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特開2024-1774組立構造体の電磁場の評価を行うコンピュータシミュレーション方法、シミュレーション装置、およびプログラム
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  • 特開-組立構造体の電磁場の評価を行うコンピュータシミュレーション方法、シミュレーション装置、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001774
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】組立構造体の電磁場の評価を行うコンピュータシミュレーション方法、シミュレーション装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20231227BHJP
   G06F 30/15 20200101ALI20231227BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100649
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 巧
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA05
5B146AA07
5B146DJ04
5B146DJ11
(57)【要約】
【課題】種々の組立構造体に発生する電磁場についてのコンピュータシミュレーションにおいて、処理時間や処理量を低減する。
【解決手段】アンテナからの電波放射により発生する、複数の構造部品が連結されて構成される組立構造体の電磁場の評価を行うコンピュータシミュレーション方法は、コンピュータが、アンテナ63の電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、アンテナが空間61内に放射する電磁波を模擬し、空間内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データ6を算出して記憶装置3に記憶させる第1ステップS100と、組立構造体62についての構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルと、記憶装置3に記憶された空間電磁場データ6と、を用いて、空間内に置かれた組立構造体に発生する電磁場についての評価を行う第2ステップS200と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナからの電波放射により発生する、複数の構造部品が連結されて構成される組立構造体の電磁場の評価を行うコンピュータシミュレーション方法であって、
コンピュータが、
前記アンテナの電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、前記アンテナが空間内に放射する電磁波を模擬し、前記空間内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させる第1ステップと、
前記組立構造体についての前記構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルと、前記記憶装置に記憶された前記空間電磁場データと、を用いて、前記空間内に置かれた前記組立構造体に発生する電磁場についての評価を行う第2ステップと、
を含む、
コンピュータシミュレーション方法。
【請求項2】
複数の前記組立構造体のそれぞれの前記組立構造体を用いて前記第2ステップが繰り返される、請求項1に記載のコンピュータシミュレーション方法。
【請求項3】
前記第2ステップにおいて行う評価は、前記組立構造体に発生する電磁場が前記空間内に放出する電磁ノイズについての、EMI(Electromagnetic Interference)特性の評価を含む、
請求項1に記載のコンピュータシミュレーション方法。
【請求項4】
前記組立構造体モデルは、前記構造部品の形状および電気的特性を示す部品モデルを含む、
請求項1に記載のコンピュータシミュレーション方法。
【請求項5】
前記構造部品は、前記組立構造体の外面に現れない内部構造を構成する部品を含む、
請求項4に記載のコンピュータシミュレーション方法。
【請求項6】
前記部品モデルの少なくとも一つは、前記構造部品である電子装置に関するものであり、
前記第2ステップにおいて行う評価は、前記組立構造体に発生する電磁場が前記組立構造体に含まれる前記電子装置に与える影響についての、EMS(Electro Magnetic Susceptibility)特性の評価を含む、
請求項4に記載のコンピュータシミュレーション方法。
【請求項7】
前記部品モデルと、前記構造部品どうしをつなぐ連結部の位置およびインピーダンスを示す連結情報と、に基づいて前記組立構造体モデルを生成するステップを含む、
請求項5に記載のコンピュータシミュレーション方法。
【請求項8】
前記連結部のインピーダンスは、前記連結部の接触インピーダンスまたは表面抵抗を規定する、
請求項7に記載のコンピュータシミュレーション方法。
【請求項9】
前記連結部のインピーダンスは、連結された隣接する2つの前記構造部品の実物を用いて、前記構造部品の間の高周波伝達特性から決定される、
請求項8に記載のコンピュータシミュレーション方法。
【請求項10】
前記組立構造体は車両であって、
前記組立構造体モデルの生成に用いられる前記部品モデルには、前記構造部品としての前記車両の動力装置の前記部品モデルが含まれる、
請求項4ないし9のいずれか一項に記載のコンピュータシミュレーション方法。
【請求項11】
アンテナからの電波放射により発生する、複数の構造部品が連結されて構成される組立構造体の電磁場の評価を行うシミュレーション装置であって、
前記アンテナの電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、前記アンテナが空間内に放射する電磁波を模擬し、前記空間内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させる空間電磁場算出部と、
前記組立構造体についての前記構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルと、前記記憶装置に記憶された前記空間電磁場データと、を用いて、前記空間内に置かれた前記組立構造体に発生する電磁場についての評価を行う評価部と、
を備える、
シミュレーション装置。
【請求項12】
アンテナからの電波放射により発生する、複数の構造部品が連結されて構成される組立構造体の電磁場の評価を行うコンピュータに、
前記アンテナの電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、前記アンテナが空間内に放射する電磁波を模擬し、前記空間内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させる第1ステップと、
前記組立構造体についての前記構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルと、前記記憶装置に記憶された前記空間電磁場データと、を用いて、前記空間内に置かれた前記組立構造体に発生する電磁場についての評価を行う第2ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部品が組み合わされて構成される車両等の組立構造体の電磁場についての評価を行うコンピュータシミュレーション方法、シミュレーション装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の物体の電磁イミュニティを評価する方法として、電波暗室内に配されたアンテナおよび評価対象物をモデル化し、上記アンテナからの電磁波と、その電磁波により上記評価対象に発生する電磁場とを、コンピュータにより模擬することが行われている。
特許文献1には、車両等の物体の電磁イミュニティを、実物を用いることなく推定するコンピュータ支援シミュレーション方法が開示されている。このシミュレーション方法では、物体の複数の部分領域のそれぞれの中で、遠距離の点への電荷及び電流の作用を多極展開の形で表すグローバル多極展開と、それぞれの部分領域の中の点への電荷及び電流の作用を表すローカル多極展開とを行い、グローバル多極展開とローカル多極展開との重畳により物体の電磁場が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-38059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来技術においては、評価対象物である車両の型式等に応じて当該対象物の外表面や内部構造物の3次元配置が変わるごとに、アンテナによる電磁波照射から評価対象物における電磁場発生までのプロセスを含む全プロセスのシミュレーション演算を実行する必要があり、シミュレーションに要する演算時間や演算処理量が膨大となる。
本発明が解決しようとする課題は、形状や構造の異なる種々の組立構造体に発生する電磁場についてのコンピュータシミュレーションにおいて、シミュレーションに要する処理時間や処理量を低減することである。本願は上記課題の解決により、車両の電磁イミュニティに関連する安全性の向上を図り、延いては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一の態様は、アンテナからの電波放射により発生する、複数の構造部品が連結されて構成される組立構造体の電磁場の評価を行うコンピュータシミュレーション方法であって、コンピュータが、前記アンテナの電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、前記アンテナが空間内に放射する電磁波を模擬し、前記空間内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させる第1ステップと、前記組立構造体についての前記構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルと、前記記憶装置に記憶された前記空間電磁場データと、を用いて、前記空間内に置かれた前記組立構造体に発生する電磁場についての評価を行う第2ステップと、を含む、コンピュータシミュレーション方法である。
本発明の他の態様によると、複数の前記組立構造体のそれぞれの前記組立構造体を用いて前記第2ステップが繰り返される。
本発明の他の態様によると、前記第2ステップにおいて行う評価は、前記組立構造体に発生する電磁場が前記空間内に放出する電磁ノイズについての、EMI(ElectromagneticInterference)特性の評価を含む。
本発明の他の態様によると、前記組立構造体モデルは、前記構造部品の形状および電気的特性を示す部品モデルを含む。
本発明の他の態様によると、前記構造部品は、前記組立構造体の外面に現れない内部構造を構成する部品を含む。
本発明の他の態様によると、前記部品モデルの少なくとも一つは、前記構造部品である電子装置に関するものであり、前記第2ステップにおいて行う評価は、前記組立構造体に発生する電磁場が前記組立構造体に含まれる前記電子装置に与える影響についての、EMS(ElectroMagneticSusceptibility)特性の評価を含む。
本発明の他の態様によると、前記部品モデルと、前記構造部品どうしをつなぐ連結部の位置およびインピーダンスを示す連結情報と、に基づいて前記組立構造体モデルを生成するステップを含む。
本発明の他の態様によると、前記連結部のインピーダンスは、前記連結部の接触インピーダンスまたは表面抵抗を規定する。
本発明の他の態様によると、前記連結部のインピーダンスは、連結された隣接する2つの前記構造部品の実物を用いて、前記構造部品の間の高周波伝達特性から決定される。
本発明の他の態様によると、前記組立構造体は車両であって、前記組立構造体モデルの生成に用いられる前記部品モデルには、前記構造部品としての前記車両の動力装置の前記部品モデルが含まれる。
本発明の他の態様は、アンテナからの電波放射により発生する、複数の構造部品が連結されて構成される組立構造体の電磁場の評価を行うシミュレーション装置であって、前記アンテナの電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、前記アンテナが空間内に放射する電磁波を模擬し、前記空間内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させる空間電磁場算出部と、前記組立構造体についての前記構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルと、前記記憶装置に記憶された前記空間電磁場データと、を用いて、前記空間内に置かれた前記組立構造体に発生する電磁場についての評価を行う評価部と、を備える、シミュレーション装置である。
本発明の更に他の態様は、アンテナからの電波放射により発生する、複数の構造部品が連結されて構成される組立構造体の電磁場の評価を行うコンピュータに、前記アンテナの電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、前記アンテナが空間内に放射する電磁波を模擬し、前記空間内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させる第1ステップと、前記組立構造体についての前記構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルと、前記記憶装置に記憶された前記空間電磁場データと、を用いて、前記空間内に置かれた前記組立構造体に発生する電磁場についての評価を行う第2ステップと、を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、形状や構造の異なる種々の組立構造体に発生する電磁場についてのコンピュータシミュレーションにおいて、シミュレーションに要する処理時間や処理量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るシミュレーション装置の構成を示す図である。
図2】シミュレーション装置のコンピュータが実行するコンピュータシミュレーション方法のフロー図である。
図3】シミュレーション装置のコンピュータが実行するモデル生成処理の手順を示すフロー図である。
図4】コンピュータシミュレーション方法により模擬される仮想的な評価空間の構成を示す図である。
図5】部品モデルの一例を示す図である。
図6】部品モデルの他の一例を示す図である。
図7】連結情報の一例を示す図である。
図8】連結情報の他の一例を示す図である。
図9】連結部のインピーダンスの測定方法の一例について説明するための図である。
図10】組立構造体モデルの一例を示す図である。
図11】コンピュータシミュレーション方法を用いた場合の、処理時間の改善効果について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るシミュレーション装置1の構成を示す図である。図2は、シミュレーション装置1のコンピュータにより実行されるコンピュータシミュレーション方法のフロー図である。図3は、シミュレーション装置1のコンピュータが実行するモデル生成処理の手順を示すフロー図である。また、図4は、上記コンピュータシミュレーション方法により模擬される仮想的な評価空間の構成を示す図である。
【0009】
このコンピュータシミュレーション方法では、アンテナからの電波放射により発生する、複数の構造部品が連結されて構成される組立構造体の、電磁場の評価を行う。具体的には、例えば、図4に示すように、仮想的な評価空間である電波暗室60の内部の空間61に配置された組立構造体62を評価対象として、同じ空間61に配置されたアンテナ63からの電波放射により組立構造体62に発生し得る電磁場が評価される。ここで、組立構造体62は、複数の構造部品が連結されて構成される構造体であり、本実施形態では、例えば、自動車等の四輪車両である。
【0010】
本実施形態では、特に、シミュレーション装置1のコンピュータは、アンテナ63の電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、アンテナ63が空間61内に放射する電磁波を模擬し、上記空間61内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させる。そして、シミュレーション装置1のコンピュータは、例えば、空間61内に種々の組立構造体62を順次、仮想的に配置し、記憶装置に記憶させた上記空間電磁場データを繰り返し用いて、それらの組立構造体62に発生する電磁場についての評価を順次行う。また、特に、この評価においては、シミュレーション装置1のコンピュータは、評価対象である組立構造体62について発生する電磁場の模擬計算のため、当該組立構造体62が含む構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルを用いる。
【0011】
図2を参照し、シミュレーション装置1のコンピュータが実行するコンピュータシミュレーション方法は、アンテナ63の電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、アンテナ63が空間61内に放射する電磁波を模擬し、空間61内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させる第1ステップ(S100)を含む。また、このコンピュータシミュレーション方法は、組立構造体62が含む構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルと、記憶装置に記憶させた空間電磁場データと、を用いて、空間61内に置かれた組立構造体62に発生する電磁場についての評価を行う第2ステップ(S200)を含む。
【0012】
具体的には、第1ステップ(S100)は、アンテナ63の電波放射特性を示すアンテナモデルを取得するステップ(S102)と、評価対象である組立構造体62についての、構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルを取得するステップ(S104)と、を含む。また、第1ステップ(S100)は、上記アンテナ63が空間61内に放射する電磁波を模擬するステップ(S106)と、上記取得した組立構造体モデルと、上記模擬した電磁波と、に基づき、空間61内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させるステップ(S108)と、を含む。
【0013】
また、第2ステップ(S200)は、評価対象である組立構造体62についての、構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルを取得するステップ(S202)と、上記取得した組立構造体モデルと、記憶装置に記憶させた空間電磁場データと、を用いて、空間61内に置かれた組立構造体62に発生する電磁場についての評価を行うステップ(S204)と、を含む。
【0014】
評価対象となるそれぞれの組立構造体62の組立構造体モデルは、例えば、シミュレーション装置1のコンピュータが上記第2ステップ(S200)の実行に先立って図3に示すモデル生成処理を実行することにより生成されて、予め記憶装置に記憶されるものとすることができる。
【0015】
図3に示すモデル生成処理では、シミュレーション装置1のコンピュータは、まず、評価対象となる組立構造体62の、構造部品の形状および電気的特性を示す部品モデルを取得し(S300)、それらの構造部品どうしをつなぐ連結部の位置およびインピーダンスを示す連結情報を取得する(S302)。そして、シミュレーション装置1のコンピュータは、上記部品モデルおよび上記連結情報に基づき、構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルを生成して、記憶装置に記憶する(S304)。
【0016】
上述したように、本実施形態では、シミュレーション装置1は、一例として、組立構造体62である四輪車両についての電磁場を評価する。
図1を参照し、シミュレーション装置1は、プロセッサ10と、メモリ11と、を備える。メモリ11は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成される。
【0017】
プロセッサ10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等を備えるコンピュータである。プロセッサ10は、プログラムが書き込まれたROM(Read Only Memory)、データの一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)等を有する構成であってもよい。そして、プロセッサ10は、機能要素又は機能ユニットとして、アンテナモデル取得部12と、空間電磁場算出部13と、部品モデル取得部14と、連結情報取得部15と、モデル生成部16と、評価部17と、を備える。
【0018】
プロセッサ10が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータであるプロセッサ10が、メモリ11に記憶されているシミュレーションプログラム18を実行することにより実現される。なお、上記シミュレーションプログラム18は、コンピュータが読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、プロセッサ10が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0019】
アンテナモデル取得部12は、図2におけるステップS102を実行して、アンテナ63の電波放射特性を示すアンテナモデルを取得する。アンテナモデルは、例えば、予め従来技術に従って生成されて、シミュレーション装置1と通信可能に接続された記憶装置3に記憶されているものとすることができる。
【0020】
空間電磁場算出部13は、図2における第1ステップ(S100)を実行する。すなわち、空間電磁場算出部13は、上記アンテナモデルを用いて、上記アンテナ63が電波暗室60の空間61に放射する電磁波を模擬する。また、空間電磁場算出部13は、評価対象である組立構造体62についての、構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルを取得する。そして、空間電磁場算出部13は、上記取得した組立構造体モデルを用いて、アンテナ63が放射する電磁波により空間61内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データ6を算出して、例えば記憶装置3に記憶させる。この場合において、空間電磁場算出部13は、必ずしも空間61の全体についての空間電磁場データを算出する必要はない。空間電磁場算出部13は、例えば、空間61内において組立構造体62が配置され得る部分空間61a(図4参照)についてのみ空間電磁場データを算出するものとしてもよい。
【0021】
部品モデル取得部14は、図3に示すステップS300を実行し、構造部品の形状および電気的特性を示す部品モデルを取得する。部品モデルとして取得される構造部品には、組立構造体の外面に現れない内部構造を構成する構造部品の部品モデルを含み得る。例えば、部品モデルは、組立構造体である車両の外面に現れる構造部品として、ボンネット、座席ドア、車両ボディなどを含み得る。また、例えば、部品モデルは、車両の外面に現れない内部構造を構成する構造部品として、車体フレーム、乗員シート、インストルメントパネルなどを含み得る。また、部品モデルの少なくとも一つは、構造部品である電子装置に関するものであり得る。また、本実施形態のように組立構造体62が車両である場合には、部品モデルの少なくとも一つは、構造部品としての上記車両の動力装置(例えば、内燃機関や駆動モータなど)の部品モデルであり得る。
【0022】
部品モデルには、これらの構造部品の形状および電気的特性についての情報が含まれる。電気的特性は、例えば、導電率(抵抗率)、誘電率、透磁率、およびこれらの周波数特性などを含み得る。これらの部品モデルの情報は、例えば、CADシステム2において作成された部品設計図およびその素材情報を記憶した記憶装置3のデザインDB(データベース)4から取得され得る。
【0023】
図5は、部品モデルの一例である座席ドア20のモデルを示す図である。座席ドア20は、例えば、車両ボディに対してヒンジにより連結されるヒンジドアである。図示のモデルでは、座席ドア20のサイズ情報(図示右下の枠内)と、座席ドア20に設けられた窓の電気的特性(図示右上の枠内)と、座席ドア20の本体部分の電気的特性(図示左下の枠内)が示されている。
【0024】
図6は、部品モデルの他の一例である座席ドア21のモデルを示す図である。座席ドア21は、例えば、車両ボディに対して摺動部により連結されるスライドドアである。図示のモデルでは、座席ドア21のサイズ情報(図示右下の枠内)と、座席ドア21に設けられた窓の電気的特性(図示右上の枠内)と、座席ドア21の本体部分の電気的特性(図示左下の枠内)が示されている。
【0025】
図1を参照し、連結情報取得部15は、図3に示すステップS302を実行し、構造部品どうしをつなぐ連結部の位置およびインピーダンスを示す連結情報を取得する。連結部は、構造部品をつなぐ溶接部、接着部、ヒンジ部、又は隣接する2つの構造部品が摺動する摺動部を含み得る。また、連結部のインピーダンスは、例えば、連結部の接触インピーダンスまたは表面抵抗を規定するものであり得る。例えば、構造部品間での直接的な接触面積の少ない接着部や、ヒンジ部および摺動部などの可動な連結部のインピーダンスは、接触抵抗で規定され得る。また、溶接部のインピーダンスは、表面抵抗で規定されるものとすることができる。
【0026】
図7は、連結情報の一例である座席ドア20の連結情報を示す図である。図示の例では、座席ドア20と車両ボディ22とを連結する2つのヒンジ30aおよび30bについての連結情報が、図示下部の2つの枠内にそれぞれ示されている。連結情報は、例えば、図示のように、それぞれのヒンジが連結する2つの構造部品の識別と、ヒンジが設けられている位置座標と、連結部としてのヒンジがもつインピーダンスの周波数ごとの数値が示される。上記位置座標は、例えば、座席ドア20に設定された原点位置(不図示)に対するローカル座標であり得る。
【0027】
図8は、連結情報の他の一例である座席ドア21の連結情報を示す図である。図示の例では、座席ドア20と車両ボディ22とを連結する摺動部31についての連結情報が、図示下部の枠内に示されている。連結情報は、例えば、摺動部31が連結する2つの構造部品の識別と、ローカル座標で示された摺動部31の位置範囲と、連結部としての摺動部31がもつインピーダンスの周波数ごとの数値が示される。
【0028】
なお、連結部のインピーダンスは、連結された隣接する2つの構造部品の実物を用いて、構造部品の間の高周波伝達特性から決定され得る。図9は、ヒンジドアである座席ドア20と車両ボディ22との間の、ヒンジ30a、30bを用いた連結部のインピーダンスの測定方法について説明するための図である。インピーダンスは、例えば、ネットワークアナライザ40を用いて測定される車両ボディ22と座席ドア20との間の高周波伝達特性であるSパラメータの値から算出され得る。
【0029】
なお、ヒンジ30a、30bのそれぞれの個別のインピーダンスは、例えば、車両ボディ22と座席ドア20とを、ヒンジ30aおよびヒンジ30bのそれぞれ一方のみを用いて連結したときのSパラメータ実測値から算出され得る。これに代えて、ヒンジ30a、30bを一組として、これらのヒンジの双方を用いたときのインピーダンス実測値により、座席ドア20についての連結情報を作成するものとしてもよい。
【0030】
図1を参照し、モデル生成部16は、図3に示すステップS304を実行し、部品モデル取得部14が取得した部品モデルと、連結情報取得部15が取得した連結情報と、に基づき、構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルを生成する。モデル生成部16は、生成した組立構造体モデルを、例えば記憶装置3の構造体モデルDB5に記憶する。
【0031】
図10は、組立構造体モデルの一例を示す図である。図示の例では、ヒンジ30a、30b、摺動部31のほか、車両ボディ22と前部バンパーとの溶接部34a、34b、34c、および、車両ボディ22と前部バンパーとの溶接部35a、35b、35cが示されている。上述したように、組立構造体モデルは、組立構造体である車両の内部構造の部品として、例えば、上述した車体フレーム、乗員シート、インストルメントパネル(いずれも不図示)などの構成部品を含むことができ、それらの部品の連結部についても上記と同様にモデル化され得る。
【0032】
このように構成された組立構造体モデルは、車両等の電磁場シミュレーションにおいて従来用いられている、構造体の外殻と当該外殻の電気的特性のみが規定される、いわゆるホワイトボディモデルとは異なり、組立構造体の内部構造物の情報と、構造部品間の電気的な連結情報とを含むため、従来に比べてより正確な電磁場シミュレーションを行うことが可能となる。
【0033】
モデル生成部16は、種々の組立構造体62(例えば、型式や車種の異なる種々の車両)についての組立構造体モデルをそれぞれ生成して、構造体モデルDB5に記憶させておくものとすることができる。
【0034】
図1を参照し、評価部17は、図2に示す第2ステップ(S200)を実行して、組立構造体62の電磁場についての評価を行う。すなわち、評価部17は、モデル生成部16により生成されて構造体モデルDB5に記憶された組立構造体モデルのうち、評価対象とする組立構造体62の組立構造体モデルを、構造体モデルDB5から取得する。そして、評価部17は、空間電磁場算出部13が記憶装置3に記憶させた空間電磁場データ6と、上記取得した組立構造体モデルを用いて、評価対象である組立構造体62に発生する電磁場についての評価を行う。評価対象とする組立構造体62の指定は、従来技術に従い、例えば、シミュレーション装置1に接続されたタッチパネル等の入力装置(不図示)を介して、人間であるオペレータから指示されるものとすることができる。
【0035】
本実施形態では、特に、評価部17は、図2に示す第2ステップ(S200)を繰り返し実行し、構造体モデルDB5に記憶された複数の(又は、種々の)組立構造体62のそれぞれの組立構造体モデルを順次読み出し、記憶装置3に記憶させた空間電磁場データ6を繰り返し用いて、種々の組立構造体62の電磁場評価を行うものとすることができる。
【0036】
上記電磁場の評価は、組立構造体62に発生する電磁場が空間61内に放出する電磁ノイズについての、EMI(Electromagnetic Interference)特性の評価を含み得る。また、上記電磁場の評価は、組立構造体62に発生する電磁場がその組立構造体62に含まれる電子装置に与える影響についての、EMS(Electro Magnetic Susceptibility)特性の評価を含み得る。
【0037】
これらの評価は、例えば、空間電磁場データ6および組立構造体62の組立構造体モデルを用いて、アンテナ63が空間61内に形成する電磁場により組立構造体62の内部及び又は外部の各注目ポイントにおいて発生し得る電磁場の周波数特性を模擬すること等により行うものとすることができる。
【0038】
上記のシミュレーション装置1及び又はコンピュータシミュレーション方法では、組立構造体62が配される仮想空間である空間61においてアンテナ63が形成する空間電磁場についてのデータが予め算出されて、空間電磁場データ6としてメモリ11に記憶される。従って、形状や構造の異なる種々の組立構造体に発生する電磁場についてコンピュータシミュレーションを繰り返す場合には、それらのシミュレーション実行ごとにアンテナ63が空間61に発生させる空間電磁場をあらためて算出する必要はなく、メモリ11に記憶された空間電磁場データ6を繰り返し用いればよい。例えば、図2のステップ202で取得する評価対象の組立構造体モデルが、図2のステップS104で取得した組立構造体モデルと同様な車両構造体である場合には、第1ステップS100を繰り返すことなく、第2ステップS200を実行して、評価対象の電磁場を評価することができる。このため、シミュレーション装置1及び又はコンピュータシミュレーション方法では、種々の組立構造体に発生する電磁場についてコンピュータシミュレーションを繰り返し実行する際に、プロセッサ10における処理時間や処理量を低減することができる。
【0039】
図11は、本実施形態に係るコンピュータシミュレーション方法を用いた場合の、プロセッサ10において要した処理時間の測定結果を示す図である。図11に示す表において、タイトル行を除く図示上から1行目は、本実施形態のコンピュータシミュレーション方法を用いた場合の処理時間を示し、2行目は、従来技術における処理時間を示している。また、タイトル列を除く図示左から1列目は、「1回目」のシミュレーション実行における処理時間であり、2列目は。「2回目」のシミュレーション実行における処理時間である。
【0040】
図11に示す1回目のシミュレーション実行の処理時間は、本実施形態のコンピュータシミュレーション方法においても空間電磁場データの算出処理時間が含まれることから、シミュレーション実行のたびに空間電磁場の計算を行う従来技術と同等の処理時間となっている。これに対し、2回目のシミュレーション実行の処理時間は、本実施形態のコンピュータシミュレーション方法では、空間電磁場データの再算出を要しないことから、従来技術に比べて大幅に処理時間が低減されている。
【0041】
[他の実施形態]
評価対象である組立構造体62は、上述した実施形態では四輪車両であるものとしたが、複数の構造部品を含んで構成される任意の構造体であり得る。例えば、組立構造体62は、二輪車両および四輪車両等の陸上走行車両、航空機やドローン等の飛翔体、船舶や潜水艇等の任意の移動体であり得る。また、例えば、組立構造体62は、移動体に限らず、携帯電話、無線通信器、あるいはテレビや冷蔵庫などの家電製品であってもよい。
【0042】
上述した実施形態では、一つのアンテナモデルを用いて一つの空間電磁場データ6が算出されて記憶されるものとしたが、型式の異なる種々のアンテナモデルについてのそれぞれの空間電磁場データ6が算出されて記憶されるものとしてもよい。この場合、電磁場評価においては、評価の目的等に応じて、いずれかの空間電磁場データ6が選択的に繰り返し用いられるものとすることができる。
【0043】
デザインDB4、構造体モデルDB5、及び又は空間電磁場データ6は、記憶装置3に限らず、シミュレーション装置1のメモリ11に保存されてもよい。
【0044】
なお、本発明は上記の実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0045】
[上記実施形態によりサポートされる構成]
上述した実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0046】
(構成1)アンテナからの電波放射により発生する、複数の構造部品が連結されて構成される組立構造体の電磁場の評価を行うコンピュータシミュレーション方法であって、コンピュータが、前記アンテナの電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、前記アンテナが空間内に放射する電磁波を模擬し、前記空間内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させる第1ステップと、前記組立構造体についての前記構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルと、前記記憶装置に記憶された前記空間電磁場データと、を用いて、前記空間内に置かれた前記組立構造体に発生する電磁場についての評価を行う第2ステップと、を含む、コンピュータシミュレーション方法。
構成1のコンピュータシミュレーション方法によれば、記憶装置に記憶された空間電磁場データを種々の組立構造体について繰り返し用いることができるので、評価のたびに空間電磁場を算出する従来技術に比べて、評価に要する処理時間や処理量を低減することができる。
【0047】
(構成2)複数の前記組立構造体のそれぞれの前記組立構造体を用いて前記第2ステップが繰り返される、構成1に記載のコンピュータシミュレーション方法。
構成2のコンピュータシミュレーション方法によれば、記憶装置に記憶された空間電磁場データを種々の組立構造体について繰り返し用いるので、評価に要する処理時間や処理量が低減される。
【0048】
(構成3)前記第2ステップにおいて行う評価は、前記組立構造体に発生する電磁場が前記空間内に放出する電磁ノイズについての、EMI(ElectromagneticInterference)特性の評価を含む、構成1に記載のコンピュータシミュレーション方法。
構成3のコンピュータシミュレーション方法によれば、組立構造体についてのEMI評価におけるコンピュータの処理時間や処理量を低減することができる。
【0049】
(構成4)前記組立構造体モデルは、前記構造部品の形状および電気的特性を示す部品モデルを含む、構成1に記載のコンピュータシミュレーション方法。
構成4のコンピュータシミュレーション方法によれば、組立構造体が構造部品の集合体としてモデル化されるので、コンピュータの処理時間を低減しつつ、組立構造体の電磁場についての評価を精度良く行うことができる。
【0050】
(構成5)前記構造部品は、前記組立構造体の外面に現れない内部構造を構成する部品を含む、構成4に記載のコンピュータシミュレーション方法。
構成5のコンピュータシミュレーション方法によれば、組立構造体の内部構造もモデル化されるので、コンピュータの処理時間を低減しつつ、組立構造体の電磁場についての評価をさらに精度良く行うことができる。
【0051】
(構成6)前記部品モデルの少なくとも一つは、前記構造部品である電子装置に関するものであり、前記第2ステップにおいて行う評価は、前記組立構造体に発生する電磁場が前記組立構造体に含まれる前記電子装置に与える影響についての、EMS(ElectroMagneticSusceptibility)特性の評価を含む、構成4に記載のコンピュータシミュレーション方法。
構成6のコンピュータシミュレーション方法によれば、組立構造体についてのEMS評価におけるコンピュータの処理時間や処理量を低減することができる。
【0052】
(構成7)前記部品モデルと、前記構造部品どうしをつなぐ連結部の位置およびインピーダンスを示す連結情報と、に基づいて前記組立構造体モデルを生成するステップを含む、構成5に記載のコンピュータシミュレーション方法。
構成7のコンピュータシミュレーション方法によれば、構造部品間の連結部の位置およびインピーダンスにより構造部品間の連結状態がモデル化されるので、コンピュータの処理時間を低減しつつ、組立構造体に発生する電磁場について実特性との乖離の少ないシミュレーション結果を得ることができる。
【0053】
(構成8)前記連結部のインピーダンスは、前記連結部の接触インピーダンスまたは表面抵抗を規定する、構成7に記載のコンピュータシミュレーション方法。
構成8のコンピュータシミュレーション方法によれば、連結部は、接触インピーダンスまたは表面抵抗が規定されるので、コンピュータの処理時間を低減しつつ、組立構造体に発生する電磁場についてのより良好なシミュレーション結果を得ることができる。
【0054】
(構成9)前記連結部のインピーダンスは、連結された隣接する2つの前記構造部品の実物を用いて、前記構造部品の間の高周波伝達特性から決定される、構成8に記載のコンピュータシミュレーション方法。
構成9のコンピュータシミュレーション方法によれば、連結部を規定するインピーダンスを容易に取得することができる。
【0055】
(構成10)前記組立構造体は車両であって、前記組立構造体モデルの生成に用いられる前記部品モデルには、前記構造部品としての前記車両の動力装置の前記部品モデルが含まれる、構成4ないし9のいずれかに記載のコンピュータシミュレーション方法。
構成10のコンピュータシミュレーション方法によれば、組立構造体である車両において主たるノイズ源となり得る動力装置の部品モデルを用いるので、車両のEMS特性などの評価を適切に行うことができる。
【0056】
(構成11)アンテナからの電波放射により発生する、複数の構造部品が連結されて構成される組立構造体の電磁場の評価を行うシミュレーション装置であって、前記アンテナの電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、前記アンテナが空間内に放射する電磁波を模擬し、前記空間内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させる空間電磁場算出部と、前記組立構造体についての前記構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルと、前記記憶装置に記憶された前記空間電磁場データと、を用いて、前記空間内に置かれた前記組立構造体に発生する電磁場についての評価を行う評価部と、を備える、シミュレーション装置。
構成11のコンピュータシミュレーション装置によれば、記憶装置に記憶された空間電磁場データを種々の組立構造体について繰り返し用いることができるので、評価のたびに空間電磁場を算出する従来技術に比べて、評価に要する処理時間や処理量を低減することができる。
【0057】
(構成12)アンテナからの電波放射により発生する、複数の構造部品が連結されて構成される組立構造体の電磁場の評価を行うコンピュータに、前記アンテナの電波放射特性を示すアンテナモデルを用いて、前記アンテナが空間内に放射する電磁波を模擬し、前記空間内に形成される電磁場のデータである空間電磁場データを算出して記憶装置に記憶させる第1ステップと、前記組立構造体についての前記構造部品の連なりをモデル化した組立構造体モデルと、前記記憶装置に記憶された前記空間電磁場データと、を用いて、前記空間内に置かれた前記組立構造体に発生する電磁場についての評価を行う第2ステップと、を実行させるプログラム。
構成12のプログラムによれば、コンピュータに実行させる組立構造体の電磁場についての評価において、記憶装置に記憶された空間電磁場データを種々の組立構造体について繰り返し用いることができるので、評価のたびに空間電磁場を算出する従来技術に比べて、評価に要する処理時間や処理量を低減することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…シミュレーション装置、2…CADシステム、3…記憶装置、4…デザインDB、5…構造体モデルDB、6…空間電磁場データ、10…プロセッサ、11…メモリ、12…アンテナモデル取得部、13…空間電磁場算出部、14…部品モデル取得部、15…連結情報取得部、16…モデル生成部、17…評価部、18…シミュレーションプログラム、20、21…座席ドア、22…車両ボディ、30a、30b、32a、32b、33a、33b…ヒンジ、31…摺動部、34a、34b、34c、35a、35b、35c…溶接部、40…ネットワークアナライザ、50、51、52…グラフ、60…電波暗室、61…空間、61a…部分空間、62…組立構造体、63…アンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11