(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177399
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】呼吸器疾患の治療のための汎ELR+CXCケモカイン抗体
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241212BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241212BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241212BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241212BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241212BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20241212BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20241212BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P11/00
A61P31/12
A61P31/14
A61P11/06
A61P19/04
C07K16/24 ZNA
C07K16/24
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174323
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2022564207の分割
【原出願日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】63/015,308
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ディーパク
(72)【発明者】
【氏名】ウィッチャー,デリック アール
(72)【発明者】
【氏名】ウッドマン,マイケル イー
(57)【要約】
【課題】ARDSの予防及び/又は治療に対する緊急の満たされていない必要性が依然として存在する。
【解決手段】呼吸器疾患、例えば、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を予防及び/又は治療するための方法及び7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに高親和性で結合する抗体の使用が本明細書に提供される。本発明は、呼吸器疾患、例えば、ARDSを予防及び/又は治療するための方法及び7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに高親和性で結合する抗体の使用に関する用量及び投薬計画にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸窮迫症候群(ARDS)の予防を必要とする患者におけるそれを予防する方法であって、前記患者に、ヒト増殖調節がん遺伝子(「Gro」)-アルファ、ヒトGro-ベータ、ヒトGro-ガンマ、ヒト上皮好中球活性化ペプチド-78、ヒト顆粒球走化性タンパク質-2、ヒト好中球活性化タンパク質-2、及びヒトインターロイキン-8に結合する抗体の治療有効量を投与することを含み、前記抗体が、軽鎖相補性決定領域(「LCDR」)LCDR1、LCDR2、LCDR3、及び重鎖相補性決定領域(「HCDR」)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1が配列番号7を含み、LCDR2が配列番号8を含み、LCDR3が配列番号9を含み、HCDR1が配列番号10を含み、HCDR2が配列番号11を含み、HCDR3が配列番号12を含む、方法。
【請求項2】
前記患者がARDSを発症するリスクがある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が呼吸器傷害を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記呼吸器傷害が呼吸器疾患である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記呼吸器傷害が呼吸器損傷である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療を必要とする患者におけるそれを治療する方法であって、前記患者に、ヒト増殖調節がん遺伝子(「Gro」)-アルファ、ヒトGro-ベータ、ヒトGro-ガンマ、ヒト上皮好中球活性化ペプチド-78、ヒト顆粒球走化性タンパク質-2、ヒト好中球活性化タンパク質-2、及びヒトインターロイキン-8に結合する抗体の治療有効量を投与することを含み、前記抗体が、軽鎖相補性決定領域(「LCDR」)LCDR1、LCDR2、LCDR3、及び重鎖相補性決定領域(「HCDR」)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1が配列番号7を含み、LCDR2が配列番号8を含み、LCDR3が配列番号9を含み、HCDR1が配列番号10を含み、HCDR2が配列番号11を含み、HCDR3が配列番号12を含む、方法。
【請求項7】
前記患者が軽度のARDSを有すると診断される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が中等度のARDSを有すると診断される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が重度のARDSを有すると診断される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が、ベルリン定義に従って、軽度、中等度、又は重度のARDSのうちの1つを有すると診断される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者がウイルス感染症を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルス感染症がコロナウイルス感染症である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、肺炎、喘息、COPD、間質性肺疾患、及び/又は肺線維症を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が約100mg~約1200mgの用量で静脈内投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が約150mg~約1800mgの用量で皮下投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が約1200mgの用量で2~3回にわたって静脈内投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ARDSの予防における使用のための、ヒト増殖調節がん遺伝子(「Gro」)-アルファ、ヒトGro-ベータ、ヒトGro-ガンマ、ヒト上皮好中球活性化ペプチド-78、ヒト顆粒球走化性タンパク質-2、ヒト好中球活性化タンパク質-2、及びヒトインターロイキン-8に結合する抗体であって、前記抗体が、軽鎖相補性決定領域(「LCDR」)LCDR1、LCDR2、LCDR3、及び重鎖相補性決定領域(「HCDR」)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1が配列番号7を含み、LCDR2が配列番号8を含み、LCDR3が配列番号9を含み、HCDR1が配列番号10を含み、HCDR2が配列番号11を含み、HCDR3が配列番号12を含む、抗体。
【請求項21】
前記患者がARDSを発症するリスクがある、請求項20に記載の使用のための抗体。
【請求項22】
前記患者が呼吸器傷害を有する、請求項20又は21に記載の使用のための抗体。
【請求項23】
前記呼吸器傷害が呼吸器疾患である、請求項20~22のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
【請求項24】
前記呼吸器傷害が呼吸器損傷である、請求項20~23のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
【請求項25】
ARDSの治療における使用のための、ヒト増殖調節がん遺伝子(「Gro」)-アルファ、ヒトGro-ベータ、ヒトGro-ガンマ、ヒト上皮好中球活性化ペプチド-78、ヒト顆粒球走化性タンパク質-2、ヒト好中球活性化タンパク質-2、及びヒトインターロイキン-8に結合する抗体であって、前記抗体が、軽鎖相補性決定領域(「LCDR」)LCDR1、LCDR2、LCDR3、及び重鎖相補性決定領域(「HCDR」)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1が配列番号7を含み、LCDR2が配列番号8を含み、LCDR3が配列番号9を含み、HCDR1が配列番号10を含み、HCDR2が配列番号11を含み、HCDR3が配列番号12を含む、抗体。
【請求項26】
前記患者が軽度のARDSを有すると診断される、請求項25に記載の使用のための抗体。
【請求項27】
前記患者が中等度のARDSを有すると診断される、請求項25に記載の使用のための抗体。
【請求項28】
前記患者が重度のARDSを有すると診断される、請求項25に記載の使用のための抗体。
【請求項29】
前記患者が、ベルリン定義に従って、軽度、中等度、又は重度のARDSのうちの1つを有すると診断される、請求項25~28のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
【請求項30】
前記患者がウイルス感染症を有する、請求項20~29のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
【請求項31】
前記ウイルス感染症がコロナウイルス感染症である、請求項30に記載の使用のための抗体。
【請求項32】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項31に記載の使用のための抗体。
【請求項33】
前記患者が、肺炎、喘息、COPD、間質性肺疾患、及び/又は肺線維症を有する、請求項20~32のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
【請求項34】
前記抗体が、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項20~33のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
【請求項35】
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項20~34のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
【請求項36】
前記抗体が約100mg~約1200mgの用量で静脈内投与される、請求項20~35のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
【請求項37】
前記抗体が約150mg~約1800mgの用量で皮下投与される、請求項20~36のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
【請求項38】
前記抗体が約1200mgの用量で2~3回にわたって静脈内投与される、請求項20~36のいずれか一項に記載の使用のための抗体。
【請求項39】
ARDSの予防用の薬剤の製造における、ヒト増殖調節がん遺伝子(「Gro」)-アルファ、ヒトGro-ベータ、ヒトGro-ガンマ、ヒト上皮好中球活性化ペプチド-78、ヒト顆粒球走化性タンパク質-2、ヒト好中球活性化タンパク質-2、及びヒトインターロイキン-8に結合する抗体の使用であって、前記抗体が、軽鎖相補性決定領域(「LCDR」)LCDR1、LCDR2、LCDR3、及び重鎖相補性決定領域(「HCDR」)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1が配列番号7を含み、LCDR2が配列番号8を含み、LCDR3が配列番号9を含み、HCDR1が配列番号10を含み、HCDR2が配列番号11を含み、HCDR3が配列番号12を含む、使用。
【請求項40】
ARDSの治療用の薬剤の製造における、ヒト増殖調節がん遺伝子(「Gro」)-アルファ、ヒトGro-ベータ、ヒトGro-ガンマ、ヒト上皮好中球活性化ペプチド-78、ヒト顆粒球走化性タンパク質-2、ヒト好中球活性化タンパク質-2、及びヒトインターロイキン-8に結合する抗体の使用であって、前記抗体が、軽鎖相補性決定領域(「LCDR」)LCDR1、LCDR2、LCDR3、及び重鎖相補性決定領域(「HCDR」)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1が配列番号7を含み、LCDR2が配列番号8を含み、LCDR3が配列番号9を含み、HCDR1が配列番号10を含み、HCDR2が配列番号11を含み、HCDR3が配列番号12を含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器疾患、例えば、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を予防及び/又は治療するための方法及びELR+CXCケモカインに対する抗体の使用に関する。本発明は、呼吸器疾患、例えば、ARDSを予防及び/又は治療するための方法及びELR+CXCケモカインに対する抗体の使用に関する用量及び投薬計画にも関する。
【背景技術】
【0002】
ELR+CXCケモカイン(ケモカインファミリーのメンバー全てがCXCモチーフのすぐ隣にE-L-Rアミノ酸モチーフを有するため、そのように呼ばれている)は、好中球の炎症部位及び血管新生部位への移動を含む様々な病因メカニズムに重要な役割を果たす。好中球は、いくつかの急性及び慢性炎症性疾患及び自己免疫疾患の病因に寄与する。
【0003】
ケモカインは、CXC、CC、(X)C、及びCX3Cの4つのサブファミリーに分類される。CXCケモカインでは、1つのアミノ酸が最初の2つのシステインを分離する(「CXCモチーフ」)。ELR+CXCケモカインは、ELR+CXCケモカインに特異的に結合するGタンパク質共役型7回膜貫通ドメイン型受容体である、CXCRl及び/又はCXCR2ケモカイン受容体のリガンドである。7つのヒトELR+CXCケモカインは、ヒト増殖調節がん遺伝子(「Gro」)-アルファ(別名、CXCL1)、ヒトGro-ベータ(別名、CXCL2)、ヒトGro-ガンマ(別名、CXCL3)、ヒトENA-78(別名、CXCL5、又はヒト上皮好中球活性化ペプチド-78)、ヒトGCP-2(別名、CXCL6、又はヒト顆粒球走化性タンパク質-2)、ヒトNAP-2(別名、CXCL7、又はヒト好中球活性化タンパク質-2)、及びヒトIL-8(別名、CXCL8、又はヒトインターロイキン-8)である。全てのELR+CXCケモカインはCXCR2受容体に結合し、更に、一部のELR+CXCケモカインはCXCRl受容体及びCXCR2受容体の両方に結合し(すなわち、CXCL6及びCXCL8)、これらは全て活性化経路の冗長性に寄与する。7つ全てのELR+CXCケモカインを中和すると、CXCR1+又はCXCR2+細胞が炎症部位に移動する能力に影響を与える可能性がある。
【0004】
7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合して中和する抗体は、以前に、例えば、WO2014149733、EP2970447B1、US9290570に記載されている。7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合して中和する能力を考慮すると、これらの抗体は、単一のヒトELR+CXCケモカインを標的とする単剤療法及び複数のヒトELR+CXCケモカインを標的とする併用療法よりも優れている。7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合するかかる抗体のうちの1つは、軽鎖相補性決定領域(「LCDR」)LCDR1、LCDR2、LCDR3、及び重鎖相補性決定領域(「HCDR」)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1が配列番号7を含み、LCDR2が配列番号8を含み、LCDR3が配列番号9を含み、HCDR1が配列番号10を含み、HCDR2が配列番号11を含み、HCDR3が配列番号12を含む、抗体1である。抗体1は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。抗体1は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。抗体1は、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに共通のエピトープに結合し、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインの活性を中和することが示された。7つ全てのELR+CXCケモカインに結合することにより、CXCR1経路及びCXCR2経路の両方がブロックされる可能性があり、これにより、好中球の輸送がより効果的に阻害されるようになり得る。
【0005】
ARDSは、肺の炎症を特徴とする生命にかかわる呼吸器疾患であり、広範囲に及び、かつ急速に発症する可能性がある。ARDSは、肺胞上皮及び内皮バリアへの損傷によって引き起こされ、体液及び自然炎症細胞の蓄積につながり、更なる炎症及び組織損傷を引き起こす。これが原因となり、肺水腫及び進行性肺不全/死亡に至る。ARDSの死亡率は30~40%に達すると報告されている。ARDSに関連する症状には、疾患又は損傷に関連した息切れ、速い呼吸、及び皮膚の蒼白化が挙げられる。科学的定義及び医学的定義が進化しているため、ARDSの正式な診断は困難である。「ベルリン定義」として知られている1つの定義は、肺の放射線学的画像検査及びPaO2/FiO2比に依存する(Ranieri et al.,2012,JAMA,307(23):2526-33)。ベルリン定義に従って、ARDSは、以下の要因:肺傷害に続く急性発症呼吸器症状、胸部画像検査における原因不明の両側混濁、(心不全又は体液量過剰によって説明されない)呼吸不全、PaO2/FiO2比の減少に従って特徴付けられる。ベルリン定義は、軽度のARDS:201~300mmHg(39.9kPa以下)、中等度のARDS:101~200mmHg(≦26.6kPa以下)、及び重度のARDS:100mmHg以下(13.3kPa以下)に従ってARDSの病期分類も可能にする。しかしながら、回復した患者でも、肺機能は6ヶ月から1年の期間にわたって徐々に改善し得るが、患者にはかなりの瘢痕が残り、肺容量が正常よりも低い場合がある。
【0006】
現在、ARDSを予防及び/又は治療するための承認された治療法は存在しない。ARDSの療法の開発を複雑にしている要因は、ARDS及び関連死亡率が、間質性肺疾患、SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされるコロナウイルス疾患2019(すなわち、COVID-19)などのウイルス傷害、及び中東呼吸器症候群(MERS)を含むいくつかの疾患及び損傷、並びにCAR-T療法誘発性ARDSなどの療法誘発性傷害から生じることである。加えて、ARDSには、多数の免疫及び上皮標的を伴ういくつかの分子経路が関与している。更に、サイトカインストームとして知られている現象を引き起こす、(例えば、COVID-19と同様に)疾患又は損傷に続く身体自体の免疫応答の複雑な調節不全もARDSと関連している。したがって、ARDSの予防及び/又は治療に対する緊急の満たされていない必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、ARDSの予防及び/又は治療のための方法及び使用を提供する。一態様では、ARDSの予防及び/又は治療を必要とするヒト患者に、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合する抗体、例えば、抗体1、又はかかる抗体を含む医薬組成物の治療有効量を投与することによって、ヒト患者におけるARDSを予防及び/又は治療する方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、ARDSの予防及び/又は治療を必要とするヒト患者におけるそれを予防及び/治療する方法であって、ヒト患者に、ヒト増殖調節がん遺伝子(「Gro」)-アルファ、ヒトGro-ベータ、ヒトGro-ガンマ、ヒト上皮好中球活性化ペプチド-78、ヒト顆粒球走化性タンパク質-2、ヒト好中球活性化タンパク質-2、及びヒトインターロイキン-8に結合する抗体、又はかかる抗体を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含み、当該抗体が、軽鎖相補性決定領域(「LCDR」)LCDR1、LCDR2、LCDR3、及び重鎖相補性決定領域(「HCDR」)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1が配列番号7を含み、LCDR2が配列番号8を含み、LCDR3が配列番号9を含み、HCDR1が配列番号10を含み、HCDR2が配列番号11を含み、HCDR3が配列番号12を含む、方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
IL-8は、ARDSの有害転帰と高度に相関している。IL-8及び他のELR+ケモカインは、好中球を損傷した肺胞に引き寄せる。好中球が炎症を起こした肺に入ると、それらは、組織損傷を引き起こし、かつ炎症に更に寄与するプロテアーゼ、反応性酸素種、好中球細胞外トラップ(NET)、及び他の炎症誘発性メディエーターを分泌する。好中球NETは、IL-1b(サイトカインストーム)、M1肺胞マクロファージ分極、粘膜分泌、及び微小血栓を誘発することにより、ARDSに特異的に寄与する可能性がある。複数のELR+ケモカインは、一般にARDS患者、特にCOVID-19患者で上昇し(血漿及び気管支肺胞液[BALF])、IL-8は、SARS及びMERSを引き起こす関連コロナウイルスに感染した患者で上昇する(血漿及びBALF)。CXCR1及びCXCR2に結合するELR+ケモカインは、血管新生及び好中球の移動に関与する。7つ全てのCXCR1/2リガンドを中和すると、好中球の肺への輸送を遮断して、この疾患への複数の好中球媒介性寄与を減少させることにより、一般にARDS、特にコロナウイルス感染(SARS、MERS、COVID-19など)に関連するARDSの死亡率を低下させる可能性がある。CXCR1/2ネットワーク内の個々のリガンド又は受容体を標的とする他の分子とは対照的に、抗体1は特異的に7つ全てのCXCR1/2リガンドに結合して中和することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、患者におけるARDSを予防する方法であって、当該患者に、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合する抗体、例えば、抗体1、又はかかる抗体を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、患者は、ARDSを発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、患者は、呼吸器傷害を有する。いくつかの実施形態では、呼吸器傷害は、呼吸器疾患である。いくつかの実施形態によれば、呼吸器傷害は、呼吸器損傷である。
【0010】
いくつかの実施形態では、患者におけるARDSを治療する方法であって、当該患者に、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合する抗体、例えば、抗体1、又はかかる抗体を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、患者は、軽度のARDSを有すると診断される。いくつかの実施形態では、患者は、中等度のARDSを有すると診断される。いくつかの実施形態では、患者は、重度のARDSを有すると診断される。いくつかの実施形態では、患者は、ベルリン定義に従って、軽度、中等度、又は重度のARDSのうちの1つを有すると診断される。
【0011】
本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態によれば、患者は、ウイルス感染症を有する。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、コロナウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2である。本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態によれば、患者は、COVID-19を有する。本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態によれば、患者は、肺炎を有する。本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態によれば、患者は、喘息を有する。本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態によれば、患者は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する。本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態によれば、患者は、肺線維症を有する。本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態によれば、患者は、間質性肺疾患を有する。
【0012】
ARDSの予防及び/又は治療における使用のための、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合する抗体、例えば、抗体1、又はかかる抗体を含む医薬組成物も本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、ARDSの予防及び/又は治療における使用のための、ヒト増殖調節がん遺伝子(「Gro」)-アルファ、ヒトGro-ベータ、ヒトGro-ガンマ、ヒト上皮好中球活性化ペプチド-78、ヒト顆粒球走化性タンパク質-2、ヒト好中球活性化タンパク質-2、及びヒトインターロイキン-8に結合する抗体であって、当該抗体が、軽鎖相補性決定領域(「LCDR」)LCDR1、LCDR2、LCDR3、及び重鎖相補性決定領域(「HCDR」)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1が配列番号7を含み、LCDR2が配列番号8を含み、LCDR3が配列番号9を含み、HCDR1が配列番号10を含み、HCDR2が配列番号11を含み、HCDR3が配列番号12を含む、抗体、又はかかる抗体を含む医薬組成物が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0013】
ARDSの予防及び/又は治療用の薬剤の製造における、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合する抗体、例えば、抗体1の使用も本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、ARDSの予防及び/又は治療用の薬剤の製造における、ヒト増殖調節がん遺伝子(「Gro」)-アルファ、ヒトGro-ベータ、ヒトGro-ガンマ、ヒト上皮好中球活性化ペプチド-78、ヒト顆粒球走化性タンパク質-2、ヒト好中球活性化タンパク質-2、及びヒトインターロイキン-8に結合する抗体の使用であって、当該抗体が、軽鎖相補性決定領域(「LCDR」)LCDR1、LCDR2、LCDR3、及び重鎖相補性決定領域(「HCDR」)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、LCDR1が配列番号7を含み、LCDR2が配列番号8を含み、LCDR3が配列番号9を含み、HCDR1が配列番号10を含み、HCDR2が配列番号11を含み、HCDR3が配列番号12を含む、使用が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合する抗体、例えば、抗体1、又はかかる抗体を含む医薬組成物は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合する抗体、例えば、抗体1、又はかかる抗体を含む医薬組成物は、皮下投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合する抗体、例えば、抗体1、又はかかる抗体を含む医薬組成物は、患者に2~3回にわたって投与される。いくつかの実施形態では、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合する抗体、例えば、抗体1、又はかかる抗体を含む医薬組成物は、患者に2~3回にわたって静脈内投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合する抗体、例えば、抗体1、又はかかる抗体を含む医薬組成物は、約100mg~約1200mg(例えば、約100mg~約1200mg、約200mg~約1150mg、約300mg~約1100mg、約600mg~約1000mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、又は約1200mg)の用量で静脈内投与される。
【0017】
以下に示されるように、抗体1の皮下注射のバイオアベイラビリティは、抗体1の静脈内注射のおよそ65%であると推定される。いくつかの実施形態では、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに結合する抗体、例えば、抗体1、又はかかる抗体を含む医薬組成物は、約150mg~約1800mg(例えば、約150mg~約1800mg、約200mg~約1700mg、約300mg~約1600mg、約400mg~約1500mg、約500mg~約1400mg、約600mg~約1300mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、約1500mg、約1550mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、又は約1800mg)の用量で皮下投与される。
【0018】
本明細書で使用される場合、「ヒトELR+CXCケモカイン」という用語は、E-L-Rモチーフを有し、かつCXCRl及び/又はCXCR2受容体に結合する7つの既知のCXCケモカインを指す。ヒトELR+CXCケモカインは、ヒトGro-アルファ(別名、CXCL1)(配列番号13)、ヒトGro-ベータ(別名、CXCL2)(配列番号14)、ヒトGro-ガンマ(別名、CXCL3)(配列番号15)、ヒトENA-78(別名、CXCL5)(配列番号16)、ヒトGCP-2(別名、CXCL6)(配列番号17)、ヒトNAP-2(別名、CXCL7)(配列番号18)、及びヒトIL-8(別名、CXCL8)(配列番号19)である。総称して、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインは、本明細書では「ヒト汎ELR+CXCケモカイン」と呼ばれる。
【0019】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、及び2つの軽(L)鎖を含むモノクローナル免疫グロブリン分子を指す。重鎖は各々、重鎖可変領域(HCVR)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインを含む。軽鎖は各々、軽鎖可変領域(LCVR)及び軽鎖定常領域CLから成る。HCVR領域及びLCVR領域は、フレームワーク領域(「FR」)と呼ばれるより保存された領域が散在している相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分され得る。HCVR及びLCVRは各々、アミノ末端からカルボキシ末端にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置されている3つのCDR及び4つのFRから成る。HCVRのCDR領域は、HCDRl、HCDR2、及びHCDR3と呼ばれる。LCVRのCDR領域は、LCDRl、LCDR2、及びLCDR3と呼ばれる。CDRは、抗原との特異的相互作用を形成する残基の大部分を含む。現在、配列描写に一般に使用されている抗体の3つのCDR割り当てシステムが存在する。Kabat CDR定義(Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))は、抗体配列の変動に基づく。Chothia CDR定義(Chothia et al.,“Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins”,Journal of Molecular Biology,196,901-917(1987)、Al-Lazikani et al.,“Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins”,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))は、抗体の三次元構造及びCDRループのトポロジーに基づく。Chothia CDR定義は、HCDRl及びHCDR2を除いて、Kabat CDR定義と同一である。本発明の目的のために、Kabat定義及びChothia定義のハイブリッドを使用してCDRを定義する。HCVR領域及びLCVR領域におけるアミノ酸の割り当ては、Kabat番号付け協定に従う。「抗体」という用語が、アシル化及びグリコシル化を含むが、これらに限定されない抗体に対するいずれの細胞の翻訳後修飾も包含することが更に理解される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「セプタ特異的抗体」という用語は、7つ全てのヒトELR+CXCケモカインに高い親和性で(例えば、約5×10-11M~約1×10-9Mの範囲内の結合親和性(KD)で)結合する抗体を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「患者」、「個体」、「対象」とは、ヒトELR+CXCケモカインのレベルの低下又はヒトELR+CXCケモカインによって誘発される生物活性の低下から恩恵を受けるであろう疾患、障害、又は状態を有するヒトを指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「予防」、「予防する」、及び/又は「予防すること」は、本明細書で互換的に使用され、症状若しくは合併症の遅延、中断、抑止、制御、停止、緩和、又は呼吸器疾患の進行の逆転、例えば、損傷、SARS-CoV-2ウイルス感染症などの傷害、若しくはCOVID-19疾患などの疾患、又はCAR-T療法などの療法誘発性傷害によって引き起こされるものが存在し得、これにより、呼吸器疾患がARDSに進行しないか、又はより重篤な病期のARDS、例えば、ベルリン定義によって定義されるARDSに進行しない、全てのプロセスを指すよう意図されている。本明細書で使用される場合、予防は、全ての障害症状の完全な排除を必ずしも示すようには意図されていない。
【0023】
本明細書で互換的に使用される場合、「治療」及び/又は「治療すること」及び/又は「治療する」は、症状若しくは合併症の遅延、中断、抑止、制御、停止、緩和、又はARDSの進行の逆転が存在し得る全てのプロセスを指すが、全ての障害症状の完全な排除を必ずしも示さないよう意図されている。
【0024】
本明細書で使用され得る場合、「約」又は「およそ」という用語は、特定の列挙されている数値又は値の範囲に関して使用される場合、その値が列挙されている値と10%以下(例えば、±10%)しか異ならない可能性があることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現は、90及び110、並びにそれらの間の全ての値(例えば、91、92、93、94など)を含む。
【実施例0025】
実施例1:健常被験者における抗体1の安全性、忍容性、薬物動態、及び薬力学を評価するための単回漸増用量試験(NCT02148627)
この試験の第一目的は、日本人被験者を含む健常被験者における抗体1の単回投与の安全性及び忍容性を調査して、更なる臨床研究のために適切な用量範囲を定義することである。この目的の評価項目は、SAE(重篤な有害事象)及びTEAE(治療により発生した有害事象)の発生率である。この試験の第二目的は、日本人被験者を含む健常被験者における抗体1の単回皮下(SC)投与後のバイオアベイラビリティの推定を含む、抗体1の薬物動態(PK)を特徴付けることである。評価項目には、Cmax(観察された最大薬物濃度)、tmax(Cmaxに達するまでの時間)、AUC(定常状態での投薬間隔中の濃度-時間曲線下面積)、及び抗薬物抗体の存在が含まれる。
【0026】
この試験では、抗体1を単回漸増用量試験における39名の健常被験者に投与し、ここで、10mg、30mg、100mg、200mg、400mg、若しくは700mgの用量の抗体1を緩徐な静脈内(IV)注入により投与するか、又は100mgの用量の抗体1をSC注射により投与して、バイオアベイラビリティを評価した。加えて、10mg、30mg、100mg、200mg、及び400mgの抗体1をIV投与した被験者に皮膚水疱が誘発され、好中球の走化性及び蓄積を評価した。
【0027】
死亡又は重篤な有害事象(SAE)は報告されなかった。報告された有害事象(AE)を、有害事象の共通用語基準(CTCAE)を使用して等級分けした。治験責任医師が治験薬とは無関係であるとみなしたグレード2の事象を報告した1名の被験者を除いて、報告された全てのAEはグレード1であった。
【0028】
血液学(末梢血好中球数を含む)又は尿検査に臨床的に有意な変化はなかった。
【0029】
バイタルサイン又は心電図(ECG)に臨床的に有意な変化はなかった。
【0030】
抗体1は、試験した用量範囲内で線形PKを呈し、推定終末半減期(t1/2)はおよそ2週間であった。抗体1のSC注射の推定バイオアベイラビリティは、IV注射の約65%である。
【0031】
予備的薬力学的(PD)評価は、水疱液中に存在する好中球の割合に焦点を当てた。好中球データにはかなりばらつきがあったが、水疱液中の好中球の用量依存的減少の傾向が観察された。
【0032】
実施例2:COVID-19患者におけるARDSの予防及び/又は治療のための抗体1の臨床研究
COVID-19患者におけるARDSの予防及び/又は治療を抗体1と比較する臨床研究を本明細書に記載されるように行うことができる。簡潔には、COVID-19陽性の患者に、0日目、2日目又は3日目、及び7日目に1200mgの抗体1又はプラセボを2~3回静脈内投与することができる。患者が呼吸窮迫状態にある場合にのみ、7日目の用量を投与する。28日目が主要評価項目である。主要評価項目は、28日目の全死因死亡率、又は28日目に生存しており、かつ呼吸不全のない患者の割合とすることができる。11週間のフォローアップ期間がある。副次的評価項目は、生存及び人工呼吸器非装着日数、ICUでの日数、入院日数、及び/又は患者がベースライン酸素必要量に戻るまでの日数とすることができる。患者を、治療中及び治療後に、呼吸器疾患の存在、ARDSの存在、又は呼吸器疾患若しくはARDSの進行について評価することができる。評価には、胸部画像検査及びPaO2/FiO2比の評価が含まれ得る。
【0033】
配列表
抗体1重鎖アミノ酸配列:配列番号1
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYEFTSYWIHWVRQAPGQGLEWMGNISP NSGSANYNEKFKSRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDT AVYYCAREGPYSYYPS REYYGSDLWGQGTL VTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSEST AALGCLVKDYFPEP VTVSWNSGALTSGVHTFP AVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSN TKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVS QEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEY KCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCL VKGFYPS DIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFL YSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMH EALHNHYTQKSLSLSLG
抗体1重鎖可変領域:配列番号2
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYEFTSYWIHWVRQAPGQGLEWMGNISP NSGSANYNEKFKSRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDT AVYYCAREGPYSYYPS REYYGSDLWGQGTLVTVSS
抗体1軽鎖アミノ酸配列:配列番号3
EIVLTQSPA TLSLSPGERATLSCRASQSISNNLHWYQQKPGQAPRLLIYYTSRSVS GIPARFSGSGSGTDFTL TISSLEPEDFAVYYCGQNNEWPEVFGGGTKVEIKRTV AA PSVFIFPPSDEQLKSGT ASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQD SKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVY ACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
抗体1軽鎖可変領域:配列番号4
EIVLTQSPA TLSLSPGERATLSCRASQSISNNLHWYQQKPGQAPRLLIYYTSRSVS GIPARFSGSGSGTDFTL TISSLEPEDFAVYYCGQNNEWPEVFGGGTKVEIK
抗体1重鎖DNA配列:配列番号5
CAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGTGCTGAAGTGAAGAAGCCTGGGGCCTCAG TGAAGGTGTCCTGCAAGGCATCTGGCTACGAGTTCACCAGCTACTGGATTCAC TGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGAAATATTTCTC CTAATAGTGGTAGTGCTAACTACAATGAGAAGTTCAAGAGCAGAGTCACCAT GACCAGGGACACGTCCACGAGCACAGTCTACATGGAGCTGAGCAGCCTGAGA TCTGAGGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGAGAGGGCCCTTACAGTTATTA TCCGAGTAGGGAGTACTATGGCTCTGACCTCTGGGGGCAAGGGACCCTAGTC ACAGTCTCCTCAGCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCGCTAGCGCCCTG CTCCAGGAGCACCTCCGAGAGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGAC TACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCG
GCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGC AGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGCA ACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGTCCA AATATGGTCCCCCATGCCCACCCTGCCCAGCACCTGAGTTCCTGGGGGGACCA TCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACAC TCTCATGATCTCCCGGAC CCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTC CAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGC CGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGT CCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAAC AAAGGCCTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGC CCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAA GAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACAT C GCCGTGGAGTGGGAAAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAAC TACAAGACCACG CCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAGGCTAACCGT GGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGGGAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCAT GAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGAGCC TCTCCCTGTCTCTGGGT
抗体1軽鎖DNA配列:配列番号6
GAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAG AGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAAAGTATCAGCAATAACCTACACTGG TACCAACAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATTATACTTCCCG GTCCGTCTCTGGCATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACT TCACTCTCACCATCAGCAGCCTAGAGCCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGT GGACAGAATAACGAGT GGCCTGAGGTGTTCGGCGGAGGGACCAAGGT GGAG ATCAAACGAACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGA GCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATC CCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAA CTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACC TACAGCCTC AGCAGCACCC TGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTAC GCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCA ACAGGGGAGAGTGC
抗体1 LCDR1:配列番号7
RASQSISNNLH
抗体1 LCDR2:配列番号8
YTSRSVS
抗体1 LCDR3:配列番号9
GQNNEWPEV
抗体1 HCDR1:配列番号10
GYEFTSYWIH
抗体1 HCDR2:配列番号11
NISPNSGSANYNEKFKS
抗体1 HCDR3:配列番号12
EGPYSYYPSREYYGSDL
ヒトGro-アルファ(CXCL1):配列番号13
ASVATELRCQCLQTLQGIHPKNIQSVNVKSPGPHCAQTEVIATLKNGRKACLNPA SPIVKKIIEKMLNSDKSN
ヒトGro-ベータ(CXCL2):配列番号14
APLATELRCQCLQTLQGIHLKNIQSVKVKSPGPHCAQTEVIATLKNGQKACLNPA SPMVKKIIEKMLKNGKSN
ヒトGro-ガンマ(CXCL3):配列番号15
ASVVTELRCQCLQTLQGIHLKNIQSVNVRSPGPHCAQTEVIATLKNGKKACLNPA SPMVQKIIEKILNKGSTN
ヒトENA-78(CXCL5):配列番号16
AAVLRELRCVCLQTTQGVHPKMISNLQVFAIGPQCSKVEVVASLKNGKEICLDPE APFLKKVIQKILDGGNKEN
ヒトGCP-2(CXCL6):配列番号17
VSAVLTELRCTCLRVTLRVNPKTIGKLQVFPAGPQCSKVEVVASLKNGKQVCLD PEAPFLKKVIQKILDSGNKKN
ヒトNAP-2(CXCL7):配列番号18
AELRCMCIKTTSGIHPKNIQSLEVIGKGTHCNQVEVIATLKDGRKICLDPDAPRIK KIVQKKLAGDESAD
ヒトIL-8(CXCL8):配列番号19
SAKELRCQCIKTYSKPFHPKFIKELRVIESGPHCANTEIIVKLSDGRELCLDPKENW VQRVVEKFLKRAENS