度が比較的遅い場合のバックモニタ用画像領域44の上端44aより上に画角が広がっているので、ドライバーはより広い範囲又はより遠い距離の障害物を確認でき、より安全に走行ができる。
一方、車両の走行速度が比較的遅い場合、ドライバーは表示画像上で車止めや駐車領域の白線などを確認する必要がある。そこでステップS520で車両速度が所定値未満と判断した場合、ステップS530において、走行速度が速い場合のバックモニタ用画像領域47の上端47aより上端44aが下のバックモニタ用画像領域44にする。それにより、地面付近が拡大されて表示されるので、ドライバーは、地面付近の車止めや駐車領域の白線などをより確認しやすくなる。
以上のように、本実施例では、高精細な電子ルームミラー用の表示と後方確認用の地面付近の広範囲な表示を1つのカメラで同時に取得すると共に、車両制御状態に応じて出力する画像の切り出し領域を変化させている。又、車両の状態情報に含まれる車両の走行速度情報に基づいて、所定の走行速度より速いか否かを判断し、所定の走行速度より速いと判断しなかった場合の第2領域の上端より、所定の走行速度より速いと判断した場合の第2領域の上端を上にしている。従って、ドライバーは車両制御状態に応じてより重要な範囲を容易に確認することができる。
尚、車両の状態情報に含まれる車両の進行方向情報に基づいて、車両が後退していると判断した場合は、第2画像を出力部から出力し、車両が後退していると判断しなかった場合は、第2画像を前記出力部から出力しないように制御しても良い。
尚、本実施例では、車両制御状態として、速度情報を用いる場合を例にとって説明したが、例えば、CPU330が、撮像部2又は他のセンサから車両周囲の障害物情報を取得し、その障害物情報に基づいて切り出し領域の範囲を設定しても良い。
具体的には、撮像部2又は他のセンサにより車両1の後方に障害物があることを検出し、障害物があると判断した場合には、障害物がバックモニタ用画像領域44に含まれるようにバックモニタ用画像領域44を広げる。又、障害物が無いと判断した場合は、バックモニタ用画像領域44を狭角条件とし地面付近を精細に表示する。即ち、車両の状態情報に含まれる車両の車両周囲の障害物情報に基づいて、障害物があると判断した場合は、障害物がないと判断した場合よりも、第2領域を大きくし第2領域に障害物が含まれるようにすることが望ましい。
尚、障害物を検出する他のセンサとして、例えばLiDAR、ソナー、レーダー、TOFなどの距離センサを車両1に搭載し、所定の距離より近い位置に物体を検出した場合、障害物があると判断しても良い。又、撮像部2からの画像データを画像認識した結果に基づいて、物体検出を行う構成とし、人などの所定の種類の物体を検出した場合、障害物があると判断する構成としても良い。
更に、障害物が移動している場合にその移動速度と方向を画像から検出し、障害物の移動速度が速い程、第2領域をその移動速度の方向に広げても良い。そのように構成すればより安全に走行することができる。
尚、上述の実施形態における移動体は、例えば、自動車に限らず、船舶、飛行機、ロボット、ドローンなどの移動をする装置であればどのようなものであっても良く、それらを含む。
又、移動体をリモートでコントロールする場合にも本実施例を適用することができる。
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
尚、本実施例における制御の一部又は全部を上述した実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介してカメラシステム(画像処理装置)等に供給するようにしてもよい。そしてそのカメラシステム(画像処理装置)等におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。