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特開2024-17742接合構造、接合構造を備える直動変換機構及び接合構造を備える電動アクチュエータ
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  • 特開-接合構造、接合構造を備える直動変換機構及び接合構造を備える電動アクチュエータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017742
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】接合構造、接合構造を備える直動変換機構及び接合構造を備える電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20240201BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20240201BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20240201BHJP
   F16C 23/04 20060101ALI20240201BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F16C11/04 V
F16H25/22 Z
F16H25/24 A
F16C23/04 E
F16C11/04 F
H02K7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120586
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】河合 類斗
【テーマコード(参考)】
3J012
3J062
3J105
5H607
【Fターム(参考)】
3J012AB01
3J012BB03
3J012DB02
3J012FB04
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA16
3J062BA31
3J062BA35
3J062CD04
3J062CD23
3J062CD45
3J105AA04
3J105AA06
3J105AB02
3J105AB25
3J105AC01
3J105BB04
5H607BB01
5H607DD03
5H607EE52
(57)【要約】
【課題】互いに接合される2つの部材間の芯ずれを吸収するとともに、従来技術と比較して摩耗を低減できる接合構造、接合構造を備える直動変換機構及び接合構造を備える電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】接合構造8は、第一の接合対象4に設けられる一対の腕部10と、腕部10の間に設けられるピン12と、ピン12に外挿され、ピン12の軸方向に沿って移動する球面軸受14と、第二の接合対象6に設けられ、球面軸受14に対して球面軸受14の中心点回りに相対回転可能に連結される差込部16と、を備え、一対の腕部10は、ピン12の軸方向と交差する方向に延びてピン12が挿入される長孔50を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の接合対象及び第二の接合対象を互いに接合する接合構造であって、
前記第一の接合対象に設けられる一対の腕部と、
前記腕部の間に設けられるピンと、
前記ピンに外挿され、前記ピンの軸方向に沿って移動する球面軸受と、
前記第二の接合対象に設けられ、前記球面軸受に対して前記球面軸受の中心点回りに相対回転可能に連結される差込部と、
を備え、
一対の前記腕部は、前記ピンの軸方向と交差する方向に延びて前記ピンが挿入される長孔を有する、
接合構造。
【請求項2】
前記長孔は、前記第一の接合対象と前記球面軸受とを結ぶ方向及び前記ピンの軸方向のそれぞれと直交する方向に沿って延びている、
請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
第一の接合対象及び直動変換機構を互いに接合する接合構造を備える直動変換機構において、
前記接合構造は、
前記第一の接合対象に設けられる一対の腕部と、
前記腕部の間に設けられるピンと、
前記ピンに外挿され、前記ピンの軸方向に沿って移動する球面軸受と、
前記接合構造を備える直動変換機構に設けられ、前記球面軸受に対して前記球面軸受の中心点回りに相対回転可能に連結される差込部と、
を備え、
一対の前記腕部は、前記ピンの軸方向と交差する方向に延びて前記ピンが挿入される長孔を有する、
接合構造を備える直動変換機構。
【請求項4】
接合構造を備える電動アクチュエータであって、
回転軸を回転させるモータと、
請求項3に記載の接合構造を備える直動変換機構と、
を有し、
前記接合構造を備える直動変換機構は、前記接合構造と接続されるとともに直線運動可能な直動部材を有し、前記モータの回転運動を前記直動部材の直線運動に変換する、
接合構造を備える電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記長孔は、前記第一の接合構造と前記接合構造を備える電動アクチュエータとを結ぶ方向及び前記ピンの軸方向のそれぞれと直交する方向に沿って延びている、
請求項4に記載の接合構造を備える電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記接合構造を備える直動変換機構は、
前記モータの前記回転軸に接続されるボールねじナットと、
前記ボールねじナットの内周側に螺合されて直線運動するボールねじ軸と、
を有する、
請求項4又は請求項5に記載の接合構造を備える電動アクチュエータ。
【請求項7】
前記接合構造を備える直動変換機構は、
前記回転軸に接続されるボールねじ軸と、
前記ボールねじの外周側に螺合されて直線運動するボールねじナットと、
前記ボールねじナットと前記接合構造とを連結する連結部材と、
を有する、
請求項4又は請求項5に記載の接合構造を備える電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造、接合構造を備える直動変換機構及び接合構造を備える電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動アクチュエータによって油圧コントロールバルブ等のスプール軸を移動させるスプール弁の構成が知られている。スプール弁では、電動アクチュエータとスプール軸との間の芯ずれ(偏心や角度ずれ等)による動作不良等の発生を防止するため、電動アクチュエータとスプール軸との芯ずれを吸収する技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、電動アクチュエータとスプール軸との間に設けられて芯ずれを吸収する接合構造を有し、接合構造は、電動アクチュエータと接続されるモータ側連結部と、スプール軸と接続されるスプール側連結部と、モータ側連結部とスプール側連結部との間に介在してモータ側連結部とスプール側連結部とを連結するボールと、と有する構成が開示されている。接合構造は、モータ側連結部とスプール側連結部とがボールの中心点回りに相対回転するボールジョイントとして構成されている。
特許文献1に記載の技術によれば、各部材がボールの中心点回りに相対回転することにより、電動アクチュエータの軸線に対するスプール軸の軸線の角度ずれを吸収(許容)できるとされている。また、ボールがモータ側連結部又はスプール側連結部に相対移動可能に嵌合させることにより、モータ側連結部とスプール側連結部とを互いに電動アクチュエータの軸方向と直交する2方向へ移動させることができる。これにより、電動アクチュエータの軸線に対するスプール軸の軸線の偏心を吸収できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-135937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、モータ側連結部とボールとの間が線接触となる。このため、特許文献1に記載の技術にあっては、ボールと連結部との間の接触面圧が高くなり、各部材が摩耗し易くなるおそれがあった。また、部材が摩耗することにより、ガタや運動誤差が生じるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、互いに接合される2つの部材間の芯ずれを吸収するとともに、従来技術と比較して摩耗を低減できる接合構造、この接合構造を備える直動変換機構及びこの接合構造を備える電動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る接合構造は、第一の接合対象及び第二の接合対象を互いに接合する接合構造であって、前記第一の接合対象に設けられる一対の腕部と、前記腕部の間に設けられるピンと、前記ピンに外挿され、前記ピンの軸方向に沿って移動する球面軸受と、前記第二の接合対象に設けられ、前記球面軸受に対して前記球面軸受の中心点回りに相対回転可能に連結される差込部と、を備え、一対の前記腕部は、前記ピンの軸方向と交差する方向に延びて前記ピンが挿入される長孔を有する。
【0008】
本発明の第一の態様に係る接合構造を備える直動変換機構は、第一の接合対象及び直動変換機構を互いに接合する接合構造を備え、前記接合構造は、前記第一の接合対象に設けられる一対の腕部と、前記腕部の間に設けられるピンと、前記ピンに外挿され、前記ピンの軸方向に沿って移動する球面軸受と、前記接合構造を備える直動変換機構に設けられ、前記球面軸受に対して前記球面軸受の中心点回りに相対回転可能に連結される差込部と、を備え、一対の前記腕部は、前記ピンの軸方向と交差する方向に延びて前記ピンが挿入される長孔を有する。
また、本発明の第一の態様に係る接合構造を備える電動アクチュエータは、回転軸を回転させるモータと、上述の接合構造を備える直動変換機構と、を有し、前記接合構造を備える直動変換機構は、前記接合構造と接続されるとともに直線運動可能な直動部材を有し、前記モータの回転運動を前記直動部材の直線運動に変換する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接合構造、接合構造を備える直動変換機構及び接合構造を備える電動アクチュエータによれば、互いに接合される2つの部材間の芯ずれを吸収するとともに、従来技術と比較して摩耗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る接合構造を備える直動変換機構及び接合構造を備える電動アクチュエータを使用したスプール弁の平面図。
図2図1のII部の拡大断面図であり、接合構造を備える直動変換機構及び接合構造を備える電動アクチュエータの断面図。
図3図2のIII部拡大図であり、Y軸回りに回転した状態を示す図。
図4図2のIV部拡大図であり、Z軸方向に平行移動した状態を示す図。
図5】接合構造の下面図であり、Z軸回りに回転した状態を示す図。
図6】接合構造の下面図であり、Y軸方向に平行移動した状態を示す図。
図7】第2実施形態に係る接合構造を備える直動変換機構及び接合構造を備える電動アクチュエータの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明において、スプール軸4と同軸な軸をX軸とし、X軸に沿う方向をX軸方向といい、X軸に直交する方向をそれぞれY軸方向及びZ軸方向という場合がある。また、接合構造8のピン12と同軸な軸をZ軸として説明し、X軸及びZ軸にそれぞれ直交する軸をY軸という場合がある。
【0012】
(第1実施形態)
(スプール弁)
図1は、第1実施形態に係る接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6を使用したスプール弁1の平面図である。
図1に示すように、本実施形態のスプール弁1は、例えば産業機械等のアクチュエータに作動油を供給するための油圧供給装置に設けられたスプール弁である。産業機械等のアクチュエータは、供給される流量に応じた速度で駆動するようになっており、油圧供給装置は、産業機械等のアクチュエータに供給される作動油の流量を制御すべく、図1に示すようなスプール弁1を有している。スプール弁1は、直動電動式のスプール弁1である。スプール弁1は、ハウジング2と、スプール軸4と、接合構造8を備える電動アクチュエータ6と、を備える。
【0013】
(ハウジング)
ハウジング2は、例えばバルブブロックである。ハウジング2内には、油圧供給装置の少なくとも一部が収容されている。ハウジング2には、スプール孔21及び複数の油通路22が形成されている。スプール孔21は、ハウジング2を貫通するようにX軸方向に沿って延びている。本実施形態において、ハウジング2は、複数の油通路22として、第一の油通路22a、第二の油通路22b、第三の油通路22c及び第四の油通路22dを有する。第一から第四の油通路22a,22b,22c,22dは、異なる位置にてスプール孔21にそれぞれ接続されている。
【0014】
具体的に、第一から第三の油通路22a,22b,22cは、互いにX軸方向に並んで配置されるとともに、X軸と直交する方向(図1の-Z軸方向)に沿って延びている。第一から第三の油通路22a,22b,22cの内端部は、スプール孔21と連通している。第一から第三の油通路22a,22b,22cの外端部は、ハウジング2の外部と連通している。第四の油通路22dは、スプール孔21に対して第一から第三の油通路22a,22b,22cとは反対側(+Z軸方向)に延びてハウジング2内を迂回したのち、再び反対側(-Z軸方向)に延びることによりスプール孔21とハウジング2の外部とを連通している。第一から第四の油通路22a,22b,22c,22dは、図示しない油圧ポンプやアクチュエータ等に繋がっており、4つの油通路22a,22b,22c,22dにそれぞれ作動油が流れるようになっている。
【0015】
(スプール軸)
スプール軸4は、ハウジング2のスプール孔21に挿通されている。スプール軸4は、複数の油通路22に対してX軸方向の一方側(+X軸方向)に設けられている。スプール軸4は、X軸方向に沿って延びるとともに、ハウジング2のスプール孔21内をX軸方向に沿って移動可能となっている。スプール軸4は、その軸方向を中心軸とする円柱状に形成されている。スプール軸4の外径は、スプール孔21の内径とほぼ一致している。なお、スプール軸4の外周面には、図示しない複数の溝やスリット等が形成されていてもよい。
【0016】
スプール軸4は、詳しくは後述する接合構造8を介して、接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6と接続されており、接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6が駆動されることに応じて、スプール孔21内を軸方向に沿って移動する。スプール軸4がスプール孔21の軸方向に沿って移動することにより、4個の油通路22のそれぞれに所望の流量で作動油を流すことが可能となっている。
【0017】
(接合構造を備える電動アクチュエータ)
図2は、図1のII部の拡大断面図である。
図1及び図2に示すように、接合構造8を備える電動アクチュエータ6は、いわゆる直動式の接合構造8を備える電動アクチュエータ6である。接合構造8を備える電動アクチュエータ6は、スプール軸4に対して油通路22とは反対側に設けられており、接合構造8を介してスプール軸4と接続されている。接合構造8を備える電動アクチュエータ6は、電力を供給することによってスプール軸4を軸方向に往復運動させるようになっている。図2に示すように、接合構造8を備える電動アクチュエータ6は、筐体30と、モータ31と、接合構造8を備える直動変換機構35と、を有する。
【0018】
筐体30は、スプール軸と同軸なX軸を中心軸とする円筒状に形成されている。筐体30のうちスプール軸4側に位置する端部は、ハウジング2のスプール孔21に嵌合されて接続されている。筐体30は、ハウジング2と接続されることによりハウジング2と一体化されている。筐体30のうちスプール軸4と反対側の端部には、モータ31が取り付けられている。
【0019】
モータ31は、いわゆるサーボモータである。モータ31は、不図示のステータ及びロータを有し、ロータに回転軸32が接続されている。ステータには不図示の制御装置が接続されており、制御装置から印加される電圧に応じて所定の回転数でロータ(すなわち回転軸32)を回転させるようになっている。回転軸32は、X軸方向を回転中心とするとともにスプール軸4側(-X方向)に向かって延びている。
【0020】
接合構造8を備える直動変換機構35は、モータ31の回転軸32に接続されるとともに、筐体30に収容されている。接合構造8を備える直動変換機構35は、X軸に沿って直線運動可能な直動部材(本実施形態では、ボールねじ軸38)を有し、モータ31の回転軸32から出力されたX軸回りの回転運動を、X軸方向に沿う直線運動に変換するための機構である。本実施形態では、接合構造8を備える直動変換機構35としてボールねじ機構が用いられる。以下の説明では、接合構造8を備える直動変換機構35を単に接合構造8を備えるボールねじ機構35という場合がある。
【0021】
接合構造8を備えるボールねじ機構35は、ボールねじナット37と、ボールねじ軸38と、接合構造8と、を有する。ボールねじナット37は、筐体30よりも一回り小さい円筒状に形成されている。ボールねじナット37の外周面には、複数の軸受45が設けられている。ボールねじナット37は、これらの軸受45により、筐体30に対して相対回転可能に取り付けられている。ボールねじナット37は、モータ31の回転軸32に接続されている。よって、モータ31が駆動されて回転軸32が回転すると、ボールねじナット37は、回転軸32と一体的にX軸回りに回転する。ボールねじナット37の内周面には球39を保持するための溝が複数形成されている。ボールねじナット37が回転すると、球39はボールねじナット37の内周面において、溝に沿って周方向に循環する。
【0022】
ボールねじ軸38は、X軸方向に延びる棒状の部材である。ボールねじ軸38は、ボールねじナット37の内側に設けられている。ボールねじ軸38は、ボールねじナット37の回転に伴ってX軸方向に沿って移動可能に構成されている。ボールねじ軸38の外周面には雄ねじが形成されている。ボールねじ軸38は、球39を介してボールねじナット37の内周面と螺合している。本実施形態において、ボールねじ軸38は、直動部材として機能する。すなわち、ボールねじ軸38は、ボールねじナット37を回転させることによって、ねじ軸(X軸)に沿って軸方向一方及び軸方向他方に移動するようになっている。X軸方向においてモータ31と反対側に位置するボールねじ軸38の他端部は、筐体30の開口部付近まで延びており、後述する接合構造8の差込部16(図3参照)と接続されている。ボールねじ軸38の他端部外周面には、X軸方向に沿って溝38aが形成されており、筐体30の開口部付近に取り付けられたピン46の先端が溝38aに係合することで、ボールねじナット37の回転に対して、ボールねじ軸38が供回りするのを防止している。
【0023】
(接合構造)
接合構造8は、X軸上であって、かつスプール軸4と接合構造8を備える電動アクチュエータ6のボールねじ軸38との間に設けられている。接合構造8は、スプール軸4(請求項における第一の接合対象)と接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6(請求項における第二の接合対象)とを接合している。換言すれば、接合構造8は、直動する2個の接合対象を互いに接合するための構造である。本実施形態の接合構造8は、2個の接合対象のうち、入力側の部材の軸線(例えば、接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6の軸線)に対する出力側の部材の軸線(例えば、スプール軸4の軸線)の角度ずれ及び軸線同士の偏心を吸収(許容)することが可能となっている。
【0024】
図3は、図2のIII部拡大図であり、Y軸回りに回転した状態を示す図である。換言すれば、図3は、スプール軸4と接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6との間でY軸回りの角度ずれが生じた場合の状態を示す。図4は、図2のIV部拡大図であり、Z軸方向に平行移動した状態を示す図である。換言すれば、図4は、スプール軸4と接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6との間でZ軸方向の偏心が生じた場合の状態を示す。図5は、接合構造8の下面図(すなわち、図3を下方から見た図)であり、Z軸回りに回転した状態を示す図である。換言すれば、図5は、スプール軸4と接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6との間でZ軸回りの角度ずれが生じた場合の状態を示す。図6は、接合構造8の下面図であり、Y軸方向に平行移動した状態を示す図である。換言すれば、図6は、スプール軸4と接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6との間でY軸方向の偏心が生じた場合の状態を示す。
図3から図6に示すように、接合構造8は、一対の腕部10と、ピン12と、球面軸受14と、差込部16と、を有する、いわゆるクレビスジョイントである。
【0025】
図3及び図4に示すように、一対の腕部10は、クレビスジョイントの雌部を構成する部材である。一対の腕部10は、第一の接合対象であるスプール軸4の軸方向一方(+X軸)側の端部に取り付けられている。一対の腕部10は、Z軸方向に互いに離間して設けられる。より詳細に、一対の腕部10は、相対的に+Z方向側に位置する第一腕部41と、第一腕部41よりも-Z方向側に位置する第二腕部42と、を有する。第一腕部41及び第二腕部42は、同等の形状に形成されている。一対の腕部10は、それぞれスプール軸4から+X軸方向に向かって突出している。一対の腕部10は、Z方向を厚み方向とする板状に形成されている。
【0026】
図5及び図6に示すように、一対の腕部10には長孔50がそれぞれ形成されている。第一腕部41に形成される長孔50及び第二腕部42に形成される長孔50は同等の形状となっており、かつZ軸方向から見て重なる位置に設けられている。長孔50は、各腕部10をそれぞれZ軸方向に貫通している。長孔50は、Z軸方向から見て、Y軸方向に延びる(Y軸を長軸とする)長円形状に形成されている。換言すれば、長孔50は、スプール軸4と球面軸受14とを結ぶ方向(X軸方向)及びピン12の軸方向(Z軸方向)のそれぞれと直交する方向に沿って延びている。
【0027】
図3及び図4に示すように、ピン12は、一対の腕部10の長孔50にそれぞれ挿入されている。ピン12は、一対の腕部10間に渡ってZ軸方向に延びるように設けられている。ピン12は、本体部51と、頭部52と、を有する。本体部51は、Z軸方向に延びる円柱状に形成されている。本体部51の外径は、一対の腕部10の長孔50の幅寸法と同等かやや小さい寸法となっている。本体部51は、軸方向の両端部が一対の腕部10の長孔50にそれぞれ挿入されている。本体部51の軸方向における一方の端部(+Z軸側の端部)には、頭部52が一体的に設けられている。頭部52は、本体部51よりも外径が大きい円柱状に形成されている。頭部52の外径は、長孔50のX軸方向に沿う幅寸法よりも大きい。頭部52は、第一腕部41のうち第二腕部42と反対側を向く面に当接している。頭部52が第一腕部41と当接することにより、ピン12の軸方向(Z方向)の位置が決められる。頭部52が第一腕部41と当接した状態において、ピン12の本体部51における他方の端部(-Z軸側の端部)は、第二腕部42よりもZ軸方向の-側に突出している。なお、ピン12の本体部51における他方の端部には、例えばピン12の抜けを防止するための突起やカシメ等(不図示)が設けられてもよい。ピン12を腕部10に固定する方法についてはこれに限定されない。
【0028】
球面軸受14は、ピン12の途中であって一対の腕部10の間に設けられている。球面軸受14の中心部には、Z軸方向に沿うピン挿入孔55が形成されている。ピン挿入孔55にピン12が挿入されることにより、球面軸受14はピン12に外挿されている。球面軸受14の外面形状は、球体の上端部と下端部を切り取った形状となっている。球面軸受14のZ軸方向に沿う高さ寸法は、第一腕部41と第二腕部42との間の距離寸法よりも小さい。球面軸受14は、ピン12の軸方向に沿って移動可能に取り付けられている(図4も参照)。
【0029】
差込部16は、クレビスジョイントの雌部を構成する部材である。差込部16は、第二の接合対象である接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6のボールねじ軸38の軸方向他方(-X軸)側の端部に取り付けられている。差込部16は、接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6のボールねじ軸38からスプール軸4側に向かって突出している。差込部16は、一対の腕部10の間に挿入される。差込部16には、軸受保持孔58が設けられる。軸受保持孔58の内周面は、球体滑り面とされている。球体滑り面は、球面軸受14の外面形状と対応する内面形状を有し、球面軸受14と回転自在に係合する。これにより差込部16は、球面軸受14に対して、球面軸受14の中心点O回りに相対回転可能に連結される(図3も参照)。
【0030】
上述した構成により、接合構造8は、接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6からの直線運動をスプール軸4へ伝達して、スプール軸4をX軸方向に沿って直線運動させる。ここで、上述したように、接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6に取り付けられる差込部16は、スプール軸4に取り付けられる一対の腕部10に対して、複数方向へ平行移動及び回転可能に接続されている。第一に、図4に示すように一対の腕部10の間を球面軸受14が移動することにより、差込部16は、一対の腕部10に対してピン12の軸方向、すなわちZ軸方向に平行移動可能である(図4の矢印A参照)。第二に、図6に示すようにピン12が長孔50の長軸方向に沿って移動することにより、差込部16は、一対の腕部10に対して長孔50の長軸方向、すなわちY軸方向に平行移動可能である(図6の矢印B参照)。第三に、図3に示すように差込部16が球面軸受14の周りを回転することにより、差込部16は、一対の腕部10に対して球面軸受14の中心点Oを中心とするピッチ方向、すなわちY軸回りに回転可能である(図3の矢印C参照)。第四に、図5に示すように差込部16が球面軸受14の周りを回転することにより、差込部16は、一対の腕部10に対して球面軸受14の中心点Oを中心とするヨー方向、すなわちZ軸回りに回転可能である(図5の矢印D参照)。第五に、例えば図4に示すように差込部16が球面軸受14の周りをX軸回りに回転することにより、差込部16は、一対の腕部10に対して球面軸受14の中心点Oを中心とするロール方向、すなわちX軸と平行な中心軸回りに回転可能である(図4の矢印E参照)。さらに、これらの平行移動及び回転を組み合わせることにより、所望の相対角度及び相対位置に移動可能である。
【0031】
(作用、効果)
本実施形態の接合構造8、接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6によれば、接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6は接合構造8を有し、接合構造8は、一対の腕部10と、ピン12と、球面軸受14と、差込部16と、を備え、一対の腕部10は長孔50を有する。差込部16は球面軸受14に対して相対回転可能に取り付けられているので、差込部16が球面軸受14に対して相対回転することにより、接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6の軸線に対するスプール軸4の軸線の傾斜(角度ずれ)を吸収(許容)できる。具体的には、接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6の軸線とスプール軸4の軸線とのピッチ方向のずれ、ヨー方向のずれ、及びロール方向のずれを吸収できる。また、球面軸受14がピン12の軸方向に沿って移動することにより、接合構造8を備える電動アクチュエータ6の軸線とスプール軸4の軸線とのZ軸方向のずれ(偏心)を吸収(許容)できる。さらに長孔50はピン12の軸方向と交差する方向に延び、長孔50にピン12が挿入される。このため、ピン12が長孔50の長軸方向に沿って移動することができる。これにより、接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6の軸線とスプール軸4の軸線との長孔50の軸方向に沿う方向(Y軸方向)の偏心を吸収できる。
接合構造8において、球面軸受14にはピン挿入孔55が設けられ、一対の腕部10と差込部16(球面軸受14)とはピン挿入孔55に挿入された断面円形状のピン12により連結される。これにより、球面軸受14の内周面(すなわちピン挿入孔55の内周面)とピン12とを面接触させることができる。また、球面軸受14と差込部16との間も面接触させることができる。これにより、ボールを介してモータ側連結部とスプール側連結部とが連結され、ボールと一方の連結部との間が線接触となる従来技術と比較して、接触面圧を低く抑えることができる。具体的に、ピン12と球面軸受14との間、及び球面軸受14と差込部16との間をそれぞれ面接触させることにより、部品間の接触面圧を低く抑えることができる。また、ピン12と球面軸受14との間を面接触させて接触面圧を小さくできるので、接合構造8を小型化できる。これにより、例えば接触面圧を抑えるためにピン12と長孔50との間の線接触する領域(接触長さ)を拡大した場合であっても、接合構造8全体としての大型化を抑えることができる。同様に、この接合構造8を備えるスプール弁1の大型化を抑えることができる。よって、従来技術と比較して線接触部分による摩耗の発生を低減しつつ、装置全体としての小型化を図ることができる。
したがって、互いに接合される2つの部材間の芯ずれを吸収するとともに、従来技術と比較して摩耗を低減できる接合構造8を提供できる。
【0032】
長孔50は、第一の接合対象であるスプール軸4と第二の接合対象である接合構造8を備える直動変換機構35及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6とを結ぶ方向(或いは、スプール軸4と球面軸受14とを結ぶ方向)(X軸方向)及びピン12の軸方向(Z軸方向)のそれぞれと直交する方向に沿って延びている。これにより、特にピン12の軸と直交するY軸方向の偏心を吸収できる。よって、様々な方向への偏心及び角度ずれをより効果的に吸収することができる。
【0033】
接合構造8を備える直動変換機構35は、モータ31の回転軸32に接続されるボールねじナット37と、ボールねじナット37に螺合されて直線運動するボールねじ軸38と、接合構造8と、を有する。接合構造8を備える直動変換機構35としてボールねじ機構を用いることにより、構成を簡素化しつつ、上述したように芯ずれを吸収するとともに摩耗を低減できるという作用効果を奏するスプール弁1を提供できる。また、スプール弁1の汎用性を高めることができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。なお、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。図7は、第2実施形態に係る接合構造8を備える直動変換機構235及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6の断面図である。図7は、第1実施形態における図2に対応する。本実施形態では、接合構造8を備える電動アクチュエータ6の接合構造8を備える直動変換機構235の構成が上述した第1実施形態と相違している。
【0035】
第2実施形態において、接合構造8を備える電動アクチュエータ6の接合構造8を備える直動変換機構235は、X軸に沿って直線運動可能な直動部材(本実施形態では、ボールねじナット237)を有し、モータ31の回転軸32から出力されたX軸回りの回転運動を、X軸方向に沿う直線運動に変換する接合構造8を備えるボールねじ機構235である。
【0036】
接合構造8を備えるボールねじ機構235は、ボールねじ軸238と、ボールねじナット237と、接合構造8と、を有する。ボールねじ軸238は、X軸方向に延びる棒状の部材である。ボールねじ軸238は、軸受245により、筐体30に対して相対回転可能に取り付けられている。ボールねじ軸238は、モータ31の回転軸32に接続されている。よって、モータ31が駆動されて回転軸32が回転すると、ボールねじ軸238は、回転軸32と一体的にX軸回りに回転する。ボールねじ軸238の外周面には雄ねじが形成されている。
【0037】
ボールねじナット237は、ボールねじ軸238の外周部に設けられている。ボールねじナット237は、筐体30よりも一回り小さい円筒状に形成されている。ボールねじナット237は、ボールねじ軸238の回転に伴ってX軸方向に沿って移動可能に構成されている。ボールねじナット237の内周面には、球39を保持するための溝が複数形成されている。ボールねじナット237は、球39を介してボールねじ軸238の外周面と螺合している。ボールねじ軸238が回転すると、球39はボールねじナット237の内周面において、溝に沿って周方向に循環する。本実施形態において、ボールねじナット237が直動部材として機能する。すなわち、ボールねじナット237は、ボールねじ軸238が回転することによって、ねじ軸(X軸)に沿って軸方向一方及び軸方向他方に移動するようになっている。X軸方向においてモータ31と反対側に位置するボールねじナット237の他端部は、筐体30の開口部付近まで延びており、接合構造8の差込部16と接続されている。ボールねじナット237の他端部外周面には、X軸方向に沿って溝238aが形成されており、筐体30の開口部付近に取り付けられたピン46の先端が溝238aに係合することで、ボールねじ軸238の回転に対して、ボールねじナット237が供回りするのを防止している。なお、ボールねじナット237と筐体30との間に、筐体30に対してボールねじナット237の直線運動を許容するスライダー等の部材(不図示)が別途設けられてもよい。
【0038】
第2実施形態の接合構造8を備える直動変換機構235及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6によれば、ボールねじ軸238をモータ31の回転軸32に接続し、ボールねじナット237を直動部材とすることにより、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。よって、接合構造8を備える直動変換機構235及び接合構造8を備える電動アクチュエータ6の汎用性を高めることができる。
【0039】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の第1実施形態及び第2実施形態では接合構造8を備える直動変換機構35,235としてボールねじ機構を用いた例について説明したが、これに限られない。接合構造8を備える直動変換機構35は、回転運動を直線運動へ変換可能な機構であればよく、接合構造8を備えるボールねじ機構以外の機構を用いてもよい。
【0040】
上述の第1実施形態では、スプール軸4に一対の腕部10が直接取り付けられる構成について説明したが、一対の腕部10とスプール軸4との間に、スプール軸4及び腕部10間を接続する固定部等を別途設けてもよい。この場合、固定部と腕部10とが一体形成されてもよいし、別部材で形成されてもよい。
長孔50は、腕部10を貫通する貫通孔の他、腕部10に設けられた凹部であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1,201 スプール弁
4 スプール軸(第一の接合対象)
6 接合構造を備える電動アクチュエータ(第二の接合対象)
8 接合構造
10 一対の腕部
12 ピン
14 球面軸受
16 差込部
31 モータ
32 回転軸
35,235 接合構造を備える直動変換機構
37 ボールねじナット
38 ボールねじ軸(直動部材)
41 第一腕部(腕部)
42 第二腕部(腕部)
50 長孔
237 ボールねじナット(直動部材)
238 ボールねじ軸
O (球面軸受の)中心点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7