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特開2024-177489光照射剥離用接着剤組成物及び積層体並びに積層体の製造方法及び剥離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177489
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】光照射剥離用接着剤組成物及び積層体並びに積層体の製造方法及び剥離方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 11/06 20060101AFI20241212BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20241212BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C09J11/06
H01L21/02 C
C09J201/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024175703
(22)【出願日】2024-10-07
(62)【分割の表示】P 2020558377の分割
【原出願日】2019-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2018216788
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019098889
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥野 貴久
(72)【発明者】
【氏名】森谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】荻野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 涼
(72)【発明者】
【氏名】新城 徹也
(57)【要約】
【課題】支持体の接合時(硬化時)やウエハー裏面の加工時、さらには部品実装プロセスにおける耐熱性に優れ、支持体の剥離時にはレーザーを照射することで容易に剥離可能な接着層として好適な薄膜を与える光照射剥離用接着剤組成物及びそれを用いた積層体並びに積層体の製造方法及び剥離方法を提供する。
【解決手段】
光照射により剥離可能な光照射剥離用接着剤組成物であって、接着剤成分(S)と、光吸収性有機化合物(X)とを含み、前記光吸収性有機化合物(X)が、芳香族環を1つ以上と、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環を1つ以上と、カルボニル基及びチオカルボニル基から選択される1つ以上とを分子内に含むことを特徴とする光照射剥離用接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射により剥離可能な光照射剥離用接着剤組成物であって、
接着剤成分(S)と、光吸収性有機化合物(X)とを含むことを特徴とする光照射剥離用接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射剥離用接着剤組成物及び積層体並びに積層体の製造方法及び剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来2次元的な平面方向に集積してきた半導体ウエハーは、より一層の集積化を目的に平面を更に3次元方向にも集積(積層)する半導体集積技術が求められている。この3次元積層はシリコン貫通電極(TSV:through silicon via)によって結線しながら多層に集積していく技術である。多層に集積する際に、集積されるそれぞれのウエハーは形成された回路面とは反対側(即ち、裏面)を研磨によって薄化し、薄化された半導体ウエハーを積層する。
【0003】
薄化前の半導体ウエハー(ここでは単にウエハーとも呼ぶ)を、研磨装置で研磨するために支持体に接着される。その際の接着は研磨後に容易に剥離されなければならないため、仮接着と呼ばれる。この仮接着は支持体から容易に取り外されなければならず、取り外しに大きな力を加えると薄化された半導体ウエハーは、切断されたり変形したりすることがあり、その様なことが生じない様に、容易に取り外される。しかし、半導体ウエハーの裏面研磨時に研磨応力によって外れたりずれたりすることは好ましくない。従って、仮接着に求められる性能は研磨時の応力に耐え、研磨後に容易に取り外されることである。
【0004】
例えば研磨時の平面方向に対して高い応力(強い接着力)を持ち、取り外し時の縦方向に対して低い応力(弱い接着力)を有する性能が求められる。
【0005】
この様な接着と分離プロセスのためにレーザー照射による方法が開示されている(特許文献1、特許文献2を参照)。
【0006】
しかし、これらの接着と分離プロセスに用いられる仮接着剤はレーザーの照射により発熱が生じウエハーへの大きなダメージの虞があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-64040号公報
【特許文献2】特開2012-106486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、支持体の接合時(硬化時)やウエハー裏面の加工時、さらには部品実装プロセスにおける耐熱性に優れ、支持体の剥離時にはレーザーを照射することで容易に剥離可能な接着層として好適な薄膜を与える光照射剥離用接着剤組成物及びそれを用いた積層体並びに積層体の製造方法及び剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、接着剤成分と、所定の光吸収性有機化合物とを含む組成物から得られる膜が、支持体の接合時(硬化時)やウエハー裏面の加工時、さらには部品実装プロセスにおける耐熱性に優れ、支持体の剥離時にはレーザーを照射することで容易に剥離可能な接着層として好適であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
1.光照射により剥離可能な光照射剥離用接着剤組成物であって、
接着剤成分(S)と、光吸収性有機化合物(X)とを含み、
前記光吸収性有機化合物(X)が、芳香族環を1つ以上と、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環を1つ以上と、カルボニル基及びチオカルボニル基から選択される1つ以上とを分子内に含むことを特徴とする光照射剥離用接着剤組成物、
2.光照射により剥離可能な光照射剥離用接着剤組成物であって、
接着剤成分(S)と、光吸収性有機化合物(X)とを含み、
前記光吸収性有機化合物(X)が、芳香族環を1つ以上と、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環を1つ以上と、カルボニル基又はチオカルボニル基を1つ以上とを分子内に含むことを特徴とする1の光照射剥離用接着剤組成物、
3.前記光吸収性有機化合物(X)が、芳香族環を2つ以上と、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環を2つ以上と、カルボニル基又はチオカルボニル基を2つ以上とを分子内に含むことを特徴とする1又は2の光照射剥離用接着剤組成物、
4.前記芳香族環が、前記ヘテロ原子をその環構成原子に含む環と縮合しており、前記カルボニル基又は前記チオカルボニル基の炭素原子が、前記ヘテロ原子をその環構成原子に含む環の環構成原子であることを特徴とする3の光照射剥離用接着剤組成物、
5.前記光吸収性有機化合物(X)が、式(T1-1)又は(T2-1)で表される1又は2の光照射剥離用接着剤組成物、
【0011】
【化1】
(X~Xは、芳香環を構成する炭素原子であり、互いに独立して、芳香環を構成する炭素原子以外に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基と結合しており、Xは、互いに独立して、ヘテロ原子を表す。)
6.前記光吸収性有機化合物(X)が、チオインジゴ誘導体又はイソチオインジゴ誘導体である1又は2の光照射剥離用接着剤組成物、
7.前記チオインジゴ誘導体又はイソチオインジゴ誘導体が、式(T1-2)又は(T2-2)で表される6の光照射剥離用接着剤組成物、
【0012】
【化2】
(式中、各Rは、ベンゼン環に置換する原子又は基であり、互いに独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表し、a~dは、互いに独立して、0~4の整数である。)
8.前記チオインジゴ誘導体又はイソチオインジゴ誘導体が、式(T1-3)又は(T2-3)で表される7の光照射剥離用接着剤組成物、
【0013】
【化3】
(式中、各R及び各Rは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。)
9.前記接着剤成分(S)が、ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)を含む1~8のいずれかの光照射剥離用接着剤組成物、
10.更に、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分、メチル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分及びフェニル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分からなる群から選択される少なくとも1種を含む成分(B)を含む1~9のいずれかの光照射剥離用接着剤組成物、
11.前記ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)(前記R~Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、互いに独立して、アルキル基、アルケニル基又は水素原子を表す。)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、
前記ポリシロキサン(A1)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q’単位)、R’R’R’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R’R’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれ1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1)(前記R’~R’は、ケイ素原子に結合する基であり、互いに独立して、アルキル基又はアルケニル基を表すが、前記R’~R’の少なくとも1つは、前記アルケニル基である。)と、SiOで表されるシロキサン単位(Q”単位)、R”R”R”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R”R”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a2)(前記R”~R”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、互いに独立して、アルキル基又は水素原子を表すが、前記R”~R”の少なくとも1つは、水素原子である。)とを含む9又は10の光照射剥離用接着剤組成物、
12.半導体形成基板からなる第1基体と、レーザーを透過する支持基板からなる第2基体と、接着層とを備える積層体であって、
前記接着層が、1~11のいずれかの光照射剥離用接着剤組成物から得られる硬化膜である、積層体、
13.前記第1基体又は前記第2基体の表面に1~11のいずれかの光照射剥離用接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層を形成する第1工程と、
前記第1基体と前記第2基体とを前記接着剤塗布層を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重をかけることによって、前記第1基体と前記接着剤塗布層と前記第2基体とを密着させ、その後、後加熱処理を行う第2工程と、を含む積層体の製造方法、
14.13の積層体の製造方法により得られた積層体の前記第2基体側からレーザーを照射し、前記第2基体を剥離する、剥離方法、
15.前記レーザーの波長が、190nm~600nmである、14の剥離方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明で用いる所定の光吸収性有機化合物、特に比較的安価であるという利点と有機溶媒への高溶解性を示すという利点を有するチオインジゴ誘導体やイソチオインジゴ誘導体は、良好な光吸収能を有することから、これを接着剤成分と混合することにより、ウエハー等の被加工体の加工がされている時は支持体と被加工体との間で好適に接着し、且つ、加工の後は、レーザーを好適に吸収し接着強度が低下して剥離できる、光照射剥離用接着層として好適な薄膜を与える組成物を容易に調製できる。それ故、本発明の光照射剥離用接着剤組成物を用いることで、支持体やウエハー等の被加工体に剥離のための過度な荷重をかけずにレーザーで剥離可能な接着層を製造できる。
【0015】
本発明の積層体は、半導体形成基板からなる第1基体と、レーザーを透過する支持基板からなる第2基体とともに、前記特徴を有する前記光照射剥離用接着剤組成物から得られる硬化膜からなる接着層を備えることから、第2基体側から当該接着層にレーザーを照射することにより、前記第2基体と当該接着層を容易に剥離できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の光照射剥離用接着剤組成物は、例えば、支持体とウエハーの回路面との間で剥離可能に接着しウエハーの裏面を加工するために用いる接着層を形成するために用いることができ、接着剤成分(S)と、光吸収性有機化合物(X)とを含み、光吸収性有機化合物(X)が、芳香族環を1つ以上と、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環を1つ以上と、カルボニル基及びチオカルボニル基から選択される1つ以上とを分子内に含む。
【0017】
好ましい態様においては、本発明の光照射剥離用接着剤組成物に含まれる光吸収性有機化合物(X)は、芳香族環を1つ以上と、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環を1つ以上と、カルボニル基又はチオカルボニル基を1つ以上とを分子内に含む。
【0018】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物は、レーザーの照射により剥離可能な接着層を形成するものであり、当該接着層は、光吸収性有機化合物(X)を含むためレーザーを好適に吸収し接着強度が低下することから、支持体やウエハーなどに剥離のための過度な荷重をかけることなく、剥離可能であるという利点を有するものである。
【0019】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物から得られる接着層によって支持体とウエハーが仮接着され、例えば、ウエハーの回路面とは反対側の裏面が研磨等によって加工されることにより、ウエハーを薄化することができる。
【0020】
本発明の積層体は、半導体形成基板からなる第1基体と、レーザーを透過する支持基板からなる第2基体と、前記光照射剥離用接着剤組成物を用いて形成された硬化膜からなる接着層とを備えるものであるが、基体と接着層との間に、レーザーを透過する又は透過しない任意の機能層を設けることもできる。この際、当該機能層は、レーザーの照射による剥離を阻害しないように適宜選択される。
【0021】
本発明の好ましい一態様においては、本発明の積層体は、半導体形成基板からなる第1基体と、レーザーを透過する支持基板からなる第2基体と、これらの2つの基体との間に両者に接するように、前記光照射剥離用接着剤組成物を用いて形成された硬化膜からなる接着層とを備えるものである。
【0022】
本発明の積層体は、レーザーを透過する第2基体側から、レーザーを照射することにより、剥離のための過度な荷重をかけることなく、剥離可能なものである。
【0023】
このようなレーザーの波長は、通常190nm~600nmであるが、再現性よく好適に剥離する観点等から、好ましく250nm以上、より好ましくは300nm以上であり、好ましくは580nm以下、より好ましくは560nm以下であり、例えば、波長が308nm、355nm、又は532nmのレーザーによって、本発明の積層体を好適に剥離できる。
【0024】
本発明においては、第2基体は、剥離のために照射されるレーザーを透過できるものとする必要があるが、第1基体側から光照射が可能な場合には、この限りではない。
【0025】
ここで、剥離可能とは他の箇所よりも接着強度が低く、すなわち剥離性に優れ、剥離しやすいことを意味するが、本発明の光照射剥離用接着剤組成物を用いて得られる接着層は、レーザーの照射により、照射前より接着強度が著しく低下するものである。
【0026】
すなわち、本発明の光照射剥離用接着剤組成物から得られる接着層は、例えば、ウエハーからなる第1基体と、レーザーを透過する支持基板からなる第2基体とを、当該ウエハーに薄化等の加工が施されている間は好適に接着し、加工が終わった後は、レーザーの照射によって容易に剥離又は除去されるものである。
【0027】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物が含む光吸収性有機化合物(X)は、芳香族環を1つ以上と、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環を1つ以上と、カルボニル基及びチオカルボニル基から選択される1つ以上とを分子内に含み、好ましくは、芳香族環を1つ以上と、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環を1つ以上と、カルボニル基又はチオカルボニル基を1つ以上とを分子内に含み、より好ましくは、芳香族環を2つ以上と、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環を2つ以上と、カルボニル基又はチオカルボニル基を2つ以上とを分子内に含むが、この場合において、光吸収性有機化合物(X)は、カルボニル基とチオカルボニル基のいずれか一方のみを含んでもよいが、両方とも含んでもよい。
【0028】
芳香族環の炭素数は、特に限定されるものではないが、通常6~30、好ましくは20以下、より好ましくは10以下であり、芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
ヘテロ原子をその環構成原子に含む環は、環状構造を有し、且つ、その環を構成する原子として、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む限り特に限定されるものではなく、芳香性の環、非芳香性の環のいずれでもよい。ヘテロ原子をその環構成原子に含む環は、通常4~10員環であるが、好ましくは4~6員環、より好ましくは5員環であり、また、その環構成原子として含まれるヘテロ原子の数は、通常1~3、好ましくは1~2、より好ましくは1であり、その他の環構成原子は炭素原子である。
【0030】
光吸収性有機化合物(X)の分子量は、その他の成分と良好な相溶性を示す限り特に限定されないが、通常5,000以下であり、当該化合物の有機溶媒への溶解性を確保し均一性に優れる組成物を再現性よく得る観点等から、好ましくは2,500以下、より好ましくは1,000以下、より一層好ましくは700以下、更に好ましくは600以下であり、貼り合せ時の加熱や減圧による当該化合物の昇華を抑制して系中の汚染を抑制する観点等から、好ましくは50以上、より好ましくは100以上、より一層好ましくは200以上、更に好ましくは250以上である。
【0031】
光吸収性有機化合物(X)は、通常、25℃、1.013×10Paで固体又は液体であり、好ましくは固体である。
【0032】
本発明の好ましい一態様においては、光吸収性有機化合物(X)中で、芳香族環とヘテロ原子をその環構成原子に含む環とは縮合している。
【0033】
本発明の好ましい一態様においては、光吸収性有機化合物(X)中で、カルボニル基又はチオカルボニル基の炭素原子は、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環の環構成原子である。
【0034】
本発明の好ましい一態様においては、光吸収性有機化合物(X)中で、カルボニル基又はチオカルボニル基の炭素原子が、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環の環構成原子である場合、そのようなカルボニル基又はチオカルボニル基の数は、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環1つ当たり、通常1~3であり、好ましくは1~2であり、より好ましくは1である。
【0035】
本発明の好ましい一態様においては、ヘテロ原子をその環構成原子に含む環の環構成原子でない炭素原子を有するカルボニル基又はチオカルボニル基の数は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、より一層好ましくは1以下、更に好ましくは0である。
【0036】
本発明の好ましい一態様においては、光吸収性有機化合物(X)は、式(T1-1)又は(T2-1)で表される。
【0037】
【化4】
【0038】
~Xは、芳香環を構成する炭素原子であり、互いに独立して、芳香環を構成する炭素原子以外に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基と結合しており、Xは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を表し、Xが窒素原子である場合、環を構成する炭素原子以外に、水素原子又は有機基と結合している。
【0039】
光吸収性有機化合物(X)は、好ましくは、チオインジゴ誘導体又はイソチオインジゴ誘導体であり、より好ましくは、式(T1-2)又は(T2-2)で表されるチオインジゴ誘導体又はイソチオインジゴ誘導体である。
【0040】
【化5】
【0041】
各Rは、ベンゼン環に置換する原子又は基であり、互いに独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表す。
【0042】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられるが、塩素原子が好ましい。
【0043】
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常1~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
【0044】
直鎖状又は分岐鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、メチル基が好ましい。
【0045】
環状アルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等のシクロアルキル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等のビシクロアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常2~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
【0047】
アルケニル基の具体例としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、エテニル基、2-プロペニル基を好ましい。
【0048】
アルキニル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常2~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
【0049】
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、n-1-プロピニル基、n-2-プロピニル基、n-1-ブチニル基、n-2-ブチニル基、n-3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、n-1-ペンチニル基、n-2-ペンチニル基、n-3-ペンチニル基、n-4-ペンチニル基、1-メチル-n-ブチニル基、2-メチル-n-ブチニル基、3-メチル-n-ブチニル基、1,1-ジメチル-n-プロピニル基、n-1-ヘキシニル基、n-1-デシニル基、n-1-ペンタデシニル基、n-1-エイコシニル基等が挙げられる。
【0050】
アリール基は、フェニル基、縮合環芳香族炭化水素化合物の水素原子を一つ取り除いて誘導される1価の基、環連結芳香族炭化水素化合物の水素原子を一つ取り除いて誘導される1価の基のいずれでもよく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常40以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下であり、その下限値は6である。
【0051】
アリール基の具体例としては、フェニル基;1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、5-ナフタセニル基、2-クリセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、ペンタセニル基、ベンゾピレニル基、トリフェニレニル基;ビフェニル-2-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-4-イル基、パラテルフェニル-4-イル基、メタテルフェニル-4-イル基、オルトテルフェニル-4-イル基、1,1’-ビナフチル-2-イル基、2,2’-ビナフチル-1-イル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、Rとしては、ハロゲン原子、アルキル基が好ましい。
【0052】
a~dは、互いに独立して、0~4の整数を表し、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
【0053】
本発明のより一層好ましい一態様においては、本発明で用いるチオインジゴ誘導体又はイソチオインジゴ誘導体は、式(T1-3)又は(T2-3)で表される。
【0054】
【化6】
【0055】
各R及び各Rは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、ハロゲン原子及びアルキル基の具体例としては、前記と同じものが挙げられる。
【0056】
好ましくは、式(T1-3)及び(T2-3)それぞれにおいて、2つのRは、互いに同じ原子又は基であり、2つのRは、互いに同じ原子又は基である。
【0057】
本発明においては、本発明の効果をより一層再現性よく得る観点から、チオインジゴ誘導体が好ましい。
【0058】
以下、チオインジゴ誘導体又はイソチオインジゴ誘導体の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0059】
【化7】
【0060】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物が含む接着剤成分(S)としては、この種の組成物に接着剤成分として用いられる種々の化合物を適用可能であり、接着性を備えたものであればよく、例えば、シロキサン系樹脂、炭化水素樹脂、アクリル-スチレン系、マレイミド系樹脂等又はこれらを組み合わせたもの等が挙げられるが、中でも、シロキサン系樹脂が好ましい。
【0061】
本発明の好ましい一態様においては、本発明の光照射剥離用接着剤組成物は、接着剤成分(S)として、ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)を含む。
【0062】
本発明のより好ましい一態様においては、ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、前記ポリシロキサン(A1)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q’単位)、R’R’R’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R’R’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれ1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1)と、SiOで表されるシロキサン単位(Q”単位)、R”R”R”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R”R”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a2)とを含む。
【0063】
~Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、互いに独立して、アルキル基、アルケニル基又は水素原子を表し、アルキル基及びアルケニル基の具体例及び好適条件は、上述のものと同じものが挙げられる。
【0064】
’~R’は、ケイ素原子に結合する基であり、互いに独立して、アルキル基又はアルケニル基を表すが、R’~R’の少なくとも1つは、アルケニル基である。
【0065】
”~R”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、互いに独立して、アルキル基又は水素原子を表すが、R”~R”の少なくとも1つは、水素原子である。
【0066】
上述の通り、ポリシロキサン(A1)は、ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)を含むが、ポリオルガノシロキサン(a1)に含まれるアルケニル基と、ポリオルガノシロキサン(a2)に含まれる水素原子(Si-H基)とが白金族金属系触媒(A2)によるヒドロシリル化反応によって架橋構造を形成し硬化する。
【0067】
ポリオルガノシロキサン(a1)は、Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a1)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0068】
Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(Q’単位とM’単位)、(D’単位とM’単位)、(T’単位とM’単位)、(Q’単位とT’単位とM’単位)、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
また、ポリオルガノシロキサン(a1)に包含されるポリオルガノシロキサンを2種以上含まれる場合、(Q’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(T’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(Q’単位とT’単位とM’単位)と(T’単位とM’単位)との組み合わせが好ましいが、これらに限定されない。
【0070】
ポリオルガノシロキサン(a2)は、Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、前記M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a2)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0071】
Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(M”単位とD”単位)、(Q”単位とM”単位)、(Q”単位とT”単位とM”単位)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
ポリオルガノシロキサン(a1)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又はアルケニル基が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R’~R’で表される全置換基中におけるアルケニル基の割合は、好ましくは0.1モル%~50.0モル%、より好ましくは0.5モル%~30.0モル%であり、残りのR’~R’はアルキル基とすることができる。
【0073】
ポリオルガノシロキサン(a2)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又は水素原子が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R”~R”で表される全ての置換基及び置換原子中における水素原子の割合は、好ましくは0.1モル%~50.0モル%、より好ましくは10.0モル%~40.0モル%であり、残りのR”~R”はアルキル基とすることができる。
【0074】
ポリシロキサン(A1)は、ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)とを含むものであるが、本発明の好ましい一態様においては、ポリオルガノシロキサン(a1)に含まれるアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)に含まれるSi-H結合を構成する水素原子とのモル比は、1.0:0.5~1.0:0.66の範囲で含有することができる。
【0075】
ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の重量平均分子量は、それぞれ、通常500~1,000,000であるが、好ましくは5,000~50,000である。
【0076】
なお、本発明における重量平均分子量は、例えば、GPC装置(東ソー(株)製EcoSEC,HLC-8320GPC)及びGPCカラム(昭和電工(株)製Shodex(登録商標),KF-803L、KF-802及びKF-801)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を1.0mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(シグマアルドリッチ社製)を用いて、測定することができる。
【0077】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物に含まれるポリオルガノシロサン(a1)とポリオルガノシロサン(a2)は、ヒドロシリル化反応によって、互いに反応して硬化膜となる。従って、その硬化のメカニズムは、例えばシラノール基を介したそれとは異なり、それ故、いずれのシロキサンも、シラノール基や、アルキルオキシ基のような加水分解によってシラノール基を形成することが官能基を含む必要は無い。
【0078】
本発明の好ましい一態様においては、成分(A)は、上述のポリシロキサン(A1)ともに、白金族金属系触媒(A2)を含む。
このような白金系の金属触媒は、ポリオルガノシロキサン(a1)のアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)のSi-H基とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。
【0079】
白金系の金属触媒の具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
白金とオレフィン類との錯体としては、例えばジビニルテトラメチルジシロキサンと白金との錯体が挙げられるが、これに限定されない。
【0081】
白金族金属系触媒(A2)の量は、通常、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して、1.0~50.0ppmの範囲である。
【0082】
成分(A)は、重合抑制剤(A3)を含んでもよい。本発明の光照射剥離用接着剤組成物に重合抑制剤を含めることで、貼り合せ時の加熱による硬化を好適に制御可能となり、接着性と剥離性に優れる接着層を与える組成物を再現性よく得ることができる。
【0083】
重合抑制剤は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制できる限り特に限定されるものではないが、その具体例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキニルアルキルアルコール等が挙げられるが、これに限定されない。
【0084】
重合抑制剤の量は、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)に対して、通常、その効果を得る観点から1000.0ppm以上であり、ヒドロシリル化反応の過度な抑制を防止する観点から10000.0ppm以下である。
【0085】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物は、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンを含む成分、メチル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分及びフェニル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分からなる群から選択される少なくとも1種を含む成分(B)を含んでいてもよい。このような成分(B)を本発明の光照射剥離用接着剤組成物に含めることで、得られる接着層を再現性よく好適に剥離することができるようになる。
中でも、メチル基含有ポリオルガノシロキサンを含む成分が好ましい。
【0086】
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D10単位)を含むものが挙げられる。
【0087】
11は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、R12は、ケイ素原子に結合する基であり、エポキシ基又はエポキシ基を含む有機基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
【0088】
また、エポキシ基を含む有機基におけるエポキシ基は、その他の環と縮合せずに、独立したエポキシ基であってもよく、1,2-エポキシシクロヘキシル基のように、その他の環と縮合環を形成しているエポキシ基であってもよい。
【0089】
エポキシ基を含む有機基の具体例としては、3-グリシドキシプロピル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
本発明において、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、エポキシ変性ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0091】
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D10単位)を含むものであるが、D10単位以外に、前記Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでいてもよい。
【0092】
本発明の好ましい一態様においては、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D10単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0093】
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンは、エポキシ価が0.1~5であるエポキシ変性ポリジメチルシロキサンが好ましく、その重量平均分子量は、通常1,500~500,000であるが、組成物中での析出抑制の観点から、好ましくは100,000以下である。
【0094】
エポキシ変性ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(A-1)で表される商品名CMS-227(ゲレスト社製、重量平均分子量27,000)、式(A-2)で表される商品名ECMS-327(ゲレスト社製、重量平均分子量28,800)、式(A-3)で表される商品名KF-101(信越化学工業(株)製、重量平均分子量31,800)、式(A-4)で表される商品名KF-1001(信越化学工業(株)製、重量平均分子量55,600)、式(A-5)で表される商品名KF-1005(信越化学工業(株)製、重量平均分子量11,500)、式(A-6)で表される商品名X-22-343(信越化学工業(株)製、重量平均分子量2,400)、式(A-7)で表される商品名BY16-839(ダウコーニング社製、重量平均分子量51,700)、式(A-8)で表される商品名ECMS-327(ゲレスト社製、重量平均分子量28,800)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
【化8】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0096】
【化9】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0097】
【化10】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0098】
【化11】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0099】
【化12】
(m、n及びoはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0100】
【化13】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0101】
【化14】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。)
【0102】
【化15】
(m及びnはそれぞれ繰り返し単位の数である。)
【0103】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R210220SiO2/2で表されるシロキサン単位(D200単位)、好ましくはR2121SiO2/2で表されるシロキサン単位(D20単位)を含むものが挙げられる。
【0104】
210およびR220は、ケイ素原子に結合する基であり、互いに独立して、アルキル基を表すが、少なくとも一方はメチル基であり、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
21は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。中でも、R21としては、メチル基が好ましい。
【0105】
本発明において、メチル基含有ポリオルガノシロキサンとの好ましい一例としては、ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0106】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D200単位又はD20単位)を含むものであるが、D200単位又はD20単位以外に、前記Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでいてもよい。
【0107】
本発明のある一態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D200単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0108】
本発明の好ましい一態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D20単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0109】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンの粘度は、通常1,000~2,000,000mm/sであるが、好ましくは10,000~1,000,000mm/sである。なお、メチル基含有ポリオルガノシロキサンは、典型的には、ポリジメチルシロキサンからなるジメチルシリコーンオイルである。この粘度の値は、動粘度で示され、センチストークス (cSt)=mm/sである。動粘度は、動粘度計で測定することができる。また、粘度(mPa・s)を密度(g/cm)で割って求めることもできる。すなわち、25℃で測定したE型回転粘度計による粘度と密度から求めることができる。動粘度(mm/s)=粘度(mPa・s)/密度(g/cm)という式から算出することができる。
【0110】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、ワッカー社製 WACKER(登録商標) SILICONE FLUID AK シリーズや、信越化学工業(株)製ジメチルシリコーンオイル(KF-96L、KF-96A、KF-96、KF-96H、KF-69、KF-965、KF-968)、環状ジメチルシリコーンオイル(KF-995)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R3132SiO2/2で表されるシロキサン単位(D30単位)を含むものが挙げられる。
【0112】
31は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基又はアルキル基を表し、R32は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができるが、メチル基が好ましい。
【0113】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D30単位)を含むものであるが、D30単位以外に、前記Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでいてもよい。
【0114】
本発明の好ましい一態様においては、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D30単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0115】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、通常1,500~500,000であるが、組成物中での析出抑制の観点等から、好ましくは100,000以下である。
【0116】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(C-1)で表される商品名PMM-1043(Gelest,Inc.製、重量平均分子量67,000、粘度30,000mm/s)、式(C-2)で表される商品名PMM-1025(Gelest,Inc.製、重量平均分子量25,200、粘度500mm/s)、式(C-3)で表される商品名KF50-3000CS(信越化学工業(株)製、重量平均分子量39,400、粘度3000mm/s)、式(C-4)で表される商品名TSF431(MOMENTIVE社製、重量平均分子量1,800、粘度100mm/s)、式(C-5)で表される商品名TSF433(MOMENTIVE社製、重量平均分子量3,000、粘度450mm/s)、式(C-6)で表される商品名PDM-0421(Gelest,Inc.製、重量平均分子量6,200、粘度100mm/s)、式(C-7)で表される商品名PDM-0821(Gelest,Inc.製、重量平均分子量8,600、粘度125mm/s)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
【化16】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0118】
【化17】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0119】
【化18】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0120】
【化19】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0121】
【化20】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0122】
【化21】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0123】
【化22】
(m及びnは繰り返し単位の数を示す。)
【0124】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物は、成分(A)と成分(B)とを任意の比率で含み得るが、接着性と剥離性のバランスを考慮すると、成分(A)と成分(B)との比率は、質量%で、好ましくは99.995:0.005~30:70、より好ましくは99.9:0.1~75:25である。
【0125】
光照射剥離用接着剤組成物は、粘度の調整等を目的に、溶媒を含んでいてもよく、その具体例としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
より具体的には、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、メンタン、リモネン、トルエン、キシレン、メチシレン、クメン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、酢酸ブチル、ジイソブチルケトン、2-オクタノン、2-ノナノン、5-ノナノン等が挙げられるが、これらに限定されない。このような溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0127】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物が溶媒を含む場合、その含有量は、所望の組成物の粘度、採用する塗布方法、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、組成物全体に対して、10~90質量%程度の範囲である。
【0128】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物は、上述の成分の他に、剥離性を向上させる目的等で、シリカ粒子を更に含んでいてもよい。
【0129】
ここで、シリカ粒子とは、平均粒子径がナノメートルのオーダー(典型的には500nm以下、好ましくは100nm以下)である二酸化ケイ素の粒子を意味する。なお、粒子径は、BET法による窒素吸着等温線を用いた測定値である。
【0130】
シリカ粒子を含む本発明の光照射剥離用接着剤組成物は、所定の平均粒子径の値を有するシリコーンパウダーや、所定の平均粒子径の値を有するシリカを含むシリカゾルを用いて製造することができる。
【0131】
シリコーンパウダーの具体例としては、信越化学工業(株)製 シリコーンパウダー KMPシリーズ KMP-600、KMP-601、KMP-602、KMP-605、X-52-7030等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
コロイダルシリカ(シリカゾル)の具体例としては、日産化学(株)製 MA-ST-S(メタノール分散シリカゾル)、MT-ST(メタノール分散シリカゾル)、MA-ST-UP(メタノール分散シリカゾル)、商品名MA-ST-M(メタノール分散シリカゾル)、MA-ST-L(メタノール分散シリカゾル)、IPA-ST-S(イソプロパノール分散シリカゾル)、IPA-ST(イソプロパノール分散シリカゾル)、IPA-ST-UP(イソプロパノール分散シリカゾル)、IPA-ST-L(イソプロパノール分散シリカゾル)、IPA-ST-ZL(イソプロパノール分散シリカゾル)、NPC-ST-30(n-プロピルセロソルブ分散シリカゾル)、PGM-ST(1-メトキシ-2-プロパノール分散シリカゾル)、DMAC-ST(ジメチルアセトアミド分散シリカゾル)、XBA-ST(キシレン・n-ブタノール混合溶媒分散シリカゾル)、商品名EAC-ST(酢酸エチル分散シリカゾル)、PMA-ST(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散シリカゾル)、MEK-ST(メチルエチルケトン分散シリカゾル)、MEK-ST-UP(メチルエチルケトン分散シリカゾル)、MEK-ST-L(メチルエチルケトン分散シリカゾル)、MIBK-ST(メチルイソブチルケトン分散シリカゾル)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0133】
シリカゾルを用いて本発明の光照射剥離用接着剤組成物を製造する場合、目的の最終組成物が含む有機溶媒を分散媒として含むシリカゾルを用いることで、効率的に当該組成物を製造できる。この際、最終的に得られる組成物中のシリカ粒子が所望の量となるように、ゾルの濃度やその使用量を決める必要がある点も留意する。また、シリカゾルの溶媒は、定法に従って溶媒置換をすることで、所望の溶媒に置換できる。
【0134】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物がシリカ粒子を含む場合、その含有量は、接着剤成分(S)に対して、組成物の硬化の阻害を抑制する観点から、通常、50質量%以下である。
【0135】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物の粘度は、通常、25℃で1,000~5,000mPa・sである。本発明の光照射剥離用接着剤組成物の粘度は、用いる塗布方法、所望の膜厚等の各種要素を考慮して、用いる有機溶媒の種類やそれらの比率、膜構成成分濃度等を変更することで調整可能である。
【0136】
本発明の光照射剥離用接着剤組成物は、膜構成成分と溶媒を混合することで製造できる。ただし、溶媒が含まれない場合、膜構成成分を混合することで、本発明の光照射剥離用接着剤組成物を製造することができる。
その混合順序は特に限定されるものではないが、容易にかつ再現性よく、本発明の光照射剥離用接着剤組成物を製造できる方法の一例としては、例えば、膜構成成分の全てを溶媒に溶解させる方法や、膜構成成分の一部を溶媒に溶解させ、膜構成成分の残りを溶媒に溶解させ、得られた溶液を混合する方法が挙げられる。この場合において、必要であれば、一部の溶媒や、溶解性に優れる膜構成成分を最後に加えることもできる。組成物を調製する際、成分が分解したり変質したりしない範囲で、適宜加熱してもよい。
【0137】
本発明においては、光照射剥離用接着剤組成物は、組成物中の異物を除去する目的で、組成物を製造する途中段階で又は全ての成分を混合した後に、サブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0138】
本発明の積層体は、上述の通り、半導体形成基板からなる第1基体と、レーザーを透過する支持基板からなる第2基体と、前記光照射剥離用接着剤組成物を用いて形成された硬化膜からなる接着層とを備えるものであるから、その製造方法は、前記光照射剥離用接着剤組成物を用いて硬化膜からなる接着層を形成する限り特に限定されるものではない。再現性よく本発明の効果を実現する観点等から、接着層のレーザーの透過率は、剥離に必要な量のレーザーを吸収できる限り特に限定されるものではないが、好ましくは99%以下、より好ましくは90%以下、より一層好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下であり、その下限値は、0%(すなわちレーザーを全吸収する)である。
【0139】
本発明の好適な一態様としては、本発明の積層体の製造方法は、第1基体又は第2基体の表面に前記光照射剥離用接着剤組成物を塗布して接着剤塗布層を形成する第1工程と、前記第1基体と前記第2基体とを前記接着剤塗布層を介して合わせ、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重をかけることによって、前記第1基体と前記接着剤塗布層と前記第2基体とを密着させ、その後、後加熱処理を行う第2工程と、を含む。第2工程の後加熱処理により、接着剤塗布層が最終的に好適に硬化して接着層となる。
【0140】
ここで、例えば、第1基体がウエハーであり、第2基体が支持体である。光照射剥離用接着剤組成物を塗布するのは、第1基体又は第2基体のいずれか一方であっても、両方であってもよいが、第1基体が好ましい。
【0141】
ウエハーとしては例えば直径300mm、厚さ770μm程度のシリコンウエハーやガラスウエハーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
支持体(キャリア)は、レーザーを透過する限り特に限定されるものではないが、その透過率は、通常80%以上、好ましくは90%以上である。具体的には、例えば直径300mm、厚さ700mm程度のシリコンウエハーを挙げることができるが、これに限定されない。
【0143】
ここで、レーザーとは、後述する剥離工程で使用するレーザーであり、その波長は、通常、190nm~600nmであるが、再現性よく好適に剥離する観点等から、好ましく250nm以上、より好ましくは300nm以上であり、好ましくは580nm以下、より好ましくは560nm以下であり、例えば、308nm、355nm又は532nmのレーザーによって、本発明の積層体を好適に剥離できる。
【0144】
前記接着塗布層の膜厚は、通常5~500μmであるが、膜強度を保つ観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、より一層好ましくは30μm以上であり、厚膜に起因する不均一性を回避する観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、より一層好ましくは120μm以下、更に好ましくは70μm以下である。
【0145】
塗布方法は、特に限定されるものではないが、通常、スピンコート法である。なお、別途スピンコート法などで塗布膜を形成し、シート状の塗布膜を貼付する方法を採用してもよく、これも塗布又は塗布膜という。
【0146】
塗布した光照射剥離用接着剤組成物の加熱処理の温度は、膜厚等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常80℃以上であり、過度の硬化を防ぐ観点から、好ましくは150℃以下であり、その加熱時間は、仮接着能を確実に発現させる観点から、通常30秒以上、好ましくは1分以上であり、接着層やその他の部材の変質を抑制する観点から、通常5分以下、好ましくは2分以下である。なお、加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
【0147】
減圧処理は、2つの基体及びそれらの間の接着剤塗布層を10~10,000Paの気圧下にさらせばよい。減圧処理の時間は、通常1~30分である。
【0148】
本発明の好ましい態様においては、2つの基体及びそれらの間の層は、好ましくは加熱処理によって、より好ましくは加熱処理と減圧処理の併用によって、貼り合せられる。
【0149】
前記第1基体及び前記第2基体の厚さ方向の荷重は、前記第1基体及び前記第2基体とそれらの間の層に悪影響を及ぼさず、且つこれらをしっかりと密着させることができる荷重である限り特に限定されないが、通常10~1,000Nの範囲内である。
【0150】
後加熱温度は、十分な硬化速度を得る観点から、好ましくは120℃以上であり、基板や接着剤の変質を防ぐ観点から、好ましくは260℃以下である。加熱時間は、硬化によるウエハーの好適な接合を実現する観点から、通常1分以上であり、さらに接着剤の物性安定化の観点等から、好ましくは5分以上であり、過度の加熱による接着層への悪影響等を回避する観点から、通常180分以下、好ましくは120分以下である。加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。なお、後加熱処理の一つの目的は、例えばヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)を含む接着剤成分(S)をより好適に硬化させることである。
【0151】
本発明の剥離方法は、本発明の積層体の第2基体側からレーザーを照射し、第2基体を取り外すものである。本発明の積層体においては第1基体とレーザーを透過する第2基体とがレーザーを吸収する接着層によって好適に剥離可能に仮接着されているので、第2基体側からレーザーを照射した際、接着層がレーザーの照射を受けると、レーザーを吸収して接着層表面が分解し、基板にダメージを与えない程度の微量の気体が接着層と第2基体との間で発生することでその接着力が低下し、第2基体と接着層との界面を介して、第2基体と、第1基体及び接着層とを容易に分離できる。通常、剥離は、本発明の積層体を製造し、それに所定の加工等が行われた後に、実施される。
【0152】
ここで、加工とは、例えば、ウエハーの回路面の反対側の加工であり、ウエハー裏面の研磨によるウエハーの薄化が挙げられる。その後、シリコン貫通電極(TSV)等の形成を行い、その後に支持体から薄化ウエハーを剥離してウエハーの積層体を形成し、3次元実装化される。また、それに前後してウエハー裏面電極等の形成も行われる。ウエハーの薄化とTSVプロセスには支持体に接着された状態で250~350℃の熱が負荷されるが、本発明の積層体は、接着層を含め、その負荷に対する。
また、加工は上述した加工に限定されず、例えば、半導体部品を実装するための基材をサポートするために支持体と仮接着した場合の半導体部品の実装プロセスの実施なども加工に含まれる。
【0153】
例えば直径300mm、厚さ770μm程度のウエハーは、表面の回路面とは反対の裏面を研磨して、厚さ80μm~4μm程度まで薄化することができる。
【0154】
なお、レーザーの照射は、必ずしも接着層の全領域に対してなされる必要はない。レーザーが照射された領域と照射されていない領域とが混在していても、接着層全体としての接着強度が十分に低下していれば、わずかな外力を加えて第2基体を例えば引き上げることによって、第2基体を接着層と第2基体との界面で積層体から取り外すことができる。レーザーを照射する領域と照射しない領域との比率および位置関係は、用いる接着剤の種類やその具体的な組成、接着層の厚さ、照射するレーザーの強度等によって異なるが、当業者であれば、過度の試験を要することなく、適宜条件を設定できる。例えば、レーザーの描写線幅と同一幅でもって、レーザーを照射しない領域を、レーザーを照射する領域の隣に設けるようにしてもよい。
このように、接着層の一部にのみにレーザーを照射する場合であっても第2基体を分離することができるため、積層体1つ当たりのレーザーの照射時間を短くでき、その結果、剥離に要する総時間を短縮することができる。
【実施例0155】
(1)攪拌機:(株)シンキー製 自転公転ミキサー ARE-500
(2)粘度計:東機産業(株)製 回転粘度計TVE-22H
(3)超音波装置:ASU CLEANER(アズワン、ASU-6)
(4)透過率の測定:(株)島津製作所製 紫外可視分光光度計UV2550
(5)真空貼り合わせ装置:ズースマイクロテック(株)製、マニュアルボンダー
(6)308nmレーザー照射装置:ズースマイクロテック(株)製、308nmレーザー照射装置
(7)355nmレーザー照射装置:Lotus-TII製 LT-2137
(8)532nmレーザー照射装置:Lotus-TII製 LT-2137
(9)赤外放射温度計:(株)テストー製、赤外放射温度計835-H1
【0156】
[1]組成物の調製
[調製例1]
撹拌機専用600mL撹拌容器に、ポリオルガノシロキサン(a1)としてポリシロキサンとビニル基とを含有するMQ樹脂(ワッカーケミ社製)80g、ポリオルガノシロキサン(a2)として粘度100mPa・sのSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社)2.52g、ポリオルガノシロキサン(a2)として粘度70mPa・sのSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)5.89g、重合抑制剤(A3)として1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ワッカーケミ社製)0.22gを入れ、攪拌機で5分間撹拌した。
【0157】
得られた混合物に、白金族金属系触媒(A2)として白金触媒(ワッカーケミ社製)0.147gとポリオルガノシロキサン(a1)として粘度1000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)5.81gを攪拌機で5分間撹拌して得られた混合物のうち3.96gを加え、攪拌機で5分間撹拌した。
【0158】
最後に、得られた混合物をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、前駆組成物(P)を得た。
【0159】
[実施例1-1]
撹拌機専用200mL撹拌容器に、前駆組成物(P)19.7g、重合抑制剤(A3)として1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール(東京化成工業(株)製)0.04g、ポリジメチルシロキサンを含む成分を含む成分(B)として粘度1,000,000mm/sのポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK1000000)8.54gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。
【0160】
得られた混合物に、50mLスクリュー管に光吸収性有機化合物(X)としてチオインジゴ(東京化成工業(株)製)0.40g、シリカ粒子 X-52-854(信越化学工業(株)製)4、92g、メシチレン(東京化成工業(株)製)11.82gを入れて、これを超音波装置で5分間超音波処理して得られる混合物を加えて、撹拌機で5分間撹拌した。
【0161】
最後に、5.0μmのPTFEフィルターでろ過し、光照射剥離用組成物を得た。
【0162】
[実施例1-2]
撹拌機専用200mL撹拌容器に、前駆組成物(P)19.7g、重合抑制剤(A3)として1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール(東京化成工業(株)製)0.04g、ポリジメチルシロキサンを含む成分を含む成分(B)として粘度1,000,000mm/sのポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK1000000)8.54gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。
【0163】
得られた混合物に、50mLスクリュー管に光吸収性有機化合物(X)としてオラリスブリリアントピンクR(東京化成工業(株)製)0.40g、シリカ粒子 X-52-854(信越化学工業(株)製)4、92g、メシチレン(東京化成工業(株)製)11.82gを入れて、これを超音波装置で5分間超音波処理して得られる混合物を加えて、撹拌機で5分間撹拌した。
【0164】
最後に、5.0μmのPTFEフィルターでろ過し、光照射剥離用組成物を得た。
【0165】
[実施例1-3]
撹拌機専用200mL撹拌容器に、前駆組成物(P)19.7g、重合抑制剤(A3)として1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール(東京化成工業(株)製)0.04g、ポリジメチルシロキサンを含む成分を含む成分(B)として粘度1,000,000mm/sのポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK1000000)8.54gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。
【0166】
得られた混合物に、50mLスクリュー管に光吸収性有機化合物(X)としてチオインジゴ(東京化成工業(株)製)0.40g、メシチレン(東京化成工業(株)製)11.82gを入れて、これを超音波装置で5分間超音波処理して得られる混合物を加えて、撹拌機で5分間撹拌した。
【0167】
最後に、得られた混合物を5.0μmのPTFEフィルターでろ過し、光照射剥離用組成物を得た。
【0168】
[比較例1-1]
撹拌機専用200mL撹拌容器に、前駆組成物(P)19.7g、重合抑制剤(A3)として1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール(東京化成工業(株)製)0.04g、ポリジメチルシロキサンを含む成分を含む成分(B)として粘度1,000,000mm/sのポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK1000000)8.54gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。
【0169】
得られた混合物に、50mLスクリュー管にシリカ粒子 X-52-854(信越化学工業(株)製)4、92g、メシチレン(東京化成工業(株)製)11.82gを入れて、これを超音波装置で5分間超音波処理して得られる混合物を加えて、撹拌機で5分間撹拌した。
【0170】
最後に、得られた混合物を5.0μmのPTFEフィルターでろ過し、組成物を得た。
【0171】
[比較例1-2]
チオインジゴの代わりに、光吸収能を有することが知られている低分子化合物である式(C1)で表されるニューコクシンを用いた以外は、実施例1-1と同様の方法で組成物の調製を試みたが、組成物中に沈殿の発生が認められ、薄膜を形成するのに用い得る程度に均一な組成物を得ることができなかった。なお、濾過不良が生じることが明らかであったため、ろ過は実施しなかった。
【0172】
【化23】
【0173】
[参考例1-1]
撹拌機専用200mL撹拌容器に、前駆組成物(P)19.7g、重合抑制剤(A3)として1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール(東京化成工業(株)製)0.04g、ポリジメチルシロキサンを含む成分を含む成分(B)として粘度1,000,000mm/sのポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK1000000)8.54gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、5.0μmのPTFEフィルターでろ過し、組成物を得た。
【0174】
[2]薄膜の形成および透過率測定
[実施例2-1]
実施例1-1で得られた組成物を、スピンコーターを用いて石英基板上に塗布し、ホットプレートで、120℃で1.5分間、次いで200℃で10分間加熱し、厚さ30μmの薄膜を形成した。
【0175】
[実施例2-2~2-3,比較例2-1及び参考例2-1]
実施例1-1で得られた組成物の代わりに、それぞれ、実施例1-2~1-3、比較例1-1、参考例1-1で得られた組成物を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で薄膜を形成した。
【0176】
得られた薄膜が、レーザー剥離用の層として使用可能か否かを判断するため、波長308nmおよび532nmの光の透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0177】
参考例2-1で得られた薄膜と比較して、実施例2-1~2-3で得られた薄膜は、チオインジゴを含むことから、308nmと532nmのレーザーの透過率が低下しており、当該薄膜が、レーザー剥離に適用可能であることが示唆された。
【0178】
一方、比較例2-1で得られた薄膜も、チオインジゴを含んでいないにもかかわらず、透過率が低下した。これは、薄膜に含有されるシリカ粒子に起因する光散乱によるものである。
【0179】
【表1】
【0180】
[3]レーザー(308nm)による剥離の最適照射量と照射時の発熱の確認
[実施例3-1]
デバイス側のウエハーとしての100mmシリコンウエハー(厚さ500μm)に実施例1-1で得られた組成物をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で、120℃で1.5分間加熱し、薄膜を形成した。キャリア側のウエハー(支持体)としての100mmガラスウエハー(EAGLE-XG、コーニング社製、厚さ500μm)で、前記形成した薄膜を挟むように真空貼り合わせ装置内で貼り合わせ、これを、デバイス側のウエハーを下にして、ホットプレート上で200℃で10分間加熱し、前記形成した薄膜を硬化させ、積層体を得た。貼り合わせは、温度25℃、減圧度1,000Paで、30Nの荷重をかけて行った。
【0181】
[実施例3-2]
実施例1-1で得られた組成物の代わりに、実施例1-2で得られた組成物を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法で積層体を得た。
【0182】
得られた積層体に、ガラスウエハー側からレーザー照射装置を用いて波長308nmのレーザーを照射した。この際、出力を変化させ、出力100~500mJ/cmの範囲における剥離が生じる最低の照射量を確認した。
【0183】
その結果、いずれの積層体においても、300mJ/cmで剥離が確認された。この値を最適照射量とし、以下、波長308nmのレーザーによる剥離試験を行った。
【0184】
また、レーザー照射時に発熱があったか否かを確認するために、赤外放射温度計を用い、レーザー照射前後の積層体の温度を測定した。
【0185】
その結果、各積層体の温度は、レーザー照射前は約24℃、レーザー照射後は約21℃であり、レーザー照射による膜の実質的な発熱は無いと判断した。
【0186】
[4]波長308nmのレーザーによる剥離性の確認(全面照射による剥離の確認)
[実施例4-1~4-2]
実施例3-1~3-2と同様の方法で得た積層体に、ガラスウエハー側からレーザー照射装置を用いて波長308nmのレーザーをウエハーの全面に照射し、ガラスウエハーの剥離が可能か否かを確認した。この際、レーザーは前後左右にオーバーラップしない様に照射した。また、レーザー出力は、いずれの実施例でも300mJ/cmとした。
【0187】
その結果、実施例4-1、4-2のいずれの積層体においても、ほぼ力をかけることなくマニュアルで、ガラスウエハー(キャリア側)を容易に剥離可能であることが確認できた。
【0188】
[5]レーザー(532nm)による剥離の最適照射量と照射時の発熱の確認
[実施例5-1~5-2]
それぞれ、実施例3-1、3-2と同様の方法で積層体を得た。
【0189】
[実施例5-3]
実施例1-1で得られた組成物の代わりに、実施例1-3で得られた組成物を用いた以外は、実施例5-1と同様の方法で積層体を得た。
【0190】
[比較例5-1]
実施例1-1で得られた組成物の代わりに、比較例1-1で得られた組成物を用いた以外は、実施例5-1と同様の方法で積層体を得た。
【0191】
得られた積層体に、ガラスウエハー側からレーザー照射装置を用いて波長532nmのレーザーを照射した。この際、出力を変化させ、出力20~160mJ/cmの範囲における剥離が生じる最低の照射量を確認した。
【0192】
その結果、実施例5-1の積層体では300mJ/cmで、実施例5-2の積層体では400mJ/cmで、実施例5-3の積層体では500mJ/cmで剥離が確認されたのに対し、比較例5-1の積層体では剥離は確認されなかった。実施例の積層体に関し、それぞれ得られた値を最適照射量とし、以下、波長532nmのレーザーによる剥離試験を行った。
【0193】
また、レーザー照射時に発熱があったか否かを確認するために、実施例5-1~5-2の積層体について、赤外放射温度計を用い、レーザー照射前後の積層体の温度を測定した。
【0194】
その結果、積層体の温度は、レーザー照射前は約21℃、レーザー照射後は約25℃であり、レーザー照射による膜の実質的な発熱は無いと判断した。
【0195】
[6]波長532nmのレーザーによる剥離性の確認(全面照射による剥離の確認)
[実施例6-1~6-2]
実施例5-1~5-2と同様の方法で得た積層体に、ガラスウエハー側からレーザー照射装置を用いて波長532nmのレーザーをウエハーの全面に照射し、ガラスウエハーの剥離が可能か否かを確認した。この際、レーザーは前後左右にオーバーラップしない様に照射した。また、レーザー出力は、実施例6-1では300J/cm、実施例6-2では400J/cmとした。
【0196】
その結果、いずれの積層体においても、ほぼ力をかけることなくマニュアルで、ガラスウエハー(キャリア側)を容易に剥離可能であることが確認できた。
【0197】
[7]レーザー(355nm)による剥離の最適照射量と照射時の発熱の確認
[実施例7-1~7-2]
それぞれ、実施例3-1、3-2と同様の方法で積層体を得た。
【0198】
[比較例7-1]
実施例1-1で得られた組成物の代わりに、比較例1-1で得られた組成物を用いた以外は、実施例7-1と同様の方法で積層体を得た。
【0199】
得られた積層体に、ガラスウエハー側からレーザー照射装置を用いて波長355nmのレーザーを照射した。この際、出力を変化させ、出力20~80mJ/cmの範囲における剥離が生じる最低の照射量を確認した。
【0200】
その結果、実施例7-1と7-2の積層体では160mJ/cmで剥離が確認され、比較例7-1の積層体では剥離は確認されなかった。実施例の積層体に関し、それぞれ得られた値を最適照射量とし、以下、波長355nmのレーザーによる剥離試験を行った。
【0201】
また、レーザー照射時に発熱があったか否かを確認するために、実施例7-1~7-2の積層体について、赤外放射温度計を用い、レーザー照射前後の積層体の温度を測定した。
【0202】
その結果、積層体の温度は、レーザー照射前は約22℃、レーザー照射後は約23℃であり、レーザー照射による膜の実質的な発熱は無いと判断した。
【0203】
[8]波長355nmのレーザーによる剥離性の確認(全面照射による剥離の確認)
[実施例8-1~8-2]
実施例7-1~7-2と同様の方法で得た積層体に、ガラスウエハー側からレーザー照射装置を用いて波長355nmのレーザーをウエハーの全面に照射し、ガラスウエハーの剥離が可能か否かを確認した。この際、レーザーは前後左右にオーバーラップしない様に照射した。レーザー出力は、実施例8-1、8-2ともに160mJ/cmとした。
【0204】
その結果、いずれの積層体においても、ほぼ力をかけることなくマニュアルで、ガラスウエハー(キャリア側)を容易に剥離可能であることが確認できた。