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特開2024-177451測定装置、測定方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177451
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G01C21/30
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174822
(22)【出願日】2024-10-04
(62)【分割の表示】P 2023087519の分割
【原出願日】2018-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2017100137
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 多史
(72)【発明者】
【氏名】岩井 智昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
(57)【要約】
【課題】状況に応じて白線を検出する範囲を適切に調整し、自車位置推定の精度低下を防止する。
【解決手段】測定装置は、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得し、自己位置と、破線型の路面線の位置情報とに基づいて、所定範囲を決定する。そして、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出し、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得部と、
自己位置と、破線型の路面線の位置情報とに基づいて、所定範囲を決定する決定部と、
前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出部と、
抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理部と、
を備えることを特徴とする測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地物の位置に基づいて移動体の位置を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転車両では、LiDAR(Light Detection and Ranging)などのセンサで計測した地物位置と、自動運転用の地図情報の地物位置をマッチングして高精度に自車位置を推定する必要がある。ここで利用する地物としては、白線、標識、看板などが挙げられる。特許文献1は、LiDARを用いて検出した地物位置と、地図情報の地物位置とを用いて自車位置を推定する手法の一例を記載している。また、特許文献2は、道路面に電磁波を送信し、その反射率に基づいて白線を検出する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-72422号公報
【特許文献2】特開2015-222223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
白線を用いて自車位置を推定する場合、白線の種類(連続線、破線など)や塗装の劣化などによって、LiDARにより計測できるデータ数に差が生じる。このため、白線を用いて自車位置推定を行う際、白線の検出に使用するLiDARのデータ数が少ない場合と多い場合とでは白線の検出精度が変わり、その結果自車位置推定の精度が変わってくる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のものが例として挙げられる。本発明は、状況に応じて白線を検出する範囲を適切に調整し、自車位置推定の精度低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、測定装置であって、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得部と、自己位置と、破線型の路面線の位置情報とに基づいて、所定範囲を決定する決定部と、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出部と、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項5に記載の発明は、測定装置であって、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得部と、自己位置と、前記路面線の位置情報と、前記路面線の曲率とに基づいて、所定範囲を決定する決定部と、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出部と、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項8に記載の発明は、測定装置により実行される測定方法であって、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得工程と、自己位置と、破線型の路面線の位置情報とに基づいて、所定範囲を決定する決定工程と、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出工程と、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項9に記載の発明は、測定装置により実行される測定方法であって、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得工程と、自己位置と、前記路面線の位置情報と、前記路面線の曲率とに基づいて、所定範囲を決定する決定工程と、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出工程と、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項10に記載の発明は、コンピュータを備える測定装置により実行されるプログラムであって、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得部、自己位置と、破線型の路面線の位置情報とに基づいて、所定範囲を決定する決定部、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出部、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理部、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【0011】
請求項11に記載の発明は、コンピュータを備える測定装置により実行されるプログラムであって、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得部、自己位置と、前記路面線の位置情報と、前記路面線の曲率とに基づいて、所定範囲を決定する決定部、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出部、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理部、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】白線抽出方法を説明する図である。
図2】白線予測範囲の決定方法を説明する図である。
図3】白線中心位置の算出方法を説明する図である。
図4】破線型白線の白線予測範囲の決定方法を説明する図である。
図5】実線部の端の探索方法を説明する図である。
図6】カーブしている白線の白線予測範囲の決定方法を説明する図である。
図7】測定装置の構成を示すブロック図である。
図8】白線を利用した自車位置推定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の1つの好適な実施形態では、測定装置は、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得部と、自己位置と、破線型の路面線の位置情報とに基づいて、所定範囲を決定する決定部と、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出部と、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理部と、を備える。
【0014】
上記の測定装置は、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得し、自己位置と、破線型の路面線の位置情報とに基づいて、所定範囲を決定する。そして、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出し、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う。この測定装置では、破線型の路面線について適切に所定範囲を決定することができる。なお、本明細書においての「路面線」とは、測定対象である白線や黄色線などの区画線、および停止線や横断歩道などの線状の道路標示等である。
【0015】
上記の測定装置の一態様では、前記決定部は、前記自己位置と、前記破線型の路面線の実線部の位置情報に基づいて、前記所定範囲を決定する。この態様では、破線型の路面線の実線部の位置情報を利用し、所定範囲を適切に決定することができる。
【0016】
上記の測定装置の他の一態様では、前記決定部は、前記実線部の端部を検出し、当該端部を基準として前記所定範囲を決定する。この態様では、実線部の端部に基づいて所定範囲を決定する。好適には、前記決定部は、前記実線部を構成する複数点の位置情報の差分に基づいて前記端部を検出する。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態では、測定装置は、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得部と、自己位置と、前記路面線の位置情報と、前記路面線の曲率とに基づいて、所定範囲を決定する決定部と、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出部と、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理部と、を備える。
【0018】
上記の測定装置は、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得し、自己位置と、前記路面線の位置情報と、前記路面線の曲率とに基づいて、所定範囲を決定する。そして、出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出し、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う。この測定装置では、路面線がカーブしている場合でも、その曲率を考慮して適切に所定範囲を決定することができる。
【0019】
上記の測定装置の他の一態様では、前記測定装置は、移動体に搭載され、前記抽出部は、前記移動体の位置を基準として右前方、右後方、左前方、左後方の4か所に前記所定範囲を設定する。この態様では、移動体の周囲の4か所においてデータが抽出され、それに基づいて所定の処理が行われる。好適には、前記処理部は、前記路面線の位置を検出し、当該路面線の位置に基づいて前記測定装置の位置を推定する処理を行う。
【0020】
本発明の他の好適な実施形態では、測定装置により実行される測定方法は、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得工程と、自己位置と、破線型の路面線の位置情報とに基づいて、所定範囲を決定する決定工程と、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出工程と、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理工程と、を備える。この測定方法によれば、破線型の路面線について適切に所定範囲を決定することができる。
【0021】
本発明の他の好適な実施形態では、測定装置により実行される測定方法は、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得工程と、自己位置と、前記路面線の位置情報と、前記路面線の曲率とに基づいて、所定範囲を決定する決定工程と、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出工程と、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理工程と、を備える。この測定方法によれば、路面線がカーブしている場合でも、その曲率を考慮して適切に所定範囲を決定することができる。
【0022】
本発明の他の好適な実施形態では、コンピュータを備える測定装置により実行されるプログラムは、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得部、自己位置と、破線型の路面線の位置情報とに基づいて、所定範囲を決定する決定部、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出部、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理部、として前記コンピュータを機能させる。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記の測定装置を実現することができる。
【0023】
本発明の他の好適な実施形態では、コンピュータを備える測定装置により実行されるプログラムは、周囲の路面線を検出するためのセンサ部からの出力データを取得する取得部、自己位置と、前記路面線の位置情報と、前記路面線の曲率とに基づいて、所定範囲を決定する決定部、前記出力データのうち、前記所定範囲の検出結果に相当するデータを抽出する抽出部、抽出されたデータに基づいて所定の処理を行う処理部、として前記コンピュータを機能させる。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記の測定装置を実現することができる。このプログラムは、記憶媒体に記憶して取り扱うことができる。
【実施例0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0025】
[白線抽出方法]
図1は、白線抽出方法を説明する図である。白線抽出とは、道路面にペイントされた白線を検出し、その所定位置、例えば中心位置を算出することをいう。
【0026】
(白線予測位置の算出)
図示のように、地図座標系(X,Y)に車両5が存在し、車両5の位置を基準として車両座標系(X,Y)が規定される。具体的に、車両5の進行方向を車両座標系のX軸とし、それに垂直な方向を車両座標系のY軸とする。
【0027】
車両5の左右の側方には車線境界線である白線が存在する。白線の地図座標系における位置、即ち、白線地図位置は、サーバなどにより管理される高度化地図に含まれており、サーバなどから取得される。本実施例では、白線のデータは座標点列として高度化地図内に記憶されているものとする。また、車両5に搭載されたLiDARはスキャンライン2に沿ってスキャンデータを計測する。なお、スキャンライン2は、LiDARによるスキャンの軌跡を示す。
【0028】
図1では、車両5の左側の白線WL1を構成する点の座標、即ち白線地図位置WLMP1は(mxm1,mym1)であり、車両5の右側の白線WL2を構成する点の座標、即ち白線地図位置WLMP2は(mxm2,mym2)であるとする。また、地図座標系における予測自車位置PVPは(x’,y’)で与えられ、地図座標系における予測自車方位角はΨ’で与えられる。
【0029】
ここで、白線の予測位置を示す白線予測位置WLPP(l’x,l’y)は、白線地図位置WLMP(mx,my)と、予測自車位置PVP(x’,y’)と、予測自車方位角Ψ’とを用いて、以下の式(1)により与えられる。
【0030】
【数1】
よって、式(1)により、白線WL1について白線予測位置WLPP1(l’xv1,l’yv1)が得られ、白線WL2について白線予測位置WLPP2(l’xv2,l’yv2)が得られる。こうして、白線WL1、WL2のそれぞれについて、白線WL1、WL2に対応する複数の白線予測位置WLPP1、WLPP2が得られる。
【0031】
(白線予測範囲の決定)
次に、白線予測位置WLPPに基づいて、白線予測範囲WLPRが決定される。白線予測範囲WLPRは、予測自車位置PVPを基準として、白線が存在すると考えられる範囲を示す。白線予測範囲WLPRは、最大で車両5の右前方、右後方、左前方及び左後方の4か所に設定される。
【0032】
図2は、白線予測範囲WLPRの決定方法を示す。図2(A)において、車両5の前方の任意の位置(距離α前方の位置)に前方基準点(α,0)を設定する。そして、前方基準点(α,0)と、白線予測位置WLPPとに基づいて、前方基準点(α,0)から最も近い白線予測位置WLPPを探索する。具体的には、白線WL1については、前方基準点(α,0)と、白線WL1を構成する複数の白線予測位置WLPP1(l’xv1,l’yv1)とに基づいて、以下の式(2)により距離D1を算出し、距離D1が最小値となる白線予測位置WLPP1を予測範囲基準点Pref1とする。
【0033】
【数2】
【0034】
同様に、白線WL2については、前方基準点(α,0)と、白線WL2を構成する複数の白線予測位置WLPP2(l’xv2,l’yv2)とに基づいて、以下の式(3)により距離D2を算出し、距離D2が最小値となる白線予測位置WLPP2を予測範囲基準点Pref2とする。
【0035】
【数3】
【0036】
そして、図2(B)に示すように、予測範囲基準点Prefを基準とした任意の範囲、例えば予測範囲基準点PrefからX軸方向に±ΔX、Y軸方向に±ΔYの範囲を白線予測範囲WLPRと設定する。こうして、図1に示すように、車両5の前方の左右位置に白線予測範囲WLPR1とWLPR2が設定される。同様に、車両5の後方に後方基準点を設定して予測範囲基準点Prefを設定することにより、車両5の後方の左右位置に白線予測範囲WLPR3とWLPR4が設定される。こうして、車両5に対して4つの白線予測範囲WLPR1~4が設定される。
【0037】
(白線中心位置の算出)
次に、白線予測位置WLPPを用いて白線中心位置WLCPを算出する。図3は白線中心位置WLCPの算出方法を示す。図3(A)は、白線WL1が実線である場合を示す。白線中心位置WLCP1は、白線を構成するスキャンデータの位置座標の平均値により算出される。いま、図3(A)に示すように、白線予測範囲WLPR1が設定されると、LiDARから出力されるスキャンデータのうち、白線予測範囲WLPR1内に存在する白線スキャンデータWLSD1(wx’,wy’)が抽出される。白線上は通常の道路上と比較して反射率が高いので、白線上で得られたスキャンデータは、反射強度の高いデータとなる。LiDARから出力されたスキャンデータのうち、白線予測範囲WLPR1内に存在し、路面上、かつ、反射強度が所定以上値であるスキャンデータが白線スキャンデータWLSDとして抽出される。そして、抽出された白線スキャンデータWLSDの数を「n」とすると、以下の式(4)により、白線中心位置WLCP1(sxv1,syv1)の座標が得られる。
【0038】
【数4】
また、図3(B)に示すように、白線が破線である場合も同様に白線中心位置WLCP2が算出される。
【0039】
(特殊な場合の白線予測範囲の決定)
次に、特殊な場合の白線予測範囲WLPRの決定方法について説明する。
(1)白線が破線の場合
前述のように、白線予測範囲WLPRは、白線予測位置WLPPに基づいて決定されるが、白線が破線である場合(以下、この種の白線を「破線型白線」とも呼ぶ。)、白線WLが白線予測範囲WLPRに含まれない状況が生じうる。
【0040】
図4(A)は、破線型白線の場合の白線予測範囲WLPRの例を示す。破線型白線WLは、実線部RPとスペース部SPとが交互に配置されてなる。ここで、実線部RPは白線がペイントされている部分であり、スペース部SPは実線部RPの間にあって白線がペイントされていない部分である。いま、図4(A)に示すように前方基準点が規定され、白線予測範囲WLPRが決定された場合、白線予測範囲WLPRは破線型白線のスペース部SPに対応する位置となり、白線予測範囲WLPR内に破線型白線の実線部RPはほとんど含まれていない状態となる。このような場合、白線予測範囲WLPRから十分な数の白線スキャンデータWLSDを得ることができないので、白線中心位置WLCPを精度良く算出することができなくなる。
【0041】
このような場合の対策として、本実施例では、高度化地図に記憶される白線地図情報に破線に関する情報を持たせておき、破線型白線の実線部の白線位置情報に基づいて白線予測範囲WLPRを決定する。具体的には、高度化地図に記憶されている破線型白線の白線地図情報に含まれる白線地図位置WLMPを、実線部RPを構成する複数の白線地図位置WLMPのみとする。即ち、破線型白線の白線地図情報には、実線部RPに対応する複数の白線地図位置WLMPが含まれるが、スペース部SPに対応する白線地図位置WLMPは含まれないものとする。こうすると、実線部RPに対応する複数の白線地図位置WLMPを用いて前述の白線予測範囲の決定方法を行うことにより、破線型白線の実線部RPを含むように白線予測範囲WLPRを決定することができる。
【0042】
図4(B)は、この方法により白線予測位置WLPRを決定する方法を示す。まず、破線型白線の白線地図情報から、実線部RPに対応する白線地図位置WLMPを取得する。次に、実線部RPに対応する白線地図位置WLMPを用いて、前述の式(1)により、実線部RPに対応する白線予測位置WLPPを算出する。そして、図2を参照して説明した方法により、実線部RPに対応する白線予測位置WLMPを用いて、白線予測範囲WLPRを決定する。具体的には、前方基準点から最も近い白線予測位置WLPPを予測範囲基準点Prefとし、予測範囲基準点Prefを基準として所定範囲を白線予測範囲WLPRに決定する。
【0043】
この方法では、破線型白線のスペース部SPに対応する白線地図位置を用いず、実線部RPに対応する白線地図位置WLMPのみを用いて白線予測範囲WLPRを決定するので、実線部RPを正しく含むように白線予測範囲WLPRを決定することができる。
【0044】
但し、この方法では、白線予測範囲WLPRを決定する際に得られる予測範囲基準点Prefは、破線型白線の実線部RPの端部、即ち上端か下端のいずれかとなる。そこで、得られた予測範囲基準点Prefが実線部RPの上端であるか下端であるかを判定し、その結果に応じて白線予測範囲WLPRを決定する必要がある。
【0045】
図5は、予測範囲基準点Prefが実線部RPの上端であるか下端であるかを判定する方法を示す。高度化地図に記憶される白線地図位置WLMPには、識別情報としてのIDが付与される。また、白線地図位置WLMPに基づいて算出された白線予測位置WLPPには、基になった白線地図位置WLMPと同一のIDが付与されるものとする。図5(A)の例では、図中の下から上に向かって、増加するIDが付与されている。
【0046】
ここで、図5(A)から理解されるように、ある実線部RP1の下端の白線予測位置WLPPと、その下方に隣接する実線部RP2の上端の白線予測位置WLPPとの間には、スペース部SPに相当する間隔が存在する。図5(A)の例では、ID=(i-1)の白線予測位置WLPPと、ID=(i-2)の白線予測位置WLPPとの間にはスペース部SPに相当する間隔が存在する。そこで、隣接する2つの白線予測位置WLPPのX軸方向における間隔ΔXを算出する。この場合、間隔の算出方法としては、上側(X軸の正側)の白線予測位置(ID=pとする)から、下側(X軸の負側)の白線予測位置(ID=qとする)を減算し、間隔Δ(p、q)を算出するものとする。そして、その間隔Δ(p、q)の絶対値|ΔX(p,q)|がスペース部SPに相当する所定の閾値ΔTHより大きい場合には、その2つの白線予測位置WLPPの間にスペース部SPが存在し、その2つの白線予測位置WLPPは異なる実線部RPの下端と上端であると判定する。
【0047】
具体的には、図5(A)の例において、ID=iの白線予測位置WLPPとID=(i-1)の白線予測位置WLPPとのX軸方向における間隔ΔX(i,i-1)は下記の式(5)により得られる。
【0048】
【数5】
この間隔の絶対値|ΔX(i,i-1)|をスペース部SPの長さに相当する所定の閾値ΔTHと比較する。図5(A)からわかるように、|ΔX(i,i-1)|は閾値ΔTHより長くないため、ID=iの白線予測位置WLPPとID=(i-1)の白線予測位置WLPPとの間にはスペース部SPは存在しないことがわかる。
【0049】
同様に、ID=(i-1)の白線予測位置WLPPとID=(i-2)の白線予測位置WLPPとのX軸方向における間隔ΔX(iー1,i-2)は下記の式(6)により得られる。
【0050】
【数6】
この間隔の絶対値|ΔX(iー1,i-2)|を所定の閾値ΔTHと比較する。図5(A)からわかるように、|ΔX(iー1,i-2)|は閾値ΔTHより長いため、ID=(iー1)の白線予測位置WLPPとID=(i-2)の白線予測位置WLPPとの間にスペース部SPが存在することがわかる。即ち、ID=(i-1)の白線予測位置WLPPと、ID=(i-2)の白線予測位置WLPPは、ともに実線部RPの端部であることがわかる。
【0051】
ここで、いずれが上端でありいずれが下端であるかは、白線地図位置に付与されたIDの振り方によって判定される。図5(A)のように、IDが下側から上側、即ち、X軸の負側から正側に向かって増加するように付与されている場合、ΔX(p,q)の値は正となる。よって、ΔX(p,q)>0であれば、IDはX軸の負側から正側に振られていることになり、IDの大きい方の白線予測位置WLPPが1つの実線部RPの下端であり、IDの小さい方の白線予測位置WLPPがその下側の実線部RPの上端であると判定することができる。図5(A)の例では、ΔX(iー1,i-2)>0であるので、ID=(iー1)の白線予測位置WLPPは実線部RP1の下端であり、ID=(iー2)の白線予測位置WLPPは実線部RP2の上端であると判定される。
【0052】
一方、図5(A)とは逆に、IDが上側から下側、即ち、X軸の正側から負側に向かって増加するように付与されている場合、ΔX(p,q)の値は負となる。よって、ΔX(p,q)<0であれば、IDはX軸の正側から負側に振られていることになり、IDの小さい方の白線予測位置WLPPが1つの実線部の下端であり、IDの大きい方の白線地図位置WLPPがその下側の実線部RPの上端であると判定することができる。
【0053】
そして、予測範囲基準点Prefが実線部の上端であるか下端であるかに応じて、白線予測範囲WLPRを設定する。例えば、予測範囲基準点Prefが実線部RPの下端である場合、図5(B)に示すように、予測範囲基準点PrefからX軸の正方向へ所定距離ΔX、Y軸の正負の方向にそれぞれ所定距離ΔYの範囲を白線予測範囲WLPRとする。一方、予測範囲基準点Prefが実線部RPの上端である場合、図5(C)に示すように、予測範囲基準点PrefからX軸の負方向へ所定距離ΔX、Y軸の正負の方向にそれぞれ所定距離ΔYの範囲を白線予測範囲WLPRとする。
【0054】
このように、高度化地図内に記憶されている実線部RPの白線地図位置WLMPを利用することにより、白線が破線型である場合でも、実線部RPをカバーするように正しく白線予測位置WLPRを決定することができる。
【0055】
なお、上記の例では、高度化地図内の白線地図情報が破線型白線の実線部RPの白線地図位置WLMPのみを含むものとしている。その代わりに、白線地図情報は、破線型白線の実線部RPとスペース部SPの両方の白線地図位置WLMPを含むものとし、各白線地図位置WLMPに実線部RPとスペース部SPのいずれに対応するかを示すフラグなどを付与しておいても良い。その場合には、そのフラグを参照し、実線部RPに対応する白線地図位置WLMPのみを取得して上記の処理を行えばよい。
【0056】
(2)白線が破線の場合
図1などに示す白線予測範囲WLPRは、白線が直線的であると想定して設定されているが、白線がカーブしている場合には十分な白線スキャンデータを抽出できなくなる恐れがある。例えば、図6(A)に示すように、白線WLがカーブしていると、白線予測範囲WLPRがカバーする白線WLの領域が小さくなり、取得できる白線スキャンデータの数が減少してしまう。
【0057】
この対策として、高度化地図に記憶されている白線地図情報に白線のカーブの部分の曲率が記憶されている場合には、それを用いて白線予測範囲WLPRの形状を適切に決定することができる。具体的には、図6(B)に示すように、白線地図情報に含まれる白線の曲率に基づいて、白線予測範囲WLPRの形状を白線に沿って湾曲させる。こうすると、白線WLのより多くの領域が白線予測範囲WLPR内に含まれるようになり、より多くの白線スキャンデータWLSDを抽出することが可能となる。よって、白線抽出の精度が向上し、自車位置推定の精度も向上させることができる。
【0058】
具体的な手法としては、例えば、高度化地図に記憶されている白線の曲率に応じて白線のカーブに相当する近似式などを算出し、その式に基づいて白線予測範囲WLPRの外周を規定する座標を決定することができる。また、そのような演算を曲率に応じて予め行い、カーブの曲率に対する白線予測範囲WLPRのX軸方向及びY軸方向の補正量を算出してルックアップテーブル(LUT)などに記憶しておいてもよい。そして、車両5の走行時には、白線地図情報から取得した曲率に基づいてLUTを参照して白線予測範囲WLPRを補正すればよい。
【0059】
[装置構成]
図7は、本発明の測定装置を適用した自車位置推定装置の概略構成を示す。自車位置推定装置10は、車両に搭載され、無線通信によりクラウドサーバなどのサーバ7と通信可能に構成されている。サーバ7はデータベース8に接続されており、データベース8は高度化地図を記憶している。データベース8に記憶された高度化地図は、ランドマーク毎にランドマーク地図情報を記憶している。また、白線については、白線を構成する点列の座標を示す白線地図位置WLMPを含む白線地図情報を記憶している。自車位置推定装置10は、サーバ7と通信し、車両の自車位置周辺の白線に関する白線地図情報をダウンロードする。
【0060】
ここで、本実施例では、白線地図情報は、破線型白線については、前述のように実線部RPに対応する白線地図位置のみを含むか、もしくは白線地図位置が実線部RPとスペース部のいずれに対応するかを示すフラグを含む。さらに、白線地図情報は、白線のカーブ部においてはその曲率を含む。
【0061】
自車位置推定装置10は、内界センサ11と、外界センサ12と、自車位置予測部13と、通信部14と、白線地図情報取得部15と、白線位置予測部16と、スキャンデータ抽出部17と、白線中心位置算出部18と、自車位置推定部19とを備える。なお、自車位置予測部13、白線地図情報取得部15、白線位置予測部16、スキャンデータ抽出部17、白線中心位置算出部18及び自車位置推定部19は、実際には、CPUなどのコンピュータが予め用意されたプログラムを実行することにより実現される。
【0062】
内界センサ11は、GNSS(Global Navigation Satellite System)/IMU(Inertia Measurement Unit)複合航法システムとして車両の自車位置を測位するものであり、衛星測位センサ(GPS)、ジャイロセンサ、車速センサなどを含む。自車位置予測部13は、内界センサ11の出力に基づいて、GNSS/IMU複合航法により車両の自車位置を予測し、予測自車位置PVPを白線位置予測部16に供給する。
【0063】
外界センサ12は、車両の周辺の物体を検出するセンサであり、ステレオカメラ、LiDARなどを含む。外界センサ12は、計測により得られたスキャンデータSDをスキャンデータ抽出部17へ供給する。
【0064】
通信部14は、サーバ7と無線通信するための通信ユニットである。白線地図情報取得部15は、車両の周辺に存在する白線に関する白線地図情報を通信部14を介してサーバ7から受信し、白線地図情報に含まれる白線地図位置WLMPを白線位置予測部16へ供給する。
【0065】
白線位置予測部16は、白線地図位置WLMPと自車位置予測部13から取得した予測自車位置PVPとに基づいて、前述の式(1)により白線予測位置WLPPを算出する。また、白線位置予測部16は、白線予測位置WLPPに基づいて、前述の式(2)、(3)により白線予測範囲WLPRを決定する。なお、白線位置予測部16は、破線型白線については、前述のように実線部RPの白線地図位置WLMPに基づいて白線予測範囲WLPRを決定する。また、白線のカーブ部については、前述のようにカーブの曲率に基づいて白線予測範囲WLPRを決定する。そして、白線位置予測部16は、決定した白線予測範囲WLPRをスキャンデータ抽出部17へ供給する。
【0066】
スキャンデータ抽出部17は、白線位置予測部16から供給された白線予測範囲WLPRと、外界センサ12から取得したスキャンデータSDとに基づいて白線スキャンデータWLSDを抽出する。具体的には、スキャンデータ抽出部17は、スキャンデータSDのうち、白線予測範囲WLPRに含まれ、路面上、かつ、反射強度が所定値以上であるスキャンデータを、白線スキャンデータWLSDとして抽出し、白線中心位置算出部18へ供給する。
【0067】
白線中心位置算出部18は、図3を参照して説明したように、式(4)により白線スキャンデータWLSDから白線中心位置WLCPを算出する。そして、白線中心位置算出部18は、算出された白線中心位置WLCPを自車位置推定部19へ供給する。
【0068】
自車位置推定部19は、高度化地図における白線地図位置WLMPと、外界センサ12による白線の計測データである白線中心位置WLCPとに基づいて、車両の自車位置と自車方位角を推定する。なお、高度化地図のランドマーク位置情報と外界センサによるランドマークの計測位置情報をマッチングすることにより自車位置を推定する方法の一例が特開2017-72422に記載されている。
【0069】
上記の構成において、外界センサ12は本発明のセンサ部の一例であり、スキャンデータ抽出部17は本発明の取得部及び抽出部の一例であり、白線位置予測部16は本発明の決定部の一例であり、自車位置推定部19は本発明の処理部の一例である。
【0070】
[自車位置推定処理]
次に、自車位置推定装置10による自車位置推定処理について説明する。図8は、自車位置推定処理のフローチャートである。この処理は、CPUなどのコンピュータが予め用意されたプログラムを実行し、図7に示す各構成要素として機能することにより実現される。
【0071】
まず、自車位置予測部13は、内界センサ11からの出力に基づいて、予測自車位置PVPを取得する(ステップS11)。次に、白線地図情報取得部15は、通信部14を通じてサーバ7に接続し、データベース8に記憶された高度化地図から白線地図情報を取得する(ステップS12)。ここで、白線地図情報取得部15は、前述のように破線型白線については実線部RPに対応する白線地図位置WLMPを取得する。また、白線のカーブ部についての曲率も取得する。なお、ステップS11とS12はいずれが先でもよい。
【0072】
次に、白線位置予測部16は、ステップS12で得られた白線位置情報に含まれる白線地図位置WLMPと、ステップS11で得られた予測自車位置PVPに基づいて、白線予測位置WLPPを算出する(ステップS13)。また、白線位置予測部16は、白線予測位置WLPPに基づいて白線予測範囲WLPRを決定する。この際、破線型白線については前述のように実線部RPの白線地図位置WLMPを使用して白線予測範囲WLPRを決定する。また、白線のカーブ部については、その曲率に基づいて白線予測範囲WLPRを決定する。そして、白線位置予測部16は、白線予測範囲WLPRをスキャンデータ抽出部17へ供給する(ステップS14)。
【0073】
次に、スキャンデータ抽出部17は、外界センサ12としてのLiDARから得たスキャンデータSDのうち、白線予測範囲WLPR内に属し、路面上、かつ、反射強度が所定値以上であるスキャンデータを白線スキャンデータWLSDとして抽出し、白線中心位置算出部18へ供給する(ステップS15)。
【0074】
次に、白線中心位置算出部18は、白線予測範囲WLPRと白線スキャンデータWLSDに基づいて白線中心位置WLCPを算出し、自車位置推定部19へ供給する(ステップS16)。そして、自車位置推定部19は、白線中心位置WLCPを利用して自車位置推定を行い(ステップS17)、自車位置及び自車方位角を出力する(ステップS18)。こうして自車位置推定処理は終了する。
【0075】
[変形例]
上記の実施例では、車線を示す車線境界線である白線を使用しているが、本発明の適用はこれには限られず、横断歩道、停止線などの線状の道路標示を利用してもよい。また、白線の代わりに、黄色線などを利用しても良い。これら、白線、黄色線などの区画線や、道路標示などは本発明の路面線の一例である。
【符号の説明】
【0076】
5 車両
7 サーバ
8 データベース
10 自車位置推定装置
11 内界センサ
12 外界センサ
13 自車位置予測部
14 通信部
15 白線地図情報取得部
16 白線位置予測部
17 スキャンデータ抽出部
18 白線中心位置算出部
19 自車位置推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8