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特開2024-177423空気供給システム、空気供給システムの制御方法、及び空気供給システムの制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177423
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】空気供給システム、空気供給システムの制御方法、及び空気供給システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/00 20060101AFI20241212BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60T17/00 B
B01D53/26 230
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174621
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2021502267の分割
【原出願日】2020-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2019031992
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 卓也
(72)【発明者】
【氏名】除田 和也
(57)【要約】
【課題】再生動作で消費される空気量を最適化することにより、良好な除湿性能を維持しつつ、圧縮乾燥空気の消費量を低減する。
【解決手段】ECU(80)は、空気乾燥回路(11)を制御してコンプレッサ(4)から送出された圧縮空気をフィルタ(17)に順方向に通過させてエアタンク(30)に供給する除湿動作と、エアタンク(30)に貯留された圧縮乾燥空気をフィルタ(17)に逆方向に通過させてフィルタ(17)を通過した流体をドレン排出口(27)から排出する再生動作を実行し、再生動作が終了する度に、空気乾燥回路(11)の再生動作の結果である再生結果を記憶部(80A)に記憶し、新たな再生動作を開始するときに記憶部(80A)に記憶された空気乾燥回路の再生結果を取得し、取得した前記再生結果を新たな再生動作の再生条件に反映する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記再生動作が終了する度に、前記空気乾燥回路の再生動作の結果である再生結果を記憶部に記憶し、
新たな前記再生動作を開始するときに前記記憶部に記憶された前記空気乾燥回路の再生結果を取得し、
取得した前記再生結果を新たな前記再生動作の再生条件に反映するように構成されている、
空気供給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記貯留部内の前記圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標に基づき、前記再生動作の過不足を判定し、
前記再生動作が不足していると判定した場合には、前記再生動作によって前記フィルタを通過する空気量である再生空気量又は前記再生動作を実行する時間である再生時間を増大させ、
前記再生動作が過剰であると判定した場合には、前記再生空気量又は前記再生時間を減少させるように構成されている、
請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記再生動作の過不足を示す過不足度を算出し、
前記再生動作の過不足の大きさに応じて重み付けされた係数を前記過不足度に乗算した値を、基準となる空気量に加算することによって、前記再生空気量を算出するように構成されている、
請求項2に記載の空気供給システム。
【請求項4】
前記空気乾燥回路は、湿度検出部を前記フィルタ及び前記貯留部の間に備え、
前記制御装置は、前記再生動作の際に前記湿度検出部によって検出された湿度情報に基づき、前記圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標を算出するように構成されている、
請求項2又は3に記載の空気供給システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記再生動作を開始する前に、当該再生動作を実行する再生時間を設定し、
前記再生動作が中断された場合、前記再生時間の残り時間を記憶部に記憶し、
新たに前記再生動作を開始する場合に、前記記憶部から前記残り時間を取得し、当該残り時間を、新たな前記再生動作の再生時間に反映するように構成されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の空気供給システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記再生動作が終了された際、前記再生動作の前記残り時間と、前記再生動作の前に実行された再生動作の残り時間とを加算することによって、補正残り時間を算出し、前記補正残り時間を次の再生動作の再生時間に反映する
請求項5に記載の空気供給システム。
【請求項7】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備える空気供給システムの制御方法であって、
前記制御装置が、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御するステップと、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御するステップと、
前記再生動作が終了する度に前記空気乾燥回路の再生動作の結果である再生結果を記憶部に記憶するステップと、
新たな前記再生動作を開始するときに前記記憶部に記憶された前記空気乾燥回路の再生結果を取得するステップと、
取得した前記再生結果を新たな前記再生動作の再生条件に反映するステップと、を実行する
空気供給システムの制御方法。
【請求項8】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備える空気供給システムの制御プログラムであって、
前記制御装置を、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行する前記空気乾燥回路を制御する除湿動作実行部、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する再生動作実行部、
前記再生動作が終了する度に前記空気乾燥回路の再生動作の結果である再生結果を記憶部に記憶する結果記憶部、
新たな前記再生動作を開始するときに前記記憶部に記憶された前記空気乾燥回路の再生結果を取得する取得部、及び
取得した前記再生結果を新たな前記再生動作の再生条件に反映する反映部、として機能させる、
空気供給システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気供給システム、空気供給システムの制御方法、及び空気供給システムの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス、建機等の車両においては、コンプレッサから送られる圧縮空気を利用して、ブレーキシステム及びサスペンションシステム等を含む、空気圧システムが制御されている。この圧縮空気には、大気中に含まれる水分及びコンプレッサ内を潤滑する油分等、液状の不純物が含まれている。水分及び油分を多く含む圧縮空気が空気圧システム内に入ると、錆の発生及びゴム部材の膨潤等を招き、作動不良の原因となる可能性がある。このため、コンプレッサの下流には、圧縮空気中の水分及び油分等の不純物を除去する圧縮空気乾燥装置が設けられている。
【0003】
圧縮空気乾燥装置は、乾燥剤を含むフィルタと各種バルブとを備えている。圧縮空気乾燥装置は、圧縮空気をフィルタに通過させて圧縮空気から水分等を除去する除湿動作を行う。除湿動作によって生成された圧縮乾燥空気は、エアタンクに貯留される。また、圧縮空気乾燥装置の清浄機能は、圧縮乾燥空気の通過量に応じて低下する。このため、圧縮空気乾燥装置は、フィルタに吸着された油分及び水分をフィルタから取り除き、取り除いた油分及び水分をドレンとして放出する再生動作を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-201323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば再生動作を実行する時間、フィルタを通過させる再生空気量等といった実行条件は、一定であるように設定されるか、又はコンプレッサから送出される圧縮空気量等に応じて決定されている。しかし、いずれの場合も、過不足が生じることが発明者らによって判明している。再生時間や再生空気量が不足すると、乾燥剤の水分捕捉能力が本来の程度まで復帰せず、圧縮空気乾燥装置から送出される空気に含有される水分量が多くなる可能性がある。一方、再生時間や再生空気量が過剰となる場合には、本来、空気圧システム等に供給するものであるエアタンク内の圧縮乾燥空気を無駄に消費することにつながる。圧縮乾燥空気は、エンジン等の回転駆動源によって駆動されるコンプレッサによって生成されるため、圧縮乾燥空気の過剰な消費は回転駆動源の負荷を増加させ、車両の燃費を低下させることとなる。
【0006】
本開示の目的は、再生動作で消費される空気量を最適化することにより、良好な除湿性能を維持しつつ、圧縮乾燥空気の消費量を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する空気供給システムは、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて、前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて、前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記再生動作が終了する度に、前記空気乾燥回路の再生動作の結果である再生結果を記憶部に記憶し、新たな前記再生動作を開始するとき、前記記憶部に記憶された前記空気乾燥回路の再生結果を取得し、取得した前記再生結果を、新たな前記再生動作の再生条件に反映するように構成されている。
【0008】
上記課題を解決する空気供給システムの制御方法は、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備える空気供給システムの制御方法であって、前記制御装置が、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御するステップと、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御するステップと、前記再生動作が終了する度に前記空気乾燥回路の再生動作の結果である再生結果を記憶部に記憶するステップと、新たな前記再生動作を開始するときに前記記憶部に記憶された前記空気乾燥回路の再生結果を取得するステップと、取得した前記再生結果を新たな前記再生動作の再生条件に反映するステップと、を実行する。
【0009】
上記課題を解決する空気供給システムの制御プログラムは、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備える空気供給システムの制御プログラムであって、前記制御装置を、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する除湿動作実行部、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する再生動作実行部、前記再生動作が終了する度に前記空気乾燥回路の再生動作の結果である再生結果を記憶部に記憶する結果記憶部、新たな前記再生動作を開始するときに前記記憶部に記憶された前記空気乾燥回路の再生結果を取得する取得部及び、取得した前記再生結果を新たな前記再生動作の再生条件に反映する反映部、として機能させる。
【0010】
上記構成によれば、再生動作が終了する度に記憶された再生結果が、次の再生動作の実行条件に反映される。空気乾燥回路では、再生動作は温度や湿度等が異なる状況下で繰り返し行われるため、過去の再生結果が、新たな再生動作に反映されることとなれば、フィルタの再生不足を抑制するとともに、圧縮乾燥空気の無駄な消費を抑制することができる。
【0011】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記貯留部内の前記圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標に基づき、前記再生動作の過不足を判定し、前記再生動作が不足していると判定した場合には、前記再生動作によって前記フィルタを通過する空気量である再生空気量又は前記再生動作を実行する時間である再生時間を増大させ、前記再生動作が過剰であると判定した場合には、前記再生空気量又は前記再生時間を減少させるように構成されてよい。
【0012】
上記構成によれば、再生動作が不足していると判定した場合には再生空気量又は再生時間を増大させて、フィルタの除湿性能を回復させることができる。また、再生動作が過剰であると判定した場合には再生空気量又は再生時間を減少させて、貯留部内の圧縮乾燥空気の消費を抑制することができる。さらに、貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態に基づき、再生動作の過不足が判定されるため、再生動作の過不足を間接的ではあっても適切に判定することができる。
【0013】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記再生動作の過不足を示す過不足度を算出し、前記再生動作の過不足の大きさに応じて重み付けされた係数を前記過不足度に乗算した値を、基準となる空気量に加算含むによって、前記再生空気量を算出するように構成されてよい。
【0014】
上記構成によれば、過不足度に応じて重み付けされた係数を用いるので、過不足度の大きさに応じた再生空気量をフィルタに通過させることができる。
上記空気供給システムについて、前記空気乾燥回路は、湿度検出部を前記フィルタ及び前記貯留部の間に備えてよく、前記制御装置は、前記再生動作の際に前記湿度検出部によって検出された湿度情報に基づき、前記圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標を算出するように構成されてよい。
【0015】
上記構成によれば、貯留部からフィルタに向かって逆流する圧縮乾燥空気の湿度を用いて、貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が算出されるので、圧縮乾燥空気の湿潤状態を適切に算出することができる。
【0016】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記再生動作を開始する前に、当該再生動作を実行する再生時間を設定し、前記再生動作が中断された場合、前記再生時間の残り時間を記憶部に記憶し、新たに前記再生動作を開始する場合に、前記記憶部から前記残り時間を取得し、当該残り時間を、新たな前記再生動作の再生時間に反映するように構成されてよい。
【0017】
上記構成によれば、再生動作が中断された場合、再生動作の残り時間が次の再生動作へ反映される。このため、再生動作の中断を許容しながらも、フィルタの性能を良好な状態に維持することができる。
【0018】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記再生動作が終了された際、前記再生動作の前記残り時間と、前記再生動作の前に実行された再生動作の残り時間とを加算することによって、補正残り時間を算出し、前記補正残り時間を次の再生動作の再生時間に反映するように構成されてよい。
【0019】
上記構成によれば、n回目の再生動作が終了された際、n-1回目の再生動作の残り時間と、n回目の再生動作の残り時間とが加算されて、n+1回目の再生動作に反映される。n回目の再生動作の再生時間には、n-1回目の再生動作の残り時間が反映されているため、n回目の再生動作でn-1回目の再生動作の残り時間が相殺されていれば、その残り時間は繰り越されず、n-1回目の再生動作の残り時間が相殺されていなければ、その残り時間は繰り越される。また、n回目の再生動作が中断されなければ、n+1回目の再生動作にn回目の再生動作の残り時間が繰り越されず、n回目の再生動作が中断されれば、n+1回目の再生動作にn回目の再生動作の残り時間が繰り越される。このため、過去の再生動作における残り時間が相殺されるまで、残り時間が引き継がれる。このため、フィルタの除湿性能を良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、乾燥剤の再生動作で消費される再生空気量を最適化することにより、乾燥剤の性能を良好に維持しながら、圧縮乾燥空気の消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】空気供給システムの第1実施形態の概略構成を示す構成図。
図2図2A図2Fはそれぞれ図1の実施形態の空気乾燥回路の第1~第6動作モードを示す図。
図3図1の実施形態の過不足係数情報の模式図。
図4図1の実施形態における圧縮空気を供給する手順の一例を示すフローチャート。
図5図1の実施形態における再生動作を行う手順の一例を示すフローチャート。
図6図1の実施形態における再生空気量を決定する手順の一例を示すフローチャート。
図7】第2実施形態における再生時間を決定する手順の一例を示すフローチャート。
図8図7の実施形態における不足時間を更新する手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1図6を参照して、空気供給システムの第1実施形態について説明する。空気供給システムは、トラック、バス、建機等の自動車に搭載されている。空気供給システムにより生成された圧縮乾燥空気は、例えば、自動車のブレーキシステム(制動装置)又はサスペンションシステム(懸架装置)等の空気圧システムに用いられる。
【0023】
<空気供給システム10>
図1を参照して空気供給システム10について説明する。空気供給システム10は、コンプレッサ4と、空気乾燥回路11と、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)80とを備える。
【0024】
ECU80は、複数の配線E61~E67を介して空気乾燥回路11と接続されている。ECU80は、演算部、通信インターフェース部、揮発性記憶部、不揮発性記憶部を備えている。演算部は、コンピュータプロセッサであって、不揮発性記憶部(記憶媒体)に記憶された空気供給プログラムにしたがって、空気乾燥回路11を制御するように構成されている。演算部は、自身が実行する処理の少なくとも一部を、ASIC等の回路により実現してもよい。空気供給プログラムは、一つのコンピュータプロセッサによって実行されてもよいし、複数のコンピュータプロセッサによって実行されてもよい。また、ECU80は、空気乾燥回路11の各動作の実行頻度を決定するための情報を記憶する記憶部80Aを備える。記憶部80Aは、不揮発性記憶部又は揮発性記憶部であり、上記制御プログラムが記憶された記憶部と同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0025】
ECU80は、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを介して、例えばエンジンECU、ブレーキECU等、車両に搭載された他のECU(図示略)に接続されている。ECU80は、それらのECUから、車両状態を示す情報を取得する。車両状態を示す情報には、例えば、イグニッションスイッチのオフ情報、車速、エンジンの駆動情報等が含まれる。
【0026】
コンプレッサ4の状態は、ECU80からの指令に基づいて、空気を圧縮して送出する稼働状態(負荷運転)と、空気の圧縮を行わない非稼働状態(空運転)との間で切り替えられる。コンプレッサ4は、エンジン等の回転駆動源から伝達された動力で稼働する。
【0027】
空気乾燥回路11は、いわゆる、エアドライヤである。空気乾燥回路11は、ECU80に接続され、負荷運転中のコンプレッサ4から送られた圧縮空気から該圧縮空気に含まれる水分等を除去する。空気乾燥回路11は、乾燥された後の圧縮空気(以下、圧縮乾燥空気)を、供給回路12に供給する。供給回路12に対し供給された圧縮乾燥空気は、エアタンク30に貯留される。
【0028】
エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気は、車両に搭載されたブレーキシステム等の空気圧システムに供給される。例えば、車両が降坂路又は市街地を走行する状況等、ブレーキが作動される頻度が高い場合には、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費量が多くなる。逆に、ブレーキが作動される頻度が低い場合には、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費量が少なくなる。
【0029】
空気乾燥回路11は、メンテナンス用ポートP12を有している。メンテナンス用ポートP12は、メンテナンスの際にそれを通じて空気乾燥回路11に空気を供給するためのポートである。
【0030】
空気乾燥回路11は、ケース11A(図2A参照)の内部等にフィルタ17を備えている。フィルタ17は、コンプレッサ4と供給回路12とを接続する空気供給通路18の途中に設けられている。フィルタ17は、乾燥剤を含む。また、フィルタ17は、乾燥剤とは別に、油分を捕捉する油分捕捉部を含む。油分捕捉部は、ウレタンフォーム等の発泡体、多数の通気孔を有する金属材、ガラス繊維フィルタ等、空気を通過させながら油分を捕捉できるものであればよい。
【0031】
フィルタ17は、コンプレッサ4から送出された圧縮空気を乾燥剤に通過させることによって、圧縮空気に含まれる水分を圧縮空気から除去して圧縮空気を乾燥させる。また、油分捕捉部は、圧縮空気に含まれる油分を捕捉して圧縮空気を清浄化する。フィルタ17を通過した圧縮空気は、下流チェックバルブ19を介して供給回路12へ供給される。下流チェックバルブ19は、フィルタ17側を上流、供給回路12側を下流としたとき、上流から下流への空気の流れのみを許容する。なお、下流チェックバルブ19は、所定の開弁圧(封止圧)を有していることから、圧縮空気が流れるとき、上流の圧力は下流の圧力よりも開弁圧だけ高くなる。
【0032】
また、フィルタ17の下流には、下流チェックバルブ19を迂回する迂回路としてのバイパス流路20が下流チェックバルブ19に対して並列に設けられている。バイパス流路20には、再生制御弁21が設けられている。
【0033】
再生制御弁21は、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E64を介して再生制御弁21の電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、再生制御弁21の動作を切り替える。再生制御弁21は、電源が切れた状態において閉弁してバイパス流路20を封止し、電源が入った状態において開弁してバイパス流路20を連通させる。ECU80は、例えば、エアタンク30内の空気圧の値を受けて、空気圧の値が所定の範囲を超えたとき再生制御弁21を動作させる。
【0034】
バイパス流路20には、再生制御弁21とフィルタ17との間にオリフィス22が設けられている。再生制御弁21が通電されると、供給回路12側の圧縮乾燥空気が、バイパス流路20を介して、オリフィス22によって流量を規制された状態でフィルタ17に送られる。フィルタ17に対し送られた圧縮乾燥空気は、フィルタ17を下流から上流に向けて逆流し、フィルタ17を通過する。このような処理は、フィルタ17を再生させる動作であり、空気乾燥回路11の再生動作という。このとき、フィルタ17に対し送られる圧縮乾燥空気は、空気供給通路18からフィルタ17等を通過して供給回路12に供給された乾燥及び清浄化された空気であるため、フィルタ17に捕捉された水分及び油分をフィルタ17から除去することができる。ECU80は、通常の制御において、エアタンク30内の圧力が上限値(カットアウト圧)に到達すると、再生制御弁21を開弁する。一方、エアタンク30内の圧力が下限値(カットイン圧)に到達すると、開弁した再生制御弁21を閉弁する。
【0035】
コンプレッサ4とフィルタ17との間の部分から、分岐通路16が分岐している。分岐通路16にはドレン排出弁25が設けられており、分岐通路16の末端にはドレン排出口27が接続されている。
【0036】
フィルタ17から除去された水分及び油分を含む流体であるドレンは、圧縮空気とともにドレン排出弁25に対し送られる。ドレン排出弁25は、空気圧により駆動される空気圧駆動式の弁であって、分岐通路16において、フィルタ17とドレン排出口27との間に設けられている。ドレン排出弁25は、閉弁位置及び開弁位置の間で位置を変更する2ポート2位置弁である。ドレン排出弁25が開弁位置にあるとき、ドレンはドレン排出口27へ送られる。ドレン排出口27から排出されたドレンは、図示しないオイルセパレータによって回収されてもよい。なお、ドレンがフィルタ17を逆方向に通過した流体に相当する。
【0037】
ドレン排出弁25は、ガバナ26Aによって制御される。ガバナ26Aは、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E63を介してガバナ26Aの電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、ガバナ26Aの動作を切り替える。ガバナ26Aは、電源が入れられると、ドレン排出弁25に空気圧信号を入力する入力位置に切り替わることによって、ドレン排出弁25を開弁させる。また、ガバナ26Aは、電源が切られると、ドレン排出弁25に空気圧信号を入力せずにドレン排出弁25のポートを大気圧に開放する開放位置に切り替わることによって、ドレン排出弁25を閉弁させる。
【0038】
ドレン排出弁25は、ガバナ26Aから空気圧信号が入力されていない状態では、分岐通路16を遮断する閉弁位置に維持され、ガバナ26Aから空気圧信号が入力されると、分岐通路16を連通する開弁位置に切り替わる。また、ドレン排出弁25においてコンプレッサ4に接続されている入力ポートの圧力が上限値を超えた場合、ドレン排出弁25が強制的に開弁位置に切り替えられる。
【0039】
コンプレッサ4とフィルタ17との間であって、かつ、コンプレッサ4と分岐通路16の間には、上流チェックバルブ15が設けられている。上流チェックバルブ15は、コンプレッサ4側を上流、フィルタ17側を下流としたとき、上流から下流への空気の流れのみを許容する。上流チェックバルブ15は、所定の開弁圧(封止圧)を有していることから、圧縮空気が流れるとき、上流の圧力は下流の圧力よりも開弁圧だけ高くなる。なお、上流チェックバルブ15の上流には、コンプレッサ4の出口のリード弁が設けられている。上流チェックバルブ15の下流には、分岐通路16やフィルタ17が設けられている。
【0040】
コンプレッサ4は、アンロード制御弁26Bによって制御される。アンロード制御弁26Bは、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E62を介してアンロード制御弁26Bの電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、アンロード制御弁26Bの動作を切り替える。アンロード制御弁26Bは、電源が切られると、開放位置に切り替わり、アンロード制御弁26Bとコンプレッサ4との間の流路を大気開放する。また、アンロード制御弁26Bは、電源が入れられると、供給位置に切り替わり、コンプレッサ4に圧縮空気からなる空気圧信号を送る。
【0041】
コンプレッサ4の状態は、アンロード制御弁26Bから空気圧信号が入力されると、非稼働状態(空運転)に切り替わる。例えば、エアタンク30内の圧力がカットアウト圧に到達したとき、圧縮乾燥空気の供給は不要である。供給回路12側の圧力がカットアウト圧に到達し、ECU80がアンロード制御弁26Bの電源を入れる(アンロード制御弁26Bを駆動する)と、アンロード制御弁26Bは、供給位置に切り替わる。これにより、アンロード制御弁26Bから、コンプレッサ4に空気圧信号が供給され、コンプレッサ4の状態が非稼働状態に切り替わる。
【0042】
コンプレッサ4と上流チェックバルブ15との間には、圧力センサ50が設けられている。圧力センサ50は、空気供給通路18に対し接続されており、空気供給通路18の空気圧を測定して、測定した結果を配線E61を介してECU80に伝達する。
【0043】
下流チェックバルブ19と供給回路12との間には、湿度センサ51及び温度センサ52が設けられている。湿度センサ51は、絶対湿度を検出するものであってもよく、相対湿度を検出するものであってもよい。湿度センサ51及び温度センサ52はそれぞれ、フィルタ17の下流の圧縮空気の湿度、圧縮空気の温度を測定して、測定した結果を配線E65,E66を介してECU80に出力する。ECU80は、湿度センサ51及び温度センサ52から入力された湿度及び温度に基づいて圧縮乾燥空気の湿潤状態を判定する。
【0044】
さらに下流チェックバルブ19と供給回路12との間には、圧力センサ53が設けられている。圧力センサ53は、エアタンク30内の空気圧を検出可能に設けられ、検出した圧力値を、配線E67を介してECU80に出力する。下流チェックバルブ19及び供給回路12の間の圧力は、エアタンク30の圧力と同じであり、圧力センサ53の検出結果はエアタンク30内の圧力として用いることができる。なお、圧力センサ53は、供給回路12に設けられてもよいし、エアタンク30に設けられてもよい。
【0045】
<空気乾燥回路11の動作説明>
図2A図2Fに示すように、空気乾燥回路11は、少なくとも第1動作モード~第6動作モードを含む、複数の動作モードを有する。
【0046】
(第1動作モード)
図2Aに示すように、第1動作モードは、通常の除湿動作(ロード運転)を行うモードである。第1動作モードでは、再生制御弁21及びアンロード制御弁26Bをそれぞれ閉弁し(図において「CLOSE」と記載)、ガバナ26Aを、コンプレッサ4に空気圧信号を入力しない開放位置とする(図において「CLOSE」と記載)。このとき、再生制御弁21、ガバナ26A、及びアンロード制御弁26Bには、電源が供給されない。また、ガバナ26A及びアンロード制御弁26Bは、それらの下流に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートをそれぞれ大気開放する。第1動作モードでは、コンプレッサ4から圧縮空気が供給されているとき(図において「ON」と記載)、フィルタ17で水分等が除去され、供給回路12に対し圧縮空気が供給される。
【0047】
(第2動作モード)
図2Bに示すように、第2動作モードは、空気乾燥回路11内の圧縮乾燥空気を、フィルタ17に通過させてフィルタ17を浄化するパージ動作を行うモードである。第2モードでは、再生制御弁21を閉弁し、アンロード制御弁26Bを供給位置とし(図において「OPEN」と記載)、ガバナ26Aを入力位置(図において「OPEN」と記載)とする。このとき、ガバナ26A及びアンロード制御弁26Bにはそれぞれ、電源が供給されるとともに、それらの下流に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートはそれぞれ上流(供給回路12側)に接続される。これにより、コンプレッサ4が非稼働状態に切り替わり(図において「OFF」と記載)、ドレン排出弁25が開弁される。その結果、下流チェックバルブ19とフィルタ17との間の圧縮乾燥空気が、フィルタ17内を、第1動作モード(除湿モード)の空気の流れとは逆方向に流れ(逆流)、フィルタ17によって捕捉された水分等が、ドレンとしてドレン排出口27から排出される。また、フィルタ17及び空気供給通路18の空気圧が大気圧に開放される。
【0048】
(第3動作モード)
図2Cに示すように、第3動作モードは、フィルタ17を再生する再生動作を行うモードである。第3動作モードでは、再生制御弁21を開弁し、ガバナ26Aを入力位置とし、アンロード制御弁26Bを供給位置とする(それぞれ図において「OPEN」と記載)。このとき、ガバナ26A及びアンロード制御弁26Bに加え、再生制御弁21にも電源が供給される。第3動作モードでは、コンプレッサ4を非稼働状態とさせるとともに、供給回路12又はエアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気を、フィルタ17に逆流させて、ドレン排出口27から排出させる。これによって、フィルタ17に捕捉された水分等が除去される。第2動作モード及び第3動作モードは、いずれもフィルタ17を浄化させるモードであるが、第3動作モードは、少なくとも再生制御弁21を開弁する点で第2動作モードと異なる。これにより、第3動作モードでは、エアタンク30内の圧縮乾燥空気を、供給回路12及びバイパス流路20を介して、フィルタ17に通過させることができる。そのため、フィルタ17を浄化する効果が第2動作モードよりも高い。また、第3動作モードでも、フィルタ17及び空気供給通路18の空気圧が大気圧に開放される。
【0049】
(第4動作モード)
図2Dに示すように、第4動作モードは、オイルカット動作を行うモードである。第4動作モードでは、コンプレッサ4を稼働させながら、コンプレッサ4から送られた油分過多な空気を、フィルタ17を通過させることなくドレン排出口27から排出する。コンプレッサ4が非稼働状態である場合、コンプレッサ4の圧縮室に油分が溜まることがある。圧縮室内に油分が溜まった状態でコンプレッサ4の状態が稼働状態に切り替えられると、圧縮室から送られる圧縮空気に含まれる油分量が多くなる。油分が乾燥剤に付着すると、乾燥剤の除湿性能が低下する。そのため、油分過多な圧縮空気を排出するオイルカット動作が実行される。第4動作モードでは、再生制御弁21を閉弁し、アンロード制御弁26Bを開放位置(図において「CLOSE」と記載)とするとともに、ガバナ26Aを一定期間の駆動後に開放位置とする(図において「CLOSE」と記載)。これにより、コンプレッサ4から比較的多くの油分を含む圧縮空気が送出されても、その圧縮空気をフィルタ17に通過させることなく、ドレン排出口27から排出することができる。したがって、コンプレッサ4が非稼働状態から稼働状態へ切り替えられた直後にフィルタ17の除湿性能が低下することを抑制することができる。稼働状態でエンジン回転数が大きくなるとき及びエンジンの高負荷時等にコンプレッサ4からの油分が増加するときには、オイルカット動作を行うこともできる。
【0050】
(第5動作モード)
図2Eに示すように、第5動作モードは、パージ無しのコンプレッサ停止動作を行うモードである。第5動作モードでは、再生制御弁21を閉弁し、ガバナ26Aを開放位置(図において「CLOSE」と記載)とするとともに、アンロード制御弁26Bを供給位置(図において「OPEN」と記載)とする。第5動作モードでは、コンプレッサ4が非稼働状態であるとき、空気供給通路18又はフィルタ17の乾燥剤中に残留する圧縮空気又は圧縮乾燥空気をドレン排出口27から排出させないことで空気圧が維持される。
【0051】
(第6動作モード)
図2Fに示すように、第6動作モードは、与圧処理のためにアシスト動作を行うモードである。第6動作モードでは、再生制御弁21を開弁し、アンロード制御弁26Bを供給位置(図において「OPEN」と記載)とするとともに、ガバナ26Aを開放位置(図において「CLOSE」と記載)とする。第6動作モードでは、コンプレッサ4が非稼働状態であるとき、空気供給通路18及びフィルタ17の乾燥剤中に供給回路12の圧縮空気を供給する(逆流させる)ことで、空気供給通路18及びフィルタ17の圧力を大気圧よりも高くして、上流チェックバルブ15の背圧(空気圧)を大気圧よりも高い圧力に維持させる。
【0052】
(実行条件の設定)
次に図3を参照して、再生動作(第3動作モード)で消費される再生空気量の決定方法について説明する。再生空気量Amは、以下の式(1)で算出される。なお、再生空気量Amは、体積単位で算出されても質量単位で算出されてもよい。なお、この式(1)の右辺(又は左辺)に単位を変換する各種の係数を用いてもよい。
【0053】
再生空気量Am
=標準再生空気量Am1-補正単位空気量Am2×過不足係数α…(1)
標準再生空気量Am1(標準再生容量)は、基本的に空気乾燥回路11の仕様(スペック)で決められる空気量であるが、圧縮乾燥空気の温度やエアタンク30の圧力の上限値等に応じて変化させてもよい。補正単位空気量Am2(基準再生容量)は、再生空気量を補正するための単位となる量である。補正単位空気量Am2も、圧縮乾燥空気の温度やエアタンク30の圧力の上限値等に応じて変化させてもよい。
【0054】
過不足係数α(再生過不足係数)は、エアタンク30内に貯留された圧縮乾燥空気の湿潤状態の変化(傾向)に基づき設定されるものである。再生動作の過不足は、フィルタ17によって捕捉された水分量によって判定することができるが、圧縮空気に含まれる水分量は温度や湿度によって変化するため、フィルタ17によって捕捉された水分量を、再生動作の実行時間や再生動作によってフィルタを通過した空気量だけを用いて推定するのは困難である。また、フィルタ17によって捕捉された水分量を直接的に計測することも困難である。本実施形態のように、貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態に基づき、再生動作の過不足を判定すると、再生動作の過不足を間接的ではあっても適切に判定することができる。
【0055】
過不足係数αの根拠となる湿潤状態の変化(傾向)は、前回の再生動作が行われた後から次の再生動作を行う前までの期間を対象として判定される。また、湿潤状態を判定するための指標は限定されないが、本実施形態ではエアタンク30内の圧縮乾燥空気に含有される水分量(以下、含有水分量)を算出することにより湿潤状態を判定する。前回の再生動作後にエアタンク30内に貯留された圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い、すなわち含有水分量が多い場合には、フィルタ17が捕捉している水分量が増加傾向にあると判定する。このため、上記式(1)において、過不足係数αを、「0」未満の負の値とし、再生空気量を増加させる。
【0056】
一方、エアタンク30内に貯留された圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い、すなわち含有水分量が少ない場合には、フィルタ17の捕捉水分量が減少傾向にあると判定する。このため、過不足係数αは、「0」よりも大きい正の値とし、再生空気量を減少させる。また、圧縮乾燥空気の湿潤状態が適した状態にあると判定した場合には、過不足係数は「0」とし、標準再生空気量Am1を補正しない。
【0057】
図3に示すように、ECU80は、不揮発性記憶部に過不足係数情報100を記憶している。過不足係数情報100は、過不足条件101、過不足係数103を含んでいる。状態102は、過不足条件101が示す状態を便宜的に示したものであり、省略可能である。過不足条件101には、再生過不足度の範囲が設定されている。再生過不足度は、エアタンク30内の圧縮乾燥空気に含まれる水分の飽和度が、増加傾向にあるか減少傾向にあるかを示す指標である。
【0058】
過不足係数103は、再生過不足度に重み付け係数を乗算したものである。過不足係数103は、再生過不足度の範囲である過不足条件101にそれぞれ対応している。なお、図3では重み付け係数を正の整数としているが、正の整数でなくてもよい。
【0059】
過不足係数情報100において、再生空気量が大幅に不足している場合、すなわち含有水分量が大きい場合は、再生過不足度が、例えば「-1」以下であり、負の値であって且つ絶対値が大きい。この場合には、重み付け係数も、例えば「2」等の相対的に大きい値が設定されている。また、「大幅に不足」とまではいえなくとも再生空気量が不足している場合には、再生過不足度は、例えば「-1」よりも大きく「-0.5」よりも小さい範囲であって、「大幅に不足」よりも絶対値が小さい。また、重み付け係数の値も、例えば「1」など、「大幅に不足」よりも小さい値が設定されている。
【0060】
また、再生空気量が大幅に過剰である場合、すなわち含有水分量が小さい場合は、再生過不足度が、例えば「1」以上であり、正の値であって且つ絶対値が大きい。この場合には、重み付け係数にも例えば「2」等の相対的に大きい値が設定されている。また、「大幅に過剰」とまではいえなくとも再生空気量が過剰である場合には、再生過不足度は、例えば「0.5」以上であり「1」よりも小さい範囲であって、「大幅に過剰」よりも絶対値が小さい。また、重み付け係数の値も、例えば「1」など、「大幅に不足」よりも小さい値が設定されている。
【0061】
再生過不足度が、例えば「-0.5」以上「0.5」未満の範囲である場合には、過不足係数には「0」が設定されている。
次に、再生過不足度について説明する。本実施形態では、再生過不足度は、以下の式(2)で算出される。タンク空気水分飽和度Sは、エアタンク30内の圧縮乾燥空気に含まれる水分の飽和度を示す。タンク空気水分飽和度Sは、再生動作が終了する度に不揮発性記憶部又は揮発性記憶部に記憶される。タンク空気水分飽和度S(n-1)は、前回(n-1回目)の再生動作が終了した後に算出された値であり、タンク空気水分飽和度S(n)は、その次(n回目)の再生動作が終了した後に算出された値である。なお、この式(2)の右辺(又は左辺)に単位を変換する各種の係数を用いてもよい。
【0062】
再生過不足度D
=タンク空気水分飽和度S(n-1)-タンク空気水分飽和度S(n)…(2)
また、タンク空気水分飽和度Sは以下の式(3)を用いて算出される。タンク含有水分量Mtkは、エアタンク30内の圧縮乾燥空気に含有される水分量を算出した値であり、水分変化量ΔMは、1サイクル中に、空気乾燥回路11から送出される空気量に含まれる水分量から、エアタンク30から送出された空気量に含まれる水分量を減算したものである。タンク最大水分量Mmaxは、エアタンク30内の圧縮乾燥空気に含有される水分の最大量(タンク空気含有可能水分量)である。なお、この式(3)の右辺(又は左辺)に単位を変換する各種の係数を用いてもよい。
【0063】
タンク空気水分飽和度S
=(タンク含有水分量Mtk+水分変化量ΔM)/(タンク最大水分量Mmax)…(3)
なお、タンク含有水分量Mtkは、例えば再生動作時に湿度センサ51が検出した湿度及び温度センサ52が検出した温度から算出可能である。空気乾燥回路11から送出される空気量に含まれる水分量は、除湿動作時に湿度センサ51が検出した湿度及び温度センサ52が検出した温度から算出可能である。エアタンク30から送出された空気量に含まれる水分量は、タンク含有水分量Mtk及びエアタンク30から各空気圧システムに供給された空気量である消費空気量等から算出可能である。
【0064】
(空気乾燥回路の制御)
次に図4図6を参照して、ECU80が空気乾燥回路11を制御する手順について説明する。
【0065】
図4を参照して、全体的な制御の手順について説明する。ECU80は、コンプレッサ4の出力する圧縮空気を供給回路12に供給する空気供給工程を行う(ステップS1)。空気供給工程は、例えばエンジンが駆動されたとき等、所定の条件で開始される。また、空気供給工程は、エアタンク30の圧力が、下限値であるカットイン圧力等の所定圧力に到達したとき等に開始されてもよい。空気供給工程では、空気乾燥回路11が第1動作モードにあり、除湿動作を実行している。
【0066】
空気供給工程が開始されると、ECU80は、空気の供給を停止するか否かを判断する(ステップS2)。詳述すると、ECU80は、圧力センサ53が検出したエアタンク30内の圧力を取得し、圧力がカットアウト圧に到達したか否かを判断する。ECU80が、エアタンク30内の圧力がカットアウト圧に到達していないと判断すると(ステップS2:NO)、処理を空気供給工程に戻す(ステップS1)。
【0067】
ECU80は、エアタンク30内の圧力がカットアウト圧に到達したと判断すると(ステップS2:YES)、空気供給工程を終了し、コンプレッサ4を非稼働状態にさせるとともに、浄化工程を実行する(ステップS3)。浄化工程では、ECU80は、予め設定された条件にしたがって、再生動作及びパージ動作の要否を判定し、再生動作が必要であると判定すると、再生動作を実行し、パージ動作が必要であると判定するとパージ動作を実行する。
【0068】
浄化工程(ステップS3)が終了すると、ECU80は、空気非供給工程を行う(ステップS4)。空気非供給工程では、コンプレッサ4が非稼働状態であるときに、上流チェックバルブ15の背圧の調整等、空気乾燥回路11の圧力調整を行う。例えば、空気非供給工程では、第2動作モード、第5動作モード、及び第6動作モードの少なくとも一つを1乃至複数回実行して空気乾燥回路11の空気圧の調整を行う。圧力調整が終了すると、ECU80は、車両状態に基づいて、空気供給を終了するか否かを判断する(ステップS5)。空気供給の終了は、例えば、車両のエンジン停止等の車両状態に基づいて判定される。
【0069】
空気供給を終了しないと判定した場合(ステップS5:NO)、ECU80は、ステップS1に処理を戻し、空気供給工程(ステップS1)以下の処理を実行する。一方、空気供給を終了すると判定した場合(ステップS5:YES)、空気の供給を停止する。
【0070】
次に図5を参照して、再生動作の制御の手順について説明する。ECU80は、予め決められた条件にしたがって、再生動作が必要であるか否かを判断する(ステップS100)。例えば、ECU80は、タンク含有水分量Mtkが所定値以上である場合には、再生動作が必要であると判断し、タンク含有水分量Mtkが所定値未満である場合には、再生動作が不要であると判断する。
【0071】
ECU80は、再生動作が必要ではないと判断すると(ステップS100:NO)、処理を終了する。一方、ECU80は、再生動作が必要であると判断すると(ステップS100:YES)、決定された再生空気量を取得する(ステップS101)。そして、ECU80は、取得した再生空気量を用いて、空気乾燥回路11を第3動作モードに切り替え、再生動作を実行する(ステップS102)。ここで、圧力センサ53が検出した圧力値の変化を、再生動作で消費された空気量に換算して、換算した空気量が再生空気量に到達した場合に、再生動作を終了してもよい。又は、再生空気量に対応する再生時間だけ、空気乾燥回路11を第3動作モードに切り替え、再生動作を行ってもよい。再生時間は、再生空気量と再生時間とを関連付けたマップを用いて算出したり、再生時にフィルタ17を通過する単位時間当たりの空気量が一定であることを前提に換算式を用いて算出したりする。再生動作が終了すると、浄化工程(ステップS3)が終了し、処理が次のステップに進められる。
【0072】
次に図6を参照して、再生空気量を決定するための処理について説明する。なお、ECU80は、再生動作終了時から、次の再生動作開始時までを1サイクルと定義する。そして、1サイクルにおける所定のタイミングで再生空気量を更新する。なお、再生空気量の更新タイミングは特に限定されない。例えば、再生空気量の更新が、1サイクルの開始時に行われてもよいし、1サイクルの終了時に行われてもよいし、1サイクルの開始時と終了時との間に行われてもよいし、例えば1サイクルの平均時間よりも短い期間等、所定の期間毎に行われてもよい。
【0073】
ECU80は、再生空気量の更新を行うか否かを判断する(ステップS110)。例えば、ECU80は、新たなサイクルの所定のタイミングに到達したか否かを判断する。ECU80は、所定のタイミングに到達していないと判断すると(ステップS111:NO)、処理を終了する。
【0074】
ECU80は、再生空気量を更新すると判断すると(ステップS110:YES)、再生過不足度を算出する(ステップS111)。再生過不足度は、上述したように、タンク空気水分飽和度の変化に基づき算出される。また、タンク空気水分飽和度は、タンク含有水分量Mtk、水分変化量ΔM、タンク最大水分量Mmaxから算出される。
【0075】
ECU80は、再生過不足度を算出すると、過不足係数情報100を用いて、過不足係数を取得する(ステップS112)。そして、取得した過不足係数と、標準再生空気量、及び補正単位空気量を用いて、再生空気量を算出する(ステップS113)。例えば、再生過不足度が「大幅に不足」又は「不足」の状態に対応する場合には、ステップS113で、標準再生空気量よりも大きい再生空気量が算出され、相対的に多量の圧縮乾燥空気がフィルタ17を通過する。また、再生過不足度が「大幅に過剰」又は「過剰」の状態に対応する場合には、ステップS113で、標準再生空気量よりも小さい再生空気量が算出され、相対的に少量の圧縮乾燥空気がフィルタ17を通過する。さらに、再生過不足度が「最適」の状態に対応する場合には、ステップS113で、標準再生空気量に等しい再生空気量が算出され、再生過不足度が不足状態である場合の空気量よりも小さく、且つ過剰状態である場合の空気量よりも大きい量の圧縮乾燥空気がフィルタ17を通過する。
【0076】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)再生動作が終了する度に記憶された再生結果であるタンク空気水分飽和度Sが、次の再生動作の再生空気量に反映される。空気乾燥回路11では、再生動作は温度や湿度等が異なる状況下で繰り返し行われるため、過去の再生結果が、新たな再生動作に反映されることとなれば、フィルタ17の再生不足を抑制するとともに、圧縮乾燥空気の無駄な消費を抑制することができる。
【0077】
(2)再生動作が不足していると判定した場合には再生空気量を増大させて、フィルタ17の除湿性能を回復させることができる。また、再生動作が過剰であると判定した場合には再生空気量を減少させて、エアタンク30内の圧縮乾燥空気の消費を抑制することができる。さらに、エアタンク30内の圧縮乾燥空気の湿潤状態に基づき、再生動作の過不足が判定されるため、再生動作の過不足を間接的ではあっても適切に判定することができる。
【0078】
(3)再生空気量の算出に、再生過不足度に応じて重み付けされた係数を用いる。このため、再生過不足度の大きさに応じた再生空気量をフィルタ17に通過させることができる。
【0079】
(4)再生動作時にエアタンク30からフィルタ17に向かって逆流する圧縮乾燥空気の湿度を用いて、エアタンク30内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示すタンク空気水分飽和度Sが算出されるので、圧縮乾燥空気の湿潤状態を適切に算出することができる。
【0080】
(第2実施形態)
図7及び図8に従って、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、過去に再生動作が実行されたときの状態である空気乾燥回路11の再生実行状態を用いる点で、第1実施形態と共通している。また、第1実施形態では、過去の再生実行状態を再生空気量に反映したが、第2実施形態では、過去の再生実行状態を再生時間に反映する点で第1実施形態と異なる。そこで、以下では、主に第1実施形態と相違する構成について詳細に説明することとし、説明の便宜上、同様の構成については詳細な説明を割愛する。
【0081】
本実施形態では、ECU80が、再生動作が必要であると判断し、再生動作を実行する前に算出した再生空気量に基づいて、再生予定時間を算出し、その再生予定時間に基づき再生動作を実行することを前提とする。
【0082】
この再生動作は、通常は、再生開始からの経過時間が予め決められた再生時間に到達したときに終了するが、空気乾燥回路11又は車両状態に基づき、それ以外のタイミングで中断されることがある。再生動作が中断されるタイミングとは、例えば、ブレーキシステム等を構成する空気圧システムにより圧縮乾燥空気が消費されることによってエアタンク30内の圧力がカットイン圧に到達したとき、又は他のシステムを制御するECUから指令を受信したとき等である。ECU80は、再生動作を中断する条件が満たされたと判断した場合、再生動作よりも圧縮乾燥空気の供給を優先して再生動作を中断する一方で、残りの再生時間を不揮発性記憶部又は揮発性記憶部等の記憶部に記憶する。そして、次に再生動作が開始される際に、タンク含有水分量Mtk等に応じて算出された再生時間に、その残りの再生時間を加算する。
【0083】
図7を参照して、再生時間を補正する再生時間補正処理の手順について説明する。再生時間補正処理は、再生動作が実行される前に行われる。ここでは空気供給システム10が動作を開始してからn回目(n≧2)の再生動作が開始される直前の場合について説明する。
【0084】
ECU80は、タンク含有水分量Mtk等に応じて算出された再生予定時間Tp(n)(再生規定時間(計算値))を取得する(ステップS210)。ここで取得される再生予定時間Tp(n)は、図6のステップS113で算出された再生空気量を再生が行われる時間に変更したものである。
【0085】
また、ECU80は、記憶部に記憶された前回の不足時間Ts(n-1)を取得する(ステップS211)。ここでは、取得した前回の不足時間Ts(n-1)が「0」であるとして説明する。前回の不足時間Ts(n-1)が「0」である場合とは、例えば前回の不足時間Ts(n-1)がリセットされている場合、又は過去の再生動作で再生動作が中断されていない場合等である。なお、前回の不足時間Ts(n-1)は、空気供給システム10が休止された状態が所定期間継続された場合、空気供給システム10のメンテナンスが実行された場合、又は車両のイグニッションスイッチがオフ状態とされた場合等の所定のタイミングでリセットされてもよい。
【0086】
ECU80は、前回の不足時間Ts(n-1)が「0sec」であると判断すると(ステップS212:NO)、再生予定時間Tp(n)を再生時間T(n)として設定し、処理を終了する。つまり、再生動作は、再生予定時間Tp(n)を予定して実行される。ECU80は、再生動作を開始すると、再生開始からの経過時間である再生実行時間Tac(現在状態継続時間)を計測する。
【0087】
n回目の再生動作の途中で、中断条件が満たされ、ECU80によって再生動作が中断されたものとする(Tac<T(n))。このように再生動作が中断された場合、ECU80は、不足時間の算出処理を行う。なお、再生動作が開始されてからの経過時間が再生時間T(n)に到達して予定通り再生動作が終了した場合にも、この不足時間の算出処理は行われる。
【0088】
図8を参照して、不足時間算出処理について説明する。ECU80は、再生動作の中断も含め、再生動作を終了すると、記憶部に記憶された前回の不足時間Ts(n-1)を取得する(ステップS250)。さらに、ECU80は、今回(n回目)の再生動作での再生時間を補正する処理で算出した加算時間Tad(再生規定時間(加算値))を取得する(ステップS251)。ここで、前回の不足時間Ts(n-1)が「0」の場合には、加算時間Tadも「0」となる。
【0089】
また、ECU80は、n回目の再生動作が開始されてからの経過時間である再生実行時間Tac(n)を取得する(ステップS252)。そして、ECU80は、前回(n-1回目)の不足時間Ts(n-1)から加算時間Tadを減算した第1項と、今回の再生時間T(n)から再生実行時間Tac(n)を減算した第2項を加算して、以下の式(4)のように、今回(n回目)の不足時間Ts(n)を算出する(ステップS253)。
【0090】
Ts(n)={Ts(n-1)-Tad}+{T(n)-Tac(n)}…(4)
第1項は、今回(n回目)の再生動作が、前回(n-1回目)までの不足時間分を補うかたちで実行されたか否かを示すものであり、前回の不足時間がない場合には、第1項は「0」である。第2項は、今回(n回目)の再生動作で不足時間が発生したか否かを示すものである。したがって、ここでは不足時間は「Ts(n)=T(n)-Tac(n)」となる。ECU80は、算出した不足時間Ts(n)を、不揮発性記憶部又は揮発性記憶部に記憶して、不足時間算出処理を終了する。
【0091】
次いで、ECU80が、n+1回目の再生動作が必要であると判断したとする。ECU80は、そのときの空気乾燥回路11の状態に基づき算出した再生空気量に基づいて、再生時間を算出し、再生時間補正処理を行う。
【0092】
図7に示すように、ECU80は、今回(n+1回目)の再生動作で予定する再生予定時間Tp(n+1回目)を取得する(ステップS210)。また、前回の再生動作(n回目)の不足時間Ts(n)を取得し(ステップS211)、前回の不足時間Ts(n)が「0sec」よりも大きいか否かを判断する(ステップS212)。なお、前回の再生動作(n回目)は中断されており、不足時間Ts(n)は「0sec」よりも大きい。
【0093】
ECU80は、前回の不足時間Ts(n)が「0sec」よりも大きいと判断すると(ステップS212:YES)、再生予定時間Tp(n+1)に前回の不足時間Ts(n)を加算して、補正再生時間T´(n+1)(再生規定時間(実効値))を算出する(ステップS213)。また、ECU80は、が、補正再生時間T´(n+1)が再生最大時間Tmax以上であるか否かを判断する(ステップS214)。再生最大時間Tmaxは、再生時間の上限値である。
【0094】
ECU80は、補正再生時間T´(n+1)が再生最大時間Tmax以上であると判断すると(ステップS214:YES)、補正再生時間T´(n+1)として再生最大時間Tmaxを設定する(ステップS215)。さらに、ECU80は、新たに再生予定時間Tp(n+1)に加えた時間として、加算時間Tadに、補正再生時間T´(n+1)と再生最大時間Tmaxとの差を設定する(ステップS216)。つまり、補正再生時間T´(n+1)のうち、再生最大時間Tmaxよりも大きいとして削減された時間分を、加算時間Tadとする。
【0095】
一方、ECU80が、補正再生時間T´(n+1)が再生最大時間Tmax未満であると判断した場合(ステップS214:NO)、再生動作を実行する時間として、補正再生時間T´(n+1)を設定する。つまり、再生動作を、補正再生時間T´(n+1)だけ実行することを予定する。そして、ECU80は、加算時間Tadに、前回の不足時間Ts(n)を設定する(ステップS217)。このように補正再生時間T´(n+1)及び加算時間Tadを設定すると、再生時間補正処理を終了し、不足時間算出処理に処理を進める。ECU80は、n+1回目の再生動作を開始すると、開始からの経過時間である再生実行時間Tacを計測する。
【0096】
図8に示すように、n+1回目の再生動作が終了すると、n+1回目の再生動作における不足時間を算出する。ECU80は、前回(n回目)の再生動作での不足時間を取得するとともに(ステップS250)、加算時間Tadを取得する(ステップS251)。また、ECU80は、n+1回目の再生動作の再生実行時間Tac(n+1)を取得する(ステップS252)。そして、ECU80は、上記の式(3)にしたがって、不足時間Ts(n+1)を算出する(ステップS253)。
【0097】
例えば、n回目の再生動作を開始する際に設定された加算時間Tadが「0」である場合、第1項(Ts(n)-Tad)は、中断されたn回目の再生動作の不足時間Ts(n)となる。また、第2項(T(n+1)-Tac(n+1))には、n+1回目の再生動作が中断されていなければ「0」が設定され、n+1回目の再生動作が中断されていれば「0」よりも大きい値が設定される。つまり、第1項は前回までの不足時間を示し、第2項は今回発生した不足時間を示すので、前回に引き続き今回も不足時間が発生した場合には、その次の再生動作の再生時間に不足時間が累積していくこととなる。このため、エアタンク30に圧縮乾燥空気が十分貯留され、再生時間が十分確保できるタイミングで、累積した再生時間だけ再生動作が行われることとなるため、ブレーキシステム等への圧縮乾燥空気の供給を優先しつつ、フィルタ17の性能も良好に維持することができる。
【0098】
第2実施形態では、以下の効果を得ることができる。
(5)再生動作が中断された場合、再生時間の残り時間を記憶部に記憶し、新たに前記再生動作を開始する場合に、残り時間を、新たな再生動作の再生時間に反映する。このため、再生動作の中断を許容して、エアタンク30からの圧縮乾燥空気の消費を優先させながらも、フィルタ17の除湿性能を良好な状態に維持することができる。
【0099】
(6)n回目の再生動作が終了された際、n-1回目の再生動作の残り時間と、n回目の再生動作の残り時間とが加算されて、n+1回目の再生動作に反映される。n回目の再生動作の再生時間には、n-1回目の再生動作の残り時間が反映されているため、n回目の再生動作でn-1回目の再生動作の残り時間が相殺されていれば、その残り時間は繰り越されず、n-1回目の再生動作の残り時間が相殺されていなければ、その残り時間は繰り越される。また、n回目の再生動作が中断されなければ、n+1回目の再生動作にn回目の再生動作の残り時間が繰り越されず、n回目の再生動作が中断されれば、n+1回目の再生動作にn回目の再生動作の残り時間が繰り越される。このため、過去の再生動作における残り時間が相殺されるまで、残り時間が引き継がれる。このため、フィルタ17の除湿性能を良好に維持することができる。
【0100】
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第1実施形態では、再生過不足度に応じて再生空気量を決定したが、再生過不足度に応じて再生時間を決定してもよい。この場合、補正単位時間に過不足係数を乗算して補正再生時間を算出し、補正再生時間を標準となる再生時間に加算する。
【0101】
・第1実施形態では、再生過不足度に重み付け係数を乗算することによって過不足係数αを算出したが、過不足係数αとして、再生過不足度そのものを用いてもよい。この場合でも、再生の過不足に応じて、再生空気量を増大させたり減少させたりすることができる。
【0102】
・第1実施形態では、再生過不足度は、エアタンク30内の圧縮乾燥空気に含まれる水分の飽和度が、増加傾向にあるか減少傾向にあるかを示す指標であるとしたが、再生過不足度の代わりに湿度を指標として用いてもよい。また、再生過不足度の代わりにタンク含有水分量Mtkを指標として用いてもよい。
【0103】
・第1実施形態の再生過不足度は、数サイクルの間の平均値を用いてもよい。平均値が負の値であれば、エアタンク30内の水分量が上昇していると推定されるため、再生空気量が不足していると判断する。
【0104】
・第1実施形態では、再生動作が終了する度に記憶された再生結果を、タンク空気水分飽和度としたが、これ以外の指標を用いてもよい。例えば、圧縮乾燥空気の湿度、タンク含有水分量Mtk等、他の指標を用いてもよい。
【0105】
・第2実施形態では、再生時間Tを設定する際、過去の再生動作の不足時間Tsを基準となる再生時間に加算した。これ以外に、過去の再生動作の不足時間Tsの一部を基準となる再生時間に加算してもよい。また、過去の再生動作の不足時間Tsを補正して、基準となる再生時間に加算してもよい。
【0106】
・第2実施形態では、n回目の再生動作において、n-1回目の再生動作の残り時間が相殺されない場合には、該残り時間を次のn+1回目の再生動作の再生時間に反映させた。この態様以外に、n-1回目の再生動作の残り時間が相殺されない場合には、該残り時間の一部をn+1回目の再生動作の再生時間に反映させてもよいし、又はn-1回目の再生動作の残り時間を、n回目の再生動作の再生時間には反映させる一方、n+1回目の再生動作の再生時間に反映させなくてもよい。
【0107】
・第2実施形態では、再生動作が終了する度に記憶された再生結果は再生動作の残り時間であったが、これ以外の再生結果であってもよい。例えば、再生結果は再生空気量であってもよい。
【0108】
・第2実施形態では、第1実施形態で算出した再生空気量を用いて再生時間を算出し、当該再生時間を用いて再生動作を実行するようにしたが、再生時間はこれに限定されない。例えば、再生時間は、コンプレッサ4から送出された圧縮空気量に基づき算出されてもよく、空気乾燥回路11が再生動作又は除湿動作のときに湿度センサ51によって検出された湿度に基づき算出されてもよい。また、再生動作の実行間隔に基づき再生時間が算出されてもよい。圧縮空気量に基づき再生時間を算出する場合には、一定期間内の圧縮空気量が少ない状態では再生時間を短く、圧縮空気量が多い状態では再生時間を長くする。湿度に基づき再生時間を算出する場合には、湿度が低い状態では再生時間を短く、湿度が高い状態では再生時間を長くする。再生動作の実行間隔に基づき再生時間を算出する場合には、実行間隔が短い場合には再生時間を短く、実行間隔が長い場合には再生時間を長くする。又は、再生時間は、エアタンク30内の含有水分量や水分飽和度によらず、一定であってもよい。
【0109】
・上記各実施形態では、フィルタ17は、油分捕捉部を含むが、フィルタ17から油分捕捉部を省略してもよい。
・空気乾燥回路は、上記した構成のものに限られない。空気乾燥回路は、要は、除湿動作と再生動作とを実行できる構成であればよい。したがって、空気乾燥回路は、第2動作モード、第4動作モード~第6動作モードを必須の動作とするものではない。
【0110】
・上記各実施形態では、空気供給システム10は、トラック、バス、建機等の車両に搭載されるものとして説明した。これ以外の態様として、空気供給システム10は、乗用車、鉄道車両等、他の移動体に搭載されてもよい。
【0111】
・ECU80は、自身が実行する全ての処理についてソフトウェア処理を行うものに限られない。たとえば、ECU80は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(たとえば特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、ECU80は、1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0112】
4…コンプレッサ、10…空気供給システム、11…空気乾燥回路、12…供給回路、15…上流チェックバルブ、16…分岐通路、17…フィルタ、18…空気供給通路、19…下流チェックバルブ、20…バイパス流路、21…再生制御弁、22…オリフィス、25…ドレン排出弁、26A…ガバナ、26B…アンロード制御弁、27…排出口としてのドレン排出口、30…貯留部としてのエアタンク、50…圧力センサ、51…湿度センサ、52…温度センサ、53…圧力センサ、80…ECU、80A…記憶部、E61~E67…配線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8