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特開2024-177471積層シート及び積層シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177471
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】積層シート及び積層シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20241212BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20241212BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B32B9/00 A
E04B1/94 R
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024175111
(22)【出願日】2024-10-04
(62)【分割の表示】P 2020005347の分割
【原出願日】2020-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大島 野乃花
(57)【要約】
【課題】高い不燃性や硬度を有しつつ、層間での剥離が生じにくい積層シート及び積層シートの製造方法を得る。
【解決手段】積層シートは、樹脂材料と無機質材料とを含む原反層と、原反層の一方の面上に形成された表面保護層と、少なくとも原反層の表面保護層側の面上に形成されたアンカー層と、を備える。積層シートは、原反層が、第一原反層と、第二原反層とを有し、表面保護層が第二原反層の上面に形成された構成であっても良い。無機質材料の平均粒子径は、1μm以上3μm以下の範囲内であり、且つ無機質材料の最大粒子径は、50μm以下であることが好ましい。第一原反層における樹脂材料と無機質材料との合計量に対する無機質材料の含有量は、20質量%以上90質量%以下の範囲であり、第二原反層におけ
る樹脂材料と無機質材料との合計量に対する無機質材料の含有量は、1質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料と無機質材料とを含む原反層と、
前記原反層の一方の面上に形成された表面保護層と、
少なくとも前記原反層の前記表面保護層側の面上に形成されたアンカー層と、
を備える積層シート。
【請求項2】
前記原反層は、前記無機質材料の周辺に形成された空隙を複数有し、
前記空隙は、前記原反層の全体に散在している
請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記無機質材料は、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、三酸化モリブデンあるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムとの錯体、三酸化アンチモンとシリカとの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華との錯体、ジルコニウムのケイ酸、及びジルコニウム化合物と三酸化アンチモンとの錯体、並びにそれらの塩、さらに、シリカ、アルミナ、中空ガラスビーズ、アクリルビーズのうちの少なくとも1種である
請求項1又は2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記無機質材料の平均粒子径は、1μm以上3μm以下の範囲内であり、且つ前記無機質材料の最大粒子径は、50μm以下である
請求項1から3のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項5】
前記アンカー層は、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を含むウレタン系樹脂又は塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を含むアクリル系樹脂を含有する
請求項1から4のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項6】
前記原反層は、第一原反層と、第二原反層とを有し、
前記表面保護層は、前記第二原反層の上面に形成されている
請求項1から5のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項7】
前記第一原反層における前記無機質材料の含有量は、前記第二原反層における前記無機質材料の含有量よりも多い
請求項6に記載の積層シート。
【請求項8】
前記第一原反層は、前記無機質材料として炭酸カルシウム及び炭酸カルシウムの少なくとも1種を含み、
前記第二原反層は、前記無機質材料として、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム以外の前記無機質材料の少なくとも1種を含む
請求項6又は7に記載の積層シート。
【請求項9】
前記第一原反層における前記樹脂材料と前記無機質材料との合計量に対する前記無機質材料の含有量は、20質量%以上90質量%以下の範囲であり、
前記第二原反層における前記樹脂材料と前記無機質材料との合計量に対する前記無機質材料の含有量は、1質量%以上50質量%以下の範囲である
請求項6から8のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項10】
前記第一原反層と前記第二原反層との膜厚の比は、50:50から95:5である
請求項6から9のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項11】
前記樹脂材料は、熱可塑性樹脂である
請求項1から10のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステルの少なくとも1種である
請求項11に記載の積層シート。
【請求項13】
JIS K 5600-5-6に準拠した付着性試験において、剥離するマス目の個数が0個以上2個以下である
請求項1から12のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項14】
無機質材料及び樹脂材料を混合し、
無機質材料及び樹脂材料を含む樹脂膜を製膜して原反層を形成し、
原反層の少なくとも一方の面にアンカー材料を塗工して、アンカー層を形成し、
前記アンカー層上に樹脂材料を塗工し、硬化させて、表面保護層を形成する
積層シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層シート及び積層シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不燃性や硬度を向上させる目的で、炭酸カルシウム等の無機質材料を原反層中に高充填した建材用シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-132078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無機質材料を高充填した原反層の表面に表面保護層等の他の層を積層する場合、ラミネート法や共押出法等の積層方法に関わらず、原反層と他の層との密着強度が弱く層間で剥離しやすくなる場合があった。建材用に用いる積層シートでは、施工時や居住者の使用時に積層シートにテープが貼られたり剥がされたりすることがあり、層間での剥離が生じやすいことは問題となる。
【0005】
本開示は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高い不燃性や硬度を有しつつ、層間での剥離が生じにくい積層シート及び積層シートの製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る積層シートは、樹脂材料と無機質材料とを含む原反層と、原反層の一方の面上に形成された表面保護層と、少なくとも原反層の表面保護層側の面上に形成されたアンカー層と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本開示の他の態様に係る積層シートの製造方法は、無機質材料及び樹脂材料を混合し、無機質材料及び樹脂材料を含む樹脂膜を製膜して原反層を形成し、原反層の少なくとも一方の面にアンカー材料を塗工して、アンカー層を形成し、アンカー層上に樹脂材料を塗工し、硬化させて、表面保護層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の態様によれば、高い不燃性や硬度を有しつつ、層間での剥離が生じにくい積層シート及び積層シートの製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第一実施形態に係る積層シートの一構成例を示す断面図である。
図2】本開示の第二実施形態に係る積層シートの一構成例を示す断面図である。
図3】本開示の第三実施形態に係る積層シートの一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、こ
れらの比率も現実のものとは異なる。
【0011】
本開示の第一実施形態に係る積層体について説明する。本開示に係る積層シートは、例えば、壁面、建具、家具等に施工される積層シートである。なお、以下の説明では、積層シートの貼り付け面に接触する側を「下」、積層シートの貼り付け面に接触する側と反対側(表面)を「上」として説明する場合がある。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態の各態様について説明する。
【0012】
1.第一実施形態
(1.1)積層シートの基本構成
図1は、本開示の実施形態に係る積層シート1の一構成例を説明するための断面図である。図1に示すように、積層シート1は、接着層11と、原反層12と、絵柄模様層13と、表面保護層14と、を備えている。積層シート1は、接着層11、原反層12、絵柄模様層13及び表面保護層14がこの順に積層されて構成されている。
【0013】
接着層11は、積層シート1と積層シート1が貼りつけられる下地との接着性を向上させるために設けられる層である。原反層12は、積層シート1の基材となる層であり、貼り付け面の凹凸や段差などを吸収して積層シート1の施工仕上がりを良好にするとともに、積層シート1に不燃性や硬度を与える層である。絵柄模様層13は、積層シート1に所望の色彩や絵柄模様を付与する層である。表面保護層14は、積層シート1の最上面に設けられ、積層シート1の保護や積層シート1表面の艶の調整のために設けられる層である。
以下、接着層11、原反層12、絵柄模様層13及び表面保護層14の各層について詳細に説明する。
【0014】
(原反層)
原反層12は、1種類以上の樹脂材料と1種類以上の無機質材料とを含む層である。
原反層12における樹脂材料と無機質材料との含有量の比(樹脂材料:無機質材料)は、質量比で80:20から10:90の範囲であることが好ましく、質量比で40:60から20:80の範囲であることがより好ましい。すなわち、原反層12における樹脂材料と無機質材料との合計量に対する無機質材料の含有量は、20質量%以上90質量%以
下の範囲であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下の範囲であることがより
好ましい。
【0015】
上述の範囲である場合、積層シート1の不燃性又は難燃性が向上する傾向がある。無機質材料の含有量が上述の範囲内である場合、十分な表面硬度が得られ、原反層12の表面をホフマンスクラッチテスターを用いて引っ掻いた際に視認できる程度の傷がつきにくくなる。
一方、上述の範囲外に樹脂材料の割合が少ない場合、原反層12表面にアンカー層16a、16bとなるアンカー材料の塗工を行った際に、原反層12表面に所謂「粉吹き」が発生することを抑制することができる。また、原反層12表面に絵柄模様層13となるインキの印刷等を行った際に、原反層12表面に所謂「粉吹き」が発生することを抑制することができる。ここで、「粉吹き」とは、原反層12に含まれる無機質材料が原反層12の表面に浮き出ることをいう。さらに、アンカー層16a又は16bを形成したシートを原反層12にラミネートする際のラミネート適性が向上するとともに、折り曲げられた部分に割れが発生したり、無機質材料が剥落したりすることを抑制することができる。
【0016】
このように、樹脂材料と無機質材料との含有量の比が、質量比で80:20から10:90の範囲である場合、積層シート1の不燃性又は難燃性を向上しつつ、十分な表面硬度を得ることができる。また、積層シート1のラミネート適性を向上させ、且つ粉吹きの発
生や、割れの発生を低減することができる。
【0017】
無機質材料は、表面処理が施されていることが好ましい。無機質材料は、例えば表面処理剤として炭素数10~30、より好ましくは炭素数12~26の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及びその塩を用いて表面処理される。このような表面処理剤を用いて無機質材料が表面処理されることにより、無機質材料を高充填する場合に懸念される樹脂材料内での無機質材料の凝集を抑制することができる。
【0018】
飽和脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、アライン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸が挙げられ、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。無機質材料は、公知の方法によって表面処理される。
【0019】
無機質材料は、粉末形状(粉体形状)であることが好ましく、その平均粒子径が1μm以上3μm以下の範囲内であり、且つ最大粒子径が50μm以下であることが好ましい。無機質材料の平均粒子径及び最大粒子径が上述した数値範囲内であれば、熱可塑性樹脂に対する無機質材料の分散性を向上させつつ、原反層12表面の平坦性を維持することができる。無機質材料の平均粒子径が1μm未満であると、無機質材料同士の凝集力が高まり、後述する熱可塑性樹脂への分散性が低下することがある。また、無機質材料の平均粒子径が3μmを超えると、原反層12表面の平坦性が低下し、後述するアンカー層16a及び16bの厚みが不均一となったり、ムラや欠けが発生したりすることがある。また、無機質材料の最大粒子径が50μmを超えると、原反層12表面の平坦性が低下し、後述するアンカー層16a及び16bの厚みが不均一となったり、ムラや欠けが発生したりすることがある。なお、本実施形態において、「平均粒子径」とは、モード径を意味する。
【0020】
無機質材料としては、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、三酸化モリブデンあるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムとの錯体、三酸化アンチモンとシリカとの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華との錯体、ジルコニウムのケイ酸、及びジルコニウム化合物と三酸化アンチモンとの錯体、並びにそれらの塩、さらに、シリカ、アルミナ、中空ガラスビーズ、アクリルビーズのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0021】
なかでも、無機質材料は、例えば炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩の少なくとも一方を含有した粉末であることが好ましい。炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩は、粒径のコントロールや熱可塑性樹脂との相溶性の制御が容易であるため好適である。また、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩は、安価であるため耐火建築部材の低廉化の観点からも好適である。また、無機質材料は、炭酸カルシウムを50質量%以上100質量%以下の範囲内で含むものが好ましい。炭酸カルシウムの含有量が50質量%以上である無機質材料であれば、原反層12に、十分な不燃性又は十分な難燃性を付与することができると共に、十分な機械強度を付与することができる。
【0022】
また、無機質材料は、結晶性を有する粉末材料、所謂結晶粉末であってもよいし、結晶性を有さない粉末材料、所謂アモルファスタイプの粉末材料であってもよい。無機質材料が結晶性を有する粉末材料であれば、粉末自体が均質で等方性を備えるため、粉末自体の機械強度が向上し、耐火建築部材の耐傷性や耐久性が向上する傾向がある。また、無機質材料がアモルファスタイプの粉末材料であれば、粉末自体の電気伝導性や熱伝導性、あるいは光透過率や光吸収率を適宜調整することが可能となるため、触感や艶等のバリエーションが豊富な意匠性を付与することが可能となる。
【0023】
樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂が用いられ、プロピレン単独重合体、エチレン単独重合体、エステル単独重合体、エチレン及び又はプロピレンとこれらと共重合可能な他のα-オレフィンとの共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる群の中から選択される少なくとも1種を含む。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリブテン又はポリメチルペンテン等を用いることが可能であり、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルが好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリエステルがより好ましい。熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステルの少なくとも1種を使用することで、無機質材料の分散性が向上する。また、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンを使用することで、無機質材料の分散性がさらに向上する。
【0024】
また、樹脂材料と無機質材料との合計含有量は、原反層12の質量に対して、90質量%以上100質量%以下の範囲内であることが好ましい。樹脂材料と無機質材料との合計含有量が上述した数値範囲内であれば、十分な不燃性又は十分な難燃性を得つつ、ラミネート適性を向上させることができる。樹脂材料と無機質材料との合計含有量が原反層12の質量に対して、90質量%未満であると、十分な不燃性又は十分な難燃性が得られないことがある。また、ラミネート適性が低下したり、シートの折り曲げ部に割れが発生したりすることがある。
【0025】
原反層12の厚みは、50μm以上12500μm以下の範囲内であることが好ましく、70μm以上10000μm以下の範囲内であることがより好ましい。原反層12の厚みが上述した数値範囲内であれば、ラミネート適性を向上させることができる。原反層12の厚みが50μm未満であると、ラミネート適性が低下する傾向がある。また、原反層12の厚みが12500μmを超えると、加工性及び施工性において取り扱いが困難となる。
【0026】
また、原反層12は、1軸延伸又は2軸延伸されることにより形成される。この場合、図1に示すように、原反層12は、無機質材料12aと樹脂材料との間に形成された、原反層12の表裏面に平行な方向に延びるような平面的(横方向)な形状の空隙12bを有する。空隙12bは、原反層12の全体に複数散在する。
【0027】
本実施形態の原反層12は、樹脂材料及び無機質材料に発泡剤を加えて形成しても良い。これにより、原反層12内に原反層12の厚み方向に延びる形状の空隙を形成することができる。発泡剤により形成される空隙は、空隙同士がつながり、単独で形成される空隙よりも大きな空隙となる。そのため、このような空隙が全体に散在する原反層12を備える積層シート1は、一層高い断熱性を有する。
【0028】
発泡剤としては、分解ガス発生性発泡剤、膨張性カプセル発泡剤等のうちの少なくとも1種を用いることができる。分解ガス発生性発泡剤の好ましい例としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、重炭酸ナトリウム及び炭酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、4,4-オキシビス(ベンゼンスルホン酸ヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホヒドラジド、ベンゼン-1,3-ジスルホヒドラジド、p-
トルエンスルホニルセミカルバジド、及び発泡性中空マイクロスフェアのうちの少
なくとも1種が挙げられる。また、膨張性カプセル発泡剤としては、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ウレタン等の樹脂材料を被膜とする微小粒子中に、エタン、ブタン、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系の揮発性膨張成分が内包されたものが挙げられる。
【0029】
無機質材料と樹脂材料と発泡剤とを含む混合物から形成した原反層12は、発泡剤によ
り形成される空隙が原反層12全体に複数散在する。
発泡剤の含有量は、建築部材としての断熱性を得ることができ、かつ樹脂組成物の層間強度、また建築部材としての強度を有する量であればよく、必要に応じて調整すればよい。例えば、発泡剤の量は、原反層12が加熱された際に、少なくとも10%、25%、50%、100%、150%、200%又はそれ以上の容積のうちのいずれかの容積で発泡するようにすればよい。発泡剤の含有量は、例えば、原反層12の質量に対して、5質量%以上10質量%以下の範囲内である。
【0030】
また、原反層12は、発泡剤を含む混合物を1軸延伸又は2軸延伸して形成した場合、発泡剤により厚さ方向に延びるような形状の空隙を無機質材料12aの位置に関係なく有する。これにより、原反層12は、し、かつ無機質材料12aの周辺に図1において横方向に延びるような形状の空隙12bを有し、結果的に、図1において横方向に延びるような形状の空隙12bが全体に複数散在する原反層12を得ることができる。
このような立体的な空隙12bが形成された原反層12は、断熱効果を高めることができる。
【0031】
原反層12の両面には、アンカー層16a及び16bが設けられている。アンカー層16a及び16bについては後述する。原反層12の両面には、後述するアンカー層16a及び16bを形成する前に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい。原反層12の両面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことで、表面処理が行われた面に形成されるアンカー層16a及び16bと、原反層12との接着性(密着性)が向上する。
また、アンカー層16a及び16bを形成する前に、原反層12の両面をブラッシングして、粉吹きした無機質材料を事前に落とすようにしてもよい。
【0032】
(アンカー層)
アンカー層16a及び16bは、原反層12の表面全体を覆うように形成された層であり、原反層12に含まれる無機質材料の粉落ちを防止するための層である。原反層12に含まれる無機質材料は、絵柄模様層13形成時(インク印刷時)や、表面保護層14形成時(樹脂塗工時)に印刷系内、具体的には印刷装置内で粉落ちし、その印刷系内を汚染することがある。また、原反層12に含まれる無機質材料が粉落ちすると、絵柄模様層13にインキ抜け等の不具合が発生する可能性がある。ここで、「インキ抜け」とは、インキが部分的に印刷されないことをいう。
【0033】
また、アンカー層16bは、原反層12と、絵柄模様層13を形成するインキ又は表面保護層14を形成する樹脂材料との密着性を向上させるための機能も備えている。原反層12の上面にアンカー層16bを備えない場合には、インキ又は樹脂材料が原反層12に密着せずに剥離してしまうことがある。
【0034】
このようなアンカー層16a及び16bは、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、又は塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有していることが好ましい。ここで、「塩酢ビ」とは、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を意味する。また、「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」とは、塩酢ビとウレタン系樹脂とを含んだ組成物を意味し、「塩酢ビを含むアクリル系樹脂」とは、塩酢ビとアクリル系樹脂とを含んだ組成物を意味する。
塩酢ビの含有量とウレタン系樹脂又はアクリル系樹脂の含有量との比(塩酢ビの含有量:ウレタン系樹脂又はアクリル系樹脂の含有量)は、質量比で80:20から1:99の範囲内であることが好ましく、50:50から5:95の範囲内であることがより好ましく、20:80から10:90の範囲内であることがさらに好ましい。
【0035】
また、「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」及び「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」は、前述
の塩酢ビ及びウレタン系樹脂又はアクリル樹脂以外に硬化剤を含んでいてもよい。この硬化剤は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂又は塩酢ビを含むアクリル系樹脂を確実に硬化させるために添加されるものであり、その含有量については特に限定されない。例えば、塩酢ビを含むウレタン系樹脂又はアクリル系樹脂の含有量と、硬化剤の含有量との比(塩酢ビを含むウレタン系樹脂又はアクリル系樹脂の含有量:硬化剤の含有量)は、質量比で99:1から1:99の範囲内であればよく、99:1から50:50の範囲内であれば好ましく、95:5~90:10の範囲内であればさらに好ましい。
【0036】
アンカー層16a及び16bにおける、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、又は塩酢ビを含むアクリル系樹脂の含有量(以下、樹脂含有量と言う場合がある)は、アンカー層16a及び16bの質量に対し、15質量%以上100質量%以下の範囲内が好ましく、80質量%以上100質量%以下の範囲内がより好ましく、85質量%以上95質量%以下の範囲内がさらに好ましい。樹脂含有量が上述した数値範囲内である場合、原反層12と絵柄模様層13又は表面保護層14との層間強度を十分なものにしつつ、均一でムラや欠けのないアンカー層16a及び16bを形成することができる。
【0037】
一方、樹脂含有量が15質量%未満であると、上述した層間強度が不十分となることがある。また、樹脂含有量が80質量%未満である場合、使用上何ら問題はないが、アンカー層16a,16bの原反層12への食い込み比率が低下する。このため、アンカー層16a,16bと原反層12との層間強度が低下することが僅かながらある。
【0038】
なお、アンカー層16a及び16bにおける、樹脂含有量がアンカー層16a及び16bの質量に対し、100質量%以下であれば使用上何ら問題はない。しかしながら、上述した樹脂含有量が95質量%、より正確には98質量%を超えると、硬化不足によるアンカー層16a及び16bの欠けが生じる場合がある。また、アンカー層16a,16bと原反層12又はアンカー層16bと絵柄模様層13との層間強度が低下したりすることがある。
【0039】
また、原反層12の両面に設けられたアンカー層16a及び16bにおける樹脂含有量は、それぞれ同じであることが好ましい。この場合、原反層12の歪みや反り等の発生を低減することができ、結果として積層シート1全体の歪みや反り等の発生を低減することができる。また、アンカー層16a及び16bを形成するための塗工液を共通化することができるため、製造コストを低減するとともに、作業効率を向上させることができる。
【0040】
アンカー層16a及び16bの厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下の範囲内であり、好ましくは、0.5μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。また、アンカー層16a及び16bの厚みは、それぞれ互いに同じであることが好ましい。アンカー層16a及び16bの厚みが同じである場合、アンカー層16a及び16bの物性がほぼ同じになるため、原反層12の歪みや反り等の発生を低減することができる。
【0041】
アンカー層16a及び16bは、押出しラミネート法の場合、例えばマレイン酸変性オレフィン系樹脂等の熱接着性樹脂を原反層12とともに共押出しして、原反層12とアンカー層16a及び16bとの層間密着性を向上させてもよい。
なお、原反層12の裏面に接着層11が設けられていない場合、原反層12の裏面(積層シート1の最裏面)には、アンカー層16aが設けられていなくても良い。積層シート1の最裏面は、積層シート1の下地に対する施工方法等によってはアンカー層が設けられていなくても問題ないためである。
【0042】
(絵柄模様層)
絵柄模様層13は、原反層12上に形成され、積層シート1に意匠性を持たせるために
絵柄を付与する層である。
絵柄模様層13によって形成される絵柄模様の種類には、特に制約はなく、例えば木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学図形、文字、記号等を単独で、又は2種類以上を組み合わせて形成してもよい。また、絵柄模様層13は、単色の色彩が付与された層であっても良い。
【0043】
絵柄模様層13は、例えばウレタン樹脂系インキによる印刷で形成された層である。ウレタン樹脂系インキとしては、例えば、ウレタン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、有機顔料、及び無機顔料を含むものを使用することができる。絵柄模様層13の組成は、例えば、ウレタン樹脂を50.9質量%以上76.7質量%以下の範囲内で含有し、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を10.2質量%以上23.3質量%以下の範囲内で含有し、有機顔料を0質量%以上37.7質量%以下の範囲内で含有し、無機顔料を0質量%以上20.0質量%以下の範囲内で含有することが好ましい。
【0044】
絵柄模様層13の形成方法としては、例えばインクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷又はフレキソ印刷等の任意の印刷方法を用いることが可能である。
また、絵柄模様層13の質量は、例えば、8.36[g/m]以下(固形量)(有機質量6.71[g/m]以下)であることが好ましい。
なお、絵柄模様層13の単位面積(例えば、300[mm]角)当たりの形成面積(インキの印刷面積)の比率は、50%以下であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。特に、絵柄模様層13がベタ印刷により形成された層である場合、絵柄模様層13の単位面積当たりの形成面積(インキにより覆われる面積)の比率は、90%以下であることが好ましい。単位面積は、300[mm]角に限るものではなく、例えば、200[mm]角以上400[mm]角以下程度であってもよい。絵柄模様層13の単位面積は、適度な光線透過率を確保するために規定するものであり、例えば積層シート1が配置される場所や光源の明るさ等に基づいて設定すればよい。
【0045】
(表面保護層)
表面保護層14は、絵柄模様層13上に形成され、積層シート1の表面を保護するための層である。表面保護層14は、絵柄模様層13の絵柄や色彩を積層シート1の表面に発現させるために、透明の層であることが好ましい。また、表面保護層14は、例えばトップコート層であっても良く、上台樹脂層であっても良い。
【0046】
積層シート1が内装用途の場合、積層シート1表面に視覚的なグロスマット効果を発現するために、表面保護層14は絵柄模様層13上にコート樹脂を塗布して形成される。コート樹脂は、求められる性能により、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、紫外線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂等を用いる。表面保護層14は、コート樹脂を単層又は複数層に塗布して形成される。表面保護層14を複数層で形成する場合、異なるコート樹脂が二層以上塗布されても良く、同一樹脂が二層以上塗布されても良い。
【0047】
また、積層シート1が内装用途の場合であっても、積層シート1が耐摩耗性や耐傷性を必要とする場合、表面保護層14は、絵柄模様層13上に熱可塑性樹脂等を塗布して形成される。この場合、表面保護層14の表面に凹凸模様を設けることにより、意匠を向上させることができる。凹凸模様としては、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン等が例示される。凹凸模様の形成方法としては、例えば、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機によるエンボス加工法を採用することができる。
【0048】
耐傷性や耐摩耗性等の性能を安定的に保持し、かつ折曲げ加工性や経済性等を考慮する
と、表面保護層14の厚みは60μm以上200μm以下であることが好ましく、60μm以上150μm以下であることがより好ましい。
積層シート1が外装用途の場合、表面保護層14には、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の紫外線吸収剤と、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定化剤とを添加させることが好ましい。
【0049】
(接着層)
接着層11は、積層シート1を貼り付ける下地との密着性を確保する機能を有する。接着層11の厚さは、例えば0.1μm以上3.0μm以下の範囲内とすることが好ましい。接着層11の厚さが上述した範囲であることにより、下地との密着性を高めるとともに、積層シート1の貼り付け時に接着層11が積層シート1からはみ出すことを抑制することができる。
【0050】
接着層11を構成する材料は特に限定されるものではないが、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の接着性樹脂から適宜選択して用いることができる。塗工方法は接着性樹脂の粘度などに応じて適宜選択することができるが、例えば、グラビアコートが用いられる。
【0051】
接着層11は、プライマーであっても良い。この場合、接着層11を構成する材料としては、例えば、バインダーとしての硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定して用いることができる。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプなど特にその形態を問わない。また、硬化方法についても、単独で硬化する1液タイプ、主剤と合わせて硬化剤を使用する2液タイプ、紫外線や電子線等の照射により硬化させるタイプなどから適宜選択して用いることができる。一般的な硬化方法としては、ウレタン系の主剤に対して、イソシアネート系の硬化剤を合わせることによって硬化させる2液タイプが用いられており、この方法は作業性、価格、樹脂自体の凝集力の観点から好適である。上記のバインダー以外には、顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤、無機充填剤等が添加されていてもよい。
【0052】
特に、接着層11は、例えばシリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を含むことが好ましい。接着層11は、積層シート1の最背面に位置する。このため、積層シート1を連続的なプラスチックフィルム(ウエブ状)として巻き取りを行うことを考慮すると、フィルム同士が密着して滑りにくくなることや、剥がれなくなる等のブロッキングが生じることを防止する必要がある。接着層11が無機充填剤を含むことにより、積層シート(フィルム)同士の密着やブロッキングを抑制することができる。
【0053】
なお、接着層11は、必ずしも設けられていなくても良い。積層シート1の最裏面は、積層シート1の下地に対する施工方法等によっては接着層11が設けられていなくても問題ないためである。
【0054】
(1.2)積層シートの製造方法
以下、積層シート1の製造方法の一例について説明する。
まず、原反層12を形成する。
原反層12に含有される無機質材料及び樹脂材料を、例えば、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー等の公知の混合機を用いて混合する。
無機質材料及び樹脂材料を加熱混錬し、原反層12に含有される各成分を混合した混合物をTダイ押出等の公知の成形機を用いて押出し、無機質材料及び樹脂材料を含む樹脂膜
を製膜する。その後、形成した樹脂膜を一軸押出機又は二軸押出機で一軸又は二軸に延伸して、均一な微孔径を有する原反層12を形成する。
【0055】
原反層12の下面及び上面にアンカー材料を塗工して、アンカー層16a,16bをそれぞれ形成する。このとき、原反層12の両面にアンカー層16a,16bを同時に形成しても良く、原反層12の下面にアンカー層16aを形成し、原反層12の上面にアンカー層16aとは異なるタイミングでアンカー層16bを形成してもよい。
原反層12の上面(アンカー層16bの表面)に、例えばウレタン樹脂系インキを所望の絵柄模様となるように塗工し、乾燥させて、絵柄模様層13を形成する。
絵柄模様層13の表面上に、例えばコート樹脂又は熱可塑性樹脂等の樹脂材料を塗工し、硬化させて、表面保護層14を形成する。
【0056】
続いて、原反層12の下面(アンカー層16aの表面)に、例えば接着性樹脂又はプライマーを塗工して、接着層11を形成する。
以上のようにして、本実施形態に係る積層シート1を製造する。
なお、アンカー層16a及び16bを異なるタイミングで形成する場合には、表面保護層14形成後にアンカー層16aを形成し、さらに接着層11を形成しても良い。
【0057】
(1.3)第一実施形態の効果
以上のような積層シートは、以下の効果を有する。
(1)本実施形態の積層シートは、原反層に無機質粒子を含むとともに、原反層の表面にアンカー層を備えている。
この構成によれば、積層シートの不燃性及びシート硬度を向上させるとともに、原反層と原反層表面に設けられた層(絵柄印刷層、表面保護層)との層間密着性を向上させて層同士が剥離しにくくすることができる。
【0058】
(2)本実施形態の積層シートは、原反層において無機質材料の周辺に形成された空隙を複数有しており、空隙は原反層の全体に散在している。
この構成によれば、原反層内に立体的な空隙が形成されることになり、断熱効果を高めることができる。
【0059】
(3)本実施形態の積層シートは、原反層に含まれる無機質材料の平均粒子径が1μm以上3μm以下の範囲内であり、且つ無機質材料の最大粒子径が50μm以下であることが好ましい。
この構成によれば、原反層表面を平坦化することができるとともに、原反層のムラや欠けの発生を抑制することができる。
【0060】
(4)本実施形態の積層シートは、原反層における樹脂材料と無機質材料との合計量に対する無機質材料の含有量が20質量%以上90質量%以下の範囲であることが好ましい。
この構成によれば、積層シートの不燃性及びシート硬度を向上させるとともに、原反層表面の平滑性及び加工性を向上させることができる。
【0061】
(5)本実施形態の積層シートは、無機質粒子として炭酸カルシウム又は炭酸カルシウム塩を用いることが好ましい。
この構成によれば、無機質粒子の粒子径のコントロールや熱可塑性樹脂との相溶性の制御が容易であり、また、積層シートの低廉化の観点からも好適である。
【0062】
2.第二実施形態
以下、本開示の第二実施形態に係る積層シートについて、図2を用いて説明する。
図2は、本開示の第二実施形態に係る積層シート2の一構成例を説明するための断面図
である。
【0063】
積層シート2は、接着層11と、第一原反層22a及び第二原反層22bを有する原反層22と、絵柄模様層13と、表面保護層14と、を備えている。積層シート2は、接着層11、第一原反層22a、第二原反層22b、絵柄模様層13及び表面保護層14がこの順に積層されて構成されている。絵柄模様層13及び表面保護層14は、第二原反層22b側の面に形成されている。すなわち、積層シート2は、原反層12に代えて第一原反層22a及び第二原反層22bを有する原反層22を備える点で、第一実施形態に係る積層シート1と相違する。
【0064】
以下、第一原反層22a及び第二原反層22bについて説明する。なお、第一原反層22a及び第二原反層22b以外の各層(接着層11、絵柄模様層13及び表面保護層14)については、積層シート1の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0065】
(2.1)積層シートの基本構成
<第一原反層、第二原反層>
第一原反層22aは、第一実施形態で説明した原反層12と同様の構成である。第一原反層22aの両面には、アンカー層26a及び26bが設けられている。
第二原反層22bは、1種類以上の樹脂材料と1種類以上の無機質材料とを含む層である。
第二原反層22bにおける無機質材料の含有量は、第二原反層における無機質材料の含有量よりも少ないことが好ましい。第二原反層22bにおける樹脂材料と無機質材料との含有量の比(樹脂材料:無機質材料)は、質量比で99:1から50:50の範囲であることが好ましく、質量比で90:10から60:40の範囲であることがより好ましい。すなわち、第二原反層22bにおける樹脂材料と無機質材料との合計量に対する無機質材料の含有量は、1質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましく、10質量%以
上40質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0066】
無機質材料としては、原反層12と同様の材料を用いることが好ましい。なお、第一原反層22aには、無機質材料として、例えば炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩の少なくとも一方を用いることが好ましい。そして、第二原反層22bには、第一原反層22aに含まれる無機質材料とは異なる無機質材料を用いることが好ましい。例えば、第一原反層22aが無機質材料として炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩の少なくとも一方を含む場合、第二原反層22bは、無機質材料として、炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム以外の無機質材料の少なくとも1種を含むことが好ましい。
これにより、第一原反層22aでは無機粒子をしつつ第一原反層22aの製造コストを低減することができる。また、第二原反層22bは、不燃性を向上させたりシート硬度を向上させることが可能となる。
【0067】
また、第二原反層22bの膜厚は、第一原反層22aと同等又は第一原反層22aより薄いことが好ましい。具体的には、第一原反層22aと第二原反層22bとの膜厚の比は、50:50から95:5であることが好ましい。この場合、積層シート2の不燃性やシート硬度の低下を抑制することができる。
【0068】
図2に示すように、第二原反層22bの両面には、アンカー層26c及び26dが設けられている。第二原反層22bの両面には、アンカー層26c及び26dを形成する前に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい。アンカー層26cは、第二原反層22bの下面に設けられる層であり、アンカー層26dは、第二原反層22bの上面に設けられる層である。アンカー層26c及び26dは、第一実施形態に記載のアンカー層26a及び26bと同様の構成を有している。
【0069】
(2.2)第二実施形態の効果
以上のような積層シートは、第一実施形態に記載の効果に加えて以下の効果を有する。(6)本実施形態の積層シートは、異なる無機粒子をそれぞれ含む第一原反層及び第二原反層を有している。
この構成によれば、積層シートの不燃性及びシート硬度をより向上させるとともに、原反層と原反層表面に設けられた層(絵柄印刷層、表面保護層)との層間密着性を向上させて層同士が剥離しにくくすることができる。
【0070】
3.第三実施形態
以下、本開示の第三実施形態に係る積層シートについて、図3を用いて説明する。
図3は、本開示の第三実施形態に係る積層シート3の一構成例を説明するための断面図である。
【0071】
積層シート3は、接着層11と、第一原反層22a及び第二原反層22bを有する原反層22と、絵柄模様層13と、上台樹脂層34a、第一トップコート層34b及び第二トップコート層34cを有する表面保護層14と、を備えている。積層シート2は、接着層11、第一原反層22a、第二原反層22b、絵柄模様層13、上台樹脂層34a、第一トップコート層34b及び第二トップコート層34cがこの順に積層されて構成されている。すなわち、積層シート2は、表面保護層14に代えて上台樹脂層34a、第一トップコート層34b及び第二トップコート層34cを有する表面保護層34を備える点で、第一実施形態に係る積層シート1と相違する。
【0072】
以下、第一原反層22a及び第二原反層22bについて説明する。なお、表面保護層34以外の各層(接着層11、第一原反層22a、第二原反層22b、絵柄模様層13)については、積層シート2の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0073】
(3.1)積層シートの基本構成
<表面保護層>
表面保護層34は、上台樹脂層34a、第一トップコート層34b及び第二トップコート層34cを備えている。図3に示すように、表面保護層34は、エンボス形状を有していても良い。
【0074】
上台樹脂層34aは、衝撃吸収(緩衝)等を目的とした層であり、絵柄模様層13と第一トップコート層34bとを接着するための接着剤層でもある。また、上台樹脂層34aは、絵柄模様層13を形成する際の絵柄模様を鮮明にしたり絵柄模様層13の耐傷性を向上させる機能を有する。上台樹脂層34aは、例えば、透明性を有するポリプロピレン樹脂により形成される。上台樹脂層34aの厚さは、例えば、150μm以上200μm以下程度である。
【0075】
第一トップコート層34bは、艶調整及び/又は絵柄模様層13の保護を目的としたトップコート層である。第一トップコート層34bは、例えば、紫外線硬化型樹脂により形成されることが好ましい。表面保護層34の厚さは、例えば、0.1μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0076】
第二トップコート層34cは、第一トップコート層34bの表面側に部分的に設けられ、第一トップコート層34bの表面の一部を被覆する層である。第一トップコート層34bの表面の一部としては、例えば、絵柄模様層13の絵柄模様と対向する部分が挙げられる。また、第二トップコート層34cの材料としては、例えば、第一トップコート層34bと同じ樹脂を採用できる。第二トップコート層34cには、フィラーを添加するように
してもよい。フィラーを添加することにより、第一トップコート層34bと異なる光沢や触感、質感、表面強度、摩擦等の機械的物性を付与できる。フィラーとしては、例えば、燃焼時において酸素の消費量が少ない材料が好ましく、例えば、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコンなどのジルコニウム化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、三酸化モリブデンあるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムの錯体など、三酸化アンチモンとシリカの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華の錯体、ジルコニウムのケイ酸、ジルコニウム化合物と三酸化アンチモンの錯体などが挙げられる。特に、炭酸カルシウムは製造手法による粒径のコントロールや表面処理によるポリオレフィン系樹脂との相溶性の制御が容易であり、また、材料コストとしても安価であるため化粧シートの低廉化の観点からも好適である。また、アクリル、ポリオレフィン、シリコーン等の樹脂のビーズや不定形粒子や、シリカ(特に中空シリカ)、アルミナ、金属酸化物等の無機物のビーズや不定形粒子を用いることができる。また、第二トップコート層34cの形成方法は、特に限定されるものではなく、既知の印刷手法を採用できる。なお、第二トップコート層34cは、一般に「触感コート層」や「マット導管印刷層」とも称される。
【0077】
表面保護層34は、例えば、絵柄模様層13の絵柄と同調した凹部と凸部とからなるエンボス形状を有することにより、触感による立体感を付与可能となっている。エンボス形状と絵柄模様層13の絵柄とのずれは、例えば、絵柄模様の形状に対して長手方向に10mm以下、短手方向(幅方向)に3mm以下の範囲内とすることが好ましい。例えば、絵柄模様が木目である場合には、木目の導管が伸びている方向が「絵柄模様の形状に対する長手方向」となり、長手方向と直交する方向が「絵柄模様の形状に対する短手方向」となる。特に、木目の導管が積層シート3の長手方向に沿って伸びている場合には、積層シート3の長手方向が「絵柄模様の形状に対する長手方向」となり、積層シート3の短手方向(幅方向)が「絵柄模様の形状に対する短手方向」となる。エンボス形状は、表面保護層34が透明であるため、斜光の反射により初めて強く視認されるが、エンボス形状と絵柄模様層13の絵柄とのずれが上記範囲内であれば、反射光と同時に絵柄模様層13の透過光を視認することが困難なため違和感がない。エンボス形状と絵柄模様層13の絵柄とのずれを一定範囲内へ抑えることにより、パターンの形状と分布を等しくシート全面で精度よく一致させた積層シート3を得ることができる。エンボス形状の凹部と凸部との高低差は、例えば、3μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。凹部と凸部との高低差は、目的とする積層シート3の意匠に適した数値を選ぶことができる。例えば、最大高低差(200μm)内で連続的な多段形状を取ることもできる。特に、巨視的な立体物としての形状を得るために、高低差は、10μm以上150μm以下の範囲がより好ましい。
【0078】
(3.2)第三実施形態の効果
以上のような積層シートは、第一実施形態、第二実施形態に記載の効果に加えて以下の効果を有する。
(7)本実施形態の積層シートは、エンボス形状を有し、絵柄模様層の絵柄模様と対向する部分に設けられた第二トップコート層を有している。
この構成によれば、積層シート表面に、触感による立体感を付与することができる。
【実施例0079】
以下、本開示に係る積層シートについて、実施例を挙げて説明する
積層例では、以下の各実施例及び各比較例で説明する構成の積層シートを作製し、床材上に貼り合せて積層シートの評価を行った。
【0080】
<実施例1>
実施例1では、原反層が一層の積層シートを形成する。
まず、原反層の材料となる無機質材料として平均粒子径が2μm、最大粒子径が30μmの炭酸カルシウム及び樹脂材料であるポリプロピレンをスーパーミキサーを用いて混合した。このとき、炭酸カルシウム及びポリプロピレンの合計量に対する炭酸カルシウムの含有量が50質量%となるようにして混合した。続いて、炭酸カルシウム及びポリプロピレンを加熱混錬し、混合物をTダイ押出機を用いて押出してポリプロピレン膜を製膜した。続いて、形成したポリプロピレン膜を二軸押出機で二軸に延伸して、炭酸カルシウムの周りに均一な微孔径を有する厚さ400μmの原反層を形成した。
【0081】
原反層の両面に、塩酢ビを含むウレタン系樹脂を塗工し、乾燥させて、厚さ5μmのアンカー層をそれぞれ形成した。続いて、原反層の上面(アンカー層の表面)に、ウレタン樹脂系インキを塗工し、乾燥させて、絵柄模様層を形成した。
絵柄模様層の表面上に、熱可塑性樹脂としてポリエチレンを塗工し硬化させて熱可塑性樹脂層を形成した後、さらにコート樹脂としてアクリル系樹脂を塗工し硬化させてコート層を形成し、厚さ100μmの表面保護層を形成した。
【0082】
続いて、原反層の下面(アンカー層の表面)に接着性樹脂を塗工して、厚さ1.0μmの接着層を形成した。
以上のようにして、実施例1の積層シートを製造した。
【0083】
<実施例2>
実施例1と同様にして原反層を形成し、第一原反層とした。
また、無機質材料として平均粒子径が2μm、最大粒子径が30μmのシリカ、樹脂材料としてポリプロピレンを用い、シリカ及びポリプロピレンの合計量に対するシリカの含有量が40質量%となるようにして混合した以外は実施例1の原反層と同様にして、第二原反層を作製した。このとき、第一原反層と第二原反層の膜厚の比が60:40となるように、第一原反層と第二原反層の膜厚を調整した。
続いて、第一原反層と第二原反層とを、溶融したポリエチレンを介してラミネート加工して貼り合せた。続いて、第二原反層の上面に、実施例1と同様にして絵柄模様層及び表面保護層を形成するとともに、第一原反層の下面に、実施例1と同様にして接着層を形成した。
以上のようにして、原反層が第一原反層と第二原反層とで構成された実施例2の積層シートを製造した。
【0084】
<実施例3>
表面保護層形成時に熱可塑性樹脂層を形成しなかった以外は実施例2と同様にして、実施例3の積層シートを製造した。
【0085】
<実施例4>
第一原反層に用いる炭酸カルシウムの平均粒子径を4μm、最大粒子径を50μmとした以外は実施例2と同様にして、実施例4の積層シートを製造した。
【0086】
<実施例5>
第一原反層に用いる炭酸カルシウムの含有量が、炭酸カルシウム及びポリプロピレンの合計量に対して95質量%となるようにした以外は実施例2と同様にして、実施例5の積層シートを製造した。
【0087】
<実施例6>
第一原反層に用いる炭酸カルシウムの含有量が、炭酸カルシウム及びポリプロピレンの合計量に対して15質量%となるようにした以外は実施例2と同様にして、実施例6の積層シートを製造した。
【0088】
<実施例7>
第二原反層に用いる炭酸カルシウムの平均粒子径を5μm、最大粒子径を50μmとした以外は実施例2と同様にして、実施例7の積層シートを製造した。
【0089】
<実施例8>
第二原反層に用いる炭酸カルシウムの含有量が、炭酸カルシウム及びポリプロピレンの合計量に対して60質量%となるようにした以外は実施例2と同様にして、実施例8の積層シートを製造した。
【0090】
<実施例9>
第一原反層と第二原反層の膜厚の比が25:75となるようにした以外は実施例2と同様にして、実施例9の積層シートを製造した。このとき、第一原反層及び第二原反層の合計膜厚は実施例2と同様のままとした。
【0091】
<比較例1>
炭酸カルシウムに代えて、平均粒子径が2μm、最大粒子径が30μmのウレタンビーズを用いて第一原反層を形成した以外は実施例2と同様にして、比較例1の積層シートを製造した。
【0092】
<比較例2>
シリカに代えて、アラミド繊維を用いて第二原反層を形成した以外は実施例2と同様にして、比較例2の積層シートを製造した。
【0093】
<比較例3>
シリカに代えて、均粒子径が2μm、最大粒子径が30μmのウレタンビーズを用いて第二原反層を形成した以外は実施例2と同様にして、比較例3の積層シートを製造した。
【0094】
<比較例4>
第一原反層及び第二原反層の表面にアンカー層を設けなかった以外は実施例2と同様にして、比較例3の積層シートを製造した。
【0095】
[評価]
(a)層間密着性
JIS K 5600-5-6に準拠した付着性(クロスカット法)試験により、各実施例及び各比較例の積層シートを構成する層間の密着性を評価した。試験において、剥離するマス目の個数が0個以上2個以下の場合を「○」、剥離するマス目の個数が3個以上5個以下の場合を「△」、剥離するマス目の個数が6個以上の場合を「×」と評価した。
【0096】
(b)不燃性
ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験により、各実施例及び各比較例の積層シートの不燃性を評価した。試験において、以下の1~3の要件のすべてを満たす場合を「○」、1~3の要件のうち2つを満たす場合を「△」、1~3の要件の1つを満たす、又は1つも満たさない場合を「×」として評価した。なお、不燃性基材としては、石こうボードを用いた。
1.総発熱量が8MJ/m以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
【0097】
(c)シート硬度
JIS K 5600-5-4に準拠した引っかき硬度(鉛筆法)試験により、各実施例及び各比較例の積層シートのシート硬度を評価した。シート硬度は、積層シートの表面を鉛筆で引っ掻き、積層シートの破れが発生するかどうかを目視にて確認することにより行った。試験において、積層シート表面に著しい不具合が生じない場合を「○」、積層シート表面に不具合が生じるが使用する上での問題はない場合を「△」、積層シート表面に顕著な不具合が生じる場合を「×」と評価した。
【0098】
(d)平滑性
各実施例及び各比較例の積層シートの製造工程において、アンカー材料(塩酢ビを含むウレタン系樹脂)を塗工する際に、原反層、又は第一原反層及び第二原反層の表面の形成状態を目視にて確認して、原反層の平滑性を評価した。評価において、原反層からの無機質材料の粉落ちによる版詰まり等が発生せず、均一でムラや抜けのないコート面を形成することが可能である場合を「○」、印刷条件または積層条件により、粉落ちによる版詰まり、ムラ、抜けが発生する場合を「△」、粉落ちによる版詰まりが発生、又は均一なコート面を形成することが極めて困難である場合を「×」と評価した。
【0099】
(e)表面粉吹き
各実施例及び各比較例の積層シートの製造工程において、原反層の表面又は積層した第一原反層及び第二原反層の表面を手でドライラビングし、無機質材料(炭酸カルシウム又はシリカ)の粉吹きや脱落の有無を目視にて評価した。評価において、手の表面に無機質粒子が全く確認できなかった場合を「○」、手の表面に無機質材料が確認できた場合を「△」、手の表面の全面に無機質材料を確認できた場合を「×」と評価した。
【0100】
(f)インキ密着性
各実施例及び各比較例の積層シートの製造工程において、絵柄模様層形成後の原反層(第二原反層)表面にニチバン製セロハンテープを圧着した後、10Nの力で引き剥がし、絵柄模様層内部又は原反層と絵柄模様層との層間での剥離の有無を目視にて評価した。評価において、絵柄模様層内部又は原反層と絵柄模様層との層間で剥離が発生しない場合を「○」、絵柄模様層内部又は原反層と絵柄模様層との層間の一部で剥離が発生した場合を「△」、セロハンテープ全面に絵柄模様層が付着し絵柄模様層内部又は原反層と絵柄模様層との層間で顕著な剥離が発生した場合を「×」とした。
【0101】
(g)加工性
各実施例及び各比較例の積層シートを折り曲げ再び開いた際に、折り曲げた部分における割れの発生や粉落ちの有無を目視にて評価した。評価において、折り曲げた部分において割れや粉落ちが全く発生しない場合を「○」、折り曲げた部分において微量な割れや粉落ちが生じた場合を「△」、折り曲げた部分において割れや粉落ちが顕著に発生した場合を「×」とした。
以下の表1に、各実施例及び各比較例の構成の抜粋を示す。また、以下の表2に、各実施例及び各比較例の評価結果を示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
表1に示すように、原反層、又は第一原反層及び第二原反層に無機質粒子を含み、原反層、又は第一原反層及び第二原反層の表面にアンカー層を有する各実施例の積層シートは、層間密着性、不燃性及びシート硬度の全てにおいて「×」評価がなく、各特性を両立することができた。
一方、原反層、又は第一原反層及び第二原反層の少なくとも一方に無機質粒子を含まないか、原反層、又は第一原反層及び第二原反層の表面にアンカー層が設けられていない各比較例の積層シートは、層間密着性、不燃性及びシート硬度の少なくとも一つが「×」評価となった。
【0105】
また、第一原反層に含まれる無機質材料の平均粒子径が2μm、含有量が50質量%の実施例1~3の積層シートは、無機質材料の平均粒子径が4μmの実施例4の積層シートや無機質材料の含有量が95質量%の実施例5の積層シートよりも平滑性が高く、また無機質材料の粉吹きが生じにくかった。また、実施例1~3の積層シートは、無機質材料の含有量が95質量%の実施例5の積層シートよりもインキ密着性及び加工性が高かった。
一方、実施例1~3の積層シートは、無機質材料の含有量が5質量%の実施例6の積層シートよりも不燃性及びシート硬度が高かった。
【0106】
さらに、第二原反層に含まれる無機質材料の平均粒子径が2μm、含有量が40質量%の実施例2,3の積層シートは、無機質材料の平均粒子径が5μmの実施例7の積層シートや無機質材料の含有量が60質量%の実施例8の積層シートよりも平滑性が高く、無機質材料の粉吹きが生じにくく、さらに加工性が高かった。
【0107】
さらに、第一原反層と第二原反層の膜厚比が60:40の実施例2,3の積層シートは、第一原反層と第二原反層の膜厚比が25:75の実施例9の積層シートと比較して不燃性、シート硬度及び加工性が高かった。
【0108】
以上の評価結果から、原反層(第一原反層及び第二原反層)に無機質材料が含まれ、アンカー層を備える積層シートは、原反層に無機質材料を含まない、又はアンカー層を備えない積層シートと比較して層間密着性、不燃性及びシート硬度が高くなることが確認された。
【0109】
本開示の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0110】
1,2,3 積層シート
11 接着層
12 原反層
12a 無機質材料
12b 空隙
13 絵柄模様層
14 表面保護層
16a,16b アンカー層
22 原反層
22a 第一原反層
22b 第二原反層
26a~26d アンカー層
34 表面保護層
34a 上台樹脂層
34b 第一トップコート層
34c 第二トップコート層
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-10-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料と無機質材料とを含む原反層と、
前記原反層の一方の面上に形成された表面保護層と、
少なくとも前記原反層の前記表面保護層側の面上に形成されたアンカー層と、
を備え
前記アンカー層は、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を含むウレタン系樹脂又は塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を含むアクリル系樹脂を含有しており、前記塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体の含有量と、前記ウレタン系樹脂又は前記アクリル系樹脂の含有量との比は、質量比で80:20から1:99の範囲内であ
積層シート。
【請求項2】
前記原反層は、前記無機質材料の周辺に形成された空隙を複数有し、
前記空隙は、前記原反層の全体に散在している
請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記原反層に形成された前記空隙は、前記原反層の厚み方向に延びる形状を有しており、前記空隙は、他の前記空隙とつながった形状となっている
請求項2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記無機質材料は、炭酸カルシウムを50質量%以上100質量%以下の範囲内で含んでいる
請求項1から3のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項5】
前記無機質材料は、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、三酸化モリブデンあるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムとの錯体、三酸化アンチモンとシリカとの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華との錯体、ジルコニウムのケイ酸、及びジルコニウム化合物と三酸化アンチモンとの錯体、並びにそれらの塩、さらに、シリカ、アルミナ、中空ガラスビーズ、アクリルビーズのうちの少なくとも1種である
請求項1から4のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項6】
前記無機質材料の平均粒子径は、μm以上μm以下の範囲内であり、且つ前記無機質材料の最大粒子径は、50μm以下である
請求項1からのいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項7】
前記樹脂材料は、熱可塑性樹脂である
請求項1からのいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステルの少なくとも1種である
請求項に記載の積層シート。
【請求項9】
JIS K 5600-5-6に準拠した付着性試験において、剥離するマス目の個数が0個以上2個以下である
請求項1からのいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項10】
無機質材料及び樹脂材料を混合し、
無機質材料及び樹脂材料を含む樹脂膜を製膜して原反層を形成し、
原反層の少なくとも一方の面に、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を含むウレタン系樹脂又は塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を含むアクリル系樹脂を含有しており、前記塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体の含有量と、前記ウレタン系樹脂又は前記アクリル系樹脂の含有量との比は、質量比で80:20から1:99の範囲内であるアンカー材料を塗工して、アンカー層を形成し、
前記アンカー層上に樹脂材料を塗工し、硬化させて、表面保護層を形成する
積層シートの製造方法。