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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177474
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】炭酸飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20241212BHJP
   A23L 27/00 20160101ALN20241212BHJP
   A23L 27/20 20160101ALN20241212BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/00 T
A23L27/00 Z
A23L27/20 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024175191
(22)【出願日】2024-10-04
(62)【分割の表示】P 2020045416の分割
【原出願日】2020-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】金沢 稔子
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋史
(72)【発明者】
【氏名】林 ゆめこ
(57)【要約】
【課題】本発明は、炭酸飲料において、炭酸に由来する炭酸感や爽快感が向上した炭酸飲料を提供する。
【解決手段】サビネンを0.5~4.0ppm含有し、レモン油とキーライム油のいずれも含有していない、炭酸飲料、サビネンを0.5~4.0ppm含有し、レモンの香味を有している、炭酸飲料、及び、炭酸飲料において、α-ビサボロール及びサビネンからなる群より選択される1種以上の香料を添加し、飲料中のα-ビサボロール濃度を0.25~2.0ppmに調整する、又は、飲料中のサビネン濃度を0.5~4.0ppmに調整する、炭酸飲料の製造方法(ただし、レモン油又はキーライム油を含有する香料を添加して飲料中のサビネン濃度を0.5~4.0ppmに調整する場合と、ペルシャンライム油を含有する香料を添加して飲料中のα-ビサボロール濃度を0.25~2.0ppmに調整する場合を除く。)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サビネンを0.5~4.0ppm含有し、レモン油とキーライム油のいずれも含有していない、炭酸飲料。
【請求項2】
柑橘系果実の香味を有する、請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】
前記柑橘系果実がレモンである、請求項2に記載の炭酸飲料。
【請求項4】
サビネンを0.5~4.0ppm含有し、レモンの香味を有している、炭酸飲料。
【請求項5】
無糖飲料である、請求項1~4のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項6】
炭酸飲料において、α-ビサボロール及びサビネンからなる群より選択される1種以上の香料を添加し、飲料中のα-ビサボロール濃度を0.25~2.0ppmに調整する、又は、飲料中のサビネン濃度を0.5~4.0ppmに調整する、炭酸飲料の製造方法(ただし、レモン油又はキーライム油を含有する香料を添加して飲料中のサビネン濃度を0.5~4.0ppmに調整する場合と、ペルシャンライム油を含有する香料を添加して飲料中のα-ビサボロール濃度を0.25~2.0ppmに調整する場合を除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸感や爽快感が向上した炭酸飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、飲用適の水に二酸化炭素を圧入した飲料や、これに甘味料、酸味料、フレーバリング等を加えた飲料である。フレーバリングには、果汁や香料等が主に使用されている。炭酸飲料の多くは、ラムネやコーラ、ジンジャーエールのように、甘味と酸味の両方が強いが、近年の健康志向、低カロリーへの訴求から、糖類を含まない無糖飲料である炭酸飲料(いわゆる炭酸水)のニーズが高まっている。
【0003】
炭酸飲料においては、炭酸ガスに由来する炭酸感や爽快感が重要な特性である。特に、甘味や酸味が弱い炭酸飲料では、炭酸刺激のより強いものが好まれる傾向にある。炭酸感は、飲料に圧入する炭酸ガス量を増やすことによって増強できるが、炭酸ガスボリュームが高くなると、容器への充填時や開栓時に噴きが生じやすくなる。
【0004】
一方で、香料は、自身が有する香味を付与する以外にも、飲料の様々な特性を改善するために用いられることがある。例えば、β-イオノン、サリチル酸メチル、1-p-メンテン-9-オール、1-p-メンテン-9-イルアセテート、サビネン、p-サイメンは、それ自体はみかんの香味を有していないものの、これらを飲食品や香粧品に適切な量配合することにより、果汁感を向上させることができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-97513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、炭酸ガスボリュームを高めることなく、炭酸感や爽快感を向上させた炭酸飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、炭酸飲料にα-ビサボロール(α-bisabolol)又はサビネン(Sabinene)を含有させることにより、炭酸ガスボリュームを高めることなく、炭酸感や爽快感を向上させられることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明に係る炭酸飲料、炭酸飲料の製造方法、炭酸飲料の炭酸感向上方法、炭酸飲料の爽快感向上方法、及び炭酸感向上剤は、下記[1]~[10]である。
[1] α-ビサボロールを0.25~2.0ppm含有する、炭酸飲料。
[2] さらに、サビネンを0.5~4.0ppm含有する、前記[1]の炭酸飲料。
[3] サビネンを0.5~4.0ppm含有する、炭酸飲料。
[4] 無糖飲料である、前記[1]~[3]のいずれかの炭酸飲料。
[5] 柑橘系果実の香味を有する、前記[1]~[4]のいずれかの炭酸飲料。
[6] 前記柑橘系果実がレモンである、前記[5]の炭酸飲料。
[7] 炭酸飲料において、α-ビサボロール及びサビネンからなる群より選択される1種以上の香料を添加し、飲料中のα-ビサボロール濃度を0.25~2.0ppmに調整する、又は、飲料中のサビネン濃度を0.5~4.0ppmに調整する、炭酸飲料の製造方法。
[8] 炭酸飲料において、α-ビサボロール及びサビネンからなる群より選択される1種以上の香料を添加し、飲料中のα-ビサボロール濃度を0.25~2.0ppmに調整する、又は、飲料中のサビネン濃度を0.5~4.0ppmに調整する、炭酸飲料の炭酸感向上方法。
[9] 炭酸飲料において、α-ビサボロール及びサビネンからなる群より選択される1種以上の香料を添加し、飲料中のα-ビサボロール濃度を0.25~2.0ppmに調整する、又は、飲料中のサビネン濃度を0.5~4.0ppmに調整する、炭酸飲料の爽快感向上方法。
[10] α-ビサボロール及びサビネンからなる群より選択される1種以上を有効成分とし、炭酸飲料に添加される、炭酸感向上剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、炭酸ガスボリュームが同程度の炭酸飲料よりも、炭酸感や爽快感が高い炭酸飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明及び本願明細書において、「炭酸飲料」とは、炭酸ガスを含有する飲料を意味する。飲料に含まれている炭酸ガス量は、炭酸ガスボリューム[vol]で表される。炭酸ガスボリューム[vol]とは、1気圧、20℃における、炭酸飲料の体積に対する、炭酸飲料中に溶解している炭酸ガスの体積の比を指す。炭酸ガスボリュームは、例えば、市販の測定器(京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500A)を用いて測定することができる。より具体的には、試料を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値から算出することで得ることができる。
【0011】
本発明に係る炭酸飲料の炭酸ガスボリュームは、特に限定されるものではなく、炭酸飲料の一般的な範囲内とすることができる。本発明に係る炭酸飲料が、特に無糖炭酸飲料の場合、炭酸ガスボリュームの下限値は、ガスボリュームを上げることで炭酸感や爽快感を上げることが難しい3.0volであることが好ましく、4.0volであることがより好ましい。また、炭酸ガスボリュームの上限値は、5.5volとすることができる。
【0012】
本発明及び本願明細書において、炭酸飲料の「炭酸感」とは、炭酸ガスの微小な気泡が口腔内で発生・成長する時やはじける時に感じられる刺激を意味する。炭酸ガスボリュームが高い飲料程、炭酸感は高くなる。
【0013】
本発明及び本願明細書において、炭酸飲料の「爽快感」とは、喫飲後の口腔内の後味の残り難さを意味する。炭酸飲料の爽快感が向上したとは、喫飲後の味の後引きが弱くなっており、すっきりとした感じが強くなったことを意味する。
【0014】
本発明及び本願明細書において、「無糖飲料」とは、実質的に糖類を含まない飲料を意味する。健康増進法に基づく栄養表示基準においては、糖類の含有量が飲料100mL当たり0.5g未満であれば、無糖と表示することができる。本発明及び本願明細書においても、糖類の含有量が飲料100mL当たり0.5g未満である飲料を無糖飲料といい、糖類の含有量が飲料100mL当たり0.5g以上である飲料を有糖飲料という。なお、糖類とは、果糖ぶどう糖液糖や砂糖などの単糖類及び二糖類を指す。
【0015】
本発明は、炭酸飲料に、α-ビサボロール(bisabola-3,7(11)-dien-10-ol)及びサビネン(1-isopropyl-4-methylenebicyclo[3.1.0]hexane)からなる群より選択される1種以上の香気成分を適切な含有量となるように調整することによって、炭酸感や刺激感を向上させることを特徴とする。α-ビサボロールとサビネンは、いずれも柑橘類に含まれている香気成分であるが、柑橘風味の強さとの相関はあまりなく、柑橘系果実の果汁や柑橘系香料を含む飲料(柑橘系飲料)には、微量(例えば、α-ビサボロールは0~50ppb、サビネンは0~10ppb)含まれているにすぎない。α-ビサボロール及びサビネンが炭酸飲料の炭酸感や刺激感を向上させる作用があり、炭酸飲料に添加される炭酸感向上剤の有効成分となり得ることは、本願発明者らが初めて見出した。
【0016】
本発明に係る炭酸飲料は、第1の態様として、α-ビサボロールを0.25~2.0ppm含有する炭酸飲料である。炭酸飲料にα-ビサボロールを0.25~2.0ppm含有させることにより、同じ炭酸ガスボリュームであって、α-ビサボロールを含有していない又はその含有量がより少ない炭酸飲料よりも、炭酸感と爽快感を向上させることができ、炭酸感と爽快感が強い炭酸飲料を製造できる。炭酸飲料中のα-ビサボロール含有量は、0.5~2.0ppmが好ましく、1.0~2.0ppmがより好ましく、1.5~2.0ppmがさらに好ましい。なお、0.25~2.0ppmは、α-ビサボロール自体の香気は感じられない濃度範囲である。
【0017】
本発明に係る炭酸飲料は、第2の態様として、サビネンを0.5~4.0ppm含有する炭酸飲料でもある。炭酸飲料にサビネンを0.5~4.0ppm含有させることにより、同じ炭酸ガスボリュームであって、サビネンを含有していない又はその含有量がより少ない炭酸飲料よりも、炭酸感と爽快感を向上させることができ、炭酸感と爽快感が強い炭酸飲料を製造できる。炭酸飲料中のサビネン含有量は、1.0~4.0ppmが好ましく、2.0~4.0ppmがより好ましい。なお、0.5~4.0ppmは、サビネン自体の香気は感じられない濃度範囲である。
【0018】
本発明に係る炭酸飲料としては、α-ビサボロールとサビネンの両方を含有するものであってもよい。α-ビサボロールとサビネンを併用することにより、炭酸感と爽快感に対してより高い向上効果が得られる。両者を併用する場合、比率は特に限定されるものではない。例えば、両者を、α-ビサボロール:サビネン=1:1~1:4の範囲内に含有させることにより、優れた炭酸感と爽快感の向上効果が得られる。
【0019】
本発明において、炭酸飲料に添加されるα-ビサボロールは、化学合成されたものであってもよく、天然物から抽出・精製されたものであってもよい。また、α-ビサボロールを含有する香料を原料としてもよい。同様に、炭酸飲料に添加されるサビネンとしては、化学合成されたものであってもよく、天然物から抽出・精製されたものであってもよい。また、サビネンを含有する香料を原料としてもよい。
【0020】
α-ビサボロール及びサビネンは、一般的に飲料の原料として使用される各種天然物や香料にはあまり含まれていない。このため、炭酸飲料中のα-ビサボロール及びサビネンの含有量は、原料として配合したα-ビサボロール及びサビネンの量から算出することができる。その他、炭酸飲料中のα-ビサボロール及びサビネンは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いたジクロロメタン抽出法等により測定することができる。定量には、例えば、ヘプタン-3-オールを用いた内部標準法により、目的成分と内部標準物質のピーク面積比と濃度比の関係をもとに計算することができる。
【0021】
α-ビサボロール又はサビネンを含有させることによって炭酸感又は爽快感を向上させる炭酸飲料としては、無糖飲料であってもよく、有糖飲料であってもよい。無糖炭酸飲料は、実質的に糖類を非含有である炭酸飲料(つまり、糖類の含有量が100mL当たり0.5g未満である炭酸飲料)を指し、一般的には、炭酸水とも称されている。好ましい無糖炭酸飲料は、飲料100mL当たり糖類の含有量が0.0gである。本発明に係る炭酸飲料としては、α-ビサボロール又はサビネンによる炭酸感及び爽快感の向上効果がより強く発揮されることから、無糖炭酸飲料であることが好ましく、糖類以外の甘味料、例えばアスパルテームなどの高甘味度甘味料を含有しない無糖炭酸飲料がより好ましく、糖類を含めた全ての甘味料が含まれていない無糖炭酸飲料がさらに好ましい。
【0022】
炭酸飲料が含有する甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、砂糖(ショ糖やグラニュー糖を含む)、果糖、高果糖液糖、ぶどう糖、オリゴ糖、乳糖、はちみつ、水飴(麦芽糖)、糖アルコール、高甘味度甘味料等が挙げられる。糖アルコールとしては、例えば、還元水飴(還元澱粉加水分解物)、エリスリトール、トレハロース、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、マンニトール、ラクチトール、還元パラチノース、グリセリン等が挙げられる。高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、アラビノース、カンゾウ抽出物、キシロース、ステビア、タウマチン、ラカンカ抽出物、ラムノース及びリボースが挙げられる。本発明に係る炭酸飲料が有糖飲料の場合、含有する甘味料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0023】
α-ビサボロール又はサビネンを含有させることによって炭酸感又は爽快感を向上させる炭酸飲料としては、風味を有する炭酸飲料(フレーバー炭酸飲料)であってもよく、風味のない炭酸飲料(ノンフレーバー炭酸飲料)であってもよい。また、本発明に係る炭酸飲料は、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料又はローアルコール飲料であってもよい。フレーバー炭酸飲料としては、果実や野菜などを原料とする清涼飲料や、果実等の風味を付与する香料を含有する清涼飲料、茶、紅茶、コーヒー、ココア、香草茶等の嗜好性飲料、牛乳や発酵乳を原料とする乳性飲料等に、炭酸水を混合したり、炭酸ガスを圧入することによって得られる炭酸飲料が挙げられる。また、ビール、ワイン、シードル等の発泡性アルコール飲料であってもよい。
【0024】
本発明において、α-ビサボロール又はサビネンを含有させることにより炭酸感及び爽快感を向上させる炭酸飲料としては、フレーバー炭酸飲料であることが好ましい。飲料の種類によっては、添加したα-ビサボロール等によって、炭酸感等は改善されるものの、飲料自体の風味が損なわれる場合がある。ノンフレーバー炭酸飲料よりもフレーバー炭酸飲料のほうが、α-ビサボロールやサビネンの添加による飲料本来の風味への影響が抑えられるため、炭酸感や刺激感の改善のために十分量のα-ビサボロールやサビネンを含有させた場合でも、飲料の風味が損なわれ難い。
【0025】
本発明に係る炭酸飲料としては、α-ビサボロールやサビネン自体の香気成分との相性が良好であることから、フレーバー炭酸飲料の中でも、果実の香味を有する炭酸飲料であることが好ましく、柑橘系果実の香味を有する炭酸飲料であることがより好ましい。柑橘系果実としては、例えば、レモン、グレープフルーツ、ゆず、ライム、シイクワシャー、オレンジ、みかん等が挙げられ、レモンが特に好ましい。柑橘系以外の果実としては、例えば、リンゴ、もも、ブドウ、メロン、イチゴ、マンゴー、パインアップル、カシス、バナナ等が挙げられる。
【0026】
本発明に係る炭酸飲料は、炭酸ガスとα-ビサボロール及び/又はサビネンに加えて、通常の飲料に用いられる甘味料、酸味料、香料(フレーバー)、果実、果汁、野菜汁、酸化防止剤、塩類などのミネラル、苦味料、着色料、栄養強化剤、pH調整剤、消泡剤、乳化剤などを含んでもよい。甘味料としては前記で挙げられたものを用いることができる。
【0027】
酸味料としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、氷酢酸、フマル酸、フィチン酸、リン酸及びそれらの塩が挙げられる。これら酸味料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0028】
果実や果汁としては、一般的に飲料の原料として使用されるものであれば特に限定されるものではない。果実又は果汁としては、柑橘系果実又はその果汁が好ましく、柑橘系以外の果実又はその果汁であってもよい。柑橘系果実及び柑橘系以外の果実としては、前記で挙げられたものと同様のものが挙げられる。これら果実又は果汁は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0029】
野菜汁の野菜の種類としては、野菜ジュースの原料として一般的に用いられるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、トマト、ニンジン、ホウレン草、キャベツ、メキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、セロリ、レタス、パセリ、クレソン、ケール、大豆、ビート、赤ピーマン、カボチャ、小松菜等の野菜汁を用いることができる。これら野菜汁は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0030】
香料としては、天然香料であってもよく、合成香料であってもよい。具体的には、フルーツフレーバー、植物フレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバー、又はこれらの混合物が挙げられる。フルーツフレーバーにおける「フルーツ」や果汁が由来する「フルーツ」としては、例えば、前記の果実が挙げられる。これら香料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0031】
栄養強化剤としては、ヒトをはじめとする動物が摂取することによりいずれかの生理機能が改善することが期待される成分であれば特に限定されるものではない。当該成分としては、例えば、水溶性食物繊維、ポリフェノール、カテキン類、微生物菌体等が挙げられる。これら栄養強化剤は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0032】
水溶性食物繊維とは、水に溶解し、かつヒトの消化酵素により消化されない又は消化され難い炭水化物を意味する。水溶性食物繊維としては、例えば、大豆食物繊維(可溶性大豆多糖類)、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、ガラクトマンナン、イヌリン、グアーガム分解物、ペクチン、アラビアゴム等が挙げられる。
【0033】
消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系消泡剤等が挙げられる。
乳化剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等が挙げられる。
【0034】
本発明に係る炭酸飲料が容器詰飲料である場合、本発明に係る炭酸飲料を充填する容器としては、特に限定されるものではない。具体的には、ガラス瓶、缶、可撓性容器等が挙げられる。可撓性容器としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の可撓性樹脂を成形してなる容器が挙げられる。可撓性容器は、単層樹脂からなるものであってもよく、多層樹脂からなるものであってもよい。
【0035】
本発明に係る炭酸飲料は、一般的には、各原料を混合する方法(調合法)によって製造できる。例えば、具体的には、各原料を混合することにより、調合液を調製する調合工程と、得られた調合液に炭酸ガスを加えるガス導入工程と、により製造することができる。
【0036】
まず、調合工程において、原料を混合することにより、調合液を調製する。調合工程においては、炭酸ガス以外の全ての原料を混合した調合液を調製することが好ましい。各原料を混合する順番は特に限定されるものではない。原料水に、全ての原料を同時に添加してもよく、先に添加した原料を溶解させた後に残る原料を添加する等、順次原料を添加してもよい。また、例えば、原料水に、固形(例えば粉末状や顆粒状)の原料を混合してもよく、固形原料を予め水溶液としておき、これらの水溶液、必要に応じて原料水を混合してもよい。さらに、原料水に原料を加熱したものを入れてもよく、調製した調合液を加熱してもよい。
【0037】
調合工程において調製された調合液に、不溶物が生じた場合には、ガス導入工程の前に、当該調合液に対して濾過等の不溶物を除去する処理を行うことが好ましい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、濾過法、遠心分離法等の当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。本発明においては、不溶物は濾過除去することが好ましく、濾過法により除去することがより好ましい。
【0038】
次いで、ガス導入工程として、調合工程により得られた調合液に炭酸ガスを加える。これにより、炭酸飲料を得る。なお、炭酸ガスの添加は、常法により行うことができる。例えば、調合工程により得られた調合液、及び炭酸水を混合してよく、調合工程により得られた調合液に炭酸ガスを直接加えて溶け込ませてもよい。
【実施例0039】
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
【0040】
<炭酸飲料の官能評価>
炭酸飲料の炭酸感、爽快感、刺激の強さ、及びおいしさ(総合評価)について、6~10人の専門パネルにより、11段階(0点が最も感じられない、10点が最も感じられる)で評価した。評価は、炭酸ガス圧入前のベース液(ガスボリュームが0.0)、当該ベース液に炭酸ガスをガスボリューム(GV)が3.5、4.0又は4.5となるように圧入した液を調製し、それらを評価基準液とした。具体的には、表1に示すように、炭酸圧が0GVであるベース液の評点を0点、3.5GVであるベース液の評点を1点、4GVであるベース液の評点を5点、4.5GVであるベース液の評点を10点とし、点数が高いほど強く感じられるとした。
【0041】
【表1】
【0042】
特に記載のない限り、ベース液は下記表2に記載の組成のいずれかを用いた。
【0043】
【表2】
【0044】
[実施例1]
刺激炭酸感と関連性が高い香気成分を網羅的にスクリーニングしたところ、α-ビサボロール、サビネン、酢酸ゲラニル、及びγ-テルピネンが選出された。これらについて、炭酸飲料に配合した場合における炭酸感、爽快感、刺激の強さに対する影響を調べた。
具体的には、レモン香料(0.5g/L)を配合した水(レモンフレーバー水)をベース液とし、このベース液に炭酸ガスボリュームが4.0GVとなるように圧入した液を対照サンプルとした。この対照サンプルに、α-ビサボロール(1.0ppm)、サビネン(2.0ppm)、酢酸ゲラニル(2.0ppm)、又はγ-テルピネン(1.0ppm)をそれぞれ添加した液をサンプルとし、各サンプルについて、前記の通り官能評価を行った。結果を表3に示す。なお、これらの香気成分の添加量は、市販されている飲料に含有されている濃度より顕著に多く、かつ添加により対照サンプルの本来の香味に影響を与えない濃度とした。
【0045】
【表3】
【0046】
この結果、α-ビサボロールとサビネンを添加したサンプルでは、炭酸感、爽快感、及び刺激の強さがいずれも向上していた。つまり、α-ビサボロールとサビネンは炭酸感、爽快感、及び刺激の強さを向上させる効果を有することが明らかとなった。一方で、酢酸ゲラニルとγ-テルピネンを含有させたサンプルでは、これらの向上効果が確認されなかった。
【0047】
[実施例2]
無糖ノンフレーバー炭酸飲料に対する、α-ビサボロールとサビネンの影響を調べた。具体的には、表1のベース液1をベース液とし、このベース液に炭酸ガスボリュームが4.0GVとなるように圧入した液を対照サンプルとした。この対照サンプルに、α-ビサボロールを0.25~2.0ppm、又はサビネンを0.5~4.0ppm添加した液をサンプルとし、各サンプルについて、前記の通り官能評価を行った。結果を表4及び5に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
無糖ノンフレーバー炭酸飲料において、α-ビサボロールを0.25~2.0ppm添加したサンプル及びサビネンを0.5~4.0ppm添加したサンプルでは、炭酸感、爽快感、及び刺激の強さがいずれも向上していた。また、α-ビサボロールとサビネンによる炭酸感等の向上効果は、後記実施例4の有糖ノンフレーバー炭酸飲料の場合よりも強く発揮されていた。
【0051】
[実施例3]
無糖レモンフレーバー炭酸飲料に対する、α-ビサボロールとサビネンの影響を調べた。具体的には、表1のベース液2をベース液とし、このベース液に炭酸ガスボリュームが4.0GVとなるように圧入した液を対照サンプルとした。この対照サンプルに、α-ビサボロールを0.25~2.0ppm、又はサビネンを0.5~4.0ppm添加した液をサンプルとし、各サンプルについて、前記の通り官能評価を行った。結果を表6及び7に示す。
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】
【0054】
無糖レモンフレーバー炭酸飲料において、α-ビサボロールを0.25~2.0ppm添加したサンプルでは、炭酸感、爽快感、及び刺激の強さがいずれも向上しており、特に0.5~2.0ppm添加したサンプルでは高い向上効果が確認された。一方で、サビネンを添加したサンプルでは、添加量が2.0~4.0ppmで、炭酸感、爽快感、及び刺激の強さの向上効果がみられた。また、α-ビサボロールとサビネンによる炭酸感等の向上効果は、後記実施例5の有糖レモンフレーバー炭酸飲料よりも強く発揮されていた。また、いずれのサンプルもα-ビサボロール、サビネン自体の香気は感じられなかった。
【0055】
[実施例4]
有糖ノンフレーバー炭酸飲料に対する、α-ビサボロールとサビネンの影響を調べた。具体的には、表1のベース液3をベース液とし、このベース液に炭酸ガスボリュームが4.0GVとなるように圧入した液を対照サンプルとした。この対照サンプルに、α-ビサボロールを0.25~2.0ppm、又はサビネンを0.5~4.0ppm添加した液をサンプルとし、各サンプルについて、前記の通り官能評価を行った。結果を表8及び9に示す。
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
有糖ノンフレーバー炭酸飲料において、α-ビサボロールを0.5~2.0ppm添加したサンプルでは、炭酸感、爽快感、及び刺激の強さがいずれも向上していた。一方で、サビネンを添加したサンプルでは、添加量が2.0~4.0ppmで、炭酸感、爽快感、及び刺激の強さの向上効果がみられた。また、いずれのサンプルもα-ビサボロール、サビネン自体の香気は感じられなかった。
【0059】
[実施例5]
有糖レモンフレーバー炭酸飲料に対する、α-ビサボロールとサビネンの影響を調べた。具体的には、表1のベース液4をベース液とし、このベース液に炭酸ガスボリュームが4.0GVとなるように圧入した液を対照サンプルとした。この対照サンプルに、α-ビサボロールを0.25~2.0ppm、又はサビネンを0.5~4.0ppm添加した液をサンプルとし、各サンプルについて、前記の通り官能評価を行った。結果を表10及び11に示す。
【0060】
【表10】
【0061】
【表11】
【0062】
有糖レモンフレーバー炭酸飲料において、α-ビサボロールを0.5~2.0ppm添加したサンプルでは、炭酸感、爽快感、及び刺激の強さがいずれも向上していた。一方で、サビネンを添加したサンプルでは、添加量が2.0~4.0ppmで、炭酸感、爽快感、及び刺激の強さの向上効果がみられた。また、いずれのサンプルもα-ビサボロール、サビネン自体の香気は感じられなかった。
【0063】
[実施例6]
無糖ノンフレーバー炭酸飲料に対する、α-ビサボロールとサビネンの影響を調べた。具体的には、表1のベース液1をベース液とし、このベース液に炭酸ガスボリュームが4.0GVとなるように圧入した液を対照サンプルとした。この対照サンプルに、α-ビサボロールを0~1.5ppm及びサビネンを0~3.0ppm添加した液をサンプルとし、各サンプルについて、前記の通り官能評価を行った。結果を表12に示す。
【0064】
【表12】
【0065】
実施例2の結果と比較したところ、α-ビサボロールとサビネンを併用したサンプルのほうが、それぞれ単独で添加したサンプルよりも、炭酸感や爽快感が良好であり、両者を併用することにより、より高い向上効果が得られることがわかった。特に、両者を、α-ビサボロール:サビネン=1:1~1:4の範囲内に含有させたサンプル3~5は、炭酸感や爽快感に優れていた。また、α-ビサボロールとサビネンによる炭酸感等の向上効果は、後記実施例8の有糖ノンフレーバー炭酸飲料の場合よりも強く発揮されていた。また、いずれのサンプルもα-ビサボロール、サビネン自体の香気は感じられなかった。
【0066】
[実施例7]
無糖レモンフレーバー炭酸飲料に対する、α-ビサボロールとサビネンの影響を調べた。具体的には、表1のベース液2をベース液とし、このベース液に炭酸ガスボリュームが4.0GVとなるように圧入した液を対照サンプルとした。この対照サンプルに、α-ビサボロールを0~1.5ppm及びサビネンを0~3.0ppm添加した液をサンプルとし、各サンプルについて、前記の通り官能評価を行った。結果を表13に示す。
【0067】
【表13】
【0068】
実施例3の結果と比較したところ、α-ビサボロールとサビネンを併用したサンプルのほうが、それぞれ単独で添加したサンプルよりも、炭酸感や爽快感が良好であり、両者を併用することにより、より高い向上効果が得られることがわかった。特に、サンプル3~5は、炭酸感や爽快感に優れていた。また、α-ビサボロールとサビネンによる炭酸感等の向上効果は、後記実施例9の有糖レモンフレーバー炭酸飲料よりも強く発揮されていた。また、いずれのサンプルもα-ビサボロール、サビネン自体の香気は感じられなかった。
【0069】
[実施例8]
有糖レモンフレーバー炭酸飲料に対する、α-ビサボロールとサビネンの影響を調べた。具体的には、表1のベース液3をベース液とし、このベース液に炭酸ガスボリュームが4.0GVとなるように圧入した液を対照サンプルとした。この対照サンプルに、α-ビサボロールを0~1.5ppm及びサビネンを0~3.0ppm添加した液をサンプルとし、各サンプルについて、前記の通り官能評価を行った。結果を表14に示す。
【0070】
【表14】
【0071】
実施例4の結果と比較したところ、α-ビサボロールとサビネンを併用したサンプルのほうが、それぞれ単独で添加したサンプルよりも、炭酸感や爽快感が良好であり、両者を併用することにより、より高い向上効果が得られることがわかった。特に、サンプル3~5は、炭酸感や爽快感に優れていた。また、いずれのサンプルもα-ビサボロール、サビネン自体の香気は感じられなかった。
【0072】
[実施例9]
有糖レモンフレーバー炭酸飲料に対する、α-ビサボロールとサビネンの影響を調べた。具体的には、表1のベース液4をベース液とし、このベース液に炭酸ガスボリュームが4.0GVとなるように圧入した液を対照サンプルとした。この対照サンプルに、α-ビサボロールを0~1.5ppm及びサビネンを0~3.0ppm添加した液をサンプルとし、各サンプルについて、前記の通り官能評価を行った。結果を表15に示す。
【0073】
【表15】
【0074】
実施例5の結果と比較したところ、α-ビサボロールとサビネンを併用したサンプルのほうが、それぞれ単独で添加したサンプルよりも、炭酸感や爽快感が良好であり、両者を併用することにより、より高い向上効果が得られることがわかった。特に、サンプル3~5は、炭酸感や爽快感に優れていた。また、いずれのサンプルもα-ビサボロール、サビネン自体の香気は感じられなかった。