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特開2024-17741単相ブラシレス直流モータ、送風機、および送風装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017741
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】単相ブラシレス直流モータ、送風機、および送風装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20240201BHJP
   H02K 21/22 20060101ALI20240201BHJP
   H02K 29/03 20060101ALI20240201BHJP
   H02K 29/08 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H02K1/14 Z
H02K21/22 M
H02K29/03
H02K29/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120585
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀哲
【テーマコード(参考)】
5H019
5H601
5H621
【Fターム(参考)】
5H019AA01
5H019BB01
5H019BB05
5H019BB20
5H019CC04
5H601AA09
5H601BB12
5H601CC01
5H601CC12
5H601CC15
5H601DD02
5H601DD11
5H601GA02
5H601GB04
5H601GB12
5H601GB22
5H601GB33
5H621AA01
5H621BB07
5H621BB08
5H621GA04
5H621GA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造コストが増大することを抑制するとともに、生産性を高めることができる、単相ブラシレス直流モータ、送風機、および送風装置を提供する。
【解決手段】単相ブラシレス直流モータ15は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向して配置されるステータ31と、を備える。ロータは、周方向に沿って複数の磁極が設けられるマグネット22を有する。ステータは、マグネットと径方向に隙間を介して対向するステータコア31を有する。ステータコアは、円環状のコアバック部32と、コアバック部からマグネットに向けて径方向に突出する複数のティース部33と、を有する。複数のティース部は、周方向に沿って互いに間隔をあけて配置される。複数のティース部のそれぞれとマグネットとの間の径方向の隙間は、周方向一方側から周方向他方側に向かうにしたがって大きく設けられる。ロータは、周方向一方側から周方向他方側に向けて回転する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機のインペラ部を第1軸線回りに回転させる単相ブラシレス直流モータであって、
前記第1軸線を中心として回転可能なロータと、
前記ロータと径方向に隙間を介して対向して配置されるステータと、
を備え、
前記ロータは、周方向に沿って複数の磁極が設けられるマグネットを有し、
前記ステータは、前記マグネットと径方向に隙間を介して対向するステータコアを有し、
前記ステータコアは、円環状のコアバック部と、前記コアバック部から前記マグネットに向けて径方向に突出する複数のティース部と、を有し、
複数の前記ティース部は、周方向に沿って互いに間隔をあけて配置され、
複数の前記ティース部のそれぞれと前記マグネットとの間の径方向の隙間は、周方向一方側から周方向他方側に向かうにしたがって大きく設けられ、
前記ロータは、周方向一方側から周方向他方側に向けて回転する、単相ブラシレス直流モータ。
【請求項2】
前記ロータが回転を開始する起動時において、前記ロータは、周方向他方側に向けて回転する、請求項1に記載の単相ブラシレス直流モータ。
【請求項3】
前記ステータは、前記ステータコアに取り付けられたコイル部を有し、
前記起動時において、前記マグネットの磁界と、前記コイル部に電流が流れることで複数の前記ティース部に生じる磁界とによって、前記マグネットに周方向他方側を向く引力が加わる、請求項2に記載の単相ブラシレス直流モータ。
【請求項4】
制御部を備え、
前記ステータは、前記ステータコアに取り付けられたコイル部を有し、
前記制御部は、前記コイル部に供給される電流を制御し、
前記起動時において、前記制御部は、前記コイル部に供給する電流の向きを、前記マグネットの磁界と、複数の前記ティース部のそれぞれに生じる磁界とによって、前記マグネットに周方向他方側を向く引力が加わる向きに制御する、請求項2に記載の単相ブラシレス直流モータ。
【請求項5】
前記ロータの起動後において、前記制御部は、前記ロータが所定角度回転する毎に、前記マグネットの磁界と、複数の前記ティース部のそれぞれに生じる磁界とによって、前記マグネットに周方向他方側を向く斥力が加わる向きに、前記コイル部に供給する電流の向きを切り替える、請求項4に記載の単相ブラシレス直流モータ。
【請求項6】
前記制御部と電気的に接続され、前記マグネットの磁界を検知するセンサを備え、
前記制御部は、前記センサの検出結果に基づいて、前記コイル部に供給する電流の向きを切り替える、請求項4に記載の単相ブラシレス直流モータ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の単相ブラシレス直流モータと、
前記ロータと接続される前記インペラ部と、を備える、送風機。
【請求項8】
請求項7に記載の送風機と、第2送風機と、を備える送風装置であって、
前記第2送風機は、第2インペラ部を第2軸線回りに回転させる第2単相ブラシレス直流モータを、備え、
前記第2単相ブラシレス直流モータは、
前記第2インペラ部と接続され、第2軸線を中心として回転可能な第2ロータと、
前記第2ロータと前記第2軸線を中心とする径方向に隙間を介して対向して配置される第2ステータと、
を備え、
前記第2ステータの構成は、前記送風機が備える前記ステータの構成と同じ構成であり、
前記第2ロータは、前記第2軸線を中心とする周方向に沿って複数の磁極が設けられる第2マグネットを有し、
前記第2ステータが有する複数の前記ティース部のそれぞれと前記第2マグネットとの間の前記第2軸線を中心とする径方向の隙間は、前記第2軸線を中心とする周方向一方側から前記第2軸線を中心とする周方向他方側に向かうにしたがって大きく設けられ、
前記第2ロータは、前記第2軸線を中心とする周方向他方側から前記第2軸線を中心とする周方向一方側に向けて回転する、送風装置。
【請求項9】
前記第2単相ブラシレス直流モータの起動時において、前記第2マグネットの磁界と、複数の前記ティース部のそれぞれに生じる磁界とによって、前記第2マグネットに前記第2軸線を中心とする周方向一方側を向く斥力が加わり、前記第2ロータは、前記第2軸線を中心とする周方向他方側から前記第2軸線を中心とする周方向一方側に向けて回転する、請求項8に記載の送風装置。
【請求項10】
前記送風機および前記第2送風機それぞれの送風方向は互いに同じ向きであり、
前記送風方向に見て、前記送風機および前記第2送風機は、互いに並んで配置される、請求項8に記載の送風装置。
【請求項11】
前記送風機および前記第2送風機それぞれの送風方向は互いに同じ向きであり、
前記送風方向に見て、前記送風機および前記第2送風機は、互いに重なって配置される、請求項8に記載の送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相ブラシレス直流モータ、送風機、および送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータおよびステータを有する単相ブラシレス直流モータが知られている。例えば、特許文献1には、ステータの形状を周方向に非対称な形状とすることで、ロータの回転トルク及びコギングトルクの双方が零になる死点が構成されることを抑制する単相ブラシレスモータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-213041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような単相ブラシレスモータでは、ロータを起動する際の駆動トルクが、ロータの回転方向によって異なる。そのため、ロータを起動する際の駆動トルクが小さい側にロータを起動する場合において、ロータにかかる負荷が大きいと、ロータを正常に起動できない虞があった。そのため、単相ブラシレスモータでは、ロータの回転方向によって、異なる形状のステータを用いる必要があった。したがって、単相ブラシレスモータの製造コストが増大するとともに、ステータを構成する部品の取違い等のため単相ブラシレスモータの生産性を高めることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、ロータの回転方向によらず、ステータの共通化を図ることによって、製造コストが増大することを抑制するとともに、生産性を高めることができる、単相ブラシレス直流モータ、送風機、および送風装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の単相ブラシレス直流モータの一つの態様は、送風機のインペラ部を第1軸線回りに回転させる単相ブラシレス直流モータであって、前記第1軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータと径方向に隙間を介して対向して配置されるステータと、を備える。前記ロータは、周方向に沿って複数の磁極が設けられるマグネットを有する。前記ステータは、前記マグネットと径方向に隙間を介して対向するステータコアを有する。前記ステータコアは、円環状のコアバック部と、前記コアバック部から前記マグネットに向けて径方向に突出する複数のティース部と、を有する。複数の前記ティース部は、周方向に沿って互いに間隔をあけて配置される。複数の前記ティース部のそれぞれと前記マグネットとの間の径方向の隙間は、周方向一方側から周方向他方側に向かうにしたがって大きく設けられる。前記ロータは、周方向一方側から周方向他方側に向けて回転する。
【0007】
本発明の送風機の一つの態様は、上記の単相ブラシレス直流モータと、前記ロータと接続される前記インペラ部と、を備える。
【0008】
本発明の送風装置の一つの態様は、上記の送風機と、第2送風機と、を備える送風装置であって、前記第2送風機は、第2インペラ部を第2軸線回りに回転させる第2単相ブラシレス直流モータを、備える。前記第2単相ブラシレス直流モータは、前記第2インペラ部と接続され、第2軸線を中心として回転可能な第2ロータと、前記第2ロータと前記第2軸線を中心とする径方向に隙間を介して対向して配置される第2ステータと、を備える。前記第2ステータの構成は、前記送風機が備える前記ステータの構成と同じ構成である。前記第2ロータは、前記第2軸線を中心とする周方向に沿って複数の磁極が設けられる第2マグネットを有する。前記第2ステータが有する複数の前記ティース部のそれぞれと前記第2マグネットとの間の前記第2軸線を中心とする径方向の隙間は、前記第2軸線を中心とする周方向一方側から前記第2軸線を中心とする周方向他方側に向かうにしたがって大きく設けられる。前記第2ロータは、前記第2軸線を中心とする周方向他方側から前記第2軸線を中心とする周方向一方側に向けて回転する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、単相ブラシレス直流モータ、送風機、および送風装置において、ロータの回転方向によらず、ステータの共通化を図ることによって、製造コストが増大することを抑制するとともに、生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の送風装置を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態の送風機を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態の送風機の断面図であって、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、第1実施形態の単相ブラシレス直流モータの第1電流パターンを示す図である。
図5図5は、第1実施形態の単相ブラシレス直流モータの磁気力を説明する第1の断面図である。
図6図6は、第1実施形態の単相ブラシレス直流モータの磁気力を説明する第2の断面図である。
図7図7は、第1実施形態の単相ブラシレス直流モータの磁気力を説明する第3の断面図である。
図8図8は、第1実施形態の単相ブラシレス直流モータの磁気力を説明する第4の断面図である。
図9図9は、第1実施形態の第2単相ブラシレス直流モータの第2電流パターンを示す図である。
図10図10は、第1実施形態の第2単相ブラシレス直流モータの磁気力を説明する第1の断面図である。
図11図11は、第1実施形態の第2単相ブラシレス直流モータの磁気力を説明する第2の断面図である。
図12図12は、第1実施形態の第2単相ブラシレス直流モータの磁気力を説明する第3の断面図である。
図13図13は、第2実施形態の送風装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る送風機について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0012】
以下の説明において図には、適宜、Z軸を示す。Z軸は、以下に説明する実施形態の単相ブラシレス直流モータの回転軸である第1軸線J1が延びる方向を示す。各図に示す第1軸線J1は、仮想軸線である。以下の説明において、第1軸線J1が延びる方向、つまりZ軸と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「上側」または「軸方向一方側」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「下側」または「軸方向他方側」と呼ぶ。第1軸線J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。第1軸線J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0013】
各図に示す第2軸線J2は、第2単相ブラシレス直流モータの回転軸である。第2軸線J2は、仮想軸線である。以下の実施形態において、第2軸線J2は、第1軸線J1と平行である。以下の説明において、第2軸線J2が延びる方向、つまりZ軸と平行な方向を「第2軸方向」と呼ぶ。第2軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「上側」または「第2軸方向一方側」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「下側」または「第2軸方向他方側」と呼ぶ。第2軸線J2を中心とする径方向を単に「第2径方向」と呼ぶ。第2軸線J2を中心とする周方向を単に「第2周方向」と呼ぶ。なお、上側および下側は、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0014】
周方向は、各図において矢印θ1で示される。周方向のうち矢印θ1が向く側(+θ1側)を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θ1が向く側と逆側(-θ1側)を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、上側から見て第1軸線J1回りに反時計回りに進む側である。周方向他方側は、上側から見て第1軸線J1回りに時計回りに進む側である。
【0015】
第2周方向は、各図において矢印θ2で示される。周方向のうち矢印θ2が向く側(+θ2側)を「第2周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θ2が向く側と逆側(-θ2側)を「第2周方向他方側」と呼ぶ。第2周方向一方側は、上側から見て第2軸線J2回りに反時計回りに進む側である。第2周方向他方側は、上側から見て第2軸線J2回りに時計回りに進む側である。
【0016】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の送風装置1は、送風機10と、第2送風機110と、を備える。本実施形態において、送風機10および第2送風機110は、それぞれ、遠心ファンである。送風機10および第2送風機110は、接続部2を介して、互いに繋がる。送風機10の内部には、送風路40aが設けられる。送風路40aの内部を周方向他方側(-θ1側)に向けて流れる空気AF1は、排気口40bを介して、送風機10の外部に送り出される。第2送風機110の内部には、送風路140aが設けられる。送風路140aの内部を第2周方向一方側(+θ2側)に向けて流れる空気AF2は、排気口140bを介して、第2送風機110の外部に送り出される。排気口40bおよび排気口140bは、互いに同じ方向に開口する。そのため、送風機10および第2送風機110それぞれの送風方向D1は、互いに同じ向きである。送風方向D1に見て、送風機10および第2送風機110は、互いに並んで配置される。よって、本実施形態の送風装置1によれば、2台の送風機が送風する風量を冷却対象物に送風できるため、冷却対象物を好適に冷却できる。
【0017】
送風機10は、単相ブラシレス直流モータ15と、ケース40と、インペラ部60と、を備える。本実施形態において、送風機10は、インペラ部60が第1軸線J1を中心に回転することによって、空気を径方向外側に向かって送り出す遠心ファンである。なお、以下の説明では、単相ブラシレス直流モータ15を、モータ15と呼ぶ場合がある。
【0018】
図2に示すように、インペラ部60は、カップ部60aと、羽根64と、環状部65と、を有する。カップ部60aは、モータ15を内部に収容する。カップ部60aは、インペラ天壁部61と、インペラ円筒部62と、曲面部63と、を有する。インペラ天壁部61は、モータ15の上側に配置される。インペラ天壁部61には、インペラ天壁部61を軸方向に貫通するインペラ貫通孔61aが設けられる。軸方向に見て、インペラ貫通孔61aは、第1軸線J1を中心とする略円形状である。インペラ円筒部62は、第1軸線J1を中心とする略円筒状である。曲面部63は、径方向内側に向けて凸となる曲面状である。
【0019】
図1に示すように、羽根64は、周方向に沿って間隔をあけて複数設けられる。図2に示すように、各羽根64それぞれの径方向内側の端部のうち下側の端部は、曲面部63の径方向外側の端部と繋がる。環状部65は、第1軸線J1を中心とする円環状である。環状部65は、複数の羽根64の上側の端部のうち径方向外側の部分と繋がる。本実施形態において、インペラ部60は、第1軸線J1回りに周方向他方側(-θ1側)に向けて回転する。
【0020】
ケース40は、モータ15およびインペラ部60を内部に収容する。ケース40は、第1ケース部材41と、第2ケース部材42と、を有する。
【0021】
第1ケース部材41は、第1側壁部41aおよび天壁部41bを有する。図1に示すように、第1ケース部材41は、第1開口部41cを有する。図2に示すように、第1側壁部41aは、軸方向に延びる略円筒状である。第1側壁部41aは、インペラ部60の上側の部分を径方向外側から囲む。天壁部41bは、略円環板状である。天壁部41bの板面は、軸方向を向いている。天壁部41bの径方向外側の端部は、第1側壁部41aの上側の端部と繋がる。天壁部41bには、吸気口41dが設けられる。吸気口41dは、天壁部41bを軸方向に貫通する孔である。図1に示すように、第1開口部41cは、周方向他方側(-θ1側)に開口する。図2に示すように、第1ケース部材41の内面は送風路40aの上側の部分を構成する。
【0022】
第2ケース部材42は、第2側壁部42aおよび底壁部42cを有する。図1に示すように、第2ケース部材42は、第2開口部42bを有する。図2に示すように、第2側壁部42aは、軸方向に延びる略円筒状である。第2側壁部42aは、インペラ部60の下側の部分を径方向外側から囲む。
【0023】
底壁部42cは、径方向に広がる略円環板状である。底壁部42cの板面は、軸方向を向いている。底壁部42cの径方向外側の端部は、第2側壁部42aの下側の端部と繋がる。第2ケース部材42の内面は、送風路40aの下側の部分を構成する。底壁部42cは、基板収容部42dと、底壁中央孔42hと、を有する。
【0024】
基板収容部42dは、底壁部42cの上側を向く面から下側に窪む穴である。底壁中央孔42hは、底壁部42cを軸方向に貫通する孔である。軸方向に見て、底壁中央孔42hは、第1軸線J1を中心とする略円形状である。
【0025】
図1に示すように、第2開口部42bは、周方向他方側(-θ1側)に開口する。軸方向に見て、第2開口部42bは、第1開口部41cと重なる。第1開口部41cと第2開口部42bとは、排気口40bを構成する。送風路40aを周方向他方側に向けて流れる空気は、排気口40bを介して、送風機10の外部に流れ出る。
【0026】
モータ15は、インペラ部60を第1軸線J1回りに回転させる。図2に示すように、モータ15は、スリーブ50と、ロータ20と、シャフト23と、ステータ30と、制御部70と、を備える。図3に示すように、モータ15は、センサ96を備える。
【0027】
図2に示すように、スリーブ50は、軸方向に延びる略円筒状である。スリーブ50の下側の端部は、底壁中央孔42hの内部に配置され、ケース40に固定される。スリーブ50の内周面には、軸受91,92が保持される。
【0028】
ロータ20は、第1軸線J1を中心として回転可能である。本実施形態において、ロータ20は、周方向一方側(+θ1側)から周方向他方側(-θ1側)に向けて回転する。ロータ20は、ロータケース21と、マグネット22と、を備える。ロータケース21は、第1軸線J1を中心として軸方向に延びるケース円筒部21aと、ケース円筒部21aの上側の端部から径方向内側に延びるケース円環部21bと、を有する。ケース円筒部21aは、インペラ円筒部62の内周面に固定される。これにより、インペラ部60は、ロータ20と接続される。
【0029】
図3に示すように、マグネット22は、ケース円筒部21aの内周面に固定される。本実施形態において、マグネット22の内側面は、2つのN極22N1,22N2と、2つのS極22S1,22S2を交互に等分に備えている。マグネット22の極数は、4個に限定されず、6個以上の偶数個であってもよい。また、マグネットの磁極は、一つのマグネットにN極とS極が交互に着磁されていても良いし、別々の個体でも良い。
【0030】
図2に示すように、シャフト23は、第1軸線J1に沿って軸方向に延びる略円柱状である。シャフト23の上側の部分は、インペラ貫通孔61aに接続される。これにより、シャフト23は、インペラ部60と固定される。シャフト23は、軸受91,92によって、第1軸線J1を中心として回転自在に支持される。これにより、シャフト23、インペラ部60およびロータ20が、第1軸線J1を中心として回転可能である。
【0031】
図3に示すように、ステータ30は、ロータ20の径方向内側に位置する。ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間をあけて対向して配置される。ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ35と、コイル部34と、を有する。
【0032】
ステータコア31は、第1軸線J1を中心とする略円環状である。ステータコア31は、スリーブ50に固定される。ステータコア31は、マグネット22と径方向に隙間を介して対向する。ステータコア31は、コアバック部32と、複数のティース部33と、を有する。コアバック部32は、第1軸線J1を中心とする略円環状である。コアバック部32の内周面は、スリーブ50の外周面に固定される。
【0033】
複数のティース部33は、それぞれ、コアバック部32の径方向外側を向く面からマグネット22に向けて径方向に突出する。複数のティース部33は、それぞれ、周方向に沿って間隔をあけて配置される。本実施形態において、ティース部33は、4個設けられる。複数のティース部33は、周方向に沿って、90°毎に配置される。各ティース部33とマグネット22との間の径方向の隙間は、周方向一方側(+θ1側)から周方向他方側(-θ1側)に向かうにしたがって大きく設けられる。これにより、周方向において、ロータ20の回転トルク及びコギングトルクの双方が零になる死点が構成されず、停止しているロータ20に周方向を向く磁気力を加えることができ、ロータ20を起動させることができる。なお、ティース部33の個数は、4個に限定されず、マグネット22の磁極の個数と同じであれば6個以上の偶数個であってもよい。
【0034】
複数のティース部33のうち、ティース部33a,33cは、第1軸線J1を互いに径方向に挟んで配置される。ティース部33bは、ティース部33aの周方向他方側(-θ1側)、且つ、ティース部33cの周方向一方側(+θ1側)に配置される。ティース部33dは、ティース部33aの周方向一方側、且つ、ティース部33cの周方向他方側に配置される。
【0035】
インシュレータ35は、各ティース部33に装着される。インシュレータ35は、ステータコア31とコイル部34とを絶縁する。コイル部34は、ステータコア31に取り付けられる。より詳細には、コイル部34は、インシュレータ35を介して、各ティース部33に取り付けられる。コイル部34は、制御部70に接続される。
【0036】
制御部70は、コイル部34に供給される直流電流を制御する。図2に示すように、制御部70は、基板収容部42dの内部に収容される基板を有する。制御部70は、第2ケース部材42に固定される。制御部70には、図示しない外部電源およびコイル部34が接続される。外部電源の電力は、制御部70を介して、コイル部34に供給される。より詳細には、外部電源の電力は、制御部70を通じてコイル部34に印可される。
【0037】
コイル部34に電流が供給されると、コイル部34が取り付けられた各ティース部33には磁界が生じる。本実施形態において、周方向に互いに隣り合うティース部33に構成される磁極は異極である。より詳細には、コイル部34に正の電圧が印可され、第1方向に向けて流れる正電流+I1がコイル部34に供給されると、図3に示すティース部33a、33cには例えばN極の磁極が構成され、ティース部33b,33dには逆のS極の磁極が構成される。コイル部34に負の電圧が印可され、第1方向とは逆方向の第2方向に向けて流れる負電流-I1がコイル部34に供給されると、先ほどとは逆にティース部33a、33cにはS極の磁極が構成され、ティース部33b,33dにはN極の磁極が構成される。
【0038】
センサ96は、マグネット22の磁界を検知する。本実施形態において、センサ96は、磁気検知センサである。図示は省略するが、センサ96は、制御部70に固定される。センサ96は、制御部70と電気的に接続される。センサ96は、マグネット22の磁極を検知できる位置に配置される。周方向において、センサ96は、ティース部33aとティース部33bとの間に配置される。本実施形態において、軸方向に見て、第1軸線J1およびティース部33aの周方向中心の両方を通り、第1軸線J1と直交する基準線Z1と、第1軸線J1およびセンサ96の周方向中心の両方を通り、第1軸線J1と直交する仮想線Z2とが成す角度は45°である。なお、基準線Z1は、仮想線である。
【0039】
次に、送風機10のロータ20を回転させる際にコイル部34に供給される直流電流の制御方法ついて説明する。
図4に示すように、本実施形態の送風機10において、制御部70は、第1電流パターンP1に基づいて、コイル部34に供給する電流を正電流+I1と負電流-I1とに切り替える。図4の横軸は回転角度αであり、縦軸はコイル部34に供給される電流である供給電流Icである。図5に示すように、回転角度αは、第1軸線J1とマグネット極22S1の周方向他方側(-θ1側)の端部の両方を通り、第1軸線J1と直交するマグネット位置線Lmと、基準線Z1とが成す角度である。マグネット位置線Lmは、仮想線である。ロータ20が第1軸線J1回りに回転すると、マグネット位置線Lmの向きが変わり回転角度αの値が変わる。回転角度αの値は、基準線Z1から、周方向他方側に向かうにしたがって大きくなる。
【0040】
図4に示すように、本実施形態において、第1電流パターンP1の波形は矩形波状である。第1電流パターンP1では、センサ96がマグネット極22N1,22N2と径方向に対向し、センサ96がN極の磁界を検知する場合、コイル部34には正電流+I1が供給される。センサ96がマグネット極22S1,22S2と径方向に対向し、センサ96がS極の磁界を検知する場合、コイル部34には負電流-I1が供給される。
【0041】
図5から図8は、モータ15の駆動時おいて、マグネット22が受ける磁気力を示す断面図である。上述のように、ロータ20の回転方向R1は、周方向一方側(+θ1側)から周方向他方側(-θ1側)に向く方向である。
以下の説明において、「位置角度」は、基準線Z1から、周方向他方側に向く角度である。「位置角度」の値は、基準線Z1から、周方向他方側に向かうにしたがって大きくなる。本実施形態において、各ティース部33a,33b,33c,33dそれぞれの中心位置の位置角度は、0°,90°,180°,270°である。
「マグネット極の中心位置」は、マグネット極の周方向における中心の位置である。
「ティース部の中心位置」は、各ティース部の周方向における中心の位置である。
「周方向一方側を向く力」は、厳密に力の向きが周方向一方側を向く場合に限定されず、力を径方向成分および周方向成分に分けたときに、周方向成分が周方向一方側を向く場合も含む概念である。
「周方向他方側を向く力」は、厳密に力の向きが周方向他方側を向く場合に限定されず、力を径方向成分および周方向成分に分けたときに、周方向成分が周方向他方側を向く場合も含む概念である。
「起動時」は、停止しているロータ20の回転を開始する時点から、制御部70が供給電流Icを最初に切り替える時点までの間の時間である。
「起動後」は、制御部70が供給電流Icを最初に切り替えた時点以降の時間である。
【0042】
以下の説明では、説明の簡易化のため、マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2に加わる磁気力を、マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2の中心位置に加わる磁気力で説明する。
本実施形態では、上述のように、各ティース部33とマグネット22との間の径方向の隙間は、周方向一方側(+θ1側)から周方向他方側(-θ1側)に向かうにしたがって大きく設けられる。そのため、マグネット22にかかるコギングトルクにより、ロータ20が停止している時における、マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2の中心位置は、各ティース部33の中心位置から周方向一方側(+θ1側)に10°ずれた位置である。以下の説明では、マグネット極22S1とティース部33aとが径方向に対向してロータ20が停止している状態から、ロータ20を起動させる場合について説明する。このとき、回転角度αは35°である。
【0043】
図4および図5に示すように、回転角度αが35°で停止しているロータ20を起動させる起動時において、センサ96が検知する磁界はN極の磁界であるため、制御部70は、コイル部34に正電流+I1を供給する。ティース部33a,33cにはN極の磁極が構成され、ティース部33b,33dにはS極の磁極が構成される。マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2中心位置の位置角度は、それぞれ、-10°,80°,170°,260°である。
【0044】
図5に示すように、マグネット極22S1、22N1、22S2、及び、22N2には、それぞれのマグネット極の磁界と、それぞれのマグネット極に対向するティース部33b、33c、33d、33aに生じる磁界とによって、周方向他方側(-θ1側)を向く引力F11~F14が加わる。
したがって、マグネット22の磁界と、複数のティース部33に生じる磁界とによって、マグネット22には周方向他方側を向く引力が加わり、ロータ20は、周方向他方側に向けて回転を開始する。つまり、起動時において、制御部70は、コイル部34に供給する電流の向きを、マグネット22の磁界と、複数のティース部33のそれぞれに生じる磁界とによって、マグネット22に周方向他方側を向く引力が加わる向きに制御する。
【0045】
図4および図6に示すように、回転角度αが45°に達して、センサ96が検知する磁界がN極の磁界からS極の磁界に変わると、制御部70は、供給電流Icを、正電流+I1から負電流-I1に切り替える。ティース部33a,33cにはS極の磁極が構成され、ティース部33b,33dにはN極の磁極が構成される。回転角度αが45°において、マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2中心位置の位置角度は、それぞれ、0°,90°,180°,270°である。
【0046】
図6に示すように、マグネット極22S1、22N1、22S2、及び、22N2には、それぞれのマグネット極の磁界と、それぞれのマグネット極に対向するティース部33b、33c、33d、33aに生じる磁界とによって、周方向他方側(-θ1側)を向く斥力F21~F24が加わる。
したがって、マグネット22の磁界と、複数のティース部33に生じる磁界とによって、マグネット22には周方向他方側を向く斥力が加わる。マグネット22に加わる周方向他方側を向く斥力によって、ロータ20は、周方向他方側への回転を継続する。
【0047】
なお、回転角度αが45°のとき、起動時から、ロータ20が周方向他方側(-θ1側)に回転した角度は10°と小さいため、ロータ20の慣性モーメントは小さい。また、回転角度αが45°のとき、マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2の中心位置が、各ティース部33と径方向に対向するため、マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2に加わる斥力のうち、周方向他方側を向く成分は小さい。そのため、ロータ20に加わる負荷が大きい場合、回転角度αが45°の近傍で、ロータ20の回転が停止する虞がある。しかしながら、本実施形態の単相ブラシレス直流モータ15は、起動時の負荷が小さい送風機10に用いられるため、ロータ20の回転が停止することなく、周方向他方側に向けて回転できる。
【0048】
図4および図7に示すように、回転角度αが90°に達すると、マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2中心位置の位置角度は、それぞれ、45°,135°,225°,315°になる。センサ96が検知する磁界はS極の磁界であるため、制御部70は、継続して、コイル部34に負電流-I1を供給する。
【0049】
図7に示すように、回転角度αが90°を境にして、マグネット極22S1、22N1、22S2、及び、22N2には、それぞれのマグネット極の磁界と、それぞれのマグネット極に対向するティース部33b、33c、33d、33aに生じる磁界とによる、周方向他方側(-θ1側)を向く力F31~F34は、斥力よりも引力が大きくなる。すなわち、回転角度αが90°に近づくにつれ、斥力が減少し、引力が増加する。回転角度αが90°近傍で斥力よりも引力の方が大きくなる。
したがって、マグネット22の磁界と、複数のティース部33に生じる磁界とによって、マグネット22には周方向他方側を向く安定した力が加わり、ロータ20は、周方向他方側への回転を継続する。
【0050】
図4および図8に示すように、回転角度αが135°に達して、センサ96が検知する磁界がS極の磁界からN極の磁界に変わると、制御部70は、供給電流Icを、負電流-I1から正電流+I1に切り替える。ティース部33a,33cにはN極の磁極が構成され、ティース部33b,33dにはS極の磁極が構成される。回転角度αが135°において、マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2中心位置の位置角度は、それぞれ、90°,180°,270°,360°である。
【0051】
図8に示すように、マグネット極22S1、22N1、22S2、及び、22N2には、それぞれのマグネット極の磁界と、それぞれのマグネット極に対向するティース部33b、33c、33d、33aに生じる磁界とによって、周方向他方側(-θ1側)を向く斥力F41~F44が加わる。
したがって、マグネット22の磁界と、複数のティース部33に生じる磁界の切替わりとによって、マグネット22には周方向他方側を向く斥力が加わる。つまり、ロータ20の起動後において、制御部70は、ロータ20が所定角度する毎に、本実施形態では90°回転する毎に、マグネット22の磁界と、複数のティース部33のそれぞれに生じる磁界とによって、マグネット22に周方向他方側を向く斥力が加わる向きに、コイル部34に供給する電流の向きを切り替える。
【0052】
回転角度αが135°に達した後、制御部70は、図4に示す、第1電流パターンP1にしたがって、ロータ20が90°回転する毎に、供給電流Icの向きを切り替える。これにより、マグネット22に、周方向他方側を向く斥力もしくは引力を継続して加えることができるため、ロータ20およびインペラ部60を周方向一方側(+θ1側)から周方向他方側へ安定して回転させることができる。
【0053】
本実施形態によれば、単相ブラシレス直流モータ15は、送風機10のインペラ部60を第1軸線J1回りに回転させる単相ブラシレス直流モータ15であって、第1軸線J1を中心として回転可能なロータ20と、ロータ20と径方向に隙間を介して対向して配置されるステータ30と、を備え、複数のティース部33のそれぞれとマグネット22との間の径方向の隙間は、周方向一方側(+θ1側)から周方向他方側(-θ1側)に向かうにしたがって大きく設けられ、ロータ20は、周方向一方側から周方向他方側に向けて回転する。よって、ステータコア31のティース部33を周方向に非対称な形状とすることで、上述のように、周方向において、ロータ20の回転トルクおよびコギングトルクの双方が零になる死点が構成されることを抑制できる。そのため、ロータ20の起動時において、ロータ20に周方向を向く磁気力を加えることができる。また、各ティース部33とマグネット22との間の径方向の隙間が大きい側、すなわち本実施形態では周方向他方側にロータ20を回転させる場合、起動時から最初にマグネット極22S1,22N1,22S2,22N2の中心位置が各ティース部33の中心位置と径方向に対向するまでの角度が10°と小さいため、上述のように、このタイミングにおけるロータ20の慣性モーメントは小さい。そのため、ロータ20にかかる負荷が大きい場合、ロータ20の回転が停止する虞がある。しかしながら、本実施形態の単相ブラシレス直流モータ15は、起動時の負荷が小さい送風機10に用いられるため、ロータ20の回転が停止することなく、ロータ20を周方向他方側に向けて安定して起動させることができる。
【0054】
本実施形態によれば、ロータ20が回転を開始する起動時において、ロータ20は、周方向他方側(-θ1側)に向けて回転する。より詳細には、制御部70が、コイル部34に正電流+I1を供給することによって、マグネット22に周方向他方側を向く引力を加えて、ロータ20を周方向他方側に向けて回転させる。
【0055】
ここで、ロータ20を起動する方法としては、最初にコイル部34に供給する供給電流Icを負電流-I1として、マグネット22に周方向一方側(+θ1側)を向く斥力を加えて、ロータ20を周方向一方側向けて、例えば70°程度回転させた後に、供給電流Icを負電流-I1から正電流+I1に切り替えて、ロータ20を周方向他方側に向けて回転させる方法が考えられる。この方法では、起動時から最初にマグネット極22S1,22N1,22S2,22N2の中心位置が各ティース部33の中心位置と径方向に対向するまでの角度を80°程度にできるため、マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2の中心位置が各ティース部33の中心位置と径方向に対向するタイミングにおけるロータ20の慣性モーメントを大きくできる。しかしながら、ロータ20の起動時における供給電流Icを、例えば70°程度回転したタイミングで切り替えるため起動時の制御が煩雑になる。また、送風機10のインペラ部60のイナーシャ負荷が主な負荷の場合では、周方向一方側に回転するロータ20は、供給電流Icを切り替えてもしばらく周方向一方側に回転を続けることがあり、起動時の制御が困難である。本実施形態では、上述のように、コイル部34に正電流+I1の供給を行い、マグネット22に周方向他方側を向く引力を加える簡易な制御によって、ロータ20を起動できるため、モータ15および送風機10の起動時の制御の簡素化を図ることができる。
【0056】
本実施形態によれば、起動時において、マグネット22の磁界と、コイル部34に電流が流れることで複数のティース部33に生じる磁界とによって、マグネット22に周方向他方側を向く引力が加わる。したがって、コイル部34に正電流+I1の供給を行うのみの簡易な制御によって、ロータ20を起動できるため、モータ15および送風機10の起動時の起動時の制御の簡素化を図ることができる。
【0057】
本実施形態によれば、制御部70は、コイル部34に供給される電流を制御し、起動時において、制御部70は、コイル部34に供給する電流の向きを、マグネット22の磁界と、複数のティース部33のそれぞれに生じる磁界とによって、マグネット22に周方向他方側(-θ1側)を向く引力が加わる向きに制御する。制御部70は、起動時において、各ティース部33と対向するマグネット極の磁極に基づいて、コイル部34に供給する電流の向きを制御して、マグネット22に引力を加えることができる。したがって、ロータ20を安定して起動させることができる。
【0058】
本実施形態によれば、ロータ20の起動後において、制御部70は、ロータ20が所定角度、本実施形態では90°回転する毎に、マグネット22の磁界と、複数のティース部33のそれぞれに生じる磁界とによって、マグネット22に周方向他方側を向く斥力が加わる向きに、コイル部34に供給する電流の向きを切り替える。そのため、ロータ20およびインペラ部60を周方向他方側に向けて安定して回転させることができる。
【0059】
図1に示すように、第2送風機110は、第2単相ブラシレス直流モータ115と、ケース140と、第2インペラ部160と、を備える。本実施形態において、第2送風機110は、第2インペラ部160が第2軸線J2を中心に回転することによって、空気を径方向外側に向かって送り出す遠心ファンである。なお、以下の説明において、上述の送風機10と同一構成の要素については、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、以下の説明では、第2単相ブラシレス直流モータ115を、第2モータ115と呼ぶ場合がある。
【0060】
第2インペラ部160の構成は、送風機10のインペラ部60の構成と同一である。
ケース140は、第2モータ115および第2インペラ部160を内部に収容する。ケース140は、第1ケース部材141と、第2ケース部材142と、を有する。
第1ケース部材141の形状は、第1軸線J1と直交し、且つ、第1軸線J1を通過する仮想平面を対称面としたときに第1ケース部材41と面対称な形状と同一の形状である。第1ケース部材141の第1開口部141cは、第2周方向一方側(+θ2側)に開口する。第1ケース部材141の内面は送風路140aの上側の部分を構成する。
【0061】
第2ケース部材142の形状は、第1軸線J1と直交し、且つ、第1軸線J1を通過する仮想平面を対称面としたときに第2ケース部材42と面対称な形状と同一の形状である。第2ケース部材142の第2開口部142bは、第2周方向一方側(+θ2側)に開口する。第2ケース部材142の内面は送風路140aの下側の部分を構成する。第1開口部141cと第2開口部142bとは、排気口140bを構成する。送風路140aを第2周方向一方側に向けて流れる空気は、排気口140bを介して、第2送風機110の外部に流れ出る。
【0062】
第2モータ115は、第2インペラ部160を第2軸線J2回りに回転させる。第2モータ115の構成は、制御部70の図示しないメモリに格納される電流パターンが第2電流パターンP2であることを除いて、送風機10のモータ15の構成と同一である。つまり、第2送風機110の第2モータ115が備えるスリーブ50、第2ロータ120、シャフト23、第2ステータ130、およびセンサ96の構成は、それぞれ、送風機10のモータ15が備えるスリーブ50、ロータ20、シャフト23、ステータ30、およびセンサ96の構成と同じ構成である。
【0063】
図10に示すように、第2ロータ120は、第2軸線J2を中心として回転可能である。第2ロータ120は、第2周方向他方側(-θ2側)から第2周方向一方側(+θ2側)に向けて回転する。図示は省略するが、第2ロータ120は、第2インペラ部160と接続される。これにより、第2インペラ部160は、第2軸線J2を中心として、第2周方向他方側から第2周方向一方側に向けて回転する。第2ロータ120は、第2マグネット122を有する。第2マグネット122の構成は、送風機10のマグネット22の構成と同じ構成である。第2マグネット122には、第2周方向に沿って複数の磁極が設けられる。
【0064】
第2ステータ130は、第2ロータ120と第2径方向、すなわち第2軸線J2を中心とする径方向に隙間を介して対向して配置される。第2ステータ130が有する複数のティース部33のそれぞれと第2マグネット122との間の第2径方向の隙間は、第2周方向一方側(+θ2側)から第2周方向他方側(-θ2側)に向かうにしたがって大きく設けられる。
【0065】
次に、第2送風機110の第2ロータ120を回転させる際にコイル部34に供給される直流電流の制御方法ついて説明する。
図9に示すように、第2送風機110において、制御部70は、第2電流パターンP2に基づいて、コイル部34に正電流+I1および負電流-I1のいずれか一方の電流を供給する。以下の説明では、上述の送風機10における説明と同様に、図10に示すように、マグネット極22S1が、ティース部33aと対向して第2ロータ120が停止している状態から、第2ロータ120を起動させる場合について説明する。第2ロータ120を起動させる際の回転角度αは35°である。
【0066】
本実施形態において、第2電流パターンP2の波形は矩形波状である。第2電流パターンP2では、センサ96がN極の磁界を検知する場合、コイル部34には負電流-I1が供給される。センサ96がS極の磁界を検知する場合、コイル部34には正電流+I1が供給される。
【0067】
図10から図12は、第2モータ115の駆動時おいて、第2マグネット122が受ける磁気力を示す断面図である。第2ロータ120の回転方向R2は、第2周方向他方側(-θ2側)から第2周方向一方側(+θ2側)に向く方向である。
【0068】
図9および図10に示すように、回転角度αが35°で停止している第2ロータ120を起動させる起動時において、センサ96が検知する磁界はN極の磁界であるため、制御部70は、コイル部34に負電流-I1を供給する。ティース部33a,33cにはS極の磁極が構成され、ティース部33b,33dにはN極の磁極が構成される。
【0069】
図10に示すように、マグネット極22S1、22N1、22S2、及び、22N2には、それぞれのマグネット極の磁界と、それぞれのマグネット極に対向するティース部33b、33c、33d、33aに生じる磁界とによって、第2周方向一方側(+θ2側)を向く斥力F111~F114が加わる。
よって、本実施形態によれば、第2ロータ120の起動時において、第2マグネット122の磁界と、複数のティース部33に生じる磁界とによって、第2マグネット122には第2周方向一方側を向く斥力が加わり、第2ロータ120は、第2周方向一方側に向けて起動する。したがって、コイル部34に負電流-I1の供給を行うのみの簡易な制御によって、第2ロータ120を起動できるため、第2モータ115および第2送風機110の起動時の制御の簡素化を図ることができる。
【0070】
図9および図11に示すように、回転角度αが0°に達すると、マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2の中心位置の位置角度は、それぞれ、-45°,45°,135°,225°になる。センサ96が検知する磁界はN極の磁界であるため、制御部70は、コイル部34への負電流-I1の供給を継続する。第2ロータ120が回転し、回転角度αが0°に近づくと第2周方向一方側(+θ2側)を向く力F111~F114は、斥力よりも引力が大きくなる。すなわち、回転角度αが0°に近づくにつれ、斥力が減少し、引力が増加する。回転角度αが0°近傍で斥力よりも引力の方が大きくなる。
【0071】
図11に示すように、マグネット極22S1、22N1、22S2、及び、22N2には、それぞれのマグネット極の磁界と、それぞれのマグネット極に対向するティース部33b、33c、33d、33aに生じる磁界とによって、第2周方向一方側(+θ2側)を向く力F111~F114よりも、第2周方向一方側(+θ2側)を向く引力F121~F124の方が大きくなる。
したがって、第2マグネット122の磁界と、複数のティース部33に生じる磁界とによって、第2周方向一方側への回転を継続する。
【0072】
図9および図12に示すように、回転角度αが-45°に達して、センサ96が検知する磁界がN極の磁界からS極の磁界に変わると、制御部70は、供給電流Icを、負電流-I1から正電流+I1に切り替える。ティース部33a,33cにはN極の磁極が構成され、ティース部33b,33dにはS極の磁極が構成される。回転角度αが-45°において、マグネット極22S1,22N1,22S2,22N2の中心位置の位置角度は、それぞれ、-90°,0°,90°,180°である。
【0073】
図12に示すように、マグネット極22S1、22N1、22S2、及び、22N2には、それぞれのマグネット極の磁界と、それぞれのマグネット極に対向するティース部33b、33c、33d、33aに生じる磁界とによって、第2周方向一方側(+θ2側)を向く斥力F131~F134が加わる。
したがって、第2マグネット122の磁界と、複数のティース部33に生じる磁界とによって、第2マグネット122には第2周方向一方側を向く斥力が加わり、第2ロータ120は、第2周方向一方側への回転を継続する。
なお、回転角度αが-45°のとき、起動時から第2ロータ120が第2周方向一方側(+θ2側)に回転した角度は80°と大きいため、第2ロータ120の慣性モーメントは大きい。そのため、第2ロータ120を第2周方向一方側向けて安定して回転させることができる。
【0074】
回転角度αが-45°に達した後、制御部70は、図9に示す、第2電流パターンP2にしたがって、第2ロータ120が90°回転する毎に、第2マグネット122の磁界と、複数のティース部33のそれぞれに生じる磁界とによって、第2マグネット122に第2周方向一方側(+θ2側)を向く斥力が加わる向きに、コイル部34に供給する供給電流の向きを切り替える。これにより、第2マグネット122に、第2周方向一方側を向く斥力もしくは引力を継続して加えることができるため、第2ロータ120および第2インペラ部160を第2周方向他方側(-θ2側)から第2周方向一方側へ安定して回転させることができる。
【0075】
本実施形態によれば、第2ステータ130の構成は、送風機10が備えるステータ30の構成と同じ構成であり、送風機10が備えるロータ20は、周方向一方側(+θ1側)から周方向他方側(-θ1側)に向けて回転し、第2送風機110が備える第2ロータ120は、第2周方向他方側(-θ2側)から第2周方向一方側(+θ2側)に向けて回転する。よって、モータ15が備えるステータ30と、第2モータ115が備える第2ステータ130との共通化を図ることができる。そのため、モータ15および第2モータ115の製造コストが増大することを抑制できる。したがって、送風機10、第2送風機110および送風装置1の製造コストが増大することを抑制できる。また、モータ15および第2モータ115の組立工程において、ステータ30および第2ステータ130を構成するステータコア31等の部品の取違い等のリスクを低減できるため、モータ15および第2モータ115の生産性を高めることができる。したがって、送風機10、第2送風機110および送風装置1の生産性を高めることができる。
【0076】
また、本実施形態では、モータ15が備えるロータ20と、第2モータ115が備える第2ロータ120との共通化を図ることができる。また、モータ15および第2モータ115のそれぞれが備えるスリーブ50およびセンサ96等の構成要素の共通化を図ることができる。そのため、モータ15および第2モータ115の製造コストをより好適に抑制できるとともに、モータ15および第2モータ115の生産性をより好適に高めることができる。したがって、送風機10、第2送風機110および送風装置1の製造コストをより好適に抑制できるとともに、送風機10、第2送風機110および送風装置1の生産性をより好適に高めることができる。
【0077】
<第2実施形態>
図13に示す本実施形態の送風装置301は、送風機310と、第2送風機410と、を備える。本実施形態において、送風機310および第2送風機410は、それぞれ、軸流ファンである。第2送風機410は、送風機310の軸方向一方側(+Z側)に配置される。送風機310および第2送風機410は、図示しない接続部を介して、互いに軸方向に繋がる。送風機310は、軸方向他方側(-Z側)から軸方向一方側に向けて送風する。第2送風機410は、第2軸方向他方側から第2軸方向一方側に向けて送風する。送風機310および第2送風機410それぞれの送風方向D1は互いに同じ向きである。送風方向D1に見て、送風機10および第2送風機110は、互いに重なって配置される。
【0078】
送風機310の内部には、送風路340aが設けられる。第2送風機410の内部には、送風路440aが設けられる。送風路340aおよび送風路440aは、軸方向に繋がる。送風路340aの軸方向他方側(-Z側)の端部には、軸方向他方側に開口する吸気口340bが設けられる。送風路440aの第2軸方向一方側(+Z側)の端部には、第2軸方向一方側に開口する排気口440bが設けられる。吸気口340bを介して送風機310の内部に取り込まれた空気AFは、送風路340aおよび送風路440aを軸方向一方側に向けて流れ、排気口440bを介して、送風装置301の外部に送り出される。
【0079】
送風機310は、単相ブラシレス直流モータ315と、ケース340と、インペラ部360と、を備える。本実施形態において、送風機310は、インペラ部360が第1軸線J1を中心に回転することによって、空気を軸方向一方側に向かって送り出す軸流ファンである。なお、以下の説明では、単相ブラシレス直流モータ315を、モータ315と呼ぶ場合がある。
【0080】
インペラ部360は、筒状部361と、羽根362と、を有する。筒状部361は、第1軸線J1を中心として軸方向に延びる円筒状である。羽根362は、筒状部361の外周面から径方向外側に向けて突出する。羽根362は、筒状部361の外周面に沿って間隔をあけて複数設けられる。インペラ部360は、第1軸線J1回りに周方向他方側(-θ1側)に向けて回転する。
【0081】
ケース340は、モータ315およびインペラ部360を径方向外側から囲む。本実施形態において、ケース340は、軸方向に延びる四角筒状である。ケース340の内面は送風路340aを構成する。
【0082】
モータ315は、インペラ部360を第1軸線J1回りに回転させる。モータ315は、スリーブ350と、ロータ320と、シャフト323と、ステータ330と、制御部370と、図示しないセンサ96と、を備える。
【0083】
スリーブ350は、軸方向に延びる略円筒状の円筒部350aと、円筒部350aの軸方向他方側(-Z側)の端部から径方向に延びる円環部350bと、を有する。円環部350bには図示しない複数本のリブの一端が接続される。複数本のリブの他端は、ケース340と接続される。これにより、スリーブ350は、ケース340に固定される。
ロータ320の構成は、第1実施形態のロータ20の構成と同じである。ロータ320は、第1軸線J1を中心として回転可能である。ロータ320は、周方向一方側(+θ1側)から周方向他方側(-θ1側)に向けて回転する。ロータ320は、インペラ部360と接続される。
シャフト323の構成は、第1実施形態のシャフト23の構成と同じである。
ステータ330の構成は、第1実施形態のステータ30の構成と同じである。
【0084】
本実施形態において、制御部370は、ステータ330に保持される。制御部370は、コイル部34に供給される直流電流を制御する。制御部370は、コイル部34に供給する第1電流パターンP1が格納される図示しないメモリを有する。第1電流パターンP1は、上述の第1実施形態の第1電流パターンP1と同様の電流パターンである。よって、本実施形態の単相ブラシレス直流モータ315は、第1実施形態の単相ブラシレス直流モータ15と同様に、起動時の負荷が小さな送風機310に用いられるため、ロータ320を周方向一方側(+θ1側)から周方向他方側(-θ1側)に向けて安定して回転させることができる。
【0085】
第2送風機410は、第2単相ブラシレス直流モータ415と、ケース440と、第2インペラ部460と、を備える。本実施形態において、第2送風機410は、第2インペラ部460が第2軸線J2を中心に回転することによって、空気を軸方向一方側に向かって送り出す軸流ファンである。なお、以下の説明において、上述の送風機310と同一構成の要素については、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、以下の説明では、第2単相ブラシレス直流モータ415を、第2モータ415と呼ぶ場合がある。
【0086】
第2インペラ部460の構成は、インペラ部360の構成と同一である。
ケース440は、第2モータ415および第2インペラ部460を径方向外側から囲む。本実施形態において、ケース440は、軸方向に延びる四角筒状である。ケース440の内面は送風路440aを構成する。
【0087】
第2モータ415は、第2インペラ部460を第2軸線J2回りに回転させる。第2モータ415の構成は、制御部370の図示しないメモリに格納される電流パターンが第2電流パターンP2であることを除いて、送風機310のモータ315の構成と同一である。つまり、第2モータ415が備えるスリーブ350、第2ロータ420、シャフト323、第2ステータ430、および図示しないセンサの構成は、それぞれ、モータ315が備えるスリーブ350、ロータ320、シャフト323、ステータ330、および図示しないセンサの構成と同じ構成である。
【0088】
第2ロータ420は、第2軸線J2を中心として回転可能である。第2ロータ420は、第2周方向他方側(-θ2側)から第2周方向一方側(+θ2側)に向けて回転する。第2ロータ420は、第2インペラ部460と接続される。これにより、第2インペラ部460は、第2軸線J2を中心として、第2周方向他方側から第2周方向一方側に向けて回転する。
【0089】
制御部370は、コイル部34に供給される直流電流を制御する。制御部370は、コイル部に供給する第2電流パターンP2が格納される図示しないメモリを有する。第2電流パターンP2は、上述の第1実施形態の第2電流パターンP2と同様の電流パターンである。よって、本実施形態の第2単相ブラシレス直流モータ415は、第1実施形態の第2単相ブラシレス直流モータ115と同様に、第2ロータ420を第2周方向他方側(-θ2側)から第2周方向一方側(+θ2側)に向けて安定して回転させることができる。
【0090】
本実施形態によれば、送風機310および第2送風機410それぞれの送風方向D1は互いに同じ向きであり、送風方向D1に見て、送風機310および第2送風機410は、互いに重なって配置される。また、送風機310が備えるロータ320およびインペラ部360は、周方向一方側(+θ1側)から周方向他方側(-θ1側)に向けて回転し、第2送風機410が備える第2ロータ420および第2インペラ部460は、第2周方向他方側(-θ2側)から第2周方向一方側(+θ2側)に向けて回転する。つまり、インペラ部360と第2インペラ部460とは、互いに反対方向に回転する。したがって、インペラ部360と第2インペラ部460とが、互いに同じ方向に回転する送風装置と比較して、送風装置301から冷却対象物に送風される風量を低下させることなく、風圧を高めることができ、冷却対象物を好適に冷却できる。
【0091】
また、本実施形態では、送風機310が備えるステータ330と、第2送風機410が備える第2ステータ430との共通化を図ることができる。そのため、モータ315および第2モータ415の製造コストが増大することを抑制できる。したがって、送風機310、第2送風機410および送風装置301の製造コストが増大することを抑制できる。また、モータ315および第2モータ415の組立工程において、ステータ330および第2ステータ430を構成するステータコア31等の部品の取違い等のリスクを低減できるため、モータ315および第2モータ415の生産性を高めることができる。したがって、送風機310、第2送風機410および送風装置301の生産性を高めることができる。
【0092】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。例えば、上述した実施形態に示した送風機および送風装置の用途は、特に限定されない。
【0093】
ロータおよび第2ロータが安定して回転できるならば、第1制御パターンの波形および第2制御パターンの波形は本実施形態に限定されず、例えば、正電流および負電流の期間を短くした台形波状の波形や、正弦波に近い波形であっても良い。
【0094】
周方向において、ロータの回転トルク及びコギングトルクの双方が零になる死点が構成されず、停止しているロータに周方向を向く磁気力を加えることができるならば、ステータコアのティース部の形状は本実施形態に限定されず、例えば、ティース部の形状は、ティース部とマグネットとの間の径方向の隙間が、周方向一方側から周方向他方側に向かうにしたがって小さく設けられる形状であっても良い。
【0095】
マグネットの周方向の位置を検知できるならば、センサが配置される位置は本実施形態に限定されず、例えば、センサはマグネットの径方向外側に配置されても良いし、マグネットの軸方向の一方側または軸方向他方側に設けられても良い。
【0096】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 送風機のインペラ部を第1軸線回りに回転させる単相ブラシレス直流モータであって、前記第1軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータと径方向に隙間を介して対向して配置されるステータと、を備え、前記ロータは、周方向に沿って複数の磁極が設けられるマグネットを有し、前記ステータは、前記マグネットと径方向に隙間を介して対向するステータコアを有し、前記ステータコアは、円環状のコアバック部と、前記コアバック部から前記マグネットに向けて径方向に突出する複数のティース部と、を有し、複数の前記ティース部は、周方向に沿って互いに間隔をあけて配置され、複数の前記ティース部のそれぞれと前記マグネットとの間の径方向の隙間は、周方向一方側から周方向他方側に向かうにしたがって大きく設けられ、前記ロータは、周方向一方側から周方向他方側に向けて回転する、単相ブラシレス直流モータ。
(2) 前記ロータが回転を開始する起動時において、前記ロータは、周方向他方側に向けて回転する、(1)に記載の単相ブラシレス直流モータ。
(3) 前記ステータは、前記ステータコアに取り付けられたコイル部を有し、前記起動時において、前記マグネットの磁界と、前記コイル部に電流が流れることで複数の前記ティース部に生じる磁界とによって、前記マグネットに周方向他方側を向く引力が加わる、(2)に記載の単相ブラシレス直流モータ。
(4) 制御部を備え、前記ステータは、前記ステータコアに取り付けられたコイル部を有し、前記制御部は、前記コイル部に供給される電流を制御し、前記起動時において、前記制御部は、前記コイル部に供給する電流の向きを、前記マグネットの磁界と、複数の前記ティース部のそれぞれに生じる磁界とによって、前記マグネットに周方向他方側を向く引力が加わる向きに制御する、(2)または(3)に記載の単相ブラシレス直流モータ。
(5)前記ロータの起動後において、前記制御部は、前記ロータが所定角度回転する毎に、前記マグネットの磁界と、複数の前記ティース部のそれぞれに生じる磁界とによって、前記マグネットに周方向他方側を向く斥力が加わる向きに、前記コイル部に供給する電流の向きを切り替える、(4)に記載の単相ブラシレス直流モータ。
(6) 前記制御部と電気的に接続され、前記マグネットの磁界を検知するセンサを備え、前記制御部は、前記センサの検出結果に基づいて、前記コイル部に供給する電流の向きを切り替える、(4)または(5)に記載の単相ブラシレス直流モータ。
(7) (1)から(6)のいずれか一項に記載の単相ブラシレス直流モータと、前記ロータと接続される前記インペラ部と、を備える、送風機。
(8) (7)に記載の送風機と、第2送風機と、を備える送風装置であって、前記第2送風機は、第2インペラ部を第2軸線回りに回転させる第2単相ブラシレス直流モータを、備え、前記第2単相ブラシレス直流モータは、前記第2インペラ部と接続され、第2軸線を中心として回転可能な第2ロータと、前記第2ロータと前記第2軸線を中心とする径方向に隙間を介して対向して配置される第2ステータと、を備え、前記第2ステータの構成は、前記送風機が備える前記ステータの構成と同じ構成であり、前記第2ロータは、前記第2軸線を中心とする周方向に沿って複数の磁極が設けられる第2マグネットを有し、前記第2ステータが有する複数の前記ティース部のそれぞれと前記第2マグネットとの間の前記第2軸線を中心とする径方向の隙間は、前記第2軸線を中心とする周方向一方側から前記第2軸線を中心とする周方向他方側に向かうにしたがって大きく設けられ、前記第2ロータは、前記第2軸線を中心とする周方向他方側から前記第2軸線を中心とする周方向一方側に向けて回転する、送風装置。
(9) 前記第2単相ブラシレス直流モータの起動時において、前記第2マグネットの磁界と、複数の前記ティース部のそれぞれに生じる磁界とによって、前記第2マグネットに前記第2軸線を中心とする周方向一方側を向く斥力が加わり、前記第2ロータは、前記第2軸線を中心とする周方向他方側から前記第2軸線を中心とする周方向一方側に向けて回転する、(8)に記載の送風装置。
(10) 前記送風機および前記第2送風機それぞれの送風方向は互いに同じ向きであり、前記送風方向に見て、前記送風機および前記第2送風機は、互いに並んで配置される、(8)または(9)に記載の送風装置。
(11) 前記送風機および前記第2送風機それぞれの送風方向は互いに同じ向きであり、前記送風方向に見て、前記送風機および前記第2送風機は、互いに重なって配置される、(8)または(9)に記載の送風装置。
【符号の説明】
【0097】
1,301…送風装置、10,310…送風機、15,315…単相ブラシレス直流モータ、20,320…ロータ、22…マグネット、30,330…ステータ、31…ステータコア、32…コアバック部、33…ティース部、34…コイル部、60,360…インペラ部、70,370…制御部、96…センサ、110,410…第2送風機、115,415…第2単相ブラシレス直流モータ、120,420…第2ロータ、122…第2マグネット、130,430…第2ステータ、160,460…第2インペラ部、J1…第1軸線、J2…第2軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13