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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177463
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01G4/30 512
H01G4/30 201M
H01G4/30 201N
H01G4/30 201L
H01G4/30 201D
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 201K
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174945
(22)【出願日】2024-10-04
(62)【分割の表示】P 2021156685の分割
【原出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】出倉 敬史
(72)【発明者】
【氏名】池上 尚文
(57)【要約】
【課題】高周波数領域においてもESLが高くなることが抑えられて高周波数化に対応可能な積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】積層方向Tに積層される複数の誘電体セラミック層15を含むとともに、積層方向Tにおいて相対する一対の主面12としての第1の主面12a及び第2の主面12bと、幅方向Wにおいて相対する一対の側面13としての第1の側面13a及び第2の側面13bと、長さ方向Lにおいて相対する一対の端面14としての第1の端面14a及び第2の端面14bと、を有する積層体11と、一対の外部電極20と、を備え、誘電体セラミック層15は、Ca、Zr、Tiのうちの少なくともいずれか1つを含み、一対の外部電極20は、第1の側面13aに配置される第1の外部電極20aと、第2の側面13bに配置される第2の外部電極20bと、を含み、長さ方向Lは、積層方向T及び幅方向Wよりも長い寸法を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に交互に積層される誘電体セラミック層と内部電極とを含むとともに、前記積層方向Tにおいて相対する一対の主面としての第1の主面及び第2の主面と、前記積層方向Tに直交する幅方向Wにおいて相対する一対の側面としての第1の側面及び第2の側面と、前記積層方向T及び前記幅方向Wに直交する長さ方向Lにおいて相対する一対の端面としての第1の端面及び第2の端面と、を有する積層体と、
一対の外部電極と、を備え、
前記積層体は、複数の内部電極層を有し、
前記誘電体セラミック層は、Ca、Zrのうちの少なくともいずれか1つを含み、
前記誘電体セラミック層は、
(Ca1-x-y、Sr、Ba(Zr1-z-α、Ti、Hfα)O(但し、xは0以上1以下、yは0以上0.4以下、mは1.0以上1.1以下、zは0以上0.2以下、及びαは0以上0.3以下)であり、かつ、前記積層方向Tの厚みが2.0μm以上40μm以下であり、
前記一対の外部電極は、前記第1の側面に配置される第1の外部電極と、前記第2の側面に配置される第2の外部電極と、を含み、
前記第1の外部電極は、
前記第1の側面から前記第1の主面、前記第2の主面、前記第1の端面及び前記第2の端面に回り込むように配置され、
前記第2の外部電極は、
前記第2の側面から前記第1の主面、前記第2の主面、前記第1の端面及び前記第2の端面に回り込むように配置され、
前記複数の内部電極層は、
前記第1の側面に引き出されて前記第1の外部電極に接続される第1の内部電極層と、
前記第2の側面に引き出されて前記第2の外部電極に接続される第2の内部電極層と、
のみを含み、
前記第1の内部電極層及び前記第2の内部電極層は、Cuであり、
前記第1の内部電極層は、前記第1の内部電極層のみと前記積層方向Tに重畳し、
前記第2の内部電極層は、前記第2の内部電極層のみと前記積層方向Tに重畳し、
前記長さ方向Lは、前記積層方向T及び前記幅方向Wよりも長い寸法を有し、
前記積層体の前記長さ方向Lの寸法が、360μm以上1078μm以下であり、
前記積層体の前記幅方向Wの寸法が、162μm以上528μm以下である、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記第1の内部電極層と、前記第2の内部電極層とは、前記長さ方向L及び前記幅方向Wに沿った略同一の面内に並列して配置されている、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記複数の内部電極層は、複数の前記第1の内部電極層が前記積層方向Tに積層された第1の内部電極層群と、複数の前記第2の内部電極層が前記積層方向Tに積層された第2の内部電極層群と、含む、請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
積層方向に交互に積層される誘電体セラミック層と内部電極とを含むとともに、前記積層方向Tにおいて相対する一対の主面としての第1の主面及び第2の主面と、前記積層方向Tに直交する幅方向Wにおいて相対する一対の側面としての第1の側面及び第2の側面と、前記積層方向T及び前記幅方向Wに直交する長さ方向Lにおいて相対する一対の端面としての第1の端面及び第2の端面と、を有する積層体と、
一対の外部電極と、を備え、
前記積層体は、複数の内部電極層を有し、
前記誘電体セラミック層は、Ca、Zrのうちの少なくともいずれか1つを含み、
前記誘電体セラミック層は、
(Ca1-x-y、Sr、Ba(Zr1-z-α、Ti、Hfα)O(但し、xは0以上1以下、yは0以上0.4以下、mは1.0以上1.1以下、zは0以上0.2以下、及びαは0以上0.3以下)であり、かつ、前記積層方向Tの厚みが2.0μm以上40μm以下であり、
前記一対の外部電極は、前記第1の側面に配置される第1の外部電極と、前記第2の側面に配置される第2の外部電極と、を含み、
前記第1の外部電極は、
前記第1の側面から前記第1の主面、前記第2の主面、前記第1の端面及び前記第2の端面に回り込むように配置され、
前記第2の外部電極は、
前記第2の側面から前記第1の主面、前記第2の主面、前記第1の端面及び前記第2の端面に回り込むように配置され、
前記複数の内部電極層は、
前記第1の側面に引き出されて前記第1の外部電極に接続される第1の内部電極層と、
前記第2の側面に引き出されて前記第2の外部電極に接続される第2の内部電極層と、
前記積層方向において、前記積層方向に隣り合う前記第1の内部電極層と前記第1の内部電極層との間、及び前記積層方向に隣り合う前記第2の内部電極層と前記第2の内部電極層との間、に配置される第3の内部電極層と、を有し、
前記第1の内部電極層及び前記第2の内部電極層は、Cuであり、
前記長さ方向Lは、前記積層方向T及び前記幅方向Wよりも長い寸法を有し、
前記積層体の前記長さ方向Lの寸法が、360μm以上1078μm以下であり、
前記積層体の前記幅方向Wの寸法が、162μm以上528μm以下である、積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記複数の内部電極層は、前記幅方向における前記第1の内部電極層と前記第2の内部電極層との間において、当該第1の内部電極層及び第2の内部電極層と略同一の面内に並列して配置され、前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極のいずれにも接続されない少なくとも1つの第3の内部電極層を有する、請求項4に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記誘電体セラミック層の厚みは、2μm以上40μm以下である、請求項1または4に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記内部電極層の厚みは、0.5μm以上2.5μm以下である、請求項1または4に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記主面と、当該主面に前記積層方向Tで最も近い前記内部電極層との間の前記積層方向Tの距離DTは、10μm以上300μm以下である、請求項1または4に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
前記端面と、前記内部電極層との間の前記長さ方向Lの距離DLは、5μm以上100μm以下である、請求項1または4に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
前記積層体は、
前記端面と前記側面との間において前記積層方向Tに延在する4つの第1の稜線部と、
前記主面と前記側面との間において前記長さ方向Lに延在する4つの第2の稜線部と、
前記主面と前記端面との間において前記幅方向Wに延在する4つの第3の稜線部と、を有し、
前記第1の稜線部の曲率半径は10~25μmであり、
前記第2の稜線部の曲率半径は10~25μmであり、
前記第3の稜線部の曲率半径は10~25μmである、請求項1または4に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CaZrO(ジルコン酸カルシウム)を主成分とする誘電体セラミック層と、Cu等の卑金属を含む内部電極とを備えた積層セラミックコンデンサが知られている(例えば特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-153778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、信号の伝送速度が上昇するにともなって、交流回路に実装される積層セラミックコンデンサにも例えば数百MHz~数GHz程度といった高周波対応が求められてきている。しかしながら従来の積層セラミックコンデンサでは、高周波数領域における信号伝送を行うとESL(等価直列インダクタンス)が高くなるという特性があった。
【0005】
そこで本発明は、高周波数領域においてもESLが高くなることが抑えられて高周波数化に対応可能な積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、積層方向Tに積層される複数の誘電体セラミック層を含むとともに、前記積層方向Tにおいて相対する一対の主面としての第1の主面及び第2の主面と、前記積層方向Tに直交する幅方向Wにおいて相対する一対の側面としての第1の側面及び第2の側面と、前記積層方向T及び前記幅方向Wに直交する長さ方向Lにおいて相対する一対の端面としての第1の端面及び第2の端面と、を有する略直方体形状の積層体と、一対の外部電極と、を備え、前記誘電体セラミック層は、Ca、Zr、Tiのうちの少なくともいずれか1つを含み、前記一対の外部電極は、前記第1の側面に配置される第1の外部電極と、前記第2の側面に配置される第2の外部電極と、を含み、前記長さ方向Lは、前記積層方向T及び前記幅方向Wよりも長い寸法を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高周波数領域においてもESLが高くなることが抑えられて高周波数化に対応可能な積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの外観斜視図である。
図2図1のII-II線に沿った断面(LT断面)図である。
図3図1のIII-III線に沿った断面(WT断面)図である。
図4図2のIV-IV線に沿った断面(LW断面)図である。
図5】第1実施形態の積層セラミックコンデンサを基板に実装する構造の一例を示す一部断面図である。
図6】第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサのWT断面図である。
図7】第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサのWT断面図である。
図8】第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサのWT断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の概略斜視図である。図2は、図1に示すII-II線に沿った断面図である。図3は、図1に示すIII-III線に沿った断面図である。図4は、図2に示すIV-IV線に沿った断面図である。
【0010】
図1に示すように、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、全体として略直方体形状を有している。この積層セラミックコンデンサ10は、略直方体形状を有する積層体11と、一対の外部電極20と、を備えている。
【0011】
図1ないし図3において、矢印Tは、積層セラミックコンデンサ10及び積層体11の積層方向を示している。図1図2及び図4において、矢印Lは、積層セラミックコンデンサ10及び積層体11の、積層方向Tに直交する長さ方向を示している。図1図3及び図4において、矢印Wは、積層セラミックコンデンサ10及び積層体11の、積層方向T及び長さ方向Lに直交する幅方向を示している。第1実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、長さ方向Lが最も長く、幅方向Wが積層方向Tよりも長い。
図2はLT断面を示し、図3はWT断面を示し、図4はLW断面を示している。
【0012】
積層体11は、積層方向Tにおいて相対する一対の主面12としての第1の主面12a及び第2の主面12bと、積層方向Tに直交する幅方向Wにおいて相対する一対の側面13としての第1の側面13a及び第2の側面13bと、積層方向T及び幅方向Wに直交する長さ方向Lにおいて相対する一対の端面14としての第1の端面14a及び第2の端面14bと、を有する。
【0013】
図1及び図3に示すように、一対の外部電極20は、積層体11の幅方向Wの両端部の外表面を覆うように互いに離間して設けられている。一対の外部電極20のそれぞれは、導電膜により形成されている。一対の外部電極20は、第1の側面13aに配置される第1の外部電極20aと、第2の側面13bに配置される第2の外部電極20bと、を含む。
【0014】
図3及び図4に示すように、外部電極20は、側面13を覆う部分21と、側面13を覆う部分21から主面12及び端面14に回り込んでこれら主面12及び端面14を覆う部分22と、を含む。以下では、側面13を覆う部分21を側面被覆部21といい、主面12及び端面14を覆う部分22を端面被覆部22という場合がある。
【0015】
第1の外部電極20a及び第2の外部電極20bのそれぞれは、例えば、焼結金属層とめっき層との積層膜により構成される。焼結金属層は、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等のペーストを焼き付けることで形成される。めっき層は、例えば、Niめっき層とこれを覆うSnめっき層とにより構成される。めっき層は、これに代えてCuめっき層やAuめっき層であってもよい。また、第1の外部電極20a及び第2の外部電極20bのそれぞれは、めっき層のみによって形成されていてもよく、さらには、導電性樹脂ペーストを利用してもよい。
【0016】
図2ないし図4に示すように、積層体11は、積層方向Tに積層された複数の誘電体セラミック層15及び複数の内部電極層16を備えている。
【0017】
図2及び図3に示すように、誘電体セラミック層15は、内部電極層16の間に挟まれた複数の第1の誘電体セラミック層15aと、積層方向Tの両端に配置され、第1の誘電体セラミック層15aよりも厚みの大きい一対の第2の誘電体セラミック層15bと、長さ方向Lの両端に配置され、内部電極層16を長さ方向Lに挟む一対の第3の誘電体セラミック層15cと、を有する。図2において破線Gは、第3の誘電体セラミック層15cと、第1の誘電体セラミック層15aまたは第2の誘電体セラミック層15bとの仮想的な境界を示している。
【0018】
第1実施形態の誘電体セラミック層15は、Ca、Zr、Tiのうちの少なくともいずれか1つを含むセラミック材料を主成分とする。具体的には、例えば、Ca及びZrを含む一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする。そのようなペロブスカイト構造を有するセラミック材料としては、例えば、CaZrO(ジルコン酸カルシウム)やTiO(酸化チタン)が挙げられるが、これらに限定されない。また、誘電体セラミック層15を形成するセラミック材料の主成分としては、Ca、Zr、Tiの全てを含んでもよい。また、CaZrOにおいて、ZrOまたはZrの一部をTiで置換したCa(Zr0.9Ti0.1)O等を用いてもよい。
【0019】
また、誘電体セラミック層15を形成するセラミック材料としては、(Ca1-x-y、Sr、Ba(Zr1-z-α、Ti、Hfα)O(但し、xは0以上1以下、yは0以上0.4以下、mは1.0以上1.1以下、zは0以上0.2以下、及びαは0以上0.3以下)等を用いてもよい。
【0020】
誘電体セラミック層15を形成するセラミック材料には、目的に応じて添加物が添加される。そのような添加物としては、例えば、Mn、Mg、Dy、Cr、あるいは、V、Sm、Eu、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Y等の希土類元素の酸化物、あるいは、Co、Ni、Li、B、Na、K及びSiの酸化物、あるいは、ガラス等が挙げられる。
【0021】
内部電極層16は、Ni、Cu、Ag、Pd、AgとPdの合金、及びAu等の金属を含有する導電薄膜である。積層セラミックコンデンサ10の周波数特性を良好なものにするために、内部電極層16として、Cuを用いることが好ましい。内部電極層16は、さらに誘電体セラミック層15に含まれるセラミックと同一組成系の誘電体粒子を含んでいてもよい。
【0022】
図2及び図3に示すように、第1実施形態の積層体11は、積層方向Tに等間隔に配置された3つの内部電極層16を有する。積層体11は、3つの内部電極層16のそれぞれが第1の誘電体セラミック層15aを介して対向している内層部11Aと、内層部11Aを積層方向Tに挟むように配設された一対の外層部11Bと、を有する。内層部11Aにおいては、3つの内部電極層16が第1の誘電体セラミック層15aを介して交互に積層されている。
【0023】
図3に示すように、3つの内部電極層16は、1つの第1の内部電極層16aと、2つの第2の内部電極層16bと、を含む。1つの第1の内部電極層16aは、積層方向Tの中央部に配置されている。第1の内部電極層16aは、積層体11の側面13のうちの第1の側面13aに引き出され、第1の外部電極20aに電気的に接続されている。2つの第2の内部電極層16bのそれぞれは、積層方向Tにおいて第1の内部電極層16aの両側に配置されている。各第2の内部電極層16bは、第2の側面13bに引き出され、第2の外部電極20bに電気的に接続されている。すなわち内層部11Aにおいては、第1の外部電極20aに接続される1つの第1の内部電極層16aと、第2の外部電極20bに接続される2つの第2の内部電極層16bとが、第1の誘電体セラミック層15aを介して積層方向Tに交互に積層されている。これにより、第1の外部電極20aと第2の外部電極20bとの間は、2つのコンデンサ要素が電気的に並列に接続された構造となっている。
【0024】
図4に示すように、積層体11は、端面14と側面13との間において積層方向T(図4の紙面表裏方向)に延在する4つの第1の稜線部17aを有する。図3に示すように、積層体11は、主面12と側面13との間において長さ方向L(図3の紙面表裏方向)に延在する4つの第2の稜線部17bを有する。図2に示すように、積層体11は、主面12と端面14との間において幅方向W(図2の紙面表裏方向)に延在する4つの第3の稜線部17cを有する。
【0025】
第1実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、例えば、誘電体セラミック層15となるセラミックグリーンシート等のセラミック材料及び内部電極層16となる導電ペースト等の導電材料が積層されて積層体11が形成される。そして、積層体11が焼成され、この後、外部電極20が焼き付けやめっき等により形成されて、積層セラミックコンデンサ10が製造される。なお、外部電極20の形成は、めっきを除いて、その一部あるいは全てが積層体11の焼成と同時に焼き付けされて形成されてもよい。
【0026】
図2及び図3に示すように、内層部11Aの2つの誘電体セラミック層15、すなわち内部電極層16に積層方向Tで挟まれる2つの第1の誘電体セラミック層15aのそれぞれの積層方向Tの厚みETは、2μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0027】
第1の内部電極層16a及び第2の内部電極層16bのそれぞれの厚みは、ともに0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。
【0028】
図2及び図3に示すように、主面12と、主面12に積層方向Tで最も近い内部電極層16との間、すなわち、第1の主面12aと第1の主面12a側の第2の内部電極層16bとの間、及び第2の主面12bと第2の主面12b側の第2の内部電極層16bとの間の、積層方向Tの距離DTは、それぞれ10μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0029】
図2及び図4に示すように、端面14と、内部電極層16との間、すなわち、第1の端面14aと第1の内部電極層16a及び第2の内部電極層16bとの間、ならびに第2の端面14bと第1の内部電極層16a及び第2の内部電極層16bとの間の、長さ方向Lの距離DLは、それぞれ5μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上40μm以下であればより好ましい。
【0030】
図4に示す各第1の稜線部17aの曲率半径は、10~25μmが好ましい。図3に示す各第2の稜線部17bの曲率半径は、10~25μmが好ましい。図2に示す各第3の稜線部17cの曲率半径は、10~25μmが好ましい。
【0031】
図5は、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ10を基板30に実装した状態の一例を示している。積層セラミックコンデンサ10は、一対の外部電極20のそれぞれが、基板30上にX方向に離間して配置された一対のランド31に半田付けされている。基板30の表面30aは、所定の実装領域を残してソルダーレジストによる絶縁膜32で被覆されている。基板30の表面30aには、配線33が形成されている。配線33は離間部34を間に挟んで不連続の状態となっており、離間部34の両側に、配線33が絶縁膜32で被覆されない部分である一対のランド31が露出している。一対のランド31は、X方向に互いに離間して基板30の表面30aに配置されている。
【0032】
積層セラミックコンデンサ10は、幅方向WがX方向にほぼ平行で、積層方向Tが基板30の表面30aに直交する上下方向Zにほぼ沿っている。これにより、積層体11の主面12のうちの第2の主面12bが、基板30の表面30aにほぼ平行に対向している。積層セラミックコンデンサ10は、一方の外部電極20(第1の外部電極20a)が一方のランド31に半田35を介して接続され、他方の外部電極20(第2の外部電極20b)が他方のランド31に半田35を介して接続されている。
【0033】
以上説明した第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10は、積層方向Tに積層される複数の誘電体セラミック層15を含むとともに、積層方向Tにおいて相対する一対の主面12としての第1の主面12a及び第2の主面12bと、積層方向Tに直交する幅方向Wにおいて相対する一対の側面13としての第1の側面13a及び第2の側面13bと、積層方向T及び幅方向Wに直交する長さ方向Lにおいて相対する一対の端面14としての第1の端面14a及び第2の端面14bと、を有する略直方体形状の積層体11と、一対の外部電極20と、を備え、誘電体セラミック層15は、Ca、Zr、Tiのうちの少なくともいずれか1つを含み、一対の外部電極20は、第1の側面13aに配置される第1の外部電極20aと、第2の側面13bに配置される第2の外部電極20bと、を含み、長さ方向Lは、積層方向T及び幅方向Wよりも長い寸法を有する。
【0034】
これにより、長さ方向Lが幅方向Wよりも長いので内部電極層の幅方向長さが短くなり、内部電極層の両側の一対の外部電極の間の距離が短くなる。その結果、内部電極層16を流れる電流の経路が短くなるため、低容量化の実現及びESLの抑制を図ることができ、その結果、高周波信号に対応可能となる。
【0035】
第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10において、積層体11は、複数の内部電極層16を有し、複数の内部電極層16は、第1の側面13aに引き出されて第1の外部電極20aに接続される第1の内部電極層16aと、第2の側面13bに引き出されて第2の外部電極20bに接続される第2の内部電極層16bと、を含むことが好ましい。
【0036】
これにより、積層体11の第1の側面13a及び第2の側面13bのそれぞれに接続される内部電極層16を的確に配置して高周波数化に対向可能な積層セラミックコンデンサを構成することができる。
【0037】
第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10において、誘電体セラミック層15の厚みは、2μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0038】
誘電体セラミック層15の厚みが2μm以上40μm以下と比較的大きいため、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の低容量化が実現される。よって第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10は、高周波数領域においてもESLが高くなることが抑えられ、低容量なコンデンサが要求される高周波回路に対して一層対応可能となる。
【0039】
第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10において、内部電極層16の厚みは、0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。
【0040】
内部電極層16の厚みが0.5μm以上2.5μm以下と比較的大きいため、ESRを低減することができる。
【0041】
第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10においては、積層体11の主面12と、この主面12に積層方向Tで最も近い内部電極層16との間の積層方向Tの距離DTは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0042】
これにより、内部電極層の積層方向外側の誘電体セラミック層の厚みが比較的大きくなるため低容量化が実現され、高周波数領域においてもESLが高くなることが抑えられ、高周波数化に対応可能となる。
【0043】
第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10においては、積層体11の端面14と、内部電極層16との間の長さ方向Lの距離DLは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上40μm以下であればより好ましい。
【0044】
これにより、内部電極層16の長さ方向Lの大きさを適切に調整してESL及びESRを低減できるとともに、高周波数化に対応可能となる。また、端面14を誘電体セラミック層15により保護できるとともに、内部電極層16の長さ方向Lの寸法を調整して最大化することができ、これにより、低容量化の実現及びESLの抑制、ならびに高周波信号に対応可能となる。
【0045】
第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10において、積層体11は、端面14と側面13との間において積層方向Tに延在する4つの第1の稜線部17aと、主面12と側面13との間において長さ方向Lに延在する4つの第2の稜線部17bと、主面12と端面14との間において幅方向Wに延在する4つの第3の稜線部17cと、を有し、第1の稜線部17aの曲率半径は10~25μmであり、第2の稜線部17bの曲率半径は10~25μmであり、第3の稜線部17cの曲率半径は10~25μmであることが好ましい。
【0046】
図5に示したように、基板30上に積層セラミックコンデンサ10を半田付けにより実装する際、半田35から一対の外部電極20に作用する張力のバランスが崩れ、一方の外部電極20がランド31から離れて積層セラミックコンデンサ10が起立するいわゆるツームストン現象が生じる場合がある。しかし、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ10によれば、上記のような各稜線部の曲率半径を有することにより、ツームストン現象の発生を抑えることができる。また、各稜線部が適宜に面取りされた状態となり、欠けが生じにくい。
【0047】
次に、図6図8により、上記第1実施形態の一部を変更した第2実施形態、第3実施形態及び第4実施形態を説明する。これら実施形態は、内部電極層16の形態が第1実施形態と異なっており、他の構成は同じである。したがって、第1実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、相違点を中心に説明する。
なお、図6図8においては、上記第1実施形態と同様に、矢印Wは幅方向を示し、矢印Tは積層方向を示している。
【0048】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10のWT断面を示している。この積層セラミックコンデンサ10は、第1の外部電極20aに接続される第1の内部電極層16aと、第2の外部電極20bに接続される第2の内部電極層16bとを、1つずつ有する。これら第1の内部電極層16a及び第2の内部電極層16bは、いずれもその幅が、積層体11の幅の半分の長さより短く、長さ方向L及び幅方向Wに沿った略同一の面内(LW断面内)に並列して配置されている。長さ方向Lは、図6において紙面表裏方向である。第1の内部電極層16a及び第2の内部電極層16bは、積層方向Tのほぼ中央部に配置され、両者の間には幅方向に間隔が空いている。
【0049】
第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10においては、第1の内部電極層16aと、第2の内部電極層16bとは、長さ方向L及び幅方向Wに沿った略同一の面内に並列して配置されている。
【0050】
これにより、内部電極層16が積層方向Tに重畳しないため、第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の低容量化が実現される。よって、第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10は、低容量なコンデンサが要求される高周波回路に対して一層対応可能となる。
【0051】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10のWT断面を示している。この積層セラミックコンデンサ10は、第2実施形態と同様の第1の内部電極層16a及び第2の内部電極層16bのそれぞれを、3つずつ備える。すなわち第3実施形態の内部電極層16は、3つの第1の内部電極層16aが積層方向Tに積層された第1の内部電極層群16F1と、3つの第2の内部電極層16bが積層方向Tに積層された第2の内部電極層群F2と、含んでいる。
【0052】
第1の内部電極層群16F1の3つの第1内部電極層16a及び第2の内部電極層群F2の3つの内部電極層16bのそれぞれは、積層方向Tに等間隔をあけて配置されている。上・中・下の3層に配置された幅方向Wに隣接する各一対の第1内部電極層16a及び第2の内部電極層16bは、長さ方向L及び幅方向Wに沿った略同一の面内(LW断面内)に並列して配置されている。
【0053】
なお、第1の内部電極層群16F1が備える第1内部電極層16aの数、及び第2の内部電極層群F2が備える第2の内部電極層16bの数は、同数であれば3つに限定されず、例えば、1以上50以下程度の数であればよい。
【0054】
第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10においては、複数の内部電極層16は、複数の第1の内部電極層16aが積層方向Tに積層された第1の内部電極層群16F1と、複数の第2の内部電極層16bが積層方向Tに積層された第2の内部電極層群F2と、を含んでいる。
【0055】
これにより、積層される内部電極層16によって所要の静電容量が確保されるとともに、ESRの低減を図ることができる。
【0056】
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10のWT断面を示している。この積層セラミックコンデンサ10においては、上記第3実施形態と同様に積層方向Tに3層の第1の内部電極層16a及び第2の内部電極層16bを有するが、中層の第1の内部電極層16a及び第2の内部電極層16bはいずれも幅方向の長さが、上層及び下層のそれらよりも短い。そして、幅が短い中層の第1の内部電極層16aと第2の内部電極層16bとの間に、1つの第3の内部電極層16cが配置されている。すなわち中層には、第1の内部電極層16a、第2の内部電極層16b及び第3の内部電極層16cが略同一のLW断面内に並列している。第3の内部電極層16cは、幅方向Wのほぼ中央部に配置されており、第3の内部電極層16cと、第1の内部電極層16a及び第2の内部電極層16bとの間には、幅方向に間隔が空いている。第3の内部電極層16cは、第1の外部電極20a及び前記第2の外部電極20bのいずれにも接続されていない。
【0057】
なお、外部電極20に接続されず、幅方向において第1内部電極層16aと第2の内部電極層16bとの間に配置される第3の内部電極層16cの数は1つに限定されず、1以上50以下程度の複数あってもよい。
【0058】
第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10においては、複数の内部電極層16は、幅方向Wにおける第1の内部電極層16aと第2の内部電極層16bとの間において、第1の内部電極層16a及び第2の内部電極層16bと略同一の面内に並列して配置され、第1の外部電極20a及び第2の外部電極20bのいずれにも接続されない少なくとも1つの第3の内部電極層16cを有している。
【0059】
これにより、第3の内部電極層16cを介して複数のコンデンサ要素を直列接続することができるため、第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の低容量化が実現される。よって、第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10は、低容量化が進み、低容量なコンデンサが要求される高周波回路信号に対して一層対応可能となる。
【0060】
以下に、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の寸法例を提示するが、これら寸法に限定はされない。
積層セラミックコンデンサ10の全体的な概略寸法は、例えば、幅方向Wが0.3mm以上0.6mm以下、長さ方向Lが0.6mm以上1mm以下、積層方向Tが0.2mm以上0.9mm以下であるが、これらに限定されない。
【0061】
表1に、さらに具体的なサンプル1~12の寸法を示す。表1において、「コンデンサ寸法」は外部電極20を含めた積層セラミックコンデンサとしての外形寸法、「積層体寸法」は外部電極20を除く積層体11の外形寸法、外部電極の厚みにおいて「側面」は側面被覆部21の厚み、「端面」は端面被覆部22の厚み、「DL」は端面14と内部電極層16との間の長さ方向Lの距離、「内部電極層の長さ」は内部電極層16の長さ方向Lの寸法である。サンプル1~12の誘電体セラミック層15の材料は、CaZrO(ジルコン酸カルシウム)である。なお、寸法公差として、±10%を含む。
【0062】
【表1】
【0063】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、より低容量のコンデンサを目的とした場合、積層体11においては内部電極層16を省略し、誘電体セラミック層15を介して一対の外部電極20間をコンデンサの構造としてもよい。その場合、積層体11は、積層方向Tに積層された複数の誘電体セラミック層15を備えており、それら複数の誘電体セラミック層15は積層方向Tにおいて互いに直接接している。
【符号の説明】
【0064】
10 積層セラミックコンデンサ
11 積層体
12 一対の主面
12a 第1の主面
12b 第2の主面
13 側面
13a 第1の側面
13b 第2の側面
14 端面
14a 第1の端面
14b 第2の端面
15 誘電体セラミック層
16 内部電極層
16a 第1の内部電極層
16b 第2の内部電極層
16c 第3の内部電極層
16F1 第1の内部電極層群
16F2 第2の内部電極層群
17a 第1の稜線部
17b 第2の稜線部
17c 第3の稜線部
20 外部電極
20a 第1の外部電極
20b 第2の外部電極
L 長さ方向
W 幅方向
T 積層方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8