(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177495
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 13/52 20060101AFI20241212BHJP
F16D 13/71 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F16D13/52 A
F16D13/71 B
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024175766
(22)【出願日】2024-10-07
(62)【分割の表示】P 2024518743の分割
【原出願日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2023066655
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆之
(72)【発明者】
【氏名】青野 佑城
(57)【要約】
【課題】クラッチが急に接続することが抑制されたクラッチ装置を提供すること。
【解決手段】クラッチ装置10は、プレッシャプレート70を第1の方向D1に付勢するクラッチスプリング25と、クラッチセンタ40に固定されたストッパプレート100と、を備え、クラッチスプリング25の軸線25Lは、クラッチセンタ40およびプレッシャプレート70の周方向Sに沿った断面視において、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが接触した状態ではクラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25D1から第2の方向D2の端部25D2に行くにつれてプレッシャ側スリッパーカム面側90Sに傾斜し、かつ、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに最も離隔した状態では方向Dに延びる直線と平行である。
【選択図】
図10B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記プレッシャプレートを前記第1の方向に付勢するクラッチスプリングと、
前記クラッチセンタに固定され、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから前記第2の方向に所定の距離以上離隔することを抑制するストッパプレートと、を備え、
前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部は、前記プレッシャプレートに接触し、かつ、前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部は、前記ストッパプレートに接触し、
前記クラッチセンタは、
前記プレッシャプレートに対して相対回転した際に、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるセンタ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるセンタ側スリッパーカム面を有する複数のセンタ側カム部を有し、
前記プレッシャプレートは、
前記クラッチセンタに対して相対回転した際に、前記センタ側アシストカム面と接触可能に構成されかつ前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるプレッシャ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるプレッシャ側スリッパーカム面を有する複数のプレッシャ側カム部と、
前記プレッシャプレートの回転方向に関して前記プレッシャ側アシストカム面と並んで配置され、かつ、前記クラッチスプリングを収容する収容部と、を有し、
前記クラッチスプリングの軸線は、前記クラッチセンタおよび前記プレッシャプレートの周方向に沿った断面視において、前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが接触した状態では前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部から前記第2の方向の端部に行くにつれて前記プレッシャ側スリッパーカム面側に傾斜し、かつ、前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが前記回転方向に最も離隔した状態では前記プレッシャプレートが移動する方向である移動方向に延びる直線と平行である、クラッチ装置。
【請求項2】
前記クラッチセンタは、前記出力側回転板を保持する、請求項1に記載のクラッチ装置。
【請求項3】
前記プレッシャプレートに形成され、かつ、前記第2の方向から前記第1の方向に向けて凹み、かつ、前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部を保持する第1保持溝と、
前記ストッパプレートに形成され、かつ、前記第1の方向から前記第2の方向に向けて凹み、かつ、前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部を保持する第2保持溝と、を備えている、請求項1に記載のクラッチ装置。
【請求項4】
入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記プレッシャプレートを前記第1の方向に付勢するクラッチスプリングと、
前記クラッチセンタに固定され、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから前記第2の方向に所定の距離以上離隔することを抑制するストッパプレートと、を備え、
前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部は、前記プレッシャプレートに接触し、かつ、前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部は、前記ストッパプレートに接触し、
前記クラッチセンタは、
前記プレッシャプレートに対して相対回転した際に、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるセンタ側アシストカム面を有し、
前記プレッシャプレートは、
前記クラッチセンタに対して相対回転した際に、前記センタ側アシストカム面と接触可能に構成されかつ前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるプレッシャ側アシストカム面と、
前記プレッシャプレートの回転方向に関して前記プレッシャ側アシストカム面と並んで配置され、かつ、前記クラッチスプリングを収容する収容部と、を有し、
前記クラッチスプリングの軸線は、前記クラッチセンタおよび前記プレッシャプレートの周方向に沿った断面視において、前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが接触した状態から前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが前記回転方向に最も離隔した状態まで前記プレッシャプレートが移動する方向である移動方向に延びる直線と平行である、クラッチ装置。
【請求項5】
前記プレッシャプレートは、前記収容部を区画する区画壁を備え、
前記クラッチスプリングは、前記区画壁の全体に亘って前記区画壁の内周面と接触している、請求項4に記載のクラッチ装置。
【請求項6】
前記収容部は、前記第1の方向から前記第2の方向に行くほど内径が大きくなるように形成され、
前記クラッチスプリングは、円錐台形状に形成されている、請求項4に記載のクラッチ装置。
【請求項7】
入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記プレッシャプレートを前記第1の方向に付勢するクラッチスプリングと、
前記クラッチセンタに固定され、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから前記第2の方向に所定の距離以上離隔することを抑制するストッパプレートと、を備え、
前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部は、前記プレッシャプレートに接触し、かつ、前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部は、前記ストッパプレートに接触し、
前記クラッチセンタは、
前記プレッシャプレートに対して相対回転した際に、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるセンタ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるセンタ側スリッパーカム面を有する複数のセンタ側カム部を有し、
前記プレッシャプレートは、
前記クラッチセンタに対して相対回転した際に、前記センタ側アシストカム面と接触可能に構成されかつ前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるプレッシャ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるプレッシャ側スリッパーカム面を有する複数のプレッシャ側カム部と、
前記プレッシャプレートの回転方向に関して前記プレッシャ側アシストカム面と並んで配置され、かつ、前記クラッチスプリングを収容する収容部と、を有し、
前記クラッチスプリングの軸線は、前記クラッチセンタおよび前記プレッシャプレートの周方向に沿った断面視において、前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが接触した状態から前記センタ側スリッパーカム面と前記プレッシャ側スリッパーカム面とが接触した状態までの全体に亘って前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部から前記第2の方向の端部に行くにつれて前記プレッシャ側スリッパーカム面側に傾斜する、クラッチ装置。
【請求項8】
入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記プレッシャプレートを前記第1の方向に付勢するクラッチスプリングと、
前記クラッチセンタに固定され、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから前記第2の方向に所定の距離以上離隔することを抑制するストッパプレートと、を備え、
前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部は、前記プレッシャプレートに接触し、かつ、前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部は、前記ストッパプレートに接触し、
前記クラッチセンタは、
前記プレッシャプレートに対して相対回転した際に、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるセンタ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるセンタ側スリッパーカム面を有する複数のセンタ側カム部を有し、
前記プレッシャプレートは、
前記クラッチセンタに対して相対回転した際に、前記センタ側アシストカム面と接触可能に構成されかつ前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるプレッシャ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるプレッシャ側スリッパーカム面を有する複数のプレッシャ側カム部と、
前記プレッシャプレートの回転方向に関して前記プレッシャ側アシストカム面と並んで配置され、かつ、前記クラッチスプリングを収容する収容部と、を有し、
前記クラッチスプリングの軸線は、前記クラッチセンタおよび前記プレッシャプレートの周方向に沿った断面視において、クラッチが切断された状態からクラッチが接続された状態の全体に亘って前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部から前記第2の方向の端部に行くにつれて前記プレッシャ側スリッパーカム面側に傾斜する、クラッチ装置。
【請求項9】
入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記プレッシャプレートを前記第1の方向に付勢するクラッチスプリングと、
前記プレッシャプレートに固定され、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから前記第2の方向に所定の距離以上離隔することを抑制するリフタープレートと、を備え、
前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部は、前記リフタープレートに接触し、かつ、前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部は、前記クラッチセンタに接触し、
前記クラッチセンタは、
前記プレッシャプレートに対して相対回転した際に、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるセンタ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるセンタ側スリッパーカム面を有する複数のセンタ側カム部と、
前記クラッチセンタの回転方向に関して前記センタ側アシストカム面と並んで配置され、かつ、前記クラッチスプリングを収容する収容部と、を有し、
前記プレッシャプレートは、
前記クラッチセンタに対して相対回転した際に、前記センタ側アシストカム面と接触可能に構成されかつ前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるプレッシャ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるプレッシャ側スリッパーカム面を有する複数のプレッシャ側カム部を有し、
前記クラッチスプリングの軸線は、前記クラッチセンタおよび前記プレッシャプレートの周方向に沿った断面視において、前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが接触した状態では前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部から前記第1の方向の端部に行くにつれて前記センタ側スリッパーカム面側に傾斜し、かつ、前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが前記回転方向に最も離隔した状態では前記プレッシャプレートが移動する方向である移動方向に延びる直線と平行である、クラッチ装置。
【請求項10】
前記クラッチセンタは、前記出力側回転板を保持する、請求項9に記載のクラッチ装置。
【請求項11】
入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記プレッシャプレートを前記第1の方向に付勢するクラッチスプリングと、
前記プレッシャプレートに固定され、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから前記第2の方向に所定の距離以上離隔することを抑制するリフタープレートと、を備え、
前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部は、前記リフタープレートに接触し、かつ、前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部は、前記クラッチセンタに接触し、
前記クラッチセンタは、
前記プレッシャプレートに対して相対回転した際に、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるセンタ側アシストカム面と、
前記クラッチセンタの回転方向に関して前記センタ側アシストカム面と並んで配置され、かつ、前記クラッチスプリングを収容する収容部と、を有し、
前記プレッシャプレートは、
前記クラッチセンタに対して相対回転した際に、前記センタ側アシストカム面と接触可能に構成されかつ前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるプレッシャ側アシストカム面と、を有し、
前記クラッチスプリングの軸線は、前記クラッチセンタおよび前記プレッシャプレートの周方向に沿った断面視において、前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが接触した状態から前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが前記回転方向に最も離隔した状態まで前記プレッシャプレートが移動する方向である移動方向に延びる直線と平行である、クラッチ装置。
【請求項12】
前記クラッチセンタは、前記収容部を区画する区画壁を備え、
前記クラッチスプリングは、前記区画壁の全体に亘って前記区画壁の内周面と接触している、請求項11に記載のクラッチ装置。
【請求項13】
入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記プレッシャプレートを前記第1の方向に付勢するクラッチスプリングと、
前記プレッシャプレートに固定され、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから前記第2の方向に所定の距離以上離隔することを抑制するリフタープレートと、を備え、
前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部は、前記リフタープレートに接触し、かつ、前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部は、前記クラッチセンタに接触し、
前記クラッチセンタは、
前記プレッシャプレートに対して相対回転した際に、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるセンタ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるセンタ側スリッパーカム面を有する複数のセンタ側カム部と、
前記クラッチセンタの回転方向に関して前記センタ側アシストカム面と並んで配置され、かつ、前記クラッチスプリングを収容する収容部と、を有し、
前記プレッシャプレートは、
前記クラッチセンタに対して相対回転した際に、前記センタ側アシストカム面と接触可能に構成されかつ前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるプレッシャ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるプレッシャ側スリッパーカム面を有する複数のプレッシャ側カム部を有し、
前記クラッチスプリングの軸線は、前記クラッチセンタおよび前記プレッシャプレートの周方向に沿った断面視において、前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが接触した状態から前記センタ側スリッパーカム面と前記プレッシャ側スリッパーカム面とが接触した状態までの全体に亘って前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部から前記第1の方向の端部に行くにつれて前記センタ側スリッパーカム面側に傾斜する、クラッチ装置。
【請求項14】
入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記プレッシャプレートを前記第1の方向に付勢するクラッチスプリングと、
前記プレッシャプレートに固定され、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから前記第2の方向に所定の距離以上離隔することを抑制するリフタープレートと、を備え、
前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部は、前記リフタープレートに接触し、かつ、前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部は、前記クラッチセンタに接触し、
前記クラッチセンタは、
前記プレッシャプレートに対して相対回転した際に、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるセンタ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるセンタ側スリッパーカム面を有する複数のセンタ側カム部と、
前記クラッチセンタの回転方向に関して前記センタ側アシストカム面と並んで配置され、かつ、前記クラッチスプリングを収容する収容部と、を有し、
前記プレッシャプレートは、
前記クラッチセンタに対して相対回転した際に、前記センタ側アシストカム面と接触可能に構成されかつ前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるプレッシャ側アシストカム面、および、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を減少させるために前記プレッシャプレートを前記クラッチセンタから離隔させるプレッシャ側スリッパーカム面を有する複数のプレッシャ側カム部を有し、
前記クラッチスプリングの軸線は、前記クラッチセンタおよび前記プレッシャプレートの周方向に沿った断面視において、クラッチが切断された状態からクラッチが接続された状態の全体に亘って前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部から前記第1の方向の端部に行くにつれて前記センタ側スリッパーカム面側に傾斜する、クラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車等の車両はクラッチ装置を備えている。例えば、特許文献1には、出力側回転板を保持するクラッチセンタと、クラッチセンタに対して接近および離隔可能に設けられたプレッシャプレートと、プレッシャプレートをクラッチセンタに向けて付勢するクラッチスプリングと、を備えたクラッチ装置が開示されている。クラッチスプリングは、プレッシャプレートに形成された収容部に収容されている。クラッチスプリングの一方の端部はプレッシャプレートに接触し、クラッチスプリングの他方の端部はクラッチセンタに固定されたストッパプレートに接触している。さらに、特許文献1のクラッチ装置のクラッチセンタおよびプレッシャプレートは、それぞれ、エンジンの回転駆動力が出力軸に伝達され得る状態になったときにプレッシャプレートからクラッチセンタに向かう方向の力を発生させて入力側回転板と出力側回転との押圧力を増加させるセンタ側アシストカム面およびプレッシャ側アシストカム面を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クラッチが接続された状態から切断された状態に移行するとき、即ちセンタ側アシストカム面とプレッシャ側アシストカム面とが接触した状態から離隔した状態に移行するとき、プレッシャプレートはクラッチセンタに対して周方向に相対回転しながらクラッチセンタから離隔する方向に移動する。このため、収容部に収容されたクラッチスプリングにはクラッチスプリングからプレッシャ側アシストカム面に向かう方向の復元力(即ちセンタ側アシストカム面とプレッシャ側アシストカム面とが接触した状態に戻そうとする復元力)が発生し得る。かかる復元力が大きすぎる場合には、クラッチが切断された状態から接続された状態に移行するときに、復元力によってセンタ側アシストカム面とプレッシャ側アシストカム面とが急に接触してしまい、クラッチが急に接続する虞がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、クラッチが急に接続することが抑制されたクラッチ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクラッチ装置は、入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記プレッシャプレートを前記第1の方向に付勢するクラッチスプリングと、前記クラッチセンタに固定され、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから前記第2の方向に所定の距離以上離隔することを抑制するストッパプレートと、を備え、前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部は、前記プレッシャプレートに接触し、かつ、前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部は、前記ストッパプレートに接触し、前記クラッチセンタは、前記プレッシャプレートに対して相対回転した際に、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるセンタ側アシストカム面を有し、前記プレッシャプレートは、前記クラッチセンタに対して相対回転した際に、前記センタ側アシストカム面と接触可能に構成されかつ前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるプレッシャ側アシストカム面と、前記プレッシャプレートの回転方向に関して前記プレッシャ側アシストカム面と並んで配置され、かつ、前記クラッチスプリングを収容する収容部と、を有し、前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが前記回転方向に離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、前記クラッチスプリングにおいて前記クラッチスプリングから前記プレッシャ側アシストカム面に向かう方向の復元力を低減する低減手段を有している。
【0007】
本発明に係るクラッチ装置によると、低減手段は、センタ側アシストカム面とプレッシャ側アシストカム面とが回転方向に離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、クラッチスプリングにおいてクラッチスプリングからプレッシャ側アシストカム面に向かう方向の復元力を低減する。このように、低減手段によってクラッチスプリングに発生し得る復元力が低減されるため、復元力によってセンタ側アシストカム面とプレッシャ側アシストカム面とが急に接触することが抑制される。即ち、低減手段によってクラッチが急に接続することを抑制することができる。
【0008】
本発明に係る他のクラッチ装置は、入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記プレッシャプレートを前記第1の方向に付勢するクラッチスプリングと、前記プレッシャプレートに固定され、かつ、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから前記第2の方向に所定の距離以上離隔することを抑制するリフタープレートと、を備え、前記クラッチスプリングの前記第1の方向の端部は、前記リフタープレートに接触し、かつ、前記クラッチスプリングの前記第2の方向の端部は、前記クラッチセンタに接触し、前記クラッチセンタは、前記プレッシャプレートに対して相対回転した際に、前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるセンタ側アシストカム面と、前記クラッチセンタの回転方向に関して前記センタ側アシストカム面と並んで配置され、かつ、前記クラッチスプリングを収容する収容部と、を有し、前記プレッシャプレートは、前記クラッチセンタに対して相対回転した際に、前記センタ側アシストカム面と接触可能に構成されかつ前記入力側回転板と前記出力側回転板との押圧力を増加させるために前記プレッシャプレートから前記クラッチセンタに向かう方向の力を発生させるプレッシャ側アシストカム面と、を有し、前記センタ側アシストカム面と前記プレッシャ側アシストカム面とが前記回転方向に離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、前記クラッチスプリングにおいて前記クラッチスプリングから前記センタ側アシストカム面に向かう方向の復元力を低減する低減手段を有している。
【0009】
本発明に係る他のクラッチ装置によると、低減手段は、センタ側アシストカム面とプレッシャ側アシストカム面とが回転方向に離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、クラッチスプリングにおいてクラッチスプリングからセンタ側アシストカム面に向かう方向の復元力を低減する。このように、低減手段によってクラッチスプリングに発生し得る復元力が低減されるため、復元力によってセンタ側アシストカム面とプレッシャ側アシストカム面とが急に接触することが抑制される。即ち、低減手段によってクラッチが急に接続することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クラッチが急に接続することが抑制されたクラッチ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るクラッチ装置の断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るクラッチセンタの斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るクラッチセンタの平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るプレッシャプレートの斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るプレッシャプレートの平面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るプレッシャプレートの斜視図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るプレッシャプレートの平面図である。
【
図8A】
図8Aは、センタ側アシストカム面およびプレッシャ側アシストカム面の作用について説明する模式図である。
【
図8B】
図8Bは、センタ側スリッパーカム面およびプレッシャ側スリッパーカム面の作用について説明する模式図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係るクラッチスプリングがプレッシャプレートのスプリング収容部に収容された状態を示す平面図である。
【
図10A】
図10Aは、クラッチが切断された状態におけるクラッチスプリングの状態を示す断面図である。
【
図10B】
図10Bは、クラッチが接続された状態におけるクラッチスプリングの状態を示す断面図である。
【
図11A】
図11Aは、第2実施形態において、クラッチが切断された状態におけるクラッチスプリングの状態を示す断面図である。
【
図11B】
図11Bは、第2実施形態において、クラッチが接続された状態におけるクラッチスプリングの状態を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係るクラッチスプリングがプレッシャプレートのスプリング収容部に収容された状態を示す平面図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係るクラッチ装置の断面図である。
【
図14A】
図14Aは、クラッチが切断された状態におけるクラッチスプリングの状態を示す断面図である。
【
図14B】
図14Bは、クラッチが接続された状態におけるクラッチスプリングの状態を示す断面図である。
【
図15A】
図15Aは、第4実施形態において、クラッチが切断された状態におけるクラッチスプリングの状態を示す断面図である。
【
図15B】
図15Bは、第4実施形態において、クラッチが接続された状態におけるクラッチスプリングの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るクラッチ装置の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るクラッチ装置10の断面図である。クラッチ装置10は、例えば、自動二輪車等の車両に設けられている。クラッチ装置10は、例えば、自動二輪車のエンジンの入力軸(クランクシャフト)の回転駆動力を出力軸15に伝達または遮断する装置である。クラッチ装置10は、出力軸15を介して入力軸の回転駆動力を駆動輪(後輪)に伝達または遮断するための装置である。クラッチ装置10は、エンジンと変速機との間に配置される。
【0014】
以下の説明では、クラッチ装置10のプレッシャプレート70がクラッチセンタ40に対して接近および離隔する方向を方向D(移動方向の一例である)とし、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40に接近する方向を第1の方向D1、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40から離隔する方向を第2の方向D2とする。また、クラッチセンタ40およびプレッシャプレート70の回転方向(即ち周方向)を回転方向Sとし、回転方向Sに関して一方のプレッシャ側カム部90から他方のプレッシャ側カム部90に向かう方向を第1の回転方向S1(
図5参照)、他方のプレッシャ側カム部90から一方のプレッシャ側カム部90に向かう方向を第2の回転方向S2(
図5参照)とする。本実施形態では、出力軸15の軸線方向、クラッチハウジング30の軸線方向、クラッチセンタ40の軸線方向およびプレッシャプレート70の軸線方向は、方向Dと同じ方向である。また、プレッシャプレート70およびクラッチセンタ40は、第1の回転方向S1に回転する。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、クラッチ装置10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0015】
図1に示すように、クラッチ装置10は、出力軸15と、入力側回転板20と、出力側回転板22と、クラッチハウジング30と、クラッチセンタ40と、プレッシャプレート70と、ストッパプレート100と、クラッチスプリング25と、低減手段110と、を備えている。クラッチ装置10は、いわゆる内切りタイプのクラッチ装置である。
【0016】
図1に示すように、出力軸15は、中空状に形成された軸体である。出力軸15の一方側の端部は、ニードルベアリング15Aを介して後述する入力ギア35およびクラッチハウジング30を回転自在に支持する。出力軸15は、ナット15Bを介してクラッチセンタ40を固定的に支持する。即ち、出力軸15は、クラッチセンタ40と一体的に回転する。出力軸15の他方側の端部は、例えば、自動車二輪車の変速機(図示せず)に連結されている。
【0017】
図1に示すように、出力軸15は、その中空部15Hにプッシュロッド16Aと、プッシュロッド16Aに隣接して設けられたプッシュ部材16Bと、を備えている。中空部15Hは、クラッチオイルの流通路としての機能を有する。クラッチオイルは、出力軸15内、即ち中空部15H内を流動する。プッシュロッド16Aおよびプッシュ部材16Bは、出力軸15の中空部15H内を摺動可能に設けられている。プッシュロッド16Aは、一方の端部(図示左側の端部)が自動二輪車のクラッチ機構(例えばクラッチ操作レバーや操作ボタン)に連結されており、運転者のクラッチ操作によって中空部15H内を摺動してプッシュ部材16Bを第2の方向D2に押圧する。プッシュ部材16Bの一部は出力軸15の外方(ここでは第2の方向D2)に突出しており、プレッシャプレート70に設けられたレリーズベアリング18に連結している。プッシュロッド16Aおよびプッシュ部材16Bは、中空部15Hの内径よりも細く形成されており、中空部15H内においてクラッチオイルの流通性が確保されている。
【0018】
クラッチハウジング30は、アルミニウム合金から形成されている。クラッチハウジング30は、有底円筒状に形成されている。
図1に示すように、クラッチハウジング30は、略円形状に形成された底壁31と、底壁31の縁部から第2の方向D2に延びる側壁33と、を有する。クラッチハウジング30は、複数の入力側回転板20を保持する。
【0019】
図1に示すように、クラッチハウジング30の底壁31には、入力ギア35が設けられている。入力ギア35は、トルクダンパ35Aを介してリベット35Bによって底壁31に固定されている。入力ギア35は、エンジンの入力軸の回転駆動によって回転する駆動ギア(図示せず)と噛み合っている。入力ギア35は、出力軸15から独立してクラッチハウジング30と一体的に回転駆動する。
【0020】
入力側回転板20は、入力軸の回転駆動によって回転駆動する。
図1に示すように、入力側回転板20は、クラッチハウジング30の側壁33の内周面に保持されている。入力側回転板20は、クラッチハウジング30にスプライン嵌合によって保持されている。入力側回転板20は、クラッチハウジング30の軸線方向(即ち方向D)に沿って変位可能に設けられている。入力側回転板20は、クラッチハウジング30と一体的に回転可能に設けられている。
【0021】
入力側回転板20は、出力側回転板22に押し当てられる部材である。入力側回転板20は、環状に形成されている。入力側回転板20は、アルミダイカストで成形されている。入力側回転板20の表面および裏面には、複数の紙片からなる摩擦材(図示せず)が貼り付けられている。摩擦材の間にはクラッチオイルを保持するための深さ数百μmの溝が形成されている。
【0022】
図1に示すように、クラッチセンタ40は、クラッチハウジング30に収容されている。クラッチセンタ40は、クラッチハウジング30と同心に配置されている。クラッチセンタ40は、円筒状の本体42と、本体42の外周縁から径方向外側に延びるフランジ68とを有する。クラッチセンタ40は、入力側回転板20と方向Dに交互に配置された複数の出力側回転板22を保持する。クラッチセンタ40は、出力軸15と共に回転駆動する。
【0023】
図2に示すように、本体42は、環状のベース壁43と、ベース壁43の径方向外側に位置しかつ第2の方向D2に向けて延びる外周壁45と、ベース壁43の中央に設けられた出力軸保持部50と、ベース壁43および外周壁45に接続された複数のセンタ側カム部60と、を備えている。
【0024】
図2に示すように、出力軸保持部50は、円筒状に形成されている。出力軸保持部50には、出力軸15(
図1参照)が挿入されてスプライン嵌合する挿入孔51が形成されている。挿入孔51は、ベース壁43を貫通して形成されている。出力軸保持部50のうち挿入孔51を形成する内周面50Aには、軸線方向に沿って複数のスプライン溝が形成されている。出力軸保持部50には、出力軸15が連結されている(
図1参照)。
【0025】
図2に示すように、クラッチセンタ40の外周壁45は、出力軸保持部50よりも径方向外側に配置されている。外周壁45の外周面には、スプライン嵌合部46が設けられている。スプライン嵌合部46は、外周壁45の外周面に沿ってクラッチセンタ40の軸線方向に延びる複数のセンタ側嵌合歯47と、隣り合うセンタ側嵌合歯47の間に形成されかつクラッチセンタ40の軸線方向に延びる複数のスプライン溝48とを有する。センタ側嵌合歯47は、出力側回転板22を保持する。複数のセンタ側嵌合歯47は、回転方向Sに並ぶ。複数のセンタ側嵌合歯47は、回転方向Sに等間隔に形成されている。複数のセンタ側嵌合歯47は、同じ形状に形成されている。センタ側嵌合歯47は、外周壁45の外周面から径方向外側に突出する。センタ側嵌合歯47の外周面は出力軸15の軸線と略平行に形成されている。
【0026】
出力側回転板22は、クラッチセンタ40のスプライン嵌合部46およびプレッシャプレート70に保持されている。出力側回転板22の一部は、クラッチセンタ40のセンタ側嵌合歯47およびスプライン溝48にスプライン嵌合によって保持されている。出力側回転板22の他の一部は、プレッシャプレート70の後述するプレッシャ側嵌合歯77(
図4参照)に保持されている。出力側回転板22は、クラッチセンタ40の軸線方向に沿って変位可能に設けられている。出力側回転板22は、クラッチセンタ40と一体的に回転可能に設けられている。
【0027】
出力側回転板22は、入力側回転板20に押し当てられる部材である。出力側回転板22は、環状に形成されている。出力側回転板22は、SPCC材からなる薄板材を環状に打ち抜いて成形されている。なお、入力側回転板20に設けられた摩擦材は、入力側回転板20に代えて出力側回転板22に設けられていてもよいし、入力側回転板20および出力側回転板22のそれぞれに設けてもよい。
【0028】
図2に示すように、センタ側カム部60は、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を増加させる力であるアシストトルクまたは入力側回転板20と出力側回転板22とを早期に離隔させて半クラッチ状態に移行させる力であるスリッパートルクを生じさせるアシスト&スリッパー(登録商標)機構を構成する傾斜面からなるカム面を有した台状に形成されている。センタ側カム部60は、ベース壁43から第2の方向D2に突出するように形成されている。
図3に示すように、センタ側カム部60は、クラッチセンタ40の回転方向Sに等間隔に配置されている。本実施形態では、クラッチセンタ40は、3つのセンタ側カム部60を有しているが、センタ側カム部60の数は3に限定されない。
【0029】
図3に示すように、センタ側カム部60は、出力軸保持部50の径方向外側に位置する。センタ側カム部60は、センタ側アシストカム面60Aと、センタ側スリッパーカム面60Sとを有する。センタ側アシストカム面60Aは、プレッシャプレート70に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を増加させるためにプレッシャプレート70からクラッチセンタ40に向かう方向(ここでは第1の方向D1)の力を発生させるように構成されている。本実施形態では、上記力が発生するときにはクラッチセンタ40に対するプレッシャプレート70の位置は変化せず、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40に対して物理的に接近する必要はない。なお、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40に対して物理的に変位してもよい。センタ側スリッパーカム面60Sは、プレッシャプレート70に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を減少させるためにプレッシャプレート70をクラッチセンタ40から離隔させるように構成されている。回転方向Sに関して隣り合うセンタ側カム部60において、一方のセンタ側カム部60Lのセンタ側アシストカム面60Aと他方のセンタ側カム部60Mのセンタ側スリッパーカム面60Sとは回転方向Sに対向して配置されている。
【0030】
図2に示すように、クラッチセンタ40は、複数(本実施形態では3つ)のボス部54を備えている。ボス部54は、ストッパプレート100(
図1参照)を支持する部材である。複数のボス部54は、回転方向Sに等間隔に配置されている。ボス部54は、円筒状に形成されている。ボス部54は、出力軸保持部50より径方向外側に位置する。ボス部54は、プレッシャプレート70に向けて(即ち第2の方向D2に向けて)延びる。ボス部54は、センタ側カム部60に設けられている。ボス部54は、回転方向Sに関してセンタ側アシストカム面60Aとセンタ側スリッパーカム面60Sとの間に位置する。ボス部54には、ねじ穴54Hが形成されている。ねじ穴54Hは、クラッチセンタ40の軸線方向に延びる。ねじ穴54Hには、ストッパプレート100をクラッチセンタ40に固定するために用いられるボルト28(
図1参照)が挿入される。
【0031】
図2および
図3に示すように、クラッチセンタ40は、ベース壁43の一部を貫通するセンタ側カム孔43Hを有する。センタ側カム孔43Hは、出力軸保持部50の側方から外周壁45まで延びる。センタ側カム孔43Hは、一のセンタ側カム部60のセンタ側アシストカム面60Aと他の一のセンタ側カム部60のセンタ側スリッパーカム面60Sとの間に形成されている。クラッチセンタ40の軸線方向から見て、センタ側アシストカム面60Aとセンタ側カム孔43Hの一部とは重なる。
【0032】
図1に示すように、プレッシャプレート70は、クラッチセンタ40に対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられている。プレッシャプレート70は、入力側回転板20および出力側回転板22を押圧可能に構成されている。プレッシャプレート70は、クラッチセンタ40およびクラッチハウジング30と同心に配置されている。プレッシャプレート70は、本体72と、本体72の第2の方向D2側の外周縁に接続しかつ径方向外側に延びるフランジ98とを有する。本体72は、フランジ98よりも第1の方向D1に突出している。フランジ98は、プレッシャプレート70の外径端部に位置する。フランジ98は、後述する筒状部80(
図4も参照)よりも径方向外側に位置する。プレッシャプレート70は、入力側回転板20と交互に配置された複数の出力側回転板22を保持する。フランジ98は、入力側回転板20および出力側回転板22を押圧可能に構成されている。
【0033】
図4に示すように、本体72は、筒状部80と、複数のプレッシャ側カム部90と、スプリング収容部84(
図6参照)とを備えている。スプリング収容部84は、収容部の一例である。
【0034】
筒状部80は、円筒状に形成されている。筒状部80は、プレッシャ側カム部90と一体に形成されている。筒状部80は、出力軸15の先端部15T(
図1参照)を収容する。筒状部80には、レリーズベアリング18(
図1参照)が収容される。筒状部80は、プッシュ部材16Bからの押圧力を受ける部位である。筒状部80は、出力軸15の先端部15Tから流出したクラッチオイルを受け止める部位である。
【0035】
図4に示すように、プレッシャ側カム部90は、センタ側カム部60に摺動してアシストトルクまたはスリッパートルクを発生させるアシスト&スリッパー(登録商標)機構を構成する傾斜面からなるカム面を有した台状に形成されている。プレッシャ側カム部90は、フランジ98よりも第1の方向D1に突出するように形成されている。
図5に示すように、プレッシャ側カム部90は、プレッシャプレート70の回転方向Sに等間隔に配置されている。本実施形態では、プレッシャプレート70は、3つのプレッシャ側カム部90を有しているが、プレッシャ側カム部90の数は3に限定されない。
【0036】
図5に示すように、プレッシャ側カム部90は、筒状部80の径方向外側に位置する。プレッシャ側カム部90は、プレッシャ側アシストカム面90A(
図6および
図7も参照)と、プレッシャ側スリッパーカム面90Sとを有する。プレッシャ側アシストカム面90Aは、センタ側アシストカム面60Aと接触可能に構成されている。プレッシャ側アシストカム面90Aは、クラッチセンタ40に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を増加させるためにプレッシャプレート70からクラッチセンタ40に向かう方向の力を発生させるように構成されている。プレッシャ側スリッパーカム面90Sは、センタ側スリッパーカム面60Sと接触可能に構成されている。プレッシャ側スリッパーカム面90Sは、クラッチセンタ40に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を減少させるためにプレッシャプレート70をクラッチセンタ40から離隔させるように構成されている。回転方向Sに関して隣り合うプレッシャ側カム部90において、一方のプレッシャ側カム部90Lのプレッシャ側アシストカム面90Aと他方のプレッシャ側カム部90Mのプレッシャ側スリッパーカム面90Sとは回転方向Sに対向して配置されている。
【0037】
ここで、センタ側カム部60およびプレッシャ側カム部90の作用について説明する。エンジンの回転数が上がり、入力ギア35およびクラッチハウジング30に入力された回転駆動力がクラッチセンタ40介して出力軸15に伝達され得る状態となったときには、
図8Aに示すように、プレッシャプレート70には第1の回転方向S1の回転力が付与される。このため、センタ側アシストカム面60Aおよびプレッシャ側アシストカム面90Aの作用により、プレッシャプレート70には第1の方向D1への力が発生する。これにより、プレッシャプレート70は、クラッチセンタ40に対して更に近接する方向(第1の方向D1)に移動して、入力側回転板20と出力側回転板22との圧接力を増加させるようになっている。
【0038】
一方、出力軸15の回転数が入力ギア35およびクラッチハウジング30の回転数を上回ってバックトルクが生じた際には、
図8Bに示すように、クラッチセンタ40には第1の回転方向S1の回転力が付与される。このため、センタ側スリッパーカム面60Sおよびプレッシャ側スリッパーカム面90Sの作用により、プレッシャプレート70を第2の方向D2へ移動させて入力側回転板20と出力側回転板22との圧接力を解放させるようになっている。これにより、バックトルクによるエンジンや変速機に対する不具合を回避することができる。
【0039】
図4および
図5に示すように、プレッシャプレート70は、本体72の一部を貫通するプレッシャ側カム孔73Hを有する。プレッシャ側カム孔73Hは、筒状部80よりも径方向外側に位置する。プレッシャ側カム孔73Hは、筒状部80の側方からプレッシャ側カム部90よりも径方向外側まで延びる。プレッシャ側カム孔73Hは、隣り合うプレッシャ側カム部90のプレッシャ側アシストカム面90Aとプレッシャ側スリッパーカム面90Sとの間に形成されている。
図5および
図7に示すように、プレッシャプレート70の軸線方向から見て、プレッシャ側アシストカム面90Aとプレッシャ側カム孔73Hの一部とは重なる。クラッチセンタ40とプレッシャプレート70とが組み合わされたとき、クラッチセンタ40のボス部54はプレッシャ側カム孔73H内に位置する。
【0040】
図4に示すように、プレッシャプレート70は、本体72の外周面に形成された複数のプレッシャ側嵌合歯77を備えている。プレッシャ側嵌合歯77は、少なくとも一つの出力側回転板22を保持する。プレッシャ側嵌合歯77は、フランジ98よりも第1の方向S1側に位置する。プレッシャ側嵌合歯77は、筒状部80よりも径方向外側に位置する。プレッシャ側嵌合歯77は、プレッシャ側カム部90より径方向外側に位置する。プレッシャ側嵌合歯77は、プレッシャ側カム部90より径方向外側に位置する。複数のプレッシャ側嵌合歯77は、回転方向Sに並ぶ。複数のプレッシャ側嵌合歯77は、回転方向Sに等間隔に配置されている。なお、本実施形態では、一部のプレッシャ側嵌合歯77が取り除かれているため、該部分の間隔は広がっているが、その他の隣り合うプレッシャ側嵌合歯77は等間隔に配置されている。
【0041】
図6および
図7に示すように、スプリング収容部84は、プレッシャ側カム部90に形成されている。スプリング収容部84は、第2の方向D2から第1の方向D1に向けて凹むように形成されている。スプリング収容部84は、方向Dから見て楕円形状に形成されている(
図9も参照)。スプリング収容部84は、クラッチスプリング25(
図1参照)を収容する。スプリング収容部84は、回転方向Sに関してプレッシャ側アシストカム面90Aと並んで配置されている。なお、「並んで」とは、スプリング収容部84とプレッシャ側アシストカム面90Aとが隣接している必要はなく、回転方向Sに関してスプリング収容部84とプレッシャ側アシストカム面90Aとが離隔していてもよいし、回転方向Sに関してスプリング収容部84とプレッシャ側アシストカム面90Aとの間にプレッシャ側カム部90と一体の他の要素(例えば凹部等)が設けられていてもよい。スプリング収容部84は、回転方向Sに関してプレッシャ側アシストカム面90Aとプレッシャ側スリッパーカム面90Sとの間に配置されている。
図1に示すように、スプリング収容部84には、第2の方向D2から第1の方向D1に向けて凹む第1保持溝115が形成されている。第1保持溝115は、クラッチスプリング25の後述する第1の方向D1の端部25Aを保持する。第1保持溝115は、第1の方向D1の端部25Aをプレッシャプレート70に固定する。第1保持溝115は、方向Dから見て円形状に形成されている。第1保持溝115の内径は、クラッチスプリング25の外径と同一もしくはクラッチスプリング25の外径より小さい。クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aを第1保持溝115に嵌め込むことにより、第1保持溝115は、第1の方向D1の端部25Aをプレッシャプレート70に固定する。なお、第1の方向D1の端部25Aがプレッシャプレート70に対して回転方向Sに相対的に移動することを第1保持溝115によって抑制することができる限りにおいて、第1保持溝115は方向Dから見て円形状に形成されていなくてもよい(即ち第1保持溝115の内周面とクラッチスプリング25の外周面との間の一部に隙間があってもよい)。第1保持溝115は、例えば、方向Dから見て楕円形状等に形成されていてもよい。
【0042】
図1および
図9に示すように、クラッチスプリング25は、スプリング収容部84に収容されている。クラッチスプリング25は、プレッシャプレート70をクラッチセンタ40に向けて付勢する。即ち、クラッチスプリング25は、プレッシャプレート70を第1の方向D1に付勢する。クラッチスプリング25は、例えば、ばね鋼を螺旋状に巻いたコイルスプリングである。クラッチスプリング25は、例えば、円筒状に形成されている。クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aは、プレッシャプレート70に接触している。クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bは、ストッパプレート100に接触している。
図10Aおよび
図10Bに示すように、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図10A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図10B参照)、クラッチスプリング25の軸線25Lは、第1の方向D1から第2の方向D2に行くほどプレッシャ側アシストカム面90Aからクラッチスプリング25に向かう方向(即ち第2の回転方向S2)に傾斜し(
図10B参照)、または、プレッシャプレート70が移動する方向である方向Dに延びる直線と平行である(
図10A参照)。かかる態様によると、クラッチが切断された状態(
図10A参照)からクラッチが接続された状態(
図10B参照)に移行するとき、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向(即ち第1の回転方向S1)の復元力が発生しない。クラッチスプリング25の軸線25Lは、
図10Aの状態から
図10Bの状態の全体に亘って、第1の方向D1から第2の方向D2に行くほどプレッシャ側アシストカム面90Aからクラッチスプリング25に向かう方向(即ち第2の回転方向S2)に傾斜していてもよい。即ち、
図10Aに示す例では、クラッチが切断された状態においてクラッチスプリング25の軸線25Lは方向Dに延びる直線と平行であるが、第1の方向D1から第2の方向D2に行くほどプレッシャ側アシストカム面90Aからクラッチスプリング25に向かう方向(即ち第2の回転方向S2)に傾いていてもよい。
【0043】
図1に示すように、ストッパプレート100は、プレッシャプレート70と接触可能に設けられている。なお、ストッパプレート100は、プレッシャプレート70と連動して方向Dに移動可能な部材と接触可能に設けられていてもよい。ストッパプレート100は、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40から第2の方向D2に所定の距離以上離隔することを抑制する部材である。ストッパプレート100は、クラッチセンタ40に固定されている。ストッパプレート100は、クラッチセンタ40のボス部54にボルト28によって固定されている。ストッパプレート100は、スプリング収容部84にクラッチスプリング25が収容された状態でボルト28を介してクラッチセンタ40のボス部54に締め付けられて固定されている。ストッパプレート100は、平面視でリング状に形成されている。ストッパプレート100には、第1の方向D1から第2の方向D2に向けて凹む第2保持溝120が形成されている。第2保持溝120は、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bを保持する。第2保持溝120は、第2の方向D2の端部25Bをストッパプレート100に固定する。第2保持溝120は、方向Dから見て円形状に形成されている。第2保持溝120の内径は、クラッチスプリング25の外径と同一もしくはクラッチスプリング25の外径より小さい。クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bを第2保持溝120に嵌め込むことにより、第2保持溝120は、第2の方向D2の端部25Bをプレッシャプレート70に固定する。なお、第2の方向D2の端部25Bがプレッシャプレート70に対して回転方向Sに相対的に移動することを第2保持溝120によって抑制することができる限りにおいて、第2保持溝120は方向Dから見て円形状に形成されていなくてもよい(即ち第2保持溝120の内周面とクラッチスプリング25の外周面との間の一部に隙間があってもよい)。第2保持溝120は、例えば、方向Dから見て楕円形状等に形成されていてもよい。
【0044】
図1に示すように、本実施形態の低減手段110は、第1保持溝115と、第2保持溝120と、を含む。
図10Aおよび
図10Bに示すように、低減手段110は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図10A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図10B参照)、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向(即ち第1の回転方向S1)の復元力を低減する。本実施形態では、低減手段110は、第1保持溝115および第2保持溝120によって、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図10A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図10B参照)、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向(即ち第1の回転方向S1)の復元力を低減する。
【0045】
図10Aおよび
図10Bに示すように、低減手段110は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図10A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図10B参照)、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aがプレッシャプレート70に対して回転方向Sに相対的に移動すること、および、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bがストッパプレート100に対して回転方向Sに相対的に移動すること、を抑制(例えば規制)する。本実施形態では、低減手段110は、第1保持溝115および第2保持溝120によって、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図10A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図10B参照)、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aがプレッシャプレート70に対して回転方向Sに相対的に移動すること、および、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bがストッパプレート100に対して回転方向Sに相対的に移動すること、を抑制(例えば規制)する。なお、低減手段110は、上記復元力を低減することができる限りにおいて、第1の方向D1の端部25Aがプレッシャプレート70に対して回転方向Sに相対的に移動すること、および、第2の方向D2の端部25Bがストッパプレート100に対して回転方向Sに相対的に移動すること、をわずかに許容する。
【0046】
図10Aおよび
図10Bに示すように、低減手段110は、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aをプレッシャプレート70に固定し、かつ、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bをストッパプレート100に固定する。本実施形態では、低減手段110は、第1保持溝115によってクラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aをプレッシャプレート70に固定し、第2保持溝120によってクラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bをストッパプレート100に固定する。
【0047】
次に、本実施形態のクラッチ装置10の作動について説明する。クラッチ装置10は、上述のように、自動二輪車のエンジンと変速機との間に配置されるものであり、運転者がクラッチ操作(例えば操作レバーの操作や操作ボタンの押圧)をすることによって、エンジンの回転駆動力を変速機へ伝達および遮断する。
【0048】
クラッチ装置10は、自動二輪車の運転者がクラッチ操作をしない場合には、クラッチレリーズ機構(図示せず)がプッシュロッド16Aを押圧しないため、プレッシャプレート70がクラッチスプリング25の付勢力(弾性力)によって入力側回転板20を押圧する。これにより、クラッチセンタ40は、入力側回転板20と出力側回転板22とが互いに押し当てられて摩擦連結された状態(即ちクラッチが接続された状態)となって回転駆動する。これにより、エンジンの回転駆動力がクラッチセンタ40に伝達されて出力軸15が回転駆動する。
【0049】
一方、クラッチ装置10は、クラッチが接続された状態において自動二輪車の運転者がクラッチ操作をした場合には、クラッチレリーズ機構(図示せず)がプッシュロッド16Aを押圧するため、プレッシャプレート70がクラッチスプリング25の付勢力に抗してクラッチセンタ40から離隔する方向(第2の方向D2)に変位する。これにより、クラッチセンタ40は、入力側回転板20と出力側回転板22との摩擦連結が解消された状態(即ちクラッチが切断された状態)となるため、出力軸15の回転駆動が減衰または回転駆動が停止する状態となる。これにより、エンジンの回転駆動力がクラッチセンタ40に対して遮断される。なお、クラッチが接続された状態(
図10B参照)から切断された状態(
図10A参照)に移行するまでの間、低減手段110は、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向(即ち第1の回転方向S1)の復元力を低減する。ここでは、クラッチスプリング25には上記復元力は発生しない。
【0050】
そして、クラッチが切断された状態(
図10A参照)において運転者がクラッチ操作を解除(例えば操作レバーの操作の解除や操作ボタンの押圧の解除)した場合には、クラッチレリーズ機構(図示せず)によるプッシュ部材16Bを介したプレッシャプレート70の押圧が解除されるため、プレッシャプレート70はクラッチスプリング25の付勢力によってクラッチセンタ40に接近する方向(第1の方向D1)に変位する。クラッチが切断された状態(
図10A参照)から接続された状態(
図10B参照)に移行するまでの間、低減手段110は、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向(即ち第1の回転方向S1)の復元力を低減する。ここでは、クラッチスプリング25には上記復元力は発生しない。このため、復元力によってセンタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが急に接触することが抑制される。
【0051】
以上のように、本実施形態のクラッチ装置10によると、低減手段110は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向(即ち第1の回転方向S1)の復元力を低減する。このように、低減手段110によってクラッチスプリング25に発生し得る復元力が低減されるため、復元力によってセンタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが急に接触することが抑制される。即ち、低減手段110によってクラッチが急に接続することを抑制することができる。
【0052】
本実施形態のクラッチ装置10では、低減手段110は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aがプレッシャプレート70に対して回転方向Sに相対的に移動すること、および、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bがストッパプレート100に対して回転方向Sに相対的に移動すること、を抑制し、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、クラッチスプリング25の軸線25Lは、第1の方向D1から第2の方向D2に行くほどプレッシャ側アシストカム面90Aからクラッチスプリング25に向かう方向(即ち第2の回転方向S2)に傾斜し、または、プレッシャプレート70が移動する方向である方向Dに延びる直線と平行である。上記態様によれば、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向の復元力は発生しない。
【0053】
本実施形態のクラッチ装置10では、低減手段110は、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aをプレッシャプレート70に固定し、かつ、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bをストッパプレート100に固定する。上記態様によれば、クラッチスプリング25のプレッシャプレート70およびストッパプレート100に対する移動をより確実に抑制することができる。これにより、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向の復元力は発生しない。
【0054】
本実施形態のクラッチ装置では、低減手段110は、プレッシャプレート70に形成され、かつ、第2の方向D2から第1の方向D1に向けて凹み、かつ、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部D1を保持する第1保持溝115と、ストッパプレート100に形成され、かつ、第1の方向D1から第2の方向D2に向けて凹み、かつ、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bを保持する第2保持溝120と、を備えている。上記態様によれば、クラッチスプリング25をプレッシャプレート70およびストッパプレート100に対してより容易に固定することができる。
【0055】
<第2実施形態>
図11Aおよび
図11Bは、第2実施形態に係るクラッチ装置210の一部を示す断面図である。クラッチ装置210は、出力軸15と、入力側回転板20と、出力側回転板22と、クラッチハウジング30と、クラッチセンタ40と、プレッシャプレート270と、ストッパプレート300と、クラッチスプリング225と、低減手段310と、を備えている。
【0056】
図11Aおよび
図12に示すように、プレッシャプレート270は、クラッチスプリング225を収容するスプリング収容部284を備えている。スプリング収容部284は、収容部の一例である。スプリング収容部284は、プレッシャ側カム部90に形成されている。スプリング収容部284は、第2の方向D2から第1の方向D1に向けて凹むように形成されている。スプリング収容部284は、区画壁284Wによって区画されている。スプリング収容部284は、方向Dから見て円形状に形成されている(
図12も参照)。スプリング収容部284は、第1の方向D1から第2の方向D2に行くほど内径が大きくなるように形成されている。スプリング収容部284は、回転方向Sに関してプレッシャ側アシストカム面90Aと並んで配置されている。なお、「並んで」とは、スプリング収容部284とプレッシャ側アシストカム面90Aとが隣接している必要はなく、回転方向Sに関してスプリング収容部284とプレッシャ側アシストカム面90Aとが離隔していてもよいし、回転方向Sに関してスプリング収容部284とプレッシャ側アシストカム面90Aとの間にプレッシャ側カム部90と一体の他の要素(例えば凹部等)が設けられていてもよい。スプリング収容部284は、回転方向Sに関してプレッシャ側アシストカム面90Aとプレッシャ側スリッパーカム面90Sとの間に配置されている。
【0057】
図11Aおよび
図12に示すように、クラッチスプリング225は、スプリング収容部284に収容されている。クラッチスプリング225は、区画壁284Wの全体に亘って(即ち区画壁284Wの方向Dの全体に亘って)区画壁284Wの内周面284Pと接触している。クラッチスプリング225は、例えば、ばね鋼を螺旋状に巻いた円錐スプリングである。クラッチスプリング225は、例えば、第1の方向D1から第2の方向D2に行くほど外径が大きくなる円錐台形状に形成されている。クラッチスプリング225は、プレッシャプレート270をクラッチセンタ40に向けて付勢する。即ち、クラッチスプリング225は、プレッシャプレート270を第1の方向D1に付勢する。クラッチスプリング225の第1の方向D1の端部225Aは、プレッシャプレート270に接触している。第1の方向D1の端部225Aは、プレッシャプレート270に対して摺動不能に設けられている。クラッチスプリング225の第2の方向D2の端部225Bは、ストッパプレート300に接触している。第2の方向D2の端部225Bは、ストッパプレート300に対して摺動可能に設けられている。
図11Aおよび
図11Bに示すように、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図11A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図11B参照)、クラッチスプリング225の軸線225Lは、プレッシャプレート270が移動する方向である方向Dに延びる直線と平行である。即ち、クラッチスプリング225は、傾かない。かかる態様によると、クラッチスプリング225においてクラッチスプリング225からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向(即ち第1の回転方向S1)の復元力が発生しない。なお、
図11Aは、クラッチが切断された状態を示し、
図11Bは、クラッチが接続された状態を示す。
【0058】
図11Aに示すように、ストッパプレート300は、第2保持溝120(
図10A参照)が形成されていない点を除いてストッパプレート100と同様の構成である。
【0059】
図11Aに示すように、本実施形態の低減手段310は、スプリング収容部284を区画する区画壁284Wである。
図11Aおよび
図11Bに示すように、低減手段310は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図11A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図11B参照)、クラッチスプリング225においてクラッチスプリング225からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向(即ち第1の回転方向S1)の復元力を低減する。本実施形態では、低減手段310は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図11A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図11B参照)、スプリング収容部284に収容されたクラッチスプリング225が回転方向Sに傾くことを抑制する。本実施形態では、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図11A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図11B参照)、クラッチスプリング225は、区画壁284Wの全体に亘って(即ち区画壁284Wの方向Dの全体に亘って)区画壁284Wの内周面284Pと接触している。このため、クラッチスプリング225は傾かず、クラッチスプリング225においてクラッチスプリング225からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向(即ち第1の回転方向S1)の復元力は発生しない。
【0060】
本実施形態のクラッチ装置210では、低減手段310は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、スプリング収容部284に収容されたクラッチスプリング225が回転方向Sに傾くことを抑制する。上記態様によれば、クラッチスプリング225は低減手段310によって回転方向Sに傾くことが抑制されるため、クラッチスプリング225においてクラッチスプリング225からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向の復元力は発生しない。
【0061】
本実施形態のクラッチ装置210では、低減手段310は、スプリング収容部284を区画する区画壁284Wであり、クラッチスプリング225は、区画壁284Wの全体に亘って区画壁284Wの内周面284Pと接触している。上記態様によれば、クラッチスプリング225が回転方向Sに傾かないため、クラッチスプリング225においてクラッチスプリング225からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向の復元力は発生しない。
【0062】
本実施形態のクラッチ装置210では、スプリング収容部284は、第1の方向D1から第2の方向D2に行くほど内径が大きくなるように形成され、クラッチスプリング225は、円錐台形状に形成されている。上記態様によれば、クラッチスプリング225が回転方向Sに傾かないため、クラッチスプリング225においてクラッチスプリング225からプレッシャ側アシストカム面90Aに向かう方向の復元力は発生しない。
【0063】
<第3実施形態>
図13は、第3実施形態に係るクラッチ装置410の断面図である。
図13に示すように、クラッチ装置410は、出力軸15と、入力側回転板20と、出力側回転板22と、クラッチハウジング30と、クラッチセンタ440と、プレッシャプレート470と、リフタープレート500と、クラッチスプリング25と、低減手段510と、を備えている。クラッチ装置410は、いわゆる外切りタイプのクラッチ装置である。
【0064】
図13に示すように、クラッチハウジング30の側壁33は、底壁31の縁部から第1の方向D1に延びる。
【0065】
図13に示すように、プレッシャプレート470は、複数(本実施形態では3つ)のボス部554を備えている。ボス部554は、リフタープレート500を支持する部材である。複数のボス部554は、回転方向Sに等間隔に配置されている。ボス部554は、円筒状に形成されている。ボス部554は、クラッチセンタ440に向けて(即ち第1の方向D1に向けて)延びる。ボス部554は、プレッシャ側カム部90に設けられている。
図14Aおよび
図14Bに示すように、ボス部554は、回転方向Sに関してプレッシャ側アシストカム面90Aとプレッシャ側スリッパーカム面90Sとの間に位置する。ボス部554には、ねじ穴554Hが形成されている。ねじ穴554Hは、プレッシャプレート470の軸線方向に延びる。ねじ穴554Hには、リフタープレート500をプレッシャプレート470に固定するために用いられるボルト28(
図13参照)が挿入される。
【0066】
図13に示すように、クラッチセンタ440は、スプリング収容部484を備えている。スプリング収容部484は、収容部の一例である。スプリング収容部484は、本体42に形成されている。スプリング収容部484は、センタ側カム部60に形成されている。スプリング収容部484は、第1の方向D1から第2の方向D2に向けて凹むように形成されている。スプリング収容部484は、方向Dから見て楕円形状に形成されている。スプリング収容部484は、クラッチスプリング25を収容する。
図14Aおよび
図14Bに示すように、スプリング収容部484は、回転方向Sに関してセンタ側アシストカム面60Aと並んで配置されている。なお、「並んで」とは、スプリング収容部484とセンタ側アシストカム面60Aとが隣接している必要はなく、回転方向Sに関してスプリング収容部484とセンタ側アシストカム面60Aとが離隔していてもよいし、回転方向Sに関してスプリング収容部484とセンタ側アシストカム面60Aとの間にセンタ側カム部60と一体の他の要素(例えば凹部等)が設けられていてもよい。スプリング収容部484は、回転方向Sに関してセンタ側アシストカム面60Aとセンタ側スリッパーカム面60Sとの間に配置されている。スプリング収容部484には、第1の方向D1から第2の方向D2に向けて凹む第1保持溝515が形成されている。第1保持溝515は、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bを保持する。第1保持溝515は、第2の方向D2の端部25Bをクラッチセンタ440に固定する。第1保持溝515は、第1保持溝115と同様の構成である。
【0067】
図13に示すように、クラッチスプリング25は、スプリング収容部484に収容されている。クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bは、クラッチセンタ440に接触している。クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aは、リフタープレート500に接触している。
図14Aおよび
図14Bに示すように、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図14A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図14B参照)、クラッチスプリング25の軸線25Lは、第2の方向D2から第1の方向D1に行くほどセンタ側アシストカム面60Aからクラッチスプリング25に向かう方向(即ち第1の回転方向S1)に傾斜し(
図14B参照)、または、プレッシャプレート470が移動する方向である方向Dに延びる直線と平行である(
図14A参照)。かかる態様によると、クラッチが切断された状態(
図14A参照)からクラッチが接続された状態(
図14B参照)に移行するとき、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からセンタ側アシストカム面60Aに向かう方向(即ち第2の回転方向S2)の復元力が発生しない。クラッチスプリング25の軸線25Lは、
図14Aの状態から
図14Bの状態の全体に亘って、第2の方向D2から第1の方向D1に行くほどセンタ側アシストカム面60Aからクラッチスプリング25に向かう方向(即ち第1の回転方向S1)に傾斜していてもよい。
【0068】
図13に示すように、リフタープレート500は、クラッチセンタ40と接触可能に設けられている。なお、リフタープレート500は、クラッチセンタ400と連動して回転可能な部材と接触可能に設けられていてもよい。リフタープレート500は、プレッシャプレート470を方向Dに変位させるための部材である。リフタープレート500は、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40から第2の方向D2に所定の距離以上離隔することを抑制する部材である。リフタープレート500は、プレッシャプレート470に固定されている。リフタープレート500は、プレッシャプレート470のボス部554にボルト28によって固定されている。リフタープレート500は、プレッシャプレート470と一体的に回転する。リフタープレート500は、クラッチセンタ440に対して方向Dに移動すると共に、クラッチセンタ440に対して相対的に回転する。リフタープレート500は、円盤状に形成されている。リフタープレート500には、レリーズベアリング503が設けられている。レリーズベアリング503は、クラッチレリーズ機構(図示せず)のレリーズフォーク512に押圧される部材である。ここで、クラッチレリーズ機構とは、クラッチ装置410が搭載された自動二輪車等の車両において、運転者のクラッチ操作レバー(図示せず)の操作によってレリーズフォーク512を介してレリーズベアリング503を出力軸15側(即ち第2の方向D2側)に押圧する機械装置である。リフタープレート500は、クラッチセンタ440のスプリング収容部484に収容されたクラッチスプリング25を支持する。リフタープレート500には、リフタープレート500をプレッシャプレート470に固定するボルト28が挿入される挿入孔504Hが形成されている。リフタープレート500には、第2の方向D2から第1の方向D1に向けて凹む第2保持溝520が形成されている。第2保持溝520は、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aを保持する。第2保持溝520は、第1の方向D1の端部25Aをリフタープレート500に固定する。第2保持溝520は、第2保持溝120と同様の構成である。
【0069】
図13に示すように、本実施形態の低減手段510は、第1保持溝515と、第2保持溝520と、を含む。
図14Aおよび
図14Bに示すように、低減手段510は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図14A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図14B参照)、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からセンタ側アシストカム面60Aに向かう方向(即ち第2の回転方向S2)の復元力を低減する。本実施形態では、低減手段510は、第1保持溝515および第2保持溝520によって、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図14A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図14B参照)、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からセンタ側アシストカム面60Aに向かう方向(即ち第2の回転方向S2)の復元力を低減する。
【0070】
図14Aおよび
図14Bに示すように、低減手段510は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図14A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図14B参照)、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bがクラッチセンタ440に対して回転方向Sに相対的に移動すること、および、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aがリフタープレート500に対して回転方向Sに相対的に移動すること、を抑制する。本実施形態では、低減手段510は、第1保持溝515および第2保持溝520によって、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図14A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図14B参照)、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bがクラッチセンタ440に対して回転方向Sに相対的に移動すること、および、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aがリフタープレート500に対して回転方向Sに相対的に移動すること、を抑制する。なお、低減手段510は、上記復元力を低減することができる限りにおいて、第2の方向D2の端部25Bがクラッチセンタ440に対して回転方向Sに相対的に移動すること、および、第1の方向D1の端部25Aがリフタープレート500に対して回転方向Sに相対的に移動すること、をわずかに許容する。
【0071】
図14Aおよび
図14Bに示すように、低減手段510は、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bをクラッチセンタ440に固定し、かつ、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aをリフタープレート500に固定する。本実施形態では、低減手段510は、第1保持溝515によってクラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bをクラッチセンタ440に固定し、第2保持溝520によってクラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aをリフタープレート500に固定する。
【0072】
以上のように、本実施形態のクラッチ装置410によると、低減手段510は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からセンタ側アシストカム面60Aに向かう方向(即ち第2の回転方向S2)の復元力を低減する。このように、低減手段510によってクラッチスプリング25に発生し得る復元力が低減されるため、復元力によってセンタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが急に接触することが抑制される。即ち、低減手段510によってクラッチが急に接続することを抑制することができる。
【0073】
本実施形態のクラッチ装置410では、低減手段510は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bがクラッチセンタ440に対して回転方向Sに相対的に移動すること、および、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aがリフタープレート500に対して回転方向Sに相対的に移動すること、を抑制し、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、クラッチスプリング25の軸線25Lは、第2の方向D2から第1の方向D1に行くほどセンタ側アシストカム面60Aからクラッチスプリング25に向かう方向(即ち第1の回転方向S1)に傾斜し、または、プレッシャプレート70が移動する方向である方向Dに延びる直線と平行である。上記態様によれば、クラッチスプリング25においてクラッチスプリング25からセンタ側アシストカム面60Aに向かう方向の復元力は発生しない。
【0074】
<第4実施形態>
図15Aおよび
図15Bは、第4実施形態に係るクラッチ装置610の一部を示す断面図である。クラッチ装置610は、出力軸15と、入力側回転板20と、出力側回転板22と、クラッチハウジング30と、クラッチセンタ540と、プレッシャプレート470と、リフタープレート600と、クラッチスプリング225と、低減手段710と、を備えている。
【0075】
図15Aおよび
図15Bに示すように、クラッチセンタ540は、クラッチスプリング225を収容するスプリング収容部584を備えている。スプリング収容部584は、収容部の一例である。スプリング収容部584は、センタ側カム部60に形成されている。スプリング収容部584は、第1の方向D1から第2の方向D2に向けて凹むように形成されている。スプリング収容部584は、区画壁584Wによって区画されている。スプリング収容部584は、方向Dから見て円形状に形成されている。スプリング収容部584は、第2の方向D2から第1の方向D1に行くほど内径が大きくなるように形成されている。スプリング収容部584は、回転方向Sに関してセンタ側アシストカム面60Aと並んで配置されている。なお、「並んで」とは、スプリング収容部584とセンタ側アシストカム面60Aとが隣接している必要はなく、回転方向Sに関してスプリング収容部584とセンタ側アシストカム面60Aとが離隔していてもよいし、回転方向Sに関してスプリング収容部584とセンタ側アシストカム面60Aとの間にセンタ側カム部60と一体の他の要素(例えば凹部等)が設けられていてもよい。スプリング収容部584は、回転方向Sに関してセンタ側アシストカム面60Aとセンタ側スリッパーカム面60Sとの間に配置されている。
【0076】
図15Aおよび
図15Bに示すように、クラッチスプリング225は、スプリング収容部584に収容されている。クラッチスプリング225は、区画壁584Wの全体に亘って(即ち区画壁584Wの方向Dの全体に亘って)区画壁584Wの内周面584Pと接触している。クラッチスプリング225は、プレッシャプレート470をクラッチセンタ540に向けて付勢する。即ち、クラッチスプリング225は、プレッシャプレート470を第1の方向D1に付勢する。クラッチスプリング225の第2の方向D2の端部225Bは、クラッチセンタ540に接触している。第2の方向D2の端部225Bは、クラッチセンタ540に対して摺動不能に設けられている。クラッチスプリング225の第1の方向D1の端部225Aは、リフタープレート600に接触している。第1の方向D1の端部225Aは、リフタープレート600に対して摺動可能に設けられている。センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図15A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図15B参照)、クラッチスプリング225の軸線225Lは、プレッシャプレート270が移動する方向である方向Dに延びる直線と平行である。即ち、クラッチスプリング225は、傾かない。かかる態様によると、クラッチスプリング225においてクラッチスプリング225からセンタ側アシストカム面60Aに向かう方向(即ち第2の回転方向S2)の復元力が発生しない。なお、
図15Aは、クラッチが切断された状態を示し、
図15Bは、クラッチが接続された状態を示す。
【0077】
図15Aに示すように、リフタープレート600は、第2保持溝520(
図14A参照)が形成されていない点を除いてリフタープレート500と同様の構成である。
【0078】
図15Aに示すように、本実施形態の低減手段710は、スプリング収容部584を区画する区画壁584Wである。
図15Aおよび
図15Bに示すように、低減手段710は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図15A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図15B参照)、クラッチスプリング225においてクラッチスプリング225からセンタ側アシストカム面60Aに向かう方向(即ち第2の回転方向S2)の復元力を低減する。本実施形態では、低減手段710は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図15A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図15B参照)、スプリング収容部584に収容されたクラッチスプリング225が回転方向Sに傾くことを抑制する。本実施形態では、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態(
図15A参照)から相互に接近して接触するまでの間(
図15B参照)、クラッチスプリング225は、区画壁584Wの全体に亘って(即ち区画壁584Wの方向Dの全体に亘って)区画壁584Wの内周面584Pと接触している。このため、クラッチスプリング225は傾かず、クラッチスプリング225においてクラッチスプリング225からセンタ側アシストカム面60Aに向かう方向(即ち第2の回転方向S2)の復元力は発生しない。
【0079】
本実施形態のクラッチ装置610では、低減手段710は、センタ側アシストカム面60Aとプレッシャ側アシストカム面90Aとが回転方向Sに離隔した状態から相互に接近して接触するまでの間、スプリング収容部584に収容されたクラッチスプリング225が回転方向Sに傾くことを抑制する。上記態様によれば、クラッチスプリング225は低減手段710によって回転方向Sに傾くことが抑制されるため、クラッチスプリング225においてクラッチスプリング225からセンタ側アシストカム面60Aに向かう方向の復元力は発生しない。
【0080】
本実施形態のクラッチ装置610では、低減手段710は、スプリング収容部584を区画する区画壁584Wであり、クラッチスプリング225は、区画壁584Wの全体に亘って区画壁584Wの内周面584Pと接触している。上記態様によれば、クラッチスプリング225が回転方向Sに傾かないため、クラッチスプリング225においてクラッチスプリング225からセンタ側アシストカム面60Aに向かう方向の復元力は発生しない。
【0081】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0082】
上述した第1実施形態では、第1保持溝115によって、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aをプレッシャプレート70に固定していたが、固定方法はこれに限定されない。例えば、第1の方向D1の端部25Aをプレッシャプレート70に貼り付けることによって固定してもよいし、プレッシャプレート70と第1の方向D1の端部25Aとの接触部分に摩擦の高い部材を配置して相互に固定してもよいし、突起等によって第1の方向D1の端部25Aをプレッシャプレート70に固定してもよい。クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bについても同様の方法で固定してもよい。また、第3実施形態において、クラッチスプリング25の第2の方向D2の端部25Bをクラッチセンタ440に固定する固定方法や、クラッチスプリング25の第1の方向D1の端部25Aをリフタープレート500に固定する固定方法についても同様の方法であってよい。
【0083】
上述した第2実施形態では、クラッチスプリング225は、区画壁284Wの全体に亘って区画壁284Wの内周面284Pと接触することによって、クラッチスプリング225が傾くことを抑制していたがこれに限定されない。例えば、区画壁284Wの内周面284Pからクラッチスプリング225に向けて突出する突起等によってクラッチスプリング225が傾くことを抑制してもよい。また、第4実施形態において、例えば、区画壁584Wの内周面584Pからクラッチスプリング225に向けて突出する突起等によってクラッチスプリング225が傾くことを抑制してもよい。
【0084】
上述した第2実施形態では、クラッチスプリング225は、区画壁284Wの全体に亘って区画壁284Wの内周面284Pと接触することによって、クラッチスプリング225が傾くことを抑制していたが、復元力を低減することができる限りにおいて、区画壁284Wの全体に亘ってあるいは部分的に、クラッチスプリング225の外周面と区画壁284Wの内周面との間に僅かな隙間が設けられていてもよい。また、第4実施形態においても同様である。
【0085】
上述した第1実施形態から第4実施形態では、クラッチセンタ40、440、540は、出力側回転板22を保持していたが、クラッチセンタ40、440、540は、出力側回転板22を保持していなくてもよい。即ち、全ての出力側回転板22はプレッシャプレート70、270、470に保持され、クラッチセンタ40、440、540は、1枚も出力側回転板22を保持していなくてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 クラッチ装置
15 出力軸
20 入力側回転板
22 出力側回転板
25 クラッチスプリング
25A 第1の方向の端部
25B 第2の方向の端部
25L 軸線
40 クラッチセンタ
54 ボス部
60 センタ側カム部
60A センタ側アシストカム面
60S センタ側スリッパーカム面
70 プレッシャプレート
84 スプリング収容部(収容部)
90 プレッシャ側カム部
90A プレッシャ側アシストカム面
90S プレッシャ側スリッパーカム面
100 ストッパプレート
110 低減手段
115 第1保持溝
120 第2保持溝