(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177386
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバ、ベーパーチャンバ用のシート及び電子機器
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20241212BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28D15/02 102A
H01L23/46 B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174181
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2021085179の分割
【原出願日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2019043928
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019045156
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019045167
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019046509
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019046510
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019054517
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】武田 利彦
(72)【発明者】
【氏名】小田 和範
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】竹松 清隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 輝寿
(72)【発明者】
【氏名】津金澤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽子
(57)【要約】
【課題】熱輸送能力を高めることができるベーパーチャンバを提供する。
【解決手段】密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、密閉空間には第一流路、及び、第一流路に隣接する液流路部が備えられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、
重ねられた3つのシートからなり、
前記3つのシートのうち、中央に配置されたシートは、該シートを厚さ方向に貫通するとともにシート面に沿って延びる第一流路と、前記第一流路に隣接し、第二流路を有する液流路部と、を備え、
前記第二流路は、前記液流路部の厚さ方向の一方の面と他方の面のそれぞれに溝として設けられており、
前記第一流路と前記第二流路とが、前記液流路部の厚さ方向の一方の面と他方の面のそれぞれに設けられた連通開口部により連通している、
ベーパーチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、密閉空間に封入された作動流体を、相変化を伴いつつ還流することにより熱輸送を行うベーパーチャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン並びに携帯電話及びタブレット端末のような携帯型端末に備えられているCPU(中央演算処理装置)等の電子部品からの発熱量は、情報処理能力の向上により増加する傾向にあり冷却技術が重要である。このような冷却のための手段としてヒートパイプがよく知られている。これはパイプ内に封入された作動流体により、熱源における熱を他の部位に輸送することで拡散させ、熱源を冷却するものである。
【0003】
一方、近年においては特に携帯型端末等で薄型化が顕著であり、従来のヒートパイプよりも薄型の冷却手段が必要となってきた。これに対して例えば特許文献1に記載のようなベーパーチャンバが提案されている。
【0004】
ベーパーチャンバはヒートパイプによる熱輸送の考え方を板状の部材に展開した機器である。すなわち、ベーパーチャンバには、対向する平板の間に作動流体が封入されており、この作動流体が相変化を伴いつつ還流することで熱輸送を行い、熱源における熱を輸送及び拡散して熱源を冷却する。
【0005】
より具体的には、ベーパーチャンバ内部には蒸気用流路と凝縮液用流路とが設けられ、ここに作動流体が封入されている。ベーパーチャンバを熱源に配置すると、熱源の近くにおいて作動流体は熱源からの熱を受けて蒸発し、気体(蒸気)となって蒸気用流路を移動する。これにより熱源からの熱が熱源から離れた位置に円滑に輸送され、その結果熱源が冷却される。
熱源からの熱を輸送した気体状態の作動流体は熱源から離れた位置にまで移動し、周囲に熱を吸収されることで冷却されて凝縮し、液体状態に相変化する。相変化した液体状態の作動流体は凝縮液用流路を通り、熱源の位置にまで戻ってまた熱源からの熱を受けて蒸発して気体状態に変化する。
以上のような循環により熱源から発生した熱が熱源から離れた位置に輸送、拡散され熱源が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、熱輸送能力を高めることができるベーパーチャンバを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの態様は、密閉空間に作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、重ねられた3つのシートからなり、3つのシートのうち、中央に配置されたシートは、該シートを厚さ方向に貫通するとともにシート面に沿って延びる第一流路と、第一流路に隣接し、第二流路を有する液流路部と、を備え、第二流路は、液流路部の厚さ方向の一方の面と他方の面のそれぞれに溝として設けられており、第一流路と第二流路とが、液流路部の厚さ方向の一方の面と他方の面のそれぞれに設けられた連通開口部により連通している、ベーパーチャンバである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ベーパーチャンバの熱輸送能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2はベーパーチャンバ1の分解斜視図である。
【
図3】
図3は第三シート30をz方向から見た図である。
【
図7】
図7(a)、
図7(b)は外周液流路部34に注目した断面図である。
【
図8】
図8は外周液流路部34をz方向から見て一部を拡大した図である。
【
図9】
図9は他の例の外周液流路部をz方向から見て一部を拡大した図である。
【
図14】
図14は内側液流路部38をz方向から見て一部を拡大した図である。
【
図21】4つのシートによる例を説明する図である。
【
図22】
図22は第二の形態にかかるベーパーチャンバ51の分解斜視図である。
【
図23】
図23はベーパーチャンバ51の密閉空間を説明する図である。
【
図27】
図27はベーパーチャンバ101の分解斜視図である。
【
図28】
図28は第三シート130をz方向から見た図である。
【
図32】
図32は外周液流路部134に注目した断面図である。
【
図34】
図34は柱136aが配置された部位の断面図である。
【
図35】
図35は内側液流路部138に注目した断面図である。
【
図37】
図37は柱140aが配置された部位の断面図である。
【
図39】
図39はベーパーチャンバ101の他の断面図である。
【
図41】
図41は柱136aが配置された部位を拡大した断面図である。
【
図43】
図43は柱140aが配置された部位を拡大した断面図である。
【
図49】
図49(a)、
図49(b)はベーパーチャンバ201の断面のうち内側液流路部238の周辺の図である。
【
図50】
図50は断面における好ましい形態を説明する図である。
【
図59】
図59はベーパーチャンバ301の製造過程を説明する図である。
【
図60】
図60はベーパーチャンバ301の製造過程を説明する図である。
【
図61】
図61はベーパーチャンバ301の製造過程を説明する図である。
【
図62】
図62はベーパーチャンバ301の製造過程を説明する図である。
【
図63】
図63はベーパーチャンバ301の製造過程を説明する図である。
【
図64】
図64はベーパーチャンバ301の製造過程を説明する図である。
【
図68】
図68はベーパーチャンバ501における内側液流路部538を説明する図である。
【
図72】
図72はベーパーチャンバ501’における内側液流路部538’を説明する図である。
【
図73】
図73はベーパーチャンバ501”における内側液流路部538”を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を図面に示す形態に基づき説明する。以下に示す図面では分かりやすさのため部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見やすさのため説明上不要な部分の図示、繰り返しとなる符号は省略することがある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件および物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。さらに、図面においては、明瞭にするために、同様の機能を期待し得る複数の部分の形状を、規則的に記載しているが、厳密な意味に縛られることなく、当該機能を期待することができる範囲内で、当該部分の形状は互いに異なっていてもよい。また、図面においては、部材同士の接合面などを示す境界線を、便宜上、単なる直線で示しているが、厳密な直線であることに縛られることはなく、所望の接合性能を期待することができる範囲内で、当該境界線の形状は任意である。
【0012】
1.形態1
1.1.形態1a
[構成要素]
図1には形態1aにかかるベーパーチャンバ1の外観斜視図、
図2にはベーパーチャンバ1の分解斜視図を表した。これら図及び以下に示す各図には必要に応じて便宜のため、3次元の直交座標系に対応した方向を表す矢印(x、y、z)も合わせて表示した。ここでxy面内方向は板状であるベーパーチャンバ1の板面方向であり、z方向は厚さ方向である。
【0013】
本形態のベーパーチャンバ1は、
図1、
図2からわかるように第一シート10、第二シート20、及び、第三シート30(「中間シート30」と記載することもある。)を有している。そして、後で説明するように、これらシートが重ねられて接合(拡散接合、ろう付け等)されていることにより、第一シート10と第二シート20との間に第三シート30の形状に基づいた中空部が形成されたベーパーチャンバ用シートとなる。そして、この中空部に作動流体が封入されることで密閉空間2(例えば
図15参照)とされ、ベーパーチャンバ1となる。
【0014】
<第一シート>
本形態で第一シート10は、その表裏面(厚さ方向の一方と他方の面、内面10aと外面10b)が平坦である全体としてシート状の部材である。第一シート10は表裏とも平坦な面により構成されており、平坦な内面10a、該内面10aとは反対側となる平坦な外面10b、及び、内面10aと外面10bとを渡して厚さを形成する端面10cを備える。
【0015】
また、第一シート10は本体11及び注入部12を備えている。
本体11は中空部及び密閉空間を形成するシート状の部位であり、本形態では平面視で角が円弧にされた(いわゆるRを有する)長方形である。
ただし、第一シート10の本体11は本形態のように四角形である他、ベーパーチャンバとして都度必要とされる形状とすることができる。例えば円形、楕円形、三角形、その他の多角形、並びに、屈曲部を有する形である例えばL字型、T字型、クランク型、U字型等であってもよい。また、これらの少なくとも2つを組み合わせた形状とすることもできる。
【0016】
注入部12は形成された中空部に対して作動流体を注入する部位であり、本形態では平面視長方形である本体11の一辺から突出する平面視四角形のシート状である。
【0017】
このような第一シート10の厚さは特に限定されることはないが、1.0mm以下であることが好ましく、0.75mm以下であってもよく、0.5mm以下であってもよい。一方、この厚さは0.01mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であってもよく、0.1mm以上であってもよい。この厚さの範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、この厚さの範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより薄型のベーパーチャンバとして適用できる場面を多くすることが可能である。
【0018】
また、第一シート10を構成する材料も特に限定されることはないが、熱伝導率が高い金属であることが好ましい。これには例えば銅、銅合金を挙げることができる。ただし、必ずしも金属材料である必要はなく、例えばAlN、Si3N4、又はAl2O3などセラミックスや、ポリイミドやエポキシなど樹脂も可能である。
また、1つシート内で2種類以上の材料を積層したものを用いてもよいし、部位によって材料が異なってもよい。
【0019】
第一シート10は、単層であってもよいし、複数のシートが積層されてなってもよい。例えば強度が異なる複数の層が積層されたシート(クラッド材)が用いられてもよい。
【0020】
<第二シート>
本形態で第二シート20も、その表裏が平坦である全体としてシート状の部材である。第二シート20は表裏とも平坦な面により構成されており、平坦な内面20a、該内面20aとは反対側となる平坦な外面20b、及び、内面20aと外面20bとを渡して厚さを形成する端面20cを備える。
また、第二シート20も第一シート10と同様に本体21及び注入部22を具備している。
その他、第二シート20は第一シート10と同様に考えることができる。ただし、第二シート20の厚さや材質は第一シート10と同じである必要はなく、異なるように構成してもよい。
【0021】
第二シート20も、単層であってもよいし、複数のシートが積層されてなってもよい。例えば強度が異なる複数の層が積層されたシート(クラッド材)が用いられてもよい。
【0022】
<第三シート>
本形態で第三シート30は、第一シート10の内面10aと第二シート20の内面20aとの間に挟まれて重ねられるシートであり、作動流体が移動する密閉空間2のための構造が具備されている。
図3、
図4には第三シート30を平面視した図(z方向から見た図)を表した。
図3は第一シート10に重ねられる面の図、
図4は第二シート20に重ねられる面の図である。
また
図5には
図3にC
1-C
1で示した線に沿った断面図、
図6には
図3にC
2-C
2で示した線に沿った断面図をそれぞれ示した。なお、断面図のうち、切断面に係る部位にはハッチング(斜線)を付すとともに、切断面に係らない部分で当該断面図に表れる部分のうち表示が必要である部分については、ハッチングを付さずに表示している。以下の図面においても同様である。
【0023】
なお、第三シート30も単層であってもよいし、複数のシートが積層されてなってもよい。複数のシートが積層されてなる場合には、複数のシートを積層してから以下の形態と形成してもよいし、複数のシートを個別に加工してから重ね合わせることで以下の形態を形成してもよい。
【0024】
本形態で第三シート30は、第一シート10の内面10aに重なる第一面30a、第二シート20の内面20aに重なる第二面30b、及び、第一面30aと第二面30bとを渡して厚さを形成する端面30cを備える。従って
図3には第一面30a、
図4には第二面30bがそれぞれ現れている。
【0025】
また、第三シート30は本体31及び注入部32を備えている。
本体31は、ベーパーチャンバ用シートにおける中空部及びベーパーチャンバ1における密閉空間を形成するシート状の部位であり、本形態では平面視で角が円弧にされた(いわゆるRを有する。)長方形である。
ただし、本体31は本形態のように四角形である他、ベーパーチャンバとして必要とされる形状とすることができる。例えば円形、楕円形、三角形、その他の多角形、並びに、屈曲部を有する形である例えばL字型、T字型、クランク型、U字型等であってもよい。また、これらの少なくとも2つを組み合わせた形状とすることもできる。
【0026】
注入部32は形成された中空部に対して作動流体を注入する部位であり、本形態では平面視長方形である本体31の一辺から突出する平面視四角形のシート状である。そして注入部32には第二面30b側に端面30cから本体31に通じる溝32aが設けられている。
【0027】
第三シート30の厚さは0.03mm以上0.8mm以下とすることができる。ただし、第三シート30の厚さは第一シート10及び第二シート20よりも厚いことが好ましい。これにより後述する蒸気流路4の断面を大きく取ることができ、より円滑な作動流体の移動が可能となる。
第三シート30の材質は第一シート10及び第二シート20と同様に考えることができる。
【0028】
本体31には、作動流体が還流するための構造が形成されている。具体的には、本体31には、外周接合部33、外周液流路部34、内側液流路部38、蒸気流路溝42、及び、蒸気流路連通溝44が具備されて構成されている。
【0029】
本形態のベーパーチャンバ1は、第一流路であり作動流体の蒸気が通る蒸気流路4(
図15等参照)、及び、第二流路であり作動流体が凝縮して液化した凝縮液が通る凝縮液流路3(
図18等参照)を備える。そして、第三シート30の蒸気流路溝42が蒸気流路4を形成し、外周液流路部34に具備される液流路溝35、液流路溝36(
図7等参照)及び、内側液流路部38に具備される液流路溝39、液流路溝40(
図13(a)、
図13(b)等参照)が凝縮液流路3を形成する。
【0030】
<<外周接合部>>
外周接合部33は、本体31の外周に沿って設けられた部位であり、本体31の第一面30aに設けられた外周接合面33a及び第二面30bに設けられた外周接合面33bを備えている。外周接合面33aが第一シート10の内面10aの外周部に重なり、外周接合面33bが第二シート20の内面20aの外周部に重なってそれぞれが接合(拡散接合、ろう付け等)されることにより、第一シート10と第二シート20との間に第三シート30の形状に基づく中空部が形成され、ここに作動流体が封入されることにより密閉空間とされる。
【0031】
図3乃至
図7にW
1で示した外周接合部33(外周接合面33a及び外周接合面33b)の幅(外周接合部33が延びる方向に直交する方向の大きさ)は必要に応じて適宜設定することができるが、この幅W
1は、3.0mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であってもよく、2.0mm以下であってもよい。幅W
1が3.0mmより大きくなると、密閉空間の内容積が小さくなり蒸気流路や凝縮液流路が十分確保できなくなる虞がある。一方、幅W
1は0.1mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であってもよく、0.8mm以上であってもよい。幅W
1が0.1mmより小さくなると接合時におけるシート間の位置ずれが生じた際に接合面積が不足する虞がある。幅W
1の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
1の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
なお、ここでは外周接合面33aの幅と外周接合面33bの幅をいずれもW
1で示したが、外周接合面33aの幅と外周接合面33bの幅は必ずしも同じである必要はなく、異なる幅としてもよい。
【0032】
<<外周液流路部>>
外周液流路部34は、液流路部として機能し、作動流体が凝縮して液化した際に通る第二流路である凝縮液流路3の一部を構成する部位である。
図7(a)、
図7(b)には
図5のうち矢印C
3で示した部分を拡大して表した。また、
図8には
図7に矢印C
4で示した方向から見た外周液流路部34を平面視した(z方向から見た)拡大図を表した。すなわち、
図8は、第一面30aの方から見た外周液流路部34の一部を表している。
ここで、
図7(a)は
図8のC
15-C
15矢視断面図であり、
図7(b)は
図8のC
16-C
16の矢視断面図である。
図7(a)は導入部37側に凸部35aが配置される断面であり、
図7(b)は導入部37側に連通開口部35bが配置される断面である。
【0033】
これら図からわかるように、外周液流路部34は、本体31のうち、外周接合部33の内側に沿って形成され、密閉空間2となる部位の外周に沿って設けられる部位である。また、外周液流路部34の第一面30a及び第二面30bのそれぞれに、本体31の外周方向に沿って延びる複数の溝である液流路溝35(第一面30a側)及び液流路溝36(第二面30b側)が形成され、複数の液流路溝35、液流路溝36が、液流路溝35、液流路溝36が延びる方向とは異なる方向に所定の間隔で配置されている。従って、
図5乃至
図7からわかるように外周液流路部34ではその断面において、第一面30a側では凹部である液流路溝35と液流路溝35の間である凸部35aとが凹凸を繰り返して形成されている。
さらに、第二面30b側では凹部である液流路溝36と液流路溝36の間である凸部36aとが凹凸を繰り返して形成されている。すなわち、本形態では凝縮液流路3となる液流路溝が、厚さ方向(z方向)の一方と他方(表裏)のそれぞれに設けられている。
【0034】
このように、第一面30a及び第二面30bのそれぞれに、複数の液流路溝35、液流路溝36が具備されることで、合計した全体としての凝縮液流路3の流路断面積は適する大きさが確保され、必要な流量の凝縮液を流すことができるとともに、1つ当たりの液流路溝35、液流路溝36の深さ及び幅を小さくし、これにより第二流路である凝縮液流路3(
図17(a)、
図17(b)等参照)の流路断面積を小さくして大きな毛細管力を利用することができる。
なお、一方と他方(表裏)、すなわち液流路溝35と液流路溝36とで深さ及び幅をそれぞれ変えてもよい。これによれば最終製品に合わせて、流量と毛細管力を独立的に調整することができる。
【0035】
ここで液流路溝35、液流路溝36は溝であることから、その断面形状において、底部を有し、この底部と向かい合わせとなる反対側は開口している。後述するように、第一シート10や第二シート20が第三シート30に重ねられることでこの開口が塞がれて凝縮液流路3となる。
本形態で液流路溝35、液流路溝36はその断面が半楕円形状とされている。ただし、当該断面形状は半楕円形状であることに限らず、円形や、長方形、正方形、台形等の四角形や、その他の多角形、及び、これらのいずれか複数を組み合せた形状であってもよい。
【0036】
さらに、本形態では、外周液流路部34では、
図8からわかるように隣り合う液流路溝35は、所定の間隔で連通開口部35bにより連通している。これにより複数の液流路溝35の間で凝縮液量の均等化が促進され、効率よく凝縮液を流すことができ、円滑な作動流体の還流が可能となる。なお、
図8では第一面30a側を示しているため液流路溝35、凸部35a、及び連通開口部35bについて説明するが、第二面30b側に設けた液流路溝36、凸部36aについても同様に考えることができ、不図示の連通開口部36bが設けられ、液流路溝35、凸部35a、及び連通開口部35bと同じように考えることができる。
【0037】
本形態では
図8で示したように1つの液流路溝35の該溝を挟んで液流路溝35が延びる方向で異なる位置に連通開口部35bが配置されてもよい。すなわち、液流路溝が延びる方向と直交する方向に沿って凸部35aと連通開口部35bとが交互に配置されている。ただしこれに限定されることはなく、例えば
図9に示したように1つの液流路溝35の該溝を挟んで液流路溝35が延びる方向の同じ位置に対向するように連通開口部35bが配置されてもよい。
【0038】
その他、例えば
図10乃至
図12に記載のような形態とすることもできる。
図10乃至
図12には、
図8と同じ視点で、1つの液流路溝35とこれを挟む2つの凸部35a、及び各凸部35aに設けられた1つの連通開口部35bを示した図を表した。これらはいずれも、当該視点(平面視)で凸部35aの形状が
図8の例とは異なる。
すなわち、
図8に示した凸部35aでは、連通開口部35bが形成される端部においてもその幅が他の部位と同じであり一定である。これに対して
図10乃至
図12に示した形状の凸部35aでは、連通開口部35bが形成される端部においてその幅が、凸部35aの最大幅よりも小さくなるように形成されている。より具体的には、
図10は当該端部において角が円弧状となり角にRが形成されることにより端部の幅が小さくなる例、
図11は端部が半円状とされることにより端部の幅が小さくなる例、
図12は端部が尖るように先細りとなる例である。
【0039】
図10乃至
図12に示したように、凸部35aにおいて連通開口部35bが形成される端部でその幅が、凸部35aの最大幅よりも小さくなるように形成されていることで、連通開口部35bを作動流体が移動しやすくなり、隣り合う凝縮液流路への作動流体の移動が容易となる。
【0040】
また本形態では
図5に示したように外周液流路部34に導入部37が設けられている。導入部37は蒸気流路溝42との境界面に形成された部位であり、蒸気流路溝42側に突出する部位である。本形態では厚さ方向(z方向)の中央で最も突出した頂部37aを具備し、頂部37aから第一面30a、及び第二面30b側(z方向)に向けて、断面視で外周液流路部34側に凹の円弧状である導入面37bが具備されている。
導入部37の形態はこれに限らず、頂部37aの位置はz方向のいずれかであればよく、導入面37bは断面で直線でもよく、円弧状でない曲線であってもよい。また頂部37aは断面視で点でもよく、長さを有していてもよい。
【0041】
このような導入部37によれば、上記のような形状によって導入面37bに凝縮液が集まり易く、導入部37を通じて凝縮液流路3と蒸気流路4との間の作動流体の移動が円滑となり、熱輸送能力をさらに高めることができる。
【0042】
以上のような構成を備える外周液流路部34は、さらに次のような構成を備えてもよい。なお、ここでは図面を参照するため、第一面30a側についてのみについて説明するが、第二面30b側(液流路溝36、凸部36a、及び連通開口部36b)も同じように考えることができる。ただし、このことは第一面30a側の形状と、第二面30b側の形状と、を同じにする必要があることを意味するわけではなく、第一面30a側と第二面30b側との形状を同じとしてもよいし、異なるものとしてもよい。
【0043】
図3乃至
図5、
図7(a)にW
2で示した外周液流路部34の幅(液流路溝35、液流路溝36が配列される方向の大きさ)は、ベーパーチャンバ全体の大きさ等から適宜設定することができるが、幅W
2は、3.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよい。幅W
2が3.0mmを超えると内側の液流路や蒸気流路のための空間が十分にとれなくなる虞がある。一方、幅W
2は0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であってもよく、0.2mm以上であってもよい。幅W
2が0.05mmより小さいと外側を還流する液の量が十分得られない虞がある。幅W
2の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
2の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
なお、ここでは外周液流路部34の第一面30a側の幅と第二面30b側の幅をいずれもW
2で示したが、外周接合面33aの幅と外周接合面33bの幅は必ずしも同じである必要はなく、異なる幅としてもよい。
【0044】
液流路溝35について、
図7(a)、
図8にW
3で示した溝幅(液流路溝35が配列される方向の大きさ、溝の開口面における幅)は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。一方、幅W
3は20μm以上であることが好ましく、45μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。幅W
3の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
3の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
また、
図7(a)にD
1で示した溝の深さは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。一方、深さD
1は5μm以上であることが好ましく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。深さD
1の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さD
1の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
以上のように構成することにより、還流に必要な凝縮液流路の毛細管力をより強く発揮することができる。
【0045】
凝縮液流路の毛細管力をより強く発揮する観点から、溝幅W3を深さD1で割った値で表される流路断面におけるアスペクト比(縦横比)は、1.0よりも大きいことが好ましい。この比は1.5以上でもよく、2.0以上であってもよい。または、アスペクト比は1.0より小さくてもよい。この比は0.75以下であってもよく、0.5以下であってもよい。
その中でも製造の観点からW3はD1より大きいことが好ましく、かかる観点からアスペクト比は1.3より大きいことが好ましい。
【0046】
また、
図7(a)にP
1で示した複数の液流路溝35における隣り合う液流路溝35のピッチは、1100μm以下であることが好ましく、550μm以下であってもよく、220μm以下であってもよい。一方、ピッチP
1は30μm以上であることが好ましく、55μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。このピッチP
1の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、ピッチP
1の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより、凝縮液流路の密度を上げつつ、接合時や組み立て時に変形して凝縮液流路が潰れることを抑制することができる。
【0047】
連通開口部35bについて、
図8にL
1で示した液流路溝35が延びる方向に沿った開口部の大きさは、1100μm以下であることが好ましく、550μm以下であってもよく、220μm以下であってもよい。一方、大きさL
1は30μm以上であることが好ましく、55μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。大きさL
1の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、大きさL
1の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0048】
また、
図8にL
2で示した液流路溝35が延びる方向における隣り合う連通開口部35bのピッチは、2700μm以下であることが好ましく、1800μm以下であってもよく、900μm以下であってもよい。一方、このピッチL
2は60μm以上であることが好ましく、110μm以上であってもよく、140μm以上であってもよい。このピッチL
2の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、ピッチL
2の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0049】
導入部37について、
図7(a)にW
4で示した突出量(凸部35aの端部から頂部37aの距離)は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよい。一方、突出量W
4は20μm以上であることが好ましく、45μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。突出量W
4の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、突出量W
4の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0050】
<<内側液流路部>>
図1乃至
図5に戻って内側液流路部38について説明する。内側液流路部38も液流路部として機能し、作動流体が凝縮して液化した際に通る第二流路である凝縮液流路3の一部、及び導入部41を構成する部位である。
図13(a)、
図13(b)には
図5のうち矢印C
5で示した部分を拡大して示した。
図13(a)、
図13(b)にも内側液流路部38の断面形状が表れている。また、
図14には
図13に矢印C
6で示した方向から見た内側液流路部38を平面視した拡大図を示した。
ここで、
図13(a)は
図14のC
17-C
17矢視断面図であり、
図13(b)は
図14のC
18-C
18の矢視断面図である。
図13(a)は導入部41側に凸部39aが配置される断面であり、
図13(b)は導入部41側に連通開口部39bが配置される断面である。
【0051】
これら図からわかるように、内側液流路部38は本体31のうち、外周液流路部34の環状である環の内側に形成された部位である。本形態の内側液流路部38は、本体31の平面視(z方向から見たとき)長方形の長辺に平行な方向(x方向)に延び、複数(本形態では3つ)の内側液流路部38が同短辺に平行な方向(y方向)に所定の間隔で配列されている。
【0052】
内側液流路部38の第一面30a及び第二面30bのそれぞれに、内側液流路部38が延びる方向に沿って延びる複数の溝である液流路溝39(第一面30a側)及び液流路溝40(第二面30b側)が形成され、複数の液流路溝39、液流路溝40が、液流路溝39、液流路溝40が延びる方向とは異なる方向に所定の間隔で配置されている。
従って、
図13等からわかるように内側液流路部38ではその断面において、第一面30a側では凹部である液流路溝39と、液流路溝39の間である凸部39aと、が凹凸を繰り返して形成されている。さらに、第二面30b側では凹部である液流路溝40と、液流路溝40の間である凸部40aと、が凹凸を繰り返して形成されている。すなわち、本形態では凝縮液流路3となる液流路溝が、厚さ方向(z方向)の一方側と他方側(表裏)の両方に設けられている。
【0053】
このように、第一面30a及び第二面30bのそれぞれに、複数の液流路溝39、液流路溝40が具備されることで、合計した全体としての凝縮液流路3の流路断面積は適する大きさが確保され、必要な流量の凝縮液を流すことができるとともに、1つ当たりの液流路溝39、液流路溝40の深さ及び幅を小さくし、第二流路である凝縮液流路3(
図18等参照)の流路断面積を小さくして大きな毛細管力を利用することができる。
【0054】
ここで液流路溝39、液流路溝40は溝であることから、その断面形状において、底部を有し、この底部と向かい合わせとなる反対側は開口している。後述するように、第一シート10や第二シート20が第三シート30に重ねられることでこの開口が塞がれて凝縮液流路3となる。
本形態で液流路溝39、液流路溝40はその断面が半楕円形状とされている。ただし、当該断面形状は半楕円形状であることに限らず、円形や、長方形、正方形、台形等の四角形や、その他の多角形、及び、これらのいずれか複数を組み合せた形状であってもよい。
【0055】
さらに、本形態では、内側液流路部38では、
図14からわかるように隣り合う液流路溝39は、所定の間隔で連通開口部39bにより連通している。これにより複数の液流路溝39の間で凝縮液量の均等化が促進され、効率よく凝縮液を流すことができ、円滑な作動流体の還流が可能となる。なお、
図14では第一面30a側を示しているため液流路溝39、凸部39a、及び連通開口部39bについて説明するが、第二面30b側に設けた液流路溝40、凸部40aについても同様に考えることができ、不図示の連通開口部40bが設けられ、液流路溝39、凸部39a、及び連通開口部39bと同じように考えることができる。
また、この連通開口部39bについても、上記した連通開口部35bと同様に、
図9に示した例に倣って、液流路溝39、液流路溝40が延びる方向と直交する方向に沿って連通開口部39bが同じ位置となるように配置されてもよい。また、
図10乃至
図12の例に倣った連通開口部39b及び凸部39aの形状としてもよい。
【0056】
また本形態では内側液流路部38に導入部41が設けられている。導入部41は蒸気流路溝42との境界面に形成された部位であり、蒸気流路溝42側に突出する部位である。本形態では厚さ方向(z方向)の中央で最も突出した頂部41aを具備し、頂部41aから第一面30a、及び第二面30b側(z方向)に向けて、断面視で内側液流路部38側に凹の円弧状である導入面41bが具備されている。
導入部41の形態はこれに限らず、頂部41aの位置はz方向のいずれかであればよく、導入面41bは断面で直線でもよく、円弧状でない曲線であってもよい。また頂部41aは断面で点でもよく、長さを有していてもよい。
【0057】
このような導入部41によれば、上記のような形状によって導入面41bに凝縮液が集まり易く、導入部41を通じて凝縮液流路3と蒸気流路4との作動流体の移動が円滑となり、熱輸送能力をさらに高めることができる。
【0058】
以上のような構成を備える内側液流路部38は、さらに次のような構成を備えていることが好ましい。
図3、
図4、
図5、
図13(a)にW
5で示した内側液流路部38の幅(内側液流路部38と蒸気流路溝42が配列される方向の大きさで、最も大きな値)は、3000μm以下であることが好ましく2000μm以下であってもよく、1500μm以下であってもよい。一方、この幅W
5は100μm以上であることが好ましく、200μm以上であってもよく、400μm以上であってもよい。この幅W
5の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
5の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0059】
また、
図3、
図5にP
2で示した複数の内側液流路部38のピッチは5000μm以下であることが好ましく3500μm以下であってもよく、3000μm以下であってもよい。一方、このピッチP
2は200μm以上であることが好ましく、400μm以上であってもよく、800μm以上であってもよい。このピッチP
2の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、ピッチP2の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより蒸気流路の流路抵抗を下げ、蒸気の移動と、凝縮液の還流とをバランスよく行うことができる。
【0060】
以上のような構成を備える内側液流路部38は、さらに次のような構成を備えてもよい。なお、ここでは図面を参照するため、第一面30a側についてのみについて説明するが、第二面30b側(液流路溝40、凸部40a、及び連通開口部40b)も同じように考えることができる。ただし、このことは第一面30a側の形状と、第二面30b側の形状と、を同じにする必要があることを意味するわけではなく、第一面30a側と第二面30b側との形状を同じとしてもよいし、異なるものとしてもよい。
【0061】
液流路溝39について、
図13(a)、
図14にW
6で示した溝幅(液流路溝39が配列される方向の大きさで、溝の開口面における幅)は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。一方、この幅W
6は20μm以上であることが好ましく、45μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。この幅W
6の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
6の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0062】
また、
図13(a)にD
2で示した液流路溝39の深さは、200μm以下であることが好ましく150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。一方、この深さD
2は5μm以上であることが好ましく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。この深さD
2の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さD
2の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより還流に必要な凝縮液流路の毛細管力を強く発揮することができる。
【0063】
流路の毛細管力をより強く発揮する観点から、溝幅W6を深さD2で割った値で表される流路断面におけるアスペクト比(縦横比)は、1.0よりも大きいことが好ましい。1.5以上であってもよいし、2.0以上であってもよい。又は1.0よりも小さくてもよく、0.75以下でもよく0.5以下でもよい。
その中でも製造の観点から溝幅W6は深さD2よりも大きいことが好ましく、かかる観点からアスペクト比は1.3より大きいことが好ましい。
【0064】
また、
図13(a)にP
3で示した複数の液流路溝39における隣り合う液流路溝39のピッチは、1100μm以下であることが好ましく、550μm以下であってもよく、220μm以下であってもよい。一方、このピッチP
3は30μm以上であることが好ましく、55μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。このピッチP
3の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、ピッチP
3の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより、凝縮液流路の密度を上げつつ、接合時や組み立て時に変形して流路が潰れることを抑制することができる。
【0065】
さらに、連通開口部39bについて、
図14にL
3で示した液流路溝39が延びる方向に沿った開口部の大きさは、1100μm以下であることが好ましく、550μm以下であってもよく、220μm以下であってもよい。一方、この大きさL
3は30μm以上であることが好ましく、55μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。この大きさL
3の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、大きさL
3の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0066】
また、
図14にL
4で示した、液流路溝39が延びる方向における隣り合う連通開口部39bのピッチは、2700μm以下であることが好ましく1800μm以下であってもよく、900μm以下であってもよい。一方、このピッチL
4は60μm以上であることが好ましく、110μm以上であってもよく、140μm以上であってもよい。このピッチL
4の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、このピッチL
4の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0067】
上記した本形態の液流路溝35及び液流路溝36、並びに液流路溝39及び液流路溝40は等間隔に離間して互いに平行に配置されているが、これに限られることは無く、毛細管作用を奏することができれば溝同士のピッチがばらついても良く、また溝同士が平行でなくてもよい。
【0068】
導入部41について、
図13(a)にW
7で示した突出量(凸部39aの端部から頂部41aの距離)は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよい。一方、突出量W
7は20μm以上であることが好ましく、45μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。突出量W
7の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、突出量W
7の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0069】
<<蒸気流路溝>>
次に蒸気流路溝42について説明する。蒸気流路溝42は作動流体が蒸発して気化した蒸気が通る部位で、第一流路である蒸気流路4(
図15等参照)の一部を構成する。
図3、
図4には平面視した蒸気流路溝42の形状、
図5には蒸気流路溝42の断面形状がそれぞれ表れている。
【0070】
これら図からもわかるように、本形態で蒸気流路溝42は本体31のうち、外周液流路部34の環状である環の内側に形成された溝(スリット)により構成されている。詳しくは本形態の蒸気流路溝42は、隣り合う内側液流路部38の間、及び、外周液流路部34と内側液流路部38との間に形成され、本体31の平面視長方形で長辺に平行な方向(x方向)に延びた溝である。そして、複数(本形態では4つ)の蒸気流路溝42が同短辺に平行な方向(y方向)に配列されている。本形態の蒸気流路溝42は第三シート30の第一面30aと第二面30b側とを連通するように構成されており、すなわちスリット状の溝であり、第三シート30を厚さ方向に貫通し、第一面30a及び第二面30b側に開口するとともに、第三シート30のシート面(第一面30a、第二面30b)に沿って延び
ている。
従って、
図5からわかるように第三シート30は、y方向において、外周液流路部34及び内側液流路部38と蒸気流路溝42とが交互に繰り返された形状を備えている。
【0071】
このような構成を備える蒸気流路溝42は、さらに次のような構成を備えることができる。
図3、
図4、
図5にW
8で示した蒸気流路溝42の幅(内側液流路部38と蒸気流路溝40が配列される方向の大きさで、蒸気流路溝の開口面における幅)は、少なくとも上記した液流路溝35及び液流路溝37の幅W
3、並びに、液流路溝39及び液流路溝40の幅W
6より大きく形成され、2500μm以下であることが好ましく、2000μm以下であってもよく、1500μm以下であってもよい。一方、この幅W
8は100μm以上であることが好ましく、200μm以上であってもよく、400μm以上であってもよい。この幅W
8の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
8の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
蒸気流路溝42のピッチは、内側液流路部38のピッチにより決まるのが通常である。
蒸気流路溝の流路断面積を液流路溝の流路断面積よりも大きくすることにより、作動流体の性質上、凝縮液よりも体積が大きくなる蒸気を円滑に還流することができる。
【0072】
本形態では蒸気流路溝42の断面形状は導入部37、導入部41に基づく形状となっているが、導入部41が設けられない場合には、長方形、正方形、台形等の四角形、三角形、又はこれらのいずれか複数を組み合わせた形状であってもよい。蒸気流路は蒸気の流動抵抗を小さくすることにより、作動流体の円滑な還流をさせることができるので、かかる観点から流路断面の形状を決定することもできる。
【0073】
本形態では隣り合う内側液流路部38の間に1つの蒸気流路溝42が形成された例を説明したが、これに限らず、隣り合う内側液流路部の間に2つ以上の蒸気流路溝が並べて配置される形態であってもよい。
【0074】
<<蒸気流路連通溝>>
蒸気流路連通溝44は、複数の蒸気流路溝42を連通させる溝である。これにより、複数の蒸気流路溝42の蒸気の均等化が図られたり、蒸気がより広い範囲に運ばれ、多くの凝縮液流路3を効率よく利用できるようになったりするため、作動流体の還流をより円滑にすることが可能となる。
【0075】
本形態の蒸気流路連通溝44は、
図3、
図4、及び、
図6からわかるように、内側液流路部38、蒸気流路溝42が延びる方向の両端部と、外周液流路部34との間に形成されている。
【0076】
蒸気流路連通溝44は、隣り合う蒸気流路溝42を連通させるように形成されている。本形態で蒸気流路連通溝44は
図6からわかるように、第一面30a側の溝44a、第二面30b側の溝44bを有しており、溝44aと溝44bとの間に連結部44cを具備している。この連結部44cは内側液流路部38と外周液流路部33とを連結し内側液流路部38を保持している。
また、
図3、
図4に表れているように、本形態では蒸気流路連通溝44のうち、第三シート30の注入部32に設けられた溝32aの端部が配置される部位では、連結部44cに穴44dが設けられ、溝44aと溝44bとが連通している。これにより溝32aからの作動液注入を阻害することなく、より円滑な作動液注入ができるようにしている。
【0077】
蒸気流路連通溝44は複数の蒸気流路溝42を連通していればよく、その形状は特に限定されることはないが、例えば次のような構成を備えることができる。
図3、
図4、
図6にW
9で示した蒸気流路連通溝44の幅(連通方向に直交する方向の大きさで、溝の開口面における幅)は、2500μm以下であることが好ましく、2000μm以下であってもよく、1500μm以下であってもよい。一方、この幅W
9は100μm以上であることが好ましく、200μm以上であってもよく、400μm以上であってもよい。この幅W
9の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
9の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0078】
本形態で蒸気流路連通溝44の溝44a、溝44bの断面形状は半楕円形であるが、これに限らず、長方形、正方形、台形等の四角形、三角形、半円形、底部が半円形、底部が半楕円形又は、これらのいずれか複数の組み合わせであってもよい。
蒸気流路連通溝は蒸気の流動抵抗を小さくすることにより作動流体の円滑な還流をさせることができるので、かかる観点から流路断面の形状を決定することもできる。
【0079】
<ベーパーチャンバの構造>
次に、第一シート10、第二シート、及び第三シート30が組み合わされてベーパーチャンバ1とされたときの構造について説明する。この説明により、ベーパーチャンバ1が具備する形状、並びに、第一シート10、第二シート、及び第三シート30が有するべき各構成の配置、大きさ、形状等がさらに理解される。
【0080】
図15には、
図1にC
7-C
7で示したy方向に沿ってベーパーチャンバ1を厚さ方向に切断した断面図を表した。
図16には
図1にC
8-C
8で示したx方向に沿ってベーパーチャンバ1を厚さ方向に切断した断面図を示した。
図17(a)には
図15にC
9で示した部分で
図7(a)に対応する断面、
図17(b)には
図7(b)に対応する断面、
図18(a)には
図15にC
10で示した部分で
図13(a)に対応する断面、
図18(b)には
図13(b)に対応する断面をそれぞれ表した。
なお、
図15、
図16、
図17(a)、
図18(a)に表れる断面では蒸気流路4と蒸気流路3とは凸部35a及び凸部39aにより隔てられているが、
図8及び
図14に示して説明したように、凸部35a及び凸部39aはそれぞれ連通開口部35b及び連通開口部39bを備えている。従って、
図17(b)、
図18(b)で示したように蒸気流路4に連通開口部35b、連通開口部39bが接する断面によれば、蒸気流路4と蒸気流路3とは連通開口部35b及び連通開口部39bにより連通している。
【0081】
図1、
図2、及び
図15乃至
図18よりわかるように、第三シート30の第一面30a側に第一シート10の内面10aが重ねられ、第三シート30の第二面30b側に第二シート20の内面20aが重ねられるように配置され接合されることでベーパーチャンバ1とされている。このとき、第三シート30の本体31と第一シート10の本体11、第三シート30の本体31と第二シート20の本体21とが重なり、第三シート30の注入部32の第一シート10の注入部12、第三シート30の注入部32と第二シート20の注入部22とが重なっている。
【0082】
このような第一シート10、第二シート20及び第三シート30の積層体により、本体11、本体21及び本体31に具備される各構成が
図15、
図16、
図17(a)、
図17(b)、
図18(a)、及び
図18(b)に表れるように配置される。具体的には次の通りである。
【0083】
第三シート30の第一面30a側に設けられた外周接合面33aと第一シート10の内面の10aの外周部の面とが重なるように配置されているとともに、第三シート30の第二面30b側に設けられた外周接合面33bと第二シート20の内面20aの外周部の面とが重なるように配置されており、拡散接合やろう付け等の接合手段により接合されている。これにより、第一シート10と第二シート20との間に、第三シート30の形状に基づく中空部が形成されて、ここに作動流体が封入されることで密閉空間2とされている。
【0084】
第三シート30の外周液流路部34の第一面30a側に第一シート10の内面10aが重なるように配置されている。これにより液流路溝35の開口が第一シート10により塞がれて中空部の一部となる。これは、中空部に封入された作動流体が凝縮して液化した状態である凝縮液が流れる第二流路である凝縮液流路3となる。
同様にして第三シート30の外周液流路部34の第二面30b側に第二シート20の内面20aが重なるように配置されている。これにより液流路溝36の開口が第二シート20により塞がれて中空部の一部となる。これは、中空部に封入された作動流体が凝縮して液化した状態である凝縮液が流れる第二流路である凝縮液流路3となる。
【0085】
また、第三シート30の内側液流路部38の第一面30a側に第一シート10の内面10aが重なるように配置されている。これにより液流路溝39の開口が第一シート10により塞がれて中空部の一部となる。これは、中空部に封入された作動流体が凝縮して液化した状態である凝縮液が流れる第二流路である凝縮液流路3となる。
同様にして第三シート30の外周液流路部38の第二面30b側に第二シート20の内面20aが重なるように配置されている。これにより液流路溝40の開口が第二シート20により塞がれて中空部の一部となる。これは、中空部に封入された作動流体が凝縮して液化した状態である凝縮液が流れる第二流路である凝縮液流路3となる。
【0086】
このように、断面においてその四方を壁で囲まれた細い流路を形成することにより強い毛細管力で凝縮液を移動させ、円滑な循環が可能となる。すなわち、凝縮液が流れることを想定した流路を考えたとき、該流路の1つの面が連続的に開放されているようないわゆる溝による流路に比べて、上記凝縮液流路3によれば高い毛細管力を得ることができる。
また、凝縮液流路3は第1流路である蒸気流路4とは分離されて形成されているため、作動流体の循環を円滑にさせることができる。
【0087】
さらに本形態では液流路溝35及び液流路溝39による凝縮液流路3並びに液流路溝36及び液流路溝40による凝縮液流路3が具備され、ベーパーチャンバ1の厚さ方向(z方向)の一方側と他方側のそれぞれに凝縮液流路3が備えられている。
これにより、1つの凝縮液流路3の流路断面積を小さく(細く)しつつも、凝縮液流路3の合計の流路断面積を大きく取ることができるので毛細管力を高く維持しつつ凝縮液の流れを円滑にすることができる。
また、ベーパーチャンバ1における作動流体の面内方向(xy方向)への移動だけでなく、厚さ方向(z方向)への移動の機会を与えることができ、より均一な熱移動及び熱輸送が期待できる。
【0088】
凝縮液流路3が具備する形状は、上記した第三シート30で説明した形状及び寸法に基づいて考えることができる。
【0089】
他の部位について説明する。
図15からわかるように、蒸気流路溝42の開口が第一シート10及び第二シート20により塞がれることで中空部の一部を形成し、ここが封入された作動流体の流路となって、蒸気が流れる第一流路である蒸気流路4となる。
ここで蒸気流路4の一部を構成する第一シート10及び第二シート20の蒸気流路4側の面は平坦であることが好ましい。本形態では第一シート10及び第二シート20の表面が加工されず、平坦な板面を有しているため、蒸気流路4の内壁が平滑になり、蒸気が移動する際の抵抗を抑えることができる。
【0090】
上記した第二流路である凝縮液流路3の流路断面積は、当該第一流路である蒸気流路4の流路断面積より小さくされている。より具体的には、隣り合う2つの蒸気流路4(本形態では1つの蒸気流路溝42、第一シート10、及び第二シート20で囲まれる流路)の平均の流路断面積をAgとし、隣り合う2つの蒸気流路4の間に配置される複数の凝縮液流路3(本形態では1つの内側液流路部38、第一シート10及び第二シート20で囲まれる複数の凝縮液流路3)の平均の流路断面積をAlとしたとき、凝縮液流路3と蒸気流路4とは、AlがAgの0.5倍以下の関係にあるものとし、好ましくは0.25倍以下である。これにより作動流体はその相態様(気相、液相)によって第一流路と第二流路とを選択的に通り易くなる。
この関係はベーパーチャンバ全体のうち少なくとも一部において満たせばよく、ベーパーチャンバの全部でこれを満たせばさらに好ましい。
【0091】
蒸気流路4が具備する形状は、上記した第三シート30で説明した形状及び寸法に基づいて考えることができる。
なお、本形態では導入部37、及び、導入部41が設けられているので、1つの蒸気流路4は2つの導入部に接するように構成されている。
【0092】
図16からわかるように、第三シート30の蒸気流路連通溝44の溝44aの開口が第一シート10で、溝44bの開口が第二シート20でそれぞれ塞がれることにより複数の蒸気流路4が連通する中空部が形成され、作動流体のための流路となる。
【0093】
注入部12、注入部22、及び注入部32についても
図1、
図2に表れているように、注入部32の第一面30a側に注入部12、注入部32の第二面30側に注入部22が重なり、第三シート30の第二面30b側の注入溝32aの開口が第二シート20の注入部22に塞がれ、外部と中空部(凝縮液流路3及び蒸気流路4)とを連通する注入流路5が形成されている。
ただし、注入流路5から中空部に対して作動流体を注入した後は、注入流路5は閉鎖されて密閉空間2となるので、最終的な形態のベーパーチャンバ1では外部と中空部とは連通していない。
本形態で注入部12、注入部22、及び注入部32は、ベーパーチャンバ1の長手方向における一対の端部のうちの一方の端部に設けられている例が示されているが、これに限られることはなく、他のいずれかの端部に配置されていてもよく、複数配置されてもよい。複数配置される場合には例えばベーパーチャンバ1の長手方向における一対の端部のそれぞれに配置されてもよいし、他の一対の端部のうちの一方の端部に配置されもよい。
【0094】
ベーパーチャンバ1の密閉空間2には、作動流体が封入されている。作動流体の種類は特に限定されることはないが、純水、エタノール、メタノール、アセトン、及びそれらの混合物等、通常のベーパーチャンバに用いられる作動流体を用いることができる。
【0095】
[ベーパーチャンバの製造]
以上のようなベーパーチャンバは例えば次のように作製することができる。
第三シート30の外周形状を有するシートに対して、液流路溝35、液流路溝36、液流路溝39、液流路溝40、蒸気流路溝42、及び溝44a及び溝44bをハーフエッチングにより形成する。ハーフエッチングとは厚さ方向に貫通することなくその途中までエッチングを行うことである。
ただし、蒸気流路溝42については、第一面30a側と第二面30b側の両方からのハーフエッチングにより厚さ方向に貫通するように行う。このようにエッチングをすることにより、導入部37及び導入部41の形状を形成することができる。
【0096】
次いで、第三シート30の第一面30a側に第一シート10、第三シート30の第二面30b側に第二シート20を重ねて仮止めを行う。仮止めの方法は特に限定されることはないが、抵抗溶接、超音波溶接、及び接着剤による接着等を挙げることができる。
そして仮止め後に拡散接合を行い恒久的に第一シート10、第二シート20、第三シート30を接合してベーパーチャンバ用シートとする。なお、拡散接合の代わりにろう付けにより接合してもよい。ここで、「恒久的に接合」とは、厳密な意味に縛られることはなく、ベーパーチャンバ1の動作時に、密閉空間2の密閉性を維持可能な程度に接合を維持できる程度に接合されていることを意味する。
【0097】
接合の後、形成された注入流路5から真空引きを行い、中空部を減圧する。その後、減圧された中空部に対して注入流路5から作動流体を注入して中空部に作動流体が入れられる。そして重なった注入部12、注入部22、及び注入部32に対して溶融を利用した溶接や、かしめによって注入流路5を閉鎖して密閉空間とする。これにより密閉空間2の内側に作動流体が安定的に保持される。
【0098】
本形態のベーパーチャンバでは、内部液流路部38が支柱として機能するため、接合時及び減圧時に密閉空間がつぶれることを抑制することができる。
【0099】
以上では、エッチングによるベーパーチャンバの製造について説明したが、製造方法はこれに限らず、プレス加工、切削加工、レーザ加工、及び3Dプリンタによる加工によりベーパーチャンバを製造することもできる。
例えば3Dプリンタによりベーパーチャンバを製造する場合にはベーパーチャンバを複数のシートを接合して作製する必要がなく、接合部のないベーパーチャンバとすることが可能となる。
【0100】
[電子機器の構造及びベーパーチャンバの作用]
次にベーパーチャンバ1の作用について説明する。
図19には電子機器の一形態である携帯型端末80の内側にベーパーチャンバ1が配置された状態を模式的に表した。ここではベーパーチャンバ1は携帯型端末80の筐体81の内側に配置されているため点線で表している。このような携帯型端末80は、各種電子部品を内包する筐体81及び筐体81の開口部を通して外部に画像が見えるように露出したディスプレイユニット82を備えて構成されている。そしてこれら電子部品の1つとして、ベーパーチャンバ1により冷却すべき電子部品53が筐体51内に配置されている。
【0101】
ベーパーチャンバ1は携帯型端末等の筐体内に設置され、CPU等の冷却すべき対象物である電子部品83に取り付けられる。電子部品はベーパーチャンバ1の外面又は外面に直接、又は、熱伝導性の高い粘着剤、シート、テープ等を介して取り付けられる。電子部品83がベーパーチャンバのうちどの位置に取り付けられるかは特に限定されることはなく、携帯型端末等において他の部材の配置との関係により適宜設定される。本形態では
図1に点線で示したように、第二シート20のうち第三シート30が配置される側とは反対側の面で、本体21のxy方向中央に電子部品53を配置した。従って
図1において電子部品83は死角となって見えない位置なので点線で表している。
図20には作動流体の流れを説明する図を表した。説明のし易さのため、この図ではベーパーチャンバ1の内部で第三シート30の第一面30a側が見えるように表示している。
【0102】
電子部品83が発熱すると、その熱が第二シート20内を熱伝導により伝わり、密閉空間2内のうち、電子部品83に近い位置に存在する凝縮液が熱を受ける。この熱を受けた凝縮液は熱を吸収し蒸発し気化する。これにより電子部品83が冷却される。
【0103】
気化した作動流体は蒸気となって
図20に実線の直線矢印で示したように蒸気流路4内を流れて移動する。この流れは電子部品83から離隔する方向に生じるため、蒸気は電子部品83から離れる方向に移動する。
蒸気流路4内の蒸気は熱源である電子部品83から離れ、比較的温度が低いベーパーチャンバ1の外周部に移動し、当該移動の際に順次第一シート10、第二シート20、及び第三シート30に熱を奪われながら冷却される。蒸気から熱を奪った第一シート10、第二シート20、及び第三シート30は、ベーパーチャンバに接触した電子機器80の筐体81等に熱を伝え、最終的に熱は外気に放出される。
【0104】
蒸気流路4を移動しつつ熱を奪われた作動流体は凝縮して液化する。この凝縮液は蒸気流路4の壁面に付着する。一方で蒸気流路4には連続して蒸気が流れているので、凝縮液は
図18に矢印C
11で示したように蒸気で押し込まれるように、凝縮液流路3に移動する。本形態の凝縮液流路3は、
図8、
図14に現れているように連通開口部35b、連通開口部36b、連通開口部39b、及び、連通開口部40bを備えているので、凝縮液はこれら連通開口部を通って複数の凝縮液流路3に分配される。
【0105】
本形態では、凝縮液流路3がベーパーチャンバ1の厚さ方向の両方に具備されているため、蒸気流路4から凝縮液流路3への移動機会を多くすることができ、より円滑な凝縮液の移動が可能となる。
このとき、導入部37、導入部41が具備されている形態であれば、導入面37b、導入面41bと第一シート10、第二シート20とに囲まれた部位が生じ、毛細管力の作用でここに凝縮液が溜まりやすくなる。これにより、凝縮液の凝縮液流路3へ導入がさらに円滑に行われる。
【0106】
凝縮液流路3に入った凝縮液は、凝縮液流路による毛細管力、及び、蒸気からの押圧により、
図20に点線の直線矢印で表したように熱源である電子部品83に近づくように移動する。
そして再度熱源である電子部品83からの熱により気化して上記を繰り返す。
【0107】
以上のように、ベーパーチャンバ1によれば、凝縮液流路において高い毛管力で凝縮液の還流が良好となり、熱輸送量を高めることができる。
さらに本形態では凝縮液流路3が、ベーパーチャンバ1の厚さ方向(z方向)の一方側と他方側の両方に備えられている。
これにより、1つの凝縮液流路3の流路断面積を小さく(細く)しつつも、凝縮液流路3の合計の流路断面積を大きく取ることができるので毛細管力を高く維持しつつ凝縮液の流れを円滑にすることができる。
また、ベーパーチャンバ1における作動流体の面内方向(xy方向)への移動だけでなく、厚さ方向(z方向)への移動の機会を与えることができ、より均一な熱移動及び熱輸送が期待できる。
【0108】
[シートの数について]
ここまでのベーパーチャンバ1は、第一シート10、第二シート20、及び第三シート30の3つのシートからなる例を説明した。このように3つのシートからなることにより、これより多くのシートを用いる場合に比べてシートの重ね合わせの複雑さが無いため製造が容易であるとともに、各シートの接合をより強固なものとすることができる。その中で、本形態のように、第一シート10及び第二シート20は、その表面が加工されず平坦な形態とすれば、シートの重ね合わせの際に凝縮液流路や蒸気流路を形成するための位置合わせ(アライメント)を気にする必要がないことからより簡易な製造が可能となる。
【0109】
ただし、シートの数には関係なく凝縮液流路がベーパーチャンバの厚さ方向の一方と他方に具備されていればよく、シートは4つであっても良いし、5つとすることもできる。
このように、ベーパーチャンバを3つ以上のシートで構成することにより、2つのシートで構成する場合に比べ、
図18に示したような導入面41bを形成しやすくなり、ここに作動流体が凝縮しやすくなり、より円滑な作動流体の移動が行われる。
また、例えば
図21に示したように、第三シートを厚さ方向に分割して全部で4つのシートによりベーパーチャンバを構成する場合、内側液流路部38の厚さ方向中央にも溝を形成して凝縮液流路を設けることもできる。
【0110】
1.2.形態1b
図22乃至
図25には、形態1bにかかるベーパーチャンバ51を説明する図を示した。
図22は、ベーパーチャンバ51の分解斜視図であり、
図2に相当する図である。
図23はベーパーチャンバ51の密閉空間2が見えるように表した図であり、第三シート52の第一面30a側が表れるように表示した図である。
図24は、
図23にC
12-C
12で示した位置でベーパーチャンバ101を切断した断面図を表している。
図25は、
図24のうちC
13で示した部位(内側液流路部138)の周辺を拡大して表した図で
図18に相当する図である。
【0111】
ベーパーチャンバ51では、上記したベーパーチャンバ1に対して、第三シート30の代わりに第三シート52が適用され、第三シート52にはその本体53の内側液流路部54に厚さ方向連通穴54aが設けられている点が異なる。他の部材及び部位については、ベーパーチャンバ1の説明が妥当するので、図面には同じ符号を付して説明は省略する。従ってここでは、内側液流路部54に設けられた厚さ方向連通穴54aに注目して説明をする。
【0112】
厚さ方向連通穴54aは、第三シート52の内側液流路部54に設けられ、第一面30aから第二面30bに連通する穴である。この厚さ方向連通穴54aにより液流路溝39と液流路溝40とが連通されて第一面30a側の凝縮液流路3と第二面30b側の凝縮液流路3とが連通する。
これによって、
図25に矢印C
14で示したように、厚さ方向に分かれて配置された凝縮液流路3が蒸気流路4を介することなく連通し、凝縮液の分配をさらに均等化させることができるため、より円滑に作動流体が流れることが可能となる。
【0113】
厚さ方向連通穴54aは、1つの内側液流路部54の厚さ方向の一方と他方に配置された凝縮液流路3を連通することができればよく、そのための具体的な形態は特に限定されることはない。例えば次のように説明することができる。
【0114】
図22、
図23に表れる、厚さ方向連通穴54aの横断面形状は特に限定されることはなく、円形、楕円形、三角形、四角形、その他の多角形、及びこれらが組みあわされてなる幾何学的形状とすることができる。
【0115】
また、
図24、
図25に表れる、厚さ方向連通穴54aが延びる方向(z方向)の形状も特に限定されることはなく、z方向の各位置で横断面形状が一定であってもよく、変化してもよい。例えば凝縮液流路3に接する部分では、他の部分に対して横断面積が大きく広がっている形態等を挙げることができる。
【0116】
1つの厚さ方向連通穴54aで連結する凝縮液流路3の数も特に限定されることはない。本形態のように第一面30a側の2つの凝縮液流路3と第二面30b側の2つの凝縮液流路3とが連通するように構成してもよいし、厚さ方向一方の面側において1つ、又は3つ以上の凝縮液流路3が連通するように構成してもよい。
【0117】
厚さ方向連通穴54aは、ベーパーチャンバ1に1つでも備えられていればその効果を奏するものであるが、より顕著な効果のために複数の厚さ方向連通穴54aを備えることが好ましい。
【0118】
複数の厚さ方向連通穴54aを具備する態様は特に限定されることはないが、1つの内側液流路部54に1つでもよく、1つの内側液流路部54に複数の厚さ方向連通穴54aを設けてもよい。1つの内側液流路部54に複数の厚さ方向連通穴54aを配置する際には一直線状に並べるようにしてもよく、
図23に表れているように、隣り合う厚さ方向連通穴54aで、並ぶ方向に直交する方向(y方向)の位置をずらしてもよい。
【0119】
なお、本形態では内側液流路部54にのみ厚さ方向連通穴54aを設けたが、その代わりに外周液流路部34にのみ厚さ方向連通穴を設けてもよく、又は、内側液流路部54及び外周液流路部34の両方に厚さ方向連通穴を設けてもよい。
【0120】
2.形態2
2.1.形態2a
[構成要素]
図26には形態2aにかかるベーパーチャンバ101の外観斜視図、
図27にはベーパーチャンバ101の分解斜視図を表した。本形態のベーパーチャンバ101は、
図26、
図27からわかるように第一シート10、第二シート20、及び、第三シート130(「中間シート130」と記載することもある。)を有している。そして、後で説明するように、これらシートが重ねられて接合(拡散接合、ろう付け等)されていることにより、第一シート10と第二シート20との間に第三シート130の形状に基づいた中空部が形成されたベーパーチャンバ用シートとなる。そして、中空部に作動流体が封入されることで密閉空間102(例えば
図19参照)とされ、ベーパーチャンバ101となる。
【0121】
本形態に備えらえる第一シート10及び第二シート20については、形態1で説明した第一シート10及び第二シート20と同じように考えることができるので、ここでは符号を同じとし、説明は省略する。
【0122】
<第三シート>
本形態で第三シート130は、第一シート10の内面10aと第二シート20の内面20aとの間に挟まれて重ねられるシートであり、作動流体が移動する密閉空間2のための構造が具備されている。
図28、
図29には第三シート130を平面視した図(z方向から見た図)を表した。
図28は第一シート10に重ねられる面の図、
図29は第二シート20に重ねられる面の図である。
また
図30には
図28にC
101-C
101で示した線に沿った断面図、
図31には
図28にC
102-C
102で示した線に沿った断面図をそれぞれ示した。
【0123】
なお、第三シート130も単層であってもよいし、複数のシートが積層されてなってもよい。複数のシートが積層されてなる場合には、複数のシートを積層してから以下の形態と形成してもよいし、複数のシートを個別に加工してから重ね合わせることで以下の形態を形成してもよい。
【0124】
本形態で第三シート130は、第一シート10の内面10aに重なる第一面130a、第二シート20の内面20aに重なる第二面130b、及び、第一面130aと第二面130bとを渡して厚さを形成する端面130cを備える。従って
図28には第一面130a、
図29には第二面130bがそれぞれ現れている。
【0125】
また、第三シート130は本体131及び注入部32を備えている。なお、本形態の注入部32も形態1で示した注入部32と同様に考えることができるので、ここでは同じ符号を付して説明を省略する。
本体31は、ベーパーチャンバ用シートにおける中空部及びベーパーチャンバ1における密閉空間を形成するシート状の部位であり、本形態では平面視で角が円弧(いわゆるR)にされた長方形である。
ただし、本体31は本形態のように四角形である他、ベーパーチャンバとして必要とされる形状とすることができる。例えば円形、楕円形、三角形、その他の多角形、並びに、屈曲部を有する形である例えばL字型、T字型、クランク型U字型等であってもよい。また、これらの少なくとも2つを組み合わせた形状とすることもできる。
【0126】
第三シート130の厚さや材質は第一シート10と同様に考えることができる。ただし、第三シート130の厚さや材質は第一シート10と同じである必要はなく、異なるように構成してもよい。
【0127】
本体131には、作動流体が還流するための構造が形成されている。具体的には、本体131には、外周接合部33、外周液流路部134、内側液流路部138、蒸気流路溝142、及び、蒸気流路連通溝144が具備されて構成されている。
【0128】
本形態のベーパーチャンバ101は、第一流路であり作動流体の蒸気が通る蒸気流路4(
図38等参照)、及び、第二流路であり作動流体が凝縮して液化した凝縮液が通る凝縮液流路3(
図42等参照)を備える。そして、第三シート130の蒸気流路溝142が蒸気流路4を形成し、外周液流路部134に具備される液流路溝35及び、内側液流路部138に具備される液流路溝39が凝縮液流路3を形成する。
【0129】
<<外周接合部>>
外周接合部33は上記した形態1で説明した外周接合部33と同様に考えることができるので、ここでは同じ符号を付して説明を省略する。
【0130】
<<外周液流路部>>
外周液流路部134は、液流路部として機能し、作動流体が凝縮して液化した際に通る第二流路である凝縮液流路3の一部を構成するとともに、断熱部6を構成する部位を具備する。
図32には
図30のうち矢印C
103で示した部分を拡大して表した。また、
図33には
図32に矢印C
105で示した方向から見た外周液流路部134をz方向から見た拡大図を表した。すなわち、
図33は第2面130bの方から見た外周液流路部134の一部を表している。
【0131】
これら図からわかるように、外周液流路部134は、本体131のうち、外周接合部33の内側に沿って形成され、密閉空間2となる部位の外周に沿って設けられる部位である。
【0132】
外周液流路部134の第一面130aに、本体131の外周方向に平行に延びる複数の溝である液流路溝35が形成され、複数の液流路溝35が、その延びる方向とは異なる方向に所定の間隔で配置されている。
当該液流路溝35は、上記した形態1で説明した液流路溝35と同様に考えることができるので、ここでは同じ符号を付して説明を省略する。
【0133】
図29乃至
図33からわかるように、本形態では外周液流路部134は第二面30b側に断熱部用溝136を備えている。
断熱部用溝136は外周液流路部134が延びる方向に沿って延びる溝であり、蒸気流路溝42や液流路溝35には連通しておらず、断熱部用溝136には作動流体が流入しないように構成されている。
【0134】
ここで断熱部用溝136は溝であることから、その断面形状において、底部を有し、この底部と向かい合わせとなる反対側(第二面130b)側は開口している。後述するように、第二シート20が第三シート30に重ねられることでこの開口が塞がれて断熱部6となる。
本形態で断熱部用溝136はその断面が半楕円形状とされている。ただし、当該断面形状は半楕円形状であることに限らず、円形や、長方形、正方形、台形等の四角形や、その他の多角形、及び、これらのいずれか複数を組み合せた形状であってもよい。
【0135】
また、
図34には
図33に示したC
106-C
106の断面図を表した。すなわち
図34は、柱136aが具備された部位における外周液流路部134の断面図である。一方、
図32に示した断面は断熱部用溝136のうち柱136aが配置されていない部位における外周液流路部134の断面図である。
これら図からわかるように、断熱用溝136の溝内には、底部から立設する複数の柱136aが間隔を有して配列されている。この柱136aにより第三シート130が第二シート20と接合された際に断熱部用溝136の潰れを抑制するとともに、ベーパーチャンバ101自体の強度も高めることができる。
【0136】
柱の平面視形状(
図33の視点からの形状)は特に限定されることなく、本形態のように四角形である他、三角形や五角形等の多角形、円形、楕円形、又は、任意の形状を適用することができる。
【0137】
また、配置される柱のピッチや数は特に限定されることはなく適宜設定することが可能である。従って、柱の数を1又は少なくし、1つの柱が断熱部用溝に沿って延びるように長く構成してもよい。
【0138】
また本形態では、
図30に表れているように外周液流路部134に導入部37が設けられている。導入部37については形態1で説明した導入部37と同様に考えることができるのでここでは同じ符号を付して説明を省略する。
【0139】
以上のような構成を備える外周液流路部134は、さらに次のような構成を備えてもよい。
【0140】
図28乃至
図30、
図32にW
102で示した外周液流路部134の幅(液流路溝35が配列される方向の大きさ)は、ベーパーチャンバ全体の大きさ等から適宜設定することができるが、幅W
102は、3.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよい。幅W
102が3.0mmを超えると内側の液流路や蒸気流路のための空間が十分にとれなくなる虞がある。一方、幅W
102は0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であってもよく、0.2mm以上であってもよい。幅W
102が0.05mmより小さいと外側を還流する液の量が十分得られない虞がある。幅W
102の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
102の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
なお、ここでは外周液流路部134の第一面130a側の幅と第二面130b側の幅をいずれもW
102で示したが、外周接合面33aの幅と外周接合面33bの幅は必ずしも同じである必要はなく、異なる幅としてもよい。
【0141】
断熱部用溝136について、
図32にW
104で示した溝幅は、1500μm以下であることが好ましく、1000μm以下であってもよく、700μm以下であってもよい。一方、幅W
104は20μm以上であることが好ましく、45μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。幅W
104の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
104の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
また、
図32にD
102で示した溝の深さは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。一方、深さD
102は5μm以上であること好ましく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。深さD
102の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さD
102の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0142】
<<内側液流路部>>
図26乃至
図30に戻って内側液流路部138について説明する。内側液流路部138も作動流体が凝縮して液化した際に通る第二流路である凝縮液流路3の一部、断熱部6を構成する一部、及び導入部41を構成する部位である。
図35には
図30のうち矢印C
107で示した部分を拡大して示した。
図35にも内側液流路部38、断熱用溝140、及び導入部41の断面形状が表れている。また、
図36には
図35に矢印C
109で示した方向から見た内側液流路部138を平面視した拡大図を示した。
【0143】
これら図からわかるように、内側液流路部138は本体131のうち、外周液流路部134の環状である環の内側に形成された部位である。本形態の内側液流路部138は、本体131の平面視(z方向から見たとき)長方形の長辺に平行な方向(x方向)に延び、複数(本形態では3つ)の内側液流路部138が同短辺に平行な方向(y方向)に所定の間隔で配列されている。
【0144】
内側液流路部138の第一面130aに、内側液流路部138が延びる方向に沿って延びる複数の溝である液流路溝39が形成され、複数の液流路溝39が、その延びる方向とは異なる方向に所定の間隔で配置されている。
ここで、液流路溝39は形態1で説明した液流路溝39と同様に考えることができるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0145】
図29、
図30、
図35、
図36からわかるように、内側液流路部138は、第二面130bに断熱部用溝140を備えている。
断熱部用溝140は内側液流路部138が延びる方向に沿って延びる溝であり、蒸気流路溝42や液流路溝39には連通しておらず、断熱部用溝140には作動流体が流入しないように構成されている。
【0146】
ここで断熱部用溝140は溝であることから、その断面形状において、底部を有し、この底部と向かい合わせとなる反対側(第二面130b)側は開口している。後述するように、第二シート20が第三シート30重ねられることでこの開口が塞がれて断熱部6となる。
本形態で断熱部用溝140はその断面が半楕円形状とされている。ただし、当該断面形状は半楕円形状であることに限らず、円形や、長方形、正方形、台形等の四角形や、その他の多角形、及び、これらのいずれか複数を組み合せた形状であってもよい。
【0147】
また、
図37には
図36に示したC
110-C
110に沿った断面図を表した。すなわち
図37は柱140aが具備された部位における内側液流路部138の断面図である。一方、
図35に示した断面図は断熱部用溝140のうち柱140aが配置されていない部位における内側液流路部138の断面図である。
これらの図からわかるように、断熱部用溝140の溝内には、底部から立設する複数の柱140aが間隔を有して配列されている。この柱140aにより第三シート130が第二シート20と接合された際に断熱部用溝140の潰れを抑制するとともに、ベーパーチャンバ101自体の強度も高めることができる。
【0148】
柱の平面視形状(
図36の視点からの形状)は特に限定されることなく、本形態のように四角形である他、三角形や五角形等の多角形、円形、楕円形、又は、任意の形状を適用することができる。
【0149】
また、配置される柱のピッチや数は特に限定されることはなく適宜設定することが可能である。従って、柱の数を1又は少なく抑え、1つの柱が断熱用溝に沿って延びるように長く構成してもよい。
【0150】
また本形態では内側液流路部138に導入部41が設けられている。この導入部41は形態1で説明した導入部41と同様に考えることができるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0151】
以上のような構成を備える内側液流路部138は、さらに次のような構成を備えていることが好ましい。
図28乃至
図30、
図35にW
106で示した内側液流路部138の幅(内側液流路部138と蒸気流路溝42が配列される方向の大きさで、最も大きな値)は、3000μm以下であることが好ましく2000μm以下であってもよく、1500μm以下であってもよい。一方、この幅W
106は100μm以上であることが好ましく、200μm以上であってもよく、400μm以上であってもよい。この幅W
106の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
106の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0152】
また、
図30にP
102で示した複数の内側液流路部138のピッチは5000μm以下であることが好ましく3500μm以下であってもよく、3000μm以下であってもよい。一方、このピッチP
102は200μm以上であることが好ましく、400μm以上であってもよく、800μm以上であってもよい。このピッチP
102の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、ピッチP
102の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
これにより蒸気流路の流路抵抗を下げ、蒸気の移動と、凝縮液の還流とをバランスよく行うことができる。
【0153】
以上のような構成を備える内側液流路部38は、さらに次のような構成を備えてもよい。
【0154】
断熱部用溝140について、
図35にW
108で示した溝幅は、1500μm以下であることが好ましく、1000μm以下であってもよく、700μm以下であってもよい。一方、幅W
108は20μm以上であることが好ましく、45μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。幅W
108の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
108の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
また、
図35にD
104で示した溝の深さは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。一方、深さD
104は5μm以上であること好ましく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。深さD
104の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、深さD
104の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0155】
<<蒸気流路溝>>
次に蒸気流路溝142について説明する。蒸気流路溝142は作動流体が蒸発して気化した蒸気が通る部位で、第一流路である蒸気流路4(
図19等参照)の一部を構成する。
図28、
図29には平面視した蒸気流路溝142の形状、
図30には蒸気流路溝142の断面形状がそれぞれ表れている。
【0156】
これら図からもわかるように、本形態で蒸気流路溝142は本体131のうち、外周液流路部134の環状である環の内側に形成された溝(スリット)により構成されている。詳しくは本形態の蒸気流路溝142は、隣り合う内側液流路部138の間、及び、外周液流路部134と内側液流路部138との間に形成され、本体131の平面視長方形で長辺に平行な方向(x方向)に延びた溝である。そして、複数(本形態では4つ)の蒸気流路溝142が同短辺に平行な方向(y方向)に配列されている。本形態の蒸気流路溝142は第三シート130の第一面130aと第二面130b側とを連通するように構成されており、すなわちスリット状の溝であり、第一面130a及び第二面130b側に開口している。
従って、
図30からわかるように第三シート130は、y方向において、外周液流路部134及び内側液流路部138と蒸気流路溝142とが交互に繰り返された形状を備えている。
【0157】
このような構成を備える蒸気流路溝142の構成は形態1で説明した蒸気流路溝42と同様に考えることができる。
【0158】
<<蒸気流路連通溝>>
蒸気流路連通溝44は、複数の蒸気流路溝142を連通させる溝であり、上記した形態1で説明した蒸気流路連通溝44と同様に考えることができるので同じ符号を付して説明を省略する。
【0159】
[ベーパーチャンバの構造]
次に、第一シート10、第二シート、及び第三シート130が組み合わされてベーパーチャンバ101とされたときの構造について説明する。この説明により、ベーパーチャンバ101が具備する形状、並びに、第一シート10、第二シート、及び第三シート130が有するべき各構成の配置、大きさ、形状等がさらに理解される。
【0160】
図38には、
図26にC
111-C
111で示したy方向に沿ってベーパーチャンバ101を厚さ方向に切断した断面図を表した。
図39には
図26にC
112-C
112で示したx方向に沿ってベーパーチャンバ101を厚さ方向に切断した断面図を示した。
図40には
図38にC
113で示した部分、
図41には外周液流路部134のうち柱136aが備えられる部分、
図42には
図38にC
114で示した部分、
図43には内側液流路部138のうち柱140aが備えられる部分をそれぞれ拡大して表した。
なお、
図38乃至
図43に表れる断面では蒸気流路4と凝縮液流路3とは凸部35a及び凸部39aにより隔てられているが、凸部35a及び凸部39aはそれぞれ連通開口部35b及び連通開口部39bを備えている。従って、蒸気流路4と凝縮液流路3とは連通開口部35b及び連通開口部39bにより連通している。
【0161】
図26、
図27、及び
図38乃至
図42よりわかるように、第三シート130の第一面130a側に第一シート10の内面10aが重ねられ、第三シート130の第二面130b側に第二シート20の内面20aが重ねられるように配置され接合されることでベーパーチャンバ101とされている。このとき、第三シート130の本体131と第一シート10の本体11、第三シート130の本体131と第二シート20の本体21とが重なり、第三シート130の注入部32の第一シート10の注入部12、第三シート130の注入部32と第二シート20の注入部22とが重なっている。
【0162】
このような第一シート10、第二シート20及び第三シート130の積層体により、本体11、本体21及び本体131に具備される各構成が
図38乃至
図42に表れるように配置される。具体的には次の通りである。
【0163】
第三シート130の第一面130a側に設けられた外周接合面33aと第一シート10の内面10aの外周部の面とが重なるように配置されているとともに、第三シート30の第二面30b側に設けられた外周接合面33bと第二シート20の内面20aの外周部の面とが重なるように配置されており、拡散接合やろう付け等の接合手段により接合されている。これにより、第一シート10と第二シート20との間に、第三シート130の形状に基づく中空部が形成されて、ここに作動流体が封入されることで密閉空間102とされている。
【0164】
第三シート130の外周液流路部134の第一面130a側に第一シート10の内面10aが重なるように配置されている。これにより液流路溝35の開口が第一シート10により塞がれて中空部の一部となる。これは、中空部に封入された作動流体が凝縮して液化した状態である凝縮液が流れる第二流路である凝縮液流路3となる。
【0165】
第三シート130の外周液流路部134の第二面30b側に第二シート20の内面20aが重なるように配置されている。これにより断熱部用溝136の開口が第二シート20により塞がれて断熱部6となる。断熱部6は、凝縮液流路3及び蒸気流路4には連通することなく構成され、ここは当該断熱部6に隣接する材料よりも熱伝導率が低くなるようにされている。具体的には特に限定されることはないが、断熱部6を真空としたり、空気やその他の気体で満たしたり、熱伝導率が低い材料を充填したりすればよい。
【0166】
また、第三シート130の内側液流路部138の第一面130a側に第一シート10の内面10aが重なるように配置されている。これにより液流路溝39の開口が第一シート10により塞がれて中空部の一部となる。これは、中空部に封入された作動流体が凝縮して液化した状態である凝縮液が流れる第二流路である凝縮液流路3となる。
【0167】
第三シート130の内側液流路部138の第二面130b側に第二シート20の内面20aが重なるように配置されている。これにより断熱部用溝140の開口が第二シート20により塞がれて断熱部6となる。断熱部6は、凝縮液流路3及び蒸気流路4には連通することなく構成され、ここは、当該断熱部6に隣接する材料よりも熱伝導率が低くなるようにされている。具体的には特に限定されることはないが、断熱部6を真空としたり、空気やその他の気体で満たしたり、熱伝導率が低い材料を充填したりすればよい。
【0168】
このように、凝縮液流路3においては断面においてその四方を壁で囲まれた細い流路を形成することにより強い毛細管力で凝縮液を移動させ、円滑な循環が可能となる。すなわち、凝縮液が流れることを想定した流路を考えたとき、該流路の1つの面が連続的に開放されているようないわゆる溝による流路に比べて、上記凝縮液流路3によれば高い毛細管力を得ることができる。
また、凝縮液流路3は第1流路である蒸気流路4とは分離されて形成されているため、作動流体の循環を円滑にさせることができる。
【0169】
一方、ベーパーチャンバ101の厚さ方向(z方向)で凝縮液流路3の反対側には熱伝導率が下げられた断熱部が設けられている。これにより、作動流体への熱の伝わりが緩やかになり、局部的な温度上昇、局部的な温度下降が軽減されるため均一性を高めることができる。より具体的には急激な加熱によるドライアウトや必要以上に早い凝縮による凝縮液詰まりで作動流体の流れが阻害されること等を抑制することが可能となり熱輸送能力を高めることができる。
【0170】
凝縮液流路3、断熱部6が具備する形状は、上記した第三シート130で説明した形状及び寸法に基づいて考えることができる。
【0171】
他の部位について説明する。
図38からわかるように、蒸気流路溝142の開口が第一シート10及び第二シート20により塞がれることで中空部の一部を形成し、ここが作動流体の流路を形成し、蒸気が流れる第一流路である蒸気流路4となる。凝縮液流路3の流路断面積と蒸気流路4の流路断面積との関係は形態1で説明した凝縮液流路3の流路断面積と蒸気流路4の流路断面積との関係と同様に考えることができる。
【0172】
蒸気流路4が具備する形状は、上記した第三シート130で説明した形状及び寸法に基づいて考えることができる。
なお、本形態では導入部37、及び、導入部41が設けられているので、蒸気流路4は2つの導入部に接するように構成されている。
【0173】
図39からわかるように、第三シート130の蒸気流路連通溝44の溝44aの開口が第一シート10で、溝44bの開口が第二シート20でそれぞれ塞がれることにより複数の蒸気流路4が連通する中空部が形成され、作動流体のための流路となる。
【0174】
ベーパーチャンバ101の密閉空間102には、作動流体が封入されている。作動流体の種類は特に限定されることはないが、純水、エタノール、メタノール、アセトン、及びそれらの混合物等、通常のベーパーチャンバに用いられる作動流体を用いることができる。
【0175】
[ベーパーチャンバの製造]
以上のようなベーパーチャンバは例えば次のように作製することができる。
第三シート130の外周形状を有するシートに対して、液流路溝35、断熱部用溝136、液流路溝39、断熱部用溝140、蒸気流路溝142、及び溝44a及び溝44bをハーフエッチングにより形成する。ただし、蒸気流路溝142については、第一面130a側と第二面130b側の両方からのハーフエッチングにより厚さ方向に貫通するように行う。このようにエッチングをすることにより、導入部37及び導入部41の形状を形成することもできる。
【0176】
次いで、第三シート130の第一面130a側に第一シート10、第三シート130の第二面130b側に第二シート20を重ねて仮止めを行う。仮止めの方法は特に限定されることはないが、抵抗溶接、超音波溶接、及び接着剤による接着等を挙げることができる。
そして仮止め後に拡散接合を行い恒久的に第一シート10、第二シート20、第三シート130を接合してベーパーチャンバ用シートとする。なお、拡散接合の代わりにろう付けにより接合してもよい。ここで、「恒久的に接合」とは、厳密な意味に縛られることはなく、ベーパーチャンバ101の動作時に、密閉空間102の密閉性を維持可能な程度に接合を維持できる程度に接合されていることを意味する。
この接合を真空中で行うことで断熱部6を真空にすることができ、空気中やその他のガスの中で行うとこれに断熱部6をこれに応じた気体で満たすことができる。なお、断熱部用溝136に柱136a、断熱部用溝140に柱140aが具備されていれば、接合の際、並びに、次に説明する中空部の減圧の際、及び作動流体の注入の際に断熱部6の潰れ及び膨らみを抑制できる。また、断熱部6に固体の材料を入れる場合には接合前に断熱部用溝に当該材料を入れておけばよい。
【0177】
接合の後、形成された注入流路5から真空引きを行い、中空部を減圧する。その後、減圧された中空部に対して注入流路5から作動流体を注入して中空部に作動流体が入れられる。そして重なった注入部12、注入部22、及び注入部32に対して溶融を利用した溶接や、かしめによって注入流路5を閉鎖して密閉空間とする。これにより密閉空間102の内側に作動流体が安定的に保持される。
【0178】
本形態のベーパーチャンバでは、内部液流路部138が支柱として機能するため、接合時及び減圧時に密閉空間がつぶれることを抑制することができる。
【0179】
[ベーパーチャンバの作用]
次にベーパーチャンバ101の作用について説明する。ベーパーチャンバ101の電子機器への配置は形態1で説明した通りである(
図1、
図19)。また、凝縮液流路3、蒸気流路4における作動流体の移動及び熱の拡散の考え方についても形態1で説明したものと同様に考えることができる。
【0180】
本形態では、ベーパーチャンバ101の厚さ方向(z方向)で凝縮液流路3の反対側に断熱部6が設けられているため、作動流体への熱の伝わりが緩やかになり、局部的な温度上昇、局部的な温度下降が軽減されるため均一性を高めることができる。すなわち急激な加熱によるドライアウトや必要以上に早い凝縮による凝縮液詰まりで作動流体の流れが阻害されること等を抑制することが可能となり熱輸送能力を高めることができる。
従って断熱部は必ずしもベーパーチャンバの全体に配置されることはなく、局所的な熱の移動が想定される部位にのみ配置してもよい。これには例えば熱源(電子部品)が配置される部位や、逆に熱源から離隔したベーパーチャンバの端部等を挙げることができる。
【0181】
また、導入部37、導入部41が具備されている形態であれば、導入面37b、導入面41bと第一シート10、第二シート20とに囲まれた部位が生じ、毛管力の作用でここに凝縮液が溜まりやすくなる。これにより、凝縮液の凝縮液流路3へ導入がさらに円滑に行われる。
【0182】
2.2.他の形態
図44には断熱部用溝140が第三シート130の第二面130bの一部に設けられた例である。この図は
図29に相当する図である。これにより断熱部6も当該断熱部用溝140が設けられた部位に限定される。これは例えば冷却対象に近い部分、及び、凝縮が生じることを抑えたい部分に断熱部6を設け、凝縮が速やかに行われることが望まれる部分に断熱部6を設けないなど、熱的設計に合わせて断熱部を設けることができる。
【0183】
図45乃至
図47は、蒸気流路4にも断熱部6を設けた例である。いずれも
図38に相当する図である。
図45は凝縮液流路3、蒸気流路4のそれぞれに断熱部6が設けられた例である。
図46は、凝縮液流路3及び蒸気流路4を通して連通した断熱部6とした例である。そして
図47は蒸気流路4にのみ断熱部6が設けられた例である。
【0184】
3.形態3
形態1及び形態2で導入部37及び導入部39について説明したが、形態3では導入部について詳しく説明する。従って導入部以外の構成については上記した形態1及び形態2と同様に考えることができるため説明を省略する。また形態1では第三シート30の第二面30bには液流路溝40が具備され、形態2では第三シート130の第二面130bには断熱部用溝140が具備されているが、必ずしも第三シートの第二面にはこれらの要素が備えられている必要はないため、ここでは第三シートの第二面にはこれら要素が具備されていない例で説明する。ただし、第三シートの第二面に液流路溝40や断熱用溝140を備えることを妨げるものではない。
なお、以下の説明で導入部以外の要素については形態1で用いた符号を用いる。
【0185】
3.1.形態3a
図48(a)、
図48(b)は、内側液流路部238について説明する図であり、
図13(a)、
図13(b)に相当する図である。なお、ここでは内側液流路部238により導入部241を説明するが外側液流路部に備えられる導入部についても同様に考えることができる。
【0186】
また本形態では内側液流路部238に導入部241が設けられている。導入部241は蒸気流路溝42との境界面に形成された部位であり、蒸気流路溝42側に突出する部位である。従って本形態では内側液流路部238の幅方向(y方向)の両方のそれぞれに導入部241が配置されている。
本形態で導入部241は、厚さ方向(z方向)で第1面30a(液流路溝の凸部39aの頂部)からT203の位置で最も突出した頂部241aを具備し、頂部241aから液流路溝39に向けて、断面視で内側液流路部238側に凹の円弧状の導入面241bが具備されている。ただし円弧状である必要はなく、断面視で内側液流路部238側に凹の円弧以外の曲線状であってもよい。
導入部の他の形態例については後で示すが、いずれの導入部も、蒸気流路溝42(蒸気流路)側に突出した部位で、その最も突出した頂部から液流路溝(凝縮液流路)に向けて近づく面を備える面(導入面)を具備する。
【0187】
このような導入部241によれば、導入面241bに凝縮液が集まり易く、導入部241を通じて凝縮液流路3と蒸気流路4との作動流体の移動が円滑となり、熱輸送能力を高めることができる。
【0188】
また、導入面241bの表面は特に限定されることはないが、粗面や微小な階段状の面としてもよい。これにより凝縮液の保持力を高めることができる。
導入面の面粗さ(ISO 25178)は、例えば株式会社キーエンス製のレーザ顕微鏡(型番:VK-X250)にて測定できる。そしてこの面粗さの算術平均高さSaは0.005μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましい。また最大高さSzは0.05μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましい。
【0189】
以上のような構成を備える導入部241は、さらに次のような構成を備えていることが好ましい。
図48(a)にW
205で示した内側液流路部238の幅(内側液流路部238と蒸気流路溝42が配列される方向の大きさで、最も大きな値)は、3000μm以下であることが好ましく2000μm以下であってもよく、1500μm以下であってもよい。一方、この幅W
205は100μm以上であることが好ましく、200μm以上であってもよく、400μm以上であってもよい。この幅W
205の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、幅W
205の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
【0190】
図48(a)にW
207で示した突出量(凸部39aの端部から頂部241aの距離)は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよい。一方、突出量W
207は20μm以上であることが好ましく、45μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。突出量W
207の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、突出量W
207の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
また、
図48(a)にT
203で示した凸部39aの頂部241aから導入部241の頂部241aまでの厚さ方向距離は、内側液流路部238の厚さをT
204としたとき、T
203をT
204で割った値で0.05以上であることが好ましく、0.15以上であってもよく、0.3以上であってもよい。一方、T
203をT
204で割った値は1.0以下であればよく、0.8以下であってもよく、0.6以下でもよい。当該T
203をT
204で割った値の範囲は、上記複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、複数の下限の候補値のうちの1つの組み合わせによって定められてもよい。また、T
203をT
204で割った値の範囲は、複数の上限の候補値の任意の2つを組み合わせ、又は、複数の下限の候補値の任意の2つの組み合わせにより定められてもよい。
なお、本形態では当該値が0.5であり頂部241aが内側液流路部238の厚さ方向中央となる位置に配置されている。
【0191】
また、さらに、
図48(a)に示したように、導入部241に最も近い液流路溝39の幅をW
209、導入部241に最も近い液流路溝39の深さをD
201、導入部241の突出量のうち、面30b(液流路溝39が備えられていない側の面)側の突出量をW
210としたとき、次の関係であることが好ましい。
D
201×(W
209/2)<T
203×W
207<(T
204-T
203)×W
210
これにより、凝縮した液状の作動流体が凝縮液流路3で回収されやすく、蒸気流路4と凝縮液流路3との間の液状の作動流体の移動が行われやすくなる。また、これにより蒸気流路4で液状の作動流体が蒸発しやすくなる。
【0192】
次に、第一シート10、第二シート、及び第三シート30が組み合わされてベーパーチャンバ1とされたときについて説明する。
図49(a)、
図49(b)には
図18(a)、
図18(b)に相当する図を示した。
なお、
図49(a)に表れる断面では蒸気流路4と蒸気流路3とは凸部39aにより隔てられているが、凸部39aは連通開口部39bを備えている。従って、
図49(b)に示したように連通開口部39bが蒸気流路4に隣接する断面によれば蒸気流路4と蒸気流路3とは連通開口部39bにより連通している。
【0193】
図49(a)、
図49(b)よりわかるように、第三シート30の第一面30a側に第一シート10の内面10aが重ねられ、第三シート30の第二面30b側に第二シート20の内面20aが重ねられるように配置され接合されることでベーパーチャンバ1とされている。
【0194】
導入部241が設けられたことにより、凝縮液流路3と蒸気流路4との間に配置され、蒸気流路4側に突出した導入部241が具備されている。
本形態で導入部241は、厚さ方向(z方向)で蒸気流路4側に最も突出した頂部241aを有し、頂部241aから凝縮液流路3が具備された側に向けて断面で円弧状の導入面241bが備えられている。
すなわち導入部は、凝縮液流路3と蒸気流路4との間に配置され、蒸気流路4側に突出しており、その最も突出した部位(頂部)から凝縮液流路3に向けて近づく面を含む面(導入面)を具備する。
【0195】
蒸気流路4を移動しつつ熱を奪われて凝縮した作動流体は蒸気流路4の壁面に付着する。一方で蒸気流路4には連続して蒸気が流れているので、凝縮液は
図49(a)、
図49(b)に矢印C
211で示したように蒸気で押し込まれるように、凝縮液流路3に移動する。凝縮液流路3は、連通開口部39bを備えているので、凝縮液はこれら連通開口部を通って複数の凝縮液流路3に分配される。
このとき、蒸気流路4の内面には、導入部241が具備されているので、導入面241bと第一シート10とに挟まれた部位が生じ、毛細管力の作用でここに凝縮液が溜まりやすくなる。これにより、凝縮液の凝縮液流路3へ導入がさらに円滑に行われ、熱輸送量を高めることができる。
【0196】
ここで、蒸気流路4、導入部241、及び、凝縮液流路3は次のような関係にあることが好ましい。
図50に説明のための図を示した。なお、
図50では見易さのため符号の一部を省略するが、
図49(a)を参照することができる。
図49(a)と同じ断面において、蒸気流路4のうち、対向する頂部241a間の距離を横、蒸気流路4の厚さ方向の大きさを縦とした長方形を領域Aとし、その面積をA
Aとする。
図49(a)と同じ断面において、蒸気流路4のうち、導入面241b、領域A、凸部39a及び第一シート10により囲まれた領域を領域Bとし、その面積をA
Bとする。
図49(a)と同じ断面において、領域Bに最も近い凝縮液流路3の領域を領域Cとし、その面積をA
Cとする。
これらA
A、A
B、A
Cが次の関係を有していることが好ましい。
A
A>A
B>A
C
このような関係を有することにより、蒸気流路4から凝縮液流路3に凝縮した作動流体を引き込み易くなり、また、凝縮液流路3から蒸気流路4に急激な気化した液体が流出することを抑制することができる。
【0197】
3.2.形態3b乃至形態3h
以下に示す図には、導入部の形状に注目して他の形態例である形態3b乃至形態3hを説明する図を表した。いずれも
図49(a)、
図49(b)に相当する図である。なお、これら導入部の形態を外周液流路部に適用することもできる。なお便宜のため、いずれの形態例でも符号238を内側液流路部、符号241を導入部、符号241aを頂部、符号241bが導入面を表している。
【0198】
図51(a)、
図51(b)の形態3bでは、頂部241aが、
図49(a)、
図49(b)の形態3aの頂部41aに比べて厚さ方向で凝縮液流路3に近い位置に配置されている。具体的には
図48で示したT
203をT
204で割った値が0.2以上0.4以下の範囲とされている。
この形態によれれば、導入面141bと第一シート10とに挟まれる空間が小さいため、毛細管力が強く働きやすく、上記効果がより顕著になる。
【0199】
図52(a)、
図52(b)の形態3cでは、頂部241aから延びる導入面241bが断面視で直線状である。上記した形態3a、形態3bの導入面241bはいずれも内側液流路部238側に凹の円弧状であったが、形態3cでは導入面241bが断面で直線状である。
このような形態であっても上記効果を奏するものとなる。
【0200】
図53(a)、
図53(b)の形態3dでは、頂部241aが面状であるとともに、導入面241bは、複数の凝縮液流路3及び蒸気流路4が配列される方向に平行(y方向)に延びる面を備えている。
このような形態であっても上記効果を奏するものとなる。
【0201】
図54(a)、
図54(b)の形態3eでは、頂部241aから延びる導入面241bが断面視で蒸気流路4側に凸の円弧状である。ただし円弧状である必要はなく、断面視で蒸気流路4側に凸の円弧以外の曲線状であってもよい。
このような形態であっても上記効果を奏するものとなる。この形態では、導入面241bが凝縮液流路3に近づくにつれて第一シート10との間隔が狭い部位を比較的多く形成することができ、毛細管力の効率よい利用が期待できる。
【0202】
図55(a)、
図55(b)の形態3fでは、頂部241aが、蒸気流路4のうち凝縮液流路3側とは反対側となる面にまで離隔して設けられている例である。このような形態でも導入面241bを形成することができ上記効果を奏するものとなる。
ただし、導入面と第一面10aとの間を狭くすることによって、より強い毛細管力を利用する観点からは、上記した各形態例のように、頂部は厚さ方向において、蒸気流路のうち厚さ方向に対向する内面に一致しない側面のいずれかに配置されることが好ましい。
【0203】
図56(a)、
図56(b)の形態3gでは、凝縮液流路3が、内側液流路部238の厚さ方向の両方に形成されている(すなわちこの点において形態1と同様である。)。この例では導入部241は、その頂部241aから、当該両方の凝縮液流路3に向けてそれぞれ導入面241bを形成することができ、厚さ方向両方に存在する凝縮液流路3のそれぞれに対して上記の効果を奏するものとなる。
【0204】
図57(a)、
図57(b)の形態3hでは、凝縮液流路3が、内側液流路部238の厚さ方向の中央に形成されている。この例ではベーパーチャンバは2つのシートからなる。この場合、第一シート210が上記した第一シート10及び第三シート30の一部の構成を備え、第二シート220が上記した第二シート20及び第三シート30の一部の構成を備えることにより、両者を組み合わせることで、ベーパーチャンバの密閉空間を形成する。
そしてこの形態3hでは、導入部241の頂部241aから導入面241bが、複数の凝縮液流路3及び蒸気流路4が配列される方向に平行(y方向)に延びる面を備えている。
このような形態であっても上記効果を奏するものとなる。
【0205】
なお、本形態は、頂部241aと凝縮液流路3との厚さ方向位置(z方向位置)が同じとなる例であり、上記した各形態は頂部と凝縮液流路との厚さ方向位置(z方向位置)が異なる。必要に応じていずれを適用することも可能であるが、頂部と凝縮液流路との厚さ方向位置(z方向位置)が異なる方が多くの凝縮液を保持して導入させることができる傾向にある。
【0206】
4.形態4
ベーパーチャンバにおいて、封入された作動流体の凝固点より低い温度環境下では、作動流体が凍結する恐れがある。純水等のように凍結により膨張する場合には、蒸気流路部内での作動流体の体積膨張により、ベーパーチャンバが変形することが考えられる。このような課題がある場合に、作動流体が凍結して膨張した場合であっても変形を抑制し、より安定して性能を発揮することができる形態を有することが好ましい。
そこで形態4では、このための構造を備えるベーパーチャンバについて説明する。
【0207】
形態4では、形態1乃至形態3における第一シート10、第二シート20において異なる。従って、第三シートについては上記した形態1乃至形態3で説明した態様を適用することができるためここでは説明を省略する。ここでは便宜のため、形態1の第三シート30が適用された例で説明するがこれに限定されることはない。従って、電子機器への配置や作動流体の作動及びこれによる熱拡散の考え方は上記した通りであり、説明を省略する。
【0208】
4.1.形態4a
[形態]
図58にはベーパーチャンバ301の断面を示した
図58は
図15に相当する図である。
図58からわかるように、第一シート310は内側シート311及び補強シート312、第二シート320は内側シート321及び補強シートを備えている。
【0209】
内側シート311は第三シート30の第一面30aに接して配置されるシートであり、内面10aを構成する。同様に内側シート321は第三シート30の第二面30bに接して配置されるシートであり、内面20aを構成する。
補強シート312は内側シート311のうち第三シート30側とは反対側に配置されるシートであり外面10bを構成する。同様に補強シート322は内側シート321のうち第三シート30側とは反対側に配置されるシートであり外面10bを構成する。
【0210】
内側シート311と補強シート312とは、クラッド材として構成されていてもよい。クラッド材は、複数種類のシートを互いに接合させた積層材料を意味する。例えば、内側シート311と補強シート312とは、一方のシートに、他方のシートをめっき処理することでクラッド材として作製されていてもよい。この場合、両シートの間には、これらの密着性を向上させるための図示しない密着層(ストライクめっき層、シード層など)を介在させてもよい。更には、両シートは、拡散接合されることでクラッド材として作製されていてもよい。
同様に、内側シート321と補強シート322とは、クラッド材として構成されていてもよい。クラッド材は、複数種類のシートを互いに接合させた積層材料を意味する。例えば、内側シート321と補強シート322とは、一方のシートに、他方のシートをめっき処理することでクラッド材として作製されていてもよい。この場合、両シートの間には、これらの密着性を向上させるための図示しない密着層(ストライクめっき層、シード層など)を介在させてもよい。更には、両シートは、拡散接合されることでクラッド材として作製されていてもよい。
【0211】
内側シート311、内側シート321を構成する材料は、熱伝導率が良好な材料であれば特に限られることはないが、例えば、銅または銅合金を含んでいてもよい。この場合、各シートの熱伝導率を高めることができる。このため、ベーパーチャンバ301の放熱効率を高めることができる。また、作動流体として純水を使用する場合には、腐食することを防止できる。なお、所望の放熱効率を得るとともに腐食を防止することができれば、アルミニウムやチタン等の他の金属材料や、ステンレスなどの他の金属合金材料を用いることもできる。
【0212】
補強シート312は内側シート311よりも耐力が高い材料、補強シート322は内側シート321よりも耐力が高い材料により構成されている。ここで耐力とは、除荷時の永久歪みが0.2%となる応力とする。
補強シート312、補強シート322の具体的な材料は特に限定されることはいが、熱伝導率が良好な金属材料であるとともに所望の機械的強度を有していることが好ましく、例えば、銅合金、鉄合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金またはアルミニウム合金を含んだ材料を挙げることができる。このうち鉄合金の例としては、ステンレス、インバー材(ニッケルを含む鉄合金)、コバール(コバルトを含む鉄合金)が挙げられる。
【0213】
内側シート311、内側シート312の厚さは、例えば、0.2μm以上100μm以下とすることができる。この厚さを0.2μm以上にすることにより、内側シート311、内側シート312にピンホールが形成されることを防止できるとともに、補強シート312、補強シート322を構成する材料に含まれる不純物が当該ピンホールを介して第三シート30側に析出することを防止することができる。一方、100μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ301の厚さが厚くなることを抑制できる。内側シートの厚さはより好ましくは0.25μm以上10μm以下、さらに好ましくは0.45μm以上5μm以下である。
【0214】
また、補強シート312、補強シート322の厚さは、補強機能を高めるために、内側シート311、内側シート321の厚さよりも厚くなっていてもよい。ただし、補強機能を高める観点から、補強シート321は内側シート311よりも厚いことが好ましく、より具体的には、補強シートの厚さは、内側シートの厚さの5倍以上30倍以下が好ましく、より好ましくは5倍以上20倍以下である。
補強シート312、補強シート322の具体的な厚さは特に限定されることはないが、例えば、3μm以上100μm以下である。この厚さを3μm以上にすることにより、効果的に補強することができる。一方、100μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ301の厚さが厚くなることを抑制できる。より好ましくは5μm以上50μm以下、さらに好ましくは9μm以上25μm以下である。
【0215】
また、第一シート310、第二シート320の厚さは、0.1mm以下、好ましくは0.05mm以下、更に好ましくは0.02mm以下である。このことにより、凍結膨張が生じにくい薄型(例えば、0.4mm以下)のベーパーチャンバの製造が可能になる。一方、第一シート310、第二シート320の厚さは、例えば、0.01mm以上である。このことにより、蒸気流路4の作動流体の凍結膨張による内側シート311、内側シート321の変形を抑制できる。
【0216】
また、本形態においては、第一シート310、及び、第二シート320のいずれも内側シート及び補強シートの両方を備えられているが、しかしながら、このことに限られることはなく、必要が無い場合には、第一シート及び第二シートのいずれかのみに補強シートが設けられる形態であってもよい。
【0217】
また、第一シート310の補強シート312、及び、第二シート320の補強シート322の少なくとも一方に、さらに、内側シートと同じ材料及び厚さの層を積層してもよい。これによれば、当該層を積層したシートでは反りの発生を抑制することができる。
【0218】
[製造方法]
次に、このような構成からなるベーパーチャンバ301の製造方法について、
図59乃至
図64を用いて説明する。
【0219】
まず、
図59に示すように、準備工程として、第一面Maと第二面Mbとを含む、平板状の金属材料シートMを準備する。
【0220】
続いて、
図60に示すように、レジスト形成工程として、金属材料シートMの第一面Maにレジスト膜340が形成されるとともに、第二面Mbに、レジスト膜341が形成される。レジスト膜340、レジスト膜341を形成する前に、金属材料シートMの第一面Ma及び第二面Mbが、前処理として、酸性脱脂処理されてもよい。
【0221】
次に、
図61に示すように、パターニング工程として、レジスト膜340及びレジスト膜341が、フォトリソグラフィー技術によって、パターニングされる。
レジスト膜340へのパターニングは、内側液流路38の液流路溝39、連通開口部39b、及び、蒸気流路溝42に対応する開口が形成される。このとき液流路溝39及び連通開口部39bに対応する開口はこれら液流路溝39、連通開口部39bの幅よりも小さくなるように形成することができる。一方、蒸気流路溝42に対応する開口は、第一面30aにおける蒸気流路溝42の幅と同じ幅に形成することができる。
一方、レジスト膜341へのパターニングは、内側液流路38の液流路溝40、連通開口部40b、及び、蒸気流路溝42に対応する開口が形成される。このとき液流路溝40及び連通開口部40bに対応する開口はこれら液流路溝40、連通開口部40bの幅よりも小さくなるように形成することができる。一方、蒸気流路溝42に対応する開口は、第二面30bにおける蒸気流路溝42の幅と同じ幅に形成することができる。
【0222】
続いて、
図62に示すように、エッチング工程として、金属材料シートMの第一面30a及び第二面30bがエッチングされる。このことにより、金属材料シートMのうち、レジスト膜340、及びレジスト膜341が形成された開口部分に対応する部分がエッチングされ液流路溝39、連通開口部39b、液流路部40、連通開口部40b、及び蒸気流路溝42が形成される。なお、エッチング液には、例えば、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液、または塩化銅水溶液等の塩化銅系エッチング液を用いることができる。
【0223】
ここで、上述したように、レジスト膜340、レジスト膜341のうち、液流路溝39、連通開口部39b、液流路溝40及び連通開口部40bに対応する開口は、当該溝幅より小さい幅で形成されると、これにより、当該開口に入り込むエッチング液の量が低減され、この部分におけるエッチング速度が低下する。このため、これら液流路溝39、連通開口部39b、液流路溝40及び連通開口部40bの深さを浅くすることができる。これに対して蒸気流路溝42に対応するレジスト膜340、レジスト膜341の開口は、第一面30a、第二面30bにおける蒸気流路溝42の幅と同じに形成することで、当該開口に入り込むエッチング液の量が確保され、蒸気流路溝42を形成するためのエッチング深さを確保することができる(その結果、蒸気流路溝42は厚さ方向に貫通する。)。
【0224】
また、例えば
図6に示した連結部44cやその他の内側液流路部38を保持するための手段のように、厚さ方向に溝を貫通させない部分を形成するには、その部分についてはレジスト膜の幅を調整することで深さを抑制したり、金属材料シートMの両面に配置されたレジスト膜の一方のみに開口を設けたりすることで行うことができる。
【0225】
エッチング工程の後、
図63に示すように、レジスト除去工程として、レジスト膜340及びレジスト膜341が除去される。
【0226】
このようにして、第三シート30を得ることができる。
【0227】
第一シート310の準備工程として内側シート311に補強シート312が
積層されたシート、及び、第二シート320の準備工程として内側シート321に補強シート322が積層されたシートを準備する。各準備工程の方法は特に限定されることはないが、クラッド材として製造されているものを用いることができる。
他の方法としては、圧延材から形成された補強シート311、322に、めっき処理を行うことにより内側シート311、312を形成するようにしてもよい。この場合、補強シート312、322と内側シート311、321との間に、両者の接合性を向上させるための密着層が介在されていてもよい。密着層の例としては、ストライクめっき層、シード層などが挙げられる。例えば補強シート312、322をステンレスで形成し、内側シート311、321を銅で形成する場合には、ニッケル、または銅等の材料を含むストライクめっき層を介在させるようにしてもよく、または、スパッタリングを行うことによって、チタン、モリブデン等の材料を含むシード層を介在させるようにしてもよい。ストライクめっき層およびシード層の厚さは、例えば、10nm以上1000nm以下の範囲である。あるいは、内側シート311、321を圧延材から形成し、補強シート312、322をめっき処理で形成するようにしてもよい。更には、内側シート311、321及び補強シート312、322のいずれか一方を、めっき処理で形成し、更にめっき処理をすることで他方を積層形成するようにしてもよい。
【0228】
第三シート30、第一シート310、及び、第二シート320を準備した後、仮止め工程として、これらが積層された状態で仮止めされる。
仮止めのための固定の方法としては、特に限られることはないが、例えば、抵抗溶接を行うことによることができる。この場合、図示しない電極棒を用いてスポット的に抵抗溶接を行うようにしてもよい。抵抗溶接の代わりにレーザ溶接を行ってもよい。
【0229】
仮止め工程の後、
図64に示すように、接合工程として、第一シート310、第二シート320、及び、第三シート30が、拡散接合によって恒久的に接合される。拡散接合とは、接合する第一シート310と第三シート30とを密着させるとともに第三シート30と第二シート320とを密着させて、真空や不活性ガス中などの制御された雰囲気中で、積層方向に加圧するとともに加熱して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する方法である。拡散接合は、各シートを構成する材料を融点に近い温度まで加熱するが、融点よりは低いため、各シートが溶融して変形することを回避できる。
【0230】
接合工程の後、封入工程として、注入部から中空部に作動流体が封入される。作動流体の注入の後、注入流路が封止される。例えば、注入部にレーザを照射し、注入部を部分的に溶融させて注入流路を封止するようにしてもよい。このことにより、作動流体が封入された空間が外部から遮断される。なお、封止のためには、注入部をかしめてもよく(押圧して塑性変形させてもよく)、またはろう付けしてもよい。
【0231】
以上のようにして、ベーパーチャンバ301が得られる。なお、本例では第一シート、第二シートにおけるめっきした後に各シートを積層したが、これに限らず、各シートを積層してからめっきをしてもよい。これによれば側面にもめっきによる層が形成される。
【0232】
[ベーパーチャンバの作用]
ベーパーチャンバ301における熱源の冷却に関する作動過程についてはこれまで説明した形態と同様なのでここでは説明を省略する。
一方、ベーパーチャンバ301を搭載した電子機器が、作動流体の凝固点より低い温度環境下に置かれる場合がある。この場合、作動流体が凍結し、作動流体の種類によっては凍結によって膨張する。例えば、作動流体が純水である場合には、氷点下の環境下では凍結して膨張し得る。この膨張によって、作動流体がたまっている部分において、ベーパーチャンバ301を厚さ方向に拡大させる方向の力がかかることがある。
【0233】
これに対してベーパーチャンバ301では、第一シート310には補強シート312、第二シート320には補強シート322が設けられており、第一シート310、第二シート320がそれぞれ補強されているため、作動流体の凍結膨張による力を受けても変形することを抑制することができる。このため、熱源から熱を受ける部位における熱源との接触面、及び、外部に熱を放出する部位における部材(例えばハウジング)との接触面の平坦度が低下することを抑制でき、隙間が形成されることを抑制できる。この場合、熱源からベーパーチャンバ301への熱伝導、ベーパーチャンバ301から外部への熱伝導が阻害されることを抑制できる。
【0234】
また、補強シート312の厚さを内側シート311の厚さよりも厚くし、補強シート322の厚さを内側シート321の厚さよりも厚くすれば、補強シート312、322によって内側シート311、321をより一層補強することができ、ベーパーチャンバ301の変形をより一層抑制することができる。
【0235】
4.2.形態4b
次に、形態4bについて説明する。
図65にはベーパーチャンバ301’、
図66にはベーパーチャンバ301”を説明するための図を示した。いずれも
図64に相当する断面図である。
【0236】
図65に示したベーパーチャンバ301’では、第三シート30が配置されておらず、第一シート310’と第二シート320’とが直接積層されている。すなわち、第一シート310’の内側シート311’と第二シート320’の内側シート321’とが重ねられて接合されていることで構成されている。
ただし、本形態では内側シート311’、及び内側シート321’には、重ねられる面に溝が形成されており、これにより凝縮液流路3及び蒸気流路4が形成されている。凝縮液流路3及び蒸気流路4の形態の考え方は上記と同様である。
かかる形態においても、補強シート312、322が備えられているため、上記と同様の効果を奏するものとなる。
【0237】
図66に示したベーパーチャンバ301”も、第三シート30が配置されておらず、第一シート310”と第二シート320”とが直接積層されている。すなわち、第一シート310”の内側シート311”と第二シート320”の内側シート321”とが重ねられて接合されていることで構成されている。
本形態では、隣り合う蒸気流路4の間に凝縮液流路3が設けられる形態ではなく、同じ流路の中に凝縮液流路3と蒸気流路4が具備される例である。そのため本形態では、蒸気流路4となる流路と同じ流路の中に毛細管構造部材339が配置されている。この毛細管構造部材339は、液化した作動流体が流れる毛細管構造(ウィック)として構成されている。毛細管構造部材339は、例えば、金属メッシュ、金属粉、金属撚線等で構成することができる。
かかる形態においても、補強シート312、322が備えられているため、上記と同様の効果を奏するものとなる。
【0238】
5.形態5
形態5のベーパーチャンバ401は、形態4で説明したベーパーチャンバ301に備えられた第一シート310及び第二シート320の代わりに第一シート410及び第二シート420が適用された例である。さらに、この第一シート410は、第一シート310で説明した内側シート311と補強シート312との間にバリアシート413が配置されている点で第一シート310と異なる。また、第二シート420は、第一シート320で説明した内側シート321と補強シート322との間にバリアシート423が配置されている点で第二シート320と異なる。
従って、バリアシート413、423以外については形態4のベーパーチャンバ301と同様に考えることができるので、ここではバリアシート413、423について説明する。
【0239】
バリアシート413、423を構成するバリア材料は、補強シート312、322を構成する金属元素が、内側シート311、321に向かって透過することを防止可能な材料であれば特に限られることはない。このようなバリア材料は、例えば、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)およびモリブデン(Mo)のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。バリア材料は、タングステン、チタン、タンタルおよびモリブデンのうちのいずれか1つのみで構成されていてもよい。この場合には、バリアシート413、423は、単相膜として形成される。あるいは、バリア材料は、タングステン、チタン、タンタルおよびモリブデンのうちの任意の2つ以上の材料を組み合わせて構成されていてもよい。この場合には、バリアシート413、423は、合金膜として形成される。このような合金膜の例としては、タングステンとチタンの合金膜を挙げることができる。また、バリア材料は、上述した4つの金属元素と、これ以外の金属元素との組み合わせでもよい。この場合の合金膜の例としては、ニッケルとタングステンの合金膜などを挙げることができる。
【0240】
バリアシート413、423の厚さは、バリア機能を発揮させることができれば、任意である。バリアシート413、423の厚さは、例えば、10nm以上1000nm以下の範囲である。バリアシート413、423の厚さを、10nm以上にすることにより、補強シート312、322を構成する金属元素が透過することを効果的に防止することができる。一方、1000nm以下にすることにより、スパッタリング処理で容易に作製することができるとともに、ベーパーチャンバ401の厚さが厚くなることを抑制できる。更には、1000nm以下にすることにより、熱伝導が阻害されることを抑制できる。バリア機能をより効果的に発揮させる観点からバリアシートの厚さは100nm以上であることが好ましい。
【0241】
ここで、バリアシート413、423の成分を確認する方法について説明する。まず、バリアシート413、423の有無は、例えば、ベーパーチャンバ401を任意の位置で切断して得られた断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮像して得られた画像で確認することができる。バリアシート413、423の成分は、例えば、ベーパーチャンバ401の下面を少し削り取り、削り取られた成分をエネルギー分散型X線分析(EDX)で分析し、そして更に削り取って成分を分析してもよい。このようにして成分分析を繰り返していくことで、バリアシート413、423の成分を確認することができる。
【0242】
またバリアシート413、423と内側シート311、321との間に、両者の接合性を向上させるための密着層がさらに形成されていてもよい。密着層が形成される場合には、まず、バリアシート413.423の面に密着層が形成され、その後、密着層の面に、内側シート311、321が形成される。密着層の例としては、ストライクめっき層、シード層などが挙げられる。例えば、バリアシート413、423をモリブデンを含む材料で形成し、内側シート311、321を銅で形成する場合には、銅を含むスパッタリングターゲット材を用いてスパッタリング処理を行うことによって、銅の材料を含むシード層を介在させるようにしてもよい。ストライクめっき層およびシード層の厚さは、例えば、50nm以上500nm以下の範囲とすることができる。あるいは、カバーシート413、423を圧延材から形成し、補強シート312、322をめっき処理で形成するようにしてもよい。更には、カバーシート413、423、補強シート312、322のいずれか一方をめっき処理で形成し、更にめっき処理をすることで他方を積層形成するようにしてもよい。
【0243】
このようなベーパーチャンバ401によれば、形態4で説明したベーパーチャンバ301と同様の効果に加えて、補強シートを形成する金属材料が、内側シート内に拡散することを抑制することができる。
【0244】
6.形態6
形態6では、ここまで説明した形態1乃至形成5のベーパーチャンバとは、第三シートの液流路溝の形状が異なる。他の部位についてはこれら形態1乃至形態5と同様に考えることができるため、ここでは内側液流路部に注目して説明し、他の部分については説明を省略する。ただし、外周液流路部についても同様の形状を適用することができる。
なお、便宜のため形態1乃至形態5と共通する部分については形態1の符号を付しているが、共通する部分について形態2乃至形態5の形態も適用することも可能である
【0245】
6.1.形態6a
図68は、本形態のベーパーチャンバ501の内側液流路部538をz方向から見た図であり、
図14と同様の視点による図である。
図68からわかるように、内側液流路部538は、x方向)に延びる液流路溝551と、液流路溝551を介して互いに隣り合う一対の凸部である液流路凸部552と、を有している。液流路溝551は、主として、液状の作動流体を輸送するように構成されている。
【0246】
一対の液流路凸部552は、液流路溝551に対する一方側(図中のy方向側)に配置された第1液流路凸部552Aと、液流路溝551に対する前記一方側とは反対側(図中のy方向と反対側)に配置された第2液流路凸部552Bとから構成されている。そして、第1液流路凸部552Aが第1方向(図中のx方向)に複数配列されて第1液流路凸部列553Aが構成されており、同様に、第2液流路凸部552Bが第1方向(図中のx方向)に複数配列されて第2液流路凸部列553Bが構成されている。
【0247】
また、第1方向(図中のx方向)に複数配列されている第1液流路凸部552Aの間には、それぞれ第1連絡溝554Aが形成されており、同様に、第1方向(図中のx方向)に複数配列されている第2液流路凸部552Bの間には、それぞれ第2連絡溝554Bが形成されている。各第1連絡溝554Aおよび各第2連絡溝554Bは、液流路溝551とつながっている。
【0248】
蒸気の状態から熱を失って、蒸気流路溝42(蒸気流路4)の表面において凝縮して液状となった作動流体は、毛細管作用によって蒸気流路溝42(蒸気流路4)の表面から第1連絡溝554Aや第2連絡溝554Bに入り込み、さらに毛細管作用によって液流路溝551(凝縮液流路3)に入り込む。
【0249】
なお、
図68に示す例において、第1液流路凸部列553Aを構成する複数の第1液流路凸部552Aは、一定のピッチP
501で第1方向(x方向)に配列されており、同様に、第2液流路凸部列553Bを構成する複数の第2液流路凸部552Bも、一定のピッチP
501で第1方向(x方向)に配列されている。
【0250】
このように一定のピッチとすることで、第1液流路凸部列553Aや第2液流路凸部列553Bの設計が複雑なものにならずに済む。また、それぞれの一対の液流路凸部552の作用を均等化させることも期待できる。例えば、複数の第1連絡溝554Aおよび複数の第2連絡溝554Bの各々から液流路溝551への液状の作動流体の入り込みやすさを、均等化させることが期待できる。
ただし、複数の第1液流路凸部552A、及び複数の第2液流路凸部552Bは、一定のピッチで配列されていなくてもよい。
【0251】
また、
図68に示す例において、一対の液流路凸部552を構成する第1液流路凸部552Aと、液流路溝551を介して隣り合う第2液流路凸部552Bは、液流路溝551に対して線対称に形成されている。
【0252】
このように線対称とすることで、第1液流路凸部列553Aや第2液流路凸部列553Bの設計が複雑なものにならずに済む。また、それぞれの一対の液流路凸部552の作用を均等化させることも、期待できる。例えば、複数の第1連絡溝554A及び複数の第2連絡溝554Bの各々から液流路溝551への液状の作動流体の入り込みやすさを、均等化させることが期待できる。
【0253】
但し、本形態においては、第1液流路凸部552Aと、液流路溝551を介して隣り合う第2液流路凸部552Bは、液流路溝551に対して線対称に形成されていなくてもよい。
【0254】
そして、第1液流路凸部552Aは、液流路溝551に対する一方側(図中のy方向側)から液流路溝551に向かって進みながら第1方向(図中のx方向)に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延び、第2液流路凸部552Bは、液流路溝551に対する前記一方側とは反対側(図中のy方向と反対側)から液流路溝551に向かって進みながら第1方向に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延びている。さらに、一対の液流路凸部552を構成する第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離は、第1方向側における距離が第1方向側とは反対側における距離よりも小さい。
【0255】
上記の第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bの形態及びその作用について、
図69及び
図70を用いて、より詳細に説明する。
【0256】
まず、上記の第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bの形態について説明する。
図69は、
図68に示す一対の液流路凸部52の形態を説明する図である。
図69に示す例において、第1液流路凸部552Aは、P1、Q1、R1、S1の4点から構成される平行四辺形の平面形状を有しており、P1とQ1を結ぶ辺は、第1方向(x方向)に対して角度θ1をなしている。角度θ1は、0°より大きく90°未満の範囲とすることができるが、好ましくは、30°以上60°以下である。
【0257】
上記のように、第1液流路凸部552Aは、液流路溝551に対する一方側(図中のy方向側)から液流路溝551に向かって進みながら第1方向(x方向)に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延びている形態を有する。それゆえ、第1方向(x方向)に配列されている第1液流路凸部552Aの間に形成されている第1連絡溝554A(図中、破線で囲む部分)も、液流路溝551に対する一方側(y方向側)から液流路溝551に向かって進みながら第1方向(x方向)に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延びている形態となる。
【0258】
同様に、第2液流路凸部552Bは、P2、Q2、R2、S2の4点から構成される平行四辺形の平面形状を有しており、P2とQ2を結ぶ辺は、第1方向(x方向)に対して角度θ2をなしている。角度θ2も、0°より大きく90°未満の範囲とすることができるが、好ましくは、30°以上60°以下である。
【0259】
上記のように、第2液流路凸部552Bは、液流路溝551に対する前記一方側とは反対側(y方向と反対側)から液流路溝551に向かって進みながら第1方向に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延びている形態を有する。それゆえ、第1方向(x方向)に配列されている第2液流路凸部552Bの間に形成されている第2連絡溝554B(図中、破線で囲む部分)も、液流路溝551に対する前記一方側とは反対側(y方向と反対側)から液流路551に向かって進みながら第1方向(x方向)に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延びている形態となる。
【0260】
ここで、
図68と同様に、
図69に示す例においては、一対の液流路凸部552を構成する第1液流路凸部552Aと、主流溝551を介して隣り合う第2液流路凸部552Bは、液流路溝551に対して線対称に形成されている。この場合、上述した角度θ1と角度θ2は等しくなる。また、この場合、第1連絡溝554Aと第2連絡溝554Bも液流路551に対して線対称になる。
【0261】
このように線対称とすることで、第1液流路凸部列553Aや第2液流路凸部列553Bの設計が複雑なものにならずに済む。また、それぞれの一対の液流路凸部552の作用を均等化させることも、期待できる。例えば、複数の第1連絡溝554Aおよび複数の第2連絡溝554Bの各々から液流路溝551への液状の作動流体の入り込みやすさを、均等化させることが期待できる。
【0262】
ただし、本形態においては、一対の液流路凸部552を構成する第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bは、液流路溝551に対して線対称に形成されていなくてもよい。線対称に形成されていない場合、例えば、以下のような効果を奏することができる。
【0263】
例えば、一対の液流路凸部552に挟まれた領域内に作動流体の蒸気が流入若しくは発生した場合、この蒸気が蒸発部(熱源に近い部分)に侵入することを防ぐ必要がある。ここで、本形態においては、一対の液流路凸部552を構成する第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bが、液流路溝551に対して線対称に形成されていない場合であっても、作動流体の蒸気が第1方向(x方向)に進もうとしても、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bに遮られて第1方向(x方向)に進む勢いが低減するため、蒸発部への蒸気の進行を防ぐことが可能となる。なお、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bの作用については、後述する
図70を用いた説明で、より詳しく説明する。
【0264】
さらに、本形態によるベーパーチャンバ501においては、一対の液流路凸部552を構成する第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離は、第1方向側における距離が第1方向側とは反対側における距離よりも小さい。例えば、
図69に示すように、第1液流路凸部552A(P1、Q1、R1、S1の4点から構成される平行四辺形)と、第2液流路凸部552B(P2、Q2、R2、S2の4点から構成される平行四辺形)において、第1方向(x方向)側における端部の距離(S1とS2の距離)D1は、第1方向(x方向)側と反対側における端部の距離(R1とR2の距離)D2よりも小さい。
【0265】
次に、上記のような形態を有する第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bの作用について説明する。
図70は、
図69に示す一対の液流路凸部552の作用を説明する図であり、主に、本形態における、液状の作動流体の流れと、蒸気の作動流体の流れについて説明する図である。ここで、
図70においては、液状の作動流体の流れを実線の太い矢印で示し、蒸気の作動流体の流れを破線の太い矢印で示す。
【0266】
まず、
図70に示す液状の作動流体の流れについて説明する。
一対の液流路凸部552を構成する第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bは、
図69を用いて説明したように、第1方向に対して傾斜した方向に延びている形態を有し、かつ、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離は、第1方向側における距離が第1方向側とは反対側における距離よりも小さい形態を有している。
【0267】
それゆえ、
図70において、実線の太い矢印で示すように、一対の液流路凸部552を構成する第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間に挟まれた領域に存在する液状の作動流体は、毛細管作用によって、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が大きい側から、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側へと、進むことになる。
【0268】
すなわち、本形態であれば、一対の液流路凸部552を構成する第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間に挟まれた領域に存在する液状の作動流体に対し、より強い推進力を与えて、第1方向(x方向)に向かって輸送させることができる。
【0269】
また、本形態においては、一対の液流路凸部552に挟まれた領域の深さを、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が大きい側が、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側よりも深い形態とすることができる。
【0270】
このような形態とすることで、より多くの液状の作動流体をこの領域に貯めておくことができる。そして、上記のように、この領域に存在する液状の作動流体に対しては、より強い推進力で、第1方向(x方向)向かって(すなわち、蒸発部Vに向かって)輸送させることができる。それゆえ、蒸発部(冷却対象に近い部位4)において液状の作動流体が不足することを防ぐことができる。
【0271】
また、上記のような形態とすることで、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側の深さが、より浅くなるため、すなわち、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側の流路断面積が、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が大きい側に比べてより小さくなるため、より強く毛細管作用が働くことになる。それゆえ、液流路溝551にある液状の作動流体に対して、より強い推進力を付与して、内側液流路部538の液流路溝551(凝縮液流路3)を第1方向(x方向)に向かって輸送させることができる。
【0272】
また、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側の端部を通過した液状の作動流体は、次の一対の液流路凸部552に挟まれた領域で拡散することになるが、この拡散の圧力と、一対の液流路凸部552に挟まれた領域に存在する液状の作動流体の容量のため、作動流体の蒸気が第1連絡溝554Aと第2連絡溝554Bから液流路溝551(凝縮液流路3)に侵入してくることを、より効果的に防止できる。
【0273】
上記のような形態は、例えば、液流路部50の形成を、エッチング液を用いたハーフエッチングで行うことにより、得ることができる。エッチング液を用いたハーフエッチングにおいては、エッチングされる面積が大きい方がエッチングされる面積が小さい方よりも、エッチングされる深さが深くなり易いという性質がある。
【0274】
それゆえ、例えば、内側液流路部538の形成に用いるエッチングパターンを、一対の液流路凸部552に挟まれた領域に関して、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が大きい側(上記のD2側)の面積が、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側(上記のD1側)の面積よりも大きいエッチングパターンとする。これにより、エッチング液を用いたハーフエッチングで形成される一対の液流路凸部552に挟まれた領域の深さに関して、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が大きい側(上記のD2側)の深さが、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側(上記のD1側)の深さよりも深くすることができる。
【0275】
次に、蒸気である作動流体の流れについて説明する。
第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552B、および、第1連絡溝554Aと第2連絡溝554Bは、
図69を用いて説明したように、第1方向に対して傾斜した方向に延びている形態を有している。それゆえ、蒸気流路溝42(蒸気流路4)を通って、第1方向(x方向)とは反対の方向に拡散してくる作動流体の蒸気(図中、破線矢印で示す)は、この拡散方向とは概ね逆方向となる第1連絡溝554Aや第2連絡溝554Bを通って、液流路溝551(凝縮液流路3)には侵入しにくい。
【0276】
すなわち、
図68に示すように、蒸発部(冷却対象に近い部位)4は
図70において上側(x方向側)に位置するため、
図70において、上側(x方向側)は蒸気の圧力が高く、下側(x方向と反対側)は蒸気の圧力が低いことになる。それゆえ、作動流体の蒸気は、圧力が低い側である下側(x方向と反対側)から、圧力が高い側である上側(x方向)には拡散しにくい。すなわち、作動流体の蒸気は、第1連絡溝554Aや第2連絡溝554Bを下側(x向と反対側)から上側(x方向)に流れるようなことは生じにくい。
【0277】
さらに、上記のように、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側の端部を通過した液状の作動流体は、次の一対の液流路凸部552に挟まれた領域で拡散することになる。それゆえ、この拡散の圧力と、一対の液流路凸部552に挟まれた領域に存在する液状の作動流体の容量によって、作動流体の蒸気が第1連絡溝554Aと第2連絡溝554Bから液流路溝551(凝縮液流路3)に侵入してくることを、より効果的に防止できる。
【0278】
したがって、本形態のベーパーチャンバ501によれば、作動流体が蒸気の状態で第1連絡溝554Aや第2連絡溝554Bから液流路溝551(凝縮液流路3)に侵入してくることを効果的に阻止して、液状の作動流体の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。
【0279】
また、液流路溝551(凝縮液流路3)内に作動流体の蒸気の流入、若しくは液状の作動流体の突沸(すなわち蒸気の発生)が起きた直後(瞬間)の蒸気の圧力は、一対の液流路凸部552の第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側が高く、他の側(第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離がより大きい側や、第1連絡溝554A側および第2連絡溝554B側)の方が低くなる。
【0280】
それゆえ、一対の液流路凸部552に挟まれた領域内に流入若しくは発生した蒸気は、この一対の液流路凸部552の第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側へ進むよりも、他の側(第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離がより大きい側や、第1連絡溝554A側および第2連絡溝554B側)に進み易くなる。すなわち、一対の液流路凸部552に挟まれた領域内に流入若しくは発生した蒸気は、液流路溝551(凝縮液流路3)内を第1方向(x方向)には進み難いことになる。
【0281】
したがって、本形態のベーパーチャンバ501によれば、蒸発部Vの温度が高く、蒸発が活発な場合において、例え、液流路溝551(凝縮液流路3)内に蒸気の流入若しくは発生が生じたとしても、この流入若しくは発生した蒸気が、液流路溝551(凝縮液流路3)内を第1方向(x方向)に進むことを阻止することができ、液状の作動流体の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。
【0282】
なお、上記のように、一対の液流路凸部552に挟まれた領域内に流入若しくは発生した蒸気は、この一対の液流路凸部552の第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側へ進むよりも、他の側(第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離がより大きい側や、第1連絡溝554A側および第2連絡溝554B側)に進み易くなる。
【0283】
ここで、蒸気が流入若しくは発生した一対の液流路凸部552の第1方向(x方向)とは反対側に位置する一対の液流路凸部552の第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側の圧力は高いことから、蒸気がこの圧力が高い所を通って、第1方向(x方向)とは反対側に位置する一対の液流路凸部552に流入することは起こりにくい。
【0284】
それゆえ、蒸気は、第1連絡溝554Aおよび第2連絡溝554Bを通って蒸気流路部溝42(蒸気流路4)へと排出されることになる。ここで、第1連絡溝554Aおよび第2連絡溝554Bの幅を、一対の液流路凸部552の第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離よりも大きく設計することで上記の蒸気排出の効果をより促進させることができる。
【0285】
次に、第1液流路凸部552A、第2液流路凸部552Bの平面形状(特に角部)の詳細について、
図71を用いて説明する。後述するように、内側液流路部538は、金属材料シートに対してエッチング液を用いたハーフエッチングを行うことにより形成される。それゆえ、一対の液流路凸部552を構成する第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bの平面形状も、厳密には平行四辺形とならずに、角部が丸まった形態となる。
【0286】
例えば、第1液流路凸部552Aは、
図71に示すように、P1、Q1、R1、S1の4点から構成される平行四辺形(
図71において実線で示す平行四辺形)から、急峻な角部は丸められて、破線で示すような湾曲部555、556を有する形態となる。しかしながら、P1とQ1を結ぶ線の方向の辺557、およびS1とR1を結ぶ線の方向の辺558が残っていれば、本実施の形態のベーパーチャンバ501における、上記の各種の効果を奏することができる。第2液流路凸部552Bについても同様である。
【0287】
6.2.形態6b
次に、
図72を用いて、形態6bによるベーパーチャンバについて説明する。
なお、形態6bによるベーパーチャンバは、その内側液流路部の形態が、形態6aによるベーパーチャンバと相違するものであり、他の構成については、形態6aによるベーパーチャンバと同様とすることができる。
【0288】
図72は、形態6bよるベーパーチャンバ501’の内側液流路部538’の例を示す図である。より詳しくは、この
図72は、ベーパーチャンバ501’における
図69に相当する図である。
【0289】
本形態によるベーパーチャンバの液流路部は、各々が第1方向に延びて液状の作動流体が通る複数の液流路溝と、液流路溝を間に介して第1方向に延びる複数の凸部列と、を有し、複数の液流路溝は、一の基準とする液流路溝を含み、凸部列の各々は、複数の連絡溝を介して第1方向に配列された複数の液流路凸部を含み、複数の連絡溝は、基準主流溝に対する一側に配置された第1連絡溝と、基準主流溝に対する他側に配置された第2連絡溝と、を含み、第1連絡溝は、基準主流溝に向かって進みながら第1方向に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延び、第2連絡溝は、基準とする液流路溝に向かって進みながら第1方向に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延びている。
【0290】
また、第1連絡溝は、第1連絡溝の延びる方向において整列し、第2連絡溝は、第2連絡溝の延びる方向において整列している。
【0291】
例えば、
図72に示すように、ベーパーチャンバ501’の内側液流路部538’は、一の基準となる液流路溝551’を含む3個の液流路溝(551’、551’A、551’B)を有している。各液流路溝は第1方向(x方向)に延びている。
【0292】
また、ベーパーチャンバ501’の内側液流路部538’は、第1方向に延びる4個の凸部列(553’A、553’B、553’C、553’D)を有している。なお、4個の凸部列(553’A、553’B、553’C、553’D)のうち、基準とする主流溝551の一側(図中のY方向側)にある凸部列が、第1凸部列(553’A、553’B)であり、基準とする液流路溝551’の他側(図中のy方向とは反対側)にある凸部列が、第2凸部列(553’D、553’C)である。
【0293】
より解りやすく言えば、
図72に示す例においては、図中のy方向側から順に、第1凸部列553’A、液流路溝551’A、第1凸部列553’B、基準主流溝551’、第2凸部列553’D、液流路溝551’B、第2凸部列553’Cが配置されている。
【0294】
第1凸部列553’Aは、複数の第1連絡溝554’Aを介して第1方向(x方向)に配列された複数の液流路凸部552’Aを含んでいる。同様に、第1凸部列553’Bは、複数の第1連絡溝554’Bを介して第1方向に配列された複数の液流路凸部552’Bを含んでいる。また、第2凸部列553’Dは、複数の第2連絡溝554’Dを介して第1方向に配列された複数の液流路凸部552’Dを含んでいる。また、第2凸部列553’Cは、複数の第2連絡溝554’Cを介して第1方向に配列された複数の液流路凸部552’Cを含んでいる。
【0295】
そして、第1連絡溝554’A、554’Bの各々は、基準とする液流路溝551の一方側(y方向側)から基準とする液流路溝551’に向かって進みながら、第1方向(x方向)に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延びている。
【0296】
図72に示す例において、第1連絡溝554’A、554’Bの伸びる方向(図中、太い破線の矢印で示す方向)と、第1方向(x方向)のなす角度(鋭角側の角度)を角度θ3とする。角度θ3は、0°より大きく90°未満の範囲とすることができるが、好ましくは、30°以上60°以下である。
【0297】
また、第2連絡534’D、554’Cの各々は、基準とする液流路溝551’の他側(y方向の反対側)から基準とする液流路溝551’に向かって進みながら、第1方向(x方向)に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延びている。
【0298】
図72に示す例において、第2連絡溝554’D、554’Cの延びる方向(図中、太い破線の矢印で示す方向)と、第1方向(x方向)のなす角度(鋭角側の角度)を角度θ4とする。角度θ4は、0°より大きく90°未満の範囲とすることができるが、好ましくは、30°以上60°以下である。
【0299】
また、第1連絡溝554’A、554’Bの各々は、第1連絡溝の延びる方向において整列し、第2連絡溝554’D、554’Cの各々は、第2連絡溝の延びる方向において整列している。
【0300】
例えば、
図72に示すように、第1連絡溝の延びる方向、すなわち、第1方向(x方向)となす角度が角度θ3の方向(図中、太い破線の矢印で示す方向)に、第1連絡溝554’A、554’Bが配置されており、第2連絡溝の延びる方向、すなわち、第1方向(x方向)となす角度が角度θ4の方向(図中、太い破線の矢印で示す方向)に、第2連絡溝554’C、554’Dが配置されている。
【0301】
このような配置とすることで、複数ある第1連絡溝や第2連絡溝の設計が複雑なものにならずに済む。また、それぞれの連絡溝の作用を均等化させることも、期待できる。例えば、複数の第1連絡溝および複数の第2連絡溝の各々から各液流路溝(凝縮液流路)への液状の作動流体の入り込みやすさを、均等化させることが期待できる。
【0302】
また、上記のように、ベーパーチャンバ501’は、複数の液流路溝(551’、551’A、551B)と、これらの液流路溝を間に介して第1方向に延びる複数の凸部列(553’A、553’B、555’C、553’D)とを有しているため、ベーパーチャンバ501’の内側液流路部538’の凹凸構造をより複雑にして、内側液流路部538’の表面積をより大きくすることが可能である。それゆえ、毛細管作用による作動流体の輸送量を、より増やすことができ、輸送効率をより向上させることができる。
【0303】
また、ベーパーチャンバ501’が有する第1連絡溝554’A及び第2連絡溝554’Cは、第1方向に対して傾斜した方向に延びている形態を有している。それゆえ、上記の形態6aのベーパーチャンバ501と同様に、蒸気流路4を通って、第1方向(x方向)とは反対の方向に拡散してくる蒸気の作動流体は、この拡散方向とは概ね逆方向となる第1連絡溝554’Aや第2連絡溝554’Cを通って液流路溝(凝縮液流路)には侵入しにくいという効果が期待される。
【0304】
6.3.形態6c
次に、
図73を用いて、形態6cによるベーパーチャンバについて説明する。
【0305】
上記のように、形態6bによるベーパーチャンバ501’が有する第1連絡溝554’A及び第2連絡溝554’Cは、第1方向に対して傾斜した方向に延びている形態を有している。それゆえ、形態6aによるベーパーチャンバ501と同様に、蒸気流路部を通って、第1方向(x方向)とは反対の方向に拡散してくる蒸気の作動流体は、この拡散方向とは概ね逆方向となる第1連絡溝554’Aや第2連絡溝554’Cを通って液流路溝に侵入しにくいという効果が期待される。
【0306】
ただし、上記のベーパーチャンバ501’においては、形態6aによるベーパーチャンバ501と異なり、互いに隣り合う液流路凸部の間の距離(D3)は一定である(
図72参照)。すなわち、
図72に示すベーパーチャンバ501’においては、形態6aによるベーパーチャンバ501のような、一対の液流路凸部を構成する第1液流路凸部と第2液流路凸部との間の距離は、第1方向側における距離が第1方向側とは反対側における距離よりも小さいという形態にはなっていない。
【0307】
より詳しくは、形態6aによるベーパーチャンバ501においては、
図69に示すように、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離は、第1方向側(x方向側)における距離(D1)が第1方向側とは反対側における距離(D2)よりも小さい形態を有していた。
【0308】
そして、このような形態を有するため、第1液流路凸部552Aと第2液流路凸部552Bとの間の距離が小さい側の端部を通過した液状の作動流体は、次の一対の液流路凸部552に挟まれた領域で拡散することになる。そして、この拡散の圧力と、一対の液流路凸部552に挟まれた領域に存在する液状の作動流体の容量のため、蒸気の作動流体が第1連絡溝554Aと第2連絡溝554Bから液流路部551(凝縮液流路3)に侵入してくることを、より効果的に防止できるという効果が見込まれる。
【0309】
一方、形態6bによるベーパーチャンバ501’においては、
図72に示すように、互いに隣り合う液流路凸部552’Bと液流路凸部552’Dとの間の距離(D3)は一定であり、第1方向側(x方向側)における距離と第1方向側とは反対側における距離も同じである。
【0310】
それゆえ、形態6aによるベーパーチャンバ501のような効果、すなわち、蒸気の作動流体が第1連絡溝554’Bと第2連絡溝554’Dから基準とする液流路溝551’(凝縮液流路3)に侵入してくることを、より効果的に防止できるという効果に関しては、ベーパーチャンバ501の方が好ましい。
【0311】
さらに、
図72に示すベーパーチャンバ501’においては、第1連絡溝554’A、554’Bの各々は、第1連絡溝の延びる方向において整列し、第2連絡溝554’D、554’Cの各々は、第2連絡溝の延びる方向において整列している。
【0312】
例えば、
図72に示すように、第1連絡溝の延びる方向、すなわち、第1方向(x方向)となす角度が角度θ3の方向(図中、太い破線の矢印で示す方向)に、第1連絡溝554’A、554’Bが配置されており、第2連絡溝の延びる方向、すなわち、第1方向(x方向)となす角度が角度θ4の方向(図中、太い破線の矢印で示す方向)に、第2連絡溝554’C、554’Dが配置されている。
【0313】
それゆえ、基準とする液流路溝551’に対してより外側にある第1連絡溝554’Aから侵入した蒸気の作動流体は、この第1連絡溝の延びる方向に液流路凸部が存在しないことから、より内側にある第1連絡溝554’Bも通過して、容易に基準とする液流路溝551’(凝縮液流路3)に侵入してしまうおそれがある。同様に、基準とする液流路溝551’に対してより外側にある第2連絡溝554’Cから侵入した蒸気の作動流体は、この第2連絡溝の延びる方向に液流路凸部が存在しないことから、より内側にある第2連絡溝554’Dも通過して、容易に基準とする液流路溝551’(凝縮液流路3)に侵入してしまうおそれがある。
【0314】
そこで、形態6cによるベーパーチャンバにおいては、連絡溝の延びる方向に液流路凸部が存在する形態とした。なお、形態6cにおけるベーパーチャンバは、その内側液流路部の形態が、形態6a、形態6bによるベーパーチャンバと相違するものであり、他の構成については、上記の形態6aによるベーパーチャンバと同様とすることができる。
【0315】
図73は、形態6cによるベーパーチャンバ501”の内側液流路部538”の例を示す図である。
図73に示すように、ベーパーチャンバ501”の内側液流路部538”は、一の基準とする液流路溝551”を含む3個の液流路溝(551”、551”A、551”B)を有している。各液流路溝は第1方向(x方向)に延びている。
【0316】
また、ベーパーチャンバ501”の内側液流路部538”は、第1方向に延びる4個の凸部列(553”A、553”B、553”C、553”D)を有している。なお、4個の凸部列(553”A、553”B、553”C、553”D)のうち、基準とする液流路溝551”の一方側(y方向側)にある凸部列が、第1凸部列(553”A、553”B)であり、基準とする液流路溝551”の他側(y方向とは反対側)にある凸部列が、第2凸部列(553”D、553”C)である。
【0317】
より解りやすく言えば、
図73に示す例においては、y方向側から順に、第1凸部列553”A、液流路溝551”A、第1凸部列553”B、基準とする液流路溝551”、第2凸部列553”D、液流路溝551”B、第2凸部列553”Cが配置されている。
【0318】
第1凸部列553”Aは、複数の第1連絡溝554”Aを介して第1方向(x方向)に配列された複数の液流路凸部552”Aを含んでいる。同様に、第1凸部列553”Bは、複数の第1連絡溝554”Bを介して第1方向に配列された複数の液流路凸部552”Bを含んでいる。また、第2凸部列553”Dは、複数の第2連絡溝554”Dを介して第1方向に配列された複数の液流路凸部552”Dを含んでいる。また、第2凸部列553”Cは、複数の第2連絡溝554”Cを介して第1方向に配列された複数の液流路凸部552”Cを含んでいる。
【0319】
そして、第1連絡溝554”A、554”Bの各々は、基準とする液流路溝551”の一側(y方向側)から基準とする液流路溝551”に向かって進みながら、第1方向(x方向)に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延びている。
図73に示す例において、第1連絡溝554”Aの伸びる方向(図中、太い破線の矢印で示す方向)と、第1方向(x方向)のなす角度(鋭角側の角度)を角度θ5とする。角度θ5は、0°より大きく90°未満の範囲とすることができるが、好ましくは、30°以上60°以下である。
【0320】
また、第2連絡溝554”D、554”Cの各々は、基準とする液流路溝551”の他側(y方向の反対側)から基準とする液流路溝551”に向かって進みながら、第1方向(x方向)に進むように第1方向に対して傾斜した方向に延びている。
図73に示す例において、第2連絡溝554”Cの伸びる方向(図中、太い破線の矢印で示す方向)と、第1方向(x方向)のなす角度(鋭角側の角度)を角度θ6とする。角度θ6は、0°より大きく90°未満の範囲とすることができるが、好ましくは、30°以上60°以下である。
【0321】
ここで、本形態のベーパーチャンバにおいては、互いに隣り合う一対の第1凸部列において、基準とする液流路溝に対し外側に配置された第1凸部列を外側第1凸部列とし、基準とする液流路溝に対し内側に配置された第1凸部列を内側第1凸部列とし、互いに隣り合う一対の第2凸部列において、基準とする液流路溝に対し外側に配置された第2凸部列を外側第2凸部列とし、基準とする液流路溝に対し内側に配置された第2凸部列を内側第2凸部列とした場合に、外側第1凸部列を構成する液流路凸部の間を通る第1連絡溝が延びる方向に、内側第1凸部列を構成する液流路凸部が配置されており、外側第2凸部列を構成する液流路凸部の間を通る第2連絡溝が延びる方向に、内側第2凸部列を構成する液流路凸部が配置されている。
【0322】
例えば、
図73に示すベーパーチャンバ501”においては、第1凸部列553”Aが外側第1凸部列であり、第1凸部列553”Bが内側第1凸部列である。同様に、第2凸部列553”Cが外側第2凸部列であり、第2凸部列553”Dが内側第2凸部列である。
【0323】
そして、外側第1凸部列である第1凸部列553”Aを構成する液流路凸部552”Aの間を通る第1連絡溝554”Aが延びる方向(図中、太い破線の矢印で示す方向)には、内側第1凸部列である第1凸部列553”Bを構成する液流路凸部552”Bが配置されている。
【0324】
それゆえ、基準とする液流路溝551”に対してより外側にある第1連絡溝554”Aから侵入した蒸気の作動流体は、この第1連絡溝の延びる方向に存在する液流路凸部552”Bによって流れが遮られ、より内側にある基準とする液流路溝551”に侵入しにくくなる。また、液流路凸部552”Bによって蒸気の流れが分散するため、蒸気の圧力も低下する。それゆえ、さらに、基準とする液流路溝551”に侵入しにくくなる。
【0325】
同様に、外側第2凸部列である第2凸部列553”Cを構成する液流路凸部552”Cの間を通る第2連絡溝554”Cが延びる方向(図中、太い破線の矢印で示す方向)には、内側第2凸部列である第2凸部列553”Dを構成する液流路凸部552”Dが配置されている。
【0326】
それゆえ、基準とする液流路溝551”に対してより外側にある第2連絡溝554”Cから侵入した蒸気の作動流体は、この第1連絡溝の延びる方向に存在する液流路凸部552”Dによって流れが遮られ、より内側にある基準とする液流路溝551”に侵入しにくくなる。また、液流路凸部552”Dによって蒸気の流れが分散するため、蒸気の圧力も低下する。それゆえ、さらに、基準とする液流路溝551”に侵入しにくくなる。
【0327】
それゆえ、ベーパーチャンバ501”によれば、蒸気の作動流体が基準とする液流路溝551”に侵入してくることを効果的に阻止して、液状の作動流体の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。
【0328】
また、
図72に示すベーパーチャンバ501’と同様に、ベーパーチャンバ501”は、複数の液流路溝(551”、551”A、551”B)と、これらの液流路溝を間に介して第1方向に延びる複数の凸部列(553”A、553”B、553”C、553”D)とを有しているため、ベーパーチャンバ501”の内側液流路部538”の凹凸構造をより複雑にして、内側液流路部538”の表面積をより大きくすることが可能である。それゆえ、毛細管作用による作動流体の輸送量を、より増やすことができ、輸送効率をより向上させることができる。
【0329】
本開示の上記各形態はそのままに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記形態に開示されている構成要素を複数組み合わせて効果を奏する種々の形態とすることができる。
各形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよく、必要な効果を得る観点から当該構成要素の1つ又は幾つかのみを用いるものであってもよい。
【符号の説明】
【0330】
1、51 ベーパーチャンバ
2 密閉空間
3 凝縮液流路
4 蒸気流路
10 第一シート
11 本体
12 注入部
20 第二シート
21 本体
22 注入部
30、52 第三シート
31、53 本体
32 注入部
33 外周接合部
34 外周液流路部(液流路部)
37 導入部
38、54 内側液流路部(液流路部)
41 導入部
42 蒸気流路溝
44 蒸気流路連通溝
54a 厚さ方向連通穴
80 電子機器
81 筐体
83 電子部品
101 ベーパーチャンバ
130 第三シート
131 本体
134 外周液流路部(液流路部)
136 断熱部用溝
138 内側液流路部(液流路部)
140 断熱部用溝
201 ベーパーチャンバ
230 第三シート
238 内側液流路部(液流路部)
241 導入部
301 ベーパーチャンバ
310 第一シート
311 内側シート
312 補強シート
320 第二シート
321 内側シート
322 補強シート
401 ベーパーチャンバ
410 第一シート
411 内側シート
413 バリアシート
420 第二シート
423 バリアシート
501 ベーパーチャンバ
538 内側液流路部
551 蒸気流路溝
552 一対の液流路凸部
552A 第1液流路凸部
552B 第2液流路凸部
553A 第1液流路凸部列
553B 第2液流路凸部列
554A 第1連絡溝
554B 第2連絡溝
【手続補正書】
【提出日】2024-11-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉空間に作動流体が封入されるベーパーチャンバ用のシートであって、
前記ベーパーチャンバ用の前記シートは、第1面と、前記第1面の反対側に第2面と、を有し、
前記シートには、前記第1面に設けられた第2流路と、前記シートの前記第1面から前記第2面に貫通して設けられた第1流路とを有し、
前記第2流路は、前記第1流路の壁面を介して複数の連通開口部によって前記第1流路に連通し、
前記壁面は、前記第1流路の内側に最も突出した頂部を具備し、
前記壁面は、前記頂部から前記第1面に向かって断面視で傾斜している、
ベーパーチャンバ用のシート。
【請求項2】
密閉空間に作動流体が封入されるベーパーチャンバ用のシートであって、
前記ベーパーチャンバ用の前記シートは、第1面と、前記第1面の反対側に第2面と、を有し、
前記シートには、前記第1面に設けられた第2流路と、前記シートの前記第1面から前記第2面に貫通して設けられた第1流路とを有し、
前記第2流路は、前記第1流路の壁面を介して前記第1流路と連通し、
前記壁面は、前記第1流路の内側に最も突出した頂部を具備し、
前記壁面は、前記頂部から前記第1面に向かって断面視で円弧状である、
ベーパーチャンバ用のシート。
【請求項3】
前記第1面から前記頂部までの厚さ方向の距離を、前記第1流路の厚さで割った値が、0.05以上1.0以下である、請求項1又は2に記載のベーパーチャンバ用のシート。
【請求項4】
密閉空間に作動流体が封入されるベーパーチャンバ用のシートであって、
前記ベーパーチャンバ用の前記シートは、第1面と、前記第1面の反対側に第2面と、を有し、
前記シートには、前記第1面に設けられた第2流路と、前記シートの前記第1面から前記第2面に貫通して設けられた第1流路とを有し、
前記第2流路は、前記第1流路の壁面を介して前記第1流路と連通し、
前記壁面は、前記第1流路の内側に最も突出した頂部を具備し、
前記頂部は、前記ベーパーチャンバ用のシートの厚さ方向の中央よりも、前記第1面に近い位置に位置している、
ベーパーチャンバ用のシート。
【請求項5】
前記壁面は、断面視で前記頂部から前記第1面に向かって凹の円弧状である、請求項1~4のいずれか一項に記載のベーパーチャンバ用のシート。
【請求項6】
前記壁面は、断面視で前記頂部から前記第1面に向かって凸の円弧状である、請求項1~4のいずれか一項に記載のベーパーチャンバ用のシート。
【請求項7】
前記第2面に他の第2流路が形成され、
前記他の第2流路は、前記頂部から前記第2面に向かう、前記第1流路の壁面を介して前記第1流路に連通した、請求項1~6に記載のベーパーチャンバ用のシート。
【請求項8】
前記シートは単層である、請求項1~7のいずれか一項に記載のベーパーチャンバ用のシート。
【請求項9】
前記シートは複数のシートが積層されてなる、請求項1~7のいずれか一項に記載のベーパーチャンバ用のシート。
【請求項10】
第1シートと、
第2シートと、
前記第1シートと前記第2シートの間に配置された請求項1~9のいずれか一項に記載のベーパーチャンバ用の前記シートと、を備えた、
ベーパーチャンバ。
【請求項11】
請求項10に記載のベーパーチャンバを備えた、電子機器。