(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177529
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/518 20060101AFI20241212BHJP
H01R 13/502 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01R13/518
H01R13/502 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024176965
(22)【出願日】2024-10-09
(62)【分割の表示】P 2023529756の分割
【原出願日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2021101381
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佳吾
(57)【要約】
【課題】複数の端子群の並び方向におけるサイズを低減し、且つ挿入口同士の位置ずれを防止することが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、一対の導電路71にそれぞれ接続される一対の端子60を具備する端子群22を複数有するインナモジュール11と、インナモジュール11を収容するアウタハウジング12と、を備える。アウタハウジング12は、インナモジュール11を収容する収容室84を1つのみ有する。インナモジュール11は、複数の端子群22を支持して一体的に構成されるインナハウジング21を有する。インナハウジング21は、複数の端子群22の前方に配置される前壁48を有する。前壁48は、1つの部材で構成され、全ての端子60の各々と対応する位置に挿入口48Aが形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の導電路にそれぞれ接続される一対の端子を具備する端子群を複数有するインナモジュールと、
前記インナモジュールを収容するアウタハウジングと、
を備え、
前記アウタハウジングは、前記インナモジュールを収容する収容室を1つのみ有し、
前記インナモジュールは、複数の前記端子群を支持して一体的に構成されるインナハウジングを有し、
前記インナハウジングは、複数の前記端子群の前方に配置される前壁を有し、
前記前壁は、1つの部材で構成され、全ての前記端子の各々と対応する位置に挿入口が形成されており、
前記インナハウジングは、
複数の前記端子群を上下に仕切る仕切り部を有するベース部材と、
前記ベース部材に対して前記ベース部材の上下両側から挟むように組み付けられる一対のカバー部材と、
を有し、
一対の前記カバー部材のうち上側の第1カバー部材は、第1カバー本体と、第1係止部と、を有し、
前記第1係止部は、前記第1カバー本体の左右両側から下方に延びる第1係止アームを有し、
一対の前記カバー部材のうち下側の第2カバー部材は、第2カバー本体と、第2係止部と、を有し、
前記第2係止部は、前記第2カバー本体の左右両側から上方に延びる第2係止アームを有し、
前記ベース部材は、前記第1係止アームに沿って配置される第1係止受け部と、前記第2係止アームに沿って配置される第2係止受け部と、を有し、
前記第1係止受け部及び前記第2係止受け部は、前後方向に交互に配置されており、
前記第1係止受け部及び前記第2係止受け部は、それぞれ前記仕切り部の左右両側から上下両側に延びる形態をなしており、
前記第1係止アームは、前記第1係止受け部の下端部に係止され、
前記第2係止アームは、前記第2係止受け部の上端部に係止され、
前記第1係止部及び前記第2係止部は、櫛形状をなす
コネクタ。
【請求項2】
前記第1係止受け部及び前記第2係止受け部は、互いに反対方向に傾斜するテーパ面を有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ベース部材は、前記カバー部材の組み付け方向に沿って設けられたガイド部を有する請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるコネクタは、内導体を誘電体に収容した形態の端子ユニットと、端子ユニットが挿入される収容室を有するハウジングと、を有している。ハウジング内に複数の端子ユニットを収容する場合、例えば特許文献2の
図1に開示される多重挿入型コネクタのような構成が考えらえる。特許文献2の多重挿入型コネクタは、外側のハウジングと、外側のハウジング内に上下二段で並列して配置される挿入型コネクタと、を備えている。挿入型コネクタは、それぞれ内側のハウジングと、内側のハウジング内に配置される複数の接触要素と、を有する。接触要素は、それぞれツイストペアケーブルの2つのコアに圧着接続されている。特許文献2の多重挿入型コネクタは、上下二段で配置される挿入型コネクタが左右にずれて配置されることで、上下方向の位置決めが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-152215号公報
【特許文献2】特表2015-528625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のコネクタのように、上下二段で配置される挿入型コネクタが左右にずれて配置される構成では、左右方向に大型化しやすい。この問題を解消するために、上下二段で配置される挿入型コネクタの左右方向の位置を揃えようとすると、挿入型コネクタ間に仕切り壁を設ける必要が生じるため、上下方向に大型化しやすくなる。また、外側のハウジング内に配置される複数の挿入型コネクタは、それぞれ外側のハウジング内でがたつくおそれがある。このため、相手側の接触要素を挿入させる挿入口が、並列に配置される複数の挿入型コネクタ間で、位置ずれするおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、複数の端子群の並び方向におけるサイズを低減し、且つ挿入口同士の位置ずれを防止することが可能なコネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
一対の導電路にそれぞれ接続される一対の端子を具備する端子群を複数有するインナモジュールと、
前記インナモジュールを収容するアウタハウジングと、
を備え、
前記アウタハウジングは、前記インナモジュールを収容する収容室を1つのみ有し、
前記インナモジュールは、複数の前記端子群を支持して一体的に構成されるインナハウジングを有し、
前記インナハウジングは、複数の前記端子群の前方に配置される前壁を有し、
前記前壁は、1つの部材で構成され、全ての前記端子の各々と対応する位置に挿入口が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の端子群の並び方向におけるサイズを低減し、且つ挿入口同士の位置ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、アウタハウジング、インナモジュール、及びリテーナの斜視図である。
【
図3】
図3は、インナモジュールの分解斜視図である。
【
図7】
図7は、ベース部材に端子群を組み付けた状態の斜視図である。
【
図8】
図8は、ベース部材の片側にカバー部材を組み付けた状態の斜視図である。
【
図9】
図9は、ベース部材の両側にカバー部材を組み付けた状態の斜視図である。
【
図10】
図10は、インナモジュールを、前側スタビライザ及び後側スタビライザを通る仮想平面で切断した側断面図である。
【
図11】
図11は、インナモジュールを、圧着部及び嵌合孔を通る仮想平面で切断した側断面図である。
【
図14】
図14は、コネクタを用いた分岐構造の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)一対の導電路にそれぞれ接続される一対の端子を具備する端子群を複数有するインナモジュールと、前記インナモジュールを収容するアウタハウジングと、を備え、前記アウタハウジングは、前記インナモジュールを収容する収容室を1つのみ有し、前記インナモジュールは、複数の前記端子群を支持して一体的に構成されるインナハウジングを有し、前記インナハウジングは、複数の前記端子群の前方に配置される前壁を有し、前記前壁は、1つの部材で構成され、全ての前記端子の各々と対応する位置に挿入口が形成されている。
この構成によれば、アウタハウジングは、複数の端子群を有するインナモジュールを単一の収容室に収容する構成であるため、複数の端子群をそれぞれ別個に収容するために収容室内の空間を仕切る壁(複数の端子群の並び方向に仕切る壁)を設ける必要がない。このため、複数の端子群の並び方向におけるサイズを低減することができる。更に、この構成によれば、全ての端子に対応する挿入口が1つの部材に形成されるため、挿入口同士の位置ずれを防止することができる。
【0010】
(2)インナハウジングは、複数の端子群を仕切るベース部材と、ベース部材に対してベース部材の両側から挟むように組み付けられる一対のカバー部材と、を有し、一対のカバー部材は、それぞれ係止部を有し、ベース部材は、一対のカバー部材のうち一方のカバー部材の係止部が係止される第1係止受け部と、他方のカバー部材の係止部が係止される第2係止受け部と、を有し、第1係止受け部及び第2係止受け部は、互いに反対方向に傾斜するテーパ面を有することが好ましい。
この構成によれば、ベース部材に対して互いに反対方向から組み付けられる一対のカバー部材の組み付け作業を容易にすることができる。
【0011】
(3)ベース部材は、カバー部材の組み付け方向に沿って設けられたガイド部を有することが好ましい。
この構成によれば、カバー部材をベース部材に組み付ける際、カバー部材をガイド部によってガイドすることができる。
【0012】
(4)カバー部材の係止部は、櫛形状をなすことが好ましい。
この構成によれば、インナハウジングが小型のものであっても、カバー部材がベース部材に対して複数個所で係止されるため、カバー部材とベース部材が互いに離れる方向に力が加わっても、外れにくい。
【0013】
(5)第1係止受け部及び第2係止受け部は、前方から見た正面視において互いに点対称となる位置関係で配置されることが好ましい。
この構成によれば、一対のカバー部材を互いに共通の部材とすることができる。
【0014】
(6)インナハウジングは、複数の端子群を仕切る仕切り部を有するベース部材と、ベース部材に対してベース部材の両側から挟むように組み付けられる一対のカバー部材と、を有し、カバー部材は、ベース部材に係止される係止部と、係止部に連なり仕切り部との間で端子群に接続される電線を挟むように位置する撓み規制部と、を有することが好ましい。
この構成によれば、仕切り部側とは反対側への電線の撓みを規制することができる。
【0015】
(7)端子群は、電線に圧着される圧着部を有し、カバー部材は、撓み規制部の前方に、圧着部が嵌まる嵌合孔を有することが好ましい。
この構成によれば、嵌合孔に圧着部が嵌まることで、端子群に接続された電線の後方への抜けを抑制することができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のコネクタを具体化した実施例1を、
図1~
図14を参照して説明する。本実施例1において、上下の方向については、
図1~
図4,
図7~
図13にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。前後の方向については、
図1~
図11,
図13にあらわれる左方、右方を、それぞれ前方、後方と定義する。左右の方向は、コネクタを前方から見た左方、右方をそれぞれ左方、右方と定義する。
【0017】
(コネクタの構成)
図1に示す本実施例1のコネクタ10は、例えば、幹線ハーネスの途中に接続される分岐用コネクタとして構成される。コネクタ10は、
図2に示すように、インナモジュール11と、アウタハウジング12と、リテーナ13と、を備えている。インナモジュール11は、アウタハウジング12に収容される。
図3に示すように、インナモジュール11は、インナハウジング21と、一対の端子群22とを備えている。端子群22の数は、幹線ハーネスを構成する導電路の系統数と同じ数である。
【0018】
インナハウジング21は、
図3に示すように、単一部品からなる1つのベース部材31と、一対のカバー部材32とを備えている。インナハウジング21は、一対のカバー部材32をベース部材31の上下両側からベース部材31に組み付けて一体的に構成される。つまり、本実施例1では、上下方向がベース部材31の組み付け方向に相当する。ベース部材31とカバー部材32は、例えば合成樹脂等の絶縁性材料からなる部品である。インナハウジング21は、一対の端子群22を支持し、一対の端子群22とともにインナモジュール11として一体的に構成される。
【0019】
ベース部材31は、
図4及び
図5に示すように、一対の端子群22の間を仕切る仕切り部40を有している。仕切り部40は、板状をなしており、上下方向に板面を向けて配置される。仕切り部40は、前後方向に延びる形態をなしている。
【0020】
ベース部材31は、
図4及び
図5に示すように、仕切り部40の左右両側に設けられる第1係止受け部41及び第2係止受け部42を有している。第1係止受け部41及び第2係止受け部42は、それぞれ仕切り部40の左右両側から上下両側に延びる形態をなしている。第1係止受け部41及び第2係止受け部42は、前後方向に交互に配置されている。第1係止受け部41及び第2係止受け部42は、前方(ベース部材31に対するカバー部材32の組み付け方向と直交する方向)から見た正面視において、互いに点対称となる位置関係で配置されている。
【0021】
左右両側の第1係止受け部41は、
図4及び
図12に示すように、外側面に、組み付け方向に沿って傾斜した第1テーパ面41Aを有する。左右両側の第2係止受け部42は、
図4及び
図12に示すように、外側面に、組み付け方向に沿って傾斜した第2テーパ面42Aを有する。第1テーパ面41Aが上方に向けて左右方向内側に傾斜しており、第2テーパ面42Aが下方に向けて左右方向内側に傾斜している。第1テーパ面41Aと第2テーパ面42Aは、前方から見て交差している。
【0022】
第1係止受け部41は、
図4及び
図12に示すように、第1係止受け面41Bを有する。第2係止受け部42は、
図4及び
図12に示すように、第2係止受け面42Bを有する。第1係止受け部41と第2係止受け部42は互いに上下方向にズレを設けており、このズレによって形成された第1係止受け面41Bおよび第2係止受け面42Bにカバー部材32の爪部55が嵌め込まれる構造となっている。
【0023】
ベース部材31は、
図4及び
図5に示すように、かしめリング76が嵌合するかしめリング嵌合溝43を有する。かしめリング嵌合溝43は、仕切り部40の上下両側に形成され、左右方向に沿って延びている。かしめリング嵌合溝43は、前後方向に並ぶ第1係止受け部41と第2係止受け部42との間に配置される。
【0024】
ベース部材31は、
図4及び
図5に示すように、カバー部材32の組み付け方向に沿って設けられたガイド部44を有する。ガイド部44は、第1テーパ面41A又は第2テーパ面42A上に設けられている。ガイド部44は、左右両側の全ての第1テーパ面41A及び第2テーパ面42Aに設けられている。
【0025】
ベース部材31は、
図4及び
図5に示すように、仕切り部40の上下両側に形成される端子収容溝46を有する。端子収容溝46は、前後方向に長く、上下方向外側に開口している。端子収容溝46は、左右に2つに並んで設けられている。左右に並ぶ2つの端子収容溝46は、仕切り部40と、左右両側の第1係止受け部41及び第2係止受け部42と、左右に並ぶ2つの端子収容溝46の間に配置される隔壁47とによって区画されている。
【0026】
ベース部材31は、
図4及び
図5に示すように、端子収容溝46の前方に、前壁48を有する。前壁48は、正面から見て矩形状をなしている。前壁48は、仕切り部40の前端部に連なっている。前壁48には、前壁48を前後方向に貫通する複数の挿入口48Aが形成されている。複数の挿入口48Aは、全ての端子収容溝46の各々に対応して設けられている。つまり、複数の挿入口48Aは、全ての端子収容溝46内に配置される全ての端子60の各々に対応して設けられている。前壁48は、全体が1つの部材によって構成されている。
【0027】
カバー部材32は、
図3に示すように、板状のカバー本体50と、カバー本体50の左右両側から上方又は下方に延びる係止部51と、かしめリング規制部52と、を有する。
【0028】
カバー本体50は、前後方向に長く、上下方向に板面を向けて配置される。カバー本体50の内側面には、前側抜止め凹部50A及び後側抜止め凹部50Bが形成されている。後側抜止め凹部50Bは、前側抜止め凹部50Aの後方に配置されている。
【0029】
係止部51は、
図3に示すように、カバー本体50の左右両側から上方又は下方に突出した櫛形状をなしている。係止部51は、カバー本体50の左右両側から上方又は下方に延びる係止アーム54を有する。係止アーム54は、前後方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。係止アーム54は、板状をなしており、左右方向に板面を向けて配置される。係止アーム54の先端部には、爪部55が設けられている。係止アーム54は、基端部を固定端として先端側が撓み変形する。係止アーム54は、前後方向に向けて左右交互に設けられている。
【0030】
かしめリング規制部52は、
図8に示すように、かしめリング嵌合溝43の底面との間にかしめリング76を上下方向に挟んで上下方向への移動を規制する。
【0031】
カバー本体50は、
図8に示すように、後端部に撓み規制部56を有する。撓み規制部56は、係止部51、より具体的には係止アーム54に連なっている。撓み規制部56は、係止アーム54の基端部から左右方向に延びており、電線70を挟んだ仕切り部40の反対側に配置される。
【0032】
カバー本体50は、
図8に示すように、撓み規制部56の前方に、嵌合孔57を有する。嵌合孔57には、かしめリング76の圧着部76Aが嵌まる。
【0033】
図3に示すように、端子群22は、一対の端子60を備えている。端子60は、全体として前後方向に細長い形状である。端子60の前端部には角筒部61が形成され、端子60の後端部にはオープンバレル状の端子側圧着部62が形成されている。端子側圧着部62は、導電路71の分断部72に対し、圧着によって導通可能に固着されている。図示は省略するが、一対の導電路71は、撚り合わされたツイストペア線として構成されている。角筒部61の前端部には、前後方向に対して直角な方向へ突出した前側スタビライザ61Aが形成されている。角筒部61の後端部には、前後方向に対して直角な方向へ突出した後側スタビライザ61Bが形成されている。
【0034】
図3に示すように、端子側圧着部62は、導電路71の分断部72に対して導通可能に固着されている。各導電路71における分岐部位は、各導電路71を分断した分断部72となっている。分断部72では、絶縁被覆73が除去されて導体74が露出されている。絶縁被覆73によって被覆された一対の導体74が、シース75によって一括して包囲されることで、電線70が構成されている。電線70は、シース75の端部に取り付けられたかしめリング76を備えている。かしめリング76は、分断部72の一部に圧着される圧着部76Aと、分断部72よりも左右方向外側に突出する位置決め部76Bと、を有する。導電路71に固着された端子60は、導電路71の分断部72から一直線状に延出している。
【0035】
図7に示すように、端子60は、ベース部材31の端子収容溝46に収容されている。
図10に示すように、上側の端子60は、下側の端子60に対して上下反転した姿勢でインナハウジング21に支持されている。
【0036】
アウタハウジング12は、例えば合成樹脂等の絶縁性材料からなる角筒状の単一部品である。
図2に示すように、アウタハウジング12は、左右対称な一対の側壁部81と、左右両側の側壁部81の下端縁同士を連結した形態の底壁部82と、左右両側の側壁部81の上端縁同士を連結した形態の上壁部83とを有する。アウタハウジング12は、インナモジュール11を収容する収容室84を1つのみ有する。収容室84は、アウタハウジング12の内部に設けられている。収容室84の前後両端は、アウタハウジング12の外部へ開放されている。収容室84の内部は、仕切壁などで仕切られていない。
【0037】
図2に示すように、左右両側の側壁部81の外面(他方の側壁部81側とは反対側の面)には、第1被係止部81Aと、第2被係止部81Bとが設けられている。第1被係止部81A、及び第2被係止部81Bは、左右方向外側(他方の側壁部81側とは反対側)に突出している。第1被係止部81Aは、第2被係止部81Bの下方側に離間して設けられている。第1被係止部81A及び第2被係止部81Bは、後述するリテーナ13のリテーナ側係止部13Eが係止する。
【0038】
図13に示すように、上壁部83の内面には、弾性抜止片85が形成されている。弾性抜止片85は、上壁部83に対して上下方向へ弾性的に相対変位し得るようになっている。アウタハウジング12には、上壁部83の外面を間隔を空けて覆う形態のロックアーム86が形成されている。ロックアーム86は、アウタハウジング12の前端部から後方へ片持ち状に延出した形態であり、弾性変形可能である。
【0039】
図2に示すように、リテーナ13は、底壁13Aと、一対の側壁13Bとを備えている。一対の側壁13Bは、底壁13Aの左右両端から上方に立ち上がっている。底壁13Aの上面には、上方に突出するリテーナ側凸部13Cが設けられている。側壁13Bの内面(他方の側壁13B側の面)には、外側(他方の側壁13B側とは反対側)に凹むリテーナ側凹部13Dが設けられている。リテーナ側凹部13Dの上端は、第1被係止部81A又は第2被係止部81Bに引っ掛かるリテーナ側係止部13Eになっている。リテーナ側係止部13Eが第1被係止部81Aに係止することで、リテーナ13がアウタハウジング12に対して仮係止状態となる。リテーナ側係止部13Eが第2被係止部81Bに係止することで、リテーナ13がアウタハウジング12に対して本係止状態となる。
【0040】
(コネクタの組み立て)
次に、コネクタ10の組み立てについて説明する。
図7に示すように、ベース部材31に、電線70に接続された端子群22が組み付けられる。端子60は、端子収容溝46の延び方向(前後方向)に沿う姿勢(
図3に示す姿勢)で、端子収容溝46の開口に挿入される。かしめリング76の位置決め部76Bは、かしめリング嵌合溝43に嵌め込まれる。
【0041】
続いて、
図8に示すように、ベース部材31に上方からカバー部材32が組み付けられる。カバー部材32は、ベース部材31に組み付ける際、係止部51を、第1係止受け部41の第1テーパ面41A上をガイド部44に沿って滑らせて、第1係止受け面41Bに係止させる。これにより、カバー部材32がベース部材31に組み付けられる。同様にして、他方のカバー部材32も、
図9に示すように、ベース部材31に組み付けられる。
【0042】
カバー部材32がベース部材31に組み付けられた状態では、
図8に示すように、かしめリング76の位置決め部76Bは、かしめリング嵌合溝43の底面とカバー部材32のかしめリング規制部52との間に配置され、上下方向への移動が規制される。また、
図10に示すように、端子60の前側スタビライザ61Aは、カバー部材32の前側抜止め凹部50Aに嵌合し、端子60の後側スタビライザ61Bは、カバー部材32の後側抜止め凹部50Bに嵌合する。また、
図11に示すように、電線70の上下方向外側に、カバー部材32の撓み規制部56が配置される。撓み規制部56は、係止部51に連なっているため、電線70の上下方向外側への移動が規制される。また、
図11に示すように、かしめリング76の圧着部76Aが、カバー部材32の嵌合孔57に嵌まる。これにより、端子群22の後方への抜けが規制される。このように、ベース部材31の両側に一対のカバー部材32が組み付けられることで、インナモジュール11が完成する。
【0043】
続いて、アウタハウジング12の収容室84に対して、後方からインナモジュール11を挿入する。インナモジュール11を挿入する前に、アウタハウジング12に対してリテーナ13を仮係止状態にしておく。挿入の過程では、弾性抜止片85は、インナモジュール11(ベース部材31の前壁48)との干渉によって弾性変形し、その後さらに挿入が進むと弾性復帰して前壁48の後面に係止(一次係止)する。
【0044】
インナモジュール11が正規姿勢でアウタハウジング12に挿入された後、
図13に示すように、リテーナ13をアウタハウジング12に対して本係止状態にする。リテーナ側凸部13Cは、カバー部材32の外側凹部59に係止(二次係止)する。これにより、インナモジュール11のアウタハウジング12からの抜け出しが規制される。
【0045】
図14は、コネクタ10の適用例を示している。コネクタ10は、
図14に示すように、一対の導電路71によって構成される幹線ハーネスの途中に接続されている。コネクタ10は、幹線ハーネスから通信回路91を分岐させる機能を有する。通信回路91は、回路基板92にプリント回路として形成されたものである。回路基板92には図示しない基板用コネクタが実装されている。基板用コネクタは、回路基板92に固定される図示しない基板側ハウジングに、タブ状の2対の分岐側端子93を取り付けたものである。分岐側端子93は、通信回路91に接続されている。コネクタ10を基板用コネクタに嵌合すると、幹線ハーネスから通信回路91が分岐された状態となる。
【0046】
(本実施例の効果)
以上のように、本開示のコネクタ10によれば、アウタハウジング12は、複数の端子群22を有するインナモジュール11を単一の収容室84に収容する構成であるため、複数の端子群22をそれぞれ別個に収容するために収容室84内の空間を仕切る壁(複数の端子群22の並び方向に仕切る壁)を設ける必要がない。そのため、コネクタ10は、複数の端子群22の並び方向におけるサイズを低減することができる。更に、この構成によれば、全ての端子60に対応する挿入口48Aが1つの部材である前壁48に形成されるため、挿入口48A同士の位置ずれを防止することができる。
【0047】
更に、第1係止受け部41が有する第1テーパ面41A及び第2係止受け部42が有する第2テーパ面42Aは、前方から見た正面視においてそれぞれカバー部材32の組み付け方向に沿って傾斜しており、傾斜方向が互いに反対方向である。このため、ベース部材31に対して互いに反対方向から組み付けられる一対のカバー部材32の組み付け作業を容易にすることができる。
【0048】
更に、ベース部材31は、カバー部材32の組み付け方向に沿って設けられたガイド部44を有する。このため、カバー部材32をベース部材31に組み付ける際、カバー部材32をガイド部44によってガイドすることができる。
【0049】
更に、係止部51は、櫛形状をなしている。このため、インナハウジング21が小型のものであっても、カバー部材32がベース部材31に対して複数個所で係止されるため、カバー部材32とベース部材31が互いに離れる方向に力が加わっても、外れにくい。
【0050】
更に、第1係止受け部41及び第2係止受け部42は、前方から見た正面視において互いに点対称となる位置関係で配置されている。このため、一対のカバー部材32を互いに共通の部材とすることができる。
【0051】
更に、カバー部材32は、ベース部材31に係止される係止部51と、係止部51に連なり仕切り部40との間で端子群22に接続される電線70を挟むように位置する撓み規制部56と、を有する。このため、仕切り部40側とは反対側への電線70の撓みを規制することができる。
【0052】
更に、端子群22は、電線70に圧着される圧着部76Aを有しており、カバー部材32は、撓み規制部56の前方に、圧着部76Aが嵌まる嵌合孔57を有している。嵌合孔57に圧着部76Aが嵌まることで、端子群22に接続された電線70の後方への抜けを抑制することができる。
【0053】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例1では、第1係止受け部が第1テーパ面を有し、第2係止受け部が第2テーパ面を有する構成であったが、第1係止受け部及び第2係止受け部がテーパ面を有さない構成であってもよい。
上記実施例1では、コネクタがガイド部を有する構成であったが、ガイド部を有さない構成であってもよい。
上記実施例1では、係止部が櫛形状であったが、櫛形状でなくてもよい。
上記実施例1では、第1係止受け部及び第2係止受け部が互いに点対称となる位置関係で配置されていたが、第1係止受け部及び第2係止受け部が互いに点対称となる位置関係で配置されていなくてもよい。
上記実施例1では、カバー部材が撓み規制部を有する構成であったが、撓み規制部を有さない構成であってもよい。
上記実施例1では、カバー部材が、圧着部の嵌まる嵌合孔を有する構成であったが、嵌合孔を有さない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…コネクタ
11…インナモジュール
12…アウタハウジング
13…リテーナ
13A…底壁
13B…側壁
13C…リテーナ側凸部
13D…リテーナ側凹部
13E…リテーナ側係止部
21…インナハウジング
22…端子群
31…ベース部材
32…カバー部材
40…仕切り部
41…第1係止受け部
41A…第1テーパ面(テーパ面)
41B…第1係止受け面
42…第2係止受け部
42A…第2テーパ面(テーパ面)
42B…第2係止受け面
43…かしめリング嵌合溝
44…ガイド部
46…端子収容溝
47…隔壁
48…前壁
48A…挿入口
50…カバー本体
50A…前側抜止め凹部
50B…後側抜止め凹部
51…係止部
52…かしめリング規制部
54…係止アーム
55…爪部
56…撓み規制部
57…嵌合孔
59…外側凹部
60…端子
61…角筒部
61A…前側スタビライザ
61B…後側スタビライザ
62…端子側圧着部
70…電線
71…導電路
72…分断部
73…絶縁被覆
74…導体
75…シース
76…かしめリング
76A…圧着部
76B…位置決め部
81…側壁部
81A…第1被係止部
81B…第2被係止部
82…底壁部
83…上壁部
84…収容室
85…弾性抜止片
86…ロックアーム
91…通信回路
92…回路基板
93…分岐側端子