(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177506
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ダニ忌避組成物、及びダニ忌避製品
(51)【国際特許分類】
A01N 43/12 20060101AFI20241212BHJP
A01N 43/22 20060101ALI20241212BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20241212BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20241212BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20241212BHJP
【FI】
A01N43/12 Z
A01N43/22
A01P17/00
A01N25/10
A01M29/12
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024176286
(22)【出願日】2024-10-08
(62)【分割の表示】P 2022579468の分割
【原出願日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2021015838
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】田丸 友裕
(72)【発明者】
【氏名】三石 帆波
(72)【発明者】
【氏名】片山 南美
(72)【発明者】
【氏名】猪口 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】引土 知幸
(72)【発明者】
【氏名】下方 宏文
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
(57)【要約】
【課題】長期間経過後においても屋内塵性ダニ類へのダニ忌避効果に優れ、人畜に対する安全性にも優れたダニ忌避組成物を提供する。
【解決手段】(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールと、(b)香料成分と、を含有するダニ忌避組成物であって、香料成分は、logP値が2.0~5.5である香料化合物を一種又は二種以上含む。(a)成分と(b)成分に含まれる香料化合物との配合比(a/b)は、質量ベースで5~100に設定されている。(b)成分に含まれる香料化合物は、ケイ皮酸エチル、カプロン酸アリル、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、シトロネロール、δ-ドデカラクトン、β-イオノン、安息香酸ベンジル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、サリチル酸ベンジル、リモネン、及びサリチル酸アミルからなる群から選択される少なくとも一つである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールと、
(b)香料成分と、
を含有するダニ忌避組成物であって、
前記(b)成分は、logP値が2.0~5.5である香料化合物を一種又は二種以上含み、
前記(b)成分に含まれる前記香料化合物は、シトロネロール及び/または酢酸ゲラニルであり、
前記(a)成分と前記(b)成分に含まれる前記香料化合物との配合比(a/b)は、
質量ベースで5~100に設定されているダニ忌避組成物(但し、3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-2-メチルプロパナール及び/又は3,4-メチレンジオキシベンズアルデヒドを含有する場合を除く)。
【請求項2】
(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールと、
(b)香料成分と、
を含有するダニ忌避組成物であって、
前記(b)成分は、logP値が2.0~5.5である香料化合物を一種又は二種以上含み、
前記(b)成分に含まれる前記香料化合物は、リモネンであり、
前記(a)成分と前記(b)成分に含まれる前記香料化合物との配合比(a/b)は、
質量ベースで5~80に設定されているダニ忌避組成物(但し3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-2-メチルプロパナール及び/又は3,4-メチレンジオキシベンズアルデヒドを含有する場合を除く)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダニ忌避組成物を含有する固形担体と、
前記固形担体を収納又は包装する通気性包材と、
を含むダニ忌避製品。
【請求項4】
前記固形担体は、平均粒子径が1~8mmである粒状体である請求項3に記載のダニ忌避製品。
【請求項5】
前記固形担体は、前記(a)成分を1gあたり20~400mg含有する請求項3又は4に記載のダニ忌避製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内塵性ダニ類を忌避するためのダニ忌避組成物、及びダニ忌避製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、居住環境の変化により、屋内にコナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ、ツメダニ等の屋内塵性ダニ類が大発生するという事案が増加している。屋内塵性ダニ類は、人に対して不快感を与えるばかりでなく、アレルギー性喘息や皮疹を惹起する等の問題を生じさせる。また、アレルギー性喘息を引き起こすヒョウヒダニ類は、虫体の死骸そのものでもアレルギーの原因になることが明らかとなってきた。そこで、枕、布団やクッション等の寝具類に処理するための屋内用殺ダニ剤が開発されてきたが、直接肌に接触することが多い屋内用殺ダニ剤には、より高い安全性が求められる。
【0003】
かかる状況を背景として、屋内塵性ダニ類を殺すのではなく、人や患者にダニを近づけないようにする技術も模索され、これまでにいくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1には、室内用ダニ防除剤の有効成分として、ベチバー油、パチョウリ油、クローブ油などの植物精油が開示されている。また、特許文献2には、シトロネラール、リナロール、シトラール等が開示されている。これらの従来技術は、天然産志向と安全性への配慮を謳っているが、屋内塵性ダニ類に対する忌避効果は必ずしも満足するものとは言えなかった。
【0004】
ところで、害虫忌避成分として、シネオールが注目されている。特許文献3には、1,8-シネオールを有効成分として含有するヒョウヒダニ忌避剤が開示されている。しかし、1,8-シネオールや1,4-シネオールは、比較的揮散性が高いため、2~3カ月以上の長期間にわたりダニ忌避効果を持続させることは困難とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-16515号公報
【特許文献2】特開2001-294505号公報
【特許文献3】特開2001-31508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、長期間経過後においても屋内塵性ダニ類へのダニ忌避効果に優れ、人畜に対する安全性にも優れたダニ忌避組成物、及びダニ忌避製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明にかかるダニ忌避組成物の特徴構成は、
(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールと、
(b)香料成分と、
を含有するダニ忌避組成物であって、
前記香料成分は、logP値が2.0~5.5である香料化合物を一種又は二種以上含むことにある。
【0008】
本構成のダニ忌避組成物によれば、(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールに加えて、(b)香料成分を含有する処方としている。ここで、香料成分は、logP値が2.0~5.5である香料化合物を一種又は二種以上含むため、比較的揮散性が高い(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールによる屋内塵性ダニ類に対する優れたダニ忌避効果を、(b)成分に含まれるlogP値が2.0~5.5である香料化合物によって長期間持続させることができる。また、(a)成分及び(b)成分は、人畜に対する安全性に優れているため、ダニ忌避組成物として高い安全性を実現することができる。
【0009】
本発明にかかるダニ忌避組成物において、
前記(a)成分と前記(b)成分に含まれる前記香料化合物との配合比(a/b)は、質量ベースで5~100に設定されていることが好ましい。
【0010】
本構成のダニ忌避組成物によれば、(a)成分と(b)成分に含まれる香料化合物との配合比(a/b)が適切な範囲に設定されているため、屋内塵性ダニ類に対する優れたダニ忌避効果と、人畜に対する高い安全性とを両立させることができる。
【0011】
本発明にかかるダニ忌避組成物において、
前記(b)成分に含まれる前記香料化合物は、ケイ皮酸エチル、カプロン酸アリル、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、シトロネロール、δ-ドデカラクトン、β-イオノン、安息香酸ベンジル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、サリチル酸ベンジル、リモネン、及びサリチル酸アミルからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0012】
本構成のダニ忌避組成物によれば、(b)成分に含まれる香料化合物として適切なものが選択されているため、(a)成分による優れたダニ忌避効果を、長期間安定して持続させることができる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明にかかるダニ忌避製品の特徴構成は、
上記何れか一つのダニ忌避組成物を含有する固形担体と、
前記固形担体を収納又は包装する通気性包材と、
を含むことにある。
【0014】
本構成のダニ忌避製品によれば、本発明のダニ忌避組成物を含有する固形担体を通気性包材に収納又は包装した製品態様としているため、低コストでありながら、屋内塵性ダニ類に対する優れたダニ忌避効果と、人畜に対する高い安全性とを備えたダニ忌避製品を実現することができる。
【0015】
本発明にかかるダニ忌避製品において、
前記固形担体は、平均粒子径が1~8mmである粒状体であることが好ましい。
【0016】
本構成のダニ忌避製品によれば、固形担体の平均粒子径が適切なサイズにされているため、固形担体からダニ忌避組成物を長期間安定して揮散させることができる。また、使い勝手がよく、実用性の高いダニ忌避製品とすることができる。
【0017】
本発明にかかるダニ忌避製品において、
前記固形担体は、前記(a)成分を1gあたり20~400mg含有することが好ましい。
【0018】
本構成のダニ忌避製品によれば、固形担体が(a)成分を適量含有しているため、高い安全性を維持しながら、屋内塵性ダニ類に対する優れたダニ忌避効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のダニ忌避組成物、及びダニ忌避製品について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成や実施例に限定されることを意図するものではない。
【0020】
<ダニ忌避組成物>
本発明のダニ忌避組成物は、1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオール(これを(a)成分とする)と、香料成分(これを(b)成分とする)とを含有する。ここで、(b)成分は、後述するように、logP値が2.0~5.5である香料化合物を少なくとも一種含む。
【0021】
[(a)成分]
(a)成分として使用される1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールは、ダニ忌避成分として作用する。1,8-シネオールはユーカリ精油に多く含まれる物質であり、1,4-シネオールはアオモジ精油に多く含まれる物質であり、いずれも清涼感のある香りを有している。1,8-シネオールや1,4-シネオールは、一般には、鎮咳剤や抗ウィルス剤として知られており、人体への安全性は、低毒性、非刺激性、非感作性とされている。また、1,8-シネオールや1,4-シネオールは、背景技術の項目で述べたように、比較的揮散性が高いため、ダニ忌避成分として使用する場合、2~3カ月以上の長期間にわたりダニ忌避効果を持続させることは困難とされていた。
【0022】
しかるに、本発明者らは、(a)成分として、1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールを含有するダニ忌避組成物の揮散性の調整について、鋭意検討した結果、後述の(b)成分に含まれるlogP値が2.0~5.5である香料化合物を配合することで、1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールの揮散性を効果的に調整することができ、長期間経過後においても屋内塵性ダニ類に対して優れたダニ忌避効果を奏することを見出した。また、本発明のダニ忌避組成物は、人畜に対する安全性が高いため、極めて実用的かつ有用なものである。
【0023】
本発明のダニ忌避組成物は、(a)成分、及び後述する(b)成分に、各種の成分を加えて調製したものであり、これを種々の形態のダニ忌避製品に適用することができる。(a)成分のダニ忌避製品全体量に対する配合量は、ダニ忌避製品の形態によっても異なるが、ダニ忌避製品1個当たり0.02~1.0g程度に設定することが好ましく、枕やクッションの場合、1個施用とするのが使いやすい。布団やマットのような大きい寝具の場合、必要に応じて適宜施用個数を増量すればよい。本発明では、(a)成分は、1,8-シネオールや1,4-シネオールを単品で用いてもよいし、これらを多く含むユーカリ精油やアオモジ精油を活性成分として使用しても構わない。例えば、1,8-シネオールの含有量が70質量%以上のユーカリ精油は市販品として広く入手可能である。(a)成分として、1,8-シネオールと1,4-シネオールとの混合物を使用することも可能であるが、ダニ忌避効果の観点から、1,8-シネオールを使用することが好ましい。
【0024】
ダニ忌避組成物中における(a)成分の配合量は、10~90質量%であることが好ましく、20~85質量%であることがより好ましい。
【0025】
[(b)成分]
(b)成分として使用される香料成分は、揮散調整成分として作用する。ここで、(b)成分は、logP値が2.0~5.5である香料化合物を一種又は二種以上含む。すなわち、香料成分には、一種の香料化合物だけでなく、二種以上の香料化合物を含むものも含まれる。香料成分が一種の香料化合物を含む場合、当該一種の香料化合物のlogP値が2.0~5.5となる。香料成分が二種以上の香料化合物を含む場合、夫々の香料化合物のlogP値が2.0~5.5であることが好ましいが、少なくとも一種の香料化合物のlogP値が2.0~5.5であればよい。ダニ忌避組成物中にlogP値が2.0~5.5である香料化合物を含む(b)成分を配合することで、(a)成分の揮散性を効果的に調整することができ、長期間経過後においても屋内塵性ダニ類に対して優れたダニ忌避効果を奏することができる。(b)成分に含まれる香料化合物のlogP値の好ましい範囲は、3.0~5.0である。ここで、logP値とは、有機化合物の水と1-オクタノールに対する親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。なお、本明細書で説明するlogP値は、実測値ではなく、専用のアプリケーション(Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V11.02)により計算した計算値を用いることとする。
【0026】
(b)成分に含まれるlogP値が2.0~5.5である香料化合物は、特に限定されないが、単環式もしくは鎖式の香料化合物を使用することができる。かかるlogP値が2.0~5.5である香料化合物としては、以下のものが例示される。香料化合物の後の[]内の数字は、logP値を表す。
【0027】
オイゲノール[2.4]、α-テルピネオール[2.7]、リナロール[2.8]、ゲラニオール[2.9]、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール[3.2]、シトロネロール[3.2]、フェニルヘキサノール[3.4]、テトラヒドロリナロール[3.5]等のアルコール系香料化合物、ケイ皮酸メチル[2.5]、γ-デカラクトン[2.5]、ジヒドロジャスモン酸メチル[2.6]、安息香酸エチル[2.6]、酢酸シンナミル[2.6]、酢酸ヘキシル[2.8]、ケイ皮酸エチル[3.0]、γ-ウンデカラクトン[3.0]、δ-ウンデカラクトン[3.0]、酢酸トリシクロデセニル[3.1]、カプロン酸アリル[3.1]、フェニル酢酸ベンジル[3.5]、γ-ドデカラクトン[3.5]、δ-ドデカラクトン[3.5]、ケイ皮酸ベンジル[3.8]、安息香酸ベンジル[3.8]、酢酸リナリル[3.9]、酢酸ゲラニル[3.9]、フェニル酢酸2-フェニルエチル[3.9]、プロピオン酸トリシクロデセニル[4.0]、サリチル酸ベンジル[4.2]、サリチル酸シクロヘキシル[4.5]、サリチル酸アミル[4.6]、サリチル酸ヘキシル[5.1]、ペンタライド[5.2]等のエステル系香料化合物、β-ダマスコン[3.3]、α-ダマスコン[3.4]、β-イオノン[3.6]、α-イオノン[3.7]等のケトン系香料、アミルシンナミックアルデヒド[4.4]、ヘキシルシンナミックアルデヒド[4.9]等のアルデヒド系香料化合物、リモネン[4.6]等の炭化水素系香料化合物等が挙げられる。中でも、単環式もしくは鎖式の香料化合物であり、logP値が、3.0以上、5.0以下である香料化合物である、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール[3.2]、シトロネロール[3.2]、フェニルヘキサノール[3.4]、テトラヒドロリナロール[3.5]、ケイ皮酸エチル[3.0]、γ-ウンデカラクトン[3.0]、δ-ウンデカラクトン[3.0]、酢酸トリシクロデセニル[3.1]、カプロン酸アリル[3.1]、フェニル酢酸ベンジル[3.5]、γ-ドデカラクトン[3.5]、δ-ドデカラクトン[3.5]、ケイ皮酸ベンジル[3.8]、安息香酸ベンジル[3.8]、酢酸リナリル[3.9]、酢酸ゲラニル[3.9]、フェニル酢酸2-フェニルエチル[3.9]、プロピオン酸トリシクロデセニル[4.0]、サリチル酸ベンジル[4.2]、サリチル酸シクロヘキシル[4.5]、サリチル酸アミル[4.6]、β-ダマスコン[3.3]、α-ダマスコン[3.4]、β-イオノン[3.6]、α-イオノン[3.7]、アミルシンナミックアルデヒド[4.4]、ヘキシルシンナミックアルデヒド[4.9]及びリモネン[4.6]からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、ケイ皮酸エチル[3.0]、カプロン酸アリル[3.1]、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール[3.2]、シトロネロール[3.2]、δ-ドデカラクトン[3.5]、β-イオノン[3.6]、安息香酸ベンジル[3.8]、酢酸リナリル[3.9]、酢酸ゲラニル[3.9]、プロピオン酸トリシクロデセニル[4.0]、サリチル酸ベンジル[4.2]、リモネン[4.6]、及びサリチル酸アミル[4.6]が好ましい。これらの香料化合物は、単独で使用してもよいし、二種以上の混合物として使用してもよい。
【0028】
ちなみに、(a)成分として使用される1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールのlogP値は、1,8-シネオール[2.8]、1,4-シネオール[2.4]となる。これら(a)成分のlogP値と上記(b)成分に含まれる香料化合物のlogP値とにおいて、数値が一部重複もしくは近い値を示すことから、(a)成分と(b)成分とは、分子レベルでの相性が良いものとなる。そして、このことが、上記香料化合物を含む(b)成分が(a)成分の揮散性を効果的に調整し、長期間経過後においてもコナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ、ツメダニ等の屋内塵性ダニ類に対するダニ忌避効果に優れるという本発明の効果をもたらしていると推察される。
【0029】
ダニ忌避組成物中における(b)成分に含まれる香料化合物の配合量は、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。
【0030】
(a)成分と(b)成分に含まれる香料化合物との配合比(a/b)は、質量ベースで5~100に設定されていることが好ましく、5~80に設定されていることがより好ましい。配合比(a/b)が上記範囲内にある場合、(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールの揮散性を効果的に調整することができ、高い安全性を確保しながら、長期間経過後においても屋内塵性ダニ類に対して優れたダニ忌避効果を奏するものとなる。従って、屋内塵性ダニ類に対する優れたダニ忌避効果と、人畜に対する高い安全性とを両立させることができる。
【0031】
[その他成分]
本発明のダニ忌避組成物には、上記の(a)成分、及び(b)成分の他に、水、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール系溶剤、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールのようなグリコール系溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤等の各種溶剤や、界面活性剤(可溶化剤)などを適宜配合することができる。また、本発明のダニ忌避組成物は、上記の(a)成分、及び(b)成分の他に、溶剤等の他成分を添加せずに調製することもできる。
【0032】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル)、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤や、ラウリルアミンオキサイド、ステアリルアミンオキサイド、ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド等の高級アルキルアミンオキサイド系界面活性剤などが挙げられる。上記界面活性剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を混合した混合物として使用してもよい。
【0033】
また、本発明のダニ忌避組成物には、抗菌成分、防カビ成分、消臭成分、芳香成分、殺虫成分、忌避成分、安定化剤、pH調整剤、着色剤、ゲル化剤等を適宜配合してもよい。さらに、例えば、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコール(シス-3-ヘキセン-1-オール)や青葉アルデヒド等を添加してもよく、これにより、リラックス効果を付与し、安眠を促すこともできる。
【0034】
抗菌成分としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、カルバクロール、チモール、トリクロサン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、о-クレゾール、m-クレゾール、及びp-クレゾール等のフェノール系抗菌成分、ベンザルコニウムクロライド、ベンザルコニウムメトサルフェート、ベンザルコニウム有機酸塩等のベンザルコニウム塩、ベンゼトニウムクロライド、ベンゼトニウムメトサルフェート、ベンゼトニウム有機酸塩等のベンゼトニウム塩、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムメトサルフェート、セチルピリジニウム有機酸塩等のセチルピリジニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジデシルジメチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジラウリルジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジステアリルジメチルアンモニウム塩、及び1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド、1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジクロライド、1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジメトサルフェート等の1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタン塩等のカチオン界面活性剤系抗菌成分、ビグワナイド系抗菌成分、テブコナゾール、エニルコナゾール等のアゾール系抗菌成分、グレープフルーツ種子抽出物、カキ種子抽出物、ブドウ種子抽出物等の果物種子抽出物系抗菌成分、モノラウリン、モノカプリン、モノカプリリン等のグリセリンモノ脂肪酸エステル系抗菌成分、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩等のクロルヘキシジン塩やクロルヘキシジン等のクロルヘキシジン系抗菌成分、オクタデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ドデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ドデシルジイソプロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド等のケイ素系抗菌成分、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリシン、アルキルジエチルアミノグリシン、ポリリジン等のカルボン酸系抗菌成分またはそれらの塩、デヒドロ酢酸、クロラミン、3-ヨード-2-プロピル-N-ブチルカルバメート(IPBC)、フェノキシエタノール、銀ゼオライト等銀系抗菌成分、ジンクピリチオン、チアミンラウリル硫酸塩、白子たんぱく質、ヒドロキシアルキルキトサン又はその塩等が挙げられる。上記抗菌成分は、単独で使用してもよいし、二種以上を混合した混合物として使用してもよい。
【0035】
防カビ成分としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、カルバクロール、チモール、トリクロサン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、о-クレゾール、m-クレゾール、及びp-クレゾール等のフェノール系防カビ成分、ベンザルコニウムクロライド、ベンザルコニウムメトサルフェート、ベンザルコニウム有機酸塩等のベンザルコニウム塩、ベンゼトニウムクロライド、ベンゼトニウムメトサルフェート、ベンゼトニウム有機酸塩等のベンゼトニウム塩、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムメトサルフェート、セチルピリジニウム有機酸塩等のセチルピリジニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジデシルジメチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジラウリルジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジステアリルジメチルアンモニウム塩、及び1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド、1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジクロライド、1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジメトサルフェート等の1,4-ビス[3,3´-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタン塩等のカチオン界面活性剤系防カビ成分、ビグワナイド系防カビ成分、テブコナゾール、エニルコナゾール等のアゾール系防カビ成分、グレープフルーツ種子抽出物、カキ種子抽出物、ブドウ種子抽出物等の果物種子抽出物系防カビ成分、モノラウリン、モノカプリン、モノカプリリン等のグリセリンモノ脂肪酸エステル系防カビ成分、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩等のクロルヘキシジン塩やクロルヘキシジン等のクロルヘキシジン系防カビ成分、オクタデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ドデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ドデシルジイソプロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジエチル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジ-n-プロピル(3-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド等のケイ素系防カビ成分、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリシン、アルキルジエチルアミノグリシン、ポリリジン等のカルボン酸系防カビ成分又はそれらの塩、デヒドロ酢酸、クロラミン、3-ヨード-2-プロピル-N-ブチルカルバメート(IPBC)、フェノキシエタノール、銀ゼオライト等銀系防カビ成分、ジンクピリチオン、チアミンラウリル硫酸塩、白子たんぱく質、ヒドロキシアルキルキトサン又はその塩、防カビ香料等が挙げられる。上記防カビ成分は、単独で使用してもよいし、二種以上を混合した混合物として使用してもよい。
【0036】
消臭成分としては、例えば、植物由来消臭成分等が挙げられる。植物由来消臭成分としては、イネ科、ツバキ科、イチョウ科、モクセイ科、クワ科、ミカン科、キントラノオ科、カキノキ科等の植物から抽出した植物抽出物が挙げられる。上記植物抽出物は、単独で使用してもよいし、二種以上を混合した混合物として使用してもよいが、代表的には、緑茶抽出物や柿抽出物が挙げられる。
【0037】
ゲル化剤としては、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ゼラチン、オクチル酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。上記ゲル化剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を混合した混合物として使用してもよい。
【0038】
<ダニ忌避製品>
本発明のダニ忌避製品は、上述した本発明のダニ忌避組成物を含有するものであり、使用場面や消費者のニーズに合わせて、固形状、液状、ゲル状等の種々形態に調製することができる。中でも、ダニ忌避組成物を固形担体に含浸又は保持させたものを通気性材料に収納又は包装した製品形態が好ましい。かかるダニ忌避製品は、枕やクッション、あるいは布団やマット等の下又は付近に設置するだけで、固形担体からダニ忌避成分が効果的に揮散するので、低コストでありながら、屋内塵性ダニ類に対する優れたダニ忌避効果と、人畜に対する高い安全性とを備えたダニ忌避製品を実現することができる。
【0039】
固形担体としては、セルロース製パルプ等のパルプ、リンター、レーヨン等の繊維質担体、セルロース(再生セルロース)製ビーズもしくは発泡体、ケイ酸塩、シリカ、ゼオライト等の無機多孔質担体、トリオキサン、アダマンタン等の昇華性担体等が挙げられる。これらのうち、セルロース製パルプ等のパルプ、リンター、レーヨン等の繊維質担体、セルロース(再生セルロース)製ビーズが好ましく、セルロース製パルプがより好ましい。
【0040】
固形担体をビーズ(粒状体)とする場合、その平均粒径は、通常、1~8mmであり、3~8mmが好ましく、4~7mmがより好ましい。固形担体の見掛け比重は、通常、0.10~0.35程度であり、0.15~0.30が好ましい。例えば、セルロース製パルプ1gあたりに、前記(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールを20~400mg程度、好ましくは30~300mg含有させ、これを通気性包材に収納すれば、有用、かつ実用性の高い本発明のダニ忌避製品が得られる。
【0041】
通気性包材としては、不織布袋、綿袋、ネットケース、有孔プラスチック製容器等が挙げられる。これらのうち、使い易さの点で、不織布袋が好ましい。不織布袋の材質としては、例えば、ポリエステル(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリ乳酸、レーヨン等が挙げられる。不織布袋は、単一の繊維で構成してもよいし、あるいは紙を積層したポリエステルやポリプロピレン/レーヨンのような積層品や混紡品であっても構わない。なかでも、前記(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールを一部吸着することにより、その揮散量を二次的に調節し得る点で、ポリエステル、ポリエチレン、及びポリプロピレンが好ましい。不織布袋の形状や構成も適宜決定することができ、例えば、両面を前記材質の不織布で構成してもよいし、あるいは、一方の面を前記材質の不織布とし、他方の面を多数の小孔を有するプラスチックフィルムとし、これらを貼り合わせたものとしてもよい。
【0042】
このようにして得られた本発明のダニ忌避製品の適用場所は、特に限定されないが、カーペット、畳、枕、クッション、布団、マット等の下又は付近に設置して使用することができ、中でも、枕、クッション、布団、マット等の寝具用として使用するのに適している。枕やクッション、あるいは布団やマット等の下又は付近に設置すれば、固形担体から通気性材料を介してダニ忌避成分が揮散し、コナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ、ツメダニ等の屋内塵性ダニ類はもちろん、ゾウムシ、カツオブシムシ、チャタテムシ、シバンムシ、ゴキブリ、アリ類、蚊類、蚋、ユスリカ類、ハエ類、チョウバエ類、イガ類などの各種害虫に対して1カ月~6カ月の長期間にわたり実用的な忌避効果を奏するものとなる。本発明のダニ忌避製品は、特に、コナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ、ツメダニ等の屋内塵性ダニ類に対して、効果的に忌避効果を発揮することができる。
【実施例0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0044】
〔実施例1〕
(a)成分として1,8-シネオール400mg、及び(b)成分として3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール8mgをそのまま混合し、ダニ忌避組成物を調製した。このダニ忌避組成物全量を、平均粒径が5.5mm、見掛け比重が0.21のセルロース製パルプ粒約8gに含浸させた。そして、ダニ忌避組成物を含浸させたセルロース製パルプ粒を、両面が通気性のポリエチレン・ポリプロピレンの混合不織布からなる不織布袋(9×12cm)に収納し、実施例1のダニ忌避製品を得た。
【0045】
〔実施例2~11、比較例1~2、参考例1~3〕
表1に示す配合で、(a)成分及び(b)成分を含むダニ忌避組成物を実施例1に準じて調製し、実施例1と同様の手順にて、実施例2~11、比較例1~2、及び参考例1~3の各種ダニ忌避製品を得た。
【0046】
【0047】
[ダニ忌避効力試験]
実施例1~11、比較例1~2、及び参考例1~3の各ダニ忌避製品をウール毛布でくるみ、この上に4kgの重石を載せて室温条件下に2ヵ月静置し、その後、各ダニ忌避製品を回収した。
【0048】
次に、50cm四方の綿布の中央に、供試ヤケヒョウヒダニ約100000匹を含む培地を均一に撒いた。上記の2ヵ月静置後の各ダニ忌避製品を枕の上に設置して枕カバーで覆い、その表面に誘引用培地1gを撒いた後、この枕を前述の綿布の中央に静置し、これを処理区とした。また、ダニ忌避製品を設置しない枕を用いて同様の作業を行い、これを無処理区とした。そして、24時間後に枕カバー上に侵入したダニ数を計数し、次式に従ってダニ忌避効力(忌避率)を算出した。
ダニ忌避効力(%) = (N0-N1)/N0 × 100
N0:無処理区の侵入ダニ数
N1:処理区の侵入ダニ数
【0049】
ダニ忌避効力試験の結果を表2に示す。
【0050】
【0051】
実施例1~11のダニ忌避製品は、何れも2ヵ月後においても80%以上の優れたダニ忌避効果を示すことが分かった。これは、logP値が2.0~5.5である香料化合物を含む(b)成分が、(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールの揮散を効果的に調整したため、実施例1~11のダニ忌避製品において長期間経過後においても優れたダニ忌避効果を実現したと考えられる。中でも、(a)1,8-シネオールと、logP値が3.0~5.0である香料化合物を含む(b)成分とを含有した実施例1、3~7、10及び11のダニ忌避製品は、何れも2ヵ月後においても85%以上のダニ忌避効果を示し、より優れていることが判明した。
【0052】
一方、(b)成分として、logP値が5.5を上回るシクロヘキサデカノリド(logP値:5.7)を配合した参考例1のダニ忌避製品や、logP値が2.0を下回る酢酸ブチル(logP値:1.8)を配合した参考例2のダニ忌避製品は、実施例1~11のダニ忌避製品と比べて、長期間経過後におけるダニ忌避効果が低下した。logP値が2.0~5.5から外れる香料化合物では、1,8-シネオールの揮散の調整がやや劣ることが原因と考えられる。実施例1~11と参考例1~3との対比から、(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールに、logP値が2.0~5.5である香料化合物を含む(b)成分を配合することにより、長期間経過後におけるダニ忌避効果をより向上させることが可能となることが分かった。
【0053】
また、(a)成分として他のシトロネラールやベチパー油を配合した比較例1及び比較例2のダニ忌避製品は、logP値が2.0~5.5である香料化合物を含む(b)成分を配合しても、長期間経過後においてダニ忌避効果が不十分であった。このことから、(b)成分に含まれるlogP値が2.0~5.5である香料化合物が害虫忌避成分の揮散を効果的に調整する現象は、(a)1,8-シネオール及び/又は1,4-シネオールに対して特有のものであると考えられる。
本発明のダニ忌避組成物、及びダニ忌避製品は、寝具に潜む屋内塵性ダニ類を忌避する用途(寝具用のダニ忌避組成物、及びダニ忌避製品)として好適に利用できるが、屋内塵性ダニ類だけでなく、広範な害虫を忌避する用途にも当然に利用可能である。