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特開2024-177416不織布、及び該不織布を用いた吸音材
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  • 特開-不織布、及び該不織布を用いた吸音材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177416
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】不織布、及び該不織布を用いた吸音材
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20241212BHJP
   D21H 15/02 20060101ALI20241212BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20241212BHJP
   D04H 1/425 20120101ALI20241212BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
D21H11/18
D21H15/02
B32B5/24 101
D04H1/425
G10K11/16 120
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174564
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2020174765の分割
【原出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】浅井 大貴
(72)【発明者】
【氏名】小野 博文
(72)【発明者】
【氏名】城野 圭佑
(57)【要約】
【課題】中低周波数領域の吸音性に優れながらも、高い生産性を有する複合吸音材の表皮材の提供。
【解決手段】平均繊維径が100nm以上2000nm以下であるセルロース微細繊維と、平均繊維径が0.1μm以上10μm以下である短繊維とを含む不織布であって、パームポロメーターで測定される平均流量径が1μm以上30μm以下であることを特徴とする不織布、該不織布で構成された吸音材、及び該不織布と、該不織布以外の多孔質材料とが積層されている複合吸音材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が100nm以上2000nm以下であるセルロース微細繊維と、平均繊維径が0.1μm以上10μm以下である短繊維とを含む不織布であって、パームポロメーターで測定される平均流量径が1μm以上30μm以下であることを特徴とする不織布。
【請求項2】
前記セルロース微細繊維を1質量%以上20質量%未満で含有する、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記セルロース微細繊維がII型セルロースである、請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
湿式不織布である、請求項1~3のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の不織布で構成された吸音材。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の不織布と、該不織布以外の多孔質材料とが積層されている複合吸音材。
【請求項7】
JIS A 1405に準拠する垂直入射の測定法において、3000 Hz以下に吸音の極大値を有し、該極大値が0.5以上であり、かつ、2000~6000 Hzのすべての範囲における吸音率が0.2以上である、請求項6に記載の複合吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布、及び該不織布を用いた吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車が走行する際には、エンジンや駆動系からの騒音、ロードノイズ、風切音など、様々な騒音が発生しており、従来からこれらの騒音を抑制し、快適な車室内空間を創り出すために吸音材が使用されてきた。一方で、近年の自動車の電動化が進んでおり、特に駆動系の静粛性が向上している。このような技術の変化により、従来、騒音と認識されていなかった音、具体的には3000Hz以下の中低周波数領域の音が、騒音として認識され始めている。
前述の領域に対しては、繊維径の細い繊維を含有する不織布や、多孔質体に表皮層を設けた複合構造体が優れた吸音特性を示すことが知られている。例えば、以下の特許文献1には、450nm未満の繊維径を有する繊維のみから構成される積層構造体が示されており、1000Hz以下の低周波数域において優れた吸音性を有することが示されている。しかしながら、該構造体に含まれる繊維は、電界紡糸法によって製造されており、非常に生産性が悪く、産業上、実用化することは困難である。
また、以下の特許文献2には、不織布の片面にセルロースナノファイバーを塗布した構造体が示されており、これを吸音材の表皮材として使用することで、通気抵抗を制御することができ、好適な吸音性能が得られる、と記載されているが、中低周波数領域における吸音特性については何ら記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/143430号
【特許文献2】国際公開第2017/006993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来技術に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、中低周波数領域の吸音性に優れながらも、高い生産性を有する複合吸音材の表皮材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、繊維径が0.1μm以上10μm以下の短繊維と、100nm以上2000nm以下の繊維径を有するセルロース微細繊維を均一に混合し、特定範囲の平均孔径を有する不織布とすることで、該不織布を表皮材として使用した複合吸音材は、3000Hz以下の中低周波数領域において優れた吸音特性を有しながらも幅広い周波数領域において吸音作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]平均繊維径が100nm以上2000nm以下であるセルロース微細繊維と、平均繊維径が0.1μm以上10μm以下である短繊維とを含む不織布であって、パームポロメーターで測定される平均流量径が1μm以上30μm以下であることを特徴とする不織布。
[2]前記セルロース微細繊維を1質量%以上20質量%未満で含有する、前記[1]に記載の不織布。
[3]前記セルロース微細繊維がII型セルロースである、前記[1]又は[2]に記載の不織布。
[4]湿式不織布である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の不織布。
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載の不織布で構成された吸音材。
[6]前記[1]~[4]のいずれかに記載の不織布と、該不織布以外の多孔質材料とが積層されている複合吸音材。
[7]JIS A 1405に準拠する垂直入射の測定法において、3000Hz以下に吸音の極大値を有し、該極大値が0.5以上であり、かつ、2000~6000Hzのすべての範囲における吸音率が0.2以上である、前記[6]に記載の複合吸音材。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る不織布は、中低周波数領域の吸音性に優れながらも、高い生産性を有し、複合吸音材の表皮材として好適に使用できるため、特に自動車、住宅、家電製品に用いられる複合吸音材の表皮材として好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1、実施例2、比較例1における吸音率測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。尚、本発明はこれらの様態に限定されるものではない。
本発明の1の実施形態は、平均繊維径が100nm以上2000nm以下であるセルロース微細繊維と、平均繊維径が0.1μm以上10μm以下である短繊維とを含む不織布であって、パームポロメーターで測定される平均流量径が1μm以上30μm以下であることを特徴とする不織布である。
【0010】
(不織布)
本実施形態の不織布は、平均繊維径が100nm以上2000nm以下のセルロース微細繊維と、平均繊維径が0.1μm以上10.0μm以下の短繊維とが、均一に一体化された構造を有する不織布であることが好ましい。
本実施形態の不織布では、微細な繊維間隙を有する緻密な構造が存在し、ごく少量の通気性を有することで、音が繊維間隙に侵入する際、音の振動エネルギーを極細繊維との摩擦により熱エネルギーに変換するとともに、音の振動エネルギーを受け繊維自体も振動することでさらに熱エネルギーに変換することができる。
【0011】
(セルロース微細繊維)
本実施形態の不織布はセルロース微細繊維を含む。ここで、セルロース微細繊維とはセルロース繊維を少なくとも1種類の物理的な手段を用いて微細化したものであり、セルロースナノファイバー、CNF、CeNF、MFC(ミクロフィブリル化セルロース)などの一般的な呼称と同義である。
【0012】
(セルロース微細繊維の繊維径)
本実施形態における不織布中のセルロース微細繊維の平均繊維径は、セルロース微細繊維による不織布内部構造の微細化効果の観点から、100~2000nmである。高度に微細化することで、不織内部の構造もより微細になるが、セルロース微細繊維の生産性が悪化し、また不織布の孔径が小さくなりすぎることで通気が大幅に制限され、吸音効果が得られにくくなる。一方で微細化の程度が低いと、不織布の内部構造も荒くなるため、セルロース微細繊維の平均繊維径として、好ましくは200~1000nmであり、より好ましくは300~800nmである。この範囲に調整することで、微細化された構造が不織布の通気を制限するだけでなく、セルロース微細繊維自体が振動し、吸音に寄与することができ、全周波数帯において高い吸音性が得られる。
【0013】
尚、本開示における、セルロース微細繊維の平均繊維径は、不織布原料として使用するセルロース微細繊維の繊維径を意味し、以下の手順に従って測定する。
(1)セルロース微細繊維をtert―BuOH中に固形分濃度が50ppmとなるよう分散する。ここで、セルロース微細繊維が粉末状である場合には、固形分濃度を考慮したうえで、上記の濃度となるように調整する。セルロース微細繊維が水または有機溶媒などの媒体中に分散された状態である場合においては、濾過、もしくは遠心分離によって、可能な限り分散媒を除去したうえで、粉末の場合と同様にtert―BuOH中に分散する。tert―BuOH中への分散処理は、高せん断ホモジナイザー(例えば、IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い処理条件:回転数25,000rpm×5分間で分散させる。
(2)分散液を、Osコートを施したSiウエハ上に5μL滴下し、速やかに全体に塗り広げる。
(3)前記(2)を130℃に加熱したホットプレート、もしくはオーブン中で乾燥する。
(4)前記(3)を高分解能走査型顕微鏡(SEM)によって、500~2000倍の倍率で観察し、少なくとも10視野以上を撮影する。
(5)前記(4)で得られた各画像において、無作為に選ばれた少なくとも10本の繊維状物質の繊維径を計測する。この時、枝分かれした繊維が存在する場合には、幹部位と枝部位を別々に測定するものとする。
(6)計測したすべての繊維径の平均値をセルロース微細繊維の平均繊維径とする。
【0014】
(セルロース原料)
セルロース微細繊維の原料としてはI型セルロースの原料として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等のいわゆる木材パルプ、及び非木材パルプが挙げられる。非木材パルプとしては、コットンリンターパルプ等のコットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、及びワラ由来パルプを挙げることができる。コットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、及びワラ由来パルプは各々、コットンリント又はコットンリンター、麻系のアバカ(例えば、エクアドル産又はフィリピン産のものが多い)、ザイサル、バガス、ケナフ、竹、ワラ等の原料から、蒸解処理による脱リグニン、及びヘミセルロース除去を目的とした精製工程及び漂白工程を経て得られる精製パルプを意味する。この他、海藻由来のセルロース、ホヤセルロース等の精製物もセルロース微細繊維の原料として使用することができる。さらに、II型セルロースの原料として、再生セルロース繊維のカット糸及びセルロース誘導体繊維のカット糸もセルロース微細繊維の原料として使用でき、また、エレクトロスピニング法により得られた再生セルロース又はセルロース誘導体の極細糸のカット糸も、セルロース微細繊維の原料又はセルロース微細繊維そのものとして使用することができる。またこれらの原料は単独で使用しても混合して使用することも自由である。複数の原料を混合して使用することで平均繊維径を調整することができる。
【0015】
(セルロースの微細化)
上記のような原料を微細化してセルロース微細繊維を得ることができる。一態様において、微細化処理の前に、前処理工程を経る。前処理工程においては、100~150℃の温度での水中含浸下でのオートクレーブ処理、酵素処理等、又はこれらの組み合わせによって、原料パルプを微細化し易い状態にしておくことが有効である。これらの前処理は、微細化処理の負荷を軽減するだけでなく、セルロース繊維を構成するミクロフィブリルの表面及び間隙に存在するリグニン、ヘミセルロース等の不純物成分を水相へ排出し、その結果、微細化された繊維のα-セルロース純度を高める効果もあるため、セルロース微細繊維の耐熱性の向上に有効であることもある。
【0016】
微細化処理においては、原料パルプを水に分散させ、ビーター、ディスクレファイナー(ダブルディスクレファイナー)、高圧ホモジナイザーなど公知の微細化装置を用いて、微細化させる。微細化の際の好適な処理濃度は、用いる装置によって異なるため、任意に設定してよい。
セルロース微細繊維の平均繊維径は、上述したセルロース原料、微細化処理前の前処理の条件(例えば、オートクレーブ処理、酵素処理、叩解処理等)、微細化処理の条件(装置の種類、操作圧力、パス回数等の選定)、もしくはそれらの組合せによって制御することができる。ここでセルロース原料や前処理、微細化等に関して、複数の条件を組み合わせることで、平均繊維径を制御してもよい。
【0017】
(セルロース微細繊維の含有量)
本実施形態の不織布は、セルロース微細繊維を1質量%以上20%未満で含むことが好ましい。ここで、セルロース微細繊維の含有量とは、不織布中に含まれる短繊維の固形分重量に対する、セルロース微細繊維の固形分重量比を指す。セルロース微細繊維の含有量をこの範囲とすることで、不織布の構造が密になりすぎず、吸音に必要な通気性を有する。セルロース微細繊維の含有量が少ないと、セルロース微細繊維による吸音効果が得られないが、多く含むと不織布全体の剛性が向上して振動し辛くなり、吸音効果が得られにくくなるため、セルロース微細繊維の含有量としてより好ましくは、3質量%以上15質量%以下、最も好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
【0018】
(セルロースの結晶形)
本実施形態のセルロース微細繊維の結晶形はII型セルロースであることが好ましい。II型セルロースの繊維は、I型セルロースと比べ微細化されづらい傾向にあり、平均繊維径を好適な範囲に制御しやすい。また、II型セルロースは、不織布製造における乾燥時に、繊維が凝集を生じにくく、低周波数領域における吸音効果が得られやすいため好ましい。
【0019】
(短繊維)
本実施形態の不織布は、セルロース微細繊維に加えて、短繊維を含む。ここで本開示における短繊維は、セルロース以外の物質からなる繊維状物質であって、10mm以下の繊維長を有する繊維を意味する。短繊維としては、天然繊維、合成繊維、半合成繊維のいずれも使用できる。短繊維を構成するポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド(芳香族又は脂肪族)、アクリルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂等の熱硬化性樹脂、等を例示できる。これらの短繊維を単独で用いてもよいし、複数組み合わせて使用しても構わない。
【0020】
(短繊維の平均繊維径)
本実施形態における不織布に含まれる短繊維は、平均繊維径が0.1μm以上10.0μm以下である。この範囲の平均繊維径を有する短繊維を用いることで、セルロース微細繊維と混合される際に、均一に混合され、内部が十分に微細化した不織布が得られる。また10.0μm以下の繊維径を有する短繊維を用いることで、短繊維が振動しやすく、吸音効果が得られやすい。短繊維の平均繊維径が太いと、不織布内部でセルロース微細繊維と短繊維の局在化が生じやすくなるが、細すぎると、不織布の内部構造が密になりすぎ、吸音するために必要な通気性が得られなくなるため、1.0μm以上8.0μm以下であることが好ましく、最も好ましくは1.0μm以上6.0μm以下である。
【0021】
短繊維の平均繊維径は以下の手順にて測定する。
(1)短繊維を0.05質量%の固形分濃度で、水に分散する。この時、分散には家庭用のブレンダーミキサーなどを用いる。
(2)分散液をスライドガラスに滴下し、プレパラートを作製する。
(3)前記(2)をデジタルマイクロスコープにて、500~2000倍の倍率にて観察し、少なくとも5視野以上を撮影する。
(4)前記(3)で得られた各画像において、無作為に選ばれた少なくとも10本の繊維状物質の繊維径を計測する。この時、枝分かれした繊維が存在する場合には、幹部位の繊維径を測定するものとする。
(5)計測したすべての繊維径の平均値を短繊維の平均繊維径とする。
【0022】
(不織布の平均流量径)
本実施形態の不織布は、パームポロメーターで測定される平均流量径が1.0μm以上30.0μm以下の範囲であることを特徴とする。この範囲であることで、不織布が極少量の通気性を有し、中低周波数領域において、良好な吸音効果が得られる。平均流量径が小さすぎると、通気性がなくなり吸音効果が得られないが、大きすぎると表皮材として使用した際に、通気を制限することができない。したがって、平均流量径として好ましくは、3μm以上20μm以下、より好ましくは4μm以上15μm以下、最も好ましくは5μm以上13μm以下である。尚、不織布の平均流量径は、PMI社のパームポロメーター(型式:CFP-1200AEX)を用いて測定する。浸液としてPMI社製のガルウィック(表面張力=15.6dynes/cm)を用い、ASTME1294-8に準拠し、ハーフドライ法により測定する。
【0023】
(湿式不織布)
本実施形態における不織布は、湿式不織布であることが好ましい。ここで、湿式不織布とは、不織布製造工程の少なくとも一部に、抄紙法、水流交絡法を用いて製造された不織布を意味する。セルロース微細繊維は、一般的に水中で微細化され、乾燥されると微細化された繊維が再凝集を生じ、容易に再分散しない。そのため、セルロース微細繊維は、微細化後、ネバードライの状態で不織布化工程に持ち込まれることが望ましく、湿式法によって不織布化されることが好ましい。
【0024】
(不織布の目付)
本実施形態の不織布において、目付は、10g/m2以上1000g/m2以下の範囲であることが好ましい。本範囲であれば、効率的に製造できるとともに、良好な地合いの不織布が得られ、吸音材として適切な通気性を有する。目付が10g/m2以上であると不織布の厚みが増し、中低周波数領域において好適な吸音特性が得られる。目付が1000g/m2以下であると適切な通気性が得られ、吸音効果が得られやすい。したがって、目付としてより好ましくは30g/m2以上500g/m2以下、最も好ましくは50g/m2以上300g/m2以下である。
【0025】
(不織布の厚み)
本実施形態の不織布において、厚みは0.1mm以上3.0mm以下の範囲であることが好ましい。本範囲であることで、吸音材として使用する際に省スペース化が可能である。
尚、不織布の厚みは以下の手順に従って測定される。
(1)不織布を20cm×20cmサイズに切り出す。
(2)ABSデジマチックインジケータ ID-CX(株式会社ミツトヨ製)を用いて不織布の異なる5点について、厚みを測定する。この時測定子は、Φ15mmのフラット測定子を使用する。
(3)前記(2)で得られた5点の平均値を不織布の厚みとする。
【0026】
(不織布の嵩密度)
本実施形態の不織布の嵩密度は、0.05g/cm3以上0.50g/cm3以下であることが好ましい。かさ密度がこの範囲であることで、適切な通気性が得られ、吸音効果が得られやすい。かさ密度としてより好ましくは、0.1g/cm3以上0.4g/cm3であり、さらに好ましくは0.15g/cm3以上0.35g/cm3である。
尚、かさ密度は以下の式によって算出する。
嵩密度[g/cm3]=目付[g/m2]/厚み[μm]
【0027】
(不織布の透気抵抗度)
本実施形態の不織布の透気抵抗度は、10.0s/100mL以下であることが好ましい。透気抵抗度がこの範囲であることで、セルロース微細繊維が不織布内部に均一に存在し、内部構造が微細化されるとともに、多孔質化しており、微小な通気性を有することを意味する。透気抵抗度が小さいほど通気性は向上し、吸音効果が得られやしくなるため、好ましくは5.0s/100mL以下、より好ましくは3.0s/100mL以下、最も好ましくは2.0s/100mL以下である。なお本開示の透気抵抗度は、ガーレー式デンソメーター(例えば(株)東洋精機製、型式G-B2C)を用いて、100mLの空気の透過時間を測定した結果を意味し、次の手順で測定される。
【0028】
(1)不織布を20cm×20cmサイズに切り出す。
(2)ガーレー式デンソメーター(例えば(株)東洋精機製、型式G-B2C)を用いて、不織布の異なる5点について、透気抵抗度を測定する。但し、透気抵抗度が1000s/mLを超える透気抵抗度のサンプルについては、ガーレー式デンソメーターに代えて、王研式透気抵抗試験機(例えば、旭精工(株)製、型式EG01)を用いて測定する。
(3)前記(2)で得られた5点の平均値を不織布の透気抵抗度とする。
【0029】
(不織布の用途)
本実施形態の不織布は、吸音材として好適に利用できる。単独で使用してもよいし、複数枚重ねて使用することも自由である。単独で使用した場合には、低周波数領域で吸音性が低く、周波数が高くなるにつれて吸音率が上昇する吸音特性が得られる。複数枚積層して使用すると、面振動由来のピーク吸音率を示し、積層枚数に応じて低周波数側にピークがシフトする。
【0030】
(積層吸音材)
本実施形態の不織布は表皮材として、該不織布以外の多孔質材料に積層され、複合吸音材として用いられることが好ましい。ここで多孔質材料とは、不織布、編織物、フェルトなどの繊維シート、マット、通気性ポリウレタン発泡体、通気性ゴム発泡体などが例示される。このような積層構造とすることで良好な吸音特性を示す。
【0031】
(多孔質材料との積層方法)
本実施形態の不織布は、様々な手段を用いて多孔質材料と積層することができる。例えば、本不織布を直接加熱し、熱融着によって接合する方法、カーテンスプレー方式などにより不織布表面にホットメルト系接着剤を塗布した後、不織布側から加熱して熱融着される方法などが例示できる。
【0032】
(複合吸音材の吸音率)
本実施形態の不織布を用いた積層吸音材は、JIS-1405に準拠する垂直入射の測定法において、3000Hz以下の中低周波数領域において特に高い吸音性、すなわち吸音の極大値を示し、その極大値は0.5以上であって、かつ2000Hz以上6000Hz以下のすべての範囲において吸音率が0.3以上であることが好ましい。このような吸音特性を持つことによって、幅広い周波数に対して吸音作用を持ちながら、一般に吸音が困難である3000Hz以下の中低周波数領域を吸音することができる。
【0033】
尚、本不織布を複合吸音材の表皮材として用いた際の性能は次の通り評価する。
(1)不織布より、直径28.8mmの円形ディスク切り出し、厚さ10mmの粗毛フェルトと自然に積層させ、複合吸音材とする。
(2)複合吸音材の吸音率を、JIS A 1405に準拠して垂直入射吸音率測定システム DS-2000(株式会社 小野測器製)を用いて測定する。このとき本実施における不織布が音波の入射側となるように測定する。
【実施例0034】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
(セルロース微細繊維の繊維径)
セルロース微細繊維の平均繊維径を、以下の手順に従って測定した。
(1)セルロース微細繊維の水分散体を、濾過によって可能な限り水を除去したのち、tert―BuOH中に固形分濃度が50ppmとなるよう分散した。分散処理には高せん断ホモジナイザー(IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い処理条件:回転数25,000rpm×5分間で分散させた。
(2)分散液を、Osコートを施したSiウエハ上に5μL滴下し、速やかに全体に塗り広げた。
(3)前記(2)を130℃に加熱したホットプレートで乾燥した。
(4)前記(3)を高分解能走査型顕微鏡(SEM)によって、2000倍の倍率で観察し、10視野を撮影した。
(5)前記(4)で得られた各画像において、無作為に10本の繊維状物質の繊維径を計測した。この時、枝分かれした繊維が存在する場合には、幹部位と枝部位を別々に測定した。
(6)計測したすべての繊維径の平均値をセルロース微細繊維の平均繊維径とした。
【0036】
(短繊維の平均繊維径)
短繊維の平均繊維径は以下の手順にて測定した。
(1)短繊維を0.05質量%の濃度で、水に分散した。この時、分散には家庭用のブレンダーミキサーなどを用いた。
(2)分散液をスライドガラスに滴下し、プレパラートを作成した。
(3)前記(2)をデジタルマイクロスコープにて、500倍の倍率にて観察し、少なくとも5視野を撮影する。
(4)前記(3)で得られた各画像において、無作為に10本の繊維状物質を洗濯し繊維径を計測した。
(5)計測したすべての繊維径の平均値を短繊維の平均繊維径とした。
【0037】
(不織布の平均流量径)
不織布の平均流量径は、PMI社のパームポロメーター(型式:CFP-1200AEX)を用いて測定した。浸液としてPMI社製のガルウィック(表面張力=15.6dynes/cm)を用い、ASTME1294-8に準拠し、ハーフドライ法により測定した。
【0038】
(不織布の目付)
不織布の目付を、JIS P 8124に準じて算出した。
【0039】
(不織布の厚み)
不織布の厚みを以下の手順にて測定した。
(1)不織布を20cm×20cmサイズに切り出した。
(2)ABSデジマチックインジケータ ID-CX(株式会社ミツトヨ製)を用いて不織布の異なる5点について、厚みを測定した。この時測定子は、Φ15mmのフラット測定子を使用した。
(3)前記(2)で得られた5点の平均値を不織布の厚みとした。
【0040】
(不織布の透気抵抗度)
不織布の透気抵抗度を以下の手順にて測定した。
(1)不織布を20cm×20cmサイズに切り出した。
(2)ガーレー式デンソメーター((株)東洋精機製、型式G-B2C)を用いて、不織布の異なる5点について、透気抵抗度を測定した。
(3)前記(2)で得られた5点の平均値を不織布の透気抵抗度とした。
【0041】
(複合吸音材の吸音率)
各実施例・比較例における不織布より、直径28.8mmの円形ディスク切り出し、厚さ10mmの粗毛フェルトと自然に積層させ、複合吸音材とした。前記、複合吸音材の吸音率を、JIS A 1405に準拠して垂直入射吸音率測定システム DS-2000(株式会社 小野測器製)を用いて測定した。このとき不織布が音波の入射側となるように測定を実施した。尚、測定に用いた基材は、以下に記載する各実施例・比較例の記載に従って作製し、使用した。
【0042】
(CNF-A、CNF-B)
双日(株)より入手した再生セルロース繊維であるテンセルカット糸(3mm長)を洗浄用ネットに入れて界面活性剤を加え、洗濯機で何度も水洗することにより、繊維表面の油剤を除去した。その後、固形分1.5質量%となるように水中に分散させてディスクレファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、叩解処理した。
適宜、繊維径を測定しながら叩解処理を行い、平均繊維径が950nmとなった時点のセルロース微細繊維スラリーをCNF-A(固形分濃度1.5質量%)とした。
CNF-Aを、さらに上記ディスクレファイナー装置によって叩解処理した。続いて、該叩解水スラリーを、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて微細化処理し、平均繊維径が390nmとなった時点のセルロース微細繊維スラリーをCNF-B(固形分濃度1.5質量%)とした。
【0043】
(CNF-C、CNF-D、CNF-E)
日本紙パルプ商事(株)より入手した天然セルロースであるリンターパルプを用い、リンターパルプが4質量%となるように水に浸液させた。その後、オートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行い、得られた膨潤パルプを複数回水洗し、水を含浸した状態の精製リンターパルプを得た。その後、得られた精製リンターパルプを固形分1.5質量%となるように水中に分散させて400Lの分散体を得た。これをディスクレファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、叩解処理した。
適宜、繊維径を測定しながら叩解処理を行い、平均繊維径が2500nmとなった時点のセルロース微細繊維スラリーをCNF-C(固形分濃度1.5質量%)とした。
CNF-Cを、さらに上記ディスクレファイナー装置によって叩解処理し、平均繊維径が118nmとなった時点のセルロース微細繊維スラリーをCNF-D(固形分濃度1.5質量%)とした。
続けて、CNF-Dを高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて微細化処理し、平均繊維径が98nmとなった時点のセルロース微細繊維スラリーをCNF-E(固形分濃度1.5質量%)とした。
【0044】
(短繊維A)
ポリエチレンテレフタラート製の短繊維(3.0mm長)を秤量し、水を加えて、家庭用ミキサーで4分間撹拌して、短繊維のスラリー(固形分濃度:0.05質量%)を得た。スラリー中の短繊維の平均繊維径は3.0μmであった。
【0045】
(短繊維B)
ポリプロピレン製の短繊維(2.0mm長)を秤量し、水を加えて、家庭用ミキサーで4分間撹拌して、短繊維のスラリー(固形分濃度:0.05質量%)を得た。スラリー中の短繊維の平均繊維径は5.3μmであった。
【0046】
(短繊維C)
ポリプロピレン製の短繊維(3.0mm長)を秤量し、水を加えて、家庭用ミキサーで4分間撹拌して、短繊維のスラリー(固形分濃度:0.05質量%)を得た。スラリー中の短繊維の平均繊維径は9.2μmであった。
【0047】
(短繊維D)
ポリプロピレン製の短繊維(5.0mm長)を秤量し、水を加えて、家庭用ミキサーで4分間撹拌して、短繊維のスラリー(固形分濃度:0.05質量%)を得た。スラリー中の短繊維の平均繊維径は10.6μmであった。
【0048】
(実施例1)
CNF-B及び短繊維Aを用い、以下の手順で不織布を作製した。
CNF-B、短繊維Aを固形分重量比で5:95となるように、純水中に加え、固形分終濃度0.5%とした。前記スラリーを家庭用ミキサーで4分撹拌することで抄紙スラリーを調製した。
濾布(敷島カンバス社製 TT35)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に、上記調製した抄紙スラリーを目付が300g/m2となるように投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにて約120秒間乾燥させ、不織布S1を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1に示す。
【0049】
(実施例2)
CNF-B及び短繊維Aを用い、以下の手順で不織布を作製した。
CNF-B、短繊維Aを固形分重量比で5:95となるように、純水中に加え、固形分終濃度0.5%とした。前記スラリーを家庭用ミキサーで4分撹拌することで抄紙スラリーを調製した。
濾布(敷島カンバス社製 TT35)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に、上記調製した抄紙スラリーを目付が100g/m2となるように投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにて約120秒間乾燥させ、不織布S2を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1に示す。
【0050】
(実施例3)
CNF-B及び短繊維Bを用い、以下の手順で不織布を作製した。
CNF-B、短繊維Bを固形分重量比で15:85となるように、純水中に加え、固形分終濃度0.5%とした。前記スラリーを家庭用ミキサーで4分撹拌することで抄紙スラリーを調製した。
濾布(敷島カンバス社製 TT35)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に、上記調製した抄紙スラリーを目付が100g/m2となるように投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにて約120秒間乾燥させ、不織布S3を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1に示す。
【0051】
(実施例4)
CNF-B及び短繊維Bを用い、以下の手順で不織布を作製した。
CNF-B、短繊維Bを固形分重量比で15:85となるように、純水中に加え、固形分終濃度0.5%とした。前記スラリーを家庭用ミキサーで4分撹拌することで抄紙スラリーを調製した。
濾布(敷島カンバス社製 TT35)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に、上記調製した抄紙スラリーを目付が50g/m2となるように投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにて約120秒間乾燥させ、不織布S4を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1に示す。
【0052】
(実施例5)
CNF-B及び短繊維Cを用い、以下の手順で不織布を作製した。
CNF-B、短繊維Cを固形分重量比で15:85となるように、純水中に加え、固形分終濃度0.5%とした。前記スラリーを家庭用ミキサーで4分撹拌することで抄紙スラリーを調製した。
濾布(敷島カンバス社製 TT35)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に、上記調製した抄紙スラリーを目付が100g/m2となるように投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにて約120秒間乾燥させ、不織布S5を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1に示す。
【0053】
(実施例6)
CNF-D及び短繊維Aを用い、以下の手順で不織布を作製した。
CNF-D、短繊維Aを固形分重量比で5:95となるように、純水中に加え、固形分終濃度0.5%とした。前記スラリーを家庭用ミキサーで4分撹拌することで抄紙スラリーを調製した。
濾布(敷島カンバス社製 TT35)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に、上記調製した抄紙スラリーを目付が100g/m2となるように投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにて約120秒間乾燥させ、不織布S6を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1に示す。
【0054】
(実施例7)
CNF-A及び短繊維Bを用い、以下の手順で不織布を作製した。
CNF-A、短繊維Bを固形分重量比で30:70となるように、純水中に加え、固形分終濃度0.5%とした。前記スラリーを家庭用ミキサーで4分撹拌することで抄紙スラリーを調製した。
濾布(敷島カンバス社製 TT35)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に、上記調製した抄紙スラリーを目付が200g/m2となるように投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにて約120秒間乾燥させ、不織布S7を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表1に示す。
【0055】
(比較例1)
CNF-D及び短繊維Aを用い、以下の手順で不織布を作製した。
CNF-D、短繊維Aを固形分重量比で20:80となるように、純水中に加え、固形分終濃度0.5%とした。前記スラリーを家庭用ミキサーで4分撹拌することで抄紙スラリーを調製した。
濾布(敷島カンバス社製 TT35)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に、上記調製した抄紙スラリーを目付が100g/m2となるように投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにて約120秒間乾燥させ、不織布R1を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表2に示す。
【0056】
(比較例2)
CNF-E及び短繊維Bを用い、以下の手順で不織布を作製した。
CNF-E、短繊維Bを固形分重量比で15:85となるように、純水中に加え、固形分終濃度0.5%とした。前記スラリーを家庭用ミキサーで4分撹拌することで抄紙スラリーを調製した。
濾布(敷島カンバス社製 TT35)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に、上記調製した抄紙スラリーを目付が100g/m2となるように投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにて約120秒間乾燥させ、不織布R2を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表2に示す。
【0057】
(比較例3)
CNF-B及び短繊維Dを用い、以下の手順で不織布を作製した。
CNF-B、短繊維Dを固形分重量比で30:70となるように、純水中に加え、固形分終濃度0.5%とした。前記スラリーを家庭用ミキサーで4分撹拌することで抄紙スラリーを調製した。
濾布(敷島カンバス社製 TT35)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に、上記調製した抄紙スラリーを目付が100g/m2となるように投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにて約120秒間乾燥させ、不織布R3を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表2に示す。
【0058】
(比較例4)
CNF-C及び短繊維Aを用い、以下の手順で不織布を作製した。
CNF-C、短繊維Aを固形分重量比で50:50となるように、純水中に加え、固形分終濃度0.5%とした。前記スラリーを家庭用ミキサーで4分撹拌することで抄紙スラリーを調製した。
濾布(敷島カンバス社製 TT35)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に、上記調製した抄紙スラリーを目付が300g/m2となるように投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした。その後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにて約120秒間乾燥させ、不織布R4を得た。得られた不織布の各種物性等を以下の表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る不織布は、中低周波数領域の吸音性に優れながらも、高い生産性を有し、複合吸音材の表皮材として好適に使用できるため、特に自動車、住宅、家電製品に用いられる複合吸音材の表皮材として好適に利用可能である。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が100nm以上2000nm以下であるミクロフィブリル化された微細繊維と、平均繊維径が0.1μm以上10μm以下である短繊維とを含む不織布で構成された吸音材であって、該不織布の目付が、50g/m 2 以上であり、かつ、パームポロメーターで測定される該不織布の平均流量径が1μm以上30μm以下であることを特徴とする吸音材
【請求項2】
前記不織布は、前記微細繊維を1質量%以上20質量%未満で含有する、請求項1に記載の吸音材
【請求項3】
前記不織布は、湿式不織布である、請求項1又は2に記載の吸音材
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の吸音材と、前記不織布以外の多孔質材料とが積層されている複合吸音材。
【請求項5】
JIS A 140 5に準拠する垂直入射の測定法において、3000 Hz以下に吸音の極大値を有し、該極大値が0.5以上であり、かつ、2000~6000 Hzのすべての範囲における吸音率が0.2以上である、請求項に記載の複合吸音材。
【請求項6】
平均繊維径が100nm以上2000nm以下であるミクロフィブリル化された微細繊維と、平均繊維径が0.1μm以上10μm以下である短繊維とを含む抄紙スラリーを調製する工程;
該抄紙スラリーを抄紙し湿紙を得る工程;及び
該湿紙を乾燥させ不織布で構成された吸音材を得る工程;
を含む、吸音材の製造方法であって、
該不織布の目付が、50g/m 2 以上であり、かつ、パームポロメーターで測定される該不織布の平均流量径が、1μm以上30μm以下であることを特徴とする吸音材の製造方法。