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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017743
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A47J27/00 109A
A47J27/00 109M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120588
(22)【出願日】2022-07-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萱森 雅之
(72)【発明者】
【氏名】初川 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】木村 智志
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一也
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055BA62
4B055CD22
4B055CD73
4B055GB11
4B055GC01
4B055GC21
4B055GD03
(57)【要約】
【課題】冷やご飯を、過加熱や加熱不足にすることなくあたため可能な炊飯器を提供する。
【解決手段】本発明の炊飯器は、米と水をご飯に炊飯する炊飯コースと、包装米飯の冷やご飯を所定温度の範囲にあたためるあたためコースとを有する構成としている。そのため炊飯器1で自動の冷やご飯のあたためを予め設定して行なうことができ、指定を超えた時間で過加熱する虞、逆に指定に不足する時間で加熱不足になる虞がない。また過加熱の場合に想定される、包装米飯のプラスチック製のパックの変形や溶解の虞がない。そしてプラスチック製のパックからの嫌気臭がご飯に吸着することない。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と水をご飯に炊飯する炊飯コースと、冷やご飯を所定温度にあたためる冷やご飯あたためコースとを有することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記冷やご飯あたためコースは、前記冷やご飯あたためコースの初期における前記冷やご飯の温度に応じて前記冷やご飯あたためコースの終了までの時間を変更することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記冷やご飯あたためコースが終了する時刻を指定可能なタイマ予約手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記炊飯コースや前記冷やご飯あたためコースが完了した後、炊飯したご飯またはあたためたご飯を所定の保温温度に維持する保温工程に移行し、
前記所定温度が前記保温温度以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記炊飯コースに関する画面と前記冷やご飯あたためコースに関する画面とを表示可能な表示手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記冷やご飯あたためコースに関する画面を表示可能な情報端末と通信可能な通信手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯されたご飯を再加熱する再加熱機能を有する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の炊飯器として、例えば本願出願人は、特許文献1において、米と水が収容される炊飯鍋と、炊飯鍋を加熱する炊飯ヒータと、炊飯ヒータを制御するCPUとを備え、炊飯後の保温動作時に再加熱スイッチが操作されると、操作されてから10分間、炊飯鍋の鍋底の温度に基づいて85℃未満で65℃以上の温度になるようにCPUが炊飯ヒータを制御するものを提案している。そのため保温中において、よりあたたかいご飯を食味したいときに、炊飯鍋内のご飯を十分あたためることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-153708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、その炊飯器で炊飯したご飯の保温中の場合に当該ご飯の再加熱ができる一方で、他の炊飯器で炊飯されたご飯や、炊飯したご飯を一度炊飯鍋の外に取出して温度が低下したご飯を炊飯鍋に収容してあたためることは推奨されていなかった。理由としては以下の3つが主に挙げられる。(1)ご飯の保存環境が特定されず、腐敗菌が増殖した状態でご飯の温度が低下した場合、低温で抑制されていた腐敗菌が、再加熱により活性化して増殖してしまい、再加熱したご飯が早期に腐敗する要因になる。なお、ご飯の腐敗菌増殖可能温度は6℃~65℃、42℃~55℃で早期に腐敗することが知られている。(2)一度炊飯して温度が低下したご飯を強加熱で再度加熱した場合、当該ご飯の周囲の空気層には熱伝導媒体となる水分が無く、したがって炊飯鍋の熱が効率的に米飯へ伝達されないため炊飯鍋内面に接した米飯の乾燥が進み、加熱過多だと焦げてしまい、また米飯周囲の水分がさらに蒸発して米飯が硬くなってしまい食味低下を招く。(3)保存状態においてご飯の脱水が進んだ状態では保水を失った老化したご飯になり、再加熱しても食味の良いご飯には復元できず、硬く、乾燥してしまう。
【0005】
しかしながらパックご飯などの包装米飯のご飯は、pH調整などにより毒素の増殖が防止されており、無菌状態で酸素を遮断し水分の蒸発を防止して包装されたものであって保存環境が特定されているため、前述の(1)~(3)の理由には該当しないものである。通常、これらの包装米飯のご飯は、例えば電子レンジなどにより再加熱されるが、例えば包装米飯の容器が熱により変形してしまう、冬場はあたため不足、夏場はあたため過多などあたため完了時のご飯の温度が一定ではない、ご飯から蒸発した水分が結露して再度ご飯に戻り、ご飯が水っぽくなって食味が低下してしまう、などの問題も生じる虞があった。
【0006】
また、炊飯後に温度が低下したご飯も同様であり、例えば電子レンジなどにより再加熱される一方で、冬場はあたため不足、夏場はあたため過多などあたため完了時のご飯の温度が一定ではない、ご飯から蒸発した水分が結露して再度ご飯に戻り、ご飯が水っぽくなって食味が低下してしまう、などの問題が生じる虞もあった。
【0007】
そこで本発明は、包装米飯や炊飯後に温度が低下したご飯である冷やご飯を、過加熱や加熱不足にすることなくあたため可能な炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の炊飯器は、米と水をご飯に炊飯する炊飯コースと、冷やご飯を所定温度の範囲にあたためる冷やご飯あたためコースとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炊飯器によれば、炊飯器で自動の冷やご飯のあたためを予め設定して行なうことができ、あたための指定で誤って設定する、ということがなく、冷やご飯を過加熱や加熱不足にすることなくあたためることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態を示す炊飯器の縦断面概略図である。
図2】同上、(A)底面ヒータがIHヒータの炊飯器の縦断面概略図、(B)底面ヒータが熱板ヒータの炊飯器の縦断面概略図、(C)底面ヒータが輻射式ヒータの炊飯器の縦断面概略図、(D)底面ヒータが外釜ヒータの炊飯器の縦断面概略図である。
図3】同上、異なる位置に鍋温度センサが配設された炊飯器の要部の縦断面概略図である。
図4】同上、炊飯器の電気的構成を示すブロック図である。
図5】同上、操作手段および表示手段を示す平面図である。
図6】同上、炊飯工程および保温工程における、鍋温度センサの検知温度と、蓋温度センサの検知温度と、底面ヒータの出力との推移を示すグラフである。
図7】同上、「早く」のボタン表示部選択時、「ふつう」のボタン表示部選択時および「じっくり」のボタン表示部選択時のあたため工程および保温工程における、それぞれの鍋温度センサの検知温度の推移を示すグラフである。
図8】本発明の第1の実施形態の変形例を示す炊飯器の、「早く」のボタン表示部選択時、「ふつう」のボタン表示部選択時および「じっくり」のボタン表示部選択時の、あたため工程および保温工程における「無菌パックご飯」のボタン表示部選択時の、それぞれの鍋温度センサの検知温度の推移を示すグラフである。
図9】本発明の第1の実施形態のさらなる変形例を示す炊飯器の、「早く」のボタン表示部選択時、「ふつう」のボタン表示部選択時および「じっくり」のボタン表示部選択時の、あたため工程および保温工程における「無菌パックご飯」のボタン表示部選択時の、それぞれの鍋温度センサの検知温度の推移を示すグラフである。
図10】本発明の第2の実施形態を示す炊飯器の操作手段および表示手段を示す平面図である。
図11】同上、「無菌パックご飯」のボタン表示部および「ふつう」のボタン表示部選択時のあたため工程および保温工程で、あたため工程の初期における冷やご飯の温度が0℃のときの鍋温度センサの検知温度と、冷やご飯の温度が15℃のときの鍋温度センサの検知温度と、冷やご飯の温度が35℃のときの鍋温度センサの検知温度との推移を示すグラフである。
図12】本発明の第3の実施形態を示す炊飯器の「無菌パックご飯」のボタン表示部および「ふつう」のボタン表示部選択時のあたため工程および保温工程における、鍋温度センサの検知温度と、米飯温度との推移を示すグラフと、炊飯器の要部の縦断面概略図である。
図13】本発明の第3の実施形態の変形例を示す炊飯器の「無菌パックご飯」のボタン表示部および「ふつう」のボタン表示部選択時のあたため工程および保温工程における、鍋温度センサの検知温度と、米飯温度との推移を示すグラフと、炊飯器の要部の縦断面概略図である。
図14】本発明の第4の実施形態を示す炊飯器の、「無菌パックご飯」のボタン表示部および「ふつう」のボタン表示部選択時のあたため工程および保温工程における、鍋温度センサの検知温度と、鍋5の側面の温度と、蓋温度センサの検知温度と、米飯温度と、の推移を示すグラフと、炊飯器の要部の縦断面概略図である。
図15】本発明の第5の実施形態を示す炊飯器の、操作手段および表示手段を示す平面図である。
図16】本発明の第6の実施形態を示す炊飯器の電気的構成を示すブロック図である。
図17】同上、炊飯器システムの全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明における好ましい炊飯器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
【実施例0012】
図1図7は、本発明を炊飯器に適用した第1の実施形態を示している。先ず、図1に基づいて、本実施形態における炊飯器1の全体構成を説明すると、2は上面を開口した本体、3は本体2の開口上面を覆う開閉可能な蓋体であり、これらの本体2と蓋体3とにより炊飯器の外観が構成される。本体2は上面を開口した鍋収容部としての内枠4を有し、蓋体3を開けたときに、被炊飯物Sを収容する有底筒状の鍋5が着脱自在に収容される構成となっている。そして本体2に鍋5を入れて蓋体3を閉じると、蓋体3の下面部に着脱可能に装着された内蓋6が鍋5の開口上面を塞ぐように構成される。
【0013】
内枠4は有底筒状に成形されており、収容された鍋5の外側面との間に空間を持たせるように形成される。鍋5の側面下部から底面に対向する内枠4の外面には、被炊飯物Sを調理するために鍋5を加熱する加熱手段としてIH(induction heating:誘導加熱)ヒータによる底面ヒータ7が配設される。また鍋5の側面上部に対向する内枠4の外面には、加熱手段としてコードヒータによる側面ヒータ8が配設される。鍋5への補助加熱手段となる側面ヒータ8が通電状態となると、この側面ヒータ8からの輻射熱で鍋5の主に側面上部を加熱する。なお本実施形態では、底面ヒータ7にIHヒータ、側面ヒータ8にコードヒータを採用しているが、本発明はこれに限定されることなく、例えば図2(A)に示されるように底面ヒータ7にIHヒータを採用してもよく、図2(B)に示されるように底面ヒータ7に熱板式電熱ヒータを採用してもよく、図2(C)に示されるように底面ヒータ7に輻射式ヒータを採用してもよく、図2(D)に示されるように底面ヒータ7に外釜ヒータなどを採用してもよく、加熱手段の方式に特に制約はない。
【0014】
内枠4の中央には挿通孔4aが設けられており、本体2には、この挿通孔4aを通り抜けて、鍋5の底部の外面である外底面の内側中心部に当接するサーミスタ式の鍋温度センサ9が配設される、鍋温度検知手段となる鍋温度センサ9は鍋5の底部温度を検知しており、後述する制御手段21(図4参照)は、主に鍋温度センサ9の検知温度に基づき底面ヒータ7を制御するように構成される。なお本実施形態では、鍋5の外底面に鍋温度センサ9を当接させているが、これは一例であり、例えば挿通孔4aを鍋5の側面下部に対向する内枠4の外面に設け、図3に示されるように、鍋5の側面下部に鍋温度センサ9を当接させるように構成してもよく、また鍋温度センサ9は、例えば赤外線センサなどの非接触式のセンサでもよい。
【0015】
蓋体3の上面には、鍋5内の被炊飯物Sから発生する蒸気を炊飯器の外部に排出する蒸気口11が設けられている。また蓋体3の前方上面には、蓋開手段としての蓋体操作体12が露出状態で配設される。この蓋体操作体12を押動操作すると、本体2と蓋体3との係合が解除され、本体2の上部後方に設けたヒンジバネ(図示せず)により、蓋体3の後方下部に設けられたヒンジ軸13を回転中心として蓋体3が開く構成となっている。
【0016】
本体2の上方開口部を開閉する蓋体3には、内蓋6の温度を検知するサーミスタ式の蓋温度センサ14と、コードヒータなどの蓋ヒータ15とがそれぞれ設けられている。本実施形態の蓋ヒータ15は内蓋6を加熱して、内蓋6や鍋5内部の温度を上昇させるものであり、蓋加熱手段として機能している。ここで蓋体3に内蓋6を装着すると、内蓋6の上面に蓋温度センサ14が接触し、内蓋6の上面に蓋ヒータ15が対向して配置される構成となっている。そして制御手段21は、主に蓋温度センサ14の検知温度に基づき蓋ヒータ15の出力を制御するように構成される。
【0017】
内蓋6は鍋5の上方開口部と略同径の円盤状を有する金属材料からなり、略皿形状に形成されて、蓋体3を閉じた蓋閉時に、鍋5のフランジ部上面に内蓋6の周端部が当接して、この鍋5と内蓋6との間の隙間を塞いでいる。なお鍋5と内蓋6との間をシールするために、内蓋6の外側全周に弾性部材としての蓋パッキンを設ける構成にしてもよい。
【0018】
内蓋6の略中央には蒸気孔6aが設けられ、この蒸気孔6aの上に圧力調整弁16が配設される。そのため圧力調整弁16は、鍋5内と蓋体3の外部、すなわち炊飯器1の外部(機外)との間を連通する蒸気通路空間17の途中に配設されて、圧力調整弁16が蒸気孔6aを開放し、蒸気孔6aと蒸気口11が連通して蒸気通路空間17が開放されると、鍋5への加熱に関係なく鍋5内部を大気圧に維持できる構成となっている。ここで鍋5内を加圧状態にする場合には、圧力調整弁16で蒸気孔6aを閉塞させることにより蒸気通路空間17を閉塞し、鍋5の開口部をすべて密閉する。そして底面ヒータ7や、側面ヒータ8や、蓋ヒータ15などにより鍋5や被炊飯物Sが加熱されることにより、被炊飯物Sから蒸気が発生して鍋5の内圧が上昇することにより容器13a内を加圧状態にする構成となっている。また蓋体3の内部には、圧力センサ18が圧力調整弁16に臨んで設けられ、鍋5内部の圧力を検知している。
【0019】
19は、蓋体3を本体2に閉じた状態で、鍋5の内部を通常の大気圧よりも低くするための減圧手段である。減圧手段19は、鍋5を内枠4に収容し、蓋体3を閉じた後に圧力調整弁16が蒸気通路空間17を塞いだ状態で、減圧手段19の動作源となる減圧ポンプ(図示せず)を駆動させて密閉した鍋5の内部圧力を低下させる。また、鍋5内部の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合には、減圧ポンプの動作を停止させる一方で鍋5を密閉状態に維持して、鍋5内部を減圧状態に保っている。さらに鍋5内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す場合には、減圧ポンプの動作を停止させた後で圧力調整弁16が蒸気孔6aを開放して、蒸気通路空間17を開放している。つまり圧力調整弁16は、鍋5内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す圧力戻し手段としての構成を兼用している。
【0020】
図4は、本実施形態における炊飯器1の電気的な構成を示している。同図において、21は本体2または蓋体3の内部に組み込まれた制御手段である。この制御手段21は周知のように、演算処理手段としてのCPUや、記憶媒体としてのメモリなどの記憶手段31や、時刻や調理に関する時間など様々な時間を計時するタイマなどの計時手段や、入出力デバイスなどを備えている。また制御手段21の入力ポートには、前述した鍋温度センサ9と、蓋温度センサ14と、圧力センサ18に加えて、操作手段22がそれぞれ電気的に接続される。また制御手段21の出力ポートには、前述した底面ヒータ7と、側面ヒータ8と、蓋ヒータ15と、圧力調整弁16と、減圧手段19に加えて、表示手段23とがそれぞれ電気的に接続される。
【0021】
表示手段23は、表示や報知や操作のために、炊飯や保温などの加熱調理の設定内容や進行状況などを表示するものであり、操作手段22は、例えば表示手段23の後述するLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)37の側方や下方などの周囲に配設され、加熱調理に関する各種の操作入力を可能にするものである。操作手段22や表示手段23の裏側には、図示しないが、表示手段23や操作手段22などの制御を行なうために、操作パネルPC(印刷回路)板が配置される。
【0022】
制御手段21は、操作手段22からの操作信号と、鍋温度センサ9や蓋温度センサ14からの各温度検知信号と、圧力センサ18からの圧力検知信号とを受けて、内蔵する計時手段からの計時に基づく所定のタイミングで、表示手段23に表示制御信号を出力し、また底面ヒータ7と、側面ヒータ8と、蓋ヒータ15とに、それぞれ加熱制御信号を出力し、圧力調整弁16と、減圧手段19とに、それぞれ駆動制御信号を出力する機能を有する。また制御手段21は各種の情報やデータを記憶する読み出しおよび書き込みが可能な記憶媒体としての記憶手段31を有しており、制御手段21の前述の機能は、記憶手段31に予め記録したプログラムを、制御手段21が読み取ることで実現するが、特に本実施形態では、制御手段21を炊飯制御手段32や、保温制御手段33や、あたため制御手段34や、表示制御手段35や、予約制御手段36として機能させるプログラムを備えている。
【0023】
炊飯制御手段32は、操作手段22からの炊飯開始の指示を受けて、鍋5に投入した米の吸水を促進させるひたし炊き工程と、被炊飯物の温度を短時間に沸騰まで上昇させる沸騰加熱工程と、被炊飯物の沸騰状態を継続させる沸騰継続工程と、ご飯を焦がさない程度の高温に維持するむらし工程の各工程を順に実行する炊飯工程を行ない、鍋5内部の被炊飯物に対して所望の圧力で炊飯加熱する炊飯制御を行なうものである。また保温制御手段33は、鍋4内部のご飯を所定の保温温度に保つように制御するものである。そして、あたため制御手段34は、操作手段22からの炊飯開始の指示を受けて、鍋5に投入した冷やご飯を所定温度の範囲にあたためるように加熱する制御を行なうものである。
【0024】
表示制御手段35は、操作手段22からの操作信号に基づき各種の制御信号を生成し、また表示手段23の表示動作を制御するものである。また予約制御手段36は、操作手段22からの予約炊飯または予約あたための指示を受けて、設定された時間に炊飯工程またはあたため工程が終了するように炊飯制御またはあたため制御を行なうものである。予約制御手段36は、ユーザが操作手段22の操作により、炊飯コースまたはあたためコースや、当該炊飯コースまたはあたためコースの設定や、炊飯終了時刻またはあたため終了時刻を入力して予約調理工程を開始させると、記憶手段44に記憶された炊飯コースまたはあたためコースやこれらの設定から入力された情報に基づいて調理コースを設定し、指定された調理終了時刻から、設定された調理コースの時間を差し引くことで調理を開始するまでの待機時間を算出し、記憶手段44に記憶させるものであり、予約設定手段72は、この待機時間が経過したら設定された調理コースで被調理物Sの加熱調理を自動的に開始するように炊飯制御手段32やあたため制御手段34を制御する。
【0025】
本実施形態の炊飯器1では、それぞれの設定に応じた炊飯コースやあたためコースが記憶手段48に記憶されており、その記憶された炊飯コースやあたためコースの設定が表示手段18に選択可能に表示され、これらの設定を行なうことで、当該炊飯コースや当該あたためコースの選択および設定を行なっている。そして選択または設定された炊飯コースまたはあたためコースの設定が記憶手段48に記憶され、炊飯制御手段32やあたため制御手段34は、これらの設定がされた炊飯コースまたはあたためコースの調理コースごとに底面ヒータ7と、側面ヒータ8と、蓋ヒータ15との加熱制御や、圧力調整弁16と、減圧手段19との駆動制御、すなわち炊飯制御やあたため制御を行なっている。
【0026】
図5は本実施形態の操作手段22および表示手段23の平面図である。同図を参照して説明すると、表示手段23は、調理に関わる様々な情報を表示するための、画面表示部としてのLCD37や状態表示部としてのLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)表示部38から構成される。LED表示部38は、実際の炊飯器1の状態を表示するもので、本実施形態では、炊飯工程が実施されていているときに「炊飯」のLED表示部38-1が点灯し、後述するあたため工程が実施されていているときに「あたため」のLED表示部38-2が点灯し、保温工程が実施されていているときに「保温」の工程LED表示部38-3が点灯し、予約炊飯が実施されていているときに「予約」の工程LED表示部38-4が点灯し、鍋5内部が減圧状態であるときに「真空」のLED表示部38-5が点灯するように表示制御部52がLED表示部38を制御する。なお、これらは一例であり、本発明はこれらの構成に限定されることなく、例えば鍋5内部が加圧状態であるときに点灯する「加圧」のLED表示部を追加してもよい。またLED表示部38のそれぞれのLED表示部が点灯したときの光の色をそれぞれ異ならせてもよく、炊飯器1が現在どのような状態であるかを一目で理解できる。なお本実施形態ではLED表示部38の位置について、LCD37の近傍に配置されているが、LCD37から離れた位置に配置されてもよい。またLED表示部38を除く構成にして、このLED表示部38の表示内容をLCD37で表示するように構成してもよい。
【0027】
図5においてLCD37はトップ画面G1を示している。ユーザが予め本体1に設けた電源プラグを家庭用のコンセントに差し込むと、炊飯器の各部に必要な電力が投入される。このとき表示制御手段35は、所定時間経過後または所定の起動時表示画面の表示に、LCD37に表示される普段使いの初期画面として、トップ画面G1の配置をLCD37に表示させる。
【0028】
図5を参照してトップ画面G1の説明をすると、その上部には、現在時刻を表示する現在時刻用表示体D1と、現在時刻用表示体D1に表示される数字が現在時刻を表示していると連想させる「時計」なるテキスト表示体D2とを並べて表示した現在時刻表示領域A1が形成され、炊飯工程またはあたため工程が完了する時刻を表示する完了時刻用表示体D3と、完了時刻用表示体D3に表示される数字が、あたため工程が完了する時刻を表示していると連想させる「でき上り」なるテキスト表示体D4と、完了時刻用表示体D3に表示される数字が、炊飯工程が完了する時刻を表示していると連想させる「炊上り」なるテキスト表示体D5とを並べて表示した完了時刻表示領域A2が、現在時刻表示領域A1と並べて形成されている。
【0029】
また、現在時刻表示領域A1および完了時刻表示領域A2の下方には、3つのボタン表示部B6~B8を左右に並べて表示した炊飯メニュー表示領域A3が形成されている。ここで「白米」のボタン表示部B6は、「白米」なるテキスト表示体D6を含む。また「玄米」のボタン表示部B7は、「玄米」なるテキスト表示体D7を含む。そして「おかゆ」のボタン表示部B8は、「おかゆ」なるテキスト表示体D8を含む。ここで図5のトップ画面G1では、3つのボタン表示部B6~B8のいずれにもカーソルが合わせられていないため、テキスト表示体D6~D8は、いずれもグレーアウト表示されている。
【0030】
そして炊飯メニュー表示領域A3の下方には、2つのボタン表示部B9,B10を左右に並べて表示したあたためメニュー表示領域A4が形成されている。ここで「無菌パックご飯」のボタン表示部B9は、「無菌パックご飯」なるテキスト表示体D9を含む。また「レトルトご飯」のボタン表示部B10は、「レトルトご飯」なるテキスト表示体D10を含む。ここで図5のトップ画面G1では、「無菌パックご飯」のボタン表示部B9にカーソルが合わせられているため、「無菌パックご飯」のボタン表示部B9の表示が白黒反転して「無菌パックご飯」のテキスト表示体D9が白抜き表示されており、「レトルトご飯」のテキスト表示体D10がグレーアウト表示されている。
【0031】
また、あたためメニュー表示領域A4の下方には、3つのボタン表示部B11~B13を左右に並べて表示したあたため方法表示領域A5が形成されている。ここで「早く」のボタン表示部B11は、「早く」なるテキスト表示体D11を含む。また「ふつう」のボタン表示部B12は、「ふつう」なるテキスト表示体D12を含む。そして「じっくり」のボタン表示部B13は、「じっくり」なるテキスト表示体D13を含む。ここで図5のトップ画面G1では、「ふつう」のボタン表示部B12にカーソルが合わせられているため、「ふつう」のボタン表示部B12の表示が白黒反転して「ふつう」のテキスト表示体D12が白抜き表示されており、「早く」のテキスト表示体D11および「じっくり」のテキスト表示体D13がグレーアウト表示されている。
【0032】
操作手段22は、LCD37の右側に並べて配置される「予約」キー41と、進むキー42および戻るキー43と、「メニュー」キー44と、「あたため方」キー45に加えて、LCD37の下側に並べて配置される「パックご飯あたため」キー46と、「炊飯」キー47と、「切」キー48とで構成される。ここで、41~48の各キーは、押動することにより操作可能なタクトスイッチなどの押動型操作手段として機能している。なお、これらの41~48の各キーに代えて、もしくは追加して、LCD37の上面に配置されて、ユーザのタッチ操作で操作可能なタッチキーなどの非押動型操作手段を設けてもよい。
【0033】
「切」キー48は、炊飯やあたためや保温をやめる際に操作されるもので、切キー48が押圧されると、表示制御手段35が「切」キー48からの操作信号を受け付けて、現在稼働している炊飯制御手段32、保温制御手段33またはあたため制御手段34に送出し、当該炊飯制御手段32、保温制御手段33またはあたため制御手段34が鍋5内の被炊飯物Sに対する加熱を中止して切状態にする制御を行なう。
【0034】
「炊飯」キー47は炊飯工程を開始する際に操作されるもので、「炊飯」キー47が押圧されると、炊飯制御手段32が、現在LCD37に表示された設定で、鍋5内の被炊飯物Sに対する炊飯開始の制御をする構成となっている。なお、カーソルがあたためメニュー表示領域A4内のボタン表示部に位置しているときに「炊飯」キー47が押圧されても、制御手段21が炊飯開始やあたため開始の制御をしないように構成してもよい。
【0035】
「パックご飯あたため」キー46はあたため工程を開始する際に操作されるもので、「パックご飯あたため」キー46が押圧されると、炊飯制御手段32が、現在LCD37に表示された設定で、鍋5内の被炊飯物Sに対するあたため開始の制御をする構成となっている。なお、カーソルが炊飯メニュー表示領域A3内のボタン表示部に位置しているときに「パックご飯あたため」キー46が押圧されても、制御手段21が炊飯開始やあたため開始の制御をしないように構成してもよい。また「パックご飯あたため」キー46を設けず、「炊飯」キー47で当該「炊飯」キー47と「パックご飯あたため」キー46との両方の機能を兼用させて、操作手段22を簡素化させてもよい。
【0036】
「予約」キー41は予約調理を行なう際に操作されるもので、「予約」キー41を押圧し、予約時刻や炊飯メニューまたはあたためメニュー、あたため方法を設定した後に、「炊飯」キー47または「パックご飯あたため」キー46を押圧すると、炊飯制御手段32またはあたため制御手段34が予め設定した予約時刻に鍋5内の被炊飯物Sが炊飯またはあたためが完了するように炊飯工程またはあたため工程を開始し、また保温制御手段33による保温を開始するように制御する構成となっている。
【0037】
進むキー42や戻るキー43は、予約時刻や現在時刻、調理時間を調整するのに操作されるものである。なお、後述する炊飯メニューおよびあたためメニューの選択やあたため方法の選択で、これらを設定する際に操作されるように構成してもよい。
【0038】
「メニュー」キー44は、炊飯メニューやあたためメニューを選択する際に操作されるもので、「メニュー」キー44が押圧される毎にカーソルが移動していき、例えば「白米」のボタン表示部B6>「玄米」のボタン表示部B7>「おかゆ」のボタン表示部B8>「無菌パックご飯」のボタン表示部B9>「レトルトご飯」のボタン表示部B10>「白米」のボタン表示部B6の順にカーソルが移動していく。そして所望のメニューにカーソルを合わせることでメニューの選択がされる構成となっている。
【0039】
「あたため方」キー45は、あたためメニューのあたため方法を選択する際に操作されるもので、「あたため方」キー45が押圧される毎にカーソルが移動していき、例えば「早く」のボタン表示部B11>「ふつう」のボタン表示部B12>「じっくり」のボタン表示部B13>「早く」のボタン表示部B11の順にカーソルが移動していく。そして所望のあたため方法にカーソルを合わせることであたため方法の選択がされる構成となっている。したがって本実施形態では、「あたため方」キー45により、「早く」のボタン表示部B11、「ふつう」のボタン表示部B12および「じっくり」のボタン表示部B13のあたため方の中から所望するあたため方を任意に選択できる構成を採用しており、例えば、時間にゆとりがある場合は「じっくり」のボタン表示部B13を選択することで、やわらかめに粘りを活かすご飯になるようなあたため方を選択し、また時間にゆとりがなく、早くあたためたいときは「早く」のボタン表示部B11を選択し、その一方で好みの食感に応じたご飯になるようなあたため方を選択するなど、ユーザの目的に応じ、好みに応じた冷やご飯のあたため方を選択できるようにしている。
【0040】
次に図6を参照して、上記構成の炊飯器1について炊飯工程における作用を説明する。なお図6は、本実施形態の炊飯器1の炊飯工程および保温工程における、鍋温度センサ9の検知温度tと、蓋温度センサ14の検知温度tと、底面ヒータ7の出力Wとの推移をあらわしたグラフである。
【0041】
先ず本実施形態の炊飯時における動作を説明すると、鍋5内に被炊飯物Sとして米および水を入れ、これを本体2の内枠4にセットした後に、蓋体3を閉じる。それと前後して、炊飯器1の電源プラグをコンセントに差し込んで通電すると、炊飯器1は炊飯や保温が行われていない初期の切(待機)状態となり、表示制御手段35は、トップ画面G1を表示させるようにLCD37を制御する。
【0042】
ここで操作手段22の、例えば「メニュー」キー44や「あたため方」キー45を操作する毎に、表示制御手段35により炊飯コースやあたためコースの設定が変更される。変更された設定は表示制御手段35によりLCD37にその都度表示され、ユーザはこれを目視で確認できる。今回は炊飯工程の説明なので、例えば「メニュー」キー44を操作して、「白米」のボタン表示部B6にカーソルが合わせられた場合について説明する。
【0043】
そして操作手段22の、今回の場合は炊飯工程なので「炊飯」キー47を操作すると、制御手段21はLCD37に表示された炊飯コースを今回設定した調理コースとして記憶手段31に記憶し、その設定した調理コースに対応する加熱パターンの情報を炊飯制御手段32に送出する。これを受けて、設定した調理コースの加熱パターンに沿って、炊飯制御手段32が、鍋5内の被炊飯物Sに対するひたし炊き工程、沸騰加熱工程、むらし工程の各炊飯動作を行なう。また表示制御手段35は、記憶手段31に記憶された情報から、設定した調理コースの予想完了時刻を算出して当該予想完了時刻を完了時刻用表示体D3に表示し、併せて「炊上り」のテキスト表示体D5を表示するようにLCD37を制御する。そして表示制御手段35は、「炊飯」のLED表示部38-1を点灯させるようにLED表示部38を制御する。
【0044】
炊飯工程が開始されると、炊飯制御手段32は、鍋温度センサ9による鍋5の底部の温度検知に基づき、底面ヒータ7と側面ヒータ8を通断電制御して鍋5の底部と側面部をそれぞれ加熱し、図6に示されるように、鍋5内の水温を所定の温度、例えば35~55℃、最高でも60℃にまで昇温させて米の吸水を促進させるひたし炊き工程を行なう。ひたし炊き工程は、鍋5内の水温を所定の温度に所定の時間、例えば10~60分間、最長でも120分間保持するように構成される。
【0045】
またひたし炊き工程中では鍋5内の圧力が大気圧よりも低い減圧状態となるように、炊飯制御手段32が、圧力調整弁16や減圧手段19の動作を各々制御し、表示制御手段35が「真空」のLED表示部38-5を点灯させるようにLED表示部38を制御する。具体的には、ひたし炊き工程が開始されると、炊飯制御手段32は蒸気通路空間17を閉塞するように圧力調整弁16を制御し、蒸気通路空間17を閉塞する。そしてこの状態で、減圧手段19の減圧ポンプを連続動作させ、密閉した鍋5の内部の空気を減圧ポンプで抜き取る真空引きを行なう。その後、炊飯制御手段32は、鍋5内部の圧力が大気圧よりも一定値下がった旨の圧力センサ18からの圧力検知信号を受け取ると、減圧ポンプ29の動作を停止させる一方で、蒸気通路空間17は閉塞した状態を維持する。こうして、ひたし炊き工程の全期間である所定の時間に亘って鍋5内部を減圧状態に保っている。
【0046】
その後、炊飯制御手段32が、所定の時間が経過した旨の計時手段からの計時信号を受け取ると、ひたし炊き工程が終了し、次の沸騰加熱工程に移行する。沸騰加熱工程では、先ず、被炊飯物Sの沸騰検知を行なうまでの加熱で、炊飯制御手段32は、底面ヒータ7や側面ヒータ8を連続通電する制御を行なうことにより、ひたし炊き工程よりも鍋5内の被炊飯物Sを強く加熱し、被炊飯物Sを短時間で沸騰の温度まで上昇させる昇温工程を行なう。ここで炊飯制御手段32は、ひたし炊き工程から引き続いて鍋5の内部を大気圧よりも低い減圧状態に維持するために、減圧手段19の減圧ポンプの動作を停止させる一方で、蒸気通路空間17が閉塞した状態を維持するように制御している。そのため、ひたし炊き工程から沸騰加熱工程に移行した後も、鍋5への加熱やスローリークにより鍋5の内部は次第に圧力が上昇するものの、暫くの間は減圧ポンプを動作させることなく減圧状態を維持することができる。こうして、ひたし炊き工程の後の沸騰加熱工程でも鍋5内部の被炊飯物Sが減圧状態に保持されることで、昇温行程中は100℃以下の温度で水が沸騰する。そのため、米の糊化温度とされる60℃~100℃で被炊飯物Sを減圧状態で沸騰させることで、沸騰時の泡で米を舞わせて加熱ムラがなくなり、併せて被炊飯物Sを減圧状態にすることで米の芯まで短時間に吸水させることができる。
【0047】
次に、炊飯制御手段32は鍋温度センサ9からの温度検知信号を取り込んで、鍋5の底部の検知温度が所定温度となる100℃に達したら、鍋5内部の被炊飯物Sが減圧状態で沸騰したと判定して、減圧ポンプを動作させないまま蒸気通路空間17を開放するように圧力調整弁16を制御する。これにより蒸気通路空間17は、鍋5の内外を密閉せずに連通させた開放状態となり、鍋5内部は直ちに外気と同じ常圧に戻る。
【0048】
なお鍋5内を加圧状態にする場合、蒸気通路空間17を開放させてから所定時間経過後に、炊飯制御手段32が蒸気通路空間17を閉塞するように圧力調整弁16を制御し、鍋5の内部を再び密閉した状態にする。ここで、引き続き、鍋5内部で被炊飯物Sを強く加熱しているため、この被炊飯物Sが大気圧以上、例えば1.2気圧に達するまで鍋5内部で加圧され、その加圧状態で被炊飯物Sを沸騰させることができる。これにより、加圧状態における米の糊化最適温度である105℃(1.2気圧の場合)で被炊飯物Sを沸騰させることで、米の硬さと粘りのバランスを確保することができる。
【0049】
その後、炊飯制御手段32は、鍋5の底部の温度が所定温度以上、例えば90℃以上になったことを鍋温度センサ9からの温度検知信号により検出し、それに加えて内蓋6の温度が所定温度以上、例えば90℃以上になったことを蓋温度センサ14からの温度検知信号により検出すると、被炊飯物Sの沸騰を検知する沸騰検知を開始する。具体的には、引き続き、底面ヒータ7や側面ヒータ8を連続通電する制御を行なって鍋5内部で被炊飯物Sを強く加熱する一方で、蓋温度センサ14の検知温度が所定の時間にどの程度上昇するのかという検知温度の傾きを算出する。そして炊飯制御手段32は、この蓋温度センサ14の検知温度の傾きが一定値以下になって安定したら、鍋5内部の被炊飯物Sが沸騰したと判定して、次の沸騰加熱工程の沸騰継続工程に移行する。
【0050】
沸騰継続工程に移行すると、炊飯制御手段32は、鍋温度センサ9による鍋5の底部の温度検知に基づき、底面ヒータ7と側面ヒータ8を通断電制御して鍋5の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋5内の水温を所定の温度に保持すると共に、蓋ヒータ15を制御して蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋6の温度が所定の温度、例えば100℃になるように、蓋温度センサ14の検知温度により蓋ヒータ33からの加熱量が管理されている。そして炊飯制御手段32は、沸騰継続工程で鍋5内部の水が無くなり、鍋温度センサ9からの鍋5の底部の温度検知信号により所定の温度上昇を生じたことを検出することで、鍋温度センサ9の検知温度に基づき被炊飯物Sの炊き上げを検知する。ここでは鍋温度センサ9の検知温度が所定のドライアップ温度に達すると、炊飯制御手段32が鍋5内部の被炊飯物Sの炊き上がりと判定し、沸騰継続工程が終了して沸騰加熱工程が終了し、次のむらし工程に移行する。
【0051】
むらし工程中は、炊飯制御手段32が蓋温度センサ14の検知温度により、蓋ヒータ15を通断電制御して温度管理を行ない、内蓋6への露付きを防止すると共に、鍋5内部のご飯が焦げない程度に高温が保持されるように、底面ヒータ7や側面ヒータ8を通断電制御して鍋5の底部の温度を管理する。むらし工程は所定時間続けられ、むらし工程が終了したら、炊飯工程が完了して、保温制御手段33による保温工程に移行する。そして表示制御手段35は、炊飯工程が完了すると「炊飯」のLED表示部38-1を消灯させて「保温」のLED表示部38-3を点灯させるようにLED表示部38を制御する。
【0052】
次に図7を参照して、上記構成の炊飯器1についてあたため工程における作用を説明する。なお図7は、本実施形態の炊飯器1の「無菌パックご飯」のボタン表示部B9選択時のあたため工程および保温工程における、「早く」のボタン表示部B11選択時の鍋温度センサ9の検知温度tと、「ふつう」のボタン表示部B12選択時の鍋温度センサ9の検知温度tと、「じっくり」のボタン表示部B13選択時の鍋温度センサ9の検知温度tとの推移をあらわしたグラフである。
【0053】
本実施形態では、pH調整などにより毒素の増殖が防止されており、無菌状態で酸素を遮断し水分の蒸発を防止して包装されたものであって保存環境が特定された、パックご飯などの包装米飯の冷やご飯をあたためる、あたためコースを備えている。先ず本実施形態の炊飯時における動作を説明すると、被炊飯物Sとして、例えば無菌パックご飯やレトルトご飯などの包装米飯の冷やご飯、今回の場合は無菌パックご飯の冷やご飯、を包装から取り出して鍋5内に入れ、これを本体2の内枠4にセットした後に、蓋体3を閉じる。それと前後して、炊飯器1の電源プラグをコンセントに差し込んで通電すると、炊飯器1は切状態となり、表示制御手段35は、トップ画面G1を表示させるようにLCD37を制御する。
【0054】
ここで操作手段22の、例えば「メニュー」キー44や「あたため方」キー45を操作する毎に、表示制御手段35により炊飯コースやあたためコースの設定が変更される。今回はあたため工程の説明なので、例えば図5に示されるように「メニュー」キー44を操作して、被炊飯物Sに対応した「無菌パックご飯」のボタン表示部B9にカーソルが合わせられた場合について説明する。
【0055】
操作手段22の、今回の場合はあたため工程なので「パックご飯あたため」キー46を操作すると、制御手段21はLCD37に表示されたあたためコースの設定を今回設定した調理コースとして記憶手段31に記憶し、その設定した調理コースに対応する加熱パターンの情報をあたため制御手段34に送出する。これを受けて、設定した調理コースの加熱パターンに沿って、あたため制御手段34が、鍋5内の被炊飯物Sに対するあたため動作を行なうあたため工程を実施する。また表示制御手段35は、記憶手段31に記憶された情報から、設定した調理コースの予想完了時刻を算出して当該予想完了時刻を完了時刻用表示体D3に表示し、併せて「でき上り」のテキスト表示体D4を表示するようにLCD37を制御する。そして表示制御手段35は、「あたため」のLED表示部38-2を点灯させるようにLED表示部38を制御する。
【0056】
あたため工程が開始されると、あたため制御手段34は、鍋温度センサ9による鍋5の底部の温度検知に基づき、底面ヒータ7と側面ヒータ8を通断電制御して鍋5の底部と側面部をそれぞれ加熱し、図7に示されるように、鍋5内の被炊飯物Sである冷やご飯を、米飯の糊化温度の60℃~米飯の脱水、焦げを抑制可能な温度である110℃の間で任意に設定可能であり、本実施形態では85℃に設定される所定温度にまで昇温させ、当該所定温度で、例えば10分間などの所定時間保持するあたため加熱工程を行なう。
【0057】
なお、あたため加熱工程中では、あたため制御手段34が、蒸気通路空間17を閉塞するように圧力調整弁16を制御して蒸気通路空間17を閉塞し、減圧手段19の減圧ポンプを連続動作させて脱気を行ない、あたため加熱工程の全期間に亘って冷やご飯から発生する臭気を脱気する構成にしてもよい。この場合、表示制御手段35が「真空」のLED表示部38-5を点灯させるようにLED表示部38を制御する。
【0058】
米澱粉の糊化温度は米の品種により一応ではない一方で、ほとんどの米の品種では米澱粉の糊化温度が60℃以上である。そのため、ほとんどの米の品種では糊化するために60℃以上の熱と水が必要であり、保水した状態の冷やご飯の澱粉を60℃以上に保持することにより、硬くて粘りのなく、水を含んだ冷やご飯の米飯が、粘りを復元して柔らかくなり、美味しいご飯の食感を獲得することができるようになる。したがって冷やご飯を所定温度に保持することが重要な温度管理になる。
【0059】
本実施形態のあたため加熱工程では、あたため制御手段34が、「あたため方」キー45で選択されて設定されたあたため方法に基づいて鍋5を加熱する底面ヒータ7および側面ヒータ8の出力を変更しており、例えば「ふつう」のボタン表示部B12が選択されて設定された場合は、あたため制御手段34は、鍋5内の冷やご飯が、例えば略15分で所定温度の85℃にまで昇温するような底面ヒータ7および側面ヒータ8の出力で鍋5を加熱するように制御する。また「早く」のボタン表示部B11が選択されて設定された場合は、あたため制御手段34は、鍋5内の冷やご飯が、例えば略5分で所定温度の85℃にまで昇温するような底面ヒータ7および側面ヒータ8の出力で鍋5を加熱するように制御する。そして「じっくり」のボタン表示部B13が選択されて設定された場合は、あたため制御手段34は、鍋5内の冷やご飯が、例えば略25分で所定温度の85℃にまで昇温するような底面ヒータ7および側面ヒータ8の出力で鍋5を加熱するように制御する。なお本発明はこれに限定されることなく、温度や時間の値は一例である。
【0060】
次に、あたため制御手段34は鍋温度センサ9からの温度検知信号を取り込んで、鍋5の底部の検知温度が所定温度となる85℃に達したら、鍋5内部の被炊飯物Sが所定温度にまで昇温したと判定して、鍋温度センサ9による鍋5の底部の温度検知に基づき、底面ヒータ7と側面ヒータ8を通断電制御して鍋5の底部と側面部をそれぞれ加熱し、所定時間である10分間、鍋5内の被炊飯物Sを所定の温度に保持して、被炊飯物Sである冷やご飯のあたためを行なう。ここで本実施形態では、所定温度である85℃に保持する所定時間は10分間に設定されている一方で、炊飯器1に固有の加熱特性や、被調理物Sである冷やご飯のあたたまり具合に応じて所定時間が任意に変更される構成を採用している。例えば「早く」のボタン表示部B11が選択されて設定された場合に、被調理物Sである冷やご飯の量が多くて所定温度の85℃にまで昇温する時間が余分にかかってしまったときなど、あたため制御手段34が、所定時間が10分ではあたためが不足すると判定した場合は、所定時間を、例えば15分に延長するように構成される。また例えば、「じっくり」のボタン表示部B13が選択されて設定された場合に、被調理物Sである冷やご飯の量が少なくて所定温度の85℃にまで速やかに昇温してしまった場合や、出力が強すぎて被調理物Sの温度が85℃より大幅に上がってしまった場合など、あたため制御手段34が、所定時間が10分ではあたため過多であると判定した場合は、所定時間を、例えば5分に短縮するように構成される。
【0061】
その後、あたため制御手段34が、所定の時間が経過した旨の計時手段からの計時信号を受け取ると、あたため加熱工程が終了してあたため工程が完了し、保温制御手段33による保温工程に移行する。そして表示制御手段35は、炊飯工程が完了すると「あたため」のLED表示部38-2を消灯させて「保温」のLED表示部38-3を点灯させるようにLED表示部38を制御する。保温工程では、保温制御手段33が、鍋温度センサ9による鍋5の底部の温度検知に基づき、底面ヒータ7と側面ヒータ8を通断電制御して鍋5の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋5内の被炊飯物Sを、70℃~76℃の間、本実施形態の場合は73℃である所定の保温温度に保持している。したがって、被炊飯物Sである冷やご飯を炊飯器1であたためて保温したときに冷やご飯の腐敗を抑制することができ、また鍋5内を密封状態や脱酸素状態にし、かつ被炊飯物Sを70℃~76℃の間の低い所定温度に保持するため、冷やご飯のメイラード反応を抑制することができ、早期の黄ばみや保温臭の発生を抑制することができる。
【0062】
なお、保温工程中では、保温制御手段33が、蒸気通路空間17を閉塞するように圧力調整弁16を制御して蒸気通路空間17を閉塞し、減圧手段19の減圧ポンプを連続動作させて脱気を行なう構成にして、保温工程中のご飯のメイラード反応をさらに抑制するように構成してもよい。この場合、表示制御手段35が「真空」のLED表示部38-5を点灯させるようにLED表示部38を制御する。
【0063】
また上記構成の炊飯器1について予約調理工程におけるあたため工程の作用を説明すると、ユーザが「予約」キー41を押圧し、操作手段22の操作によりあたためコースや当該あたためコースの設定やあたため終了時刻を入力して予約調理工程を開始させると、制御手段21はLCD37に表示されたあたためコースの設定を今回設定した調理コースとして記憶手段31に記憶し、その設定した調理コースに対応する加熱パターンの情報をあたため制御手段34に送出する。また予約制御手段36は、指定された調理終了時刻から、設定された調理コースの時間を差し引くことで加熱調理を開始するまでの待機時間を算出し、記憶手段44に記憶させる。
【0064】
予約調理工程を開始して待機時間の期間である予約待機工程に移行すると、予約待機工程中では鍋5内の圧力が大気圧よりも低い減圧状態となるように、予約制御手段36が、圧力調整弁16や減圧手段19の動作を各々制御し、表示制御手段35が「真空」のLED表示部38-5を点灯させるようにLED表示部38を制御する。
【0065】
具体的には、予約待機工程が開始されると、予約制御手段36は、蒸気通路空間17を閉塞するように圧力調整弁16を制御し、蒸気通路空間17を閉塞する。そしてこの状態で、減圧手段19の減圧ポンプを連続動作させ、密閉した鍋5の内部の空気を減圧ポンプで抜き取る真空引きを行なう。その後、予約制御手段36は、鍋5内部の圧力が大気圧よりも一定値下がった旨の圧力センサ18からの圧力検知信号を受け取ると、減圧ポンプ29の動作を停止させる一方で、蒸気通路空間17は閉塞した状態を維持する。こうして、予約待機工程の全期間に亘って鍋5内部を減圧状態に保っている。予約待機工程中に鍋5内を脱気し、また鍋5を密閉して減圧状態を保持して減酸素にすることにより、冷やご飯が常温状態で鍋5内に保管されたときの腐敗菌の増殖を抑制することができる。また鍋5内において減圧状態を保持しているときは、鍋5内は外気との連通を遮断した密閉環境であるため、冷やご飯に保水された水分の蒸発を防止することができ、かつ、空気中に浮遊する黴菌や雑菌が炊飯器1の外部からの鍋5内へ侵入することを防止することができる。
【0066】
また本実施形態では、予約制御手段36は、鍋温度センサ9による鍋5の底部の温度検知に基づく被炊飯物Sとしての冷やご飯の温度と、算出した待機時間とに応じて、あたため工程を開始するタイミングを判定する構成を採用している。例えば予約制御手段36は、冷やご飯の温度が、夏場などで25℃以上であるなど腐敗が進行しやすい温度であると判定した場合は、予約調理工程が開始されると予約待機工程に移行せず、すぐにあたため制御手段34によるあたため工程を開始するように制御して、ユーザが設定したあたため終了時刻の前にあたため工程を終了して保温工程に移行するようにして被炊飯物Sの腐敗を抑制している。
【0067】
また例えば予約制御手段36は、冷やご飯の温度が15℃~25℃であると判定した場合は、算出した待機時間が、例えば6時間などの所定時間以内であるかを判定する。予約制御手段36は、待機時間が所定時間未満であると判定した場合は、予約待機工程に移行して、算出した待機時間が経過するまであたため制御手段34によるあたため工程を待機するように制御する。その一方で予約制御手段36は、待機時間が所定時間以上であると判定した場合は、所定時間経過した旨の計時手段からの計時信号を受け取ると、あたため制御手段34によるあたため工程を開始するように制御して、ユーザが設定したあたため終了時刻の前にあたため工程を終了して保温工程に移行するようにして被炊飯物Sの腐敗を抑制している。
【0068】
そして例えば予約制御手段36は、冷やご飯の温度が15℃未満であると判定した場合は、算出した待機時間が、例えば11.5時間などの所定時間以内であるかを判定する。そして冷やご飯の温度が前述の15℃~25℃である場合と同様の制御を、所定時間を11.5時間にして行なうように構成される。
【0069】
なお炊飯器1が減圧手段19を備えておらず、鍋5内を減圧状態にする手段を有していない場合、ユーザが設定可能なあたため終了時刻を現在の時刻から、例えば24時間以内など所定の時間内に制限するように構成してもよく、また予約制御手段36が、予約待機工程で蒸気通路空間17を閉塞するように圧力調整弁16を制御して鍋5内と外気との連通を遮断し、予約待機工程の待機時間を、例えば23.5時間以内など所定の時間内に制限するように構成してもよい。また炊飯器1が圧力調整弁16を備えておらず、蒸気通路空間17を閉塞する構成を有していない場合、ユーザが設定可能なあたため終了時刻を現在の時刻から、例えば14時間以内など所定の時間内に制限するように構成してもよく、また予約待機工程の待機時間を、例えば13.5時間以内など所定の時間内に制限するように構成してもよい。
【0070】
なお、仮に誤って包装米飯のパックから冷やご飯を取り出さずに、包装米飯のパックごと包装米飯を鍋5に入れてあたためた場合でも、鍋5内を包装米飯のパックのプラスチックの変形や溶解の虞が無い温度である60℃~110℃の間の所定温度に保持してあたためるため、冷やご飯をあたためるときに包装米飯のプラスチック製のパックの変形や溶解の虞がない。
【0071】
以上のように、本実施形態の炊飯器1では、米と水をご飯に炊飯する炊飯コースと、包装米飯の冷やご飯を所定温度の範囲にあたためる冷やご飯あたためコースとしてのあたためコースとを有する構成としている。そのため炊飯器1で自動の冷やご飯のあたためを予め設定して行なうことができ、例えばオーブンレンジなどのあたためで誤って行なう虞のある、例えば900Wや1000Wで1分30秒など、あたための指定を超えた出力で過加熱する虞や、逆にあたための指定に不足する出力で加熱不足になる虞、例えば500~600Wで2分など、指定を超えた時間で過加熱する虞、逆に指定に不足する時間で加熱不足になる虞がない。また包装米飯の冷やご飯を包装米飯のパックから取り出して鍋5内に入れ、冷やご飯のみをあたためるため、前述の過加熱の場合に想定される、例えば包装米飯のプラスチック製のパックの変形や溶解の虞がなく、またプラスチック製のパックからの嫌気臭が被炊飯物Sとしてのご飯に吸着することなく、冷やご飯をあたためることができる。
【0072】
また本実施形態の炊飯器1では、あたためコースが終了する時刻を指定可能なタイマ予約手段としての「予約」キー41、操作手段22および完了時刻用表示体D3をさらに備える構成としており、包装米飯の冷やご飯を包装米飯のパックから取り出して鍋5内に入れ、あたためコースが完了する時刻を指定して、冷やご飯のみをあたためるため、プラスチック製のパックからの嫌気臭が被炊飯物Sとしてのご飯に吸着することなく、食味低下を抑制しつつ冷やご飯をあたためることができる。また、あたためコースが完了する時刻を指定して冷やご飯をあたためることができるため、例えば、朝起きたときに既にご飯のあたためが完了している、または帰宅したときに既にご飯のあたためが完了している、などの実用性の改善をすることができる。
【0073】
図8は、本発明の第1の実施形態の変形例を示している。本変形例では、「あたため方」キー45で選択されて設定されたあたため方法に基づいて、所定時間保持する温度である所定温度を変更する構成にしている。
【0074】
図8を参照して、上記構成の炊飯器1についてあたため工程における作用を説明する。なお図8は、本実施形態の炊飯器1の「無菌パックご飯」のボタン表示部B9選択時のあたため工程および保温工程における、「早く」のボタン表示部B11選択時の鍋温度センサ9の検知温度t’と、「ふつう」のボタン表示部B12選択時の鍋温度センサ9の検知温度t’と、「じっくり」のボタン表示部B13選択時の鍋温度センサ9の検知温度t’との推移をあらわしたグラフである。
【0075】
「ふつう」のボタン表示部B12が選択されて設定された場合は、第1の実施形態と同様に、あたため制御手段34は、鍋5内の冷やご飯が、例えば略15分で所定温度の85℃にまで昇温するような底面ヒータ7および側面ヒータ8の出力で鍋5を加熱するように制御し、鍋5内の被炊飯物Sを当該85℃で所定時間の10分間保持するように制御する。
【0076】
また「早く」のボタン表示部B11が選択されて設定された場合は、あたため制御手段34は、鍋5内の冷やご飯が、例えば15分よりやや早く、所定温度の95℃にまで昇温するような底面ヒータ7および側面ヒータ8の出力で鍋5を加熱するように制御し、鍋5内の被炊飯物Sを当該95℃で、所定時間の5~7分間保持するように制御する。なお、あたため制御手段34が、所定時間が5~7分ではあたためが不足すると判定した場合は、所定時間を、例えば10分などに延長するように構成してもよい。
【0077】
そして「じっくり」のボタン表示部B13が選択されて設定された場合は、あたため制御手段34は、鍋5内の冷やご飯が、例えば15分よりやや遅く、所定温度の75℃にまで昇温するような底面ヒータ7および側面ヒータ8の出力で鍋5を加熱するように制御し、鍋5内の被炊飯物Sを当該75℃で、所定時間の12~15分間保持するように制御する。なお、あたため制御手段34が、所定時間が12~15分ではあたため過多であると判定した場合は、所定時間を、例えば10分などに短縮するように構成してもよい。
【0078】
このように構成しても炊飯器1で自動の冷やご飯のあたためを予め設定して行なうことができ、冷やご飯を過加熱する虞を抑制できる。
【0079】
図9は、本発明の第1の実施形態のさらなる変形例を示している。本変形例では、第1の実施形態および変形例を組み合わせて、「あたため方」キー45で選択されて設定されたあたため方法に基づいて、所定時間保持する温度である所定温度や、当該所定温度まで昇温する時間を変更する構成にしている。このように構成しても炊飯器1で自動の冷やご飯のあたためを予め設定して行なうことができ、冷やご飯を過加熱する虞を抑制できる。
【実施例0080】
図10および図11は、本発明を炊飯器に適用した第2の実施形態を示している。本実施形態では、あたため工程の初期における冷やご飯の温度に応じて、あたため工程の終了時間を変更する構成としている。
【0081】
図10は本実施形態の操作手段22および表示手段23の平面図である。同図を参照してトップ画面G1’の説明をすると、本実施形態では、完了時刻用表示体D3の代わりに残時間用表示体D3’が表示されている。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0082】
図11は、本実施形態の炊飯器1の「無菌パックご飯」のボタン表示部B9および「ふつう」のボタン表示部B12選択時のあたため工程および保温工程で、あたため工程の初期における冷やご飯の温度が0℃のときの鍋温度センサ9の検知温度tと、あたため工程の初期における冷やご飯の温度が15℃のときの鍋温度センサ9の検知温度tと、あたため工程の初期における冷やご飯の温度が35℃のときの鍋温度センサ9の検知温度tとの推移をあらわしたグラフである。
【0083】
あたため工程が開始されると、あたため制御手段34は、鍋温度センサ9による鍋5の底部の温度検知に基づき、鍋5内に入れられた冷やご飯の温度を判定する。ここであたため制御手段34は、例えば検知温度tのグラフで示されるように、当該冷やご飯の温度が10℃以上で20℃未満であると判定すると、第1の実施形態で説明したように、鍋5内の冷やご飯が、例えば略15分で所定温度の85℃にまで昇温するような底面ヒータ7および側面ヒータ8の出力で鍋5を加熱するように制御し、その後、鍋5内の冷やご飯が所定時間である10分間、所定温度である85℃に保持されるように底面ヒータ7および側面ヒータ8を通断電制御する。したがって、あたため加熱工程は85℃到達まで15分+85℃保持の所定時間10分の25分であり、この「25分」をあたための基準時間としている。そして表示制御手段35は、あたため制御手段34が冷やご飯の温度を10℃以上で20℃未満であると判定したときに、図10に示されるように残時間用表示体D3’の表示を「25分後」とするようにLCD37を制御する。そして表示制御手段35は、時間の経過に伴い、計時手段による計時に基づき残時間用表示体D3’をカウントダウン表示するようにLCD37を制御する。
【0084】
また、あたため制御手段34は、例えば検知温度tのグラフで示されるように、冷やご飯の温度が10℃未満であると判定すると、鍋5内の冷やご飯が85℃にまで昇温する時間が、例えば17分と、15分より長くなるように底面ヒータ7および側面ヒータ8を制御し、その後、鍋5内の冷やご飯が所定時間である10分間、所定温度である85℃に保持されるように底面ヒータ7および側面ヒータ8を通断電制御する。したがって、あたため加熱工程は85℃到達まで17分+85℃保持の所定時間10分の27分であり、あたための基準時間の「25分」から、あたため加熱工程の時間を延長して設定される。そして表示制御手段35は、あたため制御手段34が冷やご飯の温度を10℃未満であると判定したときに、残時間用表示体D3’の表示を、あたため加熱工程の時間である「27分後」とするようにLCD37を制御する。
【0085】
そして、あたため制御手段34は、例えば冷やご飯の温度が20℃以上で30℃未満であると判定すると、鍋5内の冷やご飯が85℃にまで昇温する時間が、例えば12分と、15分より短くなるように底面ヒータ7および側面ヒータ8を制御する。同様に、あたため制御手段34は、例えば冷やご飯の温度が30℃以上であると判定すると、鍋5内の冷やご飯が85℃にまで昇温する時間が、例えば10分と、15分よりさらに短くなるように底面ヒータ7および側面ヒータ8を制御する。その後、あたため制御手段34は、鍋5内の冷やご飯が所定時間である10分間、所定温度である85℃に保持されるように底面ヒータ7および側面ヒータ8を通断電制御する。したがって、あたため加熱工程は85℃到達まで12分または10分+85℃保持の所定時間10分の22分または20分であり、あたための基準時間の「25分」から、あたため加熱工程の時間を短縮して設定される。そして表示制御手段35は、あたため制御手段34が冷やご飯の温度を20℃以上で30℃未満であると判定したときに、残時間用表示体D3’の表示を、あたため加熱工程の時間である「22分後」とするようにLCD37を制御し、また表示制御手段35は、あたため制御手段34が冷やご飯の温度を30℃以上であると判定したときに、残時間用表示体D3’の表示を、あたため加熱工程の時間である「20分後」とするようにLCD37を制御する。
【0086】
なお、あたためる被炊飯物Sである冷やご飯の量が多ければ温度上昇は遅くなり、その一方で冷やご飯の量が少なければ温度上昇は早くなるため、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、あたため加熱工程の時間が、あたため加熱工程における鍋5の温度変化の状況に応じて変更されることで調整している。そのため表示制御手段35は、「あたため方」キー45で選択されて設定されたあたため方法に応じて設定された高温保持時間である所定時間を基準にして、残時間用表示体D3’に残時間を表示するように構成してもよい。
【0087】
例えば、冷やご飯の温度が10℃未満であるとあたため制御手段34が判定した場合に、表示制御手段35が、前述したあたため加熱工程の時間である27分より長めの「30分後」を最初に残時間用表示体D3’に表示し、計時手段からの信号に基づき5分ごとにカウントダウン表示するようにLCD37を制御してもよく、あたため制御手段34が所定温度となる85℃に達した旨の鍋温度センサ9からの温度検知信号を受け取ったときに、残時間用表示体D3’の表示を、高温保持時間としての所定時間である「10分後」と表示し、計時手段からの信号に基づき1分ごとにカウントダウン表示するようにLCD37を制御してもよい。また、このように残時間用表示体D3’を表示した場合、所定温度である85℃に達する時間にバラツキが生じるために、残時間用表示体D3’の表示が、例えば「20分後」から「10分後」にいきなり変更されるなど、不自然な表示になる虞がある。そこで、表示制御手段35が「30分後」を最初に残時間用表示体D3’に表示してからカウントダウン表示せず、あたため制御手段34が所定温度に達した旨の鍋温度センサ9からの温度検知信号を受け取ったときに、表示制御手段35が残時間用表示体D3’の表示を所定時間である「10分後」と表示して、計時手段からの信号に基づきカウントダウン表示するようにLCD37を制御してもよい。
【0088】
以上のように、本実施形態の炊飯器1では、あたためコースは、当該あたためコースとして実施するあたため工程の初期における冷やご飯の温度に応じて、あたためコースの終了までの時間としてのあたため加熱工程の時間を変更する構成としており、そのため、例えば常温で保存された包装米飯の冷やご飯をあたためるときに、例えば冬場は冷やご飯の温度が0℃~10℃と低く、夏場は冷やご飯の温度が25℃~35℃と高いことに起因する、冬場の冷やご飯のあたため不足、夏場の冷やご飯のあたため過多を抑制することができ、あたためたご飯の食味低下を抑制することができる。
【実施例0089】
図12および図13は、本発明を炊飯器に適用した第3の実施形態を示している。本実施形態では、あたため工程の所定温度が保温工程の保温温度以上である構成としている。
【0090】
包装米飯の冷やご飯を電子レンジなどであたためた場合、冷やご飯は、包装米飯の容器の中に収容され、わずかに隙間を設けた蓋に覆われてあたためられるため、加熱中に容器の中に揮発臭気成分が滞留しやすく、したがって臭気がご飯へと移動する虞がある。また電子レンジなどあたためが終了して容器の蓋を開放したときに、容器内に滞留した揮発臭気成分が容器の外に放出され、包装米飯の周囲において臭気が強くなる虞がある。また包装米飯の冷やご飯を電子レンジなどであたためた場合、冷やご飯に含まれる水分が加熱されるため、ご飯粒全体を糊化温度以上にするために米飯粒の内部が早く高温となり、また米飯粒の糊化に十分な温度と、糊化温度の保持時間とを米飯粒全体が確保するために米飯粒内部が加熱過多傾向になるため、冷やご飯から揮発性臭気がより発生しやすい環境となる。
【0091】
しかしながら本実施形態では、冷やご飯を鍋5に入れてあたためるため、あたため工程の実施時には、例えばプラスチック製である包装米飯の容器を不要とすることができる。また、あたため工程が終了して冷やご飯が保温温度に達するまでの間に、鍋5の内面の温度が冷やご飯の温度より高くなり、冷やご飯の米飯粒が過剰に高温にならない構成にすることにより、冷やご飯の米飯に含まれた臭気成分を積極的に揮発させることができ、あたため工程が終了したときには、食味官能を低下させる要因の一つである臭気の影響を減らすことができるようにしている。
【0092】
また炊飯時の鍋内の被炊飯物Sとしてのお米と水の温度は、10分で沸騰温度まで昇温することが好ましく、この場合は水温20℃である場合は、沸騰温度の100℃に10分で到達する必要があるので、80℃/10分、すなわち8℃/分の温度上昇率となる。その一方で、この炊飯時と同じ加熱量で、あたためを実施した場合、鍋5内面に接した冷やご飯が脱水して硬くなってしまう。また冷やご飯に含まれる水分の量は炊飯前の水の量と比較して少ないために熱媒体が少なく、したがって冷やご飯の内部まで熱が到達する時間は遅くなってしまい、結果的に鍋5内面の近傍に位置する周囲のご飯は脱水が進み乾燥して硬くなってしまう一方で、ご飯の内部は温度が十分に上がらず硬いままの状態になってしまい、当該あたためでご飯の食味が低下してしまう虞がある。そこで本実施形態の炊飯器1では、炊飯用の炊飯制御手段32の他に、炊飯時の被炊飯物Sの温度上昇の早さより遅い、緩慢な温度上昇で、鍋5内に入れた冷やご飯をあたためる手段としてあたため制御手段34を設け、また「あたためコース」として専用メニュー化したことにより、前述した、冷やご飯あたため時の脱水に伴う乾燥および硬さを抑制し、また冷やご飯の周囲部と内部の温度差異、すなわち温度上昇率のバラツキを抑制している。
【0093】
図12は、本実施形態の炊飯器1の「無菌パックご飯」のボタン表示部B9および「ふつう」のボタン表示部B12選択時のあたため工程および保温工程における鍋5の内面温度である鍋温度センサ9の検知温度tと、冷やご飯の内部の温度である米飯温度tsとの推移をあらわしたグラフと、炊飯器1の要部の縦断面概略図である。同図を参照して本実施形態の炊飯器1についてあたため工程および保温工程における作用を説明すると、第1の実施形態と同様に、あたため制御手段34は、鍋5内の冷やご飯が、例えば略15分で、70℃~76℃の間の温度である保温温度よりも高温の所定温度である85℃にまで昇温するような底面ヒータ7および側面ヒータ8の出力で鍋5を加熱するように制御し、鍋5内の被炊飯物Sを当該85℃で所定時間の10分間保持する高温保持を実施するように制御する。その後、あたため工程が終了して保温工程に移行すると、保温制御手段33が、鍋温度センサ9による鍋5の底部の温度検知に基づき、鍋5内の被炊飯物Sを、70℃~76℃の間の保温温度に保持するように底面ヒータ7と側面ヒータ8を通断電制御する。
【0094】
このときの被炊飯物Sとしての冷やご飯の温度tsの推移について説明すると、鍋温度センサ9の検知温度tと比較して、温度上昇は緩慢であり、また温度上昇のタイミングが遅れている。これは冷やご飯が、鍋5内面からの熱伝導と、当該鍋5内面や内蓋6により加熱された、鍋5内の被炊飯物S以外の空間からの輻射熱と、によりあたためられて昇温するので、冷やご飯の内部にまで熱が伝わるのが遅れるためである。したがって、あたため工程の終了まで、鍋5内面の温度である鍋温度センサ9の検知温度tは冷やご飯の温度tsよりも高温となり、鍋5内面からの熱伝導や空間からの輻射熱により、冷やご飯に含まれている揮発臭気成分の発生が促進されて、冷やご飯から放出されるため、食味官能を低下させる要因の一つである臭気成分を減らすことができる。
【0095】
具体的には、あたため制御手段34は、冷やご飯の温度tsの温度上昇において、あたため工程の初期に15℃である場合では、あたため工程の時間である略25分で73℃に到達するように底面ヒータ7と側面ヒータ8を通断電制御しており、したがって、冷やご飯の温度tsの温度上昇が58℃/25分、すなわち略2.3℃/分の温度上昇率になるように設定され、調整されている。冷やご飯を、保水性が高くて粘りのあるご飯にあたためるためには、当該冷やご飯に含まれた水分の蒸発を抑制し、3℃/分より遅い緩慢な温度上昇率にして急速な加熱を避けた加熱パターンが好ましい。その理由としては、冷やご飯には、同量の炊飯前の被炊飯物Sとしての米および水と比較して、熱媒体となる水分が少なく、冷やご飯の内部まで熱が伝達されにくいからであり、本実施形態では、鍋5内面からの熱伝導や空間からの輻射熱により、加熱量を少なくして時間をかけてあたためることで、冷やご飯の水分の蒸発を抑制しながら、冷や飯全体の内部まで熱を伝えてあたためている。
【0096】
図13は、本実施形態の変形例を示す炊飯器1の「無菌パックご飯」のボタン表示部B9および「ふつう」のボタン表示部B12選択時のあたため工程および保温工程における鍋5の内面温度である鍋温度センサ9の検知温度tと、冷やご飯の内部の温度である米飯温度tsとの推移をあらわしたグラフと、炊飯器1の要部の縦断面概略図である。本変形例では、あたため制御手段34は、鍋温度センサ9の検知温度に基づき、鍋5内の冷やご飯の温度を、例えば略15分で95℃まで昇温させ、その後95℃で略3分間保持するように底面ヒータ7および側面ヒータ8を制御し、その後で、鍋5内の冷やご飯の温度を略85℃に降温させて、略7分間保持するように底面ヒータ7および側面ヒータ8を制御している。このように構成することにより、鍋5内の冷やご飯をより早く昇温させると共に、消臭効果をより促進させることができる。
【0097】
また本変形例では、あたため制御手段34は、鍋温度センサ9の検知温度に基づき、鍋5内の冷やご飯の温度を、例えば略15分で70℃~76℃の間の温度である保温温度まで昇温させ、その後、保温温度で所定時間より長く保持するように底面ヒータ7および側面ヒータ8を制御している。このように構成することにより、あたため工程の時間が長くなる一方で、鍋5内の冷やご飯に含まれている揮発臭気成分の発生を促進しつつ、鍋5内面に接した冷やご飯の脱水や乾燥を抑制することができる。
【0098】
以上のように、本実施形態の炊飯器1では、炊飯コースや冷やご飯あたためコースの実施が終了した後、炊飯したご飯またはあたためたご飯を70℃~76℃の間の温度である所定の保温温度に維持する保温工程に移行し、あたため工程の所定温度の温度である高温保持温度が保温温度以上である構成としている。そのため、あたため工程中に冷やご飯に含まれる揮発性臭気成分の放出を促進することができ、あたため工程終了後のご飯の食味低下を抑制することができる。
【実施例0099】
図14は、本発明を炊飯器に適用した第4の実施形態を示している。包装米飯を電子レンジであたためた場合、包装米飯の容器や蓋はマイクロ波加熱による温度上昇がないので、これらの容器や蓋の温度が容器内部の冷やご飯の温度より低くなると、当該容器や蓋の内面に冷やご飯から蒸発した蒸気が結露し、電子レンジであたためている最中やあたためた後で容器や蓋の内面に結露した水滴があたためられたご飯に滴下してしまい、当該ご飯が水分過多になって水っぽくなり、食味を低下させる一因になる虞があった。
【0100】
また背景技術で説明したとおり、従来の炊飯器では、包装米飯や炊飯後に温度が低下したご飯などの冷やご飯のあたためおよび保温を想定していないため、冷やご飯のあたためおよび保温用の加熱パターンを考慮されていなかった。そのため、あたためたご飯が保温温度に至るまでの間に、当該ご飯から蒸発する水分が鍋5内面や内蓋6内面に結露し、この結露した水滴がご飯に流れ落ちることや滴下する虞があり、また蓋体3を開放したときに、内蓋6内面に結露した水分が当該内面を伝ってご飯に流れ落ちる虞があった。
【0101】
そこで本実施形態では、炊飯器1で冷やご飯のあたためを行ない、あたため工程や保温工程の実施時に、底面ヒータ7や側面ヒータ8に加えて、蓋ヒータ15でも加熱する構成としている。
【0102】
図14は、本実施形態の炊飯器1の「無菌パックご飯」のボタン表示部B9および「ふつう」のボタン表示部B12選択時のあたため工程および保温工程における、鍋5の内面温度である鍋温度センサ9の検知温度tと、鍋5の側面の温度tsideと、内蓋6の内面温度である蓋温度センサ14の検知温度tと、冷やご飯の内部の温度である米飯温度tsと、の推移をあらわしたグラフと、炊飯器1の要部の縦断面概略図である。同図を参照して本実施形態の炊飯器1についてあたため工程および保温工程における作用を説明すると、あたため制御手段34は、鍋温度センサ9の検知温度に基づき、鍋5内の冷やご飯の温度を、例えば略15分で95℃まで昇温させ、その後95℃で略3分間保持するように底面ヒータ7および側面ヒータ8を制御し、その後で、鍋5内の冷やご飯の温度が略85℃に降温させて、略7分間保持するように底面ヒータ7および側面ヒータ8を制御している。
【0103】
あたため制御手段34は、蓋温度センサ14の検知温度tに基づき、米飯温度tsの温度上昇に応じて内蓋6の温度が上昇するように蓋ヒータ15を制御しており、蓋温度センサ14の検知温度tが、米飯温度tsと相関を持つように内蓋6が加熱される。また、あたため制御手段34は、少なくとも、あたため加熱工程で最も冷やご飯から水分の蒸発が多くなる期間は、米飯温度tsより蓋温度センサ14の検知温度tが高くなるように蓋ヒータ15を制御しており、冷やご飯から蒸発した水分が内蓋6の内面に結露することを抑制している。
【0104】
また、あたため制御手段34は、鍋温度センサ9の検知温度tに基づき、米飯温度tsの温度上昇に応じて鍋5の側面の温度が上昇するように側面ヒータ8を制御しており、鍋5の側面の温度tsideが、米飯温度tsと相関を持つように内蓋6が加熱される。また、あたため制御手段34は、少なくとも、あたため加熱工程で最も冷やご飯から水分の蒸発が多くなる期間は、米飯温度tsより鍋5の側面の温度tsideが高くなるように側面ヒータ8を制御しており、冷やご飯から蒸発した水分が鍋5の側面に結露することを抑制している。なお底面ヒータ7による鍋5底面への加熱による熱伝導により、鍋5側面の温度上昇が低くなり鍋5側面に多量に結露する場合に、側面ヒータ8により鍋5側面を加熱して、鍋5内面への結露を抑制するように構成してもよい。
【0105】
ここで鍋5の底面、側面、および内蓋6に対する加熱バランスは重要であり、例えば鍋5内で低温部がある場合は、当該低温部に冷やご飯から蒸発した水分が結露してしまい、この結露した水分が水滴となって鍋5の鍋肌を伝って冷やご飯にへ流れ落ちてしまい、または内蓋6から冷やご飯に滴下してしまうため、あたためたご飯が水分過多のご飯になってしまう虞がある。したがって本実施形態では、前述したようにあたため制御手段34が、内蓋6と鍋5側面を温度管理する構成としており、鍋5内面や内蓋6内面への結露を抑制して、冷やご飯への水滴の流れ落ちや滴下がないようにしている。そのため、炊飯器1で冷やご飯をあたため加熱したときに、この冷やご飯から蒸発する水分が鍋5内面や内蓋6内面に結露することを抑制することにより、結露した水滴が冷やご飯に流れ落ちることや滴下することを防止して、ご飯が水分過多で水っぽいという食味の低下を抑制することができる。
【0106】
そして、あたため加熱工程が終了してあたため工程が完了し、保温制御手段33による保温工程に移行すると、保温制御手段33が、鍋温度センサ9による鍋5の底部の温度検知に基づき、鍋5内の被炊飯物Sを、73℃である所定の保温温度より少々高い温度である76℃に保持するように底面ヒータ7と側面ヒータ8を通断電制御して鍋5の底部と側面部をそれぞれ加熱する。このように、所定の保温温度より少々高い温度に保持することにより、あたため工程完了直後のご飯の温度を炊き立てに近い高温にしている。保温工程の温度は、高温にしてメイラード反応で早期に褐変することを抑制するために、85℃を超えない温度にすることが好ましい。
【0107】
また保温制御手段33は、蓋温度センサ14の検知温度tに基づき、米飯温度tが保持する温度である76℃、または保温温度である73℃に降下するまで、内蓋6内面への結露を防止する程度、かつ鍋5内のご飯の米飯表面が乾燥するような加熱過多が生じない程度に蓋ヒータ15を通断電制御する。なお保温制御手段33は、前述のあたため加熱工程と同様に、蓋温度センサ14の検知温度tに基づき、米飯温度tsより蓋温度センサ14の検知温度tがわずかに高くなるように蓋ヒータ15を制御してもよい。
【0108】
このように、あたため工程や保温工程の実施時に、底面ヒータ7や側面ヒータ8に加えて、蓋ヒータ15でも加熱するため、あたため工程や保温工程で冷やご飯から蒸発する水分が鍋5内面や内蓋6内面に結露することを抑制することにより、結露した水滴が冷やご飯に流れ落ちることや滴下することを防止して、ご飯が水分過多で水っぽいという食味の低下を抑制することができる。したがって、あたため後の保温でしばらくの間はご飯の食味低下を抑制することができ、一回の食事で食べきれなかった鍋5内のご飯を、再度冷や飯にする手間や、すぐに食べない場合に冷凍保存するなどの手間を解消することができる。
【実施例0109】
図15は、本発明を炊飯器に適用した第5の実施形態を示している。本実施形態では、LCD37の画面を、冷やご飯調理メニューを選択可能な冷やご飯調理メニュー選択画面G2に切替え可能な「画面切替」キー51を備えた構成としている。
【0110】
図15(A)(B)は本実施形態の操作手段22および表示手段23の平面図である。先ず図15(A)を参照して操作手段22の説明をすると、本実施形態では、「画面切替」キー51をさらに有して構成されている。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0111】
「画面切替」キー51は、LCD37に表示された画面を切替える際に操作されるもので、「画面切替」キー51が押圧されると、表示制御手段35が、現在LCD37に表示されている画面を、トップ画面G1から図15(B)に示される冷やご飯調理メニュー選択画面G2に切替えるようにLCD37を制御し、または冷やご飯調理メニュー選択画面G2からトップ画面G1に切替えるようにLCD37を制御する。
【0112】
図15(B)を参照して、LCD37に表示された冷やご飯調理メニュー選択画面G2の説明をすると、その上部には、「冷ご飯調理メニュー」なるテキスト表示体D21が白抜き文字で、背景が白黒反転して表示されており、この「冷ご飯調理メニュー」のテキスト表示体D21の下方には、8つのボタン表示部B22~B29を上下左右に並べて表示した冷やご飯調理メニュー表示領域A6が形成されている。
【0113】
「リゾット」のボタン表示部B22は、「リゾット」なるテキスト表示体D22を含む。また「パエリア」のボタン表示部B23は、「パエリア」なるテキスト表示体D23を含む。そして「焼きご飯」のボタン表示部B24は、「焼きご飯」なるテキスト表示体D24を含む。また「クッパ」のボタン表示部B25は、「クッパ」なるテキスト表示体D25を含む。そして「おかゆ」のボタン表示部B26は、「おかゆ」なるテキスト表示体D26を含む。また「雑炊」のボタン表示部B27は、「雑炊」なるテキスト表示体D27を含む。そして「スープご飯」のボタン表示部B28は、「スープご飯」なるテキスト表示体D28を含む。また「お吸いものご飯」のボタン表示部B29は、「お吸いものご飯」なるテキスト表示体D29を含む。なお、これらは一例であり、本発明はこれらのメニューに限定されることなく他のメニューを採用してもよい。また例えば乾燥米飯としてのアルファ―化米や、FD米としての凍結乾燥米、冷凍米飯を用いる場合の調理メニューでは、ご飯の特性に応じたレシピや加熱パターンに変更できるように構成してもよい。またトップ画面G1は、炊飯コースに関する調理メニューのみを選択可能にし、冷やご飯調理メニュー選択画面G2は、冷やご飯調理メニューなどのあたためコースに関する調理メニューのみを選択可能にするように構成してもよい。
【0114】
本実施形態の炊飯器1では、それぞれの冷ご飯調理メニューに応じたあたためコースが記憶手段48に記憶されており、その記憶された冷ご飯調理メニューが冷やご飯調理メニュー選択画面G2に選択可能に表示され、これらの冷ご飯調理メニューを選択することで、あたためコースの選択および設定を行なっている。そして選択または設定された冷ご飯調理メニューのあたためコースが記憶手段48に記憶され、あたため制御手段34は、これらの設定がされたあたためコースの調理コースごとに底面ヒータ7と、側面ヒータ8と、蓋ヒータ15との加熱制御や、圧力調整弁16と、減圧手段19との駆動制御、すなわちあたため制御を行なっている。
【0115】
ここで図15(B)の冷やご飯調理メニュー選択画面G2では、「リゾット」のボタン表示部B22にカーソルが合わせられているため、「リゾット」のボタン表示部B22の表示が白黒反転して「リゾット」のテキスト表示体D22が白抜き表示されており、他のテキスト表示体D23~D29がグレーアウト表示されている。
【0116】
そして、冷やご飯調理メニュー表示領域A6のいずれかのボタン表示部、例えば図15(B)の場合は「リゾット」のボタン表示部B22が選択された状態で「パックご飯あたため」キー46を操作すると、制御手段21はLCD37に表示されたあたためコースの設定、例えば「リゾット」を今回設定した調理コースとして記憶手段31に記憶し、その設定した調理コースに対応する加熱パターンの情報をあたため制御手段34に送出する。これを受けて、設定した調理コースの加熱パターンに沿って、あたため制御手段34が、鍋5内の被炊飯物Sに対するあたため動作を行なうあたため工程を実施する。
【0117】
以上のように、本実施形態の炊飯器1では、炊飯コースに関する画面としてのトップ画面G1と、あたためコースに関する画面としてのトップ画面G1および冷やご飯調理メニュー選択画面G2とを表示可能な表示手段を有する構成としている。そのため、市販の包装米飯の冷やご飯や、予め炊飯して温度の低下した冷やご飯を使用してあたため加熱の加熱調理を実施するので、冷やご飯のあたためだけでなく、主に米を使用した多種多様な加熱調理を実施することができる。また前述のように、炊飯器1に予め設定して鍋5内に被炊飯物Sを入れて自動で加熱調理を実施するので、監視する必要が無く、また出来栄えにバラツキのない調理を行なうことができる。
【実施例0118】
図16および図17は、本発明を炊飯器に適用した第6の実施形態を示している。本実施形態では、炊飯器1が、あたためコースに関する画面を表示可能な情報端末と通信可能な通信手段52をさらに備える構成としている。
【0119】
図16は、本実施形態の炊飯器1の電気的な構成を示している。同図を参照して炊飯器1の説明をすると、本実施形態の炊飯器1では、通信手段52をさらに備えて構成されている。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0120】
通信手段52は、図示しない無線LANルータに無線で接続されて、当該無線LANルータを介してインターネット網Nに接続するものであり、インターネット網N経由で後述する情報端末61やクラウド上のサーバ62と通信可能にするものである。したがって、通信手段52はネットワーク3へのアクセス手段としての機能を有している。
【0121】
図17は、本実施形態における炊飯器システム100の全体構成を概略的に示したものである。同図において、Nはネットワークとしてのインターネット網であり、図示しない無線LANルータを介して通信手段52がアクセス可能に構成される。また61は表示及び通信の機能を有するスマートフォンやタブレット端末などの情報端末であり、図示しないアクセスポイントを経由して、通信手段52や、ネットワークNに接続するクラウド上のサーバ62との間で、相互に各種情報やデータのやり取りを行なう構成となっている。
【0122】
サーバ62には、炊飯器1について、その炊飯器1で調理が可能な全てのメニューのレシピ情報が記憶保持される。サーバ62に記憶するメニューのレシピ情報は、ユーザが炊飯器1を利用してそのメニューの料理を作り上げるのに必要なあらゆる情報を含む。
【0123】
本実施形態では、情報端末61を使用して、インターネットN上の専用アプリをサーバ62からインストールすることにより、情報端末61の画面に、例えば図15(B)のような冷やご飯調理メニュー選択画面G2を表示できるように構成している。そして情報端末61の画面で、冷やご飯調理メニュー選択画面G2の冷やご飯調理メニュー表示領域A6に表示されたボタン表示体D22~D29からいずれかの冷やご飯調理メニューが選択されると、情報端末61で選択された冷やご飯調理メニューに応じて、サーバ62に格納された加熱パターンをインターネット経由で炊飯器1の通信手段52に送信されるように構成される。なお、例えばBluetoothなどの通信方式を利用して、情報端末61と通信手段52とが直接通信できるように構成してもよい。
【0124】
以上のように、本実施形態の炊飯器1では、あたためコースに関する画面としての冷やご飯調理メニュー選択画面G2を表示可能な情報端末61と通信可能な通信手段52をさらに備える構成としており、炊飯器1のLCD37を主に炊飯用にし、情報端末61の画面を主に冷やご飯調理用にすることができ、情報端末61の画面をLCD37と使い分けることにより、炊飯器1の表示手段23が煩雑化することを抑制することができる。また、冷やご飯の調理メニューを実施したい場合にのみ、情報端末61の画面で冷やご飯調理メニュー選択画面G2の閲覧できるので、表示手段23の情報を簡素化できる。
【0125】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、第1~第6の実施形態で特徴となる構成を組み合わせてもよい。また第1~第6の実施形態で、包装米飯の冷やご飯の他にも、予め炊飯して温度の低下した冷やご飯を使用してあたため工程を実施するように構成してもよい。そして実施形態中で例示した数値などはあくまでも一例にすぎず、炊飯器1の仕様などに応じて適宜変更してかまわない。
【符号の説明】
【0126】
1 炊飯器
22 操作手段(タイマ予約手段)
41 「予約」キー(タイマ予約手段)
52 通信手段
61 情報端末
D3 完了時刻用表示体(タイマ予約手段)
G1 トップ画面(炊飯コースに関する画面、冷やご飯あたためコースに関する画面)
G2 冷やご飯調理メニュー選択画面(冷やご飯あたためコースに関する画面)
図1
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