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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177377
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】画像処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20241212BHJP
【FI】
A61B6/00 550M
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174116
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2022563828の分割
【原出願日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2020193778
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020193783
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正志
(72)【発明者】
【氏名】杉原 義人
(57)【要約】
【課題】得られるX線画像のうちで観察したい部位におけるコントラストを向上させることができる画像処理システムを提供する。
【解決手段】画像処理システムは、X線撮影画像が記録されたイメージプレートから読み取られる読取信号を処理してX線画像を生成する。画像処理システムは、読取信号に含まれる全出力域に対し、観察の目的に応じた一部の注目域に関する濃淡の変化度合いが、注目域以外の非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線撮影画像が記録されたイメージプレートから読み取られる読取信号を処理してX線画像を生成する画像処理システムであって、
操作者による操作を受け付ける操作部を備え、
前記操作部において、前記読取信号に含まれる全出力域のうちの第1注目域を指定する第1の指定と、前記読取信号に含まれる全出力域のうちの、前記第1注目域とは線量強度域の異なる第2注目域を指定する第2の指定とが受け付けられ、
前記第1の指定が受け付けられたとき、前記第1注目域に関する濃淡の変化度合いが、前記第1注目域以外の第1非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行い、
前記第2の指定が受け付けられたとき、前記第2注目域に関する濃淡の変化度合いが、前記第2注目域以外の第2非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う、画像処理システム。
【請求項2】
前記信号処理を対数変換により行う、請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記第1非注目域に関する濃淡の変化度合いを無くして前記第1非注目域が一定の濃度で表されるように信号処理を行うか、又は、前記第2非注目域に関する濃淡の変化度合いを無くして前記第2非注目域が一定の濃度で表されるように信号処理を行う、請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記第1非注目域に関する濃淡の変化度合いを無くして前記第1非注目域が一定の濃度で表されるように信号処理を行い、且つ、前記第2非注目域に関する濃淡の変化度合いを無くして前記第2非注目域が一定の濃度で表されるように信号処理を行う、請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項5】
アナログデジタル変換される前のアナログ信号に対して前記信号処理を行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の画像処理システム。
【請求項6】
X線撮影による検出信号を処理してX線画像を生成する画像処理システムであって、
操作者による操作を受け付ける操作部を備え、
前記操作部において、前記検出信号に含まれる全出力域のうちの第1注目域を指定する第1の指定と、前記検出信号に含まれる全出力域のうちの、前記第1注目域とは線量強度域の異なる第2注目域を指定する第2の指定とが受け付けられ、
前記第1の指定が受け付けられたとき、前記第1注目域に関する濃淡の変化度合いが、前記第1注目域以外の第1非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行い、
前記第2の指定が受け付けられたとき、前記第2注目域に関する濃淡の変化度合いが、前記第2注目域以外の第2非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う、画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に、X線撮影画像が記録されたイメージプレートから読み取られる読取信号を処理してX線画像を生成する画像処理および画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線の曝射によって潜像が記録されたイメージングプレート(IPと略称される)を読み取り、X線画像の画像処理を行う技術が知られている(たとえば特許文献1参照)。読取装置は、イメージングプレートにレーザ光を照射し、レーザ光の照射により励起された輝尽発光を検出し、対数変換増幅およびA/D変換等の処理を施し、デジタル信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-172362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術では、輝尽発光の検出によって得られた読取信号に対し、対数変換増幅およびA/D変換等の処理が施される。しかし、従来の技術では、観察の目的によっては、眠い画像が生成されてしまう。眠い画像とは、観察したい部位におけるコントラストが鮮明でなく、ぼんやりとした(ぼけた)画像である。
【0005】
本開示は、得られるX線画像のうちで観察したい部位におけるコントラストを向上させることができる画像処理システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、X線撮影画像が記録されたイメージプレートから読み取られる読取信号を処理してX線画像を生成する画像処理システムであって、読取信号に含まれる全出力域に対し、観察の目的に応じた一部の注目域に関する濃淡の変化度合いが、注目域以外の非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う。
【0007】
この画像処理システムによれば、読取信号に含まれる全出力域のうち、観察の目的に応じた一部の注目域に関してのみ、濃淡の変化度合いが大きくなる。よって、得られたX線画像のうちで、観察したい部位におけるコントラストが向上する。
【0008】
上記の画像処理システムは、信号処理を対数変換により行ってもよい。対数変換は、たとえば、線量の強度が低い場合でも、濃淡の変化を分かり易くする。これにより、臨床的に扱いやすいX線画像が得られる。
【0009】
上記の画像処理システムは、注目域に対応する線量強度域が非注目域に対応する線量強度域よりも低線量側に存在するよう、注目域および非注目域を設定してもよい。この場合、高線量側(非注目域)のコントラストを犠牲にして低線量側(注目域)のコントラストが重視される。これにより、線量の強度が低い領域において、高いコントラストを実現できる。
【0010】
上記の画像処理システムは、注目域に対応する線量強度域が非注目域に対応する線量強度域よりも高線量側に存在するよう、注目域および非注目域を設定してもよい。この場合、低線量側(非注目域)のコントラストを犠牲にして高線量側(注目域)のコントラストが重視される。これにより、線量の強度が高い領域において、高いコントラストを実現できる。
【0011】
上記の画像処理システムは、非注目域が、注目域に対応する線量強度域よりも低線量側に存在する線量強度域を持った第1非注目域と、注目域に対応する線量強度域よりも高線量側に存在する線量強度域を持った第2非注目域とを含むよう、注目域および非注目域を設定してもよい。この場合、所望の線量強度域に対応する注目域が設定され、注目域におけるコントラストが重視される。
【0012】
上記の画像処理システムは、非注目域に関する濃淡の変化度合いを無くして非注目域が一定の濃度で表されるように信号処理を行ってもよい。この場合、より一層、注目域と非注目域におけるメリハリをつけることができる。非注目域に対応する画像部分は均一な濃度をもったコントラストのない画像となり、注目域に対応する画像部分は濃度変化の大きな、より鮮明なコントラストをもった画像となる。
【0013】
上記の画像処理システムは、アナログデジタル変換される前のアナログ信号に対して信号処理を行ってもよい。デジタル信号に対して信号処理を行った場合、出力値における細かい差が消え得る。アナログデジタル変換されるよりも前に(先立って)注目域に対する信号処理を行うことで、アナログ信号が有する差をX線画像における濃淡に反映することができる。
【0014】
本開示の別の態様は、X線撮影による検出信号を処理してX線画像を生成する画像処理システムであって、検出信号に含まれる全出力域に対し、観察の目的に応じた一部の注目域に関する濃淡の変化度合いが、注目域以外の非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う。
【0015】
この画像処理システムによれば、検出信号に含まれる全出力域のうち、観察の目的に応じた一部の注目域に関してのみ、濃淡の変化度合いが大きくなる。よって、得られたX線画像のうちで、観察したい部位におけるコントラストが向上する。
【発明の効果】
【0016】
本開示のいくつかの態様によれば、得られるX線画像のうちで観察したい部位におけるコントラストを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る画像処理システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、図1の画像処理システムをより具体的な構成を示す図である。
図3図3は、画像処理部(画像処理装置)における構成例を示すブロック図である。
図4図4は、画像処理システムにおいて実行される基本処理のフロー図である。
図5図5は、画像処理システムにおいて実行される処理の一例を示すフロー図である。
図6図6(a)はアナログ信号の特性を示す図であり、図6(b)は信号処理を経た出力の変化度合いを示す図である。
図7図7(a)はアナログ信号の特性を示す図であり、図7(b)は信号処理を経た出力の変化度合いを示す図である。
図8図8は、複数段の厚みを有するアルミ階段ファントムを示す図である。
図9図9(a)および図9(b)は、本開示の信号処理を行わない(補正無し)場合の濃淡の変化度合いを示す図である。
図10図10(a)および図10(b)は、低線量側(X線高吸収領域)に注目域が設定された場合の濃淡の変化度合いを示す図であり、図10(c)はその場合の歯科診療におけるX線画像例を示す図である。
図11図11(a)および図11(b)は、高線量側(X線低吸収領域)に注目域が設定された場合の濃淡の変化度合いを示す図であり、図11(c)はその場合の歯科診療におけるX線画像例を示す図である。
図12図12(a)は補正無しの場合の各ステップの変化を示す図であり、図12(b)は補正有りの場合の各ステップの変化を示す図である。
図13図13は、画像処理部(画像処理装置)における別の構成例を示すブロック図である。
図14図14(a)はアナログ信号の特性を示す図であり、図14(b)は、図13の構成例による信号処理を経た出力の変化度合いを示す図である。
図15図15は、画像処理システムにおいて実行される処理の他の例を示すフロー図である。
図16図16(a)は対象物の一例を示す図であり、図16(b)および図16(c)は、強度検出の例を示す図である。
図17図17(a)はアナログ信号の特性を示す図であり、図17(b)は、図13の構成例による信号処理を経た出力の変化度合いを示す図である。
図18図18(a)はアナログ信号の特性を示す図であり、図18(b)は、図13の構成例による信号処理を経た出力の変化度合いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1を参照して、本実施形態の画像処理システムSの基本構成について説明する。画像処理システムSは、一例として、歯科診療におけるX線撮影に用いられる。歯科診療において、患者の口腔内にイメージプレート100が設置され、口腔内におけるX線撮影が実施される。イメージプレート100には、X線撮影画像が記録される。イメージプレートはイメージングプレートと呼ばれることもあるので、イメージングプレートと呼びかえることもできる。
【0020】
図1に示されるように、画像処理システムSは、X線撮影画像が記録されたイメージプレート100(図2参照)から読み取られる読取信号を処理してX線画像を生成するシステムである。画像処理システムSは、IP励起モジュール11と、画像処理部2と、主制御部20と、操作部(フィジカルインターフェース)4と、表示部(ディスプレイ)3とを備える。IP励起モジュール11は、イメージプレート100に励起光を照射してイメージプレート100を走査し、イメージプレート100において生じる輝尽発光を検出する。IP励起モジュール11は、たとえばフォトダイオードアレイおよびアンプ等を有しており、得られた輝度情報に基づいて、X線撮影画像の読取信号を出力する。IP励起モジュール11としては、公知の構成が採用され得る。IP励起モジュール11は、励起光の光源と輝尽発光のスキャナの組として構成されてもよく、光源・スキャナ11と表現されてもよい。主制御部20は、CPU20aを有し、画像処理システムSの各部を制御する。操作部4は、操作ボタンまたはタッチパネルディスプレイ等を有し、操作者による操作を受け付ける。操作部4は、入力した操作内容に従った信号を主制御部20に出力する。画像処理部2は、CPU2aを有し、主制御部20によって制御されて画像処理に係る各種の演算を行う。画像処理部2は、読取信号に対してアナログデジタル変換および合成処理等を行い、X線画像を生成する。主制御部20は、X線画像を表示部3に表示させる。画像処理部2が主制御部20を兼ねていてもよい。主制御部20は回路で構成されてもよく、メイン制御回路20と表現されてもよい。画像処理部2は回路で構成されてもよく、サブ画像処理回路2と表現されてもよい。
【0021】
画像処理システムSは、上述の構成を一体に備えてもよいし、たとえば、IP励起モジュール11および画像処理部2の一部が一体とされ、画像処理部2の他の部分および表示部3が一体とされ、これらが配線またはネットワーク等によって通信可能に接続されてもよい(図2参照)。その場合に、操作部4は双方に設けられてもよい。画像処理システムSは回路から構成されてもよい。画像処理システムSは画像処理回路Sと表現されてもよい。画像処理システムSの各構成要素が一体になって、たとえばケース又は筐体の内部に組み込まれていてもよい。その場合、画像処理システムSは「画像処理装置」として構成される。すなわち、画像処理システムSは、画像処理装置Sと表現されてもよい。
続いて、図2を参照して、画像処理システムSの具体的な一構成例について説明する。なお、以下の説明において、イメージプレート100をIP100と略称する。
【0022】
図2に示される画像処理システムSは、第1画像処理装置10と第2画像処理装置30とを備える。第1画像処理装置10および第2画像処理装置30は、配線またはネットワーク等によって接続されており、入出力インターフェース25,35によって互いに情報通信可能である。第1画像処理装置10は、IP励起モジュール11と、CPU19を含む第1画像処理部18と、CPU22を含む主制御部21と、表示部23と、操作部24と、入出力インターフェース25とを有する。第2画像処理装置30は、CPU29を含む第2画像処理部28と、CPU32を含む主制御部31と、記憶部(メモリ)36と、表示部(ディスプレイ)33と、操作部(フィジカルインターフェース)34と、入出力インターフェース35とを有する。表示部23および表示部33は、図1中の表示部3に相当する。操作部24および操作部34は、図1中の操作部4に相当する。
【0023】
第1画像処理装置10は回路で構成されてもよく、第1画像処理回路10と表現されてもよい。第2画像処理装置30は回路で構成されてもよく、第2画像処理回路30と表現されてもよい。第1画像処理部18は回路で構成されてもよく、第1サブ画像処理回路18と表現されてもよい。第2画像処理部28は回路で構成されてもよく、第2サブ画像処理回路28と表現されてもよい。主制御部21は回路で構成されてもよく、第1メイン制御回路21と表現されてもよい。主制御部31は回路で構成されてもよく、第2メイン制御回路31と表現されてもよい。CPU19は第1画像処理プロセッサ19と表現されてもよい。CPU22は第1メイン制御プロセッサ22と表現されてもよい。CPU29は第2画像処理プロセッサ29と表現されてもよい。CPU32は第2メイン制御プロセッサ32と表現されてもよい。
【0024】
IP励起モジュール11は、IP100を受け入れるIP受入部12と、IP受入部12内のIP100に励起光を照射する励起光照射部(励起光光源)14と、励起光照射部14で発生した光を受光する受光部(光レシーバ)16とを含む。受光部16は、X線撮影画像の読取信号を第1画像処理部18に出力する。第1画像処理部18および第2画像処理部28は、図1中の画像処理部2に相当する。第1画像処理部18および第2画像処理部28は、所定の画像処理工程を実行する。第1画像処理部18および第2画像処理部28によって行われる処理については後述する。第2画像処理装置30は、第2画像処理部28から出力されたX線画像を表示部33に表示させると共に、外部機器39に出力する。
【0025】
図3を参照して、画像処理部2における構成例について説明する。図3に示されるように、本実施形態の第1画像処理部18は、IP励起モジュール11から出力された読取信号に対してアナログデジタル変換を行うアナログデジタル変換部40を有する。第1画像処理部18は、アナログデジタル変換部40を有することにより、アナログデジタル変換される前のアナログ信号に対して信号処理を行う。特に本実施形態において、アナログデジタル変換部40は、読取信号に含まれる全出力域に対し、観察の目的に応じた一部の注目域RV11、RP11(R1)と、注目域R1以外の非注目域RV2a、RP2a、RV2b、RP2b(R2)とを設定する(図6(a)参照)。非注目域RV2a、RP2aは注目域R1に対応する線量強度域よりも低線量側に存在する線量強度域であり、非注目域RV2b、RP2bは注目域R1に対応する線量強度域よりも高線量側に存在する線量強度域である。たとえば、非注目域のうち、出力値が低い方の第1非注目域RV2aおよびRP2aは一律の調整出力値(例えば白色)で表されるように決めておき、出力値が高い方の第2非注目域RV2b、RP2bは一律の調整出力値(例えば黒色)で表されるように決めておくことができる。注目域R1については、コントラストを好適化する処理が行われる(図6(b)参照)。なお、第1非注目域RP2aがオフセット値OFになってもよい。このような信号処理(画像処理)によれば、不要な演算の負担を回避でき、プロセッサの演算上、限りあるビット数を有効に利用できる。なお、グラフ上において、縦軸の要素はPの文字の挿入で、横軸の要素はVの文字の挿入で表現されている。アナログデジタル変換部40は回路で構成されてもよく、アナログデジタル変換回路40と表現されてもよい。
【0026】
本件構成による出力調整の処理を加えない、線量に対するオリジナルの出力のパターンを原出力パターンORと呼び、この原出力パターンORが図6(a)のようにグラフ上の原出力パターン線ORLで示されるものとする。画像処理部2は、アナログ信号に対して信号処理を行う。信号処理後の調整にかかる、線量に対する出力のパターンを調整出力パターンAJと呼び、この調整出力パターンAJが図6(b)のようにグラフ上の調整出力パターン線AJLで示される。原出力パターンORにおいては、低線量領域において、線量値の変化に対する出力値の変化が乏しい領域が多く含まれ、高線量領域において、線量値の変化に対する出力値の変化が急峻な領域が多く含まれる。
【0027】
そこで、原出力パターンORの線量値の変化に対する出力値の変化が乏しい領域すなわち濃淡の変化度合いが乏しい領域に対して調整出力パターンAJにて変化度合いが大きくなる(急峻となる)ように信号処理を行うことが考えられる。
【0028】
さらに好ましくは、原出力パターンORの線量値の変化に対する出力値の変化が急峻な領域すなわち濃淡の変化度合いが急峻である領域に対して調整出力パターンAJにて変化度合いが小さくなる(緩やかになる)ように信号処理を行うことが考えられる。図6(b)に示されるのは、これらの処理を施したリニアな調整パターンの例である。調整出力パターンAJの上限値RHと下限値RLは適宜定め得るが、上限値RHと下限値RLを、図示のように原出力パターンOR中の注目域R1の最小値と最大値に適合させてもよい。
【0029】
図6に示されるような、広範な注目域R1全てにわたってリニアな調整パターンに対比して、注目域R1を限定し、非注目域に関する濃淡の変化度合いが、非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなる(急峻となる)ように信号処理を行うことが考えられる。図7(b)に示すのはこのような調整処理をした例である。図7においては、注目域RV12、RP12(R1)の範囲が図6に示されるR1の例よりも低線量側領域に限定されている。アナログデジタル変換部40は、注目域に関する濃淡の変化度合いが、非注目域R2(RV2c、RP2c、RV2d、RP2d)に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなる(急峻となる)ように信号処理を行う。非注目域に関する濃淡の変化度合いは、注目域に関する濃淡の変化度合いよりも緩やかになる。調整出力パターンAJの上限値RHと下限値RLは適宜定めうるが、上限値RHと下限値RLを、図示のように図6の調整出力パターンAJの上限値と下限値の幅に一致させてもよい。調整処理の詳細は後述する。
【0030】
アナログデジタル変換部40は、対数変換器41と、第1アナログデジタル変換器42とを含む。対数変換器41は、読取信号に対して対数変換を行う。上記した注目域と非注目域とに関して濃淡の変化度合いを急峻または緩やかにする信号処理は、アナログデジタル変換器42によるアナログデジタル変換よりも前に行われる。当該信号処理は、対数変換器41による対数変換の前に行われてもよいし、対数変換の後に行われてもよい。
【0031】
第2画像処理部28は、合成処理部50を含む。合成処理部50は、第1アナログデジタル変換器42から出力されたデジタル信号を入力し、X線画像データ(合成画像Pのデータ)を出力する。合成処理部50は回路で構成されてもよく、合成処理回路50と表現されてもよい。
【0032】
続いて図4を参照して、画像処理システムSにおいて実行される基本処理について説明する。図4に示されるように、画像処理部2(図1参照)は、IP励起モジュール11からスキャン画像データ(読取信号)を取得する(ステップS020)。画像処理部2は、デフォルト画像を生成・表示する(ステップS030)。続いて、操作部4が操作されることで、主制御部20は操作を受け付ける(ステップS040)。主制御部20は、処理を読み出す(ステップS060)。画像処理部2は、取得したスキャン画像データに基づいて、画像処理を実行する(ステップS070)。画像処理部2は、X線画像を生成し、主制御部20は、表示部3にX線画像を表示させる(ステップS080)。主制御部20は、他の操作を受け付ける(ステップS090)。他の操作の受付が有る場合には、主制御部20は、ステップS060の処理に戻る。スキャン画像データを記憶部36に保存しておいて、ステップ060の処理に戻る際に、記憶部36からスキャン画像データを取得するようにしてよい。他の操作の受付が無い場合には、画像処理部2は、一連の処理を終了する(ステップS100)。画像処理部2によって行われる処理は、図2に示される画像処理システムSでは、第1画像処理部18および/または第2画像処理部28によって行われる。主制御部20によって行われる処理は、図2に示される画像処理システムSでは、主制御部21および/または主制御部31によって行われる。
【0033】
ここで、図8を参照して、本開示に係る画像処理システムSにおいて重要となる概念、すなわち対象物の観察部位に応じたX線の透過線量(線量強度)に関する違いについて説明する。図8に示されるように、X線撮影の対象物(たとえば患者の歯牙または口腔部等)を模したアルミ階段ファントムALが提供され得る。アルミ階段ファントムALでは、たとえば、アルミニウムの厚さがアルミニウムゼロを含んで10段階にわたって変化するよう、アルミニウム板が積み重ねられて階段が形成されている。アルミニウムが厚い部分では、より多くのX線が吸収され、より小さなX線透過線量が得られる。アルミニウムが薄い部分では、より少ないX線が吸収され、より大きなX線透過線量が得られる。アルミ階段ファントムALでは、たとえば、低線量側領域RA(X線高吸収領域)および高線量側領域RB(X線低吸収領域)が想定される。
【0034】
アルミ階段ファントムALをX線撮影して対数変換を含んで図6について説明したような処理を行うと、図9(a)に示されるように、たとえば厚みが減少するにつれて線量強度が段階的に高まる傾向が得られる。厚みが階段状ではなく連続的に変化する場合には、線量強度は、厚みに応じて線形的に変化し得る。このように、通常の画像処理(段階的処理)では、全出力域にわたってまんべんなく明暗の差が生じる。本実施形態では、関心のある注目域に絞って、明暗の差がつけられる。
【0035】
図5以降の各図を参照して、本実施形態の画像処理システムSにおける特徴的かつ具体的な処理について説明する。図4の処理と同一の部分については、説明を省略する。図5に示されるように、画像処理部2は、ステップS040において入力された操作の内容に応じて、異なる処理を実行する。主制御部20は、ステップS040において何の操作が受け付けられたかを判断する(ステップS050)。受け付けられ得る操作の種類には、第1の指定または第2の指定があり得る。第1の指定とは、観察の目的に応じた一部の注目域として、たとえば、ペリオ、エンド、またはカリエス等が指定される操作である。第2の指定とは、観察の目的に応じた一部の注目域として、たとえば、前歯または臼歯等が指定される操作である。
【0036】
第1の指定が受け付けられた場合、主制御部20は、第1の処理を読み出す(ステップS060-1)。画像処理部2は、第1の処理に適合した画像処理を実行する(ステップS070-1)。画像処理部2は、ステップS070-1において、注目域に対応する線量強度域が非注目域に対応する線量強度域よりも低線量側に存在するよう、注目域および非注目域を設定する。画像処理部2は、たとえば、図9に示される出力60未満の領域、すなわち図8および図10に示される低線量側領域RA(X線高吸収領域)を注目域に設定する。画像処理部2は、図9に示される出力60以上の領域、すなわち図8および図10に示される低線量側領域RA以外の領域を非注目域に設定する。画像処理部2は、非注目域に関する濃淡の変化度合いを無くして、非注目域が一定の濃度で表されるように信号処理を行ってもよい。すなわち、画像処理部2は、注目域におけるアナログ信号のみに対して、対数変換およびアナログデジタル変換を行ってもよい。以上の画像処理は、たとえば、第1画像処理部18のアナログデジタル変換部40が実行する。画像処理部2は、第1の処理に適合したX線画像を生成し、主制御部20は、表示部3にX線画像を表示させる(ステップS080-1)。主制御部20は、他の操作を受け付ける(ステップS090-1)。他の操作の受付が有る場合には、主制御部20は、ステップS050の判断処理に戻る。
【0037】
第1の指定が受け付けられた場合、図10(a)に示されるように、第1画像処理部18は、低線量側領域RAに関する濃淡の変化度合いが、低線量側領域RA以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う(図10(b)参照)。この信号処理では、横軸に検出されたX線の線量強度をとり、縦軸に出力(ピクセル値)をとった場合に、低線量側領域RAに関する濃淡の変化度合いが、低線量側領域RA以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも急峻となっている。非注目域である高線量側の領域では、出力(ピクセル値)は一定の濃度で表される。図10(b)に示されるように、非注目域である高線量側の領域は、X線画像において、一律の黒色で表される。このように、アナログ信号として得られる線量強度(単位mGyで表される値)を限られたビット数(16ビットであれば65,535)で均等割りするのではなく、注目域である低線量側領域RAにおける線量強度が均等割りされるので、見たい部位のコントラスト分解能が、観察の目的に応じて最適化されている。たとえば、図10(c)に示されるように、このような画像処理は、歯頚部Yの観察に適しており、例えば歯周域などの高線量側領域の詳細はわかりにくくなる代わりに、歯頚部Yにおけるカリエス等が容易に発見され得る。
【0038】
第2の指定が受け付けられた場合、主制御部20は、第2の処理を読み出す(ステップS060-2)。画像処理部2は、第2の処理に適合した画像処理を実行する(ステップS070-2)。画像処理部2は、ステップS070-2において、注目域に対応する線量強度域が非注目域に対応する線量強度域よりも高線量側に存在するよう、注目域および非注目域を設定する。画像処理部2は、たとえば、図9に示される出力40以上の領域、すなわち図8および図10に示される高線量側領域RB(X線低吸収領域)を注目域に設定する。画像処理部2は、図9に示される出力40未満の領域、すなわち図8および図10に示される高線量側領域RB以外の領域を非注目域に設定する。画像処理部2は、非注目域に関する濃淡の変化度合いを無くして、非注目域が一定の濃度で表されるように信号処理を行ってもよい。すなわち、画像処理部2は、注目域におけるアナログ信号のみに対して、対数変換およびアナログデジタル変換を行ってもよい。以上の画像処理は、たとえば、第1画像処理部18のアナログデジタル変換部40が実行する。画像処理部2は、第2の処理に適合したX線画像を生成し、主制御部20は、表示部3にX線画像を表示させる(ステップS080-2)。主制御部20は、他の操作を受け付ける(ステップS090-2)。他の操作の受付が有る場合には、主制御部20は、ステップS050の判断処理に戻る。
【0039】
第2の指定が受け付けられた場合、図11(a)に示されるように、第1画像処理部18は、高線量側領域RBに関する濃淡の変化度合いが、高線量側領域RB以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う(図11(b)参照)。この信号処理では、横軸に検出されたX線の線量強度をとり、縦軸に出力(ピクセル値)をとった場合に、高線量側領域RBに関する濃淡の変化度合いが、高線量側領域RB以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも急峻となっている。非注目域である低線量側の領域では、出力(ピクセル値)は一定の濃度で表される。図11(b)に示されるように、非注目域である低線量側の領域は、X線画像において、一律の白色で表される。このように、アナログ信号として得られる線量強度(単位mGyで表される値)を限られたビット数(16ビットであれば65,535)で均等割りするのではなく、注目域である高線量側領域RBにおける線量強度が均等割りされるので、見たい部位のコントラスト分解能が、観察の目的に応じて最適化されている。たとえば、図11(c)に示されるように、このような画像処理は、根尖部Z周囲の観察に適しており、例えば歯頚域などの低線量側領域の詳細はわかりにくくなる代わりに根尖部Z周囲における根尖病巣等が容易に発見され得る。
【0040】
以上説明したとおり、第1画像処理部18による信号処理により、X線画像において、注目域における濃淡の変化度合いが急峻となる。このことは、アルミ階段ファントムALを例として示される、図12(a)に示されるような濃淡の均等な変化度合いに対して、図12(b)に示されるような濃淡の急峻な変化度合いからも容易に理解される。
【0041】
本実施形態の画像処理システムSによれば、読取信号に含まれる全出力域のうち、観察の目的に応じた一部の注目域に関してのみ、濃淡の変化度合いが大きくなる。よって、得られたX線画像のうちで、観察したい部位におけるコントラストが向上する。
【0042】
画像処理システムSは、信号処理を対数変換により行ってもよい。対数変換は、たとえば、低線量側領域RA等のように線量の強度が低い場合でも、濃淡の変化を分かり易くする。これにより、臨床的に扱いやすいX線画像が得られる。
【0043】
図10(a)に示されるように、注目域に対応する線量強度域が非注目域に対応する線量強度域よりも低線量側に存在するよう、注目域および非注目域が設定され得る。図10(b)に示されるように、高線量側(非注目域)のコントラストを犠牲にして低線量側(注目域)のコントラストが重視される。これにより、線量の強度が低い領域において、高いコントラストを実現できる。歯科診療に画像処理システムSが適用される場合であれば、図10(c)に示されるように、歯頚部Yの観察におけるカリエスの発見等に有効である。
【0044】
図11(a)に示されるように、注目域に対応する線量強度域が非注目域に対応する線量強度域よりも高線量側に存在するよう、注目域および非注目域が設定され得る。図11(b)に示されるように、低線量側(非注目域)のコントラストを犠牲にして高線量側(注目域)のコントラストが重視される。これにより、線量の強度が高い領域において、高いコントラストを実現できる。歯科診療に画像処理システムSが適用される場合であれば、図11(c)に示されるように、根尖部Zの観察における根尖病巣の発見等に有効である。
【0045】
また、画像処理システムSは、非注目域に関する濃淡の変化度合いを無くして非注目域が一定の濃度で表されるように信号処理を行う。これにより、より一層、注目域と非注目域におけるメリハリをつけることができる。非注目域に対応する画像部分は均一な色(濃度)をもったコントラストのない画像となり、注目域に対応する画像部分は濃度変化の大きな、より鮮明なコントラストをもった画像となる。
【0046】
また、画像処理システムSは、アナログデジタル変換される前のアナログ信号に対して信号処理を行う。デジタル信号に対して信号処理を行った場合、出力値における細かい差が消え得る。アナログデジタル変換されるよりも前に(先立って)注目域に対する信号処理を行うことで、アナログ信号が有する細かな差をX線画像における濃淡に反映することができる。
【0047】
画像処理部における構成が上記実施形態と異なっていてもよい。図13は、画像処理部における別の構成例を示すブロック図である。図13に示されるように、分配器17と、対数変換器41Aおよび第1アナログデジタル変換器42Aを含む第1アナログデジタル変換部40Aと、第2アナログデジタル変換器62を含む第2アナログデジタル変換部60と、を有する第1画像処理部18Aが適用されてもよい。その場合に、対数変換処理部51と合成部53とを含む合成処理部50を有する第2画像処理部28Aが適用されてもよい。対数変換処理部51は、第2アナログデジタル変換器62からの信号をデジタル演算で処理する構成でよい。第1画像処理部18Aと第2画像処理部28Aとによって、画像処理部2Aが構成される。第1アナログデジタル変換部40Aは回路で構成されてもよく、第1アナログデジタル変換回路40Aと表現されてもよい。第2アナログデジタル変換部60は回路で構成されてもよく、第2アナログデジタル変換回路60と表現されてもよい。対数変換処理部51は回路で構成されてもよく、対数変換処理回路51と表現されてもよい。合成部53は回路で構成されてもよく、合成回路53と表現されてもよい。
【0048】
上記構成を備えた画像処理システムSでは、読取信号に含まれる全出力域に対し、第1アナログデジタル変換部40Aが、線量強度の比較的低い信号域に適応する第1のアナログ/デジタル変換を行い、第2アナログデジタル変換部60が、線量強度の比較的高い信号域に適応する第2のアナログ/デジタル変換を行う。第1アナログデジタル変換部40Aは、対数変換器41Aを備え、読取信号に対して対数変換を行う。線量強度の比較的低い信号域については線量の変化の度合いに対して出力の変化の度合いが小さいので、この度合いが大きくなるように変換を行う。この変換は、アナログデジタル変換の前に行われる。対数変換器41Aは、本構成の一例であり、対数変換器41Aを用いずに、入力信号のゲインを変換する、例えばアンプのような要素を用いて出力の変化の度合いを大きくしてもよい。そして合成処理部50が、双方の変換後の信号を合成する画像処理を行う。この場合、図10(a)に示される補正値と、図11(a)に示される補正値とが組み合わされて画像処理が行われ、上記した低線量側領域RAと高線量側領域RBの双方において鮮明なコントラストを得ることができる。図14(a)および図14(b)に示されるように、第1注目域R1aと第2注目域R1bのそれぞれに応じたアナログデジタル変換および対数変換を行い、それぞれの信号域に応じて有利なX線画像を得ることができる。図14(b)に示す調整出力パターンAJは、高線量の域で濃度を一定としている。このように、診断目的によっては、注目域の中でも出力変化が急峻な部分と緩やかな部分とを混在させるようにしてもよい。
【0049】
図13図16(a)~図16(c)、図17(a)、図17(b)、図18(a)、および図18(b)を参照して、画像処理部2によって実行される信号処理について説明する。
【0050】
今、図16(a)に示すような、薄から厚まで、等差数列的に厚みが増加していく対象物TOBがあるものとする。対象物TOBとしては、例えばある程度X線を透過する、アルミニウムのような材質のものが用いられる。この対象物TOBをX線照射すると、厚みに従ってX線が吸収され、IPのようなX線検出要素側における透過X線の受光量は、厚い部分に対する照射については小さく、薄い部分に対する照射については大きくなる。この強度を、出力調整を加えずに検出すると、図16(b)に示されるようになる。強度検出としては、例えば受光部16から受けた信号の強度の出力の検出などが考えられる。図16(b)は、読取信号において、左側が厚み大にすなわち低線量に、右側が厚み小にすなわち高線量に対応したグラフを示している。このような、後述の本件構成による出力調整の処理を加えない、線量に対するオリジナルの出力のパターンを原出力パターンORと呼び、この原出力パターンORが図16(b)のようにグラフ上の原出力パターン線ORLで示されるものとする。
【0051】
原出力パターン線ORLを観察すると理解できるように、原出力パターンORにおいては、低線量領域において、線量値の変化に対する出力値の変化の度合いが小さい領域が多く含まれ、高線量領域において、線量値の変化に対する出力値の変化の度合いが大きい領域が多く含まれる。原出力パターンORを、出力値の変化の度合いが小さい側の領域である低変化領域LSEと出力値の変化の度合いが大きい側の領域である高変化領域STEに区分するべく、域境界BD(BVn,BPn)を設定する。この境界域はデフォルトとして設定してもよいし、操作によって可変としてもよい。域境界BDを可変域BDVの範囲内で可変調整可能としてもよい。低変化領域LSEと高変化領域STEの区別は、例えば、低変化領域LSEの原出力パターン線ORLに対して接線TG1を定めたときの接線TG1の傾きと、高変化領域STEの原出力パターン線ORLに対して接線TG1を定めたときの接線TG2の傾きの大小によって、例えば、基準比より小か大かによって行ってよい。
【0052】
図16(c)に示すように、低変化領域LSEと高変化領域STEが一部重複してもよい。すなわち、低変化領域LSEの高出力側端部が高変化領域STEの低出力側端部よりも高い側にあってもよい。
【0053】
図17(a)および図17(b)を参照して、図14に示した実施例と同様の思想に基づく応用例を説明する。図17(a),図17(b)が図14(a),図14(b)と違う点は、図17(b)において、図14(b)と比べて、第2出力域R1bに対する第2調整域A1bのパターンに若干の差があるという点のみである。図17(a),図17(b)および図14(a),図14(b)において、次の思想は共通である。
・低線量領域において線量値の変化に対する出力値の変化の度合いが小さい側の領域に対して変化が急峻となるような調整をする。
・高線量領域において線量値の変化に対する出力値の変化の度合いが大きい側の領域に対して変化が緩やかとなるような調整をする。
【0054】
図16(b)に示される原出力パターンORの変化の度合いを適正化するべく、図17(a)に示されるように、低変化領域LSEに対して第1出力域(第1注目域)R1aを、高変化領域STEに対して第2出力域(第2注目域)R1bを設定し、それぞれに対して図17(b)のように調整処理をする。なお、調整処理にかかる調整出力パターンAJが、図17(b)のようにグラフ上の調整出力パターン線AJLで示されるものとする。調整処理として、第1出力域R1a(RV1a,RP1a)については、調整出力パターンAJにおける出力値の変化の度合いが原出力パターンORにおける出力値の変化の度合いよりも大となるように第1調整域A1a(AV1a,AP1a)のように調整し、第2出力域R1b(RV1b,RP1b)については、調整出力パターンAJにおける出力値の変化の度合いが原出力パターンORにおける出力値の変化の度合いよりも小となるように第2調整域A1b(AV1b,AP1b)のように調整する。図16(c)に示す、低変化領域LSEと高変化領域STEが一部重複する場合は、第1調整域A1aと第2調整域A1bの連続性、整合性が持てるように調整する。
【0055】
なお、図17にては、第2出力域R1bに対して第2調整域A1bのように全域にわたってリニアな処理をしているが、図14(b)に示すように、高線量側の一部に対して一律の出力値を割り当てるようにしてもよい。第1出力域R1aについても同様で、低線量側の一部に対して一律の出力値を割り当てるようにしてもよい。第1出力域R1aの低線量側の一部と第2出力域R1bの高線量側の一部に対して共に一律の出力値を割り当てるようにしてもよい。
【0056】
画像処理部2は、読取信号に含まれる全出力域に対し、観察の目的に応じた一部の注目域R1(RV11、RP11)と、注目域R1以外の非注目域R2(RV2a+RV2b→RV2、RP2a+RP2b→RP2)とを設定する(図17(a)参照)。たとえば、非注目域R2のうち、出力値が低い方の第1非注目域RV2a、RP2aは一律の調整出力値(例えば白色)で表されるように、出力値が高い方の第2非注目域RV2b、RP2bは一律の調整出力値(例えば黒色)で表されるように決めておくことができる。なお、第1非注目域RP2aに対してオフセット値OFを割り当ててもよい。注目域R1は、第1出力域R1aと第2出力域R1bとから構成してよい。
【0057】
図17(b)にては、リニアな調整パターンの例が示される。調整出力パターンAJの上限値RHと下限値RLは適宜定めうるが、図示のように原出力パターンOR中の注目域R1の最小値と最大値の間の幅に適合させてもよい。
【0058】
このような信号処理(画像処理)によれば、不要な演算の負担を回避でき、プロセッサの演算上、限りあるビット数を有効に利用できる。なお、グラフ上において、縦軸の要素はPの文字の挿入で、横軸の要素はVの文字の挿入で表現するものとする。
【0059】
図17に示されるような、広範な注目域R1全てにわたってリニアな調整パターンに対比して、注目域R1を限定し、注目域に関する濃淡の変化度合いが、非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなる(急峻となる)ように信号処理を行うことが考えられる。図18(b)に示すのはこのような調整処理をした例である。図18においては、注目域RV12、RP12(R1)の範囲が図17に示されるR1の例よりも高線量側領域に限定されている。アナログデジタル変換部40は、注目域に関する濃淡の変化度合いが、非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなる(急峻となる)ように信号処理を行う。非注目域に関する濃淡の変化度合いは、注目域に関する濃淡の変化度合いよりも緩やかになる。緩やかな変化には、変化度合いがゼロでない場合もゼロである場合も含まれる。調整出力パターンAJの上限値RHと下限値RLは適宜定めうるが、図示のように図18の調整出力パターンAJの上限値と下限値に一致させてもよい。調整処理の詳細は後述する。
【0060】
合成部53は、第1アナログデジタル変換部40Aおよび第2アナログデジタル変換部60での変換を経たデジタル信号を合成し、合成画像Pを生成する。合成部53は、第1アナログデジタル変換器42Aからのデジタル信号と、対数変換処理部51からのデジタル信号とを入力し、HDR(High Cynamic Range)合成を行う。
【0061】
以上説明したように、画像処理システムSでは、読取信号に含まれる全出力域に対し、第1アナログデジタル変換部40Aが、線量強度の比較的低い信号域に適応する対数変換および第1のアナログ/デジタル変換(第1信号処理)を行う。また第2アナログデジタル変換部60が、線量強度の比較的高い信号域に適応する第2のアナログ/デジタル変換および対数変換(第2信号処理)を行う。このように、第1アナログデジタル変換部40Aにおける信号処理と第2アナログデジタル変換部60における信号処理とは、異なっている。そして合成処理部50Aが、双方の変換後の信号を合成する画像処理を行う。この場合、図10(a)に示される補正値と、図11(a)に示される補正値とが組み合わされて画像処理が行われ、上記した低線量側領域RAと高線量側領域RBの双方において鮮明なコントラストを得ることができる。図17(a)および図17(b)に示されるように、第1出力域R1aと第2出力域R1bのそれぞれに応じたアナログデジタル変換および対数変換を行い、それぞれの信号域に応じて有利なX線画像を得ることができる。
【0062】
本実施形態の画像処理システムSによれば、第1アナログデジタル変換部40Aは、出力の比較的小さい第1出力域R1a(図17(a)参照)に適応する第1信号処理を行い、第2アナログデジタル変換部60は、出力の比較的大きい第2出力域R1b(図17(a)参照)に適応する第2信号処理を行う。第1信号処理は、X線画像における色の薄い部分に対応する信号を変換し、第2信号処理は、X線画像における色の濃い部分に対応する信号を変換する。各出力域に適応した信号処理を行い、これらを合成することで、X線画像における色の薄い部分と濃い部分とに関わらずコントラストの良いX線画像を得ることができる。
【0063】
アナログ対数変換は、いくつかの利点を有する。すなわち、アナログ対数変換では、低線量側領域でデータが細かく取れる。また、対数変換後のデータがそのまま出てくる場合、デジタルノイズが発生しない。画像処理システムSにおいて、第1アナログデジタル変換部40Aは、低線量側領域で有利な信号処理を行っている。一方、デジタル対数変換も、いくつかの利点を有する。すなわち、デジタル対数変換では、高線量側領域でデータが細かく取れる。また、電気ノイズが乗らない。画像処理システムSにおいて、第2アナログデジタル変換部60は、高線量側領域で有利な信号処理を行っている。
【0064】
また画像処理システムSにおいて、第1アナログデジタル変換部40Aは、アナログ信号に対して対数変換を行う。デジタル信号に対して第1信号処理を行った場合、出力値における細かい差が消え得る。特に、色の薄い部分において、細かい出力値の差は貴重な情報である。アナログデジタル変換されるよりも前に(先立って)第1出力域R1aに対する信号処理を行うことで、アナログ信号が有する差をX線画像における濃淡に反映することができる。
【0065】
第1アナログデジタル変換部40Aは、第1出力域R1aに関する濃淡の変化度合いが第1出力域R1a以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行い、第2アナログデジタル変換部60は、第2出力域R1bに関する濃淡の変化度合いが第2出力域R1b以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う。よって、第1および第2信号処理がなされる各出力域に関して、濃淡の変化度合いが大きくなる。その結果、得られたX線画像の全体において、コントラストが向上する。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、第1信号処理において、アナログデジタル変換後のデジタル信号に対して対数変換が行われてもよい。第2信号処理が、アナログデジタル変換以外の信号処理を含んでもよい。上記実施形態において、分配器17は、第1アナログデジタル変換部40Aおよび第2アナログデジタル変換部60のそれぞれに対して全出力域についての同一の読取信号を供給した。しかし、これとは違って、分配器17は、第1アナログデジタル変換部40Aに対して第1出力域のみの信号を供給してもよく、第2アナログデジタル変換部60に対して第2出力域のみの信号を供給してもよい。すなわち、分配器17は、各アナログデジタル変換部にとって有利に信号処理可能な(適応可能な)出力域の信号のみを分配するように、各アナログデジタル変換部に読取信号を供給してもよい。
【0067】
本開示の画像処理システムは、X線撮影画像が記録されたイメージプレートから読み取られる読取信号を処理する形態に限られない。本開示の画像処理システムは、X線撮影による検出信号を処理してX線画像を生成する画像処理システムであってもよい。X線撮影による検出信号とは、たとえば、撮像素子(半導体センサ)としてのCCDまたはCMOS等によって出力される検出信号である。その場合、画像処理システムは、検出信号に含まれる全出力域に対し、観察の目的に応じた一部の注目域に関する濃淡の変化度合いが、注目域以外の非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行ってもよい。上記の実施形態に開示された信号処理が、撮像素子によって出力された検出信号に適用されてもよい。その場合でも、検出信号に含まれる全出力域のうち、観察の目的に応じた一部の注目域に関してのみ、濃淡の変化度合いが大きくなる。よって、得られたX線画像のうちで、観察したい部位におけるコントラストが向上する。
【0068】
図15に示されるように、ステップS040において、主制御部20は第1と第2の操作(指定)を受け付けてもよい。またステップS060において、主制御部20は、第1と第2の操作(指定)の組み合わせに適合した処理を読み出してもよい。このように、画像処理部2が、複合的な目的に応じた画像処理を可能とするように構成されてもよい。
【0069】
本開示に係る技術主題は、機械構成を重視して表現すると次の技術主題1~9のように表せる。
[技術主題1]
X線撮影画像が記録されたイメージプレートから読み取られる読取信号を処理してX線画像を生成する画像処理回路であって、
前記読取信号に含まれる全出力域に対し、観察の目的に応じた一部の注目域に関する濃淡の変化度合いが、前記注目域以外の非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う、画像処理回路。
[技術主題2]
前記信号処理を対数変換により行う、技術主題1に記載の画像処理回路。
[技術主題3]
前記注目域に対応する線量強度域が前記非注目域に対応する線量強度域よりも低線量側に存在するよう、前記注目域および前記非注目域を設定する、技術主題1または2に記載の画像処理回路。
[技術主題4]
前記注目域に対応する線量強度域が前記非注目域に対応する線量強度域よりも高線量側に存在するよう、前記注目域および前記非注目域を設定する、技術主題1または2に記載の画像処理回路。
[技術主題5]
前記非注目域が、前記注目域に対応する線量強度域よりも低線量側に存在する線量強度域を持った第1非注目域と、前記注目域に対応する線量強度域よりも高線量側に存在する線量強度域を持った第2非注目域とを含むよう、前記注目域および前記非注目域を設定する、技術主題1または2に記載の画像処理回路。
[技術主題6]
前記非注目域に関する濃淡の変化度合いを無くして前記非注目域が一定の濃度で表されるように信号処理を行う、技術主題1~5のいずれか一項に記載の画像処理回路。
[技術主題7]
アナログデジタル変換される前のアナログ信号に対して前記信号処理を行う、技術主題1~6のいずれか一項に記載の画像処理回路。
[技術主題8]
X線撮影による検出信号を処理してX線画像を生成する画像処理回路であって、
前記検出信号に含まれる全出力域に対し、観察の目的に応じた一部の注目域に関する濃淡の変化度合いが、前記注目域以外の非注目域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う、画像処理回路。
[技術主題9]
技術主題1~8のいずれか1つの画像処理回路の各構成要素が一体化されて単一の装置を構成している、画像処理装置。
【0070】
上述の特許文献1に記載された従来の技術では、輝尽発光の検出によって得られた読取信号に対し、対数変換増幅およびA/D変換等の処理が施される。通常、得られるX線画像のうち、X線の線量強度が小さい部位では色が薄く、X線の線量強度が大きい部位では色が濃い。X線画像は、色の薄い部分から濃い部分まで、あらゆる濃度をもった画素で構成される。しかし、従来の技術では、いずれかの線量強度において、眠い画像部分が生じる可能性がある。眠い画像部分とは、コントラストが鮮明でなく、ぼんやりとした(ぼけた)画像部分である。
【0071】
以下に述べる技術主題は、X線画像における色の薄い部分と濃い部分とに関わらずコントラストの良いX線画像を得ることができる画像処理システムに関する。
図16(a)以降の各図を参照して説明したシステムおよび信号処理に係る技術主題は、機械構成を重視して表現すると次の技術主題1A~6Aのように表せる。
[技術主題1A]
X線撮影画像が記録されたイメージプレートから読み取られる読取信号を対数変換によって処理してX線画像を生成する画像処理システムであって、
前記読取信号に含まれる出力域は、所定の第1出力域と、前記第1出力域よりも出力の大きい第2出力域と、を含み、
前記第1出力域に適応する第1信号処理を行う第1アナログデジタル変換部と、
前記第2出力域に適応する前記第1信号処理とは異なる第2信号処理を行う第2アナログデジタル変換部と、
前記第1アナログデジタル変換部および前記第2アナログデジタル変換部での変換を経たデジタル信号を合成する合成部と、を備える画像処理システム。
[技術主題2A]
前記第1アナログデジタル変換部は、アナログ信号に対して前記対数変換を行う、技術主題1Aに記載の画像処理システム。
[技術主題3A]
前記第1アナログデジタル変換部は、前記第1出力域に関する濃淡の変化度合いが前記出力域以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行い、
前記第2アナログデジタル変換部は、前記第2出力域に関する濃淡の変化度合いが前記出力域以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う、技術主題1Aまたは2Aに記載の画像処理システム。
[技術主題4A]
X線撮影による検出信号を対数変換によって処理してX線画像を生成する画像処理システムであって、
前記検出信号に含まれる出力域は、所定の第1出力域と、前記第1出力域よりも出力の大きい第2出力域と、を含み、
前記第1出力域に適応する第1信号処理を行う第1アナログデジタル変換部と、
前記第2出力域に適応する前記第1信号処理とは異なる第2信号処理を行う第2アナログデジタル変換部と、
前記第1アナログデジタル変換部および前記第2アナログデジタル変換部での変換を経たデジタル信号を合成する合成部と、を備える画像処理システム。
[技術主題5A]
前記読取信号において、低線量領域において線量値の変化に対する出力値の変化の度合いが小さい側の領域を低変化領域とし、高線量領域において線量値の変化に対する出力値の変化の度合いが大きい側の領域を高変化領域とし、前記低変化領域に対して前記第1出力域を、前記高変化領域に対して前記第2出力域を設定する、技術主題1Aから4Aのいずれかに記載の画像処理システム。
[技術主題6A]
技術主題1A~5Aのいずれか1つの各画像処理システムの各構成要素が一体化されて単一の装置を構成している、画像処理装置。
【0072】
技術主題1Aに係る画像処理システムによれば、第1アナログデジタル変換部は、出力の比較的小さい第1出力域に適応する第1信号処理を行い、第2アナログデジタル変換部は、出力の比較的大きい第2出力域に適応する第2信号処理を行う。第1信号処理は、X線画像における色の薄い部分に対応する信号を変換し、第2信号処理は、X線画像における色の濃い部分に対応する信号を変換する。各出力域に適応した信号処理を行い、これらを合成することで、X線画像における色の薄い部分と濃い部分とに関わらずコントラストの良いX線画像を得ることができる。
【0073】
技術主題2Aに係る画像処理システムでは、第1アナログデジタル変換部は、アナログ信号に対して対数変換を行ってもよい。デジタル信号に対して第1信号処理を行った場合、出力値における細かい差が消え得る。特に、色の薄い部分において、細かい出力値の差は貴重な情報である。アナログデジタル変換されるよりも前に(先立って)第1出力域に対する信号処理を行うことで、アナログ信号が有する差をX線画像における濃淡に反映することができる。
【0074】
技術主題3Aに係る画像処理システムでは、第1アナログデジタル変換部は、第1出力域に関する濃淡の変化度合いが第1出力域以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行い、第2アナログデジタル変換部は、第2出力域に関する濃淡の変化度合いが第2出力域以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行ってもよい。この場合、第1および第2信号処理がなされる各出力域に関して、濃淡の変化度合いが大きくなる。よって、得られたX線画像の全体において、コントラストが向上する。
【0075】
技術主題4Aに係る画像処理システムによれば、第1アナログデジタル変換部は、出力の比較的小さい第1出力域に適応する第1信号処理を行い、第2アナログデジタル変換部は、出力の比較的大きい第2出力域に適応する第2信号処理を行う。第1信号処理は、X線画像における色の薄い部分に対応する信号を変換し、第2信号処理は、X線画像における色の濃い部分に対応する信号を変換する。各出力域に適応した信号処理を行い、これらを合成することで、X線画像における色の薄い部分と濃い部分とに関わらずコントラストの良いX線画像を得ることができる。
【0076】
技術主題5Aに係る画像処理システムによれば、読取信号において、低線量領域において線量値の変化に対する出力値の変化の度合いが小さい側の領域を低変化領域とし、高線量領域において線量値の変化に対する出力値の変化の度合いが大きい側の領域を高変化領域とし、低変化領域に対して第1出力域を、高変化領域に対して第2出力域を設定する。これにより、出力値の変化の度合いを均すことができ、適正な配分が可能となる。
【0077】
図16(a)以降の各図を参照して説明したシステムおよび信号処理に係る技術主題1A~5Aは、機械構成を重視して表現すると次の技術主題1B~6Bのように表せる。
[技術主題1B]
X線撮影画像が記録されたイメージプレートから読み取られる読取信号を対数変換によって処理してX線画像を生成する画像処理回路であって、
前記読取信号に含まれる出力域は、所定の第1出力域と、前記第1出力域よりも出力の大きい第2出力域と、を含み、
前記第1出力域に適応する第1信号処理を行う第1アナログデジタル変換回路と、
前記第2出力域に適応する前記第1信号処理とは異なる第2信号処理を行う第2アナログデジタル変換回路と、
前記第1アナログデジタル変換回路および前記第2アナログデジタル変換回路での変換を経たデジタル信号を合成する合成回路と、を備える画像処理回路。
[技術主題2B]
前記第1アナログデジタル変換回路は、アナログ信号に対して前記対数変換を行う、技術主題1Bに記載の画像処理回路。
[技術主題3B]
前記第1アナログデジタル変換回路は、前記第1出力域に関する濃淡の変化度合いが前記出力域以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行い、 前記第2アナログデジタル変換回路は、前記第2出力域に関する濃淡の変化度合いが前記出力域以外の領域に関する濃淡の変化度合いよりも大きくなるように信号処理を行う、技術主題1Bまたは2Bに記載の画像処理回路。
[技術主題4B]
X線撮影による検出信号を対数変換によって処理してX線画像を生成する画像処理回路であって、
前記検出信号に含まれる出力域は、所定の第1出力域と、前記第1出力域よりも出力の大きい第2出力域と、を含み、
前記第1出力域に適応する第1信号処理を行う第1アナログデジタル変換回路と、
前記第2出力域に適応する前記第1信号処理とは異なる第2信号処理を行う第2アナログデジタル変換回路と、
前記第1アナログデジタル変換回路および前記第2アナログデジタル変換回路での変換を経たデジタル信号を合成する合成回路と、を備える画像処理回路。
[技術主題5B]
前記読取信号において、低線量領域において線量値の変化に対する出力値の変化の度合いが小さい側の領域を低変化領域とし、高線量領域において線量値の変化に対する出力値の変化の度合いが大きい側の領域を高変化領域とし、前記低変化領域に対して前記第1出力域を、前記高変化領域に対して前記第2出力域を設定する、技術主題1Bから4Bのいずれかに記載の画像処理回路。
[技術主題6B]
技術主題1B~5Bのいずれか1つの画像処理回路の各構成要素が一体化されて単一の装置を構成している、各画像処理装置。
【符号の説明】
【0078】
2…画像処理部、3…表示部、4…操作部、10…第1画像処理装置、18…第1画像処理部、20…主制御部、30…第2画像処理装置、28…第2画像処理部、50…合成処理部、R1…注目域、R2…非注目域、S…画像処理システム。
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