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特開2024-177393T細胞レパートリーダイナミクス及び腫瘍溶解性ウイルス療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177393
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】T細胞レパートリーダイナミクス及び腫瘍溶解性ウイルス療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/768 20150101AFI20241212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241212BHJP
   A61K 35/765 20150101ALI20241212BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20241212BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20241212BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20241212BHJP
   C07K 14/14 20060101ALI20241212BHJP
   C12N 15/46 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61K35/768
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K35/765
A61K35/761
A61K35/763
C12N7/01 ZNA
C07K14/14
C12N15/46
C12N7/01
A61K35/768 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024174224
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2021549080の分割
【原出願日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】62/809,190
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501332264
【氏名又は名称】オンコリティクス バイオテク,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】グレー ウィルキンソン
(57)【要約】
【課題】対象のがんを治療する方法を提供すること。
【解決手段】本方法は、対象に1回以上の用量の腫瘍溶解性ウイルスを投与すること(例えば、最初のラウンドの治療において)と、高い末梢クローン性を示すT細胞集団を有する対象を選択することと、高い末梢クローン性を示すT細胞集団を有する対象に、1回以上の後続の用量の腫瘍溶解性ウイルスを投与すること(例えば、第2のラウンドの治療において)と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月22日に出願された米国仮特許出願第62/809,190号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全容を参照によって本明細書に援用するものである。
【背景技術】
【0002】
がんは主要な死因の1つである。がんは長い間、医学研究の焦点であったにもかかわらず、主ながん治療は依然として外科手術、放射線療法及び化学療法である。これらの治療法のそれぞれには、例えば、同様のタイプのがんを有する対象に対する同じ治療法の効果が異なることなどの制限がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書は、対象のがんを治療する方法、より具体的には、対象が最初のラウンドの治療後に高い末梢クローン性を示すT細胞集団を示すか否かを判定することによって、治療の奏功しやすさについて選択された対象のがんを治療する方法である。本方法は、がんを有する対象に、1回以上の用量のレオウイルスなどの腫瘍溶解性ウイルスを投与することと、1回以上の用量の腫瘍溶解性ウイルスによる治療後に高い末梢クローン性(例えば、0.06超)を示すT細胞集団を有する対象を選択することと、高い末梢クローン性を示すT細胞集団を有する対象に1回以上の後続の用量の腫瘍溶解性ウイルスを投与することと、を含む。場合により、腫瘍溶解性ウイルスは、1つ以上のさらなる薬剤と組み合わせて投与される。
【0004】
1つ以上の実施形態の詳細を、下記の説明に記載する。他の特徴、目的、及び利点は、説明から、また特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】ペアワイズウィルコクソン順位和検定を使用した、治療期間中の末梢クローン性が減少する傾向を示すグラフである。
図2】ペアワイズウィルコクソン順位和検定を用いた、治療期間中に末梢多様性が増大する傾向を示すグラフである。
図3】無増悪生存期間と相関している、C1D1(治療サイクル1の1日目)及びC2D1(C2D1、治療サイクル2の1日目)における高い末梢クローン性及び低い多様性を示すグラフである。
図4】全生存期間と相関している、C1D1及びC2D1における高い末梢クローン性及び低い多様性を示すグラフである。
図5】末梢T細胞の画分を経時的に示すグラフである。
図6】C1D1に対する森下指数を示すグラフである。
図7】C2D1における末梢クローンの増殖を示すグラフである。
図8】C2D1で同定された末梢で増殖したクローンの大部分が新しいクローンに由来することを示すグラフである。
図9】より高い末梢クローン性が、レオウイルス及びレトロゾールで治療を行った乳癌患者(A)、及びレオウイルス及びチェックポイント阻害剤アテゾリズマブで治療を行った乳癌患者(B)においてCelTILスコアのより大きな変化と相関していることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
本明細書では、例えば、全生存期間の改善及び/または無増悪生存期間の改善を示すことによって対象が治療に応答性を有することを示す1つ以上のマーカーを有する対象を選択することによって対象のがんを治療する方法を提供する。本方法は、対象に1回以上の用量の腫瘍溶解性ウイルス(すなわち、腫瘍溶解性ウイルスによる最初のラウンドの治療)を投与することと、1回以上の用量の腫瘍溶解性ウイルスの投与後に高い末梢クローン性を示すT細胞集団を有する対象を選択することと、選択された対象に後続の1回以上の用量の腫瘍溶解性ウイルス(すなわち、腫瘍溶解性ウイルスによる第2のラウンドの治療)を投与することと、を含む。場合により、対象は多様性の低いT細胞集団も有する。末梢クローン性が高くかつ多様性が低いT細胞集団を有する対象を選択することで、選択を行わない対象と比較して、または1回以上の用量の腫瘍溶解性ウイルスの投与後に末梢クローン性が高くかつ多様性が低いT細胞集団を有さない対象と比較して、腫瘍溶解性ウイルスによる後続の治療(すなわち、第2のラウンドの治療)に際して、より長い無増悪生存期間及び/または全生存期間を示す対象が選択される。
【0007】
本明細書で使用する場合、クローン性とは、クローン頻度分布の形状を測定することによる、単一クローンまたはオリゴクローンの増殖度の定量化を指す。クローン性の値は0~1の範囲であり、1に近い値はほぼ単一クローンの集団を示す。一般に、本明細書で使用される場合、高いクローン性とは、約0.06以上の値を指す。多様性という用語は、固有の再構成の数を指す。一般に、本明細書で使用する場合、低い多様性とは、約1800通り未満の再構成のT細胞集団の多様性を指す。
【0008】
クローン性と多様性はさまざまな方法で計算することができる。例として、下式を用いることができる。
【0009】
【数1】

はクローンiの存在比率であり、Nは固有の受容体遺伝子再構成の総数である。
【0010】
また、シンプソンのクローン性を使用してクローン性を計算することもできる。
【数2】

は、クローンiの存在比率である。
【0011】
本明細書で使用する場合、「がん」という用語は、リンパ腫、白血病、芽細胞腫、胚細胞腫瘍、がん腫、及び肉腫を含む、哺乳類動物にみられるあらゆる種類のがん、増殖性疾患、新生物、または悪性腫瘍を指す。例示的ながんとしては、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、頭頸部癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃癌、子宮癌、及び髄芽腫が挙げられる。場合により、がんは、新生物である。場合により、がんは、頭頸部癌である。場合により、がんは、肺癌、肝臓癌、リンパ腫、膵臓癌、黒色腫、腎臓癌、または卵巣癌である。場合により、がんは、腺癌である。場合により、がんは、膵臓腺癌である。
【0012】
場合により、がんは、転移性である。本明細書で使用する場合、「転移」、「転移性」及び「転移性がん」という用語は、互換的に用いることができ、増殖性の疾患または障害が広がること、例えばがんが、1つの臓器から別の隣接していない臓器または身体の部分に広がることを指す。がんは、発生部位、例えば膵臓で生じ、その部位は原発性腫瘍、例えば原発性膵臓癌と呼ばれる。原発性腫瘍または発生部位のがん細胞の一部は、その局所領域内の周囲の正常組織に浸透及び浸潤する能力及び/またはリンパ系もしくは血管系の壁に浸透して体内の他の部位及び組織へと循環する能力を獲得する。原発性腫瘍のがん細胞から形成される臨床的に検出可能な二次的な腫瘍は、転移性腫瘍または二次性腫瘍という。がん細胞が転移する場合、転移性腫瘍及びその細胞は、元の腫瘍のものと同様であると考えられる。したがって、膵臓癌が肺に転移する場合、肺の部位の二次性腫瘍は、異常な肺細胞ではなく異常な膵臓癌細胞で構成されている。その肺の二次性腫瘍は、転移性膵臓癌と呼ばれる。したがって、転移性がんという語句は、対象が原発性腫瘍を有するかまたは過去に有しており、かつ1つ以上の二次性腫瘍を有するような疾患を指す。非転移性がん、または転移性ではないがんを有する対象という語句は、対象が原発性腫瘍を有するが、二次性腫瘍を有さない疾患を指す。例えば、転移性膵臓癌とは、原発性膵臓腫瘍を有するかまたは原発性膵臓腫瘍の履歴を有し、かつ、第2の場所または複数の場所、例えば肺に、1つ以上の二次性腫瘍を有する対象の疾患を指す。
【0013】
提供される方法及びキットで使用される腫瘍溶解性ウイルスには、これらに限定されるものではないが、レオウイルス科、マイオウイルス科、シフォウイルス科、ポドウイルス科、テシウイルス科、コルチコウイルス科、プラズマウイルス科、リポスリックスウイルス科、フセロウイルス科、ポックスウイルス科(poxyiridae)、イリドウイルス科、フィコドナウイルス科、バキュロウイルス科、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科(adnoviridae)、パポバウイルス科、ポリドナウイルス科、イノウイルス科、ミクロウイルス科、ジェミニウイルス科、サーコウイルス科、パルボウイルス科、ヘパドナウイルス科、レトロウイルス科、シクトウイルス科(cyctoviridae)、ビルナウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科、フィロウイルス科、オルトミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レビウイルス科、ピコルナウイルス科、セキウイルス科、コモウイルス科、ポティウイルス科、カリシウイルス科、アストロウイルス科、ノダウイルス科、テトラウイルス科、トムバスウイルス科、コロナウイルス科、グラビウイルス科、トガウイルス科、及びバルナウイルス科のメンバーである腫瘍溶解性ウイルスが挙げられる。免疫保護されたウイルス、ならびにこれらの腫瘍溶解性ウイルス及び他の腫瘍溶解性ウイルスの再集合または組換えウイルスも、提供される方法に含まれる。したがって、提供される方法で使用される腫瘍溶解性ウイルスは、例えば、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、小胞性口内炎ウイルス(VSV)、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、パラポックスorfウイルス、シンドビスウイルス、及び単純ヘルペスウイルスからなる群から選択される。さらに、少なくとも2つの腫瘍溶解性ウイルスの組み合わせを使用して、提供された方法を実施することもできる。以下にいくつかの腫瘍溶解性ウイルスについて述べるが、当業者であれば、本明細書の開示及び当該技術分野で利用可能な知識に従うことで他の腫瘍溶解性ウイルスを使用して本発明の方法を実施することもできる。
【0014】
ウイルスが細胞に侵入すると、二本鎖RNAキナーゼ(PKR)が活性化されることでタンパク質合成が阻害され、ウイルスはこの細胞内で複製できなくなる。一部のウイルスは、PKRを阻害し、ウイルスタンパク質の合成及びウイルスの複製を促進するシステムを発達させている。例えば、アデノウイルスは、低分子RNAであるVA1 RNAを大量に生成する。VA1 RNAは広い二次構造を有し、通常PKRを活性化する二本鎖RNA(dsRNA)と競合してPKRと結合する。PKRの活性化には最小長のdsRNAが必要とされるため、VA1 RNAはPKRを活性化しない。代わりに、VA1 RNAは大量に存在するためにPKRを隔離する。その結果、タンパク質合成は阻害されず、アデノウイルスは細胞内で複製することができる。したがって、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはパラポックスウイルスorfウイルスのPKR阻害物質がPKR機能をそれ以上阻害しないように変異する場合、生じるウイルスは、PKRによるタンパク質合成阻害のために正常細胞に感染することはないが、PKR活性を欠くがん細胞内では複製する。場合により、腫瘍溶解性ウイルスは、VA1領域が変異したアデノウイルス、K3L及び/またはE3L領域が変異したワクシニアウイルス、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子が変異したワクシニアウイルス、ワクシニア増殖因子(VGF)遺伝子が変異したワクシニアウイルス、γ134.5遺伝子が変異したヘルペスウイルス、OV20.0L遺伝子が変異したパラポックスウイルスorfウイルス、またはNS-1遺伝子が変異したインフルエンザウイルスである。
【0015】
ウイルスのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子が変異したワクシニアウイルスは、DNA複製に必要なヌクレオチドを作ることができない。正常な細胞では、細胞のTKレベルは通常非常に低く、ウイルスは複製できない。腫瘍では、腫瘍抑制因子Rbの喪失またはサイクリン活性の増加が、E2F経路の活性化及び高レベルのTK発現をもたらす。そのため、がん細胞は高いTKレベルを有し、変異したワクシニアウイルスは複製して広がることができる。
【0016】
ワクシニア増殖因子(VGF)遺伝子は、哺乳類の上皮増殖因子(EGF)のホモログであり、EGF受容体(EGFR)と結合してこれを活性化することができる。VGF遺伝子が変異したワクシニアウイルスの増殖は、一般にがんで変異しているEGF経路が活性化した細胞に限定される。
【0017】
ウイルスは、ウイルスPKR阻害剤の既知の構造と機能の関係に従って改変または変異させることができる。例えば、E3タンパク質のアミノ末端領域はPKRのカルボキシ末端領域ドメインと相互作用するため、カルボキシ末端領域ドメインの欠失または点突然変異は抗PKR機能を妨げる(Chang et al.,PNAS 89:4825-4829(1992);Chang et al.,Virology 194:537-547(1993);Chang et al.,J.Virol.69:6605-6608(1995);Sharp et al.,Virol.250:301-315(1998);及びRomano et al.,Mol.and Cell.Bio.18:7304-7316(1998))。ワクシニアウイルスのK3L遺伝子は、PKRの偽基質であるpK3をコードしている。eIF-2の残基79~83に相同であるK3Lタンパク質のC末端部分内のトランケーションまたは点突然変異は、PKR阻害活性を無効化する(Kawagishi-Kobayashi et al.,Mol.Cell.Biology 17:4146-4158(1997))。
【0018】
別の例は、E1A領域に24塩基対の欠失を有する変異型アデノウイルスであるデルタ24ウイルスである(Fueyo et al.,Oncogene 19(1):2-12(2000))。この領域は、細胞腫瘍抑制因子Rbと結合してRbの機能を阻害する役割を果たし、それによって細胞増殖機構、ひいてはウイルス複製が制御されない形で進行することを可能とする。デルタ24はRb結合領域に欠失があるため、Rbに結合しない。したがって、この変異ウイルスの複製は、正常細胞ではRbによって阻害される。しかしながら、Rbが不活性化され、細胞が腫瘍性になると、デルタ24は阻害されなくなる。代わりに、変異ウイルスは効率的に複製し、Rb欠損細胞を溶解する。
【0019】
さらに、水疱性口内炎ウイルス(VSV)は腫瘍細胞を選択的に殺滅する。リボヌクレオチドレダクターゼ発現が欠損した単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)変異体hrR3は、結腸癌細胞で複製するが、正常な肝細胞では複製しない(Yoon et al.,FASEB J.14:301-311(2000))。ニューカッスル病ウイルス(NDV)は悪性細胞で選択的に複製し、最も一般的に使用される株は73-Tである(Reichard et al.,J.Surgical Research 52:448-453(1992);Zorn et al.,Cancer Biotherapy 9(3):22-235(1994);Bar-Eli et al.,J.Cancer Res.Clin.Oncol.122:409-415(1996))。ワクシニアウイルスは、いくつかの悪性腫瘍細胞株で増殖する。脳炎ウイルスは、マウス肉腫腫瘍に腫瘍溶解効果を有するが、正常細胞での感染力を低下させるためには弱毒化が必要な場合がある。帯状疱疹、肝炎ウイルス、インフルエンザ、水痘、及びはしかウイルスに感染した腫瘍患者で腫瘍の退縮が報告されている(レビューについては、Nemunaitis,J.Invest.New Drugs 17:375-386(1999)を参照)。
【0020】
場合により、腫瘍溶解性ウイルスは、レオウイルスシグマ1タンパク質を含む改変された非レオウイルスウイルスであり、レオウイルスシグマ1タンパク質は、非レオウイルスウイルスの天然付着タンパク質を置換し、改変ウイルスは、非レオウイルスウイルスの天然の付着タンパク質のいずれの部分も含まない。この改変された非レオウイルスウイルスでは、レオウイルスシグマ1タンパク質は、腫瘍へのインビボでの送達中、例えば全身送達中にウイルスを中和抗体から保護する担体細胞に付着する。非レオウイルスウイルスは、これらに限定されるものではないが、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、シンドビスウイルス、またはパラポックスウイルスであってよい。場合により、非レオウイルスウイルスの天然の付着タンパク質の完全長配列はレオウイルスシグマ1タンパク質に置き換えられる。ウイルスの天然付着タンパク質のレオウイルスシグマ1タンパク質への置換は、ウイルスがインビボ送達中に中和抗体からウイルスを保護する担体細胞に付着することを可能とする。レオウイルスシグマ1タンパク質については、例えば、参照によって本明細書にその全容を援用するWO2008/11004に記載されている。
【0021】
場合により、腫瘍溶解性ウイルスはレオウイルスである。レオウイルスとは、天然に存在するか、改変されているか、または組換え体であるかにかかわらず、レオウイルス属に分類される任意のウイルスを指す。レオウイルスは、二本鎖のセグメント化されたRNAゲノムを有するウイルスである。ビリオンの直径は60~80nmであり、それぞれが二十面体である2つの同心状のカプシドシェルを有している。ゲノムは、合計ゲノムサイズが16~27kbpである10~12個の個別のセグメントの二本鎖RNAで構成されている。個々のRNAセグメントはサイズが異なる。3つの異なるが関連するタイプのレオウイルスが多くの生物種から回収されている。したがって、レオウイルスは、哺乳動物レオウイルスまたはヒトレオウイルスであってよい。3つのタイプはすべて、共通の補体結合抗原を共有している。
【0022】
ヒトレオウイルスには、1型(Lang株またはT1L)、2型(Jones株、T2J)、及び3型(Dearing株またはAbney株、T3D)の3つの血清型が含まれる。3つの血清型は、中和及びヘマグルチニン阻害アッセイに基づいて容易に識別することができる。本開示によるレオウイルスは、3型哺乳動物オルソレオウイルスであってよい。3型哺乳動物オルソレオウイルスには、これらに限定されるものではないが、Dearing株とAbney株(それぞれT3DまたはT3A)が含まれる。例えば、ATCCアクセッション番号VR-232及びVR-824を参照されたい。例えば、参照により本明細書にその全容を援用する米国特許第6,110,461号、同第6,136,307号、同第6,261,555号、同第6,344,195号、同第6,576,234号、及び同第6,811,775号を参照されたい。
【0023】
場合により、提供される方法には、変異を有するレオウイルスの使用が含まれる。例えば、本明細書に記載の変異レオウイルスは、参照によって本明細書にその全容を援用する米国公開第2008/0292594号に記載されるようなシグマ3ポリペプチドの発現を低減もしくは本質的に消失させるか、または機能的なシグマ3ポリペプチドの欠失をもたらす変異を含むことができる。シグマ3ポリペプチドの発現を消失させるかまたは機能的なシグマ3ポリペプチドの欠失をもたらす変異は、シグマ3ポリペプチドをコードする核酸(すなわちS4遺伝子)内、またはシグマ3ポリペプチドの発現もしくは機能を調節するポリペプチドをコードする核酸内にあってよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、シグマ3ポリペプチドの発現を減少させる突然変異とは、野生型のシグマ3ポリペプチドのレベルを発現するレオウイルスと比較して、少なくとも30%(例えば、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%)のシグマ3ポリペプチドの量の減少をもたらす変異を指す。本明細書で使用する場合、シグマ3ポリペプチドの発現を本質的に消失させる変異とは、野生型レオウイルスが産生するシグマ3ポリペプチドの量に対して、少なくとも95%(例えば、96%、97%、98%、99%、または100%)のシグマ3ポリペプチドの量の減少をもたらす変異を指す。本明細書で使用する場合、機能的なシグマ3ポリペプチドの減少または消失をもたらす変異とは、シグマ3ポリペプチドの発現は可能とするが、ウイルスカプシドに集合または組み込むことができないシグマ3ポリペプチドを生じる変異を指す。変異レオウイルスが増殖する能力を維持するには、シグマ3ポリペプチドが他の機能(例えば、RNAに結合する能力)を維持することが望ましい、または必要となり得る点は理解されよう。
【0025】
本明細書に記載されるシグマ3ポリペプチドの変異は、変異を含まないシグマ3ポリペプチド(例えば、野生型シグマ3ポリペプチド)と比較して減少したレベルでカプシドに組み込まれるシグマ3ポリペプチドを生じることができる。本明細書に記載されるシグマ3ポリペプチドの変異はまた、ウイルスカプシドに組み込まれ得ないシグマ3ポリペプチドを生じることもできる。任意の特定の機構に束縛されるものではないが、シグマ3ポリペプチドは、例えば、シグマ3ポリペプチドとミュー1ポリペプチドが適切に結合できないことにより、またはシグマ3ポリペプチドのカプシドへの組み込みを低減もしくは阻止するコンフォメーション変化により、機能が低下するかまたは機能を喪失する可能性がある。
【0026】
シグマ3ポリペプチドの発現を無効化するかもしくは減少させる、または機能不全もしくは機能低下したシグマ3ポリペプチドを生じる変異に加えて、本明細書に記載される変異レオウイルスは、他のレオウイルスカプシドポリペプチド(例えば、ミュー1、ラムダ2、及び/またはシグマ1)の1つに1つ以上のさらなる変異(例えば、第2、第3、または第4の変異)を有することができる。シグマ3ポリペプチドに影響を与える変異、及び場合により、他の外側カプシドタンパク質のいずれかまたはすべてにさらなる変異を含むレオウイルスは、そのような変異レオウイルスが細胞に感染して細胞の溶解を引き起こす能力についてスクリーニングすることができる。例えば、野生型レオウイルスによる溶解に耐性のある腫瘍性細胞を使用して、本明細書に記載の効果的な変異レオウイルスをスクリーニングすることができる。
【0027】
例えば、さらなる突然変異によって、ミュー1ポリペプチドの発現を低減または本質的に消失させるか、または機能的なミュー1ポリペプチドの欠失をもたらすことができる。M2遺伝子によってコードされるミュー1ポリペプチドは、細胞透過に関与していると考えられ、転写酵素の活性化に役割を担っていると考えられる。各ビリオンには、約600コピーのミュー1ポリペプチドが含まれ、これはシグマ3ポリペプチドとの1:1の複合体の形で存在する。ミュー1ポリペプチドはそのN末端がミリストイル化された後、ミリストイル化されたN末端の42残基が切断され、C末端フラグメント(ミュー1C)を生じる。上記に加えて、または上記に代えて、さらなる変異によって、ラムダ2ポリペプチドの発現を低減もしくは本質的に消失させるかまたは機能的なラムダ2ポリペプチドの欠失をもたらすことができ、及び/またはさらなる突然変異によって、シグマ1ポリペプチドの発現を低減または本質的に消失させるかまたは機能的なシグマ1ポリペプチドの欠失をもたらすことができる。ラムダ2ポリペプチドはL2遺伝子によってコードされ、粒子の集合に関与し、グアニリルトランスフェラーゼ及びメチルトランスフェラーゼ活性を示す。シグマ1ポリペプチドはS1遺伝子によってコードされ、細胞の付着に関与し、ウイルスのヘマグルチニンとして機能する。
【0028】
場合により、レオウイルスは、1つ以上のアミノ酸改変を有するラムダ3ポリペプチド、1つ以上のアミノ酸改変を有するシグマ3ポリペプチド、1つ以上のアミノ酸改変を有するミュー1ポリペプチド、1つ以上のアミノ酸改変を有するミュー2ポリペプチド、またはそれらの任意の組み合わせを有する。例えば、参照によって本明細書にその全容を援用する米国第12/046,095号に記載されるように、レオウイルスは、1つ以上のアミノ酸改変を有するラムダ3ポリペプチド、1つ以上のアミノ酸改変を有するシグマ3ポリペプチド、1つ以上のアミノ酸改変を有するミュー1ポリペプチド、及び/または1つ以上のアミノ酸改変を有するミュー2ポリペプチドを有する。例として、ラムダ3ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸改変は、GenBankアクセッション番号M24734.1(配列番号23)に対して番号付けした場合に、残基214のVal、残基267のAla、残基557のThr、残基755のLys、残基756のMet、残基926のPro、残基963のPro、残基979のLeu、残基1045のArg、残基1071のVal、またはそれらの任意の組み合わせである。アミノ酸配列の残基214がValまたは残基1071がValである場合、このアミノ酸配列は、アミノ酸配列内に少なくとも1つのさらなる変更をさらに含む点に留意されたい。場合により、ラムダ3ポリペプチドは、配列番号19に示される配列を含む。さらに例として、シグマ3ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸改変は、GenBankアクセッション番号K02739(配列番号25)に対して番号付けした場合に残基14のLeu、残基198のLys、またはそれらの任意の組み合わせである。アミノ酸配列の残基14がLeuである場合、このアミノ酸配列は、アミノ酸配列内に少なくとも1つのさらなる変更をさらに含む点に留意されたい。場合により、シグマ3ポリペプチドは、配列番号15に示される配列を含む。さらに例として、ミュー1ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸改変は、GenBankアクセッション番号M20161.1(配列番号27)に対して番号付けした場合に残基73のAspである。場合により、ミュー1ポリペプチドは、配列番号17に示される配列を含む。さらに例として、ミュー1ポリペプチドのアミノ酸改変は、GenBankアクセッション番号AF461684.1(配列番号29)に対して番号付けした場合に、残基528のSerである。場合により、ミュー1ポリペプチドは、配列番号17に示される配列を含む。1つ以上の改変を有する本明細書に記載のレオウイルスは、レオウイルスシグマ2ポリペプチドをさらに含むことができる。そのようなシグマ2ポリペプチドは、GenBankアクセッション番号NP_694684.1(配列番号30)に対して番号付けした場合に、70、127、195、241、255、294、296、または340位のうちの1つ以上にCysを有する。場合により、シグマ2ポリペプチドは、配列番号12に示される配列を含む。
【0029】
場合により、レオウイルスは、1つ以上の核酸改変を含むL1ゲノムセグメント、1つ以上の核酸改変を含むS4ゲノムセグメント、1つ以上の核酸改変を含むM1ゲノムセグメント、1つ以上の核酸改変を含むM2ゲノムセグメント、またはそれらの任意の組み合わせを含む。場合により、参照によって本明細書にその全容を援用するWO2008/110004に記載されるように、レオウイルスは、1つ以上の核酸改変を有するL1ゲノムセグメント、1つ以上の核酸改変を有するS4ゲノムセグメント、1つ以上の核酸改変を有するM1ゲノムセグメント、及び/または1つ以上の核酸改変を含むM2ゲノムセグメントを含む。例として、L1ゲノムセグメント内の1つ以上の核酸改変は、GenBankアクセッション番号M24734.1(配列番号22)に対して番号付けした場合に、660位のT、817位のG、1687位のA、2283位のG、2284~2286位のATG、2794位のC、2905位のC、2953位のC、3153位のA、または3231位のGである。場合により、L1ゲノムセグメントは、配列番号8に示される配列を含む。さらに例として、S4ゲノムセグメント内の1つ以上の核酸改変は、GenBankアクセッション番号K02739(配列番号24)に対して番号付けした場合に、74位のA及び624位のAである。場合により、S4ゲノムセグメントは、配列番号4に示される配列を含む。さらに例として、M2ゲノムセグメント内の核酸改変は、GenBankアクセッション番号M20161.1(配列番号26)に対して番号付けした場合に248位のCであってよい。M2ゲノムセグメントは、例えば配列番号6に示される配列を含む。やはり例として、M1ゲノムセグメント内の核酸改変は、GenBankアクセッション番号AF461684.1(配列番号28)に対して番号付けした場合に1595位のTである。場合により、M1ゲノムセグメントは配列番号5に示される配列を含む。本明細書に記載のレオウイルスは、本明細書に開示される任意の改変または改変の組み合わせを含むことができる。場合により、本明細書に記載のレオウイルスは、配列番号1~10に示される配列を有するゲノムセグメント、または配列番号11、12、及び16~21、ならびに配列番号13または14の一方もしくは両方に示されるポリペプチドを含む。場合により、本明細書に開示されるレオウイルスは、カナダ国際寄託機関(IDAC、カナダ公衆衛生庁、国立微生物学研究所、1015 Arlington St.,Winnipeg,Manitoba Canada R3E 3R2)に2007年9月19日に寄託されたIDACアクセッション番号190907-01として識別される。
【0030】
シンドビスウイルス(SIN)を本明細書に記載の方法で使用することができる。シンドビスウイルスは、トガウイルス科のアルファウイルス属のメンバーである。シンドビスウイルスのゲノムは、11703個のヌクレオチドからなる一本鎖RNAであり、5’末端がキャップされ、3’末端がポリアデニル化されている。ゲノムは、49Sの非翻訳領域(UT)、非構造タンパク質nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4と、それに続くプロモーターで構成されている。プロモーターの後には、26SのUT、構造タンパク質C、E3、E2、6K、及びE1が続き、最後に3’UTとポリアデニル化末端が続く。ゲノムの49SRNAはプラスセンスであり、感染性があり、感染細胞のmRNAとして機能する。
【0031】
シンドビスベクターはインビボで全身性かつ特異的に転移腫瘍に感染/検出して殺滅し、腫瘍増殖及び高い生存率を有意に抑制する(Hurtado et al.,Rejuvenation Res.9(1):36-44(2006))。シンドビスウイルスは、正常細胞に対して腫瘍細胞で上昇しているMr67,000ラミニン受容体を利用して哺乳類細胞に感染する。ラミニン受容体の腫瘍での過剰発現は、シンドビスベクターがインビボで腫瘍細胞に対して示す特異性及び有効性を説明することができる。シンドビスは、がん細胞を標的とするための遺伝子操作を行う必要はなく、腫瘍に直接注射する必要もない。シンドビスは、対象のどこに注射しても血流によって標的区域へと移動する(Tseng et al.,Cancer Res.64(18):6684-92(2004))。シンドビスは、ウイルスに対する免疫応答を抑制する1つ以上の遺伝子、及び/または例えばインターロイキン12及びインターロイキン15遺伝子のような抗腫瘍サイトカイン遺伝子などの腫瘍に対する免疫応答を刺激する遺伝子を有するように遺伝子操作することもできる。
【0032】
ウイルスは、腫瘍性細胞に投与する前に、化学的または生化学的に前処理することができる(例えば、キモトリプシンまたはトリプシンなどのプロテアーゼによる処理により)。プロテアーゼによる前処理は、ウイルスの外皮またはカプシドを除去してウイルスの感染力を高めることができる。ウイルスは、ウイルスに対する免疫を発達させた哺乳動物からの免疫応答を減少または防止するためにリポソームまたはミセルでコーティングすることができる(Chandran and Nibert,J.of Virology 72(1):467-75(1998))。例えば、ビリオンを、ミセル形成濃度のアルキルサルフェート界面活性剤の存在下でキモトリプシンで処理することで新たな感染性サブビリオン粒子を生成することができる。腫瘍溶解性ウイルスは、再集合ウイルスまたはISVPであってもよい。
【0033】
腫瘍溶解性ウイルスは、組換え腫瘍溶解性ウイルスであってもよい。例えば、組換え腫瘍溶解性ウイルスは、本明細書では再集合体とも呼ばれる、2種以上の遺伝子的に異なる腫瘍溶解性ウイルスからのゲノムセグメントの再集合により生じる。腫瘍溶解性ウイルスのゲノムセグメントの再集合は、少なくとも2種の遺伝子的に異なる腫瘍溶解性ウイルスによる宿主生物の感染後に生じ得る。組換えウイルスはまた、例えば、遺伝子的に異なる腫瘍溶解性ウイルスによる許容宿主細胞の同時感染によって、細胞培養で生成することもできる。場合により、方法は、2種以上の遺伝子的に異なる腫瘍溶解性ウイルスからのゲノムセグメントの再集合から生じる組換え腫瘍溶解性ウイルスの使用を含み、少なくとも1つの親ウイルスは、遺伝子操作されるか、1つ以上の化学的に合成されたゲノムセグメントを含むか、化学的もしくは物理的変異原で処理されているか、またはそれ自体が組換えイベントの結果生じたものである。場合により、方法は、硫酸ジメチル及び臭化エチジウムを含むがこれらに限定されない化学的変異原、または紫外線及び他の形態の放射線を含むがこれらに限定されない物理的変異原の存在下で組換えを起こした組換え腫瘍溶解性ウイルスの使用を含む。
【0034】
場合により、方法は、1つ以上のゲノムセグメントにおける挿入、置換、欠失または重複を含む変異を有する腫瘍溶解性ウイルスの使用を含む。そのような変異は、宿主細胞ゲノムとの組換えの結果としてのさらなる遺伝情報を含むことができ、または、例えば、抗ウイルス免疫応答を抑制する薬剤をコードする遺伝子などの合成遺伝子を含むことができる。
【0035】
場合により、腫瘍溶解性ウイルスは、変異腫瘍溶解性ウイルスである。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、例えば、ビリオン外殻カプシドへの変異コートタンパク質の組み込みによって改変することができる。変異腫瘍溶解性ウイルスは、場合により、変異レオウイルスである。明細書に記載の変異レオウイルスは、参照によって本明細書にその全容を援用する米国公開第2008/0292594号に記載されるようなシグマ3ポリペプチドの発現を低減もしくは本質的に消失させるか、または機能的なシグマ3ポリペプチドの欠失をもたらす変異を含むことができる。場合により、提供される方法で使用される変異レオウイルスは、参照によって本明細書にその全容を援用する米国特許第7,803,385号に記載されるように変異される。
【0036】
本明細書で言うところの突然変異は、1つ以上のヌクレオチドの置換、挿入または欠失であってよい。点突然変異には、例えば、単一ヌクレオチドの転位(プリンからプリン、またはピリミジンからピリミジン)または転換(プリンからピリミジン、またはその逆)、及び単一または複数のヌクレオチドの欠失もしくは挿入が含まれる。核酸内の変異は、コードされたポリペプチド内の1つ以上の保存的または非保存的アミノ酸置換を生じ得るが、これは、コンフォメーション変化または機能の喪失もしくは部分的喪失、その点からコードされた完全に異なるポリペプチドを生じる、翻訳のリーディングフレームのシフト(フレームシフト)、短縮されたポリペプチドを生じる未成熟終止コドン(トランケーション)を生じる場合もあり、またはウイルス核酸内の変異は、コードされたポリペプチドをまったく変化させない場合もある(サイレントまたはナンセンス)。保存的及び非保存的アミノ酸置換に関する開示については、例えば、Johnson and Overington,1993,J.Mol.Biol.233:716-38;Henikoff and Henikoff,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-19;及び米国特許第4,554,101号明細書を参照されたい。
【0037】
当該技術分野では周知の任意の数の方法を使用して、腫瘍溶解性ウイルスの核酸に変異を生じることができる。例えば、部位特異的変異誘発を用いてレオウイルスの核酸配列を改変することができる。部位特異的変異誘発の最も一般的な方法の1つは、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発である。オリゴヌクレオチド特異的変異誘発では、所望の変化(複数可)を順番にコードするオリゴヌクレオチドが、対象とするDNAの1つの鎖にアニーリングされて、DNA合成を開始するためのプライマーとして機能する。このようにして、配列変化を含むオリゴヌクレオチドが、新たに合成される鎖に組み込まれる。例えば、Kunkel,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488;Kunkel et al.,1987,Meth.Enzymol.154:367;Lewis and Thompson,1990,Nucl.Acids Res.18:3439;Bohnsack,1996,Meth.Mol.Biol.57:1;Deng and Nickoloff,1992,Anal.Biochem.200:81;及びShimada,1996,Meth.Mol.Biol.57:157を参照。他の方法も、タンパク質またはポリペプチドの配列を改変するために当該技術分野で日常的に使用されている。例えば、変異を含む核酸は、PCRまたは化学合成を使用して生成することができ、またはアミノ酸配列に所望の変化を有するポリペプチドを化学的に合成することもできる。例えば、Bang and Kent,2005,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:5014-9及びその中の文献を参照されたい。
【0038】
ウイルスは、標準的な方法を使用して精製することができる。例えば、参照によって本明細書にその全容を援用するところのSchiff et al.,“Orthoreoviruses and Their Replication,”Ch 52,in Fields Virology,Knipe and Howley,eds.,2006,Lippincott Williams and Wilkins;Smith
et al.,1969,Virology 39(4):791-810;ならびに米国特許第7,186,542号、同第7,049,127号、同第6,808,916号、及び同第6,528,305号を参照されたい。本明細書で使用する場合、精製ウイルスとは、ウイルスに天然で付随する細胞成分から分離されたウイルスを指す。通常、ウイルスは、乾燥重量で少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%)が、天然で付随しているタンパク質及び他の細胞成分を含まない場合に精製されたとみなされる。
【0039】
提供される方法は、対象に1つ以上のさらなる薬剤を投与することを含む。場合により、さらなる薬剤は化学療法剤である。場合により、さらなる薬剤はがん免疫療法剤である。化学療法剤には、これらに限定されるものではないが、アルキル化剤、アントラサイクリン、タキサン、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、モノクローナル抗体、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体、ペプチド抗生物質、白金系化合物、レチノイド、及びビンカアルカロイド及び誘導体が含まれる。がん免疫療法で使用される薬剤は、免疫系を刺激して、対象の免疫系ががんと戦うことを助ける薬剤である。がん免疫療法剤としては、樹状細胞及びCAR-T細胞などの細胞、サイトカイン、及び抗体が挙げられる。場合により、がん免疫療法剤は免疫チェックポイント阻害剤である。場合により、免疫チェックポイント阻害剤は抗体である。全体を通じて述べるように、さらなる薬剤、例えば、化学療法剤またはがん免疫療法剤の投与は、対象への複数のさらなる薬剤の投与、すなわち、さらなる薬剤の組み合わせの投与を含み得る。
【0040】
本明細書で使用する場合、免疫チェックポイント阻害剤とは、免疫阻害チェックポイントタンパク質を阻害する任意の化合物を指す。阻害は、タンパク質の機能の低下または機能の完全な阻止であり得る。場合により、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質を特異的に認識する抗体であり得る。免疫チェックポイント阻害剤は周知のものであり、ペプチド、抗体、核酸分子及び小分子が含まれる。免疫チェックポイントとは、シグナルを増強する(刺激性チェックポイント分子)か、またはシグナルを減少させる(抑制性チェックポイント分子)、T細胞によって発現される分子を指す。免疫チェックポイント分子は、CTLA-4及びPD-1依存性経路と同様の免疫チェックポイント経路を構成することが知られている(例えば、Pardoll,2012 Nature Rev Cancer 12:252-264;Mellman et al,2011.Nature 480:480-489を参照)。阻害チェックポイント分子の例としては、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、CD277、IDO、KIR、PD-1、LAG-3、TIM-3、及びVISTAが挙げられる。
【0041】
抗CTLA-4抗体の例は、米国特許第5,811,097号、同第5,811,097号、同第5,855,887号、同第6,051,227号、同第6,207,157号、同第6,682,736号、同第6,984,720号、及び同第7,605,238号に記載されている。例えば、CTLA-4抗体には、トレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675206)及びイピリムマブ(10D1、MDX-D010としても知られる)が含まれる。
【0042】
PD-1及びPD-L1抗体の例は、米国特許第7,488,802号、同第7,943,743号、同第8,008,449号、同第8,168,757号、同第8,217,149号、ならびにPCT特許出願公開第WO03042402号、同第WO2008156712号、同第WO2010089411号、同第WO2010036959号、同第WO2011066342号、同第WO2011159877号、同第WO2011082400号、及び同第WO2011161699号に記載されている。PD-1阻害剤には、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体が含まれる。PD-1及びPD-L1阻害剤の例としては、ニボルマブ(MDX1106、BMS936558、ONO4538)、ラムブロリズマブ(MK-3475またはSCH900475)、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、及びセミプリマブが挙げられる。
【0043】
他の免疫チェックポイント阻害剤としては、可溶性Ig融合タンパク質であるIMP321などのリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)阻害剤が挙げられる(Brignone et al,2007,J.Immunol.179:4202-4211)。免疫チェックポイント阻害剤としては、B7-H3及びB7-H4阻害剤などのB7阻害剤が挙げられる。B7阻害剤として、抗B7-H3抗体MGA271が挙げられる(Loo et al,2012,Clin.Cancer Res.July 15(18)3834)。
【0044】
場合により、免疫チェックポイント阻害剤はIDO阻害剤である。IDO阻害剤の例は、WO2014150677に記載されている。IDO阻害剤の例としては、1-メチル-トリプトファン(IMT)、β-(3-ベンゾフラニル)-アラニン、β-(3-ベンゾ(b)チエニル)-アラニン)、6-ニトロ-トリプトファン、6-フルオロ-トリプトファン、4-メチル-トリプトファン、5-メチルトリプトファン、6-メチル-トリプトファン、5-メトキシ-トリプトファン、5-ヒドロキシ-トリプトファン、インドール3-カルビノール、3,3’-ジインドリルメタン、エピガロカテキンガレート、5-Br-4-Cl-インドキシル 1,3-ジアセテート、9-ビニルカルバゾール、アセメタシン、5-ブロモ-トリプトファン、5-ブロモインドキシルジアセテート、3-アミノ-ナフト酸、ピロリジンジチオカルバメート、4-フェニルイミダゾール、ブラシニン誘導体、チオヒダントイン誘導体、β-カルボリン誘導体またはブラジレキシン誘導体が挙げられる。場合により、IDO阻害剤は、1-メチル-トリプトファン、β-(3-ベンゾフラニル)-アラニン、6-ニトロ-L-トリプトファン、3-アミノ-ナフトエ酸、及びβ-[3-ベンゾ(b)チエニル]-アラニン、またはそれらの誘導体もしくはプロドラッグから選択される。
【0045】
アルキル化剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、テトラジン、アジリジン、シスプラチン及び誘導体、ならびに非古典的アルキル化剤が含まれる。アルキル化剤の具体例としては、これらに限定されるものではないが、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イフォスファミド、ブスルファン、N-ニトロソ-N-メチル尿素(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(MeCCNU)、フォテムスチン、ストレプトゾトシン、ダカルバジン、ミトゾロミド、テモゾロミド、チオテパ、ミトマイシン、ジアジクオン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン及びヘキサメチルメラミンが挙げられる。
【0046】
他の例示的な化学療法剤としては、これらに限定されるものではないが、5-フルオロウラシル、マイトマイシンC、メトトレキサート、ヒドロキシ尿素、ミトキサントロン、アントラサイクリン(例えば、エピルビシン及びドキソルビシン)、受容体に対する抗体(例えば、ハーセプチン、エトポシド、プレグナソーム)、ホルモン療法(例えば、タモキシフェン及び抗エストロゲン)、インターフェロン、アロマターゼ阻害剤、プロゲステロン剤、及びLHRH類似体が挙げられる。適当なアロマターゼ阻害剤としては、これらに限定されるものではないが、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン、ファドロゾール、テストラクトン、アミノグルテチミド、1,4,6-アンドロスタトリエン-3,17-ジオン、及び4-アンドロステン-3,6,17-トリオンが挙げられる。
【0047】
本明細書は、1つ以上の腫瘍溶解性ウイルスを含む医薬組成物を提供する。本明細書は、1つ以上の化学療法剤を含む医薬組成物も提供する。場合により、医薬組成物は、1つ以上の腫瘍溶解性ウイルスと1つ以上の化学療法剤とを含む。したがって、提供される組成物は、単一の薬剤または複数の薬剤を含むことができる。
【0048】
本明細書で提供される組成物は、薬学的に許容される担体中でインビトロまたはインビボで投与される。薬学的に許容される担体は、レオウイルスのビヒクル、担体、または培地として機能することができる固体、半固体、または液体の材料であり得る。したがって、腫瘍溶解性ウイルス及び/または1つ以上の提供される薬剤を含有する組成物は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ、サシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ剤、エアロゾル(固体としてまたは液体媒体中)、例えば10重量%以下の活性化合物を含む軟膏、ソフト及びハードゼラチンカプセル、坐剤、滅菌注射用溶液、及び滅菌封入粉末剤の形態とすることができる。
【0049】
場合により、腫瘍溶解性ウイルスを含有する組成物は、注入に適している。静脈内注入の場合、一般的に使用される液体には、晶質液及びコロイドの2種類がある。晶質液は、ミネラル塩または他の水溶性分子の水溶液である。コロイドはゼラチンなどのより大きな不溶性分子を含む。血液はそれ自体コロイドである。最も一般的に使用される晶質液は、通常の生理食塩水であり、血中濃度に近い(等張)濃度0.9%の塩化ナトリウム溶液である。乳酸リンゲル液または酢酸リンゲル液は、大量の補液によく使用される別の等張液である。しばしばD5Wとも呼ばれるデキストロースの5%水溶液は、患者が低血糖または高ナトリウムを有するリスクがある場合にしばしば代わりに使用される。
【0050】
適当な担体のいくつかの例としては、リン酸緩衝生理食塩水または別の生理学的に許容される緩衝溶液、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ剤、及びメチルセルロースが挙げられる。医薬組成物はさらに、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油などの潤滑剤、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、例えば、メチルベンゾエート及びプロピルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤、甘味剤、ならびに着香剤を含むことができるが、これらに限定されない。医薬組成物は、当該技術分野では周知の手順を使用することにより、投与後の変異レオウイルスの迅速な放出、持続的な放出、または遅延した放出を与えるように配合することができる。以下に記載する代表的な製剤以外に医薬組成物で使用するための他の適当な製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 22d edition Loyd V.Allen et al,editors,Pharmaceutical Press(2012)にみられる。錠剤などの固体組成物を調製するには、変異レオウイルスを医薬担体と混合して固体組成物を形成することができる。場合により、錠剤または丸剤は、コーティングまたは他の形で配合して、長期作用の利点を有する剤形を提供することができる。例えば、錠剤または丸剤は、内側投与成分及び外側投与成分を含めることができ、後者は前者を被覆するエンベロープの形態である。これら2つの成分は、胃での分解に耐えるように機能して、内側成分が完全な状態で十二指腸に入るかまたは遅延放出されることを可能にする腸溶層によって分離することができ、このような腸溶層またはコーティングには種々の材料を用いることができ、このような材料としては、多くのポリマー酸、及びポリマー酸とセラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースなどの材料との混合物が挙げられる。
【0051】
経口投与用または注射用のレオウイルス及び/または薬剤を含む液体製剤には一般的に、水溶液、好ましく風味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、及びコーン油、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、またはピーナッツ油などの食用油で風味付けされたエマルション、ならびにエリキシル剤及び同様の医薬用ビヒクルが含まれる。
【0052】
吸入または吹送用の組成物には、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒、またはこれらの混合物中の溶液及び懸濁液、及び粉末が含まれる。これらの液体または固体組成物は、本明細書に記載されるような、適当な薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。そのような組成物は、局所的または全身的な効果を得るために経口または経鼻呼吸経路によって投与することができる。薬学的に許容される溶媒中の組成物を、不活性ガスを用いて噴霧してもよい。噴霧された溶液は噴霧装置から直接吸入してもよいし、または噴霧装置をフェイスマスクテントまたは間欠的陽圧呼吸機に取り付けてもよい。溶液、懸濁液、または粉末の組成物は、適当な形で製剤を送達する装置から経口的または経鼻的に投与することができる。
【0053】
本開示の方法で場合により用いられる別の製剤は、経皮送達装置(例えば、パッチ)を含む。そのような経皮パッチを使用することで、本明細書に記載されるウイルス及び薬剤の連続的または非連続的な注入を行うことができる。医薬品を送達するための経皮パッチの構成及び使用は当該技術分野では周知のものである。例えば、米国特許第特許第5,023,252号を参照されたい。そのようなパッチは、変異レオウイルスの継続的、パルス的、またはオンデマンドの送達用に構成することができる。
【0054】
上記で述べたように、ウイルス及び/または他の薬剤は、必要に応じてリポソームまたはミセルでコーティングすることで、ウイルスまたは薬剤に対する免疫を発達させた哺乳動物における免疫応答を低減または防止することができる。このような組成物は、免疫保護されたウイルスまたは薬剤と呼ばれる。例えば、米国特許第6,565,831号、及び同第7,014,847号を参照されたい。
【0055】
提供される方法において、腫瘍溶解性ウイルスは、最終的に標的腫瘍または腫瘍細胞に到達できるような形で例えば全身的に投与される。ウイルスが投与される経路、及び製剤、担体またはビヒクルは、標的細胞の場所及びタイプに応じて決められる。さまざまな投与経路を用いることができる。例えば、アクセス可能な固形腫瘍の場合、ウイルスは腫瘍に直接注射することによって投与することができる。例えば、造血器腫瘍の場合、例えば、ウイルスは静脈内または血管内に投与することができる。転移など、体内で容易にアクセスできない腫瘍の場合、ウイルスは、哺乳動物の体内を全身的に輸送され、それによって腫瘍に到達できるように(例えば、静脈内または筋肉内に)投与される。あるいは、ウイルスを単一の固形腫瘍に直接投与することもでき、そこでウイルスは体内を通じて転移へと運ばれる。ウイルスはまた、皮下、腹腔内、髄腔内または脳室内(例えば、脳腫瘍の場合)、局所(例えば、黒色腫の場合)、経口(例えば、口腔または食道癌の場合)、直腸(例えば、結腸直腸癌の場合)、膣内(例えば、子宮頸部または膣癌の場合)、経鼻的、吸入スプレーまたはエアロゾル製剤(例えば、肺癌の場合)により投与することもできる。
【0056】
場合により、ウイルスは、最初のラウンドまたはその後のラウンドの治療の間の一定期間、少なくとも1日1回連続して、または連続した各日において1日を通じて断続的または連続して対象に投与される。したがって、ウイルスは、例えば、薬理学的に許容される任意の溶液中での静脈内投与によって、または一定期間にわたる注入として対象に投与される。例えば、物質は、注射(例えば、筋肉内または皮下)により全身投与するか、または少なくとも1日1回毎日経口で服用するか、または対象の組織または血流に毎日送達されるような形で注入により投与することができる。ウイルスが一定期間にわたって注入により投与される場合、その期間は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、または24時間、または1~24時間の間の任意の時間、またはそれ以上の時間である。場合により、期間は、5、15、30、60、90、120、150または180分間、または5~180分の間の任意の時間、またはそれ以上である。したがって、例えば、ウイルスは、60分間の注入により投与される。投与は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、14、21、28日間、または2~28日の間、またはそれ以上の任意の日数の間、毎日繰り返すことができる。
【0057】
本明細書に開示されるウイルスは、がんまたは増殖性疾患の治療を行ううえで十分な量(すなわち、有効量)で投与される。がんまたは増殖性疾患は、ウイルスを含む治療レジメンの増殖細胞への投与が疾患細胞の溶解(例えば、腫瘍溶解)を引き起こす場合に治療され、その結果、異常増殖細胞の数の減少、新生物のサイズの縮小、及び/または増殖性疾患に関連する症状(例えば、痛み)の軽減もしくは消失をもたらす。本明細書で使用する場合、腫瘍溶解という用語は、増殖細胞の少なくとも10%(例えば、細胞の少なくとも約20%、30%、40%、50%、または75%が溶解する)が溶解されることを意味する。溶解の割合(%)は、例えば、新生物のサイズまたは哺乳動物内の増殖細胞の数の減少を測定することによって、または(例えば、増殖細胞からの生検から)細胞の溶解量をインビトロで測定することによって求めることができる。治療レジメンで使用されるウイルスの有効量は個人別に決定され、使用される特定のウイルス、個人のサイズ、年齢、性別、ならびに異常増殖細胞のサイズ及びその他の特性に少なくとも部分的に基づいたものとすることができる。例えば、ヒトの治療では、存在する増殖細胞または新生物の種類、サイズ及び数に応じて、約10~1012プラーク形成単位(PFU)のウイルスが使用される。有効量は、例えば、約1.0PFU/kg(体重)~約1015PFU/kg(体重)(例えば、約10PFU/kg(体重)~約1013PFU/kg(体重))とすることができる。場合により、有効量は、約1×10~約1×1012PFUまたはTCID50である。場合により、有効量は、約3×1010~約1×1010TCID50である。
【0058】
ウイルス及び治療薬の最適な投与量、ならびにウイルス及び薬剤を含む組成物及びキットは、さまざまな要因に応じて決められる。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、重量及び一般的状態、治療される疾患の重症度、特定のウイルス及びその投与方法に応じて対象ごとに異なる。したがって、すべての組成物またはキットについて正確な量を指定することは可能ではない。しかしながら、適当な量は、本明細書に提供される手引きを考慮することで当業者によって通常の実験のみを用いて決定することができる。
【0059】
治療レジメンを投与するための有効な投与量及びスケジュールは、経験的に決定することができる。例えば、さまざまな増殖性疾患の動物モデルを、Jackson Laboratory,600 Main Street,Bar Harbor,Maine 04609 USAより得ることができる。直接的測定(例えば、腫瘍の組織学)及び機能的測定(例えば、対象の生存率または腫瘍のサイズ)の両方を用いて治療に対する反応を監視することができる。これらの方法は、集団を評価するために代表的な動物を犠牲にすることを含み、そのため、実験に必要な動物の数が増える。腫瘍内のルシフェラーゼ活性の測定は、動物を犠牲にすることなく腫瘍の体積を評価し、治療の長期的な集団ベースの分析を可能にする代替的な方法を提供する。組成物の投与のための投与量範囲は、疾患の症状に影響する所望の効果を生じるうえで十分な大きさのものである。投与量は、望ましくない交差反応及びアナフィラキシー反応などの有害な副作用を引き起こすほど大きいものであってはならない。投与量は、禁忌がある場合には個々の医師により調節することができる。
【0060】
投与量は変動し、例えば、1日または数日間にわたって毎日、1回以上の用量投与により投与される。提供されるウイルス及び治療薬は、単回用量または複数回用量(例えば、2回、3回、4回、6回、またはそれ以上の用量)で投与される。例えば、投与が注入によるものである場合、注入は、単一の持続用量としてもよく、または複数回の注入によって投与してもよい。治療は、数日間~数ヶ月間、または病気の軽減が達成されるまで継続することができる。
【0061】
提供される方法は、放射線療法、外科手術、ホルモン療法及び/または他の免疫療法などの他の腫瘍療法とさらに組み合わせることができる。適当なさらなる治療薬としては、これらに限定されるものではないが、鎮痛薬、麻酔薬、中枢興奮薬、コルチコステロイド、抗コリン作動薬、抗コリンエステラーゼ薬、抗けいれん薬、抗腫瘍薬、アロステリック阻害薬、アナボリックステロイド、抗リウマチ薬、精神治療薬、神経遮断薬、抗炎症薬、抗蠕虫薬、抗生物質、抗凝固薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、抗ムスカリン薬、抗マイコバクテリア薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、ドーパミン作動薬、血液作用薬、免疫薬、ムスカリン薬、プロテアーゼ阻害剤、ビタミン、成長因子、及びホルモンが挙げられる。薬剤及び投薬量の選択は、治療される特定の疾患に基づいて当業者が容易に決定することができる。
【0062】
提供されるウイルスと治療薬との組み合わせは、一緒に(例えば、混合物として)、別々にただし同時に(例えば、同じ対象への別々の静脈内ラインを介して)、または順次(例えば、化合物または薬剤の一方を最初に投与した後、2番目を投与)投与される。したがって、組み合わせという用語は、2つ以上の薬剤の一緒の、同時の、または順次の投与を指すために使用される。
【0063】
1つの化合物が別の化合物の前に投与される場合、第1の化合物は、第2の化合物の投与の数分、数時間、数日、または数週間前に投与される。例えば、第1の化合物は、第2の化合物の投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、24、36、48、60、もしくは72時間前、または1~72時間の間の任意の時間だけ前に投与することができる。場合により、第1の化合物は、第2の化合物の72時間超前に投与される。別の例として、第1の化合物は、第2の化合物の投与の1、5、15、30、60、90、120、150もしくは180分前、または1~180分の間の任意の時間だけ前に投与することができる。場合により、第1の化合物は、第2の化合物の投与の1、2、3、4、5、6、7、14、21、もしくは28日前、または1~28日の間の任意の日数だけ前に投与することができる。場合により、第1の化合物は、第2の化合物の28日超前に投与される。
【0064】
腫瘍溶解性ウイルスまたはそのようなウイルスを含む医薬組成物は、キットにパッケージングすることができる。キットは、1つ以上のさらなる薬剤またはさらなる薬剤を含む医薬組成物も含む。キットは、化学療法剤またはがん免疫療法剤を含んでもよい。場合により、キットは免疫チェックポイント阻害剤を含む。腫瘍溶解性ウイルス及び/またはさらなる薬剤ならびにそれらを含む医薬組成物は、1つ以上の容器にパッケージングすることができる。キットが医薬組成物を含む場合、医薬組成物は単位剤形として製剤化することができる。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物における単位投与量として適当な物理的に個別の単位を指し、各単位は、既定量の腫瘍溶解性ウイルスまたは他の薬剤、例えば、所望の治療効果を生じるように計算された免疫チェックポイント阻害剤を、適当な薬学的に許容される担体とともに含有する。場合により、キットはレオウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤を含む。
【0065】
提供されるキットの腫瘍溶解性ウイルスは、本明細書に記載の腫瘍溶解性ウイルスのいずれであってもよい。提供されるキットは、複数用量の腫瘍溶解性ウイルスを含むことができる。場合により、腫瘍溶解性ウイルスの各用量は、約10~1012プラーク形成単位(PFU)の腫瘍溶解性ウイルスを含む。場合により、各用量は、約10~1012PFUの腫瘍溶解性ウイルスを含む。場合により、各用量は、約10~1012TCID50の腫瘍溶解性ウイルスを含む。場合により、各用量は、約1×1010~3×1010TCID50の腫瘍溶解性ウイルスを含む。
【0066】
本明細書で使用する場合、治療、治療する、治療すること、または、改善するという用語は、疾患もしくは状態の影響、または疾患もしくは状態の症状を低減させる方法を指す。したがって、開示される方法において、治療とは、確立された疾患もしくは状態の重症度、または疾患もしくは状態の症状の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の低減または改善を指し得る。例えば、がんを治療するための方法は、対照と比較して、対象における疾患の1つ以上の症状が10%低減する場合に治療とみなされる。したがって、この低減は、天然の、または対照のレベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%の低減、または10~100%の間の任意の割合の低減であり得る。治療は、疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状の治癒または完全な消失を必ずしも指すものではない点は理解されよう。
【0067】
本明細書で使用する場合、対象という用語は、脊椎動物、より具体的には、哺乳動物(例えば、ヒト、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、非ヒト霊長類、ウシ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類)、魚類、鳥類、または爬虫類、または両生動物であり得る。この用語は、特定の年齢または性別を示さない。したがって、成人及び新生児対象は、男性か女性かに関わらず、包含されるものとする。本明細書で使用する場合、患者または対象は互換可能に使用することができ、疾患または障害を有する対象を指し得る。患者または対象という用語は、ヒト及び動物の対象を含む。
【0068】
開示される方法及び組成物に使用することができる、またはそれらとともに使用することができる、またはそれらの調製に使用することができる、またはそれらの産物である、材料、組成物、及び成分が開示される。これらの材料及び他の材料を本明細書に開示するが、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、これらの化合物のそれぞれ異なる個々の、及び集合的な組み合わせ及び順列の具体的な言及が明示的に開示されていない場合もあるが、それぞれは具体的に企図され、本明細書に記載されているものと理解される。例えば、ある阻害剤が開示及び検討され、この阻害剤をはじめとする多くの分子に対して行うことができる多くの改変が検討される場合、そうでない旨が具体的に示されていない限り、この阻害剤及び可能な改変のありとあらゆる組み合わせ及び順列が具体的に企図されているものである。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも具体的に企図され、開示される。この概念は、これに限定されるものではないが、開示される組成物を使用する方法における各工程を含む、本開示のすべての態様に適用される。したがって、実施することが可能なさまざまな追加の工程がある場合、これらの追加工程のそれぞれは、開示される方法のいずれの特定の方法工程または方法工程の組み合わせとともに実施することも可能である点、及びそれぞれのかかる組み合わせまたは組み合わせのサブセットが具体的に企図され、開示されているものとみなされるべきである点を理解されたい。
【0069】
本出願の全体を通じてさまざまな刊行物が参照されている。これらの刊行物の開示内容の全体を、参照によって本出願に援用するものである。
【0070】
多くの態様を記載した。それにもかかわらず、さまざまな改変を行い得る点は理解されよう。さらに、1つの特徴または工程が記載されている場合、たとえ組み合わせが明示的に記載されていない場合であっても、その特徴または工程は、本明細書における他の任意の特徴または工程と組み合わせることができる。したがって、他の態様は特許請求の範囲内にある。
【実施例0071】
実施例1.膵臓腺癌患者におけるペラレオレプ及び化学療法による治療時のT細胞レパートリーの分析
レオウイルス血清型3であるDearing株(ペラレオレプ)は、腫瘍溶解ならびに自然免疫応答及び適応免疫応答を誘導し、炎症性の表現型及び抗腫瘍活性をもたらすことが示されている非エンベロープ型のヒトレオウイルスである。第一選択治療後に進行した(治療を忍容しなかった)、進行した(切除不能または転移性の)組織学的に確認された膵臓腺癌の患者に、ペラレオレプ及び化学療法をペムブロリズマブと併用して用いた試験を行った。この研究は、ペムブロリズマブ及び、疾患が進行するまで治療サイクルでこのうちの1つを3週間ごとに反復した3つの化学療法バックボーンレジメンであるゲムシタビン、イリノテカン、またはロイコボリン/5-フルオロウラシル(5-FU)のうちの1つを、ペラレオレプの静脈内投与と併用することを特徴とする。
【0072】
実験計画:T細胞を、9人の被験者群においてC1D1及びC2D1(約3週間後)にimmunoSEQアッセイ(Adaptive Biotechnologies(登録商標);Seattle,WA)により分析した。より具体的には、ゲノムDNAを、各時点で末梢血単核細胞(PBMC)の試料から得た。下記表は、この分析の要約である。示された値は、括弧内の範囲(最小~最大)の平均値である。
【表1】


クローン性及び多様性は、下式を用いて計算した:
【数3】
【0073】
クローン性は、範囲内のサンプリング深さに対してロバストである。2桁の差があるため、すべての試料を最小テンプレート数2581にダウンサンプリングした。図1に示すように、ペアワイズウィルコクソン順位和検定を用いた場合、治療期間中に末梢クローン性が低下する傾向がみられた。PWRS<0.01。
【0074】
クローン性はしばしば多様性に反比例する。多様性は、2581個のテンプレートを仮定した場合の固有の再構成の数である。図2に示すように、ペアワイズウィルコクソン順位和検定を用いた場合、クローン性ほど顕著ではないものの、治療期間中に末梢多様性が増大する傾向がみられた。
【0075】
ログランク(Mantel-Cos)分析を、無増悪生存期間と全生存期間で行った。クローン性は0.1単位にスケーリングした。多様性は100単位にスケーリングした。
【0076】
図3に示すように、クローン性及び多様性は無増悪生存期間と相関しており、C1D1でより強いp値を示している。より高い末梢クローン性及びより低い多様性は、より長い無増悪生存期間と関連している。
【0077】
図4に示すように、クローン性及び多様性は全生存期間と相関しており、C2D1でより強いp値を示している。より高い末梢クローン性及びより低い多様性は、より良好な転帰と関連している。
【0078】
末梢T細胞画分は、全有核細胞に対するT細胞数である。図5に示すように、末梢T細胞画分がわずかに増加する傾向がみられたが、両方向に動いた患者がいるため、全体的な傾向は有意ではない。
【0079】
偽発見率(FDR)補正を行った二項指標を用いてクローン頻度の差を調べた。これにより、増殖したクローンとレパートリー重複率/類似性の指標が計算される。増殖したクローンは、新規及び既存のものの両方であった。
【0080】
森下指数は、2つの試料間のレパートリーの重複率とクローン頻度の両方を考慮したものである。完全に同一のレパートリーは1であり、2つの完全に異なる試料は0となる。1か月間の通常の変動は約0.9~0.95である。図6に示すように、C2D1~C1D1の間の森下指数の中央値は0.83であり、3つの試料で0.6未満である。これは、有意な末梢レパートリーのターンオーバーを示唆している。
【0081】
末梢で増殖したクローンを、C1D1~C2D1の間で決定した。テンプレート数の変動が大きいため、累積テンプレート100,000当たりの増殖クローンを報告した。4週間での通常の変動は、約5~10個の増殖クローンである。図7に示すように、中央値はいずれの場合も40を上回っている。1つの試料のみが18未満の増殖クローンを有していた。
【0082】
末梢で増殖したクローンは、既存のクローンまたは新しく同定されたクローン(つまり、最初の時点で検出されなかった)の増殖のいずれかである。図8に示すように、大部分の末梢クローンの増殖は新しいクローンから観察された。
【0083】
要約すると、C1D1~C2D1の間で末梢クローン性は低下し、固有の再構成は増加しており、多様性の一般的な増加と一致している。末梢クローン性が高いことと、多様性が低いことは、全生存期間が長くなることと関連している。C1D1~C2D1の間で高レベルの末梢レパートリーのターンオーバーが生じる。レパートリーのターンオーバーは、主に「新しい」クローン(C1D1で検出されなかったクローン)の増加を伴う、有意なクローンの増加を伴っている。
【0084】
実施例2.乳癌患者におけるペラレオレプ及びアロマターゼ阻害剤またはチェックポイント阻害剤による治療時のT細胞レパートリーの分析
T細胞応答及び腫瘍微小環境(TME)内の変化を調べるため、早期乳癌の女性を2つのグループ(各6人の患者)に分け、ペラレオレプをレトロゾールまたはアテゾリズマブと併用して投与した。1、2、8、及び9日目にペラレオレプで患者を治療した。3日目からレトロゾールを毎日投与し、アテゾリズマブは3日目に1回投与した。腫瘍生検を診断時、3日目、及びおよそ21日目に収集した。試験の主要エンドポイントはCelTILスコアとした。CelTILスコアは、腫瘍の細胞性とTILの浸潤の変化を定量化するための指標であり、CelTILの増加は、治療に対する良好な応答と関連している(Nuciforo,et al.,Ann.Oncol.29:170-77(2018))。腫瘍組織をペラレオレプ複製について調べ、TMEへの変化を免疫組織化学及びTCR免疫シークエンシング(免疫SEQアッセイ)によって評価した。末梢血もTCR免疫シークエンシングによって調べた。
【0085】
CelTILの分析は、これまでに6人の患者のうち4人の増加を示している。腫瘍細胞内のウイルスカプシドタンパク質のインサイチュー検出によって測定されるように、3日目及び21日目の生検における生産的ウイルス複製は極めて高かった。免疫組織化学分析により、すべての患者の3日目及び21日目の生検でCD8+T細胞の増加とPDL1の発現上昇が明らかとなった。全体として、ウイルスの複製度は、CelTILの変化及びTME内の変化と一致していた。血液のTCR-seqは、T細胞のクローン性のレベルがTME及びCelTILの変化と相関していることを示した。したがって、より高いT細胞末梢クローン性はより高いCelTILと相関しており、患者が治療に対してより反応性が高かったことを示した。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
対象のがんを治療する方法であって、
(i)1回以上の用量の腫瘍溶解性ウイルスを前記対象に投与することと、
(ii)前記1回以上の用量の前記腫瘍溶解性ウイルスの投与による治療後に高い末梢クローン性を示すT細胞集団を有する対象を選択することと、
(iii)前記高い末梢クローン性を示すT細胞集団を有する対象に、1回以上の後続の用量の前記腫瘍溶解性ウイルスを投与することと、を含む、前記方法。
(項目2)
前記末梢クローン性が0.06よりも高い、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記対象が、多様性の低いT細胞集団も有する、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記T細胞集団の多様性が、1800通り未満の再構成である、項目3に記載の方法。(項目5)
前記がんが、腺癌である、項目1~4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記がんが、乳癌または膵臓腺癌である、項目1~4のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
約10~1012プラーク形成単位(PFU)の前記腫瘍溶解性ウイルスが前記対象に投与される、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
約10~1012PFUの前記腫瘍溶解性ウイルスが前記対象に投与される、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
約10~1012TCID50の前記腫瘍溶解性ウイルスが前記対象に投与される、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記腫瘍溶解性ウイルスが、静脈内注入として投与される、項目1~9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
1つ以上のさらなる治療薬を前記対象に投与することをさらに含む、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記さらなる治療薬が、化学療法剤である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記さらなる薬剤が、免疫チェックポイント阻害剤またはアロマターゼ阻害剤である、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1またはPD-L1阻害剤である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ラムブロリズマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、及びセミプリマブからなる群から選択される、項目13に記載の方法。
(項目16)
末梢クローン性が高くかつ多様性が低いT細胞集団を有する前記対象の選択により、選択を行わない対象と比較して、または1回以上の用量の前記腫瘍溶解性ウイルスの投与後に末梢クローン性が高くかつ多様性が低いT細胞集団を有さない対象と比較して、前記腫瘍溶解性ウイルスで治療した前記対象の無増悪生存期間または全生存期間が長くなる、項目1~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記腫瘍溶解性ウイルスが、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、小胞性口内炎ウイルス(VSV)、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、パラポックスorfウイルス、シンドビスウイルス、及び単純ヘルペスウイルスからなる群から選択される、項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記レオウイルスが、哺乳動物のレオウイルスである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記レオウイルスが、ヒトレオウイルスである、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記レオウイルスが、血清型1のレオウイルス、血清型2のレオウイルス、血清型3のレオウイルスからなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記レオウイルスが、血清型3のレオウイルスである、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記血清型3のレオウイルスが、Dearing株のレオウイルスである、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記レオウイルスが、IDACアクセッション番号190907-01として寄託されている、項目18に記載の方法。
(項目24)
前記レオウイルスが、1つ以上のアミノ酸改変を有するラムダ3ポリペプチド、1つ以上のアミノ酸改変を有するシグマ3ポリペプチド、1つ以上のアミノ酸改変を有するミュー1ポリペプチド、1つ以上のアミノ酸改変を有するミュー2ポリペプチド、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目18に記載の方法。
(項目25)
前記レオウイルスが、以下のポリペプチド:
1つ以上のアミノ酸改変を有するシグマ3ポリペプチドであって、前記1つ以上のアミノ酸改変が、GenBankアクセッションK02739に対して番号付けした場合に、残基14のLeu、残基198のLys、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、前記アミノ酸配列が残基14にLeuを有する場合、前記アミノ酸配列は、前記アミノ酸配列内に少なくとも1つのさらなる改変をさらに含む、前記シグマ3ポリペプチド;
少なくとも1つのアミノ酸改変を有するミュー1ポリペプチドであって、前記少なくとも1つのアミノ酸改変が、GenBankアクセッション番号M20161.1に対して番号付けした場合に残基73のAspを含む、前記ミュー1ポリペプチド;
1つ以上のアミノ酸改変を有するラムダ3ポリペプチドであって、前記1つ以上のアミノ酸改変が、GenBankアクセッション番号M24734.1に対して番号付けした場合に、残基214のVal、残基267のAla、残基557のThr、残基755のLys、残基756のMet、残基926のPro、残基963のPro、残基979のLeu、残基1045のArg、残基1071のVal、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、前記アミノ酸配列が残基214にVal、または残基1071にValを有する場合、前記アミノ酸配列は、前記アミノ酸配列内に少なくとも1つのさらなる改変をさらに含む、前記ラムダ3ポリペプチド;または
少なくとも1つのアミノ酸改変を有するミュー2ポリペプチドであって、前記少なくとも1つのアミノ酸改変が、GenBankアクセッション番号AF461684.1に対して番号付けした場合に残基528のSerを含む、前記ミュー2ポリペプチドのうちの1つ以上を含む、項目18に記載の方法。
(項目26)
前記レオウイルスが、以下のゲノムセグメント:
1つ以上の核酸改変を有するS4ゲノムセグメントであって、前記S4ゲノムセグメント内の前記1つ以上の核酸改変が、GenBankアクセッション番号K02739に対して番号付けした場合に74位のA及び624位のAからなる群から選択される、前記S4ゲノムセグメント;
少なくとも1つの核酸改変を有するM2ゲノムセグメントであって、前記少なくとも1つの核酸改変が、GenBankアクセッション番号M20161.1に対して番号付けした場合に248位のCを含む、前記M2ゲノムセグメント;
1つ以上の核酸改変を有するL1ゲノムセグメントであって、前記1つ以上の核酸改変が、GenBankアクセッション番号M24734.1に対して番号付けした場合に660位のT、817位のG、1687位のA、2283位のG、2284~2286位のATG、2794位のC、2905位のC、2953位のC、3153位のA、3231位のGからなる群から選択される、前記L1ゲノムセグメント;または
少なくとも1つの核酸改変を有するM1ゲノムセグメントであって、前記少なくとも1つの核酸改変が、GenBankアクセッション番号AF461684.1に対して番号付けした場合に1595位のTを含む、前記M1ゲノムセグメントのうちの1つ以上を含む、項目18に記載の方法。
(項目27)
前記レオウイルスが、組換えレオウイルスである、項目18に記載の方法。
(項目28)
前記レオウイルスが、改変レオウイルスである、項目18に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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