(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177383
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】医用画像処理システム、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/50 20240101AFI20241212BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20241212BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20241212BHJP
【FI】
A61B6/50 500B
A61B6/03 560D
A61B6/46 506Z
A61B6/46 536Q
A61B6/50 511G
A61B6/03 577
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174166
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2020211391の分割
【原出願日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019234557
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昂彦
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン モー
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン スイフ
(57)【要約】
【課題】血流パラメータの値が導出された位置と冠動脈上の位置との対応関係を容易に把握できるようにすること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像処理システムは、医用画像診断装置によって取得された医用画像をネットワークを介して取得する医用画像処理システムであって、取得部と、解析部と、表示制御部とを備える。取得部は、前記医用画像診断装置から被検体の冠動脈に関する医用画像データを取得する。解析部は、前記医用画像データに基づいて、前記冠動脈の血行動態を表す血流パラメータの値を導出する。表示制御部は、前記冠動脈の形状と、前記血流パラメータの値の前記冠動脈に沿った変化を示す情報とを、前記冠動脈に沿った距離方向を横軸としてともに表示をする。表示制御部は、前記表示における前記横軸に対応した位置に第1のマーカ、第2のマーカ及び第3のマーカを示し、前記第1のマーカの位置における前記冠動脈の断面画像をさらに示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像診断装置によって取得された医用画像をネットワークを介して取得する医用画像処理システムであって、
前記医用画像診断装置から被検体の冠動脈に関する医用画像データを取得する取得部と、
前記医用画像データに基づいて、前記冠動脈の血行動態を表す血流パラメータの値を導出する解析部と、
前記冠動脈の形状と、前記血流パラメータの値の前記冠動脈に沿った変化を示す情報とを、前記冠動脈に沿った距離方向を横軸としてともに表示をする表示制御部と
を備え、
前記表示制御部は、
前記表示における前記横軸に対応した位置に第1のマーカ、第2のマーカ及び第3のマーカを示し、
前記第1のマーカの位置における前記冠動脈の断面画像をさらに示す、
医用画像処理システム。
【請求項2】
前記血流パラメータは、QFR(Quantitative Flow Ratio)である、
請求項1に記載の医用画像処理システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記第1のマーカ、前記第2のマーカ及び前記第3のマーカが示す位置の間における前記血流パラメータの差分値を求めてさらに表示する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、ステントの形状を模擬的に表すステント画像を前記表示における前記横軸に対応した位置にさらに表示し、前記ステント画像とともに、前記ステントの長さを示す数値を表示する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の医用画像処理システム。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記表示として、前記血流パラメータの値に応じた色が割り当てられたカラーマップを表示し、前記カラーマップとともに、前記冠動脈のCPR(Curved Planar Reconstruction)画像をさらに表示する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の医用画像処理システム。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記冠動脈の異なる位置における複数の断面画像を表示し、当該複数の断面画像のうち、前記第1のマーカの位置における断面画像が区別されるように表示される、
請求項1~5のいずれか一つに記載の医用画像処理システム。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記冠動脈のCPR画像の対応する位置に、前記第1のマーカ、前記第2のマーカ及び前記第3のマーカを表示する、
請求項1~6のいずれか一つに記載の医用画像処理システム。
【請求項8】
前記表示制御部は、さらに、前記冠動脈のセグメントを示す情報を前記横軸に表示する、
請求項1~7のいずれか一つに記載の医用画像処理システム。
【請求項9】
前記解析部は、前記医用画像データに基づいて、前記冠動脈の形態を表す形態パラメータの値をさらに導出し、
前記表示制御部は、前記形態パラメータの値の前記冠動脈に沿った変化を示す情報をさらに表示する、
請求項1~8のいずれか一つに記載の医用画像処理システム。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記冠動脈の前記距離方向に沿った断層像をさらに表示し、前記第1のマーカ、前記第2のマーカ及び前記第3のマーカに対応するマーカを前記断層像における対応する位置に表示する、
請求項1~9のいずれか一つに記載の医用画像処理システム。
【請求項11】
前記表示制御部は、
前記第1のマーカ、前記第2のマーカ及び前記第3のマーカが表示された各位置における前記血流パラメータの値をさらに表示する
請求項10に記載の医用画像処理システム。
【請求項12】
前記表示制御部は、解剖学的な情報に基づいて、前記冠動脈に沿った距離方向における範囲を設定し、当該範囲における統計値から得られる血流パラメータの値をさらに表示する、
請求項1~11のいずれか一つに記載の医用画像処理システム。
【請求項13】
前記表示制御部は、前記範囲を示すマーカを前記表示における前記横軸に対応した位置に表示する、
請求項12に記載の医用画像処理システム。
【請求項14】
前記表示制御部は、前記冠動脈のセグメントの単位で前記範囲を設定する、
請求項12又は13に記載の医用画像処理システム。
【請求項15】
前記取得部は、前記被検体の心筋の機能情報を示すボリュームデータをさらに取得し、
前記表示制御部は、前記ボリュームデータに基づいて、前記心筋の機能情報をさらに表示する、
請求項1~14のいずれか一つに記載の医用画像処理システム。
【請求項16】
前記表示制御部は、前記心筋における前記冠動脈の支配領域を特定し、当該支配領域における心筋指標値を前記心筋の機能情報として表示する、
請求項15に記載の医用画像処理システム。
【請求項17】
前記解析部は、前記医用画像データを用いて前記冠動脈の治療シミュレーションを行うことで、前記冠動脈の治療後の血流パラメータの値をさらに導出し、
前記表示制御部は、前記治療後の血流パラメータの値を用いたシミュレーションを行うことで、前記治療シミュレーションによって前記冠動脈が変形された際の心筋の機能情報の変化を示す情報をさらに表示する、
請求項1~16のいずれか一つに記載の医用画像処理システム。
【請求項18】
前記表示制御部は、前記治療シミュレーションが行われる前に導出された治療前の血流パラメータの値を用いたシミュレーションを行うことで、治療前の心筋の機能情報を導出し、前記治療後の血流パラメータの値を用いたシミュレーションを行うことで、治療後の心筋の機能情報を導出し、前記治療前の心筋の機能情報及び前記治療後の心筋の機能情報を、前記心筋の機能情報の変化を示す情報として表示する、
請求項17に記載の医用画像処理システム。
【請求項19】
前記表示制御部は、前記心筋における前記冠動脈の支配領域を特定し、当該支配領域における治療前の心筋指標値を前記治療前の心筋の機能情報として導出し、当該支配領域における治療後の心筋指標値を前記治療後の心筋の機能情報として導出する、
請求項18に記載の医用画像処理システム。
【請求項20】
前記解析部は、前記医用画像データを用いて前記冠動脈の治療シミュレーションを行うことで、前記冠動脈の治療後の血流パラメータの値をさらに導出し、
前記表示制御部は、前記治療後の血流パラメータの値の変化を示す情報をさらに表示する、
請求項1~19のいずれか一つに記載の医用画像処理システム。
【請求項21】
前記解析部は、前記治療シミュレーションを行うことで、前記冠動脈の治療後の形態パラメータの値をさらに導出し、
前記表示制御部は、前記治療後の形態パラメータの値の変化を示す情報をさらに表示する、
請求項20に記載の医用画像処理システム。
【請求項22】
コンピュータに、
被検体の冠動脈に関する医用画像データを取得する取得機能と、
前記医用画像データに基づいて、前記冠動脈の血行動態を表す血流パラメータの値を導出する解析機能と、
前記冠動脈の形状と、前記血流パラメータの値の前記冠動脈に沿った変化を示す情報とを、前記冠動脈に沿った距離方向を横軸としてともに表示をする表示制御機能と
を実現させ、
前記表示制御機能は、
前記表示における前記横軸に対応した位置に第1のマーカ、第2のマーカ及び第3のマーカを示し、
前記第1のマーカの位置における前記冠動脈の断面画像をさらに示す、
医用画像処理プログラム。
【請求項23】
医用画像処理装置が、
被検体の冠動脈に関する医用画像データを取得する取得ステップと、
前記医用画像データに基づいて、前記冠動脈の血行動態を表す血流パラメータの値を導出する解析ステップと、
前記冠動脈の形状と、前記血流パラメータの値の前記冠動脈に沿った変化を示す情報とを、前記冠動脈に沿った距離方向を横軸としてともに表示をする表示制御ステップと
を含み、
前記表示制御ステップは、
前記表示における前記横軸に対応した位置に第1のマーカ、第2のマーカ及び第3のマーカを示し、
前記第1のマーカの位置における前記冠動脈の断面画像をさらに示す、
医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理システム、プログラム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT(Computed Tomography)装置等の医用画像診断装置によって生成された医用画像データに基づいて、冠動脈の血行動態を表す血流パラメータの値を導出する技術が知られている。一般的に、このような血流パラメータの値を根拠にして、冠動脈の形態と血流パラメータとの関連や治療の要否を判定するためには、血流パラメータの値が導出された位置が実際の冠動脈上のどの位置であるかを把握する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0209114号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0228115号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0032097号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、血流パラメータの値が導出された位置と冠動脈上の位置との対応関係を容易に把握できるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用画像処理システムは、医用画像診断装置によって取得された医用画像をネットワークを介して取得する医用画像処理システムであって、取得部と、解析部と、表示制御部とを備える。取得部は、前記医用画像診断装置から被検体の冠動脈に関する医用画像データを取得する。解析部は、前記医用画像データに基づいて、前記冠動脈の血行動態を表す血流パラメータの値を導出する。表示制御部は、前記冠動脈の形状と、前記血流パラメータの値の前記冠動脈に沿った変化を示す情報とを、前記冠動脈に沿った距離方向を横軸としてともに表示をする。表示制御部は、前記表示における前記横軸に対応した位置に第1のマーカ、第2のマーカ及び第3のマーカを示し、前記第1のマーカの位置における前記冠動脈の断面画像をさらに示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第3の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第4の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第5の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第6の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第7の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第8の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第9の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第10の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第11の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第12の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第13の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、第14の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、第16の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、第16の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、第16の変形例に係る表示制御機能によって行われる情報表示の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、第2の実施形態に係る医用画像処理システムの構成例を示す図である。
【
図22】
図22は、第3の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置、プログラム及びシステムの実施形態について説明する。
【0008】
なお、以下の実施形態では、医用画像データとして、X線CT装置によって生成されたCT画像データを用いる場合の例を説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理システムの構成例を示す図である。
【0010】
例えば、
図1に示すように、本実施形態に係る医用画像処理システム100は、X線CT装置110と、医用画像処理装置120とを含む。ここで、各装置は、ネットワーク130を介して通信可能に接続されている。
【0011】
X線CT装置110は、被検体に関するCT画像データを生成する。具体的には、X線CT装置110は、被検体を略中心にX線管及びX線検出器を旋回移動させながら、被検体を透過したX線を検出して投影データを収集する。そして、X線CT装置110は、収集された投影データに基づいて、CT画像データを生成する。
【0012】
医用画像処理装置120は、ネットワーク130を介して、X線CT装置110からCT画像データを取得し、取得したCT画像データに基づいて各種の画像処理を行う。例えば、医用画像処理装置120は、サーバー、ワークステーション、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ機器によって実現される。
【0013】
そして、医用画像処理装置120は、被検体の冠動脈に関するCT画像データに基づいて、冠動脈の血行動態を表す血流パラメータの値を導出する。
【0014】
一般的に、このような血流パラメータの値を根拠にして冠動脈の形態と血流パラメータとの関連や治療の要否を判定するためには、血流パラメータの値が導出された位置が実際の冠動脈上のどの位置であるかを把握する必要がある。
【0015】
そこで、本実施形態では、医用画像処理装置120は、血流パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報を、縦軸を血流パラメータの値とし、横軸を冠動脈に沿った距離方向としたグラフに表示し、さらに、冠動脈の構造を示す補助情報をグラフとともに表示する。
【0016】
このような構成によれば、血流パラメータの値の変化を示すグラフとともに、冠動脈の構造を示す補助情報を表示することで、血流パラメータの値が導出された位置と冠動脈上の位置との対応関係を容易に把握できるようになる。
【0017】
以下、このような医用画像処理装置120の構成について、詳細に説明する。
【0018】
例えば、
図1に示すように、医用画像処理装置120は、NW(network)インタフェース121と、記憶回路122と、入力インタフェース123と、ディスプレイ124と、処理回路125とを備える。
【0019】
NWインタフェース121は、処理回路125に接続されており、ネットワーク130を介して他の装置との間で行われるデータ通信を制御する。具体的には、NWインタフェース121は、処理回路125による制御のもと、他の装置及びシステムとの間で行われる各種データの送受信を制御する。例えば、NWインタフェース121は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(network interface controller)等によって実現される。
【0020】
記憶回路122は、処理回路125に接続されており、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路122は、処理回路125による制御のもと、各種データを記憶し、また、記憶されたデータの読み出し及び更新を行う。例えば、記憶回路122は、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0021】
入力インタフェース123は、処理回路125に接続されており、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース123は、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換して処理回路125に出力する。例えば、入力インタフェース123は、トラックボールやスイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、マイクロフォンを用いた音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース123は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース123の例に含まれる。
【0022】
ディスプレイ124は、処理回路125に接続されており、各種情報及び各種データを表示する。具体的には、ディスプレイ124は、処理回路125による制御のもと、各種情報及び各種データを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ124は、LCD(Liquid Crystal Display)やタッチパネル等によって実現される。
【0023】
処理回路125は、入力インタフェース123を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用画像処理装置120の動作を制御する。
【0024】
具体的には、処理回路125は、取得機能125aと、解析機能125bと、表示制御機能125cとを有する。なお、取得機能125aは、取得部の一例である。また、解析機能125bは、解析部の一例である。また、表示制御機能125cは、表示制御部の一例である。
【0025】
取得機能125aは、被検体の冠動脈に関するCT画像データを取得する。
【0026】
具体的には、取得機能125aは、ネットワーク130を介して、X線CT装置110からCT画像データを取得する。そして、取得機能125aは、取得したCT画像データを記憶回路122に記憶させる。
【0027】
解析機能125bは、取得機能125aによって取得されたCT画像データに基づいて、冠動脈の血行動態を表す血流パラメータの値を導出する。
【0028】
具体的には、解析機能125bは、取得機能125aによって取得されたCT画像データを記憶回路122から読み出し、読み出したCT画像データに基づいて、血流パラメータの値を導出する。
【0029】
ここで、血流パラメータとしては、公知の各種のパラメータを用いることができる。例えば、解析機能125bは、血流パラメータの値として、FFR(Fractional Flow Reserve)、iFR(instantaneous wave-Free Ratio)、QFR(Quantitative Flow Ratio)等の圧力パラメータの値を導出してもよいし、流速、圧力比、渦度、運動エネルギー、乱流強度、せん断応力等を導出してもよい。または、解析機能125bは、血流パラメータの値として、これらのパラメータのいずれかの値の勾配を導出してもよい。ここで、導出される勾配は、冠動脈に沿った距離方向に対する勾配であってもよいし、他の任意の方向に対する勾配であってもよい。
【0030】
また、血流パラメータを導出するための方法としても、公知の各種の方法を用いることができる。例えば、解析機能125bは、公知の流体解析の手法を用いて、シミュレーションの計算によって血流パラメータを導出する。または、例えば、解析機能125bは、冠動脈に関するCT画像データを入力して、当該冠動脈に関する血流パラメータを出力する学習済みモデルを用いて、血流パラメータを導出してもよい。この場合に、例えば、学習済みモデルは、予め、冠動脈に関するCT画像データと、当該冠動脈の血行動態を表す血流パラメータとを学習用データとした機械学習によって作成されて、記憶回路122に記憶される。ここで、機械学習の手法としては、ディープラーニングや非線形判別分析、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、ナイーブベイズ等の各種の手法を用いることができる。
【0031】
さらに、解析機能125bは、CT画像データに基づいて、冠動脈の形態を表す形態パラメータの値を導出する。
【0032】
具体的には、解析機能125bは、取得機能125aによって取得されたCT画像データを記憶回路122から読み出し、読み出したCT画像データに基づいて、形態パラメータの値を導出する。
【0033】
ここで、形態パラメータとしても、公知の各種のパラメータを用いることができる。例えば、解析機能125bは、形態パラメータの値として、血管断面積、血管内腔径等を導出してもよいし、狭窄率、基準断面積に対する血管断面積の割合等を導出してもよい。また、例えば、解析機能125bは、形態パラメータの値として、偏心指標値、血管壁の計測値(内腔の輪郭、又は、壁の輪郭)、リモデリング指標値、断面プラーク負荷量の値等を導出してもよい。
【0034】
また、形態パラメータを導出するための方法としても、公知の各種の方法を用いることができる。例えば、解析機能125bは、公知の画像解析の手法を用いて、形態パラメータを導出する。または、例えば、解析機能125bは、冠動脈に関するCT画像データを入力して、当該冠動脈に関する形態パラメータを出力する学習済みモデルを用いて、形態パラメータを導出してもよい。この場合に、例えば、学習済みモデルは、予め、冠動脈に関するCT画像データと、当該冠動脈の形態を表す形態パラメータとを学習用データとした機械学習によって作成されて、記憶回路122に記憶される。ここで、機械学習の手法としては、ディープラーニングや非線形判別分析、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、ナイーブベイズ等の各種の手法を用いることができる。
【0035】
表示制御機能125cは、解析機能125bによって導出された血流パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報を、縦軸を血流パラメータの値とし、横軸を冠動脈に沿った距離方向としたグラフに表示し、さらに、冠動脈の構造を示す補助情報をグラフとともに表示する。
【0036】
具体的には、表示制御機能125cは、解析機能125bによって導出された血流パラメータの値の冠動脈に沿った変化を表すグラフ、及び、冠動脈の構造を示す補助情報を、それぞれディスプレイ124に表示する。
【0037】
本実施形態では、表示制御機能125cは、冠動脈の構造を示す補助情報として、形態パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報をグラフにさらに表示する。
【0038】
例えば、表示制御機能125cは、冠動脈の構造を示す補助情報として、血管断面積の変化を示す情報をグラフにさらに表示する。
【0039】
図2は、第1の実施形態に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0040】
例えば、
図2に示すように、表示制御機能125cは、操作者によって選択された冠動脈の一区間について、FFRの変化を示す曲線を、縦軸をFFRの値とし、横軸を冠動脈入口からの距離(Distance from ostia)としたグラフ2aに表示する。
【0041】
そして、例えば、表示制御機能125cは、当該区間における冠動脈の構造を示す補助情報として、冠動脈に沿った血管断面積(Area[mm])の変化を示す曲線をグラフ2aにさらに表示する。
【0042】
このような表示によれば、冠動脈に沿ったFFRの変化と血管断面積の変化とが一つのグラフ2aに表示されるため、冠動脈の各位置におけるFFRと血管断面積との相関を容易に把握することができる。
【0043】
ここで、例えば、処理回路125は、プロセッサによって実現される。その場合に、処理回路125が有する各処理機能は、それぞれ、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路122に記憶される。そして、処理回路125は、記憶回路122から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、処理回路125は、各プログラムを読み出した状態で、
図1に示す各処理機能を有することとなる。
【0044】
図3は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置120によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0045】
例えば、
図3に示すように、本実施形態では、取得機能125aが、入力インタフェース123を介して操作者から処理を開始する指示を受け付けた場合に(ステップS101,Yes)、被検体の冠動脈に関するCT画像データを取得する(ステップS102)。
【0046】
このステップS101及びS102の処理は、例えば、処理回路125が、取得機能125aに対応するプログラムを記憶回路122から読み出して実行することにより実現される。
【0047】
その後、解析機能125bが、取得機能125aによって取得されたCT画像データを記憶回路122から読み出し、読み出したCT画像データに基づいて、冠動脈の血行動態を表す血流パラメータの値を導出する(ステップS103)。さらに、解析機能125bは、記憶回路122から読み出したCT画像データに基づいて、冠動脈の形態を表す形態パラメータの値を導出する(ステップS104)。
【0048】
このステップS103及びS104の処理は、例えば、処理回路125が、解析機能125bに対応するプログラムを記憶回路122から読み出して実行することにより実現される。
【0049】
そして、表示制御機能125cが、解析機能125bによって導出された血流パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報をグラフに表示する(ステップS105)。さらに、表示制御機能125cは、解析機能125bによって導出された形態パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報をディスプレイ124にグラフにさらに表示する(ステップS106)。
【0050】
このステップS105及びS106の処理は、例えば、処理回路125が、表示制御機能125cに対応するプログラムを記憶回路122から読み出して実行することにより実現される。
【0051】
上述したように、第1の実施形態では、表示制御機能125cが、血流パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報を、縦軸を血流パラメータの値とし、横軸を冠動脈に沿った距離方向としたグラフに表示し、さらに、冠動脈の構造を示す補助情報をグラフとともに表示する。このような構成によれば、グラフとともに補助情報を参照することによって、血流パラメータの値が導出された位置と冠動脈上の位置との対応関係を容易に把握することができる。この結果、治療方針の策定を容易に行えるようになる。
【0052】
また、例えば、第1の実施形態では、表示制御機能125cが、冠動脈の構造を示す補助情報として、形態パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報をグラフにさらに表示する。このような構成によれば、冠動脈の各位置における血流パラメータの値と血管の形態との相関を容易に把握することができる。
【0053】
例えば、冠動脈では、「見かけ上は狭窄しているがFFRは降下していない」というように、形態と血行動態とが食い違うことがあり、治療方針を決定するためには、FFRの分布だけでなく、FFRと血管の形態との相関を観察することが肝要である。これについて、例えば、冠動脈の画像をFFRの変化を示すグラフとともに表示した場合には、画像から目視で血管の形態を読み取ることになるため、冠動脈の各位置における形態とFFRとの関連を把握するのが難しいこともある。これに対し、第1の実施形態では、例えば、冠動脈に沿ったFFRの変化と血管断面積の変化とが一つのグラフに表示されるため、冠動脈の各位置におけるFFRと血管断面積との相関を容易に把握することができる。
【0054】
なお、上述した第1の実施形態では、血流パラメータの値及び形態パラメータの値の変化を示す情報をグラフに表示する場合の例を説明したが、表示制御機能125cによって行われる情報表示の例はこれに限られない。そこで、以下では、表示制御機能125cによって行われる情報表示に関する変形例について説明する。
【0055】
(第1の変形例)
例えば、表示制御機能125cは、冠動脈の構造を示す補助情報として、冠動脈に沿った狭窄率の変化を示す情報をグラフにさらに表示してもよい。
【0056】
図4は、第1の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0057】
例えば、
図4に示すように、表示制御機能125cは、
図2に示した例の情報に加えて、冠動脈の当該区間について、冠動脈に沿った狭窄率(% stenosis)の変化を示す曲線をグラフ2aにさらに表示する。ここで、狭窄率は、血管断面積が局所的に小さくなっている箇所で大きな値となる。
【0058】
このような表示によれば、冠動脈に沿ったFFRの変化と狭窄率とが一つのグラフ2aに表示されるため、冠動脈の狭窄度合いとFFRの降下との関連を詳細に把握することができる。
【0059】
(第2の変形例)
また、例えば、表示制御機能125cは、冠動脈に沿った距離方向の位置ごとに血流パラメータの値に応じた色を割り当てたカラーバーをさらに表示してもよい。
【0060】
図5は、第2の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0061】
例えば、
図5に示すように、表示制御機能125cは、
図2に示した例の情報に加えて、冠動脈に沿った距離方向の位置ごとにFFRの値に応じた色を割り当てた矩形状のカラーバー5aを表示する(FFR as color bar)。このとき、例えば、表示制御機能125cは、FFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2aの横軸と距離方向の尺度が一致するようにカラーバー5aの長さを設定し、グラフ2aとカラーバー5aとをそれぞれの距離方向の位置が合うように並べて配置する。
【0062】
このような表示によれば、カラーバー5aをさらに参照することによって、冠動脈の各位置におけるFFRと血管断面積との相関をより容易に把握することができる。
【0063】
(第3の変形例)
また、例えば、表示制御機能125cは、冠動脈の形状を表す態様でカラーバーを表示してもよい。
【0064】
図6は、第3の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0065】
例えば、
図6に示すように、表示制御機能125cは、
図5に示した例と同様に、冠動脈に沿った距離方向の位置ごとにFFRの値に応じた色を割り当てたカラーバー6aを表示する。このとき、例えば、表示制御機能125cは、取得機能125aによって取得されたCT画像データに基づいて、当該区間における冠動脈の断面形状を抽出し、抽出した断面形状を表すようにカラーバー6aを成形して表示する(FFR as color bar (schematic))。
【0066】
このような表示によれば、冠動脈の形状を表すカラーバー6aをさらに参照することによって、冠動脈の各位置におけるFFRと血管断面積との相関をより直感的に把握することができる。
【0067】
(第4の変形例)
また、例えば、表示制御機能125cは、冠動脈の距離方向に沿った断層像をさらに表示し、当該距離方向の位置を示すマーカを、グラフ及び断層像それぞれにおける対応する位置に表示してもよい。
【0068】
図7は、第4の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0069】
例えば、
図7に示すように、表示制御機能125cは、
図2に示した例の情報に加えて、当該区間における冠動脈のCPR(Curved Planar Reconstruction)画像7aを表示する。このとき、例えば、表示制御機能125cは、取得機能125aによって取得されたCT画像データに基づいて、当該区間におけるCPR画像7aを生成し、生成したCPR画像7aをFFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2aと並べて表示する。
【0070】
そして、例えば、表示制御機能125cは、FFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2a上に、冠動脈に沿った距離方向の位置を示すマーカ(
図7に示す矢印型の図形)7bを表示する。このとき、表示制御機能125cは、断面積の曲線上にマーカ7bを表示してもよいし(Optional marker of area position)、FFRの曲線上にマーカ7bを表示してもよい。また、これと同時に、表示制御機能125cは、CPR画像7a上にも、グラフ上に表示したマーカ7bの位置と対応する位置にマーカ7cを表示する。
【0071】
ここで、例えば、表示制御機能125cは、グラフ2a及びCPR画像7aそれぞれに表示されたマーカ7b及び7cのうち、いずれか一方のマーカを移動する操作を操作者から受け付ける。そして、表示制御機能125cは、当該操作を受け付けた場合に、移動された一方のマーカの位置と対応する位置に他方のマーカを移動する。これにより、表示制御機能125cは、FFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2a上に表示されたマーカ7bと、CPR画像7a上に表示されたマーカ7cとを、距離方向における同じ位置を示すように連動させて移動する。
【0072】
このような表示によれば、グラフ2a及びCPR画像7aそれぞれに表示されたマーカ7b及び7cを参照することによって、FFRが導出された位置と冠動脈上の位置との対応関係をより容易に把握することができる。
【0073】
(第5の変形例)
また、例えば、表示制御機能125cは、冠動脈の構造を示す補助情報を断層像とともにさらに表示してもよい。
【0074】
図8は、第5の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0075】
例えば、
図8に示すように、表示制御機能125cは、
図7に示した例の情報に加えて、冠動脈の構造を示す補助情報として、冠動脈に沿った血管断面積の変化を示すグラフ8aをCPR画像7aと並べて表示する。このとき、表示制御機能125cは、CPR画像7aと距離方向の尺度が一致するようにグラフ8aの横軸を設定し、CPR画像7aとグラフ8aとをそれぞれの距離方向の位置が合うように並べて配置する。
【0076】
ここで、例えば、表示制御機能125cは、
図7に示した例と同様に、FFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2a上に、冠動脈に沿った距離方向の位置を示すマーカ7bを表示するとともに、CPR画像7aと並べて表示した血管断面積のグラフ8a上の対応する位置にもマーカ8bを表示する。そして、表示制御機能125cは、操作者からいずれか一方のマーカを移動する操作を受け付けた場合に、移動された一方のマーカの位置と対応する位置に他方のマーカを移動する。これにより、表示制御機能125cは、FFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2a上に表示されたマーカ7bと、CPR画像7aと並べて表示した断面積のグラフ8a上に表示されたマーカ8bとを、距離方向における同じ位置を示すように連動させて移動する。
【0077】
このような表示によれば、血管断面積の変化を示すグラフ8aをCPR画像7aとともに参照することによって、FFRが導出された位置と冠動脈上の位置との対応関係をより詳細に把握することができる。
【0078】
(第6の変形例)
また、例えば、表示制御機能125cは、冠動脈に沿った距離方向の位置を示すマーカとして、FFR及び血管断面積の変化を示すグラフ及び冠動脈の距離方向に沿った断層像それぞれに複数のマーカを表示し、マーカを表示した各位置における血流パラメータの値及び形態パラメータの値を表示してもよい。
【0079】
図9は、第6の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0080】
例えば、
図9に示すように、表示制御機能125cは、
図7に示したグラフ2a上に3つのマーカ9a~9cを表示し、
図7に示したCPR画像7a上に3つのマーカ9d~9fを表示する。このとき、表示制御機能125cは、グラフ2a及びCPR画像7aそれぞれにおいて、冠動脈に沿った距離方向における3つの異なる位置を示すように3つのマーカを表示する。ここで、例えば、表示制御機能125cは、グラフ2a及びCPR画像7aの一方に表示されたマーカを移動する操作を操作者から受け付けた場合に、他方の対応する位置のマーカを連動させて移動する。
【0081】
そして、例えば、表示制御機能125cは、グラフ2a及びCPR画像7aそれぞれに表示した3つのマーカが示す3つの位置について、各位置における断面積の値、狭窄率(% stenosis)及びFFRの値(FFR Value)を表示する。さらに、例えば、表示制御機能125cは、隣り合うマーカの組ごとに、当該マーカが示す位置の間におけるFFRの差分(ΔFFR=xxx)を表示する。ここで、例えば、表示制御機能125cは、マーカが示す各位置の断面画像をさらに表示してもよい。
【0082】
例えば、表示制御機能125cは、グラフ2a上で、操作者によって指定された位置に第1のマーカ9aを表示し、第1のマーカ9aの位置から冠動脈の上流側へ所定の距離(例えば、5mm)だけ離れた位置に第2のマーカ9bを表示し、第1のマーカ9aの位置から冠動脈の下流側へ所定の距離(例えば、5mm)だけ離れた位置に第3のマーカ9cを表示する。そして、表示制御機能125cは、CPR画像7a上でも、グラフ2a上に表示した3つのマーカ9a~9cと対応する位置に3つのマーカ9d~9fを表示する。
【0083】
または、例えば、表示制御機能125cは、グラフ2a上で、冠動脈の狭窄率が最も大きい位置(Maximum stenosis cross-section)に第1のマーカ9aを表示し、第1のマーカ9aの位置から冠動脈の上流側へ所定の距離だけ離れた位置(Proximal cross-section)に第2のマーカ9bを表示し、第1のマーカ9aの位置から冠動脈の下流側へ離れた最も末端に近い位置(Distal cross-section)に第3のマーカ9cを表示する。そして、表示制御機能125cは、CPR画像7a上でも、グラフ2a上に表示した3つのマーカ9a~9cと対応する位置に3つのマーカ9d~9fを表示する。
【0084】
この例では、例えば、第1のマーカ9aの位置におけるFFRと第2のマーカ9bの位置におけるFFRとを比較することで、狭窄による影響度を把握することができる。また、第1のマーカ9aの位置におけるFFRの値と第3のマーカ9cの位置におけるFFRの値とを比較することで、第1のマーカ9aの位置にある狭窄の他に悪影響を及ぼしている狭窄があるか否かを判定することができる。
【0085】
なお、ここでは、表示制御機能125cがグラフ2a及びCPR画像7aそれぞれに3つのマーカを表示する場合の例を説明したが、本変形例はこれに限られない。例えば、表示制御機能125cは、グラフ2a及びCPR画像7aそれぞれに4つのマーカを表示してもよいし、4つ以上のマーカを表示してもよい。
【0086】
このような表示によれば、複数のマーカを利用することによって、冠動脈に生じた狭窄の影響を容易に把握することができる。
【0087】
(第7の変形例)
また、上述した第1の実施形態では、血流パラメータの値の変化を示すグラフとともに、冠動脈の構造を示す補助情報を表示する場合の例を説明したが、例えば、冠動脈の構造を示す補助情報に替えて、冠動脈のセグメントを示す情報を表示するようにしてもよい。
【0088】
この場合には、表示制御機能125cは、解析機能125bによって導出された血流パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報を、縦軸を血流パラメータの値とし、横軸を冠動脈に沿った距離方向としたグラフに表示し、さらに、冠動脈のセグメントを示す情報をグラフの横軸に表示する。
【0089】
図10は、第7の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0090】
例えば、
図10に示すように、表示制御機能125cは、操作者によって選択された冠動脈の一区間について、FFRの冠動脈に沿った変化を示す曲線を、縦軸をFFRとし、横軸を冠動脈入口からの距離(Distance from ostia)としたグラフ2aに表示する。
【0091】
そして、例えば、表示制御機能125cは、当該区間における冠動脈のセグメントを示す情報として、冠動脈のセグメントを示す番号(
図10に示す「5」、「6」、「7」、「10」)10aをグラフ2aの横軸にさらに表示する。
【0092】
ここで、例えば、表示制御機能125cは、以下のように、米国心臓協会(American Heart Association:AHA)によって分類された冠動脈のセグメントを示す「1」~「15」の番号を用いる。
【0093】
1:右冠動脈(Right Coronary Artery:RCA)の付け根~右室枝(Right Ventricular Branch:RVB)
2:右室枝(RVB)~鋭縁枝(Aute Marginal Branch:AM)
3:鋭縁枝(AM)~後下行枝(Posterior Descending:PD)
4:房室結節枝(Atrio-Ventricular:AV)、後下行枝(PD)
5:左主幹部(Left Main Truck:LMT)
6:左主幹部(LMT)~1本目の中隔枝(Septal Branch:SB)
7:1本目の中隔枝(SB)~第2対角枝(Second Diagonal Branch:D2)
8:第2対角枝(D2)~左前下行枝(Left Anterior Descending:LAD)の末梢
9:第1対角枝(First Diagonal Branch:D1)
10:第2対角枝(D2)
11:左主幹部(LMT)~鈍角枝(Obtuse Marginal:OM)
12:鈍角枝(OM)
13:鈍角枝(OM)~後側壁枝(Posterior Lateral:PL)
14:後側壁枝(PL)
15:後下行枝(Posterior Descending:PD)
【0094】
さらに、例えば、表示制御機能125cは、被検体の心臓を撮像した3次元画像(ボリューム画像)10bをグラフ2aに並べて表示する。このとき、例えば、表示制御機能125cは、取得機能125aによって取得されたCT画像データに基づいて、被検体の心臓を撮像した3次元画像10bを生成する。
【0095】
このような表示によれば、医師等が一般的に慣れ親しんでいるセグメントの情報を参照することによって、冠動脈上の空間的な位置を容易に把握することができる。
【0096】
(第8の変形例)
図11は、第8の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0097】
さらに、例えば、
図11に示すように、表示制御機能125cは、3次元画像10bに替えて、標準的な心臓の模式図にセグメントの位置を示した画像11aをグラフ2aに並べて表示してもよい。
【0098】
このような表示によれば、セグメントの位置が示された心臓の模式図をさらに参照することによって、冠動脈上の空間的な位置をより直感的に把握することができる。
【0099】
(第9の変形例)
また、上述した第1の実施形態では、血流パラメータの変化を示すグラフとともに、冠動脈に沿った距離方向の位置ごとに血流パラメータの値に応じた色を割り当てたカラーバーを表示する場合の例を説明したが、例えば、グラフに替えて、冠動脈の距離方向に沿った断層像を表示するようにしてもよい。
【0100】
図12は、第9の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0101】
例えば、
図12に示すように、表示制御機能125cは、操作者によって選択された冠動脈の一区間における冠動脈のCPR画像12aを表示する。このとき、例えば、表示制御機能125cは、取得機能125aによって取得されたCT画像データに基づいて、当該区間におけるCPR画像12aを生成する。
【0102】
そして、表示制御機能125cは、
図5に示した例と同様に、冠動脈に沿った距離方向の位置ごとにFFRの値に応じた色を割り当てた矩形状のカラーバー5aを表示する。このとき、例えば、表示制御機能125cは、CPR画像12aと距離方向の尺度が一致するようにカラーバー5aの長さを設定し、CPR画像12aとカラーバー5aとをそれぞれの距離方向の位置が合うように並べて配置する。
【0103】
さらに、表示制御機能125cは、CPR画像12a上で、操作者によって指定された位置にマーカ12bを表示し、当該マーカ12bを表示した位置におけるFFRの値12cを表示する。
【0104】
このような表示によれば、カラーバー5aとCPR画像12aとを対比することによって、冠動脈の各位置におけるFFRと血管断面積との相関を容易に把握することができる。
【0105】
(第10の変形例)
図13は、第10の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0106】
さらに、例えば、
図13に示すように、表示制御機能125cは、矩形状のカラーバー5aに替えて、
図6に示した例と同様に、冠動脈の断面形状を表すように成形されたカラーバー6aを表示してもよい。
【0107】
このような表示によれば、冠動脈の形状を表すカラーバー6aとCPR画像12aとを対比することによって、冠動脈の各位置におけるFFRと血管断面積との相関をより直感的に把握することができる。
【0108】
(第11の変形例)
また、上述した第1の実施形態及び変形例で表示制御機能125cが表示することとした情報は、適宜に組み合わせて表示することも可能である。
【0109】
図14は、第11の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0110】
例えば、
図14に示すように、表示制御機能125cは、
図8に示した例と同様に、FFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2aと、冠動脈のCPR画像7aと表示しつつ、血管断面積の変化を示すグラフ8aに替えて、
図6に示したカラーバー6aをCPR画像7aと並べて表示する。このとき、例えば、表示制御機能125cは、CPR画像7aと距離方向の尺度が一致するようにカラーバー6aの長さを設定し、CPR画像7aとカラーバー6aとをそれぞれの距離方向の位置が合うように並べて配置する。
【0111】
そして、例えば、表示制御機能125cは、
図8に示した例と同様に、FFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2a上にマーカ7bを表示するとともに、カラーバー6a上の対応する位置にもマーカ8bを表示する。そして、表示制御機能125cは、
図8に示した例と同様に、グラフ2a上に表示されたマーカ7bと、カラーバー6a上に表示されたマーカ8bとを、距離方向における同じ位置を示すように連動させて移動する。
【0112】
さらに、例えば、表示制御機能125cは、
図12及び13に示した例と同様に、マーカ7bを表示した位置におけるFFRの値12cを表示する。
【0113】
このような表示によれば、グラフ2aやCPR画像7a、カラーバー6a等の各種の情報を参照することによって、冠動脈の各位置におけるFFRと血管断面積との相関をより効率よく把握することができる。
【0114】
(第12の変形例)
また、例えば、表示制御機能125cは、冠動脈の構造を示す補助情報に加えて、冠動脈のセグメントを示す情報を表示するようにしてもよい。
【0115】
図15は、第12の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0116】
例えば、
図15に示すように、表示制御機能125cは、
図2に示した例と同様に、FFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2aを表示しつつ、
図10及び11に示した例と同様に、冠動脈のセグメントを示す番号10aをグラフ2aの横軸に表示する。
【0117】
このような表示によれば、血管断面積の変化を示す情報及び冠動脈のセグメントを示す情報の両方を参照することによって、冠動脈の各位置におけるFFRと血管断面積との相関をより容易かつ詳細に把握することができる。
【0118】
(第13の変形例)
また、例えば、表示制御機能125cは、解剖学的な情報に基づいて、冠動脈に沿った距離方向における範囲を設定し、当該範囲における統計値から得られる血流パラメータの値をグラフとともにさらに表示してもよい。
【0119】
図16は、第13の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0120】
例えば、
図16に示すように、表示制御機能125cは、
図2に示したFFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2aと、
図12に示したCPR画像12a及びカラーバー5aとを、それぞれの距離方向の位置が合うように並べて表示する。
【0121】
そして、表示制御機能125cは、FFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2a上に、冠動脈に沿った距離方向における範囲を示すマーカ16aを表示する。また、これと同時に、表示制御機能125cは、CPR画像12a上にも、グラフ2a上に表示したマーカ16bの位置と対応する位置に同様のマーカ16bを表示する。この例では、マーカ16a及び16bそれぞれの横方向の幅が、冠動脈に沿った距離方向における範囲を表している。なお、本変形例におけるマーカとしては、
図16に示すマーカ16a及び16bに限られず、距離方向における範囲を表すことが可能なものであれば、どのような形状のマーカが用いられてもよい。
【0122】
その後、表示制御機能125cは、グラフ2aやCPR画像12aによって示される解剖学的な情報に基づいてグラフ2a上の任意の位置にマーカ16aを配置する操作を操作者から受け付ける。ここで、表示制御機能125cは、操作者から受け付けた操作に応じて、マーカ16aをグラフ2a上の対応する位置に表示する。または、表示制御機能125cは、CPR画像12a上の任意の位置にマーカ16bを配置する操作を操作者から受け付けてもよい。また、表示制御機能125cは、操作者による操作に応じてマーカ16a又は16bの幅を変更することで、距離方向における範囲の指定を操作者から受け付ける。そして、表示制御機能125cは、操作者によって配置されたマーカ16a又は16bの位置及び幅に基づいて、冠動脈に沿った距離方向における範囲を設定する。
【0123】
その後、表示制御機能125cは、設定した範囲における冠動脈圧の統計値から得られるFFRの値を表示する。例えば、表示制御機能125cは、設定した範囲における冠動脈圧の最小値を用いてFFRを導出し、導出したFFRの値16cを表示する。なお、表示制御機能125cは、冠動脈圧の最大値、平均値、中央値、差分値等の他の統計値を用いて、FFRを導出してもよい。または、例えば、表示制御機能125cは、設定した範囲におけるFFRの値を0.81~0.85のように範囲で表示してもよい。
【0124】
または、例えば、表示制御機能125cは、グラフ2aやCPR画像12aそれぞれにおける冠動脈の起始部付近にも同様のマーカを表示し、当該マーカに対する操作を操作者からさらに受け付けてもよい。この場合、例えば、表示制御機能125cは、冠動脈の起始部付近に配置されたマーカの範囲における冠動脈圧の統計値と、前述した任意の位置に配置されたマーカ16a及び16bの範囲における冠動脈圧の統計値とを用いて、FFRを導出する。
【0125】
または、例えば、表示制御機能125cは、
図10、11及び15に示した例のように、冠動脈のセグメントを示す情報をさらに表示するようにしてもよい。この場合、例えば、表示制御機能125cは、冠動脈のセグメントを解剖学的な情報として用いて、冠動脈に沿った距離方向における範囲を設定する。例えば、表示制御機能125cは、冠動脈のセグメントの単位で、冠動脈に沿った距離方向における範囲を設定してもよい。すなわち、この場合には、表示制御機能125cは、一つのセグメントの区間、又は、連続する複数のセグメントの区画を、冠動脈に沿った距離方向における範囲として設定する。
【0126】
(第14の変形例)
また、例えば、表示制御機能125cは、被検体の心筋の機能情報を、血流パラメータの値の変化を示すグラフとともにさらに表示してもよい。
【0127】
この場合には、取得機能125aが、被検体の冠動脈に関するCT画像データに加えて、被検体の心筋の機能情報を示すボリュームデータをさらに取得する。
【0128】
例えば、取得機能125aは、被検体に造影剤を注入して心筋を撮像したCTパフュージョン画像のボリュームデータを取得する。または、例えば、取得機能125aは、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、X線診断装置、PET(Positron Emission Tomography)装置等の他の医用画像診断装置によって生成されたボリュームデータを取得してもよい。なお、本変形例におけるボリュームデータとしては、心筋の機能情報を示すものであれば、どのようなボリュームデータが用いられてもよい。
【0129】
そして、表示制御機能125cが、取得機能125aによって取得されたボリュームデータに基づいて、被検体の心筋の機能情報を血流パラメータの値の変化を示すグラフとともに表示する。
【0130】
具体的には、表示制御機能125cは、心筋における冠動脈の支配領域を特定し、当該支配領域における心筋指標値を心筋の機能情報として表示する。
【0131】
例えば、表示制御機能125cは、取得機能125aによって取得されたボリュームデータを用いて心筋の機能情報を示すポーラーマップを生成し、血流パラメータの値の変化を示すグラフとともに表示する。ここで、ポーラーマップとは、心筋の三次元形状を平面に展開して模擬的に円形の図形で表し、当該図形上に心筋の機能情報をマッピングした画像である。
【0132】
図17は、第14の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0133】
例えば、
図17の(a)に示すように、表示制御機能125cは、心筋の機能情報を色で表したポーラーマップ上に冠動脈の血管像を投影した画像を生成し、血流パラメータの値の変化を示すグラフ(図示は省略)とともに表示する。そして、表示制御機能125cは、ポーラーマップ上にマーカ17aを表示し、当該マーカ17aを任意の位置に配置する操作を操作者から受け付ける。
【0134】
ここで、
図17の(b)に示すように、表示制御機能125cは、冠動脈の血管像上にマーカ17aが配置された場合に、マーカ17aが配置された位置より下流側にある血管領域17bを特定する。その後、
図17の(c)に示すように、表示制御機能125cは、特定した血管領域17bから血液が供給される心筋の領域である心筋支配領域17cを特定する。例えば、表示制御機能125cは、ボロノイアルゴリズム等を用いて、心筋支配領域17cを特定する。
【0135】
そして、
図17の(d)に示すように、表示制御機能125cは、特定した心筋支配領域17c内の心筋指標値を導出し、導出した心筋指標値17dを表示する。ここで、心筋指標値は、例えば、心筋支配領域17c内の心筋指標値を積分した積分値でもよいし、心筋支配領域17c内の心筋指標値を平均した平均値でもよい。
【0136】
なお、ここでは、表示制御機能125cが心筋の機能情報をポーラーマップで表示する場合の例を説明したが、本変形例はこれに限らない。例えば、表示制御機能125cは、心筋の機能情報をグラフで表示してもよいし、カラーバーで表示してもよい。
【0137】
(第15の変形例)
また、例えば、表示制御機能125cは、治療シミュレーションによって冠動脈の形状が変形された際の心筋の機能情報の変化を示す情報をシミュレーションによって導出し、血流パラメータの値の変化を示すグラフとともにさらに表示してもよい。
【0138】
この場合には、解析機能125bが、取得機能125aによって取得されたCT画像データを用いて冠動脈の治療シミュレーションを行うことで、冠動脈の治療後の血流パラメータの値をさらに導出する。
【0139】
そして、表示制御機能125cが、解析機能125bによって導出された治療後の血流パラメータの値を用いたシミュレーションを行うことで、治療シミュレーションによって冠動脈が変形された際の心筋の機能情報の変化を示す情報を、血流パラメータの値の変化を示すグラフとともにさらに表示する。
【0140】
具体的には、表示制御機能125cは、治療シミュレーションが行われる前に導出された治療前の血流パラメータの値を用いたシミュレーションを行うことで、治療前の心筋の機能情報を導出する。また、表示制御機能125cは、治療後の血流パラメータの値を用いたシミュレーションを行うことで、治療後の心筋の機能情報を導出する。そして、表示制御機能125cは、導出した治療前の心筋の機能情報及び治療後の心筋の機能情報を、心筋の機能情報の変化を示す情報として表示する。
【0141】
このとき、例えば、表示制御機能125cは、心筋における冠動脈の支配領域を特定し、当該支配領域における治療前の心筋指標値を治療前の心筋の機能情報として導出し、当該支配領域における治療後の心筋指標値を治療後の心筋の機能情報として導出する。
【0142】
例えば、解析機能125bは、第1の実施形態と同様に、取得機能125aによって取得されたCT画像データを用いて流体解析を行うことによって、冠動脈の治療前の血流パラメータの値を導出する。
【0143】
その後、例えば、表示制御機能125cは、心筋における冠動脈の支配領域を特定した後に、解析機能125bによって導出された治療前の血流パラメータに基づいて、支配領域に供給される血流量を導出する。そして、表示制御機能125cは、導出した血流量を用いて心筋のパフュージョン値の空間分布を疑似的に導出するシミュレーションを行うことで、治療前の心筋パフュージョン画像を生成する。ここで、パフュージョン値は、心筋指標値の一例である。
【0144】
その後、解析機能125bは、取得機能125aによって取得されたCT画像データを用いて、冠動脈に対する治療を仮想的に実施する治療シミュレーションを行う。ここで、治療シミュレーションの手法としては、公知の各種の方法を用いることができる。
【0145】
また、解析機能125bは、治療シミュレーションによって仮想的に変形された冠動脈のデータを用いて再度流体解析を行うことによって、冠動脈の治療後の血流パラメータの値を導出する。
【0146】
その後、表示制御機能125は、解析機能125bによって導出された治療後の血流パラメータに基づいて、支配領域に供給される血流量を導出し、導出した血流量を用いたシミュレーションを行うことで、治療後の心筋パフュージョン画像を生成する。
【0147】
そして、表示制御機能125cは、心筋の機能情報の変化を示す情報として、治療シミュレーションが行われる前に生成された治療前の心筋パフュージョン画像と、治療シミュレーションが行われた後で生成された治療後の心筋パフュージョン画像とを並べて表示する。
【0148】
このような表示によれば、操作者が、治療によって影響を受けた心筋の範囲(支配領域)を容易に確認できるようになる。
【0149】
なお、本変形例において、心筋のパフュージョン値の空間分布を表示するための画像は、心筋パフュージョン画像に限られない。例えば、心筋のパフュージョン値の空間分布は、ポーラーマップの形式で表示されてもよいし、心筋及び冠動脈のボリュームレンダリング画像を表示し、当該ボリュームレンダリング画像における心筋の部分にパフュージョン値に応じた色を付けることによって表示されてもよい。ボリュームレンダリング画像を用いることで、操作者が、冠動脈、FFR及びパフュージョン値の関係をより良く理解できるようになる。
【0150】
(第16の変形例)
また、例えば、表示制御機能125cは、治療シミュレーションによって得られた治療後の血流パラメータの値の変化を示す情報をグラフにさらに表示してもよい。
【0151】
この場合には、解析機能125bが、取得機能125aによって取得されたCT画像データを用いて冠動脈の治療シミュレーションを行うことで、冠動脈の治療後の血流パラメータの値をさらに導出する。また、解析機能125bは、治療シミュレーションを行うことで、冠動脈の治療後の形態パラメータの値をさらに導出してもよい。
【0152】
そして、表示制御機能125cが、解析機能125bによって導出された治療後の血流パラメータの値の変化を示す情報を、血流パラメータの値の変化を示すグラフにさらに表示する。また、表示制御機能125cは、解析機能125bによって導出された治療後の形態パラメータの値の変化を示す情報を、血流パラメータの値の変化を示すグラフにさらに表示してもよい。
【0153】
例えば、解析機能125bは、冠動脈に治療用のデバイスを挿入する治療シミュレーションを行う。ここでは、一例として、解析機能125bが、冠動脈にステントを挿入する治療シミュレーションを行う場合の例を説明する。
【0154】
図18~20は、第16の変形例に係る表示制御機能125cによって行われる情報表示の一例を示す図である。
【0155】
例えば、
図18に示すように、表示制御機能125cは、
図2に示したFFR及び血管断面積の変化を示すグラフ2aと、CT画像データに基づいて生成された冠動脈のSPR(Stretched Curved Planar Reconstruction)画像18aとを、それぞれの距離方向の位置が合うように並べて表示する。
【0156】
そして、例えば、
図19に示すように、表示制御機能125cは、SPR画像18a上に治療用のステントの形状を模擬的に表すステント画像18bを表示し、当該ステント画像18bを冠動脈の任意の位置に配置する操作を操作者から受け付ける。ここで、例えば、表示制御機能125cは、操作者による操作に応じてステント画像18bを変形させることで、ステントの長さ、径及び挿入位置の指定を操作者から受け付ける。このとき、例えば、表示制御機能125cは、ステント画像、ステント型番、ステント長さ、ステント径を示すステント情報18cを、グラフ2a及びSPR画像18aとともに表示する。
【0157】
その後、解析機能125bが、操作者からステント画像18bを用いて指定されたステントの長さ、太さ及び挿入位置を、最初に流体解析を行う際にCT画像から作成した解析モデルに適用して再度流体解析を行うことで、治療シミュレーションを行う。これにより、例えば、解析機能125bは、治療後のFFR及び血管断面積をそれぞれ導出する。
【0158】
そして、例えば、
図20に示すように、表示制御機能125cが、解析機能125bによって導出された治療後のFFR及び血管断面積それぞれの変化を示す曲線(
図20に破線で示す曲線)を、治療前のFFR及び血管断面積の変化を示す曲線と重ねてグラフ2aに表示する。このとき、例えば、表示制御機能125cは、ステントの始点及び終点を示す情報(
図20に一点鎖線で示す直線)をグラフ2a上にさらに表示する。
【0159】
このような表示によれば、治療前の情報と治療後の情報とを比較することで、治療を施した場合にFFR及び血管断面積がどの程度変化するかを容易に把握できるようになる。
【0160】
なお、
図20に示す例では、表示制御機能125cが、治療後のFFR及び血管断面積それぞれの変化を示す曲線を治療前のFFR及び血管断面積の変化を示す曲線と重ねて表示することとしたが、本変形例はこれに限られない。例えば、表示制御機能125cは、治療後の変化を示す曲線と、治療前の変化を示す曲線とを並べて表示してもよい。または、例えば、表示制御機能125cは、操作者による操作に応じて、治療後の変化を示す曲線と、治療前の変化を示す曲線とを切り替えて表示してもよい。
【0161】
また、ここでは、解析機能125bが、冠動脈にステントを挿入する治療シミュレーションを行う場合の例を説明したが、本変形例はこれに限られない。例えば、解析機能125bは、冠動脈における狭窄部位を削ることによって血管内径を広げる治療シミュレーションを行ってもよい。または、例えば、解析機能125bは、冠動脈にバルーンを挿入し、当該バルーンにより冠動脈の内壁を広げる治療シミュレーションを行ってもよい。または、例えば、解析機能125bは、被検体に薬剤を投与することによって血流パラメータ(粘性など)を変更する治療シミュレーションを行ってもよい。
【0162】
また、ここでは、表示制御機能125cが、冠動脈にステントを挿入する治療シミュレーションの結果(SPR画像、FFR、血管断面積)のみを表示する場合の例を説明したが、本変形例はこれに限られない。例えば、表示制御機能125cが、解析機能125bによって行われた複数種類の治療シミュレーションの結果を表示してもよい。例えば、表示制御機能125cは、血管径を3mm、血管長さを5mmとした場合の結果と、血管径を3mm、血管長さを7mmとした場合の結果と、薬剤投与によって血流パラメータを変えた場合の結果とをそれぞれ表示してもよい。この場合、表示制御機能125cは、それぞれの結果を重ねて表示してもよいし、並べて表示してもよいし、操作者による操作に応じて切り替えて表示してもよい。
【0163】
(他の変形例)
なお、上述した第1の実施形態及び変形例において、
図7~8、12~14に示した例のように、冠動脈のCPR画像を表示する場合には、例えば、表示制御機能125cは、冠動脈の輪郭を示す線状のグラフィックをCPR画像上に重畳表示するようにしてもよい。
【0164】
その場合に、例えば、表示制御機能125cは、操作者からの指示に応じて、グラフィックを表示するモードと表示しないモードとを切り替えるようにしてもよい。例えば、グラフィックを表示した場合には、グラフィックによってCPR画像上で血管を観察しにくくなることもあり得るが、このように表示のモードを切り替えられるようにすることで、操作者が、状況に応じて、容易に血管を観察できるようになる。
【0165】
(第2の実施形態)
なお、上述した第1の実施形態では、医用画像処理装置120の処理回路125が、取得機能125a、解析機能125b及び表示制御機能125cを有する場合の例を説明したが、これらの処理機能は、複数の装置に分散して実装されてもよい。そこで、以下では、第2の実施形態として、第1の実施形態で説明した処理回路125が有する各処理機能を2つの装置に分散して実装した場合の例を説明する。
【0166】
図21は、第2の実施形態に係る医用画像処理システムの構成例を示す図である。
【0167】
例えば、
図21に示すように、本実施形態に係る医用画像処理システム200は、X線CT装置110と、医用画像解析装置220と、医用画像表示装置230とを含む。ここで、各装置は、ネットワーク240介して通信可能に接続されている。
【0168】
X線CT装置110は、第1の実施形態と同様に、被検体に関するCT画像データを生成する。
【0169】
医用画像解析装置220は、ネットワーク240を介して、X線CT装置110からCT画像データを取得し、取得したCT画像データに基づいて各種の解析処理を行う。例えば、医用画像解析装置220は、サーバー、ワークステーション、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ機器によって実現される。
【0170】
具体的には、医用画像解析装置220は、NWインタフェース221と、記憶回路222と、入力インタフェース223と、ディスプレイ224と、処理回路225とを備える。ここで、NWインタフェース221、記憶回路222、入力インタフェース223、及びディスプレイ224は、それぞれ、第1の実施形態で説明した医用画像処理装置120のNWインタフェース121、記憶回路122、入力インタフェース123、及びディスプレイ124と同様の構成を有する。
【0171】
医用画像表示装置230は、ネットワーク240を介して、X線CT装置110からCT画像データを取得し、取得したCT画像データに基づいて各種の解析処理を行う。例えば、医用画像表示装置230は、サーバー、ワークステーション、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ機器によって実現される。
【0172】
具体的には、医用画像表示装置230は、NWインタフェース231と、記憶回路232と、入力インタフェース233と、ディスプレイ234と、処理回路235とを備える。ここで、NWインタフェース231、記憶回路232、入力インタフェース233、及びディスプレイ234は、それぞれ、第1の実施形態で説明した医用画像処理装置120のNWインタフェース121、記憶回路122、入力インタフェース123、及びディスプレイ124と同様の構成を有する。
【0173】
そして、本実施形態では、医用画像解析装置220の処理回路225が、取得機能225aと、解析機能225bと、送信機能225cとを有する。なお、取得機能225aは、取得部の一例である。また、解析機能225bは、解析部の一例である。
【0174】
取得機能225aは、第1の実施形態又は変形例で説明した取得機能125aと同様の処理を実行する。また、解析機能225bは、第1の実施形態又は変形例で説明した解析機能125bと同様の処理を実行する。また、送信機能225cは、NWインタフェース221を介して、解析機能225bによって導出された血流パラメータや形態パラメータの値を含む情報を医用画像表示装置230に送信する。
【0175】
また、本実施形態では、医用画像表示装置230の処理回路235が、受信機能235aと、表示制御機能235bとを有する。なお、表示制御機能235bは、表示制御部の一例である。
【0176】
受信機能235aは、NWインタフェース231を介して、医用画像解析装置220から送信された血流パラメータや形態パラメータの値を含む情報を受信する。また、表示制御機能235bは、受信機能235aによって受信された情報を用いて、第1の実施形態又は変形例で説明した表示制御機能125cと同様の処理を実行する。
【0177】
これにより、例えば、表示制御機能235bは、血流パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報を、縦軸を血流パラメータの値とし、横軸を冠動脈に沿った距離方向としたグラフに表示し、さらに、冠動脈の構造を示す補助情報をグラフとともに表示する。
【0178】
または、例えば、表示制御機能235bは、血流パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報を、縦軸を血流パラメータの値とし、横軸を冠動脈に沿った距離方向としたグラフに表示し、さらに、冠動脈のセグメントを示す情報をグラフの横軸に表示する。
【0179】
なお、本実施形態では、例えば、医用画像解析装置220の解析機能225bが、導出した血流パラメータや形態パラメータの値に基づいて、第1の実施形態又は変形例と同様に情報表示を行うための表示用データを生成して医用画像表示装置230に送信し、医用画像表示装置230の表示制御機能235bが、受信した表示用データに基づいて情報表示を行う。または、例えば、医用画像解析装置220の解析機能225bが、血流パラメータや形態パラメータの値を医用画像表示装置230に送信し、医用画像表示装置230の表示制御機能235bが、受信した血流パラメータや形態パラメータの値を用いて、第1の実施形態又は変形例で説明した表示制御機能125cと同様に情報表示を行ってもよい。
【0180】
ここで、例えば、医用画像解析装置220の処理回路225及び医用画像表示装置230の処理回路235は、それぞれ、プロセッサによって実現される。その場合に、各処理回路が有する各処理機能は、それぞれ、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で各装置の記憶回路に記憶される。そして、各処理回路は、記憶回路から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各処理回路は、各プログラムを読み出した状態で、
図21に示す各処理機能を有することとなる。
【0181】
上述した構成によれば、第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、グラフとともに補助情報を参照することによって、血流パラメータの値が導出された位置と冠動脈上の位置との対応関係を容易に把握することができる。
【0182】
(第3の実施形態)
さらに、第1の実施形態で説明した処理回路125の処理機能は、X線CT装置に実装されてもよい。そこで、以下では、第3の実施形態として、第1の実施形態で説明した処理回路125の処理機能をX線CT装置に実装した場合の例を説明する。
【0183】
図22は、第3の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。
【0184】
例えば、
図22に示すように、本実施形態に係るX線CT装置300は、架台装置310と、寝台装置330と、コンソール装置340とを有する。なお、
図22では説明の便宜上、架台装置310を複数示している。
【0185】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム313の回転軸又は寝台装置330の天板333の長手方向を「Z軸方向」と定義する。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向を「X軸方向」と定義する。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向を「Y軸方向」と定義する。
【0186】
架台装置310は、被検体P(患者等)にX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、コンソール装置340に出力する装置である。架台装置310は、X線管311と、X線検出器312と、回転フレーム313と、X線高電圧装置314と、制御装置315と、ウェッジ316と、X線絞り器317とを有する。
【0187】
X線管311は、X線高電圧装置314からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。例えば、X線管311は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0188】
ウェッジ316は、X線管311から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ316は、X線管311から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管311から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ316は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジ316は、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
【0189】
X線絞り器317は、ウェッジ316を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等を含み、複数の鉛板等を組み合わせることによってスリットを形成している。
【0190】
X線検出器312は、X線管311から照射され、被検体Pを通過したX線を検出する。具体的には、X線検出器312は、X線管311の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。例えば、X線検出器312は、チャネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向とも呼ばれる)に複数配列された構造を有する。
【0191】
例えば、X線検出器312は、コリメータと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、各シンチレータが、入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。コリメータ(グリッドとも呼ばれる)は、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。例えば、コリメータは、1次元コリメータ又は2次元コリメータである。光センサアレイは、複数の光センサを有し、各光センサが、対応するシンチレータから出力される光量に応じた電気信号を出力する。例えば、光センサアレイは、光電子増倍管(Photomultiplier Tube:PMT)等の他の光センサを有する。なお、X線検出器312は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0192】
また、X線検出器312は、各検出素子から出力される電気信号を処理するDAS(Data Acquisition System)を有する。DASは、X線検出器312の各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DASが生成した検出データは、コンソール装置340へと転送される。
【0193】
X線高電圧装置314は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管311に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管311が照射するX線出力に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置314は、後述する回転フレーム313に設けられてもよいし、架台装置310において回転フレーム313を回転可能に支持する支持フレーム(図示は省略)に設けられてもよい。
【0194】
回転フレーム313は、X線管311とX線検出器312とを対向支持し、後述する制御装置315によってX線管311とX線検出器312とを回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム313は、X線管311とX線検出器312に加えて、X線高電圧装置314を更に備えて支持する。ここで、X線検出器312が有するDASが生成した検出データは、回転フレーム313に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有する送信機から光通信によって架台装置310の非回転部分(例えば、支持フレーム等)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置340へ転送される。なお、回転フレーム313から架台装置310の非回転部分への検出データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0195】
制御装置315は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置315は、コンソール装置340若しくは架台装置310に取り付けられた入力インタフェース343からの入力信号を受けて、架台装置310及び寝台装置330の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置315は、入力信号を受けて回転フレーム313を回転させる制御や、架台装置310をチルトさせる制御、及び寝台装置330及び天板333を動作させる制御を行う。なお、架台装置310をチルトさせる制御は、架台装置310に取り付けられた入力インタフェース343によって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置315がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム313を回転させることによって実現される。なお、制御装置315は、架台装置310に設けられてもよいし、コンソール装置340に設けられても構わない。
【0196】
寝台装置330は、スキャン対象である被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台331と、寝台駆動装置332と、天板333と、支持フレーム334とを有する。基台331は、支持フレーム334を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置332は、被検体Pが載置された天板333を天板333の長軸方向に移動するモータあるいはアクチュエータである。支持フレーム334の上面に設けられた天板333は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置332は、天板333に加え、支持フレーム334を天板333の長軸方向に移動してもよい。
【0197】
コンソール装置340は、操作者によるX線CT装置300の操作を受け付けるとともに、架台装置310によって収集された検出データを用いてCT画像データを再構成する装置である。コンソール装置340は、メモリ341と、ディスプレイ342と、入力インタフェース343と、処理回路344とを有する。なお、ここでは、コンソール装置340と架台装置310とが別体である場合の例を説明するが、架台装置310にコンソール装置340又はコンソール装置340の構成要素の一部が含まれていてもよい。
【0198】
メモリ341は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ341は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。
【0199】
ディスプレイ342は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ342は、処理回路344によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ342は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。なお、例えば、ディスプレイ342は、架台装置310に設けられていてもよい。また、例えば、ディスプレイ342は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置340本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されていてもよい。
【0200】
入力インタフェース343は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路344に出力する。例えば、入力インタフェース343は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。例えば、入力インタフェース343は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。なお、例えば、入力インタフェース343は、架台装置310に設けられていてもよい。また、例えば、入力インタフェース343は、コンソール装置340本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されていてもよい。
【0201】
処理回路344は、X線CT装置300全体の動作を制御する。例えば、処理回路344は、システム制御機能344aと、前処理機能344bと、再構成処理機能344cと、画像処理機能344dとを有する。
【0202】
システム制御機能344aは、入力インタフェース343を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路344の各種機能を制御する。例えば、システム制御機能344aは、X線CT装置300において実行されるCTスキャンを制御する。また、システム制御機能344aは、前処理機能344b、再構成処理機能344c、及び画像処理機能344dを制御することで、コンソール装置340におけるCT画像データの生成や表示を制御する。
【0203】
前処理機能344bは、X線検出器312のDASから出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施した投影データを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)及び前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。
【0204】
再構成処理機能344cは、前処理機能344bにて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データ(再構成画像データ)を生成する。
【0205】
画像処理機能344dは、入力インタフェース343を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能344cによって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。なお、3次元画像データの生成は再構成処理機能344cが直接行っても構わない。
【0206】
そして、本実施形態では、システム制御機能344aが、さらに、解析機能344eと、表示制御機能344fとを有する。なお、解析機能344eは、解析部の一例である。また、表示制御機能344fは、表示制御部の一例である。
【0207】
解析機能344eは、再構成処理機能344cによって生成されたCT画像データを用いて、第1の実施形態又は変形例で説明した解析機能125bと同様の処理を実行する。また、表示制御機能344fは、第1の実施形態又は変形例で説明した表示制御機能125cと同様の処理を実行する。
【0208】
これにより、例えば、表示制御機能344fは、血流パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報を、縦軸を血流パラメータの値とし、横軸を冠動脈に沿った距離方向としたグラフに表示し、さらに、冠動脈の構造を示す補助情報をグラフとともに表示する。
【0209】
または、例えば、表示制御機能344fは、血流パラメータの値の冠動脈に沿った変化を示す情報を、縦軸を血流パラメータの値とし、横軸を冠動脈に沿った距離方向としたグラフに表示し、さらに、冠動脈のセグメントを示す情報をグラフの横軸に表示する。
【0210】
ここで、例えば、処理回路344は、プロセッサによって実現される。この場合に、処理回路344が有する各処理機能は、それぞれ、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ341に記憶される。そして、処理回路344は、メモリ341から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、処理回路344は、各プログラムを読み出した状態で、
図22に示す各処理機能を有することとなる。
【0211】
上述した構成によれば、第3の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、グラフとともに補助情報を参照することによって、血流パラメータの値が導出された位置と冠動脈上の位置との対応関係を容易に把握することができる。
【0212】
(他の実施形態)
なお、上述した各実施形態及び変形例では、医用画像データとして、X線CT装置によって生成されたCT画像データを用いる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限ら得ない。例えば、血管の形状を取得可能な医用画像データであれば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置や超音波診断装置、X線診断装置等の他の医用画像診断装置によって生成された医用画像データが用いられてもよい。
【0213】
血流パラメータの導出に用いられる医用画像データと、形態パラメータの導出に用いられる医用画像データとは、別の種類の医用画像データであってもよい。例えば、CT画像データに基づいて、血流パラメータが導出され、IVUS(Intravascular Ultrasound)等の超音波診断装置によって生成された超音波画像に基づいて、形態パラメータが導出されてもよい。
【0214】
なお、上述した各実施形態では、装置ごとに、単一の処理回路によって各処理機能が実現されるものとして説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することによって、各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、上述した各実施形態では、装置ごとに、単一の記憶回路が各処理機能に対応するプログラムを記憶する場合の例を説明したが、例えば、複数の記憶回路を分散して配置し、処理回路が、個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0215】
また、上述した各実施形態では、本明細書における取得部、解析部及び表示制御部を、それぞれ、処理回路の取得機能、解析機能及び表示制御機能によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における取得部、解析部及び表示制御部は、実施形態で述べた取得機能、解析機能及び表示制御機能によって実現する他にも、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0216】
また、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を一つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0217】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0218】
また、上述した実施形態及び変形例において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0219】
また、上述した実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0220】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、血流パラメータの値が導出された位置と冠動脈上の位置との対応関係を容易に把握できるようになる。
【0221】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0222】
120 医用画像処理装置
125 処理回路
125a 取得機能
125b 解析機能
125c 表示制御機能